以下、図面に基づいてこの発明の実施の形態を説明する。なお、以下の図面において、同一または相当する部分には同一の参照番号を付し、その説明は繰返さない。
[車両1000の構成]
図1は、冷却装置が適用される車両1000の構成を示す概略図である。本実施の形態に係る車両1000は、内燃機関であるエンジン200と、電動機である駆動ユニット300と、PCU(Power Control Unit)700と、走行用の電池であるバッテリ400と、を含んで構成されており、エンジン200と駆動ユニット300とを動力源とするハイブリッド車両である。なお、本発明の冷却装置は、エンジンと電動機とを動力源とするハイブリッド車両のみならず、電動機のみを動力源とする車両(本明細書では、両者を包含して電気自動車という)にも適用可能である。
エンジン200は、ガソリンエンジンであってもよいし、ディーゼルエンジンであってもよい。駆動ユニット300は、エンジン200とともに車両1000を駆動する駆動力を発生させる。エンジン200および駆動ユニット300は、ともに車両1000のエンジンルーム内に設けられている。駆動ユニット300は、ケーブル500を介してPCU700と電気的に接続されている。PCU700は、ケーブル600を介してバッテリ400と電気的に接続されている。
[冷却装置1の構成]
図2は、実施の形態1の冷却装置1の構成を示す模式図である。図2に示すように、冷却装置1は、蒸気圧縮式冷凍サイクル10を備えている。蒸気圧縮式冷凍サイクル10は、車両の車内の冷房を行なうための空調装置として車両1000に搭載されている。蒸気圧縮式冷凍サイクル10を用いた冷房は、たとえば、冷房を行なうためのスイッチがオンされた場合、または、自動的に車両の室内の温度を設定温度になるように調整する自動制御モードが選択されており、かつ、車室内の温度が設定温度よりも高い場合に行なわれる。
蒸気圧縮式冷凍サイクル10は、圧縮機12と、第一熱交換器としての熱交換器14と、第二熱交換器としての熱交換器15と、減圧器の一例としての膨張弁16と、第三熱交換器としての熱交換器18と、を含んでいる。
圧縮機12は、車両に搭載されたモータまたはエンジンを動力源として作動し、冷媒ガスを断熱的に圧縮して過熱状態冷媒ガスとする。圧縮機12は、蒸気圧縮式冷凍サイクル10の作動時に熱交換器18から流通する冷媒を吸入圧縮して、高温高圧の気相冷媒を吐出し、蒸気圧縮式冷凍サイクル10に冷媒を循環させる。
熱交換器14,15は、冷媒を流通するチューブと、チューブ内を流通する冷媒と熱交換器14,15の周囲の空気との間で熱交換するためのフィンと、を含んでいる。熱交換器14,15は、圧縮機12において圧縮された気相冷媒を、外部媒体へ等圧的に放熱させて冷媒液とする。冷却風は、車両の走行によって発生する自然の通風によって熱交換器14,15に供給されてもよい。または冷却風は、コンデンサファンもしくはエンジン冷却用のラジエータファンなどの、モータからの駆動力を受けて回転し空気の流れを発生させる外気供給用ファンの強制通風によって、熱交換器14,15に供給されてもよい。
膨張弁16は、高圧の液相冷媒を小さな孔から噴射させることにより膨張させて、低温・低圧の霧状冷媒に変化させる。膨張弁16は、熱交換器14,15によって凝縮された冷媒液を減圧して、気液混合状態の湿り蒸気とする。膨張弁16は、温度式膨張弁であってもよく、電気式の膨張弁であってもよい。なお、冷媒液を減圧するための減圧器は、絞り膨張する膨張弁16に限られず、毛細管であってもよい。
熱交換器18は、冷媒を流通するチューブと、チューブ内を流通する冷媒と熱交換器18の周囲の空気との間で熱交換するためのフィンと、を含んでいる。チューブ内には、膨張弁16によって減圧された湿り蒸気状態の冷媒が流通する。熱交換器18は、チューブ内を流通する霧状冷媒が蒸発(気化)して冷媒ガスとなる際の気化熱を、熱交換器18に接触するように導入された周囲の空調用空気から吸収する。
蒸気圧縮式冷凍サイクル10はまた、冷媒通路21〜29を含んでいる。冷媒通路21は、圧縮機12と熱交換器14とを接続し、圧縮機12の出口から熱交換器14の入口へ冷媒を流通させるための通路である。冷媒通路22〜25は、熱交換器14と熱交換器15とを接続し、熱交換器14の出口から熱交換器15の入口へ冷媒を流通させるための通路である。冷媒通路26,27は、熱交換器15と膨張弁16とを接続し、熱交換器15の出口から膨張弁16の入口へ冷媒を流通させるための通路である。冷媒通路28は、膨張弁16と熱交換器18とを接続し、膨張弁16の出口から熱交換器18の入口へ冷媒を流通させるための通路である。冷媒通路29は、熱交換器18と圧縮機12とを接続し、熱交換器18の出口から圧縮機12の入口へ冷媒を流通させるための通路である。
なお、本明細書中において「接続」とは、何らの部材も介在せずに直接接続された場合と、何らかの部材を介在して間接的に接続された場合との双方を含む概念である。
蒸気圧縮式冷凍サイクル10は、圧縮機12、熱交換器14,15、膨張弁16および熱交換器18が、冷媒通路21〜29によって直列に接続されて構成されている。なお、蒸気圧縮式冷凍サイクル10の冷媒としては、たとえば二酸化炭素、プロパンやイソブタンなどの炭化水素、アンモニア、フロン類または水などを用いることができる。
蒸気圧縮式冷凍サイクル10はまた、レシーバタンク44を含んでいる。レシーバタンク44は、熱交換器14に含まれるチューブの出口側に接続されている。レシーバタンク44は、熱交換器14の出口に接続されている。レシーバタンク44は、熱交換器14と熱交換器15との間の冷媒の経路上に配置されている。
