JP2014237384A - ステアリング装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】転舵軸の軸線方向において、よりコンパクトなステアリング装置を提供する。
【解決手段】電動パワーステアリングはモータ18の回転力を駆動プーリ31、ベルト33、従動プーリ32およびボールナット42を介してラック軸13に伝達する。ボールナット42の外周には玉軸受44および従動プーリ32がそれぞれ嵌められている。ボールナット42は玉軸受44を介してハウジング11の内周に対して回転可能に支持されている。ボールナット42の第1の端部には鍔部42aが、第2の端部には雌ねじ部42bが設けられている。雌ねじ部42bには雄ねじ部材51が結合されている。雄ねじ部材51は雄ねじ部51aおよび鍔部51bを有している。雄ねじ部51aを雌ねじ部42bに締め付けることにより、玉軸受44および従動プーリ32が2つの鍔部42a,51bによって挟み込まれる。
【選択図】図2

Description

本発明は、ステアリング装置に関する。
従来、車両の操舵機構にモータの動力を付与することにより運転者のステアリング操作を補助する電動パワーステアリング装置(以下、「EPS」という。)が知られている。たとえば特許文献1のEPSでは、操舵機構としてラックアンドピニオン機構が採用されている。当該機構は、ステアリングの操作に伴うピニオンの回転を当該ピニオンに噛み合うラック軸(転舵軸)の直線運動に変換することにより車輪の向きを変える。当該ラック軸には、モータの回転運動を当該ラック軸の直線運動に変換するボールねじ機構が設けられている。すなわち、モータの回転力の利用を通じてラック軸の動作が補助されることによりステアリング操作が補助される。
詳述すると、図9に示すように、EPS100は、モータ101の回転力を駆動プーリ102、タイミングベルト103、従動プーリ104およびボールねじ機構105を介してラックシャフト106に伝達する。ラックシャフト106の両端はそれぞれ図示しないタイロッドを介して車輪に連結される。
ボールねじ機構105は、ラックシャフト106の螺旋溝106aに多数のボールを介して螺合されたボールナット107を備えている。ボールナット107の外周面にはラックシャフト106の外周を覆う円筒状のナットホルダ108の第1の端部が嵌っていて、当該ナットホルダ108の第2の端部の外周面には従動プーリ104が嵌っている。
ボールナット107は、ナットホルダ108の内周面に形成された段差部108aとナットホルダ108の従動プーリ104と反対側の開口部に螺合された円筒状の雄ねじ109とによって挟持されている。これにより、ボールナット107の軸方向への移動およびナットホルダ108に対する相対回転が規制される。また、ナットホルダ108にはボルト110がねじ込まれている。ボルト110の先端はナットホルダ108をその半径方向に貫通するとともにボールナット107の外周に締め付けられている。これにより、雄ねじ109が緩んだ場合であれボールナット107のナットホルダ108に対する相対回転が規制される。
ナットホルダ108の外周面とケーシング115の内周面との間には3つの軸受111,112,113が介在されている。従動プーリ104の回転に連動してナットホルダ108、ボールナット107および雄ねじ109は一体的に回転する。
特開2011−88462号公報(図2)
近年では、特許文献1のものも含め、EPSの省エネルギー効果が注目されていることなどからEPSの搭載車種が拡大している。しかしその一方で、EPSの車両搭載性を向上させる観点から小型化に対する要求はますます厳しくなっている。この点、特許文献1のEPS100では、ナットホルダ108に対して従動プーリ104、2つの軸受111,112、ボルト110、ボールナット107および雄ねじ109がそれぞれラックシャフト106の軸線方向に沿って並べて配置されている。このため、EPS10のラックシャフト106の軸線方向における長さを短くすることには限界がある。
