JP2014211977A - 二次電池負極用バインダーと二次電池負極及びリチウムイオン二次電池 - Google Patents

二次電池負極用バインダーと二次電池負極及びリチウムイオン二次電池 Download PDF

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Abstract

【課題】負極のバインダーを改良することで、二次電池の初期効率とサイクル試験後の容量維持率を向上させる。【解決手段】少なくとも一部の側鎖にカルボキシル基をもつポリマーと、銅(Cu)、ニッケル(Ni)及びコバルト(Co)から選ばれる金属元素の化合物と、の反応物からなるバインダーを負極活物質と共に負極活物質層の形成に用いる。【選択図】なし

Description

本発明は、リチウムイオン二次電池などの二次電池に用いられる負極用のバインダーと二次電池負極及びリチウムイオン二次電池に関するものである。
リチウムイオン二次電池は、充放電容量が高く、高出力化が可能な二次電池である。現在、主として携帯電子機器用の電源として用いられており、更に、今後普及が予想される電気自動車用の電源として期待されている。リチウムイオン二次電池は、リチウム(Li)を挿入および脱離することができる活物質を正極及び負極にそれぞれ有する。そして、両極間に設けられた電解液内をリチウムイオンが移動することによって動作する。
リチウムイオン二次電池には、正極の活物質として主にリチウムコバルト複合酸化物等のリチウム含有金属複合酸化物が用いられ、負極の活物質としては多層構造を有する炭素材料が主に用いられている。リチウムイオン二次電池の性能は、二次電池を構成する正極、負極および電解質の材料に左右される。なかでも活物質を形成する活物質材料の研究開発が活発に行われている。例えば負極活物質材料として炭素よりも高容量なケイ素またはケイ素酸化物が検討されている。
ケイ素を負極活物質として用いることにより、炭素材料を用いるよりも高容量の電池になりうる。しかしながらケイ素は、充放電時のLiの吸蔵・放出に伴う体積変化が大きい。また吸蔵・放出を繰り返すことで、ケイ素そのものが微粉化することがわかっている。そのためケイ素が微粉化して集電体から脱落または剥離し、電池の充放電サイクル寿命が短いという問題点がある。この問題に対して、ケイ素酸化物を負極活物質として用いることにより、ケイ素よりも充放電時のLiの吸蔵・放出に伴う体積変化を抑制する検討がなされている。
例えば、負極活物質として、酸化ケイ素(SiOx:xは0.5≦x≦1.5程度)の使用が検討されている。SiOxは熱処理されると、粒子内でSiがSiO2内に偏析することが知られている。これは不均化反応といい、固体の内部反応によりSi相とSiO2相の二相に分離する。分離して得られるSi相は非常に微細である。また、Si相を覆うSiO2相が電解液の分解を抑制する働きをもつ。したがって、SiとSiO2とに分解したSiOxからなる負極活物質を用いた二次電池は、サイクル特性に優れる。
上記したSiOxのSi相を構成するシリコン粒子が微細であるほど、それを負極活物質として用いた二次電池はサイクル特性が向上する。そこで特許第3865033号(特許文献1)には、金属シリコンとSiO2を加熱して昇華させて酸化珪素ガスとし、それを冷却してSiOxを製造する方法が記載されている。この方法によれば、Si相を構成するシリコン粒子の粒径を1-5nmのナノサイズとすることができる。
また特開2009-102219号公報(特許文献2)には、シリコン原料を高温のプラズマ中で元素状態まで分解し、それを液体窒素温度まで急冷してシリコンナノ粒子を得、このシリコンナノ粒子をゾルゲル法などでSiO2-TiO2マトリクス中に固定する製造方法が記載されている。
ところが特許文献1に記載の製造方法では、マトリクスが昇華性の材料に限られる。このため、マトリクスはSiO2に限られるため、リチウム吸蔵時にマトリクスとリチウムが不可逆反応する。このような反応は、セル容量低下の主要因となる。また特許文献2に記載の製造方法では、プラズマ放電のために高いエネルギーが必要となる。さらにこれらの製造方法で得られたシリコン複合体では、Si相のシリコン粒子の分散性が低く凝集し易いという不具合がある。Si粒子どうしが凝集して粒径が大きくなると、それを負極活物質として用いた二次電池は初期容量が低く、サイクル特性も低下する。
