JP2014210293A - オーステナイト系耐熱鋳鋼の切削方法 - Google Patents

オーステナイト系耐熱鋳鋼の切削方法 Download PDF

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佳奈 森下
謙一 井上
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謙一 井上
進 桂木
Susumu Katsuragi
進 桂木
川畑將秀
Masahide Kawabata
將秀 川畑
智則 作田
Tomonori SAKUTA
智則 作田
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Abstract

【課題】 被削性に優れたオーステナイト系耐熱鋳鋼の切削方法を提供する。
【解決手段】 質量%で、S:0.1〜0.2%、Al:0.02〜0.15%、を含有するオーステナイト系耐熱鋳鋼を、WC基超硬合金でなる母材に、金属(半金属を含む)部分の原子比率でAlが50%よりも多いAlTiの窒化物皮膜を被覆した被覆切削工具を用いて切削するオーステナイト系耐熱鋳鋼の切削方法。
前記オーステナイト系耐熱鋳鋼は、質量%で、C:0.40〜0.55%、Cr:18〜27%、Ni:8〜22%、Mn:0.5〜1.5%、Nb:1.5〜2.5%、を含有することが好ましい。前記母材の硬度が90.0〜92.0HRAであることが好ましい。更には前記母材の硬度が90.5HRA以上であることが好ましい。更には、切削速度が120m/min超であることが好ましい。
【選択図】 なし

Description

本発明は、オーステナイト系耐熱鋳鋼の切削方法に関する。
耐熱鋳鉄やフェライト系耐熱鋳鋼よりも高温に耐える材料として、オーステナイト系耐熱鋳鋼が知られている。オーステナイト系耐熱鋳鋼は、高温耐力、耐酸化性及び室温伸びが何れも優れるものである。更に、1000℃以上と高温の排ガスに曝されたときの熱疲労寿命にも優れるため自動車用エンジンの排気系部品等に適用されている。
排気系部品は、鋳造により鋳物の素材品を得た後、エンジンや周辺部品との取付け面、取付け孔などの連結部位や、高精度の形状、寸法等が必要な部位などに切削などの機械加工を施して完成品とした後、自動車に組み付け使用されている。しかしながら、排気系部品に用いられる耐熱鋳鋼は、耐熱性に優れるものの一般的に機械加工の観点からは被削性の悪い難削材料である。特にオーステナイト系耐熱鋳鋼は、Cr、Niを多く含有して高強度を有することから被削性の劣る材料である。このため、オーステナイト系耐熱鋳鋼からなる排気系部品を切削する場合、高い硬度や強度を有する比較的高価な切削工具が必要で、しかもその工具寿命が短いため工具交換の頻度が多く加工コストが上昇し、さらに低い切削速度での切削を余儀なくされ、切削に長時間を要するため加工能率が低い。このようにオーステナイト系耐熱鋳鋼からなる排気系部品の機械加工は、生産性や経済性が低いという問題点がある。
一方、オーステナイト系耐熱鋳鋼の被削性を改善するため、被削性改善元素を添加する手法が知られている。例えば、特許文献1のようにオーステナイト系耐熱鋳鋼にSを添加することで、潤滑特性の優れる球状又は塊状の硫化物が形成されて被削性が改善される。
国際公開番号WO2009−104792
本発明者等の検討によると、被削材であるオーステナイト系耐熱鋳鋼にSを添加して、切削加工中の工具刃先に硫化物を形成しただけでは工具寿命の改善は十分ではなく、オーステナイト系耐熱鋳鋼の耐熱性を確保しつつ、機械加工における生産性や経済性を向上するために被削性を改善する見地からの検討は十分でなかった。
本発明は上記の事情に鑑みてなされたもので有り、被削性に優れるオーステナイト系耐熱鋳鋼の切削方法を提供することにある。
