JP2014224274A - ポリエーテルエーテルケトン樹脂の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】ポリエーテルエーテルケトン樹脂を、重合溶媒としてのジフェニルスルホン中で製造し、次いで、ポリエーテルエーテルケトン樹脂粉末を、(a)該樹脂のガラス転移点以上融点未満の温度において、空気中または不活性気体中で加熱処理するか、または(b)該樹脂のガラス転移点以上融点未満の温度において、加圧水中で加熱処理する、ジフェニルスルホンの含有量が5ppm以下であるポリエーテルエーテルケトン樹脂を製造方法。
【選択図】 なし
Description
本発明者らは、次の構成からなるPEEKであることによって、上記課題を解決できることを見いだした。
本発明におけるPEEKは、以下の式(1)
で表わされる構造単位、及び/または下記式(3)
で表わされる構造単位とを有する共重合体を使用することができる。共重合体中の式(2)または式(3)で表わされる構造単位の割合は、通常合計して50モル%以下、好ましくは20モル%以下、より好ましくは10モル%以下である。すなわち、本発明のPEEKは、式(1)の繰り返し単位を、通常50モル%以上、好ましくは80モル%以上、より好ましくは90モル%以上の割合で有するものであり、100モル%であることが特に好ましい。
本発明におけるPEEKは、ガラス転移点(Tg)が、通常138〜147℃、好ましくは139℃〜145℃、より好ましくは140〜144℃の範囲である。ガラス転移点(Tg)は、JIS K7121に準拠して測定したものであり、示差走査熱量測定(DSC)により、PEEK試料約10mgを正確に秤量し、380℃で溶融させた後に常温まで急冷し、常温から20℃/分で180℃まで昇温するときの昇温過程に現れる吸熱変化の温度の値から求める。
本発明におけるPEEKは、融点(Tm)が、通常325〜350℃、好ましくは330℃〜345℃、より好ましくは332〜342℃の範囲である。融点(Tm)は、JIS K7121に準拠して測定したものであり、示差走査熱量測定(DSC)により、PEEK試料約10mgを正確に秤量し、380℃で溶融させた後に常温まで急冷し、常温から20℃/分で380℃まで昇温するときの昇温過程に現れる吸熱ピークの温度の値から求める。
本発明におけるPEEKは、DPSの含有量が5ppm以下である。DPSの含有量は、好ましくは4ppm以下、より好ましくは3ppm以下、更に好ましくは検出限界である2ppm以下である。DPSの含有量が5ppmを超えるものであると、PEEKを含有する樹脂組成物を成形加工する際、沸点が378〜379℃であるDPSが揮発するために、樹脂組成物の表層に条痕を生じたり、表層が平坦でなく波打ち状となったり、ガス抜けにより内層が緻密でなくなったり、更には、PEEKの熱劣化物と導電性フィラーや不純物などとの凝集を促進したりすることがある。また、PEEK組成物である半導電性樹脂組成物の成形加工においては、導電性フィラーの分散性が均一とならず、画像形成装置における帯電ベルトや転写ベルトなどの電荷制御部材として用いる場合、長期間に亘って高い電圧を印加・放電すると、電気抵抗が低下して、半導電性が失われてしまうことがある。
本発明のPEEK組成物は、前記のPEEKに加えて、他の熱可塑性樹脂または配合剤を配合してなる樹脂組成物であり、好ましくは、導電性フィラーを配合してなるPEEKを含有する半導電性樹脂組成物である。PEEK組成物の形状は特に限定されず、ペレット状、顆粒状、棒状などの形状であってもよいし、フィルムまたはシート、容器など何らかの成形品の形状を有するものであってもよい。
本発明のPEEK組成物において好ましく配合して使用される導電性フィラーは、特に制限されず、例えば、導電性のカーボンブラック、黒鉛粉末、金属粉末、表面を導電処理した酸化金属ウィスカーなどが挙げられる。これらの中でも、表面抵抗(ρs)及び/または体積固有抵抗(ρv)の制御性や機械的特性などの観点から、カーボンブラックが特に好ましい。