ところで近年、半導体、電気・電子等の各分野への利用が期待されるナノシリコン材料が開発されている。例えばPhysical Review B(1993),vol48,8172-8189(非特許文献1)には、塩化水素(HCl)と二ケイ化カルシウム(CaSi2)とを反応させることで層状ポリシランを合成する方法が記載され、こうして得られる層状ポリシランは、発光素子などに利用できることが記載されている。この材料は昇華法やプラズマ放電ではない手法で製造できるため、不可逆容量や凝集による初期効率低下等の問題を解決できうる。
そして特開2011-090806号公報(特許文献3)には、層状ポリシランを負極活物質として用いたリチウムイオン二次電池が記載されている。
特許第3865033号公報 特開2009-102219号公報 特開2011-090806号公報
Physical Review B(1993),vol48,8172-8189
ところが特許文献3に記載された層状ポリシランからなる負極活物質は、BET比表面積が大きいために、二次電池の負極活物質材料としては好ましくないという不具合があった。例えばリチウムイオン二次電池の負極においては、BET比表面積が大きいと、電解液の分解を促進させるために負極で消費される不可逆容量が大きくなり、高容量化が困難である。またSEIが生じやすく、サイクル特性が低いという問題がある。
そこで特許文献3に記載された層状ポリシランを非酸化性雰囲気下で焼成することが想起された。この方法によれば、結晶子サイズが数nmのナノシリコンが得られるため、負極活物質として好適である。しかしながらこの方法で製造されたナノシリコンを負極活物質として用いたリチウムイオン二次電池は、初期効率が低くサイクル試験後の容量維持率が低いという不具合があった。
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、負極のバインダーを改良することでこの問題を解決することを目的とする。
上記課題を解決する本発明の二次電池負極用バインダーの特徴は、少なくとも一部の側鎖にカルボキシル基をもつポリマーと、銅(Cu)、ニッケル(Ni)及びコバルト(Co)から選ばれる少なくとも一種の金属元素の化合物と、の反応物からなることにある。
そして本発明の二次電池負極の特徴は、集電体と、集電体の表面に形成された負極活物質層と、からなり、負極活物質層は、負極活物質と、本発明のバインダーと、を含むことにある。
本発明の二次電池負極用バインダーは、少なくとも一部の側鎖にカルボキシル基をもつポリマーと、銅(Cu)、ニッケル(Ni)及びコバルト(Co)から選ばれる少なくとも一種の金属元素の化合物と、の反応物からなる。この金属元素を含むことで、通常のポリマーのみからなるバインダーに比べて導電性が向上するため、二次電池の初期効率が向上する。さらにこの金属元素は価数変化が可能であるので、充放電における電位変化に追従して電子の授受が生じ、本発明の負極を用いた二次電池は初期効率がさらに向上するとともにサイクル後の効率も向上する。
実施例1で調製された灰色粉末のSEM像である。
本発明の二次電池負極用バインダーは、少なくとも一部の側鎖にカルボキシル基をもつポリマーと、銅(Cu)、ニッケル(Ni)及びコバルト(Co)から選ばれる少なくとも一種の金属元素の化合物と、の反応物からなる。少なくとも一部の側鎖にカルボキシル基をもつポリマーとしては、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリアスパラギン酸、ポリグルタミン酸などが例示される。また銅(Cu)、ニッケル(Ni)及びコバルト(Co)から選ばれる金属元素の化合物としては、各金属元素の酢酸塩、硝酸塩、塩化物、フッ化物、水酸化物などが例示される。