本発明の目的は、転舵軸の軸線方向において、よりコンパクトなステアリング装置を提供することにある。
上記目的を達成し得るステアリング装置は、ハウジング内で直線運動することにより転舵輪を転舵させる転舵軸と、前記ハウジングに設けられるモータの駆動に伴い前記転舵軸の軸線に沿って延びる軸線を中心として回転する原動車と、前記転舵軸に多数のボールを介して螺合されかつ軸受を介して前記ハウジングの内周面に対して回転可能に支持されるとともに、第1の端部の外周面に第1の鍔部が、第2の端部の内周面に拡径部が設けられているボールナットと、前記ボールナットの外周に嵌められて前記原動車の回転を前記ボールナットに伝達する従動車と、前記拡径部に挿入された状態で結合される結合部、ならびに前記結合部が前記拡径部に結合されることにより前記軸受および前記従動車を前記転舵軸の軸線方向において前記第1の鍔部との間で挟み込む第2の鍔部を有する中空の結合部材と、を備えてなる。
この構成によれば、第1の鍔部と第2の鍔部とによって、軸受および従動車はそれぞれボールナットの外周面に固定される。軸受、従動車および結合部材の結合部はそれぞれ転舵軸の軸線方向において重なる。これにより、ステアリング装置の転舵軸の軸線方向における長さを短くすることが可能である。
上記のステアリング装置において、前記結合部は雄ねじ部、前記拡径部は雌ねじ部であってもよい。そして前記雄ねじ部が前記雌ねじ部に締め付けられることによって前記ボールナットと前記結合部材とが互いに結合されるとともに前記第1の鍔部と前記第2の鍔部とによって前記軸受および前記従動車が前記軸線方向において挟み込まれるようにしてもよい。
この構成によれば、結合部としての雄ねじ部をボールナットの雌ねじ部に締め付けるだけで軸受および従動車をボールナットに対して簡単に固定することができる。
上記のステアリング装置において、前記結合部材の内周面に沿って設けられる規制部材を備えてもよい。前記規制部材は前記結合部を貫通して前記拡径部の内周面に設けられる溝に対して前記軸線方向において係合する単数または複数の突部を有する。
この構成によれば、規制部材の突部と拡径部の溝との係合を通じてボールナットから結合部材が脱落することが規制される。また、規制部材は結合部材の内部に設けられるので、よりコンパクトである。
上記のステアリング装置において、前記原動車は駆動プーリ、前記従動車は前記駆動プーリとの間に掛け渡された無端状のベルトを介して前記原動車の回転が伝達される従動プーリであってもよい。この場合、前記従動プーリの軸線方向における両側部にはそれぞれ前記ベルトが前記従動プーリから外れることを抑制するための2つのフランジが設けられ、これらフランジの一方は前記第2の鍔部に設けることが好ましい。
この構成によれば、2つのフランジの一方を第2の鍔部に設けることにより、その分従動車、ひいてはステアリング装置の転舵軸の軸線方向における長さを短くすることが可能である。
上記のステアリング装置において、前記モータは前記ハウジングの外部に固定されていて、前記モータの軸線は前記転舵軸の軸線に沿って平行に延びていてもよい。
このようにしても、転舵軸の軸線方向においてコンパクトなステアリング装置が得られる。
本発明によれば、転舵軸の軸線方向において、よりコンパクトなステアリング装置が得られる。
一実施の形態における電動パワーステアリング装置の正面図。 一実施の形態における電動パワーステアリング装置の要部を拡大した断面図。 一実施の形態における雄ねじ部材および規制部材を分解して示す斜視図。 一実施の形態における電動パワーステアリング装置の従動プーリおよび雄ねじ部材の周辺構造を拡大して示す断面図。 図2の5−5線に沿って切断した断面図。 他の実施の形態における雄ねじ部材および規制部材を分解して示す斜視図。 他の実施の形態における図2の5−5線に沿って切断した断面図。 他の実施の形態における図2の5−5線に沿って切断した断面図。 従来の電動パワーステアリング装置の要部を拡大した断面図。
