JP2014240448A - カゼイン接着組成物及び積層プレスボード - Google Patents
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Abstract
【解決手段】カゼイン化合物と水酸化カルシウムを含み、前記水酸化カルシウムの含有率は、前記カゼイン化合物に対して5〜20質量%であることを特徴とする電気絶縁部材用カゼイン接着組成物。更にカゼイン化合物に対して2〜10質量%のフッ化ナトリウム、0.01〜3質量%のポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンアルキルエーテル型界面活性剤からなる消泡剤並びに5〜60質量%の無機顔料を含む電気絶縁部材用カゼイン接着組成物。
【選択図】なし
Description
なお、カゼイン接着剤には、液体タイプと粉体タイプがあるが、耐水性や可塑性等の性能に関してより優れているのは、粉体タイプである。粉体タイプは、保存や可搬性の面からも好ましく、広く用いられている。
また、従来の粉体タイプのカゼイン接着剤を用いた場合、接着組成物の製造時や、接着組成物の塗工時の作業性が悪化することがあり、問題となっていた。例えば、カゼイン接着剤の水分散性が悪くダマが発生したり、分散後のポットライフが短くなるという問題があった。
具体的に、本発明は、以下の構成を有する。
[2]さらにフッ化ナトリウムを含み、前記フッ化ナトリウムの含有率は、前記カゼイン化合物に対して2〜10質量%であることを特徴とする[1]に記載の電気絶縁部材用カゼイン接着組成物。
[3]さらに消泡剤を含み、前記消泡剤の含有率は、前記カゼイン化合物に対して0.01〜3質量%であることを特徴とする[1]又は[2]に記載の電気絶縁部材用カゼイン接着組成物。
[4]さらに無機顔料を含み、前記無機顔料の含有率は、前記カゼイン化合物に対して5〜60質量%であることを特徴とする[1]〜[3]のいずれかに記載の電気絶縁部材用カゼイン接着組成物。
[5]前記消泡剤は、液体であることを特徴とする[3]に記載の電気絶縁部材用カゼイン接着組成物。
[6]前記消泡剤は、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンアルキルエーテル型界面活性剤であることを特徴とする[3]に記載の電気絶縁部材用カゼイン接着組成物。
[7]前記カゼイン化合物は、カゼイン酸ナトリウムであることを特徴とする[1]〜[6]のいずれかに記載の電気絶縁部材用カゼイン接着組成物。
[8][1]〜[7]のいずれかに記載の電気絶縁部材用カゼイン接着組成物から形成された少なくとも1層の接着層と、少なくとも1層のプレスボードとを有する積層プレスボード。
さらに、本発明のカゼイン接着組成物を用いてプレスボードを積層することにより、積層プレスボードの曲げ強度を十分に高めることができ、かつ、カゼイン接着組成物自体の耐水性を高めることができる。
本発明は、カゼイン化合物と水酸化カルシウムを含むカゼイン接着組成物に関する。ここで、水酸化カルシウムの含有率は、カゼイン化合物に対して5〜20質量%である。また、本発明のカゼイン接着組成物は、電気絶縁部材用に用いられるものである。このように、本発明のカゼイン接着組成物は、電気絶縁部材用の用途に用いられ、絶縁油に浸漬された状態で長期間に亘り使用されるが、絶縁油の劣化を促進することはない。
また、本発明のカゼイン接着組成物を用いて積層プレスボードを作製した場合に、積層プレスボード間の接着強度を高めることができる。さらに、積層プレスボードの曲げ強度を十分に高めることができ、カゼイン接着組成物自体の耐水性を向上させることができる。なお、水酸化カルシウムの添加率が5質量%未満であると、カゼインの架橋が不十分であり、求められる接着強度や耐水性を発揮することができない。また、添加率が20質量%を超えると、接着組成物のイオン成分が増加するため、浸漬する絶縁油中に接着組成物の成分が溶出する可能性があり、絶縁油の劣化を促進させるおそれがある。
なお、粉体消泡剤は、カゼイン化合物が粉体タイプである場合は、事前の添加が可能であるため、溶解使用時の作業性に優れるという利点を有する。粉体消泡剤としては、シリカとポリエーテルの混合物からなる消泡剤(例えば、実施例で用いた消泡剤B:SND−14HP/サンノプコ社製)を例示することができる。
また、カゼイン接着組成物には、カゼイン接着組成物の粘度を抑制する目的で、さらに、尿素、ホウ素、ジシアノジアミド等を添加することとしてもよい。
このような添加物を加えることにより、カゼイン接着組成物の取り扱い性を高めることができ、作業性を高めることができる。