銅(Cu)、ニッケル(Ni)及びコバルト(Co)から選ばれる少なくとも一種の金属元素の化合物は、少なくとも一部の側鎖にカルボキシル基をもつポリマー100質量部に対して0.01〜10質量部含まれていることが望ましい。金属元素の化合物が0.01質量部より少ないと金属元素を含有させた効果の発現が困難となり、金属元素の化合物が10質量部を超えるとポリマーと金属元素の反応物の粘度が高くなりすぎて負極活物質層を形成するためのスラリーの調製が困難となる。
上記ポリマーと上記金属元素の化合物との反応物としては、塩化合物、錯化合物などが例示される。
上記ポリマーと上記金属元素の化合物とを反応させて反応物を得るには、両者を混合して加熱する方法、ポリマーと金属元素の化合物の両方を溶解可能な溶媒に溶解させて加熱する方法などを用いることができる。分子レベルで均一な反応物を得るためには、後者の方法のように両者が液状で混合された状態で加熱する方法が好ましい。
本発明の二次電池負極用バインダーは、グラファイト、ハードカーボン、ケイ素、炭素繊維、スズ(Sn)、酸化ケイ素など公知の負極活物質と共に用いることができる。負極活物質の中でも、SiOx(0.3≦x≦1.6)で表されるケイ素酸化物、あるいは非特許文献1及び特許文献3に記載された層状ポリシランを焼成することで得られるナノシリコンなどが特に好ましい。
本願発明者らは、非特許文献1及び特許文献3に記載された層状ポリシランに関して鋭意研究を行った。二ケイ化カルシウム(CaSi2)と酸、例えば塩化水素(HCl)水溶液とを反応させることにより、層状ポリシランを得ることができる。二ケイ化カルシウム(CaSi2)は、ダイヤモンド型のSiの(111)面の間にCa原子層が挿入された層状結晶をなし、酸との反応でカルシウム(Ca)が引き抜かれることによって層状ポリシランが得られる。
また、酸としてフッ化水素(HF)水溶液と塩化水素(HCl)水溶液との混合物とを用いることもできる。フッ化水素(HF)と塩化水素(HCl)との組成比は、塩化水素(HCl)のモル量を100としたとき、フッ化水素(HF)のモル量が100以下であることが好ましい。フッ化水素(HF)の量がこの比より多くなるとCaF2、CaSiO系などの不純物が生成し、この不純物と層状ポリシランとを分離するのが困難であるため好ましくない。
酸と二ケイ化カルシウム(CaSi2)との反応比は、当量より酸を過剰にすることが好ましい。また反応雰囲気は、不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。反応時間と反応温度は特に限定されないが、通常、反応温度は0℃〜100℃、反応時間は0.25〜24時間である。
上記反応によって得られるナノシリコンは、凝集して凝集粒子となっている。そのため、蓄電装置として充放電時における膨張・収縮の繰り返しによる凝集粒子の微粉化が生じ、比表面積が増大するとともにSEIの生成によってサイクル特性が低下するという問題がある。
そこでナノシリコンからなる凝集粒子と、非晶質の炭素からなり凝集粒子の少なくとも一部を覆って複合化された炭素層と、よりなる負極活物質を用いることが特に好ましい。非晶質の炭素からなる炭素層は、凝集粒子の少なくとも一部を覆っている。この炭素層によって凝集粒子が補強されるという効果が発現される。負極にはグラファイト、アセチレンブラック、ケッチェンブラックなどの導電助剤が用いられる場合があるが、これらの炭素は結晶質であり、非晶質ではない。ナノシリコンの凝集体を覆って複合化された炭素層の厚さは、1〜100nmの範囲であることが好ましく、5〜50nmの範囲であることがさらに望ましい。炭素層の厚さが薄すぎると効果の発現が困難となり、炭素層が厚くなりすぎると電池抵抗が上昇し、充放電が困難となる場合がある。
炭素層を形成する場合において、何らかの方法で別に製造された非晶質の炭素をナノシリコンの凝集粒子と混合するだけでは、不均質となるとともに、炭素が凝集粒子の少なくとも一部を覆うことも困難である。そこで非晶質の炭素が凝集粒子の少なくとも一部を確実に覆い、均質な負極活物質を製造する方法が開発された。その製造方法は、ケイ素原子で構成された六員環が複数連なった構造をなし組成式(SiH)nで示される層状ポリシランを熱処理してナノシリコンの凝集粒子を得る凝集粒子形成工程と、凝集粒子と芳香性複素環化合物とを混合した状態で芳香性複素環化合物を重合する重合工程と、芳香性複素環化合物の重合体を炭素化する炭素化工程と、をこの順で行うことが望ましい。
