JP2014227484A - マスターバッチ、製造方法、ゴム組成物及び空気入りタイヤ - Google Patents

マスターバッチ、製造方法、ゴム組成物及び空気入りタイヤ Download PDF

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Abstract

【課題】優れた加工性を得つつ、低燃費性及び耐熱老化性をバランス良く改善したマスターバッチ、該マスターバッチの製造方法、該マスターバッチを含むゴム組成物、及び該ゴム組成物を用いて作製した空気入りタイヤを提供する。【解決手段】イソプレン系ゴム及びミクロフィブリル化植物繊維を混合し、得られた混合物のpHを2〜6に調整して凝固させることにより作製されるマスターバッチに関する。【選択図】なし

Description

本発明は、マスターバッチ、該マスターバッチの製造方法、該マスターバッチを含むゴム組成物、及び該ゴム組成物を用いて作製した空気入りタイヤに関する。
ゴム組成物の低燃費化を目的として、ゴム成分として汎用されている天然ゴムについて、改質による低燃費化などが検討されており、特許文献1には、天然ゴムラテックスに界面活性剤を加えて洗浄処理する方法が開示されているが、蛋白質やゲル分の低減が充分ではなく、tanδの更なる低減が望まれている。
一方、天然ゴムは、他の合成ゴムに比べて高ムーニー粘度で加工性が悪く、通常しゃっ解剤を添加して素練りを行い、ムーニー粘度を低下させた後に使用しているため、生産性が悪い。更に、素練りにより天然ゴムの分子鎖が切断されることで、天然ゴムが本来有する高分子量ポリマーの特性(良好な低燃費性など)が失われるという問題がある。
加えて、通常の天然ゴムは、80℃で18時間程度の老化条件ではゴムが劣化しないのに対し、タンパク質等を高度に除去した改質天然ゴムでは、同条件でゴムの劣化が観察され、耐熱老化性に劣るという問題もある。
ゴム組成物を補強し、モジュラス(複素弾性率)を向上させる目的で、セルロース繊維等のミクロフィブリル化植物繊維を充填剤としてゴム組成物に配合する方法がある。しかしながら、ミクロフィブリル化植物繊維は、自己凝集力が強く、ゴム成分との相溶性も悪いため、ゴム練り時における分散性が低い。そのため、配合しても低燃費性などの性能が悪化する場合があり、ミクロフィブリル化植物繊維の分散性を向上させる方法も求められている。
以上のとおり、天然ゴム及びセルロース繊維を配合するマスターバッチ等において、優れた加工性を得つつ、低燃費性及び耐熱老化性をバランス良く改善することは一般に困難であり、改良が求められている。
特許第3294901号公報
本発明は、前記課題を解決し、優れた加工性を得つつ、低燃費性及び耐熱老化性をバランス良く改善したマスターバッチ、該マスターバッチの製造方法、該マスターバッチを含むゴム組成物、及び該ゴム組成物を用いて作製した空気入りタイヤを提供することを目的とする。
本発明は、イソプレン系ゴム及びミクロフィブリル化植物繊維を混合し、得られた混合物のpHを2〜6に調整して凝固させることにより作製されるマスターバッチに関する。
前記イソプレン系ゴムがイソプレン系ゴムラテックスであることが好ましい。
前記イソプレン系ゴムが非ゴム成分を除去したものであることが好ましい。
前記イソプレン系ゴム100質量部に対する前記ミクロフィブリル化植物繊維の含有量が0.1〜30質量部であることが好ましい。
前記イソプレン系ゴムのリン含有量が200ppm以下であることが好ましい。
本発明はまた、イソプレン系ゴムラテックス及びミクロフィブリル化植物繊維を混合し、得られた混合物のpHを2〜6に調整して凝固させる工程(I)を含む前記マスターバッチの製造方法に関する。
本発明はまた、前記マスターバッチを含み、ゴム成分100質量部に対する前記ミクロフィブリル化植物繊維の含有量が0.1〜30質量部であるタイヤ用ゴム組成物に関する。
本発明はまた、前記ゴム組成物を用いて作製した空気入りタイヤに関する。
