JP2014234323A - 酸化物焼結体及びその製造方法、並びに酸化物膜 - Google Patents

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Abstract

【課題】In−Si−O系酸化物焼結体において、従来の技術では不可能であった安定放電を可能とする酸化物焼結体を提供する。
【解決手段】酸化インジウムを主成分として、Si及びYが含有されてなり、Siの含有量がSi/In原子数比で0.65以上1.75以下であり、Yの含有量がY/In原子数比で0.001以上0.15以下である酸化物焼結体。
【選択図】 なし

Description

本発明は、主にインジウム、シリコンを含む酸化物からなる酸化物焼結体及びその製造方法、酸化物焼結体を用いて得られる酸化物膜に関する。
酸化物膜は、太陽電池や液晶表示素子、その他各種受光素子の電極、あるいは自動車や建築用の熱線反射膜、帯電防止膜、冷凍ショーケースなどの各種の防曇用の透明発熱体等といった多岐に亘って利用されている。また、反射防止膜、反射増加膜、干渉膜、偏光膜等に代表される光学膜としても応用されている。光学膜としては、様々な特徴を有する酸化物膜を組み合わせた積層体としての応用がなされている。
酸化物多層膜の分光特性は、消衰係数kをほぼゼロとみなすことができる場合、各層の屈折率「n」と膜厚「d」によって決定される。したがって、酸化物膜を用いた積層体の光学設計においては、多層膜を構成する各層の「n」と「d」のデータに基づいた計算によって行われるのが一般的である。また、この場合、高屈折率膜と低屈折率膜を組み合わせることに加えて、さらにそれらの中間の屈折率を有する膜(中間屈折率膜)を追加することによって、より優れた光学特性を有する多層膜が得られる。
一般に、高屈折率膜(n>1.90)としては、TiO(n=2.4)、CeO(n=2.3)、ZrO(n=2.2)、Nb(n=2.1)、Ta(n=2.1)、WO(n=2.0)等が知られている。また、低屈折率膜(n<1.60)としては、SiO(n=1.4)、MgF(n=1.4)等が知られている。また、中間屈折率膜(n=1.60〜1.90)としては、Al(n=1.6)、MgO(n=1.7)、Y(n=1.8)等が知られている。
これらの各種酸化物膜を形成する方法としては、スパッタリング法、蒸着法、イオンプレーティング法、及び溶液塗布法が一般的である。その中でもスパッタリング法は、蒸気圧の低い材料の成膜や精密な膜厚制御を必要とする際に有効な手法であり、操作が非常に簡便であるため、工業的に広範に利用されている。
具体的に、スパッタリング法は、ターゲットが原料として用いられる。この方法は、一般に、約10Pa以下のガス圧のもとで、基板を陽極とし、ターゲットを陰極として、これら陽極と陰極の間にグロー放電を起こしてアルゴンプラズマを発生させる。そして、プラズマ中のアルゴン陽イオンを陰極のターゲットに衝突させ、これによって弾き飛ばされるターゲット成分の粒子を基板上に堆積させることで膜を形成するというものである。
このスパッタリング法は、アルゴンプラズマの発生方法で分類され、高周波プラズマを用いるものは高周波スパッタリング法、直流プラズマを用いるものは直流スパッタリング法という。一般に、直流スパッタリング法は、高周波スパッタリングと比べて成膜速度が速い、電源設備が安価、成膜操作が簡単、等の理由で工業的に広範に利用されている。例えば、透明導電性薄膜の製造においても、直流マグネトロンスパッタ法が広範に採用されている。しかしながら、一般的にスパッタリング法においては、原料のターゲットが絶縁性ターゲットである場合、高周波スパッタリングを用いる必要があり、この方法では高い成膜速度を得ることが不可能となってしまう。
これに対し、上述したAl、MgO、及びY等の一般的な中間屈折率材料は、いずれも導電性に乏しく、そのままスパッタリングターゲットとして用いても安定した放電を実現できない。したがって、スパッタリング法によって中間屈折率膜を得るためには、導電性を有する金属ターゲットを用いて、酸素を多く含む雰囲気で金属粒子と酸素とを反応させながらスパッタリング(反応性スパッタリング法)を行うことが必要である。しかしながら、酸素を多く含む反応性スパッタリング法では、その成膜速度が極めて遅いため、生産性が著しく損なわれる。そしてその結果、得られる中間屈折率膜の単価が高くなる等の工業的な問題があった。
ここで、本発明者らは、中間屈折率膜を得るための材料として、In−Si−O系酸化物焼結体を提案している(特許文献1を参照。)。通常、高濃度Siを含有するIn−Si−O系焼結体は、焼結性及び通常導電性に乏しい。このことから、特許文献1に記載の技術では、これらの課題を解決するために、酸化インジウム粉末とシリコン粉末を原料とし、かつホットプレス法を用いて焼結体を得るようにしている。
しかしながら、この手法では、非酸化物であるSi粉末を原料として用いているため、結果として焼結体にもSi相が残存してしまう。そのため、この焼結体をターゲットとしてスパッタリング法による成膜を行うと、チャンバー内に含まれる酸素によってターゲット表面において非常に高い酸化燃焼熱が発生するSiの酸化反応が起こり、ターゲット表面状態が著しく荒れてしまい、成膜が継続できなくなることがあった。
その他、導電性の高いIn−Si−O系酸化物焼結体を得る手法として、例えば特許文献2では、Si及びSnを添加した酸化インジウム系低抵抗ターゲットが提案されている。しかしながら、このターゲットの組成は、Siの含有量がSi/In原子比で0.26以下と少ないことから、中間屈折率組成とは言えない。
また、特許文献3においては、Si及びSnを添加した酸化インジウム系低抵抗ターゲットが提案されている。この特許文献3の技術では、成膜時の安定性を維持するために1400℃以上の高温焼結によりトルトバイタイト(thortveitite)型構造の珪酸インジウム化合物InSi相を面積比40%以上の割合で析出させている。しかしながら、このターゲットにおいても、特許文献2と同様にSi含有量が少ない。したがって、高濃度のSiが必要とされる場合には、この析出相が40%程度だと絶縁相であるSiO相が多く残存するため、安定成膜は成し得ない。
