JP2014234011A - 車両のブレーキ装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】 マスタシリンダから独立して設けられる増圧機構を液圧制御弁機構に組み付けることができる車両のブレーキ装置を提供すること。
【解決手段】 車両のブレーキ装置構成する液圧制御弁装置50は、複数の流通路及び複数の電磁弁を一体的に収容するハウジングHSGを備えている。このハウジングHSG内には、マスタシリンダから独立させた増圧機構80が一体的に収容される。増圧機構80は、その長手方向軸の軸線方向がハウジングHSGの厚み方向に一致する電磁弁の弁開閉方向と交点を有するように一体的に収容される。これにより、増圧機構80の長手方向軸がハウジングHSGの厚み方向と一致することなく増圧機構80を収容することができるため、増圧機構80を収容した液圧制御弁装置50のハウジングHSGを車両に搭載する場合であっても、従来に比してより大きなスペースを確保する必要がない。
【選択図】 図2

Description

本発明は、車両のブレーキ装置に関する。
近年、ドライバによるブレーキペダルの操作に応じて液圧を発生するマスタシリンダと、加圧ポンプの駆動により液圧を発生させる動力式液圧源と、電気信号によって制御される複数の電磁弁を有して前記マスタシリンダ又は前記動力式液圧源から出力された液圧を制御する液圧制御弁機構と、前記液圧制御弁機構を介して前記マスタシリンダ又は前記動力式液圧源から出力された液圧が伝達されて車輪に制動力を与えるホイールシリンダと、前記液圧制御弁機構を構成する各電磁弁の作動を制御する制御手段とを備えた車両のブレーキ装置が開発されるようになった。
この種の車両のブレーキ装置として、従来から、例えば、下記特許文献1に示された液圧ブレーキ装置は知られている。この従来の液圧ブレーキ装置では、主通路に前後左右のブレーキシリンダが接続されるとともに、マスタシリンダ、マスタシリンダに一体的に設けられた液圧ブースタ及び動力液圧源が互いに並列に接続されるようになっている。そして、この従来の油圧ブレーキ装置では、ブースタ連通制御弁、マスタ連通制御弁、リニア制御弁装置、分離弁、及び個別液圧制御弁装置の制御により、ブレーキシリンダの各々と3つの液圧源のうちの1つ以上とを選択的に連通させるようになっている。
特開2006−123889号公報
ところで、車両に搭載する際の要求や機能上の要求等によっては、液圧ブースタ、すなわち、運転者によるブレーキペダルの踏力操作によって発生する液圧に対して所定の比となる液圧を発生させる増圧機構(レギュレータ)が、マスタシリンダから独立して液圧制御弁機構に対して一体的に組み付けられる場合が想定される。この場合、体格が大型化する可能性のある増圧機構が液圧制御弁機構に組み付けられた場合、新たに、増圧機構を考慮した搭載位置を検討する必要があり、又、搭載スペースを確保する必要がある。又、増圧機構の重量が大きい場合には、液圧制御弁機構に作用する慣性力が大きくなり、その結果、例えば、車両走行に伴って発生する振動が液圧制御弁機構に接続される各配管等に対して無用な機械的負荷を与える可能性がある。従って、増圧機構をマスタシリンダから独立させて液圧制御弁機構に組み付ける場合には、その組み付け態様を十分に考慮する必要がある。
本発明は、上記した問題に対処するためになされたものであり、その目的の一つは、マスタシリンダから独立して設けられる増圧機構を液圧制御弁機構に組み付けることができる車両のブレーキ装置を提供することにある。
上記目的を達成するための本発明による車両のブレーキ装置は、マスタシリンダと、動力式液圧源と、増圧機構と、液圧制御弁機構と、ホイールシリンダと、制御手段とを備えている。
前記マスタシリンダは、ドライバによるブレーキペダルの操作に応じて液圧を発生させる。前記動力式液圧源は、加圧ポンプの駆動により液圧を発生させる。前記増圧機構は、前記マスタシリンダが発生した液圧に対して所定の比となる液圧を発生させる。前記液圧制御弁機構は、前記マスタシリンダから離間して設けられていて、前記マスタシリンダ、前記動力式液圧源及び前記増圧機構のうちの少なくとも一つが発生した液圧を伝達する作動液を流通させる複数の流通路及び電気信号によって制御される複数の電磁弁を有し、前記複数の電磁弁の茶道により前記複数の流通路を流通する作動液の液圧を調圧する。前記ホイールシリンダは、前記液圧制御弁機構を介して液圧が伝達されて車輪に制動力を付与する。前記制御手段は、前記液圧制御弁機構における前記複数の電磁弁の作動を制御する。
この場合、前記増圧機構は、前記マスタシリンダ及び前記動力式液圧源に接続されており、前記ドライバによる前記ブレーキペダルの操作に伴って前記マスタシリンダから出力される液圧により機械的に作動し、少なくとも、前記動力式液圧源河発生した液圧を用いて前記マスタシリンダからの液圧に対して前記所定の比となる液圧を発生させることができる。
本発明による車両のブレーキ装置の特徴は、前記液圧制御弁機構が前記複数の流通路及び前記複数の電磁弁を収容するハウジングを有しており、前記増圧機構を前記ハウジング内に一体的に収容したことにある。
この場合、より具体的に、前記液圧制御弁機構の前記ハウジングは、前記複数の流通路を形成して収容するとともに前記形成された複数の流通路に対して弁開閉方向を一方向に揃えた状態により前記複数の電磁弁を収容しており、前記増圧機構の長手方向軸の軸線方向が前記収容された前記複数の電磁弁における前記一方向と交わるように、前記増圧機構を前記ハウジング内に一体的に収容することができる。又、この場合、前記増圧機構を、前記複数の電磁弁における前記一方向と交点を有する平面上に前記長手方向軸が存在するように、前記ハウジング内に一体的に収容することができる。そして、この場合、前記複数の電磁弁における前記一方向と交点を有する平面は、前記一方向と直交する平面とすることができる。
これらによれば、マスタシリンダから独立させた増圧機構を、液圧制御弁機構のハウジング内に収容することができる。この場合、増圧機構の長手方向軸の軸線方向と電磁弁の弁開閉方向と一致する一方向とが交わる、言い換えれば、増圧機構の長手方向軸の軸線方向と一方向とが平行になることを防止することができる。従って、一方向をハウジングの厚み方向と一致させることにより、増圧機構を収容した場合であってもハウジングの厚み方向の変化を適切に抑制することができる。これにより、増圧機構を収容した液圧制御弁機構のハウジングを車両に搭載する場合であっても、従来に比してより大きなスペースを確保する必要がない。その結果、例えば、マスタシリンダから独立させた増圧機構を液圧制御弁機構のハウジングに収容した車両のブレーキ装置を異なる車種間で容易に展開することができる。
又、これらの場合、前記複数の電磁弁は、前記ハウジングに対してかしめによって組み付けられて収容されるものであり、前記増圧機構を、前記ハウジングが前記かしめに伴って変形する領域の外にて、前記ハウジング内に一体的に収容することができる。この場合、前記ハウジングに収容される前記複数の電磁弁は、前記ハウジングに対する一方向への前記かしめによって組み付けられる。
これらによれば、増圧機構の一部がかしめに伴って変形するハウジングの領域の内に存在すると増圧機構の適切な作動が損なわれる可能性が高くなるのに対し、増圧機構をかしめに伴って変形するハウジングの領域の外に配置することにより、かしめに伴うハウジングの変形の影響を受けることなく増圧機構を作動させることができる。従って、マスタシリンダから独立させた増圧機構をハウジング内に一体的に収容した場合であっても、従来通り増圧機構を確実にかつ適切に作動させることができる。
更に、これらの場合、前記増圧機構の重心位置と前記液圧制御弁機構の前記ハウジングの重心位置とが、所定の方向にて互いに重なるように、前記増圧機構を前記ハウジング内に一体的に収容することができる。この場合、前記複数の電磁弁が弁開閉方向を一方向に揃えた状態により前記ハウジングに収容されたとき、前記増圧機構の重心位置と前記液圧制御弁機構の前記ハウジングの重心位置とが、少なくとも、前記所定の方向である前記一方向にて互いに重なるように、前記増圧機構を前記ハウジング内に一体的に収容することができる。