熱交換器14で凝縮された冷媒は、熱交換器14の出口側において、飽和液と飽和蒸気とが混合した気液二相状態の湿り蒸気の状態にある。レシーバタンク44は、熱交換器14から流出しレシーバタンク44へ流入する冷媒を気液分離して貯留する。レシーバタンク44は、気液二相状態の冷媒を液体状の冷媒液とガス状の冷媒蒸気とに分離して、一時的に蓄えている。レシーバタンク44は、その内部に熱交換器14で凝縮された液状の冷媒を一時的に貯留する、第一蓄液器としての機能を有している。
レシーバタンク44には、冷媒通路22が連結されている。レシーバタンク44で気液分離された冷媒液は、冷媒通路22を経由して、レシーバタンク44の外部へ流出する。冷媒通路22の端部は、レシーバタンク44内に液相の冷媒が溜められる冷媒液貯留部に接続されており、冷媒液がレシーバタンク44から流出するための通路を形成している。
レシーバタンク44の内部において、冷媒液は下側に溜まる。レシーバタンク44から冷媒液を導出する冷媒通路22の端部は、レシーバタンク44の底部に連結されている。冷媒通路22を経由してレシーバタンク44の底側から冷媒液のみがレシーバタンク44の外部へ送り出されるので、レシーバタンク44は、気相冷媒と液相冷媒とを確実に分離することができる。
蒸気圧縮式冷凍サイクル10はまた、レシーバタンク45を含んでいる。レシーバタンク45は、熱交換器15に含まれるチューブの出口側に接続されている。レシーバタンク45は、熱交換器15の出口に接続されている。レシーバタンク45は、熱交換器15と膨張弁16との間の冷媒の経路上に配置されている。
冷媒は、熱交換器15において周囲に放熱し冷却されることによって、凝縮する。この凝縮した冷媒が、レシーバタンク45へ流入する。レシーバタンク45は、負荷に応じて冷媒を膨張弁16に供給できるように、熱交換器15で液化された冷媒液を、その内部に一時的に蓄えている。レシーバタンク45は、その内部に熱交換器15で凝縮された液状の冷媒を一時的に貯留する第二蓄液器としての機能を有しており、液相冷媒のみを膨張弁16に向けて流出させる。
レシーバタンク45の内部には、液相冷媒である冷媒液と、気相冷媒である冷媒蒸気とが蓄蔵されている。冷媒液はレシーバタンク45の底部側に貯留されている。レシーバタンク45には、冷媒通路26が接続されている。冷媒通路26の端部は、レシーバタンク45の下部空間に接続されている。冷媒通路26を経由してレシーバタンク45の底側から冷媒液のみがレシーバタンク45の外部へ送り出される。
レシーバタンク45の内部に、液体の冷媒を濾過するストレーナと、冷媒中に含まれる水分を除去する乾燥剤とを配置し、冷媒はストレーナと乾燥剤との積層構造を経由してレシーバタンク45の上部空間から下部空間へ落下する構成としてもよい。レシーバタンク45内に乾燥剤を設けることにより、冷凍サイクル内の水分を除去でき、かつ、レシーバタンク45内にストレーナを設けることにより、膨張弁16の上流側で異物が除去されて膨張弁16の詰まりを防ぐことができるので、蒸気圧縮式冷凍サイクル10の性能低下を防止することができる。
レシーバタンク45には、ポンプ48が接続されている。ポンプ48は、レシーバタンク45に貯留された液状の冷媒を移送する。ポンプ48は、レシーバタンク45内に配置されてもよい。またはポンプ48は、レシーバタンク45の出口側の、冷媒液が流れる冷媒通路26に配置されてもよい。
レシーバタンク44から熱交換器15へ向かって流れる冷媒の経路には、冷却部30が設けられている。冷却部30は、電気自動車に搭載される電気機器であるEV(Electric Vehicle)機器31と、冷媒が内部を流通する冷却器32とを含んでいる。EV機器31は、発熱源の一例である。冷却器32は、熱交換器14と熱交換器15との間の冷媒の経路に設けられており、熱交換器14の出口に接続されているとともに熱交換器15の入口に接続されている。
EV機器31は、電力の授受によって発熱する電気機器を含んでいる。電気機器は、たとえば、直流電力を交流電力に変換するためのインバータ、回転電機であるモータジェネレータ、蓄電装置であるバッテリ、バッテリの電圧を昇圧させるための昇圧コンバータ、バッテリの電圧を降圧するためのDC/DCコンバータなどの、少なくともいずれか一つを含んでいる。
レシーバタンク44と熱交換器15とを接続する冷媒の経路は、レシーバタンク44と冷却器32とを接続する冷媒通路23,24と、冷却部30に含まれている冷却器32と、冷却器32と熱交換器15とを接続する冷媒通路25とを含んでいる。冷媒通路23,24は、冷却器32よりも上流側(レシーバタンク44に近接する側)の冷媒の経路であり、冷媒通路23,24を経由して、レシーバタンク44から冷却器32へ冷媒液が流れる。冷媒通路25は、冷却器32よりも下流側(熱交換器15に近接する側)の冷媒の経路であり、冷却器32を通過した冷媒は、冷媒通路25を経由して、熱交換器15へ流れる。冷却器32の入口側は冷媒通路24に接続され、冷却器32の出口側は冷媒通路25に接続されている。
レシーバタンク44の内部には、飽和液状態の冷媒液が貯留されている。レシーバタンク44内に所定量の冷媒液が溜められることにより、負荷変動時にもレシーバタンク44から冷却器32へ流れる冷媒の流量を維持できる。レシーバタンク44が液だめ機能を有し、負荷変動に対するバッファとなり負荷変動を吸収できるので、EV機器31の冷却性能を安定させることができる。
蒸気圧縮式冷凍サイクル10はまた、四方弁50を備えている。四方弁50は、熱交換器14からレシーバタンク44を経由して冷却器32へ向かう冷媒の流れと、熱交換器14からレシーバタンク44を経由して膨張弁16へ向かう冷媒の流れと、を切り替え可能に配置されている。
