JP2014208507A - 車両前部構造 - Google Patents

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Abstract

【課題】車体に対するフードの位置を調整しても、フードの開閉機能を維持し、さらにフードクッションによる緩衝機能も維持する。
【解決手段】車両のフード106の閉状態を維持するストライカ108は、ストライカリンフォース120を介してフード106に取り付けられている。ストライカリンフォース120は、フードインナパネル106Bに溶接面124A、134Aによって溶接され、車体側に設けられた第1のフードクッション130に、接触面128Aによって接触する。溶接面124A、134Aおよび接触面128Aは、互いに平行である。
【選択図】図4

Description

本発明は、車両前部のエンジンルームを覆うフードと、フードに取り付けられ、エンジンルームの前部に設けられたロック機構と嵌合してフードの閉状態を維持するストライカとを備える車両前部構造に関するものである。
車両前部のエンジンルームを覆うフードの前端には、通常、ストライカが取り付けられている。フードを閉じると、ストライカはエンジンルームの前部に設けられたロック機構と嵌合して、フードの閉状態を維持する。
従来、例えば特許文献1および特許文献2に開示されているように、ストライカを、フードを補強するストライカリンフォースを介してフードに取り付ける技術がある。ストライカリンフォースは、特許文献1ではボルトによって、特許文献2では溶接によって、フードに取り付けられている。
また、例えば特許文献3および特許文献4に開示されているように、フードやストライカに、フード閉鎖時の衝撃を緩衝するフードクッションとの接触面を設ける技術が開示されている。
ところで、フードと周辺部品との見切り(部品間の隙間)を一定に保って車両の外観を向上させるため、フードの車体に対する位置を調整する必要が生じることがある。車両1台毎にフード位置の調整を行うのが理想であるが、量産車の工場で1台毎に調整を実施するのは現実的には無理がある。
量産型の車両を工場で生産していて、所定の範囲内に収まっていた見切りに突然大きなズレが発生することは少なく、多くの場合、少しずつズレが拡大してゆく。よって、通常は、数台おき、あるいは数十台おきに見切りをチェックし、所定の範囲を超えるズレが発生した場合に調整を行っている。
特開2003−212154号公報 特開2009−274538号公報 特開平11−91627号公報 実公平2−11564号公報
しかし、フードの位置を調整すると、ストライカリンフォースを介してフードに一体的に取り付けられているストライカも移動する。そのため、ストライカがロック機構と嵌合しなくなってしまうことがある。そこで、フードに対するストライカリンフォースの溶接位置を変更して、ロック機構との嵌合が可能な位置までストライカを移動させることが考えられる。
しかしながら、フードとストライカリンフォースとの当初の溶接形態によっては、所望の溶接位置へ変更しようとしても両者が干渉してしまうために、溶接位置の変更が物理的にできない場合がある(例えば特許文献1〜4)。また、仮にストライカリンフォースの溶接位置を変更できたとしても、その結果ストライカリンフォースの姿勢が変われば、ストライカの姿勢も変わるため、ストライカとロック機構との嵌合が不可能になってしまうおそれがある。さらに、たとえストライカとロック機構との嵌合が可能であっても、こんどは、ストライカリンフォースと車体側の部品とが干渉するおそれがある。これによってフードクッションの衝撃吸収機能に支障をきたすおそれがある。
本発明は、このような課題に鑑み、車両の外観を向上させるために車体に対するフードの位置を調整しても、ストライカをロック機構に嵌合させてフードの開閉機能を維持し、さらに、ストライカリンフォースのフードクッションに対する適切な接触も維持してフードクッションによる緩衝機能も維持することが可能な車両前部構造を提供することを目的としている。
上記課題を解決するために、本発明にかかる車両前部構造の代表的な構成は、車両前部のエンジンルームを覆うフードと、フードに取り付けられ、エンジンルームの前部に設けられたロック機構と嵌合してフードの閉状態を維持するストライカとを備える車両前部構造において、フードの下面に溶接されてフードを補強するストライカリンフォースであってストライカリンフォースを介してストライカがフードに取り付けられているストライカリンフォースと、エンジンルームの前部に設けられフードが閉じられるときにストライカリンフォースと接触する1つ以上の第1のフードクッションとをさらに備え、ストライカリンフォースは、フードに溶接される1つ以上の溶接面と、第1のフードクッションと接触する1つ以上の接触面とを有し、溶接面および接触面は平行であることを特徴とする。