一方で、高濃度Siを含む焼結体に関して、特許文献4には、SnO及びTiOを添加した組成が提案されている。しかしながら、この手法は、低抵抗化に特化しており、SiOが7〜40wt%と高濃度の場合には、SnOをSnO/(In+SnO)=0.10となるまで添加する必要があるとしている。屈折率が2.0以上であるSnO量及びTiO量が多い場合には、その屈折率が高くなることから目的の中間屈折率膜は得られない。加えて、In及びSi以外の不純物が余剰になってくることで、InSi相の割合が減少し、連続成膜に用いた場合に不安定な化合物相に起因するアーキングの発生によって、安定放電が困難となっている。
以上のように、高濃度のSiを含有した酸化インジウム系材料において、スパッタリング法を用いて安定成膜を実現するための有用なスパッタリングターゲットは存在しない。
特許第4915065号公報 特許第4424889号公報 特開2007−176706号公報 特許第4028269号公報
そこで、本発明は、上述した実情に鑑みてなされたものであり、In−Si−O系酸化物焼結体において、従来の技術では不可能であった安定放電を可能とする酸化物焼結体及びその製造方法、並びにその酸化物焼結体を用いて得られる中間屈折率の酸化物膜を提供することを目的としている。
本発明は、上述した目的を達成するために、以下の特徴を有する。すなわち、本発明に係る酸化物焼結体は、酸化インジウムを主成分として、Si及びYが含有されてなり、Siの含有量がSi/In原子数比で0.65以上1.75以下であり、Yの含有量がY/In原子数比で0.001以上0.15以下であることを特徴とする。
ここで、本発明に係る酸化物焼結体においては、三価以上の金属元素から選ばれた少なくとも1種がさらに含有され、含有される該金属元素の全成分をMとしたとき、その含有量がM/In原子数比で0.001以上0.05以下であるようにしてもよい。
また、本発明に係る酸化物焼結体は、その酸化物焼結体を構成する各化合物相の存在比率及び真密度から算出した密度に対する相対密度が70%以上である。
また、本発明に係る酸化物焼結体は、比抵抗値が1.0×1010Ω・cm以下である。
また、本発明に係る酸化物焼結体は、ドルトバイタイト型構造の珪酸インジウム化合物結晶の割合が70質量%以上である。
また、本発明に係る酸化物焼結体は、CuKα線を使用した焼結体粉末のX線回折及び透過電子顕微鏡を用いた焼結体薄片の電子線回折の2つの検出方法で、Si相が検出されない。
また、本発明に係る酸化物焼結体の製造方法は、上述した特徴を有する酸化物焼結体の製造方法であって、Si原料としてSiO粉末を用い、常圧焼結法により焼結して酸化物焼結体を得ることを特徴とする。
ここで、本発明に係る酸化物焼結体の製造方法においては、ビーズミルを用いて原料粉の粉砕を行うことが好ましい。
また、本発明に係る酸化物焼結体の製造方法においては、前記常圧焼結法における焼結条件が、焼結温度1400℃以上1600℃以下であることが好ましい。
また、本発明に係る酸化物膜は、上述した特徴を有する酸化物焼結体をスパッタリングターゲットとして用いてスパッタリング法により得られる酸化物膜であって、屈折率が1.70〜1.90であることを特徴とする。
本発明に係る酸化物焼結体によれば、スパッタリング法にて安定放電が可能な酸化物膜作製用ターゲットを製造することができる。そして、この酸化物焼結体をスパッタリングターゲットとして用いてスパッタリングすることにより、光学的に有用な中間屈折率膜を安定的に形成することができる。
以下、本発明を適用した具体的な実施の形態(以下、「本実施の形態」という。)について、以下の順序で詳細に説明する。
1.酸化物焼結体
2.酸化物焼結体の製造方法
3.酸化物膜(透明導電膜)
4.実施例
[1.酸化物焼結体]
本実施の形態に係る酸化物焼結体は、インジウム(In)、シリコン(Si)、及びイットリウム(Y)を含んでなる酸化物焼結体である。具体的に、この酸化物焼結体は、酸化インジウムを主成分として、Si及びYが含有されてなり、Siの含有量がSi/In原子数比で0.65以上1.75以下であり、Yの含有量がY/In原子数比で0.001以上0.15以下である。
酸化物焼結体をスパッタリングターゲットとして用いて酸化物膜を形成させるにあたり、そのスパッタリングにおける放電の安定化においては、焼結体の密度だけでなく、焼結体を構成する化合物相の主相、シリコン(Si)及びイットリウム(Y)の含有形態についても著しく依存することが分かっている。
そこで、本実施の形態に係る酸化物焼結体では、酸化インジウムを主成分として、酸化シリコンを添加させてなるが、そのシリコンの含有量としては、Si/In原子数比で0.65以上1.75以下とする。
このSi/In原子数比が0.65より少ないと、酸化物焼結体を用いて得られる酸化物膜が高屈折率化し、一方で、Si/In原子数比が1.75を超えると、その酸化物膜の低屈折率化を招くため、所望の中間屈折率を有する酸化物膜を得ることができない。
また、スパッタリングにおける焼結体の放電を安定させるには、その酸化物焼結体の相対密度を70%以上とする必要があるが、シリコンの含有量がインジウム1モルに対して0.6モル付近を上回ると焼結性は著しく低下する。そのため、特に出発物質としてSiOを使用した場合には、通常の大気圧における焼結は極めて困難になる。そこで、本実施の形態に係る酸化物焼結では、中間屈折率材料であるYをさらに添加することを特徴としている。これにより、70%以上の相対密度を得ることができる。
イットリウムの含有量は、Y/In原子数比で0.001以上0.15以下とする。この原子数比が0.001より少ないと、焼結助剤としての効果が極めて低くなる。一方で、原子数比が0.15を超えると、珪酸インジウム化合物の生成割合が低くなり、導電性に乏しいY相が余剰となるため、スパッタリング時の安定した放電が困難となる。
このように、イットリウムの含有量としては上述した理由により規定されるが、このYの添加により、従来インジウムとシリコンのみでは1.0×1011Ω・cm以上であった酸化物焼結体の比抵抗値を1.0×1010Ω・cm以下まで低抵抗化させることができる。
また、本実施の形態に係る酸化物焼結体では、さらにその比抵抗値を低くして低抵抗化するために、三価以上の金属元素から選ばれた少なくとも1種の金属元素を含有させてもよい。三価以上の金属元素としては、例えば、Ti、Sn、Al、Ga等の元素を挙げることができる。
このとき、上述した三価以上の金属元素(添加元素)の含有量としては、その3価以上の添加元素の全成分をMとしたとき、M/In原子数比で0.001以上0.05以下とすることが好ましい。このM/In原子数比が0.001より少ないと、低抵抗化の効果が十分に得られない。一方で、M/In原子数比が0.05を超えると、珪酸インジウム化合物相の生成割合が低下するだけでなく、屈折率の上昇を招いてしまう可能性があることから有用ではない。
