しかしながら、特許文献1において、フック及び係合ピンは、各ブーム体の幅方向の範囲内に設けられている。
したがって、フック及び係合ピンは、各ブーム体の幅方向の外部(側方)から目視できないように隠蔽され、基端側係合体がすくい上げ起点に到達したか否かは、ブーム体の側方から直接目視により確認することができない。ここで、「すくい上げ起点」とは、係合ピンを有するブーム体の幅方向の内側にフックが挿入されるように先端側係合体に近接した基端側係合体の位置であって、この位置から基端側ブーム体の上向きの回動又はこれにベースマシンの前進動作を加えた複合動作によって、基端側係合体が先端側係合体に係合する蓋然性が高い位置をいう。
この点について、特許文献1に記載の公知技術では何の対策もとられていないため、作業員が各ブーム体の側方ですくい上げ動作の適切な誘導を行なうことは困難となる。
本発明の目的は、作業員が基端側係合体がすくい上げ起点に到達したことをブーム体の側方から目視により直接確認することにより、当該作業員がオペレータに対してすくい上げ動作のための適切な誘導を行うことができるブーム及びこれを備えた作業機械を提供することにある。
上記課題を解決するために、本発明は、自走式のベースマシンに対してブームフットピンを中心として回動する基端側ブーム体と、基端側ブーム体の先端部に着脱可能に連結される先端側ブーム体とを有するブームであって、前記基端側ブーム体の先端部には、相係合するフック及び係合ピンのうちの一方である基端側係合体が前記基端側ブーム体の幅方向の範囲内に設けられ、前記先端側ブーム体の基端部には、前記フック及び係合ピンのうちの他方である先端側係合体が前記先端側ブーム体の幅方向の範囲内に設けられ、前記基端側ブーム体の外側面及び前記先端側ブーム体の外側面には、前記ブームの側方位置から目視による確認が可能となるように、前記フックと前記係合ピンとを係合させるために予め設定されたすくい上げ起点に向けて前記基端側係合体を誘導するためのマークがそれぞれ設けられている、ブームを提供する。
本発明では、基端側ブーム体及び先端側ブーム体の外側面にブームの側方位置から目視により確認可能なマークがそれぞれ形成されている。これらのマークにより、基端側係合体がすくい上げ起点に到達したことを外部から目視により確認することができる。そのため、ブームの側方に位置する作業員がオペレータに対するすくい上げ動作のための適切な誘導を行なうことができる。
なお、「すくい上げ起点」とは、係合ピンを有するブーム体の幅方向の内側にフックが挿入されるように先端側係合体に近接した基端側係合体の位置であって、この位置から基端側ブーム体の上向きの回動又はこれにベースマシンの前進動作を加えた複合動作によって、基端側係合体が先端側係合体に係合する蓋然性が高い位置をいう。
前記ブームにおいて、前記基端側ブーム体及び前記先端側ブーム体のうち前記係合ピンを有するものがピン側ブーム体と定義されるとともに、前記フックを有するものがフック側ブーム体と定義され、前記各マークのうち前記ピン側ブーム体に設けられたピン側マークは、前記ピン側ブーム体のフック側ブーム体側の端縁部に形成され、前記各マークのうち前記フック側ブーム体に設けられたフック側マークは、前記基端側係合体が前記すくい上げ起点に到達したときに前記ピン側マークと合致する位置に設けられた起点指示部を有していることが好ましい。
フックと係合ピンとは、ブームの幅方向の範囲内において互いに係合する。そのため、フック側ブーム体の端部は、基端側係合体がすくい上げ起点までピン側ブーム体に対して移動する過程において、ピン側ブーム体の端部の幅方向の内側に挿入される。ここで、前記態様では、フック側ブーム体の外側に位置するピン側ブーム体の端縁部にピン側マークが形成されている。そのため、ピン側ブーム体の幅方向の内側に入り込むフック側ブーム体の外側面に設けられたフック側マークを、その直近位置(ピン側ブーム体の端縁部)に設けられたピン側マークによって確実に指示することができる。したがって、ピン側マークに対してフック側マークを近づけるように基端側ブーム体の移動をオペレータに指示することにより、フック側ブーム体をピン側ブーム体におけるすくい上げ起点に対応する深さまで適切に誘導することができる。
前記ブームにおいて、前記ピン側マークは、前記すくい上げ起点の上下方向の位置を示し、前記フック側マークは、前記すくい上げ起点の上下方向の位置と、前記基端側係合体を前記すくい上げ起点に到達させるのに必要な前記基端側ブームの長さ方向における移動量とを示すように前記フック側ブーム体の前記ピン側ブーム体側の端部に前記長さ方向の一定範囲に亘って線状に形成された線状指示部を有し、前記起点指示部は、前記線状指示部の端部により定義されることが好ましい。
