JP6607178B2 - 管材の応力腐食割れ試験方法 - Google Patents

管材の応力腐食割れ試験方法 Download PDF

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本発明は、金属管の応力付加時の耐食性などを評価する試験方法に最適な、特に硫化水素を含むサワー環境下で使用される油井管やラインパイプなどの鋼管における耐硫化物応力腐食割れ性(耐SSC性)を評価する管材の応力腐食割れ試験方法に関する。
近年、石油資源の枯渇という観点から、従来省みられなかったような高深度の油田や、硫化水素等を含むサワー環境下にある厳しい腐食環境の油田やガス田等の開発が盛んになっている。そのため、高い応力付加状態で耐食性が求められる鋼管製品では、使用環境に準じた応力状態、腐食環境を模擬して腐食試験を行う必要がある。
一般に、耐硫化物応力腐食割れ性(以下、耐SSC性と称する場合もある)の評価方法として、例えば、「NACE TM0177」に規定されるCリング浸漬試験方法がある(非特許文献1を参照)。この試験方法では、図4(A)に示す、鋼管をある長さで輪切りにしてさらに周断面の一部を切り抜いた試験片10(以下、Cリング試験片10と称する場合もある)を用いる。図4(B)に示すように、Cリング試験片10の評価面における周方向断面形状(図4(A)に示すY−Y線断面図)は、矩形である。図4(B)では、紙面上側をCリング試験片10の外表面側とし、紙面下側をCリング試験片10の内表面側とする。このCリング試験片10は、その上下面でボルトとナット(以下、ネジ3と称する)を用いて締め込み、鋼管を扁平させる。そして、扁平量を基にした算出式や、評価面に取り付けたひずみゲージの値と事前に評価した鋼管のヤング率、降伏応力とから求めた、所定の試験応力が、評価面(図4(A)に示すY−Y線上の面)に付与される。その後、Cリング試験片10は、腐食環境を模擬した腐食液(塩化ナトリウム、HSガス、pH調整用の添加剤)中に浸漬される。そして、評価面へのピット、割れの発生を評価することで、材料の硫化物応力腐食割れ感受性(耐SSC性)を評価する。
NACE TM0177 Method C
非特許文献1に記載したCリング浸漬試験方法では、Cリング試験片を扁平させ、Cリング試験片を扁平させた際の変位と材料特性、管材の外径、板厚の値を用いて、評価面に付与される試験応力を算出する。あるいは、Cリング試験片を扁平させた際の評価面のひずみをひずみゲージで測定し、その測定値と材料物性値を基に、評価面に付与された試験応力を算出する。
これらの方法で算出する試験応力の値は、Cリング試験片が無限の長さを有する場合には評価面で均一な応力(すなわち、平面応力状態)となる。しかし、実際のCリング試験片は、精々数十mmの有限長であるため、試験片幅方向で基準とされる部分の試験応力の値と評価面に付与される試験応力の値とは異なることが予測される。すなわち、図4(B)に示すような評価面の断面形状が矩形の場合、Cリング試験片10の幅方向中央部CWに対して幅方向端部CW、CWの応力が高くなる。そのため、幅方向中央部CWを基準とした場合、評価面全体に幅方向中央部CWと同じ所定の試験応力を与えると、幅方向両端部CW、CWでは所定の試験応力を上回ることになる。その結果、所定の試験応力の場合に得られる試験結果に対して、幅方向端部CW、CWでは厳しい試験結果を示す可能性がある。一方、応力の最大値を示す幅方向両端部CW、CWを基準として所定の試験応力を与えることは、幅方向端部がその端面から腐食を受ける非定常部であることから好ましくない。一般に、応力腐食割れ感受性は、付与される応力に非常に敏感である。従って、上記理由から試験片の評価面に応力差が生じることは、好ましくない。以上のことより、試験片の評価面に応力差が生じる場合、耐SSC性を正しく評価することは困難であるという問題があった。
さらに、一般的な金属製品は、腐食環境が同一の場合、付与される応力が大きくなるほど腐食の進行、破壊が進む。そのため、適切に制御された応力を試験片の評価面に付与し、腐食環境中の耐用性評価を精度良く行うことが求められる。
