JP2014231930A - 加湿エレメント及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】初期の加湿性能だけでなく、長期間にわたる加湿性能にも優れた加湿エレメント及びその製造方法を提供する。【解決手段】本発明の加湿エレメントの製造方法は、親水性無機微粒子及び水を含むコーティング組成物を多孔質基材に塗布した後、塗布物を予備乾燥させ、次いでマイクロ波加熱により絶乾状態まで乾燥させることを特徴とする。また、本発明の加湿エレメントは、多孔質基材と、前記多孔質基材上に形成された、親水性無機微粒子を含む親水性被膜とを有し、前記親水性被膜の比表面積が100m2/g以上350m2/g以下であることを特徴とする。【選択図】図1
Description
本発明は、加湿装置に使用される加湿エレメント及びその製造方法に関する。
加湿装置には、吸水性のシート材料を用いた加湿エレメントが一般に用いられている。この加湿装置では、加湿エレメントに水分を供給し、水分の蒸発作用を利用することによって空気の加湿が行われる。したがって、加湿エレメントは、加湿性能に優れていることはもちろんのこと、水に長期間晒されるため、水による劣化を防止する観点から耐水性にも優れていなければならない。また、住宅又はビル等の新築及び改築直後は、室内環境中に揮発性有機化合物(VOC)が存在することがあるため、VOC汚染によって加湿エレメントの加湿性能が低下しないことも要求される。加湿エレメントに用いられる吸水性のシート材料としては、親水性被膜を形成した多孔質基材、親水処理が行われた多孔質基材等が一般に用いられている。
親水性被膜は、様々な材料及び方法を用いて形成することができる。その中でも、親水性無機粒子を用いた親水性被膜の形成方法として、例えば、特許文献1には、コロイダルシリカ及びケイ酸質物質を含有する塗布剤を基材の表面に塗布して300〜700℃で熱処理することにより、微細孔を有する親水性被膜を形成することが提案されている。また、特許文献2には、アルミナ粒子、ケイ酸オリゴマー又はコロイダルシリカ、界面活性剤、有機溶剤及び水を含む塗料組成物を基材の表面に塗布することにより、親水性被膜を形成することが提案されている。
親水性無機粒子を用いた親水性被膜は、一般に、親水性に優れているものの、揮発性有機化合物(VOC)等の汚染物質等が吸着し易い。そのため、親水性無機粒子を用いた親水性被膜を形成した基材を加湿エレメントにおいて使用すると、初期段階では良好な加湿性能が得られるものの、時間の経過と共に汚染物質等が吸着して親水性が低下し、十分な加湿性能が得られないという問題がある。
他方、親水性無機粒子を用いた親水性被膜は、多孔質化させることにより、表面積を増大し、親水性無機粒子の表面に存在する水酸基を多く露出させることができる。これにより、汚染物質等が親水性被膜に吸着しても、露出した水酸基が多いため、長期間にわたって親水性を維持することができると考えられる。
他方、親水性無機粒子を用いた親水性被膜は、多孔質化させることにより、表面積を増大し、親水性無機粒子の表面に存在する水酸基を多く露出させることができる。これにより、汚染物質等が親水性被膜に吸着しても、露出した水酸基が多いため、長期間にわたって親水性を維持することができると考えられる。
しかしながら、特許文献1の方法は、親水性被膜を多孔質化しているものの、300〜700℃という高温下で熱処理を行っているため、シリカ表面で水酸基(具体的には、シラノール基)の脱水反応が生じ、親水性被膜の親水性が低下してしまう。また、この方法は、高温下での熱処理が要求されるため、耐熱性の低い基材を用いることができず、使用可能な基材が制限されてしまう。
また、特許文献2の方法によって形成される親水性被膜は、緻密且つ平滑であるため、表面積が小さい。そのため、この親水性被膜は、時間の経過と共に汚染物質等が吸着して親水性が低下し易く、十分な加湿性能が得られない。
また、特許文献2の方法によって形成される親水性被膜は、緻密且つ平滑であるため、表面積が小さい。そのため、この親水性被膜は、時間の経過と共に汚染物質等が吸着して親水性が低下し易く、十分な加湿性能が得られない。
本発明は、上記のような問題を解決するためになされたものであり、初期の加湿性能だけでなく、長期間にわたる加湿性能にも優れた加湿エレメント及びその製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記の問題を解決すべく鋭意研究した結果、親水性無機微粒子及び水を含むコーティング組成物を多孔質基材に塗布して乾燥させる際に、マイクロ波加熱を用いて急速に乾燥させることにより、表面積が大きい親水性被膜を多孔質基材上に形成することができ、このようにして得られた親水性被膜を有する多孔質基材が加湿エレメントに適していることを見出した。
すなわち、本発明は、親水性無機微粒子及び水を含むコーティング組成物を多孔質基材に塗布した後、塗布物を予備乾燥させ、次いでマイクロ波加熱により絶乾状態まで乾燥させることを特徴とする加湿エレメントの製造方法である。
また、本発明は、多孔質基材と、前記多孔質基材上に形成された、親水性無機微粒子を含む親水性被膜とを有し、前記親水性被膜の比表面積が150m2/g以上350m2/g以下であることを特徴とする加湿エレメントである。
また、本発明は、多孔質基材と、前記多孔質基材上に形成された、親水性無機微粒子を含む親水性被膜とを有し、前記親水性被膜の比表面積が150m2/g以上350m2/g以下であることを特徴とする加湿エレメントである。
本発明によれば、初期の加湿性能だけでなく、長期間にわたる加湿性能にも優れた加湿エレメント及びその製造方法を提供することができる。
実施の形態1.
