JP2014202087A - エンジンの着火始動制御装置 - Google Patents

エンジンの着火始動制御装置 Download PDF

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Abstract

【課題】着火始動の際の空気利用率を向上させて初爆時のトルクを大きくし、エンジンを一層確実に且つ速やかに始動できるようにする。
【解決手段】燃料を複数回に分けて噴射する際に通電時間TAUに応じて噴射長が変化させられ、燃焼室101内に燃料が分散して分布させられる。また、通電時間TAUが短い程すなわち噴射長が短い程燃料の噴射量が少なくなるが、噴射長が短い側では長い側に比較して噴射回数が多くされるため、噴射長の相違に起因する燃料分布のばらつきが抑制される。これにより、燃焼室101内の広い範囲に略均一の濃度の混合気Gが形成され、この状態で点火プラグ47によって点火すると、速やかに安定して混合気Gに着火することができるとともに、着火による火炎が燃焼室101内の全域に適切に伝播して燃焼室101内の空気が効率良く燃焼させられ、爆発により大きなトルクを発生させることができる。
【選択図】図7

Description

本発明はエンジンの始動制御装置に係り、特に、膨張行程にある気筒の燃焼室内に燃料を噴射するとともに点火して爆発させることで、クランク軸を回転させてエンジンを始動する着火始動に関するものである。
回転停止しているエンジンの複数の気筒の中、膨張行程にある気筒の燃焼室内にインジェクタにより燃料を噴射するとともに、点火プラグにより点火することで爆発させ、その爆発力によりクランク軸を回転させるエンジンの始動制御装置が知られている。すなわち、着火始動と呼ばれるもので、エンジンのフリクションが小さい場合には着火始動だけでエンジンを自力で始動できる場合があるが、モータジェネレータやスタータ等でエンジンの回転をアシストするようにすれば、エンジンを確実に且つ速やかに始動させることができる。その場合でも、着火始動で自力回転しようとするためアシストトルクが小さくて済み、モータジェネレータ等の最大トルクが低減されて小型化や低燃費化を図ることができる。一方、特許文献1には、このような着火始動に際して、インジェクタにより燃料を複数回に分けて噴射することにより、燃焼室内の空燃費を徐々に低下させるとともに、並行して点火プラグの点火火花を連続的に発生させる多回数点火を実施することにより、可燃空燃比になった状態を見逃すことなく点火してエンジンを始動する技術が提案されている。
特開2004−28046号公報
しかしながら、このような従来の着火始動では燃焼室内の空気の利用率が低く、初爆時のトルクが必ずしも十分でないという問題があった。すなわち、本発明者等が着火始動で初爆した後の気筒内の残留ガス分析を行ったところ、爆発に寄与しない酸素が相当量残っていることが見い出された。これは、着火始動ではピストンが停止しているため、燃焼室内の空気の流動が悪くて混合気濃度にむら(ばらつき)があり、爆発の際の火炎が燃焼室内全体に拡散せず、着火性の悪い混合気の一部が燃焼することなく残るためと考えられる。特許文献1では、噴射時間を短くして複数回に分けて燃料を噴射するようになっているが、空燃比を徐々に変化させるためのもので、噴射の際のペネトレーション(貫徹力)は一定と考えられ、混合気濃度を均一化する効果は期待できない。
本発明は以上の事情を背景として為されたもので、その目的とするところは、着火始動の際の空気利用率を向上させて初爆時のトルクを大きくし、エンジンを一層確実に且つ速やかに始動できるようにすることにある。
