JP2014208884A - 高強度熱延鋼板とその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】降伏応力が1000MPa以上で、伸びフランジ性に優れる高強度熱延鋼板を提供するとともに、その有利な製造方法を提案する。
【解決手段】mass%でC:0.08〜0.5%、Si:0.2%以下、Mn:1.5%以下、P:0.03%以下、S:0.005%以下、Al:0.05%以下、N:0.005%以下およびCa:0.01%以下を含有し、さらに、Ti,Nb,Zrのうちの1種以上、かつ、Mo,V,Wのうちの1種以上を適正量含有する鋼スラブを、凝固点から1200℃までを0.5〜5℃/secで冷却し、再加熱することなくかつ所定時間内に、800℃以上で仕上圧延を終了する熱間圧延を開始し、720〜520℃でコイルに巻き取ることにより、平均結晶粒径1〜5μmのフェライト単相からなり、粒内に析出した炭化物の平均粒径が10nm未満で、降伏応力が1000MPa以上の高強度熱延鋼板を得る。
【選択図】なし

Description

本発明は、主として自動車などの輸送機器の部材や、家電機器、重機、鋼構造体などに用いて好適な高強度熱延鋼板とその製造方法に関するものである。
近年、地球環境保護の観点から、また、乗員の安全確保の観点から、自動車車体の軽量化と高強度化を図るため、素材となる鉄鋼材料の高強度化と薄肉化が積極的に進められている。自動車車体は、鋼板を加工して得た部材や構造材から構成されているが、それらの強度は、通常、素材鋼板の引張強さTSと降伏応力YSが高いほど大となる。そのため、それらの素材となる鋼板には、高い引張強さTSに加え高い降伏応力YSが求められる。
また、高強度熱延鋼板は、外部からは直接視認されない構造物の内部部材、例えば、自動車車体ではいわゆる足回り部材(強度部材)等に適用されることが多い。このような部材では、プレスによる曲げ加工や絞り加工の他、ブランキング後、穴拡げ加工されることが多いため、伸びフランジ性に優れることも求められる。
鋼を高強度化する方法としては、従来から、合金元素を添加して固溶強化する固溶強化法や、高い転位密度を有する硬質変態相を生成させて高強度化する組織強化法、微細析出物を分散させて高強度化する析出強化法、あるいは、上記方法を組み合わせて高強度化する方法などが知られている。
これらの方法で製造される高強度鋼板の中で、鋼組織のマトリックスがフェライト単相からなり、高い降伏応力を有する析出強化型の高強度熱延鋼板としては、例えば、特許文献1に提案された、組織の大部分をポリゴナルフェライトとし、TiCを中心とした析出物による析出強化と固溶強化とを組み合わせて高強度化を図った析出強化型の高強度熱延鋼板がある。しかし、特許文献1に開示の析出強化方法は、多量のTiの添加が必要となるため、粗大な析出物が生成しやすく、得られる強度や加工性が不安定となりやすい。また、得られる強度は、降伏応力で735MPa程度でしかない。
また、特許文献2や特許文献3には、TiおよびMoの微細炭化物を析出させることによって、鋼板を安定的に高強度化する技術が開示されている。これらの文献に記載された技術は、鋼組織のマトリックスをフェライト単相とすることで加工性を確保しつつ、微細炭化物の析出強化によって高強度を確保しようとするものである。しかし、得られる鋼板の引張強さは980MPa級までであり、降伏応力も高々800MPa程度でしかない。
また、特許文献4には、実質的にフェライト単相組織である鋼中に、Ti,MoおよびVの複合炭化物を分散析出させることで980MPa以上の引張強さが得られること、そしてその実施例には、1180MPa以上の引張強さの鋼板が得られることが開示されている。しかし、この特許文献4に開示された技術は、複合炭化物の組成と大きさの双方を好ましい条件に揃えるための温度制御が難しく、得られる鋼板に所望の強度と加工性を安定して付与することができないという問題がある。
また、特許文献5には、面積率で90%以上のフェライト中に金属炭化物を微細分散させて高強度化し、強度と延性・伸びフランジ性に優れる鋼板を製造する技術が開示されている。しかし、この技術で得られる鋼板の引張強さは840MPa程度までであり、降伏応力は当然それより低い。
また、特許文献6には、実質的にフェライト単相組織である鋼板中に、Ti,Mo,Vを含む複合炭化物と、Vのみを含む炭化物を分散析出させることによって、降伏応力が1000MPa以上で曲げ特性に優れる鋼板を得る技術が開示されている。しかし、双方の炭化物を同時に存在させ、かつ、その量を好ましい条件に揃えることは難しく、所望の特性を安定して得ることができない。また、析出量を制御しただけでは、優れた伸びフランジ性を得ることはできない。
特開平06−200351号公報 特許第3637885号公報 特許第3882577号公報 特開2007−063668号公報 特開2006−152341号公報 特開2008−174805号公報