四方弁50には冷媒通路23が接続されている。冷媒通路23は、レシーバタンク44と四方弁50とを連通している。四方弁50は、レシーバタンク44および冷媒通路23を介して、熱交換器14の出口側と接続されている。熱交換器14で凝縮しレシーバタンク44で気液分離された冷媒液は、冷媒通路23を経由して四方弁50へ流入する。
四方弁50には冷媒通路24が接続されている。冷媒通路24は、四方弁50と冷却器32とを連通している。四方弁50は、冷媒通路24を介して冷却器32の入口側と接続されている。冷却器32へ供給される冷媒は、四方弁50から流出し冷媒通路24を経由して冷却器32へ至る。
四方弁50には冷媒通路26が接続されている。冷媒通路26は、レシーバタンク45と四方弁50とを連通している。熱交換器15で凝縮しレシーバタンク45で気液分離した冷媒が、冷媒通路26を経由して四方弁50へ流入する。四方弁50は、冷媒通路26を介して、レシーバタンク45の出口側と接続されている。
四方弁50には冷媒通路27が接続されている。冷媒通路27は、四方弁50と膨張弁16とを連通している。四方弁50は、冷媒通路27を介して膨張弁16の入口側と接続されている。膨張弁16へ供給される冷媒は、四方弁50から流出し冷媒通路27を経由して膨張弁16へ至る。
冷却装置1は、温度センサ51を含んでいる。温度センサ51は、冷却器32の出口に設けられており、冷却器32から流出する冷媒の温度を検出する。温度センサ51は、発熱源であるEV機器31の発熱量を検出する熱源センサとしての機能を有している。冷却部30においてEV機器31と熱交換した後の、冷媒通路25を流れる冷媒の温度の代表値を検出可能な位置に、一つの温度センサが設けられてもよい。または、冷媒通路25の複数箇所において冷媒の温度を検出する複数の温度センサが設けられてもよい。複数の温度センサを設ける場合、冷媒の温度をより正確に計測でき、冷媒の温度に従ってEV機器31の発熱量をより正確に算出できるので、EV機器31の発熱量に基づく冷却装置1の制御の信頼性を向上できるので望ましい。
冷却装置1はまた、レシーバタンク44内に貯留された液状の冷媒の量を検出する第一液量センサとしての液量センサ54と、レシーバタンク45内に貯留された液状の冷媒の量を検出する第二液量センサとしての液量センサ55とを含んでいる。液量センサ54,55は、冷媒液の液面を検出可能なレベル計であってもよく、レシーバタンク内の冷媒液の圧力によって液量を検出する仕様のセンサであってもよく、またはその他の液相冷媒の量を検出可能な任意の液量センサであってもよい。
[蒸気圧縮式冷凍サイクル10の動作]
冷媒は、圧縮機12と熱交換器14,15と膨張弁16と熱交換器18とが冷媒通路21〜29によって順次接続された冷媒循環流路を通って、蒸気圧縮式冷凍サイクル10内を循環する。このとき冷媒は、熱交換器14の出口のレシーバタンク44から冷媒通路22〜24を経由して冷却器32へ流入し、冷却器32においてEV機器31と熱交換することでEV機器31を冷却し、冷却器32から冷媒通路25を経由して熱交換器15の入口側へ戻る。圧縮機12の起動中の、圧縮機12から吐出された冷媒が熱交換器14を経由して冷却器32へ流れるときの経路、すなわち冷媒通路21〜29は、第一通路を形成する。
冷媒が第一通路を経由して流れ発熱源を冷却するときの、冷媒の状態について説明する。圧縮機12に吸入された冷媒は、圧縮機12において等比エントロピー線に沿って断熱圧縮される。圧縮するに従って冷媒の圧力と温度とが上昇し、冷媒は、圧縮機12の出口において高温高圧の過熱度の大きい過熱蒸気になる。
圧縮機12において断熱圧縮された冷媒は、熱交換器14へと流れ、熱交換器14において冷却される。圧縮機12から吐出された高圧の気相冷媒は、熱交換器14における外気との熱交換によって周囲に放熱し、凝縮(液化)する。熱交換器14へ入った冷媒蒸気は、熱交換器14において等圧のまま過熱蒸気から乾き飽和蒸気になり、凝縮潜熱を放出し徐々に液化して、飽和液と飽和蒸気とが混合した気液混合状態の湿り蒸気になる。
熱交換器14で完全に液化しない程度まで冷やされた気液二相状態の冷媒は、レシーバタンク44において、飽和蒸気状態の冷媒蒸気と飽和液状態の冷媒液とに気液分離される。気液分離された冷媒のうち、飽和液状態の冷媒液が、冷媒通路22〜24を経由して冷却器32へ流れる。冷却器32へ流通する冷媒は、EV機器31と冷媒との温度差に応じて、EV機器31から熱を奪って、EV機器31を冷却する。冷却部30において、飽和液状態の液冷媒に熱を放出することで、EV機器31が冷却される。EV機器31との熱交換により、冷媒が加熱され、冷媒の乾き度が増大する。冷媒は、EV機器31から潜熱を受け取って一部気化することにより、冷却器32の出口において、飽和液と飽和蒸気とが混合した気液二相状態の湿り蒸気となる。
冷却器32から流出した冷媒は、冷媒通路25を経由して、熱交換器15に流入する。冷媒の湿り蒸気は、熱交換器15において周囲に放熱し外気と熱交換して冷却されることにより再度凝縮され、冷媒の全部が凝縮すると飽和液になり、さらに顕熱を放出して飽和温度以下にまで過冷却された過冷却液になる。熱交換器15で冷媒を過冷却液にするのは、その後の膨張弁16での減圧量、冷媒流量および冷房能力の制御を容易にするためである。
熱交換器15で過冷却液まで冷却された冷媒は、レシーバタンク45へ流入し、レシーバタンク45の内部に過冷却液状態の冷媒が蓄積される。レシーバタンク45から流出した冷媒液は、冷媒通路26,27を経由して、膨張弁16に流入する。膨張弁16において、冷媒は絞り膨張され、比エンタルピーは変化せず温度と圧力とが低下して、低温低圧の気液混合状態の湿り蒸気となる。
