JP2014199830A - 有機エレクトロルミネッセンス素子及びその製造方法 - Google Patents

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礼隆 遠藤
悦昌 藤田
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悦昌 藤田
秀謙 尾方
Hidekane Ogata
秀謙 尾方
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Abstract

【課題】消費電力が小さく、信頼性及び耐久性に優れた有機EL素子の提供。【解決手段】基材上に一対の電極を備え、前記一対の電極間に、二層以上の有機薄膜を有する有機エレクトロルミネッセンス層を備えた有機エレクトロルミネッセンス素子であって、二層又はそれ以上の前記有機薄膜を構成する材料は、ガラス転移点、又はガラス転移点を有していない場合には融点が、前記基材に近い層のものほど高いことを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。【選択図】なし

Description

本発明は、有機エレクトロルミネッセンス素子及びその製造方法に関する。
有機電荷移動(CT)錯体、導電性高分子、有機光伝導体(OPC)等の研究成果を基礎として、OLED(Organic Light Emitting Diode)等の有機デバイスについて、1990年代前半から活発に研究開発が展開され、現在では、MP3プレーヤー、携帯電話として実用化される段階にまで至り、次世代フラットパネルディスプレイとして注目されている。
有機エレクトロルミネッセンス(有機EL)素子は、1965年にHelflichらによって、アントラセン単結晶に高電圧を印加して、青色のELが生じるのが発見されたときにまでさかのぼる。しかしながら、厚さ1mmに達する厚い単結晶を用いたため、この素子の駆動電圧は数百Vに達した。そのため、低電圧化を進めるために、単結晶から薄膜化への検討が進められ、数十Vの印加電圧にてEL発光を得ることができるようになった。しかしながら、発光層のみから構成される単層構造であるため、一つの材料に電子と正孔のキャリア注入、輸送及び再結合の全ての過程を坦わせており、素子設計の自由度が極めて低く、さらなる低駆動電圧化が困難であった。そこで、有機薄膜積層構造へ研究が展開され、トリフェニルジアミン系材料を正孔注入層として、アルミニウムキノリン錯体を電子輸送層(発光層)として用いた厚さ100nmの二層構造により、10V程度の印加電圧で1000cd/mに達する発光輝度が得られるようになった。このような従来の有機EL素子では、積層構造を用いることは重要であり、有機薄膜の厚さは二層又は三層の総計で50〜500nm前後となる。
一方、従来の有機EL素子は、厚さが100nm程度の薄膜層に、100MV/cm程度の高電圧を印加するため、電極間ショートが起こり易いという問題点があった。高電圧を印加する理由は、有機層のキャリア移動度が小さいためであり、高移動度の有機層を形成できれば印加電圧を低減でき、消費電力を低減できる。現在の一般的な有機EL素子のキャリア輸送層の移動度は、10−5〜10−3cm/Vsecであり、非晶質(アモルファス)材料でも10−3cm/Vsec程度が限界といわれている。なお、本発明において「非晶質」とは、結晶性を有していないこと、すなわち、分子の高次構造において規則性が無いことを指す。しかし近年では、π電子共役材料としてスチリル系化合物を用いた単層薄膜を基板上に形成し、加熱処理を行うことで、得られる薄膜において、分子の配向は基板表面に対して水平方向が優先することが報告されている(非特許文献1及び2参照)。このように、非晶質材料でも分子の配向を制御できることが明らかとなり、さらに高いキャリア移動度の実現が期待されている。
有機EL素子では、これを構成する分子(有機分子、有機化合物)として高い平坦性を有する非晶質材料を用い、電極間のショートを抑えることが重要である。そして、有機EL素子における薄膜の積層構造において、ガラス転移点(Tg)が一番低い材料からなる薄膜に対して、ガラス転移点±20℃程度の温度で加熱処理することにより、この薄膜を緻密化及び安定化させ、有機EL素子の長寿命化をはかる技術が開示されている(特許文献1及び2参照)。
特開平11−40352号公報 特開2000−311784号公報