本発明者は、オーステナイト系耐熱鋳鋼の被削性を向上する手法を鋭意研究した。その結果、被削材であるオーステナイト系耐熱鋳鋼に添加元素であるSとAlを積極的に導入して、高融点酸化物であるAlと、高延性介在物であるMnSからなる複合潤滑保護皮膜を切削加工時の熱により切削工具の表面に形成させる手法を見いだした。そして、切削加工時に上記の複合潤滑保護皮膜を形成するには、最適なオーステナイト系耐熱鋳鋼の成分範囲と切削加工条件の組合せがあることを知見し、そのような最適な組み合わせを特定できたことで、本発明に到達した。
すなわち、本発明は、
質量%で、
S:0.1〜0.2%、
Al:0.02〜0.15%、
を含有するオーステナイト系耐熱鋳鋼を、
WC基超硬合金でなる母材に、金属(半金属を含む)部分の原子比率でAlが50%よりも多いAlTiの窒化物皮膜を被覆した被覆切削工具を用いて切削するオーステナイト系耐熱鋳鋼の切削方法である。
オーステナイト系耐熱鋳鋼は、質量%で、C:0.40〜0.55%、Cr:18〜27%、Ni:8〜22%、Mn:0.5〜1.5%、Nb:1.5〜2.5%、を含有することが好ましい。
好ましくは母材の硬度が90.0〜92.0HRAである。更に好ましくは90.5HRA以上である。更に、切削速度が120m/min超であることが好ましい。
本発明のオーステナイト系耐熱鋳鋼の加工方法を適用すれば、オーステナイト系耐熱鋳鋼の加工において工具寿命の延長や切削速度の増加が可能となり、機械加工における生産性や経済性を向上することができる。
本発明の特徴は、切削工具の摩耗を抑制するために、切削加工時に高融点酸化物であるAlと高延性介在物であるMnSの複合潤滑保護皮膜が切削工具の表面に形成されるように、オーステナイト系耐熱鋳鋼の成分設計したことである。そして、切削工具には、Alが主体のAlTiの窒化物を被覆した被覆切削工具を適用したことである。
まず、被削材であるオーステナイト系耐熱鋳鋼の見地に立って述べる。本発明者は、オーステナイト系耐熱鋳鋼の成分組成に広く対応し得る被削性の向上手段を検討した。その結果、自己潤滑性の有効性に注目した。そして、高融点酸化物であるAlの原料となるAlをオーステナイト系耐熱鋳鋼の組成成分に積極的に導入して、これと高延性介在物であるMnSからなる複合潤滑保護皮膜を切削加工時の熱により切削工具の表面に形成させる手法を見いだした。この複合潤滑保護皮膜は、広範囲の切削温度に対応して効果が変動せず、しかも被削材にW、Nb等の強化元素が添加された場合でも良好な被削性を確保できる。そして、この複合潤滑保護皮膜を形成することが可能な最適な成分範囲があり、これを特定できたことで、本発明に係るオーステナイト系耐熱鋳鋼に到達した。以下、本発明に係るオーステナイト系耐熱鋳鋼の成分組成について説明する。
・S(硫黄):0.10〜0.2%
Sは、被削材であるオーステナイト系耐熱鋳鋼において被削性を改善する重要な元素である。Sは、MnやCrと結合してMnS、(Cr・Mn)Sなどの硫化物を形成することで、被削性を向上させる。従来、Sより形成された球状又は塊状の硫化物が、切削時に潤滑作用を有したり切粉を分断する作用により被削性が向上することが知られている。しかし、本発明においてはこの従来知られたS単独での被削性向上効果にとどまらず、Alとの併用により、S単独の場合に比較して大幅に被削性が改善することを見出したものである。この効果を得るには、Sは0.1%以上必要である。しかし、Sが0.2%を超えて含有すると、高温強度や延性の劣化傾向が高まる。そのため、Sの含有量は0.1〜0.2%とし、好ましくは0.12〜0.18%とする。
・Al(アルミニウム):0.02〜0.15%