ところで、従来、連続鋳造で製造したスラブは、一旦、室温付近まで冷却し、熱間圧延する前に所定の温度に再加熱してから熱間圧延に供しており、鋳造後から室温付近まで冷却する間の温度制御はほとんどなされることはなかった。そのため、冷却後のスラブ中には粗大な析出物が多量に析出していた。また、従来、熱延鋼板の高強度化に、微細な炭化物の析出強化を利用する方法では、その析出物のサイズ等の制御は、主に熱延ラインにおけるランナウトテーブルでの冷却(温度)制御やコイル巻取温度の制御によってなされてきた。すなわち、従来の析出物を活用した高強度化法では、スラブ中に析出した炭化物等の析出物をスラブ再加熱で再溶解させた後、熱間圧延後の冷却制御や巻取温度制御によって炭化物を微細に再析出させていた。
しかしながら、スラブ中に析出した粗大な析出物は、理論上、全量再溶解できるオーステナイト単相域まで加熱したとしても、スラブ加熱時に再溶解できる量には限界があり、全量を再溶解させることは難しい。そのため、従来技術では、高強度化に限界があり、1000MPa級の降伏応力を有する鋼を安定的に製造することが困難であった。
また、組織微細化により高強度化する方法も、同様に、熱間圧延後の冷却制御や巻取温度制御を利用してミクロ組織の制御を行っている。しかし、従来技術では、スラブの鋳造から熱延に至る高温域の温度制御がなされていないため、得られた鋼板中には、伸びフランジ性に好ましくないミクロ組織や析出物が存在していた。
本発明は、従来技術が抱える上記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、1000MPa以上の降伏応力を有し、かつ、伸びフランジ性にも優れる高強度熱延鋼板を安定して提供するとともに、その有利な製造方法を提案することにある。
発明者らは、上記課題を解決するべく、スラブの鋳造から熱延に至るまでの温度制御が、鋼板の強度や伸びフランジ性に及ぼす影響に着目して鋭意研究を重ねた。その結果、スラブの鋳造から熱延に至るまでの温度と時間を適正に制御することによって、合金元素のマクロ・ミクロ偏析を抑制すると同時に、粗大な硫化物や窒化物の析出を抑制しつつ微細炭化物の析出を促進し、かつ、フェライト結晶粒径を最適化することによって、安定して1000MPa以上の降伏応力を有し、かつ、伸びフランジ性にも優れる高強度鋼板が得られることを見出し、本発明を開発するに至った。
上記知見に基づく本発明は、C:0.08〜0.5mass%、Si:0.2mass%以下、Mn:1.5mass%以下、P:0.03mass%以下、S:0.005mass%以下、Al:0.05mass%以下、N:0.005mass%以下およびCa:0.01mass%以下を含有し、さらに、Ti:0.04〜2.0mass%、Nb:0.05〜3.0mass%およびZr:0.05〜3.5mass%のうちから選ばれる1種または2種以上、かつ、Mo:0.01〜0.5mass%、V:0.01〜1.0mass%およびW:0.01〜1.0mass%のうちから選ばれる1種または2種以上を、下記(1)式;
0.7≦(Ti/48+Nb/93+Zr/91+Mo/96+V/51+W/184)/(C/12)≦1.2 ・・・(1)
(上記(1)式中の元素記号は、それぞれの元素の含有量(mass%)を表わす。)
を満たして含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる成分組成を有する鋼スラブを、熱間圧延して得た熱延鋼板であって、鋼組織が平均結晶粒径1〜5μmのフェライト単相からなり、当該フェライト粒内に析出した炭化物の平均粒径が10nm未満で、降伏応力が1000MPa以上であることを特徴とする高強度熱延鋼板である。
本発明の高強度熱延鋼板は、上記成分組成に加えてさらに、Cr,Hf,Ta,Be,B,Cu,Ni,Au,Ag,Co,Pt,Sb,Sn,Zn,Ca,MgおよびREMのうちから選ばれる1種または2種以上を合計で2mass%以下含有することを特徴とする。
また、本発明の高強度熱延鋼板は、上記成分組成に加えてさらに、As,Cs,Pb,SeおよびSrのうちから選ばれる1種または2種以上を合計で2mass%以下含有することを特徴とする。
また、本発明の高強度熱延鋼板は、上記熱間圧延して得た鋼板の表面にめっき層を形成してなることを特徴とする。
また、本発明の高強度熱延鋼板における上記めっき層は、亜鉛系めっき層であることを特徴とする。
また、本発明の高強度熱延鋼板における上記亜鉛系めっき層は、溶融亜鉛めっき層または合金化溶融亜鉛めっき層であることを特徴とする。
また、本発明は、上記のいずれかに記載の成分組成を有する鋼を溶製し、連続鋳造して得た鋼スラブを、凝固点から1200℃までを0.5〜5℃/secで冷却し、その後、前記鋼スラブを再加熱することなく、連続鋳造機が曲げ矯正部を有する場合においては曲げ矯正点を通過後30min以内に、連続鋳造機が曲げ矯正部を有しない場合においては最終ピンチロールを通過後30min以内に、800℃以上で仕上圧延を終了する熱間圧延を開始し、720〜520℃の温度でコイルに巻き取ることにより、鋼組織が平均結晶粒径1〜5μmのフェライト単相からなり、当該フェライト粒内に析出した炭化物の平均粒径が10nm未満で、降伏応力が1000MPa以上の熱延鋼板を得る高強度熱延鋼板の製造方法を提案する。