膨張弁16によって減圧された湿り蒸気状態の冷媒は、冷媒通路28を経由して熱交換器18へ流入する。冷媒は、熱交換器18のチューブ内を流通する際に、フィンを経由して車両の室内の空気の熱を蒸発潜熱として吸収することによって、等圧のまま蒸発し、低圧高温ガスとなる。全ての冷媒が乾き飽和蒸気になると、さらに顕熱を吸収して冷媒蒸気は温度上昇し、過熱蒸気となる。
熱交換器18は、その内部を流通する霧状冷媒が気化することによって、熱交換器18に接触するように導入された空調用空気の熱を吸収する。熱交換器18は、冷媒が蒸発する際の気化熱を、空調用空気から吸収する。熱交換器18において冷媒に吸熱され温度が低下した空調用空気が車両の室内に供給されることによって、車両の室内の冷房が行なわれる。熱交換器18を経由して蒸気圧縮式冷凍サイクル10を循環する冷媒と、空調用空気と、の熱交換によって、空調用空気の温度が調節される。その後冷媒は、冷媒通路29を経由して圧縮機12に吸入される。
冷媒はこのようなサイクルに従って、圧縮、凝縮、絞り膨張、蒸発の状態変化を連続的に繰り返す。なお、上述した蒸気圧縮式冷凍サイクルの説明では、理論冷凍サイクルについて説明しているが、実際の蒸気圧縮式冷凍サイクル10では、圧縮機12における損失、冷媒の圧力損失および熱損失を考慮する必要があるのは勿論である。
蒸気圧縮式冷凍サイクル10の運転中に、冷媒は、空調用空気を冷却して車室内の冷房を行なうとともに、冷却器32へ流通しEV機器31と熱交換することでEV機器31を冷却する。冷却装置1は、車両に搭載されたEV機器31を、車室内の空調用の蒸気圧縮式冷凍サイクル10を利用して、冷却する。
蒸気圧縮式冷凍サイクル10を循環する冷媒を用いてEV機器31の冷却が行なわれるので、EV機器31の冷却のために必要な構成を低減でき、装置構成を単純化できる。そのため、冷却装置1のコストを低減することができる。冷却器32の上流側に設けられたレシーバタンク44が液だめ機能を有し液冷媒のバッファとなるので、EV機器31の冷却能力を安定させることができ、冷却性能低下を防止することができる。
[四方弁50を用いた経路切替]
四方弁50は、熱交換器14の出口側と冷却器32の入口側とが四方弁50を介して連通し、かつ、熱交換器15の出口側と膨張弁16の入口側とが四方弁50を介して連通するように設定することが可能である。図2に示すこのような四方弁50の開閉設定を、本明細書では第一状態と称する。四方弁50を第一状態に設定することにより、レシーバタンク44から冷媒を冷却器32に供給することができ、かつ、EV機器31と熱交換した冷媒を熱交換器15で再度凝縮した後膨張弁16へ流通させることができる。
四方弁50はまた、熱交換器14の出口側と膨張弁16の入口側とが四方弁50を介して連通し、かつ、熱交換器15の出口側と冷却器32の入口側とが四方弁50を介して連通するように設定することが可能である。図3は、四方弁50を切り替えた状態の冷却装置1を示す模式図である。図3に示す上述した四方弁50の開閉設定を、本明細書では第二状態と称する。四方弁50は、第一状態と第二状態とを切替可能に設けられている。四方弁50を第二状態に切り替えることにより、EV機器31を冷却した後の冷媒を熱交換器15へ流通させ、圧縮機12を経由せずに熱交換器15と冷却器32との間に冷媒を循環させる閉ループ状の経路を形成することができる。
蒸気圧縮式冷凍サイクル10の通常運転中には、四方弁50を第一状態に設定することにより、圧縮機12から吐出された冷媒を熱交換器14を経由して冷却器32に供給してEV機器31の冷却能力を確保し、かつ、熱交換器18で空調用空気を冷却することにより、車両の車内の冷房能力を確保することができる。
一方、外気温が非常に高く車両を走行させていない状態において、蒸気圧縮式冷凍サイクル10を起動し圧縮機12を運転すると、圧縮機12出口における冷媒の圧力が高くなり、冷媒の飽和温度が高くなり、そのため冷却器32を通過する冷媒の温度も高くなり、EV機器31の冷却能力が不足する虞がある。この場合、四方弁50を第二状態に切り替えると、熱交換器15の出口側から四方弁50を経由して冷却器32へつながる経路が形成され、四方弁50を経由して冷却器32と熱交換器15との間に冷媒を循環させる、閉じられた環状の経路を形成することができる。このときの冷媒が流れる経路、すなわち冷媒通路24〜26は、第二通路を形成する。
この環状の経路を経由して、圧縮機12を経由することなく、熱交換器15と冷却器32との間に冷媒を循環させることができる。冷媒は、EV機器31を冷却するとき、EV機器31からの熱伝達により加熱される。冷却器32において加熱された冷媒は、熱交換器15へ流れ、熱交換器15において、車両の走行風、または、外気供給用ファンからの通風により、冷却される。熱交換器15で液化した冷媒液は、レシーバタンク45に貯められ、冷却器32へ供給される。冷却器32および熱交換器15を経由する環状の経路によって、EV機器31を加熱部とし熱交換器15を冷却部とする、ヒートパイプが形成される。
冷却器32および熱交換器15を接続している第二通路を冷媒が循環して、ヒートパイプを用いてEV機器31を冷却するときの冷媒の状態について説明する。冷媒は、熱交換器15において、熱交換器15のチューブ内を流通する際に周囲に放熱し冷却されることによって、凝縮(液化)する。熱交換器15における外気との熱交換によって、冷媒の温度は低下し冷媒は液化する。冷媒は、熱交換器15において凝縮潜熱を放出し等圧のまま徐々に液化して気液混合状態の湿り蒸気になる。気液二相状態の冷媒は、レシーバタンク45へ流れ、レシーバタンク45において、飽和蒸気状態の冷媒蒸気と飽和液状態の冷媒液とに気液分離される。