Alは、本発明に係る被削材であるオーステナイト系耐熱鋳鋼において被削性を改善する重要な元素である。Alは、基地中へ固溶し、この固溶したAlが切削加工で発生する熱によって、大気中などの酸素と反応して高融点酸化物であるAl23を切削工具の表面に形成する。Al23は、工具の保護被膜として機能し、被削性を改善して工具寿命を延長する。Al含有により保護被膜を形成して被削性の向上効果を発揮するには、Alは0.02%以上必要である。このAlにおいては、後述するコーティング膜との複合効果でさらに切削性を向上させる効果がある。一方で、Alは、0.15%を超えて含有すると、鋼を溶製する際にAl23やAlNを生成しやすくなり、これらのAl系の酸化物や窒化物が介在物として耐熱鋳鋼中に残留する。Al23などの酸化物は、スラグやノロといった鋳造欠陥を助長して鋳造歩留りを悪化させる。またこれらの酸化物や窒化物は、いずれも亀裂や割れの起点となり被削材の高温強度や延性を低下させる。そのため、Alの含有量は0.02〜0.15%とし、好ましくは0.04〜0.10%とする。
本発明に係るオーステナイト系耐熱鋳鋼に含まれる十分量のAlは、切削加工時に発生する熱によって高融点酸化物であるAlを切削工具の表面に形成する。Alの融点は約2050℃であり、これは切削温度よりも遥かに高いため、Alは切削工具の保護皮膜として機能する。さらに、本発明に係るオーステナイト系耐熱鋳鋼に含まれる十分量のSは、MnSを形成する。MnSは延性に富むことに加え、Alとの馴染みが良いため、上記のAl保護皮膜上に堆積して、これらが良好な複合潤滑保護皮膜としての役割を果たす。
・C(炭素):0.40〜0.55%
Cは、(a)溶湯の流動性、すなわち鋳造性を良くする作用、(b)一部基地に固溶して固溶強化する作用、(c)Crの晶出炭化物や析出炭化物を形成し、高温強度を高める作用、及び(d)Nbと共晶炭化物を形成し、鋳造性を高めるとともに高温強度を向上させる作用がある。このような作用を有効に発揮するために、Cの含有量は0.40%以上とすることが好ましい。しかし、Cが0.55%を超えると晶出炭化物や析出炭化物が多くなり過ぎて脆化し、延性が低下するとともに被削性が劣化する。従って、Cの含有量は0.40〜0.55%とすることが好ましい。より好ましくは、Cの含有量は、0.42〜0.52%である。
・Cr(クロム):18〜27%
Crは、後述のNiとともに耐熱鋳鋼の高温強度や耐酸化性を高め、晶出炭化物や析出炭化物を形成して高温強度を高めるなど耐熱性を向上させるほか、Mn及びSと複合硫化物の(Cr・Mn)Sを形成することにより被削性を向上させる元素である。特に1000℃付近の高温域での耐熱性を付与して、かつ被削性を改善する効果を発揮させるためには、Crは18%以上含有することが好ましい。しかし、Crは、27%を超えて含有すると晶出炭化物が多くなり過ぎて、被削性を著しく悪化させまた脆化して延性や靭性を低下させる。また、Crは過剰に含有すると、組織中にフェライトが晶出して高温強度が低下してしまう。このため、Cr含有量は18〜27%とすることが好ましい。被削性の観点から、より好ましいCrの含有量は18〜22%である。
・Ni(ニッケル):8〜22%
Niは、オーステナイト生成元素であり、耐熱鋳鋼をオーステナイト組織とし、その組織を安定にするとともに、前述のCrとともに耐熱鋳鋼の高温強度や耐酸化性を高めるほか、一般に薄肉で複雑形状である排気系部品の鋳造性を高める元素である。このような作用を発揮するためには、Niは8%以上含有することが好ましい。しかし、Niは、22%を超えて過剰に含有すると、基地中へのNiの固溶量が増加して、合金を硬化させて被削性を悪化させる。このため、Ni含有量は8〜22%に規定することが好ましい。被削性の観点からNiのより好ましい含有量は8〜12%である。
・Mn(マンガン):0.5〜1.5%
Mnは、Sと結びついて硫化物のMnSを形成することにより、被削性を改善する効果がある。この効果を発揮させるためにはMnの含有量は0.5%以上とすることが好ましい。しかし、Mnは過剰に含有すると耐酸化性が劣化するので、Mnの含有量は1.5%以下とすることが好ましい。このため、Mnの含有量は0.5〜1.5%に規定することが好ましい。