本発明の高強度熱延鋼板の製造方法は、上記鋼スラブの製造に、湾曲部における曲率半径R(m)と鋼スラブの厚さt(m)との比(R/t)が25以上である連続鋳造機を用いることを特徴とする。
また、本発明の高強度熱延鋼板の製造方法は、上記熱間圧延して得た鋼板の表面に、めっき層を形成することを特徴とする。
本発明によれば、従来、熱間圧延前のスラブ中に粗大に析出していた炭化物を微細化するとともに、ミクロ組織を最適化することができるので、降伏応力が1000MPa以上でかつ伸びフランジ性に優れる高強度熱延鋼板を安定して製造し、提供することが可能となる。
まず、本発明の高強度熱延鋼板の成分組成について説明する。
C:0.08〜0.5mass%
Cは、鋼の析出強化に必要な炭化物の形成に必須の元素である。Cが0.08mass%未満では、析出物の量が少なく、1000MPa以上の降伏応力を安定して得ることが難しい。一方、0.5mass%を超える添加は、溶接性の低下を招いたり、高温で炭化物が粗大に析出するようになり、得られる鋼板の強度が低下したり、伸びフランジ性を低下させたりする。よって、Cは0.08〜0.5mass%の範囲とする。好ましくは0.1〜0.4mass%の範囲である。
Si:0.2mass%以下
Siは、脱酸剤として添加される元素であり、また、鋼を固溶強化する元素として、従来から積極的に利用されてきた。しかし、Siは、フェライトからのC析出を促進する作用があり、粒界に粗大な炭化物を析出させ易くするため、できる限り低減するのが望ましい。そのため、本発明では、Siは0.2mass%以下とする。好ましくは0.1mass%以下である。
Mn:1.5mass%以下
Mnは、鋼を固溶強化する有用な元素である。しかし、Mnは、Siと同様、最終凝固部にマクロ偏析やミクロ偏析して組織を不均一化し、炭化物を均一微細に析出するのを阻害する元素である。また、焼入性を高める効果があるため、ベイナイトやマルテンサイトを生成して、鋼組織をフェライト単相化し、その粒内に析出物を微細に析出させ難くする元素でもある。よって、本発明では、Mnは1.5mass%以下とする。好ましくは1.0mass%以下である。
P:0.03mass%以下
Pは、Siと同様、粒界に粗大な炭化物を析出させやすくするとともに、Mn同様、凝固時に最終凝固部に濃化して組織を不均一化し、穴拡げ性や伸びフランジ性を低下させる元素であるため、できる限り低減するのが望ましい。そのため、Pは0.03mass%以下とする。好ましくは0.01mass%以下である。
S:0.005mass%以下
Sは、硫化物を形成するが、特に板状の硫化物は、伸びフランジ性を低下させるので、Sは少ないほど望ましい。よって、本発明では、Sの上限を0.005mass%とする。好ましくは0.004mass%以下である。
Al:0.05mass%以下
Alは、鋼の脱酸剤として添加される元素である。しかし、過剰に添加すると、アルミナなどの非金属介在物の生成量が増大し、内部品質や表面品質に悪影響を及ぼすだけでなく、伸びフランジ性にも悪影響を及ぼすようになる。よって、Alは上限を0.05mass%とする。
N:0.005mass%以下
Nは、Ti,NbおよびZrと結合して窒化物を形成し、析出強化に寄与する炭化物形成元素を消費してしまう有害元素である。また、粗大な窒化物の存在は、伸びフランジ性を低下させる。よって、Nの上限は0.005mass%とする。好ましくは0.004mass%以下である。
Ca:0.01mass%以下
Caは、硫化物を球状化し、Sの加工性への悪影響を軽減する効果を有する。この効果を得るためには、0.001mass%以上添加するのが好ましい。しかし、0.01mass%を超えて添加すると、穴拡げ性と伸びフランジ性の低下を招く。よって、本発明では、Caの添加量を0.01mass%以下とする。
本発明の高強度熱延鋼板は、高い強度(降伏応力)を安定して確保する観点から、上記成分に加えてさらに、炭化物形成元素であるTi,NbおよびZrのうちから選ばれる1種または2種以上を下記の範囲で含有する必要がある。
Ti:0.04〜2.0mass%
Tiは、微細な炭・窒化物を形成して析出し、鋼の高強度化に寄与する有用な元素である。しかし、Tiの含有量が0.04mass%未満では、1000MPa以上の降伏応力を安定して得ることは難しい。一方、2.0mass%を超える添加は、粗大なTi酸化物が生成し、これに炭・窒化物が凝集して析出強化能が低下するため、やはり、所望の降伏応力を安定して得られなくなる。よって、Tiを添加する場合には0.04〜2.0mass%の範囲とする。
Nb:0.05〜3.0mass%
Nbは、Tiと同様、炭・窒化物を形成して析出し、鋼の高強度化に寄与する有用な元素である。しかし、Nbの含有量が0.05mass%未満では、1000MPa以上の降伏応力を安定して得ることは難しい。一方、3.0mass%を超える添加は、粗大なNb炭・窒化物が生成して凝集し、所望の降伏応力を安定して得られなくなる。よって、Nbを添加する場合には0.05〜3.0mass%の範囲とするとする。
