JP2014210408A - インク吐出方法。 - Google Patents

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Shuhei Nakatani
修平 中谷
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Abstract

【課題】波形長が短く高周波吐出に対応しやすく、よりインクの溶媒の蒸発を抑制することが可能な液滴吐出方法を提供すること。
【解決手段】インクジェットヘッドのノズルからのインクを電圧制御にて吐出するインク吐出方法であって、前記インク吐出時は、前記インクジェットヘッドに、前記インクを前記インクジェットヘッド内部方向へ揺動させる第一電圧波形と、前記インクを前記ノズルから吐出するための第二電圧波形とからなる駆動電圧波形を印加し、前記インクを吐出しない時は、前記インクジェットヘッドに対しては、前記第一電圧波形のみを印加することを特徴とするインク吐出方法を用いる。
【選択図】図2

Description

本発明は、液滴吐出方法に関し、例えば有機EL(Electro Luminescence)パネルの発光層の塗布工程などに用いられるインクジェット装置における、インク液滴を吐出させる技術に関する。
インクジェット装置は、ノズルからインクを吐出することで、対象物にインクを塗布する。インクジェット装置は、塗布工程において、単位時間当たりに滴下しようとする液滴数に応じた周波数で、インクジェットヘッド内の圧電素子、さらには圧電素子に連結された振動板を振動させることで、インクジェットヘッド内のインクをノズル先端から吐出させる。
ところで、インクジェットヘッドからのインクの吐出を一定時間停止させると、ノズルにインクが目詰まりして、飛翔液滴速度や飛翔液滴体積が低下したり、飛翔液滴の着弾位置がばらついたり、最悪の場合は吐出できない状態になってしまう。この現象は、ノズル近傍の大気に曝露されているインクの溶媒が蒸発することで、インク濃度が上昇して、ひいてはインク粘度が上昇してしまうことに原因がある。インク粘度はインク濃度に対して、指数関数的に上昇するため、インク濃度のわずかな上昇がノズル詰まりに効いてくる。また、通常インクの溶媒としては沸点が200℃程度の有機溶剤を使用することが多いが、ノズル孔は数十μmと微細であることから、溶媒は蒸発しやすい状態になっている。
このようなノズル詰まり不良が発生すると、ノズルからインクを吸引することや、逆にインクジェットヘッド内の流路を加圧することでインクを強制的にノズルから排出して、インクのノズル詰まりを解消している。こうした場合、インクを大量に消費することになり、インクジェット工法の特長である、高い材料使用効率をかき消すことになり、インクジェット工法のメリットが少なくなってしまう。特に有機ELのインク材料は非常に高価であり、上述のような作業によりインクを消費してしまうと、有機ELパネル単価が高くなってしまい、コスト競争力が低くなってしまう。
この問題に対して、特許文献1に記載されているノズルに印加する駆動波形を図12(a)〜(c)に示す。
図12(a)は、発生させている駆動電圧の時間変化を示す。図12(b)は、電圧をノズルに印加するかどうかのオンオフを制御するスイッチの時間変化を示す。図12(c)は、実際にノズルにかかる個別電極電圧の時間変化を示す。
図12(a)に示しているように一定の駆動周期単位で駆動電圧波形を発生されている。図12(b)に示すように、スイッチのON/OFF信号が時間に従って作成されている。図12(c)は、図12(a)と図12(b)の合わせた電圧信号の時間変化で、ノズルに印加される電圧である。印字と非印字の領域がある。
ここで、電圧ゼロを示すベースラインBLより上へ飛び出しているティックル波形BpとDpとがある。ティックル波形Bpは、インクを吐出しないが、メニスカスが振動する程度の変位を振動板に与えるものである。幅が細い。
吐出波形Dpは、インクをノズルから飛び出させる波形である。幅が太い。ティックル波形Bpを、非印字時にノズルに印加することより、インクの蒸発を抑制して、インクを振動させ、ノズル詰まりを低減させる技術が開示されている。
特開2002−19104号公報
特許文献1に記載の方法は、ティックル波形Bpと吐出波形Dpとを明確に分けるため、その間に一定電圧の領域があり、その分、駆動周期が長くなっていた(図12(a))。