Organic Electronics 10(2009)127−137 Applied Physics Letters 93(2008)173302
しかし、特許文献1及び2に記載の方法では、ガラス転移点が一番低い材料からなる薄膜しか、緻密化及び安定化させることができず、複数の薄膜を同様に処理できないという問題点があった。そして、複数の薄膜を緻密化及び安定化させようとすると、ある薄膜においてはガラス転移点を大きく超える温度で加熱処理せざるを得なくなることがあり、この場合、この薄膜と隣接する(上層又は下層の)薄膜との間で混合層が生じたり、薄膜に荒れが生じたりするという問題点があった。このように従来の有機EL素子には、消費電力が小さく、信頼性及び耐久性に優れたものが無いのが実情であった。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、消費電力が小さく、信頼性及び耐久性に優れた有機EL素子を提供することを課題とする。
本発明は、基材上に一対の電極を備え、前記一対の電極間に、二層以上の有機薄膜を有する有機エレクトロルミネッセンス層を備えた有機エレクトロルミネッセンス素子であって、二層又はそれ以上の前記有機薄膜を構成する材料は、ガラス転移点、又はガラス転移点を有していない場合には融点が、前記基材に近い層のものほど高いことを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子を提供する。
また、本発明は、かかる有機エレクトロルミネッセンス素子において、前記有機エレクトロルミネッセンス層が発光層を有し、前記発光層が、ホスト材料及び発光材料を含み、前記発光材料以外の前記有機薄膜を構成する材料は、ガラス転移点、又はガラス転移点を有していない場合には融点が、前記基材に近い層のものほど高いことを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子を提供する。
また、本発明は、かかる有機エレクトロルミネッセンス素子において、前記有機エレクトロルミネッセンス層が、前記有機薄膜として、発光層と、該発光層よりも上層に電子輸送層とを有し、前記発光層が、ホスト材料及び発光材料を含み、前記ホスト材料は、ガラス転移点、又はガラス転移点を有していない場合には融点が、前記電子輸送層を構成する材料の前記ガラス転移点又は融点よりも高いことを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子を提供する。
また、本発明は、かかる有機エレクトロルミネッセンス素子において、前記有機エレクトロルミネッセンス層が、前記有機薄膜として、発光層と、該発光層よりも上層に正孔輸送層とを有し、前記発光層が、ホスト材料及び発光材料を含み、前記ホスト材料は、ガラス転移点、又はガラス転移点を有していない場合には融点が、前記正孔輸送層を構成する材料の前記ガラス転移点又は融点よりも高いことを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子を提供する。
また、本発明は、かかる有機エレクトロルミネッセンス素子において、互いに隣接する前記有機薄膜を構成する材料の、前記ガラス転移点又は融点の差が、10℃以上であることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子を提供する。
また、本発明は、かかる有機エレクトロルミネッセンス素子において、前記有機薄膜を構成する材料が、π電子共役有機分子であることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子を提供する。
また、本発明は、かかる有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法であって、基材上に一方の前記電極、有機エレクトロルミネッセンス層、及び他方の前記電極をこの順に積層し、前記有機エレクトロルミネッセンス層の積層時には、二層又はそれ以上の前記有機薄膜のうち最下層以外のものについて、成膜中又は成膜後に、前記有機薄膜を構成する材料の前記ガラス転移点又は融点よりも20℃低い温度から20℃高い温度の温度域で、且つ直前に成膜した有機薄膜を構成する材料の前記ガラス転移点又は融点よりも低い温度で加熱処理することを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法を提供する。