以下、いわゆるラックパラレルタイプの電動パワーステアリング装置の一実施の形態を説明する。ラックパラレルタイプとは、操舵補助用のモータの軸線がラック軸に対して平行をなすタイプをいう。
図1に示すように、EPS(電動パワーステアリング装置)10は、図示しない車体に固定されるハウジング11を有している。ハウジング11はその筒状の本体12が車体の左右方向(図1中の左右方向)へ延びるように設けられる。本体12にはラック軸13が挿通されている。ラック軸13の両端にはそれぞれ図示しないボールジョイントを介して図示しない車輪が連結される。ラック軸13が自身の軸方向へ移動することによって車輪の向きが変えられる。
<第1の収容部>
本体12の右端寄りの部位には第1の収容部14が設けられている。第1の収容部14は、本体12の軸線方向(図1中の左右方向)に対して斜めに交わる方向へ延びている。第1の収容部14には、ピニオンシャフト15が挿入された状態で回転可能に支持されている。ピニオンシャフト15の内端部に設けられるピニオン歯は、ラック軸13の右端寄りの一定範囲に形成されるラック歯に噛み合う。また、ピニオンシャフト15のピニオン歯と反対側の外端部は、図示しない複数のシャフトを介してステアリングホイールに連結される。したがって、ステアリング操作に伴いラック軸13は自身の軸線方向に沿って直線運動を行う。ステアリング操作を通じてピニオンシャフト15に作用するトルクは、第1の収容部14に設けられたトルクセンサ16により検出される。
<第2の収容部>
本体12の左端寄りの部位には、第2の収容部17が設けられている。第2の収容部17は、本体12よりも大径の円筒部分の上部が上方へ延びてなる。第2の収容部17の上部右側壁には、モータ18が固定されている。モータ18の出力軸18aは、ラック軸13の軸線に沿って延び、かつ第2の収容部17の側壁を貫通して内部に挿入されている。第2の収容部17の内部には、動力変換機構20が設けられている。動力変換機構20にはモータ18の出力軸18aが連結されている。動力変換機構20は、モータ18の回転運動をラック軸13の直線運動に変換する。すなわち、モータ18の回転力の利用を通じてラック軸13の動作が補助されることにより、ステアリング操作が補助される。モータ18は、図示しない制御装置によりトルクセンサ16の検出結果などに応じて制御される。
ここで、第2の収容部17の構成について詳述する。
図2に示すように、第2の収容部17は、円筒状の支持部21、および段付き円筒状の蓋部材22を有している。支持部21は、本体12の左端に一体形成されている。支持部21の上部は下方へ延設されていて、当該延設された部分の右側壁には孔21aが形成されている。孔21aには、その右方からモータ18の出力軸18aが挿入されている。支持部21の左開口部は蓋部材22により塞がれている。蓋部材22はボルト23により支持部21に固定されている。これら支持部21と蓋部材22との間に形成される空間に動力変換機構20が設けられている。
<動力変換機構>
図2に示すように、動力変換機構20は、ベルト伝動機構30およびボールねじ機構40を有している。ベルト伝動機構30は、モータ18の回転運動をボールねじ機構40に伝達する。ボールねじ機構40は、ベルト伝動機構30を通じて伝達されるモータ18の回転運動をラック軸13の直線運動に変換する。
<ボールねじ機構>
ボールねじ機構40は、ラック軸13に設けられたボールねじ部41、円筒状のボールナット42および多数のボール43を有している。
ボールねじ部41は、ラック軸13の外周面におけるボールねじ溝13aが形成された部分である。ボールねじ部41は、ラック軸13の左端を基準として右端へ向けた一定範囲に設けられている。
ボールナット42は、ボールねじ部41に多数のボール43を介して進退可能に螺合されている。ボールナット42の第1の端部(図2中の左端)の外周面には鍔部42aが、第2の端部(図2中の右端)の内周面には雌ねじ部42bがそれぞれ設けられている。雌ねじ部42bはボールナット42の右端を基準としてその軸線方向に沿った一定範囲にわたって設けられている。雌ねじ部42bの内径D1はボールナット42の雌ねじ部42bを除く他の部分の内径D2よりも大きく設定されている。ボールナット42の回転に伴い、各ボール43はボールナット42とボールねじ部41との間を転動する。
