以下、本発明に係る車両用ロックアップクラッチの制御装置の実施形態について、図面を参照して説明する。
図1は、本発明が適用された車両用駆動装置10の骨子図である。この車両用駆動装置10は横置き型であって、FF(フロントエンジン・フロントドライブ)型車両に好適に採用されるものである。図1に示すように車両用駆動装置10は、走行用の動力源としてエンジン12と、流体伝動装置であるトルクコンバータ14と、前後進切換装置16と、ベルト式無段変速機(CVT)18とを備えている。内燃機関にて構成されているエンジン12の出力は、エンジン12のクランク軸13、トルクコンバータ14から前後進切換装置16、入力軸36、ベルト式無段変速機18、減速歯車装置20を介して差動歯車装置22に伝達され、左右の駆動輪24L、24Rへ分配される。トルクコンバータ14、前後進切換装置16、自動変速機としてのベルト式無段変速機18などにより動力伝達機構が構成されている。
エンジン12の吸気配管31には、図示しないスロットルアクチュエータを用いてエンジン12の吸入空気量を電気的に制御するための電子スロットル弁80が備えられている。電子制御装置60(図2参照)により、運転者の出力要求量を表すアクセル操作量ACCなどに応じて電子スロットル弁80の開閉制御及び燃料噴射制御等が行われることによりエンジン12の出力が増減制御される。
トルクコンバータ14は、エンジン12とベルト式無段変速機18との間に配設された流体伝動装置であって、エンジン12のクランク軸13に連結された入力回転部材としてのポンプ翼車14pと、タービン軸34を介して前後進切換装置16に連結された出力回転部材としてのタービン翼車14tとを備えており、流体を介して動力伝達を行うようになっている。
また、トルクコンバータ14はそれらのポンプ翼車14p及びタービン翼車14tの間にロックアップクラッチ26を備えている。そのロックアップクラッチ26は、ポンプ翼車14pとタービン翼車14tとを直結可能な摩擦係合装置であり、油圧制御回路86(図2参照)のロックアップコントロール弁などによって係合側油室15及び解放側油室17に対する油圧供給が切り換えられることにより、係合又は解放されるようになっている。例えばロックアップクラッチ26が油圧制御により直結状態(完全係合状態)にされれば、それによりポンプ翼車14p及びタービン翼車14tは一体回転させられる。すなわち、ロックアップクラッチ26が直結状態とされることによって、エンジン12とベルト式無段変速機18との間は、前後進切換装置16において動力伝達経路が成立させられる場合には実質的に直結されたことになる。ポンプ翼車14pには、ベルト式無段変速機18を変速制御したりベルト挟圧力を発生させたり、或いは各部に潤滑油を供給したりするための油圧を発生する機械式のオイルポンプ28が設けられている。なお、本実施例においてロックアップクラッチ26の係合状態とは、直結状態だけを意味するものではなく、ロックアップクラッチ26のスリップ状態から直結状態までの作動状態を意味するものである。
前後進切換装置16は、ダブルピニオン型の遊星歯車装置を主体として構成されており、トルクコンバータ14のタービン軸34はサンギヤ16sに一体的に連結され、ベルト式無段変速機18の入力軸36はキャリア16cに一体的に連結されている一方、キャリア16cとサンギヤ16sは前進用クラッチC1を介して選択的に連結され、リングギヤ16rは後進用ブレーキB1を介してハウジングに選択的に固定されるようになっている。前進用クラッチC1及び後進用ブレーキB1は断続装置に相当するもので、何れも油圧シリンダによって摩擦係合させられる油圧式摩擦係合装置であり、前進用クラッチC1が完全係合させられるとともに後進用ブレーキB1が解放されることにより、前後進切換装置16は一体回転状態とされて前進用動力伝達経路が成立(達成)させられ、前進方向の駆動力がベルト式無段変速機18側へ伝達される。一方、後進用ブレーキB1が完全係合させられるとともに前進用クラッチC1が解放されると、前後進切換装置16によって後進用動力伝達経路が成立(達成)させられ、入力軸36はタービン軸34に対して逆方向へ回転させられるようになり、後進方向の駆動力がベルト式無段変速機18側へ伝達される。また、前進用クラッチC1及び後進用ブレーキB1が共に解放されると、前後進切換装置16は動力伝達を遮断するニュートラル(遮断状態)になる。
ベルト式無段変速機18は、入力軸36に設けられた入力側部材である有効径が可変の入力側可変プーリ42と、出力軸44に設けられた出力側部材である有効径が可変の出力側可変プーリ46と、それらの可変プーリ42、46に巻き掛けられた伝動ベルト48とを備えており、可変プーリ42、46と伝動ベルト48との間の摩擦力を介して動力伝達が行われる。可変プーリ42及び46は、入力軸36及び出力軸44にそれぞれ固定された固定回転体42a及び46aと、入力軸36及び出力軸44に対して軸まわりの相対回転不能かつ軸方向の移動可能に設けられた可動回転体42b及び46bと、それらの間のV溝幅を変更するための推力を付与する入力側油圧シリンダ42c及び出力側油圧シリンダ46cとを備えて構成されており、入力側可変プーリ42の油圧シリンダ42cの油圧が制御されることにより、両可変プーリ42、46のV溝幅が変化して伝動ベルト48の掛かり径(有効径)が変更され、変速比γ(=入力軸回転速度NIN/出力軸回転速度NOUT)が連続的に変化させられる。また、出力側可変プーリ46の油圧シリンダ46cの油圧は、ベルト滑りが生じない所定の挟圧力で伝動ベルト48が挟圧されるように制御される。