本発明によれば、フードの車体に対する位置が変更されても、ストライカリンフォースは、第1のフードクッションと干渉することなく、フードに対して、姿勢を変更することなく、スライド移動した位置で溶接可能である。すなわち、フードとストライカリンフォースとの位置関係を自由に変更可能である。
言い換えれば、本発明によれば、従来、一体的にしか扱えなかったフード・ストライカリンフォースを、それぞれ車体に対して独立して位置調整可能である。よって、フードの位置調整を行い、フードと、フロントバンパ、フロントフェンダ、ヘッドランプ等の周辺に配置される部品との見切り(部品間の隙間)の調整が可能になるので、外観が向上する。一方、ストライカとロック機構との嵌合や、ストライカリンフォースと第1のフードクッション(車体の一部)との接触も正しく行われるため、フードの開閉機能およびフードクッションによる緩衝機能も維持可能である。
上記の溶接面および接触面は、フードが閉められるときのフードの進行方向に直交するとよい。
上記の構成によれば、フード閉鎖時の荷重を最も効果的に緩衝可能である。荷重を効果的に緩衝するという観点からすれば接触面だけがフードの進行方向に直交していてもよい。しかし溶接面は接触面に平行であるため、必然的にフードの進行方向に直交することになり、これによって溶接面にはせん断方向の力がかからないため、溶接面のせん断強度に配慮する必要がないという利点がある。
上記のストライカはストライカリンフォースの車幅方向の中央に固定されていて、1つ以上の第1のフードクッションの数は2つであり、2つの第1のフードクッションは、ストライカリンフォースの車幅方向の両端にそれぞれ接触する位置に設けられているとよい。
フードが閉じられるときにストライカリンフォースから伝達される衝撃を緩衝するには、上記のように第1のフードクッションを配置するのが好ましい。一方、フードの閉状態では、フードのストライカとロック機構との間で発生するガタつきを抑制する必要があるため、第1のフードクッションをストライカに可能な限り近づけることが要請されている。ストライカリンフォースには、補強の対象であるフードの大きさに依存して、最低限必要な幅がある。本発明の上記の構成によれば、ストライカリンフォースの幅を、上記の最低限必要な幅まで小さくすれば、第1のフードクッションを、ストライカリンフォースの中央に固定されているストライカに、左右均等に最も接近させて配置可能となる。
当該車両前部構造は、上記のエンジンルームの前部で車幅方向に差し渡され車体を構成するフードロックメンバと、フードロックメンバ上の両端に設けられフードが閉じられるときにフードと接触する2つの第2のフードクッションとをさらに備え、第1のフードクッションはフードロックメンバ上に配置されているとよい。
上記の構成によれば、ストライカリンフォースから到来する衝撃を、計4つの第1および第2のフードクッションによって分担して緩衝可能である。特に、フードの車幅方向の中央にストライカリンフォースが配置されているよく知られている構成によれば、左右均等に衝撃を分担することが可能である。このように分担して緩衝された衝撃は、車体を構成するフードロックメンバに伝達される。このように第1および第2のフードクッションを好適に配置し、強度・コスト・重量・ガタつき防止性能に優れた構造となっている。
当該車両前部構造は、上記のフードロックメンバの下側に重なるフードロックロアメンバをさらに備え、フードロックメンバおよびフードロックロアメンバは、閉断面を形成しているとよい。
上記の構成によれば、フード閉鎖時の荷重を受け止めるフードロックメンバをさらにフードロックロアメンバで補強でき、また、両者が閉断面を形成することで、これら車体を構成する部材の剛性がより向上するからである。
上記のフードは、フードの意匠面を構成するフードアウタパネルと、フードアウタパネルのエンジンルーム側に重ねられフードの下面を構成するフードインナパネルとを含み、フードインナパネルは、フードアウタパネル側に凸状に突出してフードアウタパネルのベカつきを防止するベカつき防止部を有するとよい。上記の構成によれば、フードアウタパネルのベカつきを防止する部材を別途用意する必要がないからである。
上記のストライカは、円形断面を有する長手の部材であってストライカリンフォースの下面の前後方向に離れた2つの位置を連結するよう屈曲した部材で形成されていて、2つの位置から車幅方向のそれぞれ反対側に延びて終端している両端部を有し、両端部にてストライカリンフォースの下面に溶接されているとよい。
