JP2014211520A - 定着装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】定着ベルトからシートを剥離すると共に、剥離に伴う定着ベルトの耐久性および走行安定性の劣化を抑制できる定着装置およびこれを用いた画像形成装置を提供する。
【解決手段】定着装置で、シート上のトナー像をニップ部にて定着する無端状の定着ベルトと、前記定着ベルトに対向配置され前記定着ベルトとともに前記ニップ部を形成する対向ローラと、前記定着ベルトを前記対向ローラに向けて押圧するとともに前記定着ベルトを回転可能に支持する支持ローラと、前記支持ローラよりもシート搬送方向下流側であって前記定着ベルトからシートを剥離させる位置において前記定着ベルトを前記対向ローラに向けて押圧する剥離パッドと、を有し、前記剥離パッドの断面形状は、前記定着ベルトを前記対向ローラとの間で挟み込む領域のシート搬送方向下流端からこれよりもシート搬送方向下流側において前記定着ベルトと再接触する位置に至るまで直線状とされている。
【選択図】図1

Description

本発明は、シート上のトナー像を定着する定着装置に関する。この定着装置は、例えば、複写機、プリンタ、ファクシミリ、あるいはそれらの複合機等に代表される、電子写真プロセスや静電記録プロセス等を採用した画像形成装置において使用され得る。
従来、定着装置で、加熱ロール等の加熱定着部材に対してロール状やベルト状の加圧部材を圧接配置し、加熱定着部材と加圧部材との間に形成された圧接部(ニップ部)にトナー画像を担持した用紙(シート)を通過させるものが知られる。このような定着装置により、用紙上の未定着トナー画像が、加熱・加圧されることで用紙上に定着される。
また、近年、この種の定着装置が用いられる画像形成装置、特にフルカラー画像形成装置においては、トナー画像の発色性や画像品質を向上させるという観点から、所謂コート紙が用いられるようになってきている。即ち、記録用紙として用紙の表面または表裏両面に合成ゴムや合成樹脂等からなるコート層を数μm〜数十μmの厚さにコーティングした紙が用いられるようになってきている。
このようなコート紙上に形成された未定着トナー画像を、上記の定着装置において定着させる場合、コート紙に必要以上の熱量が加えられると、以下の現象を発生することがある。即ち、コート紙上のコート層が部分的に押し上げられる、所謂ブリスタと呼ばれる現象(以下、単にブリスタという)が発生することがある。
この現象は、コート紙の内部において、コート紙中に含まれる水分が、定着装置の加熱定着部材によって加熱されて気化、膨張し水蒸気となったときに、この水蒸気の外部への放散がコート紙表面のコート層により阻害されることが要因となる。そして、この水蒸気が、コート層の薄い部分やコート層が欠如している部分から集中的に外部に放出されてしまうために生ずるものである。よって、このようなブリスタが発生すると、コート紙表面の平滑性が失われ、コート紙上の画像に画質障害を生じることとなる。
また、上記ブリスタと呼ばれる現象以外にも、例えばフルカラー画像のように密度の高い未定着トナー画像が形成されたコート紙を上記定着装置によって定着させる場合、コート紙上のトナー層に気泡が発生することもある。所謂トナーブリスタと呼ばれる現象(以下、単にトナーブリスタという)である。
この現象は、トナーに含まれる水分やコート紙中に含まれる水分が、定着装置の加熱定着部材によって加熱されて気化、膨張し水蒸気となったときに、これらの水蒸気の用紙裏面側への放散がコート紙表面のコート層によって阻害されることが要因となる。そして、これら水蒸気が、コート紙上のトナー層が存在する部位から集中的に外部に放出されてしまうために生ずるものである。従って、このようなトナーブリスタが発生した場合にも、ブリスタと同様に、コート紙上の画像に画質障害を生じることとなる。
上記のブリスタやトナーブリスタを防止し得る技術的手段としては、以下に示す2つの方法が既に知られている。第1の方法は、定着動作を高温且つ短時間で行う方法であり、これは、記録用紙の表面だけ加熱して記録用紙内部まで熱が伝わらない内に定着動作を完了させることにより、記録用紙内部の水分の蒸発を抑え、ブリスタやトナーブリスタの発生を防止するものである。また、第2の方法は、記録用紙の裏面側に加える熱量を少なくする方法であり、第1の方法と同様に記録用紙内部の水分の蒸発を抑え、ブリスタやトナーブリスタの発生を防止するものである。
しかしながら、第1の方法を採用する場合には、定着装置を高温に維持する必要があり、その分だけ定着装置の消費電力が増大してしまう。特に、高速の定着装置への適用時には、更に消費電力の増大をきたすこととなり、消費電力に制限のある高速の定着装置への適用が難しいという問題があった。
また、第2の方法の場合には、第1の方法と比較して加熱時間は相対的に長い時間が必要とされるものの、用紙裏面側の温度を低く抑えることで消費電力を抑えることができ、従って高速の定着装置への適用も可能となる。このような加熱時間を長くすることができ且つ定着速度を高速化できる定着装置として、複数のロールに張架された無端ベルト状の定着ベルトを加熱ロールに圧接させる所謂ベルトニップ方式の定着装置が知られている。
しかしながら、このような定着ベルトを用いた定着装置においては、定着ベルトの熱によってトナー像が溶融した際に、トナー像が接着作用を及ぼし記録紙と定着ベルトとの間に付着力が作用するため、定着ベルト表面から記録紙を剥離する機構を設ける必要がある。このような記録紙を定着ベルト表面から剥離する機構としては、従来よりニップ部の下流側に定着ベルトに当接して分離爪を配設する他、エンドレスベルトからシートを損傷させることなく剥離する以下に示す剥離部材を設ける構成が知られる。
即ち、定着ロールに張架されるベルト部材と、定着ロールに押圧するように配置された加圧部材と、定着ロールと加圧部材との圧接部の下流側近傍にて、ベルト部材の外表面を加圧部材に押圧する剥離部材を設ける(特許文献1)。