この態様では、すくい上げ起点の上下方向の位置とすくい上げ起点までの基端側ブームの移動量とを示す線状指示部が設けられている。これにより、ピン側マークが線状指示部に沿って相対的に移動するように基端側ブームの移動をオペレータに指示することにより、基端側係合部と先端側係合部との上下方向の位置を適切に保ちながら、基端側ブーム体をすくい上げ起点に向けて適切に誘導することができる。
ここで、前記態様では、起点指示部が線状指示部の端部によって定義されている。そのため、ブームの側方に位置する作業員は、ピン側マークが線状指示部の端部(起点指示部)に到達したことを確認することにより、基端側ブーム体がすくい上げ起点に到達したことを確認することができる。
したがって、前記態様によれば、ピン側マーク及び線状指示部により定義される適切な高さ位置を維持した状態で、基端側係合部をすくい上げ起点まで適切に導くことができる。
なお、ピン側マーク及び線状指示部は、係合ピンとフックとの接触を回避することができる基端側ブーム体と先端側ブーム体との高さ位置を規定することが好ましい。
前記ブームにおいて、前記基端側係合体及び前記先端側係合体は、前記すくい上げ起点から前記ベースマシンの前進と前記基端側ブーム体の上向きの回動との複合動作により係合し、前記フック側マークは、前記基端側係合体を前記すくい上げ起点から前記先端側係合体に係合する位置まで誘導するために前記起点指示部から延びる動作指示部を有することが好ましい。
この態様では、ベースマシンの前進と基端側ブーム体の上向きの回動との複合動作により基端側係合体と先端側係合体とが係合する。そのため、ブームの側方に位置する作業員は、オペレータに対して基端側ブーム体の上向きの回動を指示するだけでは足りず、ベースマシンの前進も指示しなければならない。ここで、前記態様では、基端側係合体をすくい上げ起点から先端側係合体に係合する位置まで誘導するための動作指示部を有する。そのため、作業員は、ピン側マークが動作指示部に沿って相対的に移動するように基端側ブーム体の上向きの回動とベースマシンの前進とを指示することができる。これにより、係合ピンとフックとが確実に係合するように、オペレータに対するすくい上げ動作の誘導を行なうことができる。
前記ブームにおいて、前記フック側マークは、前記基端側ブーム体に選択的に取り付けられるとともに前記すくい上げ起点の位置が異なる複数種類の先端側ブーム体に共用できるように、前記各先端側ブーム体の各先端側係合体のすくい上げ起点を包含する範囲に設けられていることが好ましい。
この態様では、フック側マークが複数種類の先端側係合体のすくい上げ起点を包含するように設けられている。これにより、複数種類の先端側ブームを選択的に取り付ける場合においても、ブームの側方に位置する作業員がオペレータに対するすくい上げ動作の指示を適切に行なうことができる。
前記ブームにおいて、前記起点指示部は、前記基端側ブーム体の回動軸を中心とする円弧に沿った範囲を前記すくい上げ起点として指示することが好ましい。
この態様によれば、起点指示部によってすくい上げ起点を一定の範囲を持って指示することができる。これにより、起点指示部に対するピン側マークの位置決めの精度を緩和することができるため、基端側ブーム体と先端側ブーム体との取付作業の効率が上がる。
前記ブームにおいて、前記基端側係合体は、前記基端側ブーム体の先端部の上下一方の側に設けられているとともに、前記基端側ブーム体の先端部の上下方向で前記基端側係合体と反対側には、基端側ピン穴が設けられ、前記先端側係合体は、前記先端側ブーム体の基端部の上下一方の側に設けられているとともに、前記先端側ブーム体の基端部の上下方向で前記先端側係合体と反対側には、先端側ピン穴が設けられ、前記すくい上げ起点から前記基端側ブーム体の上向きの回動を伴うすくい上げ動作が実行されることにより、前記基端側係合体と前記先端側係合体とが係合するとともにこの係合部分が持ち上げられて前記先端側ピン穴の位置と前記基端側ピン穴の位置とが互いに一致することが好ましい。
この態様によれば、すくい上げ動作により互いの位置が一致する両ピン穴に連結ピンを挿入することにより、この連結ピンと係合ピンの2本のピンで基端側ブーム体と先端側ブーム体とを連結することができる。つまり、係合ピンを両ブーム体を連結するための連結ピンとしても兼用することができる。
したがって、係合ピンとは別の2本の連結ピンを用意し、これら2本の連結ピンによって基端側ブーム体及び先端側ブーム体を連結する場合(以下、2本連結ピン方式という)と比較して、両ブーム体の連結作業を簡素化することができる。