図2は、図1のエンジン12やトルクコンバータ14のロックアップクラッチ26、ベルト式無段変速機18などを制御するために車両に設けられた制御系統を説明するブロック図で、電子制御装置60には、エンジン回転速度センサ62、タービン回転速度センサ64、入力軸回転速度センサ65、車速センサ66、アイドルスイッチ付きスロットルセンサ68、冷却水温センサ70、CVT油温センサ72、アクセル操作量センサ74、フットブレーキスイッチ76、レバーポジションセンサ78、エアコンスイッチ92などが接続されている。
また、電子制御装置60には、エンジン12の回転速度(エンジン回転速度)NE、タービン軸34の回転速度(タービン回転速度)NT、入力軸36の回転速度(入力軸回転速度)NIN、車速V、電子スロットル弁80の全閉状態(アイドル状態)及びその開度(スロットル弁開度)θTH、エンジン12の冷却水温TW、ベルト式無段変速機18やロックアップクラッチ26等の油圧制御回路86の油温(作動油温)TCVT、アクセルペダル94等のアクセル操作部材の操作量(アクセル開度)ACC、常用ブレーキであるフットブレーキの操作の有無、シフトレバー77のレバーポジション(操作位置)PSH、エアコンの作動の有無などを表す信号が供給されるようになっている。
タービン回転速度NTは、前進用クラッチC1が完全係合させられた前進走行時には入力軸回転速度NINと一致し、車速Vはベルト式無段変速機18の出力軸44の回転速度(出力軸回転速度)NOUTに対応する。また、アクセル操作量ACCは運転者の出力要求量を表している。また、ベルト式無段変速機18やロックアップクラッチ26等の油圧制御回路86の作動油は、オイルポンプ28から供給され、前後進切換装置16とベルト式無段変速機18とロックアップクラッチ26とを潤滑する潤滑油として、及び、トルクコンバータ14内の作動油としても用いられる。
シフトレバー77は、駐車のためのパーキング位置「P」や後進走行のためのリバース位置「R」、動力伝達を遮断するニュートラル位置「N」、前進走行のためのドライブ位置「D」、前進走行時にベルト式無段変速機18の変速比γを手動操作で増減できるマニュアル位置「M」、等へ択一的に操作されるようになっている。マニュアル位置「M」には、更に変速比γを増減するためのダウンシフト位置やアップシフト位置、或いは変速範囲の上限(変速比γが小さい側)が異なる複数の変速レンジを選択できる複数のレンジ位置等が備えられている。
そして、レバーポジションセンサ78は、たとえばパーキング位置「P」、リバース位置「R」、ニュートラル位置「N」、ドライブ位置「D」、マニュアル位置「M」やアップシフト位置、ダウンシフト位置、或いはレンジ位置等へシフトレバー77が操作されたことを検出する複数のON、OFFスイッチ等を有して構成されている。なお、変速比γを手動操作で変更するために、シフトレバー77とは別にステアリングホイール等にダウンシフトスイッチやアップシフトスイッチ、或いはレバー等を設けることも可能である。
電子制御装置60は、CPU、RAM、ROM、入出力インターフェース等を備えた所謂マイクロコンピュータを含んで構成されており、CPUはRAMの一時記憶機能を利用しつつ予めROMに記憶されたプログラムに従って信号処理を行うことにより、エンジン12の出力制御やベルト式無段変速機18の変速制御、ベルト挟圧力制御、ロックアップクラッチ26の係合、解放制御、などを実行するようになっており、必要に応じてエンジン制御用と変速制御用とに分けて構成される。
エンジン12の出力制御は電子スロットル弁80、燃料噴射装置82、点火装置84などによって行われ、ベルト式無段変速機18の変速制御、ベルト挟圧力制御、及びロックアップクラッチ26の係合、解放制御は、何れも油圧制御回路86によって行われる。油圧制御回路86は、電子制御装置60により励磁されて油路を開閉するソレノイド弁や油圧制御を行うリニアソレノイド弁、それらのソレノイド弁から出力される信号圧に従って油路を開閉したり油圧制御を行ったりする開閉弁、調圧弁などを備えて構成されている。
ベルト式無段変速機18の変速制御については、電子制御装置60は、例えば図3に示すように運転者の出力要求量を表すアクセル操作量ACC及び車速Vをパラメータとして予め定められた変速マップから入力側の目標回転速度NINTを算出し、実際の入力軸回転速度NINが目標回転速度NINTと一致するように、それらの偏差に応じて無段変速機18の変速制御、すなわち入力側可変プーリ42の油圧シリンダ42cに対する作動油の供給、排出によって変速制御圧PBELTが制御され、変速比γが連続的に変化させられる。図3に示す変速マップは変速条件に相当するもので、車速Vが小さくアクセル操作量ACCが大きい程大きな変速比γになる目標回転速度NINTが設定されるようになっている。また、車速Vは出力軸回転速度NOUTに対応するため、入力軸回転速度NINの目標値である目標回転速度NINTは目標変速比に対応し、無段変速機18の最小変速比γminと最大変速比γmaxの範囲内で定められている。
