上記従来の常閉型電磁弁のように、弁部の開閉動作、すなわち、可動部(プランジャ)の進退移動に伴ってバネ室としても機能するダンパ室の容積を変化させて絞り通路を介して弁室と連通させることはバネ室(ダンパ室)に存在する気泡を排出する点で有効であり、又、絞り通路を小さく(狭く)することは弁室に存在する気泡のバネ室(ダンパ室)内への侵入を防止する点で有効である。しかしながら、ダンパ室にバネを収容してバネ室としても機能させる場合には、収容したバネの周りに気泡が集まりやすく又バネの表面張力等の作用によって気泡が離れにくい状態となる。更に、ダンパ室(バネ室)と弁室とを連通する絞り通路を狭くすることにより、ダンパ室(バネ室)内に存在している気泡の排出が困難になる。
本発明は、上記した問題に対処するためになされたものであり、その目的の一つは、気泡に起因する自励振動を抑制することができる電磁弁を提供することにある。
上記目的を達成するための本発明による電磁弁は、ハウジングと、プランジャと、ロッドと、ソレノイドと、付勢手段とを備えている。
前記ハウジングは、内部に弁部が設けられるとともに外部から前記弁部へ作動液が流入する流入ポート及び前記弁部を通過した作動液が外部へ流出する流出ポートが形成される。前記プランジャは、前記ハウジングの内部に収容されて前記ハウジングに形成されたガイド部によって支持される。前記ロッドは、前記プランジャに対して基端側が一体的に組み付けられるとともに先端側に前記プランジャの軸方向への移動に応じて前記弁部を形成する弁座に当接又は離間して前記弁部を開閉する弁体が形成される。前記ソレノイドは、前記ハウジングの周囲に配置されて電磁力により前記プランジャ及び前記ロッドを一体的に(例えば、前記弁部の開弁方向又は閉弁方向に)吸引する。前記付勢手段は、前記ハウジングの内部に収容されて付勢力により前記プランジャ及び前記ロッドを一体的に(例えば、前記弁部の閉弁方向又は開弁方向に)付勢する。
本発明による電磁弁の特徴の一つは、前記ハウジングの内部にて前記付勢手段を収容することなく前記プランジャの前記軸方向への移動によって体積が増減する液室と、前記弁部を収容する弁室と前記液室とを連通して前記プランジャの前記軸方向への移動による前記液室の体積の増減に伴って前記液室と前記弁室との間で流通する作動液に対して流通抵抗を付与する流通抵抗付与通路と、からなるダンパ室を備えることにある。
これによれば、付勢手段として、例えば、バネ等を収容することなく、すなわち、所謂、バネ室とは別に独立したダンパ室を設けることができる。これにより、作動液中に気泡が存在する場合であっても、ダンパ室内に付勢手段が設けられないことにより、例えば、付勢手段によって気泡が収集されてしまい、ダンパ室から気泡を排出すること(押し出すこと)が困難となる状況を生じさせることがない。従って、電磁弁の作動、すなわち、プランジャを軸方向に移動させて液室の体積を増減させることに伴い、仮にダンパ室内の作動液中に気泡が存在する場合であっても、存在する気泡を液室から流通抵抗付与通路を経て、極めて容易にかつ確実に弁室を介して外部(リザーバ等)に排出することができる。このとき、流通抵抗付与通路が流通する作動液に適切な流通抵抗を付与することができるため、プランジャ及びロッドに自励振動が発生した場合であっても、この振動を適切に減衰させることができる。
この場合、前記ダンパ室を構成する前記液室の体積を、前記ソレノイドの非通電時における前記付勢手段の前記付勢力による前記プランジャの前記弁部に対する前記軸方向への移動によって、ゼロに向けて所定の体積以下となるまで減少させることができる。この場合、より具体的に、前記所定の体積としては、例えば、前記ソレノイドの通電時に前記電磁力によって前記プランジャが前記軸方向に移動したときの前記液室の体積(最大体積)の1/3の体積とすることができる。
これによれば、ダンパ室を構成する液室の体積を極力ゼロとなるように設定された所定の体積以下となるまで減少させることができる。ここで、所定の体積としては、液体中に存在可能な気泡量を示す気泡残存指標に基づき、自励振動するロッド及びプランジャを適切に減衰させるときにダンパ室の液室内に存在しても減衰特性に影響を及ぼさない気泡残存率から設定することができ、具体的には、ソレノイドの通電時における液室の体積、すなわち、最大体積の1/3に設定することができる。従って、プランジャの軸方向への移動により、ダンパ室の液室の体積を所定の体積以下(具体的には、最大体積の1/3以下)となるまで減少させることにより、適切にダンパ室から気泡を排出する(押し出す)ことができて、ダンパ室の減衰特性に対する気泡の悪影響を排除することができる。
又、これらの場合、前記流通抵抗付与通路を、流通する作動液が層流となることを抑制する長さに設定することができる。このように、流通する作動液が流通抵抗付与通路内(すなわち、オリフィス内)にて層流となることを抑制する程度の短く設定することにより、液室内の作動液が流通抵抗付与通路を流通することに伴って発生する減衰力が粘度に比例することを防止することができる。言い換えれば、減衰力を温度に依存させることなく常に適切に発生させることができる。
又、これらの場合、前記付勢手段は、前記ハウジング内にて前記ダンパ室から独立して前記プランジャによって区画された収容室内に収容され、前記弁室と前記収容室とが、少なくとも前記流通抵抗付与通路の内径よりも大きな内径を有する流通路を介して連通することができる。これによれば、付勢手段の収容される収容室及び流通路がプランジャ及びロッドに生じた自励振動を減衰させる減衰力を発生することを効果的に抑制することができる。従って、収容室内においては付勢手段が収容されることによって作動液中の気泡が収集されやすくなるものの、プランジャ及びロッドに生じた自励振動に対する減衰力の発生を抑制することにより、ダンパ室が減衰特性を発揮する状況に悪影響を及ぼすことを確実に防止することができる。
