JP2014227602A - 電磁波シールド用金属箔、電磁波シールド材及びシールドケーブル - Google Patents
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Abstract
【解決手段】金属箔からなる基材1の片面又は両面にNiからなる下地層2が形成され、該下地層の表面にSn−Ni又はSn−AgからなるSn合金層3が形成された電磁波シールド用金属箔10であって、金属箔の厚さをT[μm]、金属箔の微小押し込み硬さをH[MPa]、下地層の厚さをt1[μm]、下地層の微小押し込み硬さをh1[MPa]、Sn合金層の厚さをt2[μm]、Sn合金層の微小押し込み硬さをh2[MPa]としたとき、電磁波シールド用金属箔を120℃×500時間の加熱前後のいずれにおいても(t1 2×h1+t2 2×h2)/(T2×H)≦0.07を満たす。
【選択図】図2
Description
上記の複合材料としては、銅又は銅合金箔からなる基材の一方の面に樹脂層又はフィルムを積層し、他の面にSnめっき被膜を形成した構造が用いられている(特許文献1参照)。
又、アルミニウム又はアルミニウム合金箔の表面に亜鉛置換めっき層、電気ニッケルめっき層、又は電気スズめっき層を形成することで、耐湿性、耐食性を改善した多層めっきアルミニウム(合金)箔が開発されている(特許文献2参照)。
又、自動車用のケーブルはエンジンルームの高温環境や、水がかかるおそれがある環境で使用されるため、電磁波シールド材の金属箔にも耐熱性や耐食性が要求される。
さらに、ケーブルの曲げ伸ばしで金属箔が切れたり、亀裂や破れが生じると、そこから電磁波が漏れてシールド性能が低下するため、金属箔には延性も要求される。このため、金属箔に樹脂層又は樹脂フィルムを積層した複合体とすることで、金属箔の延性を向上させると共に破断や破れを防止している。
しかしながら、Snめっき層の厚みが厚くなると拡散層も厚くなるが、拡散層は硬いために延性が低く、引張応力により金属箔よりも早く割れる。そして、拡散層が厚くなると、拡散層に生じた亀裂が金属箔に伝播し、金属箔が本来の伸びを発揮する前に破断してしまう。つまり、Snめっき層の厚みが厚くなると、長期使用の間に厚い拡散層が成長し、電磁波シールド材の延性を低下させてしまうという問題がある。
Sn−Ni又はSn−AgからなるSn合金層は接触抵抗が低く、耐食性が良好である。また、下地層のNiが合金層側へ拡散しにくいため、下地層のNiが消費されず、下地層による金属箔の成分の合金層側への拡散防止効果が維持される。特に、Sn合金層の表面に純Sn層が存在しないと、Niが拡散し易い純Sn層が介在しないので、下地層のNiが消費されるのを確実に防止できる。
前記下地層と前記Sn−Ni合金層の少なくとも一方がさらに、P、W、Fe及びCoの群から選ばれる1種以上の元素を含むことが好ましい。
前記Sn−Ni合金層は、前記基材の構成元素を10質量%以下含むことが好ましい。
前記基材が金、銀、白金、ステンレス、鉄、ニッケル、亜鉛、銅、銅合金、アルミニウム、又はアルミニウム合金からなることが好ましい。
前記基材がアルミニウムまたはアルミニウム合金であって、前記基材と前記下地層の間に、Zn層が形成されていることが好ましい。
前記樹脂層は樹脂フィルムであることが好ましい。
(基材)
基材1は、電磁波シールド効果を発揮する導電性の高い金属であればなんでもよい。基材1としては金、銀、白金、ステンレス、鉄、ニッケル、亜鉛、銅、銅合金、アルミニウム、又はアルミニウム合金などの箔が挙げられるが、銅又はアルミニウムの箔が一般的である。
基材1の形成方法は特に限定されず、例えば圧延して製造してもよく、電気めっきで箔を形成してもよい。又、後述する電磁波シールド材の樹脂層又は樹脂フィルムの表面に、乾式めっきして基材1を成膜してもよい。