かかる目的を達成するために、第1発明は、回転停止しているエンジンの複数の気筒の中、膨張行程にある気筒の燃焼室内にインジェクタにより燃料を複数回に分けて噴射するとともに、点火プラグにより点火することで爆発させ、その爆発力によりクランク軸を回転させるエンジンの着火始動制御装置において、前記インジェクタにより燃料を複数回に分けて噴射する際に、燃料噴射の噴射長(噴射距離)が変化させられるとともにその噴射長が短い側では長い側に比較して噴射回数が多くされ、その複数回の燃料噴射が行われた後に前記点火プラグによって点火することを特徴とする。
第2発明は、第1発明のエンジンの着火始動制御装置において、前記複数回の燃料噴射は、最初に比べて後の方が噴射長が短いことを特徴とする。
第3発明は、第1発明または第2発明のエンジンの着火始動制御装置において、前記インジェクタは電磁式噴射弁で、その電磁式噴射弁を開弁するための通電時間によって前記燃料噴射の噴射長が制御されることを特徴とする。
このようなエンジンの着火始動制御装置においては、燃料を複数回に分けて噴射する際の燃料噴射の噴射長が変化させられるため、燃焼室内に燃料が分散して分布させられる。また、インジェクタによる燃料噴射の場合、一般に噴射長が短くなると燃料の噴射量が少なくなるが、噴射長が短い側では長い側に比較して噴射回数が多くされるため、噴射長の相違に起因する燃料分布のばらつきを抑制することができる。これにより、燃焼室内の広い範囲に略均一の濃度の混合気を形成することが可能で、この状態で点火プラグによって点火すると、速やかに安定して混合気に着火することができるとともに、着火による火炎が燃焼室内の全域に適切に伝播して燃焼室内の空気が効率良く燃焼させられ、爆発により大きなトルクを発生させることができる。このため、エンジンを一層確実に且つ速やかに始動できるようになるとともに、モータジェネレータ等によるアシストトルクが低減され或いは不要になる。
第2発明では、最初に行われる燃料噴射に比べて後から行われる燃料噴射の方が噴射長が短いため、インジェクタから遠い方から近い方へ順番に燃料が分布させられるようになり、燃焼室内の各部分にそれぞれ所定の濃度の混合気を形成することが可能で、例えば燃焼室内に略均一に燃料を分布させて略均一の濃度の混合気を形成することができる。すなわち、後から行う燃料噴射の噴射長が長いと、先に噴射された手前側の燃料(混合気)が攪拌されるため、混合気の濃度がばらつく可能性がある。
第3発明は、インジェクタが電磁式噴射弁の場合で、その電磁式噴射弁を開弁するための通電時間によって燃料噴射の噴射長が変化するため、噴射長を電気的に簡単に制御することができる。すなわち、通電時間が長くて電磁式噴射弁が完全に開いた状態では、ペネトレーションが略一定で噴射長も略一定であるが、通電時間が短くなると噴射弁を完全に開くことができなくなり、或いは完全に開いてもすぐに閉じられると圧力損失等の影響を受けるため、ペネトレーションが低下するとともに噴射長が短くなり、通電時間によって噴射長を制御することができるのである。
本発明が好適に適用されるハイブリッド車両の骨子図に、制御系統の要部を併せて示した概略構成図である。 図1のハイブリッド車両のエンジンを説明する断面図である。 図1の電子制御装置が機能的に備えているエンジン着火始動制御手段による処理内容を具体的に説明するフローチャートである。 図3のフローチャートに従って最初にエンジン着火始動制御が行われた際の燃料噴射信号、点火信号、およびイオン電流の変化を示すタイムチャートの一例である。 図3のフローチャートに従って2回目以降のエンジン着火始動制御が行われた際の燃料噴射信号、点火信号、およびイオン電流の変化を示すタイムチャートの一例である。 図4および図5における燃料噴射の通電時間TAU1〜TAU5を噴射長との関係で説明する図である。 図3のフローチャートに従ってエンジン着火始動制御が行われた際の多段階燃料噴射およびその後の点火制御時の燃焼室内の状態を模式的に示した図である。 本発明の他の実施例を説明する図で、図4に対応するタイムチャートである。 図8における燃料噴射の通電時間TAU1〜TAU3を噴射長との関係で説明する図で、図6に対応する図である。
