以下、本発明の好ましい実施の形態を、図面を参照しながら説明する。
本実施の形態は、尿蛋白、尿糖等の検査(尿定性の検査)、及び、尿中に含まれる赤血球、白血球、上皮細胞等の検査(尿中有形成分の検査)を行う臨床検体分析装置に関する。尿中有形成分の検査は、尿定性の検査が行われた結果、さらに尿中有形成分の検査が必要であるとされた検体について行われる。本実施の形態では、異なる検体を収容する複数の検体容器がラックにセットされ、このラックが検体分析装置にセットされて各検体の検査が行われる。
[尿検査装置の構成]
以下、本実施の形態に係る尿検査装置について、図面を参照して説明する。
図1は、尿検査装置1を含むシステム全体の構成を示す図である。本実施の形態に係る尿検査装置1は、測定ユニット10と、搬送ユニット20と、情報処理ユニット30とを備えている。
測定ユニット10は、尿定性の検査を行う尿定性測定部11と、尿中有形成分の検査を行う尿中有形成分測定部12とを有している。尿定性測定部11と尿中有形成分測定部12とは、互いに通信可能に接続されている。また、尿定性測定部11及び尿中有形成分測定部12のそれぞれは、情報処理ユニット30と通信可能に接続されている。さらに、尿定性測定部11は、搬送ユニット20と通信可能に接続されている。
搬送ユニット20は、尿定性測定部11及び尿中有形成分測定部12に共通の単一ユニットである。搬送ユニット20は、測定ユニット10の前面に装着されており、搬送路21を備えている。搬送路21は、搬送ユニット20上面よりも一段低い平板状の底面を有している。搬送路21上を搬送される検体ラック50には、10本の検体容器51を保持できるよう10個の保持部が形成されている。検体容器51は、検体ラック50の保持部に保持されることにより、検体ラック50とともに搬送路21上を搬送される。検体容器51の側面には、検体を特定するためのバーコードラベル(図示せず)が貼付されている。情報処理ユニット30は、通信回線を介してホストコンピュータ40と通信可能に接続されている。
搬送路21は、右側に設けられた四角形の右槽領域21aと、左側に設けられた四角形の左槽領域21cと、右槽領域21a及び左槽領域21cを連結する連結領域21bとによって構成される。ユーザによって右槽領域21aの手前側に検体ラック50が載置されると、右槽領域21aに載置された検体ラック50が後方(測定ユニット10に近接する方向)に移送され、右槽領域21aの奥側の端に位置付けられる。右槽領域21aの奥側に位置付けられた検体ラック50は、連結領域21bを左方に移送される。
バーコードリーダ116は、バーコードリーダ116の手前に位置付けられた検体容器51に貼付されたバーコードラベルからバーコード情報を読み出す。なお、バーコードリーダ116は、後述するように尿定性測定部11の制御部111により制御されている。
連結領域21bには検体ラック50に保持された検体容器51から検体を吸引するための2つの吸引位置が設けられており、一方の吸引位置に位置した検体容器51から尿定性測定部11に備えられたノズルによって検体が吸引され、他方の吸引位置に位置した検体容器51から尿中有形成分測定部12に備えられたノズルによって検体が吸引される。全ての検体の吸引が完了した検体ラック50は、連結領域21bに沿って左方へ移送され、左槽領域21cの奥側に位置づけられる。
左槽領域21cの奥側に位置付けられている検体ラック50は、前方に移送され、左槽領域21cの手前側に順次位置付けられる。こうして、左槽領域21cの手前に位置付けられた検体ラック50は、ユーザにより取り出される。
図2は、尿定性測定部11と、尿中有形成分測定部12と、搬送ユニット20と、ホストコンピュータ40の回路構成を示す図である。
尿定性測定部11は、制御部111と、通信部112と、吸引部113と、試験紙供給部114と、検出部115と、バーコードリーダ116とを有している。制御部111は、CPU111aと記憶部111bとを有している。CPU111aは、記憶部111bに記憶されているコンピュータプログラムを実行し、尿定性測定部11の各部を制御する。また、CPU111aは、通信部112を介して、搬送ユニット20の各部を制御する。記憶部111bは、ROM、RAM、ハードディスク等の記憶手段を備える。かかる尿定性測定部11は、複数の測定項目(尿定性測定項目)について検体の測定が可能である。尿定性測定項目には、ブドウ糖(GLU)、蛋白質(PRO)、アルブミン(ALB)、ビリルビン(BIL)、ウロビリノーゲン(URO)、pH(PH)、潜血(BLD)、ケトン体(KET)、亜硝酸塩(NIT)、白血球(LEU)、クレアチニン(CRE)、アルブミン/クレアチニン比(A/C)が含まれる。
通信部112は、制御部111から受け付けた信号を処理して、処理した信号を尿中有形成分測定部12と、搬送ユニット20と、情報処理ユニット30とへ出力し、尿中有形成分測定部12と、搬送ユニット20と、情報処理ユニット30とから受け付けた信号を処理して、処理した信号を制御部111へ出力する。吸引部113は、上述した一方の吸引位置に位置付けられている検体容器51内の検体を、尿定性測定部11のノズルを介して吸引する。試験紙供給部114は、測定に必要な試験紙を、試験紙が収容されている試験紙フィーダから取り出し、取り出した試験紙に吸引部113により吸引された検体を点着させる。検出部115は、検体が点着された試験紙を測定する。かかる測定により得られた測定データは、制御部111に出力され、制御部111により解析される。バーコードリーダ116は、検体容器51に貼付されたバーコードラベルからバーコード情報を読み出し、制御部111に出力する。