基材1の厚みは、電磁波シールドの対象とする周波数と表皮効果を考慮して決定するのがよい。具体的には、基材1を構成する元素の導電率と、対象となる周波数を下式(1)に代入して得られる表皮深さ以上とするのが好ましい。例えば、基材1として銅箔を使用し、対象となる周波数が100MHzの場合、表皮深さは6.61μmであるので、基材1の厚みを約7μm以上とするのがよい。基材1の厚みが厚くなると、柔軟性や加工性に劣り、原料コストも増加することから100μm以下とするのがよい。基材1の厚みは4〜50μmがより好ましく、5〜25μmがさらに好ましい。
d={2/(2π×f×σ×μ)}1/2 (1)
d:表皮深さ(μm)
f:周波数(GHz)
σ:導体の導電率(S/m)
μ:導体の透磁率(H/m)
圧延銅箔としては、純度99.9%以上の無酸素銅(JIS-H3100(C1020))又はタフピッチ銅(JIS-H3100(C1100))を用いることができる。又、銅合金箔としては要求される強度や導電性に応じて公知の銅合金を用いることができる。公知の銅合金としては、例えば、0.01〜0.3%の錫入り銅合金や0.01〜0.05%の銀入り銅合金が挙げられ、特に、導電性に優れたものとしてCu-0.12%Sn、Cu-0.02%Agがよく用いられる。例えば、圧延銅箔として導電率が5%以上のものを用いることができる。電解銅箔としては、公知のものを用いることができる。
又、アルミニウム箔としては、純度99.0%以上のアルミニウム箔を用いることができる。又、アルミニウム合金箔としては、要求される強度や導電率に応じて公知のアルミニウム合金を用いることができる。公知のアルミニウム合金としては、例えば、0.01〜0.15%のSiと0.01〜1.0%のFe入りのアルミニウム合金、1.0〜1.5%のMn入りアルミニウム合金が挙げられる。
下地層2はNiからなる。Niは基材1からSn合金層3に基材の構成元素が拡散するのを防止するので、高温環境に曝されても耐食性が低下し難くなる。たとえば基材に銅箔を使用した場合、Sn合金層3にCuが拡散すると、大気によりSn−Ni合金層3中のCuが酸化され、耐熱性が低下する。また、基材にアルミニウム箔を使用した場合、基材上にSn合金層をめっきしようとすると、基材上にまずZnを置換めっきする必要がある。このため、Znめっき層からZnがSn合金層3に拡散する。この場合、大気によりSn合金層3中のZnが酸化され、耐熱性が低下する。そこで、Znめっき層とSn合金層3の間に下地層2を設け、Znの拡散を防止する。
下地層2はさらにP、W、FeおよびCoの群から選ばれる1種以上の元素(以下、これらの元素を「C元素群」と称する)を含んでもよい。下地層2がC元素群を含むと、Sn合金層3中にC元素群が拡散し、Sn合金層3の耐食性が向上する。下地層2中のC元素群の合計割合は、1〜40質量%が好ましく、5〜30質量%がさらに好ましい。
Sn合金層3はSn−Ni又はSn−Agからなる。Sn合金層3はSnを20〜80質量%含む。Sn−Ni又はSn−Agからなる合金は、他のSn合金に比べて接触抵抗が低く、耐食性も高い。
Sn合金層中のSnの割合が20質量%未満であると、合金層の耐食性が低下する。一方、Snの割合が80質量%を超えると、加熱によって合金層表面にSn酸化物の形成が過度に進み、接触抵抗が増加する。また、下地層から合金層へNiの拡散が進行するため、下地層が薄くなってそのバリア効果が損なわれる。
なお、Sn合金層、下地層及び後述するSn酸化物層の厚みは、電磁波シールド用金属箔の断面試料について、STEM(走査透過型電子顕微鏡)による線分析を行い、求める。分析する指定元素は、Sn、Ni、Ag、P、W、Fe、Co、Zn、C、S、Oおよび基材に含まれる元素である。また、上記した指定元素の合計を100%として、各層における各元素の割合(wt%)を分析する(加速電圧:200kV、測定間隔:2nm)。