本発明によれば、イソプレン系ゴム及びミクロフィブリル化植物繊維を混合し、得られた混合物のpHを2〜6に調整して凝固させることにより作製されるマスターバッチであるので、優れた加工性を得つつ、低燃費性及び耐熱老化性の性能バランスが顕著に改善される。
〔マスターバッチ〕
本発明のマスターバッチは、イソプレン系ゴム及びミクロフィブリル化植物繊維を混合し、得られた混合物のpHを2〜6に調整して凝固させることにより作製されるものである。
従来、ミクロフィブリル化植物繊維は、マスターバッチ中での分散は可能でも該マスターバッチをゴム組成物に配合した場合に、ゴム組成物中に均一に分散させることは困難であり、また、天然ゴムでも、加工性及びゴム物性の面で課題があった。本発明のマスターバッチは、イソプレン系ゴム及びミクロフィブリル化植物繊維混合物のpHを2〜6に調整し、凝固させるという手法を採用することで、これらの課題を解決したものである。つまり、当該手法を採用することで、天然ゴムを用いた場合にゴム中の蛋白質やリン脂質などが除去されるとともに、ミクロフィブリル化植物繊維がゴム組成物中に均一に分散されるため、優れた加工性、低燃費性及び耐熱老化性が得ることが可能になる。
本発明のマスターバッチは、イソプレン系ゴム及びミクロフィブリル化植物繊維を混合し、得られた混合物のpHを2〜6に調整して凝固させること、すなわち、イソプレン系ゴム及びミクロフィブリル化植物繊維を混合し、得られた混合物のpHを2〜6に調整して凝固させる工程(I)を含む製造方法などにより、作製される。
イソプレン系ゴムとしては、天然ゴム(NR)、エポキシ化天然ゴム(ENR)、イソプレンゴム(IR)、高純度化天然ゴム(HPNR)等が挙げられる。
本発明では、イソプレン系ゴムとして、リン含有量が200ppm以下の改質イソプレン系ゴムを好適に使用できる。前記改質イソプレン系ゴムは、非ゴム成分を除去して得られる。200ppm以下であると、貯蔵中のゲル量が増加しにくく、加硫ゴムのtanδが低下して低燃費性が良好になったり、未加硫ゴムのムーニー粘度が改善され加工性が良好となる。該リン含有量は、好ましくは200ppm以下、より好ましくは120ppm以下である。ここで、リン含有量は、例えばICP発光分析等、従来の方法で測定することができる。リンは、リン脂質(リン化合物)に由来するものである。
前記イソプレン系ゴムにおいて、窒素含有量は0.3質量%以下が好ましく、0.15質量%以下がより好ましい。窒素含有量が0.3質量%を超えると、貯蔵中にムーニー粘度が上昇して加工性が悪くなる傾向があり、また、低燃費性が悪化するおそれもある。窒素含有量は、例えばケルダール法等、従来の方法で測定することができる。窒素は、蛋白質に由来するものである。
前記イソプレン系ゴムは、実質的にリン脂質が存在しないことが好ましい。「実質的にリン脂質が存在しない」とは、天然ゴム試料をクロロホルムで抽出し、抽出物の31P NMR測定において、−3ppm〜1ppmにリン脂質によるピークが存在しない状態を表す。−3ppm〜1ppmに存在するリンのピークとは、リン脂質におけるリンのリン酸エステル構造に由来するピークである。
本発明では、イソプレン系ゴムとして、天然ゴムラテックス、ケン化天然ゴムラテックス等の改質天然ゴムラテックス、エポキシ化天然ゴムラテックス、イソプレンゴムラテックスなどのイソプレン系ゴムラテックスを好適に使用できる。
つまり、本発明のマスターバッチは、イソプレン系ゴムラテックス及びミクロフィブリル化植物繊維を混合し、得られた混合物のpHを2〜6に調整して凝固させる工程(I)を含む製造方法などにより、好適に製造できる。具体的には、イソプレン系ゴムラテックスにミクロフィブリル化植物繊維を投入して撹拌することで配合ラテックス(混合液)を作製し、次いで、酸などを用いてpHを2〜6に調整して該配合ラテックスを凝固させることで製造できる。これにより、イソプレン系ゴム中にミクロフィブリル化植物繊維が均一に分散した複合体を製造できる。なお、ミクロフィブリル化植物繊維投入後は、短時間で次の作業、すなわち、撹拌、凝固に移ることが好ましい。