Zr:0.05〜3.5mass%
Zrは、TiやNbと同様、炭・窒化物を形成して析出し、鋼の高強度化に寄与する有用な元素である。しかし、Zrの含有量が0.05mass%未満では、1000MPa以上の降伏応力を安定して得ることは難しい。一方、3.5mass%を超える添加は、粗大なZr酸化物が生成し、これに炭・窒化物が凝集して、所望の降伏応力を安定して得られなくなる。よって、Zrを添加する場合には0.05〜3.5mass%の範囲とするとする。
また、本発明の高強度熱延鋼板は、より安定して高強度を確保する観点から、上記の成分に加えてさらに、Mo,VおよびWのうちから選ばれる1種または2種以上を下記の範囲で含有する必要がある。しかし、Mo,VおよびWは、Ti,NbおよびZrと比較して炭化物形成能が弱く、これらを添加する場合には、他の炭化物形成元素と複合して添加することで、安定した微細炭化物を形成することが可能となる。したがって、Ti,NbおよびZrのうちから選ばれる1種または2種以上を添加した上で、さらに、Mo,VおよびWのうちのいずれか1種または2種以上を下記の範囲で添加する必要がある。
Mo:0.01〜0.5mass%
Moは、微細な炭化物を形成して析出し、鋼の高強度化に寄与する有用な元素である。しかし、Moの含有量が0.01mass%未満では、1000MPa以上の降伏応力を安定して得ることは難しい。一方、0.5mass%を超える添加は、粗大なMo酸化物が生成し、これに炭化物が凝集して析出強化能が低下するため、やはり、1000MPa以上の降伏応力を安定して得られなくなる。よって、Moを添加する場合には0.01〜0.5mass%の範囲とする。
V:0.01〜1.0mass%
Vは、微細な炭窒化物を形成して析出し、鋼の高強度化に寄与する有用な元素である。しかし、Vの含有量が0.01mass%未満では、1000MPa以上の降伏応力を安定して得ることは難しい。一方、1.0mass%を超える添加は、粗大なV酸化物が生成し、これに炭窒化物が凝集して析出強化能が低下するため、やはり、1000MPa以上の降伏応力を安定して得られなくなる。よって、Vを添加する場合には0.01〜1.0mass%の範囲とする。
W:0.01〜1.0mass%
Wは、微細な炭化物を形成して析出し、鋼の高強度化に寄与する有用な元素である。しかし、Wの含有量が0.01mass%未満では、1000MPa以上の降伏応力を安定して得ることは難しい。一方、1.0mass%を超える添加は、粗大なW酸化物が生成し、これに炭化物が凝集して析出強化能が低下するため、やはり、1000MPa以上の降伏応力を安定して得られなくなったり、降伏比も80%以上を確保できなくなったりする。よって、Wを添加する場合には0.01〜1.0mass%の範囲とする。
さらに、本発明の高強度熱延鋼板は、さらに安定して高強度を確保する観点から、Ti,NbおよびZrから選ばれる1種以上に加えて、さらに、Mo,VおよびWから選ばれる1種以上を添加する場合には、下記(1)式;
0.7≦(Ti/48+Nb/93+Zr/91+Mo/96+V/51+W/184)/(C/12)≦1.2 ・・・(1)
(上記(1)式中の元素記号は、それぞれの元素の含有量(mass%)を表わす。ただし、含有していない成分の場合は、0として計算する。)
を満たして含有することが必要である。
ここで、上記(1)式は、Cの原子数に対する、Cと微細析出物を形成するTi,Nb,Zr,Mo,VおよびWの合計原子数の比、すなわち、Cと炭化物形成元素の原子数比を表している。この比が、0.7未満となると高い降伏応力が得られなくなり、一方、1.2を超えると、炭化物が粗大化し、やはり高い降伏応力が得られなくなるので上記範囲とする。なお、好ましくは、上記(1)式の左辺の値は0.75、右辺の値は1.15である。
Cr,Hf,Ta,Be,B,Cu,Ni,Au,Ag,Co,Pt,Sb,Sn,Zn,MgおよびREMのうちから選ばれる1種または2種以上:合計で2mass%以下
Cr,HfおよびTaは、上述したTi,NbおよびZrと同様、鋼中で積極的に炭化物を形成して高強度化に寄与する元素であり、また、BeおよびBは、固溶強化や粒界強化に寄与する元素であるので、より高強度を得たい場合の強化元素として適宜添加することができる。
また、Cuは、通常、スクラップ等から混入してくる不純物元素であるが、鋼の高強度化にも有効な元素である。そこで、本発明においては、Cuの混入をある程度許容することとし、リサイクル資源であるスクラップを積極的に活用し、原料コストの低減を図ることを可能とした。なお、本発明の鋼板では、Cuの材質に及ぼす影響は小さいが、過剰に混入すると、熱間圧延時に熱間脆性による割れに起因した表面欠陥を発生する原因ともなるので、Cu含有量の上限は0.3mass%程度に制限するのが好ましい。
なお、上記元素のうち、Cr,BおよびCuは、Mnと同様、焼入性を高める元素であり、焼入性が高くなり過ぎると、ベイナイトやマルテンサイトが生成して、フェライト単相組織を得にくくなり、フェライト粒内への微細析出を阻害するようになる。よって、これらの元素は各々または合計で1mass%以下とすることが望ましい。