また、定着ロールと加熱ロールとに張架された定着ベルトに対して加圧ロールが圧接して配設された構成の定着装置においては、以下の構成が知られる。即ち、ニップ部の出口部(最下流部)に対応した位置の定着ベルトの内側に、かかる出口部における定着ベルトの曲率を大きく設定するための固定部材を設け、定着ベルトの曲率の変化により記録紙を剥離する(特許文献2)。
特開2007−65092号公報 特開2003−5566号公報
しかしながら、上記従来技術においては、定着ベルトが剥離部材と加圧ローラとにより形成される分離ニップの出口から解放される際に、剥離部材の湾曲したコーナー部に定着ベルトが摺擦しながら大きく進行経路を変化させられる。そのため、摺動抵抗が著しく増大してしまう懸念がある。
具体的には、比較例として示す図8で、定着ロール11及び剥離部材としての剥離パッド30が定着ベルト10を介して加圧ロール16と加圧され、ニップ部Nを生じる。ニップ部Nに関しては、先ず定着ベルト10が定着ロール11に巻き付けられた領域内において、加圧ロール16が定着ベルト10の外周面に圧接することにより、ロールニップ部N1が形成されている。そして、ロールニップ部N1の下流側直近には、ロールニップ部N1に連続して、定着ベルト10が加圧ロール16表面と剥離パッド31に挟持された剥離ニップ部N2が形成されている。
剥離ニップ部N2を通過した位置(図8に示すX1点)以降の剥離パッド30は、図8に示すように半径Rの湾曲した形状(凸面形状)を備え、Y1点まで定着ベルト10内面と接触した後、離間する。しかしながら、X1点からY1点までの領域すなわちZ1は、定着ベルト10が走行経路を急激に変化させられる領域であるため、剥離パッド30表面と定着ベルト10内面との摺動抵抗が定着ベルト10の走行安定性にとって無視できないものとなる。
即ち、定着ベルトが著しい摺動抵抗を受けると、以下のような課題が顕著となる。
(1)定着ベルト内面の摩耗が促進されてしまう。
(2)定着ベルト内面の摩耗により摩耗粉が更なる摩耗促進を発生させてしまう。
(3)定着ベルト摩耗そのものにより機械的耐久性を著しく損なってしまう。
(4)定着ベルトがスリップスティック等の搬送不良を起こして用紙の画像スリップを発生してしまう。
なお、摺動抵抗低減のために、剥離部材の湾曲したコーナー部における定着ベルトの進行経路変化を小さくしてしまうと、シート(用紙)の分離がされにくくなる。
本発明の目的は、上記従来技術における課題を解決し、定着ベルトからシートを剥離すると共に、剥離に伴う定着ベルトの耐久性および走行安定性の劣化を抑制できる定着装置およびこれを用いた画像形成装置を提供することにある。
上記目的を達成するため、本発明に係る定着装置の代表的な構成は、シート上のトナー像をニップ部にて定着する無端状の定着ベルトと、前記定着ベルトに対向配置され前記定着ベルトとともに前記ニップ部を形成する対向ローラと、前記定着ベルトを前記対向ローラに向けて押圧するとともに前記定着ベルトを回転可能に支持する支持ローラと、前記支持ローラよりもシート搬送方向下流側であって前記定着ベルトからシートを剥離させる位置において前記定着ベルトを前記対向ローラに向けて押圧する剥離パッドと、を有し、前記剥離パッドの断面形状は、前記定着ベルトを前記対向ローラとの間で挟み込む領域のシート搬送方向下流端からこれよりもシート搬送方向下流側において前記定着ベルトと再接触する位置に至るまで直線状とされていることを特徴とする。
また、本発明に係る定着装置の他の代表的な構成は、シート上のトナー像をニップ部にて定着する無端状の定着ベルトと、前記定着ベルトに対向配置され前記定着ベルトとともに前記ニップ部を形成する対向ローラと、前記定着ベルトを前記対向ローラに向けて押圧するとともに前記定着ベルトを回転可能に支持する支持ローラと、前記支持ローラよりもシート搬送方向下流側であって前記定着ベルトからシートを剥離させる位置において前記定着ベルトを前記対向ローラに向けて押圧する剥離パッドと、を有し、前記剥離パッドは、前記定着ベルトを前記対向ローラとの間で挟み込む領域のシート搬送方向下流端の第1の位置からこれよりもシート搬送方向下流側で前記定着ベルトと再接触する第2の位置に至るまでの領域において、前記定着ベルトから離間する形状とされていることを特徴とする。
本発明によれば、定着ベルトからシートを剥離すると共に、剥離に伴う定着ベルトの耐久性および走行安定性の劣化を抑制できる。
本発明の実施形態に係る定着装置のニップ部を示す断面図である。 本発明の実施形態に係る定着装置を搭載した電子写真プリンタを示す断面図である。 第1の実施形態に係る定着装置の概略構成を示す断面図である。 第1の実施形態に係る定着装置の全体外観を示す外観斜視図である。 第1の実施形態に係る定着装置の定着ベルト周辺の構成を示す斜視図である。 第1の実施形態に係る定着装置の剥離パッド周辺の構成を示す斜視図である。 第1の実施形態に係る定着装置の剥離パッド周辺の構成を示す軸方向断面図である。 比較例の定着装置におけるニップ部の詳細を示す断面図である。 第2の実施形態に係る定着装置のニップ部の詳細を示す断面図である。 (a)、(b)は第1、第2の実施形態に係る定着装置のニップ部内のニップ圧を示すグラフである。 (a)は第1、第2の実施形態に係る定着装置を搭載した電子写真プリンタの温度制御動作を表すフローチャート、(b)は第1、第2の実施形態に係る定着装置を搭載したカラー電子写真プリンタの定着温度制御動作に関連する装置ブロック図である。
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して詳細に説明する。
《第1の実施形態》
(画像形成装置)
図2は、本発明の実施形態に係る定着装置を搭載した画像形成装置(カラー電子写真プリンタ500(以下、プリンタ500))の概略構成図であり、被転写材であるシートの搬送方向に沿った断面図である。シートはトナー像が形成されるものであり、具体的には普通紙、普通紙の代用品である樹脂製のシート状のもの、厚紙、オーバーヘッドプロジェクター用などである。
図2に示すプリンタは、Y(イエロ)、M(マゼンタ)、C(シアン)、Bk(ブラック)の各色の画像形成部510を備えている。
