JP2014202730A - 脆性き裂伝搬停止特性評価用の試験片及び厚鋼板の脆性き裂伝播停止特性の評価方法 - Google Patents

脆性き裂伝搬停止特性評価用の試験片及び厚鋼板の脆性き裂伝播停止特性の評価方法 Download PDF

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Abstract

【課題】脆性き裂伝播停止特性を精度よく評価できる脆性き裂伝搬停止特性評価用の試験片及び厚鋼板の脆性き裂伝播停止特性の評価方法を提供する。
【解決手段】JIS Z 2242に規定されるシャルピー衝撃試験に用いられる試験片であって、シャルピー衝撃試験機に取付けられた状態において、前面11の長さ方向の中央に切欠き部10が設けられ、切欠き部10の少なくとも先部における金属組織が母材の金属組織とは異なる硬質組織で構成され、硬質組織の50%以上がマルテンサイト、ベイナイト、またはこれらの混合組織からなることを特徴とする脆性き裂伝搬停止特性評価用の試験片1を採用する。
【選択図】図1

Description

本発明は、脆性き裂伝搬停止特性評価用の試験片及び厚鋼板の脆性き裂伝播停止特性の評価方法に関する。
鉄鋼材料等の構造材における脆性破壊は、時として大規模な塑性変形を伴わずに、材料の降伏強度以下の低応力で発生し、1000m/s程度の高速で長距離に渡って脆性き裂が伝播し、構造物が一瞬の内に破壊してしまう。
脆性破壊の発生を防止するための手法としては、非特許文献1に規定されるCTOD(Crack-Tip Opening Displacement)試験等の評価試験を用いた非特許文献2等の防止法が提案され、各種規格に取り入れられ、脆性破壊の発生防止が可能になってきている。
一方、脆性破壊は、一瞬の内に高速度で伝播するため、特に大規模構造物では、万が一脆性破壊が発生した場合でも、き裂の伝播防止することが出来れば、安全性を格段に上げることが可能になる。実際に、LNG(Liquified Natural Gas)やLPG(Liquified Petroleum Gas)等の低温タンクに用いられる低温用鋼や、水圧鉄管用鋼材、造船用鋼材等では、非特許文献3に規定される脆性破壊伝播停止試験のような大型破壊試験で測定される脆性き裂伝播停止特性Kca値に対する要求値が規定されている。
これらの試験は、試験実施のための工期、コストが大きく、一般に品質管理のための試験としては適当ではない。そこで、代表的な簡易評価試験であるシャルピー衝撃試験法を活用した厚板の脆性き裂伝播停止特性の評価方法が特許文献1において提案されている。
特開2009−47462号公報
日本溶接協会WES1108規格 日本溶接協会WES2805規格 日本溶接協会規格「WES鋼種認定試験方法」(1995)
特許文献1に記載された評価方法では、当然ながら、試験片における脆性き裂の発生箇所となる切欠き部の先部の金属組織が、試験片の材質により決まる。そのため、試験片の材質によっては、例えば、切欠き部の先部において脆性破壊よりも塑性変形や延性破壊が先行する等の要因によって、脆性き裂が適切に発生しない場合があった。そのため、特許文献1に記載の評価方法よりも高精度な評価方法が望まれていた。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、脆性き裂伝播停止特性を精度よく評価できる脆性き裂伝搬停止特性評価用の試験片及び厚鋼板の脆性き裂伝播停止特性の評価方法の提供を課題とする。
上記課題を解決するため、本発明は以下の構成を採用する。
[1] JIS Z 2242に規定されるシャルピー衝撃試験に用いられる試験片であって、
シャルピー衝撃試験機に取付けられた状態において、前面の長さ方向の中央に切欠き部が設けられ、前記切欠き部の少なくとも先部における金属組織が母材の金属組織とは異なる硬質組織で構成され、前記硬質組織の50%以上がマルテンサイト、ベイナイト、またはこれらの混合組織からなることを特徴とする脆性き裂伝搬停止特性評価用の試験片。