本発明の加湿エレメントの製造方法は、親水性無機微粒子及び水を含むコーティング組成物を多孔質基材に塗布した後、塗布物を予備乾燥させ、次いでマイクロ波加熱により絶乾状態まで乾燥させることを特徴とする。
本発明の加湿エレメントの製造方法は、親水性無機微粒子及び水を含むコーティング組成物を多孔質基材に塗布した後、塗布物を予備乾燥させ、次いでマイクロ波加熱により絶乾状態まで乾燥させることを特徴とする。
以下、本発明の加湿エレメント及びその製造方法の好適な実施の形態につき図面を用いて説明する。
図1は、本実施の形態の加湿エレメントの製造方法を説明するための図である。
本実施の形態の加湿エレメントの製造方法では、第1の工程として、親水性無機微粒子3及び水4を含むコーティング組成物を多孔質基材1に塗布することによって多孔質基材1上に塗布物2を形成する(図1(a)参照)。
図1は、本実施の形態の加湿エレメントの製造方法を説明するための図である。
本実施の形態の加湿エレメントの製造方法では、第1の工程として、親水性無機微粒子3及び水4を含むコーティング組成物を多孔質基材1に塗布することによって多孔質基材1上に塗布物2を形成する(図1(a)参照)。
コーティング組成物に用いられる親水性無機微粒子3としては、特に限定されず、当該技術分野において公知のものを用いることができる。親水性無機微粒子3の例としては、シリカ微粒子、チタニア微粒子、アルミナ微粒子等が挙げられる。これらは、単独又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でもシリカ微粒子は、表面にシラノール基を有し、親水性が高いため好ましい。また、シリカ微粒子は、水に対して僅かに溶解するため、シリカ微粒子の表面に汚染物質が吸着しても、水との接触によって表層が徐々に溶出し、汚染物質の吸着がない新たな表面を露出させることができる。そのため、シリカ微粒子を用いることにより、親水性を長期間にわたって維持することが可能になる。
親水性無機微粒子3の平均粒径は、特に限定されないが、好ましくは15nm以下、より好ましくは4nm以上15nm以下である。ここで、本明細書において「平均粒径」とは、光散乱法により測定される平均粒径を意味する。この範囲の平均粒径を有する親水性無機微粒子3を用いることにより、コーティング組成物から形成される親水性被膜5の表面積を高めることができる。
特に、上記範囲の平均粒径を有するシリカ微粒子は、シリカ微粒子1個あたり約15〜30質量%に相当する表面部分が、コーティング組成物中で溶解した状態となるため、コーティング組成物を乾燥させる際にバインダーとしての役割も果たし、親水性被膜5の強度を高めることもできる。シリカ微粒子の平均粒径が15nmを超えると、コーティング組成物中で溶解したシリカ成分の割合が低くなり、バインダーとしての役割が得られ難くなる。その結果、親水性被膜5の強度を十分に確保できず、クラック等の欠陥が生じ易くなることがある。一方、シリカ微粒子の平均粒径が4nm未満であると、コーティング組成物中で溶解したシリカ成分の割合が高くなり、シリカ微粒子同士が凝集してしまう。その結果、表面積が大きい親水性被膜5を形成することが難しくなることがある。
コーティング組成物における親水性無機微粒子3の含有量は、特に限定されないが、好ましくは0.2質量%以上10質量%未満、より好ましくは0.5質量%以上8質量%以下、最も好ましくは1質量%以上5質量%以下である。親水性無機微粒子3の含有量が0.2質量%未満であると、形成される親水性被膜5が薄くなるため、親水性被膜5の親水性が十分に確保されないことがある。また、水への溶出によって親水性被膜5が失われてしまい、長期間にわたって親水性を維持することができないこともある。一方、親水性無機微粒子3の含有量が10質量%以上であると、形成される親水性被膜5にクラック等の欠陥が生じ易くなり、多孔質基材1から親水性被膜5が剥離することがある。
親水性無機微粒子3の使用形態としては、特に限定されないが、取扱性の観点からコロイド状の親水性無機微粒子3を用いることが好ましい。このようなコロイド状の親水性無機微粒子3は、市販されており、例えば、商品名「スノーテックスS」(日産化学工業株式会社製)、商品名「スノーテックスOS」(日産化学工業株式会社製)、商品名「スノーテックスUP」(日産化学工業株式会社製)、商品名「スノーテックスOUP」(日産化学工業株式会社製)、商品名「カタロイドSI―50」(日揮触媒化成株式会社製)、商品名「カタロイドSI―550」(日揮触媒化成株式会社製)等を用いることができる。