本発明は、エンジンおよびモータジェネレータを走行用の駆動力源として備えているハイブリッド車両に好適に適用されるが、エンジンのみで走行するエンジン駆動車両にも適用され得る。エンジンは、インジェクタにより気筒内に燃料を直接噴射できる直噴エンジンで、4サイクルのガソリンエンジンが好適に用いられ、4気筒以上の多気筒エンジンを含む種々の気筒数のエンジンを用いることができる。
本発明は、車両走行中或いは停車中に回転停止している状態のエンジンを着火始動により始動するもので、少なくとも何れかの気筒が膨張行程で、その膨張行程の気筒内に燃料を噴射して点火することにより始動する。着火始動だけで始動する場合もあるが、モータジェネレータ等によりエンジンの回転をアシストすることが望ましい。
複数回の燃料噴射は、噴射長を少なくとも3段階以上で変化させることが望ましいが、2段階で変化させるだけでも良い。噴射長が短い程噴射回数を多くする態様は、噴射長が短くなる程噴射長の変化が小さくなるようにし、結果的に例えば点火プラグよりも遠い側(インジェクタと反対側)に比較して近い側の噴射回数が多くなるようにしても良い。また、例えば噴射長を3段階で変化させる場合に、噴射長が最も長い燃料噴射は1回、噴射長が2番目の燃料噴射は2回繰り返し、噴射長が最も短い燃料噴射は3回繰り返すなど、噴射長が短い程燃料噴射の繰り返し回数を多くしても良い。要するに、噴射長が短くなる程1回の噴射による燃料噴射量が少なくなるため、噴射長の相違に拘らず燃料分布のばらつきが抑制されるように、噴射長が短い部分程噴射回数が多くなるようにすれば良い。この噴射回数の制御は、例えば混合気濃度が燃焼室の全域で略均一になるように定められるが、点火プラグの近傍では着火性を向上させるためにリッチ空燃比とし、それ以外の領域では理論空燃比或いは可燃空燃比になるようにするなど、火炎の伝播を阻害しない範囲で混合気濃度を積極的に相違させても良い。
点火プラグによる点火は、混合気に着火するまで点火火花を連続して発生させる多回数点火が適当であるが、本発明の混合気濃度の制御により1回の点火で確実に着火できる場合には1回の点火でも良い。1回〜数回の点火火花で着火できる点火制御の開始タイミングを、学習制御で逐次補正するようにすれば、点火回数を少なくできる。
第2発明では、最初に行われる燃料噴射に比べて後から行われる燃料噴射の方が噴射長が短いが、第1発明の実施に際しては、後から行う燃料噴射の方が噴射長が長くなるようにしても良いなど、噴射長が異なる多段階(2段階以上)の燃料噴射の順番は適宜定めることができる。また、インジェクタとしては、第3発明のように電磁式噴射弁が好適に用いられ、開弁するための通電時間によって燃料噴射の噴射長を制御することができるが、噴射長を制御できる他のインジェクタを用いることも可能である。
以下、本発明の実施例を、図面を参照しつつ詳細に説明する。
図1は、本発明が好適に適用されるハイブリッド車両10の駆動系統の骨子図を含む概略構成図である。このハイブリッド車両10は、エンジン12およびモータジェネレータMGを走行用の駆動力源として備えている。エンジン12は、気筒内に燃料を直接噴射する直噴エンジンで、モータジェネレータMGは電動モータおよび発電機としての機能を有し、それ等の機能を択一的に用いることができる。そして、それ等のエンジン12およびモータジェネレータMGの出力は、流体式伝動装置であるトルクコンバータ14からタービン軸16を経て自動変速機20に伝達され、更に出力軸22、差動歯車装置24を介して左右の駆動輪26に伝達される。トルクコンバータ14は、ポンプ翼車とタービン翼車とを直結する摩擦係合式のロックアップクラッチ(LUクラッチ)30を備えている。