上記の構成によれば、ストライカはその両端部で安定してストライカリンフォースに溶接されるため、ストライカとロック機構との間で発生するガタつきをより効果的に抑制可能である。
本発明によれば、車両の外観を向上させるために車体に対するフードの位置を調整しても、ストライカをロック機構に嵌合させてフードの開閉機能を維持し、さらに、ストライカリンフォースのフードクッションに対する適切な接触も維持してフードクッションによる緩衝機能も維持することが可能な車両前部構造を提供できる。
本発明による車両前部構造の実施形態が適用される車両を示す斜視図である。 図1(b)のエンジンルームの内部を示した斜視図である。 図2のストライカリンフォースを拡大した斜視図である。 図3のA−A断面図である。 図4のX矢視図である。 図3のA−A断面図である。 本実施形態に対する比較例を示す図である。 図5を別の方向から見た斜視図である。
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
(車両前部構造)
図1は、本発明による車両前部構造の実施形態が適用される車両を示す斜視図である。車両前部構造100は、車両102の前部のエンジンルーム104を覆うフード106と、フード106に取り付けられたストライカ108とを備える。図1(a)(b)は、フード106が開閉された状態をそれぞれ示す。ストライカ108は、エンジンルーム104の前部の中央に設けられたロック機構110と嵌合して、図1(b)のフード106の閉状態(ロック状態)を維持する。なおロック機構110はフードラッチなどとも称される。
(ストライカリンフォース)
図2は、図1(b)のフード106、フェンダパネル112、バンパ114およびヘッドランプ115を図示省略し、エンジンルーム104の内部を示した斜視図である。なおエンジンそのものは図示していない。車両前部構造100は、フード106の下面の前端中央に溶接されてフード106を補強するストライカリンフォース120を備えている。ストライカ108は、ストライカリンフォース120を介してフード106に取り付けられている。
ストライカリンフォース120は上記のように、フード106と一体の部材である。ただし図2では、フード106の閉状態におけるストライカリンフォース120の位置を示すため、フード106を図示せず、ストライカリンフォース120だけを単独で示している。図2に示すように、フード106の閉状態では、ストライカリンフォース120は、フードロックメンバ122の上に位置する。なおフードロックメンバ122は、エンジンルーム104の前部に車幅方向に差し渡された、車体を構成する部材である。
図3は図2のストライカリンフォース120を拡大した斜視図である。ストライカリンフォース120は、その前端に前端フランジ124を含む。前端フランジ124には、メッシュ模様で示す溶接面124A、124B、124Cが車幅方向にわたって設けられている。これら溶接面124A、124B、124Cは、フード106に溶接される。
ストライカリンフォース120は、前端フランジ124の後ろに、上方に2段階にわたって突出した上方突出部126を含む。上方突出部126の下面には、ストライカ108が固定されている。
ストライカリンフォース120は、上方突出部126の後ろに、下方すなわちエンジンルーム104側に凹状に突出した下方突出部128を含む。下方突出部128には、斜線で示す接触面128A、128Bが車幅方向にわたって設けられている。ストライカリンフォース120は、フード106が閉じられるとき、接触面128A、128Bにて、第1のフードクッション130、132と接触する。第1のフードクッション130、132は、ストライカリンフォース120からの衝撃を緩衝する部材であり、フードロックメンバ122上に配置されている。フードロックメンバ122は、エンジンルーム104の前部で車幅方向に差し渡された、車体を構成する部材である。
図4は図3のA−A断面図である。第1のフードクッション130、132は同様の構成を有するので、以下、第1のフードクッション130について説明する構成は、第1のフードクッション132にも共通である。第1のフードクッション130は、クッションゴム130Aと、クリップ130Bとを含み、クリップ130Bでフードロックメンバ122に固定されている。
フードロックメンバ122は、図4に示すように、側面視で、上方に突出する凸形状を有し、その上面に、第1のフードクッション130が固定されている。フードロックメンバ122の下側にはフードロックロアメンバ133が重ねられていて、これら2部品で、車幅方向にわたる閉断面135を形成する。閉断面135を有するこれら剛性の高い2部品に、フード閉鎖時に第1のフードクッション130が受けた荷重が伝達される。