イソプレン系ゴムラテックスのなかでも、天然ゴムラテックス、ケン化天然ゴムラテックスなどの改質天然ゴムラテックスを好適に使用できる。本発明では、リン、窒素などの非ゴム成分を含む天然ゴムラテックスを使用した場合でも、これとミクロフィブリル化植物繊維を併用し、所定のpHに調整して凝固しているため、特段ケン化天然ゴムラテックスなどの非ゴム成分を除去したゴムラテックスを使用しなくても、非ゴム成分が充分に除去される。従って、イソプレン系ゴムとして、通常の天然ゴムラテックスを用いた場合にも本発明の効果が充分に得られる。
天然ゴムラテックスはヘベア樹等の天然ゴムの樹木の樹液として採取され、ゴム分のほか水、タンパク質、脂質、無機塩類等を含み、ゴム中のゲル分は種々の不純物の複合的な存在に基づくものと考えられている。本発明では、天然ゴムラテックスとして、ヘベア樹をタッピングして出てくる生ラテックス(フィールドラテックス)、遠心分離法やクリーミング法によって濃縮した濃縮ラテックス(精製ラテックス、常法によりアンモニアを添加したハイアンモニアラテックス、亜鉛華とTMTDとアンモニアによって安定化させたLATZラテックス等)等を使用できる。
天然ゴムラテックスはそのままミクロフィブリル化植物繊維と混合してもよいが、あらかじめ、ケン化処理を行ったものを使用してもよい。ケン化処理は、天然ゴムラテックスに、NaOH等のアルカリと、必要に応じて界面活性剤を添加して所定温度で一定時間、静置することにより行うことができる。なお、必要に応じて撹拌等を行っても良い。ラテックス状態でケン化処理を行うことで、天然ゴムの各粒子が均一に処理され、効率的にケン化処理を行うことができる。ケン化処理を施すと、ケン化により分離したリン化合物が除去されるので、調製されるマスターバッチに含まれる天然ゴム中のリン含有量を抑えることができる。また、ケン化処理により、天然ゴム中の蛋白質が分解されるので、天然ゴムの窒素含有量を抑えることもできる。
ケン化処理に用いるアルカリとしては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が好ましい。界面活性剤としては特に限定されず、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩等の公知のノニオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、両性界面活性剤が挙げられるが、ゴムを凝固させず良好にケン化できるという点から、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩が好適である。ケン化処理において、アルカリ及び界面活性剤の添加量、ケン化処理の温度及び時間は、適宜設定すればよい。
ミクロフィブリル化植物繊維(セルロースナノファイバー)としては、例えば、木材、竹、麻、ジュート、ケナフ、農作物残廃物、布、再生パルプ、古紙、バクテリアセルロース、ホヤセルロース等の天然物に由来するものが挙げられる。ミクロフィブリル化植物繊維の製造方法としては特に限定されないが、例えば、上記天然物を水酸化ナトリウム等の薬品で化学処理した後、リファイナー、二軸混錬機(二軸押出機)、二軸混錬押出機、高圧ホモジナイザー、媒体撹拌ミル、石臼、グラインダー、振動ミル、サンドグラインダー等により機械的に磨砕ないし叩解する方法が挙げられる。
ミクロフィブリル化植物繊維は、水中に分散させた水溶液(ミクロフィブリル化植物繊維水溶液)の状態でイソプレン系ゴムラテックスに投入してもよいし、ミクロフィブリル化植物繊維をそのままイソプレン系ゴムラテックスに投入後、必要に応じて水で希釈してもよい。ミクロフィブリル化植物繊維を良好に分散できるという点から、ミクロフィブリル化植物繊維水溶液をイソプレン系ゴムラテックスに投入することが好ましい。ミクロフィブリル化植物繊維水溶液中、ミクロフィブリル化植物繊維の含有量(固形分)は、好ましくは0.2〜20質量%、より好ましくは0.5〜10質量%、更に好ましくは0.5〜3質量%である。