[2] 前記硬質組織が、前記切欠き部を形成する際の熱による熱影響部であることを特徴とする[1]に記載の脆性き裂伝搬停止特性評価用の試験片。
[3] 前記硬質組織の厚みが0.01mm以上、1mm以下であることを特徴とする[1]または[2]に記載の脆性き裂伝搬停止特性評価用の試験片。
[4] 前記切欠き部の先部が、前記試験片の幅方向中央で深さが浅く、幅方向両端で深さが深い山形形状であることを特徴とする[1]乃至[3]の何れか一項に記載の脆性き裂伝搬停止特性評価用の試験片。
[5] 前記切欠き部の幅が0.01mm以上、0.5mm以下のスリット状であることを特徴とする[1]乃至[4]の何れか一項に記載の脆性き裂伝搬停止特性評価用の試験片。
[6] 前記切欠き部が、Vノッチであることを特徴とする[1]乃至[3]の何れか一項に記載の脆性き裂伝搬停止特性評価用の試験片。
[7] 前記切欠き部が、ワイヤ放電加工によって形成されたものであることを特徴とする[1]乃至[6]の何れか一項に記載の脆性き裂伝搬停止特性評価用の試験片。
[8] シャルピー衝撃試験機に取付けられた状態において、前記切欠き部の形成箇所を含む前記試験片の長手方向中央部の試験片高さが10mm以上、25mm以下であることを特徴とする[1]乃至[7]の何れか一項に記載の脆性き裂伝搬停止特性評価用の試験片。
[9] [1]〜[8]のいずれか一項に記載の脆性き裂伝搬停止特性評価用の試験片を用い、JIS Z 2242に規定されるシャルピー衝撃試験に準拠して、厚鋼板の脆性き裂伝播停止特性を評価することを特徴とする、厚鋼板の脆性き裂伝播停止特性の評価方法。
本発明によれば、試験片の切欠き部の少なくとも先部における金属組織の50%以上が母材の金属組織とは異なる硬質組織で構成され、その硬質組織がマルテンサイト、ベイナイト、またはこれらの混合組織からなるので、JIS Z 2242に規定されるシャルピー衝撃試験を実施した場合に、試験片の母材組織によらずに、切欠き部の先部を起点として安定して脆性き裂が生じるので、脆性き裂伝播停止特性を精度よく評価できる。
図1は、本発明の実施形態である試験片の一例を示す図であって、(a)は正面図であり、(b)は(a)のAA’線に対応する断面図である。 図2は、図1に示す試験片の要部を示す図であって、(a)は正面図であり、(b)は(a)のBB’線に対応する断面図である。 図3は、本発明の実施形態である試験片の別の例を示す図であって、(a)は正面図であり、(b)は(a)のCC’線に対応する断面図である。 図4は、図3に示す脆性き裂伝搬停止特性評価用の試験片要部を示す図であって、(a)は正面図であり、(b)は(a)のDD’線に対応する断面図である。 図5は、本発明の実施形態である試験片の更に別の例を示す図であって、(a)は正面図であり、(b)は(a)のEE’線に対応する断面図である。 図6は、図5に示す脆性き裂伝搬停止特性評価用の試験片の要部を示す図であって、(a)は正面図であり、(b)は(a)のFF’線に対応する断面図である。 図7は、実施例の鋼1〜12について、脆性き裂伝播停止特性Kca値が6000(N/mm1.5)になる温度(TKca6000)と、図1に示す試験片を用いて測定した遷移温度との関係を示すグラフである。 図8は、実施例の鋼1〜12について、脆性き裂伝播停止特性Kca値が6000(N/mm1.5)になる温度(TKca6000)と、従来の試験片を用いて測定した遷移温度との関係を示すグラフである。 図9は、実施例の鋼1〜12について、脆性き裂伝播停止特性Kca値が6000(N/mm1.5)になる温度(TKca6000)と、図5に示す試験片を用いて測定した遷移温度との関係を示すグラフである。 図10は、実施例の鋼1〜12について、脆性き裂伝播停止特性Kca値が6000(N/mm1.5)になる温度(TKca6000)と、従来の試験片を用いて測定した遷移温度との関係を示すグラフである。