プリンタ500には、パーソナルコンピュータ等の外部機器からR(レッド)、G(グリーン)、B(ブルー)の各色信号が入力する。これらの色信号は、装置内のプリンタコントローラによって、コードデータがC(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)、B(ブラック)の夫々の画像信号(ドットデータ)に変換される。
そして、これらの画像データは、それぞれ光走査装置としてのレーザスキャナ513に入力される。そして、これらのレーザスキャナ513からは、各画像データに応じて変調された光束である光ビームが射出され、これらの光ビームによって感光体である感光ドラム511の感光面(被走査面)が主走査方向(紙面垂直方向)に走査される。
感光ドラム511は、帯電ローラ512によってあらかじめ帯電されており、感光ドラム511は、レーザスキャナ513によって、静電潜像が形成される。潜像は、現像器514によってトナー像になり、感光ドラム511のトナー像は、像担持体である例えば中間転写ベルト531に順次転写される。
一方、シートPは、給紙カセット520から、1枚ずつ送り出されてレジストローラ対523に送り込まれる。レジストローラ対523は、シートPを一旦受け止めて、シートが斜行している場合、真っ直ぐに直す。そして、レジストローラ対523は、中間転写ベルト531上のトナー像と同期を取って、シートを中間転写ベルト531と二次転写ローラ535との間に送り込む。
中間転写ベルト上のカラーのトナー像は、転写器(例えば二次転写ローラ535)によってシートPに転写される。その後、シート上のトナー像Tは、シートが定着装置100によって、加熱加圧されることでシートに定着された後、フェイスアップ(トナー像が上側)で排紙トレイ565に排出される。
なお、制御部570は、後述する定着装置の構成部材の表面温度を制御するものである。
(定着装置)
1)全体構成
図3で、本実施形態に係る定着装置100は、無端状の定着ベルト110、定着ベルト110を張架しながら回転駆動する定着ロール111(支持ローラで第1の回転体)、内側から定着ベルト110を張架する内部加熱ロール112(第2の回転体)を備える。また、定着ベルト110と加圧ロール(対向ローラ)162とが圧接する領域であるニップ部Nの下流側で、内部加熱ロール112より上流側において、定着ベルト110を張架する出口張架ロール115(第3の回転体)を備える。
また、外側から定着ベルト110にテンションを付与するための外部加熱ロール113(第4の回転体)を備える。更に、定着ベルト110と加圧ロール162とが圧接する領域であるニップ部N内のシート搬送方向下流側であって、定着ロール111の近傍位置に配置された剥離部材としての剥離パッド301を備える。
ここで、用紙(シート)Pは、図3に示すように入り口ガイドに案内されてニップ部Nに進入し、トナー像Tが加熱、加圧されることで用紙Pに定着される。そして、定着後に内排紙下ガイド204、内排紙上ガイド205に案内されて内排紙下ローラ202、内排紙上ローラ203に挟持、搬送される。その後、図2に示す外排紙ローラ対540により挟持、搬送された後、フェイスアップ(トナー像が上側)で排紙トレイ565に排出される。
2)定着ベルト
定着ベルト110は、周長約500mm、幅350mmのエンドレスベルトであり、厚さ100μmのポリイミド樹脂で形成された基層と、基層の表面に積層された厚さ200μmのシリコーンゴムからなる弾性層を備える。更に、弾性層上に被覆された厚さ30μmのテトラフルオロエチレン−ペルフルオロアルキルビニルエーテル共重合体樹脂(PFA)チューブからなる離型層を備える。
3)定着ロール
定着ベルト110の内面を回転可能に支持(回転支持)する支持部材としての定着ロール111は、外径60mm、厚さ6mmのアルミニウムからなる円筒状の芯金を備える。そして、定着ロール111は、芯金表面の金属磨耗を防止する保護層として、厚さ70μmの耐熱性樹脂(フッ素樹脂)が円筒状の芯金表面に被覆され、円筒状のハードロールを構成する(弾性層は被覆されていない)。そして、定着ロール111は、図示しない駆動モータからの駆動力を受けて、400mm/sの周速度で図3の矢印A方向に回転する。
また、定着ロール111の内部には、加熱源として定格1000Wのハロゲンヒータ111aが配設されている。そして、定着ロール111の表面に接触するように配置された温度センサ117が検知する値に基づき、制御部570(図2)が定着ロール111の表面温度を180℃に制御している。ここで、温度センサ117は、図11(a)のフローチャート及び図11(b)のブロック図に示す温度センサであり、ハロゲンヒータ111aは図11(a)のフローチャート及び図11(b)のブロック図に示すハロゲンヒータである。
制御部570(図2)は、図11(b)に示すように、温度センサ117からの温度情報を基に、ヒータコントローラ、ヒータドライバを介してハロゲンヒータ111aへの制御信号を送る。そして、温度制御動作を表すフローチャートである図11(a)に示すように、ハロゲンヒータ111aへの電力印加を開始した後(S11−1)、温度センサ117から伝達される温度が既定値以上に達したか否かを監視する。そして、既定値以上に達したら、ハロゲンヒータ111aへの電力印加を停止する(S11−2)。その後、画像形成処理が終了するまで、ハロゲンヒータ111aへの電力印加制御を続行する。
4)内部加熱ロール
内部加熱ロール112は、定着ロール111と同様に外径60mm、厚さ6mmのアルミニウムからなる円筒状の芯金に、芯金表面の金属磨耗を防止する保護層として、厚さ70μmのフッ素樹脂が皮膜して形成されたハードロールである。また、その内部には加熱源として定格1000Wのハロゲンヒータ112aが配設され、制御部570(図2)が図11(a)のフローチャート及び図11(b)のブロック図に示す温度センサが検知する値に基づき表面温度を200℃に制御している点も同様である。
即ち、ハロゲンヒータ112aは、図11(a)のフローチャート及び図11(b)のブロック図に示すハロゲンヒータである。制御部570(図2)は、図11(b)に示すように、温度センサ117からの温度情報を基に、ヒータコントローラ、ヒータドライバを介してハロゲンヒータ112aへの制御信号を送る。そして、温度制御動作を表すフローチャートである図11(a)に示すように、ハロゲンヒータ112aへの電力印加を開始した後(S11−1)、温度センサ117から伝達される温度が既定値以上に達したか否かを監視する。