例えば、有機ELパネルをインクジェット工法で製造する場合には、生産性を向上させるために、20kHz以上の周波数でインクを吐出させることが求められる。20kHzでインクを吐出する場合は、50μs以内に波形長が収まっている必要がある。さらには、圧電素子に駆動波形を印加した後には、一定の残留振動が発生するが、次の波形の印加は、この残留振動を収束させてから行なうことが望ましいことを考慮すると、圧電素子に印加する波形自体は30μs程度で収まっていることが望ましい。
また、ティックル波形Bpで揺動するインクは、ノズル内部においては、活発に揺動するが、ノズルの外には可能な限り飛び出てこないことが望ましい。これはノズルの外側にインクが飛び出すと、大気に曝露される表面積が大きくなることになり、インク溶媒の蒸発が促進されるからである。よって、インク溶媒の蒸発防止のためには、インクを静止させることなく、常に揺動させることに加えて、インクの揺動をノズル内部で可能な限り行なうことが必要である。
しかしながら、特許文献1に記載の方法は、ティックル波形Bpが上に凸(正方向の電圧印加)の単パルスで印加されている(図12(a))。これはインクがノズルから飛び出す作用を与える波形であるため、インクが大気に曝露されやすい状態になり、インクの溶媒が蒸発しやすい。
以上のことから、従来の方法である特許文献1では、波形長が長くなることと、ティックル波形Bpでインクがノズルの外側に飛び出すため、インク溶媒の蒸発が促進されるという課題があった。
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、波形長が短く高周波吐出に対応しやすく、よりインクの溶媒の蒸発を抑制することが可能な液滴吐出方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決するため、以下に示す液滴吐出方法を用いる。インクジェットヘッドのノズルからのインクを電圧制御にて吐出するインク吐出方法であって、前記インク吐出時は、前記インクジェットヘッドに、前記インクを前記インクジェットヘッド内部方向へ移動させる第一電圧波形と、前記インクを前記ノズルから吐出するための第二電圧波形とからなる駆動電圧波形を印加し、前記インクを吐出しない時は、前記インクジェットヘッドに対しては、前記第一電圧波形のみを印加することを特徴とするインク吐出方法を用いる。
以上のように、本発明の液滴吐出方法によれば、波形長が短く高周波吐出に対応しやすく、よりインクの溶媒の蒸発を抑制することが可能な液滴吐出方法を提供することができる。
実施の形態に係るインクジェット装置の主要構成を示す図 駆動波形の構成を示す図 (a)実施の形態のティックル波形と吐出波形の印加の仕方を示す図、(b)(a)の時の印刷パターンを示す図、(c)(a)のティックル波形を示す図、(d)(a)の吐出波形を示す図 (a)駆動電圧形成部から生成出力される実施の形態の波形信号を示す図、(b)実施の形態で、インクを吐出するチャンネルに応じてアナログスイッチからON/OFF信号が生成していることを示す図、(c)実施の形態で、印字、非印字チャンネルに応じて、当該チャンネルに駆動波形が印加されていることを示す図 (a)ティックル波形の形状を示す図、(b)〜(f)インクの飛び出しの関係を示す図 実施の形態のティックル波形を変化させた場合のインクの飛び出しを示す図 実施の形態のティックル波形の理想系を示す図 (a)圧電素子に印加する電圧波形を示す図、(b)(a)の電圧波形に応じて圧力室内で発生する圧力波を模式的に示す図 (a)実施例のティックル波形を示す図、(b)(a)の波形を用いた時の吐出液滴体積の推移を示す図 (a)比較例1のティックル波形を示す図、(b)(a)の波形を用いた時の吐出液滴体積の推移を示す図 (a)比較例2のティックル波形を示す図、(b)(a)の波形を用いた時の吐出液滴体積の推移を示す図 (a)特許文献1の波形生成回路から生成出力される波形信号を示す図、(b)特許文献1で、インクを吐出するチャンネルに応じてアナログスイッチからON/OFF信号が生成していることを示す図、(c)個別電極に印字、非印字に応じた信号が入力されていることを示す図
以下の実施の形態では、一例として、本発明の液滴吐出方法を、有機ELパネルの発光層の塗布工程に用いられるインクジェット装置に適用する場合について説明する。しかし、実施の形態の液滴吐出方法は、ノズルからインクを吐出するインクジェット装置に広く適用できるものであり、例えば民生用のプリンタに用いられるインクジェット装置等にも適用できる。