コーティング組成物に用いられる水4としては、特に限定されず、RO水、脱イオン水、蒸留水等の純水を用いることができる。
コーティング組成物における水4の含有量は、特に限定されないが、好ましくは80質量%以上99.8質量%以下、より好ましくは85質量%以上99質量%以下、最も好ましくは90質量%以上98質量%以下である。水4の含有量が80質量%未満であると、コーティング組成物を多孔質基材1に均一に塗布し難くなることがある。一方、水4の含有量が99.8質量%を超えると、固形分が少なくなり、所望の特性を有する親水性被膜5を形成することができないことがある。
コーティング組成物における水4の含有量は、特に限定されないが、好ましくは80質量%以上99.8質量%以下、より好ましくは85質量%以上99質量%以下、最も好ましくは90質量%以上98質量%以下である。水4の含有量が80質量%未満であると、コーティング組成物を多孔質基材1に均一に塗布し難くなることがある。一方、水4の含有量が99.8質量%を超えると、固形分が少なくなり、所望の特性を有する親水性被膜5を形成することができないことがある。
コーティング組成物は、形成される親水性被膜5の表面積を高める観点から、15nm超過100nm以下の平均粒径を有する親水性無機粒子をさらに含むことができる。粒径の異なる粒子を配合することにより、親水性無機微粒子3のみを用いる場合に比べて、親水性被膜5の表面に凹凸構造が形成され易く、より高い表面積を有する親水性被膜5を形成することができる。
親水性無機粒子の平均粒径が15nm以下であると、親水性無機粒子を配合することによる上記の効果が十分に得られない。一方、親水性無機粒子の平均粒径が100nmを超えると、形成される親水性被膜5の表面の凹凸構造が大きくなりすぎてしまい、親水性被膜5の強度が低下する。
コーティング組成物における親水性無機粒子の含有量は、特に限定されないが、好ましくは0.01質量%以上3質量%以下、より好ましくは0.05質量%以上2.5質量%以下、最も好ましくは1質量%以上2質量%以下である。親水性無機粒子の含有量が0.01質量%未満であると、親水性無機粒子を配合することによる上記の効果が十分に得られない。一方、親水性無機粒子の含有量が3質量%を超えると、親水性被膜5の強度が低下してしまう。
コーティング組成物は、多孔質基材1に対する塗布性を向上させる観点から、水よりも沸点が低いアルコールをさらに含むことができる。水よりも沸点が低いアルコールを配合することにより、コーティング組成物の表面張力を低下させ、多孔質基材1に対する塗布性を向上させることができる。
水よりも沸点が低いアルコールとしては、特に限定されず、当該技術分野において公知のものを用いることができる。水よりも沸点が低いアルコールの例としては、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール等の炭素数が3以下のアルコールが挙げられる。これらは、単独又は2種以上を組み合わせて用いることができる。なお、炭素数が3を超えるアルコールでは、アルコールの臭気が親水性被膜5中に残り易くなることがあるため好ましくないが、臭気が問題にならない場合又は当該臭気を抑制する手段と組み合わせれば使用することができる。
水よりも沸点が低いアルコールのコーティング組成物における含有量は、特に限定されないが、好ましくは0.1重量%以上30重量%以下、より好ましくは0.2質量%以上25質量%以下、最も好ましくは0.3質量%以上20質量%以下である。水よりも沸点が低いアルコールの含有量が0.1重量%未満であると、水よりも沸点が低いアルコールを配合することによる上記の効果が十分に得られない。一方、水よりも沸点が低いアルコールの含有量が30重量%を超えると、コーティング組成物の乾燥速度が速くなりすぎ、塗布むらが生じ易くなる。
コーティング組成物は、下記で説明する乾燥工程において、親水性無機微粒子3の間に働く分子間力による凝集を抑制する観点から、水よりも表面張力が小さく且つ沸点が高い水溶性有機溶剤をさらに含むことができる。水よりも表面張力が小さく且つ沸点が高い水溶性有機溶剤を配合することにより、コーティング組成物の乾燥工程において、親水性無機微粒子3の間に働く分子間力による凝集を抑制し、表面積が大きい親水性被膜5を形成することができる。なお、水の表面張力(20℃)は、72.8mN/mである。水よりも沸点の低い水溶性有機溶剤を用いると、乾燥工程中に水溶性有機溶剤が水よりも先に揮発するため、凝集を十分に抑制することができない。