又、これらの場合、前記ダンパ室を構成する前記液室は前記プランジャの前記弁室側の端面と前記ハウジングの前記弁室側の内周面に対して圧入された円環部材とによって形成され、前記ダンパ室を構成する前記流通抵抗付与通路は前記円環部材の内周面と前記ロッドの外周面とによって形成されており、この場合には、前記ダンパ室を構成する前記液室の体積を、前記ソレノイドの非通電時に前記付勢手段が前記プランジャ及び前記ロッドに前記付勢力を付与することによって前記弁体が前記弁座に着座した状態で、前記所定の体積以下とすることができる。
又、前記ダンパ室を構成する前記液室は前記プランジャと一体的に前記軸方向に移動するように前記弁室側に設けられた段付き円環部材と前記ハウジングの前記弁室側の内周面に対して圧入された円環部材とによって形成され、前記ダンパ室を構成する前記流通抵抗付与通路は前記円環部材の内周面と前記段付き円環部材を形成する円筒部の外周面とによって形成されており、この場合には、前記ダンパ室を構成する前記液室の体積を、前記ソレノイドの非通電時に前記付勢手段が前記プランジャ及び前記ロッドに前記付勢力を付与することによって前記弁体が前記弁座に着座した状態で、前記所定の体積以下とすることができる。
これらによれば、電磁弁が、ソレノイドの非通電時に付勢手段による付勢力によって弁体を弁座に着座させた状態に維持する常閉の電磁弁である場合、開弁状態から閉弁状態に移行することによって、ダンパ室を構成する液室の体積を所定の体積(最大体積の1/3)以下まで減少させることができる。従って、常閉の電磁弁においても、適切にダンパ室から気泡を排出する(押し出す)ことができて、ダンパ室の減衰特性に対する気泡の悪影響を排除することができる。
更に、前記ダンパ室を構成する前記液室は前記プランジャの前記弁室と反対側の端面と前記ハウジングの内面とによって形成され、前記ダンパ室を構成する前記流通抵抗付与通路は前記プランジャに形成された貫通孔によって形成されており、この場合には、前記ダンパ室を構成する前記液室の体積を、前記ソレノイドの非通電時に前記付勢手段が前記プランジャ及び前記ロッドに前記付勢力を付与することによって前記弁体が前記弁座から離座した状態で、前記所定の体積以下とすることができる。
これによれば、電磁弁が、ソレノイドの非通電時に付勢手段による付勢力によって弁体を弁座から離座させた状態に維持する常開の電磁弁である場合、閉弁状態から開弁状態に移行することによって、ダンパ室を構成する液室の体積を所定の体積(最大体積の1/3)以下まで減少させることができる。従って、常開の電磁弁においても、適切にダンパ室から気泡を排出する(押し出す)ことができて、ダンパ室の減衰特性に対する気泡の悪影響を排除することができる。
以下、本発明の実施形態に係る電磁弁について図面を用いて説明する。図1は、本発明の実施形態に係る電磁弁Aの構成を示す断面図である。電磁弁Aは、所謂、常閉型の電磁弁であり、弁体ユニット10を備えている。
弁体ユニット10は、ロッド11、プランジャ(可動子)12及びバネ13を有している。ロッド11は、基端側に圧入部11aが形成され、先端側に後述するシート30に形成された弁座31に着座して作動液の連通を遮断(阻止)するように半球状の弁体11bが形成されている。更に、ロッド11は、中心軸に沿って同軸的に形成される第1流通路11cと先端側の外周面にて開口し第1流通路11cと連通する第2流通路11dが形成されている。第1流通路11c及び第2流通路11dは本発明の流通路を形成する。
プランジャ12は、図1に示すように、円筒状に形成された磁性体であり、ロッド11の圧入部11aが圧入されて固定されるシャフト圧入穴12aが中心軸と同軸に設けられている。プランジャ12は、後述するハウジング20の内部に配置されており、ハウジング20の内部を弁室21とバネ室22とに区画する。そして、プランジャ12は、弁室21と背圧室であるバネ室22とを連通させる流通路を構成する流通路12bが形成されている。連通路12bはシャフト圧入穴12aの底面からプランジャ12の中心軸に沿って同軸的に形成される。従って、ロッド11がプランジャ12のシャフト圧入穴12aに圧入された状態では、ロッド11の第1流通路11cと流通路12bが連通可能に接続され、第2連通路11d,第1連通路11c及び流通路12bが一体的に連通することによって弁室21とバネ室22とを連通させることができる。
本実施形態におけるバネ13は、図1に示すように、ロッド11及びプランジャ12を閉弁方向、すなわち、ロッド11の弁体11bをシート30の弁座31に着座させる方向に付勢する付勢力を発生する、所謂、押しバネである。そして、バネ13は、プランジャ12に形成されたバネ座12cに組み付けられて、後述するハウジング20のバネ収容穴20f内に収容される。
ハウジング20は、固定子として機能するものであり、図1に示すように、円柱状に形成された磁性体である本体部20aに、厚みが薄い円筒部20bが同軸となるように一体的に結合された形状に形成される。円筒部20bは、開口端部から所定長さにわたって設けられており、内部に収容したプランジャ12の軸方向への進退移動を案内(ガイド)する。このため、以下の説明においては、このハウジング20を構成する円筒部20bをガイド部20bとも称呼する。又、円筒部20bは、非磁性の円環部20cを介して本体部20aに結合されるようになっている。更に、円筒部20bには、端部の開口部20dの内壁から外面へと径方向に貫通し、作動液を外部に排出する排出ポート20eが対向して2箇所に設けられている。又、本体部20aには、プランジャ12に形成されたバネ座12cに組み付けられたバネ13を収容するバネ収容穴20fが形成されている。
又、ハウジング20内部に形成される弁室21は、プランジャ12の先端側の端面とシート部30の上端側の端面とによって区画される空間であるとともに、ロッド11の外周面とガイド部20b(すなわち、ハウジング20)の内周面とによって区画される空間であり、この弁室21にはロッド11の弁体11b及びシート部30の弁座31によって構成される弁部が含まれる。ハウジング20内部に形成される背圧室としてのバネ室22は、プランジャ12を挟んで弁室21と反対側にて、プランジャ12の後端側の端面と本体部20aの下端側の端面及びバネ収容穴20fの内周面とによって区画される空間である。尚、これらの弁室21及ぶバネ室22には作動液が満たされる。