これらによれば、増圧機構を液圧制御弁機構のハウジング内に収容するときに、少なくとも、弁開閉方向にて(例えば、複数の電磁弁をかしめるかしめ方向にて)、増圧機構の重心位置とハウジングの重心位置とが互いに重なるように、増圧機構を配置して収容することができる。これにより、増圧機構が複数の部品から構成され、又、高圧を発生させるために体格及び重量が嵩む場合であっても、ハウジングに作用する慣性力が大きくなることを効果的に抑制することができ、発生した振動を速やかに減衰させることができる。従って、車両走行に伴って発生する振動が液圧制御弁機構に接続される各配管等に対して無用な機械的負荷を与えることを確実に抑制することができる。
本発明の実施形態に係り、車両のブレーキ装置の概略システム図である。 図1の液圧制御弁装置のハウジングに収容された増圧機構を説明するための概略的に斜視図である。 図1及び図2の増圧機構の構成を示す概略的な断面図である。 ハウジング内でかしめされる電磁弁(電磁開閉弁)と収容される増圧機構との位置関係及び収容された増圧機構の重心位置とハウジングの重心位置都の関係を説明するための概略図である。 本発明の実施形態における車両のブレーキ装置によるリニア制御モードを説明するための図である。 本発明の実施形態における車両のブレーキ装置による液漏れ発生時のバックアップモードを説明するための図である。 本発明の実施形態の変形例に係り、液圧制御弁装置のハウジングに収容された増圧機構を説明するための概略的に斜視図である。
以下、本発明の一実施形態に係る車両のブレーキ装置について図面を用いて説明する。図1は、本実施形態に係る車両のブレーキ装置の概略システム構成図である。車両のブレーキ装置は、ブレーキペダル10と、マスタシリンダユニット20と、動力液圧発生装置30と、ブレーキユニット40と、液圧制御弁装置50と、ブレーキ制御を司るブレーキECU100とを含んで構成される。
マスタシリンダユニット20は、マスタシリンダ21とリザーバ22とを備えている。マスタシリンダ21は、加圧ピストン21a,21bを備えたタンデム式であり、ブレーキペダル10の踏み込み操作に伴って入力されるペダル踏力に対して、それぞれ、所定の倍力比を有するマスタシリンダ圧Pmc_FR,Pmc_FLを発生する。マスタシリンダ21の上部には、作動液(ブレーキフルード)を貯留するリザーバ22が設けられている。これにより、マスタシリンダ21においては、ブレーキペダル10の踏み込み操作が解除されて加圧ピストン21a,21bが後退しているときに、加圧ピストン21a,21bによって形成される加圧室21a1,21b1がリザーバ22と連通するようになっている。尚、加圧室21a1,21b1は、それぞれ、後述するマスタ圧配管11,12を介して液圧制御弁装置50と連通するようになっている。
動力液圧発生装置30は、動力式液圧源(パワーサプライ)であって、加圧ポンプ31とアキュムレータ32とを備えている。加圧ポンプ31は、その吸入口がリザーバ22に接続され、吐出口がアキュムレータ32に接続され、モータ33を駆動することにより作動液を加圧する。アキュムレータ32は、加圧ポンプ31により加圧された作動液の圧力エネルギーを窒素等の封入ガスの圧力エネルギーに変換して蓄える。又、アキュムレータ32は、マスタシリンダユニット20に設けられたリリーフバルブ23に接続されている。リリーフバルブ23は、作動液の圧力が所定の圧力以上に高まった場合に開弁し、作動液をリザーバ22に戻す。尚、アキュムレータ32は、後述するアキュムレータ圧配管13を介して液圧制御弁装置50と連通するようになっている。
ブレーキユニット40は、図1に示すように、車両の各車輪にそれぞれ設けられるブレーキユニット40FR,40FL,40RR,40RLからなる。尚、以下の説明においては、車輪ごとに設けられる構成についてその符号の末尾に、右前輪についてはFR、左前輪についてはFL、右後輪についてはRR,左後輪についてはRLを付すものとするが、特に車輪位置を特定する必要がない場合には、末尾の符号を省略する。各車輪にそれぞれ設けられるブレーキユニット40FR,40FL,40RR,40RLは、ブレーキロータ41FR,41FL,41RR,41RLとブレーキキャリパ内に内蔵されたホイールシリンダ42FR,42FL,42RR,42RLとを備える。ここで、ブレーキユニット40は、4輪ともディスクブレーキ式に限定されるものではなく、例えば、4輪ともドラムブレーキ式であっても良いし、前輪がディスクブレーキ式、後輪がドラムブレーキ式等のように任意に組み合わせたものであっても良い。
ホイールシリンダ42FR,42FL,42RR,42RLは、液圧制御弁装置50に接続されて、同装置50を介して供給される作動液の液圧が伝達されるようになっている。そして、液圧制御弁装置50を介して伝達される(供給される)液圧により、車輪と共に回転するブレーキロータ41FR,41FL,41RR,41RLにブレーキパッドを押し付けて車輪に制動力を付与する。
ここで、車両のブレーキ装置は、液圧制御弁装置50を介して各ホイールシリンダ42に作動液の液圧を付与する液圧源として、ドライバによるブレーキペダル10を介して入力されるペダル踏力を利用して液圧を付与するマスタシリンダユニット20のマスタシリンダ21(又は、後述する増圧機構80)と、このマスタシリンダ21とは独立して液圧を付与する動力液圧発生装置30とを備える。そして、本実施形態における車両のブレーキ装置においては、マスタシリンダ21(より詳しくは、加圧室21a1,21b1)及び動力液圧発生装置30(より詳しくは、少なくともアキュムレータ32)が、それぞれ、マスタ圧配管11,12及びアキュムレータ圧配管13を介して液圧制御弁装置50に接続される。又、マスタシリンダユニット20のリザーバ22は、リザーバ配管14を介して液圧制御弁装置50に接続される。
液圧制御弁装置50は、図2に示すように、ブロック状のハウジングHSGを有しており、このハウジングHSGに対して作動液の流通路が形成されるとともに複数の電磁弁(電磁開閉弁)が組み付けられる。具体的に、ハウジングHSGには、図1に示すように、各ホイールシリンダ42FR,42FL,42RR,42RLに接続される4つの個別流路51FR,51FL,51RR,51RLと、個別流路51FR,51FL,51RR,51RLを連通する主流路52と、個別流路51FR,51FLとマスタ圧配管11,12(12b)とを接続するマスタ圧流路53,54と、主流路52とアキュムレータ圧配管13とを接続するアキュムレータ圧流路55とが形成される。ここで、マスタ圧流路53,54、及び、アキュムレータ圧流路55は、それぞれ、主流路52に対して並列に接続される。又、ハウジングHSGに対して後述する各電磁弁(電磁開閉弁)が組み付けられる際には、各電磁弁(電磁開閉弁)の軸方向(具体的には、弁の開閉方向と一致する方向)が、一の方向、具体的には、ハウジングHSGの厚み方向に揃えられ、この方向にてかしめられることによって組み付けられる。尚、以下の説明においては、各電磁弁(電磁開閉弁)がハウジングHSGに対してかしめられる方向を単位「かしめ方向」とも称呼する。
各個別流路51FR,51FL,51RR,51RLには、図1に示すように、それぞれ、保持弁61FR,61FL,61RR,61RLが設けられる。左前輪側のブレーキユニット40FL及び右後輪側のブレーキユニット40RRに設けられた保持弁61FL,61RRは、ソレノイドの非通電時にスプリングの付勢力により開弁状態を維持し、ソレノイドへの通電中においてのみ閉弁状態となる常開の電磁開閉弁である。一方、右前輪側のブレーキユニット40FR及び左後輪側のブレーキユニット40RLに設けられた保持弁61FR,61RLは、ソレノイドの非通電時にスプリングの付勢力により閉弁状態を維持し、ソレノイドへの通電中においてのみ閉弁状態となる常閉の電磁開閉弁である。