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。図1は、本発明の実施形態である脆性き裂伝搬停止特性評価用の試験片を示す図である。
図1に示す試験片1は、切欠き部10を前方に向けた状態でシャルピー衝撃試験機に取付けられる。そして、切欠き部10が形成された前面11とは反対の背面12をハンマーで打撃して試験片を破断させることにより、JIS Z 2242に規定されるシャルピー衝撃試験が行われる。なお、本実施形態では、説明の便宜のために、前面11と背面12の厚さ方向を高さ方向(図1(a)及び図1(b)における上下方向)、前面11、21および背面12、22に平行な方向を長さ方向(図1(a)における左右方向)、これら高さ方向および長さ方向に垂直な方向を幅方向(図1(b)における左右方向)という。
図1に示す試験片1は、JIS Z 2202に規定されるように、長さ55mm±0.6mmで1辺が10mm±0.05mmの長さ方向全体に亘って一様な正方形断面を有する角柱部Kと、切欠き部10の形成箇所を含む試験片1の長手方向中央部が突出した突出部Lとからなる。突出部Lを含む試験片1の長手方向中央部の高さは、15mm以上、25mm以下となっている。このように、切欠き部10の形成箇所における高さを10+Xmmとしたとき、試験片1の長手方向中央部では、突出部Lの高さXを5mm以上、15mm以下の範囲で一定になっている。また、試験片1の幅は長手方向全体に亘って10±0.05mmで一定になっている。このため、本実施形態の試験片1は、JIS Z 2242に規定されるシャルピー衝撃試験機に取付けて、通常のシャルピー衝撃試験片と同様にシャルピー衝撃試験に供される。また、突出部Lを設け、この突出部Lに切欠き部10を設けることにより、切欠き部10の下側に脆性き裂を伝搬させる領域が確保される。
試験片1の長手方向の両端から8mm以上、20mm以下までの部分(Y)と前面11との間は、斜面部13になっている。この斜面部13の長手方向に対する角度αは20°以上90°以下が好ましい。
次に、図1に示す試験片1の切欠き部10は、スリット状の溝で、その先部は、試験片1の幅方向中央で深さが浅く、幅方向両端で深さが深い山形形状となっている。言い換えると、切欠き部10は山形形状のシェブロンノッチとなっている。切欠き部10の先部に形成した山形形状の頂部Paの角度βは60〜150°である。試験片1の切欠き部10の先部の山形形状の頂部Paから前面11までの距離Laは、2mm以上、2+Xmm以下である。また、切欠き部10の幅は0.01mm以上、0.5mm以下である。なお、切欠き部10の幅Waとは試験片1の長手方向に沿う幅をいう。切欠き部10の幅Waを0.5mm以下とすることにより、シャルピー衝撃試験時に切欠き部10の先部に形成した山形形状の頂部Paに応力集中を生じさせて、脆性き裂を容易に生じさせることができる。また、切欠き部10の幅Waが0.01mm未満では応力集中の効果が飽和するので、切欠き部10の幅Waは0.01mm以上がよい。
図2に示すように、切欠き部10の先部には、母材の金属組織とは異なる硬質組織Mが形成されている。この硬質組織Mは、50%以上がマルテンサイト、ベイナイト、またはこれらの混合組織からなる。例えば、試験片1の母材組織がフェライト・パーライト組織である場合は、硬質組織Mには、フェライト・パーライトよりも硬質なマルテンサイト、ベイナイト、またはこれらの混合組織が含まれる。また、試験片1の母材組織がベイナイト組織である場合は、硬質組織Mには、ベイナイトよりも硬質なマルテンサイトが含まれる。このように、切欠き部10の先部の組織を、母材の金属組織よりも硬質な硬質組織Mにすることで、母材組織の種類によらずに、脆性き裂を容易に発生させることができる。特に、硬質組織Mを、フェライトやパーライトに比べて硬くて脆いマルテンサイト、ベイナイト、またはこれらの混合組織とすることで、脆性き裂を容易に発生させることができる。なお、硬質組織Mは切欠き部10の先部のみならず、切欠き部10の側面部(図2中、一点鎖線で示す領域)に形成されていてもよい。また、切欠き部1の形状が所謂シェブロンノッチであり、切欠き部10の先部の山形形状の頂部Paを含むその近傍部分(山裾の一部)のみに硬質組織Mを設けることで、より容易に脆性き裂を発生させることができる。