ロックアップクラッチ26を係合解放する基本制御では、例えば入力トルクに対応するスロットル弁開度θTH及び車速Vをパラメータとした基本切換マップ(切換条件)が予め記憶されており、その基本切換マップは、低車速域に設けられたロックアップクラッチ26を解放状態(ロックアップオフ)とする解放領域と、高車速域に設けられたロックアップクラッチ26を直結状態(ロックアップオン)とするロックアップ領域と、その解放領域とロックアップ領域との間であって低スロットル弁開度域に設けられたロックアップクラッチ26をスリップ状態とするフレックス領域(スリップ領域)とに領域分けされている。そして、ロックアップクラッチ26の基本制御では、基本切換マップに従って、実際のスロットル弁開度θTH及び車速Vで表される車両状態が解放領域とロックアップ領域とフレックス領域との何れの領域に属するかによって、ロックアップクラッチ26が解放状態、直結状態、又はスリップ状態に切り換えられる。
また、減速走行時、すなわちアクセルペダル94が踏込み操作されていないアクセルOFFで惰性走行(コースト走行)する前進走行時において、ロックアップクラッチ26を係合(直結又はスリップ)することで駆動輪24側からの逆入力をエンジン12側へ直接伝達することにより、エンジン回転速度NEを車両8の減速に従って緩やかに減少させ、それにより、エンジン12に対する燃料供給を停止するフューエルカット領域(車速範囲)を拡大する。エンジン12は、燃費を向上させるために、スロットル弁開度θTHが零のアイドル状態での減速走行時に、所定車速以上で燃料噴射装置82による燃料供給を停止するフューエルカット制御が行われるようになっている。
図4は、油圧制御回路86のうちロックアップクラッチ26を係合解放制御するロックアップ制御回路200を示す回路図で、ロックアップコントロールバルブ202を備えている。ロックアップコントロールバルブ202は、第1調圧弁からライン圧PL2が供給される一対の第1ライン圧ポート204及び第2ライン圧ポート206、トルクコンバータ14の係合側油室15に接続された係合側ポート208、トルクコンバータ14の解放側油室17に接続された解放側ポート210、ロックアップ係合圧制御用ソレノイドバルブDSUから出力される係合信号圧PDSUが供給される信号圧ポート212を備えている。そして、その係合信号圧PDSUが信号圧ポート212に供給されると、スプール214が中心線より右側半分に示すようにスプリング216の付勢力に抗して下方へ移動させられたON状態になり、第1ライン圧ポート204と係合側ポート208とが連通させられ、ロックアップクラッチ係合油圧PLUが係合側油室15へ供給されるとともに、解放側ポート210がドレーンポート218に連通させられることにより、解放側油室17内の作動油がドレーンされ、ロックアップクラッチ26が係合(ON)させられる。
ロックアップ係合圧制御用ソレノイドバルブDSUは、OFF(非励磁)では係合信号圧PDSUの出力を停止するが、係合信号圧PDSUを出力する励磁状態では、電子制御装置60から出力されるロックアップ油圧指令値SPLUに従って励磁電流がデューティ制御されることにより、係合信号圧PDSUを連続的に変化させる。また、ロックアップコントロールバルブ202は、ロックアップクラッチ係合油圧PLUが供給されるフィードバック油室220を備えており、そのロックアップクラッチ係合油圧PLUが係合信号圧PDSUと釣り合うようにスプール214が移動させられる。これにより、係合信号圧PDSUすなわちロックアップ油圧指令値SPLUに応じてロックアップクラッチ係合油圧PLUを連続的に制御することが可能で、そのロックアップクラッチ係合油圧PLUに応じてロックアップクラッチ26の係合トルクすなわち係合力が連続的に変化させられる。本実施例ではロックアップ係合圧制御用ソレノイドバルブDSUのソレノイドが、ロックアップクラッチ26の係合油圧(ロックアップクラッチ係合油圧PLUに対応)を連続的に変化させるソレノイドである。
一方、ロックアップ係合圧制御用ソレノイドバルブDSUがOFF(非励磁)となり、係合信号圧PDSUの出力が停止させられると、ロックアップコントロールバルブ202は、中心線より左側半分に示すようにスプリング216の付勢力に従ってスプール214が上方へ移動させられて原位置に保持されるOFF状態になる。これにより、第2ライン圧ポート206と解放側ポート210とが連通させられ、ライン圧PL2が解放側油室17へ供給されるとともに、係合側ポート208が排出ポート222に連通させられることにより、係合側油室15内の作動油が排出ポート222から排出され、ロックアップクラッチ26が解放(OFF)される。排出ポート222から排出された作動油は、オイルクーラー224を経てオイルパン等へ戻されるようになっており、そのオイルクーラー224により作動油が冷却されるようになっている。なお、余剰の作動油は、クーラーバイパス弁226からオイルパン等へ戻される。