プレスボードは、高電圧・大電力用変電機器の内部の電気絶縁部材として用いられる。本発明に用いるプレスボードは、一般的な木材パルプから形成されることが好ましく、木材パルプの種類は特に限定されない。また、木材パルプには、パルプ同士の繊維間結合を高める目的で叩解を行なったものを用いてもよい。木材パルプのフリーネスは、200〜500mlCSFであることが好ましく、250〜450mlCSFであることがより好ましい。
本発明の積層プレスボードは、上述したプレスボードを複数枚積層したものであって、各々のプレスボードはカゼイン接着組成物を介して接着される。図1には、本発明の積層プレスボード10の概略断面図が示されている。図1に示されているように、積層プレスボード10は、複数層(2層)のプレスボード2をカゼイン接着組成物からなる接着層5で接着することにより得られる。なお、積層プレスボード10は、図1のように2層のプレスボード2と、1層の接着層5から構成されても良く、3層以上のプレスボード2と2層以上の接着層5から形成されてもよい。また、積層プレスボード10は、プレスボード2と接着層5の他に他の層を含んでもよい。
なお、積層プレスボードにおいて、接着層の厚さは、0.1〜2.0mmであることが好ましく、0.1〜1.0mmであることがより好ましい。
他のプレスボードを重ねた後には、室温で、5〜50kgf/cm2の圧力で1〜3時間程度プレスすることが好ましい。このような条件で積層プレスボードを作製することにより、接着強度が高く、安定性に優れた積層プレスボードを得ることができる。
<プレスボードの製造>
絶乾100g相当量の予めフリーネスが350mlCSFに叩解された木材パルプを20Lの水に分散させた。スラリーをパルプ離解機にて30分間撹拌処理した後、枚葉の米坪量を約50g/m2に設定した湿紙を抄造し、この湿紙20枚を乾燥させることなく積層した後、140℃、40kgf/cm2の条件下で10分間ホットプレスすることにより、湿紙積層体を乾燥一体化し、厚さ1mm、密度1.0g/cm3のプレスボードを得た。
カゼイン酸ナトリウム100質量部に対して、水酸化カルシウム7質量部、炭酸カルシウム30質量部、カオリン5質量部及びフッ化ナトリウム5質量部、リン酸ナトリウム5質量部を全て粉体の状態で混和した。ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンアルキルエーテル型界面活性剤(消泡剤A)を0.2質量%となるように添加した水に、混和した粉体を30質量%となるように投入し、撹拌して分散した。その後1時間静置し、接着組成物として用いた。
上記の接着組成物を、ローラーを用いて接着面全面に塗布し、プレスボードを貼り合わせた。その後、室温で10kgf/cm2にて3時間プレス加圧して、室温環境下で10日間乾燥固化させて積層プレスボードを得た。
実施例1の<カゼイン接着組成物の製造>において、化合物の組成を表1の通りとした以外は、実施例1と同様にして、積層プレスボードを得た。
実施例1の<カゼイン接着組成物の製造>において、化合物の組成を表1の通りとして、カゼイン接着組成物の製造に用いる粉体を混和した。しかし、比較例1では、カゼイン化合物が溶解せず、ダマとなり接着組成物が製造できなかった。
実施例1の<カゼイン接着組成物の製造>において、化合物の組成を表1の通りとして、カゼイン接着組成物の製造に用いる粉体を混和した。しかし、得られた粉末は、潮解性があり、貯蔵安定性に問題があるとして、その後の試験を中止した。
実施例1の<カゼイン接着組成物の製造>において、化合物の組成を表1の通りとした以外は、実施例1と同様にして、積層プレスボードを得た。
実施例及び比較例で得た積層プレスボードについては、下記のような評価を行った。
上記の実施例及び比較例の配合において混和した粉体を水に溶解したときの溶解性を官能評価した。
◎:溶解性に問題がなく、均一に分散した。ダマの発生は全くない。
○:溶解性に問題はないが、ダマがわずかに発生する。
△:やや溶解しにくく、ダマが発生する。
×:溶解しにくく、分散物がダマになる。
上記の実施例及び比較例の配合において混和した粉体を水に溶解撹拌しているときに生じる泡の状態を目視にて官能評価した。
◎:溶解物に全く泡が見られない。
○:溶解物にやや泡の発生が認められる。
△:溶解した糊液に泡の発生が認められる。
×:泡の発生が多く、糊液としての使用が難しい。
溶解した液の粘度を、B型粘度計にて1時間毎に測定し、粘度が1000mpsを超えたときの時間を評価した。なお、1000mpsを超えると糊としての使用が難しくなる。
積層プレスボードを製造する際には、糊液のポットライフは長いほど好ましく、通常は、4時間以上であればよく、6時間以上あることが好ましいとされている。
実施例及び比較例で得られた積層プレスボードを8cm×1cmの寸法に断裁して、JIS K7171に準じ曲げ強度測定を行った。なお、積層プレスボードは、断裁した後に、120℃の乾燥機で72時間乾燥し、乾燥機のより取り出したものをチャック付きビニール袋に入れて1時間冷却したものを用いた。