尿中有形成分測定部12は、制御部121と、通信部122と、吸引部123と、試料調製部124と、検出部125とを有している。制御部121は、CPU121aと記憶部121bとを有している。CPU121aは、記憶部121bに記憶されているコンピュータプログラムを実行し、尿中有形成分測定部12の各部を制御する。記憶部121bは、ROM、RAM、ハードディスク等の記憶手段を備える。かかる尿中有形成分測定部12は、複数の測定項目(尿中有形成分測定項目)について検体の測定が可能である。尿中有形成分測定項目には、赤血球(RBC)、白血球(WBC)、上皮細胞(EC)、円柱(CAST)、細菌(BACT)、結晶(X’TAL)、酵母様真菌(YLC)、小型円形細胞(SRC)、細胞成分などを含む病的な円柱(Path.CAST)、粘液糸(MUCUS)、精子(SPERM)、尿導電率(Cond.)、赤血球形態情報(RBC−Info.)、尿濃度情報(Cond.−Info.)、UTI(尿路感染症)情報(UTI−Info.)が含まれる。
通信部122は、制御部121から受け付けた信号を処理して、処理した信号を尿定性測定部11と、情報処理ユニット30とへ出力し、尿定性測定部11と情報処理ユニット30とから受け付けた信号を処理して、処理した信号を制御部111へ出力する。吸引部123は、上述した他方の吸引位置に位置付けられている検体容器51内の検体を、尿中有形成分測定部12のノズルを介して吸引する。試料調製部124は、吸引部123により吸引された検体と、測定に必要な試薬とを混合攪拌し、検出部125による測定用の試料を調製する。検出部125は、試料調製部124により調製された試料を測定する。かかる測定により得られた測定データは、情報処理ユニット30に送信される。
搬送ユニット20は、通信部201と、搬送駆動部202と、センサ部203とを有している。通信部201は、尿定性測定部11から受け付けた信号を処理して、処理した信号を搬送ユニット20の各部へ出力し、搬送ユニット20の各部から受け付けた信号を処理して、処理した信号を尿定性測定部11へ出力する。
搬送駆動部202は、尿定性測定部11のCPU111aにより制御される。センサ部203は、搬送ユニット20に設けられた各種センサを含み、これらのセンサからの出力信号を、通信部201を介して尿定性測定部11へ出力する。
ホストコンピュータ40は、制御部401と通信部402とを有している。制御部401は、CPU401aと記憶部401bとを有している。CPU401aは、記憶部401bに記憶されているコンピュータプログラムを実行し、情報処理ユニット30から測定オーダの問い合わせを受け付けると、記憶部401bに記憶している測定オーダを返す。また、CPU401aは、情報処理ユニット30を介して尿定性測定部11から受信した測定データと、記憶部401bに記憶している測定要否の基準とに基づいて、尿中有形成分測定部12の測定オーダを決定する。記憶部401bは、ROM、RAM、ハードディスク等の記憶手段を備える。
図3は、情報処理ユニット30の回路構成を示す図である。
情報処理ユニット30は、パーソナルコンピュータからなり、本体300と、入力部310と、表示部320とを有している。本体300は、CPU301と、ROM302と、RAM303と、ハードディスク304と、読出装置305と、入出力インターフェース306と、画像出力インターフェース307と、通信インターフェース308とを有する。
CPU301は、ROM302に記憶されているコンピュータプログラム及びRAM303にロードされたコンピュータプログラムを実行する。RAM303は、ROM302及びハードディスク304に記録されているコンピュータプログラムの読み出しに用いられる。また、RAM303は、これらのコンピュータプログラムを実行するときに、CPU301の作業領域としても利用される。
ハードディスク304には、オペレーティングシステム及びアプリケーションプログラムなど、CPU301に実行させるための種々のコンピュータプログラム及びコンピュータプログラムの実行に用いるデータがインストールされている。すなわち、ハードディスク304には、尿定性測定部11及び尿中有形成分測定部12から送信された後述する測定オーダの問い合わせに基づいて、ホストコンピュータ40に測定オーダの問い合わせを行うプログラム、ホストコンピュータ40から送信された測定オーダを、尿定性測定部11と尿中有形成分測定部12とへ送信するプログラム等がインストールされている。また、ハードディスク304には、尿定性測定部11から送信された測定データに基づいて表示部320に尿定性検査結果の表示等を行うプログラム、尿中有形成分測定部12から送信された測定データに基づいて表示部320に尿中有形成分検査結果の表示等を行うプログラム等がインストールされている。
また、ハードディスク304には、クロスチェック設定値データベースが設けられている。図4は、クロスチェック設定値データベースの構成を示す模式図である。このクロスチェック設定値データベースDBは、尿定性測定項目と尿中有形成分測定項目との組合せ(クロスチェック対象項目)の設定値を格納するためのテーブルT1と、各クロスチェック対象項目におけるクロスチェックテーブル情報を格納するためのテーブルT2とを含んでいる。
テーブルT1は、設定値番号を格納するためのフィールドF11と、そのレコードを使用するか否かの設定値(使用フラグ)を格納するためのフィールドF12と、後述する測定結果画面においてクロスチェックマークを表示するか否かの設定値(表示フラグ)を格納するためのフィールドF13と、クロスチェック対象項目として設定された尿定性測定項目を格納するためのフィールドF14と、クロスチェック対象項目として設定された尿中有形成分測定項目を格納するためのフィールドF15とを含んでいる。即ち、テーブルT1の各レコードは、クロスチェック対象項目として指定された一対の尿定性測定項目及び尿中有形成分測定項目、使用フラグ、並びに表示フラグを含む。
テーブルT2は、テーブルT1に設定されているクロスチェック対象項目を格納するためのフィールドF21と、そのクロスチェック対象項目に対応するクロスチェックテーブル情報を格納するためのフィールドF22とを含んでいる。クロスチェックテーブル情報は、対応するクロスチェック対象項目である尿定性測定項目の測定値及び尿中有形成分測定項目の測定値が特定の関係にあるか否かを判定するために用いられる情報である。クロスチェックテーブル情報については後述する。
