JP2014502282A - 安定な使用準備済みセトロレリックス注射液 - Google Patents

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Abstract

本発明は、セトロレリックスまたは薬学的に許容可能なその塩を含む安定な使用準備済み水性医薬製剤であって、いかなる界面活性剤も含まない製剤を開示する。さらに、本発明は、前記安定な使用準備済み水性医薬製剤の調製方法を開示する。

Description

本発明は、セトロレリックス、または薬学的に許容可能なその塩を、使用前の再構成ステップを必要としない使用準備済み溶液の形態で含む、安定な水性医薬製剤、およびそのような製剤の調製方法に関する。
化学的には、セトロレリックスは、ゴナドトロピン放出ホルモン拮抗薬(GnRH拮抗薬)であり、次式で表わされるアセチル−D−3−(2’−ナフチル)−アラニン−D−4−クロロフェニルアラニン−D−3−(3’−ピリジル)−アラニン−L−セリン−L−チロシン−D−シトルリン−L−ロイシン−L−アルギニン−L−プロリン−D−アラニン−アミド(C7092ClN1714)である。
Figure 2014502282
セトロレリックスは末端に酸アミド基を有するデカペプチドである。セトロレリックスは、早くに米国特許第4800191号明細書に開示されていた。現在では、セトロレリックスは、調節卵巣刺激法を受けている女性の未熟LHサージ抑制のために、凍結乾燥製剤として製剤化された酢酸セトロレリックス(Cetrotide(登録商標))として、Merck Serono and Companyから市販されている。現在、Cetrotide(登録商標)は、2つの提供形態、すなわち、3mgのセトロレリックス凍結乾燥物が再構成用の1mlまたは3mlの水とともに充填されているプレフィルドシリンジとして入手可能である。
セトロレリックスは、ホルモン感受性前立腺癌および同乳癌(閉経前/周閉経期の女性の)、ならびに、いくつかの良性婦人科疾患の治療に使用されている。この薬剤は、下垂体に対するGnRHの作用を遮断し、それによりLHおよびFSHの産生と作用を急速に抑制するよう働く。
酢酸セトロレリックスの安定な水溶液を開発するという製剤的見地は、特に末端に酸アミド基を有するオリゴペプチドがゲルを生成しやすいという公知の事実によって妨げられている。
カナダ特許第2115943号明細書は、市販のセトロレリックス注射液の開発の推移を開示している。この特許は、これらのデカペプチド水溶液が不安定であるため、オートクレーブ滅菌を行えないことを開示している。さらに、従来の所定の条件で滅菌すると、デカペプチドは分解する傾向にあり、したがって、注射可能な組成物を得るには、凍結乾燥組成物を開発する必要があった。
カナダ特許第2115943号明細書はまた、安定したケークを得るには、セトロレリックス凍結乾燥組成物中に充填剤が必要であることを開示している。凍結乾燥組成物で使用する特に有用な充填剤は、マンニトールである。
カナダ特許第2115943号明細書はまた、オリゴペプチドがゲルを生成しやすいことを開示している。バルク溶液の濾過滅菌中に滅菌濾過器内でゲルが生成されれば、溶液の粘度が上昇し、その結果、濾過工程が妨害されることになろう。濾過滅菌に伴う問題を解決するには、酢酸による酸性化を行うことが確実な結果がもたらすことがわかった。したがって、滅菌済みセトロレリックス凍結乾燥物を調製するために、セトロレリックスを30v/v%の酢酸に溶解し、得られた溶液をさらに水で希釈し、充填剤を溶解し、得られた溶液を濾過滅菌した。得られた滅菌済み溶液を適切な容器に充填し、凍結乾燥した。
このバルク溶液は、2.47のpH、および約675mosmol/kgのモル浸透圧濃度を有するであろうことが確認された。このバルク溶液は、以下の制約があるため、使用準備済み注射液としてそのまま投与することはできない。
−局所的な、例えば刺激、浮腫、腫脹、発赤などを引き起こし得るという、この溶液の高張性。
−皮下/非経口経路で投与するには、酢酸の量が安全レベルを超えている。
米国特許第7718599号明細書は、酢酸セトロレリックスを2.5mg/mlの濃度で含み、かつグルコン酸、グルカル酸またはガラクトウロン(galactouronic)酸の群から選択され、組成物のpHを2.5〜4.5とすることができ、酢酸セトロレリックスの凝集を抑制する、薬学的に許容可能な酸を含む、非経口投与用医薬組成物の権利を主張している。