測定は、平板(積層プレスボード)の表面を下にして据え、スパン(L)を共同検査規約による製品曲げ強度荷重の値にとり、スパンの中央に荷重を加えて行った。製品曲げ強度荷重規格値表に規定する曲げ強度荷重において、ひび割れの有無を確認した。なお、曲げ強度測定を行うときは、なお、曲げ強度は、平板の加圧面及び支持面にゴム板を挿入し、荷重が均等に分布されるようにした。
曲げ強度は、以下の式により算出した。
曲げ強度(σ)=3/2×L/(b・d2)×F
(ここで、Lはスパン(mm)を表し、bは平板の有効幅(mm)、dは平板の厚さ(mm)、Fは最大荷重(N)を表す。)
実施例及び比較例で得られた積層プレスボードを1mm以下の厚みとなるように剥離し、さらに、その剥離シートを10mm角程度に細片化した。その際、糊の比が等しくなるよう、乾燥状態で5gサンプリングした。上記のようにサンプリングした細片の煮液の導電率とpHを導電率計、pH計にて測定した。なお、煮液の導電率は15μmS/m未満、pHは6〜10の範囲であれば品質上問題がない。
実施例1〜9で得られた積層プレスボードにおいては、曲げ強度が強く、水浸液導電性も低く抑えられており、水浸液のpHの上昇も見られていない。これにより、カゼイン接着組成物の成分溶出がなく、良品質の積層プレスボードが得られていることがわかる。
なお、実施例1と4の比較から、消泡剤の添加により発泡性が抑えられることがわかる。また、実施例1と6の比較から、炭酸カルシウムの添加によりポットライフが長くなっていることがわかる。さらに、実施例1と7の比較から、カゼインNaを用いることにより、ポットライフが長くなっていることがわかる。
特に、実施例1、2、5及び9はハンドリング性が高く、積層プレスボードの品質が良好であるため、好ましい。これは、実施例1、2、5及び9のカゼイン接着組成物を構成する添加剤の組み合わせが良好であるためである。
一方、比較例1は分散性が悪く、カゼイン化合物が溶解せず、ダマとなり糊が作製できなかった。
なお、比較例2では、カゼイン接着組成物を構成する接着組成物の粉体の貯蔵安定性が悪いため、接着組成物及び積層プレスボードが形成されていない。
また、比較例3では、ポットライフが著しく短くなっており、製造適性やハンドリング性に劣ることがわかる。また、比較例3は、曲げ強度が弱く、また、水浸液導電性やpHが上昇しており、内部絶縁部材に用いる接着組成物として不適である。なお、実施例1と比較例3の比較から、水酸化カルシウムの添加量を増やすと曲げ強度が低下することがわかる。
実施例及び比較例で得られた積層プレスボードを内部絶縁部材として有する変圧器においては、劣化診断方法として、油中ガス分析法が採用されている。下記の表3には、実施例及び比較例で得られた積層プレスボードを絶縁油中に含浸させ、油中の可燃性ガス量を評価した結果を示している。
5 接着層
10 積層プレスボード
Claims (8)
- カゼイン化合物と水酸化カルシウムを含み、
前記水酸化カルシウムの含有率は、前記カゼイン化合物に対して5〜20質量%であることを特徴とする電気絶縁部材用カゼイン接着組成物。 - さらにフッ化ナトリウムを含み、前記フッ化ナトリウムの含有率は、前記カゼイン化合物に対して2〜10質量%であることを特徴とする請求項1に記載の電気絶縁部材用カゼイン接着組成物。
- さらに消泡剤を含み、前記消泡剤の含有率は、前記カゼイン化合物に対して0.01〜3質量%であることを特徴とする請求項1又は2に記載の電気絶縁部材用カゼイン接着組成物。
- さらに無機顔料を含み、前記無機顔料の含有率は、前記カゼイン化合物に対して5〜60質量%であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の電気絶縁部材用カゼイン接着組成物。
- 前記消泡剤は、液体であることを特徴とする請求項3に記載の電気絶縁部材用カゼイン接着組成物。
- 前記消泡剤は、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンアルキルエーテル型界面活性剤であることを特徴とする請求項3に記載の電気絶縁部材用カゼイン接着組成物。
- 前記カゼイン化合物は、カゼイン酸ナトリウムであることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の電気絶縁部材用カゼイン接着組成物。
- 請求項1〜7のいずれか1項に記載の電気絶縁部材用カゼイン接着組成物から形成された少なくとも1層の接着層と、少なくとも1層のプレスボードとを有する積層プレスボード。
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