シート30は、図1に示すように、円筒状に形成された非磁性体である本体部30aに、中心軸と同軸に作動液が流入する流入ポート30bが設けられている。流入ポート30bは、深部において細くなっており、細くなった流入ポート30bとシート30(本体部30a)の端部との境界部分に弁座31が形成されている。弁座31は、弁体ユニット10を構成するロッド11の弁体11bがバネ13の付勢力によって当接(着座)することにより、流入ポート30bから弁室21への作動液の流入を遮断する。逆に、弁座31は、ロッド11の弁体11bが後述するソレノイド50による吸引力(電磁力)によって離間(離座)することにより、流入ポート30bから弁室21への作動液の流入を許可する。尚、以下の説明において、ロッド11の弁体11bが弁座31から離間する(離座する)方向を「第1方向」と称呼し、ロッド11の弁体11bと弁座31に当接する(着座する)方向を「第2方向」と称呼する場合がある。そして、シート30は、弁座31が設けられた端部からハウジング20の開口部20dに圧入され、ハウジング20から脱落しないように強固に嵌め込まれる。
本実施形態においては、バネ室22(より詳しくは、バネ収容穴20f)に対して独立して、弁室21内にダンパ室40が形成される。本実施形態におけるダンパ室40は、図2に拡大して示すように、弁室21において弁体ユニット10のプランジャ12の弁室21側の端面と、この端面に対向してハウジング20の円筒部20bに一体的に固着される円環部41とによって区画されて液室40aが形成される。円環部41は、外周側にてガイド部20bに対して圧入により一体的に固着されるとともに、内周側にはプランジャ12に圧入されたロッド11を挿通するための貫通孔41aが形成されている。そして、ダンパ室40の液室40aは、プランジャ12に発生する自励振動を抑制するための所望の減衰性能を発揮するために、流通抵抗付与通路としての連通路42を介して弁室21と連通するようになっている。連通路42は、円環部41の貫通孔41aの内周面とロッド11の外周面とによって形成されるものであり、円環部41の厚みによって決定される一般通路42aの弁室21側の開口端部を拡径させるテーパ部42bを有している。
ここで、弁体ユニット10、シート30及びダンパ室40を形成する円環部41のハウジング20への組み付けを説明しておく。まず、弁体ユニット10を構成するロッド11の圧入部11aをプランジャ12のシャフト圧入穴12aに圧入して一体的に組み付ける。このとき、図1に示したように、ロッド11の第1流通路11cとプランジャ12の流通路12bとが連通するように接続される。そして、ハウジング20に対して弁体ユニット10が組み付けられる。すなわち、上述したようにロッド11とプランジャ12が一体化された後、プランジャ12に形成されたバネ座12cにバネ13が固定され、この状態の弁体ユニット10を、プランジャ12側を先頭にしてハウジング20の円筒部20b内部に挿入する。続いて、円環部41及びシート30がハウジング20の円筒部20b内部に圧入されることにより、弁体ユニット10は、ロッド11の弁体11bが第1方向又は第2方向に移動することが可能となる。尚、バネ13がハウジング20の本体部20aに形成されたバネ収容穴20fに圧縮されて収容されることにより、ロッド11及びプランジャ12には第2方向に向けて付勢する付勢力が常に作用するようになっている。すなわち、電磁弁Aは、通常、ロッド11の弁体11bがシート30の弁座31に着座した閉弁状態を維持するようになっている。
ここで、円環部41をハウジング20の円筒部20bに圧入することによって形成されるダンパ室40の体積に関し、ロッド11及びプランジャ12に発生する自励振動を適切に減衰させる体積を設定するために本発明者らは種々の実験を行った。そして、プランジャ12が移動(具体的には、第2方向に前進)することに伴ってダンパ室40の体積が「0」に向かって減少したとき、仮にダンパ室40内に気泡が存在する状況であってもこの気泡をダンパ室40から弁室21に排出して(押し出して)プランジャ12の振動を適切に減衰することができる最適な体積の大きさを設定した。この実験によれば、図3に示すように、ロッド11の弁体11bが第1方向に移動して離座した状態(開弁状態)におけるダンパ室40の体積(最大体積)に対して、ロッド11の弁体11bが第2方向に移動して着座した状態(閉弁状態)におけるダンパ室40の体積(最小体積)が1/3以下となるように円環部41がハウジング20の円筒部20bに圧入される。尚、最小体積については、電磁弁Aの組み付け(組み立て)に対して許容される誤差を考慮して設定される。このように、特に、閉弁状態におけるダンパ室40内の最小体積が適切に維持されることにより、プランジャ12が第2方向に移動する度にダンパ室40に存在する気泡を確実に弁室21に向けて排出することができて、ダンパ室40がロッド11及びプランジャ12の自励振動を減衰する減衰特性に対する気泡の影響を大幅に低減することができる。
又、ダンパ室40と弁室21とを連通する連通路42において、円環部41にテーパ部42bを形成することにより、連通路42を構成する一般通路42aの長さを短くすることができる。すなわち、連通路42(より詳しくは、一般通路42a)を、所謂、オリフィスとして機能させることができる。ここで、一般に、オリフィスにおいては、図4に概略的に示すように、流路が長くなると作動液の流れが層流となって減衰特性(減衰力)が作動液の粘度に比例する、言い換えれば、減衰力が作動液の温度に大きく依存する傾向がある。一方で、オリフィスにおいては、出口付近にて渦が発生するため、減衰特性(減衰力)は作動液の慣性(密度)に比例する、言い換えれば、オリフィスの出口付近では作動液の粘度に影響されない傾向がある。これらのことから、連通路42(一般通路42a)については、図1,2に示すように、狭くて短い方が有効な減衰特性(ダンパ特性)を発揮しやすい構造であると言える。これにより、ダンパ室40内の作動液が連通路42(一般通路42a)を通過して弁室21に向けて流れるとき、作動液に対して適切な流通抵抗を発生させることができ、ダンパ室40の体積が変動する状況、すなわち、プランジャ12に自励振動が発生している状況を速やかに収束させる(減衰させる)ことができる。