本発明は係る問題に鑑み、特に硫化水素を含むサワー環境下で使用される油井管やラインパイプなどの管材の耐硫化物応力腐食割れ性(耐SSC性)を評価する試験方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を達成するため鋭意研究を行った結果、次の知見を得た。
管材の耐硫化物応力腐食割れ性(耐SSC性)を評価する試験方法について、例えば、NACE TM0177 Method Cに規定されるCリング浸漬試験方法に準拠して行うことができる。Cリング浸漬試験方法では、Cリング試験片は、試験開始後の初期段階に、試験片表面が腐食されて一様に腐食生成物に覆われる。そして、時間の経過とともに、応力勾配を有する試験片の幅方向端部では腐食生成物にき裂が発生し、き裂が発生した箇所では新生面が露出する。露出面よりさらに腐食が進行して不均一な腐食となり、不均一な腐食が生成された箇所では、硫化物応力腐食割れに起因する破断が起こりやすくなる。
そこで、本発明者らは、管材の硫化物応力腐食割れ試験における試験片について、特に試験片の評価面の応力勾配と腐食状況について種々検討を行った。その結果、試験片の端部で割れが発生する原因は、試験片幅方向における両端部と中央部の応力差が大きいことに起因することが新たに分かった。耐SSC試験の評価精度を向上させるためには、試験片の幅方向における応力状態を制御することが重要である。すなわち、試験片の幅方向における応力差を減少させればよいこと(後述する図3の点線Bを参照)、あるいは試験片の幅方向における最大応力が生じる部分を試験片の幅方向端部以外の位置に制御すればよいこと(後述する図3の一点鎖線Cを参照)を知見した。
さらに、試験片への応力付与は、試験片を扁平することにより行うが、試験片の内表面と外表面に付与される応力は、材料固有の物性値以外では管外径と板厚に依存する。従って、試験片の板厚を制御すれば、試験片の外表面と内表面に発生する応力を制御可能であることも知見した。
本発明は前述の知見に基づいてなされたものであり、以下を要旨とするものである。
[1]被試験材である管材から採取した試験片を扁平させて前記試験片の外内表面に所定の試験応力を与えた後、前記試験片を試験溶液中に浸漬して保持し、前記試験片の耐硫化物応力腐食割れ性を評価する管材の応力腐食割れ試験方法であって、扁平により前記試験片の外表面に与える、試験に要求される引張応力がA1、前記管材の降伏応力がB、扁平させた結果前記試験片外表面に発生する、現実の引張応力がA2であるときに、前記試験片の幅方向に対して、A2/Bの比が、A1/B以上1.0以下となる条件で、前記試験応力を与えることを特徴とする管材の応力腐食割れ試験方法。
[2]前記試験応力として、前記A1/Bに対して5%以内の範囲も含むことを特徴とする[1]に記載の管材の応力腐食割れ試験方法。
[3]前記試験片に与える前記試験応力の最大応力が、試験片の幅方向端部以外の部分に与えられることを特徴とする[1]または[2]に記載の管材の応力腐食割れ試験方法。
[4]前記試験片の板厚について、試験片の幅方向中央部より試験片の幅方向両端部を薄くしたことを特徴とする[1]〜[3]のいずれかに記載の管材の応力腐食割れ試験方法。
[5]前記試験片の板厚について、試験片の幅方向中央部から試験片の幅方向端部にかけて漸減的に減ることを特徴とする[1]〜[4]のいずれかに記載の管材の応力腐食割れ試験方法。
[6]前記試験片の板厚について、試験片の幅方向中央部から試験片の幅方向端部にかけてステップ状に減ることを特徴とする[1]〜[4]のいずれかに記載の管材の応力腐食割れ試験方法。
本発明の試験片を用いた耐硫化物応力腐食割れ試験方法を行う場合、試験片に試験応力を付与した際に試験片幅方向での応力差が減少するため、応力−腐食環境に準じた正確な評価を精度よく行うことができる。
図1は、本発明の管材の応力腐食割れ試験で使用する試験片の一例を説明する図であり、それぞれ(A)全体斜視図であり、(B)図1(A)のX−X線における試験片評価面の周方向断面図ある。 図2は、本発明の管材の応力腐食割れ試験で使用する試験片の別の例を説明する図であり、図1(A)のX−X線における試験片評価面の周方向断面図である。 図3は、本発明の試験片における、試験片評価面の幅方向位置と、降伏応力に対する試験応力の比と、試験片評価面の断面形状との関係を説明する図である。 図4は、従来の応力腐食割れ試験における試験片の形状を説明する図であり、それぞれ(A)全体斜視図であり、(B)図4(A)のY−Y線における試験片評価面の周方向断面図である。