米国特許第7214662号明細書は、LHRH拮抗薬(セトロレリックス)の500mg水溶液において、組成物が、カルボン酸、グルコン酸、ヒドロカルボン(hydrocarboxylic)酸およびグルコン酸デルタラクトンの群から選択される酸を界面活性剤Tween 80と共に含む水溶液に焦点を当てている。それはLHRH拮抗薬の溶解度を高める。さらに、この特許はまた、前記酸と界面活性剤の使用により、LHRH物質の凝集傾向が低下することについても言及している。
市販の酢酸セトロレリックス注射液(Cetrotide(登録商標))は、注射用の水で再構成すると無色透明の溶液となる凍結乾燥物の形態で入手可能である。
以下は、凍結乾燥投与形態に関係し得る欠点である。
−高い製造コストと、複雑な装置
−投与前に再構成という追加の工程を必要とする
−不適切な再構成により、透明な溶液が得られない場合があり得る。
セトロレリックス製品の製剤的見地に関して背景技術で明らかにした問題点を考慮すると、それを必要としている患者に、使用準備済みを一選択肢として非経口投与することができる医薬製剤であって、簡便に調製でき、かつ濾過滅菌が可能で、面倒な再構成を必要としない医薬製剤として、安定なセトロレリックス水溶液を提供することが求められている。
本発明の発明者らの努力により、背景技術で明らかにした製剤的見地に関する問題点を克服するであろう、非経口投与用の安定な使用準備済みセトロレリックス水溶液が開発された。
本発明の主たる目的は、セトロレリックスまたは薬学的に許容可能なその塩を含む、安定な非経口投与用使用準備済み水性医薬製剤であって、界面活性剤を含まない製剤を提供することである。
本発明の別の目的は、セトロレリックスまたは薬学的に許容可能なその塩を含む、安定な非経口投与用使用準備済み水性医薬製剤において、界面活性剤を含まず、かつセトロレリックスの濃度が0.25mg/ml以上で、pHが2.5〜5である製剤を提供することである。
本発明のさらに別の目的は、セトロレリックスまたは薬学的に許容可能なその塩の、安定な非経口投与用使用準備済み水性医薬製剤の製造方法において、前記製剤が界面活性剤を含まず、かつセトロレリックスの濃度が0.25mg/ml以上で、pHが2.5〜5である方法を提供することである。
意外にも、セトロレリックスまたは薬学的に許容可能なその塩を含む、安定な非経口投与用使用準備済み水性医薬製剤が、少量の氷酢酸を、酢酸セトロレリックスと、張度調節剤と、任意選択の別の薬学的に許容可能な添加剤と共に水中で使用することにより調製できることが、本発明の発明者らによって見出された。
本発明は、セトロレリックスまたは薬学的に許容可能なその塩の、安定な非経口投与用使用準備済み水性医薬製剤において、界面活性剤を含まず、かつセトロレリックス濃度が0.25mg/ml以上で、pHが2.5〜5である製剤に関する。
本発明の医薬製剤は、非経口で投与され、非経口投与の好ましい形態は皮下投与である。医薬製剤の非経口投与の別の形態には、静脈内投与、筋肉内投与などが含まれ得る。
本発明においては、医薬製剤中における少量の氷酢酸の使用は、前記製剤の約0.1w/v%〜0.5w/v%に相当する。
前記医薬製剤における前記少量の氷酢酸の使用は、製剤に以下の利点を与えるのに役立つであろう。
−所望の等張性、
−酢酸セトロレリックス凝集物の生成なし、
−濾過滅菌、
−2.5〜5のpH、
−非経口製剤に要求される通りの、許容可能な酢酸の濃度/量。
さらに、本発明においては、セトロレリックスまたは薬学的に許容可能なその塩の安定な非経口投与用使用準備済み水性医薬製剤は、いかなる界面活性剤も含まない。
本発明において、前記医薬製剤で使用される活性物は、セトロレリックスまたは薬学的に許容可能なその塩を酢酸塩の形態で含む。前記医薬製剤は、セトロレリックスまたは薬学的に許容可能なその塩を、0.025w/v%以上の割合で含む。前記医薬製剤では、セトロレリックスまたは薬学的に許容可能なその塩の濃度は、0.25mg/ml以上、好ましくは0.25〜0.75mg/mlの範囲、より好ましくは0.25〜0.5mg/mlの範囲である。さらに、前記医薬製剤中の活性物の量を変えることも可能であるが、これは当業者には明らかなことであろう。