ナノシリコンの凝集粒子の形成工程は前述したとおりである。
重合工程では、ナノシリコン凝集粒子と芳香性複素環化合物とを混合した状態で、芳香性複素環化合物が重合される。これによりナノシリコンの凝集粒子に付着した状態の芳香性複素環化合物の重合体が得られる。ここで芳香性複素環化合物には、フラン、ピロール、チオフェン、イミダゾール、ピラゾール、オキサゾール、イソオキサゾール、チアゾール、イソチアゾールなどの五員環芳香性複素環化合物、インドール、ベンズイミダゾール、ベンゾフランなどの多環芳香性複素環化合物など、重合可能なものを用いることができる。
これらの化合物を重合するには、各種重合方法を採用することができるが、ピロールなどの場合には、濃塩酸あるいは三塩化鉄などのポリマー化触媒の存在下で加熱する方法が簡便である。特に三塩化鉄を用いれば、非水雰囲気で重合することができSiの酸化を抑制できるので、蓄電装置としたときに初期容量が増大する効果がある。
炭素化工程では、ナノシリコンの凝集粒子と混合された状態で芳香性複素環化合物の重合体が炭素化される。この工程は、ナノシリコンの製造時と同様に、不活性雰囲気下にて100℃以上の温度で熱処理すればよく、400℃以上で熱処理するのが好ましい。芳香性複素環化合物は重合体となっているため、加熱しても蒸散することなく炭素化が進行し、ナノシリコンの凝集粒子の表面に非晶質の炭素からなる炭素層が結合した複合体が得られる。なお重合工程を行わずに、ナノシリコンの凝集粒子と芳香性複素環化合物とを混合した状態で熱処理を行うと、芳香性複素環化合物が蒸散してしまい炭素化が困難である。
非晶質の炭素が凝集粒子の少なくとも一部を覆う負極活物質においては、ケイ素と炭素との組成比は重量比でSi/C=3/1〜20/1であることが望ましい。この比が20/1を超えると炭素層を形成した効果が発現されず、3/1未満では二次電池の容量が低下する。
<二次電池負極>
本発明の二次電池負極は、集電体と、集電体の表面に形成された負極活物質層と、からなり、負極活物質層は、負極活物質と、本発明のバインダーと、を含む。
集電体は、放電或いは充電の間、電極に電流を流し続けるための化学的に不活性な電子高伝導体のことである。集電体は箔、板等の形状を採用することができるが、目的に応じた形状であれば特に限定されない。集電体として、例えば銅箔やアルミニウム箔を好適に用いることができる。
負極活物質は、上述したとおりである。負極活物質を用いて、非水系二次電池の負極を作製するには、負極活物質粉末と、炭素粉末などの導電助剤と、本発明のバインダーと、適量の有機溶剤を加えて混合しスラリーにしたものを、ロールコート法、ディップコート法、ドクターブレード法、スプレーコート法、カーテンコート法などの方法で集電体上に塗布し、バインダーを乾燥あるいは硬化させることによって作製することができる。
バインダーは、なるべく少ない量で活物質等を結着させることが求められるが、その添加量は活物質、導電助剤、及びバインダーを合計したものの0.5wt%〜50wt%が望ましい。バインダーが0.5wt%未満では電極の成形性が低下し、50wt%を超えると電極のエネルギー密度が低くなる。
バインダーには、本発明のバインダーに加えて、ポリフッ化ビニリデン(PolyVinylidene DiFluoride:PVdF)、ポリ四フッ化エチレン(PTFE)、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、ポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ポリ塩化ビニル(PVC)、メタクリル樹脂(PMA)、ポリアクリロニトリル(PAN)、変性ポリフェニレンオキシド(PPO)、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリアクリル酸(PAA)等を混合することもできる。