以下、本発明に用いる試験片、それを用いた管材の応力腐食割れ試験方法について詳細に説明する。
本発明に用いる試験片1の形状について説明する。図1、2は、本発明の管材の応力腐食割れ試験で使用する試験片1の一例を説明する図である。
本発明の試験片1は、油井管やラインパイプなどの鋼管被試験材である管材から採取される。試験片1は、NACE TM0177に規定されるように、鋼管を長さ方向に所定の長さで輪切りにし(以下、この長さを試験片幅Wと称する)、さらに周断面の一部を切り抜いた切抜き部2を設ける。試験片幅Wは、取得できる試験用の鋼管の大きさにより自由に決定されるか、またはユーザーにより指定される。しかし、試験片幅Wが10mm未満の場合には短すぎるため、試験応力付与時に定常域がなくなってしまう。一方、試験片幅Wが100mm超えの場合には長すぎるため、試験応力を付与する際に大型の試験機(以下、治具と称する。)が必要となる。また、腐食試験用の容器も大型化する必要があり、経済的ではない。これらの理由から、試験片幅Wは、10mm以上100mm以内が好ましい。
図1(A)に示すように、試験片1は、長さ方向(鋼管周方向)の上下端部をネジ3で締め込むことにより、試験片の外表面と内表面(以下、外内表面と称する場合もある)に所定の試験応力が付与され、扁平した状態で治具(図示せず)に取り付けられる。その後、評価を行う。
本発明では、試験片の外内表面に与える所定の試験応力を、次の条件とすることを特徴とする。扁平により試験片の外表面((図1(A)のX−X線上)に与える、試験に要求される引張応力がA1であり、管材の降伏応力がBであり、扁平させた結果、試験片外表面(図1(A)のX−X線上)に発生する、現実の引張応力がA2であるときに、試験片の幅方向に対して、A2/Bの比が、A1/B以上1.0以下となる条件として試験応力を付与する。試験応力として、A1/Bに対して5%以内の範囲も誤差として含んでもよい。
なお、試験に要求される引張応力:A1とは、ユーザーから試験要求条件として与えられる負荷応力をいう。上述の引張応力:A1、A2は、試験片表面に張り付けたひずみゲージで測定することにより得られる。具体的には、試験前にひずみゲージを取り付け、扁平させ、与えるべき扁平の変位を事前に確認した後、ひずみゲージを取り外し、アセトン等で表面を洗浄、脱脂して、試験を行う。管材の降伏応力:Bは、管板厚のまま、圧延方向に対して直角方向を長手方向(引張方向)とするJIS5号引張試験片を採取し、JIS Z 2241(2011)に準拠した引張試験により得られる。この際、管長手方向強度と周方向強度が同一であることを前提とする。
例えば、試験要求条件として、降伏応力の90%で試験を実施することを要求された場合、試験片の幅方向(評価面)におけるA2/Bの比(以下、試験応力比と称する場合もある)が、降伏応力の90%(以下、90%降伏応力と称する)以上、かつ降伏応力を超えない範囲で分布されるように、試験片に試験応力を与えた後、評価を行う。なお、試験応力比は、降伏応力を超えない範囲(すなわち、降伏応力/降伏応力の比が1.0以下)である場合に限り、下限:A1/Bの5%以内を誤差として許容することができ、上述の本発明の効果を得られる。
試験片の幅方向における試験応力比の最大応力が、降伏応力/降伏応力の比(すなわち、1.0)以下とする理由は、降伏条件を満たし、塑性域に入ると、多量の転位が材料に導入されて応力腐食割れを促進する水素のトラップサイトとなる。これにより、急激に耐SSC性が低下し、精度のよい結果が得られなくなるからである。
さらに、試験片1の板厚は、試験片の幅方向中央部CWより試験片の幅方向両端部CW、CWを薄くすることが好ましい。さらに、試験片の幅方向両端部を薄くする方法として、試験片の板厚が、幅方向中央部CWから幅方向端部CW、CWにかけて漸減的に減ること、または試験片の板厚が、幅方向中央部CWから幅方向端部CW、CWにかけてステップ状に減ることが好ましい。以下、これらの理由について説明する。