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
(実施の形態)
[主要部構成]
図1に、本発明の液滴吐出方法を実現するインクジェット装置の主要部の概略構成を示す。
インクジェット装置10は、インクジェットヘッド11と、インクジェットヘッド11に供給する駆動電圧を形成する駆動電圧形成部12と、を有する。
インクジェットヘッド11は、内部空間に、圧電素子(ピエゾ素子)11aを有する。圧電素子11aの下側には、インク11cが充填される圧力室11bが形成されている。圧力室11bは、ノズル11dを介して外部に連通されている。これにより、圧電素子11aが上下に振動されると、これによって生じる圧力によって圧力室11b内のインク11cがノズル11dから外部に吐出される。
なお、圧力室11b内には、図示しないインク補給部を介して、吐出された量のインク11cが補給されるようになっている。また、圧電素子11aと圧力室11bとの間には圧電素子11aでの振動を圧力室11bに伝達させるための振動板(図示せず)が配置されている。
駆動電圧形成部12は、駆動制御信号を入力し、当該駆動制御信号の指示に応じた波形の駆動電圧Vpを形成する。なお、駆動電圧形成部12は、電圧発生回路、ラッチ回路、レベルシフタ及びスイッチ回路等の組み合わせによって構成することができる。駆動制御信号は、インクジェット装置10が搭載された有機ELパネル製造装置の制御部(図示せず)から出力される。
駆動電圧Vpは、圧電素子11aに印加される。これにより、圧電素子11aが駆動電圧Vpの波形に応じて振動する。
[駆動電圧]
次に、本実施の形態による液滴吐出方法について説明する。
図2に、本実施の形態の駆動電圧形成部12によって形成される駆動電圧Vpの波形を示す。従来の図12(a)に相当するものである。
駆動電圧Vpは、インクジェットヘッド11の圧力室11b内のインク11cを吐出させない程度に振動させるティックル波形Bpと、ティックル波形Bpで発生させた振動と共振させてインク11cをノズル11dから吐出させるための押出波形A2と、押出波形A2で発生した振動を抑制させるための抑制波形A3と、からなる。3つの波形が連続して設けられている。ティックル波形Bpでの振動をテイックル振動、押出波形A2での振動を吐出振動と呼ぶことにする。
本願発明では、ティックル波形Bpと押出波形A2を連続させることで、共振させて吐出振動を発生させるため、効率的にインクを吐出させることが可能となり、低い駆動電圧でのインクの吐出が可能となる。さらに、抑制波形A3も連続させており、急速に、波を元に戻している。1周期が短時間となる。
[波形]
図3(a)〜(d)に、印刷パターンに応じた波形について説明する。
図3(a)は、待機時と印刷時の個別電極電圧(ノズルに印加される電圧)を示す。従来の図12(c)に相当する。図3(b)は、印字パターンを示す。図3(c)は、ティックル波形Bpを示す。図3(d)は、インク吐出時の吐出波形Dpを示す。
図3(a)に示すように、印刷が行なわれないとき、つまりインクジェット装置10が待機位置にて待機している時は、一定の周波数でティックル波形Bpが圧電素子11aに印加される。また、図3(b)では、印刷パターン例であり、黒が印字信号、白が非印字信号を表している。印刷動作時の印字信号が入っているノズルについては、吐出波形Dpが圧電素子11aに印加され、印字信号が入っていないノズルについてはティックル波形Bpが圧電素子11aに印加される。ここで、図3(d)に示すが、吐出波形Dpは、ティックル波形Bpを含んだ波形である。
つまり、印刷パターンに応じて、ノズルにはティックル波形Bpが印加されティックル状態になったり、吐出波形Dpが印加されインク吐出状態になったりする。
図4(a)〜図4(c)に、駆動電圧Vp、スイッチ、個別電極電圧の波形の例を示す。図4(a)は、発生させている駆動電圧Vpを示す。図4(b)は、電圧をノズルに印加するかどうかのオンオフであるスイッチを示す。図4(c)は、実際にノズルにかかる個別電極電圧を示す。図12(a)から図12(c)と同様に、スイッチ信号で、駆動電圧Vpを制御し、個別印加電圧を形成する。
[ティックル波形Bpの形状]