脆性き裂を安定して発生させるためには、硬質組織Mの50%以上(100%を含む)がマルテンサイト、ベイナイト、またはこれらの混合組織であることが必要で、好ましくは80%以上が望ましい。
図2(b)に示すように、硬質組織Mの厚みDaは、0.01mm以上、1mm以下であることが好ましい。試験片の母材である厚鋼板は、その金属組織中に小さいもので約10μm程度の粒径の結晶粒が含まれる。従って、脆性き裂を安定して発生させるためには、硬質組織Mの厚みとして、小さな結晶粒の1個分程度の厚みを確保することが望ましい。また、硬質組織Mの厚みDaを1mm以下とすることで、切欠き部10の下側に、評価対象となる金属組織を十分に残すことができ、脆性き裂を伝搬させる領域を十分に確保できる。
硬質組織Mは、切欠き部10を形成する際の熱によって形成された熱影響部である。例えば、切欠き部10をワイヤ放電加工によって形成する際の、入熱による温度上昇とその後の温度低下により、マルテンサイト、ベイナイト、またはこれらの混合組織が形成される。入熱量を制御することで、硬質組織Mの厚みや結晶組織を容易に調整できる。また、ワイヤ放電加工は加工精度が高いので、切欠き部10形状及び寸法や硬質組織Mの厚み等を複数の試験片において一定にすることができ、試験片のばらつきを抑制できる。
図3及び図4には、本実施形態の脆性き裂伝搬停止特性評価用の試験片の別の例を示す。図3及び図4に示す試験片2は、切欠き部20の形状が異なる以外は、図1及び図2に示す試験片と同じ構成である。
図3及び図4に示す試験片2の切欠き部20は、先部が試験片2の幅方向に沿って深さが一定であるスリット状の溝となっている。この切欠き部20の先部から前面21までの距離Lbは、2mm以上、2+Xmm以下である。また、切欠き部20の幅Wbは、図1及び図2と同様に、0.01mm以上、0.5mm以下とされている。
図4に示すように、切欠き部20の少なくとも先部には、母材の金属組織とは異なり、かつ、母材の金属組織よりも硬質な硬質組織Mが形成されている。この硬質組織Mは、図1及び図2で説明した硬質組織Mとほぼ同一の構成である。すなわち、硬質組織Mは、50%以上、好ましくは80%以上(100%を含む)がマルテンサイト、ベイナイト、またはこれらの混合組織からなり、硬質組織Mの厚みDbは0.01mm以上、1mm以下が好ましい。また、硬質組織Mは、切欠き部20を形成する際の熱によって形成された熱影響部であり、切欠き部20をワイヤ放電加工によって形成する際の、入熱による温度上昇とその後の温度低下により形成される。
図3及び図4に示す試験片2によれば、JIS Z 2242に規定されるシャルピー衝撃試験を実施した場合に、切欠き部20の先部を起点として安定して脆性き裂が生じるので、脆性き裂伝播停止特性を精度よく評価できる。
図5及び図6には、本実施形態の脆性き裂伝搬停止特性評価用の試験片の更に別の例を示す。図5に示す試験片3は、JIS Z 2202に規定されるように、長さ55mm±0.6mmで1辺が10mm±0.05mmの長さ方向全体に亘って一様な正方形断面を有する角柱部Kよりなる。角柱部Kの前面31に切欠き部30が設けられている。切欠き部30の形成箇所における高さは、図1〜図4の試験片1、2の場合とは異なり、10±0.05mmである。本実施形態の試験片3は、JIS Z 2242に規定されるシャルピー衝撃試験に取付けて、通常のシャルピー衝撃試験片と同様にシャルピー衝撃試験に供される。
図5に示す試験片3の切欠き部30は、所謂Vノッチである。Vノッチの先端Pcの開き角度γは45°程度とされている。切欠き部30の深さLcは2mm程度である。そして、試験片の高さが10mm程度であるから、切欠き部30の下側で脆性き裂を生じさせる領域として、試験片3の高さ方向の長さで8mmほどの領域が確保される。このような切欠き部30を有することにより、シャルピー衝撃試験時に切欠き部30の先端Pcを含んだその周辺の先部に応力集中を生じさせて、脆性き裂を容易に生じさせることができる。
