JP7248882B2 - 脆性亀裂伝播停止特性試験方法及び試験片 - Google Patents
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Description
前記試験片の厚さtが100mm以下であり、
前記試験片の一端と他端との距離である試験片の幅Wが200mm以上350mm未満であり、
前記試験片が、前記切欠きの先端に隣接する部分に脆化部を有する脆性亀裂伝播停止特性試験方法。
[2]前記試験片幅方向の前記脆化部の長さが50mm以下であり、
前記試験片幅方向と直交する前記脆化部の幅が1mm以上30mm以下である
上記[1]に記載の脆性亀裂伝播停止特性試験方法。
[3]前記脆化部がアーク溶接によって形成される
上記[1]又は[2]に記載の脆性亀裂伝播停止特性試験方法。
[4]前記脆化部が電子ビーム溶接によって形成される
上記[1]又は[2]に記載の脆性亀裂伝播停止特性試験方法。
[5]前記試験片の一端から他端に向けて温度Tが上昇しており、
前記試験片の一端からの距離Xに対する前記温度Tの変化率である温度勾配dT/dX[℃/mm]が下記(式1)を満足する、[1]~[4]のいずれか一項に記載の脆性亀裂伝播停止特性試験方法。
0.76-0.0008W≦dT/dX≦0.64-0.0002W ・・・(式1)
[6]脆性亀裂伝播停止特性試験方法の試験片であって、
一端に切欠きを有し、
厚さが100mm以下であり、
前記一端と他端との距離である幅Wが200mm以上350mm未満であり、
前記切欠きの先端に隣接する部分に脆化部を有する脆性亀裂伝播停止特性試験片。
[7]前記脆化部の長さが50mm以下、前記脆化部の幅が1mm以上30mm以下である上記[6]に記載の脆性亀裂伝播停止特性試験片。
[8]前記脆化部が表面のアーク溶接ビードと熱影響部とからなる上記[6]又は[7]に記載の脆性亀裂伝播停止特性試験片。
[9]前記脆化部が電子ビーム溶接ビードである上記[6]又は[7]に記載の脆性亀裂伝播停止特性試験片。
本発明に係る脆性亀裂伝播停止特性試験方法は、試験片の一端から他端に向けて亀裂を進展させ、前記亀裂を停止させる鋼板の特性を評価する試験方法である。図1の試験片では、試験片の一端は図面中上方の辺を、他端は下方の辺を指す。本発明に係る試験片1は、図1に示すように、その一端に切欠き30及び切欠き先端に隣接する脆化部40を有している。ここで、切欠き先端とは、試験片幅方向の切欠きの頂点を指す。図2に示すように、切欠き30には楔7を設置し、打撃エネルギーを負荷して脆性亀裂を発生させる。脆性亀裂が進展する試験片幅方向と直交する試験片長さ方向には、構造体に作用する引張応力を再現するために、弾性変形の範囲内で引張荷重が載荷される。例えば、試験片に接合されたタブ板21(図中では、21A、21Bと表示。)に設けたピンチャック22を介して、試験片の長さ方向に引張荷重を付加することができる。
本発明に係る脆性亀裂伝播停止特性試験方法に使用する試験片の厚さtは100mm以下にするとよい。これは、試験片の厚さtが100mmを超えると、試験片の幅を大きくしなければ脆性亀裂伝播停止特性の評価が難しくなるためである。板厚の下限は特に限定しない。試験片の厚さは脆性亀裂伝播停止特性を評価する鋼板の板厚と同じでもよい。例えば、溶接構造物に適用される厚鋼板の板厚は6mm以上の場合が多く、このような場合試験片の厚さtも6mm以上とすればよい。
本発明に係る試験片は、その一端に、亀裂を発生させる切欠きを有しており、試験片の、切欠きの先端(試験片の幅の方向の切欠きの頂点)に隣接する部分を脆化させることが特徴である。この脆化させた部分を脆化部と呼ぶ。脆化部は、脆性亀裂を発生させるために必要な打撃エネルギーを減少させるために設けられている。なお、試験片に設ける切欠きの形成方法は特に限定されないが、WES2815において推奨される機械切欠き、プレス切欠きのいずれかを採用することが好ましい。
脆化部は、例えば、アーク溶接によって形成することができる。また、例えば、硬化肉盛溶接によって形成されるビードや、クラックスタータビードであってもよい。アーク溶接によって形成された脆化部の例を図3に示す。図3は、試験片の両面に、試験片の幅方向に延びるアーク溶接ビード42(図中では42A、42Bと表示。)が形成されており、その直下部分に熱影響部43(図中では43A、43Bと表示。)が形成される。この場合、脆化部は、アーク溶接ビード42と熱影響部43とによって構成されており、板厚方向に貫通してはいない。ただし、アーク溶接条件によっては、脆化部を板厚方向に貫通させることもできる。溶接ワイヤは、例えば、硬化肉盛溶接用フラックス入りワイヤやクラックスタータビード用溶接棒を用いることができる。