ここで、酸化物焼結体の相対密度を算出する上では、焼結体に存在する化合物によって真密度が大きく異なるため、真密度の定義が重要となる。すなわち、酸化物焼結を構成する各化合物相の存在比率及び真密度から算出した密度に対する相対密度を算出しなければならない。
例えば、SiOを30質量%の割合で含む酸化インジウム系焼結体において、酸化インジウム(7.18g/cm)及び酸化ケイ素(2.32g/cm)が単独で存在している場合には、その真密度が4.41g/cmで計算されるが、実際は主相となる珪酸インジウム化合物相の真密度が6.34g/cmであるため、この珪酸インジウム化合物相の存在比率も加味した真密度を採用しなければ、本来の相対密度と大きな差が生じてしまう。このことから、本実施の形態においては、各化合物相の存在比率及び真密度から算出した密度に対する相対密度を採用する。
さて、スパッタリングにおける焼結体の放電を安定化させるためには、上述したように、その酸化物焼結体を構成する化合物相も大きく影響する。本実施の形態に係る酸化物焼結体は、トルトバイタイト(thortveitite)型構造の珪酸インジウム化合物結晶の割合が70質量%以上で構成されてなる。このように、トルトバイタイト型構造の珪酸インジウム化合物結晶割合が70質量%以上である酸化物焼結体によれば、より効果的に連続放電を阻害するアーキングの発生を抑制することができる。
なお、トルトバイタイト型構造の珪酸インジウム化合物とは、JCPDSカードの31-600、Journal of Solid State Chemistry 2,199-202(1970)に記載されている化合物であり、化学量論組成から組成ずれが多少生じていたり、他のイオンが一部で置換されているものであっても、この結晶構造を維持しているものであれば構わない。
また、本実施の形態に係る酸化物焼結体においては、Siの析出相が存在しない。より具体的に、この酸化物焼結体は、例えば、粉砕して得られた焼結体粉末に対するCuKα線を使用したX線回折による生成相測定や、酸化物焼結体をFIB等によって加工して得られた薄片に対する電子線回折による生成相測定によっても、Si相が検出されない。
このようなSi析出相が存在しない酸化物焼結体とすることで、従来課題となっていたターゲット表面の著しい荒れを起こすことなくスパッタリングを行うことが可能なターゲットとなる。この理由としては、次のように説明できる。すなわち、スパッタリングにおける成膜のメカニズムは、プラズマ中のアルゴンイオンがターゲット表面に衝突してターゲット成分の粒子をはじき飛ばして基板上に堆積させることによる。このとき、Si析出相が存在する酸化物焼結体をターゲットとして成膜すると、焼結体中から供給される酸素や、あるいは酸素が含まれるアルゴンガスを導入した際に含まれることになる酸素と、その焼結体中のSiとがプラズマ加熱によって酸化反応を起こすようになる。この酸化反応では、930kJ/molと非常に高い酸化燃焼熱を発生し、局所的な発熱からターゲット表面の著しい荒れを引き起こしてしまうことが分かっている。これに対して、珪酸インジウム化合物が高い割合で構成され、Si析出相が存在しない酸化物焼結体をターゲットとして用いることによって、ターゲット表面の著しい荒れやアーキングといった異常事態を回避でき、安定した放電が可能となる。
[2.酸化物焼結体の製造方法]
次に、上述した酸化物焼結体の製造方法について説明する。
本実施の形態に係る酸化物焼結体の製造方法は、原料粉末を、純水、有機バインダー、分散剤と混合し、得られるスラリーを乾燥して造粒することで造粒粉を得る第1工程と、得られた造粒粉を加圧成形して成形体を得る第2工程と、得られた成形体を常圧で焼成して焼結体を得る第3工程とを有する。このように、本実施の形態に係る製造方法においては、常圧焼結法によって焼結することで酸化物焼結体を得ることを特徴としており、常圧焼結法による焼結方法であっても、上述したようにスパッタリング時において安定放電が可能な酸化物焼結体を得ることができる。
<第1工程(造粒工程)>
第1工程は、酸化物焼結体を構成する成分の原料粉末を所定の割合で調合して造粒粉を得る造粒工程である。より具体的に、この第1工程では、それぞれの原料粉末を所定の割合で調合し、例えば純水、有機バインダー、分散剤と混合してスラリーを得て、得られたスラリーを乾燥して造粒することによって造粒粉を得る。
本実施の形態に係る酸化物焼結体の製造方法においては、In原料として酸化インジウム粉末を、Si原料として酸化シリコン(SiO)粉末を、Y原料として酸化イットリウム(Y)粉末を、それぞれ原料粉末として用いる。また、必要に応じて追加する三価以上の金属元素についても、その金属元素の酸化物粉末を原料とする。なお、各原料粉末の平均粒径としては、特に限定されるものではないが、粒径が大きすぎると、酸化物焼結体の相対密度が低下するとともに、その焼結体の強度及び導電性も低下する。
このように、この酸化物焼結体の製造方法においては、原料に非酸化物のシリコン粉末(金属シリコン)を使用することなく、酸化シリコン粉末を用いる。これにより、安定的に酸化物焼結体を製造することができ、Si析出相の存在しない焼結体を得ることができる。シリコン粉末を使用すると、大気あるいは酸素雰囲気での常圧焼結においてSiの酸化による局所的な発熱による焼結異常が発生する可能性が生じ、安定した焼結体製造が極めて困難となる。また、酸化物焼結体が得られたとしても、Si析出相が残存するようになり、スパッタリング成膜中にターゲット表面の著しい荒れが生じる可能性がある。
これら各原料粉末は、上述したように、シリコンがSi/In原子数比で0.65以上1.75以下、イットリウムがY/In原子数比で0.001以上0.15以下となるような割合で秤量し、調合する。また、必要に応じて追加添加する三価以上の金属元素の酸化物粉末は、その添加元素の全成分をMとしたとき、M/In原子数比で0.001以上0.05以下の含有量となるように秤量し、調合する。
次に、所定量を秤量した各原料粉末を、純水、有機バインダー、分散剤と混合して、原料粉末濃度が50〜80質量%、好ましくは60質量%となるように混合し、スラリーとする。そして、スラリー中の混合粉末が所定の平均粒径となるように湿式粉砕する。