また、ロックアップコントロールバルブ202には、ロックアップソレノイドバルブSLの出力油圧PSLが供給されるバックアップポート228が設けられており、その出力油圧PSLが供給されると、係合信号圧PDSUの供給に拘らずロックアップコントロールバルブ202をOFF状態に維持してロックアップクラッチ26を強制的に解放する。ロックアップソレノイドバルブSLはON−OFFソレノイドバルブで、ライン圧PLをそのまま出力油圧PSLとして出力するものであり、例えば発進停止時等の低車速時に油圧PSLを出力することにより、ロックアップ係合圧制御用ソレノイドバルブDSUのONフェール等によりロックアップクラッチ26が係合してエンジンストールが発生することを防止できる。
図5は、電子制御装置60に備えられた制御機能の要部を説明する機能ブロック図である。図5に示すように、電子制御装置60は、車両状態判断部としての車両状態判断手段100と、ロックアップクラッチ制御部としてのロックアップクラッチ制御手段102と、減速フレックス制御用油圧学習部としての減速フレックス制御用油圧学習手段108と、減速ロックアップ制御用油圧決定部としての減速ロックアップ制御用油圧決定手段110とを備えている。そして、ロックアップクラッチ制御手段102は、減速フレックス制御部としての減速フレックス制御手段104と、減速ロックアップ制御部としての減速ロックアップ制御手段106とを備えている。
車両状態判断手段100は、アクセルOFFの車両減速時において、車両状態に基づいてロックアップクラッチ26を解放状態とスリップ状態と直結状態との何れの作動状態にすべきかを判断する。そのために、車両状態判断手段100は、実験的に設定された図6に示すような減速時ロックアップクラッチ切換マップを予め記憶している。その減速時ロックアップクラッチ切換マップは、高車速側から順に、ロックアップクラッチ26が直結状態とされる後述の減速ロックアップ制御が実行される減速ロックアップ制御領域と、ロックアップクラッチ26がスリップ状態とされる後述の減速フレックス制御(スリップ制御)が実行される減速フレックス制御領域と、ロックアップクラッチ26が解放状態とされるロックアップクラッチ解放領域とに領域分けされている。
減速フレックス制御領域は、エンストが生じ易くなる低車速域に設定されている。車両状態判断手段100は、現在の車速Vに基づき減速時ロックアップクラッチ切換マップから、ロックアップクラッチ26を何れの作動状態にすべきかを判断する。すなわち、車両状態判断手段100は、現在の車速Vで表される車両状態が、減速ロックアップ制御領域と減速フレックス制御領域とロックアップクラッチ解放領域との何れに属するかを判断する。
ロックアップクラッチ制御手段102は、図5に示すように、ロックアップクラッチ26の係合制御及び解放制御を実行するものであり、例えば、車両状態判断手段100により車速Vがロックアップクラッチ解放領域に属すると判断された場合にはロックアップクラッチ26を解放させる。また、アクセルペダル94(図2参照)が踏み込まれたときには、基本切換マップに従ってロックアップクラッチ26を係合解放する基本制御を実行する。更に、ロックアップクラッチ制御手段102は、車両状態判断手段100により車速Vが減速フレックス制御領域又は減速ロックアップ制御領域に属すると判断された場合にロックアップクラッチ26を作動させるための減速フレックス制御手段104と減速ロックアップ制御手段106とを備えている。
本実施形態では、減速フレックス制御手段104は、車両減速時の予め定められた車両状態においてロックアップクラッチ26をスリップさせる減速フレックス制御(スリップ制御)を実行する。その車両減速時の予め定められた車両状態とは、アクセルOFFの車両減速時において車速Vが減速フレックス制御領域に属する車両状態である。すなわち、減速フレックス制御手段104は、車両状態判断手段100により車速Vが図6の減速フレックス制御領域に属すると判断された場合に、減速フレックス制御を実行する。
減速フレックス制御手段104は、その減速フレックス制御ではロックアップクラッチ26をスリップさせるのであるが、具体的には、ロックアップクラッチ26をスリップさせるために図7のタイムチャートに示すようにロックアップクラッチ係合油圧PLUを変化させる。図7は、減速フレックス制御におけるタービン回転速度NT、エンジン回転速度NE、及びロックアップクラッチ係合油圧PLUの変化を表したタイムチャートである。