図4に示すように、Snを5wt%以上含み、かつNiを5wt%以上含む層をSn合金層とし、その厚みを図4上(線分析の走査距離に対応)で求める。Sn合金層よりも下層側に位置し、Snが5wt%未満であり、Niを5wt%以上含む層を下地層とし、その厚みを図上で求める。
又、Sn合金層より上層側に位置し、Snが95wt%以上である層を純Sn層とし、その厚みを図上で求める。純Sn層より上層側に位置し、Snが5wt%以上であり、かつOが5wt%以上である層をSn酸化物層とし、その厚みを図上で求める。STEMの測定を3視野で行い、3視野×5カ所の平均値を各層の厚さとする。
なお、C元素群は、Sn合金層3を形成する際にSn合金層3自体に含有させてもよい。又、C元素群を下地層2に含ませておく一方、C元素群を含まないSn合金層3を形成し、所望の熱処理によってSn合金層3中にC元素群を拡散させてもよい。又、C元素群を下地層2に含ませておく一方、C元素群を含まないSn合金層3を形成したままとしてもよく、この場合、電磁波シールド用金属箔を高温で使用した際にSn合金層3中にC元素群が拡散する。
なお、図1(a)に示すように、加熱によりSn合金層を形成する場合、Snからなる第2層22を形成したときに自然酸化でSn酸化物が第2層22に形成され、その後の加熱による合金化によってもSn合金層中に残存する。このSn酸化物は、耐食性といった特性を向上させる効果がある。
Sn酸化物は、層となっていなくてもよく、Sn合金層の表面に存在すればよいが、1〜50nm、より好ましくは3〜30nm、さらに好ましくは5〜20nmの厚みとするのがよい。Sn酸化物はSn合金層と比較すると接触抵抗が高いため、層の厚みが30nmを超えると接触抵抗が増加する。
(t1 2×h1+t2 2×h2)/(T2×H)が0.07を超える場合、基材1の厚みに対してSn合金層3の厚みが相対的に厚くなる。Sn合金層3は拡散層であって硬いために基材1に比べて延性が低く、引張応力により金属箔よりも早く割れる。そのため、Sn合金層3の厚みが相対的に厚くなると、Sn合金層3に亀裂が生じた際に基材1に伝播しやすくなるため、延性が低下する。
Sn合金層は、合金めっき(湿式めっき)、合金層を構成する合金のターゲットを用いたスパッタ、合金層を構成する成分を用いた蒸着等によって形成することができる。
又、Sn−Ni合金層の場合は、図1(a)に示すように、例えば、基材1の片面にまずNiからなる第1層21を形成し、第1層21の表面にSnからなる第2層31を形成した後、熱処理して第1層21と第2層31の元素を合金化させて、図1(b)に示すSn合金層3を形成することもできる。ただし、その場合、熱処理後も第1層21が残存するように各層の厚みをコントロールする必要がある。熱処理の条件は特に限定されないが、例えば、120〜500℃で2秒〜10時間程度とすることができる。
一方、Sn−Ag合金層の場合は、図1(a)において、例えば、基材1の片面にまずNiからなる下地層(図示せず)を形成し、次にAgからなる第1層21を形成し、第1層21の表面にSnからなる第2層31を形成した後、熱処理して第1層21と第2層31の元素を合金化させて、図1(b)に示すSn合金層3を形成することもできる。熱処理の条件はSn−Ni合金層の場合と同等とすることができる。
又、基材としてアルミニウムやアルミニウム合金箔を使用する場合、下地層3をNiめっきするための下地めっきとして、下地層3と基材1との間に亜鉛置換めっき層を形成してもよい。