ミクロフィブリル化植物繊維のほぐれ具合(切断具合)は、ミクロフィブリル化植物繊維水溶液の粘度で判断することができ、粘度が高いほど、繊維がほぐれている(繊維が切断されて短くなっている)ことを意味する。ミクロフィブリル化植物繊維水溶液の粘度は、好ましくは50mPa・s以上、より好ましくは80mPa・s以上である。50mPa・s未満であると、繊維が充分にほぐれておらず、充分な補強性が得られないおそれがある。また、繊維塊が破壊核となり、破断伸びが低下するおそれもある。ミクロフィブリル化植物繊維水溶液の粘度は、好ましくは200mPa・s以下、より好ましくは150mPa・s以下である。200mPa・sを超えると、水溶液が撹拌されにくくなり、撹拌ローター周辺の繊維が局部的に粉砕され、均一な繊維の粉砕が困難になるおそれがある。また、ケン化天然ゴムラテックスとの混練りが困難になるおそれもある。
なお、ミクロフィブリル化植物繊維水溶液の粘度は、ミクロフィブリル化植物繊維を0.5質量%、水を99.5質量%含むミクロフィブリル化植物繊維水溶液を、音叉型振動式粘度計によって常温(23℃)で測定した値である。
また、ミクロフィブリル化植物繊維のほぐれ具合は、ミクロフィブリル化植物繊維水溶液の撹拌速度、撹拌時間等によって調整することができる。撹拌速度が速く、撹拌時間が長いほど、繊維をほぐすことができる。また、撹拌に使用するホモジナイザーの機種、回転歯の形状、せん断能力を適切に選択することで、効率よく繊維をほぐすことが可能となる。
イソプレン系ゴムラテックスとミクロフィブリル化植物繊維とを混合して、これらの混合物を作製する工程は、これらを順次滴下、注入等を行った後、公知の方法で混合することで調製できる。
得られた混合物のpHを2〜6に調整して凝固させる際、当該pHは、好ましくは3〜6、より好ましくは3.5〜6である。ここで、pH調整は、酸、塩基などを添加することで実施できる。凝固時のpHを2〜6に調整することで、天然ゴムを用いた場合にも凝固物中のゴム成分を高純度化できる。具体的には、天然ゴム中のタンパク質、リン脂質などの非ゴム成分が除去され、高純度化され、低燃費性や加工性が改善される。また、非ゴム成分の除去等で、ゴムの劣化が進行し易くなるが、凝固時のpHを所定範囲に調整することで、保存中のゴム分の分子量の低下が抑制されるので、良好な耐熱老化性が得られる。従って、低燃費性、耐熱老化性及び加工性の性能バランスを顕著に改善できる。
ここで、天然ゴムの高純度化とは、天然ポリイソプレノイド成分以外のリン脂質、タンパク質等の不純物を取り除くことである。天然ゴムは、イソプレノイド成分が、前記不純物成分に被覆されているような構造となっており、前記成分を取り除くことにより、イソプレノイド成分の構造が変化して、配合剤との相互作用が変わってエネルギーロスが減ったり、耐久性が向上し、より良いマスターバッチを得ることができると推察される。
混合物を凝固する方法には、酸凝固、塩凝固、メタノール凝固等があるが、マスターバッチ中にミクロフィブリル化植物繊維を均一分散させた状態で凝固するためには、酸凝固、塩凝固又はこれらの併用が好ましく、酸凝固がより好ましい。凝固させるための酸としては、蟻酸、硫酸、塩酸、酢酸等が挙げられ、コスト面から、硫酸が好ましい。また、塩としては、例えば、1〜3価の金属塩(塩化ナトリウム、塩化マグネシウム、硝酸カルシウム、塩化カルシウム等のカルシウム塩等)が挙げられる。
混合物の凝固を急激に行うと、ミクロフィブリル化植物繊維が毛玉状に固まってイソプレン系ゴムラテックスに取り込まれ、ミクロフィブリル化植物繊維が分散しにくくなる傾向がある。従って、混合物の凝固は、ミクロフィブリル化植物繊維がイソプレン系ゴムラテックスに緩やかに取り込まれるような条件で行うことが好ましい。このような観点から、混合物を凝固する際、混合物の温度は、40℃以下にすることが好ましく、35℃以下にすることがより好ましい。同様の観点から、上述した酸、塩、メタノール等の凝固剤は、段階的に投入する(全量を分割して投入する)ことが好ましい。
(工程(II))
工程(I)で得られた凝固物(凝集ゴム及びミクロフィブリル化植物繊維を含む凝集物)を、必要に応じて洗浄してもよい。つまり、得られた凝固物に対して、更に洗浄処理を施してリン量や窒素量をより所望の量に調整してもよい。