水よりも表面張力が小さく且つ沸点が高い水溶性有機溶剤としては、特に限定されず、当該技術分野において公知のものを用いることができる。水よりも表面張力が小さく且つ沸点が高い水溶性有機溶剤の例としては、N−メチルピロリドン、乳酸エチル等が挙げられる。これらは、単独又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
水よりも表面張力が小さく且つ沸点が高い水溶性有機溶剤のコーティング組成物における含有量は、特に限定されないが、好ましくは0.01質量%以上1質量%以下、より好ましくは0.05質量%以上0.8質量%以下、最も好ましくは0.1質量%以上0.5質量%以下である。水よりも表面張力が小さく且つ沸点が高い水溶性有機溶剤の含有量が0.01質量%未満であると、水よりも表面張力が小さく且つ沸点が高い水溶性有機溶剤を配合することによる上記の効果が十分に得られない。一方、水よりも表面張力が小さく且つ沸点が高い水溶性有機溶剤の含有量が1質量%を超えると、親水性被膜5中に水溶性有機溶剤が残存し、多孔質基材1が溶解してしまうことがある。
多孔質基材1としては、特に限定されず、当該技術分野において公知のものを用いることができる。多孔質基材1の例としては、発泡樹脂、焼結多孔体、不織布等が挙げられる。これらは、単独又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
発泡樹脂としては、特に限定されず、当該技術分野において公知のものを用いることができる。例えば、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリオレフィン等の熱可塑性樹脂を発泡剤によって発泡させた熱可塑性樹脂フォームを用いることができる。また、発泡樹脂は、表面の親水性を向上させるために、カルボン酸、ヒドロキシ基等の親水性官能基を当該樹脂に導入してもよい。
焼結多孔体としては、特に限定されず、当該技術分野において公知のものを用いることができる。例えば、ポリエチレン、ポリメタクリル酸メチル、ポリスチレン等の熱可塑性樹脂を焼結成形した有機焼結体(焼結プラスチック)を用いることができる。また、焼結多孔体は、表面の親水性を向上させるために、当該技術分野において公知の方法によって親水化処理を行ってもよい。
不織布としては、特に限定されず、当該技術分野において公知のものを用いることができる。例えば、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレン、セルロース等の樹脂から形成される不織布を用いることができる。また、不織布は、表面の親水性を向上させるために、カルボン酸、ヒドロキシ基等の親水性官能基を当該樹脂に導入してもよい。
焼結多孔体としては、特に限定されず、当該技術分野において公知のものを用いることができる。例えば、ポリエチレン、ポリメタクリル酸メチル、ポリスチレン等の熱可塑性樹脂を焼結成形した有機焼結体(焼結プラスチック)を用いることができる。また、焼結多孔体は、表面の親水性を向上させるために、当該技術分野において公知の方法によって親水化処理を行ってもよい。
不織布としては、特に限定されず、当該技術分野において公知のものを用いることができる。例えば、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレン、セルロース等の樹脂から形成される不織布を用いることができる。また、不織布は、表面の親水性を向上させるために、カルボン酸、ヒドロキシ基等の親水性官能基を当該樹脂に導入してもよい。
多孔質基材1の平均孔径は、特に限定されないが、好ましくは50nm以上600μm以下、より好ましくは50μm以上200μm以下である。ここで、本明細書において「平均孔径」とは、水銀ポロシメーターにより測定される平均孔径のことを意味する。多孔質基材1の平均孔径が50nm未満であると、毛細管力が大きくなり、水分の放出が生じ難くなる結果、所望の加湿性能が得られないことがある。一方、多孔質基材1の平均孔径が600μmを超えると、毛細管力が小さくなり、水分の吸水性能が低下してしまうことがある。
コーティング組成物を多孔質基材1に塗布する方法としては、特に限定されず、当該技術分野において公知の方法を用いることができる。塗布方法の例としては、スプレー塗布、ブラシ塗布、各種コーターによる塗布、浸漬塗布等が挙げられる。
コーティング組成物の塗布量は、特に限定されず、作製する加湿エレメントの大きさ等に応じて適宜調整すればよい。また、所望の塗布量とするために、コーティング組成物を複数回に分けて塗布してもよい。
