JP2014217106A - 距離継電装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】事故相以外の健全相の短絡距離継電器のオーバーリーチによる不要動作を確実に防止するとともに、三相事故に対する遮断指令の高信頼度化が可能な距離継電装置を少ない演算負荷で実現する。【解決手段】インピーダンス演算部は、短絡距離継電器の設置点での各2相間のインピーダンス値を、電力系統の対応する2相から得られた電圧および電流を用いて算出する。事故検出部30は、インピーダンス演算部が算出した各2相間のインピーダンス値と予め定められた整定値とを比較し、各2相間のインピーダンス値が短絡距離継電器の保護範囲内であるときに遮断器への遮断指令を出力する。オーバーリーチ判定部50は、各2相間のインピーダンス値を相互比較し、第1の相のインピーダンス値が第2の相のインピーダンス値の所定倍以上となる場合に、事故検出部30が出力する第1の相に対する遮断指令を無効とするように構成される。【選択図】図6

Description

この発明は、距離継電装置に関し、特に、距離継電装置におけるオーバーリーチによる不要動作を防止する技術に関する。
距離継電装置は、自端の電圧および電流の入力のみにより事故検出ができることから、保護継電器としての構成が比較的簡単で信頼度が高く、系統保護における主保護継電器および予備保護継電器として広く使用されている。
距離継電装置は、距離継電装置の設定にて導入される送電線の電圧を電流で除することにより事故点までの電気的距離であるインピーダンスを算出する。そして、距離継電装置は、この算出されたインピーダンスが距離継電装置の動作責務となる整定インピーダンス以下であれば遮断指令を出力する。一方、インピーダンスが整定インピーダンスを超えていれば、距離継電装置は、遮断指令の出力を行なわない。
距離継電装置は、保護対象の送電線の短絡事故を検出する短絡距離継電器と、保護対象の送電線の地絡事故を検出する地絡距離継電器とに分けられる。短絡距離継電器は、三相短絡、三相地絡、二相短絡および二相地絡事故時に、ほぼ正確に事故相のインピーダンスを見ることができるが、2相を1組としているので一相地絡事故時は距離測定ができない。一方、地絡距離継電器は、三相短絡、三相地絡および直接接地系の一相地絡事故時に、ほぼ正確に事故相のインピーダンスを見ることができる。
短絡距離継電器の従来例として、たとえば特開2010−57341号公報(特許文献1)には、三相交流電力系統により入力される電圧および電流に基づいて事故方向を識別する方向要素、事故点までの電気的距離であるインピーダンスを算出するリアクタンス要素、および第1段要素、第2段要素などの複数の距離要素を有するものが開示される。短絡距離継電器は、距離要素の整定インピーダンスと算出したインピーダンスとを比較し、その比較結果に基づいて事故時の動作判定を行ない、当該動作判定により遮断器への遮断指令を出力するように構成される。
このような短絡距離継電器においては、事故相の短絡距離継電器が事故点までのインピーダンスを正確に求めることができるが、事故相以外の健全相の距離継電器では、整定インピーダンスに対して算出するインピーダンスがオーバーリーチあるいはアンダーリーチとなることが知られている。オーバーリーチの代表例としては、二相短絡事故時の進み相オーバーリーチがある。事故相に対して進み相となる健全相にてオーバーリーチが起きたことによって、健全相の距離継電器が動作領域と見てしまい、正しくは不動作となるべきであるにもかかわらず、不要動作をしてしまう。
オーバーリーチ対策として、特許文献1には、方向要素のうち動作した相のインピーダンスを求める第1の手段と、上記第1の手段で求めたインピーダンスが最小である相を、事故相として選択する第2の手段とを備える短絡距離継電器が開示されている。短絡距離継電器は、上記第2の手段で選択した相のインピーダンスが、距離要素の整定インピーダンス以内であるときに、距離要素が遮断器への遮断指令を出力するように構成される。
特開2010−57341号公報 特開2008−271653号公報 特開平3−52514号公報 国際公開第2010/023956号
特許文献1では、オーバーリーチ対策として、第1の手段にて得られた各2相間のインピーダンスZab,Zbc,Zcaのうち、その値が最小である相を事故相として選択する。これにより、二相短絡事故時の進み相によるオーバーリーチを防止する。その一方で、最小値を示す相だけが選択されるため、三相事故(三相短絡事故または三相地絡事故)であっても、二相短絡事故と判断されるため、三相分の遮断指令が並列して出力されないという問題がある。また、距離継電装置の動作相表示は、遮断指令の出力された相を表示することが一般的であるところ、三相事故であるにもかかわらず、最小インピーダンスと判定された1相の事故として表示されるため、事故相の特定ができず、事故相の誤判断を引き起こす可能性がある。
そのため、特許文献1では、三相事故を判定するための専用の三相事故判定回路を設けることにより、三相事故に対する遮断指令の信頼度および事故相表示の正確度を向上させている。その一方で、専用の三相事故判定回路が必要となるために距離継電装置を構成するプロセッサの演算負荷が大きくなる。このため、距離継電装置の高コスト化や、距離継電装置の制御応答性の低下が懸念される。
この発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、その目的は、事故相以外の健全相の短絡距離継電器のオーバーリーチによる不要動作を確実に防止するとともに、三相事故に対する遮断指令の高信頼度化が可能な距離継電装置を、少ない演算負荷で実現することである。
この発明に係る距離継電装置は、電力系統のインピーダンス値に応じて当該電力系統の短絡事故を検出する短絡距離継電器を備える。距離継電装置は、短絡距離継電器の設置点での各2相間のインピーダンス値を、電力系統の対応する2相から得られた電圧および電流を用いて算出するためのインピーダンス演算手段と、上記インピーダンス演算手段が算出した各2相間のインピーダンス値と予め定められた整定値とを比較し、各2相間のインピーダンス値が短絡距離継電器の保護範囲内であるときに遮断器への遮断指令を出力するための事故検出手段と、各2相間のインピーダンス値を相互比較し、第1の相のインピーダンス値が第2の相のインピーダンス値の所定倍以上となる場合に、事故検出手段が出力する第1の相に対する遮断指令を無効とするように構成されたオーバーリーチ判定手段とを備える。
この発明によれば、事故相以外の健全相の短絡距離継電器のオーバーリーチによる不要動作を確実に防止するとともに、三相事故に対する遮断指令の高信頼度化が可能な距離継電装置を、少ない演算負荷で実現することができる。
距離継電装置による送電線保護を説明する図である。 複数の基本特性要素を組み合わせた標準的な距離継電器の特性を示す図である。 二相短絡事故が発生したときに各相の短絡距離継電器の見るインピーダンスを示したベクトル図である。 二相短絡事故時におけるオーバーリーチを説明する図である。 実施の形態1による距離継電装置の制御構造を示すブロック図である。 図5における事故検出部およびオーバーリーチ判定部の構成をさらに詳細に説明する機能ブロック図である。 この発明の実施の形態1による距離継電装置のオーバーリーチ対策処理に係るフローチャートである。 この発明の実施の形態2による距離継電装置の制御構造を示すブロック図である。 図8における三相事故判定部の構成をさらに詳細に説明する機能ブロック図である。 この発明の実施の形態2による距離継電装置における三相事故判定部の処理を説明するフローチャートである。 この発明の実施の形態3による距離継電装置のオーバーリーチ対策処理に係るフローチャートである。
以下、実施の形態について図面を参照して詳しく説明する。なお、同一または相当する部分には同一の参照符号を付して、その説明を繰り返さない。
実施の形態1.