図6に示すように、切欠き部30の少なくとも先部には、母材の金属組織とは異なる硬質組織Mが形成されている。この硬質組織Mは、図1及び図2で説明した硬質組織Mとほぼ同一の構成である。すなわち、硬質組織Mは、50%以上、好ましくは80%以上(100%を含む)がマルテンサイト、ベイナイト、またはこれらの混合組織からなり、硬質組織Mの厚みDcは0.01mm以上、1mm以下が好ましい。また、硬質組織Mは、切欠き部30を形成する際の熱によって形成された熱影響部であり、切欠き部30をワイヤ放電加工によって形成する際の、入熱による温度上昇とその後の温度低下により形成される。Vノッチ形状の切欠き部30の先部に硬質組織Mを設けることで、より容易に脆性き裂を発生させることができる。なお、硬質組織Mは切欠き部30の先部のみならず、切欠き部30の側面部(図6中、一点鎖線で示す領域)に形成されていてもよい。
図5及び図6に示す試験片30によれば、JIS Z 2242に規定されるシャルピー衝撃試験を実施した場合に、切欠き部30の先部を起点として安定して脆性き裂が生じ、脆性き裂伝播停止特性を精度よく評価できる。
以上のように構成された試験片1、2,3を、切欠き部10、20、30を前方に向けた状態でシャルピー衝撃試験機に取付ける。そして、切欠き部10、20、30が形成された前面11、21、31と反対の側面(背面12、22、32)をハンマーで打撃して破断させることにより、JIS Z 2242に規定されるシャルピー衝撃試験を行う。こうして、破断に要した吸収エネルギー、衝撃値、破面率等から遷移温度を求めることで、厚鋼板の脆性き裂伝播停止特性(アレスト特性)を評価できる。
表1に示す日本海事協会規格「鋼船規則K編」に準じた鋼材を用いて、本発明の検討を行った。
Figure 2014202730
表1の鋼1〜12から、図1に示す試験片、図5に示す試験片をそれぞれ採取して、JIS Z 2242に準拠したシャルピー衝撃試験機による標準シャルピー衝撃試験を実施した。
なお、各試験片は、切欠き部をワイヤ放電加工によって形成したものと、切欠き部を機械加工によって形成したものをそれぞれ用意した。ワイヤ放電加工によって形成した切欠き部の先部には、表1のA欄に示すように、70〜100%がマルテンサイト、ベイナイト、またはこれらの混合組織からなる硬質組織Mが形成されていた。なお、表1のBに示す数値は、母材のマルテンサイト、ベイナイト、またはこれらの混合組織の分率であり、機械加工によって形成した切欠き先部の組織分率は母材の組織分率(45%以下)と同じであった。
また、試験片の金属組織の分率を測定する際、試験片の測定部を切断、研磨した後、ナイタール腐食液(2%硝酸+98%メチルアルコール)を用いて腐食した。その後、光学顕微鏡を用いて倍率500倍で測定部のミクロ組織を観察し、マルテンサイト、ベイナイト、またはこれらの混合組織の面積分率を測定した。
各試験片について、JIS Z 2242に準拠して遷移曲線を求め、この遷移曲線から遷移温度を求めた。本実施例では、破面遷移温度を遷移温度として求めた。
また、表1の鋼1〜12について、ESSO試験を行い、脆性き裂伝搬停止特性Kca値を求め、更に、脆性き裂伝搬停止特性Kca値が6000(N/mm1.5)となる温度TKca6000を求めた。
各試験片について、ESSO試験により求めたTKca6000と、シャルピー衝撃試験から求めた遷移温度との関係を、図7〜図10に示す。図7は、図1に示す形状であって切欠き部をワイヤ放電加工法で形成した試験片の結果であり、図8は、図1に示す形状であって切欠き部を機械加工法で形成した試験片の結果である。また、図9は、図5に示す形状であって切欠き部をワイヤ放電加工法で形成した試験片の結果であり、図10は、図5に示す形状であって切欠き部を図8と同様に機械加工法で形成した試験片の結果である。