フード106は、フード106の意匠面を構成するフードアウタパネル106Aと、フードアウタパネル106Aのエンジンルーム104側に重ねられフード106の下面を構成するフードインナパネル106Bとを含む。
図3に示すように、ストライカリンフォース120は、下方突出部128の後ろの後端に、後端フランジ134を含む。後端フランジ134には、メッシュ模様で示す溶接面134A、134B、134C、134D、134Eが車幅方向にわたって設けられている。これら溶接面134A、134B、134C、134D、134Eは、フード106に溶接される。
(ストライカリンフォースの溶接面と接触面)
本実施形態の特徴は、図3および図4に示すように、溶接面124A、124B、124C、134A、134B、134C、134D、134Eおよび接触面128A、128Bが、すべて、互いに平行なことである。なお図4では、図示の便宜上、最も手前の溶接面124A、134Aおよび接触面128Aにしか、符号を付していない。以下、これら図4に示す溶接面124A、134Aおよび接触面128Aについて説明する構成は、他の溶接面124B、124C、134B、134C、134D、134Eおよび他の接触面128Bについても、それぞれ、共通である。
本実施形態を利用して、フード106と、図1に示すフェンダパネル112、フロントバンパ114、ヘッドランプ115等の周辺に配置される部品との見切り(部品間の隙間)を車両の数台おき、あるいは数十台おきにチェックした場合を想定する。このとき、看過できない寸法の隙間が発生した場合に、フード106の車体に対する位置を調整し、外観を向上させることができる。
しかも本実施形態によれば、フード106の車体に対する位置が変更されても、ストライカリンフォース120は、第1のフードクッション130と干渉することなく、フード106に対して、スライド移動した位置で溶接可能である。すなわち、ストライカリンフォース120の姿勢を変更することなく、フード106とストライカリンフォース120との位置関係を自由に変更可能である。
言い換えれば、本実施形態によれば、従来、一体的にしか扱えなかったフード106・ストライカリンフォース120を、それぞれ車体に対して独立して位置調整可能である。このように、フード106の車体に対する位置を調整しても、ストライカ108とロック機構110との嵌合や、ストライカリンフォース120と第1のフードクッション130、132(車体の一部)との接触も正しく行われる。そのため、フード106の開閉機能および第1のフードクッション130、132による緩衝機能も維持可能である。
なお本実施形態では、ストライカリンフォース120とフード106とは溶接によって互いに固定されているが、両者が互いに固定される方法の如何を問わず、フード106とストライカリンフォース120との位置関係は、自由に変更可能である。
以下、図4を用いて、本実施形態の構成および作用効果についてさらに説明する。ストライカリンフォース120のスライド移動を可能とするには、既に述べたように、少なくとも、溶接面124Aおよび134Aと、接触面128Aとが平行であることが必要である。溶接面134Aや接触面128Aのように、周囲より上方または下方に突出した位置でフードインナパネル106Bまたはクッションゴム130Aに接触する部分は、互いに平行であれば、それだけでストライカリンフォース120のフード106(フードアウタパネル106A)に対するスライド移動を可能にする。ここで言うスライド移動は、車幅方向だけでなく前後方向のスライド移動も含む。
一方、溶接面124Aは、上方突出部126があるために、周囲より上方に突出した位置でフードインナパネル106Bに接触しているわけではない。しかし溶接面124Aは、フードインナパネル106Bと実際に接触する接触領域136のほか、その周囲に、ストライカリンフォース120のスライド移動時のクリアランスとなる、フードインナパネル106Bと接触していない非接触領域138を有する。本実施形態では非接触領域138は接触領域136の後ろに位置する。したがって、ストライカリンフォース120は、フードインナパネル106Bに対して、非接触領域138の分だけ、前方にスライド移動可能である。そして、溶接面124Aの前方および車幅方向には、溶接面124Aよりも上方に突出してスライド移動の障害となる領域が何ら存在しないので、ストライカリンフォース120は、フードインナパネル106Bに対して、後方にも、車幅方向にも、スライド移動可能である。
(ストライカリンフォースによる補強効果)