本実施の形態に係る情報処理ユニット30は、かかるクロスチェック設定値データベースDBを用いて、尿定性測定部11の測定結果と尿中有形成分測定部12の測定結果とが所定の関係にあるか否かを判定する測定結果のクロスチェックを実行することができる。具体的には、クロスチェック対象項目として蛋白質及び円柱の組合せがクロスチェック設定値データベースDBに設定されている場合、同一検体の尿定性測定部11による蛋白質(PRO)の測定結果と、尿中有形成分測定部12による円柱(CAST)の測定結果とがテーブルT2のクロスチェックテーブル情報に規定されている関係にあるか否かが判定される。図5は、クロスチェックテーブルの一例を示す図である。図5に示すクロスチェックテーブルCRTにおいては、縦軸が尿定性測定項目(蛋白質)の測定値のランク、横軸が尿中有形成分測定項目(円柱)の測定値のランクを示す。ランクは、ハードディスク304に記憶されているランク設定値により与えられる。ランク設定値については後述する。クロスチェックテーブルCRTでは、尿定性測定項目の測定値のランクと、尿中有形成分測定項目の測定値のランクとの各組合せについて、適合(図中斜線が描画されたセル)か不適合(図中白色のセル)かが設定されている。測定結果のクロスチェックでは、当該クロスチェックテーブルCRTにおいて、尿定性測定項目の測定値と尿定性測定項目の測定値とが“適合”に該当する場合には、これらの測定値が所定の関係(例えば、測定結果の信頼性が低い)に該当すると判断され、尿定性測定項目の測定値と尿定性測定項目の測定値とが“不適合”に該当する場合には、これらの測定値が所定の関係(例えば、測定結果の信頼性が低い)に該当しないと判断される。テーブルT2のクロスチェックテーブル情報は、上記のクロスチェックテーブルCRTを示すものである。具体的には、テーブルT2のフィールドF22に格納されるクロスチェックテーブル情報は、図4に示すように、“0”と“1”の2つの数値の組み合わせにより表現される。ここで、“0”はクロスチェックテーブルCRTの1つのセルにおける“不適合”を示しており、“1”は “適合”を示している。各セルの“適合”“不適合”のそれぞれを示す“0”“1”が、クロスチェックテーブルCRTにおける各セルの並びにしたがった所定の順番により並べられたデータがクロスチェックテーブル情報である。
読出装置305は、CDドライブ又はDVDドライブ等によって構成されており、記録媒体に記録されたコンピュータプログラム及びデータを読み出すことができる。入出力インターフェース306には、マウス及びキーボードからなる入力部310が接続されており、ユーザが入力部310を使用することにより、情報処理ユニット30にデータが入力される。画像出力インターフェース307は、ディスプレイ等で構成された表示部320に接続されており、画像データに応じた映像信号を、表示部320に出力する。表示部320は、入力された映像信号をもとに、画像を表示する。また、通信インターフェース308により、尿定性測定部11と、尿中有形成分測定部12と、ホストコンピュータ40とに対してデータの送受信が可能となる。
[尿検査装置の動作]
<クロスチェック設定処理>
以下、本実施の形態に係る尿検査装置1の動作について説明する。まず、尿検査装置1のクロスチェック設定処理について説明する。このクロスチェック設定処理は、ユーザにより指定された尿定性測定項目と尿中有形成分測定項目との組合せを後述するクロスチェックの対象項目として設定する処理である。
図6は、本実施の形態に係る尿検査装置1におけるクロスチェック設定処理の手順を示すフローチャートである。
まず、情報処理ユニット30のCPU301は、ユーザからクロスチェック設定ダイアログの表示指示を受け付けたか否かを判定する(ステップS101)。クロスチェック設定ダイアログとは、ユーザがクロスチェックの対象項目として尿定性測定項目及び尿中有形成分測定項目の組合せを指定するための画面である。かかるクロスチェック設定ダイアログの表示指示を受け付けなかった場合は(ステップS101においてNO)、CPU301は処理を終了する。
クロスチェック設定ダイアログの表示指示を受け付けた場合(ステップS101においてYES)、CPU301は、ハードディスク304からクロスチェック設定値を読み出し、当該クロスチェック設定値を反映したクロスチェック設定ダイアログを表示部320に表示させ(ステップS102)、設定受付処理を実行する(ステップS103)。
図7は、クロスチェック設定ダイアログの一例を示す図である。図に示すように、クロスチェック設定ダイアログD1には、10個までクロスチェック設定値の登録が可能となっている。クロスチェック設定ダイアログD1では、クロスチェック設定値の番号(1〜10)が縦に並んで表示され、各番号の横にはラジオボタンC11が表示される。また、各ラジオボタンC11の右には、そのクロスチェック設定値を使用するか否かを指定するためのチェックボックスC12が設けられている。各チェックボックスC12の右側には、後述する測定結果画面においてクロスチェックマークを表示するか否かを指定するためのチェックボックスC13が設けられている。さらに各チェックボックスC13の右側には、クロスチェック対象項目を指定するための選択ボックスC14,C15が設けられている。
図8は、設定受付処理の手順を示すフローチャートである。設定受付処理においては、まずCPU301は、何れかのラジオボタンC11が選択されたか否かを判定する(ステップS201)。クロスチェック設定ダイアログD1において、ユーザは10個のラジオボタンC11のうち何れか1つを入力部310を操作することにより選択することができる。何れかのラジオボタンC11の選択を受け付けた場合には(ステップS201においてYES)、CPU301は、クロスチェック設定ダイアログD1の右側の領域A10に、そのラジオボタンC11に対応するクロスチェック対象項目のクロスチェックテーブルを表示し(ステップS202)、ステップS203へ処理を移す。なお、ここで選択されたラジオボタンC11に対応するクロスチェック対象項目が選択ボックスC14,C15で指定されていない場合には、後述するようにクロスチェック対象項目が指定されるまではクロスチェックテーブルは表示されない。ステップS201において、ラジオボタンC11の選択を受け付けなかった場合には(ステップS201においてNO)、CPU301は処理をステップS203へ移す。