そして、既定値以上に達したら、ハロゲンヒータ112aへの電力印加を停止する(S11−2)。その後、画像形成処理が終了するまで、ハロゲンヒータ112aへの電力印加制御を続行する。このように、内部加熱ロール112は、定着ベルト110を張架する機能(第2の回転体としてステアリングローラを構成)と共に、定着ベルト110を内周面側から加熱する機能をも併せ持っている。
5)外部加熱ロール
外部加熱ロール113は、外径35mm、肉厚3.5mmのアルミニウムで形成された円筒状ロールである。また、外部張架ロール113の表面には、厚さ20μmのPFAからなる離型層が形成されている。この離型層は、定着ベルト110の外周面からの残留トナーや紙粉が外部加熱ロール113表面に付着することを防止するためのものである。外部加熱ロール113の内部には、加熱源としての定格1000Wのハロゲンヒータ113aが配設されており、第2の温度センサである温度センサ118と制御部570(図2)とによって、表面温度が200℃に制御されている。
この温度センサ118は、図11(a)のフローチャート及び図11(b)のブロック図に示す温度センサであり、ハロゲンヒータ113aは図11(a)のフローチャート及び図11(b)のブロック図に示すハロゲンヒータである。ハロゲンヒータ113aは、図11(a)のフローチャート及び図11(b)のブロック図に示すハロゲンヒータである。
制御部570(図2)は、図11(b)に示すように、温度センサ118からの温度情報を基に、ヒータコントローラ、ヒータドライバを介してハロゲンヒータ113aへの制御信号を送る。そして、温度制御動作を表すフローチャートである図11(a)に示すように、ハロゲンヒータ113aへの電力印加を開始した後(S11−1)、温度センサ118から伝達される温度が既定値以上に達したか否かを監視する。そして、既定値以上に達したら、ハロゲンヒータ113aへの電力印加を停止する(S11−2)。その後、画像形成処理が終了するまで、ハロゲンヒータ113aへの電力印加制御を続行する。
また、外部加熱ロール113は、図3に示すように圧縮コイルバネを用いた外部加熱ロール加圧バネ250の矢印B方向への加圧力により、定着ベルト110表面に矢印C方向へ加圧されている。このように、定着ベルト110は外部加熱ロール113によりテンションが付与され、定着ベルト110に作用するテンションは約50N〜100N程度の範囲で選択されることが望ましい。従って、外部加熱ロール113は、定着ベルト110にテンションを付与する機能と共に、定着ベルト110を外周面側から加熱する機能を併せ持っている。
6)出口張架ロール
出口張架ロール115は、外径12mmのステンレスで形成された中実円筒状ロールであり、後述する剥離パッド301の定着ベルト110進行方向下流側近傍に回転可能に支持、配置されている。
7)加圧ロール
定着ベルトを介して定着ロール111に対向配置され、定着ベルトとともに後述するロールニップ部を形成する対向部材としての加圧ロール162は、直径80mm、長さ350mmのアルミニウムからなる円柱状芯金162aを備える。そして、その表面にゴム硬度30°(ビッカース硬度)のシリコーンゴムからなる厚さ5mmの弾性層162bと、膜厚100μmのPFAチューブからなる離型層162cとが積層され、弾性ロール(ソフトロール)を構成する。
また、内部には、加熱源として定格1000Wのハロゲンヒータ162dが配設され、温度センサ119(図3)が検知する値に基づき制御部570(図2)が、表面温度を100℃に制御する。
この温度センサ119は、図11(a)のフローチャート及び図11(b)のブロック図に示す温度センサであり、ハロゲンヒータ162dは図11(a)のフローチャート及び図11(b)のブロック図に示すハロゲンヒータである。
制御部570(図2)は、図11(b)に示すように、温度センサ119からの温度情報を基に、ヒータコントローラ、ヒータドライバを介してハロゲンヒータ162dへの制御信号を送る。そして、温度制御動作を表すフローチャートである図11(a)に示すように、ハロゲンヒータ162dへの電力印加を開始した後(S11−1)、温度センサ119から伝達される温度が既定値以上に達したか否かを監視する。そして、既定値以上に達したら、ハロゲンヒータ162dへの電力印加を停止する(S11−2)。その後、画像形成処理が終了するまで、ハロゲンヒータ162dへの電力印加制御を続行する。
このような加圧ロール162は、定着ベルト110を介して定着ロール111に加圧される。これにより、定着ロール111が図3の矢印A方向へ回転するのに伴い、定着ロール111に従動して図3の反時計方向に回転する。加圧ロール162の回転時の表面周速度は、定着ロール111の表面周速度と同じ400mm/sである。
8)剥離部材
定着ベルトからシート(記録紙)を剥離するために設けられる剥離部材としての剥離パッド301は、略平板形状の一端が略円弧状に形成された部材であり、例えばステンレス等の金属のように剛性の高い材料から構成される。更に、その表面には、定着ベルト110内面との摩擦摺動抵抗を低減するための10μm程度のPFAからなる離型層がコーティングにより形成される。そして、剥離パッド301は、図1に示すように加圧ロール162が定着ベルト110を介して定着ロール111に圧接される領域すなわちロールニップ部N1の下流側近傍位置において、定着ロール111の軸方向全域において配置される。
8−a)剥離部材が存在しない領域(ロールニップ部N1)
図1で、定着ロール111及び剥離パッド301が定着ベルト110を介し加圧ロール162に加圧されて生じるニップ部Nは、ロールニップ部N1(第1のニップ部)と、剥離ニップ部N2(第2のニップ部で、後述する剥離部材の第1領域)と、で形成される。そして、ロールニップ部N1は、定着ベルト110が定着ロール111に巻き付けられた領域内において、加圧ロール162の表層である弾性層162bが変形して定着ベルト110の外周面に圧接することにより形成されている。このロールニップ部N1は、剥離部材が存在しない領域である。