なお、ボールナット42の外周面には、複列の玉軸受44が固定されている。ボールナット42は、玉軸受44を介してハウジング11、正確には蓋部材22の内周面に対して回転可能に支持されている。玉軸受44は内輪44a、外輪44bおよび複数のボール44cを有している。内輪44aはボールナット42の外周面に嵌合されている。外輪44bは、蓋部材22の内周面に嵌合されている。ボール44cはボールナット42の回転に伴い内輪44aと外輪44bとの間において転動する。
<ベルト伝達機構>
ベルト伝動機構30は、原動車である円筒状の駆動プーリ31、従動車である円筒状の従動プーリ32および無端状のベルト33を備えている。
駆動プーリ31はモータ18の出力軸18aに固定されている。従動プーリ32はボールナット42の外周面に固定されている。従動プーリ32および玉軸受44はボールナット42の軸線方向において互いに隣接している。ボールナット42の鍔部42a側から玉軸受44、従動プーリ32の順に並んでいる。ベルト33は、駆動プーリ31と従動プーリ32との間に掛け渡されている。したがって、モータ18の回転は、駆動プーリ31、ベルト33および従動プーリ32を介してボールナット42に伝達される。
なお、駆動プーリ31および従動プーリ32はこれらの外周面に歯が設けられた歯付きプーリ(タイミングプーリ)である。またベルト33はその内周面に歯が設けられた歯付きベルト(タイミングベルト)である。
<玉軸受および従動プーリの固定構造>
つぎに、玉軸受44および従動プーリ32の固定構造を説明する。
図2に示すように、玉軸受44および従動プーリ32はボールナット42の雌ねじ部42bに雄ねじ部材51を締め付けることによりそれぞれボールナット42に固定される。
雄ねじ部材51は中空円筒状の雄ねじ部51aおよび雄ねじ部51aの端部外周に設けられた円環状の鍔部51bを有している。鍔部51bの外径はボールナット42の外径よりも大きく設定されている。すなわち、鍔部51bはボールナット42の軸線方向において従動プーリ32の一側面に対して当接可能である。
玉軸受44の内輪44aおよび従動プーリ32はボールナット42の軸線方向においてその鍔部42aと雄ねじ部材51の鍔部51bとによって挟み込まれている。すなわち、雄ねじ部材51の雄ねじ部51aがボールナット42の雌ねじ部42bに締め付けられることにより、内輪44aは雄ねじ部材51の鍔部51bによって従動プーリ32を介してボールナット42の鍔部42aの右側面に押し付けられる。内輪44aおよび従動プーリ32が2つの鍔部42a,51bによって挟み込まれた状態に保持されることにより、玉軸受44(内輪44a)のボールナット42に対する軸方向における位置が拘束される。
なお、外輪44bと支持部21の開口端面との間には円環状のサポート部材61が、外輪44bと蓋部材22の内底面に形成された環状の段差部22aとの間には円環状のサポート部材62がそれぞれ介在されている。外輪44bがサポート部材61,62を介して支持部21と蓋部材22とによって挟み込まれることにより、玉軸受44(外輪44b)の蓋部材22に対する軸方向位置が拘束される。
<雄ねじ部材の脱落抑制構造>
本例では、雄ねじ部材51がボールナット42から脱落することを抑制するために、つぎの構成を採用している。
図3に示すように、雄ねじ部51aの先端付近には4つの矩形の孔71a〜71dが形成されている。これら各孔71a〜71dは雄ねじ部材51の軸線回りに90°間隔で設けられている。