このように、各保持弁61は、開弁状態では主流路52と各ホイールシリンダ42との間の作動液の連通を許可し、閉弁状態では主流路52と各ホイールシリンダ42との間の作動液の連通を禁止するものである。これにより、各保持弁61は、開弁状態において作動液を主流路52から個別流路51を介して各ホイールシリンダ42に流すことによってホイールシリンダ圧Pwcを増加させる(増圧する)。一方、各保持弁61は、閉弁状態において主流路52から個別流路51を介した各ホイールシリンダ42への作動液の流通を遮断するとともに各ホイールシリンダ42から個別流路51を介した主流路52への作動液の流通を遮断することによって、ホイールシリンダ圧Pwcを維持させる(保圧する)。
ここで、左右前輪側のブレーキユニット40FR,40FLに設けられた保持弁61FR,61FL、左右後輪側のブレーキユニット40RR,40RLに設けられた保持弁61RR,61RLにおいて、一方が常開の電磁開閉弁とされ、他方が常閉の電磁開閉弁とされる。すなわち、前後の対角位置にある一方の2つの車輪に対応するブレーキユニット40FLとブレーキユニット40RRに設けられる保持弁61FL,61RRが常開の電磁開閉弁とされ、前後の対角位置にある他方の2つの車輪に対応するブレーキユニット40FRとブレーキユニット40RLに設けられる保持弁61FR,61RLが常閉の電磁開閉弁とされる。従って、本実施形態における車両のブレーキ装置は、所謂、クロス系統を形成するものである。
又、各個別流路51FR,51FL,51RR,51RLには、それぞれ、減圧用個別流路56FR,56FL,56RR,56RLが接続される。各減圧用個別流路56は、リザーバ流路57に接続される。リザーバ流路57は、リザーバ配管14を介してリザーバ22に接続される。各減圧用個別流路56FR,56FL,56RR,56RLには、その途中部分に、それぞれ、減圧弁62FR,62FL,62RR,62RLが設けられている。減圧弁62FR,62FL,62RRは、ソレノイドの非通電時にスプリングの付勢力により開弁状態を維持し、ソレノイドへの通電中においてのみ開弁状態となる常閉の電磁開閉弁である。減圧弁62RLは、ソレノイドの非通電時にスプリングの付勢力により開弁状態を維持し、ソレノイドへの通電中においてのみ閉弁状態となる常開の電磁開閉弁である。各減圧弁62は、開弁状態において作動液をホイールシリンダ42から減圧用個別流路56を介してリザーバ流路57に流すことによってホイールシリンダ圧Pwcを低下させる(減圧させる)。
マスタ圧流路53,54には、それぞれ、その途中部分にマスタカット弁63,64が設けられる。マスタカット弁63,64は、ソレノイドの非通電時にスプリングの付勢力により開弁状態を維持し、ソレノイドへの通電中においてのみ閉弁状態となる常開の電磁開閉弁である。このようにマスタカット弁63,64を設けることにより、マスタカット弁63,64が閉弁状態にあるときには、マスタシリンダ21(及び増圧機構80)とホイールシリンダ42FR,42FLとの間の接続が遮断されることによって作動液の流通が禁止され、マスタカット弁63,64が開弁状態にあるときには、マスタシリンダ21(及び増圧機構80)とホイールシリンダ42FR,42FLとが接続されることによって作動液の流通が許容される。
アキュムレータ圧流路55には、その途中部分に増圧リニア制御弁65Aが設けられる。又、アキュムレータ圧流路55が接続される主流路52とリザーバ流路57との間には、減圧リニア制御弁65Bが設けられる。増圧リニア制御弁65A及び減圧リニア制御弁65Bは、ソレノイドの非通電時にスプリングの付勢力により閉弁状態を維持し、ソレノイドへの通電量(電流値)の増加に伴って弁開度を増加させる常閉の電磁リニア制御弁である。増圧リニア制御弁65A及び減圧リニア制御弁65Bは、その詳細な説明を省略するが、内蔵されたスプリングが弁体を閉弁方向に付勢するバネ力と、相対的に高圧の作動液が流通する一次側(入口側)及び相対的に低圧の作動液が流通する二次側(出口側)の差圧によって弁体が開弁方向に付勢される差圧力との差分として表される閉弁力により閉弁状態を維持する。
一方、増圧リニア制御弁65A及び減圧リニア制御弁65Bは、ソレノイドへの通電により発生する弁体を開弁させる方向に作用する電磁吸引力が上記閉弁力を上回った場合、すなわち、電磁吸引力>閉弁力(=バネ力−差圧力)を満たす場合には、弁体に作用する力のバランスに応じた開度で開弁する。従って、増圧リニア制御弁65A及び減圧リニア制御弁65Bは、ソレノイドへの通電量(電流値)を制御することにより、差圧力すなわち一次側(入口側)と二次側(出口側)との差圧に応じた開度を調整することができる。尚、以下の説明においては、増圧リニア制御弁65A及び減圧リニア制御弁65Bの両者について区別する必要がない場合には、単に、リニア制御弁65とも称呼する。
又、本実施形態における車両のブレーキ装置においては、ストロークシミュレータ70が設けられる。ストロークシミュレータ70は、液圧制御弁装置50のマスタ圧流路53に接続されるマスタ圧配管11に対して、シミュレータ流路71及び常閉の電磁開閉弁であるシミュレータカット弁72を介して接続される。ストロークシミュレータ70は、ピストン70a及びスプリング70bを円筒状のケース70c内に収容して構成される。そして、ストロークシミュレータ70は、ドライバによるブレーキペダル10のブレーキ操作量に応じた量の作動液をケース70cの内部に導入し、この作動液の導入に合わせてピストン70aをスプリング70bの付勢力に抗して変位させる。これにより、ドライバによるブレーキペダル10のストローク操作を可能とするとともに、ブレーキ操作量に応じた反力を発生させて、ドライバのブレーキ操作フィーリングを良好にするものである。尚、ストロークシミュレータ70は、液圧制御弁装置50のマスタ圧流路54に接続されるマスタ圧配管12に接続可能であることは言うまでもない。
又、本実施形態における車両のブレーキ装置においては、図2に示すように、液圧制御弁装置50のハウジングHSG内に、マスタシリンダ21の加圧室21b1から出力されるマスタシリンダ圧Pmc_FLを増圧(サーボ)してホイールシリンダ42FLに供給する増圧機構80が一体的に収容されている。増圧機構80は、円筒形状を有してマスタシリンダ21の加圧室21b1から出力されるマスタシリンダ圧Pmc_FLを増圧(サーボ)してホイールシリンダ42FLに供給するものである。本実施形態において、増圧機構80は、図2に示すように、その長手方向軸の軸線方向が水平方向となるように配置されていて、ハウジングHSG内に収容されている各電磁弁(各電磁開閉弁)の一方向である弁開閉方向すなわちハウジングHSGの厚み方向と一致するかしめ方向と交わるように、より具体的には、かしめ方向と直交する平面上に長手方向軸が存在するように、ハウジングHSG内に収容される。
このように、増圧機構80の長手方向軸の軸線方向とかしめ方向とが交点を有する、言い換えれば、増圧機構80の長手方向軸の軸線方向とかしめ方向(具体的には、ハウジングHSGの厚み方向と一致)とが平行になることを防止することにより、増圧機構80を収容した場合であってもハウジングHSGの厚み方向の変化を適切に抑制することができる。これにより、増圧機構80を収容した液圧制御弁装置50のハウジングHSGを車両に搭載する場合であっても、従来に比してより大きなスペースを確保する必要がない。その結果、例えば、増圧機構80の収容された液圧制御弁装置50(ハウジングHSG)を有する車両のブレーキ装置を異なる車種間で容易に展開することができる。
ここで、増圧機構80を説明しておく。尚、増圧機構80については、車両において、マスタシリンダユニット20と離間して設けられた液圧制御弁装置50に対して一体的に組み付けられて、後述するような機械的な動作によってマスタシリンダ圧Pmc_を増圧(サーボ)することができる構造であれば、如何なるものであっても採用可能である。又、以下においては、マスタ圧配管12に増圧機構80を設ける場合を例示して説明するが、マスタ圧配管11に増圧機構80を設けるように実施可能であることは言うまでもない。
増圧機構80は、図3に示すように、ケース81と、ケース81に液密かつ摺動可能に嵌合された段付きピストン82とを含み、段付きピストン82の大径側に大径側室83が設けられ、小径側に小径側室84が設けられる。尚、図3は、増圧機構80の構成及び機能を説明するものであるため、ケース81が段付きとなっているが、外周における段を無くした円筒状のケース81を採用可能であることは言うまでもない。小径側室84は、動力液圧発生装置30のアキュムレータ32に接続された高圧室85と、高圧供給弁86及び弁座87を介して、連通可能とされている。高圧供給弁86は、図3に示すように、高圧室85内にて、スプリングの付勢力によって弁座87に押し付けられており、常閉弁である。