ロールニップ部N1では、加圧ロール162側がニップを形成するロールとして機能し、定着ロール111には凹みが殆ど生じず、加圧ロール162表面のみが大きく凹んだ状態が形成される。ロールニップ部N1においては、定着ベルト110が巻きつけられている側の定着ロール111は円筒形状が維持されているため、定着ベルト110は、定着ロール111表面の円周面に沿って、進行速度を一定に維持しながらロールニップ部N1を通過する。それにより、定着ベルト110がロールニップ部N1を通過する際にも、定着ベルト110にはシワや歪みが極めて発生し難い。
その結果、ロールニップ部N1を用紙Pが通過する際に、定着画像に定着ベルト110のシワや歪みに起因するトナー像の乱れの発生が抑えられ、良質の定着画像を安定的に提供することができる。なお、本実施形態の定着装置100では、ロールニップ部N1は、定着ベルト110の進行方向に沿って20mmの幅に設定されている。
8−b)剥離部材の第1領域(剥離ニップ部N2)
図1で、ロールニップ部N1の下流側近傍には、剥離パッド301が配設されており、剥離パッド301は前述のように定着ベルト110を加圧ロール162表面に押圧している。即ち、剥離部材としての剥離パッド301は、ロールニップ部N1(第1のニップ部)より下流側において、加圧ロール162との間で剥離ニップ部N2(第2のニップ部)を形成する定着ベルト110に接触する(第1領域)。剥離ニップ部N2において、剥離パッド301の押圧面は、加圧ロール162の外径に合わせて円弧形状となっている。
ここで、ロールニップ部N1から剥離ニップ部N2にかけてのニップ圧の変化を図10(a)を用いて説明する。用紙(シート)Pがロールニップ部N1に進入すると、図10(a)に示すように、徐々にニップ圧を増していき、ピーク圧P1を経て減少していく。その後、定着ロール111表面と剥離パッド301先端の僅かな隙間のために、ニップ圧は最小値P3にまで低下するが、剥離パッド301先端を通過すると再び上昇していき剥離ニップ部N2における最大値P2に達する。
ロールニップ部N1内において熱を受けた用紙Pやトナーからは、用紙P中の水分が気化して水蒸気として発生しようとするが、ロールニップ部N1では、高いニップ圧が用紙P表面全体に作用している。このため、定着ベルト110と加圧ロール162との間に、水蒸気による気泡が生じることはない。
しかし、剥離ニップ部N2内において、ニップ圧P2及びP3が所定の値よりも低い状態にあると、ロールニップ部N1で抑え込まれていた用紙P内部の水分が、外部に水蒸気として発生する。そして、発生した水蒸気が、用紙Pの表面上を移動することによって、ロールニップ部N1を通過した直後で溶融したトナーが未だ固化されていない状態にある用紙P上のトナー像の光沢(グロス)が、不均一になる恐れがある。
この画像不良を発生させないこと、および剥離ニップ部N2において様々の用紙Pを安定して分離させること、更にロールニップ部N1において十分にトナーを溶融させることのためには、以下の条件が必要となる。即ち、ニップ圧のピーク圧P1の値が少なくとも0.5MPa、ニップ圧P2の値が0.5MPa、ニップ圧P3の値が0.2MPa以上を必要とする。
8−c)剥離部材の第2領域(剥離ニップ部N2の下流側)
図1で、剥離パッド301は、剥離部材の第1領域のシート搬送方向下流端である第1の位置(X)から更なる下流側の定着ベルトと再接触する第2の位置(Y)までの間(Z)で、湾曲した経路を形成する定着ベルト110の内面から離間する(第2領域)。
即ち、定着ベルト110は、前述のようにテンションを付与されているが、自身の剛性もあり、剥離パッド301の第1の位置(X)から第2の位置(Y)にかけての範囲(図1に示す領域Z)での局所的かつ急激な搬送経路変更に追従できない。そのため、定着ベルト110は、半径Rの曲率形状をなす湾曲した経路をとる。ここで、半径Rは5〜8mm程度、領域Zの長さは3〜5mmの範囲となることが望ましい。
一方、剥離パッド301の断面形状は、第1の位置(X)から更なる下流側の第2の位置(Y)までの間(Z)で、角部が面取りされたような直線状(図1のX点とY点を直線で結ぶような定着ベルトの湾曲形状から退避した形状)を成している。そして、剥離パッド301は、定着ベルト110の内面から離間し非接触状態となる。これにより、定着ベルト110の内面は、剥離パッド301と摺擦することなく走行することが可能になる。
8−d)剥離部材の第3領域(剥離部材の第2領域の下流側)
剥離パッド301は、図1に示す第2の位置(Y)で定着ベルト110の内面に接触し、第2の位置(Y)から更に定着ベルトの移動方向下流側の第3の位置に至るまでの領域において定着ベルト110の内面から離間する(第3領域)。
(剥離部材によるシートの剥離(分離))
図1では、X点における加圧ロール162表面での接線方向(剥離ニップ部N2の下流端における延長方向)を矢印V1、領域Zにおける剥離パッド301の平面方向(定着ベルト110の内面からの退避方向)を矢印V2として示している。そして、矢印V1を基準に矢印V2が為す角度(第1の角度)をθ1、定着ベルト110のY点から出口張架ロール115への走行方向とが為す角度(第2の角度)をθ2として示している。また、定着ベルト110のY点から出口張架ロール115への走行方向と剥離パッド301の平面方向とが為す角度をθ3として示している。
坪量の比較的大きく剛性の高い用紙(シート)Pは、自身の剛性により定着ベルト110表面から比較的分離しやすいので、矢印V1により近い方向へ分離、排出される。一方、坪量の比較的小さく剛性の低い用紙Pは、剛性が低いので定着ベルト110表面から比較的分離しにくく、矢印V2により近い方向へ分離、排出されることになる。他にも用紙Pの分離、排出方向を左右する要因として、トナーの載り量、トナー温度、画像パターン、環境温湿度等が挙げられるが、それらのバラツキを考慮してθ1、θ2は設定されることになる。なお、θ1は30〜40°、θ2は50から60°以上が望ましい。