レシーバタンク45から流出する飽和液状態の冷媒が、冷媒通路26、四方弁50および冷媒通路24を経由して冷却器32へ流れ、EV機器31を冷却する。冷却部30において、液冷媒に熱を放出することで、EV機器31が冷却される。EV機器31との熱交換により、冷媒が加熱され、等圧のまま徐々に蒸発して、冷媒の乾き度が増大する。典型的には、冷却部30において、全ての冷媒が乾き飽和蒸気になるまで冷媒とEV機器31との熱交換が行なわれる。EV機器31との熱交換により一部または全部が気化された冷媒は、冷却器32から流出して冷媒通路25を順に経由して、熱交換器15へ戻る。
酷暑時のアイドル状態においては、四方弁50を切り替えることにより、圧縮機12、熱交換器14、膨張弁16および熱交換器18を経由するエアコンサイクルと、冷却器32、熱交換器15およびレシーバタンク45を経由するEV機器31の冷却サイクルとを分離する。これにより、室内の冷房能力を確保することができる。かつ、熱交換器15を凝縮器、冷却器32を蒸発器とするループ式のヒートパイプが作動することによって、EV機器31を冷却する冷媒の温度を低く保つことができる。したがって、EV機器31の冷却能力の不足を回避でき、EV機器31を確実に冷却できる。
EV機器31の冷却のために圧縮機12の動力は必要なく、省動力でEV機器31を冷却可能であるので、圧縮機12の消費動力を低減でき、省電費化を達成することができる。加えて、圧縮機12を長寿命化できるので圧縮機12の信頼性を向上することができる。レシーバタンク45が液だめ機能を有し液冷媒のバッファとなるので、冷却器32へ流れる液冷媒の流量を確保でき、EV機器31の冷却能力を安定させることができる。
レシーバタンク45から流出する液相の冷媒の経路に、ポンプ48が設けられている。ポンプ48は、冷媒の駆動力を発生し、レシーバタンク45から冷却器32へ冷媒を移送する。ポンプ48を設けることにより、確実にレシーバタンク45から冷却器32に冷媒を連続的に供給することが可能になるので、EV機器31の冷却能力を確実に確保することができる。ポンプ48により移送される冷媒は液冷媒であり、ポンプ48の消費動力は圧縮機12と比較して小さいので、省電費化を達成することができる。
[ECU80の構成]
図4は、ECU(Electric Control Unit)80の一部構成を示す機能ブロック図である。図4を参照して、本実施の形態における冷却装置1を制御するための制御装置としての、ECU80について説明する。ECU80は、入力インターフェイス81と、演算処理部82と、出力インターフェイス86と、記憶部89とを備えて構成されている。
入力インターフェイス81は、冷却器32から流出する冷媒の温度を示す信号Tを温度センサ51から受信し、レシーバタンク44内の冷媒液の貯留量を示す信号L1を液量センサ54から受信し、レシーバタンク45内の冷媒液の貯留量を示す信号L2を液量センサ55から受信する。入力インターフェイス81は、受信したこれらの信号を、演算処理部82に送信する。
演算処理部82は、演算処理によって実現される制御機能を示す、複数の機能ブロックを有している。演算処理部82は、検出部83と、判断部84と、制御部85とを含んでいる。検出部83は、信号Tに基づいて、冷却器32から流出する冷媒の温度を検出する。検出部83はまた、信号L1に基づいて、レシーバタンク44内の冷媒液の貯留量を検出する。検出部83はまた、信号L2に基づいて、レシーバタンク45内の冷媒液の貯留量を検出する。
判断部84は、冷却器32から流出する冷媒の温度と予め定められた温度閾値とを比較して、冷媒の温度が正常範囲内にあるか否かを判断する。判断部84はまた、レシーバタンク44,45内に溜まった液量が、下限閾値以下の少量、上限閾値以上の多量、下限閾値と上限閾値との間の適量のいずれであるか判断する。制御部85は、判断部84による冷媒温度の判断結果およびレシーバタンク44,45内の液量の判断結果に従って、冷却装置1を制御する。
記憶部89には、各種情報、プログラム、閾値、マップなどが記憶されている。演算処理部82は、必要に応じてデータを記憶部89から読み出したり、記憶部89にデータを格納したりする。
制御部85は、冷却装置1を用いてEV機器31を最適に冷却するための制御信号を生成する。制御信号は、出力インターフェイス86を経由して、冷却装置1を構成している各種の機器に出力される。より具体的には、膨張弁16の開度に対応した制御信号V1が膨張弁16に出力され、四方弁50の設定に対応した制御信号V2が四方弁50に出力され、圧縮機12の運転条件に対応した制御信号Cが圧縮機12に出力され、ポンプ48の運転条件に対応した制御信号Pがポンプ48に出力される。これにより、冷却装置1は、四方弁50による経路切替時に、冷却器32出口の冷媒の温度およびレシーバタンク44,45内の液量に従って、冷却器32に適切な量の冷媒を供給して、EV機器31の冷却能力を確保する。
なお、図4には、ECU80を使用した冷却装置1の制御によって実現される制御機能のうち、本実施の形態に係る冷却装置1の制御に関連する一部の機能に対応する機能ブロックのみが、代表的に示されている。図示された各機能ブロックは、いずれも演算処理部82であるCPUが記憶部89に記憶されたプログラムを実行することにより実現される、ソフトウェアとして機能してもよいが、ハードウェアにより実現されるようにしてもよい。なお、このようなプログラムは、記憶媒体に記録されて車両1000に搭載される。