通常、NACE TM0177 Method Cに規定されるCリング浸漬試験方法に用いるCリング試験片は、図4に示すように、Cリング試験片の幅方向中央部CWとCリング試験片の幅方向両端部CW、CWとの板厚が同じである。しかし、このような形状の場合、Cリング試験片における両端部CW、CWは非定常部であり、中央部CWは定常部であるため、両端部CW、CWの応力(鋼管周方向応力)が中央部CWの応力に対して大きくなる。また、Cリング試験片の曲げ変形時における、Cリング試験片の外内表面の応力は、板厚が厚くなるほど大きくなる。そのため、この形状が、Cリング試験片端部での割れの原因となっていた。
そこで、本発明では、試験片の曲げ変形時における試験片の外内表面の応力を、試験片の評価面全体で所望の応力値に近づけるため、試験片1の幅方向における試験応力比の分布を上述のように制御する。これにより、応力勾配の大きかった試験片の幅方向端部での腐食の進行を防止し、不均一な腐食の発生による、試験片の異常破断を防止することができる。
上述の試験片幅方向における試験応力比の分布に加えて、本発明では、試験片を扁平することにより外内表面に発生する応力は、材料固有の物性値以外では管外径と板厚(肉厚)に依存することに着目した。すなわち、試験片の板厚を減ずれば、発生する応力を制御できる。非定常部であるがゆえに高い応力となる部分の板厚を減ずることにより、試験片の幅方向両端部における応力を減少させて、定常部の応力に近づければよい。そこで、本発明では、試験片の幅方向中央部CWより試験片の幅方向両端部CW、CWを薄くすることが好ましい。これにより、上述の効果をより有効に得られる。
ここで、上述の非定常部となる部分の板厚を減ずる方法について説明する。例えば、非定常部である試験片の幅方向両端部の板厚を、幅方向中央部から幅方向端部にかけて漸減的(テーパ形状)に減らす方法がある。あるいは、非定常部である試験片の幅方向両端部の板厚を、幅方向中央部から幅方向端部にかけてステップ状に減らす方法がある。
図1(B)の断面形状に示す、非定常部の板厚を漸減的(テーパ形状)に減らす方法では、幅方向両端部CW、CWの上部あるいは下部にテーパ部4を形成する。テーパ部4の大きさは特に限定されないが、幅方向両端部CW、CWの板厚が薄くなりすぎると、試験片1の端部CW、CWからの腐食に加え、試験片1の外内表面からの腐食も連結しやすくなる。すなわち、板厚に対して腐食面積が広くなりすぎて、本来の耐食性を評価できない可能性がある。また、テーパ部4の端部(Te)を試験片の幅方向中央部CWに近づけると機械加工が困難になり、加工精度も出ない。その結果、評価精度の高い結果を得られない可能性がある。以上のことから、テーパ部4の始点Tsは、板厚(T)の10%程度を残して設けることが好ましい。テーパ部4の終点Teは、幅方向の端部CW、CWから中央部CWに向けて1/4位置程度の範囲に設けることが好ましい。
図2の断面形状に示す、非定常部の板厚をステップ状に減らす方法では、幅方向両端部CW、CWの上部あるいは下部に切り欠き部5を形成する。上記テーパ部と同様の理由により、切り欠き部5の始点Ksは、板厚(T)の10%程度を残して設けることが好ましい。切り欠き部5の終点Keは、幅方向の端部から中央部に向けて1/4位置程度の範囲に設けることが好ましい。なお、切り欠き部5は階段状に設けてもよい。ここでは、切り欠き部の形状として、例えば正方形を図示しているが、必ずしも決まった形状である必要はない。最大応力を発生させる場所を、試験片の幅方向両端部から当該両端部以外の箇所に変化できればどのような形状でもよく、特に限定はしない。
なお、試験片の幅方向、特に端部CW、CWの応力は非定常であることに加え、管材の機械的特性や板厚、外径、幅などの影響を受けやすいため、簡単な理論式で予測することは難しい。そのため、本発明を含む幅方向の試験応力比を所望の範囲に保つことができているか否かは、試験片の機械加工後、ひずみゲージを幅方向中央部から端部にかけて取り付けて扁平させ、測定することにより行う。そして、管材の機械特性や板厚などに対し、最適な板厚の減少量や試験片の断面形状を決定する。あるいは、有限要素法を用いた解析により、試験片の幅方向にわたった鋼管周方向応力を計算することで、更に簡便に板厚の減少量や試験片の断面形状を決定してもよい。