又、電磁弁Aは、図1に示すように、ソレノイド50を備えている。ソレノイド50は、コイル51、コイルヨーク52及びリングヨーク53を有する。コイル51は、プランジャ12の外部を囲うように、ハウジング20の外部において巻回されている。コイルヨーク52は、カップ状に形成された磁性体であり、コイル51の径方向外側にてコイル51を囲うように配置される。リングヨーク53は、円盤状の磁性体であり、中央の挿通孔がハウジング20の円筒部20bの外周に嵌め込まれることにより固定される。コイルヨーク52は、ハウジング20の本体部20a及びリングヨーク53に取り付けられる。このように、コイル51は、磁性体であるコイルヨーク52及びリングヨーク43によってその外周が覆われる。
このように構成される常閉の電磁弁Aにおいては、ソレノイド50のコイル51に開弁電流、より具体的には、バネ13による第2方向への付勢力に抗してロッド11及びプランジャ12を第1方向に移動させるために必要な電磁的な吸引力(ソレノイド力)をコイル51に発生させる電流よりも大きな電流が供給されると、図5に示すように、ロッド11の弁体11bがシート30の弁座31から離座して開弁状態に移行する。これにより、シート30の流入ポート30bを介してハウジング20の弁室21に向けて作動液が流入し、流入した作動液の大部分はハウジング20の流出ポート20eから外部に流出する一方で、流入した作動液の一部は弁室21から連通路42を介してダンパ室40内に流入する。
このように、プランジャ12(ロッド11の弁体11b)が第1方向に移動してダンパ室40に作動液が流入するときには、移動する直前の状態においてダンパ室40の体積が最小体積(最大体積に対して1/3以下の体積)となっており、ダンパ室40内の作動液中の気泡が適切に排出された(押し出された)状態であるため、気泡の影響を受けることなくダンパ室40及び連通路42によって適切な減衰特性を発揮することができる。従って、プランジャ12に自励振動が発生した場合であっても、この振動を適切に制振することができる。
一方、電磁弁Aにおいて、ソレノイド50のコイル51への開弁電流の供給が遮断されて、図5に示した開弁状態から図1に示した閉弁状態に移行すると、ロッド11の弁体11がシート30の弁座31に着座する。これにより、シート30の流入ポート30bを介した作動液の弁室21への流入が遮断されるとともに、プランジャ12の前進によってダンパ室40内の作動液が連通路42を介して弁室21に排出されてハウジング20の流出ポート20eから外部に流出する。
このように、プランジャ12(ロッド11の弁体11b)が第2方向に移動してダンパ室40の作動液が押し出されて流出するときには、移動した後の状態においてダンパ室40の体積が最大体積から最小体積(最大体積に対して1/3以下の体積)となるため、ダンパ室40内の作動液中に気泡が存在する状況であっても適切に排出する(押し出す)ことができる。従って、プランジャ12に自励振動が発生した場合であっても、この振動を適切に制振することができる。
以上の説明からも理解できるように、上記実施形態によれは、ダンパ室40の液室40aにバネ13を収容することなく、すなわち、バネ室22とは別に独立したダンパ室40を設けることができる。これにより、作動液中に気泡が存在する場合であっても、ダンパ室40内から気泡を排出すること(押し出すこと)が困難となる状況を生じさせることがない。従って、電磁弁Aの作動、すなわち、プランジャ12を軸方向に移動させて液室40aの体積を増減させることに伴い、仮にダンパ室40内の作動液中に気泡が存在する場合であっても、存在する気泡を液室40aから連通路42を経て、極めて容易にかつ確実に弁室21を介して外部に排出することができる。このとき、連通路42が流通する作動液に適切な流通抵抗を付与することができるため、プランジャ12及びロッド11に自励振動が発生した場合であっても、この振動を適切に減衰させることができる。
又、ダンパ室40を構成する液室40aの体積を、極力「0」となるように液室40aの体積を最大体積の1/3以下となる最小体積となるまで減少させることができる。これにより、適切にダンパ室40から気泡を排出する(押し出す)ことができて、ダンパ室40の減衰特性に対する気泡の悪影響を排除することができる。
更に、連通路42の長さ、すなわち、一般通路42aを、層流となることを抑制する程度の短く設定することができる。これにより、ダンパ室40の液室40a内の作動液が連通路42を流通することに伴って発生する減衰力が粘度に比例することを防止することができる。従って、ダンパ室40による減衰力を温度に依存させることなく常に適切に発生させることができる。
<第1変形例>
上記実施形態においては、円環部41をハウジング20の円筒部20bに圧入することによって、弁室21を区画してダンパ室40を形成するように実施した。この場合、図6に示すように、円環部41に加えて、断面L字状の段付き円環部43によって弁室21を区画してダンパ室40を形成するように実施することも可能である。段付き円環部43は、小径の円筒部43aと大径の鍔部43bとから形成されており、円筒部43aがロッド11の外周面に対して圧入されるようになっている。又、円筒部43aの内径部分には、ロッド11の外周面との間で作動液の流通を許容する流通路43a1が形成されており、鍔部43bによって区画された弁室21を介してプランジャ12に形成された流通路12bと連通するようになっている。ここで、この変形例においては、プランジャ12に形成された流通路12bは、図6に示すように、プランジャ12の中心軸から外周方向に離間して形成される。また、この変形例においては、図6に示すように、ダンパ室40が円環部41と段付き円環部43の鍔部43bとによって区画されて形成されており、流通路42の一般通路42aが段付き円環部43の円筒部43aの外周面との間で形成される。