具体的に、2本連結ピン方式では、基端側ブーム体及び先端側ブーム体のそれぞれに2つのピン穴が形成されている。すくい上げ起点から基端側ブーム体を上向きに回動することにより、両係合体の係合部分が持ち上げられて基端側ブーム体の少なくとも1つのピン穴の位置と先端側ブーム体の少なくとも1つのピン穴の位置とが一致する。
前記動作により、両ブーム体における2つのピン穴の位置がそれぞれ一致する場合、その位置が2箇所で一致した両ピン穴にそれぞれ連結ピンを1本ずつ挿入して、両ブーム体を連結する。
一方、前記動作により、1つのピン穴の位置が一致する場合、そのピン穴に連結ピンを挿入し、基端側ブーム体をさらに上向きに回動させることにより、各ピン穴に挿入された連結ピン回りに両ブーム体を回動させて、残りのピン穴の位置を一致させる。そして、その位置が一致した両ピン穴に残りの連結ピンを挿入して両ブーム体を連結する。
上述のように、何れの場合においても、2本連結ピン方式では、連結ピンの挿入作業(2つピン穴同士の位置合わせ及び2本のピンの挿入作業)が煩雑になるのに対し、前記態様では、1つのピン穴同士の位置合わせ及び1本の連結ピンの挿入作業で済むため作業性が向上する。
また、本発明は、自走式のベースマシンと、前記ベースマシンにブームフットピンを中心として起伏可能に取り付けられた前記ブームと、前記ブームを起伏させるブームシリンダとを備えている、作業機械を提供する。
本発明によれば、作業員が基端側係合体がすくい上げ起点に到達したことをブーム体の側方から目視により直接確認することにより、当該作業員がオペレータに対してすくい上げ動作のための適切な誘導を行うことができる。
以下添付図面を参照しながら、本発明の実施の形態について説明する。なお、以下の実施の形態は、本発明を具体化した例であって、本発明の技術的範囲を限定する性格のものではない。
<第1実施形態>
図1を参照して、本発明の第1実施形態に係る作業機械1は、クローラ2aを有する自走式の下部走行体2と、下部走行体2上に旋回可能に設けられた上部旋回体3と、上部旋回体3に対して起伏可能に取り付けられたアタッチメント4とを備えている。本実施形態では、下部走行体2及び上部旋回体3がベースマシンを構成する。
上部旋回体3は、下部走行体2上に旋回可能に取り付けられた旋回フレーム3aと、旋回フレーム3a上の前部に設けられたキャブ3bとを備えている。なお、キャブ3bに設けられた図外のシートに着座したオペレータから見た前後左右方向を用いて以下説明する。
アタッチメント4は、旋回フレーム3aに対して左右方向に沿ったブームフットピンJ1(図2参照)回りに回動可能に取り付けられた基端部を有するブーム5と、ブーム5の先端部に対して左右方向に沿った水平軸回りに回動可能に取り付けられたインターブーム6と、インターブーム6の先端部に対して左右方向に沿った水平軸回りに回動可能に取り付けられたアーム7と、アーム7の先端部に対して左右方向に沿った水平軸回りに回動可能に取り付けられた作業装置8とを備えている。なお、本実施形態では、作業装置8として、互いに開閉可能な一対の破砕刃を有する破砕装置を例示しているが、作業装置8は、破砕装置に限定されない。例えば、作業装置8は、バケット、ブレーカ等により構成することもできる。
また、アタッチメント4は、旋回フレーム3aに対してブーム5を起伏させるためのブームシリンダ9と、ブーム5に対してインターブーム6を回動させるためのインターブームシリンダ10と、インターブーム6に対してアーム7を回動させるためのアームシリンダ11と、アーム7に対して作業装置8を回動させるための作業装置シリンダ12とを備えている。
ブーム5は、メインブーム体14、及びメインブーム体14に対してブーム5の長さ方向に継ぎ足される一ないし複数段の継ぎ足しブーム体によって構成される。
本実施形態では、メインブーム体14、及び、二段の継ぎ足しブーム体15、16(二段目の継ぎ足しブーム体16は、フロントブーム体と称される場合がある)によって構成されるブーム5が例示されている。
メインブーム体14は、ブームシリンダ9の作動に応じてブームフットピンJ1を中心として起伏可能となるように旋回フレーム3aに取り付けられている。一段目の継ぎ足しブーム体(以下、第1継ぎ足しブーム体という)15は、メインブーム体14の先端部に取り付けられている。二段目の継ぎ足しブーム体(以下、第2継ぎ足しブーム体という)16は、第1継ぎ足しブーム体15の先端部に取り付けられている。