湿式粉砕によって得る粉末の平均粒径としては、特に限定されないが、1μm以下となるまで粉砕することが好ましい。この平均粒径が1μmを上回ると、焼結体の相対密度が低下するだけでなく、粒子同士の接触面積が低下することから、焼結を阻害し、結果として安定放電に十分な密度及び導電性を有する酸化物焼結体が得られなくなる可能性がある。
また、この湿式粉砕においては、例えば粒径2.0mm以下の硬質ボール(ZrOボール等)が投入されたビーズミルを用いることが好ましい。これにより、各原料粉末の凝集を確実に取り除くことができる。なお、粒径2.0mmを越えるボールを用いたボールミルでは、1.0μm以下の粒径まで粒子を解砕することが困難となり、結果として焼結不足を招くことから、焼結体の密度及び導電性が不十分となる。
この第1工程では、以上のようにして、原料粉末を混合させて得られたスラリーに対して湿式粉砕した後、例えば30分以上撹拌して得られたスラリーを乾燥し、造粒することによって造粒粉を得る。
<第2工程(成形工程)>
第2工程は、上述した第1工程で得られた造粒粉を加圧成形して、成形体を得る成形工程である。
この第2工程では、造粒粉の粒子間の空孔を除去するために、例えば98MPa(1.0ton/cm)以上の圧力で加圧成形を行う。この加圧成形においては、特に限定されないが、高圧力を加えることが可能な冷間静水圧プレス(CIP:Cold Isostatic Press)を用いることが好ましい。
<第3工程(焼成工程)>
第3工程は、上述した第2工程で得られた成形体を、常圧で焼成することにより酸化物焼結体を得る焼成工程である。
この第3工程における焼成処理では、最高焼成温度で、好ましくは1400℃以上1600℃以下、より好ましくは1450℃以上1550℃以下の焼結温度条件で焼結を行う。焼結温度が1400℃未満の場合は、必要な焼結収縮が得られないだけでなく、珪酸インジウム化合物相であるトルトバイタイト型のInSi相の割合が70%未満となり、スパッタリングターゲットとしては不安定な化合物相となってしまう。一方で、焼結温度が1600℃を超える場合は、使用電力量や生産効率を落とすだけでなく、Si原子とAl炉材に使用されているAl原子とが反応し、AlSi13相が生成する可能性があることから好ましくない。
以上のように、本実施の形態に係る酸化物焼結体の製造方法は、Si原料としてSiO粉末を、Y原料としてY粉末を用い、常圧焼結法により焼結することによって、上述した特徴的な酸化物焼結体を得ることができる。そして、得られた酸化物焼結体に対して、円周加工並びに表面研削加工を施して所望とするターゲット形状とし、加工後の酸化物焼結体をバッキングプレートにボンディングすることで、スパッタリングターゲットとすることができる。
このようにして形成されたスパッタリングターゲットによれば、スパッタリング時において、不安定な化合物相に起因するアーキングの発生を防止し、安定的に放電させることができ、光学的に極めて有用な中間屈折率膜を安定的に形成させることができる。
[3.酸化物膜(透明導電膜)]
本実施の形態に係る酸化物膜は、上述した特徴を有する酸化物焼結体をスパッタリングターゲットとして用い、スパッタリング法によりガラス等の基板上に成膜することによって形成することができるものである。
この酸化物膜は、上述したように、酸化インジウムを主成分として、Si及びYが添加されてなり、Siの含有量がSi/In原子数比で0.65以上1.75以下であり、Yの含有量がY/In原子数比で0.001以上0.15以下である酸化物焼結体を原料として成膜されたものであり、その酸化物焼結体の組成が反映された酸化物膜である。したがって、この酸化物膜は、インジウム、シリコン、及びイットリウムを含む酸化物からなり、かつ屈折率が1.70〜1.90の中間屈折率膜であって、導電性を示す透明導電膜であることを特徴としている。
酸化物膜の膜厚としては、特に限定されず、成膜時間やスパッタリング法の種類等によって適宜設定することができる。具体的には、例えば5〜300nm程度とする。
ここで、スパッタリングに際して、そのスパッタリング方法としては、特に限定されるものではなく、DC(直流)スパッタリング法、AC(交流)スパッタリング法、RF(高周波)マグネトロンスパッタリング法、エレクトロンビーム蒸着法、イオンプレーティング法等が挙げられる。その中でも、直流スパッタリング法によりスパッタリングを行うことが好ましい。
基板としては、例えば、ガラス、樹脂(PET、PES等)等を用いることができる。
スパッタリングによる酸化物膜の成膜温度としては、特に限定されないが、例えば50℃以上300℃以下とすることが好ましい。成膜温度が50℃未満であると、結露によって得られる酸化物膜が水分を含んでしまうおそれある。一方で、成膜温度が300℃を超えると、基板が変形したり、得られる酸化物膜に応力が残って割れてしまうおそれがある。
また、スパッタリング時のチャンバー内の圧力としては、特に限定されないが、例えば5×10−5Pa程度にまで真空排気して行うことが好ましい。また、スパッタリング時に投入される電力出力としては、通常10〜1000Wとし、好ましくは100〜300Wとする。
スパッタリング時のキャリアーガスとしては、例えば酸素、ヘリウム、アルゴン、キセノン、クリプトン等のガスが挙げられ、アルゴンと酸素の混合ガスを用いることが好ましい。アルゴンと酸素の混合ガスを使用する場合、アルゴンと酸素の流量比としては、通常、Ar:O=100〜80:0〜20とし、好ましくは100〜90:0〜10とする。
[4.実施例]
以下、本発明についての実施例について、比較例と対比しながら具体的に説明する。なお、本発明は、この実施例によって限定されるものではない。
≪実施例1≫
<酸化物焼結体の作製>
平均粒径が1.0μm以下のIn粉末、SiO粉末、及びY粉末を原料粉末として、Si/In原子数比が1.0、且つ、Y/In原子数比が0.02となる割合で調合し、原料粉末濃度が60質量%となるように純水、有機バインダー、分散剤と混合するとともに、混合タンクにてスラリーを作製した。
次に、粒径が0.5mmである硬質ZrOボールが投入されたビーズミル装置(アシザワ・ファインテック株式会社製、LMZ型)を用いて、原料粉末の粒径(メディアン径)が0.67μmとなるまで湿式粉砕を行った。その後、30分以上混合攪拌して得られたスラリーを、スプレードライヤー装置(大川原化工機株式会社製、ODL−20型)にて噴霧及び乾燥して、「造粒粉」を得た。なお、原料粉末の平均粒径の測定には、レーザ回折式粒度分布測定装置(島津製作所製、SALD−2200)を用いた。