試験片の評価面(腐食評価面)の板厚を変更するために加工することは、評価精度の観点から、好ましくない。そのため、評価面と反対側の面を機械加工し、板厚を減ずることが有効である。評価面は、鋼管の内表面または外表面のどちらを評価したいかによるため、鋼管の内表面または外表面のどちらを加工するかは、試験実施者により適宜決定される。
次に、本発明の試験片を用いた耐硫化物応力腐食割れ性(耐SSC性)を評価する管材の応力腐食割れ試験方法について詳細に説明する。
本発明の管材の応力腐食割れ試験方法は、上述した試験片をネジを用いて治具に取り付け、試験片を扁平させて試験片の外内表面に所定の試験応力を与えた後、試験片を腐食液中(試験溶液中)に浸漬して保持し、腐食環境で保持した際の腐食状況(評価面へのピット、割れの発生)を測定することにより、材料の応力腐食割れ感受性を評価する。例えば、NACE TM0177 Method Cに規定されるCリング浸漬試験方法に準拠して行うことができる。
なお、本発明では、腐食中の環境(腐食試験条件)および試験条件については、通常のCリング浸漬試験方法と違いはないため、特に限定しない。しかし、上述したように、本発明は、試験片の幅方向における試験応力を制御することにより、評価精度を向上できる効果を有することを特徴とする。
そこで、図3を用いて、この効果を有効に得られるための、試験片評価面の幅方向位置と、試験応力比(A2/Bの比)と、試験片評価面の断面形状との関係について説明する。図3には、有限要素法解析により求めた、試験片幅方向にわたった鋼管周方向の試験応力状態を示す。ここでは、横軸には試験片の幅方向位置を示し、縦軸には試験応力比を示す。また、直線Aは通常のCリング試験片、例えば図4(B)の断面形状を有する試験片における分布を示し、点線Bは本発明の試験片、例えば図1(B)の断面形状を有する試験片における分布を示し、一点鎖線Cは本発明の試験片、例えば図2の断面形状を有する試験片における分布を示す。
図3より、本発明の試験片(点線B、一点鎖線Cを参照)では、通常のCリング試験片(直線Aを参照)に比べ、幅方向中央部と幅方向両端部における乖離が少ない。一方、通常のCリング試験片(直線Aを参照)では、例えば幅方向中央部を基準位置とし、試験応力(評価点)として90%降伏応力を与えた場合、幅方向両端部の試験応力比が100%を超え、降伏点以上に達していることがわかる。その結果、上述の通り、正確な試験評価ができない。なお、通常、Cリング浸漬試験をはじめとするSSC試験は、降伏応力に対し90%以上の高い応力を付与して実施する場合が多い。そのため、本解析以上の負荷応力を与えると、さらに幅方向端部では大きな塑性を伴うことになると考えられる。従って、試験応力は、降伏応力の90%以上が好ましい。
本発明の試験片(一点鎖線Cを参照)では、試験片の幅方向中央部CWと幅方向両端部CW、CWのどちらにも該当しない部分に、最大の試験応力比の値を持つ部分を意図的に制御して作ることができる。この場合も、試験片の幅方向の試験応力比の最大値と最小値の差を減少できることがわかる。試験応力比の最大値を、幅方向端部の非定常部以外の位置に意図的に発生させることで、与えたい試験応力以上の過剰な負荷がかかる場所の無い試験が可能になる。
なお、本発明の試験片1は、SSC性評価以外の試験にも用いることができる。
以下、本発明を実施例により詳細に説明する。なお、本発明は以下の実施例に限定されない。
鋼管被試験材である管材から、図1(B)、図2、図4(B)に示す周方向断面形状(試験片の幅方向断面形状)を有する3つの試験片を採取した。これらの試験片について、評価面と直行する部分に試験片幅の1/2の径をもつ貫通穴をあけ、そこにボルト(ネジ)を通して扁平させ、種々の試験応力を与えた。試験片A、Bについては、試験片の幅方向中央部を基準位置とし、試験応力(試験に要求される引張応力:A1)を90%降伏応力とした。試験片Cについては、試験片の幅方向中央部以外の位置を最大応力が付与される基準位置とし、試験応力を90%降伏応力とした。