導電助剤は、電極の導電性を高めるために添加される。導電助剤として、炭素質微粒子であるカーボンブラック、黒鉛、アセチレンブラック(AB)、ケッチェンブラック(KB)、気相法炭素繊維(Vapor Grown Carbon Fiber:VGCF)等を単独でまたは二種以上組み合わせて添加することができる。導電助剤の使用量については、特に限定的ではないが、例えば、負極活物質100質量部に対して、20〜100質量部程度とすることができる。導電助剤の量が20質量部未満では効率のよい導電パスを形成できず、100質量部を超えると電極の成形性が悪化するとともにエネルギー密度が低くなる。
有機溶剤には特に制限はなく、複数の溶剤の混合物でも構わない。N-メチル-2-ピロリドン及びN-メチル-2-ピロリドンとエステル系溶媒(酢酸エチル、酢酸n-ブチル、ブチルセロソルブアセテート、ブチルカルビトールアセテート等)あるいはグライム系溶媒(ジグライム、トリグライム、テトラグライム等)の混合溶媒が特に好ましい。
二次電池がリチウムイオン二次電池の場合、負極には、リチウムがプリドーピングされていることもできる。負極にリチウムをドープするには、例えば対極に金属リチウムを用いて半電池を組み、電気化学的にリチウムをドープする電極化成法などを利用することができる。リチウムのドープ量は特に制約されない。
二次電池がリチウムイオン二次電池の場合、特に限定されない公知の正極、電解液、セパレータを用いることができる。正極は、リチウムイオン二次電池で使用可能なものであればよい。正極は、集電体と、集電体上に結着された正極活物質層とを有する。正極活物質層は、正極活物質と、バインダーとを含み、さらには導電助剤を含んでも良い。正極活物質、導電助剤およびバインダーは、特に限定はなく、リチウムイオン二次電池で使用可能なものであればよい。
正極活物質としては、金属リチウム、LiCoO2、LiNi1/3Co1/3Mn1/3O2、Li2MnO3、硫黄などが挙げられる。集電体は、アルミニウム、ニッケル、ステンレス鋼など、リチウムイオン二次電池の正極に一般的に使用されるものであればよい。導電助剤は上記の負極で記載したものと同様のものが使用できる。
電解液は、有機溶媒に電解質であるリチウム金属塩を溶解させたものである。電解液は、特に限定されない。有機溶媒として、非プロトン性有機溶媒、たとえばプロピレンカーボネート(PC)、エチレンカーボネート(EC)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート(EMC)等から選ばれる一種以上を用いることができる。また、溶解させる電解質としては、LiPF6、LiBF4、LiAsF6、LiI、LiClO4、LiCF3SO3等の有機溶媒に可溶なリチウム金属塩を用いることができる。
例えば、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネートなどの有機溶媒にLiClO4、LiPF6、LiBF4、LiCF3SO3等のリチウム金属塩を0.5mol/Lから1.7mol/L程度の濃度で溶解させた溶液を使用することができる。
セパレータは、リチウムイオン二次電池に使用されることができるものであれば特に限定されない。セパレータは、正極と負極とを分離し電解液を保持するものであり、ポリエチレン、ポリプロピレン等の薄い微多孔膜を用いることができる。
二次電池がリチウムイオン二次電池である場合、その形状に特に限定はなく、円筒型、積層型、コイン型等、種々の形状を採用することができる。いずれの形状を採る場合であっても、正極および負極にセパレータを挟装させ電極体とし、正極集電体および負極集電体から外部に通ずる正極端子および負極端子までの間を、集電用リード等を用いて接続した後、この電極体を電解液とともに電池ケースに密閉して電池となる。
以下、実施例及び比較例により本発明の実施形態を具体的に説明する。
<バインダーの調製>
酢酸銅2gを純水20mlに溶解させ、それを撹拌しながら0.5NのNaOH水溶液10mlを滴下した。全量滴下後に2時間撹拌し、析出した沈殿を濾別して10mlの純水で2回洗浄し10mlのアセトンでリンスした後、真空下で3時間乾燥して青色の塩基性酢酸銅(化1式参照)の粉末1gを得た。