本発明のPEEK組成物に配合することができる他の熱可塑性樹脂としては、高温において安定な熱可塑性樹脂が好ましく、具体例としては、例えば、ポリフェニレンスルフィド等のポリアリーレンスルフィド樹脂;ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレート等の熱可塑性ポリエステル樹脂;ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン/へキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン/パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体、プロピレン/テトラフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン/クロロトリフルオロエチレン共重合体、エチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体等のフッ素樹脂;ポリアセタール;ポリスチレン;ポリアミド;ポリカーボネート;ポリフェニレンエーテル;ポリエーテルイミド;ポリアルキルアクリレート;ABS樹脂;ポリ塩化ビニルなどを挙げることができる。これらの熱可塑性樹脂は、それぞれ単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。
本発明のPEEK組成物に配合することができる配合剤として、所望により各種非導電性フィラーを挙げることができる。非導電性フィラーとしては、例えば、ガラス繊維、アスベスト繊維、シリカ繊維、ジルコニア繊維、窒化硼素繊維、窒化珪素繊維、硼素繊維、チタン酸カリ繊維などの無機繊維状物;ポリアミド、フッ素樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂などの高融点の有機質繊維状物;等の非導電性の繊維状フィラー、並びに、非繊維状のフィラーが挙げられる。
本発明のPEEK組成物に配合することができる配合剤としては、更に、その他の添加剤として、例えば、エチレングリシジルメタクリレート等の樹脂改良剤、ペンタエリスリトールテトラステアレート等の滑剤、熱硬化性樹脂、酸化防止剤、紫外線吸収剤、ボロンナイトライド等の核剤、赤燐粉末等の難燃剤、染料や顔料等の着色剤を挙げることができ、これらの添加剤は、それぞれ単独で、または2種以上を組み合わせて適宜添加することができる。本発明のPEEK組成物に添加することができる添加剤は、これらのものに限定されない。
本発明のPEEK組成物は、好ましくは、前記のPEEK及び導電性フィラーを含有する半導電性樹脂組成物である。本発明において、半導電性とは、JIS K6911に準拠して常温で測定したものであり、表面抵抗(ρs)が、1.0×105〜1.0×1016Ω/□の範囲内であることを意味する。
本発明のDPSの含有量が5ppm以下であるPEEKは、任意の方法と設備を用いて調製し、製造することができるが、特に有効な該PEEKの製造方法は、以下(1)または(2)の加熱処理を含む製造方法である。
本発明のDPSの含有量が5ppm以下であるPEEKは、PEEK粉末を、該PEEKのガラス転移点以上融点未満の温度において、空気中または不活性気体中で加熱処理することによって効率よく製造することができる。
また、本発明のDPSの含有量が5ppm以下であるPEEKは、PEEK粉末を、該PEEKのガラス転移点以上融点未満の温度において、加圧水中で加熱処理することによって製造することができる。
好ましくは前記の空気中または不活性気体中での加熱処理または加圧水中での加熱処理を行って得た、本発明のDPSの含有量が5ppm以下であるPEEKは、定法により前記した他の熱可塑性樹脂または配合剤を配合して本発明のPEEK組成物とすることができる。なお、PEEKを含有する樹脂組成物の形状は特に限定されない。