洗浄方法としては、例えば、ゴム分を水で希釈した後に遠心分離する方法や、ゴム分を水で希釈した後に静置してゴムを浮遊又は沈殿させ水相のみを排出する方法が挙げられる。遠心分離する際は、まずイソプレン系ゴムラテックスのゴム分が5〜40質量%、好ましくは10〜30質量%となるように水で希釈し、次いで5000〜10000rpmで1〜60分間遠心分離すればよく、所望のリン含有量になるまで洗浄を繰り返せばよい。また、静置してゴムを浮遊又は沈殿させる場合も水の添加、撹拌を繰り返して、所望のリン含有量になるまで洗浄すればよい。
なお、洗浄方法はこれらに限定されず、pHが6〜7の範囲となるように炭酸ナトリウム等の弱アルカリ水で中和後、液相分を除去することで洗浄してもよい。
必要に応じて洗浄した後、通常、公知の方法(オーブン、減圧等)で乾燥する。乾燥後、2軸ロール、バンバリーミキサー等でゴム練りを行うと、イソプレン系ゴム及びミクロフィブリル化植物繊維を含むクラム状のマスターバッチが得られる。上記マスターバッチは、まとまり性、ハンドリング性を良くするため、圧延ロールで数cm厚みのシートに成型することが好ましい。なお、上記マスターバッチは、本発明の効果を阻害しない範囲で他の成分を含んでもよい。
上記マスターバッチにおいて、上記イソプレン系ゴム100質量部に対するミクロフィブリル化植物繊維の含有量は、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは1質量部以上、更に好ましくは3質量部以上である。0.1質量部未満であると、マスターバッチを配合したゴム組成物において、必要なミクロフィブリル化植物繊維を確保しようとすると、上記改質天然ゴムの量が多くなり過ぎて、架橋密度が低くなり、低燃費性が悪化する場合がある。また、該含有量は、好ましくは30質量部以下、より好ましくは20質量部以下、更に好ましくは10質量部以下である。30質量部を超えると、ミクロフィブリル化植物繊維の分散性が低下し、低燃費性が悪化する場合がある。
〔タイヤ用ゴム組成物〕
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、上記マスターバッチを含む。前記マスターバッチを用いることで、高純度化されたイソプレン系ゴム中にミクロフィブリル化植物繊維が均一に分散したゴム組成物が得られる。その結果、混練工程でのゴム物性の低下防止、充填剤などの分散向上が実現し、優れた加工性を得つつ、低燃費性及び耐熱老化性の性能バランスを顕著に改善できる。
本発明のゴム組成物において、ゴム成分100質量%中のイソプレン系ゴムの含有量は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは50質量%以上、更に好ましくは80質量%である。5質量%未満であると、優れた低燃費性が得られないおそれがある。
イソプレン系ゴム以外に使用できるゴム成分としては、ブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、クロロプレンゴム(CR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)などが挙げられる。
本発明のゴム組成物において、ミクロフィブリル化植物繊維の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは1質量部以上、更に好ましくは3質量部以上である。また、該含有量は、好ましくは30質量部以下、より好ましくは20質量部以下、更に好ましくは10質量部以下である。0.1質量部未満であると、ミクロフィブリル化植物繊維を配合することによる効果が得られないおそれがある。30質量部を超えると、ミクロフィブリル化植物繊維の分散性が低下し、低燃費性が悪化する場合がある。
本発明のゴム組成物は、カーボンブラック及び/又は白色充填剤を含むことが好ましい。これにより、補強効果が得られる。