次に、数平均分子量が500,000のポリアクリル酸(化2式参照)0.8gを9.2gのN-メチル-2-ピロリドン(NMP)に溶解させた。この溶液に上記の塩基性酢酸銅粉末1mgをさらに溶解させ、撹拌しながら60℃で3時間保持して反応させ、化3式に示すポリアクリル酸−塩基性酢酸銅反応物のNMP溶液を調製した。ポリアクリル酸−塩基性酢酸銅反応物では、ポリアクリル酸の一部の側鎖のカルボキシル基に塩基性酢酸銅が結合し、その末端にはアセチル基を有していると考えられる。
<負極活物質の調製>
濃度46質量%のHF水溶液3mlと、濃度36質量%のHCl水溶液300mlとの混合溶液20mlを氷浴中で0℃とし、アルゴンガス気流中にてそこへ5gの二ケイ化カルシウム(CaSi2)を加えて撹拌した。発泡が完了したのを確認した後に室温まで昇温し、室温でさらに2時間撹拌した後、蒸留水20mlを加えてさらに5分間撹拌した。このとき黄色粉末が浮遊した。
得られた混合溶液を濾過し、残渣を10mlの蒸留水で洗浄した後、10mlのエタノールで洗浄し、真空乾燥して5.5gの層状ポリシランを得た。この層状ポリシランを、O2を1体積%以下の量で含むアルゴンガス中にて500℃で1時間保持する熱処理を行い、ナノシリコン凝集粒子からなる粉末を得た。この粉末に対してCuKα線を用いたX線回折測定(XRD測定)を行った。XRD測定によれば、Si微粒子由来と考えられるハローを観測した。Si微粒子は、X線回折測定結果の(111)面の回折ピークの半値幅からシェラーの式より算出される結晶粒径が約7nmであった。
このナノシリコン粉末1gに対してフラン0.5mlを3時間真空含浸させ、濃塩酸を加えた。濃塩酸添加後、60℃で3時間処理してフランを重合させ、濾過、洗浄して濃塩酸を除去した。得られた粉末を3時間真空乾燥し、その後、アルゴンガス中にて500℃で焼成し、フラン重合物を炭素化して灰色粉末を得た。灰色粉末の収率は、ナノシリコン粉末1gに対して1.22gであった。なお本実施例において、ケイ素と炭素との組成比は重量比でSi/C=82/18であった。
得られた灰色粉末のSEM写真を図1に示す。図1から、μmオーダーのナノシリコン凝集粒子が、最大厚み約200nmの炭素層に包まれた複合体構造が確認される。またこの灰色粉末と、灰色粉末の製造に用いたナノシリコン粉末の比表面積をそれぞれBET法により測定した結果を表1に示す。
ナノシリコン凝集粒子を炭素層で被覆することで、比表面積が小さくなっていることがわかる。
この灰色粉末に対して、CuKα線を用いたX線回折測定(XRD測定)を行った。その結果、灰色粉末にはアセチレンブラックに存在する2θ=26°のピーク(結晶性炭素ピーク)が認められず、灰色粉末に含まれる炭素は非晶質であることがわかった。また半値幅から、灰色粉末中のSiの粒径は10nm以下であることもわかった。
<リチウムイオン二次電池の調製>
得られた灰色粉末45質量部と、天然黒鉛粉末40質量部と、アセチレンブラック5質量部と、上記で得られたポリアクリル酸−塩基性酢酸銅化合物のNMP溶液10質量部とを混合してスラリーを調製した。このスラリーを、厚さ約20μmの電解銅箔(集電体)の表面にドクターブレードを用いて塗布し、銅箔上に負極活物質層を形成した。その後、ロールプレス機により、集電体と負極活物質層を強固に密着接合させた。これを100℃で2時間真空乾燥し、負極活物質層の厚さが16μmの負極を形成した。
上記の手順で作製した負極を評価極として用い、リチウムイオン二次電池(ハーフセル)を作製した。対極は金属リチウム箔(厚さ500μm)とした。
対極をφ13mm、評価極をφ11mmに裁断し、セパレータ(ヘキストセラニーズ社製ガラスフィルター及びCelgard社製「Celgard2400」)を両者の間に介装して電極体電池とした。この電極体電池を電池ケース(CR2032型コイン電池用部材、宝泉株式会社製)に収容した。電池ケースには、エチレンカーボネートとジエチルカーボネートとを1:1(体積比)で混合した混合溶媒にLiPF6を1Mの濃度で溶解した非水電解液を注入し、電池ケースを密閉してリチウムイオン二次電池を得た。
<バインダーの調製>