図4に示すように、ボールナット42の雌ねじ部42bの内底面寄りの部位には、環状の溝72が形成されている。2つの鍔部42a,51bにより玉軸受44および従動プーリ32が挟み込まれる位置まで雄ねじ部51aが雌ねじ部42bにねじ込まれた状態において、溝72および各孔71a〜71dの位置はボールナット42の軸線方向において互いに一致する。当該一致した状態を前提として、雄ねじ部51aの内部には規制部材73が装着されている。
図3に示すように、規制部材73は単一の金属線材が曲折されることにより全体としてC字状をなしている。規制部材73は4つの突部73a〜73dおよび3つの連結部74a〜74cを有している。各突部73a〜73dは雄ねじ部材51の軸線とも一致する規制部材73の軸線側へ向けて開口するU字状を呈している。各連結部74a〜74cは雄ねじ部51aの内周面に沿うように円弧状に湾曲している。
突部73aの第1端は自由端である。突部73aの第2端と突部73bの第1端との間は連結部74aにより連結されている。突部73bの第2端と突部73cの第1端との間は連結部74bにより連結されている。突部73cの第2端と突部73dの第1端との間は連結部74cにより連結されている。突部73dの第2端は自由端である。
規制部材73を雄ねじ部材51の内部に装着する際には、規制部材73を縮径させるように弾性変形させつつ雄ねじ部材51の鍔部51bと反対側の開口部から挿入するとともに、各突部73a〜73dを各孔71a〜71bに内側から挿入する。
図5に示すように、規制部材73が雄ねじ部材51の内部に装着された状態において、各突部73a〜73dの先端は雄ねじ部51aの外周面(正確には各歯先)から若干突出してボールナット42の雌ねじ部42bに挿入されている。各突部73a〜73dが各孔71a〜71dの内側面(雄ねじ部51aの円周方向において対向する2つの内側面)に当接することにより、雄ねじ部材51のボールナット42(雌ねじ部42b)に対する相対回転が規制される。このため、雄ねじ部材51が緩むことが規制される。また、各突部73a〜73dが各孔71a〜71dの内側面(雄ねじ部51aの軸線方向において対向する2つの内側面)に当接することにより、ボールナット42の軸線に沿う方向への移動が規制される。このため、万が一雄ねじ部材51が緩んだとしても、雄ねじ部材51がボールナット42から脱落することが規制される。
<ベルトの脱落抑制構造>
ここで、歯付きプーリは一般に平プーリのようなクラウン(中高)をつけないので、軸の平行度およびベルト固有の特性などに起因してベルトがプーリの軸線方向に沿って移動して片寄ることがある。このため本例では、ベルト33が従動プーリ32から脱落することを抑制するために、つぎの構成を採用している。
図4に示すように、従動プーリ32の軸線方向における両側部には第1および第2のフランジ81,82が設けられている。
第1のフランジ81は従動プーリ32の鍔部51bと反対側の端部に設けられている。第1のフランジ81は円環板状をなしている。第1のフランジ81は従動プーリ32の玉軸受44側の端部に設けられた小径部(段部)32aに嵌め合わせられていている。小径部32aにおける第1のフランジ81との嵌め合い部分をかしめることにより第1のフランジ81は小径部32aに固定される。
第2のフランジ82も円環状をなしている。第2のフランジ82は雄ねじ部材51の鍔部51bに設けられている。雄ねじ部材51の雄ねじ部51aがボールナット42の雌ねじ部42bに締め付けられて2つの鍔部42a,51bによって内輪44aおよび従動プーリ32が挟み込まれた状態において、第2のフランジ82は第1のフランジ81とともにベルト33の脱落防止機能を発揮する。
<玉軸受および従動プーリの固定構造の作用>
つぎに、玉軸受44および従動プーリ32の固定構造の作用を説明する。
玉軸受44および従動プーリ32はそれぞれボールナット42の外周面に装着されている。そしてボールナット42の雌ねじ部42bに雄ねじ部材51の雄ねじ部51aを締め付けることにより従動プーリ32および玉軸受44は2つの鍔部42a,51bによって挟み込まれた状態で固定される。すなわち、ラック軸13の軸線方向において、玉軸受44および従動プーリ32はそれぞれボールナット42の外側で、雄ねじ部51aはボールナット42の内側でボールナット42に対してオーバーラップする。