コーティング組成物の塗布量は、特に限定されず、作製する加湿エレメントの大きさ等に応じて適宜調整すればよい。また、所望の塗布量とするために、コーティング組成物を複数回に分けて塗布してもよい。
また、多孔質基材1の表面の濡れ性を向上させる観点から、コーティング組成物を多孔質基材1に塗布する前に、多孔質基材1にオゾン酸化、紫外線照射等の表面処理を行ってもよい。
本実施の形態の加湿エレメントの製造方法では、第2の工程として、塗布物2を予備乾燥させる(図1(b)参照)。
塗布物2を予備乾燥させる方法としては、特に限定されず、当該技術分野において公知の方法を用いることができる。例えば、塗布物2を放置することで自然乾燥させ、水4を蒸発させればよい。
塗布物2を予備乾燥させる方法としては、特に限定されず、当該技術分野において公知の方法を用いることができる。例えば、塗布物2を放置することで自然乾燥させ、水4を蒸発させればよい。
塗布物2の予備乾燥の程度は、特に限定されないが、塗布物2の湿量基準含水率が10%以上50%以下になるまで行われることが好ましい。塗布物2の湿量基準含水率が10%未満であると、親水性無機微粒子3の凝集が進行して緻密且つ平坦な親水性被膜5が形成されてしまい、表面積が大きい親水性被膜5を形成することができないことがある。一方、塗布物2の湿量基準含水率が50%を超えると、マイクロ波加熱を用いた乾燥の際に塗布物2が流動し、多孔質基材1の表面に塗布物2を保持させることができないことがある。
本実施の形態の加湿エレメントの製造方法では、第3の工程として、予備乾燥させた塗布物2をマイクロ波加熱により絶乾状態まで乾燥させる(図1(c)参照)。ここで、本明細書において「絶乾状態」とは、塗布物2に水4が存在しなくなるまで乾燥した状態のことを意味する。
マイクロ波加熱を用いた乾燥を行うことにより、塗布物2が急速に加熱され、水の沸点よりも高い温度に晒される。そして、塗布物2中に含まれる水4が急激に水蒸気となって蒸発する際、親水性無機微粒子3の間にメソ細孔6が形成される。ここで、本明細書において「メソ細孔6」とは、直径2nm〜50nmの空孔のことを意味する。これにより、親水性被膜5の表面積を大きくすることができる。
マイクロ波加熱を用いた乾燥によって形成される親水性被膜5の比表面積は、150m2/g以上350m2/g以下、好ましくは200m2/g以上300m2/g以下である。親水性被膜5の比表面積が150m2/g未満であると、親水性被膜5の表面積が小さすぎてしまい、長期間にわたる親水性を維持することができない。一方、親水性被膜5の比表面積が350m2/gを超えると、親水性被膜5の強度が低下してしまう。ここで、本明細書において「比表面積」とは、ガス吸着法(BET法)によって測定される値のことを意味する。
また、マイクロ波加熱を用いることにより、多孔質基材1の表面が高温状態となって溶融する。そして、溶融した多孔質基材1の表面は、親水性被膜5と溶着するため、親水性被膜5と多孔質基材1との間の接着性を向上させることができる。
これに対して一般的な乾燥方法(例えば、水4の沸点以下で加熱乾燥、自然乾燥等)によって形成される親水性被膜5の断面図を図2に示す。図2に示されるように、形成される親水性被膜5は、親水性無機微粒子3が凝集した緻密な被膜であるため、表面積が小さく、加湿性能を十分に向上させることができない。
マイクロ波加熱による乾燥における水分蒸発速度は、特に限定されないが、好ましくは500g/分以上である。水分蒸発速度が500g/分未満であると、水4の蒸発が遅すぎてしまい、親水性無機微粒子3が凝集した緻密な親水性被膜5が形成されてしまうことがある。
マイクロ波加熱の条件は、特に限定されず、使用するコーティング組成物や多孔質基材1の種類に応じて適宜調整すればよいが、発振周波数2,400MHz以上2,500MHz以下、出力3kW以上のマイクロ波を用いることが好ましい。発振周波数が2,400MHz未満又は2,500MHz超過の場合であっても加熱を行うことができるが、電波法の制約のため範囲外の周波数帯を用いることができない。また、出力が3kW未満であると、所望の処理速度が得られず、実用的ではない。
以下、実施例及び比較例により本発明の詳細を説明するが、これらによって本発明が限定されるものではない。
実施例及び比較例で作製した加湿エレメント(試験片)は、以下に示す方法によって測定及び評価を行った。
実施例及び比較例で作製した加湿エレメント(試験片)は、以下に示す方法によって測定及び評価を行った。