また、Niは、鋼板の材質に及ぼす影響は小さいが、Cu添加による熱間脆性を防止し、表面品質を向上するのに有効な元素である。この効果は、Cu含有量の1/2以上の添加で得られるので、Cuを含有する場合には、Cu含有量の1/2以上のNiを添加するのが好ましい。しかし、Niの過剰な添加は、スケールの不均一性に起因する表面欠陥を引き起こす原因となるので、上限は0.3mass%程度とするのが好ましい。
また、Au,Ag,Co,Pt,Sb,SnおよびZnは、表面の酸化や窒化、あるいは、酸化により生じる鋼板表層数十ミクロン領域の脱炭を抑制し、疲労特性や耐時効性等を改善する効果があるので、適宜添加することができる。ただし、Snは、上記の効果を得るためには0.005mass%以上の添加が望ましいが、過剰の添加は、鋼の靭性の低下を招くので、上限は0.2mass%程度とするのが好ましい。
また、MgおよびREMは、いずれも介在物の形態制御を介して、加工性を向上するのに有効な元素であるので適宜添加することができる。
なお、上記の選択的に添加する元素は、上記観点から添加するが、それらの元素の添加量の合計は2mass%以下に制限するのが好ましい。2mass%を超えると、析出物の粗大化を招き、高い降伏応力を得ることを難しくする他、成形性の低下や合金コストの上昇を招くからである。
As,Cs,Pb,SeおよびSrのうちから選ばれる1種または2種以上:合計で2mass%以下
As,Cs,Pb,SeおよびSrは、本発明においては不可避的不純物として位置付けられる元素である。しかし、これらの元素は、スクラップの使用量が増加している昨今においては増加する傾向にあり、除去するのに、多大の精錬コストを要している。しかし、これらの元素は、合計の含有量が2mass%以下であれば、本発明の効果を特に害することもない。よって、これらの元素は、合計で2mass%以下の範囲内であれば許容することとする。
次に、本発明の高強度熱延鋼板の鋼組織および析出物について説明する。
本発明の高強度熱延鋼板は、炭化物を微細に析出させることによって高強度化し、1000MPa以上の高い降伏応力を実現するため、鋼組織のマトリックスは実質的に微細炭化物が析出したフェライト単相であることが必要である。ベイナイトやマルテンサイト組織では、可動転位が多量に導入されるため、降伏応力が低下する。また、パーライトが出現すると、セメンタイトの生成によってCが消費され、微細炭化物の析出が抑制されるため、やはり高い降伏応力が得られなくなる。また、複相になると、相間の硬さの違いに起因して、良好な伸びフランジ性が得られなくなるからである。
ただし、フェライト以外の相の合計が面積率で5%程度以下であれば許容され得る。
また、上記フェライト相の平均結晶粒径は、1〜5μmの範囲であることが必要である。結晶粒の微細化は、降伏応力を高めるだけでなく、加工により導入される亀裂の進展を抑制する効果を高めるため、伸びフランジ性をも向上するからである。しかし、過度の微細化は、却って延性を損ねて、伸びフランジ性を低下させることにもなる。そこで、本発明では、フェライト相の平均結晶粒径を1〜5μmの範囲とする。
また、本発明の高強度熱延鋼板は、降伏応力1000MPa以上の高強度を達成するため、上記フェライト相中に析出した炭化物の大きさを100nm以下に微細化することが必要である。ここで、上記炭化物の最大径とは、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて、抽出レプリカ法、薄膜法または分散レプリカ法などで析出した炭化物の大きさ(粒径)を、少なくとも30個測定したときの平均値xに標準偏差σの3倍を加えた(x+3σ)に相当する径のことをいう。炭化物の最大径が100nmを超えるようになると、1000MPa以上の降伏応力を安定して確保することが難しくなるからである。
本発明の高強度熱延鋼板は、上記の成分組成、鋼組織(相、粒径)、析出した炭化物の大きさの全ての条件を満たす場合にのみ、降伏応力YSが1000MPa以上を安定して確保することができるとともに、優れた伸びフランジ性を確保することができる。
次に、本発明の高強度熱延鋼板の製造方法について説明する。
本発明の高強度熱延鋼板は、前述した成分組成に調整した鋼を転炉や電気炉、真空脱ガス装置等を用いる常法の精錬プロセスで溶製し、連続鋳造して得た鋼スラブを、凝固点から1200℃までを5℃/sec以下で冷却し、その後、該スラブを再加熱することなく、曲げ部および曲げ矯正部を有する連続鋳造機においては曲げ矯正点を通過後30min以内に、矯正部を有しない連続鋳造機においては最終ピンチロールを通過後30min以内に、800℃以上で仕上圧延を終了する熱間圧延を開始し、720〜520℃の温度でコイルに巻き取ることで製造する。
なお、上記鋼スラブは、100mm以上の厚さを有する通常の鋼スラブであってもよいし、100mm以下の厚さのいわゆる薄スラブであってもよい。