このため、先の図9に示されるように、従動プーリ104、2つの軸受111,112、ボルト110、ボールナット107および雄ねじ109をそれぞれラックシャフト106の軸線方向に沿って並べて配置する構成を採用する場合と比較して、本例のEPS10はラック軸13の軸線方向においてコンパクトである。これは、玉軸受44、従動プーリ32および雄ねじ部51aをそれぞれボールナット42の範囲内に収めることができるからである。また、先の図9に示されるナットホルダ108のようにボールナット107とこれに対して離れた位置にある従動プーリ104とを連結する部材が不要である。その分、構成も簡単になる。
また、雄ねじ部材51のボールナット42に対する抜け止め手段である規制部材73は、雄ねじ部51aの内部に設けられている。このため、規制部材73をボールナット42の外部に設ける場合に比べて設置スペースの節約が図られる。また規制部材73は金属線材がC字状に塑性変形されてなる。このため、規制部材73はその半径方向において弾性変形させやすい。ひいては、規制部材73を雄ねじ部51aの内部に簡単に装着することが可能となる。
さらに、雄ねじ部材51の鍔部51bにはベルト33の脱落を抑制する第2のフランジ82が一体形成されている。このため、第2のフランジ82を第1のフランジ81と同様に別部材とする場合に比べて部品点数が低減する。また、第2のフランジ82を第1のフランジ81と同様に従動プーリ32に取り付ける作業が不要であるため、組み立て工数も低減する。
<実施の形態の効果>
したがって、本実施の形態によれば、以下の効果を得ることができる。
(1)ボールナット42の鍔部42aとボールナット42の雌ねじ部42bにねじ込まれる雄ねじ部材51の鍔部51bとによって、従動プーリ32および玉軸受44はそれぞれボールナット42の外周面に固定される。従動プーリ32、玉軸受44および雄ねじ部51aがそれぞれボールナット42に対してその軸線方向に重なる(オーバーラップする)ことにより、動力変換機構20、ひいてはEPS10のラック軸13の軸線方向における長さを短くすることが可能である。車両搭載性も向上する。
(2)雄ねじ部材51には従動プーリ32からベルト33が脱落することを抑制する第2のフランジ82が一体形成されている。第2のフランジ82を雄ねじ部材51と別の部材とする場合に比べて部品点数、ひいては組み立て作業の工数が低減する。
(3)雄ねじ部材51がボールナット42から脱落することを抑制する規制部材73を雄ねじ部材51(正確にはその雄ねじ部51a)の内部に設けた。このため、抜け止め機能付きのコンパクトな雄ねじ部材51が得られる。
(4)規制部材73の各突部73a〜73dは雄ねじ部材51の各孔71a〜71dを内側から貫通してボールナット42の雌ねじ部42bに設けられた溝72に挿入されている。各突部73a〜73dがラック軸13の軸線方向において溝72に係合することにより、雄ねじ部材51がボールナット42に対してその軸線方向へ移動することが規制される。このため、雄ねじ部材51がたとえ緩んだとしても、雄ねじ部材51がボールナット42から外れることはない。
(5)規制部材73は金属線材がC字状に塑性変形されてなる。このため、規制部材73はその半径方向において弾性変形させやすくなる。したがって、規制部材73は雄ねじ部材51に対して簡単に着脱することができる。
<他の実施の形態>
なお、前記実施の形態は、つぎのように変更して実施してもよい。
・本例では規制部材73の各突部73a〜73dを雄ねじ部51aの各孔71a〜71dを介して雌ねじ部42bの溝72に係合させることにより雄ねじ部材51の抜け止め効果を得たが、つぎのようにしてもよい。
図6に示すように、雄ねじ部51aには各孔71a〜71dに代えて各溝91a〜91dが設けられている。各溝91a〜91dは雄ねじ部51aの先端周壁において切り欠き状に設けられるとともに雄ねじ部51aの先端側へ向けて開放されている。