(距離継電装置の構成)
最初に、距離継電装置の基本的構成を説明する。図1は、距離継電装置による送電線保護を説明する図である。
図1に示す電力系統において、送電線Lは、一方端が電源Pに接続され、他方端が変電所Aを経由して図示しない受電設備に接続される。変電所Aには距離継電装置10が設けられている。距離継電装置10は、送電線Lに設けられた変成器12および変流器14に接続される。
距離継電装置10は、変成器12の二次電圧に基づいて設置点Aでの送電線Lの電圧Vを検知する。また、距離継電装置10は、変流器14の二次電流に基づいて送電線Lの電流Iを検知する。距離継電装置10は、送電線L上の点Fで事故が発生したとき、設置点の電圧Vを電流Iで除することにより事故点Fまでの電気的距離であるインピーダンスZを算出する。そして、距離継電装置10は、この算出されたインピーダンスZが距離継電装置10の動作責務となる整定インピーダンス以下であれば遮断指令を出力する。一方、インピーダンスZが整定インピーダンス値を超えていれば、距離継電装置10は、遮断指令の出力を行なわない。
距離継電装置10は、一般的に、事故点Fまでの電気的な距離を測定する測距特性をもつリアクタンス要素や、事故点Fの方向を判定する方向特性をもつモー要素などの複数の基本特性要素を組み合わせて実現される。図2に、複数の基本特性要素を組み合わせた標準的な距離継電器の特性を示す。なお、距離継電器の特性を表わすには、図2に示すR−X図表を使用する。R−X図表は、インピーダンスZを極座標ベクトルとして示したものである。
図2(a)は、方向検出としてモー要素Mを使用する場合の距離継電器の構成例である。モー要素Mは、方向特性と測距特性とをあわせもつもので、距離3段要素として使用される。保護区間が短い1,2段領域は、事故点抵抗の検出目標Rsを確保するため、モー要素Mとリアクタンス要素Xとを組み合わせて保護する。一方、保護区間が長い3段領域をカバーするモー要素Mの場合は、動作範囲が広くなり、潮流で動作する可能性があるため、オーム要素Rと組み合わせて保護する。
図2(b)は、方向検出として方向要素Dを使用する場合の距離継電器の構成例である。距離3段としてリアクタンス要素X、オーム要素Rおよび方向要素Dの組み合わせで構成する以外は、モー要素Mを使用した場合と同様であるが、3段領域まで事故点抵抗の検出性能を高くできる。
図1に示した距離継電装置10においては、設置点である変電所Aから受電端までの例えば80%までを保護範囲として整定する。距離継電装置10は、保護範囲の一端側に短絡距離継電器を相毎に配置して保護範囲内での事故検出を行なう。この保護範囲の境界付近の点Fで事故が発生した場合、各相の短絡距離継電器の見るインピーダンスZは、例えば図3に示すようになる。
図3は、図1の点Fで二相短絡事故が発生したときに各相の短絡距離継電器の見るインピーダンスを示したベクトル図である。図3の横軸Rは抵抗成分を示し、縦軸Xはリアクタンス成分を示す。また、縦軸Xの原点から正方向の所定範囲を示すZsは、リアクタンス要素Xの整定値である。
図3を参照して、点Fでbc相の2相で短絡事故が発生した場合を想定する。Zbcは、事故相短絡距離継電器であるbc相短絡距離継電器が事故点Fを見るインピーダンスであり、図1に示す前方インピーダンスZfに相当する。また、Zbは、bc相短絡距離継電器が電源Pを見るインピーダンスであり、図1に示す後方インピーダンスZbに相当する。Zabは、健全相短絡距離継電器であるab相短絡距離継電器が事故点Fを見るインピーダンスである。Zcaは、健全相短絡距離継電器であるca相短絡距離継電器が事故点Fを見るインピーダンスである。
事故相短絡距離継電器であるbc相短絡距離継電器は、事故点Fまでの正しいインピーダンスZbc=Zfを測距するが、健全相短絡距離継電器であるab相短絡距離継電器およびca相短絡距離継電器は測距に誤差を含んでいる。すなわち、ab相短絡距離継電器は、事故点Fまでのリアクタンス成分を整定値Zsより小さく測距するので、リアクタンス要素のオーバーリーチが生じる。逆に、ca相短絡距離継電器は、事故点Fまでのリアクタンス成分を整定値Zsより大きく測距するので、リアクタンス要素のアンダーリーチが生じる。なお、これらの測距誤差は、事故点抵抗や負荷電流の影響を受けてさらに大きくなる。
このように、事故相(例えばbc相二相短絡事故時のbc相)に対応する短絡距離継電器は、事故点までの正しいインピーダンスを測距するので何ら問題はないが、事故相に関連した相(例えばbc相二相短絡事故時のab相、ca相)に対応する短絡距離継電器では、事故点までのインピーダンスを正しいインピーダンス角以外のところに見るので、オーバーリーチあるいはアンダーリーチとなる。アンダーリーチは、事故相の短絡距離継電器が正確に測距してカバーするので何ら問題ではない。一方、オーバーリーチは不要動作となり好ましくない。図4を用いて、二相短絡事故時におけるオーバーリーチについてさらに説明する。
図4(a)は、図1に示す点Fでbc相二相短絡事故が発生した場合に変電所Aに設置された各相短絡距離継電器の見るインピーダンスを示している。事故相短絡距離継電器であるbc相短絡距離継電器が事故点Fを見るインピーダンスZbcが第1段要素X1の動作範囲に入ったとき、進み相であるab相短絡距離継電器が事故点Fを見るインピーダンスZabにおいてオーバーリーチが起きることによって、インピーダンスZabも第1段要素X1の動作範囲に入ってしまう場合がある。このような場合、健全相であるab相は正しくは遮断指令を出力しない不動作でなくてはならないにもかかわらず、不要動作をしてしまう。
あるいは図4(b)に示すように、bc相短絡距離継電器が見るインピーダンスZbcが第2段要素X2の動作範囲に入ったときに、オーバーリーチが起こることによって、進み相であるab相短絡距離継電器が見るインピーダンスZabが第1段要素X1の動作範囲に入ってしまう場合が起こり得る。この場合、本来は、第2段要素X2が限時遮断と判断すべきところ、第1段要素X1が瞬時遮断と判定してしまう。その結果、健全相であるab相は不要動作をしてしまう。第1段要素の動作出力は遮断器の瞬時遮断となるため、不要動作を防ぐことが極めて重要である。
すなわち、距離継電装置は、算出されるインピーダンスZが整定値として定められる保護範囲の外にある場合には遮断指令を出力しない不動作となることが必要である。しかしながら、距離継電装置の事故検出原理から、事故相以外の距離継電器、つまり、健全相の距離継電器が、本来、保護範囲の外で発生した事故に対して不動作であるべきところ、保護範囲内にインピーダンスが誤って算出されてしまうオーバーリーチが起きたことで遮断指令を出力する虞がある。
そこで、実施の形態1による距離継電装置では、事故相以外の健全相の短絡距離継電器のオーバーリーチを判定し、この健全相の距離継電器をロックすることによって遮断指令を出力できなくする。以下に、図面を参照して、実施の形態1による距離継電装置におけるオーバーリーチ対策について説明する。
(オーバーリーチ対策)