また、(θ2−θ1)がプラスの値に設定されていれば、プリンタ500が画像形成装置として使用保証する最も剛性の低い用紙Pでも、矢印V2と矢印V1とのなす相対角度θ1の範囲内で分離、排出されることが可能である。しかし、(θ2−θ1)の値が小さいと定着ベルト110表面と分離する位置がY点より下流側にズレてしまうため、トナー像Tの固化に至る過程が変化することになる。そのため、画像の平滑性、光沢性(グロス)が許容範囲を超えてしまい、画質低下を発生させる懸念がある。この分離位置の遅れを発生させないためには、(θ2−θ1)の値を少なくとも15〜20°に設定する必要がある。
また、定着ベルト110のY点から出口張架ロール115への走行方向と剥離パッド301の用紙Pの排出側側面(平面)とが為す角度θ3は、各部材の加工精度等を考慮して10から15°以上が望ましい。
剥離部材によるシートの剥離(分離)については、以下のようにまとめられる。即ち、定着ベルト110が、剥離パッド301によって、出口張架ロール115方向に屈曲するように急激に進行方向を変化(実際には上述したように湾曲した経路をとる)する。このとき、剥離ニップ部N2を通過した用紙Pは、剥離ニップ部N2を出た図1の第1位置(X)で、変化に追随できなくなり、自身の剛性によって定着ベルト110から剥離される。
このようにして、剥離ニップ部N2の出口部において、用紙Pの剥離(分離)が安定的に行なわれる。なお、本実施形態の定着装置100では、剥離ニップ部N2は定着ベルト110の進行方向に沿って3mmの幅に設定されている。
(本実施形態の効果)
本実施形態の構成により、用紙(シート)の曲率分離に必要な分離角度を確保すると同時に、定着ベルトと剥離パッドの非接触領域を設けることができるので、用紙分離性を損なうことなく摺動抵抗を軽減することができる。これにより、以下の課題を解決することができ、信頼性の高い定着装置を提供することができる。
(1)定着ベルト内面の摩耗が促進されてしまう。
(2)定着ベルト内面の摩耗により摩耗粉が更なる摩耗促進を発生させる。
(3)定着ベルト摩耗そのものにより機械的耐久性を著しく損なってしまう。
(4)定着ベルトがスリップスティック等の搬送不良を起こして用紙の画像スリップを発生してしまう。
(剥離部材の支持方法)
以下、剥離パッド301の支持方法について、定着ロール111の支持方法と共に図4、図5、図6、図7を用いて説明する。ここで、図4は、剥離パッド301、定着ロール111が支持された定着装置の全体外観を示す外観斜視図である。
定着ロール111は、定着装置100のフレームを構成する部材である図5に示す前側板302、奥側板303に、それぞれ図6に示すベアリング304、305を介して回転可能に支持されている。そして、ベアリング304、305の軸方向内側に隣接して、さらにベアリング306、307が挿入されている。ここで、図7に示す剥離パッドアーム308、309(剥離パッド301の長手方向両端部に一体で形成)は、ベアリング306、307の外輪部にそれぞれ回転可能に支持されている。
更に、剥離パッドアーム308、309は、図6に示す剥離パッド加圧バネ310(引張りコイルバネ)により付勢されている。前側板302、奥側板303には、図6に示すようにそれぞれ剥離パッド加圧バネ310の一端が係合するフック軸302a、303aがカシメにより一体化されている。更に、図6で、剥離パッドアーム308、309には、それぞれ剥離パッド加圧バネ310の他の一端が係合するフック部308a、309aが一体成型されている。これにより、両剥離パッド加圧バネ310は、剥離パッドアーム308、309をそれぞれ図6に示す矢印E、F方向に引張り付勢する。
結果として、剥離パッド301は、図3に示す矢印D方向に加圧ロール162の表面に対して加圧されることになる。この剥離パッド301の加圧ロール162の表面に対する加圧力は、例えば100Nであり、上述した剥離ニップ部N2(図1)を形成する。
以上、本実施形態によれば、定着ベルトからシートを損傷させることなく剥離すると共に、剥離に伴う定着ベルトの耐久性および走行安定性の劣化を抑制できる。
《第2の実施形態》
次に、本発明の第2の実施形態に係る定着装置101について、図9と図10(b)を用いて説明する。第1の実施形態と異なる部分は、剥離部材としての剥離パッドの第1領域と第2領域の間に中間領域を備えた点である。第1の実施形態と異なる部分は、剥離パッド401の形状のみであるので、それ以外の部材は同符号を用いて説明を省略する。
定着ロール111及び剥離パッド401が、定着ベルト110を介して加圧ロール162と加圧されて生じるニップ部N´について説明する。図9は、ニップ部Nの近傍領域を表す断面図である。図9に示すように、ニップ部N´には、定着ベルト110が定着ロール111に巻き付けられた領域内において、加圧ロール162が定着ベルト110の外周面に圧接することにより、ロールニップ部N3(第1のニップ部)が形成されている。第1の実施形態と同様、本実施形態の定着装置101では、ロールニップ部N3は定着ベルト110の進行方向に沿って20mmの幅に設定されている。
次に、ロールニップ部N3の下流側近傍には、剥離パッド401が配設されており、剥離パッド401は、前述のように定着ベルト110を加圧ロール162表面に押圧して剥離ニップ部を形成する。剥離ニップ部は、定着ベルト110が加圧ロール162表面と剥離パッド401に挟持された上流剥離ニップ部N4(第1の実施形態における第2のニップ部に相当)と、下流剥離ニップ部N5と、から構成される。そして、このような剥離ニップ部は、ロールニップ部N3と連続したニップ部を形成している。
剥離パッド401の上流端であるU点(図9)から上流剥離ニップ部N4の終端であるW点までは、第1の実施形態と同様、押圧面は加圧ロール162の外径に合わせて円弧形状を成している(剥離部材の第1領域)。上流剥離ニップ部N4の終端であり同時に下流剥離ニップ部N5の開始点であるW点(図9)から終端のX2点までの間Z3(下流剥離ニップ部N5)では、以下のような形状を成している。即ち、剥離パッド401の押圧面が、上流剥離ニップ部N4よりも加圧ロール162に対してより食い込むように、剥離パッド401は、上流加圧ロール162側に傾斜する平面形状を成している(剥離部材の第1領域と第2領域の間の中間領域)。