サイドグルーブを設けた場合、サイドグルーブに沿うように脆化部を形成すればよい。例えば、図11(a)に試験片の両面に設けたサイドグルーブ50に沿ってアーク溶接42を施し、脆化部を形成した例を示す。また、例えば、片方のサイドグルーブにだけアーク溶接を施し、脆化部を形成してもよい。また、例えば、試験片の片方の面にのみサイドグルーブを形成し、そのサイドグルーブに沿ってアーク溶接を施し、脆化部を形成してもよいし、サイドグルーブを形成していない面にのみアーク溶接を施し、脆化部を形成してもよい。
例えば、図11(b)に試験片の両面に設けたサイドグルーブ50に沿って電子ビーム溶接を施し、脆化部44を形成した例を示す。上記したアーク溶接により脆化部を形成した例と同様、電子ビーム溶接による脆化部の形成も、片面にサイドグルーブを形成した場合など、サイドグルーブの形態に限定されない。
本発明に係る脆性亀裂伝播停止特性試験方法では、亀裂の発生を容易にするため、試験片の一端の温度を低下させるとよい。一方、亀裂を停止させるため、亀裂の進行方向に向けて温度を上昇させるとよい。試験片に付与される温度勾配dT/dX[℃/mm]は、試験片の一端からの幅方向の距離Xに対する温度Tの変化率であり、温度勾配dT/dXは、WES2815に準拠して設定するとよい。温度勾配dT/dXは、試験片の幅W(mm)によって、下記式(式1)を満足するように上限及び下限を設定することが好ましい。
0.76-0.0008W≦dT/dX≦0.64-0.0002W ・・・ (式1)
図5には、亀裂伝播停止特性であるアレスト靭性Kca値と温度との関係も実線で示している。亀裂伝播停止特性のKca値が、K値を上回ると亀裂の伝播が停止する。したがって、材料特性のKca値の温度変化を示す図中の実線と、K値の温度変化を示す線(記号「+」及び「×」で示す線)とが交差するところで亀裂が停止することになる。
また、試験片のKca値の温度依存性は、試験片の厚さによっても変化する。図5では、同じ材料の試験片で厚さが25mm、50mm、70mmの例を示す。
なお、図5における試験片「300-1」は、幅300mmの試験片の一例を示す。また試験片「KE36(50mm)」は、NK規格で降伏強度355MPa以上、-40℃でのシャルピー吸収エネルギーが27J以上の鋼材で板厚が50mmのものの例を示す。
これらの知見に基づいて、種々の試験片幅Wを有する試験片を用いて適正なKca値が得られる条件について検討を行い、温度勾配dT/dX(℃/mm)を上記(式1)のように試験片幅W(mm)に応じて変化させることとした。
上述のように、脆性亀裂伝播停止特性を正しく評価するためには、打撃エネルギーの影響を無視できる部位で亀裂を停止させることが必要になる。本発明に係る試験片の形状はWES2815とは異なるが、WES2815で推奨される打撃エネルギーを参考にして、亀裂を発生させるために載荷する打撃エネルギーを決定することができる。
Ei/t≦min(1.2σ-40,200) ・・・ (式2)
ここで、右辺のmin(1.2σ-40,200)は2数値(1.2σ-40)又は(200)のどちらか最小値を意味する。
Ei/t≦min(1.2σ-40,200)/2.5 ・・ (式3)
ここで、min(1.2σ-40,200)は2つの数値(1.2σ-40)又は(200)のどちらか最小値を意味する。
本発明が対象とする鋼材は、特に限定されない。例えば、一般の溶接構造用厚鋼板を一般の溶接構造物に適用する場合、鋼板の厚さは6.0mm以上であることが多い。
鋼材Aから、アーク溶接によって形成された脆化部(長さ30mm、幅5mm)を設けた300mm幅試験片(長さも300mm)と、脆化部を設けていない500mm幅の試験片(長さも500mm)とを準備した。WES2815に準拠して、どちらも温度勾配が0.55℃/mmになるようにして温度勾配型アレスト試験を実施した。結果を図6に示す。WES2815規格に準拠する500mm幅試験片のデータ(●)に比べて、300mm幅試験片のデータ(□)は若干低めの数値(-8%程度)を示しているが、WES2815でもデータばらつきの範囲とされている±15%以内には十分入っており、本発明の試験法の有効性が確認された。