ステップS203において、CPU301は、何れかの選択ボックスC14によって、クロスチェック対象項目として尿定性測定項目の指定を受け付けたか否かを判定する(ステップS203)。選択ボックスC14の右側の下向き矢印記号が選択されると、全ての尿定性測定項目のリストのプルダウンメニューが表示され、ユーザはその中から1つの尿定性測定項目を指定することができる。ステップS203において尿定性測定項目の指定を受け付けた場合には(ステップS203においてYES)、CPU301は、指定された尿定性測定項目を設定値番号に対応付けてRAM303に記憶し(ステップS204)、処理をステップS205へ移す。ステップS203において尿定性測定項目の指定を受け付けなかった場合には(ステップS203においてNO)、CPU301は処理をステップS205へ移す。
ステップS205において、CPU301は、何れかの選択ボックスC15によって、クロスチェック対象項目として尿中有形成分測定項目の指定を受け付けたか否かを判定する(ステップS205)。選択ボックスC15の右側の下向き矢印記号が選択されると、全ての尿中有形成分測定項目のリストのプルダウンメニューが表示され、ユーザはその中から1つの尿中有形成分測定項目を指定することができる。ステップS205において尿中有形成分測定項目の指定を受け付けた場合には(ステップS205においてYES)、CPU301は、指定された尿中有形成分測定項目を設定値番号に対応付けてRAM303に記憶し(ステップS206)、処理をステップS207へ移す。ステップS205において尿中有形成分測定項目の指定を受け付けなかった場合には(ステップS205においてNO)、CPU301は処理をステップS207へ移す。
ステップS207において、CPU301は、領域A10に表示されているクロスチェックテーブルのセルの選択を受け付けたか否かを判定する(ステップS207)。領域A10に表示されているクロスチェックテーブルの各セルはそのセルに対応する尿定性測定項目の測定値のランクと尿中有形成分測定項目の測定値のランクとが所定の関係に適合するか否かを示している。即ち、青色(図中斜線で示す)のセルは所定の関係に適合することを示しており、白色のセルは所定の関係に適合しないことを示している。かかるクロスチェックテーブルの各セルは選択可能である。ユーザが入力部310を操作することによりクロスチェックテーブルの1つのセルを選択すると、そのセルが青色である場合には白色に変更され、そのセルが白色である場合には青色に変更される。つまり、所定の関係に適合するセルが選択されることにより、当該セルが所定の関係に不適合のセルに変更され、所定の関係に不適合のセルが選択されることにより、当該セルが所定の関係に適合するセルに変更される。
ステップS207において、クロスチェックテーブルのセルの選択を受け付けた場合には(ステップS207においてYES)、CPU301は、指定された設定値をRAM303に設定値番号に対応付けて記憶し(ステップS208)、処理をステップS209へ移す。ステップS207においてクロスチェックテーブルのセルの選択を受け付けなかった場合には(ステップS207においてNO)、CPU301は処理をステップS209へ移す。
ステップS209において、CPU301は、何れかのチェックボックスC12が選択されることにより、クロスチェック設定値の使用の可否の指定を受け付けたか否かを判定する(ステップS209)。チェックボックスC12が選択された(チェックされた)クロスチェック設定値は、クロスチェックに使用される。一方、チェックボックスC12が選択されていない(チェックが外された)クロスチェック設定値は、クロスチェックに使用されない。ステップS209においてクロスチェック設定値の使用の可否の指定を受け付けた場合には(ステップS209においてYES)、CPU301は、設定値番号に対応付けて、クロスチェック設定値の使用フラグをRAM303に記憶し(ステップS210)、ステップS211へ処理を移す。ここで、クロスチェック設定値を使用しないことが指定された場合には、使用フラグに“0”が記憶され、クロスチェック設定値を使用することが指定された場合には、使用フラグに“1”が記憶される。ステップS209においてクロスチェック設定値の使用の可否の指定を受け付けなかった場合には(ステップS209においてNO)、CPU301は、ステップS211へ処理を移す。
ステップS211において、CPU301は、何れかのチェックボックスC13が選択されることにより、クロスチェックマークの表示の可否の指定を受け付けたか否かを判定する(ステップS211)。チェックボックスC13が選択された(チェックされた)場合は、検体の測定結果がクロスチェックテーブルに規定される所定の関係に適合すると、ユーザに注意を促すために、後述する測定結果画面において所定の関係に適合したことを示すクロスチェックマークが表示される。一方、チェックボックスC13が選択されていない(チェックが外された)場合は、検体の測定結果が所定の関係に適合しても、測定結果画面においてクロスチェックマークが表示されない。ステップS211においてクロスチェックマークの表示の可否の指定を受け付けた場合には(ステップS211においてYES)、CPU301は、設定値番号に対応付けて、クロスチェック設定値の表示フラグをRAM303に記憶し(ステップS212)、メインルーチンにおける設定受付処理の呼出アドレスに処理をリターンする。ステップS211においてクロスチェックマークの表示の可否の指定を受け付けなかった場合には(ステップS211においてNO)、CPU301は、そのままメインルーチンにおける設定受付処理の呼出アドレスに処理をリターンする。