カーボンブラックのチッ素吸着比表面積(NSA)は70m/g以上が好ましく、100m/g以上がより好ましい。70m/g未満であると、充分な補強効果が得られない傾向がある。カーボンブラックのNSAは200m/g以下が好ましく、180m/g以下がより好ましい。200m/gを超えると、低燃費性が低下する傾向がある。なお、カーボンブラックのチッ素吸着比表面積は、JIS K6217のA法によって求められる。
白色充填剤としては、ゴム工業で一般的に使用されているもの、たとえば、シリカ、炭酸カルシウム、セリサイトなどの雲母、水酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、クレー、タルク、アルミナ、酸化チタンなどを使用できる。
カーボンブラックの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは10質量部以上、より好ましくは30質量部以上である。該含有量は、好ましくは150質量部以下、より好ましくは100質量部以下である。上記範囲内であると、良好な低燃費性が得られる。
本発明のゴム組成物において、カーボンブラック及び白色充填剤の合計含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは10質量部以上、より好ましくは30質量部以上である。該含有量は、好ましくは150質量部以下、より好ましくは100質量部以下である。上記範囲内であると、良好な低燃費性が得られる。
本発明のゴム組成物には、上記の材料以外にも、酸化亜鉛、ステアリン酸、各種老化防止剤、軟化剤(オイル、ワックスなど)、加硫剤(硫黄、有機過酸化物など)、加硫促進剤(スルフェンアミド系、グアニジン系加硫促進剤など)などのタイヤ工業において一般的に用いられている各種材料が適宜配合されていてもよい。
本発明のゴム組成物の製造方法としては、公知の方法を用いることができ、例えば、上記各成分をオープンロール、バンバリーミキサーなどのゴム混練装置を用いて混練し、その後加硫する方法などにより製造できる。
本発明のゴム組成物は、キャップトレッド、ベーストレッド、アンダートレッド、クリンチエイペックス、ビードエイペックス、サイドウォール、ブレーカー、エッジバンド、フルバンド、ブレーカークッションゴム、カーカスコード被覆用ゴム、ランフラット補強層、インスレーション、チェーファー、インナーライナー等のタイヤの各部材、ベルト、ロール等に好適に使用できる。
本発明のタイヤは、上記ゴム組成物を用いて通常の方法によって製造される。すなわち、必要に応じて各種材料を配合したゴム組成物を、未加硫の段階でタイヤの各部材(トレッドなど)の形状に合わせて押し出し加工し、タイヤ成型機上にて通常の方法にて成形することにより未加硫タイヤを形成した後、加硫機中で加熱加圧して製造できる。
本発明のタイヤとしては、空気入りタイヤ、エアレス(ソリッド)タイヤなどが挙げられるが、なかでも、空気入りタイヤが好ましい。
実施例に基づいて、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。
以下に、実施例で用いた各種薬品について説明する。
フィールドラテックス:ムヒバラテックス社から入手したフィールドラテックス
エマールE−27C(界面活性剤):花王(株)製のエマールE−27C(ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム、有効成分27質量%)
NaOH:和光純薬工業(株)製のNaOH
Wingstay L(老化防止剤):ELIOKEM社製のWingstay L(ρ−クレゾールとジシクロペンタジエンとの縮合物をブチル化した化合物)
エマルビンW(界面活性剤):LANXESS社製のエマルビンW(芳香族ポリグリコールエーテル)
タモールNN9104(界面活性剤):BASF社製のタモールNN9104(ナフタレンスルホン酸/ホルムアルデヒドのナトリウム塩)
Van gel B(界面活性剤):Vanderbilt社製のVan gel B(マグネシウムアルミニウムシリケートの水和物)