そして、図9で、剥離パッド401は、シートを剥離するために第1領域が終了する第1位置(X2)から更なる下流側の第2位置(Y2)までの間(Z2)で湾曲した経路を形成する定着ベルト110の内面から離間する(剥離部材の第2領域)。
即ち、定着ベルト110は、前述のようにテンションを付与されているが、自身の剛性もあり、剥離パッド401の第1位置(X2)から第2位置(Y2)にかけての範囲(図9に示す領域Z2)での局所的かつ急激な搬送経路変更に追従できない。そのため、定着ベルト110は、半径R2の曲率形状をなす湾曲した経路をとる。ここで、半径R2は5〜8mm程度、領域Zの長さは3〜5mmの範囲となることが望ましい。
一方、剥離パッド401は、第1位置(X2)から更なる下流側の第2位置(Y2)までの間(Z2)で、角部が面取りされたような平面形状(図9のX2点とY2点を直線で結ぶような定着ベルトの湾曲形状から退避した形状)を成している。そして、剥離パッド301は、定着ベルト110の内面から離間し非接触状態となる。これにより、定着ベルト110の内面は、剥離パッド401と摺擦することなく走行することが可能になる。なお、第1の実施形態と同様に、剥離パッド401は、図9に示すY2点で再び定着ベルト110の内面と接触した後は、定着ベルト110と離間する形状を成している(剥離部材の第3領域)。
ここで、剥離部材によるシートの剥離(分離)に関し、図9に示すX2点における加圧ロール162表面での接線方向(下流端における剥離ニップ部N5の延長方向)を矢印V3として示している。また、領域Z2における剥離パッド401の平面方向(定着ベルト110の内面からの退避方向)を矢印V4として示している。矢印V3と矢印V4とが為す角度をθ4、矢印V3と定着ベルト110のY2点から出口張架ロール115への走行方向とが為す角度をθ5として示している。また、定着ベルト110のY2点から出口張架ロール115への走行方向と剥離パッド401の用紙Pの排出側側面とが為す角度をθ6として示している。
第1の実施形態と同様、坪量の比較的大きく剛性の高い用紙Pは、自身の剛性により定着ベルト110表面から比較的分離し易いので、矢印V3により近い方向へ分離、排出される。一方、坪量の比較的小さく剛性の低い用紙Pは、定着ベルト110表面から比較的分離しにくいので、矢印V4により近い方向へ分離、排出されることになる。他にも用紙Pの排出方向を左右する要因として、トナーの載り量、トナー温度、画像パターン、環境温湿度等が挙げられるが、それらのバラツキを考慮してθ4、θ5は設定されることになる。第1の実施形態と同様、θ4は30〜40°、θ5は50から60°以上が望ましい。
また、(θ2−θ1)がプラス値に設定されていれば、画像形成装置として保証する最も剛性の低い用紙Pでも、矢印V4と矢印V3とのなす相対角度θ4の範囲内で分離、排出されることが可能である。しかし、(θ2−θ1)の値が小さいと定着ベルト110表面と分離する位置がY2点より下流側にズレてしまうため、トナー像の固化に至る過程が変化することになる。そのため、画像の平滑性、光沢性(グロス)が許容範囲を超えてしまい画質低下を発生させる懸念がある。第1の実施形態と同様、この分離位置の遅れを発生させないためには、θ5−θ4の値を少なくとも15〜20°に設定する必要がある。
また、第1の実施形態と同様、定着ベルト110のY2点から出口張架ロール115への走行方向と、剥離パッド401の用紙Pの排出側側面とが為す角度θ6は、各部材の加工精度等を考慮して10から15°以上が望ましい。
ここで、ロールニップ部N3から下流剥離ニップ部N5にかけてのニップ圧の変化を、図10(b)を用いて説明する。用紙Pがロールニップ部N3に進入すると、図10(b)に示すように、徐々にニップ圧を増していき、第1の実施形態と同様にピーク圧P1を経て減少していく。その後、定着ロール111表面と剥離パッド401先端の僅かな隙間のためにニップ圧は第1の実施形態と同様に最小値P3にまで低下するが、剥離パッド401先端を通過すると再び上昇していく。そして、上流剥離ニップ部N4の終端であるW点において急激に上昇していき、その後最大値P4に達する。
また、第1の実施形態と同様、ロールニップ部N3内において熱を受けた用紙Pやトナーからは、用紙P中の水分が気化して水蒸気を発生させようとする。ところが、ロールニップ部N3では高いニップ圧が印加されているため、定着ベルト110と加圧ロール162との間に水蒸気による(気泡)が生じることはない。
しかし、上流剥離ニップ部N4内において、ニップ圧P3が所定のニップ圧よりも低い状態であると、ロールニップ部N3で抑え込まれていた用紙P内部の水分が外部に水蒸気として発生する。発生した水蒸気が、その高いニップ圧によって用紙Pの表面上を移動することによって、ロールニップ部N3を通過した直後で溶融したトナーが未だ固化されていない状態にある用紙P上のトナー像の光沢(グロス)等が、不均一になる場合がある。
この画像不良を発生させない、および剥離ニップ部N2において様々の用紙Pを安定して分離させる、並びにロールニップ部N3において十分にトナーを溶融させるためには、第1の実施形態と同様、以下の条件を必要とする。即ち、P1の値が少なくとも0.5MPa、P3の値が0.2MPa、P4の値が0.5MPa以上を必要とする。
ここで、図10(a)、図10(b)を比較して分かるように、本実施形態の分離ニップ圧のピーク値P4は、剥離パッド401の形状を変更したことにより、第1の実施形態の場合の分離ニップ圧のピーク値P2よりも、高く設定することができる。そのため、用紙Pの分離をより安定させることが容易である。
剥離部材によるシートの剥離(分離)については、以下のようにまとめられる。即ち、定着ベルト110が、剥離パッド401によって、出口張架ロール115方向に屈曲するように急激に進行方向を変化(実際には上述したように湾曲した経路をとる)する。このとき、下流剥離ニップ部N5を通過した用紙Pは、下流剥離ニップ部N5を出た図9の第1位置(X2)で、変化に追随できなくなり、自身の剛性によって定着ベルト110から剥離される。