ティックル波形Bpの目的はノズル内部のインクを揺動させることであるが、それはノズル内部で起こることが望ましく、ノズルの外側には可能な限り飛び出てこないことが望ましい。これは、ノズルの外側にインクが飛び出すと、大気に曝露されるインクの表面積が大きくなるため、インク溶媒の蒸発が促進されるからである。インク溶媒が蒸発すると、インクの濃度が上昇し、ひいてはインク粘度が上昇し、インクがノズルに目詰まりしやすくなってしまう。よって、ティックル波形Bpは、中間保持電位で保持された電圧から、インクをノズル内部に引き込む方向に電荷をかけることが望ましい。
さらには、ティックル波形Bpの引きと押しの勾配(単位時間あたりの電圧変化、傾き)を調整して、ノズル内部ではインクが活発に揺動するが、ノズルの外側にはあまり飛び出さないようにすることもできる。
従来の図12(a)では、ティックル波形Bpが、電圧ゼロのベースラインBLより上方へ飛び出した凸部であり、ノズルからインクが飛び出す方向に印加している。この場合、インク溶媒の蒸発が促進され、インクの目詰まりが発生しやすいと考えられる。一方、この発明では、図2に示すように、ティックル波形Bpは、ベースラインBLより下に、凸の形状であり、ノズル内部でインクが移動する。よって、インク溶剤の蒸発が少なく、目詰まりが発生しにくい。
本実施の形態によれば、吐出を一定時間停止させた場合でも、所定のティックル波形Bpを印加させることにより、断続的にインクを揺動させることが可能となり、インクの目詰まりを抑制でき、安定した液滴吐出を実現することができる。
また、上述した実施の形態では、圧力発生手段として圧電素子11aを用いた場合について述べたが、例えば静電アクチュエータ等の圧力発生手段を用いてもよい。要は、圧力発生手段は、圧力室内に充填されたインクに駆動信号に応じた圧力を与えてインクをノズルから吐出させることができるものであればよい。
[吐出波形Dpの押出波形A2]
図5(a)〜図5(f)で、波形とその波形に対応してノズル内のインクの動きがどのようになっているかを模式的に示したものである。図5(a)は、押出波形A2の全体を示す。図5(b)〜図5(f)は、図5(a)のそれぞれの時点での状態で、ノズルからインクを飛び出しの状態を示す。
図5(a)の(b)部分では、電圧一定の状態である。図5(b)では、ノズル内のインクは静止状態になっている。
図5(a)の(c)部分では引き部51では、電圧を負方向へ変化させている。駆動波形は中間保持電位に対して、負の電圧をかける状態になっており、そのとき圧電素子11aは、ノズルの内部に引き込むような動きをする。これによって、図5(c)のように、インクもノズル内部に引き込まれるような動きを示す。
図5(a)の(d)部分では、押し部52では、電圧を正へ増加させている。駆動波形は正の電圧をかける状態になっており、そのとき圧電素子はノズルの外部に押し出すような動きをし、これによりインクも図5(d)のように、ノズル外部に押し出されるような動きを示す。
図5(a)の(e)部分、及び(f)部分の電圧一定の状態では駆動波形を中間電位で保持したときの状態であり、インクは、図5(e)(f)のように、前の状態からの作用でノズルの外部に吐出されていく。
引き部51では、インクのノズルへの引き込みに影響があり、押し部52では、インクの吐出に影響がある。
[ティックル波形Bpの波形の傾きの最適化]
図6は、ティックル波形Bpの引き部51と押し部52の勾配を変えたときのインク液滴のノズル面からの飛び出し量を比較したものである。ここで勾配とは、単位時間当たりの駆動電圧の変化である。
まず、比較例1、2、実施例1では、押し部52の勾配を50V/μsに固定して、引き部51の勾配を50V/μs、30V/μs、10V/μsとしたときの飛び出し量の測定を行なった。
結果、比較例1、2の時は、インクが吐出してしまった。実施例1の時は、インクの飛び出し量は58μmであった。結果、比較例1、2では、インクが飛び出してしまい不良である。実施例1では、飛び出していないのでよい。ただし、飛び出し量が多く、乾燥してしまう可能性がある。
なお、この条件においては引き部51で発生する振動の大きさを検証したいため、引き部51の変位がノズル吐出口に戻るタイミングに合わせて、押し部52の変位を与えるタイミングに設定した。そのタイミングの決定は、駆動波形のパルス幅を変えていったときの吐出速度を測定することで行ない、吐出速度が最も速くなるパルス幅にした。今回のインクジェットヘッドの場合は3.2μsのパルス幅で吐出速度が最大になった。