図7(a)に示すように、減速フレックス制御手段104は、減速フレックス制御を開始する場合には、先ず、ロックアップクラッチ係合油圧PLUを初期油圧PLU1にする。その初期油圧PLU1は、ロックアップクラッチ26を確実に直結状態とできる範囲内で可及的に低い値に実験的に設定されている。そのため、ロックアップクラッチ係合油圧PLUが初期油圧PLU1である間は、図7(b)に示すように、ロックアップクラッチ26が直結状態とされエンジン回転速度NEがタービン回転速度NTに一致している。
また、減速フレックス制御手段104は、図7(a)に示すように、ロックアップクラッチ係合油圧PLUを初期油圧PLU1にした後、ロックアップクラッチ係合油圧PLUを予め定められた目標油圧PLU2に向けて所定の低下率で低下させる。そして、ロックアップクラッチ係合油圧PLUが目標油圧PLU2にまで低下すると、タービン回転速度NTとエンジン回転速度NEとの実際のスリップ量NS(=NT−NE)(又はポンプ翼車14pとタービン翼車14tとの実差回転であってもよい)を逐次算出し、そのフィードバック制御によりその実際のスリップ量NS(実差回転)が所定の目標スリップ量NST(目標差回転)となるようにロックアップクラッチ係合油圧PLUを逐次調節する。要するに、減速フレックス制御手段104は、減速フレックス制御において、ロックアップクラッチ26を所定のスリップ状態に維持するフィードバック制御を行う。
上記の目標油圧PLU2は、本発明の係合状態維持油圧に対応し、後述するように減速フレックス制御の実行毎に減速フレックス制御用油圧学習手段108によって更新決定されるパラメータである。従って、減速フレックス制御手段104は、減速フレックス制御の開始に先立って減速フレックス制御用油圧学習手段108に目標油圧PLU2を決定させ、前回の減速フレックス制御に基づき更新決定された目標油圧PLU2を取得した上で、減速フレックス制御を開始する。
例えば、ベルト式無段変速機18における変速比の変化速度が緩やかな場合や、有段変速機における一定ギヤ段での減速中の場合においては、減速フレックス制御用油圧学習手段108は、減速フレックス制御におけるロックアップクラッチ係合油圧PLUのフィードバック制御中において、減速フレックス制御でロックアップクラッチ26を所定の係合状態に維持できる係合状態維持油圧(目標油圧)PLU2を学習(更新)する油圧学習制御を行う。上記の所定の係合状態とは、実際のスリップ量NSが目標スリップ量NSTとなるロックアップクラッチ26の係合状態のことである。この係合状態維持油圧(目標油圧)PLU2は、図8(a)に示すように、ベース油圧PBと、スリップ保持用補正圧PSと、学習補正圧PLNとの和で構成されている。
ベース油圧PBは、現在のエンジン回転速度NEから決定されるフィードフォワード圧であり、エンジン12の回転抵抗(フリクショントルク)とエアコン用コンプレッサやオルタネータ等の補機の負荷トルクとロックアップ制御回路200内の油圧バルブ等の油圧特性から定まる油温補正量とに基づいて定められる。また、ベース油圧PBは、スリップ量NSが目標スリップ量NSTとなるようにするフィードバック制御において、ロックアップクラッチ係合油圧PLUが早期に収束するように且つロックアップクラッチ26が解放状態にならないように実験的に予め定められている。なお、ベース油圧PBは、定数であってもよいが、エンジン回転速度NEが高くなるほどフリクショントルク及び補機の負荷トルクは大きくなるので、予め実験的に設定された関係に基づいて、減速フレックス制御用油圧学習手段108により、次回の減速フレックス制御の開始時(開始直前)にその時のエンジン回転速度NEが高いほど大きく設定される。
スリップ保持用補正圧PSは、減速フレックス制御用油圧学習手段108による油圧学習制御において、実際のスリップ量NS(=NT−NE)を逐次算出し、そのフィードバック制御によりその実際のスリップ量NSが所定の目標スリップ量NSTとなるようにロックアップクラッチ係合油圧PLUを逐次調節するフィードバック圧である。なお、スリップ保持用補正圧PSの初期値は、車両用駆動装置10の形式毎に適宜定められて良いが、例えば零である。また、学習補正圧PLNは、車両用駆動装置10(ベルト式無段変速機18)の個体差(ばらつき)や経時劣化を補正するように予め実験的に設定されている。
上記のように、ベルト式無段変速機18における変速比の変化速度が緩やかな場合においては、スリップ保持用補正圧(フィードバック圧)PSにより目標スリップ量NSTへの追従性が確保されている。しかし、フィードバック制御は、目標スリップ量NSTと実際のスリップ量NSとのズレを検知以降でないと、係合状態維持油圧(目標油圧)PLU2の増減を実施することができない点、及び、係合状態維持油圧(目標油圧)PLU2の増減を実施しても実際のロックアップクラッチ係合油圧PLUが増減する応答時間があるため、変速中にスリップ量NSをフィードバック制御で安定してコントロールすることが困難となる。特に、減速フレックス制御中におけるダウンシフトの実施によりベルト式無段変速機18における変速比の変化速度が急な場合においてはその影響が顕著となる。