・Nb(ニオブ):1.5〜2.5%
Nbは、被削性の向上に寄与する元素である。Nbは、Crの晶出炭化物の形成を抑制することによって間接的に耐酸化性と被削性を向上させる。また、NbはCと結合して微細な炭化物を形成し、耐熱鋳鋼の高温強度と熱疲労寿命を向上させる。さらに、Nbは共晶炭化物を形成するため、排気系部品のような薄肉で複雑形状の鋳物を製造する際に重要な鋳造性を向上させる。このような目的でNbの含有量は1.5%以上必要であることが好ましい。しかし、Nbが多量に含有すると、結晶粒界に生成する硬質の共晶炭化物が多くなってかえって被削性が悪化し、また脆化して強度と延性が著しく低下する。従って、Nbの含有量は、1.5〜2.5%とすることが好ましい。
・Si(ケイ素):1〜2%
Siは、溶湯の脱酸剤としての役割を有するほか、耐酸化性の向上と、これに起因する熱疲労寿命の改善に有効である。このような目的でSiの含有量は、1%以上とすることが好ましい。しかし、Siは過剰に含有するとオーステナイト組織が不安定になり、また鋳造性の劣化を招き、さらに材料が硬化して被削性が悪化するため、Siの含有量は2%以下とすることが好ましい。このため、Siの含有量は1〜2%に規定することが好ましい。より好ましいSiの含有量は、1.25〜1.8%であり、更に好ましくは1.3〜1.6%である。
・N(窒素):0.01〜0.3%
Nは、強力なオーステナイト生成元素であり、耐熱鋳鋼のオーステナイト基地を安定にして高温強度を向上させる。また結晶粒微細化に有効な元素であり、鍛造、圧延等の加工による結晶粒微細化が不可能な複雑形状の鋳造部材の結晶粒を微細化させるのに有効である。結晶粒微細化により延性と被削性を向上する。またNはCの拡散速度を遅らせるので、析出炭化物の凝集を遅らせて炭化物の粗大化を抑制して脆化防止にも有効である。このような効果を得るためには、Nの含有量は0.01%以上とすることが好ましい。しかし、Nは、0.3%を超えて多量に含有すると、基地中へのNの固溶量が増加して合金を硬化させるとともに、NがCrやAlと結合して生成するCr2N、AlN等の硬くて脆い窒化物の析出量が増加して、かえって被削性を低下させる。またこれらの窒化物は、亀裂や割れの起点となり強度や延性を悪化させる。さらに、過剰なNは、鋳造時にピンホールやブローホール等のガス欠陥の発生を助長して鋳造歩留りを悪化させる。そのため、Nの含有量は0.01〜0.3%とすることが好ましい。更に、好ましくは0.06〜0.25%とする。
・W(タングステン)及びMo(モリブデン)の少なくとも1種を(W+2Mo):0.5〜4%
W及びMoは、いずれも耐熱鋳鋼の高温強度を改善する元素である。本発明に係るオーステナイト系耐熱鋳鋼において、さらに高温強度を向上させたい場合には、W及びMoを付加的に含有させることができる。高温強度の改善効果は、W及びMoの少なくとも一方(1種)又は両者を複合して含有させることにより得られるが、両者とも多量に含有すると耐酸化性と被削性を劣化させる。W及びMoのいずれも所望する高温強度に応じて含有量を決定すればよいが、Wを単独で含有する場合、Wの含有量は0.5〜4%とする。Moは、質量比でW=2Moの割合でWとほぼ同様の効果を発揮するので、Wの一部又は全量をMoに置換することも可能である。Moを単独で含有する場合、Moの含有量は0.25〜2%とする。両者を複合して含有する場合には、(W+2Mo)で0.5〜4%とする。
本発明に係るオーステナイト系耐熱鋳鋼は、上述した元素以外の残部としてFe及び不可避的不純物を含有する。本発明に係るオーステナイト系耐熱鋳鋼に含有される不可避的不純物の主なものは、原材料から混入するPである。Pは結晶粒界に偏析して靭性を著しく低下させるので少ないほど好ましく、0.04%以下とするのが望ましい。
続いて、切削工具について述べる。