次に、実施例2〜4で、引き部51の勾配を30V/μsに固定して押し部52の勾配を50V/μs、30V/μs、10V/μsとしたときのインクの飛び出し量の比較を行なった。実施例2,3,4に従い、インクの飛び出し量が少なくなり、よりよくなる。
実施例4が最も飛び出し量が少なくよい。
この条件においては押し部52で発生する振動の大きさを検証したいため、引き部51の変位を与えるタイミングと押し部52の変位を与えるタイミングの間隔は、引き部51の変位が1周期した時点とした。今回のインクジェットヘッドの場合は6.4μsである。このタイミングで波形を印加することで、引き部51で発生した振動と相殺されるタイミングで押しの振動を発生させることになる。
以上のことから、押し部52の勾配が大きいほど、インクの揺動量が大きいことがわかった。ノズルの外側では可能な限り飛び出さない状態を作るためには、少なくとも、実施例3、4のように、引き部51の勾配が、押し部52の勾配以下にするのが好ましい。
さらに、押し部52の勾配が、引き部51の勾配の1.5倍以上あれば、より好ましい。さらに、実施例4のように、3倍あれば最も好ましい。
結果、図7によい例を示す。インクを引きこむ方の波形である引き部51の勾配を大きくして、インクを押し出す方の押し部52の波形である押しの勾配を小さくすることが望ましいことを見出した。
ここで、勾配は力と考えることができる。勾配が大きいとは、かけられる力が大きいと考えることができる。引き部51の力を大きくし、押し部52の力を小さくするのがよい。
[引き部51と押し部52との関係]
引き部51と押し部52との関係は、引き部51によるインクのノズル内部への引きによる流れが、吐出口に戻ってきた時に、押し部52が発生すれば、流れがみだれずによい。
図8に上記内容を説明する。図8(a)がティックル波形Bpの電圧プロファイルであり、図8(b)が、インクの流れである。同じ時間軸で表現されている。
図8(b)では、引きで発生する圧力波が、0に戻った時に、押しを開始しているので、両波が合わさり(共振)、大きな合成波となっている。
つまり、引き部51の電圧変化でインクは、一端、ノズル内部側へ押され、その後、ノズル吐出口側へ押し返される。押し返えされたところで、押し部52の電圧を開始することで、押しで発生する波と、引きで発生する波との合成波が一致し、流れが乱れることなく、効率的、制御性よくインクを制御できる。
(実施例)
ティックル波形Bpを最適化して、その波形を用いたときの吐出の安定性を評価した。吐出評価に用いたインクは高分子材料を1.1重量%の濃度で溶解させたインクであり、その粘度は13.2mPa・sであった。粘度の測定はティー・エイ・インスツルメント・ジャパン株式会社製のレオメータAR−G2を用いた。
図9にはティックル波形Bpの効果を検証するため、吐出を停止させた状態から再度吐出を開始させたときの吐出液滴の体積を評価した結果を示す。吐出の停止は600秒間行い、この間はノズルからインクが吐出しない条件で、ティックル波形Bpを圧電素子に印加し、ノズル面においてインクを揺動させた状態にした。グラフの横軸には吐出停止後の再吐出時の液滴ショットナンバーを、縦軸には液滴の体積を示している。体積の測定は3ノズル分行ないデータをプロットしている。液滴体積は初めの1滴目が大きく、その後ばらつきが発生して、ショット数を重ねるにつれて液滴体積のばらつきが小さくなり安定していくことがわかる。
ところで、液滴体積の測定及び算出は以下のようにして行なった。ガラス基板上に液滴を1滴ずつ吐出して、ガラス基板を真空乾燥炉に入れて、液滴の乾燥を行なった。この乾燥状態の液滴の体積を光学干渉式の形状測定機で測定した。測定機はブルカー・エイエックスエス株式会社製のContourGTを用いた。乾燥液滴体積から溶液状態のインク体積への変換は式1の通り行なった。
X[pl]=Y[μm3]/1[滴]×1/Z[%]×1/1000[μm3]・・(式1)
X:インク体積、Y:乾燥液滴体積、Z:インク濃度
まずは、ティックル波形Bpの引きの勾配を50V/μs、押しの勾配を10V/μsにしたときの結果について説明する。吐出の初めの方の体積は大きくなっており安定しないが、9滴目から体積が安定していることがわかった。
(比較例1)