このようにして、下流剥離ニップ部N5の出口部において、用紙Pの剥離(分離)が安定的に行なわれる。なお、本実施形態の定着装置101では、下流剥離ニップ部N5は定着ベルト110の進行方向に沿って3mmの幅に設定されている。
(本実施形態の効果)
本実施形態の構成により、用紙(シート)の曲率分離に必要な分離角度を確保すると同時に、定着ベルトと剥離パッドの非接触領域を設けることができるので、第1の実施形態と同様に用紙分離性を損なうことなく摺動抵抗を軽減することができる。更に、剥離部材としての剥離パッドの第1領域(N4)と第2領域(Z2)の間に中間領域(N5)を備え、分離ニップ圧のピーク値をより高く設定することができ、用紙Pの分離をより安定させることができる。
(変形例)
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、同一性の範囲で種々の変形が可能である。
(変形例1)
上述した実施形態では、剥離部材の第2領域は平面形状(直線形状)としたが、本発明はこれに限らず、湾曲した定着ベルトと非接触状態となる任意の形状(定着ベルトの湾曲形状から退避した任意の形状)で良い。
(変形例2)
以上では、本発明に係る定着装置として、記録材(シート)上に形成された未定着トナー像を加熱して定着する装置を例に説明したが、次のような装置にも同様に適用することが可能である。例えば、記録材に仮定着されたトナー像を加熱し再定着することにより画像のグロス(光沢度)を増大させる装置(この場合も定着装置と呼ぶことにする)にも本発明を適用することが可能である。
110・・定着ベルト(エンドレスベルト)、111・・定着ロール(支持部材)、162・・加圧ロール(対向部材)、301・・剥離パッド(剥離部材)、N1・・ロールニップ部(第1ニップ部)、N2・・剥離ニップ部(第2ニップ部)かつ剥離部材の第1領域、Z・・剥離部材の第2領域

Claims (12)

  1. シート上のトナー像をニップ部にて定着する無端状の定着ベルトと、
    前記定着ベルトに対向配置され前記定着ベルトとともに前記ニップ部を形成する対向ローラと、
    前記定着ベルトを前記対向ローラに向けて押圧するとともに前記定着ベルトを回転可能に支持する支持ローラと、
    前記支持ローラよりもシート搬送方向下流側であって前記定着ベルトからシートを剥離させる位置において前記定着ベルトを前記対向ローラに向けて押圧する剥離パッドと、を有し、
    前記剥離パッドの断面形状は、前記定着ベルトを前記対向ローラとの間で挟み込む領域のシート搬送方向下流端からこれよりもシート搬送方向下流側において前記定着ベルトと再接触する位置に至るまで直線状とされていることを特徴とする定着装置。
  2. シート上のトナー像をニップ部にて定着する無端状の定着ベルトと、
    前記定着ベルトに対向配置され前記定着ベルトとともに前記ニップ部を形成する対向ローラと、
    前記定着ベルトを前記対向ローラに向けて押圧するとともに前記定着ベルトを回転可能に支持する支持ローラと、
    前記支持ローラよりもシート搬送方向下流側であって前記定着ベルトからシートを剥離させる位置において前記定着ベルトを前記対向ローラに向けて押圧する剥離パッドと、を有し、
    前記剥離パッドは、前記定着ベルトを前記対向ローラとの間で挟み込む領域のシート搬送方向下流端の第1の位置からこれよりもシート搬送方向下流側で前記定着ベルトと再接触する第2の位置に至るまでの領域において、前記定着ベルトから離間する形状とされていることを特徴とする定着装置。
  3. 前記剥離パッドの断面形状は前記第1の位置から前記第2の位置に至る領域において直線状となっていることを特徴とする請求項2に記載の定着装置。
  4. 前記剥離パッドは、前記第2の位置からこれよりも前記定着ベルトの移動方向下流側の第3の位置に至るまでの領域において前記定着ベルトから離間する形状とされていることを特徴とする請求項2又は3に記載の定着装置。
  5. 前記剥離パッドの断面形状は、前記第1の位置における前記対向ローラの接線方向を基準に、前記第1の位置から前記第2の位置に向けて第1の角度をもって直線状に延びており、且つ、前記第2の位置から前記第3の位置に向けて前記第1の角度よりも大きい第2の角度をもって直線状に延びていることを特徴とすることを特徴とする請求項4に記載の定着装置。
  6. 前記剥離パッドの断面形状は、前記定着ベルトを前記対向ローラとの間で挟み込む領域のシート搬送方向下流端に近い側で直線状とされていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の定着装置。
  7. 前記対向ローラの表層は、弾性層であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の定着装置。
  8. 前記支持ローラを第1の回転体とするとき、
    前記剥離パッドより下流側に第2の回転体としてステアリングローラを有することを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の定着装置。
  9. 前記剥離パッドより下流側であって前記第2の回転体より上流側に第3の回転体を有することを特徴とする請求項8に記載の定着装置。
  10. 前記第2の回転体と前記第3の回転体の間に第4の回転体を有することを特徴とする請求項9に記載の定着装置。
  11. 被走査面を走査する光走査装置と、前記被走査面に配置される感光体と、前記光走査装置で走査された光束によって前記感光体の上に形成された静電潜像をトナー像として現像する現像器と、現像されたトナー像を被転写材に転写する転写器と、請求項1乃至10のいずれか1項に記載の定着装置と、を有することを特徴とする画像形成装置。
  12. 外部機器から入力したコードデータを画像信号に変換して前記光走査装置に入力せしめるプリンタコントローラを有することを特徴とする請求項11に記載の画像形成装置。
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