また、連続鋳造後、熱間圧延機までの搬送中の鋼スラブあるいは熱間圧延中のシートバーの幅方向端部(エッジ部)をエッジヒータ等で加熱して温度を上げることは、材質上問題なく、むしろ、圧延温度が幅方向で一様になり、板幅方向の材質を均一化できるので、好ましい。この場合、熱延開始時のスラブ端部の温度を1000℃以上にできれば、スラブ厚中心部の下限温度はAr変態点直上でも許容できる。なお、エッジヒータの加熱方式は、ガス燃焼法でも抵抗加熱や誘導加熱などの電磁気的な加熱法でもよい。
また、スラブやシートバーの搬送時の温度降下を抑えるため、搬送ルートをトンネル路としたり、搬送ルートに保熱カバーを設けたりして、エッジ部の冷却を抑制してもよい。この場合、燃料や電気を使用しないので経済的である。
前述したように、降伏応力1000MPa以上の高強度熱延鋼板を製造するためには、熱間圧延後の鋼板中に析出した炭化物の大きさを微細化してやることが必要である。そのためには、連続鋳造後から熱間圧延前のスラブ中に、粗大な炭化物を析出させないことが重要となる。というのは、発明者らの研究によれば、粗大な炭化物は、鋳造後のスラブがδフェライト領域に存在するときに核が形成され、それが粗大化して形成されることが明らかとなっている。その理由は、炭化物を形成するTi,Nb,Zr等の元素の鋼への溶解度は、面心立方格子(FCC)であるγオーステナイト相に比べて、体心立方格子(BCC)であるδフェライト相は小さい。そのため、スラブ冷却時に液相がδフェライト相になると、炭化物形成元素が急激に過飽和となり、炭化物が析出しやすくなるからである。特に、高温のδフェライトでは、拡散速度が大きいため、短時間で析出して粗大化し易い。
したがって、粗大な炭窒化物の析出を防止し、降伏応力1000MPa以上の高強度熱延鋼板を安定して得るためには、鋳造後のスラブの冷却速度を高めて、Ti,Nb,Zr等の炭化物が析出し易いδフェライト温度域を短時間で通過させる必要がある。
そこで、本発明では、連続鋳造で製造した鋼スラブを冷却する際は、δフェライト領域、すなわち、凝固点から1200℃までの平均冷却速度を0.5℃/sec以上とするのが好ましい。0.5℃/sec未満では、δフェライト中に炭化物の核が形成され、熱延前に炭化物が粗大化しやすいため、熱間圧延後の析出強化能が低下し、1000MPa以上の降伏応力を安定して確保することが難しくなるからである。好ましくは1.0℃/sec以上である。
一方、凝固開始から1200℃までの冷却速度が5℃/secを超えると、凝固時に形成されたミクロ偏析が熱延後の鋼板にも残存し、鋼板中の組織が不均一となるため、伸びフランジ性を大きく低下させる。よって、上限の冷却速度は5℃/secとする。
なお、本発明における上記凝固点および1200℃の温度は、スラブ表面温度から伝熱計算で得られるスラブ厚中心部の温度である。
また、発明者らの研究によれば、連続鋳造した鋼スラブに付与される歪は、炭化物の析出を促進することが明らかとなっている。現在、鋼スラブの製造に用いられている連続鋳造機には、曲げ部および矯正部を有しない垂直型と、湾曲部(曲げ部)と矯正部からなる湾曲型、垂直部と湾曲部と矯正部からなる垂直曲げ型がある。上記矯正部では、湾曲したスラブの矯正によって歪が導入されるが、この歪は、炭化物の析出を促進するため、スラブ中(熱延前)に析出して粗大化を促す原因となる。そこで、本発明の効果を享受するためには、連続鋳造機における矯正による歪を低減するため、湾曲部の曲率半径R(m)とスラブ厚t(m)と比(R/t)を25以上とするのが好ましい。より好ましくは28以上である。
また、本発明は、炭化物が析出しやすい高温域での滞留時間、具体的には、矯正部を有する連続鋳造機においては矯正点を通過してから熱間圧延開始までの時間、矯正部を有しない連続鋳造機においては最終ピンチロールを通過してから熱間圧延を開始するまでの時間を30min以内に制限することによって、高温域における炭化物の析出および粗大化を抑制することとした。
上記のようにして得た鋼スラブは、その後、再加熱することなく熱間圧延して所定の板厚の熱延板(高強度熱延鋼板)とする。すなわち、通常、熱間圧延するに当たっては、スラブを一旦室温近傍まで冷却して冷片とした後、加熱炉に装入して所定の温度に再加熱するのが一般的であるが、本発明では、連続鋳造後のスラブは、再加熱を施すことなく、そのまま熱間圧延に供する。
この際、スラブの温度(中心温度)は、後述する仕上圧延終了温度を確保するため、1000℃未満に冷却しないことが望ましい。ただし、仕上圧延終了温度を確保できる場合には、900℃まで冷却してもよい。900℃未満まで冷却すると、再び炭化物形成元素の固溶限が小さいαフェライト相が出現し始め、炭化物の析出が促進されるので好ましくない。
また、上記熱間圧延は、仕上圧延を800℃以上の温度で終了することが必要である。ここで、上記熱間圧延における仕上圧延終了温度を800℃以上とする理由は、800℃を下回ると、加工オーステナイト中に炭化物が析出し、粗大化して、降伏応力1000MPa以上の高強度が得られなくなるからである。好ましくは、仕上圧延終了温度は820℃以上である。しかし、仕上圧延終了温度が高すぎると、γ粒が粗大化し、微細なフェライト(1〜5μm)を得ることができなくなるため、上限は900℃とする。なお、上記仕上圧延終了温度および後述する巻取温度は、鋼板表面を測定した温度である。