本発明のPEEKまたはPEEK組成物は、定法により、フィルム状成形物、シート状成形物、チューブ状成形物、繊維状成形物、布帛、圧縮成形物、または射出成形物等の成形物品に成形することができる。
本発明の態様は、以下のとおりである。
1.ジフェニルスルホンの含有量が5ppm以下であることを特徴とするポリエーテルエーテルケトン樹脂。
2.前記1のポリエーテルエーテルケトン樹脂を含有する樹脂組成物。
3.ポリエーテルエーテルケトン樹脂及び導電性フィラーを含有する前記2の樹脂組成物。
4.前記1ないし3いずれかのポリエーテルエーテルケトン樹脂または樹脂組成物から形成した成形物品。
5.電荷制御部材である前記4の成形物品。
6.ポリエーテルエーテルケトン樹脂粉末を、該樹脂のガラス転移点以上融点未満の温度において、空気中または不活性気体中で加熱処理する前記1のポリエーテルエーテルケトン樹脂の製造方法。
7.ポリエーテルエーテルケトン樹脂粉末を、該樹脂のガラス転移点以上融点未満の温度において、加圧水中で加熱処理する前記1のポリエーテルエーテルケトン樹脂の製造方法。
DPSの含有量は、P&T−GC(加熱脱着サンプラー−ガスクロマトグラム)を用いて、試料量を約20mgとして測定した。
加熱温度とパージ時間 330℃−15分
2次トラップパージ He 50ml/min
2次トラップ −40℃(ガラスウール吸着)
オーブン温度 200℃
2次吸着管加熱温度と時間 255℃−10秒
カラム HP−5 30m×0.32mm i.d,df=0.25μm
温度 60℃(5分)−300℃(10分)、8℃/分上昇
キャリヤーガス He 1.85ml/min
スプリット比 1/22.6
注入口温度 310℃
検出器温度 310℃
フィルムの厚みは、ダイヤルゲージ(株式会社小野測器製DG−925)により測定した。
表面抵抗(ρs)は、Advantest社製R8340超高抵抗計を用いて、JIS K6911に準拠し、導電性ゴムを電極として、温度20℃、湿度65%RHの雰囲気中で測定した。
容積300mlのオートクレーブ(攪拌機、N2ガス導入用バルブ付き、熱電対付き)に、4,4’−ジフルオロベンゾフェノン(0.150モル)、ヒドロキノン(0.150モル)、DPS (0.413モル)、K2CO3 (0.008モル)、Na2CO3(0.144モル)を加えた。その後、N2ガスを流速100ml/分で流しながら攪拌、加熱して、PEEKを重合した。温度条件は、30℃〜180℃までを3℃/分、180℃〜320℃までを1℃/分の昇温速度で昇温し、320℃で4時間保持した。重合反応終了後、常温に冷却したPEEKを粉砕してフレーク状PEEKであるPEEK粉末を得た。該PEEK粉末に対して、300mlの水による水洗を5回繰り返した。水洗後のPEEK粉末のガラス転移点(Tg)は141℃、融点(Tm)は340℃であった。
実施例1と同様にして水洗後のPEEK粉末を得た後、該水洗後のPEEK粉末に対する、200℃の熱風乾燥機による8時間加熱処理する工程は行なわず、温度95℃で真空乾燥して水分を除去したところ、PEEK中の残留DPS量は800ppmであった。
水洗後のPEEK粉末を、耐圧容器内において、温度190℃の1MPaの加圧水を8l/分で流しながら5時間加熱処理してDPSを除去したことを除いて、実施例1と同様にして加熱処理後のPEEKを得た。加熱処理後のPEEK中の残留DPS量は2ppm以下であった。
実施例1で製造した加熱処理後のPEEKを1軸スクリュー押出機に供給して、ダイ温度(樹脂温度)390℃でリップクリアランス0.5mmのTダイからフィルム状に溶融押出し、次いで、溶融状態のフィルムを85℃に温度調節した冷却ロールと接触させて、厚み約50μm、幅約300mmのPEEKフィルムを製造した。得られたPEEKフィルムの残留DPS量は2ppm以下であった。