図5は、実施の形態1による距離継電装置10の制御構造を示すブロック図である。なお、図5に示した各機能ブロックについては、距離継電装置10の内部に、当該機能に相当する回路(ハードウェア)を構成してもよいし、予め設定された制御プログラムに従って距離継電装置10がソフトウェア処理を実行する構成としてもよい。
図5を参照して、距離継電装置10は、第1インピーダンス演算部20と、事故検出部30と、第2インピーダンス演算部40と、オーバーリーチ判定部50とを備える。
第1インピーダンス演算部20は、距離継電装置10が備える各相短絡距離継電器が見る各2相間のインピーダンスZab,Zbc,Zcaを、電力系統の対応する2相から得られた電圧および電流を用いて演算する。具体的には、第1インピーダンス演算部20は、送電線Lに設けられた変成器12から電力系統の相電圧Va,Vb,Vcを受け、変流器14から相電流Ia,Ib,Icを受ける。第1インピーダンス演算部20は、これらの相電圧Va,Vb,Vcおよび相電流Ia,Ib,Icから直接演算またはベクトル演算することにより、インピーダンスZab,Zbc,Zcaを演算する。
事故検出部30は、第1インピーダンス演算部20により算出されたインピーダンスZab,Zbc,Zcaに基づいて、距離継電装置10の設置点Aから事故点Fまでの距離および方向を判別する。具体的には、事故検出部30は、ab相インピーダンスZab、bc相インピーダンスZbcおよびca相インピーダンスZcaの各々と、距離継電装置10の保護範囲に定められた整定値Zsとの大小関係を比較する。事故検出部30は、比較結果に基づいてインピーダンスZab,Zbc,Zcaの各々が整定値Zs以上であるか否かを判定する。事故検出部30は、インピーダンスが整定値Zs以上である場合、距離継電装置10の保護範囲外の事故であると判断して論理値“0”の信号(遮断指令)を出力する。一方、インピーダンスが整定値Zsより小さい場合、事故検出部30は、距離継電装置10の保護範囲内の事故であると判断して論理値“1”の信号(遮断指令)を出力する。
第2インピーダンス演算部40は、点Fで短絡事故が発生した場合に、後述するオーバーリーチ判定部50での判定動作に用いる各2相間のインピーダンスZab,Zbc,Zcaを演算する。具体的には、第2インピーダンス演算部40は、電力系統の相電圧Va,Vbの差分である線間電圧Vabの実効値を相電流Ia,Ibの差分の実効値で割り算することにより、ab相インピーダンスZabを算出する。同様に、第2インピーダンス演算部40は、電力系統の相電圧Vb,Vcの差分である線間電圧Vbcの実効値を相電流Ib,Icの差分の実効値で割り算することにより、bc相インピーダンスZbcを算出する。さらに第2インピーダンス演算部40は、電力系統の相電圧Vc,Vaの差分である線間電圧Vcaの実効値を相電流Ic,Iaの差分の実効値で割り算することにより、ca相インピーダンスZcaを算出する。すなわち、第2インピーダンス演算部40は、式(1)〜(3)によりインピーダンスZab,Zbc,Zcaを演算する。
Figure 2014217106
オーバーリーチ判定部50は、第2インピーダンス演算部40により算出されたインピーダンスZab,Zbc,Zcaに基づいて、健全相の短絡距離継電器のオーバーリーチが生じているか否かを判定する。オーバーリーチ判定部50は、健全相の短絡継電器のオーバーリーチが生じていると判定したときには、健全相の短絡距離継電器をロックすることにより、健全相の遮断指令の出力を無効とする。このようにして、事故相以外の健全相短絡距離継電器のオーバーリーチによる不要動作を防止する。
なお、第1インピーダンス演算部20は、事故検出部30が事故点Fまでの距離を判別するとともに、事故点Fの方向を判別することができるように、インピーダンスZab,Zbc,Zcaを直接演算またはベクトル演算により算出する。これに対して、第2インピーダンス演算部40は、オーバーリーチ判定部50がab相インピーダンスZab、bc相インピーダンスZbcおよびca相インピーダンスZca相互間の大小関係を比較できればよいため、相電圧および相電流の実効値からインピーダンスZab,Zbc,Zcaを算出する。このように第2インピーダンス演算部40の演算負荷を減らして演算時間を短くすることにより、オーバーリーチ判定部50はオーバーリーチを早急に判定して直ちに健全相の距離継電器をロックすることができる。
図6を参照して、図5における事故検出部30およびオーバーリーチ判定部50についてさらに説明する。
図6を参照して、事故検出部30は、各相の短絡距離継電器の第1段要素44SX1として、44SX1−ab,44SX1−bc,44SX1−caを含む。第1段要素44SX1は、リアクタンス要素X、モー要素M、方向要素Dおよびオーム要素Rなどの複数の基本特性要素を組み合わせて構成される。なお、図6では、第1段要素44SX1のみを図示したが、実際には第2段要素や第3段要素などの他の要素も実装されている。
第1段要素44SX1−abは、ab相短絡距離継電器に対応する。第1段要素44SX1−abは、第1インピーダンス演算部20により演算されたab相インピーダンスZabが保護範囲内に入ったとき、遮断器への遮断指令を論理値“1”に活性化させて出力する。
第1段要素44SX1−bcは、bc相短絡距離継電器に対応する。第1段要素44SX1−bcは、第1インピーダンス演算部20により演算されたbc相インピーダンスZbcが保護範囲内に入ったとき、遮断器への遮断指令を論理値“1”に活性化させて出力する。
第1段要素44SX1−caは、ca相短絡距離継電器に対応する。第1段要素44SX1−caは、第1インピーダンス演算部20により演算されたca相インピーダンスZcaが保護範囲内に入ったとき、遮断器への遮断指令を論理値“1”に活性化させて出力する。第1段要素44SX1−ab,44SX1−bc,44SX1−caの出力は、3つの2入力論理積回路(AND回路)74,75,76にそれぞれ入力される。
オーバーリーチ判定部50は、第2インピーダンス演算部40により算出されたインピーダンスZab,Zbc,Zca相互間の大小関係を比較し、比較結果に応じて第1段要素44SX1−ab,44SX1−bc,44SX1−caの出力(遮断指令)を有効化または無効化する。
図4および図5を用いて、オーバーリーチ判定部50における判定原理について説明する。図4および図5に示すように、bc相の2相で短絡事故が発生したとき、事故相短絡距離継電器であるbc相短絡距離継電器が事故点Fを見るインピーダンスZbcに対して、進み相であるab相距離継電器が事故点Fを見るインピーダンスZabは電源点Pから60°の方向となる。また、遅れ相であるca相距離継電器が事故点Fを見るインピーダンスZcaも、bc相距離継電器が事故点Fを見るインピーダンスZbcに対して60°の方向となる。
したがって、ab相短絡距離継電器が事故点Fを見るインピーダンスZabとbc相短絡距離継電器が電源Pを見るインピーダンス(後方インピーダンス)Zbとの合成ベクトルをベクトルPNとすると、ベクトルPNの大きさは、bc相短絡距離継電器が事故点Fを見るインピーダンスZbc(=前方インピーダンスZf)および後方インピーダンスZbの和(=Zf+Zb)のほぼ2倍となる。よって、ab相インピーダンスZabとbc相インピーダンスZbcとの間には、式(4)に示す関係が成り立つ。