[冷却装置1の制御方法]
図5は、冷却装置1の制御方法を示すフローチャートである。図5を参照して、EV機器31を冷却するための運転モードを通常運転モードから液体ポンプ運転モードへ切り替える場合の制御について説明する。なお「通常運転モード」とは、蒸気圧縮式冷凍サイクル10を使用したエアコン運転中、すなわち圧縮機12の運転中に、圧縮機12から吐出された冷媒を冷却器32へ流しEV機器31を冷却する、図2に示す冷却装置1の運転モードを指す。「液体ポンプ運転モード」とは、ポンプ48を冷媒の移送の動力源として熱交換器15と冷却器32との間に冷媒を循環させてEV機器31を冷却する、図3に示す冷却装置1の運転モードを指す。
図5に示すように、まずステップS10において、エアコン運転を行ない、圧縮機12を運転する。このとき、圧縮機12から吐出された冷媒が蒸気圧縮式冷凍サイクル10を循環し、冷房運転を行なう。
次にステップS20において、発熱源としてのEV機器31が発熱する。このとき、蒸気圧縮式冷凍サイクル10を循環する冷媒が冷却器32にも流れ、冷却器32を流れる冷媒とEV機器31との熱交換によってEV機器31の冷却を行なう。次にステップS30において、液体ポンプ運転モードへの切り替え条件を確認する。
たとえば、温度センサ51によって検出された冷媒の温度が予め定められた閾値以上であることを、冷却装置1を通常運転モードから液体ポンプ運転モードへ切り替える条件としてもよい。この場合、ステップS30では、冷媒の温度が閾値以上であるか否かの判断が行なわれる。このとき図4に示す検出部83は、入力インターフェイス81を介して、温度センサ51により検出された信号Tを受け取り、信号Tに基づいて冷却器32の出口の冷媒の温度を検出する。判断部84は、記憶部89から冷媒の温度の閾値を読み出し、冷却器32の出口の冷媒温度と冷媒温度の閾値とを比較して、冷媒の温度が閾値以上であるかを判断する。
冷媒の温度が上昇し閾値以上になる場合とは、たとえば酷暑環境において車両1000がアイドル状態にある場合などが考えられる。冷媒の温度がある温度(X℃)以上のときに圧縮機12の運転による冷媒の循環ではEV機器31を冷却することができなくなる場合であれば、冷媒温度の閾値をX℃に設定してもよい。または、冷媒温度のオーバーシュートを考慮して、冷媒温度の閾値をX℃よりも低い温度に設定してもよい。
ステップS30の判断において、液体ポンプ運転モードへの切り替え条件が満たされておらず、判断の結果がNOである場合には、ステップS40に進み、エアコンの運転条件の見直しが行なわれる。つまり、冷房およびEV機器31の冷却の現在の状態と、求められる冷房性能および/または求められるEV機器31の冷却性能とを比較して、圧縮機12の運転回転数を増加または減少する。圧縮機12の回転数の増減に伴って、圧縮機12から吐出される冷媒の圧力および温度が増減され、これにより冷媒能力およびEV機器31の冷却能力が調整される。図4に示す制御部85は、出力インターフェイス86を介して圧縮機12に制御信号Cを伝送し、圧縮機12の運転回転数を制御する。
ステップS30の判断において、液体ポンプ運転モードへの切り替え条件が満たされており、判断の結果がYESである場合には、ステップS100に進み、通常運転モードから液体ポンプ運転モードへの、運転モードの切り替えが行なわれる。運転モードを切り替えるサブルーチンの詳細については後述する。
ステップS40におけるエアコンの運転条件の見直し後、および、ステップS100の運転モードの切り替え後、制御フローはリターンされる。
図6は、冷却装置1の運転モードを切り替えるサブルーチンを示すフローチャートである。図6を参照して、ステップS100で行なわれる運転モードの切り替えについて、詳細を説明する。
液体ポンプ運転モードへの切り替えが行なわれるとき、まず図6に示すステップS110において、レシーバタンク45内に溜められた液状の冷媒を移送するためのポンプ48の運転を開始する。図4に示す制御部85は、出力インターフェイス86を介してポンプ48に制御信号Pを伝送し、ポンプ48を起動する。続いてステップS120において、第二蓄液器としてのレシーバタンク45内に溜められている冷媒液の量が少量であるか否かを判断する。
このとき図4に示す検出部83は、入力インターフェイス81を介して、液量センサ55により検出された信号L2を受け取り、信号L2に基づいてレシーバタンク45内に貯留された液状の冷媒の量を検出する。判断部84は、記憶部89から蓄液量の下限閾値を読み出し、レシーバタンク45内の蓄液量と蓄液量の下限閾値とを比較して、蓄液量が下限閾値を下回っているか否かを判断する。
ステップS120の判断においてレシーバタンク45内の冷媒液の量が少量であると判断されると、ステップS121へ進み、第一蓄液器としてのレシーバタンク44内に溜められている冷媒液の量が多量であることを確認する。検出部83は、入力インターフェイス81を介して、液量センサ54により検出された信号L1を受け取り、信号L1に基づいてレシーバタンク44内に貯留された液状の冷媒の量を検出する。判断部84は、記憶部89から蓄液量の上限閾値を読み出し、レシーバタンク44内の蓄液量と蓄液量の上限閾値とを比較して、蓄液量が上限閾値を上回っていることを確認する。
なお、冷媒の流れやすさは圧力バランスで決定され、レシーバタンク44に溜まる液量は、EV機器31の発熱量に従って変動する。つまり、EV機器31の発熱量が大きいと、冷却器32を流れる冷媒の圧力が高くなるため、熱交換器14と冷却器32との圧力差が小さく圧力勾配が小さくなる。そのため、レシーバタンク44から冷却器32へ冷媒が流れにくくなる。一方、冷却器32と熱交換器15との圧力差が大きく圧力勾配が大きくなるので、冷却器32からレシーバタンク45へ冷媒が流れやすくなる。その結果、レシーバタンク44に液が大量に溜まる現象が発生することになる。