上記エンジン12は、本実施例では8気筒の4サイクルのガソリンエンジンが用いられており、図2に具体的に示すように、インジェクタ46により気筒(シリンダ)100の燃焼室101内にガソリン(高圧微粒子)が直接噴射されるようになっている。インジェクタ46は燃料噴射装置で、本実施例では電磁ソレノイドによって噴射ノズルの弁が開閉される電磁式噴射弁が用いられており、吸気弁104側の端部に配設されている。このエンジン12は、吸気通路102から吸気弁104を介して燃焼室101内に空気が流入するとともに、排気弁108を介して排気通路106から排気ガスが排出されるようになっており、所定のタイミングで点火プラグ47によって点火されることにより燃焼室101内の混合気が爆発燃焼してピストン110が下方へ押し下げられる。点火プラグ47は燃焼室101の中央部分に突き出すように配設されている。吸気通路102は、サージタンク103を介して吸入空気量調節装置である電子スロットル弁45に接続されており、その電子スロットル弁45の開度(スロットル弁開度)に応じて吸気通路102から燃焼室101内に流入する吸入空気量、すなわちエンジン出力が制御される。上記ピストン110は、気筒100内に軸方向の摺動可能に嵌合されているとともに、コネクチングロッド112を介してクランク軸114のクランクピン116に相対回転可能に連結されており、ピストン110の直線往復移動に伴ってクランク軸114が矢印Rで示すように回転駆動される。クランク軸114は、ジャーナル部118において軸受により回転可能に支持されるようになっており、ジャーナル部118とクランクピン116とを接続するクランクアーム120を一体に備えている。
そして、このようなエンジン12は、クランク軸114の2回転(720°)で、吸入行程、圧縮行程、膨張(爆発)行程、排気行程の4行程が行われ、これが繰り返されることでクランク軸114が連続回転させられる。8つの気筒100のピストン110は、それぞれクランク角度が90°ずつずれるように構成されており、クランク軸114が90°回転する毎に8つの気筒100が順番に爆発燃焼させられて連続的に回転トルクが発生させられる。また、何れかの気筒100のピストン110が圧縮行程の後のTDC(上死点)に達する圧縮TDCからクランク軸114が所定角度回転し、吸気弁104および排気弁108が共に閉じている膨張行程の所定の角度範囲θ内で停止している時に、インジェクタ46によって燃焼室101内にガソリンを噴射するとともに点火プラグ47によって点火することにより、燃焼室101内の混合気を爆発燃焼させて始動する着火始動が可能である。エンジン12の各部のフリクション(摩擦)が小さい場合には、着火始動のみでエンジン12を始動できるが、フリクションが大きい場合でも、クランク軸114をクランキングして始動する際の始動アシストトルクを低減できるため、そのアシストトルクを発生する前記モータジェネレータMGの最大トルクが低減されて小型化や低燃費化を図ることができる。上記角度範囲θは、例えば圧縮TDCから30°〜60°程度の範囲内が適当で、着火始動により比較的大きな回転エネルギーが得られ、アシストトルクを低減できる。上記角度範囲θはエンジン12の気筒数等に応じて適宜定められる。
図1に戻って、上記エンジン12とモータジェネレータMGとの間には、ダンパ38を介してそれ等を直結するK0クラッチ34が設けられている。このK0クラッチ34は、油圧シリンダによって摩擦係合させられる単板式或いは多板式の油圧式摩擦係合クラッチで、油圧制御装置28によって係合解放制御される。K0クラッチ34は油圧式摩擦係合装置で、エンジン12を動力伝達経路に対して接続したり遮断したりするエンジン断接装置として機能する。モータジェネレータMGは、インバータ42を介してバッテリー44に接続されている。また、前記自動変速機20は、複数の油圧式摩擦係合装置(クラッチやブレーキ)の係合解放状態によって変速比が異なる複数のギヤ段が成立させられる遊星歯車式等の有段の自動変速機で、油圧制御装置28に設けられた電磁式の油圧制御弁や切換弁等によって変速制御が行われる。