Figure 2014217106
同様にして、ca相短絡距離継電器が事故点Fを見るインピーダンスZcaとbc相短絡距離継電器が電源Pを見るインピーダンス(後方インピーダンス)Zbとの合成ベクトルをベクトルPMとすると、ベクトルPMの大きさは、bc相短絡距離継電器が事故点Fを見るインピーダンスZbc(=前方インピーダンスZf)および後方インピーダンスZbの和(=Zf+Zb)のほぼ2倍となる。よって、ca相インピーダンスZcaとbc相インピーダンスZbcとの間には、式(5)に示す関係が成り立つ。
Figure 2014217106
上記式(4),(5)に示したように、進み相および遅れ相の見るインピーダンスZab,Zcaの大きさは、事故相の見るインピーダンスZbcの大きさの2倍以上となる。換言すれば、上記式(4)が成立する場合、すなわちab相インピーダンスZabが他相のインピーダンスZbc(またはZca)の2倍以上となる場合には、ab相は事故相ではないと判断できる。同様に、上記式(5)が成立する場合、すなわちca相インピーダンスZcaが他相のインピーダンスZbc(またはZab)の2倍以上となる場合には、ca相が事故相ではないと判断できる。
そこで、オーバーリーチ判定部50は、インピーダンスZab,Zbc,Zcaの各々について、他相のインピーダンスの2倍以上であるか否かを判定する。そして、インピーダンスが他相のインピーダンスの2倍以上であると判定された場合、オーバーリーチ判定部50は、対応する第1段要素44SX1の出力を無効化する。
図6に戻って、オーバーリーチ判定部50は、ab相短絡距離継電器におけるオーバーリーチを判定するための手段として、比較回路51,52と、2入力論理和回路(OR回路)57とを有する。比較回路51,52は、ab相インピーダンスZabと他相のインピーダンスZbc,Zcaを2倍した値とを比較する。具体的には、比較回路51は、ab相インピーダンスZabとbc相インピーダンスZbcを2倍した値(=2×Zbc)とを比較し、上記の式(4)の関係が成立した場合に論理値“1”の信号を出力する。比較回路52は、ab相インピーダンスZabとca相インピーダンスZcaを2倍した値(=2×Zca)とを比較し、下記の式(6)の関係が成立した場合に論理値“1”の信号を出力する。
Figure 2014217106
2入力論理和回路57は、比較回路51,52の出力の論理和を出力する。2入力論理和回路57の出力は、インバータ71によって論理レベルが反転されて2入力論理積回路74に入力される。ab相インピーダンスZabがbc相インピーダンスZbcの2倍以上のとき、またはab相インピーダンスZabがca相インピーダンスZcaの2倍以上のとき、2入力論理和回路57からは論理値“1”の信号が出力される。これにより、2入力論理積回路74には、インバータ71を介して論理値“0”の信号が入力される。
オーバーリーチ判定部50は、bc相短絡距離継電器におけるオーバーリーチを判定するための手段として、比較回路53,54と、2入力論理和回路(OR回路)58とを有する。比較回路53,54は、bc相インピーダンスZbcと他相のインピーダンスZab,Zcaを2倍した値とを比較する。具体的には、比較回路53は、bc相インピーダンスZbcとab相インピーダンスZabを2倍した値(=2×Zab)とを比較し、下記の式(7)の関係が成立した場合に論理値“1”の信号を出力する。
Figure 2014217106
比較回路54は、bc相インピーダンスZbcとca相インピーダンスZcaを2倍した値(=2×Zca)とを比較し、下記の式(8)の関係が成立した場合に論理値“1”の信号を出力する。
Figure 2014217106
2入力論理和回路58は、比較回路53,54の出力の論理和を出力する。2入力論理和回路58の出力は、インバータ72によって論理レベルが反転されて2入力論理積回路75に入力される。bc相インピーダンスZbcがab相インピーダンスZabの2倍以上のとき、またはbc相インピーダンスZbcがca相インピーダンスZcaの2倍以上のとき、2入力論理和回路58からは論理値“1”の信号が出力される。これにより、2入力論理積回路75には、インバータ72を介して論理値“0”の信号が入力される。
オーバーリーチ判定部50は、ca相短絡距離継電器におけるオーバーリーチを判定するための手段として、比較回路55,56と、2入力論理和回路(OR回路)59とを有する。比較回路55,56は、ca相インピーダンスZcaと他相のインピーダンスZab,Zbcを2倍した値とを比較する。具体的には、比較回路55は、ca相インピーダンスZcaとbc相インピーダンスZbcを2倍した値(=2×Zbc)とを比較し、上記の式(5)の関係が成立した場合に論理値“1”の信号を出力する。
比較回路56は、ca相インピーダンスZcaとab相インピーダンスZabを2倍した値(=2×Zab)とを比較し、下記の式(9)の関係が成立した場合に論理値“1”の信号を出力する。
Figure 2014217106
2入力論理和回路59は、比較回路55,56の出力の論理和を出力する。2入力論理和回路59の出力は、インバータ73によって論理レベルが反転されて2入力論理積回路76に入力される。ca相インピーダンスZcaがab相インピーダンスZabの2倍以上のとき、またはca相インピーダンスZcaがbc相インピーダンスZbcの2倍以上のとき、2入力論理和回路59からは論理値“1”の信号が出力される。これにより、2入力論理積回路76には、インバータ73を介して論理値“0”の信号が入力される。
2入力論理積回路74は、第1段要素44SX1−abの出力と、論理レベルをインバータ71で反転させた2入力論理和回路57の出力との論理積を出力する。2入力論理和回路57の出力が論理値“1”のとき、すなわち、ab相インピーダンスZabが他相のインピーダンスZbcまたはZcaの2倍以上となるとき、第1段要素44SX1−abの出力の論理レベルにかかわらず、2入力論理積回路74の出力は、論理値“0”に固定される。これにより、第1段要素44SX1−abの出力は無効化される。
このようにして、ab相インピーダンスZabが他相のインピーダンスZbc,Zcaの2倍以上となるとき、すなわち、ab相が事故相でないとき、第1段要素44SX1−abから出力される遮断指令は無効化される。よって、ab相におけるオーバーリーチを防止できる。
第1段要素44SX1−abと同様の方法によって、第1段要素44SX1−bc,44SX1−caから出力される遮断指令も、2入力論理和回路58,59の出力によってそれぞれ無効化される。
具体的には、2入力論理積回路75は、第1段要素44SX1−bcの出力と、論理レベルをインバータ72で反転させた2入力論理和回路58の出力との論理積を出力する。2入力論理和回路58の出力が論理値“1”のとき、すなわち、bc相インピーダンスZbcが他相のインピーダンスZabまたはZcaの2倍以上となるとき、第1段要素44SX1−bcの出力の論理レベルにかかわらず、2入力論理積回路75の出力は、論理値“0”に固定される。このようにしてbc相が事故相でないとき、第1段要素44SX1−bcの出力は無効化されるため、bc相におけるオーバーリーチを防止できる。