作業機械1の搬送時には、図2に示すように、メインブーム体14と第1継ぎ足しブーム体15とが分割される。つまり、作業機械1は、アタッチメント4のうちのメインブーム体14よりも先端側の部分と、それ以外の部分とに分割される。この分割状態において、アタッチメント4のうちのメインブーム体14よりも先端側の部分は、インターブーム6を境として三つ折りの姿勢とされる。なお、図2において、符号40は、ブーム5の分解時及び組み立て時に、第1継ぎ足しブーム体15の基端部を支持するための架台である。
なお、本実施形態では、メインブーム体14が基端側ブーム体を構成するとともに第1継ぎ足しブーム体15が先端側ブーム体を構成し、メインブーム体14と第1継ぎ足しブーム体15とを着脱する場合を例にとって説明する。また、メインブーム体14は、フック側ブーム体を構成し、第1継ぎ足しブーム体15は、ピン側ブームを構成する。
以下、図5を参照して、これらの具体的な構成を説明する。なお、図5では、メインブーム体14の左側面図、及び、第1継ぎ足しブーム体15の側面断面図を示している(図6〜図12について同様)。
メインブーム体14は、メインブーム本体17と、メインブーム本体17の先端部から先端側に突出する一対のブーム体取付部18と、各ブーム体取付部18の左右方向(ブーム5の幅方向)の外側面にそれぞれ設けられたフック側マーク19とを備えている。
メインブーム本体17は、左右一対の側板(図では左の側板のみを示す)17aと、天板17bと、底板17cとを有し、これらにより箱状に形成されている。各ブーム体取付部18は、各側板17aを先端側に延長するように設けられている。
各ブーム体取付部18は、左右方向に一定の間隔を置いて設けられているとともに、ブーム5の左右方向の中心線に対して左右対称の形状を有する。各ブーム体取付部18の上部には、後述する第1継ぎ足しブーム体15の係合ピン(先端側係合体)21aと係脱可能なフック(基端側係合体)18aが設けられている。フック18aは、下部走行体2の前進とメインブーム体14の上向きの回動(起立方向の回動)との複合動作により行なわれるすくい上げ動作によって係合ピン21aに係合可能な形状を有する。具体的に、フック18aは、メインブーム体14を図5に示すように略水平にした状態で、前方に向かうに従い上向きに傾斜する方向に沿って上向きに開口する溝を有する。また、各ブーム体取付部18の下部には、メインブーム体14と第1継ぎ足しブーム体15とを連結するための連結ピン(図示省略)を挿入するための基端側ピン穴18bが形成されている。
フック側マーク19は、後述する第1継ぎ足しブーム体15のピン側マーク22と協働して、メインブーム体14のすくい上げ動作を誘導するためのものである。フック側マーク19の具体的構成については後述する。
図4及び図5を参照して、第1継ぎ足しブーム体15は、継ぎ足しブーム本体20と、継ぎ足しブーム本体20から基端側に突出する一対のブーム体取付部21と、各ブーム体取付部21の左右方向の外側面にそれぞれ設けられたピン側マーク22とを備えている。なお、図5は、第1継ぎ足しブーム体15の側面断面図であるため、ピン側マーク22を仮想線で示している。
継ぎ足しブーム本体20は、左右一対の側板(図では右の側板のみを示す)20aと、天板20bと、底板20cとを有し、これらにより箱状に形成されている。また、継ぎ足しブーム本体20は、その基端側の開口を閉じる基端板20dを備えている。各ブーム体取付部21は、各側板20aを先端側に延長するように設けられている。
これらブーム体取付部21は、左右方向に一定の間隔を置いて設けられているとともに、ブーム5の左右方向の中心に対して左右対称の形状を有する。また、各ブーム体取付部21の間隔は、メインブーム体14の各ブーム体取付部18を挿入可能な寸法に設定されている。各ブーム体取付部21の上部には、前記フック18aに対して係脱可能となるように左右方向に延びる係合ピン(先端側係合体)21aが設けられている。また、各ブーム体取付部21の下部には、メインブーム体14と第1継ぎ足しブーム体15とを連結するための連結ピン(図示省略)を挿入するための先端側ピン穴21bが設けられている。先端側ピン穴21bは、フック18aと係合ピン21aとが係合した状態で、係合ピン21aの軸線回りに第1継ぎ足しブーム体15を回動させたときに前記基端側ピン穴18bと合致する位置に設けられている。
ピン側マーク22は、塗装又はデカールにより形成されているとともに、後方(ブーム体取付部21の基端側)に向く基準指示部22aを1つの頂点として有する三角形のマークである。また、ピン側マーク22は、すくい上げ動作の起点の上下方向の位置を示すように、各ブーム体取付部21の各ブーム体取付部18が挿入される側の端縁部(本実施形態では基端側の縁部)に設けられている。