比較例1ではティックル波形の引きの勾配と押しの勾配の両方を50V/μsにして体積の安定性を評価した(図10)。ティックル波形Bpを変更した以外は、実施例と同じ条件で評価を行なった。
吐出停止後の再吐出で体積が安定するのは51滴目からであることがわかった。ティックル波形Bp時のノズル面からのインクの飛び出し量が実施例と比較すると多いため、インク溶媒の蒸発が進み、吐出の安定性が下がったと考えられる。
(比較例2)
比較例2では、ティックル波形Bpのインクの飛び出しの極端条件として、インクがノズル面から離れて吐出してしまう直前の状態である73μmインクが飛び出している条件にて体積の安定性を評価した(図11)。ティックル波形Bpを変更した以外は、実施例と同じ条件で評価を行なった。
この条件では吐出再開後の100滴目であっても、ノズルによっては体積が上昇したり減少したりしていて、まだ安定していないことがわかった。インクがノズルの外側に大きく飛び出す条件では、液滴体積が安定するのに捨て吐出が多く必要であることがわかった。よって、上記の発明の説明が正しいことがわかる。
なお、電圧の大きさは、ノズルの内部の体積に依存し、特定できない。
なお、ティックル波形Bpは、図3に示したように、インク吐出時、インクを吐出しない時に、ノズルに印加するが、少なくとも、1方のティックル波形Bpに、上記条件のティックル波形Bpを用いると効果がでる。
本発明の液滴吐出方法は、吐出を一定時間停止させた場合でもインクのノズル詰まりが発生しにくく、安定してインク液滴を吐出できる効果を有し、有機ELパネルの発光層などの塗布工程に用いられるインクジェット装置や、民生用プリンタのインクジェット装置等に広く適用可能である。
10 インクジェット装置
11 インクジェットヘッド
11a 圧電素子
11b 圧力室
11c インク
11d ノズル
12 駆動電圧形成部
51 引き部
52 押し部
Vp 駆動電圧
Bp ティックル波形
Dp 吐出波形
A2 押出波形
A3 抑制波形
BL ベースライン

Claims (9)

  1. インクジェットヘッドのノズルからのインクを電圧制御にて吐出するインク吐出方法であって、
    前記インク吐出時は、
    前記インクジェットヘッドに、前記インクを前記インクジェットヘッド内部方向へ移動させる第一電圧波形と、前記インクを前記ノズルから吐出するための第二電圧波形とからなる駆動電圧波形を印加し、
    前記インクを吐出しない時は、
    前記インクジェットヘッドに対しては、前記第一電圧波形のみを印加することを特徴とするインク吐出方法。
  2. 前記インクを吐出しない時の前記第一電圧波形は、前記インクが前記ノズルから外部へ飛び出ないことを特徴とする請求項1または2に記載のインク吐出方法。
  3. 前記インク吐出時の前記第一電圧波形は、前記インクが前記ノズルから外部へ飛び出ないことを特徴とする請求項2に記載のインク吐出方法。
  4. 前記インク吐出時に、前記第一電圧波形の後、続いて前記第二電圧波形を印加する請求項1から3のいずれか1項に記載のインク吐出方法。
  5. 前記インク吐出時に、前記第一電圧波形による前記インクの波が前記ノズルに戻った時に、前記第二電圧波形を印加する請求項1から4のいずれか1項に記載のインク吐出方法。
  6. 前記インク吐出時に、さらに、前記第二電圧波形の後、続いて前記振動を第一電圧波形前に戻すための第三電圧波形を前記駆動電圧波形に設けた請求項4または5記載のインク吐出方法。
  7. 前記インクを吐出しない時の前記第一電圧波形では、前記インクを前記インクジェットヘッドの内部に引き込むための単位時間当たりの駆動電圧波形の変化量が、前記インクを前記ノズル外部へ押し出すための単位時間当たりの駆動電圧波形の変化量以上にすることを特徴とする、請求項1から6のいずれか1項に記載のインク吐出方法。
  8. 前記インク吐出時の前記第一電圧波形では、前記インクを前記インクジェットヘッドの内部に引き込むための単位時間当たりの駆動電圧波形の変化量が、前記インクを前記ノズル外部へ押し出すための単位時間当たりの駆動電圧波形の変化量以上にすることを特徴とする、請求項7に記載のインク吐出方法。
  9. 前記引き込むための駆動電圧波形の変化量が、前記押し出すための駆動電圧波形の変化量の1.5倍以上である請求項7または8に記載のインク吐出方法。
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