またストライカリンフォース120は、図3に示した上方突出部126および下方突出部128を有しているので剛性が高く、本来の目的である補強効果が高い。ストライカ108が取り付けられるフードインナパネル106Bには、フード106が閉じられるときに大きな荷重がかかるため、補強が必要である。本実施形態ではフードインナパネル106Bの板厚は0.55mmである。しかし、フードインナパネル106Bのような大きな部品全体の板厚を、ストライカ108が取り付けられる一部分に高い剛性が必要だからといって大きくすれば、重量が必要以上に増大して燃費その他に悪影響を及ぼす。そこでフードインナパネル106Bのうち、剛性が必要な部分だけをストライカリンフォース120で補強して、無用な重量増を回避している。本実施形態のストライカリンフォース120は、板厚1.2mmである。なお図示しないが、フードインナパネル106Bのうち、性能上、補強が不要な部分には、軽減孔を設けてなるべく軽くしてよい。
また本実施形態では、図4に示すように、第1のフードクッション130は、フード106(フードインナパネル106B)ではなく、ストライカリンフォース120に接触面128Aによって接触する。したがって、仮に第1のフードクッション130がフードインナパネル106Bに接触して緩衝の反力をフードインナパネル106Bに及ぼす場合と比較すると、ストライカリンフォース120は剛性が高く、緩衝の反力を受けても変形しにくいという利点がある。
図4に示すように、溶接面124Aおよび接触面128Aは、フード106が閉められるときのフード106の進行方向139に直交している。なお、フード106は閉められるときに回動するため、厳密に言えば、円弧の軌道を描いて閉まる。そのため、ここで言う「進行方向139」は、フード106が閉まる瞬間にフード106が移動する方向を意味する。
上記の構成によれば、フード106の閉鎖時の荷重を最も効果的に緩衝可能である。荷重を効果的に緩衝するという観点からすれば接触面128Aだけがフード106の進行方向139に直交していてもよい。しかし溶接面124Aは接触面128Aに平行であるため、必然的にフード106の進行方向139に直交することになり、これによって溶接面124Aにはせん断方向の力がかからない。したがって、溶接面124Aのせん断強度に配慮する必要がないという利点がある。
図5は図4のX矢視図、すなわちフード106を下方から見た図である。ただしフードロックメンバ122およびフードロックロアメンバ133は図示省略している。図5に示すように、ストライカ108は、ストライカリンフォース120の上方突出部126(図4)の車幅方向中央に固定されている。
図5に示すように、2つの第1のフードクッション130、132は、ストライカリンフォース120の車幅方向の両端にそれぞれ接触する位置に設けられている。
フード106が閉じられるときにストライカリンフォース120から伝達される衝撃を緩衝するには、上記のように第1のフードクッション130、132を配置するのが好ましい。一方、フード106の閉状態では、フード106側のストライカ108と、車体側のロック機構110(図5では図示していない)との間で発生するガタつきを抑制する必要がある。そのため、第1のフードクッション130、132をストライカ108に可能な限り近づけることが要請されている。ストライカリンフォース120は、補強の対象であるフード106の大きさに依存した、最低限必要な幅W1を有する。本実施形態のように、ストライカリンフォース120の幅を、最低限必要な幅W1にすれば、第1のフードクッション130、132を、ストライカリンフォース120の中央に固定されているストライカ108に、左右均等に最も接近させて配置可能となる。
図5に示すように、車両前部構造100は、2つの第2のフードクッション140、142をさらに備える。第2のフードクッション140、142は、図2に示すように、フードロックメンバ122上の両端に設けられていて、フード106が閉じられるときにフード106と接触する。
上記の構成によれば、ストライカリンフォース120から到来する衝撃を、図5に示すように、計4つの第1および第2のフードクッション130、132、140、142によって分担して緩衝可能である。特に、フード106の車幅方向の中央にストライカリンフォース120が配置されている本実施形態のような典型的な構成によれば、左右均等に衝撃を分散することが可能である。このように分担して緩衝された衝撃は、車体を構成するフードロックメンバ122(図2)、およびフードロックメンバ122と閉断面135(図4)を形成するフードロックロアメンバ133によって、車両幅方向に分散される。この荷重はさらに、図2に示すブレース137、139に伝達され、さらにフードロックロアメンバ141に伝達される。このように第1および第2のフードクッション130、132、140、142を好適に配置し、強度・コスト・重量・ガタつき防止性能に優れた構造となっている。