フック側マーク19は、図3に示すように、フック18aとブーム体取付部21(特に係合ピン21a)とが干渉しないようにフック18aを各ブーム体取付部21内に適切な高さで案内するための機能と、各ブーム体取付部18がすくい上げ起点まで挿入されたことを示す機能と、メインブーム体14のすくい上げ動作の移動量を示すための機能とを有する。
ここで、「すくい上げ起点」とは、係合ピン21aを有する第1継ぎ足しブーム体15の幅方向の内側(各ブーム体取付部21の間)にフック18aが挿入されるように係合ピン21aに近接したフック18aの位置であって、この位置からメインブーム体14の上向きの回動及び下部走行体2の前進動作を加えた複合動作によって、フック18aが係合ピン21aに係合する蓋然性が高い位置(図6参照)をいう。
具体的に、フック側マーク19は、ブーム体取付部18の先端部から基端側に延びる線状指示部19aと、線状指示部19aの基端部から後ろ下がりに(基端側に向けて下方に)屈曲する動作指示部19cと、線状指示部19aと動作指示部19cとの屈曲点(線状指示部19aの端部)により定義される起点指示部19bとを有する。つまり、フック側マーク19は、側面視で下向きに開くV字型のマークであり、V字型の屈曲点によりフック18aがすくい上げ起点に到達したことを示す。また、フック側マーク19は、塗装又はデカールにより形成されている。
線状指示部19aは、すくい上げ起点の上下方向の位置と、フック18aをすくい上げ起点に到達させるのに必要なメインブーム体14の前後方向(ブーム5の長さ方向)における移動量とを示すように、メインブーム体14の先端部に前後方向の一定範囲に亘って形成されている。具体的に、本実施形態に係る線状指示部19aは、係合ピン21aに対する接触を回避するために予め設定された上下方向の位置で各ブーム体取付部18を各ブーム体取付部21の間に挿入することができるピン側マーク22の経路を規定する。本実施形態における線状指示部19aは、図2に示すように、メインブーム体14の先端が水平姿勢よりも少し下がった状態で水平となる。
起点指示部19bは、フック18aがすくい上げ起点まで挿入されたときに前記ピン側マーク22の基準指示部22aに合致する位置に設けられている。つまり、基準指示部22aと起点指示部19bとは、フック18aがすくい上げ起点まで挿入されたときに側方から見て互いに合致する。
動作指示部19cは、フック18aをすくい上げ起点から係合ピン21aに係合する位置まで誘導するために起点指示部19bから延びる。本実施形態に係るフック18aは、上述のように、下部走行体2の前進とメインブーム体14の上向きの回動との複合動作により係合ピン21aに係合可能な形状を有する。そのため、動作指示部19cは、動作指示部19cから基端側に向けて下方に傾斜する。
以下、図5〜図7を参照して、メインブーム体14と第1継ぎ足しブーム体15とを取り付けるための手順について説明する。
まず、メインブーム体14を略水平にした状態で、下部走行体2を前進させることにより、メインブーム体14を第1継ぎ足しブーム体15に接近させる。
次に、図5及び図6に示すように、係合ピン21aとフック18aとの接触を回避しながら各ブーム体取付部21の間に各ブーム体取付部18を挿入する。この挿入動作を行うために、ブーム5の側方にいる作業員は、フック側マーク19の線状指示部19aとピン側マーク22の基準指示部22aとが合致し、かつ、この状態を保つように、下部走行体2の前進及び/又はメインブーム体14の起伏動作をオペレータに対して指示する。
図6に示すように、フック18aがすくい上げ起点まで到達すると、すくい上げ動作に移行する。ブーム5の側方に位置する作業員は、ピン側マーク22がフック側マーク19の起点指示部19bに合致する位置に移動したことを確認することにより、ブーム体取付部18がすくい上げ起点まで到達したことを確認することができる。そこで、作業員は、すくい上げ動作への移行をオペレータに指示する。
すくい上げ動作は、メインブーム体14の上向きの回動と下部走行体2の前進との複合動作により行なわれる。このすくい上げ動作を行うために、ブーム5の側方に位置する作業員は、ピン側マーク22がフック側マーク19の動作指示部19cに沿って移動するようにメインブーム体14の上向きの回動及び/又は下部走行体2の前進を指示する。
これにより、フック18aが係合ピン21aに係合する。