このようなハイブリッド車両10は電子制御装置70によって制御される。電子制御装置70は、CPU、ROM、RAM、及び入出力インターフェースなどを有する所謂マイクロコンピュータを含んで構成されており、RAMの一時記憶機能を利用しつつROMに予め記憶されたプログラムに従って信号処理を行う。電子制御装置70には、アクセル操作量センサ48からアクセルペダルの操作量(アクセル操作量)Accを表す信号が供給される。また、エンジン回転速度センサ50、MG回転速度センサ52、タービン回転速度センサ54、車速センサ56、クランク角度センサ58、SOCセンサ60、および着火センサ62から、それぞれエンジン12の回転速度(エンジン回転速度)NE、モータジェネレータMGの回転速度(MG回転速度)NMG、タービン軸16の回転速度(タービン回転速度)NT、出力軸22の回転速度(出力軸回転速度で車速Vに対応)NOUT、8つの気筒100毎のTDC(上死点)からの回転角度(クランク角度)Φ、バッテリー44の蓄電残量SOC、エンジン12の各気筒100の着火状態EXを表す信号が供給される。この他、各種の制御に必要な種々の情報が供給されるようになっている。着火センサ62は、点火プラグ47の点火火花で燃焼室101内の混合気に着火したか否かを検知するためのもので、例えば燃焼室101内の圧力やイオン電流などに基づいて検知することが可能であり、本実施例では着火状態EXとしてイオン電流を検出する。すなわち、イオン電流が予め定められた判定値以上になったら燃焼室101内の混合気に着火したと判断できる。
上記電子制御装置70は、機能的にハイブリッド制御手段72、変速制御手段74、およびエンジン着火始動制御手段80を備えている。ハイブリッド制御手段72は、エンジン12およびモータジェネレータMGの作動を制御することにより、例えばエンジン12のみを駆動力源として走行するエンジン走行モードや、モータジェネレータMGのみを駆動力源として走行するモータ走行モード、それ等の両方を用いて走行するエンジン+モータ走行モード等の予め定められた複数の走行モードを、アクセル操作量Accや車速V等の運転状態、或いは蓄電残量SOC等に応じて切り換えて走行する。変速制御手段74は、油圧制御装置28に設けられた電磁式の油圧制御弁や切換弁等を制御して複数の油圧式摩擦係合装置の係合解放状態を切り換えることにより、自動変速機20の複数のギヤ段を、アクセル操作量Accや車速V等の運転状態をパラメータとして予め定められた変速マップに従って切り換える。
エンジン着火始動制御手段80は、車両走行中や停車中のエンジン停止時に、運転者のアクセル操作や蓄電残量SOCの低下などでモータ走行モードからエンジン走行モード或いはエンジン+モータ走行モードへ切り換える際に、前記ハイブリッド制御手段72からのエンジン始動要求に従ってエンジン12を始動するためのものである。エンジン停止時には前記K0クラッチ34が解放され、動力伝達経路からエンジン12が切り離されて回転停止しており、エンジン着火始動制御手段80は着火始動によりエンジン12を始動するとともに、停車中はK0クラッチ34を完全係合させ、走行中はK0クラッチ34をスリップ係合させることにより、モータジェネレータMGで所定のアシストトルクを付与しつつ着火始動制御を行う。このエンジン着火始動制御手段80は、機能的に多段階燃料噴射手段82およびマルチ点火手段84を備えており、図3のフローチャートに従って信号処理を行う。図3のステップS2〜S4は多段階燃料噴射手段82に相当し、ステップS5〜S9はマルチ点火手段84に相当する。