図4に示すように、フードロックメンバ122とフードロックロアメンバ133とが閉断面135を形成するため、フード閉鎖時の荷重を受け止めるフードロックメンバ122がフードロックロアメンバ133によって補強されている。また、両者が閉断面135を形成することで、これら車体を構成する部材の剛性がより向上している。
(歩行者頭部の保護機能)
図6は図3のA−A断面図であり、図5と同様の図である。図3に示したように、ストライカリンフォース120は、エンジンルーム104側に凹状に突出した下方突出部128を有する。そして図6に示すように、接触面128Aは、下方突出部128の下端面である。この下方突出部128によって、第1のフードクッション130は、フード106の意匠面すなわちフードアウタパネル106Aから遠ざけられている。すなわち第1のフードクッション130は、フードアウタパネル106A上であってストライカリンフォース120の後方に中心C2を有する子供の歩行者の頭部を模した球体144と干渉しない位置に、フード106から離れて配置されている。なお図6では、球体144の衝突時の状態、すなわち中心が位置C1にある状態も示している。
上記の構成によれば、子供の歩行者の頭部を模した球体144に第1のフードクッション130が干渉しない。すなわち、歩行者の頭部がフード106に衝突しても、車体側に配置される第1のフードクッション130には到達せず、衝撃エネルギーを吸収する歩行者保護性能に支障を来さない利点がある。
(フードアウタパネルのベカつき防止機能)
図6に示すように、フードインナパネル106Bは、フードアウタパネル106A側に突出してフードアウタパネル106Aのベカつきを防止するベカつき防止部146を有する。図7は本実施形態に対する比較例を示す、図6に対応した車両用フードの前部の断面図である。図7の比較例では、フード156がフードアウタパネル156Aおよびフードインナパネル156Bを含むこと、またストライカリンフォース160が設けられていることは、図6と同様である。
しかし、本実施形態を示す図6の構成によれば、ベカつき防止部146がフードインナパネル106Bに設けられているため、図7のような、フードアウタパネル156Aの距離Dにわたるベカつきを防止する部材162を別途用意する必要がない。
また、図6から明らかなように、本実施形態のストライカリンフォース120は、フードアウタパネル106Aとフードインナパネル106Bとで構成される閉空間164の外に配置されている。一方、図7の比較例では、ストライカリンフォース160は、フードアウタパネル156Aとフードインナパネル156Bとで構成される閉空間166の中に進入して、部材162と溶接されている。このように、図7の比較例ではストライカリンフォース160は、位置調整が可能な構成になっていないが、図6の本実施形態では、図7の比較例とは異なり、ストライカリンフォース120の位置調整が可能な構成になっている。
(ストライカ)
図8は図5を別の方向から見た斜視図であり、フード106の下面を左斜め前方に向かって見上げた図である。ストライカ108は、図4または図6にも示したように、円形断面を有する長手の部材である。ストライカ108は、図4に示すように、ストライカリンフォース120の下面の前後方向に離れた2つの位置148、150を連結するよう屈曲している。またストライカ108は、図8に示すように、2つの位置148、150から車幅方向のそれぞれ反対側に延びて終端している両端部152、154を有する。ストライカ108は、これら両端部152、154にてストライカリンフォース120の下面に溶接されている。
上記の構成によれば、ストライカ108はその両端部152、154で安定してストライカリンフォース120に溶接されるため、ストライカ108とロック機構110との間で発生するガタつきをより効果的に抑制可能である。
本実施形態によれば、既に述べたように、ストライカリンフォース120は、フード106に対してスライド移動可能である。そのため、フード106におけるストライカリンフォース120の溶接位置が変わっても、ストライカリンフォース120の姿勢は変わらない。したがって、通常、ストライカ108とロック機構110との嵌合は問題なく実行可能である。
一方、ストライカリンフォース120は、図4に示すように、2段階にわたって突出した上方突出部126に固定されている。ストライカリンフォース120の座面である上方突出部126は、車幅方向にわたって一定の形状になっている。そのため、本実施形態によれば、ストライカ108も、ストライカリンフォース120に対して、姿勢を変更することなく、車幅方向にスライド移動可能である。よって、フード106におけるストライカリンフォース120の溶接位置が変わった結果、万一、ストライカ108とロック機構110との嵌合に問題が生じても、ストライカ108の位置調整を車幅方向に行い、問題を解決できる余地がある。