このように形成される第1変形例における電磁弁A1においては、ロッド11に対して段付き円環部43の円筒部43aが圧入されているため、図7に示すように、ロッド11及びプランジャ12と一体的に段付き円環部43が移動する。これにより、段付き円環部43が第1方向又は第2方向に移動することにより、上記実施形態と同様に、ダンパ室40の体積が最大体積と最小体積との間で変化する。従って、上記実施形態と同様の効果が期待できる。
<第2変形例>
上記実施形態及び第1変形例においては、電磁弁A及び電磁弁A1が常閉の電磁弁であるとして実施した。この場合、常開の電磁弁である電磁弁A2として実施することも可能である。このように、電磁弁A2が常開の電磁弁である場合には、図8に示すように、バネ13がプランジャ12の外周面の外方にてハウジング20の円筒部20bの弁室21側に形成された段部20b1に収容される。尚、この場合、バネ13としては、収縮方向に付勢力を付与する、所謂、引きバネが採用され、段部20b1に収容されたバネ13はプランジャ12の外周面に圧入されるバネ保持部12dと連結される。又、この第2変形例においては、電磁弁A2が常開の電磁弁であり、ロッド11の弁体11bが弁座31から離座するとき、すなわち、ロッド11及びプランジャ12がバネ13の付勢力によって第2方向に移動するときにダンパ室40(液室40a)の体積が最小体積となるようにするため、図8に示すように、ダンパ室40(液室40a)がプランジャ12の弁室21と反対側の端面(後端面)とハウジング20の本体部20a(内面)との間で形成される。そして、この第2変形例においては、ダンパ室40内にプランジャ12の移動を規制するストッパ44が設けられる。尚、この第2変形例においては、上記実施形態及び第1変形例の場合の連通路42と異なり、長い連通路42を介してダンパ室40と弁室21とが連通される。
このように、常開の電磁弁A2では、図9に示すように、プランジャ12が第1方向から第2方向に移動する度にダンパ室40の体積が最大体積に対して1/3以下となる最小体積に変化する。従って、この第2変形例においても、ダンパ室40内の作動液中から気泡を効果的に排出することができる。ただし、この第2変形例においては、上記実施形態及び第1変形例に比して、電磁弁A2の連通路42が長いため、作動液の粘度に比例した流通抵抗が付与される。このため、上記実施形態及び第1変形例の場合に比して、作動液の温度の影響を受けやすく、若干、減衰特性が悪化する可能性があるものの、気泡が存在することによる減衰特性の低下は上記実施形態及び第1変形例と同様に良好に抑制することができる。
ところで、上述した実施形態に示した電磁弁A、第1変形例に示した電磁弁A1及び第2変形例に示した電磁弁A2の適用が可能な油圧装置として、例えば、車両のブレーキ装置を挙げることができる。以下、常閉の電磁弁A,A1及び常開の電磁弁A2を車両のブレーキ装置に適用する場合を説明する。図10は、電磁弁A,A1,A2の適用が可能な車両のブレーキ装置100の概略システム構成図である。この車両のブレーキ装置100は、所謂、電子制御式ブレーキシステム(ECB)であり、ブレーキペダル110と、マスタシリンダユニット120と、動力液圧発生装置130と、ブレーキユニット140と、液圧制御弁装置150と、ブレーキ制御を司るブレーキECU180とを含んで構成される。
マスタシリンダユニット120は、マスタシリンダ121とリザーバ122とを備えている。マスタシリンダ121は、加圧ピストン121a,121bを備えたタンデム式であり、ブレーキペダル110の踏み込み操作に伴って入力されるペダル踏力に対して、それぞれ、所定の倍力比を有するマスタシリンダ圧Pmc_FR,Pmc_FLを発生する。マスタシリンダ121の上部には、作動液(ブレーキフルード)を貯留するリザーバ122が設けられている。これにより、マスタシリンダ121においては、ブレーキペダル110の踏み込み操作が解除されて加圧ピストン121a,121bが後退しているときに、加圧ピストン121a,121bによって形成される加圧室121a1,121b1がリザーバ122と連通するようになっている。尚、加圧室121a1,121b1は、それぞれ、後述するマスタ圧配管111,112を介して液圧制御弁装置150と連通するようになっている。
動力液圧発生装置130は、加圧ポンプ131とアキュムレータ132とを備えている。加圧ポンプ131は、その吸入口がリザーバ122に接続され、吐出口がアキュムレータ132に接続され、モータ133を駆動することにより作動液を加圧する。アキュムレータ132は、加圧ポンプ131により加圧された作動液の圧力エネルギーを窒素等の封入ガスの圧力エネルギーに変換して蓄える。又、アキュムレータ132は、マスタシリンダユニット120に設けられたリリーフバルブ123に接続されている。リリーフバルブ123は、作動液の圧力が所定の圧力以上に高まった場合に開弁し、作動液をリザーバ122に戻す。
ブレーキユニット140は、図10に示すように、車両の各車輪にそれぞれ設けられるブレーキユニット140FR,140FL,140RR,140RLからなる。尚、以下の説明においては、車輪ごとに設けられる構成についてその符号の末尾に、右前輪についてはFR、左前輪についてはFL、右後輪についてはRR,左後輪についてはRLを付すものとするが、特に車輪位置を特定する必要がない場合には、末尾に符号を省略する。各車輪にそれぞれ設けられるブレーキユニット140FR,140FL,140RR,140RLは、ブレーキロータ141FR,141FL,141RR,141RLとブレーキキャリパ内に内蔵されたホイールシリンダ142FR,142FL,142RR,142RLとを備える。ここで、ブレーキユニット140は、4輪ともディスクブレーキ式に限定されるものではなく、例えば、4輪ともドラムブレーキ式であっても良いし、前輪がディスクブレーキ式、後輪がドラムブレーキ式等のように任意に組み合わせたものであっても良い。