なお、耐SSC性評価試験に先んじて、有限要素法により試験片A〜CについてCリング浸漬試験時の応力分布計算を行った。計算は、材料物性値にヤング率205GPaを使用した弾性解析とした。試験片A、Bについては試験片幅方向中央部が90%降伏応力になるように扁平して応力分布を計算した。試験片形状Cについては最大応力となる部分(最大応力部)が耐SSC性評価に使用できない幅方向端部以外に発生するため、最大応力部が90%降伏応力になるように偏平して応力分布を計算した。なお、応力分布の計算は管材の降伏応力:Bを所定値として行い、試験片A〜Cにおける試験片幅方向の試験応力比は表1に示す通りとする。
その後、表1に示した腐食試験条件で、耐SSC性評価試験を行った。腐食状況(評価面へのピット、割れの発生)は、以下の方法で評価した。なお、Cリング試験片のように、評価面で試験応力差の分布が発生しない丸棒引張方式による試験を、同一腐食環境で実施し、その評価結果をベンチマークとした。
(腐食状況)
腐食状況は、評価面全体の範囲を目視により評価した。下記基準に照らし、評価した。
合格:ルーペ観察(20倍)でもピット、割れの発生が認められない。
不合格:ピット、割れの発生を目視で観察できる。
以上により得られた結果を表1に示す。
表1の評価結果より、丸棒引張試験と同一の腐食条件で行った場合、本発明例の試験片B、Cでは、割れが発生せず、合格であった。一方、比較例の試験片Aでは、試験片の幅方向端部に割れが発生し、不合格となった。すなわち、丸棒引張方式の結果から、試験片Aは適切な評価結果を得られていないと考えられる。また、有限要素法解析の結果から考えても、試験片Aの幅方向端部は試験応力の値と比べ大きく異なっているため、本発明の評価結果は妥当である。以上より、本発明で提案した試験方法が有用であるといえる。
1 試験片
2 切り抜き部
3 ネジ
4 テーパ部
5 切り欠き部
10 Cリング試験片

Claims (5)

  1. 被試験材である管材から採取した試験片を扁平させて前記試験片の外内表面に所定の試験応力を与えた後、前記試験片を試験溶液中に浸漬して保持し、前記試験片の耐硫化物応力腐食割れ性を評価する管材の応力腐食割れ試験方法であって、
    扁平により前記試験片の外表面に与える、試験に要求される引張応力がA1、前記管材の降伏応力がB、扁平させた結果前記試験片外表面に発生する、現実の引張応力がA2であるときに、
    前記試験片の幅方向全体にわたって、A2/Bの比が、A1/B以上1.0以下となる条件で、前記試験応力を与え
    前記試験片の板厚について、試験片の幅方向中央部より試験片の幅方向端部を薄くしたことを特徴とする管材の応力腐食割れ試験方法。
  2. 前記試験片の板厚について、試験片の幅方向中央部から試験片の幅方向端部にかけて漸減的に減ることを特徴とする請求項1に記載の管材の応力腐食割れ試験方法。
  3. 前記試験片の板厚について、試験片の幅方向中央部から試験片の幅方向端部にかけてステップ状に減ることを特徴とする請求項1に記載の管材の応力腐食割れ試験方法。
  4. 前記試験応力として、前記A1/Bに対して5%以内の範囲も含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の管材の応力腐食割れ試験方法。
  5. 前記試験片に与える前記試験応力は、前記試験片の幅方向全体にわたって、試験片の幅方向中央部と幅方向両端部以外の部分に前記試験応力の最大値が与えられることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の管材の応力腐食割れ試験方法。
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CN114813337A (zh) * 2022-04-06 2022-07-29 北京科技大学 一种用于管片在持续受力下的应力腐蚀试验装置及方法

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