酢酸銅2gを純水20mlに溶解させ、それを撹拌しながら0.5NのNaOH水溶液20mlを滴下した。全量滴下後に2時間撹拌し、析出した沈殿を濾別して10mlの純水で2回洗浄し10mlのアセトンでリンスした後、真空下で3時間乾燥して水酸化銅(化4式参照)の粉末1.5gを得た。この粉末の色調は、実施例1の塩基性酢酸銅粉末より緑がかった青色であった。
次に、実施例1と同様のポリアクリル酸0.8gを9.2gのN-メチル-2-ピロリドン(NMP)に溶解させた。この溶液に上記の水酸化銅粉末1mgをさらに溶解させ、撹拌しながら60℃で反応させ、化5式に示すポリアクリル酸−銅反応物のNMP溶液を調製した。ポリアクリル酸−銅反応物では、ポリアクリル酸の二分子が銅(Cu)によって架橋された構造となっていると考えられる。
<リチウムイオン二次電池の調製>
ポリアクリル酸−塩基性酢酸銅反応物のNMP溶液に代えてポリアクリル酸−銅反応物のNMP溶液を同量用いたこと以外は実施例1と同様にして、リチウムイオン二次電池を得た。
<バインダーの調製>
酢酸ニッケル2.1gを純水20mlに溶解させ、それを撹拌しながら0.5NのNaOH水溶液10mlを滴下した。全量滴下後に2時間撹拌し、析出した沈殿を濾別して10mlの純水で2回洗浄し10mlのアセトンでリンスした後、真空下で12時間乾燥して塩基性酢酸ニッケル[Ni(OH)(OOCCH3)]の粉末1.2gを得た。
次に、実施例1と同様のポリアクリル酸0.8gを9.2gのN-メチル-2-ピロリドン(NMP)に溶解させた。この溶液に上記の塩基性酢酸ニッケル粉末1mgをさらに溶解させ、撹拌しながら60℃で3時間保持して反応させ、化6式に示すポリアクリル酸−塩基性酢酸ニッケル反応物のNMP溶液を調製した。
<リチウムイオン二次電池の調製>
ポリアクリル酸−塩基性酢酸銅反応物のNMP溶液に代えてポリアクリル酸−塩基性酢酸ニッケル反応物のNMP溶液を同量用いたこと以外は実施例1と同様にして、リチウムイオン二次電池を得た。
[比較例1]
ポリアクリル酸−塩基性酢酸銅化合物のNMP溶液に代えて、実施例1と同様のポリアクリル酸0.8gを9.2gのN-メチル-2-ピロリドン(NMP)に溶解させたポリアクリル酸のNMP溶液を同量用いたこと以外は実施例1と同様にして、リチウムイオン二次電池を得た。
<電池特性試験1>
実施例1〜3及び比較例1のリチウムイオン二次電池について、温度25℃、電流0.2mAの条件で充電した際の初期の充電容量を測定し、結果を表2に示す。また電流0.2mAの条件で放電させた際の初期の放電容量を測定し、結果を表2に示す。さらに初期効率(初期充電容量/初期放電容量)を算出し、結果を表2に示す。
また、実施例1〜3及び比較例1のリチウムイオン二次電池を用い、温度25℃、電流0.2mAの条件下において1Vまで充電し、10分間休止した後、電流0.2mAの条件で0.01Vまで放電し、10分間休止するサイクルを10サイクル繰り返すサイクル試験を行った。そして1サイクル目の充電容量に対する10サイクル目の充電容量の割合である容量維持率と、10サイクル後の充電容量に対する10サイクル後の放電容量の割合であるクーロン効率を測定し、結果を表2に示す。
実施例1〜3のリチウムイオン二次電池は、いずれも比較例1に比べて初期効率が向上している。これは、銅又はニッケルの価数変化によって電子の授受が効率よく行われたためと考えられる。また実施例2のリチウムイオン二次電池は、初期効率が最も高いものの、他の電池特性が低い。これは、化5式に示されるように、ポリアクリル酸の主鎖どうしが銅によって架橋しているために、凝集が生じてバインダーの偏在が起こったためと考えられる。したがってサイクル特性を重視した場合には、本発明のバインダーの製造に用いる金属元素の化合物としては、水酸化物より塩基性酢酸塩の方が好ましく、側鎖の末端にアシル基を有するものが好ましい。
本発明の二次電池負極は、二次電池、電気二重層コンデンサ、リチウムイオンキャパシタなどに利用できる。また本発明のリチウムイオン二次電池は、電気自動車やハイブリッド自動車のモータ駆動用、パソコン、携帯通信機器、家電製品、オフィス機器、産業機器などに利用される非水系二次電池として有用であり、特に、大容量、大出力が必要な電気自動車やハイブリッド自動車のモータ駆動用に好適に用いることができる。