図6に戻って、ステップS104においてCPU301は、クロスチェック設定ダイアログD1に設けられたOKボタンが選択されたか否かを判定する(ステップS104)。OKボタンが選択されなかった場合には(ステップS104においてNO)、CPU301はクロスチェック設定ダイアログD1に設けられたキャンセルボタンが選択されたか否かを判定する(ステップS105)。キャンセルボタンが選択されなかった場合には(ステップS105においてNO)、CPUは処理をステップS103へ戻し、再び設定受付処理を実行する。
一方、ステップS104においてOKボタンが選択された場合には(ステップS104においてYES)、CPU301はRAM303に記憶していたクロスチェック設定値をクロスチェック設定値データベースDBに登録する(ステップS106)。つまり、CPU301は、ユーザによって指定された尿定性測定項目及び複数の尿中有形成分測定項目の組合せをクロスチェック対象項目の設定値としてクロスチェック設定値データベースに登録する。次にCPU301は、クロスチェック設定ダイアログを閉じ(ステップS107)、処理を終了する。また、ステップS105においてキャンセルボタンが選択された場合には(ステップS105においてYES)、CPU301はRAM303に記憶していたクロスチェック設定値を破棄し、クロスチェック設定ダイアログを閉じ(ステップS107)、処理を終了する。
また、情報処理ユニット30においては、尿中有形成分測定項目について、上述したランク値の設定も可能である。ユーザが所定の入力を入力部310を介して行うことにより、ランク値設定ダイアログが表示部320に表示される。図9は、ランク値設定ダイアログの一例を示す図である。このランク値設定ダイアログを用いて、ユーザはランク値の設定を行うことができる。
ランク値の設定は、尿中有形成分測定項目についてのみ可能である。尿定性測定項目についてのランク値は、予め与えられており、ユーザが設定を変更することはできない。図9に示すように、ランク値設定ダイアログD2には、尿中有形成分測定項目を指定するための選択ボックスC21が設けられている。選択ボックスC21が選択されると、全ての尿中有形成分測定項目のリストのプルダウンメニューが表示され、ユーザはその中から1つの尿中有形成分測定項目を指定することができる。
また、選択ボックスC21の下方には、1〜9のランク値が縦に並べて表示されており、それぞれのランク値の右側には、それぞれのランク値に対応する測定値の範囲を指定するための入力ボックスC22が設けられている。さらに具体的には、ランク値1〜9のそれぞれに対応する9個の入力ボックスC22には、ランク値に対応する測定値の上限値が入力される。例えば、ランク値1の入力ボックスC21には、選択ボックスC21によって指定された尿中有形成分測定項目のランク値1に対応する測定値の上限値が入力される。図9の例では、測定項目「赤血球」についてのランク値1に対応する測定値の上限値として、6μmが指定されている。
このようなランク値設定ダイアログD2を用いてユーザは、ランク値を設定する対象の尿中有形成分測定項目と、各ランク値に対応する測定値の上限値を指定する。このようなランク値の設定値が入力された状態において、ランク値設定ダイアログD2に設けられたOKボタンをユーザが選択すると、入力されたランク設定値がハードディスク304に記憶される。また、ランク値設定ダイアログD2に設けられたキャンセルボタンが選択されると、入力されたランク設定値が破棄され、ランク値設定ダイアログが閉じられる。
<検体分析動作>
次に、尿検査装置1による検体分析動作について説明する。図10A及び図10Bは、本実施の形態に係る尿検査装置1の検体分析動作における情報処理ユニット30による処理手順を示すフローチャートである。検体分析動作は、ユーザが情報処理ユニット30の入力部310を操作して、検体分析の開始の指示を尿検査装置1に入力することにより開始される。検体分析動作が開始すると、搬送ユニット20によって検体ラック50が搬送される。尿定性測定部11のCPU111aは、バーコードリーダ116によって、搬送ユニット20によって搬送されている検体容器51に貼付されたバーコードラベルからバーコード情報を読み出すと、このバーコード情報が示す検体について尿定性測定部11の測定オーダを、情報処理ユニット30に問い合わせる。
情報処理ユニット30は、ホストコンピュータ40に尿定性検査の測定オーダの問い合わせを行う(ステップS301)。ホストコンピュータ40には予め検体の測定オーダが登録されており、登録されている測定オーダの中に問い合わせに合致する測定オーダが含まれている場合には、ホストコンピュータ40が問い合わせに応じて当該測定オーダを情報処理ユニット30へ送信する。情報処理ユニット30は、ホストコンピュータから測定オーダを受信すると(ステップS302)、その測定オーダを尿定性測定部11へ送信する(ステップS303)。かかる測定オーダには、測定対象の尿定性測定項目及び測定の要否が含まれている。尿定性測定部11が情報処理ユニット30から測定オーダを受信すると、CPU111aは、当該検体について、尿定性測定部11で測定の必要があるか否かを判定する。
CPU111aは、尿定性測定部11で測定を行う必要があると判定すると、尿定性測定部11のノズルによって検体容器51から検体を吸引し、尿定性測定部11において当該検体の測定を行う。他方、CPU111aが尿定性測定部11で測定の必要なしと判定すると、この検体の測定は行われない。
CPU301は、尿定性測定部11から測定データを受信したか否かを判定する(ステップS304)。尿定性測定部11から測定データを受信しなかった場合には(ステップS304においてNO)、CPU301は、処理を終了する。一方、ステップS304において尿定性測定部11から測定データを受信した場合には(ステップS304においてYES)、CPU301は、当該測定データ(検体の尿定性測定結果)をホストコンピュータ40へ送信する(ステップS305)。ホストコンピュータ40のCPU401aは、尿定性測定部11の測定データを受信すると、当該測定データと、記憶部401bに予め記憶している測定要否の基準とに基づいて、尿中有形成分測定部12の測定オーダを決定する。