図7に示すように、雌ねじ部42bの内周面には環状の溝72に代えて4つの凹部92a〜92dが設けられている。
そして、2つの鍔部42a,51bにより玉軸受44および従動プーリ32が挟み込まれるように、かつボールナット42の軸線方向および半径方向における各凹部92a〜92dと雄ねじ部51aの各孔71a〜71dとの位置が互いに一致するように雄ねじ部51aを雌ねじ部42bにねじ込まれる。この状態で雄ねじ部51aの内側から規制部材73が装着される。規制部材73の各突部73a〜73dは各溝91a〜91dに内側から挿入されて雌ねじ部42bの内周面に設けられた各凹部92a〜92dに係合する。このようにした場合であれ、各突部73a〜73dが各凹部92a〜92dに係合することにより雄ねじ部材51の回転が規制される。したがって、雄ねじ部材51の緩みが抑制される。
・本例では、金属線材がC字状に塑性変形されてなる規制部材73を採用したが、これに代えてC形の止め輪を採用してもよい。
図8に示すように、C形の止め輪93の両端部にはその半径方向における外側へ向けて延びる2つの突部93a,93bが設けられている。また、雄ねじ部51aには2つの突部93a,93bが挿通される単一の孔94が、雌ねじ部42bの内周面には2つの突部93a,93bが挿入される単一の溝95が設けられている。このようにしても、2つの突部93a,93bが孔94を介して溝95に係合することにより雄ねじ部材51の回転および軸線方向への移動がそれぞれ規制される。止め輪93として汎用品を使用することもできる。
・本例では駆動プーリ31および従動プーリ32としてそれぞれ歯付きプーリを、ベルト33として歯付きベルトを採用したが、歯のない平ベルトおよびプーリを採用してもよい。
・ベルト伝動機構30に代えてチェーン伝動機構を採用してもよい。この場合、駆動プーリ31を駆動スプロケットに、従動プーリ32を従動スプロケットに、ベルト33をローラーチェーンにそれぞれ置換する。従動スプロケットは玉軸受44とともに2つの鍔部42a,51bによって挟み込まれることによりボールナット42に固定される。なお、雄ねじ部材51に鍔部51bを設ける必要はない。
・ベルト伝動機構30に代えて歯車機構を採用してもよい。この場合、たとえば駆動プーリ31を駆動平歯車に、従動プーリ32を従動平歯車にそれぞれ置換したうえで、これら駆動平歯車および従動平歯車を互いに噛み合わせる。従動平歯車は玉軸受44とともに2つの鍔部42a,51bによって挟み込まれることによりボールナット42に固定される。なお、雄ねじ部材51に鍔部51bを設ける必要はない。
・本例では、転がり軸受の一種である玉軸受44を介してボールナット42をハウジングの内周面に対して回転可能に支持したが、当該玉軸受44に代えてころ軸受などの他のタイプの転がり軸受を採用してもよい。
・本例では、玉軸受44および従動プーリ32をボールナット42に対して固定する手段として、雄ねじ部材51をボールナット42の雌ねじ部42bに締め付けるようにしたが、このようなねじ締結に代えてつぎのようにしてもよい。すなわち、玉軸受44および従動プーリ32をボールナット42に結合する手段として、接着、圧入あるいはスプライン結合(嵌合)などの固定手段を採用してもよい。2つの鍔部42a,51bによって玉軸受44および従動プーリ32を挟み込むことができればよい。ちなみに、固定手段として、接着または圧入を採用する場合、雄ねじ部51aの外周面および雌ねじ部42bの内周面においてねじ山あるいはねじ溝を形成する必要はない。また、結合手段として、スプライン結合を採用する場合にはボールナット42と従動プーリ32との間の回転方向における相対移動が好適に規制される。
・モータの軸線がラック軸の軸線に対して交わる方向へ延びるいわゆるラッククロス型の電動パワーステアリング装置に具体化してもよい。