レシーバタンク44,45内の蓄液量は、液量センサ54,55を用いて検出するほか、冷媒液の圧力に基づいて推定してもよく、または発熱源が予め定められた温度閾値以上になってからの経過時間によって推定してもよい。
次にステップS122において、圧縮機12の回転数を増加する。制御部85は、出力インターフェイス86を介して、圧縮機12に制御信号Cを伝送し、圧縮機12の回転数を一定割合(たとえば、現状の回転数の10%)または一定回転数(たとえば、1000rpm)増加する。ECU80の演算処理部82に含まれている制御部85は、液量センサ55により検出されたレシーバタンク45内の液冷媒の量に基づいて、液冷媒の貯留量が少量の場合に圧縮機12の回転数を増加する制御を行なう。このとき、四方弁50はまだ切り替えられておらず、冷媒通路23,24を連通して熱交換器14の出口から冷却器32へ向かう冷媒の流れを形成するように四方弁50は設定されている。
圧縮機12の回転数を増加することにより、熱交換器14および熱交換器15の放熱バランスが変化し、熱交換器15側で過冷却される冷媒量が増加する。そうすると、熱交換器14の出口側のレシーバタンク44には冷媒液が溜まらなくなる。その結果、レシーバタンク44内に溜められている冷媒液の量が減少するとともに、レシーバタンク45により多くの冷媒液が溜められ、レシーバタンク45内の冷媒液の量が増加する。
ステップS122の後、ステップS120の判断に戻り、レシーバタンク45内の冷媒液の量が再度確認される。再度のステップS120の判断において、レシーバタンク45内の冷媒液の量が依然として少量であると判断されると、圧縮機12の回転数をさらに増加する制御が行なわれる。圧縮機12の回転数を増加させた状態に維持する時間は、液量センサ55により検出されたレシーバタンク45内の冷媒液の量に基づいて、決定される。
ステップS120の判断においてレシーバタンク45内の冷媒液の量が少量でないと判断されると、ステップS130に進み、レシーバタンク45内に溜められている冷媒液の量が適量であるか否かを判断する。判断部84は、記憶部89から蓄液量の下限閾値および上限閾値を読み出し、検出部83が検出したレシーバタンク45内の蓄液量が下限閾値と上限閾値との間の範囲にあるか否かを判断する。
ステップS130の判断においてレシーバタンク45内の冷媒液の量が適量でないと判断されると、ステップS140に進み、レシーバタンク45内に溜められている冷媒液の量が多量であるか否かを判断する。判断部84は、記憶部89から蓄液量の上限閾値を読み出し、検出部83が検出したレシーバタンク45内の蓄液量が上限閾値を上回っているか否かを判断する。
ステップS140の判断においてレシーバタンク45内の冷媒液の量が多量であると判断されると、ステップS141へ進み、レシーバタンク44内に溜められている冷媒液の量が少量であることを確認する。判断部84は、記憶部89から蓄液量の下限閾値を読み出し、検出部83が検出したレシーバタンク44内の蓄液量と蓄液量の下限閾値とを比較して、蓄液量が下限閾値を下回っていることを確認する。
続いてステップS142において、圧縮機12の回転数を減少する。制御部85は、出力インターフェイス86を介して、圧縮機12に制御信号Cを伝送し、圧縮機12の回転数を一定割合(たとえば、現状の回転数の5%)または一定回転数(たとえば、500rpm)減少する。ECU80の演算処理部82に含まれている制御部85は、液量センサ55により検出されたレシーバタンク45内の液冷媒の量に基づいて、液冷媒の貯留量が多量の場合に圧縮機12の回転数を減少する制御を行なう。このとき、四方弁50はまだ切り替えられておらず、冷媒通路23,24を連通して熱交換器14の出口から冷却器32へ向かう冷媒の流れを形成するように四方弁50は設定されている。
ステップS142における圧縮機12の回転数の減少量を、ステップS122における回転数の増加量と異なる値、たとえば回転数の増加量の半分とすることにより、ステップS122で回転数を増加した圧縮機12がステップS142における回転数減少によって元の同じ回転数に戻ることを回避することができる。これにより、レシーバタンク45内の冷媒液の量をより精密に制御することが可能になる。
圧縮機12の回転数を減少することにより、熱交換器14および熱交換器15の放熱バランスが変化し、熱交換器15側で過冷却される冷媒量が減少する。そうすると、熱交換器15の出口側のレシーバタンク45には冷媒液が溜まらなくなる。その結果、レシーバタンク45内に溜められている冷媒液の量が減少するとともに、レシーバタンク44により多くの冷媒液が溜められ、レシーバタンク44内の冷媒液の量が増加する。
ステップS142の後、ステップS120の判断に戻り、レシーバタンク45内の冷媒液の量が再度確認される。再度のレシーバタンク45内の冷媒液の量の判断において、レシーバタンク45内の冷媒液の量が依然として多量である場合には、再度のステップS142における処理によって、圧縮機12の回転数をさらに増加する制御が行なわれる。圧縮機12の回転数を減少させた状態に維持する時間は、液量センサ55により検出されたレシーバタンク45内の冷媒液の量に基づいて、決定される。
ステップS130の判断においてレシーバタンク45内の冷媒液の量が適量であると判断されると、ステップS131へ進み、レシーバタンク44内に溜められている冷媒液の量が適量であることを確認する。判断部84は、記憶部89から蓄液量の下限閾値および上限閾値を読み出し、検出部83が検出したレシーバタンク44内の蓄液量が下限閾値と上限閾値との間の範囲にあることを確認する。