実施例1で製造した加熱処理後のPEEK91.0質量部、及び導電性カーボンブラック(オイルファーネスブラック、ケッチェンブラックインターナショナル製、商品名「ケッチェンブラックEC300」、揮発分=0.5%、DBP吸油量=360ml/100g、pH=9)9.0質量部をへンシェルミキサーにて均一にドライブレンドし、次いで、ブレンド物を45mmφ二軸混練押出機(株式会社池貝製PCM−45)に供給し、シリンダー温度260〜400℃ にて混練し、溶融押出してPEEK組成物のペレットに成形した。このペレットを1軸スクリュー押出機に供給して、ダイ温度(樹脂温度)390℃でリップクリアランス0.7mmのTダイからフィルム状に溶融押出し、次いで、溶融状態のフィルムを85℃に温度調節した冷却ロールと接触させて、厚み約50μm、幅約300mmのフィルムを製造した。このフィルムの押出方向(長手方向)の両端をスリットして、中央部の幅100mmを製品(半導電性フィルム)とした。フィルムの表面抵抗は、1.5×1012Ω/□であった。次いで、得られたフィルムを、直径75mmの金属製サンプルロールに巻き付けてチューブ状に成形し、導電性ゴムローラに接触させて、電圧1kVを24時間印加した後に表面抵抗を測定したところ、5×1011Ω/□であった。
実施例1で製造した加熱処理後のPEEKに代えて、比較例1で製造したPEEKを使用したことを除いて、実施例4と同様にして、半導電性フィルムを得た。フィルムの表面抵抗は、1.5×1012Ω/□であった。次いで、実施例4と同様にして、電圧1kVを24時間印加した後に表面抵抗を測定したところ、7.4×109Ω/□であった。
実施例2で得られた加熱処理後のPEEKを、直径100μmの紡糸ノズルを備えた単軸押出機に供給したところ、モノフィラメントを安定的に成形することができた。得られたPEEKモノフィラメントの残留DPS量は2ppm以下であった。
実施例2で得られた加熱処理後のPEEKを、射出成型機IS75E(東芝機械株式会社製)に供給したところ、直径300mmの肉厚リングを安定的に成形することができた。得られたPEEK肉厚リングの残留DPS量は2ppm以下であった。
実施例1においては、空気中または不活性気体中での加熱処理を行うことにより、本発明のDPSの含有量が限界検出量の2ppm以下であるPEEKを得ることができ、このPEEKは、実施例3においてDPSの含有量が限界検出量の2ppm以下であるPEEKフィルムを成形できたことから、溶融成形によっても残留DPSの含有量が変化せず、またPEEKの熱劣化がないことが分かり、優れた耐熱性が確認された。また、実施例2においては、加圧水中での加熱処理を行うことにより、本発明のDPSの含有量が限界検出量の2ppm以下であるPEEKを得ることができ、このPEEKは、実施例5においてDPSの含有量が限界検出量の2ppm以下であるPEEKモノフィラメントを安定的に成形できたことから、優れた耐熱性が確認された。また、実施例6で成形された肉厚リングは、耐熱性かつ低磨耗性に優れているので、半導体製造におけるCMP(Chemical Mechanical Polishing)リテーナリングとして有用性が期待できることが分かった。
Claims (5)
- ポリエーテルエーテルケトン樹脂を、重合溶媒としてのジフェニルスルホン中で製造し、次いで、ポリエーテルエーテルケトン樹脂粉末を、(a)該樹脂のガラス転移点以上融点未満の温度において、空気中または不活性気体中で加熱処理するか、または(b)該樹脂のガラス転移点以上融点未満の温度において、加圧水中で加熱処理する、ジフェニルスルホンの含有量が5ppm以下であるポリエーテルエーテルケトン樹脂の製造方法。
- 前記(a)または(b)のガラス転移点以上融点未満の温度が、160〜330℃の範囲である請求項1記載の製造方法。
- 前記(a)の加熱処理を行う時間が、1〜72時間の範囲である請求項1または2記載の製造方法。
- 前記(b)の加圧水の圧力が、0.3〜10MPaの範囲である請求項1または2に記載の製造方法。
- 前記(b)の加熱処理を行う時間が、1〜72時間の範囲である請求項1、2、4のいずれか1項に記載の製造方法。
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