次に、得られた造粒粉を、冷間静水圧プレスで294MPa(3ton/cm)の圧力を掛けて成形し、得られた約200mmφの成形体を、大気圧焼成炉にて最高焼成温度を1500℃として20時間焼成して、酸化物焼結体を得た。
ここで、得られた酸化物焼結体の端材を粉砕し、CuKα線を使用した粉末X線回折測定による生成相の同定を行ったところ、トルトバイタイト型構造であるInSi相のピークのみが検出され、SiO相単体のピークは検出されなかった。僅かにIn相のピークも検出されたが、リートベルト解析によって化合物相の重量割合を解析したところ、InSi相の割合は98.7質量%であり、残りがIn相であった。
また、得られた酸化物焼結体の端材をFIB加工により薄片化し、エネルギー分散型蛍光X線分析装置(EDX)搭載の透過型電子顕微鏡(TEM)で観察した。その結果、酸化物焼結体は、電子線回折からも、Si相が単体で存在していないことが確認された。
次に、得られた酸化物焼結体の密度をアルキメデス法により測定し、トルトバイタイト型構造であるInSi結晶の密度である6.34g/cm及びビックスバイト型構造であるIn結晶の密度である7.18g/cmと、上述した各相の存在比率から算出した密度6.35g/cmに対する相対密度を算出したところ、75.6%であった。
また、得られた酸化物焼結体の比抵抗値を四端針法により測定した結果、1.3×10Ω・cmであった。
<透明導電膜の作製>
続いて、この実施例1にて得られた酸化物焼結体を、直径が152.4mm(6インチ)で、厚みが5mmとなるように加工し、無酸素銅製のバッキングプレートに金属インジウムを用いてボンディングし、スパッタリングターゲットを得た。
次に、得られたスパッタリングターゲットを用いて、直流スパッタリングによる成膜を行った。直流マグネトロンスパッタリング装置(トッキ製、SPF−530K)の非磁性体ターゲット用カソードに得られたスパッタリングターゲットを取り付け、一方で、成膜用の基板には、無アルカリのガラス基板(コーニング♯7059、厚み(t):1.1mm)を用いて、ターゲット−基板間距離を60mmに固定した。
そして、5×10−5Pa以下まで真空排気を行った後、純Arガス及び純Ar+OガスをO濃度が1.0%となるよう導入し、ガス圧を0.6Paとして、直流電力200Wを印加して直流プラズマを発生させ、プリスパッタリングを実施した。
十分なプリスパッタリングを行った後、スパッタリングターゲットの中心(非エロージョン部)の直上に静止させて基板を配置し、非加熱でスパッタリングを実施して膜厚200nmの透明導電膜を形成した。
その結果、スパッタリングターゲットにはクラックが発生しておらず、成膜初期からの10分間でターゲット表面の著しい荒れや異常放電等も発生しなかった。また、得られた酸化物膜の屈折率をエリプソメーターで測定したところ、1.81であった。
このように、実施例1にて得られた酸化物焼結体は、中間屈折率膜を安定的に得るスパッタリングターゲットとして有用であることが確認された。
≪比較例1≫
<酸化物焼結体の作製>
Si/In原子数比が0.5となるようにしたこと以外は、実施例1と同様にして酸化物焼結体を作製し、InSi相の存在比率、Si相の有無、相対密度、比抵抗値を測定した。
得られた酸化物焼結体の端材に対して粉末X線回折測定による生成相の同定を行ったところ、トルトバイタイト型構造であるInSi相のピークは検出されたものの、リートベルト解析によって化合物相の重量割合を解析した結果、InSi相の割合は67.3質量%と極めて低く、残りがIn相であった。
得られた酸化物焼結体の薄片をEDX搭載のTEMで観察したところ、電子線回折からSi相は単体で存在していないことが確認された。
得られた酸化物焼結体の密度をアルキメデス法により測定し、上述した各相の存在比率から算出した密度6.61g/cmに対する相対密度を算出したところ、78.7%であった。
また、得られた酸化物焼結体の比抵抗値を四端針法により測定した結果、9.2×1010Ω・cmとなり1.0×1010Ω・cmを超える極めて高い抵抗を示した。
<透明導電膜の作製>
続いて、実施例1と同様にして、得られた酸化物焼結体を加工し、無酸素銅製のバッキングプレートに金属インジウムを用いてボンディングしてスパッタリングターゲットを作製した。そして、そのスパッタリングターゲットを用いて透明導電膜を形成した。
その結果、成膜初期からの10分間でターゲット表面の著しい荒れは発生しなかったものの、異常放電が生じてしまった。また、得られた酸化物膜の屈折率を調査したところ、1.92となり1.90を超える高屈折率膜となってしまった。
≪実施例2、実施例3≫
<酸化物焼結体の作製>
Si/In原子数比が、それぞれ、0.65(実施例2)、1.75(実施例3)となるようにしたこと以外は、実施例1と同様にして酸化物焼結体を作製し、InSi相の存在比率、Si相の有無、相対密度、比抵抗値を測定した。
得られた酸化物焼結体の端材に対して粉末X線回折測定による生成相の同定を行ったところ、実施例2、実施例3のいずれの酸化物焼結体においても、トルトバイタイト型構造であるInSi相のピークのみが検出され、SiO相単体のピークは検出されなかった。In相のピークも検出されたが、リートベルト解析によって化合物相の重量割合を解析したところ、実施例2の酸化物焼結体ではInSi相の割合が79.3質量%であり、実施例3の酸化物焼結体ではInSi相の割合が78.4質量%であって、70質量%を超える高い割合でInSi相が存在し、残りがそれぞれIn相であった。
また、得られた酸化物焼結体の薄片をEDX搭載のTEMで観察したところ、実施例2、実施例3のいずれの酸化物焼結体においても、電子線回折からもSi相が単体で存在していないことが確認された。
また、得られた酸化物焼結体の密度をアルキメデス法により測定し、上述した各相の存在比率から算出した密度6.51g/cm(実施例2)、6.52g/cm(実施例3)に対する相対密度を算出したところ、実施例2の酸化物焼結体は78.5%、実施例3の酸化物焼結体は71.1%であり、実施例2、実施例3のいずれにおいても、70%を超える高い密度であった。
また、得られた酸化物焼結体の比抵抗値を四端針法により測定した結果、実施例2の酸化物焼結体は9.8×10Ω・cmであり、実施例3の酸化物焼結体は6.4×10Ω・cmであった。
<透明導電膜の作製>