2入力論理積回路76は、第1段要素44SX1−caの出力と、論理レベルをインバータ73で反転させた2入力論理和回路59の出力との論理積を出力する。2入力論理和回路59の出力が論理値“1”のとき、すなわち、ca相インピーダンスZcaが他相のインピーダンスZabまたはZbcの2倍以上となるとき、第1段要素44SX1−caの出力の論理レベルにかかわらず、2入力論理積回路76の出力は、論理値“0”に固定される。このようにしてca相が事故相でないとき、第1段要素44SX1−caの出力は無効化されるため、ca相におけるオーバーリーチを防止できる。
3入力論理和回路77は、2入力論理積回路74,75,76の出力の論理和を、第1段要素44SX1による遮断指令として出力する。3入力論理和回路77からは、2入力論理積回路74,75,76によって有効とされた第1段要素の出力が遮断指令として出力される。
以上のような制御構造によって、本実施の形態1による距離継電装置10におけるオーバーリーチ対策処理が実現される。これらの処理は、次のような処理フローにまとめることができる。
図7は、この発明の実施の形態1による距離継電装置10のオーバーリーチ対策処理に係るフローチャートである。なお、図7に示すフローチャートは、距離継電装置10において予め格納したプログラムを実行することで実現できる。
図7を参照して、点Fで二相短絡事故が発生した場合、距離継電装置10は、最初に、ステップS01により、上記の式(1)〜(3)を用いてab相インピーダンスZab、bc相インピーダンスZbcおよびca相インピーダンスZcaを演算する。ステップS01の処理は図5に示した第2インピーダンス演算部40の機能に対応する。
次に、距離継電装置10は、ステップS02〜S13により、インピーダンスZab,Zbc,Zca相互間の大小関係を比較し、比較結果に応じて第1段要素44SX1−ab,44SX1−bc,44SX1−caの出力(遮断指令)を有効化または無効化する。ステップS02〜S13の処理は図5に示したオーバーリーチ判定部50の機能に対応する。
具体的には、距離継電装置10は、ステップS02により、ab相インピーダンスZabがca相インピーダンスZcaの2倍以上であるか否かを判定する。ab相インピーダンスZabがca相インピーダンスZcaの2倍以上であると判定された場合(ステップS02においてYES)、距離継電装置10は、ステップS03により、第1段要素44SX1−abをロックすることによって第1段要素44SX1−abから出力される遮断指令を無効化する。
一方、ab相インピーダンスZabがca相インピーダンスZcaの2倍以上でないと判定された場合(ステップS02においてNO)、距離継電装置10はステップS04により、ab相インピーダンスZabがbc相インピーダンスZbcの2倍以上であるか否かを判定する。ab相インピーダンスZabがbc相インピーダンスZbcの2倍以上であると判定された場合(ステップS04においてYES)、距離継電装置10は、ステップS05により、第1段要素44SX1−abをロックすることによって第1段要素44SX1−abから出力される遮断指令を無効化する。
ab相インピーダンスZabがbc相インピーダンスZbcの2倍以上でないと判定された場合、すなわち、ab相インピーダンスZabが他相のインピーダンスZca,Zbcの2倍以上でないと判定された場合(ステップS04においてNO)、距離継電装置10はステップS06に進み、bc相インピーダンスZbcがab相インピーダンスZabの2倍以上であるか否かを判定する。bc相インピーダンスZbcがab相インピーダンスZabの2倍以上であると判定された場合(ステップS06においてYES)、距離継電装置10は、ステップS07により、第1段要素44SX1−bcをロックすることによって第1段要素44SX1−bcから出力される遮断指令を無効化する。
一方、bc相インピーダンスZbcがab相インピーダンスZabの2倍以上でないと判定された場合(ステップS06においてNO)、距離継電装置10はステップS08により、bc相インピーダンスZbcがca相インピーダンスZcaの2倍以上であるか否かを判定する。bc相インピーダンスZbcがca相インピーダンスZcaの2倍以上であると判定された場合(ステップS08においてYES)、距離継電装置10は、ステップS09により、第1段要素44SX1−bcをロックすることによって第1段要素44SX1−bcから出力される遮断指令を無効化する。
bc相インピーダンスZbcがca相インピーダンスZcaの2倍以上でないと判定された場合、すなわち、bc相インピーダンスZbcが他相のインピーダンスZab,Zcaの2倍以上でないと判定された場合(ステップS08においてNO)、距離継電装置10はステップS10に進み、ca相インピーダンスZcaがab相インピーダンスZabの2倍以上であるか否かを判定する。ca相インピーダンスZcaがab相インピーダンスZabの2倍以上であると判定された場合(ステップS10においてYES)、距離継電装置10は、ステップS11により、第1段要素44SX1−caをロックすることによって第1段要素44SX1−caから出力される遮断指令を無効化する。
一方、ca相インピーダンスZcaがab相インピーダンスZabの2倍以上でないと判定された場合(ステップS10においてNO)、距離継電装置10はステップS12により、ca相インピーダンスZcaがbc相インピーダンスZbcの2倍以上であるか否かを判定する。ca相インピーダンスZcaがbc相インピーダンスZbcの2倍以上であると判定された場合(ステップS12においてYES)、距離継電装置10は、ステップS13により、第1段要素44SX1−caをロックすることによって第1段要素44SX1−caから出力される遮断指令を無効化する。
これに対して、ca相インピーダンスZcaがbc相インピーダンスZbcの2倍以上でないと判定された場合(ステップS12においてNO)、距離継電装置10はステップS14により、有効とされている第1段要素44SX1の出力を遮断指令として遮断器へ出力する。
(作用効果)
このように、本実施の形態1による距離継電装置によれば、各2相間のインピーダンスZab,Zbc,Zcaを相互比較し、インピーダンスが他相のインピーダンスの2倍以上となる場合には、当該インピーダンスに対応する相を事故相でないと判断して当該相の短絡距離継電器をロックすることにより、遮断指令の出力を無効化する。これにより、事故相以外の健全相の短絡距離継電器のオーバーリーチによる不要動作を防止することができる。
また、本実施の形態1による距離継電装置は、以下に述べるように、従来の距離継電装置にはない作用効果を奏する。