図7と図8とを比較すると、図7では、鋼の強度の違いにも関わらず、TKca6000と遷移温度との相関が高くなっており、シャルピー衝撃試験で求めた遷移温度からTKca6000を精度よく推定可能であることがわかる。一方、図8では、TKca6000と遷移温度との相関がやや高いものの、鋼の強度の影響を受けており、鋼種によって脆性き裂の発生挙動が異なっているものと推測される。従って、シャルピー衝撃試験で求めた遷移温度からTKca6000を推定するには、鋼強度の影響を考慮する必要がある。
次に、図9と図10とを比較すると、図9では、鋼の強度の違いにも関わらず、TKca6000と遷移温度との相関が、図7ほど高くないが図8の場合よりは高くなっており、シャルピー衝撃試験で求めた遷移温度からTKca6000を精度よく推定可能であることがわかる。一方、図10では、TKca6000と遷移温度との相関が小さく、シャルピー衝撃試験で求めた遷移温度からTKca6000を推定することは困難である。
以上のことから、切欠き部の先部に硬質組織を有する試験片では、シャルピー衝撃試験によって脆性き裂を安定して発生させることができ、脆性き裂伝搬停止特性を精度よく評価できることが分かる。
1、2、3…試験片、11、21、31…前面、10、20、30…切欠き部、M…硬質組織。

Claims (9)

  1. JIS Z 2242に規定されるシャルピー衝撃試験に用いられる試験片であって、
    シャルピー衝撃試験機に取付けられた状態において、前面の長さ方向の中央に切欠き部が設けられ、前記切欠き部の少なくとも先部における金属組織が母材の金属組織とは異なる硬質組織で構成され、前記硬質組織の50%以上がマルテンサイト、ベイナイト、またはこれらの混合組織からなることを特徴とする脆性き裂伝搬停止特性評価用の試験片。
  2. 前記硬質組織が、前記切欠き部を形成する際の熱による熱影響部であることを特徴とする請求項1に記載の脆性き裂伝搬停止特性評価用の試験片。
  3. 前記硬質組織の厚みが0.01mm以上、1mm以下であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の脆性き裂伝搬停止特性評価用の試験片。
  4. 前記切欠き部の先部が、前記試験片の幅方向中央で深さが浅く、幅方向両端で深さが深い山形形状であることを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか一項に記載の脆性き裂伝搬停止特性評価用の試験片。
  5. 前記切欠き部の幅が0.01mm以上、0.5mm以下のスリット状であることを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れか一項に記載の脆性き裂伝搬停止特性評価用の試験片。
  6. 前記切欠き部が、Vノッチであることを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか一項に記載の脆性き裂伝搬停止特性評価用の試験片。
  7. 前記切欠き部が、ワイヤ放電加工によって形成されたものであることを特徴とする請求項1乃至請求項6の何れか一項に記載の脆性き裂伝搬停止特性評価用の試験片。
  8. シャルピー衝撃試験機に取付けられた状態において、前記切欠き部の形成箇所を含む前記試験片の長手方向中央部の試験片高さが10mm以上、25mm以下であることを特徴とする請求項1乃至請求項7の何れか一項に記載の脆性き裂伝搬停止特性評価用の試験片。
  9. 請求項1〜請求項8のいずれか一項に記載の脆性き裂伝搬停止特性評価用の試験片を用い、JIS Z 2242に規定されるシャルピー衝撃試験に準拠して、厚鋼板の脆性き裂伝播停止特性を評価することを特徴とする、厚鋼板の脆性き裂伝播停止特性の評価方法。
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