尿中有形成分測定部12の検体吸引位置に検体容器51が位置すると、尿中有形成分測定部12のCPU121aが、尿中有形成分測定部12の測定オーダを、情報処理ユニット30に問い合わせる。情報処理ユニット30は、この問い合わせを受けると、ホストコンピュータ40に尿中有形成分検査の測定オーダの問い合わせを行う(ステップS306)。ホストコンピュータ40に登録されている測定オーダに問い合わせに合致する測定オーダが含まれている場合には、ホストコンピュータ40が問い合わせに応じて当該測定オーダを情報処理ユニット30へ送信する。情報処理ユニット30は、ホストコンピュータから測定オーダを受信すると(ステップS307)、その測定オーダを尿中有形成分測定部12へ送信する(ステップS308)。かかる測定オーダには、測定対象の尿中有形成分測定項目及び測定の要否が含まれている。尿中有形成分測定部12が情報処理ユニット30から測定オーダを受信すると、CPU121aは、当該検体について、尿中有形成分測定部12で測定の必要があるか否かを判定する。
CPU121aは、尿中有形成分測定部12で測定を行う必要があると判定すると、尿中有形成分測定部12のノズルによって検体容器51から検体を吸引し、尿中有形成分測定部12において当該検体の測定を行う。検体の測定データは尿中有形成分測定部12から情報処理ユニット30へ与えられ、情報処理ユニット30のCPU301により解析される。他方、CPU121aが尿中有形成分測定部12で測定の必要なしと判定すると、この検体の測定は行われない。
CPU301は、尿中有形成分測定部12から測定データを受信したか否かを判定する(ステップS309)。尿中有形成分測定部12から測定データを受信しなかった場合には(ステップS309においてNO)、CPU301は、ステップS316へ処理を移し、尿定性検査の結果のみをハードディスク304に記憶し(ステップS316)、処理を終了する。一方、ステップS309において尿中有形成分測定部12から測定データを受信した場合には(ステップS309においてYES)、CPU301は、当該測定データを解析し、検体の尿中有形成分測定結果を得る(ステップS310)。
次にCPU301は、クロスチェック設定値データベースDBに登録されているクロスチェック設定値及びハードディスク304に記憶されているランク設定値を読み出し(ステップS311)、読み出されたクロスチェック設定値において、使用フラグが“1”に設定されているクロスチェック対象項目が存在するか否かを判定する(ステップS312)。ステップS312において、使用フラグが“1”に設定されているクロスチェック対象項目が存在しない場合(ステップS312においてNO)、ステップS316へ処理を移し、尿定性検査結果及び尿中有形成分検査結果をハードディスク304に記憶し(ステップS316)、処理を終了する。
一方、ステップS312において、使用フラグが“1”に設定されているクロスチェック対象項目が存在する場合(ステップS312においてYES)、CPU301は、使用フラグが“1”に設定されているクロスチェック対象項目として設定されている尿定性測定項目についての検体の測定結果と、当該尿定性測定項目に対応するクロスチェック対象項目として設定されている尿中有形成分測定項目についての検体の測定結果とが、クロスチェックテーブルにおいて“適合”のセルに該当するか否かを判定する(ステップS313)。
ステップS313において、尿定性測定結果と尿中有形成分測定結果とがクロスチェックテーブルにおいて“適合”に該当する場合には(ステップS313においてYES)、CPU301は当該クロスチェック対象項目に対応して、尿定性測定結果と尿中有形成分測定結果とがクロスチェックテーブルにおいて“適合”に該当するか否かを示す情報(以下、「クロスチェックフラグ」という)に“1”(尿定性測定結果と尿中有形成分測定結果とがクロスチェックテーブルにおいて“適合”に該当することを示す値)をセットし、このクロスチェックフラグをRAM303に記憶し(ステップS314)、処理をステップS315へ移す。また、クロスチェックフラグの初期値は“0”(尿定性測定結果と尿中有形成分測定結果とがクロスチェックテーブルにおいて“不適合”に該当することを示す値)にセットされており、RAM303に記憶されている。ステップS313において、尿定性測定結果と尿中有形成分測定結果とがクロスチェックテーブルにおいて“適合”に該当していない場合には(ステップS313においてNO)、CPU301は処理をステップS315へ移す。
ステップS315において、CPU301は、使用フラグが“1”に設定されている全てのクロスチェック対象項目について測定結果のクロスチェックが行われたか否かを判定し(ステップS315)、まだクロスチェックが行われていないクロスチェック対象項目が残っている場合には(ステップS315においてNO)、処理をステップS313へ戻し、使用フラグが“1”に設定されており、且つ未だクロスチェックが行われていないクロスチェック対象項目について、測定結果のクロスチェックを実行する(ステップS313)。一方、ステップS315において、使用フラグが“1”に設定されている全てのクロスチェック対象項目について測定結果のクロスチェックが完了している場合には(ステップS315においてYES)、CPU301は上記の解析結果(クロスチェックフラグを含む)をハードディスク304に記憶し(ステップS316)、処理を終了する。
<測定結果表示動作>
次に、本実施の形態に係る尿検査装置1の測定結果表示動作について説明する。本実施の形態に係る尿検査装置1にあっては、情報処理ユニット30のCPU301が以下に説明する測定結果表示処理を実行することにより、測定結果表示動作を行うことができる。