続いてステップS150において、四方弁50を切り替える。制御部85は、出力インターフェイス86を介して四方弁50に制御信号V2を伝送し、四方弁50の開閉設定を、上述した第一状態から第二状態へと切り替える。これにより、四方弁50を経由して流れる冷媒の経路が切り替えられ、熱交換器14の出口から冷却器32を経由せずに膨張弁16へ向かう冷媒の流れが形成されるとともに、ポンプ48の移送する冷媒が冷却器32と熱交換器15とを循環して流れるようになる。
四方弁50を切り替えた後に、ステップS160において、圧縮機12の回転数を元の回転数へ戻す。制御部85は、出力インターフェイス86を介して、圧縮機12に制御信号Cを伝送し、圧縮機12の回転数を、ステップS110においてポンプ48の運転を開始したときの回転数へ戻す操作を行なう。すなわち、ステップS122において圧縮機12の回転数を増加した場合には、ステップS160において圧縮機12の回転数を減少する。ステップS142において圧縮機12の回転数を減少した場合には、ステップS160において圧縮機12の回転数を増加する。レシーバタンク44,45内の液量が当初より適量であったため圧縮機12の回転数の増減が行なわれていない場合には、圧縮機12の回転数はそのまま維持される。このようにして、通常運転モードから液体ポンプ運転モードへの運転モードの切り替えが完了する。
以上説明したように、本実施の形態の冷却装置1は、四方弁50の開閉設定の切替によってEV機器31を冷却するための運転モードを通常運転モードから液体ポンプ運転モードへ切り替える際に、圧縮機12の運転条件を調整し、その後四方弁50を操作する。具体的には、四方弁50の切り替えの際にレシーバタンク44内に大量の液体が溜まっており、かつレシーバタンク45内の液量が少ないときには、圧縮機12の回転数を増加する。圧縮機12の回転数を調整して熱交換器14,15の放熱バランスを変化させることにより、レシーバタンク44内の液量を減少すると同時にレシーバタンク45内の液量を増加することができる。
他方、四方弁50の切り替えの際にレシーバタンク45内に大量の液体が溜まっており、かつレシーバタンク44内の液量が少ないときには、圧縮機12の回転数を減少する。この場合、レシーバタンク45内の液量を減少すると同時にレシーバタンク44内の液量を増加することができる。
レシーバタンク44,45内の液量を適量に調節した時点で、四方弁50の開閉設定を変更して、冷却装置1の運転モードを切り替える。これにより、熱交換器15と冷却器32との間に冷媒を循環させる閉ループ状の経路内の冷媒量が不足することを防止できる。したがって、運転モード切り替え後にも、EV機器31の冷却性能を高く保つことができる。運転モード切り替えにより、エアコンサイクルとEV機器31の冷却サイクルとが分離されるが、両サイクル内に分配される冷媒の流量を最適化できるので、十分な冷房性能およびEV機器31の高い冷却効率とを常に確保することができる。
なお、これまでの実施の形態においては、レシーバタンク45内に貯留された液状の冷媒の量を判断し、レシーバタンク45内の蓄液量が少量の場合に圧縮機12の回転数を増加し、レシーバタンク44内の冷媒液量を減少するとともにレシーバタンク45内の冷媒液量を増加する例について説明した。この例に替えて、レシーバタンク44内に貯留された液状の冷媒の量を液量センサ54で検出し、レシーバタンク44内の蓄液量に基づいて、圧縮機12の運転条件を調整してもよい。つまり、レシーバタンク44内の蓄液量が多量であると判断された場合に、圧縮機12の回転数を増加することにより、レシーバタンク44内の冷媒液量を減少するとともにレシーバタンク45内の冷媒液量を増加するように制御してもよい。
この場合の圧縮機12の回転数を増加させた状態に維持する時間は、液量センサ54により検出されたレシーバタンク44内の冷媒液の量に基づいて、決定される。制御部85は、出力インターフェイス86を介して圧縮機12に制御信号Cを伝送し、圧縮機12の回転数を増加する制御を行なう。同様に、レシーバタンク44内の蓄液量が少量であると判断された場合には、圧縮機12の回転数を減少する。これにより、レシーバタンク44およびレシーバタンク45の両方に貯留された冷媒液の量を、適切な量に調整することができる。
また、EV機器31を例として車両に搭載された電気機器を冷却する冷却装置1について説明した。電気機器としては、少なくとも作動によって熱を発生させる電気機器であれば、インバータ、モータジェネレータなどの例示された電気機器に限定されるものではなく、任意の電気機器であってもよい。冷却の対象となる電気機器が複数個ある場合においては、複数の電気機器は、冷却の目標となる温度範囲が共通していることが望ましい。冷却の目標となる温度範囲は、電気機器を作動させる温度環境として適切な温度範囲である。
さらに、本発明の冷却装置1により冷却される発熱源は、車両に搭載された電気機器に限られず、熱を発生する任意の機器、または任意の機器の発熱する一部分であってもよい。
以上のように本発明の実施の形態について説明を行なったが、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。この発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味、および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。