ミクロフィブリル化植物繊維:王子製袋(株)製のネオファイバー
凝固剤:和光純薬工業(株)製の1%硫酸
NR:TSR20
カーボンブラック:キャボットジャパン(株)製のN220(NSA:111m/g)
酸化亜鉛:三井金属鉱業(株)製の酸化亜鉛2種
ステアリン酸:日油(株)製のビーズステアリン酸つばき
老化防止剤:大内新興化学工業(株)製のノクラック6C(N−フェニル−N’−(1,3−ジメチルブチル)−p−フェニレンジアミン)(6PPD)
硫黄:日本乾溜工業(株)製のセイミ硫黄(オイル分:10%)
加硫促進剤:大内新興化学工業(株)製のノクセラーNS
<実施例及び比較例>
(老化防止剤分散体の調製)
水 462.5gにエマルビンW 12.5g、タモールNN9104 12.5g、Van gel B 12.5g、Wingstay L 500g(合計1000g)をボールミルで16時間混合し、老化防止剤分散体を調製した。
(ミクロフィブリル化植物繊維水溶液の調製)
ミクロフィブリル化植物繊維を200倍(質量比)の水で希釈後、IKAジャパン(株)製のmagic LAB(循環式/MKコロイドミル)を用いて2時間撹拌し、ミクロフィブリル化植物繊維を1質量%、水を99質量%含むミクロフィブリル化植物繊維水溶液を得た。ミクロフィブリル化植物繊維水溶液の粘度を音叉型振動式粘度計((株)エー・アンド・デイ社製のSV―10)を用いて常温(23℃)で測定し、表1に記載した。
(製造例1)
フィールドラテックスの固形分濃度(DRC)を30%(w/v)に調整した後、該ラテックス1000gに、10%エマールE−27C水溶液25gと25%NaOH水溶液60gを加え、室温で24時間ケン化反応を行い、ケン化天然ゴムラテックスを得た。得られたケン化天然ゴムラテックスと、ミクロフィブリル化植物繊維水溶液とを乾燥時に表1に記載の質量比率となるように計量、混合し、筒型ホモジナイザー(プライミクス(株)製のオートミクサー 20型)を用いて8000rpmの条件で1時間撹拌した。次いで、老化防止剤分散体6gを添加し、2時間撹拌した後、更に水を添加してゴム濃度15%(w/v)となるまで希釈した。次いで、ゆっくり撹拌しながら凝固剤を添加してpHを4.0に調整し、凝固物を得た後、水しぼりロールで水を絞ってシート状にした後、90℃で4時間乾燥してマスターバッチ1(MB1)を得た。
(製造例2)
製造例1においてpH5.2に調整したほかは、同様の手順でマスターバッチ2(MB2)を得た。
(製造例3)
製造例1においてpH5.7に調整したほかは、同様の手順でマスターバッチ3(MB3)を得た。
(製造例4)
製造例1においてpH3.5に調整したほかは、同様の手順でマスターバッチ4(MB4)を得た。
(製造例5)
フィールドラテックスの固形分濃度(DRC)を30%(w/v)に調整したラテックスと、ミクロフィブリル化植物繊維水溶液とを乾燥時に表1に記載の質量比率となるように計量、混合し、筒型ホモジナイザー(プライミクス(株)製のオートミクサー 20型)を用いて8000rpmの条件で1時間撹拌した。次いで、老化防止剤分散体6gを添加し、2時間撹拌した後、更に水を添加してゴム濃度15%(w/v)となるまで希釈した。次いで、ゆっくり撹拌しながら凝固剤を添加してpHを5.0に調整し、凝固物を得た後、水しぼりロールで水を絞ってシート状にした後、90℃で4時間乾燥してマスターバッチ5(MB5)を得た。
(比較製造例1)
製造例1においてpH8.0に調整したほかは、同様の手順でマスターバッチ6(MB6)を得た。
(比較製造例2)
製造例1においてpH8.8に調整したほかは、同様の手順でマスターバッチ7(MB7)を得た。
(比較製造例3)
製造例5においてpH8.1に調整したほかは、同様の手順でマスターバッチ8(MB8)を得た。
(比較製造例4)
製造例5においてpH8.5に調整したほかは、同様の手順でマスターバッチ9(MB9)を得た。
前記MB1〜9に含まれるゴム分の物性を下記により評価し、結果を表1に示した。
<窒素含有量の測定>
窒素含有量は、熱分解後ガスクロマトグラフで定量した。