樹脂層としては例えばポリイミド等の樹脂を用いることができ、樹脂フィルムとしては例えばPET(ポリエチレンテレフタラート)、PEN(ポリエチレンナフタレート)のフィルムを用いることができる。樹脂層や樹脂フィルムは、接着剤により金属箔に接着されてもよいが、接着剤を用いずに溶融樹脂を金属箔上にキャスティングしたり、フィルムを金属箔に熱圧着させてもよい。又、樹脂フィルムにPVDやCVDで直接銅やアルミニウムの層を基材として形成したフィルムや、樹脂フィルムにPVDやCVDで銅やアルミニウムの薄い層を導電層として形成した後、この導電層上に湿式めっきで金属層を厚く形成したメタライズドフィルムを用いてもよい。
樹脂層や樹脂フィルムとしては公知のものを用いることができる。樹脂層や樹脂フィルムの厚みは特に制限されないが、例えば1〜100μm、より好ましくは3〜50μmのものを好適に用いることができる。又、接着剤を用いた場合、接着層の厚みは例えば10μm以下とすることができる。
材料の軽薄化の観点から、電磁波シールド材100の厚みは1.0mm以下、より好ましくは0.01〜0.5mmであることが好ましい。
そして、電磁波シールド材100をケーブルの外側に巻くことで、シールドケーブルが得られる。
(基材)
圧延銅箔としては、厚さ8μmの圧延銅箔(JX日鉱日石金属製の型番C1100)を用いた。
電解銅箔としては、厚さ8μmの無粗化処理の電解銅箔(JX日鉱日石金属製の型番JTC箔)を用いた。
Cuメタライズドフィルムとしては、厚さ8μmのメタライジングCCL(日鉱金属製の製品名「マキナス」)を用いた。
アルミニウム箔としては、厚さ12μmのアルミニウム箔(サン・アルミニウム工業社製)を用いた。
Alメタライズドフィルムとしては、厚さ12μmのPETフィルム(東洋紡績社製)に真空蒸着でアルミニウムを6μm形成したものを用いた。
上記基材の片面に下地層及びSn合金層を形成した。表1に、各層の形成方法を示す。なお、以下の熱処理を行った場合も含め、下地層、Sn−Ni合金層及びSn酸化物層の組成や厚みは、熱処理等を行った後の最終状態での値である。
表1において「めっき」とは、図1(a)に示す方法で第1層(Ni又はAg層)21、第2層(Sn層)31をこの順でめっきした後、表1に示す条件で熱処理したものである。ここで、第1層21がAg層の場合、第1層21と基材の間にNiからなる下地層(図示せず)を先にめっきした。なお、熱処理はすべて窒素雰囲気下で行った。表1において「合金めっき」は、Niめっきにより下地層を形成した後、Sn−Ni合金めっきによりSn合金層を形成したものである。
なお、各めっきは、以下の条件で形成した。
Niめっき:硫酸Ni浴(Ni濃度:20g/L、電流密度:2〜10A/dm2)
Agめっき:シアン化Ag浴(Ag濃度:10g/L、電流密度:0.2〜4A/dm2)
Snめっき:フェノールスルホン酸Sn浴(Sn濃度:40g/L、電流密度:2〜10A/dm2)
Sn−Niめっき:ピロリン酸塩浴(Ni濃度10g/L、Sn濃度10g/L、電流密度:0.1〜2A/dm2)
Cuめっき:硫酸Cu浴(Cu濃度:20g/L、電流密度:2〜10A/dm2)
Znめっき:硫酸Zn浴(Zn濃度:20g/L、電流密度:1〜5A/dm2)
Ni−Sn:ピロリン酸塩浴(Ni濃度10g/L、Sn濃度10g/L、電流密度:0.1〜2A/dm2)
Co−Snめっき:ピロリン酸塩浴(Co濃度20g/L、Sn濃度20g/L、電流密度:0.2〜3A/dm2)
Ni−P:硫酸浴(Ni濃度:20g/L、P濃度:20g/L、電流密度:2〜4A/dm2)
Ni−W:硫酸浴(Ni濃度:20g/L、W濃度:20g/L、電流密度:0.1〜2A/dm2)
Ni−Fe:硫酸浴(Ni濃度:20g/L、Fe濃度:10g/L、電流密度:0.1〜2A/dm2)
Ni−Co:硫酸浴(Ni濃度:20g/L、Co濃度:10g/L、電流密度:0.1〜2A/dm2)
なお、合金スパッタで成膜される層は合金層そのものの組成であるので、熱処理は行わなかった。