従来の距離継電装置は、オーバーリーチ対策として、各2相間のインピーダンスZab,Zbc,Zcaのうち、その値が最小である相を事故相として選択する構成を採用している。これにより、二相短絡事故時の進み相によるオーバーリーチを防止する。しかしながら、最小値を示す相だけが選択されるため、三相事故(三相短絡事故または三相地絡事故)であっても、二相短絡事故と判断される。その結果、ab相、bc相、ca相の3相分の遮断指令を並列して出力すべき事故に対して、1相分の遮断指令しか出力されなくなる。
また、距離継電装置の動作相表示は、遮断指令の出力された相を表示することが一般的であるところ、三相事故であるにもかかわらず、最小インピーダンスと判定された1相の事故として表示されるため、事故相の特定ができず、事故相の誤判断を引き起こす可能性がある。
そのため、従来の距離継電装置においては、三相事故を判定するための専用の三相事故判定回路を設けることにより、二相短絡事故と三相短絡事故とを別々に表示することを可能としている。この三相事故判定回路は、下記の式(10)に示すように、各相を加算したインピーダンスZsumに係数を掛けて比較を行ない、各2相間のインピーダンスZab,Zbc,Zcaがすべて所定値以下の場合に三相短絡事故であると判定する。
Figure 2014217106
ただし、Zsum=|Zab|+|Zbc|+|Zca|
このように従来の距離継電装置は、インピーダンスZab,Zbc,Zcaのうち、その値が最小である相を事故相として選択するのと並行して、インピーダンスZab,Zbc,Zcaのすべてが所定範囲内の大きさであるかを判定することにより、三相事故に対する遮断指令の信頼度および事故相表示の正確度を向上させている。その一方で、専用の三相事故判定回路が必要となるため、距離継電装置を構成するプロセッサの演算負荷が大きくなる。このため、距離継電装置の高コスト化や、距離継電装置の制御応答性の低下が懸念される。
これに対して、本実施の形態1による距離継電装置は、各2相間のインピーダンスZab,Zbc,Zcaを相互比較し、インピーダンス最小相を事故相として選択する構成に代えて、インピーダンスが他相のインピーダンスの2倍以上であるか否かを判定し、インピーダンスが他相のインピーダンスの2倍以上である場合に当該相が健全相であると判定するように構成される。このような構成としたことにより、三相事故が発生した場合、インピーダンスZab,Zbc,Zcaはいずれも他相のインピーダンスの2倍以上にはならないため、ab相、bc相、ca相のいずれも健全相と判定されることがない。したがって、第1段要素44SX1−ab,44SX1−bc,44SX1−caはいずれもロックされることなく、ab相、bc相、ca相の3相分の遮断指令を並列して出力することができる。また、距離継電装置の動作相表示においても、遮断指令の出力された3相が表示されるため、事故相の特定を正確に行なうことができる。
さらに、三相事故判定回路の設置が不要となるため、距離継電装置を構成するプロセッサの演算負荷が軽減される。これにより、プロセッサのスペックダウンによる低コスト化を実現できる。また、距離継電装置の制御応答性を向上できる。
実施の形態2.
上述の実施の形態1による距離継電装置10では、インピーダンスZab,Zbc,Zcaの各々と他相のインピーダンスを2倍した値との大小を比較する構成について説明したが、三相事故の発生時には、インピーダンスZab,Zbc,Zcaの値が小さくなるため、変成器12および変流器14(図1)の誤差や第2インピーダンス演算部40における演算誤差などの影響を受けやすくなる。そのため、三相事故発生時のインピーダンスZab,Zbc,Zcaは全く同じ値になる保障はなく、わずかな誤差をオーバーリーチが生じていると誤って判定してしまう可能性がある。その結果、誤って事故相の短絡距離継電器をロックしてしまう虞がある。
そこで、この発明の実施の形態2では、誤差の影響が懸念される場合には、オーバーリーチ判定を行なわないことで、上述した事故相の短絡距離継電器に対する誤ロックを防止する。
この発明の実施の形態2による距離継電装置10Aにおいて、事故相を検出する構成および健全相のオーバーリーチを判定する構成は、実施の形態1による距離継電装置10と同様であるので、詳細な説明は繰り返さない。
図8は、この発明の実施の形態2による距離継電装置10Aの制御構造を示すブロック図である。
図8を参照して、距離継電装置10Aにおける制御構造は、図5に示す距離継電装置10の制御構造において、三相事故判定部60をさらに備えたものである。
三相事故判定部60は、インピーダンスZab,Zbc,Zcaの各々と閾値Zthとを比較する。インピーダンスZa,Zbc,Zcaのいずれもが閾値Zth以下となる場合、三相事故判定部60は、三相事故が発生したと判定してオーバーリーチ判定部50におけるオーバーリーチ判定を行なわないこととする。なお、閾値Zthは、変成器12および変流器14の誤差や第2インピーダンス演算部40の演算誤差などがインピーダンスZab,Zbc,Zcaに及ぼす影響を考慮して設定される。
図9を参照して、図8における三相事故判定部60についてさらに説明する。なお、事故検出部50およびオーバーリーチ判定部50の構成は、図6と同様であるので、詳細な説明は繰り返さない。
図9を参照して、三相事故判定部60は、比較回路61,62,63と、3入力論理積回路(AND回路)64と、インバータ65とを含む。
比較回路61は、ab相インピーダンスZabと閾値Zthとを比較する。ab相インピーダンスZabが閾値Zth以下となる場合、比較回路61は論理値“1”の信号を出力する。
比較回路62は、bc相インピーダンスZbcと閾値Zthとを比較する。bc相インピーダンスZbcが閾値Zth以下となる場合、比較回路62は論理値“1”の信号を出力する。
比較回路63は、ca相インピーダンスZcaと閾値Zthとを比較する。ca相インピーダンスZcaが閾値Zth以下となる場合、比較回路63は論理値“1”の信号を出力する。
3入力論理積回路64は、比較回路61,62,63の出力の論理積を出力する。3入力論理積回路64の出力は、インバータ65によって論理レベルが反転されて2入力論理積回路78,79,80に入力される。
2入力論理積回路78は、2入力論理和回路57の出力と、論理レベルをインバータ65で反転させた3入力論理積回路64の出力との論理積を出力する。3入力論理積回路64の出力が論理値“1”のとき、すなわち、インピーダンスZab,Zbc,Zcaがすべて閾値Zth以下となるとき、2入力論理和回路57の出力の論理レベルにかかわらず、2入力論理積回路78の出力は論理値“0”に固定される。これにより、2入力論理積回路74には、インバータ71を介して論理値“1”の信号が入力される。
2入力論理積回路74は、第1段要素44SX1−abの出力と、論理レベルが反転された2入力論理積回路78の出力との論理積を出力する。2入力論理積回路78の出力が論理値“0”に固定されているとき、すなわち、インピーダンスZab,Zbc,Zcaがすべて閾値Zth以下となるとき、2入力論理積回路74の出力は、第1段要素44SX1−abの出力と同じ論理レベルとなる。このようにして、インピーダンスZab,Zbc,Zcaがすべて閾値Zth以下となるとき、第1段要素44SX1−abの出力は有効化されるため、ab相における誤ロックを防止できる。