図3のステップS1では、ハイブリッド制御手段72からエンジン始動要求があったか否かを判断し、エンジン始動要求が無ければそのまま終了するが、エンジン始動要求があった場合にはステップS2以下を実行する。図4および図5のタイムチャートの時間t1は、エンジン始動要求が供給された時間である。ステップS2では、各気筒100のクランク角度Φに基づいて膨張行程で停止している気筒100を検出するとともに、その膨張行程で停止している気筒100のクランク角度Φから要求燃料噴射量Qを算出する。要求燃料噴射量Qは、クランク角度Φから求まる燃焼室101の容積(空気量)に基づいて、その燃焼室101内の空気の酸素を総て燃焼させることができる可燃混合気が得られるように予め定められた演算式やマップ等から算出される。着火始動を行う際のクランク角度Φが常に略一定の角度になるように、エンジン12の回転停止制御が行われる場合には、要求燃料噴射量Qも略一定になり、一々算出する必要はない。
ステップS3では、ステップS2で求めた要求燃料噴射量Qを、噴射長が異なる多段階に分けて噴射できるように、前記インジェクタ46に対する各通電時間TAU1〜TAUnを設定する。すなわち、インジェクタ46による燃料噴射の噴射長は、図6に例示するように通電時間TAUによって相違し、通電時間TAUが短くなる程噴射長も短くなる。これは、通電時間TAUが短くなると、噴射弁を完全に開くことができなくなり、或いは完全に開いてもすぐに閉じられると圧力損失等の影響を受けるため、ペネトレーションが弱くなって噴射長が短くなるのである。図6では、通電時間TAUに対して噴射長がリニアに変化しているが、この特性は電磁ソレノイドの特性や噴射弁の弁形状、燃焼室101の形状等によって異なり、予め実験やシミュレーション等によって求めることができる。そして、インジェクタ46と反対側の排気弁108付近に届く通電時間TAU1から、インジェクタ46の近傍に位置する吸気弁104付近に噴射できる通電時間TAUnまでの間で、要求燃料噴射量Qだけ噴射できるように多段階に分割し、分割数nに応じて通電時間TAU1〜TAUnを設定する。これにより、燃焼室101内の全域に燃料(ガソリン)を分散して分布させることができる。
一方、1回の燃料噴射でインジェクタ46から噴射される燃料の噴射量は通電時間TAUに応じて変化し、通電時間TAUが短くなる程すなわち噴射長が短くなる程、燃料噴射量も少なくなる。このため、噴射長が等間隔になるように通電時間TAUを設定すると、インジェクタ46に近い吸気弁104側程燃料が少なくなり、混合気の濃度が薄くなる。これに対し、本実施例では噴射長が短い側程噴射回数が多くなるように、噴射長が短くなるに従って細かく分割される。これにより、燃焼室101内の混合気の濃度が、通電時間TAUの相違に拘らず略均一になる。図6は、要求燃料噴射量Qを噴射するために5段階(n=5)に分割された場合で、点火プラグ47よりも排気弁108側すなわち噴射長が長い側では通電時間TAU1およびTAU2の2回の噴射で燃料が供給されるのに対し、点火プラグ47よりも吸気弁104側すなわち噴射長が短い側では通電時間TAU3〜TAUn(=5)の3回の噴射で燃料が供給される。これにより、燃焼室101内の広い範囲に略均一の濃度の混合気が形成される。混合気の濃度は空燃比の逆数に対応し、濃度が高い程空燃比としては低くなる。
上記分割数nや通電時間TAU1〜TAUnは、要求燃料噴射量Qに応じて予め定められ、要求燃料噴射量Qが多い程分割数nが多くなり、噴射回数が多くなる。なお、分割数nを予め一定値(例えばn=5など)に設定し、要求燃料噴射量Qに応じて各通電時間TAU1〜TAUnによる燃料噴射を2回以上繰り返すことにより、燃料噴射量を調整することもできる。また、点火プラグ47の点火による着火性を良くするため、点火プラグ47の近傍ではリッチ空燃比になるように、例えば燃料を噴射する噴射長の間隔を狭くするなどして噴射回数が多くなるようにすることもできる。