又、小径側室84には、高圧供給弁86に対向して開弁部材88が設けられ、開弁部材88と段付きピストン82との間にスプリングが配置される。このスプリングの付勢力は、開弁部材88を段付きピストン82から離間させる向きに作用する。又、図3に示すように、段付きピストン82の段部とケース81との間には、リターンスプリングが設けられ、段付きピストン82を後退方向に付勢する。尚、段付きピストン82とケース81との間には図示しないストッパが設けられて、段付きピストン82の前進端位置を規制するようになっている。
更に、段付きピストン82には、大径側室83と小径側室84とを連通させる連通路89が形成される。連通路89は、少なくとも段付きピストン82の後退端位置において、図3に示すように開弁部材88から離間した状態で大径側室83と小径側室84とを連通させ、段付きピストン82が前進して開弁部材88に当接すると遮断される。このように構成されることにより、増圧機構80は、メカ式増圧器(メカ弁)として作動する。
尚、図1及び図3に示すように、高圧室85と動力液圧発生装置30とは高圧供給通路15によって接続され、高圧供給通路15には、増圧機構カット弁90とともに動力液圧発生装置30から高圧室85への作動液の流れを許容し、逆向きの流れを阻止する逆止弁が設けられる。増圧機構カット弁90は、例えば、増圧機構80に一体的に設けられており、ソレノイドの非通電時にスプリングの付勢力により開弁状態を維持し、ソレノイドへの通電中においてのみ閉弁状態となる常開の電磁開閉弁である。
このように、増圧機構カット弁90が設けられることにより、ソレノイドへの通電により閉弁状態では動力液圧発生装置30(より詳しくは、加圧ポンプ31又はアキュムレータ32)と高圧室85との間の液圧の伝達、すなわち、作動液の流通が遮断される。従って、仮に、シール性の異常等により増圧機構80に液漏れが生じた場合であっても、増圧機構カット弁90を閉弁状態に維持することにより、アキュムレータ32から高圧の作動液が増圧機構80及びマスタ圧配管12を介してマスタシリンダ21に逆流することを確実に防止することができる。又、高圧供給通路15を介したアキュムレータ32と増圧機構80の高圧室85との連通(接続)が遮断されるため、仮に、シール性の異常等により増圧機構80に液漏れが生じた場合であっても、アキュムレータ32における液圧(後述するアキュムレータ圧Paccに相当)の低下(消費)を確実に防止することができる。
又、高圧供給通路15に逆止弁を設けることにより、動力液圧発生装置30(より詳しくは、アキュムレータ32)の液圧が高圧室85の液圧よりも高い場合には動力液圧発生装置30から高圧室85への作動液の流れを許容するが、動力液圧発生装置30の液圧が高圧室85の液圧以下の場合には閉弁状態にあり、双方向の流れを禁止する。従って、増圧機構カット弁90が開弁状態にあるときに、仮に、動力液圧発生装置30に液漏れが生じても、高圧室85から動力液圧発生装置30への作動液の逆流を阻止することができ、小径側室84の液圧の低下を防止することができる。
又、増圧機構80の大径側室83は、マスタ圧配管12と接続されるとともに、マスタ配管12と増圧機構80の出力側(すなわち、小径側室84に連通するマスタ圧配管54)との間には、増圧機構80をバイパスして接続するバイパス通路16が設けられる。そして、バイパス通路16にはマスタ圧配管12から増圧機構80の出力側であるマスタ圧流路54への作動液の流れを許容し、逆向きの流れを阻止する逆止弁が設けられる。更に、段付きピストン82の段部とケース81とによって形成される空間とリザーバ22に連通するリザーバ配管14との間にはリザーバ通路17が設けられる。尚、高圧供給通路15、バイパス通路16及びリザーバ通路17は、増圧機構80が収容される液圧制御弁装置50のハウジングHSGに形成される。
具体的に増圧機構80の機械的な動作を説明しておくと、増圧機構80において、大径側室83にマスタシリンダ21からマスタ圧配管12を介して作動液(マスタシリンダ圧Pmc_FL)が供給されると、作動液は、連通路89を経て小径側室84に供給される。そして、作動液(マスタシリンダ圧Pmc_FL)の供給に伴って段付きピストン82に作用する前進方向の力(大径側室83に作用するマスタシリンダ圧Pmc_FLによる前進力)がリターンスプリングの付勢力よりも大きくなると、段付きピストン82は前進する。これにより、段付きピストン82が開弁部材88に当接して連通路89が遮断されると、段付きピストン82の前進に伴って小径側室84の液圧が増加し、増圧された作動液(すなわち、サーボ圧)がマスタ圧流路54に出力される。
更に、開弁部材88の前進により高圧供給弁86が開弁状態に切り替えられると、高圧室85から高圧の作動液が小径側室84に供給され、小径側室84の液圧がより高くなる。この場合、増圧機構カット弁90が開弁状態とされていて、動力液圧発生装置30のアキュムレータ32に蓄えられた作動液の液圧(アキュムレータ圧Pacc) が高圧室85内の液圧よりも高い場合には、アキュムレータ32の液圧(アキュムレータ圧Pacc) が高圧供給通路15の逆止弁を経て高圧室85に供給され、小径側室84に供給される。そして、段付きピストン82においては、大径側室83の液圧すなわちマスタシリンダ圧Pmc_FLが、大径側に作用する力(マスタシリンダ圧Pmc_FL×受圧面積)と小径側に作用する力(サーボ圧×受圧面積)とが釣り合う大きさに調整されて出力される。従って、増圧機構80は、機械的な動作によって作動し、マスタシリンダ21が発生したマスタシリンダ圧Pmc_FLに対して所定の比となるサーボ圧を発生させるメカ式の倍力機構(或いは、レギュレータ)であると言える。
一方、増圧機構カット弁90が開弁状態にされていて、アキュムレータ32の液圧(アキュムレータ圧Pacc) が高圧室85の液圧以下である場合には、高圧供給通路15に設けられた逆止弁により、アキュムレータ32と高圧室85との間の作動液の流れが阻止されるため、段付きピストン82がそれ以上前進できなくなる。又、段付きピストン82はストッパに当接することによっても前進できなくなることもある。この状態で、マスタシリンダ21から供給されるマスタシリンダ圧Pmc_FLが上昇して小径側室84の液圧よりも高くなると、バイパス通路16及び逆止弁を経てマスタシリンダ圧Pmc_FLがマスタ圧流路54に供給される。
ここで、上述したように、増圧機構80は、各電磁弁(ソレノイド弁である電磁開閉弁)がかしめ方向にてかしめられる液圧制御弁装置50のハウジングHSG内に一体的に収容される。そして、増圧機構80は、ハウジングHSG内に収容された状態で機械的な動作によって作動し、マスタシリンダ21が発生したマスタシリンダ圧Pmc_FLに対して所定の比となるサーボ圧を発生させる。このため、例えば、各電磁弁(電磁開閉弁)のかしめに伴って、ハウジングHSG内部における電磁弁周辺の領域が変形した場合であっても、この変形による影響を避けて増圧機構80がハウジングHSG内に収容される必要がある。
すなわち、図4に概略的に示すように、今、増圧機構80がハウジングHSGに仮組み付けされており(単に、収容されており)、図4の紙面垂直方向がかしめ方向となるように複数の電磁弁(電磁開閉弁)が一体的にかしめられる状態を想定する。この場合、図4にて実線により円で示す各電磁弁(電磁開閉弁)がかしめによって組み付けられると、ハウジングHSG内部においては図4にて破線により円で示すかしめ変形領域が生じる。この場合、例えば、増圧機構80が図4にて一点鎖線により示す位置に配置されて各電磁弁(電磁開閉弁)がかしめされると、かしめ変形領域内に増圧機構80が存在し、その結果、例えば、ケース81が変形して段付きピストン82が進退できない、言い換えれば、増圧機構80の作動不全が生じる可能性がある。従って、増圧機構80を液圧制御弁装置50のハウジングHSG内に収容するときには、図4にて実線により示すように、予め想定されるかしめ変形領域の外になるように増圧機構80が配置され、この状態で各電磁弁(電磁開閉弁)が一体的にかしめられる。これにより、増圧機構80をハウジングHSG内に一体的に収容した場合であっても、増圧機構80を確実にかつ適切に作動させることができる。