このため、本実施形態では、減速フレックス制御中にダウンシフトが実施される場合には、フィードバック制御を停止してフィードフォワード制御に切り換えることにより、変速(ダウンシフト)によるエンジン回転イナーシャ上昇分を係合状態維持油圧(目標油圧)PLU2に補正して、変速中のスリップ制御の制御性を向上させている。なお、エンジン回転イナーシャ上昇分とは、変速前の変速段(変速比)の回転数と要求される変速段(変速比)の回転数との偏差に応じて変化する区間におけるタービン回転速度NT(入力軸回転速度NIN)の変化分(増加分)のことであり、ダウンシフト時にはタービン回転速度NT(入力軸回転速度NIN)は増加する。
換言すると、減速フレックス制御中にダウンシフトが実施される前では、スリップ保持用補正圧PSに基づいて係合状態維持油圧(目標油圧)PLU2が決定される。これに対して、減速フレックス制御中にダウンシフトが実施される場合では、スリップ保持用補正圧PSに換えてダウンシフト等の変速に伴うL/U油圧補正量PFに基づいて、最終出力としての係合状態維持油圧(目標油圧)PLU2が決定される。なお、L/U油圧補正量PFは、本発明の「フィードフォワード量」に対応しており、変速に伴うエンジン回転イナーシャ分を補正する油圧(補正量)のことである。
具体的には、減速フレックス制御中にダウンシフトが実施される場合では、図8(b)に示すように、係合状態維持油圧(目標油圧)PLU2は、ベース油圧PBと、スリップ保持用補正圧PSと、学習補正圧PLNと、L/U油圧補正量PFとの和で構成されている。なお、ベース油圧PB、スリップ保持用補正圧PS及び学習補正圧PLNは、上記した減速フレックス制御中にダウンシフトが実施される前に取得された補正量である。
また、変速に伴うL/U油圧補正量PF(変速に伴うエンジン回転イナーシャ分を補正する油圧)は、(変速による入力回転変化率×エンジンイナーシャ)/(ロックアップピストンの面積×ロックアップ摩擦材の有効半径×摩擦材の摩擦係数)の算出式から取得される。なお、変速に伴うL/U油圧補正量PFは、逐次計算を実施して取得してもよいし、予め計算結果をマップ化したものを用いて取得してもよい。
変速による入力回転変化率とは、後述するようにダウンシフトが実施されてから油圧補正が終了するまでの間のベルト式無段変速機18の変速中の目標回転速度NCHの所定時間当たりの時間変化率NCHTに対応している。エンジンイナーシャとは、中心回転軸の円板(ドライブプレート等)のエンジン慣性モーメントのことであり、エンジン慣性モーメントI(kgm2)=Ma2(なお、M:質量(kg)、a:半径(m))により示される。また、ロックアップピストンの面積、ロックアップ摩擦材の有効半径及び摩擦材の摩擦係数は、設計時に決定されるハード諸元値である。
次に、図9を参照して、減速フレックス制御中にダウンシフトが発生する場合のフィードフォワード制御についてタイミングチャートを用いて説明する。図9の横軸は時間[sec]を示しており、縦軸は車速、変速後の目標回転速度NINT、変速中の目標回転速度NCH、タービン回転速度NT、エンジン回転速度NE、変速比(入力軸回転速度NIN)、L/U(ロックアップ)油圧補正実行フラグ、変速中の目標回転速度NCHの時間変化率NCHT、L/U油圧補正量、F/B(フィードバック)実行フラグ、及び、係合状態維持油圧(最終出力)を示している。
まず、減速走行時にアクセルペダル94が踏込み操作されていない(アクセルOFF)で惰性走行(コースト走行)する前進走行時において、ダウンシフトが実施される前までは、実際のスリップ量NS(=NT−NE)を逐次算出し、そのフィードバック制御によりその実際のスリップ量NSが所定の目標スリップ量NSTとなるように係合状態維持油圧(目標油圧)PLU2を決定(ロックアップクラッチ係合油圧PLUを逐次調節)するフィードバック制御が行われる。
そして、ダウンシフトが実施された場合には、L/U油圧補正実行フラグがONとなるとともに、F/B実行フラグがOFFとなる。ダウンシフトが実施されると、運転者の出力要求量を表すアクセル操作量ACC及び車速Vをパラメータとして予め定められた変速マップから変速後の目標回転速度NINTが設定される(破線部分)。また、変速後の目標回転速度NINTに基づいて、変速中の目標回転速度NCHが取得される(二点鎖線部分)。なお、ダウンシフトが実施されてから油圧補正が終了するまでの間においては、目標回転速度NCH、タービン回転速度NT及びエンジン回転速度NEは、それぞれ上昇する。
次に、変速中の目標回転速度NCHに基づいて、変速中の目標回転速度NCHの時間変化率NCHT(入力回転変化率)が取得される。このとき、変速中の目標回転速度NCHの変化が大きい領域(ダウンシフト実施直後)では時間変化率NCHTが大きくなるとともに、変速後の目標回転速度NCHの変化が小さい領域(油圧補正終了直前)では時間変化率NCHTが小さくなる。
また、変速中の目標回転速度NCHの時間変化率NCHTに基づいて、L/U油圧補正量PF(変速に伴うエンジン回転イナーシャ分を補正する油圧)が取得される。具体的には、L/U油圧補正量PFは、上記した算出式(変速による入力回転変化率×エンジンイナーシャ)/(ロックアップピストンの面積×ロックアップ摩擦材の有効半径×摩擦材の摩擦係数)に、時間変化率NCHT(入力回転変化率)を代入して算出することにより取得される。本実施形態では、L/U油圧補正量PFは、変速中の目標回転速度NCHの時間変化率NCHTの増減量と略一致(対応)している。