・本発明に係るオーステナイト系耐熱鋳鋼を切削する切削工具は、金属(半金属を含む)部分の原子比率でAlが50%よりも多いAlTiの窒化物皮膜を被覆した被覆切削工具である。
本発明の利用する上記の複合潤滑保護皮膜は、切削加工時の昇温熱によって切削工具の表面に形成させることから、切削速度を上げることが有効である。そこで、切削工具の表面は、優れた耐熱性を有して、かつ、切削加工中における被加工材との間で摩擦係数を低めることができれば、切削速度を上げることができる。そして、Alの含有量が多いAlTiの窒化物皮膜では、その皮膜自体の耐熱性が優れ、更には、切削加工中における被削材との摩擦係数が低下する傾向にあることを知見した。具体的には、前記窒化物皮膜の金属(半金属を含む)部分において、Alの含有量が50原子%以上である。好ましくは60原子%以上、更には65原子%以上である。
上記のAlTiの窒化物皮膜は、XRD(X線回折)で特定される結晶構造が立方晶構造であることが好ましい。あるいはさらに、Alの含有量が多くなると脆弱な六方晶構造のAlNが多く形成されるため、上記のAlの含有量は75原子%以下であることが好ましい。
AlTiの窒化物皮膜は、膜厚が1〜7μmであることが好ましい。これよりも膜厚が薄ければ耐摩耗性が低下する。また、これよりも膜厚が厚くなれば剥離し易くなる。より好ましくは2μ〜5μmである。また、AlTiの窒化物皮膜は、基材と硬質皮膜の間に密着性を改善するための中間皮膜を設けてもよい。
・母材の硬度を90.0〜92.0HRAとすることが好ましい。
本発明の切削方法では、切削加工時の昇温熱によって上記の複合潤滑保護皮膜を切削工具の表面に形成させることから、母材である超硬合金への熱影響が大きく、ヒートクラックの発生によって工具寿命となる場合がある。ヒートクラックを抑制するには、母材であるWC基超硬合金に一定以上の靱性を付与すること有効である。
WC基超硬合金の硬度と靭性はトレードオフの関係であり、硬度が高くなれば靱性が低くなり、靱性が高くなれば硬度が低くなる傾向にある。本発明者等の検討では、本発明の切削方法においては、母材硬度が90.0〜92.0HRAのWC基超硬合金を適用することでヒートクラック及び耐摩耗性がバランス良く優れるため、工具寿命が安定し易く好ましいことを見出した。
母材硬度が90.0HRA未満では、工具の耐摩耗性が十分でなく工具寿命に到達する傾向にある。また、母材硬度が92.0HRAより大きいと、靱性が低下するためヒートクラックが発生し易い傾向になる。より好ましくは90.5HRA以上である。更には91.0HRA以上である。更に好ましくは91.5以下である。
・切削加工時の切削速度は120m/min超の高速切削とすることが好ましい。
本発明の切削方法では、Alが主体のAlTiの窒化物を被覆した被覆切削工具を適用することで、切削速度が120m/min超の高速切削加工が可能であり好ましい。より好ましくは150m/min以上である。これにより、切削加工中の切削温度が上昇して、複合潤滑保護皮膜が切削工具の表面に形成されるように成分設計した本発明に係るオーステナイト系耐熱鋳鋼の効果が、より有効に発揮される。また、切削速度を上げることは、切削に要する時間の短縮にも繋がる。
このときの切削速度とは、作業面(刃先)の速度である。つまり、刃先交換式工具であれば、インサートチップをセットしたときのインサート最外刃部の速度、ドリルやエンドミルなどの旋回工具であれば、その外周刃部の速度である。
本発明の切削方法は、加工中に酸素が提供されて酸化保護皮膜が形成され易い断続切削であるミーリング加工に適用することが好ましい。
また、酸化に必要な酸素の供給源は、主に切削中の大気雰囲気であるため、潤滑油の使用(乾式、湿式)に制限はない。しかし、酸化保護皮膜を形成するには、切削温度が上昇しやすい乾式であることが好ましく、これは昨今要求されている切削油フリー化に適した手法となる。