ホイールシリンダ142FR,142FL,142RR,142RLは、液圧制御弁装置150に接続されて同装置150を介して供給される作動液の液圧が伝達されるようになっている。そして、液圧制御弁装置150を介して伝達される(供給される)液圧(油圧)により、車輪と共に回転するブレーキロータ141FR,141FL,141RR,141RLにブレーキパッドを押し付けて車輪に制動力を付与する。
液圧制御弁装置150は、各ホイールシリンダ142FR,142FL,142RR,142RLに接続される4つの個別流路151FR,151FL,151RR,151RLと、個別流路151FR,151FL,151RR,151RLを連通する主流路152と、個別流路151FR,151FLとマスタ圧配管111,112とを接続するマスタ圧流路153,154と、主流路152とアキュムレータ圧配管113とを接続するアキュムレータ圧流路155とを備えている。ここで、マスタ圧流路153,154、及び、アキュムレータ圧流路155は、それぞれ、主流路152に対して並列に接続される。
各個別流路151FR,151FL,151RR,151RLには、それぞれ、保持弁161FR,161FL,161RR,161RLが設けられる。各保持弁161は、開弁状態では主流路152と各ホイールシリンダ142との間の作動液の連通を許可し、閉弁状態では主流路152と各ホイールシリンダ142との間の作動液の連通を禁止するものである。具体的に、左前輪側のブレーキユニット140FL及び右後輪側のブレーキユニット140RRに設けられた保持弁161FL,161RRは、ソレノイドの非通電時にバネの付勢力により開弁状態を維持し、ソレノイドへの通電中においてのみ閉弁状態となる常開の電磁弁(電磁開閉弁)である。従って、上述した常開の電磁弁A2は、保持弁161FL,161RRとして採用することができる。ここで、保持弁161(増圧弁)として電磁弁A2を採用した場合、電磁弁A2の流入ポート30bは個別流路151FL,151RRの上流側(主流路152側)が接続され、流出ポート20eは個別流路151FL,151RRの下流側に接続される。
一方、右前輪側のブレーキユニット140FR及び左後輪側のブレーキユニット140RLに設けられた保持弁161FR,161RLは、ソレノイドの非通電時にバネの付勢力により閉弁状態を維持し、ソレノイドへの通電中においてのみ開弁状態となる常閉の電磁弁(電磁開閉弁)である。従って、上述した常閉の電磁弁A,A1は、保持弁161FR,161RLとして採用することができる。ここで、保持弁161(増圧弁)として電磁弁A,A1を採用した場合、電磁弁A,A1の流入ポート30bは個別流路151FR,151RLの上流側(主流路152側)が接続され、流出ポート20eは個別流路151FR,151RLの下流側に接続される。
又、各個別流路151FR,151FL,151RR,151RLには、それぞれ、減圧用個別流路156FR,156FL,156RR,156RLが接続される。各減圧弁用個別流路156は、リザーバ流路157に接続される。リザーバ流路157は、リザーバ配管114を介してリザーバ122に接続される。
各減圧用個別流路156FR,156FL,156RR,156RLには、その途中部分に、それぞれ、減圧弁162FR,162FL,162RR,162RLが設けられている。各減圧弁162は、開弁状態では各減圧弁個別流路156を介してリザーバ流路157と各ホイールシリンダ142との間の作動液の連通を許可して各ホイールシリンダ142のホイールシリンダ圧を低下させ、閉弁状態ではリザーバ流路157と各ホイールシリンダ142との間の作動液の連通を禁止するものである。
具体的に、減圧弁162RLは、ソレノイドの非通電時にスプリングの付勢力により開弁状態を維持し、ソレノイドへの通電中においてのみ閉弁状態となる常開の電磁弁(電磁開閉弁)である。従って、上述した常開の電磁弁A2は、減圧弁162RLとして採用することができる。ここで、減圧弁162RLとして電磁弁A2を採用した場合、電磁弁A2の流入ポート30bは減圧用個別流路156RLの上流側(ホイールシリンダ142RL側)が接続され、流出ポート20eは減圧用個別流路156RLの下流側を介してリザーバ流路157に接続される。
一方、減圧弁162FR,162FL,162RRは、は、ソレノイドの非通電時にバネの付勢力により閉弁状態を維持し、ソレノイドへの通電中においてのみ開弁状態となる常閉の電磁弁(電磁開閉弁)である。従って、上述した常閉の電磁弁A,A1は、減圧弁162FR,162FL,162RRとして採用することができる。ここで、減圧弁162として電磁弁A,A1を採用した場合、電磁弁A,A1の流入ポート30bは減圧用個別流路156FR,156FL,156RRの上流側(ホイールシリンダ142FR,142FL,142RR側)が接続され、流出ポート20eは減圧用個別流路156FR,156FL,156RRの下流側を介してリザーバ流路157に接続される。
マスタ圧流路153,154は、それぞれ、その途中部分にマスタカット弁163,164が設けられる。マスタカット弁163,164は、ソレノイドの非通電時にバネの付勢力により開弁状態を維持し、ソレノイドへの通電中においてのみ閉弁状態となる常開の電磁弁(電磁開閉弁)である。従って、上述した常開の電磁弁A2は、マスタカット弁163,164として採用することができる。このようにマスタカット弁163,164を設けることにより、マスタカット弁163,164が閉弁状態にあるときには、マスタシリンダ121とホイールシリンダ142FR,142FLとの間の接続が遮断されることによって作動液の流通が禁止され、マスタカット弁163,164が閉弁状態にあるときには、マスタシリンダ121とホイールシリンダ142FR,142FLとが接続されることによって作動液の流通が許容される。