また、上記仕上圧延終了温度を確保するためには、熱間圧延の圧延開始温度は1000℃以上とするのが好ましい。ただし、熱間圧延を開始する温度が1000℃程度まで低下すると、圧延負荷が増大して、通常の粗圧延、仕上圧延からなる熱間圧延することが難しくなる。そのような場合には、厚さが100mm以下の薄スラブを採用してもよい。さらに、この際には、粗圧延を省略してもよい。薄スラブを採用し、粗圧延を省略した場合には、熱間圧延を開始する温度は900℃以上とすることができる。この場合、高温でのスラブ滞留時間を短くすることができるので、炭化物の粗大化を抑制する上でも好ましい。
上記の熱間圧延により所定の板厚とした熱延鋼板(鋼帯)は、その後、冷却してコイルに巻き取る。このときの巻取温度は、Ti,Nb,Zr等の炭窒化物を、フェライト中に均一かつ微細に析出させ、そのピン止め効果によってフェライト粒を細粒化し、高強度化を図る観点から、520〜720℃の範囲とする必要がある。巻取温度が520℃未満では、ベイナイト主体の組織となり、フェライト単相組織とすることができず、かつ、フェライト粒内に微細炭化物が十分に析出せず、所望の降伏応力を得ることができない。一方、巻取温度が720℃を超えると、析出した炭化物が粗大化して析出強化能が低下し、やはり、所望の引降伏比応力を得ることができなくなるからである。なお、巻取温度は、鋼板表面を測定した温度である。
上記のようにして得た本発明の高強度熱延鋼板は、降伏応力が1000MPa以上でかつ優れた伸びフランジ性に有するものとなる。また、本発明の高強度熱延鋼板が有するこの優れた特性は、電気亜鉛めっきは勿論のこと、熱処理を伴う溶融亜鉛めっきや、溶融亜鉛めっき後の合金化処理によっても、そのまま維持することができる。したがって、本発明の高強度熱延鋼板は、電気亜鉛めっき、溶融亜鉛めっきおよび合金化溶融亜鉛めっき等のめっき層を鋼板表面に形成する表面処理鋼板の素材として好適に用いることができる。なお、上記めっき層は、亜鉛系のめっき層に限定されるものではなく、Al系、Ni系その他金属のめっき層でもよいことは勿論である。
C:0.18mass%、Si:0.02mass%、Mn:1.30mass%、P:0.020mass%、S:0.001mass%、Al:0.04mass%、N:0.003mass%、Ca:0.0015mass%、Ti:0.19mass%、Mo:0.3mass%およびV:0.41mass%を含有し((Ti/48+Nb/93+Zr/91+Mo/96+V/51+W/184)/(C/12):1.01)、残部がFeおよび不可避的不純物からなる成分組成の鋼を溶製し、垂直曲げ型連続鋳造機を用いて、曲げ部の曲率半径R(m)とスラブ厚t(m)におけるR/tを26.7〜36.4の範囲で鋼スラブとした後、凝固点から1200℃までを表1に示す冷却速度で冷却した後、再加熱することなく、同じく表1に示した条件で熱間圧延し、各種板厚の熱延鋼板とした。なお、一部のスラブについては、室温RTまで冷却後、再加熱し、あるいは、粗圧延を省略した。
また、上記のようにして得た熱延鋼板の一部については、その後、酸洗してスケールを除去した後、連続溶融亜鉛めっきラインCGLに通板し、650〜850℃の焼鈍を施した後、溶融亜鉛めっき槽に浸漬して溶融亜鉛めっき鋼板GIとするか、その後、さらに、500〜550℃で合金化処理を施して合金化溶融亜鉛めっき鋼板GAとした。
さらに、上記のようにして得た熱延鋼板の一部については、その後、酸洗してスケールを除去した後、電気亜鉛めっきラインEGLに通板し、Zn−Ni系の電気亜鉛めっき鋼板EGとした。
Figure 2014208884
斯くして得た熱延鋼板からサンプルを採取し、光学顕微鏡および走査型電子距微鏡(SEM)を用いて鋼板組織を確認するとともに、圧延方向断面のフェライト粒の平均粒径を線分法で測定した。また、上記サンプルからL方向を引張方向とするJIS5号引張試験片を採取し、JIS Z2241に準拠して引張試験を行い、降伏応力YSを測定した。
また、穴拡げ試験を行い、伸びフランジ性を評価した。ここで、上記穴拡げ試験では、先端角度が60°のポンチを用いて、直径10mmの打抜き穴に押し込み、発生した亀裂が試験片の板厚を貫通した時点の穴径dを計測し、次式により穴拡げ率(λ)を求めた。
λ(%)={(d−d)/d}×100
(d:亀裂が板厚を貫通した時の穴径、d:初期径)
それらの結果を製造条件とともに表1に示した。表1から、本発明の条件をすべて満たすNo.1〜6の鋼板(発明例)は、いずれも降伏応力YSが1000MPa以上で、優れた穴拡げ率λが得られている。これに対して、いずれかの製造条件が本発明を外れているNo.7〜14の鋼板(比較例)は、いずれも降伏応力が1000MPa未満であるか、良好な穴拡げ率が得られていない。
また、本発明の条件をすべて満たすNo.15〜17の鋼板(発明例)は、電気亜鉛めっき後は勿論のこと、熱処理を伴う溶融亜鉛めっき後や、その後、合金化処理を施した後も、上記優れた特性をそのまま維持できていることがわかる。