又、増圧機構80は、上述したように、複数の部品から構成され、又、高圧を発生させるために体格及び重量が嵩む場合がある。このような増圧機構80を単に液圧制御弁装置50のハウジングHSG内に収容した場合には、重量増加に伴い、車両走行時の振動によってハウジングHSGに作用する慣性力が大きくなり、例えば、液圧制御弁装置50(具体的には、ハウジングHSG)とホイールシリンダ42とを接続する配管に対して無用な機械的負荷を与える可能性がある。このため、増圧機構80をハウジングHSG内に収容する場合には、図4に示すように、少なくとも、かしめ方向(図4の紙面垂直方向)にて増圧機構80の重心位置とハウジングHSGの重心位置とが互いに重なるように、増圧機構80を配置して収容する。これにより、増圧機構80を収容して重量が増加した場合であっても、ハウジングHSGに作用する慣性力が大きくなることを効果的に抑制することができ、発生した振動を速やかに減衰させることができる。
動力液圧発生装置30及び液圧制御弁装置50は、制御手段としてのブレーキECU100により駆動制御される。ブレーキECU100は、CPU、ROM、RAM等からなるマイクロコンピュータを主要構成部品とするものであり、ポンプ駆動回路、各種のセンサ信号を入力するインターフェース、通信インターフェース等を備えている。そして、ブレーキECU100(より詳しくは、ブレーキECU100を構成するマイクロコンピュータや駆動回路、インターフェース等を集積した基板)は、図2に示すように、液圧制御弁装置50のハウジングHSGに対して一体的に固定されるケース内に収容される。これにより、液圧制御弁装置50に設けられた各電磁弁(電磁開閉弁)61〜64,72,90及びリニア制御弁65は、全てブレーキECU100に接続され、ブレーキECU100から出力されるソレノイド駆動信号(電流)により開閉状態及び開度(リニア制御弁65の場合)が制御される。又、動力液圧発生装置30に設けられたモータ33は、ポンプ駆動回路を介してブレーキECU100に接続され、ブレーキECU100から出力されるモータ駆動信号により駆動制御される。
液圧制御弁装置50には、図1に示すように、アキュムレータ圧センサ101、マスタシリンダ圧センサ102,103、制御圧センサ104が設けられる。アキュムレータ圧センサ101は、増圧リニア制御弁65Aよりも動力液圧発生装置30側(上流側)のアキュムレータ圧流路55における作動液の液圧、すなわち、アキュムレータ圧流路55はアキュムレータ圧配管13を介してアキュムレータ32と連通しているためアキュムレータ圧Paccを検出する。アキュムレータ圧センサ101は、検出したアキュムレータ圧Paccを表す信号をブレーキECU100に出力する。これにより、ブレーキECU100は、アキュムレータ圧Paccを所定の周期で読み込み、アキュムレータ圧Paccが予め設定された最低設定圧を下回る場合にはモータ33を駆動して加圧ポンプ31により作動液を加圧し、常にアキュムレータ圧Paccが設定圧力範囲内に維持されるように制御する。
マスタシリンダ圧センサ102は、マスタカット弁63よりもマスタシリンダ21側(上流側)のマスタ圧流路53における作動液の液圧、すなわち、マスタ圧流路53はマスタ圧配管11を介して加圧室21a1と連通しているためマスタシリンダ圧Pmc_FRを検出する。マスタシリンダ圧センサ103は、マスタカット弁64よりもマスタシリンダ21側(上流側)のマスタ圧流路54における作動液の液圧、すなわち、マスタ圧流路54はバイパス通路16を介してマスタ圧配管12を介して加圧室21b1と連通しているためマスタシリンダ圧Pmc_FLを検出する。マスタシリンダ圧センサ102,103は、検出したマスタシリンダ圧Pmc_FR,Pmc_FLを表す信号をブレーキECU100に出力する。
制御圧センサ104は、各ホイールシリンダ42よりも上流側である主流路52における作動液の液圧を制御圧Pxとして検出する。そして、制御圧センサ104は、検出した制御圧Pxを表す信号をブレーキECU100に出力する。
又、ブレーキECU100には、ブレーキペダル10に設けられたストロークセンサ105が接続される。ストロークセンサ105は、ドライバによるブレーキペダル10の踏み込み量(操作量)であるペダルストロークSmを表す信号をブレーキECU100に出力する。尚、ブレーキECU100には、車輪速センサ106も接続される。車輪速センサ106は、左右前後輪の回転速度である車輪速Vxi(i=FR,FL,RR,RL)を検出し、検出した車輪速Vxi(i=FR,FL,RR,RL)を表す信号をブレーキECU100に出力する。更に、ブレーキECU100には、ブレーキ装置に発生した異常をドライバに報知するインジケータ107も接続される。
次に、上記のように構成される車両のブレーキ装置において、ブレーキECU100が実行するブレーキ制御について説明しておく。ブレーキECU100は、動力液圧発生装置30から出力される液圧(より詳しくは、アキュムレータ圧Pacc)をリニア制御弁65により調圧し、主流路52を介して各ホイールシリンダ42に伝達するリニア制御モード(4Sモード)と、ドライバによるブレーキペダル10に対するペダル踏力に応じてマスタシリンダ21にて発生したマスタシリンダ圧Pmc_FR,Pmc_FLを増圧機構80を介して左右前輪側のホイールシリンダ42FR,42FLに伝達する、或いは、リニア制御弁65により調圧したアキュムレータ圧Paccを左右後輪側にホイールシリンダ42RR,42RLに伝達するバックアップモード(2Sモード)の2つの制御モードによりブレーキ制御を選択的に実行する。
まず、リニア制御モードにおいては、図5に示すように、ブレーキECU100は、常開のマスタカット弁63,64をソレノイドへの通電により閉弁状態に維持するとともに、シミュレータカット弁72をソレノイドへの通電により開弁状態に維持する。又、本実施形態におけるリニア制御モードにおいては、ブレーキECU100は、常開の増圧機構カット弁90をソレノイドへの通電により閉弁状態に維持する。
又、リニア制御モードにおいては、ブレーキECU100は、増圧リニア制御弁65A及び減圧リニア制御弁65Bのソレノイドへの通電量(電流値)を制御し、通電量に応じた開度に制御する。又、ブレーキECU100は、常開の保持弁61FL,61RRを開弁状態に維持するとともに、常閉の保持弁61FR,61RLをソレノイドへの通電により開弁状態に維持する。更に、ブレーキECU100は、常閉の減圧弁62FR,62FL、62RRを閉弁状態に維持するとともに常開の減圧弁62RLをソレノイドへの通電により閉弁状態に維持する。
このように液圧制御弁装置50を構成する各電磁弁(電磁開閉弁)の開弁状態又は閉弁状態が制御されることにより、リニア制御モードにおいては、マスタカット弁63,64が共に閉弁状態に維持されるため、マスタシリンダ21から出力されるマスタシリンダ圧Pmc_FR,Pmc_FLは、ホイールシリンダ42FR,42FLに伝達されない。又、増圧機構カット弁90が閉弁状態に維持されるため、動力液圧発生装置30の加圧ポンプ31又はアキュムレータ32から出力されるアキュムレータ圧Paccは、増圧機構80に伝達されない。従って、リニア制御モードにおいては、増圧機構80の高圧室85から小径側室84、連通路89、大径側室83及びマスタ圧配管12を介して、高圧のアキュムレータ圧Paccがマスタシリンダ21に伝達することが防止される。
一方、増圧リニア制御弁65A及び減圧リニア制御弁65Bがソレノイドの通電制御状態にあるため、保持弁61よりも上流側にて動力液圧発生装置30から出力される高圧のアキュムレータ圧Paccが増圧リニア制御弁65A及び減圧リニア制御弁65Bによって上流側液圧すなわち制御圧Pxとして調圧されて、保持弁61よりも下流側の4輪のホイールシリンダ42に伝達される。この場合、保持弁61が開弁状態に維持されるとともに減圧弁62が閉弁状態に維持されるため、各ホイールシリンダ42のホイールシリンダ圧Pwcは、主流路52における制御圧Pxで全て同じ値となる。