(吸水性の評価)
吸水率は、3cm×15cm×1mmの試験片の下端部3cmを水に接触させ、一定時間(10秒、30秒、60秒、600秒)吸水させた後、吸い上げ高さを測定した。
(吸水速度の評価)
吸水速度は、3cm×3cm×1mmの試験片に、50μLの水滴を1cmの高さから滴下し、その水滴が試験片に吸収されるまでの時間を測定した。
吸水率は、3cm×15cm×1mmの試験片の下端部3cmを水に接触させ、一定時間(10秒、30秒、60秒、600秒)吸水させた後、吸い上げ高さを測定した。
(吸水速度の評価)
吸水速度は、3cm×3cm×1mmの試験片に、50μLの水滴を1cmの高さから滴下し、その水滴が試験片に吸収されるまでの時間を測定した。
(加湿性能の評価)
加湿性能は、一定風速の風路内(20℃、55%RH、2.0m/秒、132m3/h)に設置した加湿エレメントの入口側及び出口側の絶対湿度を露点計を用いて測定し、これらの絶対湿度の値から下記の式によって加湿量を算出して評価した。
加湿性能(cc/h/m2)=(出口側絶対湿度(g/kg)−入口側絶対湿度(g/kg))×風量(m3/h)/加湿面積(m2)
加湿性能は、一定風速の風路内(20℃、55%RH、2.0m/秒、132m3/h)に設置した加湿エレメントの入口側及び出口側の絶対湿度を露点計を用いて測定し、これらの絶対湿度の値から下記の式によって加湿量を算出して評価した。
加湿性能(cc/h/m2)=(出口側絶対湿度(g/kg)−入口側絶対湿度(g/kg))×風量(m3/h)/加湿面積(m2)
(耐VOC性の評価)
耐VOC性は、疎水性化合物であるα−ピネンを50質量%含有するエタノール溶液の蒸気に加湿エレメントを一定時間暴露させた後、加湿性能を評価し、初期の加湿性能からの変化を基に、以下の3段階で評価した。この評価では、1シーズンあたりの加湿時間を2000時間とし、大気中のVOCが室内空気の目標値400μg/立法メートルで連続供給されると仮定して、5年相当及び10年相当経過時における性能評価を行った。
◎:初期の加湿性能に対する変化率が5%以下
○:初期の加湿性能に対する変化率が5%超過10%以下
×:初期の加湿性能に対する変化率が10%超過
耐VOC性は、疎水性化合物であるα−ピネンを50質量%含有するエタノール溶液の蒸気に加湿エレメントを一定時間暴露させた後、加湿性能を評価し、初期の加湿性能からの変化を基に、以下の3段階で評価した。この評価では、1シーズンあたりの加湿時間を2000時間とし、大気中のVOCが室内空気の目標値400μg/立法メートルで連続供給されると仮定して、5年相当及び10年相当経過時における性能評価を行った。
◎:初期の加湿性能に対する変化率が5%以下
○:初期の加湿性能に対する変化率が5%超過10%以下
×:初期の加湿性能に対する変化率が10%超過
(耐水性の評価)
耐水性は、加湿エレメントを流水(2L/分)に一定時間(24時間、240時間、720時間、1440時間)晒し、初期の加湿性能からの変化を基に、以下の3段階で評価した。
◎:初期の加湿性能に対する加湿性能の変化率が5%以下
○:初期の加湿性能に対する加湿性能の変化率が5%超過10%以下
×:初期の加湿性能に対する加湿性能の変化率が10%超過
耐水性は、加湿エレメントを流水(2L/分)に一定時間(24時間、240時間、720時間、1440時間)晒し、初期の加湿性能からの変化を基に、以下の3段階で評価した。
◎:初期の加湿性能に対する加湿性能の変化率が5%以下
○:初期の加湿性能に対する加湿性能の変化率が5%超過10%以下
×:初期の加湿性能に対する加湿性能の変化率が10%超過
(実施例1)
脱イオン水に、親水性無機微粒子として平均粒径5nmのシリカ微粒子を含むコロイダルシリカ(カタロイドSI−550)を添加した後、撹拌混合することによってコーティング組成物を調製した。このコーティング組成物において、シリカ微粒子の含有量は2質量%とした。
次に、このコーティング組成物を、多孔質基材としての不織布(ユニチカ社製ユニベックス、平均孔径5μm、1mm厚)に浸漬塗布した後、10分間静置して湿量基準含水率35%(50%以下)となるまで自然乾燥させた。
次に、発振周波数2,400〜2,500MHz、出力5kWのマイクロ波を用い、500g/分以上の水分蒸発速度で絶乾状態まで水分を急速に蒸発させることにより、親水性被膜を形成させて加湿エレメントを得た。形成された親水性被膜の比表面積を上記の方法によって測定したところ、比表面積は200m2/gであった。