表1に示す組成のオーステナイト系耐熱鋳鋼を大気雰囲気中で溶解し、円筒試験片(外径96mm、内径65mm及び高さ120mm)に鋳造して切削試験用の被削材を準備した。
Figure 2014210293
基材となる超硬合金製の基材を準備し、通常のアークイオンプレーティング装置を用いて、約3μmの硬質皮膜を被覆した。硬質皮膜の被覆前にはTiボンバードを実施して基材表面をクリーニングした。表2に超硬合金の母材および硬質皮膜の特性について示す。
皮膜組成はEPMAを用いて工具表面から測定した。皮膜硬度は、株式会社エリオニクス製のナノインデンテーション装置を用いて測定した。母材のロックウェル硬度(HRA)は、超硬工具協会規格CIS027B−2007に基づいて測定した。
切削速度を150m/minとして、逃げ面摩耗が0.2mm超、またはチッピングが生じるまでの切削時間(min)を測定して工具寿命とした。以下に使用工具、カッタと切削条件を示す。表2に切削試験の結果を示す。
(工具)
型番:SEE42TN−G9Y(日立ツール株式会社製)
(カッタ)
型番:A45−4125R(日立ツール株式会社製)
径:φ125mm
使用刃数:1枚
(切削条件)
刃当り送り:0.2mm/刃
切込み量:1.0mm
送り速度:381m/min
回転数:76rpm
切削液:なし(乾式)
Figure 2014210293
SとAlを適量含有したオーステナイト系耐熱鋳鋼をAl主体のAlTiNで切削した本発明例は、工具刃先に十分な量の複合潤滑保護皮膜が形成されたため長寿命となった。特に、好ましい母材を用いて切削した本発明例1、3は、極めて優れた工具寿命になった。
比較例1〜4は、Al主体のAlTiNを被覆した被覆切削工具を用いても、オーステナイト系耐熱鋳鋼に適量のAlを含有しておらず、工具寿命は短くなった。
比較例5〜8は、SとAlが適量含有されたオーステナイト系耐熱鋳鋼であっても、適用する被覆切削工具の硬質皮膜がAl主体のAlTiNでないため、硬質皮膜の硬度が高くても工具寿命が短くなった。
従来例1〜4は、オーステナイト系耐熱鋳鋼が適切なAlを含有しておらず、かつ、適用する被覆切削工具の硬質皮膜がAl主体のAlTiNでないため、工具寿命が極めて短くなった。

Claims (5)

  1. 質量%で、
    S:0.1〜0.2%、
    Al:0.02〜0.15%、
    を含有するオーステナイト系耐熱鋳鋼を、
    WC基超硬合金でなる母材に、金属(半金属を含む)部分の原子比率でAlが50%よりも多いAlTiの窒化物皮膜を被覆した被覆切削工具を用いて切削することを特徴とするオーステナイト系耐熱鋳鋼の切削方法。
  2. 前記オーステナイト系耐熱鋳鋼は、質量%で、
    C:0.40〜0.55%、
    Cr:18〜27%、
    Ni:8〜22%、
    Mn:0.5〜1.5%、
    Nb:1.5〜2.5%、
    を含有することを特徴とする請求項1に記載のオーステナイト系耐熱鋳鋼の切削方法。
  3. 前記母材の硬度が90.0〜92.0HRAであることを特徴とする請求項1または2に記載のオーステナイト系耐熱鋳鋼の切削方法。
  4. 前記母材の硬度が90.5HRA以上であることを特徴とする請求項3に記載のオーステナイト系耐熱鋳鋼の切削方法。
  5. 切削速度が120m/min超であることを特徴とする請求項1ないし4の何れかに記載のオーステナイト系耐熱鋳鋼の切削方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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WO2016052750A1 (ja) * 2014-10-03 2016-04-07 日立金属株式会社 熱疲労特性に優れたオーステナイト系耐熱鋳鋼及びそれからなる排気系部品

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