そして、次のステップS4では、上記ステップS3で設定された各通電時間TAU1〜TAUnに従って多段階の燃料噴射を実施する。図4および図5のタイムチャートの時間t2は、この多段階燃料噴射が開始された時間で、時間t3は多段階燃料噴射が終了した時間であり、噴射長が長いTAU1から順番に燃料噴射が行われる。この図4、図5のタイムチャートは、図6に示すように燃料噴射が5段階に分割された場合である。また、図7は、その多段階燃料噴射およびその後の点火制御時の燃焼室101内の状態を模式的に示した図であり、(a) は通電時間TAU1で燃料噴射が行われる第1段燃料噴射時の状態で、排気弁108側に第1混合気G1が形成される。(b) は通電時間TAU2で燃料噴射が行われる第2段燃料噴射時の状態で、第1混合気G1の手前に第2混合気G2が形成される。(c) は通電時間TAU3で燃料噴射が行われる第3段燃料噴射時の状態で、第2混合気G2の手前に第3混合気G3が形成される。(d) は通電時間TAU4で燃料噴射が行われる第4段燃料噴射時の状態で、第3混合気G3の手前に第4混合気G4が形成される。(e) は通電時間TAU5で燃料噴射が行われる第5段燃料噴射時の状態で、第4混合気G4の手前に第5混合気G5が形成される。これ等の混合気G1〜G5の大きさは燃料噴射量に対応し、インジェクタ46に近い手前側程段階的に小さくなるが、その間隔も狭くなるため、全体として(f) に示すように略均一な濃度の混合気Gが形成される。
図3に戻って、次のステップS5では、前回のエンジン着火始動制御の際の着火時の点火番号を読み込み、その点火番号よりも一つ前から点火火花を発生させるように点火制御の開始時期を設定する。すなわち、最初のエンジン着火始動制御では、図4に示すように多段階燃料噴射が終了した時間t3の直後である時間t4から点火制御を開始し、点火プラグ47により点火火花を連続的に発生させるとともに、燃焼室101内の混合気に着火した時の点火火花の点火番号(図4の例ではNo4)を記憶(学習)しておき、次回のエンジン着火始動制御では、図5に示すようにその点火番号No4よりも一つ前の点火番号No3から点火火花を発生させるように点火制御の開始時期を補正する。これにより、着火性を損なうことなく点火制御の開始時期を最適化し、点火火花の発生回数をできるだけ少なくすることができる。
ステップS6では、上記ステップS5で設定された開始時期に従って多回数点火制御を開始する。多回数点火制御は、点火プラグ47により略一定の時間間隔で連続的に点火火花を発生させる点火制御で、図4、図5の時間t4は、この多回数点火制御が開始された時間である。ステップS7では、上記多回数点火制御で燃焼室101内の混合気Gに着火したか否かを判断する。混合気Gが着火したか否かは、着火センサ62から供給される着火状態EXを表す信号に基づいて判断でき、具体的には図4、図5のタイムチャートに示すイオン電流の波形から検知する。すなわち、イオン電流の値が予め定められた判定値を超えたら着火したと判断する。そして、着火を検知したらステップS8で多回数点火制御を終了するとともに、ステップS9で着火時の点火火花の点火番号を記憶する。そして、次回のエンジン着火始動制御では、この点火番号に基づいてステップS5で多回数点火制御の開始時期が設定される。図4、図5の時間t5は、イオン電流の波形に基づいて着火が検知された時間である。図7の(f) は、点火プラグ47の点火火花90により混合気Gに着火した状態で、混合気Gの濃度が略均一であることから、着火した火炎が混合気Gの全域に速やかに伝播する。
このような本実施例のエンジン着火始動制御においては、燃料を複数回に分けて噴射する際に通電時間TAUに応じて噴射長が変化させられるため、燃焼室101内に燃料が分散して分布させられる。また、通電時間TAUの制御で噴射長を変化させると、1回の燃料噴射時の燃料の噴射量が変化し、通電時間TAUが短い程すなわち噴射長が短い程噴射量が少なくなるが、噴射長が短い側では長い側に比較して噴射回数が多くされるため、噴射長の相違に起因する燃料分布のばらつきが抑制される。これにより、燃焼室101内の広い範囲に略均一の濃度の混合気Gが形成され、この状態で点火プラグ47によって点火すると、速やかに安定して混合気Gに着火することができるとともに、着火による火炎が燃焼室101内の全域に適切に伝播して燃焼室101内の空気が効率良く燃焼させられ、爆発により大きなトルクを発生させることができる。このため、エンジン12を一層確実に且つ速やかに始動できるようになるとともに、モータジェネレータMGによるアシストトルクが低減され、小型化や低燃費化を図ることができる。