脱イオン水に、親水性無機微粒子として平均粒径5nmのシリカ微粒子を含むコロイダルシリカ(カタロイドSI−550)を添加した後、撹拌混合することによってコーティング組成物を調製した。このコーティング組成物において、シリカ微粒子の含有量は2質量%とした。
次に、このコーティング組成物を、多孔質基材としての不織布(ユニチカ社製ユニベックス、平均孔径5μm、1mm厚)に浸漬塗布した後、10分間静置して湿量基準含水率35%(50%以下)となるまで自然乾燥させた。
次に、発振周波数2,400〜2,500MHz、出力5kWのマイクロ波を用い、500g/分以上の水分蒸発速度で絶乾状態まで水分を急速に蒸発させることにより、親水性被膜を形成させて加湿エレメントを得た。形成された親水性被膜の比表面積を上記の方法によって測定したところ、比表面積は200m2/gであった。
(実施例2)
脱イオン水に、親水性無機微粒子として平均粒径5nmのシリカ微粒子を含むコロイダルシリカ(カタロイドSI−550)、及び水よりも表面張力が小さく且つ沸点が高い水溶性有機溶剤としてN−メチルピロリドンを添加した後、撹拌混合することによってコーティング組成物を調製した。このコーティング組成物において、シリカ微粒子の含有量は2質量%、N−メチルピロリドンの含有量は0.1質量%とした。
次に、このコーティング組成物を用い、実施例1と同様の方法及び条件にて、予備乾燥及びマイクロ波加熱による乾燥を行うことにより、加湿エレメントを作製した。形成された親水性被膜の比表面積を上記の方法によって測定したところ、比表面積は250m2/gであった。
脱イオン水に、親水性無機微粒子として平均粒径5nmのシリカ微粒子を含むコロイダルシリカ(カタロイドSI−550)、及び水よりも表面張力が小さく且つ沸点が高い水溶性有機溶剤としてN−メチルピロリドンを添加した後、撹拌混合することによってコーティング組成物を調製した。このコーティング組成物において、シリカ微粒子の含有量は2質量%、N−メチルピロリドンの含有量は0.1質量%とした。
次に、このコーティング組成物を用い、実施例1と同様の方法及び条件にて、予備乾燥及びマイクロ波加熱による乾燥を行うことにより、加湿エレメントを作製した。形成された親水性被膜の比表面積を上記の方法によって測定したところ、比表面積は250m2/gであった。
(実施例3)
脱イオン水に、親水性無機微粒子として平均粒径5nmのシリカ微粒子を含むコロイダルシリカ(カタロイドSI−550)、水よりも沸点が低いアルコールとしてエタノール、及び水よりも表面張力が小さく且つ沸点が高い水溶性有機溶剤としてN−メチルピロリドンを添加した後、撹拌混合することによってコーティング組成物を調製した。このコーティング組成物において、シリカ微粒子の含有量は2質量%、エタノールの含有量は0.5質量%、N−メチルピロリドンの含有量は0.1質量%とした。
次に、このコーティング組成物を用い、実施例1と同様の方法及び条件にて、予備乾燥及びマイクロ波加熱による乾燥を行うことにより、加湿エレメントを作製した。形成された親水性被膜の比表面積を上記の方法によって測定したところ、比表面積は300m2/gであった。
脱イオン水に、親水性無機微粒子として平均粒径5nmのシリカ微粒子を含むコロイダルシリカ(カタロイドSI−550)、水よりも沸点が低いアルコールとしてエタノール、及び水よりも表面張力が小さく且つ沸点が高い水溶性有機溶剤としてN−メチルピロリドンを添加した後、撹拌混合することによってコーティング組成物を調製した。このコーティング組成物において、シリカ微粒子の含有量は2質量%、エタノールの含有量は0.5質量%、N−メチルピロリドンの含有量は0.1質量%とした。
次に、このコーティング組成物を用い、実施例1と同様の方法及び条件にて、予備乾燥及びマイクロ波加熱による乾燥を行うことにより、加湿エレメントを作製した。形成された親水性被膜の比表面積を上記の方法によって測定したところ、比表面積は300m2/gであった。
(比較例1)
不織布(ユニチカ社製ユニベックス、1mm厚)を加湿エレメントとして用いた。
(比較例2)
実施例1のコーティング組成物を多孔質基材としての不織布(ユニチカ社製ユニベックス、1mm厚)に浸漬塗布した後、絶乾状態まで自然乾燥させることにより、親水性被膜を形成させて加湿エレメントを得た。形成された親水性被膜の比表面積を上記の方法によって測定したところ、比表面積は100m2/gであった。
不織布(ユニチカ社製ユニベックス、1mm厚)を加湿エレメントとして用いた。
(比較例2)