さらに、本発明において、前記医薬製剤のpHは、2.5〜5の範囲、好ましくは2.8〜3.5の範囲である。
本発明において、医薬製剤は張度調節剤を含む。張度調節剤は、血液細胞の溶血を減少させ、注射部位の痛みや刺激を軽減する。前記医薬製剤に含有させることができる張度調節剤は、マンニトール、ラクトース、デキストロース、またはこれらの類似物を含む。前記医薬製剤用の好ましい張度調節剤は、マンニトールである。
本発明において、前記製剤に使用する張度調節剤の量は、前記製剤のモル浸透圧濃度が290〜330mOsm/kgの範囲となるよう調節される。所望のモル浸透圧濃度を得るために加える張度調節剤の量のチェックおよび調節に、浸透圧計を使用することができる。
さらに、本発明において、前記医薬製剤に使用することができる別の任意選択の医薬添加剤は、キレート剤、緩衝液およびpH調節剤、酸化防止剤および還元剤、抗菌性保存剤などである。
本発明はまた、セトロレリックスまたは薬学的に許容可能なその塩の、安定な非経口投与用使用準備済み水性医薬製剤の製造方法を提供する。本発明の前記セトロレリックスまたは薬学的に許容可能なその塩の医薬製剤を製造するための一般化した方法は、
−氷酢酸、セトロレリックスまたは薬学的に許容可能なその塩、および張度調節剤を水に溶解して溶液を得るステップと、
−必要に応じて、その水溶液に水を加えて、透明で、等張性があり、等モル浸透圧の水性医薬製剤を得るステップと
−この医薬製剤を濾過滅菌し、適切な容器/密閉系に充填するステップと
を含む。
本方法のいずれのステップにおいても、任意選択により不活性ガス注入(窒素ガス)を行うことができる。この一般化した方法により、当業者に知られているように、修正を加えることができる。
本発明で開示した方法により調製した医薬製剤は、例えば0.2ミクロンフィルターの濾過滅菌を使用して常法により滅菌を行い、溶液を無菌化することができる。この滅菌済み医薬製剤は、適切な容器/密閉系、例えばアンプル、バイアル、プレフィルドシリンジ系などに充填される。
本発明においては、前記医薬製剤は、好ましくはプレフィルドシリンジ系に直接充填することができる。プレフィルドシリンジ系が有する利点は、
−取り扱いが容易であるため、医者/健康管理専門家に好まれる、
−投薬過誤がなくなる
ことである。
本発明においては、前記医薬製剤は安定である。ここで、「安定な医薬製剤」とは、前記医薬製剤を、2℃〜8℃(実時間試験)および25℃/60%相対湿度(加速試験)で行う安定試験で少なくとも6か月間保持したときに、凝集が認めらないことと定義され、セトロレリックスの分析値が90%未満となることはないであろう。
前記医薬製剤中のセトロレリックスの分析は、当業者に知られた任意の方法、例えば、高速液体クロマトグラフ法(HPLC法)、分光光度法(UV分光光度法)などにより行うことができる。本発明においては、分析試験の実施にHPLCを使用した。
以上、本発明が単なる例示として記載されており、添付の請求項の範囲と精神から逸脱せずにそれらに加えられ、また当業者であれば本明細書の開示に基づき明らかであろう変更形態も、本発明の範囲に含まれると考えられることを認識すべきである。
実施例1
組成
1ml当たり、
酢酸セトロレリックスのセトロレリックス相当量 0.25mg
マンニトール 45.54mg
氷酢酸 3.0mg
注射用水 適量1ml
を含む。
製造方法
a)注射用水(20〜25℃)の約85%をステンレス鋼(S.S)の製造容器に移す。注射用水に窒素ガスを15分間注入する(溶液A)。
b)注射用水による約25w/v%の氷酢酸水溶液を別途調製する。酢酸セトロレリックスを加え、それが完全に溶解するまで撹拌する(溶液B)
c)溶液Bを溶液Aに加え、10分間撹拌する。
d)マンニトールを加え、撹拌して完全に溶解させる。
e)注射用水を加えて一定体積の溶液を調製する。
f)その溶液を滅菌済み0.2ミクロンフィルターを通して濾過し、溶液を滅菌する。
g)滅菌済みバルク溶液を適切な容器/密閉系に充填する。
観察
バルク溶液は、ゲルの生成を完全に抑える氷酢酸を添加したため、無色透明で、濾過性の問題は観察されない。
2〜8℃および25℃/60%相対湿度における少なくとも6ヶ月間の安定性試験で凝集物は観察されなかった。