また、本実施例では、通電時間TAUが長い方から燃料噴射が行われ、最初に行われる燃料噴射に比べて後から行われる燃料噴射の方が噴射長が短くなるため、インジェクタ46から遠い方から近い方へ順番に燃料が分布させられるようになり、燃焼室101内に略均一に燃料を分布させて略均一の濃度の混合気Gを安定して形成することができる。すなわち、後から行う燃料噴射の噴射長が長いと、先に噴射された手前側の燃料(混合気)が攪拌されるため、混合気Gの濃度がばらつく可能性がある。
また、本実施例では、点火プラグ47により略一定の時間間隔で連続的に点火火花90を発生させる多回数点火で混合気Gに着火するため、混合気Gの濃度が略均一にされることと相まって、一層速やかに且つ確実に混合気Gに着火して爆発を生じさせ、エンジン12を速やかに始動することができる。
なお、上記実施例では、噴射長が短くなる程噴射長の変化を細かくして噴射回数を多くし、噴射長の相違に拘らず燃料分布が略均一になるようにしていたが、例えば図8、図9に示すように噴射長を略等間隔に設定して通電時間TAU1〜TAU3を定めるとともに、噴射長が短い程燃料噴射の繰り返し回数を多くすることにより、噴射長の相違に拘らず燃料分布が略均一になるようにすることもできる。図8、図9では、噴射長が3段階に分けられているが、2段階或いは4段階以上に分けることも可能である。図8は前記図4に対応するタイムチャートで、この例では通電時間TAU1による燃料噴射は1回、通電時間TAU2による燃料噴射は2回、通電時間TAU3による燃料噴射は3回である。また、図9は前記図6に対応する図で、通電時間TAU1〜TAU3と噴射長との関係を示す図である。
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、これ等はあくまでも一実施形態であり、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を加えた態様で実施することができる。
10:ハイブリッド車両 12:エンジン 46:インジェクタ 47:点火プラグ 70:電子制御装置 80:エンジン着火始動制御手段 82:多段階燃料噴射手段 84:マルチ点火手段 100:気筒 101:燃焼室 TAU:通電時間

Claims (3)

  1. 回転停止しているエンジンの複数の気筒の中、膨張行程にある気筒の燃焼室内にインジェクタにより燃料を複数回に分けて噴射するとともに、点火プラグにより点火することで爆発させ、その爆発力によりクランク軸を回転させるエンジンの着火始動制御装置において、
    前記インジェクタにより燃料を複数回に分けて噴射する際に、燃料噴射の噴射長が変化させられるとともに該噴射長が短い側では長い側に比較して噴射回数が多くされ、該複数回の燃料噴射が行われた後に前記点火プラグによって点火する
    ことを特徴とするエンジンの着火始動制御装置。
  2. 前記複数回の燃料噴射は、最初に比べて後の方が噴射長が短い
    ことを特徴とする請求項1に記載のエンジンの着火始動制御装置。
  3. 前記インジェクタは電磁式噴射弁で、該電磁式噴射弁を開弁するための通電時間によって前記燃料噴射の噴射長が制御される
    ことを特徴とする請求項1または2に記載のエンジンの着火始動制御装置。
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JPWO2022249381A1 (ja) * 2021-05-27 2022-12-01

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