図11は、本実施の形態に係る情報処理ユニット30における測定結果表示処理の手順を示すフローチャートである。
ユーザが所定の入力を入力部310を介して行うことにより、測定結果画面が表示部320に表示される。CPU301は、ユーザからかかる測定結果画面の表示指示を受け付けたか否かを判定する(ステップS401)。測定結果画面の表示指示を受け付けなかった場合には(ステップS401においてNO)、CPU301は処理を終了する。一方、ステップS401において、測定結果画面の表示指示を受け付けた場合には(ステップS401においてYES)、CPU301は、ハードディスクから検体の測定結果(ステップS316で記憶した解析結果)を読み出し(ステップS402)、測定結果画面を表示部320に表示させ(ステップS403)、処理を終了する。
図12は、測定結果画面の一例を示す図である。測定結果画面D3には、検体ID、患者氏名、検査日付等の検体情報の表示領域A31と、尿定性測定項目の測定値の表示領域A32と、尿中有形成分測定項目の測定値(数値データ)の表示領域A33と、尿中有形成分測定結果に含まれる粒度分布図(スキャッタグラム及びヒストグラム)の表示領域A34とが設けられている。表示領域A31には、測定結果画面に測定結果が表示される検体に関する情報が表示される。表示領域A32には、当該検体について尿定性測定部11により得られた測定結果が表示される。表示領域A32,A33には、上記と同一の検体について尿中有形成分測定部12により得られた測定データが情報処理ユニット30により解析されて得られた測定結果が表示される。
また、さらに測定結果画面D3には、検体の測定において異常が検出され、当該検体について再検が必要と判断された場合において、その異常に関する情報(レビューコメント)を表示するための表示領域A35と、尿中有形成分測定項目のうち、予め研究用項目として設定されている項目の検体測定結果を表示するための表示領域A36と、尿中有形成分測定項目のうち、予めフラッグ項目として設定されている項目の検体測定結果を表示するための表示領域A37とが設けられている。
また、測定結果画面D3には、クロスチェックの結果を表示するための表示領域A38が設けられている。かかる表示領域A38には、クロスチェックにおいて尿定性測定結果と尿中有形成分測定結果とが所定の関係に該当すると判定されたクロスチェック対象項目が存在する場合に、そのクロスチェック対象項目名(尿定性測定項目及び尿中有形成分測定項目の組合せを示す情報)が表示される。つまり、クロスチェックフラグに“1”がセットされているクロスチェック対象項目名が表示領域A38に表示されることになる。図に示す例においては、尿定性測定項目の潜血(BLD)と尿中有形成分測定項目の赤血球(RBC)との組合せを示す情報“BLD×RBC?”が表示領域A38に表示されており、尿定性測定項目の潜血(BLD)と尿中有形成分測定項目の赤血球(RBC)との組合せのクロスチェック対象項目において、測定結果が所定の関係に該当すると判定されていることが示されている。
このように、表示領域A38にクロスチェック対象項目名が表示されることで、クロスチェック対象項目の尿定性測定項目の測定結果及び尿中有形成分測定項目の測定結果が所定の関係にあることが通知される。したがって、例えば所定の関係が、測定結果の信頼性が低いことを示す場合には、ユーザは表示領域A38の表示を確認することにより、クロスチェック対象項目についての検体の測定結果の信頼性が低いことを容易に知ることができる。また、所定の関係が、患者について所定の疾患が疑われることを示す場合には、ユーザは表示領域A38の表示を確認することにより、当該疾患が疑われることを容易に知ることができる。この場合には、ユーザは他の測定項目の測定結果を確認したり、さらに詳細な検体の検査を実施したりするなど、必要な措置を取ることができる。
また、測定結果にクロスチェックフラグに“1”がセットされているクロスチェック対象項目が含まれており、クロスチェック設定値データベースDBにおいてクロスチェック対象項目の表示フラグが“1”にセットされている場合には、ユーザに注意を喚起するためのクロスチェックマークCMが表示領域A38の横に表示される。クロスチェックマークCMは、ユーザに注意を促すための色(本実施の形態では黄色)によって表示される。なお、測定結果画面D3の色は基本的にグレーであり、表示領域A31〜A38の背景は白色とされている。したがって、クロスチェックマークCMは測定結果画面D3においてユーザの注意を引く色で表示され、ユーザはクロスチェックマークCMを容易に認識することができる。測定結果にクロスチェックフラグに“1”がセットされている全てのクロスチェック対象項目について、クロスチェック設定値データベースDBにおいて表示フラグが“0”にセットされている場合には、上述したクロスチェックマークCMは表示されない。
上記のような構成により、ユーザは自由にクロスチェック対象項目を設定することができる。例えば、同一検体についての尿定性測定項目の潜血(BLD)の測定値と尿中有形成分測定項目の赤血球(RBC)の測定値とは、一定の関係を示すことが知られている。そのため、潜血の測定値と赤血球の測定値とが上記一定の関係から乖離している場合には、これらの測定値の何れかにおいて測定結果が正確であるかが疑われる。したがって、ユーザは潜血(BLD)及び赤血球(RBC)をクロスチェック対象項目として設定し、クロスチェックテーブルを適切に設定することにより、測定結果の信頼性が低いかどうかを情報処理ユニット30に判定させることができる。