表2に示す成分組成を有する符号A〜Pの鋼を溶製し、垂直曲げ型連続鋳造機を用いて、曲げ部の曲率半径R(m)とスラブ厚t(m)におけるR/tを26.7〜36.4の範囲で鋼スラブとした後、凝固点から1200℃までを表3に示す冷却速度で冷却した後、再加熱することなく、同じく表3に示した条件で熱間圧延し、各種板厚の熱延鋼板とした。なお、一部のスラブについては、室温RTまで冷却後、再加熱し、あるいは、粗圧延を省略した。
斯くして得た熱延鋼板からサンプルを採取し、光学顕微鏡および走査型電子距微鏡(SEM)を用いて鋼板組織を確認するとともに、圧延方向断面のフェライト粒の平均粒径を線分法で測定した。また、上記サンプルからL方向を引張方向とするJIS5号引張試験片を採取し、JIS Z2241に準拠して引張試験を行い、降伏応力YSを求めた。また、実施例1と同様にして、穴拡げ率λを測定し、伸びフランジ性を評価した。
Figure 2014208884
Figure 2014208884
それらの結果を製造条件とともに表3に示した。表2および表3から、本発明の条件をすべて満たす符号A〜Iの鋼板(発明例)は、いずれも降伏応力が1000MPa以上で、優れた穴拡げ率が得られている。これに対して、いずれかの製造条件が本発明を外れている符号J〜Pの鋼板(比較例)は、いずれも降伏応力が1000MPa未満であるか、良好な穴拡げ率が得られていないことがわかる。

Claims (10)

  1. C:0.08〜0.5mass%、Si:0.2mass%以下、Mn:1.5mass%以下、P:0.03mass%以下、S:0.005mass%以下、Al:0.05mass%以下、N:0.005mass%以下およびCa:0.01mass%以下を含有し、さらに、Ti:0.04〜2.0mass%、Nb:0.05〜3.0mass%およびZr:0.05〜3.5mass%のうちから選ばれる1種または2種以上、かつ、Mo:0.01〜0.5mass%、V:0.01〜1.0mass%およびW:0.01〜1.0mass%のうちから選ばれる1種または2種以上を、下記(1)式を満たして含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる成分組成を有する鋼スラブを、熱間圧延して得た熱延鋼板であって、
    鋼組織が平均結晶粒径1〜5μmのフェライト単相からなり、当該フェライト粒内に析出した炭化物の平均粒径が10nm未満で、降伏応力が1000MPa以上であることを特徴とする高強度熱延鋼板。

    0.7≦(Ti/48+Nb/93+Zr/91+Mo/96+V/51+W/184)/(C/12)≦1.2 ・・・(1)
    (上記(1)式中の元素記号は、それぞれの元素の含有量(mass%)を表わす。)
  2. 上記成分組成に加えてさらに、Cr,Hf,Ta,Be,B,Cu,Ni,Au,Ag,Co,Pt,Sb,Sn,Zn,MgおよびREMのうちから選ばれる1種または2種以上を合計で2mass%以下含有することを特徴とする請求項1に記載の高強度熱延鋼板。
  3. 上記成分組成に加えてさらに、As,Cs,Pb,SeおよびSrのうちから選ばれる1種または2種以上を合計で2mass%以下含有することを特徴とする請求項1または2に記載の高強度熱延鋼板。
  4. 前記熱間圧延して得た鋼板の表面にめっき層を形成してなることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の高強度熱延鋼板。
  5. 前記めっき層は、亜鉛系めっき層であることを特徴とする請求項4に記載の高強度熱延鋼板。
  6. 前記亜鉛系めっき層は、溶融亜鉛めっき層であることを特徴とする請求項5に記載の高強度熱延鋼板。
  7. 前記亜鉛系めっき層は、合金化溶融亜鉛めっき層であることを特徴とする請求項5に記載の高強度熱延鋼板。
  8. 請求項1〜3のいずれか1項に記載の成分組成を有する鋼を溶製し、連続鋳造して得た鋼スラブを、凝固点から1200℃までを0.5〜5℃/secで冷却し、その後、前記鋼スラブを再加熱することなく、連続鋳造機が曲げ矯正部を有する場合においては曲げ矯正点を通過後30min以内に、連続鋳造機が曲げ矯正部を有しない場合においては最終ピンチロールを通過後30min以内に、800℃以上で仕上圧延を終了する熱間圧延を開始し、720〜520℃の温度でコイルに巻き取ることにより、
    鋼組織が平均結晶粒径1〜5μmのフェライト単相からなり、当該フェライト粒内に析出した炭化物の平均粒径が10nm未満で、降伏応力が1000MPa以上の熱延鋼板を得る高強度熱延鋼板の製造方法。
  9. 前記鋼スラブの製造に、湾曲部における曲率半径R(m)と鋼スラブの厚さt(m)との比(R/t)が25以上である連続鋳造機を用いることを特徴とする請求項8に記載の高強度熱延鋼板の製造方法。
  10. 前記熱間圧延して得た鋼板の表面に、めっき層を形成することを特徴とする請求項8または9に記載の高強度熱延鋼板の製造方法。

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