続いて、実施例1と同様にして、得られた酸化物焼結体を加工し、無酸素銅製のバッキングプレートに金属インジウムを用いてボンディングしてスパッタリングターゲットを作製した。そして、そのスパッタリングターゲットを用いて透明導電膜を形成した。
その結果、実施例2、実施例3のいずれにおいても、スパッタリングターゲットにはクラックが発生しておらず、成膜初期からの10分間でターゲット表面の著しい荒れや異常放電等も発生しなかった。また、得られた酸化物膜の屈折率を調査したところ、実施例2の酸化物膜では1.88であり、実施例3の酸化物膜では1.73であった。
このように、実施例2、実施例3にて得られた酸化物焼結体は、中間屈折率膜を安定的に得るスパッタリングターゲットとして有用であることが確認された。
≪比較例2≫
<酸化物焼結体の作製>
Si/In原子数比が2.0となるようにしたこと以外は、実施例1と同様にして酸化物焼結体を作製し、InSi相の存在比率、Si相の有無、相対密度、比抵抗値を測定した。
得られた酸化物焼結体の端材に対して粉末X線回折測定による生成相の同定を行ったところ、トルトバイタイト型構造であるInSi相のピークは検出されたものの、SiO相単体のピークも検出された。また、リートベルト解析によって化合物相の重量割合を解析した結果、InSi相の割合は67.3質量%と極めて低く、残りがIn相及びSiO相であった。
得られた酸化物焼結体の薄片をEDX搭載のTEMで観察したところ、電子線回折からSi相は単体で存在していないことが確認された。
得られた酸化物焼結体の密度をアルキメデス法により測定し、上述した各相の存在比率から算出した密度6.49g/cmに対する相対密度を算出したところ、67.8%であり70%を下回る低い密度のものであった。
得られた酸化物焼結体の比抵抗値を四端針法により測定した結果、2.3×1010Ω・cmとなり1.0×1010Ω・cmを超える極めて高い抵抗を示した。
<透明導電膜の作製>
続いて、実施例1と同様にして、得られた酸化物焼結体を加工し、無酸素銅製のバッキングプレートに金属インジウムを用いてボンディングしてスパッタリングターゲットを作製した。そして、そのスパッタリングターゲットを用いて透明導電膜を形成した。
その結果、成膜初期からの10分間でターゲット表面の著しい荒れは発生しなかったものの、異常放電が生じてしまった。また、得られた酸化物膜の屈折率を調査したところ、1.68となり1.70未満の低屈折率膜となってしまった。
≪実施例4≫
<酸化物焼結体の作製>
Y/In原子数比が0.15となるようにしたこと以外は、実施例1と同様にして酸化物焼結体を作製し、InSi相の存在比率、Si相の有無、相対密度、比抵抗値を測定した。
得られた酸化物焼結体の端材に対して粉末X線回折測定による生成相の同定を行ったところ、トルトバイタイト型構造であるInSi相のピークのみが検出され、SiO相単体のピークは検出されなかった。In相のピークも検出されたが、リートベルト解析によって化合物相の重量割合を解析したところ、InSi相の割合は77.6質量%であり70質量%を超える高い割合で存在し、残りがIn相であった。
また、得られた酸化物焼結体の薄片をEDX搭載のTEMで観察したところ、電子線回折からもSi相が単体で存在していないことが確認された。
また、得られた酸化物焼結体の密度をアルキメデス法により測定し、上述した各相の存在比率から算出した密度6.53g/cmに対する相対密度を算出したところ、76.8%であり70%を超える高い密度であった。
また、得られた酸化物焼結体の比抵抗値を四端針法により測定した結果、8.0×10Ω・cmであった。
<透明導電膜の作製>
続いて、実施例1と同様にして、得られた酸化物焼結体を加工し、無酸素銅製のバッキングプレートに金属インジウムを用いてボンディングしてスパッタリングターゲットを作製した。そして、そのスパッタリングターゲットを用いて透明導電膜を形成した。
その結果、スパッタリングターゲットにはクラックが発生しておらず、成膜初期からの10分間でターゲット表面の著しい荒れや異常放電等も発生しなかった。また、得られた酸化物膜の屈折率を調査したところ、1.80であった。
このように、実施例4にて得られた酸化物焼結体は、中間屈折率膜を安定的に得るスパッタリングターゲットとして有用であることが確認された。
≪比較例3、比較例4≫
<酸化物焼結体の作製>
Y/In原子数比が、それぞれ、0.2(比較例3)、0(比較例4)となるようにしたこと以外は、実施例1と同様にして酸化物焼結体を作製し、InSi相の存在比率、Si相の有無、相対密度、比抵抗値を測定した。
得られた酸化物焼結体の端材に対して粉末X線回折測定による生成相の同定を行ったところ、トルトバイタイト型構造であるInSi相のピークは検出されたものの、リートベルト解析によって化合物相の重量割合を解析した結果、InSi相の割合は、比較例3の酸化物焼結体では65.1質量%と極めて低かった。一方、比較例4の酸化物焼結体ではInSi相の割合が92.5質量%であった。なお、残りはそれぞれIn相であった。
得られた酸化物焼結体の薄片をEDX搭載のTEMで観察したところ、比較例3、比較例4のいずれの酸化物焼結体においても、電子線回折からSi相は単体で存在していないことが確認された。
得られた酸化物焼結体の密度をアルキメデス法により測定し、上述した各相の存在比率から算出した密度6.63g/cm(比較例3)、6.40g/cm(比較例4)に対する相対密度を算出したところ、比較例3の酸化物焼結体は76.2%であった。一方、比較例4の酸化物焼結体は、66.2%であり70%を下回る低い密度であった。
得られた酸化物焼結体の比抵抗値を四端針法により測定した結果、比較例3の酸化物焼結体は2.7×1010Ω・cmであり、比較例4の酸化物焼結体は8.2×1011Ω・cmであり、比較例3、比較例4のいずれの酸化物焼結体においても1.0×1010Ω・cmを超える極めて高い抵抗を示した。
<透明導電膜の作製>
続いて、実施例1と同様にして、得られた酸化物焼結体を加工し、無酸素銅製のバッキングプレートに金属インジウムを用いてボンディングしてスパッタリングターゲットを作製した。そして、そのスパッタリングターゲットを用いて透明導電膜を形成した。
その結果、得られた酸化物膜の屈折率は、比較例3の酸化物膜では1.77であり、比較例4の酸化物膜では1.80であったものの、比較例3、比較例4のいずれにおいても成膜初期からの10分間で異常放電が生じてしまった。
≪実施例5、実施例6≫
<酸化物焼結体の作製>