・本例では、ステアリング操作に連動して直線運動するラック軸13の動作をモータ18の回転力を利用して補助する電動パワーステアリング装置を例に挙げたが、ステアバイワイヤ(SBW)に適用することもできる。ステアバイワイヤはステアリングホイールと転舵輪との間に機械的な結合を持たないステアリング装置であって、ステアリングホイールの操作を電気信号で転舵アクチュエータに伝える。転舵アクチュエータはモータ、モータの回転運動を転舵軸(ボールねじ軸)の直線運動に変換する動力変換機構20として、たとえばベルト伝動機構30およびボールねじ機構40を備える。
なお、ステアバイワイヤに具体化する場合には、前輪操舵装置としてだけでなく後輪操舵装置あるいは4輪操舵装置(4WS)として具体化することもできる。
<他の技術的思想>
次に、前記実施の形態から把握できる技術的思想を以下に追記する。
(イ)前記原動車は駆動歯車、前記従動車は前記駆動歯車に噛み合う従動歯車であること。このように、モータの動力をボールナットに伝達する伝動機構として歯車伝動機構を採用することもできる。
10…電動パワーステアリング装置、11…ハウジング、13…ラック軸(転舵軸)、18…モータ、20…動力変換機構、30…ベルト伝動機構、31…駆動プーリ(原動車)、32…従動プーリ(従動車)、40…ボールねじ機構、42…ボールナット、42a…鍔部(第1の鍔部)、42b…雌ねじ部(拡径部)、43…ボール、44…玉軸受、51…雄ねじ部材(結合部材)、51a…雄ねじ部(結合部)、51b…鍔部(第2の鍔部)、72,95…溝、73…規制部材、73a〜73d,93a,93b…突部、81…第1のフランジ、82…第2のフランジ、92a〜92d…凹部。

Claims (5)

  1. ハウジング内で直線運動することにより転舵輪を転舵させる転舵軸と、
    前記ハウジングに設けられるモータの駆動に伴い前記転舵軸の軸線に沿って延びる軸線を中心として回転する原動車と、
    前記転舵軸に多数のボールを介して螺合されかつ軸受を介して前記ハウジングの内周面に対して回転可能に支持されるとともに、第1の端部の外周面に第1の鍔部が、第2の端部の内周面に拡径部が設けられているボールナットと、
    前記ボールナットの外周に嵌められて前記原動車の回転を前記ボールナットに伝達する従動車と、
    前記拡径部に挿入された状態で結合される結合部、ならびに前記結合部が前記拡径部に結合されることにより前記軸受および前記従動車を前記転舵軸の軸線方向において前記第1の鍔部との間で挟み込む第2の鍔部を有する中空の結合部材と、を備えてなるステアリング装置。
  2. 請求項1に記載のステアリング装置において、
    前記結合部は雄ねじ部、前記拡径部は雌ねじ部であって、前記雄ねじ部が前記雌ねじ部に締め付けられることによって前記ボールナットと前記結合部材とが互いに結合されるとともに前記第1の鍔部と前記第2の鍔部とによって前記軸受および前記従動車が前記軸線方向において挟み込まれてなるステアリング装置。
  3. 請求項1または請求項2に記載のステアリング装置において、
    前記結合部材の内周面に沿って設けられる規制部材を備え、
    前記規制部材は前記結合部を貫通して前記拡径部の内周面に設けられる溝に対して前記軸線方向において係合する単数または複数の突部を有するステアリング装置。
  4. 請求項1〜請求項3のうちいずれか一項に記載のステアリング装置において、
    前記原動車は駆動プーリ、前記従動車は前記駆動プーリとの間に掛け渡された無端状のベルトを介して前記原動車の回転が伝達される従動プーリであって、前記従動プーリの軸線方向における両側部にはそれぞれ前記ベルトが前記従動プーリから外れることを抑制するための2つのフランジが設けられ、これらフランジの一方は前記第2の鍔部に設けられているステアリング装置。
  5. 請求項1〜請求項4のうちいずれか一項に記載のステアリング装置において、
    前記モータは前記ハウジングの外部に固定されていて、前記モータの軸線は前記転舵軸の軸線に沿って平行に延びているステアリング装置。
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