この係合が完了すると、各ピン穴18b、21bの位置合わせ作業に移行する。ブーム5の側方に位置する作業員は、図7に示すように、ピン側マーク22がフック側マーク19の端部までに移動したか否かによって係合ピン21aとフック18aとの係合が完了したことを確認することができる。係合完了を確認した作業員は、各ピン穴18b、21bが合致するように、オペレータに対してメインブーム体14のさらなる上向きの回動を指示する。
このメインブーム体14の上向き回動により、第1継ぎ足しブーム体15が係合ピン21aを中心としてメインブーム体14に対して回動して、両ピン穴18b、21bが合致する。
そして、両ピン穴18b、21bに図外の連結ピンを挿入することにより、メインブーム体14と第1継ぎ足しブーム体15との取り付け作業が完了する。また、上記と逆の手順を行なうことにより、メインブーム体14と第1継ぎ足しブーム体15とを分解することができる。
ところで、本実施形態に係るフック側マーク19は、メインブーム体14に選択的に取り付けられるとともにすくい上げ起点の位置が異なる複数種類の先端側ブーム体に共用できる。ここで、すくい上げ起点の上下方向及びブーム5の長さ方向の位置は、ブームの種類ごとに異なる。これに応じて、別種類のブーム体とメインブーム体14とを取り付けるための両ブーム体の相対的な移動経路は、全体として異なる。そこで、図3に示すように、フック側マーク19は、第1継ぎ足しブーム体15の経路を含む複数種類(図では3種類)の経路R1〜R3が含まれるように設定された幅寸法W1を有する。そのため、ピン側マーク22の基準指示部22aがフック側マーク19の幅寸法W1の範囲内に収まるように、メインブーム体14を別種類のブームに対して移動させることにより、このブームもメインブーム体14に取り付けることができる。
以上説明したように、メインブーム体14及び第1継ぎ足しブーム体15の外側面にブーム5の側方位置から目視により確認可能なマーク19、22がそれぞれ形成されている。これらのマーク19、22により、フック18aがすくい上げ起点に到達したことを外部から目視により確認することができる。そのため、ブーム5の側方に位置する作業員がオペレータに対するすくい上げ動作のための適切な誘導を行なうことができる。
また、第1実施形態によると次の効果を奏する。
メインブーム体14の外側に位置する第1継ぎ足しブーム体15の端縁部にピン側マーク22が形成されている。そのため、第1継ぎ足しブーム体15の幅方向の内側に入り込むメインブーム体14の外側面に設けられたフック側マーク19を、その直近位置(第1継ぎ足しブーム体15の端縁部)に設けられたピン側マーク22によって確実に指示することができる。したがって、ピン側マーク22に対してフック側マーク19を近づけるようにメインブーム体14の移動をオペレータに指示することにより、メインブーム体14を第1継ぎ足しブーム体15におけるすくい上げ起点に対応する深さまで適切に誘導することができる。
すくい上げ起点の上下方向の位置とすくい上げ起点までのメインブーム体14の移動量とを示す線状指示部19aが設けられている。これにより、ピン側マーク22が線状指示部19aに沿って相対的に移動するようにメインブーム体14の移動をオペレータに指示することにより、フック18aと係合ピン21aとの上下方向の位置を適切に保ちながら、メインブーム体14をすくい上げ起点に向けて適切に誘導することができる。
ここで、起点指示部19bが線状指示部19aの端部によって定義されている。そのため、ブーム5の側方に位置する作業員は、ピン側マーク22が線状指示部19aの端部(起点指示部19b)に到達したことを確認することにより、メインブーム体14がすくい上げ起点に到達したことを確認することができる。
また、フック18aをすくい上げ起点から係合ピン21aに係合する位置まで誘導するための動作指示部19cが設けられている。そのため、作業員は、ピン側マーク22が動作指示部19cに沿って相対的に移動するようにメインブーム体14の上向きの回動とベースマシンの前進とを指示することができる。
さらに、フック側マーク19は、複数種類のブーム体の各フックのすくい上げ起点を包含するように設けられている。これにより、複数種類のブームを選択的に取り付ける場合においても、ブーム5の側方に位置する作業員がオペレータに対するすくい上げ動作の指示を適切に行なうことができる。
<第2実施形態>
第1実施形態では、起点指示部19bに加えて線状指示部19a及び動作指示部19cを有するフック側マーク19について説明したが、フック側マークは、少なくともすくい上げ起点を指示することができるものであればよい。