<リン含有量の測定>
ICP発光分析装置(P−4010、(株)日立製作所製)を使用してリン含有量を求めた。
また、リンの31P−NMR測定は、NMR分析装置(400MHz、AV400M、日本ブルカー社製)を使用し、80%リン酸水溶液のP原子の測定ピークを基準点(0ppm)として、クロロホルムによりゴム分より抽出した成分を精製し、CDClに溶解して測定した。
<耐熱老化性>
老化前後における各ゴム分の重量平均分子量を測定し、下記式により分子量保持率を算出することで耐熱老化性を評価した。なお、老化処理は、各ゴム分を80℃で72時間オーブン中に保管して実施し、重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフを用いてイソプレンを標準物質として測定した。数値が大きいほど、耐熱老化性が優れている。
(耐熱老化性)=老化後の分子量/老化前の分子量×100(%)で表した。
Figure 2014227484
表1により、凝固時のpHを2〜6に調整した工程を含む方法により得られたマスターバッチは、範囲外のpHのマスターバッチに比べて、耐熱老化性が優れていた。また、窒素含有量及びリン含有量も低減された。
<加硫ゴム組成物の作製>
表2に示す配合処方にしたがい、(株)神戸製鋼製1.7Lバンバリーミキサーを用いて、硫黄及び加硫促進剤以外の薬品を混練りした。次に、オープンロールを用いて、得られた混練り物に硫黄及び加硫促進剤を添加して練り込み、未加硫ゴム組成物を得た。次に、得られた未加硫ゴム組成物を、150℃で30分間、2mm厚の金型でプレスし、加硫ゴム組成物を得た。得られた未加硫ゴム組成物及び加硫ゴム組成物を下記により評価した。結果を表2に示す。
<ムーニー粘度(ML(1+4))>
JIS K6300:2001−1に従って、130℃にて、未加硫ゴム組成物のムーニー粘度を測定した。成形時において、ムーニー粘度(130℃)が30〜70の場合、加工性が良好であり、35〜60の場合、より良好であることを示す。
<転がり抵抗>
粘弾性スペクトロメーターVES((株)岩本製作所製)を用いて、温度70℃、初期歪み10%、動歪み1%、周波数10Hzの条件下で、各配合(加硫物)の損失正接(tanδ)を測定し、比較例1の転がり抵抗指数を100として、下記計算式により算出した。転がり抵抗指数が小さいほど、転がり抵抗が低減され、好ましいことを示す。
(転がり抵抗指数)=(各配合のtanδ)/(比較例1のtanδ)×100
Figure 2014227484
表2により、マスターバッチ1〜5を用いた実施例では、優れた加工性を得つつ、低燃費性及び耐熱老化性の性能バランスを顕著に改善することが明らかとなった。

Claims (8)

  1. イソプレン系ゴム及びミクロフィブリル化植物繊維を混合し、得られた混合物のpHを2〜6に調整して凝固させることにより作製されるマスターバッチ。
  2. 前記イソプレン系ゴムがイソプレン系ゴムラテックスである請求項1記載のマスターバッチ。
  3. 前記イソプレン系ゴムが非ゴム成分を除去したものである請求項1又は2記載のマスターバッチ。
  4. 前記イソプレン系ゴム100質量部に対する前記ミクロフィブリル化植物繊維の含有量が0.1〜30質量部である請求項1又は2記載のマスターバッチ。
  5. 前記イソプレン系ゴムのリン含有量が200ppm以下である請求項1〜4のいずれかに記載のマスターバッチ。
  6. イソプレン系ゴムラテックス及びミクロフィブリル化植物繊維を混合し、得られた混合物のpHを2〜6に調整して凝固させる工程(I)を含む請求項1〜5のいずれかに記載のマスターバッチの製造方法。
  7. 請求項1〜5のいずれかに記載のマスターバッチを含み、
    ゴム成分100質量部に対する前記ミクロフィブリル化植物繊維の含有量が0.1〜30質量部であるタイヤ用ゴム組成物。
  8. 請求項7記載のゴム組成物を用いて作製した空気入りタイヤ。
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