アキュムレータ圧流路155には、その途中部分に増圧リニア制御弁165Aが設けられる。又、アキュムレータ圧流路155が接続される主流路152とリザーバ流路157との間には、減圧リニア制御弁165Bが設けられる。増圧リニア制御弁165A及び減圧リニア制御弁165Bは、ソレノイドの非通電時にバネの付勢力により閉弁状態を維持し、ソレノイドへの通電量(電流値)の増加に伴って弁開度を増加させる常閉の電磁リニア制御弁である。尚、常閉の電磁リニア制御弁では、内蔵されたバネが弁体を閉弁方向に付勢するバネ力と、相対的に高圧の作動液が流通する一次側(入口側)及び相対的に低圧の作動液が流通する二次側(出口側)の差圧によって弁体が開弁方向に付勢される差圧力との差分として表される閉弁力により閉弁状態を維持する。一方、ソレノイドへの通電により発生する弁体を開弁させる方向に作用する電磁吸引力が上記閉弁力を上回った場合、すなわち、電磁吸引力>閉弁力(=バネ力−差圧力)を満たす場合には、弁体に作用する力のバランスに応じた開度で開弁する。
又、マスタ圧流路154に接続されるマスタ圧配管112には、ストロークシミュレータ170が接続される。ストロークシミュレータ170は、ピストン170a及びバネ170bを備えており、ドライバによるブレーキペダル110のブレーキ操作量に応じた量の作動液を内部に導入する。そして、ストロークシミュレータ170は、作動液を内部に導入することに合わせてピストン170aをバネ170bの付勢力に抗して変位させることにより、ドライバによるブレーキペダル110のストローク操作を可能とするとともに、ブレーキ操作量に応じた反力を発生させてドライバのブレーキ操作フィーリングを良好にするものである。このストロークシミュレータ170は、シミュレータ流路171及び常閉の電磁弁(電磁開閉弁)であるシミュレータカット弁172を介してマスタ圧配管112に接続される。従って、上述した常閉の電磁弁A,A1を、このシミュレータカット弁172として採用することも可能である。尚、この場合、ストロークシミュレータ170をマスタ圧配管111に接続可能であることは言うまでもない。
動力液圧発生装置130及び液圧制御弁装置150は、ブレーキECU180により駆動制御される。ブレーキECU180は、CPU、ROM、RAM等からなるマイクロコンピュータを主要構成部品とするものであり、ポンプ駆動回路、電磁弁駆動回路、各種のセンサ信号を入力するインターフェース、通信インターフェース等を備えている。液圧制御弁装置150に設けられた各電磁弁(各電磁開閉弁)161〜164,172及びリニア制御弁165A,165Bは、全てブレーキECU180に接続され、ブレーキECU180から出力されるソレノイド駆動信号により開閉状態及び開度(リニア制御弁)が制御される。又、動力液圧発生装置130に設けられたモータ133についても、ブレーキECU180に接続され、ブレーキECU180から出力されるモータ駆動信号により駆動制御される。
又、液圧制御弁装置150には、ブレーキECU180に接続されるアキュムレータ圧センサ181、マスタシリンダ圧センサ182,183、制御圧センサ184が設けられる。アキュムレータ圧センサ181は、アキュムレータ圧流路155における作動液の液圧、すなわち、アキュムレータ圧流路155はアキュムレータ圧配管113を介してアキュムレータ132と連通しているためアキュムレータ圧Paccを検出する。マスタシリンダ圧センサ182は、マスタ圧流路153における作動液の液圧、すなわち、マスタ圧流路153はマスタ圧配管111を介して加圧室121a1と連通しているためマスタシリンダ圧Pmc_FRを検出する。マスタシリンダ圧センサ183は、マスタ圧流路154における作動液の液圧、すなわち、マスタ圧流路154はマスタ圧配管112を介して加圧室121b1と連通しているためマスタシリンダ圧Pmc_FLを検出する。制御圧センサ184は、主流路152における作動液の液圧、すなわち、制御圧Pxを検出する。
又、ブレーキECU180には、ブレーキペダル110に設けられたストロークセンサ185が接続される。ストロークセンサ185は、ドライバによるブレーキペダル110の踏み込み量(操作量)であるペダルストロークSmを検出する。又、ブレーキECU180には、車輪速センサ186が接続される。車輪速センサ186は、左右前後輪の回転速度である車輪速Vxを検出する。更に、ブレーキECU180には、ドライバに対して車両のブレーキ装置100に発生した異常を報知するインジケータ187が接続される。インジケータ187は、ブレーキECU180による制御に従い、発生した異常を報知する。
次に、ブレーキECU180が実行するブレーキ制御について説明する。ブレーキECU180は、通常において、動力液圧発生装置130から出力される液圧(より詳しくは、アキュムレータ圧Pacc)を増圧リニア制御弁165A及び減圧リニア制御弁165Bにて調圧し、主流路152を介して各ホイールシリンダ142に伝達するリニア制御モードによりブレーキ制御を実行する。
まず、ブレーキECU180は、図11に示すように、常開の電磁弁A2が採用されるマスタカット弁163,164をソレノイドへの通電により閉弁状態に維持するとともに、常閉の電磁弁A,A1が採用されるシミュレータカット弁172をソレノイドへの通電により開弁状態に維持する。又、ブレーキECU180は、増圧リニア制御弁165A及び減圧リニア制御弁165Bのソレノイドへの通電量(電流値)を制御し、通電量に応じた開度を制御する。又、ブレーキECU180は、常開の電磁弁A2が採用される保持弁161FL,161RRを開弁状態に維持するとともに常閉の電磁弁A,A1が採用される保持弁161FR,161RLをソレノイドへの通電により開弁状態に維持し、常閉の電磁弁A,A1が採用される減圧弁162FR,162FL,162RRを閉弁状態に維持するとともに常開の電磁弁A2が採用される減圧弁162RLをソレノイドへの通電により閉弁状態に維持する。