本発明は、リチウムイオン二次電池に用いられる負極用のバインダーとリチウムイオン二次電池負極及びリチウムイオン二次電池に関するものである。
上記課題を解決する本発明のリチウムイオン二次電池負極用バインダーの特徴は、ポリアクリル酸と、塩基性酢酸銅、塩基性酢酸ニッケル又は水酸化銅から選ばれる少なくとも一種の金属化合物と、の反応物からなることにある。
本発明のリチウムイオン二次電池負極用バインダーは、ポリアクリル酸と、塩基性酢酸銅、塩基性酢酸ニッケル又は水酸化銅から選ばれる少なくとも一種の金属化合物と、の反応物からなる。この金属元素を含むことで、通常のポリマーのみからなるバインダーに比べて導電性が向上するため、リチウムイオン二次電池の初期効率が向上する。さらにこの金属元素は価数変化が可能であるので、充放電における電位変化に追従して電子の授受が生じ、本発明の負極を用いたリチウムイオン二次電池は初期効率がさらに向上するとともにサイクル後の効率も向上する。
本発明のリチウムイオン二次電池負極用バインダーは、ポリアクリル酸と、塩基性酢酸銅、塩基性酢酸ニッケル又は水酸化銅から選ばれる少なくとも一種の金属化合物と、の反応物からなる。
金属化合物は、ポリアクリル酸100質量部に対して0.01〜10質量部含まれていることが望ましい。金属化合物が0.01質量部より少ないと金属元素を含有させた効果の発現が困難となり、金属化合物が10質量部を超えるとポリマーと金属化合物の反応物の粘度が高くなりすぎて負極活物質層を形成するためのスラリーの調製が困難となる。
ポリアクリル酸と金属化合物との反応物としては、塩化合物、錯化合物などが例示される。
ポリアクリル酸と金属化合物とを反応させて反応物を得るには、両者を混合して加熱する方法、ポリアクリル酸と金属化合物の両方を溶解可能な溶媒に溶解させて加熱する方法などを用いることができる。分子レベルで均一な反応物を得るためには、後者の方法のように両者が液状で混合された状態で加熱する方法が好ましい。
本発明のリチウムイオン二次電池負極は、リチウムイオン二次電池、リチウムイオンキャパシタなどに利用できる。また本発明のリチウムイオン二次電池は、電気自動車やハイブリッド自動車のモータ駆動用、パソコン、携帯通信機器、家電製品、オフィス機器、産業機器などに利用される非水系二次電池として有用であり、特に、大容量、大出力が必要な電気自動車やハイブリッド自動車のモータ駆動用に好適に用いることができる。

Claims (9)

  1. 少なくとも一部の側鎖にカルボキシル基をもつポリマーと、銅(Cu)、ニッケル(Ni)及びコバルト(Co)から選ばれる少なくとも一種の金属元素の化合物と、の反応物からなることを特徴とする二次電池負極用バインダー。
  2. 前記ポリマーはポリアクリル酸である請求項1に記載の二次電池負極用バインダー。
  3. 前記反応物は前記側鎖の末端にアシル基を有する請求項1又は請求項2に記載の二次電池負極用バインダー。
  4. 前記金属元素は前記ポリマー100質量部に対して0.01〜10質量部含まれている請求項1〜3のいずれかに記載の二次電池負極用バインダー。
  5. 集電体と、該集電体の表面に形成された負極活物質層と、からなり、該負極活物質層は、負極活物質と、請求項1〜4のいずれかに記載のバインダーと、を含むことを特徴とする二次電池負極。
  6. 前記負極活物質は、ケイ素原子で構成された六員環が複数連なった構造をなし組成式(SiH)nで示される層状ポリシランを熱処理することで製造されたナノシリコンからなる凝集粒子である請求項5に記載の二次電池負極。
  7. 非晶質の炭素からなり前記凝集粒子の少なくとも一部を覆って複合化された炭素層を有する請求項6に記載の二次電池負極。
  8. ケイ素と炭素との組成比は重量比でSi/C=3/1〜20/1である請求項7に記載の二次電池負極。
  9. 請求項5〜8のいずれかに記載の二次電池負極を有することを特徴とするリチウムイオン二次電池。
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