ところで、本実施形態の車両のブレーキ装置が設けられる車両は、例えば、バッテリ電源により駆動される走行用モータを備えた電気自動車(EV)や、走行用モータに加えて内燃機関をも備えたハイブリッド車両(HV)、ハイブリッド車両(HV)に対して更に外部電源を用いてバッテリを充電可能なプラグインハイブリッド車両(PHV)とすることができる。このような車両においては、車輪の回転エネルギーを走行用モータが電気エネルギーに変換することによって発電し、この発電電力をバッテリに回生させることによって制御力を得る回生制動を行うことが可能である。このような回生制動を行う場合には、車両を制動させるために必要な総制動力から回生による制動力分を除いた制動力を車両のブレーキ装置で発生させることにより、回生制動と液圧制動とを併用したブレーキ回生協調制御を行うことができる。
具体的には、ブレーキECU100は、制動要求を受けてブレーキ回生協調制御を開始する。制動要求は、例えば、ドライバがブレーキペダル10を踏み込み操作(以下、単に「ブレーキ操作」とも称呼する。)した場合や、自動ブレーキを作動させる要求がある場合等、車両に制動力を付与すべきときに発生する。ここで、自動ブレーキは、トラクション制御や、ビークルスタビリティー制御、車間距離制御、衝突回避制御等において作動させる場合があり、これらの制御開始条件が満たされた場合に制動要求が発生する。
ブレーキECU100は、制動要求を受けると、ブレーキ操作量として、マスタシリンダ圧センサ102により検出されるマスタシリンダ圧Pmc_FR、マスタシリンダ圧センサ103により検出されるマスタシリンダ圧Pmc_FL及びストロークセンサ105により検出されるペダルストロークSmのうちの少なくとも一つを取得し、マスタシリンダ圧Pmc_FR、マスタシリンダ圧Pmc_FL及び/又はペダルストロークSmの増大に伴って増大する目標制動力を演算する。尚、ブレーキ操作量については、マスタシリンダ圧Pmc_FR、マスタシリンダ圧Pmc_FL及び/又はペダルストロークSmを取得することに代えて、例えば、ブレーキペダル10に対するペダル踏力を検出する踏力センサを設けて、ペダル踏力に基づいて目標制動力を演算するように実施することも可能である。
ブレーキECU100は、演算した目標制動力を表す情報をハイブリッドECU(図示省略)に送信する。ハイブリッドECUは、目標制動力のうち、電力回生により発生させる制動力を演算して、その演算結果である回生制動力を表す情報をブレーキECU100に送信する。これにより、ブレーキECU100は、目標制動力から回生制動力を減算することによってブレーキユニット40で発生させるべき制動力である目標液圧制動力を演算する。ここで、ハイブリッドECUで行う電力回生により発生する回生制動力は、モータの回転速度により変化するのみではなく、バッテリの充電状態(所謂、SOC:State Of Charge)に依存する回生電力制御によっても変化する。従って、目標制動力から回生制動力を減算することにより、適切な目標液圧制動力を演算することができる。
そして、ブレーキECU100は、演算した目標液圧制動力に基づいて、この目標液圧制動力に対応した各ホイールシリンダ42の目標液圧を演算し、制御圧Px(すなわち、ホイールシリンダ圧Pwc)が目標液圧と等しくなるように、フィードバック制御によりソレノイド駆動信号を供給して増圧リニア制御弁65A及び減圧リニア制御弁65Bの駆動電流を制御する。すなわち、ブレーキECU100は、制御圧センサ104によって検出された制御圧Pxが目標液圧に追従するように、増圧リニア制御弁65A及び減圧リニア制御弁65Bのソレノイドへの通電量(電流値)を制御する。
これにより、リニア制御モードにおいては、作動液が動力液圧発生装置30から増圧リニア制御弁65A及び主流路52を介して各ホイールシリンダ42に供給され、ホイールシリンダ圧Pwcが増加して車輪に制動力を発生させる。又、リニア制御モードにおいては、ホイールシリンダ42から作動液が、例えば、主流路52及び減圧リニア制御弁65Bを経てリザーバ流路57に排出されることにより、ホイールシリンダ圧Pwcが低下して車輪に発生する制動力を適切に調整することができる。
そして、例えば、ドライバによるブレーキ操作が解除されると、液圧制御弁装置50を構成する全ての電磁弁(電磁開閉弁)のソレノイドへの通電が遮断されることにより、全ての電磁弁(電磁開閉弁)は図1に示した原位置に戻される。このように、全ての電磁弁(電磁開閉弁)が原位置に戻されることにより、右前輪のホイールシリンダ52FRの液圧(作動液)は開弁状態にあるマスタカット弁63及びマスタ圧配管11を経てマスタシリンダ21及びリザーバ22に戻される。左前輪のホイールシリンダ42FLの液圧(作動液)は開弁状態にあるマスタカット弁64、増圧機構80の連通路89及びマスタ圧配管12を経てマスタシリンダ21及びリザーバ22に戻される。
右後輪のホイールシリンダ42RRの液圧(作動液)は、開弁状態にある保持弁62RR、主流路52、開弁状態にある保持弁61FL、開弁状態にあるマスタカット弁64、増圧機構80の連通路89及びマスタ圧配管12を経てマスタシリンダ21及びリザーバ22に戻される。左後輪のホイールシリンダ42RLの液圧(作動液)は、開弁状態にある減圧弁62RL及びリザーバ流路57を経てリザーバ22に戻される。
ここで、ホイールシリンダ42RLについては、後述する制御系(電気系)の異常発生時に、マスタシリンダ21や増圧機構80に作動液が供給されないようにするために、保持弁61RLが常閉の電磁開閉弁とされている。このため、ブレーキ操作が解除されたときには、ホイールシリンダ42RLは主流路52から遮断されており、増圧機構80を経てマスタシリンダ21に作動液を戻すことができない。これに対し、減圧弁62RLは常開の電磁開閉弁とされているため、減圧弁62RLを経てホイールシリンダ42RLの作動液をリザーバ22に戻すことができる。又、減圧弁が常開の電磁開閉弁である場合には、閉弁状態を維持するためにリニア制御モードにおいてソレノイドに電流を供給し続けなければならず、消費電力が増大するという問題が発生する。しかし、本実施形態においては、常開の減圧弁は減圧弁62RLの1つであるため、消費電力の増大を抑制することができる。
尚、本発明は、ブレーキ回生協調制御を行うことを必須とするものではないため、回生制動力を発生させない車両においても適用可能であることは言うまでもない。この場合には、ブレーキ操作量に基づいて目標液圧を直接演算すれば良い。目標液圧は、例えば、マップや計算式等を使って、ブレーキ操作量が大きくなるほど大きな値に設定される。
続いて、バックアップモードを例示的に説明する。車両のブレーキ装置においては、ブレーキECU100が所定のイニシャルチェックを実行するようになっており、このイニシャルチェックによって、例えば、ブレーキECU100自体の作動異常や各電磁弁(電磁開閉弁)の断線等と言った制御系(電気系)に異常が検出された場合、或いは、作動液の液漏れの可能性が検出された場合、ブレーキECU100はバックアップモードによって車両のブレーキ装置を作動させて車輪に制動力を発生させる。
まず、制御系(電気系)に異常が検出されたときには、ブレーキECU100は、全ての電磁弁(電磁開閉弁)に対する通電を遮断して、全ての電磁弁(電磁開閉弁)を図1に示した原位置に戻す。これにより、増圧リニア制御弁65A及び減圧リニア制御弁65Bは、ソレノイドへの通電が遮断されることによって閉弁状態とされて動力液圧発生装置30が主流路52を介して各ホイールシリンダ42から遮断される。又、増圧機構カット弁90が開弁状態とされるため、増圧機構80はアキュムレータ32と連通する。又、保持弁61FRと保持弁61RLとは閉弁状態となり、保持弁61FLと保持弁61RRとは開弁状態となる。このため、左前輪のホイールシリンダ41FLと右後輪のホイールシリンダ42RRとが主流路52を介して連通し、右前輪のホイールシリンダ42FRと左後輪のホイールシリンダ42RLとは主流路52に対して遮断される。