なお、スパッタ、合金スパッタは以下の条件で行った。
スパッタ装置:バッチ式スパッタリング装置(アルバック社、型式MNS−6000)
スパッタ条件:到達真空度1.0×10-5Pa、スパッタリング圧0.2Pa、スパッタリング電力50W
ターゲット:Ni(純度3N)、Ag−Sn(Ag:Sn=73:27)、Ni−Sn(それぞれ(質量%で)Ni:Sn=85:15、43:57、60:40、27:73、20:80、15:85)
蒸着装置:真空蒸着装置(アルバック社、型式MB05−1006)
蒸着条件:到達真空度5.0×10-3Pa、電子ビーム加速電圧6kV
蒸着源:Ni(純度3N)、Sn(純度3N)
得られた電磁波シールド用金属箔の断面試料について、STEM(走査透過型電子顕微鏡、日本電子株式会社製JEM−2100F)による線分析を行い、層構成を判定した。分析した指定元素は、Sn、Ni、Ag、C元素群(P、W、Fe、Co)、Zn、C、S、Oおよび基材に含まれる元素である。また、上記した指定元素の合計を100%として、各層における各元素の割合(wt%)を分析した(加速電圧:200kV、測定間隔:2nm)。
図4に示すように、Snを5wt%以上含み、かつNi(又はAg)を5wt%以上含む層をSn合金層とし、その厚みを図4上(線分析の走査距離に対応)で求めた。Sn合金層よりも下層側に位置し、Snが5wt%未満であり、Niを5wt%以上含む層を下地層とし、その厚みを図上で求めた。Sn合金層より上層側に位置し、Snが5wt%以上であり、かつOが5wt%以上である層をSn酸化物層とし、その厚みを図上で求めた。STEMの測定を3視野で行い、3視野×5箇所の平均値を各層の厚さとした。
得られた電磁波シールド用金属箔のSn合金層側の面について、初期、120℃で500時間大気加熱後、及び大気加熱せずに塩水噴霧試験を行った後の最表面の接触抵抗を測定した。又、初期の(大気加熱前の)評価は、高温環境に曝されない状態での接触抵抗及び耐食性の評価を表している。大気加熱後の接触抵抗は耐熱性の評価を示し、塩水噴霧試験後の接触抵抗は耐食性の評価を示す。
接触抵抗の測定は山崎精機株式会社製の電気接点シミュレーターCRS−1を使用して四端子法で測定した。プローブ:金プローブ、接触荷重:20gf、バイアス電流:10mA、摺動距離:1mm
接触抵抗は以下の基準で評価した。
◎:接触抵抗が20mΩ未満
○:接触抵抗が20mΩ以上100mΩ未満
×:接触抵抗が100mΩ以上
なお、接触抵抗の評価が○であれば実用上、問題はない。
得られた電磁波シールド用金属箔のSn合金層側の面について、それぞれ硬さを測定した。また、基材に下地層のみを形成し、同様に下地層表面の硬さを測定した。硬さの測定にはエリオニクス社製のナノインデンター(微小押込み試験機:型番ENT−2100)を使用した。
サンプルA(下地層とSn合金層を形成しないままの基材)、サンプルB(基材に下地層と合金層を形成したもの)、サンプルC(サンプルBを120℃×500時間大気加熱したもの)のそれぞれに対し、厚み3μmのポリウレタン系接着剤を介して樹脂フィルムを積層して金属箔複合体を作製した。作製した複合体を金属箔の圧延方向と平行な方向に長い幅12.7mmの短冊状の試料に切断し、JIS−Z2241に従い、引張試験機により長手方向に引張試験を行った。
サンプルA、B、Cをそれぞれ用いた複合体の破断ひずみをそれぞれf1、f2、f3とし、以下の数値を求めた。
f2/f1≧0.4:○
f2/f1<0.4:×
f3/f1≧0.4:○
f3/f1<0.4:×
上記評価が○であれば実用上、問題はない
なお、図3、4は、それぞれ実施例2の試料のSTEMによる断面像、及びSTEMによる線分析の結果を示す。断面像におけるX層、Y層は、線分析の結果から、それぞれSn−Ni合金層、Ni層であることがわかる。