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
本発明は、車両前部のエンジンルームを覆うフードと、フードに取り付けられ、エンジンルームの前部に設けられたロック機構と嵌合してフードの閉状態を維持するストライカとを備える車両前部構造に利用することができる。
100 …車両前部構造、102 …車両、104 …エンジンルーム、106 …フード、106A …フードアウタパネル、106B …フードインナパネル、108 …ストライカ、110 …ロック機構、112 …フェンダパネル、114 …バンパ、115 …ヘッドランプ、120 …ストライカリンフォース、122 …フードロックメンバ、124 …前端フランジ、124A、124B、124C、134A、134B、134C、134D、134E …溶接面、126 …上方突出部、128 …下方突出部、128A、128B …接触面、130、132 …第1のフードクッション、130A …クッションゴム、130B …クリップ、133 …フードロックロアメンバ、134 …後端フランジ、135 …閉断面、136 …接触領域、138 …非接触領域、140、142 …第2のフードクッション、144 …球体、146 …ベカつき防止部、152、154 …端部

Claims (7)

  1. 車両前部のエンジンルームを覆うフードと、
    前記フードに取り付けられ、前記エンジンルームの前部に設けられたロック機構と嵌合して前記フードの閉状態を維持するストライカとを備える車両前部構造において、
    前記フードの下面に溶接されて該フードを補強するストライカリンフォースであって該ストライカリンフォースを介して前記ストライカが前記フードに取り付けられているストライカリンフォースと、
    前記エンジンルームの前部に設けられ前記フードが閉じられるときに前記ストライカリンフォースと接触する1つ以上の第1のフードクッションとをさらに備え、
    前記ストライカリンフォースは、
    前記フードに溶接される1つ以上の溶接面と、
    第1のフードクッションと接触する1つ以上の接触面とを有し、
    前記溶接面および接触面は互いに平行であることを特徴とする車両前部構造。
  2. 前記溶接面および接触面は、前記フードが閉められるときの該フードの進行方向に直交することを特徴とする請求項1に記載の車両前部構造。
  3. 前記ストライカは前記ストライカリンフォースの車幅方向の中央に固定されていて、
    前記1つ以上の第1のフードクッションの数は2つであり、該2つの第1のフードクッションは、前記ストライカリンフォースの車幅方向の両端にそれぞれ接触する位置に設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の車両前部構造。
  4. 前記エンジンルームの前部で車幅方向に差し渡され車体を構成するフードロックメンバと、
    前記フードロックメンバ上の両端に設けられ前記フードが閉じられるときに該フードと接触する2つの第2のフードクッションとをさらに備え、
    第1のフードクッションは前記フードロックメンバ上に配置されていることを特徴とする請求項3に記載の車両前部構造。
  5. 前記フードロックメンバの下側に重なるフードロックロアメンバをさらに備え、
    前記フードロックメンバおよびフードロックロアメンバは、閉断面を形成していることを特徴とする請求項4に記載の車両前部構造。
  6. 前記フードは、
    前記フードの意匠面を構成するフードアウタパネルと、
    前記フードアウタパネルのエンジンルーム側に重ねられ前記フードの下面を構成するフードインナパネルとを含み、
    前記フードインナパネルは、前記フードアウタパネル側に凸状に突出して該フードアウタパネルのベカつきを防止するベカつき防止部を有することを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の車両前部構造。
  7. 前記ストライカは、円形断面を有する長手の部材であって前記ストライカリンフォースの下面の前後方向に離れた2つの位置を連結するよう屈曲した部材で形成されていて、該2つの位置から車幅方向のそれぞれ反対側に延びて終端している両端部を有し、該両端部にて前記ストライカリンフォースの下面に溶接されていることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の車両前部構造。
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