この状態において、ドライバによってブレーキペダル10のブレーキ操作がなされると、マスタシリンダ21の加圧室21a1,21b1内の作動液が加圧される。これにより、加圧室21a1の液圧(マスタシリンダ圧Pmc_FR)は、マスタ圧配管11、マスタ圧流路53及び開弁状態にあるマスタカット弁63を介して右前輪のホイールシリンダ42FRに供給され、ブレーキユニット40FRを良好に作動させることができる。
一方、加圧室21b1の液圧(マスタシリンダ圧Pmc_FL)は、マスタ圧配管12を介して増圧機構80に供給され、液圧制御弁装置50のハウジングHSG内に収容された増圧機構80が作動を開始する。すなわち、増圧機構80においては、段付きピストン82が前進し、小径側室84と大径側室83との連通路89を介した連通が開弁部材88によって遮断され、小径側室84内の液圧が増加する。又、開弁部材88が前進して高圧供給弁86が開弁状態になると、開弁状態にある増圧機構カット弁90を介してアキュムレータ32から高圧室85内に高圧の作動液が供給され、小径側室84にアキュムレータ圧Paccが伝達される。
これにより、小径側室84の液圧(サーボ圧)は、マスタシリンダ圧Pmc_FLよりも高くされ、マスタ圧流路54及び開弁状態にあるマスタカット弁64を介して左後輪のホイールシリンダ42FLに供給されるとともに、保持弁61FL、主流路52及び保持弁61RRを介して右後輪のホイールシリンダ42RRに供給される。従って、マスタシリンダ圧Pmc_FLよりも高いサーボ圧が左前輪のホイールシリンダ42FL及び右後輪のホイールシリンダ42RRに供給されることにより、ブレーキユニット40FL及びブレーキユニット40RRを良好に作動させることができる。
又、この状態においては、動力液圧発生装置30の加圧ポンプ31は停止状態であるため、アキュムレータ32の液圧(アキュムレータ圧Pacc)は徐々に低下する。このため、アキュムレータ圧Paccが高圧室85の液圧以下になると、高圧供給通路15に設けられた逆止弁によって高圧室85からアキュムレータ32への作動液の流れが阻止されるために段付きピストン82の前進が阻止され、小径側室84の液圧はそれ以上高くなることがなくて増圧機構80は倍力機能を発揮できなくなる。そして、ドライバのブレーキペダル10に対するペダル踏力によってマスタシリンダ21の加圧室21b1の液圧(マスタシリンダ圧Pmc_FL)が小径側室84の液圧よりも高くなると、マスタシリンダ圧Pmc_FLが、バイパス通路16、マスタ圧流路54、マスタカット弁64、保持弁61FL、主流路52及び保持弁61RRを介して左前輪のホイールシリンダ42FLと右後輪のホイールシリンダ42RRに供給される。
このように、本実施形態においては、互いに対角位置にある2つの車輪(左前輪と右後輪)のホイールシリンダ42FL,42RRに対して選択的にサーボ圧(又はマスタシリンダ圧Pmc_FL)を供給する。これにより、車両にヨー(ヨーモーメント)を生じにくくして、2つのブレーキユニット40FL,40RRを良好に作動させることができる。尚、右前輪のホイールシリンダ42FRには、上述したように、開弁状態にあるマスタカット弁63を介してマスタシリンダ21の加圧室21a1から液圧(マスタシリンダ圧Pmc_FR)が供給される。
従って、本実施形態においては、制御系(電気系)の異常時には、3輪のホイールシリンダ42FR,42FL,42RRにマスタシリンダ21の液圧(マスタシリンダ圧Pmc_FR,Pmc_FL)又は増圧機構80を介した液圧(サーボ圧)が供給されることにより、2輪のホイールシリンダ42FL,42RRに液圧が供給される場合に比して、車両全体として制動力を大きくすることができる。そして、増圧機構80が作動している間は、左前輪のホイールシリンダ42FLと右後輪のホイールシリンダ42RRに対し、マスタシリンダ圧Pmc_FLとほぼ等しいマスタシリンダ圧Pmc_FRに比してより大きなサーボ圧が供給されるため、より一層、ヨー(ヨーモーメント)を生じにくくすることができる。
次に、液漏れの可能性が検出された場合のバックアップモードを、図6を用いて説明する。ブレーキECU100は、リニア制御モードにおいて、例えば、アキュムレータ圧センサ101や制御圧センサ104によって検出されたアキュムレータ圧Paccや制御圧Px(ホイールシリンダ圧Pwcに相当)の変化(低下)等に基づいて車両のブレーキ装置に液漏れの可能性を検出したときには、原則として、図6に示すように各電磁弁(電磁開閉弁)を開閉動作させる。すなわち、ブレーキECU100は、左右前輪の保持弁61FR,61FLを閉弁状態とし、左右後輪の保持弁61RR,61RLを開弁状態とし、マスタカット弁63,64を開弁状態とする。又、ブレーキECU100は、シミュレータカット弁72を閉弁状態とするとともに増圧機構カット弁90を閉弁状態に維持し、全ての減圧弁62を閉弁状態とする。
これにより、左右後輪のホイールシリンダ42RR及びホイールシリンダ42RLは、保持弁61RR,61RL、主流路52、増圧リニア制御弁65A、アキュムレータ圧流路55及びアキュムレータ圧配管13を介して動力液圧発生装置30の加圧ポンプ31及び/又はアキュムレータ32と連通する。このため、ホイールシリンダ42RR,42RLにおいては、高圧のアキュムレータ圧Paccが増圧リニア制御弁65A及び減圧リニア制御弁65Bによって制御圧Pxに調圧されて、ホイールシリンダ42RR,42RLに伝達される。
一方、右前輪のホイールシリンダ42FRは、マスタカット弁63、マスタ圧流路53及びマスタ圧配管11を介してマスタシリンダ21の加圧室21a1と連通し、液圧がマスタシリンダ圧Pmc_FRとされる。すなわち、この状況においては、閉弁状態とされた保持弁61FRによって、マスタシリンダ21の加圧室21a1から直接的にホイールシリンダ42FRに伝達された作動液(言い換えれば、マスタシリンダ圧Pmc_FR)が上流側の主流路52に伝達することが禁止(遮断)される。又、左前輪のホイールシリンダ42FLは、マスタカット弁64、マスタ圧流路54、増圧機構80及びマスタ圧配管12を介してマスタシリンダ21の加圧室21b1と連通し、液圧がマスタシリンダ圧Pmc_FL(又は、増圧機構80の作動によるサーボ圧)とされる。すなわち、この状況においては、閉弁状態とされた保持弁61FLによって、マスタシリンダ21の加圧室21b1から直接的にホイールシリンダ42FLに伝達された作動液(言い換えれば、マスタシリンダ圧Pmc_FL)が上流側の主流路52に伝達することが禁止(遮断)される。
このように、車両のブレーキ装置に液漏れの可能性が検出されると、左右前輪の保持弁61FR、61FLが閉弁状態(遮断状態)、すなわち、ホイールシリンダ42FR,42FLと主流路52との連通が遮断される。このため、主流路52を介した左右前輪のホイールシリンダ42FRとホイールシリンダ42FLとの連通が遮断されるとともに、主流路52を介して左右前輪のホイールシリンダ42FR,42FLと左右後輪のホイールシリンダ42RR,42RLとの連通が遮断される。従って、車両のブレーキ装置に液漏れの可能性が検出されると、前輪と後輪とのホイールシリンダ42同士が互いに遮断されるとともに前輪側において左前輪と右前輪のホイールシリンダ42同士が遮断されて、左前輪、右前輪及び左右後輪の3つのブレーキ系統が互いに独立することになる。その結果、これらの3つのブレーキ系統のうちのいずれかに液漏れが実際に生じた場合であっても、他のブレーキ系統に影響が及ばずに確実に車輪に制動力を与えることができる。
以上の説明からも理解できるように、上記実施形態によれば、増圧機構80の長手方向軸の軸線方向とかしめ方向とが交点を有する、より詳しくは、かしめ方向と直交する平面上に増圧機構80の長手方向軸が存在するようにハウジングHSG内に増圧機構80を配置することができ、ハウジングHSGの厚み方向の増大を抑えて増圧機構80を収容することができる。これにより、大きな搭載スペースを確保する必要がなく、極めて容易に車種間で展開することができる。又、複数の電磁弁(電磁開閉弁)のかしめに伴うかしめ変形領域の外に増圧機構80を配置することできる。これにより、ハウジングHSG内に収容された状態であっても、増圧機構80を確実に作動させることができる。更に、図4に示したように、少なくとも、かしめ方向にて、増圧機構80の重心位置とハウジングHSGに重心位置とが重なるように、増圧機構80をハウジングHSGの内部に配置することができる。これにより、重量が増加しても、ハウジングHSGに発生する無用な振動を効果的に抑制することができ、例えば、ハウジングHSGに接続される配管等に与える機械的負荷を大幅に低減することができる。