鋼材Aから、実施例1の300mm幅試験片と同形状で、脆化部を設けていない試験片を準備し、実施例1と同じ条件で温度勾配型アレスト試験を実施した。結果を図7に示す。脆化部を付与しない場合、打撃エネルギーが低いと亀裂が発生しなかったため、試験データを1点しか採取できなかった。また、亀裂を発生させるために打撃エネルギーを大きくする必要があり、亀裂が停止し難くなるため、Kca値が低めに評価されていることが確認された。
鋼材Aから、実施例1と同様の脆化部を付与した300mm幅試験片を準備し、温度勾配(dT/dX)を0.45℃/mmとし、下限(0.76-0.0008W=0.52℃/mm)よりも低い条件で温度勾配型アレスト試験を実施した。結果を図8に示す。温度勾配が低いと、亀裂が停止しやすくなるため、Kca値が高めに評価されることが確認できた。
実施例1と同様の300mm幅試験片で、脆化部の長さを50mm、幅を5mmにした試験片を用いて、実施例1と同条件で温度勾配型アレスト試験を実施した。結果を図9に示す。脆化部長さが長いと、亀裂長さが長くなりやすいため、Kca値を低めに評価され易くなることがわかる。ただし、脆化部長さ50mmの場合、WES2815でデータばらつきの範囲とされている±15%程度である。
実施例1と同様の300mm幅試験片で脆化部を電子ビーム(長さ30mm、幅2mm)で形成した試験片を用いて、実施例1と同条件で温度勾配型アレスト試験を実施した。結果を図10に示す。脆化部をアーク溶接で形成した場合と同程度のKca値評価ができることが確認された。
7 楔
21 タブ板
22 ピンチャック
30 切欠き
40 脆化部
42 アーク溶接ビード
43 熱影響部
44 電子ビーム溶接による脆化部
50 サイドグルーブ
L 試験片の長さ
W 試験片の幅
t 試験片の厚さ
Claims (8)
- 試験片の一端に切欠きを設け、当該切欠きに打撃エネルギーを負荷し亀裂を発生させ、前記試験片の幅方向に亀裂を進展させる脆性亀裂伝播停止特性試験方法において、
前記試験片の厚さtが100mm以下であり、
前記試験片の一端と他端との距離である試験片の幅Wが200mm以上350mm未満であり、
前記試験片が、前記切欠きの先端に隣接する部分に脆化部を有し、
前記試験片幅方向の前記脆化部の長さが30mm以上50mm以下であり、
前記試験片幅方向と直交する前記脆化部の幅が1mm以上30mm以下であり、
前記試験片に、前記試験片幅方向と直交する試験片長さ方向に弾性変形の範囲内で引張荷重が載荷される脆性亀裂伝播停止特性試験方法。 - 前記脆化部がアーク溶接によって形成される
請求項1に記載の脆性亀裂伝播停止特性試験方法。 - 前記脆化部が電子ビーム溶接によって形成される
請求項1に記載の脆性亀裂伝播停止特性試験方法。 - 前記試験片の一端から他端に向けて温度Tが上昇しており、
前記試験片の一端からの距離Xに対する前記温度Tの変化率である温度勾配dT/dX[℃/mm]が下記(式1)を満足する請求項1~3のいずれか一項に記載の脆性亀裂伝播停止特性試験方法。
0.76-0.0008W≦dT/dX≦0.64-0.0002W ・・・(式1) - 請求項1~4のいずれか1項に記載の脆性亀裂伝播停止特性試験方法の試験片であって、
一端に切欠きを有し、
厚さtが100mm以下であり、
前記一端と他端との距離である幅Wが200mm以上350mm未満であり、
前記切欠きの先端に隣接する部分に脆化部を有する脆性亀裂伝播停止特性試験片。 - 前記脆化部の長さが50mm以下、前記脆化部の幅が1mm以上30mm以下である請求項5に記載の脆性亀裂伝播停止特性試験片。
- 前記脆化部が表面のアーク溶接ビードと熱影響部とからなる請求項5又は6に記載の脆性亀裂伝播停止特性試験片。
- 前記脆化部が電子ビーム溶接ビードである請求項5又は6に記載の脆性亀裂伝播停止特性試験片。
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鋼の微視組織と脆性亀裂停止挙動の関係解明に向けたマルチスケール破壊力学モデル 第2報:アレスト試験への適用,鉄と鋼,2016年 |
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