具体的に、図8に示す第2実施形態において、フック側マーク30は、第1実施形態におけるフック側マーク19の起点指示部19bに対応するものである。このフック側マーク30とピン側マーク22とを合致させるように、各ブーム体取付部18を各ブーム体取付部21の間に挿入することにより、各ブーム体取付部18をすくい上げ起点まで案内することができる。なお、フック側マーク30は、図3に示す経路R1〜R3のそれぞれにおけるすくい上げ起点を含む範囲を指示するものである。
<第3実施形態>
前記各実施形態では、メインブーム体14の上向きの回動と下部走行体2の前進との複合動作により係合ピン21aに係合可能なフック18aについて説明した。しかし、フックは、メインブーム体14の上向きの回動のみにより行なわれるすくい上げ動作によって係合ピン21aに係合可能な形状を有するものでもよい。
具体的に、図9に示す第3実施形態において、フック32は、ブーム5のブームフットピンJ1(図2参照)を中心とする円の接線方向に開く溝を有する。そのため、図10に示すように、係合ピン21aの下にフック32が位置し、かつ、ブームフットピンJ1を中心とする同一円周上にフック32と係合ピン21aとを並べた状態で、メインブーム体14を起立させることにより、図11に示すように係合ピン21aとフック32とを係合させることができる。
ここで、図9〜図11に示す第3実施形態では、すくい上げ起点がブームフットピンJ1を中心とする円弧状のフック側マーク31により指示されている。フック側マーク31の下端部は、係合ピン21aに対する接触を回避することができるフック32の上限位置を規定する。したがって、フック側マーク31の範囲内にピン側マーク22を合致させることにより、例えば、図10に示すように、各ブーム体取付部18を各ブーム体取付部21の間のすくい上げ起点に案内することができる。つまり、フック側マーク31によってすくい上げ起点を一定の範囲を持って指示することができる。これにより、各先端取付部21に対するブーム体取付部18の位置決めの精度を緩和することができるため、メインブーム体14と第1継ぎ足しブーム体15との取付作業の効率が上がる。
なお、円弧状のフック側マーク31は、図9〜図11に示すように、メインブーム体14の起立のみにより係合ピン21aに係合可能なフック32を有する場合に好適であるが、図1〜図8に示す実施形態においてすくい上げ起点を指示するために用いることもできる。
<第4実施形態>
また、図12に示す第4実施形態におけるフック側マーク33のように、すくい上げ起点を点により指示することもできる。
<第5実施形態>
前記各実施形態では、メインブーム体14にフック18a、32が設けられているとともに、第1継ぎ足しブーム体15に係合ピン21aが設けられているが、フックとピンの位置はこれに限定されない。この点について、以下、図13〜図15を参照して説明する。なお、図13〜図15は、メインブーム体14の側面断面図を示すとともに、第1継ぎ足しブーム体15の側面図を示す(図16についても同様)。
第5実施形態では、メインブーム体14に係合ピン34が設けられているとともに、第1継ぎ足しブーム体15にフック37が設けられている。具体的に、メインブーム体14のブーム体取付部18の上部には、基端側ピン穴35が設けられている。一方、ブーム体取付部18の下部には、左右方向に延びる係合ピン34が設けられている。また、第1継ぎ足しブーム体15のブーム体取付部21の上部には、先端側ピン穴38が設けられている。一方、ブーム体取付部21の下部には、フック37が設けられている。
第5実施形態における各ブーム体取付部18は、係合ピン34の左右両端部を支持する。また、各ブーム体取付部21の間隔は、各ブーム体取付部18の間に挿入可能な寸法に設定されている。
フック37は、メインブーム体14の起立のみにより行なわれるすくい上げ動作によって係合ピン21aに係合可能である。具体的に、第1継ぎ足しブーム体15が架台40(図2参照)に支持された状態において、フック37は、ブーム5のブームフットピンJ1(図2参照)を中心とする円の接線方向に開く溝を有する。そのため、図14に示すように、フック37の下に係合ピン34が位置し、かつ、ブームフットピンJ1を中心とする同一円周上にフック37と係合ピン34とを並べた状態で、メインブーム体14を上向きに回動させることにより、図15に示すように係合ピン34とフック37とを係合させることができる。