<変形例>
上記実施形態においては、図2に示したように、増圧機構80の長手方向軸が液圧制御弁装置50のハウジングHSGにおいて水平方向となるように配置した。これにより、増圧機構80の長手方向軸の軸線方向とかしめ方向とが交点を有する、より詳しくは、かしめ方向と直交する平面上に増圧機構80の長手方向軸が存在するようにハウジングHSG内に増圧機構80を配置することができ、ハウジングHSGの厚み方向の増大を抑えて増圧機構80を収容することができるようにした。
この場合、例えば、車両搭載上の要求等に応じて、図7に示すように、増圧機構80の長手方向軸が液圧制御弁装置50のハウジングHSGにおいて鉛直方向となるように配置して実施することも可能である。この場合においても、上記実施形態と同様に、増圧機構80の長手方向軸の軸線方向がかしめ方向と平行になることを防止することができて、ハウジングHSGの厚み方向の増大を抑えて増圧機構80を収容することができる。又、この場合においても、複数の電磁弁(電磁開閉弁)のかしめに伴うかしめ変形領域の外に増圧機構80を配置することが可能であるため、ハウジングHSG内に収容された状態であっても、増圧機構80を確実に作動させることができる。更に、この場合においても、例えば、図4に示した状態と同様に、少なくとも、かしめ方向にて、増圧機構80の重心位置とハウジングHSGに重心位置とが重なるように、増圧機構80をハウジングHSGの内部に配置することができる。従って、この変形例においても、上記実施形態と同様の効果が得られる。
本発明の実施にあたっては、上記実施形態及び変形例に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
例えば、上記実施形態及び変形例においては、増圧機構80から出力されるサーボ圧をホイールシリンダ42FLに直接的に伝達するように実施した。この場合、液圧制御弁装置50のハウジングHSGに組み付けられた増圧機構80からマスタシリンダ21に対してサーボ圧を伝達するように実施することも可能である。これにより、マスタシリンダ21を介してサーボ圧相当の液圧を、例えば、ホイールシリンダ42FLを含めホイールシリンダ42FRにも伝達することが可能となり、上記実施形態及び変形例と同様の効果を得ることができる。
更に、上記実施形態及び変形例においては、液圧制御弁装置50がリニア制御弁65として増圧リニア制御弁65A及び減圧リニア制御弁65Bを備える車両のブレーキ装置を採用して実施した。この場合、減圧リニア制御弁65Bが省略されて、液圧制御弁装置50が増圧リニア制御弁65Aのみを備える車両のブレーキ装置を採用して実施することも可能である。又、上記実施形態及び変形例においては、増圧機構80が増圧機構カット弁90を備える車両のブレーキ装置を採用して実施した。この場合、増圧機構カット弁90を液圧制御弁装置50に一体的に組み込んで実施することも可能である。又、上記実施形態及び変形例においては、液圧制御弁装置50にハウジングHSGに組み付けられる増圧機構80が液圧を増圧する機能を発揮するように実施したが、液圧を一定に維持する所謂レギュレータとしての機能を発揮するように実施することも可能である。この場合においても、上記実施形態及び変形例と同様の効果が期待できる。
10…ブレーキペダル、20…マスタシリンダユニット、21…マスタシリンダ、22…リザーバ、30…動力液圧発生装置、31…加圧ポンプ、32…アキュムレータ、33…モータ、40…ブレーキユニット、50…液圧制御弁装置、51…個別流路、52…主流路、56…減圧用個別流路、61FR,61FL,61RR,61RL…保持弁、62FR,62FL,62RR,62RL…減圧弁、65…リニア制御弁、70…ストロークシミュレータ、80…増圧機構、90…増圧機構カット弁、100…ブレーキECU、HSG…ハウジング

Claims (8)

  1. ドライバによるブレーキペダルの操作に応じて液圧を発生させるマスタシリンダと、加圧ポンプの駆動により液圧を発生させる動力式液圧源と、前記マスタシリンダが発生した液圧に対して所定の比となる液圧を発生させる増圧機構と、前記マスタシリンダから離間して設けられていて、前記マスタシリンダ、前記動力式液圧源及び前記増圧機構のうちの少なくとも一つが発生した液圧を伝達する作動液を流通させる複数の流通路及び電気信号によって制御される複数の電磁弁を有し、前記複数の電磁弁の作動により前記複数の流通路を流通する作動液の液圧を調圧する液圧制御弁機構と、前記液圧制御弁機構を介して液圧が伝達されて車輪に制動力を付与するホイールシリンダと、前記液圧制御弁機構における前記複数の電磁弁の作動を制御する制御手段とを備えた車両のブレーキ装置において、
    前記液圧制御弁機構は、前記複数の流通路及び前記複数の電磁弁を収容するハウジングを有しており、
    前記増圧機構を前記ハウジング内に一体的に収容したことを特徴とする車両のブレーキ装置。
  2. 請求項1に記載した車両のブレーキ装置において、
    前記液圧制御弁機構の前記ハウジングは、前記複数の流通路を形成して収容するとともに前記形成された前記複数の流通路に対して弁開閉方向を一方向に揃えた状態により前記複数の電磁弁を収容しており、
    前記増圧機構の長手方向軸の軸線方向が前記収容された前記複数の電磁弁における前記一方向と交わるように、前記増圧機構を前記ハウジング内に一体的に収容したことを特徴とする車両のブレーキ装置。
  3. 請求項2に記載した車両のブレーキ装置において、
    前記増圧機構を、前記複数の電磁弁における前記一方向と直交する平面上に前記長手方向軸が存在するように、前記ハウジング内に一体的に収容したことを特徴とする車両のブレーキ装置。
  4. 請求項1ないし請求項3のうちのいずれか一つに記載した車両のブレーキ装置において、
    前記複数の電磁弁は、前記ハウジングに対してかしめによって組み付けられて収容されるものであり、
    前記増圧機構を、前記ハウジングが前記かしめに伴って変形する領域に外にて、前記ハウジング内に一体的に収容することを特徴とする車両のブレーキ装置。
  5. 請求項4に記載した車両のブレーキ装置において、
    前記ハウジングに収容される前記複数の電磁弁は、前記ハウジングに対する一方向へのかしめによって組み付けられることを特徴とする車両のブレーキ装置。
  6. 請求項1ないし請求項5のうちのいずれか一つに記載した車両のブレーキ装置において、
    前記増圧機構の重心位置と前記液圧制御弁機構の前記ハウジングの重心位置とが、所定の方向にて互いに重なるように、前記増圧機構を前記ハウジング内に一体的に収容することを特徴とする車両のブレーキ装置。
  7. 請求項6に記載した車両のブレーキ装置において、
    前記複数の電磁弁が弁開閉方向を一方向に揃えた状態により前記ハウジングに収容されたとき、前記増圧機構の重心位置と前記液圧制御弁機構の前記ハウジングの重心位置とが、少なくとも、前記所定の方向である前記一方向にて互いに重なるように、前記増圧機構を前記ハウジング内に一体的に収容することを特徴とする車両のブレーキ装置。
  8. 請求項1ないし請求項7のうちのいずれか一つに記載した車両のブレーキ装置において、
    前記増圧機構は、
    前記マスタシリンダ及び前記動力式液圧源に接続されており、
    前記ドライバによる前記ブレーキペダルの操作に伴って前記マスタシリンダから出力される液圧により機械的に作動し、少なくとも、前記動力式液圧源が発生した液圧を用いて前記マスタシリンダからの液圧に対して前記所定の比となる液圧を発生させることを特徴とする車両のブレーキ装置。
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