このように液圧制御弁装置150を構成する各電磁弁(各電磁開閉弁)、具体的には、上述した電磁弁A,A1,A2の開弁状態又は閉弁状態が制御されることにより、マスタカット弁163,164が共に閉弁状態に維持されるため、マスタシリンダ121から出力されるマスタシリンダ圧Pmc_FR,Pmc_FLは、ホイールシリンダ142FR,142FLに伝達されない。一方、増圧リニア制御弁165A及び減圧リニア制御弁165Bがソレノイドの通電制御状態にあるため、動力液圧発生装置130から出力されるアキュムレータ圧Paccが増圧リニア制御弁165A及び減圧リニア制御弁165Bによって調圧されて4輪のホイールシリンダ142に伝達される。この場合、保持弁161が開弁状態に維持されるとともに減圧弁162が閉弁状態に維持されるため、各ホイールシリンダ142は、主流路152により連通されており、制御圧Pxすなわちホイールシリンダ圧Pwcが4輪で全て同じ値となる。
ここで、ブレーキECU180は、ドライバがブレーキペダル110を踏み込み操作(以下、単に「ブレーキ操作」とも称呼する。)すると、ブレーキ操作量として、マスタシリンダ圧センサ182により検出されるマスタシリンダ圧Pmc_FR、マスタシリンダ圧センサ183により検出されるマスタシリンダ圧Pmc_FL及びストロークセンサ185により検出されるペダルストロークSmのうちの少なくとも一つを取得し、マスタシリンダ圧Pmc_FR、マスタシリンダ圧Pmc_FL及び/又はペダルストロークSmの増大に伴って増大する目標制動力を演算する。尚、ブレーキ操作量については、マスタシリンダ圧Pmc_FR、マスタシリンダ圧Pmc_FL及び/又はペダルストロークSmを取得することに代えて、例えば、ブレーキペダル110に対するペダル踏力を検出する踏力センサを設けて、ペダル踏力に基づいて目標制動力を演算するように実施することも可能である。
そして、ブレーキECU180は、演算した目標制動力に基づいて、この目標制動力に対応した各ホイールシリンダ142の目標液圧を演算し、制御圧Px(すなわち、ホイールシリンダ圧Pwc)が目標液圧と等しくなるように、フィードバック制御により増圧リニア制御弁165A及び減圧リニア制御弁165Bの駆動電流を制御する。すなわち、ブレーキECU180は、制御圧センサ184によって検出された制御圧Pxが目標液圧に追従するように、増圧リニア制御弁165A及び減圧リニア制御弁165Bのソレノイドへの通電量(電流値)を制御する。
これにより、リニア制御モードにおいては、作動液が動力液圧発生装置130から増圧リニア制御弁165A及び主流路152を介して各ホイールシリンダ142に供給され、ホイールシリンダ圧Pwcが増加して車輪に制動力を発生させる。又、リニア制御モードにおいては、ホイールシリンダ142から作動液が、例えば、主流路152及び減圧リニア制御弁165Bを経てリザーバ流路157に排出されることにより、ホイールシリンダ圧Pwcが低下して車輪に発生する制動力を適切に調整することができる。
そして、例えば、ドライバによるブレーキ操作が解除されると、ブレーキECU180は、各減圧弁162を閉弁状態から開弁状態に移行させて、各ホイールシリンダ142におけるホイールシリンダ圧Pwcを低下させる。この場合、電磁弁A,A1,A2を採用した減圧弁162においては、開弁電流又は閉弁電流が制御されることによって、図5,7,9に示したように、ロッド11の弁体11bがシート30の弁座31から離間して開弁状態に移行する。これにより、ホイールシリンダ142内の作動液がシート30の流入ポート30bを介してハウジング20の弁室21に向けて流入する。そして、減圧弁162すなわち電磁弁A,A1,A2においては、弁室21に流入した作動液がハウジング20の流出ポート20eからリザーバ流路157に流出する。
ここで、電磁弁A2が採用される減圧弁162RLにおいては、図9に示したように、閉弁状態から開弁状態に移行する、すなわち、プランジャ12が第2方向に移動することに伴って、ダンパ室40の体積が最小体積となるまで減少する。これにより、ダンパ室40内の気泡は体積の減少に伴って作動液と共に連通路42を介して排出される(押し出される)。又、電磁弁A,A1が採用される減圧弁162FR,162FL,162RRにおいては、図5,7に示したように、作動液を弁室21からリザーバ流路157を介してリザーバ122に流出させた後に開弁状態から閉弁状態に移行する、すなわち、プランジャ12が第1方向に移動することに伴って、ダンパ室40の体積が最小体積となるまで減少する。これにより、ダンパ室40内の気泡は体積の減少に伴って作動液と共に連通路42を介して排出される(押し出される)。このように、流出ポート20eからリザーバ流路157を介してリザーバ122に作動液と共に気泡をダンパ室40から排出することができ、ダンパ室40が適切に減衰特性を発揮することにより、ロッド11及びプランジャ12の自励振動の発生を確実に抑制することができて作動に伴う異音の発生を防止することができる。
本発明の実施にあたっては、上記実施形態及び各変形例に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて、種々の変更が可能である。
例えば、上記第2変形例においては、電磁弁A2を常開の電磁弁として実施した。しかしながら、例えば、バネ13がロッド11及びプランジャ12に対して、弁体11bを弁座31に着座させる方向すなわち第1方向に付勢する、所謂、押しバネに変更することにより、電磁弁A2を常閉の電磁弁として実施することも可能である。この場合においては、ソレノイド50への通電により閉弁状態から開弁状態に移行してロッド11及びプランジャ12が第2方向に移動することにより、ダンパ室40の体積が最小体積まで減少して気泡を排出する(押し出す)ことができる。従って、上記実施形態と同様の効果が期待できる。
又、上記実施形態及び各変形例においては、車両に搭載されたブレーキ装置100に電磁弁A,A1,A2を適用する場合を例示して説明した。この場合、例えば、当業者の知識に基づいて、車両のブレーキ装置100以外の各種油圧装置に適用して実施可能であることは言うまでもない。