また、ダウンシフトが実施された場合の係合状態維持油圧(目標油圧)PLU2は、ダウンシフト実施前の係合状態維持油圧(目標油圧)PLU2(図9の波線部分)に、L/U油圧補正量PF(変速に伴うエンジン回転イナーシャ分を補正する油圧)が加算されたものである。すなわち、ダウンシフトが実施された場合の係合状態維持油圧(目標油圧)PLU2は、ダウンシフト実施直前のベース油圧PBとスリップ保持用補正圧PSと学習補正圧PLNとの和に、L/U油圧補正量PFが加算されたものである。
また、油圧補正終了後は、フィードフォワード制御をフィードバック制御に切り換えて(戻して)、ダウンシフト実施前の油圧学習制御と同様に、実際のスリップ量NS(=NT−NE)を逐次算出し、そのフィードバック制御によりその実際のスリップ量NSが所定の目標スリップ量NSTとなるように係合状態維持油圧(目標油圧)PLU2を決定(ロックアップクラッチ係合油圧PLUを逐次調節)する制御が行われる。
減速ロックアップ制御手段106は、車両状態判断手段100により車速Vが図6の減速ロックアップ制御領域に属すると判断された場合に、車両減速時にロックアップクラッチ26を係合させることによりポンプ翼車14pとタービン翼車14tとを直結する減速ロックアップ制御を実行する。一方で、車両状態判断手段100により車速Vが図6の減速ロックアップ制御領域に属するとの判断が否定された場合には、減速ロックアップ制御を終了する。すなわち、ロックアップクラッチ26の直結状態を終了させる。
具体的に減速ロックアップ制御手段106(図5参照)は、減速ロックアップ制御では、ロックアップクラッチ係合油圧PLUを減速ロックアップ油圧PDECにして、それによりロックアップクラッチ26を直結状態にする。ここで、減速ロックアップ油圧PDECは、後述するように減速ロックアップ制御の実行中に減速ロックアップ制御用油圧決定手段110によって逐次決定され更新されるパラメータである。従って、減速ロックアップ制御手段106は、減速ロックアップ制御の実行中に減速ロックアップ制御用油圧決定手段110に減速ロックアップ油圧PDECを逐次決定させる。そして、減速ロックアップ制御手段106は、ロックアップクラッチ係合油圧PLUを逐次更新される減速ロックアップ油圧PDECにして、ロックアップクラッチ26に対する油圧出力をロックアップ制御回路200に行わせる。
次に、図10を参照して、減速フレックス制御中にダウンシフトが実施される場合の制御についてフローチャートに基づいて説明する。
まず、ステップST1において、減速フレックス制御中であるか否かを判定し、減速フレックス制御中ではない場合(否定判定:No)には、制御を終了する。また、ステップST1において、減速フレックス制御中であると判定した場合(肯定判定:Yes)には、ステップST2に処理を進める。
ステップST2において、F/B(フィードバック)制御を開始する。ステップST2では、減速フレックス制御中において、ダウンシフトが実施される前の状態で、例えばベルト式無段変速機18における変速比の変化速度が比較的緩やかな場合においては、実際のスリップ量NS(=NT−NE)を逐次算出し、そのフィードバック制御によりその実際のスリップ量NSが所定の目標スリップ量NSTとなるように係合状態維持油圧(目標油圧)PLU2を決定する制御を行う。その後、ステップST3に処理を進める。
ステップST3において、ダウンシフト補正開始条件が成立したか否かを判定する。このステップST3では、運転者がブレーキを踏むことにより目標回転速度NINTの変更、降坂制御、ブレーキングダウンシフトなどのAI制御開始が行われたか否かを判定する。そして、ステップST3において、ダウンシフト補正開始条件が成立していないと判定した場合(否定判定:No)には、ステップST2に処理を戻す。ステップST3において、ダウンシフト補正開始条件が成立したと判定した場合(肯定判定:Yes)には、ステップST4に処理を進める。
ステップST4において、F/B(フィードバック)制御を停止する。すなわち、フィードバック制御によりその実際のスリップ量NSが所定の目標スリップ量NSTとなるように係合状態維持油圧(目標油圧)PLU2を決定する制御を停止し、ステップST5に処理を進める。
ステップST5において、目標回転速度NINTに応じたL/U油圧補正量PF(エンジン回転イナーシャ分を補正する油圧)を加算する。すなわち、上記したベルト式無段変速機18の変速中の目標回転速度NCHの時間変化率NCHT(入力回転変化率)を用いて、(変速による入力回転変化率×エンジンイナーシャ)/(ロックアップピストンの面積×ロックアップ摩擦材の有効半径×摩擦材の摩擦係数)を算出することにより、L/U油圧補正量PF(エンジン回転イナーシャ分を補正する油圧)を取得する。そして、取得されたL/U油圧補正量PFを、ダウンシフト実施直前に取得されたベース油圧PBとスリップ保持用補正圧PSと学習補正圧PLNとの和に加算することにより、係合状態維持油圧(目標油圧)PLU2が取得される。そして、ステップST6に処理を進める。