実施例1のコーティング組成物を多孔質基材としての不織布(ユニチカ社製ユニベックス、1mm厚)に浸漬塗布した後、絶乾状態まで自然乾燥させることにより、親水性被膜を形成させて加湿エレメントを得た。形成された親水性被膜の比表面積を上記の方法によって測定したところ、比表面積は100m2/gであった。
上記の実施例及び比較例で作製した加湿エレメントについて上記の評価を行った。その結果を表1に示す。
表1に示されているように、マイクロ波加熱により絶乾状態まで乾燥させて作製した実施例1〜3の加湿エレメントは、初期の加湿性能に優れているだけでなく、長期間にわたる加湿性能にも優れていた。
これに対して、不織布のみを用いた比較例1の加湿エレメントは、吸水性が低く、初期の加湿性能が十分でなかった。また、自然乾燥により絶乾状態まで乾燥させて作製した比較例2の加湿エレメントは、耐VOC性や耐水性が低く、長期間にわたる加湿性能が十分ではなかった。
これに対して、不織布のみを用いた比較例1の加湿エレメントは、吸水性が低く、初期の加湿性能が十分でなかった。また、自然乾燥により絶乾状態まで乾燥させて作製した比較例2の加湿エレメントは、耐VOC性や耐水性が低く、長期間にわたる加湿性能が十分ではなかった。
以上の結果からわかるように、本発明によれば、初期の加湿性能だけでなく、長期間にわたる加湿性能にも優れた加湿エレメント及びその製造方法を提供することができる。
1 多孔質基材、2 塗布物、3 親水性無機微粒子、4 水、5 親水性被膜、6 メソ細孔。
Claims (14)
- 親水性無機微粒子及び水を含むコーティング組成物を多孔質基材に塗布した後、塗布物を予備乾燥させ、次いでマイクロ波加熱により絶乾状態まで乾燥させることを特徴とする加湿エレメントの製造方法。
- 前記予備乾燥は、前記塗布物の湿量基準含水率が10%以上50%以下になるまで行われることを特徴とする請求項1に記載の加湿エレメントの製造方法。
- 前記マイクロ波加熱による乾燥は、500g/分以上の水分蒸発速度で行われることを特徴とする請求項1又は2に記載の加湿エレメントの製造方法。
- 前記親水性無機微粒子が、シリカ微粒子であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の加湿エレメントの製造方法。
- 前記多孔質基材は、熱可塑性樹脂から形成されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の加湿エレメントの製造方法。
- 前記多孔質基材は、50nm以上600μm以下の平均孔径を有することを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の加湿エレメントの製造方法。
- 前記コーティング組成物中の前記親水性無機微粒子の含有量が0.2質量%以上10.0質量%以下であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の加湿エレメントの製造方法。
- 前記親水性無機微粒子の平均粒径が15nm以下であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の加湿エレメントの製造方法。
- 前記コーティング組成物は、15nm超過100nm以下の平均粒径を有する親水性無機粒子、前記水よりも沸点が低いアルコール、及び前記水よりも表面張力が小さく且つ沸点が高い水溶性有機溶剤からなる群から選択される少なくとも1種をさらに含むことを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の加湿エレメントの製造方法。
- 多孔質基材と、
前記多孔質基材上に形成された、親水性無機微粒子を含む親水性被膜と
を有し、前記親水性被膜の比表面積が100m2/g以上350m2/g以下であることを特徴とする加湿エレメント。 - 前記多孔質基材は、熱可塑性樹脂から形成されていることを特徴とする請求項10に記載の加湿エレメント。
- 前記多孔質基材は、50nm以上600μm以下の平均孔径を有することを特徴とする請求項10又は11に記載の加湿エレメント。
- 前記親水性無機微粒子の平均粒径が15nm以下であることを特徴とする請求項10〜12のいずれか一項に記載の加湿エレメント。
- 前記親水性被膜が、15nm超過100nm以下の平均粒径を有する親水性無機粒子をさらに含むことを特徴とする請求項10〜13のいずれか一項に記載の加湿エレメント。
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