実施例5では、さらにTi(成分Mとする)をM/In原子数比で0.03となるように含有させたこと以外は、実施例1と同様にして酸化物焼結体を作製した。また、実施例6では、さらにSn(成分Mとする)をM/In原子数比で0.02となるように含有させたこと以外は、実施例1と同様にして酸化物焼結体を作製した。そして、各酸化物焼結体についてInSi相の存在比率、Si相の有無、相対密度、比抵抗値を測定した。
得られた酸化物焼結体の端材に対して粉末X線回折測定による生成相の同定を行ったところ、実施例5、実施例6のいずれの酸化物焼結体においても、トルトバイタイト型構造であるInSi相のピークのみが検出され、SiO相単体のピークは検出されなかった。In相のピークも検出されたが、リートベルト解析によって化合物相の重量割合を解析したところ、実施例5、実施例6のいずれの酸化物焼結体についても、InSi相が70質量%を超える高い割合で存在し、残りがIn相であった。
また、得られた酸化物焼結体の薄片をEDX搭載のTEMで観察したところ、実施例5、実施例6のいずれの酸化物焼結体においても、電子線回折からもSi相が単体で存在していないことが確認された。
また、得られた酸化物焼結体の密度をアルキメデス法により測定し、上述した各相の存在比率から算出した密度から相対密度を算出したところ、実施例5の酸化物焼結体では76.1%であり、実施例6の酸化物焼結体では78.6%であり、それぞれ高い密度であった。
また、得られた酸化物焼結体の比抵抗値を四端針法により測定した結果、実施例5の酸化物焼結体は1.1×10Ω・cmであり、実施例6の酸化物焼結体は2.6×10Ω・cmであった。
<透明導電膜の作製>
続いて、実施例1と同様にして、得られた酸化物焼結体を加工し、無酸素銅製のバッキングプレートに金属インジウムを用いてボンディングしてスパッタリングターゲットを作製した。そして、そのスパッタリングターゲットを用いて透明導電膜を形成した。
その結果、実施例5、実施例6のいずれにおいても、スパッタリングターゲットにはクラックが発生しておらず、成膜初期からの10分間でターゲット表面の著しい荒れや異常放電等も発生しなかった。また、得られた酸化物膜の屈折率を調査したところ、実施例5の酸化物膜では1.87であり、実施例6の酸化物膜では1.84であった。
このように、実施例5、実施例6にて得られた酸化物焼結体は、中間屈折率膜を安定的に得るスパッタリングターゲットとして有用であることが確認された。
≪比較例5≫
<酸化物焼結体の作製>
原料粉末をボールミル装置(愛知電機株式会社製、ポットミル回転台 AN−3S)を用いて湿式粉砕したこと以外は、実施例1と同様にして酸化物焼結体を作製した。具体的には、原料粉末を含むスラリーとボールを入れて密封した樹脂製ポットを回転台に載せて回転させることで原料粉末を湿式粉砕した。なお、湿式粉砕後の原料粉末の粒径(メディアン径)は0.93μmであった。そして、実施例1と同様にして、作製した酸化物焼結体について、InSi相の存在比率、Si相の有無、相対密度、比抵抗値を測定した。
得られた酸化物焼結体の端材に対して粉末X線回折測定による生成相の同定を行ったところ、トルトバイタイト型構造であるInSi相のピークは検出されたものの、リートベルト解析によって化合物相の重量割合を解析した結果、InSi相の割合は70質量%程度であり、残りがIn相であった。
得られた酸化物焼結体の薄片をEDX搭載のTEMで観察したところ、電子線回折からSi相は単体で存在していないことが確認された。
得られた酸化物焼結体の密度をアルキメデス法により測定し、上述した各相の存在比率から算出した密度6.59g/cmに対する相対密度を算出したところ、63.4%であり70%を下回る低い密度であった。
得られた酸化物焼結体の比抵抗値を四端針法により測定した結果、3.0×1010Ω・cmとなり1.0×1010Ω・cmを超える極めて高い抵抗を示した。
<透明導電膜の作製>
続いて、実施例1と同様にして、得られた酸化物焼結体を加工し、無酸素銅製のバッキングプレートに金属インジウムを用いてボンディングしてスパッタリングターゲットを作製した。そして、そのスパッタリングターゲットを用いて透明導電膜を形成した。
その結果、得られた酸化物膜の屈折率は1.80であったものの、成膜初期からの10分間で異常放電が生じてしまった。
≪比較例6≫
<酸化物焼結体の作製>
大気圧焼成炉にて最高焼成温度を1300℃として焼成したこと以外は、実施例1と同様にして酸化物焼結体を作製し、InSi相の存在比率、Si相の有無、相対密度、比抵抗値を測定した。
得られた酸化物焼結体の端材に対して粉末X線回折測定による生成相の同定を行ったところ、トルトバイタイト型構造であるInSi相のピークは検出されたものの、SiO相単体のピークも検出された。また、リートベルト解析によって化合物相の重量割合を解析した結果、InSi相の割合は22.2質量%と極めて低く、残りはIn相及びSiO相であった。
得られた酸化物焼結体の薄片をEDX搭載のTEMで観察したところ、電子線回折からSi相は単体で存在していないことが確認された。
得られた酸化物焼結体の密度をアルキメデス法により測定し、上述した各相の存在比率から算出した密度6.17g/cmに対する相対密度を算出したところ、68.0%であり70%を下回る低い密度のものであった。
得られた酸化物焼結体の比抵抗値を四端針法により測定した結果、5.5×10−1Ω・cmと極めて低い抵抗を示した。
<透明導電膜の作製>
続いて、実施例1と同様にして、得られた酸化物焼結体を加工し、無酸素銅製のバッキングプレートに金属インジウムを用いてボンディングしてスパッタリングターゲットを作製した。そして、そのスパッタリングターゲットを用いて透明導電膜を形成した。
その結果、得られた酸化物膜の屈折率は1.83であったものの、異常放電を完全に抑止することはできなかった。これは、InSi相の割合が少なく、焼結体が複相で構成されていることにより放電の安定化が不十分となったと考えられる。
≪実施例7、実施例8≫
<酸化物焼結体の作製>
大気圧焼成炉における焼成に際して、最高焼成温度を、それぞれ、1450℃(実施例7)、1550℃(実施例8)として焼成したこと以外は、実施例1と同様にして酸化物焼結体を作製した。そして、実施例1と同様にして、作製した各酸化物焼結体について、InSi相の存在比率、Si相の有無、相対密度、比抵抗値を測定した。