なお、各実施例の場合、Sn−Ni合金層の表面に純Sn層は存在しなかった。
下地層2の厚みt1が0.02μm未満である比較例3の場合、基材の成分がSn合金層に拡散したため、耐熱性が劣った。
下地層2の厚みt1が2μmを超えた比較例4の場合、下地層及びSn合金層にクラックを生じ、耐熱性、耐食性がともに劣った。
Sn合金層の厚みt2が0.03μm未満である比較例5の場合、耐食性が劣った。
Sn合金層の厚みt2が1.5μmを超えた比較例6の場合、Sn合金層にクラックを生じ、耐熱性、耐食性がともに劣った。
Sn合金層のかわりにSnCu合金層を形成した比較例8の場合、耐熱性が劣った。
(t1 2×h1+t2 2×h2)/(T2×H)>0.07となった比較例9、10、14〜16の場合、基材の厚みに対してSn合金層の厚みが相対的に厚くなり、延性が劣った。
Sn合金中のSnの割合が20wt%未満である比較例11の場合、耐食性が劣った。
Sn合金中のSnの割合が80wt%を超えた比較例12の場合、耐熱性が劣った。
下地層を形成しなかった比較例13の場合、耐熱性が劣った。
2 下地層
3 Sn合金層
4 樹脂層又は樹脂フィルム
10 電磁波シールド用金属箔
100 電磁波シールド材
前記基材が金、銀、白金、ステンレス、鉄、ニッケル、亜鉛、銅、銅合金、アルミニウム、又はアルミニウム合金からなることが好ましい。
前記基材がアルミニウムまたはアルミニウム合金であって、前記基材と前記下地層の間に、Zn層が形成されていることが好ましい。
前記基材が金、銀、白金、ステンレス、鉄、ニッケル、亜鉛、銅、銅合金、アルミニウム、又はアルミニウム合金からなることが好ましい。
前記基材がアルミニウムまたはアルミニウム合金であって、前記基材と前記下地層の間に、Zn層が形成されていることが好ましい。
前記Sn−Ni合金層の表面に純Sn層が存在しないことが好ましい。
Claims (9)
- 金属箔からなる基材の片面又は両面にNiからなる下地層が形成され、該下地層の表面にSn−Ni又はSn−AgからなるSn合金層が形成された電磁波シールド用金属箔であって、
前記金属箔の厚さをT[μm]、前記金属箔の微小押し込み硬さをH[MPa]、前記下地層の厚さをt1[μm]、前記下地層の微小押し込み硬さをh1[MPa]、前記Sn合金層の厚さをt2[μm]、前記Sn合金層の微小押し込み硬さをh2[MPa]としたとき、
前記電磁波シールド用金属箔を120℃×500時間の加熱前後のいずれにおいても(t1 2×h1+t2 2×h2)/(T2×H)≦0.07を満たす電磁波シールド用金属箔。 - 前記Sn−Ni合金層の表面に純Sn層が存在しない請求項1に記載の電磁波シールド用銅箔。
- 前記下地層と前記Sn−Ni合金層の少なくとも一方がさらに、P、W、Fe及びCoの群から選ばれる1種以上の元素を含む請求項1又は2に記載の電磁波シールド用銅箔。
- 前記Sn−Ni合金層は、前記基材の構成元素を10質量%以下含む請求項1〜3のいずれかに記載の電磁波シールド用銅箔。
- 前記基材が金、銀、白金、ステンレス、鉄、ニッケル、亜鉛、銅、銅合金、アルミニウム、又はアルミニウム合金からなる請求項1〜4のいずれかに記載の電磁波シールド用金属箔。
- 前記基材がアルミニウムまたはアルミニウム合金であって、前記基材と前記下地層の間に、Zn層が形成されている請求項1〜4のいずれかに記載の電磁波シールド用金属箔。
- 請求項1〜6のいずれかに記載の電磁波シールド用金属箔の片面に、樹脂層が積層されている電磁波シールド材。
- 前記樹脂層は樹脂フィルムであることを特徴とする請求項78に記載の電磁波シールド材。
- 請求項7又は8に記載の電磁波シールド材でシールドされたシールドケーブル。
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