2入力論理積回路79は、2入力論理和回路58の出力と、論理レベルをインバータ65で反転させた3入力論理積回路64の出力との論理積を出力する。3入力論理積回路64の出力が論理値“1”のとき、すなわち、インピーダンスZab,Zbc,Zcaがすべて閾値Zth以下となるとき、2入力論理和回路58の出力の論理レベルにかかわらず、2入力論理積回路79の出力は、論理値“0”に固定される。これにより、2入力論理積回路75には、インバータ72を介して論理値“1”の信号が入力される。
2入力論理積回路75は、第1段要素44SX1−bcの出力と、論理レベルが反転された2入力論理積回路79の出力との論理積を出力する。2入力論理積回路79の出力が論理値“0”に固定されているとき、すなわち、インピーダンスZab,Zbc,Zcaがすべて閾値Zth以下となるとき、2入力論理積回路75の出力は、第1段要素44SX1−bcの出力と同じ論理レベルとなる。このようにして、インピーダンスZab,Zbc,Zcaがすべて閾値Zth以下となるとき、第1段要素44SX1−bcの出力は有効化されるため、bc相における誤ロックを防止できる。
2入力論理積回路80は、2入力論理和回路59の出力と、論理レベルをインバータ65で反転させた3入力論理積回路64の出力との論理積を出力する。3入力論理積回路64の出力が論理値“1”のとき、すなわち、インピーダンスZab,Zbc,Zcaがすべて閾値Zth以下となるとき、2入力論理和回路59の出力の論理レベルにかかわらず、2入力論理積回路80の出力は、論理値“0”に固定される。これにより、2入力論理積回路76には、インバータ73を介して論理値“1”の信号が入力される。
2入力論理積回路76は、第1段要素44SX1−caの出力と、論理レベルが反転された2入力論理積回路80の出力との論理積を出力する。2入力論理積回路80の出力が論理値“0”に固定されているとき、すなわち、インピーダンスZab,Zbc,Zcaがすべて閾値Zth以下となるとき、2入力論理積回路76の出力は、第1段要素44SX1−caの出力と同じ論理レベルとなる。このようにして、インピーダンスZab,Zbc,Zcaがすべて閾値Zth以下となるとき、第1段要素44SX1−caの出力は有効化されるため、ca相における誤ロックを防止できる。
図10は、この発明の実施の形態2による距離継電装置10Aにおける三相事故判定部60の処理を説明するフローチャートである。なお、図10に示すフローチャートは、距離継電装置10Aにおいて予め格納したプログラムを実行することで実現できる。
図10を参照して、点Fで二相短絡事故が発生した場合、距離継電装置10Aは、最初に、ステップS21により、上記の式(1)〜(3)を用いてab相インピーダンスZab、bc相インピーダンスZbcおよびca相インピーダンスZcaを演算する。ステップS11の処理は図8に示した第2インピーダンス演算部40の機能に対応する。
次に、距離継電装置10Aは、ステップS22〜S24により、各2相間のインピーダンスZab,Zbc,Zcaと閾値Zthとの大小関係を比較し、比較結果に応じてオーバーリーチ判定処理を行なうか否かを決定する。なお、オーバーリーチ判定処理とは、図7のステップS02〜S13の処理に対応し、図9のオーバーリーチ判定部50の機能に対応する。
具体的には、距離継電装置10Aは、ステップS22により、ab相インピーダンスZabが閾値Zth以下であるか否かを判定する。ab相インピーダンスインZabが閾値Zthより大きい場合(ステップS22においてNO)、距離継電装置10Aは、ステップS26により、オーバーリーチ判定を実行する。すなわち、距離継電装置10Aは、図7に示した処理フローに従って、健全相の短絡距離継電器のオーバーリーチが生じているか否かを判定する。オーバーリーチ判定部50は、健全相の短絡継電器のオーバーリーチが生じていると判定したときには、健全相の短絡距離継電器をロックすることにより、健全相の遮断指令の出力を無効とする。
これに対して、ab相インピーダンスZabが閾値Zth以下である場合(ステップS22においてYES)、距離継電装置10Aは、ステップS23により、bc相インピーダンスZbcが閾値Zth以下であるか否かを判定する。bc相インピーダンスインZbcが閾値Zthより大きい場合(ステップS23においてNO)、距離継電装置10Aは、ステップS26により、オーバーリーチ判定を実行する。
一方、bc相インピーダンスZbcが閾値Zth以下である場合(ステップS23においてYES)、距離継電装置10Aは、ステップS24により、ca相インピーダンスZcaが閾値Zth以下であるか否かを判定する。ca相インピーダンスインZcaが閾値Zthより大きい場合(ステップS24においてNO)、距離継電装置10Aは、ステップS26により、オーバーリーチ判定を実行する。
これに対して、ca相インピーダンスZcaが閾値Zth以下である場合、すなわち、各2相間のインピーダンスZab,Zbc,Zcaがすべて閾値Zth以下である場合(ステップS24においてYES)、距離継電装置10Aは、ステップS25により、オーバーリーチ判定を不実行とする。すなわち、距離継電装置10Aは、ab相距離継電器、bc相距離継電器およびca相距離継電器のいずれもロックしないものとする。
(作用効果)
このように、本実施の形態2による距離継電装置によれば、インピーダンスZab,Zbc,Zcaがすべて閾値Zth以下である場合には、オーバーリーチ判定を行なわないことにより、変成器12および変流器14の誤差および第2インピーダンス演算部50の演算誤差などの影響を受けて事故相の短絡距離継電器が誤ってロックされるのを防止することができる。
なお、インピーダンスZab,Zbc,Zcaのいずれかが閾値Zthより大きい場合には、実施の形態1による距離継電装置と同様に、インピーダンスZab,Zbc,Zcaを相互比較し、インピーダンスが他相のインピーダンスの2倍以上となる場合に当該相を事故相でないと判断して当該相の短絡距離継電器をロックする。これにより、実施の形態1と同様に、事故相以外の健全相の短絡距離継電器のオーバーリーチによる不要動作を防止できる。
また、実施の形態2による距離継電装置によれば、インピーダンスZab,Zbc,Zcaがすべて閾値Zth以下である場合には、オーバーリーチ判定が行なわれないため、距離継電装置を構成するプロセッサの演算負荷をさらに軽減することができる。
なお、実施の形態2による三相事故判定部60は、インピーダンスZab,Zbc,Zcaと閾値Zthとの比較に基づいて三相事故を判定する点において、各相を加算したインピーダンスZsumに係数を掛けて比較を行なう、従来の距離継電装置における三相事故判定回路とは相違する。三相事故判定回路では、各相を加算したインピーダンスZsumに変成器、変流器およびインピーダンス演算部などの誤差が含まれるため、三相事故を正確に判定できない可能性がある。これに対して、実施の形態2による三相事故判定部60は、各2相間のインピーダンスZab,Zbc,Zcaとこれらの誤差を考慮して予め設定された閾値Zthとを比較するため、より正確に三相事故を判定することができる。
実施の形態3.