つまり、本実施形態における「すくい上げ起点」は、係合ピン34を有するメインブーム体14の幅方向の内側(各ブーム体取付部18の間)にフック37が挿入されるようにフック37に近接した係合ピン34の位置であって、この位置からメインブーム体14の上向きの回動によって、係合ピン34がフック37に係合する蓋然性が高い位置(図14参照)をいう。
また、図13〜図15に示す第5実施形態では、フック側マーク39によりすくい上げ起点が点により指示されている。フック側マーク39は、第1継ぎ足しブーム体15に設けられている。一方、フック側マーク39と協働してすくい上げ起点を指示するピン側マーク36は、メインブーム体14に設けられている。ピン側マーク36は、ブーム体取付部18のブーム体取付部21が挿入される側の端部において規定の点を指示する基準指示部36aを有する。
第5実施形態では、フック側マーク39にピン側マーク36を合致させることにより、例えば、図14に示すように、各ブーム体取付部21を各ブーム体取付部18の間のすくい上げ起点に案内することができる。そして、この状態からメインブーム体14を上向きに回動させることにより、図15に示すように、フック37と係合ピン34とを係合させることができる。さらに、この状態からメインブーム体14の回動によりフック37と係合ピン34との係合部分を持ち上げることにより、第1継ぎ足しブーム体15がメインブーム体14に対して係合ピン34回りに回動する。その結果、基端側ピン穴35と先端側ピン穴38とが合致する。
<第6実施形態>
図16に示す第6実施形態において、フック側マーク41は、すくい上げ起点を円弧状の範囲として指示する。
具体的に、フック側マーク41の上端部は、フック37に対する接触を回避することができる係合ピン34の高さの上限位置を規定する。したがって、フック側マーク41の範囲内にピン側マーク36を合致させることにより、各ブーム体取付部18をすくい上げ起点に案内することができる。そして、この状態からメインブーム体14を起立させることにより、フック37と係合ピン34とを係合させることができる。
なお、図13〜図16では、メインブーム体14の起立のみにより行なわれるすくい上げ動作により係合ピン34と係合可能なフック37を例示したが、フックの形状として、図1〜図8に示す形状を採用することもできる。
また、図13〜図16に示す第5実施形態におけるフック側マークの形状として、図1〜図8に示すフック側マークの形状を採用することもできる。
なお、前記各実施形態では、メインブーム体14が基端側ブーム体を構成し、第1継ぎ足しブーム体15が先端側ブーム体を構成する例について説明したが、基端側ブーム体及び先端側ブーム体は、これらに限定されない。
例えば、メインブーム体14と第1継ぎ足しブーム体15とが互いに連結された状態で、これに第2継ぎ足しブーム体15を連結する場合には、メインブーム体14及び第1継ぎ足しブーム体15の接続体が基端側ブーム体を構成し、第2継ぎ足しブーム体16が先端側ブーム体を構成する。
また、メインブーム体14に対して直接第2継ぎ足しブーム体16が連結される場合、メインブーム体14が基端側ブーム体を構成し、第2継ぎ足しブーム体16が先端側ブーム体を構成する。
つまり、ベースマシン(上部旋回体2及び下部走行体3)に対してブームフットピンJ1回りに回動可能に連結されたブーム体(複数のブーム体の連結体を含む)が基端側ブーム体を構成し、この基端側ブーム体のすくい上げ動作によって連結されるブーム体が先端側ブーム体を構成する。
また、前記各実施形態では、係合ピン21a、34を両ブーム体14、15を連結する連結ピンとして兼用するものであるが、本発明は、これに限定されるものではなく、係合ピン21a、34とは別の2本の連結ピンによって両ブーム体14、15を連結する2本連結ピン方式に適用することもできる。
具体的に、2本連結ピン方式では、基端側ブーム体及び先端側ブーム体のそれぞれに2つのピン穴が形成されている。すくい上げ起点から基端側ブーム体を上向きに回動することにより、両係合体の係合部分が持ち上げられて基端側ブーム体の少なくとも1つのピン穴の位置と先端側ブーム体の少なくとも1つのピン穴の位置とが一致する。
前記動作により、両ブーム体における2つのピン穴の位置がそれぞれ一致する場合、その位置が2箇所で一致した両ピン穴にそれぞれ連結ピンを1本ずつ挿入して、両ブーム体を連結する。
一方、前記動作により、1つのピン穴の位置が一致する場合、そのピン穴に連結ピンを挿入し、基端側ブーム体をさらに上向きに回動させることにより、各ピン穴に挿入された連結ピン回りに両ブーム体を回動させて、残りのピン穴の位置を一致させる。そして、その位置が一致した両ピン穴に残りの連結ピンを挿入して両ブーム体を連結する。