また、早期糖尿病性腎症の患者から採取された検体は、円柱(CAST)において高値を示し、アルブミン/クレアチニン比(A/C)においても高値を示す傾向が認められる。したがって、ユーザはクロスチェック対象項目としてアルブミン/クレアチニン比(A/C)及び円柱(CAST)を設定し、対応するクロスチェックテーブルを適切に設定することにより、情報処理ユニット30にアルブミン/クレアチニン比(A/C)の測定値と円柱(CAST)の測定値とのクロスチェックを行わせることができる。このようなクロスチェックの結果、アルブミン/クレアチニン比(A/C)の測定値と円柱(CAST)の測定値とが所定の関係に適合している場合には、測定結果画面D3の表示領域A38に、アルブミン/クレアチニン比(A/C)及び円柱(CAST)のクロスチェック対象項目名“A/C×CAST?”が表示される。このクロスチェック対象項目名“A/C×CAST?”が表示された場合、ユーザは当該検体について早期糖尿病性腎症が疑われることを知ることができる。
また、慢性腎炎の患者から採取された検体は、蛋白質(PRO)において高値を示し、赤血球(RBC)においても高値を示す傾向が認められる。したがって、ユーザはクロスチェック対象項目として蛋白質(PRO)及び赤血球(RBC)を設定し、対応するクロスチェックテーブルを適切に設定することにより、情報処理ユニット30に蛋白質(PRO)の測定値と赤血球(RBC)の測定値とのクロスチェックを行わせることができる。このようなクロスチェックの結果、蛋白質(PRO)の測定値と赤血球(RBC)の測定値とが所定の関係に適合している場合には、測定結果画面D3の表示領域A38に、蛋白質(PRO)及び赤血球(RBC)のクロスチェック対象項目名“PRO×RBC?”が表示される。このクロスチェック対象項目名“PRO×RBC?”が表示された場合、ユーザは当該検体について慢性腎炎が疑われることを知ることができる。
慢性腎炎の患者から採取された検体は、上記に加え、赤血球形態情報において「糸球体性」である傾向が認められる。したがって、ユーザはクロスチェック対象項目として蛋白質(PRO)及び赤血球形態情報(RBC−Info.)を設定し、対応するクロスチェックテーブルを適切に設定することにより、情報処理ユニット30に蛋白質(PRO)の測定値と赤血球形態情報(RBC−Info.)の測定値とのクロスチェックを行わせることができる。このようなクロスチェックの結果、蛋白質(PRO)の測定値と赤血球形態情報(RBC−Info.)の測定値とが所定の関係に適合している場合には、測定結果画面D3の表示領域A38に、蛋白質(PRO)及び赤血球形態情報(RBC−Info.)のクロスチェック対象項目名“PRO×RBC−Info.?”が表示される。このクロスチェック対象項目名“PRO×RBC−Info.?”が表示された場合、ユーザは当該検体について慢性腎炎が疑われることを知ることができる。
また、上述したような測定結果の信頼性判断又は臨床診断に使用される尿定性測定項目及び尿中有形成分測定項目の組合せは、病院及び検査センター等の医療施設(ユーザ)によって異なる場合がある。本実施の形態に係る尿検査装置1にあっては、ユーザが自由にクロスチェック対象項目を設定することができるため、ユーザは自分の施設の基準に合わせてクロスチェック対象項目を設定することができる。
このように、上記の実施の形態においては、測定結果のチェックを行なう際の測定項目の組合せの自由度を向上させることができる。これにより、測定結果の信頼性のチェックに用いる測定項目の組み合わせを、必要に応じて容易に拡大できるようになる。また2つの測定項目の測定結果から診断を支援する情報を取得することが可能となり、得られた測定結果を従来よりも活用することができる。
(その他の実施の形態)
なお、一般的に測定結果の信頼性判断等に使用されている尿定性測定項目及び尿中有形成分測定項目の組合せを、クロスチェック対象項目のデフォルト値として予め設定しておいてもよい。これにより、ユーザ施設へ尿検査装置1を導入するときには、クロスチェック対象項目を設定しなくても、一般的に使用されるクロスチェック対象項目による測定結果のクロスチェックを行うことができ、ユーザの負担が軽減される。尿検査装置1を導入した後、独自の測定結果の信頼性判断のノウハウがユーザ施設において蓄積されたり、特定の疾患における尿定性測定項目の測定値と尿中有形成分測定項目の測定値との関係が新たに知見されてから、ユーザは独自のクロスチェック対象項目を設定することができる。
また、上記の実施の形態においては、クロスチェック設定ダイアログにおいてクロスチェック対象項目として尿定性測定項目及び尿中有形成分測定項目の両方の指定を受け付ける構成について述べたが、これに限定されるものではない。特定の尿定性測定項目を固定の設定値とし、当該尿定性測定項目に対応する尿中有形成分測定項目の指定を受け付け、これらの組合せをクロスチェック対象項目として設定する構成としてもよいし、特定の尿中有形成分測定項目を固定の設定値とし、当該尿中有形成分測定項目に対応する尿定性測定項目の指定を受け付け、これらの組合せをクロスチェック対象項目として設定する構成としてもよい。
また、複数の尿訂正測定項目及び尿中有形成分測定項目の組合せを画面に表示し、それぞれの組合せを選択可能とし、ユーザからクロスチェック対象項目として設定すべき所望の組合せの選択を受け付け、選択された組合せをクロスチェック対象項目として設定する構成としてもよい。
また、上記の実施の形態においては、尿定性測定部11及び尿中有形成分測定部12を有する測定ユニット10と情報処理ユニット30とを別々に設け、測定ユニット10と情報処理ユニット30とを通信可能に接続した構成について述べたが、これに限定されるものではない。1つの筐体の中に尿定性測定部11、尿中有形成分測定部12、及び情報処理ユニット30を搭載する構成としてもよい。
また、上記の実施の形態においては、尿検査装置1の情報処理ユニット30によって、クロスチェック対象項目の設定及び測定結果のクロスチェックを実行する構成について述べたが、これに限定されるものではない。尿定性検査装置及び尿中有形成分検査装置を別々に設け、これらと通信可能に接続された尿検体検査結果処理装置において、クロスチェック対象項目を設定可能とし、当該尿検体検査結果処理装置によって前記尿定性検査装置による尿定性分析結果及び尿中有形成分検査装置による尿中有形成分分析結果を受信し、設定されたクロスチェック対象項目によって尿定性分析結果と尿中有形成分分析結果とのクロスチェックを実行する構成としてもよい。