上述のこの発明の実施の形態1および2による距離継電装置10,10Aでは、インピーダンスと他相のインピーダンスを2倍した値とを比較する構成について説明したが、他相のインピーダンスに掛ける係数を距離継電装置における測距誤差に応じて可変に設定するようにしてもよい。この発明の実施の形態3では、他相のインピーダンスに掛ける係数を予め定められた範囲内で変化させる構成について説明する。
この発明の実施の形態3による距離継電装置10Bにおいて、事故相を検出する構成および健全相のオーバーリーチを判定する構成は、実施の形態1による距離継電装置10と同様であるので、詳細な説明は繰り返さない。また、距離継電装置10Bにおける制御構造についても、図6と同様であるので、詳細な説明は繰り返さない。
図11は、この発明の実施の形態3による距離継電装置10Bのオーバーリーチ対策処理に係るフローチャートである。なお、図11に示すフローチャートは、距離継電装置において予め格納したプログラムを実行することで実現できる。
図11を参照して、点Fで二相短絡事故が発生した場合、距離継電装置10Bは、最初に、図7と同様のステップS01により、上記の式(1)〜(3)を用いてab相インピーダンスZab、bc相インピーダンスZbcおよびca相インピーダンスZcaを演算する。
次に、距離継電装置10Bは、ステップS021〜S13により、インピーダンスZab,Zbc,Zca相互間の大小関係を比較し、比較結果に応じて第1段要素44SX1−ab,44SX1−bc,44SX1−caの出力(遮断指令)を有効化または無効化する。ステップS02〜S13の処理は図5に示したオーバーリーチ判定部50の機能に対応する。
具体的には、距離継電装置10Bは、ステップS021により、ab相インピーダンスZabがca相インピーダンスZcaのk倍以上であるか否かを判定する。係数kは、距離継電装置10の測距誤差を考慮して所定の範囲(たとえば1.9≦k≦2.1とする)に設定される。ab相インピーダンスZabがca相インピーダンスZcaのk倍以上であると判定された場合(ステップS021においてYES)、距離継電装置10Bは、図7と同様のステップS03により、第1段要素44SX1−abをロックすることによって第1段要素44SX1−abから出力される遮断指令を無効化する。
一方、ab相インピーダンスZabがca相インピーダンスZcaのk倍以上でないと判定された場合(ステップS021においてNO)、距離継電装置10BはステップS041により、ab相インピーダンスZabがbc相インピーダンスZbcのk倍以上であるか否かを判定する。ab相インピーダンスZabがbc相インピーダンスZbcのk倍以上であると判定された場合(ステップS041においてYES)、距離継電装置10Bは、図7と同様のステップS05により、第1段要素44SX1−abをロックすることによって第1段要素44SX1−abから出力される遮断指令を無効化する。
ab相インピーダンスZabがbc相インピーダンスZbcのk倍以上でないと判定された場合、すなわち、ab相インピーダンスZabが他相のインピーダンスZca,Zbcのk倍以上でないと判定された場合(ステップS041においてNO)、距離継電装置10BはステップS061に進み、bc相インピーダンスZbcがab相インピーダンスZabのk倍以上であるか否かを判定する。bc相インピーダンスZbcがab相インピーダンスZabのk倍以上であると判定された場合(ステップS061においてYES)、距離継電装置10Bは、図7と同様のステップS07により、第1段要素44SX1−bcをロックすることによって第1段要素44SX1−bcから出力される遮断指令を無効化する。
一方、bc相インピーダンスZbcがab相インピーダンスZabのk倍以上でないと判定された場合(ステップS061においてNO)、距離継電装置10BはステップS081により、bc相インピーダンスZbcがca相インピーダンスZcaのk倍以上であるか否かを判定する。bc相インピーダンスZbcがca相インピーダンスZcaのk倍以上であると判定された場合(ステップS081においてYES)、距離継電装置10Bは、図7と同様のステップS09により、第1段要素44SX1−bcをロックすることによって第1段要素44SX1−bcから出力される遮断指令を無効化する。
bc相インピーダンスZbcがca相インピーダンスZcaのk倍以上でないと判定された場合、すなわち、bc相インピーダンスZbcが他相のインピーダンスZab,Zcaのk倍以上でないと判定された場合(ステップS081においてNO)、距離継電装置10BはステップS101に進み、ca相インピーダンスZcaがab相インピーダンスZabのk倍以上であるか否かを判定する。ca相インピーダンスZcaがab相インピーダンスZabのk倍以上であると判定された場合(ステップS101においてYES)、距離継電装置10Bは、図7と同様のステップS11により、第1段要素44SX1−caをロックすることによって第1段要素44SX1−caから出力される遮断指令を無効化する。
一方、ca相インピーダンスZcaがab相インピーダンスZabのk倍以上でないと判定された場合(ステップS101においてNO)、距離継電装置10BはステップS121により、ca相インピーダンスZcaがbc相インピーダンスZbcのk倍以上であるか否かを判定する。ca相インピーダンスZcaがbc相インピーダンスZbcのk倍以上であると判定された場合(ステップS121においてYES)、距離継電装置10Bは、図7と同様のステップS13により、第1段要素44SX1−caをロックすることによって第1段要素44SX1−caから出力される遮断指令を無効化する。
これに対して、ca相インピーダンスZcaがbc相インピーダンスZbcのk倍以上でないと判定された場合(ステップS121においてNO)、距離継電装置10Bは図7と同様のステップS14により、有効とされている第1段要素44SX1の出力を遮断指令として遮断器へ出力する。
(作用効果)
このように、本実施の形態3による距離継電装置によれば、インピーダンスZab,Zbc,Zcaを相互比較し、インピーダンスが他相のインピーダンスのk倍以上となる場合には、当該相を事故相でないと判断して当該相の短絡距離継電器をロックすることにより、遮断指令の出力を無効化する。このように他相のインピーダンスに掛ける係数kを距離継電装置の測距誤差に応じて可変に設定する構成としたことにより、オーバーリーチ判定の精度が向上する。これにより、健全相の短絡距離継電器が誤ってロックされないこと、および、事故相の短絡距離継電器が誤ってロックされることを確実に防止できる。
今回開示された実施の形態がすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
10,10A,10B 距離継電装置、12 変成器、14 変流器、20 第1インピーダンス演算部、30 事故検出部、40 第2インピーダンス演算部、50 オーバーリーチ判定部、60 三相事故判定部、P 電源。

Claims (4)

  1. 電力系統のインピーダンス値に応じて当該電力系統の短絡事故を検出する短絡距離継電器を備える距離継電装置であって、
    前記短絡距離継電器の設置点での各2相間のインピーダンス値を、前記電力系統の対応する2相から得られた電圧および電流を用いて算出するためのインピーダンス演算手段と、
    前記インピーダンス演算手段が算出した各2相間のインピーダンス値と予め定められた整定値とを比較し、前記各2相間のインピーダンス値が前記短絡距離継電器の保護範囲内であるときに遮断器への遮断指令を出力するための事故検出手段と、
    前記各2相間のインピーダンス値を相互比較し、第1の相のインピーダンス値が第2の相のインピーダンス値の所定倍以上となる場合に、前記事故検出手段が出力する前記第1の2相間に対する前記遮断指令を無効とするように構成されたオーバーリーチ判定手段とを備える、距離継電装置。
  2. 前記インピーダンス演算手段が算出した各2相間のインピーダンス値がすべて閾値以下である場合に、前記オーバーリーチ判定手段を不実行とする、請求項1に記載の距離継電装置。
  3. 前記オーバーリーチ判定手段は、前記第1の相のインピーダンス値が前記第2の相のインピーダンス値の2倍以上となる場合に、前記事故検出手段が出力する前記第1の相に対する前記遮断指令を無効とする、請求項1または2に記載の距離継電装置。
  4. 前記所定倍は、予め定められた範囲内から選択される、請求項1または2に記載の距離継電装置。
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