得られた酸化物焼結体の端材に対して粉末X線回折測定による生成相の同定を行ったところ、実施例7、実施例8のいずれの酸化物焼結体においても、トルトバイタイト型構造であるInSi相のピークのみが検出され、SiO相単体のピークは検出されなかった。僅かにIn相のピークも検出されたが、リートベルト解析によって化合物相の重量割合を解析したところ、実施例7の酸化物焼結体ではInSi相の割合が99.3質量%であり、実施例8の酸化物焼結体ではInSi相の割合が99.5質量%であり、残りがそれぞれIn相であった。
また、得られた酸化物焼結体の薄片をEDX搭載のTEMで観察したところ、実施例7、実施例8のいずれの酸化物焼結体においても、電子線回折からもSi相が単体で存在していないことが確認された。
また、得られた酸化物焼結体の密度をアルキメデス法により測定し、上述した各相の存在比率から算出した密度6.35g/cm(実施例7)、6.34g/cm(実施例8)に対する相対密度を算出したところ、実施例7の酸化物焼結体では72.8%であり、実施例8の酸化物焼結体では79.5%であった。
また、得られた酸化物焼結体の比抵抗値を四端針法により測定した結果、実施例7の酸化物焼結体では2.7×10Ω・cmであり、実施例8の酸化物焼結体では1.1×10Ω・cmであった。
<透明導電膜の作製>
続いて、実施例1と同様にして、得られた酸化物焼結体を加工し、無酸素銅製のバッキングプレートに金属インジウムを用いてボンディングしてスパッタリングターゲットを作製した。そして、そのスパッタリングターゲットを用いて透明導電膜を形成した。
その結果、実施例7、実施例8のいずれにおいても、スパッタリングターゲットにはクラックが発生しておらず、成膜初期からの10分間でターゲット表面の著しい荒れや異常放電等も発生しなかった。また、得られた酸化物膜の屈折率を調査したところ、実施例7、実施例8のいずれの酸化物膜においても、1.81であった。
このように、実施例7、実施例8にて得られた酸化物焼結体は、中間屈折率膜を安定的に得るスパッタリングターゲットとして有用であることが確認された。
≪比較例7≫
<酸化物焼結体の作製>
原料として、金属シリコン粉末を用いたこと以外は、実施例1と同様にして酸化物焼結体を作製し、InSi相の存在比率、Si相の有無、相対密度、比抵抗値を測定した。
しかしながら、この比較例7では、酸化物焼結体の製造工程にて10枚製造したところ、7枚で局所的な発熱による焼結異常が生じたため、3枚の酸化物焼結体は得られたものの、安定した製造が困難であった。
また、その得られた酸化物焼結体は、粉末X線回折測定による生成相の同定を行ったところ、トルトバイタイト型構造であるInSi相のピークは検出されたものの、SiO相単体のピークも検出された。また、EDX搭載のTEMで観察した結果、電子線回折からSi相が単体で存在していることが確認された。なお、リートベルト解析によって化合物相の重量割合を解析した結果、InSi相の割合は76.6質量%であった。
得られた酸化物焼結体の密度をアルキメデス法により測定し、上述した各相の存在比率から算出した密度6.17g/cmに対する相対密度を算出したところ、63.4%と非常に低密度のものであった。
得られた酸化物焼結体の比抵抗値を四端針法により測定した結果、5.1×10−1Ω・cmと極めて低い抵抗を示した。
<透明導電膜の作製>
続いて、実施例1と同様にして、得られた酸化物焼結体を加工し、無酸素銅製のバッキングプレートに金属インジウムを用いてボンディングしてスパッタリングターゲットを作製し、そのスパッタリングターゲットを用いて透明導電膜の形成を試みた。
しかしながら、成膜開始直後にターゲット表面の著しい荒れが生じ、異常放電が頻発したため、成膜を中止した。
以下の表1に、上述した実施例1〜8、比較例1〜7における酸化物焼結体の構成成分と製造条件及び製造工程での局所的な発熱による焼結異常の有無、並びに、その酸化物焼結体をターゲットとしてスパッタリング成膜したときのターゲット表面の荒れの有無、成膜時の異常放電の有無、及びその酸化物膜(透明導電膜)の屈折率についてまとめて示す。
Figure 2014234323

Claims (10)

  1. 酸化インジウムを主成分として、Si及びYが含有されてなり、Siの含有量がSi/In原子数比で0.65以上1.75以下であり、Yの含有量がY/In原子数比で0.001以上0.15以下であることを特徴とする酸化物焼結体。
  2. 三価以上の金属元素から選ばれた少なくとも1種がさらに含有され、含有される該金属元素の全成分をMとしたとき、その含有量がM/In原子数比で0.001以上0.05以下であることを特徴とする請求項1に記載の酸化物焼結体。
  3. 当該酸化物焼結体を構成する各化合物相の存在比率及び真密度から算出した密度に対する相対密度が70%以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載の酸化物焼結体。
  4. 比抵抗値が1.0×1010Ω・cm以下であることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の酸化物焼結体。
  5. ドルトバイタイト型構造の珪酸インジウム化合物結晶の割合が70質量%以上であることを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載の酸化物焼結体。
  6. CuKα線を使用した焼結体粉末のX線回折及び透過電子顕微鏡を用いた焼結体薄片の電子線回折の2つの検出方法で、Si相が検出されないことを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項に記載の酸化物焼結体。
  7. 前記請求項1乃至6の何れかに記載の酸化物焼結体の製造方法であって、
    Si原料としてSiO粉末を用い、常圧焼結法により焼結して酸化物焼結体を得ることを特徴とする酸化物焼結体の製造方法。
  8. ビーズミルを用いて原料粉の粉砕を行うことを特徴とする請求項7に記載の酸化物焼結体の製造方法。
  9. 前記常圧焼結法における焼結条件が、焼結温度1400℃以上1600℃以下であることを特徴とする請求項7又は8に記載の酸化物焼結体の製造方法。
  10. 前記請求項1乃至6の何れかに記載の酸化物焼結体をスパッタリングターゲットとして用いてスパッタリング法により得られる酸化物膜であって、
    屈折率が1.70〜1.90であることを特徴とする酸化物膜。
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