Figure 2014502282
実施例2
組成
1ml当たり、
酢酸セトロレリックスのセトロレリックス相当量 0.5mg
マンニトール 40.91mg
氷酢酸 4.5mg
注射用水 適量1ml
を含む。
製造方法
a)注射用水(20〜25℃)の約85%をステンレス鋼(S.S)の製造容器に移す。注射用水に窒素ガスを15分間注入する(溶液A)。
b)注射用水による約33w/v%の氷酢酸水溶液を別途調製する。酢酸セトロレリックスを加え、それが完全に溶解するまで撹拌する(溶液B)
c)溶液Bを溶液Aに加え、10分間撹拌する。
d)マンニトールを加え、撹拌して完全に溶解させる。
e)注射用水を加えて一定体積の溶液を調製する。
f)その溶液を滅菌済み0.2ミクロンのフィルターを通して濾過し溶液を滅菌する。
g)滅菌済みバルク溶液を適切な容器/密閉系に充填する。
観察
バルク溶液は、ゲルの生成を完全に抑える氷酢酸を添加したため、無色透明で、濾過性の問題は観察されない。
2〜8℃および25℃/60%相対湿度における少なくとも6ヶ月間の安定性試験で凝集物は観察されなかった。

Figure 2014502282
結論
本発明の実施例1および実施例2で行われた研究の結果は、セトロレリックスの使用準備済み水性医薬製剤が、安定で、かつそれを必要としている人に投与できることを示している。

Claims (10)

  1. セトロレリックスの安定な非経口投与用使用準備済みの水性医薬製剤において、水に溶解した、0.025w/v%以上の量のセトロレリックスまたは薬学的に許容可能なその塩と、少量の氷酢酸と、張度調節剤と、任意選択の別の薬学的に許容可能な添加剤とを含み、界面活性剤を含まないことを特徴とする医薬製剤。
  2. 請求項1に記載の医薬製剤において、前記薬学的に許容可能なセトロレリックスの塩が、酢酸セトロレリックスであることを特徴とする医薬製剤。
  3. 請求項1または2に記載の医薬製剤において、セトロレリックスまたは薬学的に許容可能なその塩の濃度が、前記製剤の0.025〜0.075w/v%、好ましくは0.025〜0.05w/v%であることを特徴とする医薬製剤。
  4. 請求項1に記載の医薬製剤において、少量の氷酢酸が、前記製剤の約0.1〜0.5w/v%に相当することを特徴とする医薬製剤。
  5. 請求項1に記載の医薬製剤において、pHが2.5〜5、好ましくは2.8〜3.5であることを特徴とする医薬製剤。
  6. 請求項1に記載の医薬製剤において、張度調節剤が、マンニトール、ラクトース、デキストロース、またはこれらの類似物からなる群から選択され、かつモル浸透圧濃度が290〜330mOsm/kgであることを特徴とする医薬製剤。
  7. セトロレリックスの安定な非経口投与用使用準備済み水性医薬製剤の製造方法において、
    a)氷酢酸、セトロレリックスまたは薬学的に許容可能なその塩、および張度調節剤を水に溶解して溶液を得るステップと、
    b)前記得られた溶液を滅菌フィルターに通して濾過するステップと、
    c)前記滅菌済みセトロレリックス製剤を、適切な容器/密閉系に充填するステップと
    を含むことを特徴とする方法。
  8. 請求項9に記載の方法において、前記製剤のpHが2.5〜5、好ましくは2.8〜3.5の範囲であり、かつ前記製剤のモル浸透圧濃度が290〜330mOsm/kgであることを特徴とする方法。
  9. 酢酸セトロレリックス 0.25mg
    マンニトール 適量(290〜330mOsm/kgになるまで)
    氷酢酸 3.0mg
    注射用水 適量1ml
    を含むことを特徴とするセトロレリックスの安定な非経口投与用使用準備済み水性医薬製剤。
  10. 酢酸セトロレリックス 0.5mg
    マンニトール 適量(290〜330mOsm/kgになるまで)
    氷酢酸 4.5mg
    注射用水 適量1ml
    を含むことを特徴とするセトロレリックスの安定な非経口投与用使用準備済み水性医薬製剤。
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