ステップST6において、ダウンシフト補正終了条件が成立したか否かが判定される。このステップST6では、変速後の目標回転速度NINTとタービン回転速度NTとの差が所定値(しきい値)以下となる場合、又は、変速中の目標回転速度NCHの変化率が所定値(しきい値)以下となる場合にダウンシフト補正終了条件が成立したと判定される。そして、ステップST6において、ダウンシフト補正終了条件が成立していないと判定した場合(否定判定:No)には、ステップST5に処理を戻す。また、ステップST6において、ダウンシフト補正終了条件が成立したと判定した場合(肯定判定:Yes)には、ステップST7に処理を進める。
ステップST7において、F/B(フィードバック)制御が再開される。このステップST7では、上記したステップST2と同様の処理が行われる。
以上説明したように、本実施形態による車両用ロックアップクラッチの制御装置によれば、以下に列記するような効果が得られる。
本実施形態では、上記のように、タービン回転速度NTとエンジン回転速度NEとの実際のスリップ量NS(=NT−NE)(ポンプ翼車14pとタービン翼車14tとの実差回転)が目標スリップ量NST(目標差回転)となるようにフィードバック制御を行うとともに、スリップ制御中にダウンシフトが実施される際にフィードバック制御を中止し、目標回転速度NINTに応じたフィードフォワード制御へ切り換えることにより、ロックアップクラッチ26を所定の係合状態に維持可能な係合状態維持油圧(目標油圧)PLU2を決定する。これにより、フィードバック制御を行う場合と異なり、目標回転速度NINTに応じたフィードフォワード制御により実際の変速よりも前もって油圧指示を上昇させておくことができるので、ダウンシフト中の実際のスリップ量NSと目標スリップ量NSTとの差が回転イナーシャ変化分に応じて大きくなることに起因して、スリップ制御の追従性が悪化するのを抑制することができる。この結果、変速中のスリップ制御の制御性を向上することができる。
また、本実施形態では、上記のように、係合状態維持油圧(目標油圧)PLU2を、(変速による入力回転変化率×エンジンイナーシャ)/(ロックアップピストンの面積×ロックアップ摩擦材の有効半径×摩擦材の摩擦係数)から得られるL/U油圧補正量PF(フィードフォワード量)に基づいて決定する。これにより、フィードバック制御を行う場合と異なり、変速中の目標回転速度NCHの時間変化率NCHTを指標にすることにより実際の変速よりも前もって油圧指示を上昇させておくことができるので、ダウンシフトが実施された際の係合状態維持油圧(目標油圧)PLU2をL/U油圧補正量PF(フィードフォワード量)に基づいて容易に決定することができる。
また、本実施形態では、上記のように、係合状態維持油圧(目標油圧)PLU2を、L/U油圧補正量PF(フィードフォワード量)にダウンシフトが実施される直前のベース油圧PBとスリップ保持用補正圧PSと学習補正圧PLNとを加算することにより決定する。これにより、ダウンシフトが実施される直前の補正圧等を用いてダウンシフト後(変速中)の係合状態維持油圧(目標油圧)PLU2を決定することができる。
また、本実施形態では、上記のように、ダウンシフトが実施された後に目標回転速度NINTとタービン回転速度NTとが所定値以下又は変速中の目標回転速度NCHの時間変化率NCHTが所定値以下となった場合には、フィードフォワード制御を終了した後に、タービン回転速度NTとエンジン回転速度NEとの実際のスリップ量NS(実差回転)が目標スリップ量NST(目標差回転)となるように制御するフィードバック制御を再開する。これにより、ダウンシフト補正が終了したことを容易に判断できるとともに、フィードフォワード制御から実際のスリップ量NSが目標スリップ量NSTとなるように制御するフィードバック制御に切り換えることができる。
−他の実施形態−
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれる。
たとえば、上記実施形態では、変速中の目標回転速度NCHから時間変化率NCHTを取得して係合状態維持油圧を決定する例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、目標回転速度に応じたフィードフォワード制御へ切り換えて係合状態維持油圧を決定することが可能であれば、変速中の目標回転速度NCHから時間変化率NCHTを取得して係合状態維持油圧を決定する以外の取得方法でもよい。
また、上記実施形態では、(変速による入力回転変化率×エンジンイナーシャ)/(ロックアップピストンの面積×ロックアップ摩擦材の有効半径×摩擦材の摩擦係数)から得られるフィードフォワード量に基づいて係合状態維持油圧を決定する例を示したが、上記以外の算出式を用いて係合状態維持油圧を決定してもよい。