また、本発明は、かかる有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法において、前記有機薄膜について、成膜中又は成膜後に、前記有機薄膜を構成する材料の前記ガラス転移点又は融点よりも20℃低い温度から20℃高い温度の温度域で、且つ直前に成膜した有機薄膜を構成する材料の前記ガラス転移点又は融点よりも10℃以上低い温度で加熱処理することを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法を提供する。
本発明によれば、消費電力が小さく、信頼性及び耐久性に優れた有機EL素子を提供できる。
本発明に係る有機EL素子の要部を例示する概略断面図である。 図1に示す有機EL素子の製造方法を説明するための概略断面図である。 2−メチル−9,10−ビス(ナフタレン−2−イル)アントラセン(MADN)膜の成膜後の加熱温度と、加熱後のMADN膜における分子の配向性及び電流密度との関係を示すグラフである。 2−メチル−9,10−ビス(ナフタレン−2−イル)アントラセン(MADN)の構造を示す図であり、(a)は安定構造を、(b)は分子構造とHOMOの分布を、(c)は分子構造とLUMOの分布を、それぞれ示す。 N,N’−ジ(ナフタレン−1−イル)−N,N’−ジフェニル−ベンジジン(α−NPD)の構造を示す図であり、(a)は安定構造を、(b)は分子構造とHOMOの分布を、それぞれ示す。 4,4’,4”−トリス(カルバゾール−9−イル)トリフェニルアミン(TCTA)の構造を示す図であり、(a)は安定構造を、(b)は分子構造とHOMOの分布を、それぞれ示す。 2,9−ジメチル−4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン(BCP)の構造を示す図であり、(a)は安定構造を、(b)は分子構造とLUMOの分布を、それぞれ示す。 N,N−ジカルバゾリル−3,5−ベンゼン(m−CP)の構造を示す図であり、(a)は安定構造を、(b)は分子構造とHOMOの分布を、それぞれ示す。 図1に示す有機EL素子を備えた表示装置の一実施形態の要部を例示する概略図であり、(a)は平面図、(b)は1画素の等価回路図、(c)は1画素の平面図である。 実施例1の素子の要部を例示する概略断面図である。 実施例2の素子の要部を例示する概略断面図である。 実施例2及び比較例2の素子についての電流−電圧特性の測定結果を示すグラフである。
<有機エレクトロルミネッセンス素子及びその製造方法>
本発明に係る有機エレクトロルミネッセンス(以下、「有機EL」と略記することがある)素子は、基材上に一対の電極を備え、前記一対の電極間に、二層以上の有機薄膜を有する有機EL層を備えた有機EL素子であって、二層又はそれ以上の前記有機薄膜を構成する材料は、ガラス転移点(以下、「Tg」と略記することがある)、又はガラス転移点を有していない場合には融点が、前記基材に近い層のものほど高いことを特徴とする。前記一対の電極は、陽極又は陰極として機能するものである。
図1は、本実施形態に係る有機EL素子の要部を例示する概略断面図である。
ここに示す有機EL素子1は、基材11上に、第一電極12、有機EL層13及び第二電極14がこの順に積層され、概略構成されている。すなわち、有機EL素子1は、基材11上に、第一電極12及び第二電極14からなる一対の電極と、該一対の電極間に挟持された有機EL層13と、を備えたものである。
基材11としては、ガラス基板が例示できる。
基材11の厚さは、0.1〜3mmであることが好ましい。
第一電極12及び第二電極14は、陽極又は陰極として機能するものである。
陰極の材質としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、セシウム等のアルカリ金属;マグネシウム、カルシウム、バリウム等のアルカリ土類金属;アルミニウム;銅;ケイ素;二種以上のこれら金属からなる合金;一種以上のこれら金属を含む合金以外の化合物等が例示できる。なかでも、安定性が良好な点から、リチウム、セシウム、カルシウム、バリウム、アルミニウム、ナトリウムカリウム合金、セシウム化合物、マグネシウム合金、バリウム化合物、アルミニウムリチウム合金、アルミニウム銅合金、アルミニウム銅シリコン合金が好ましい。また、これら以外でも、好ましいものとしてフッ素化合物が例示できる。
陰極は、二種以上の材質からなる層が積層された複数層のものでもよく、この時の層数は特に限定されない。複数層の陰極で好ましいものとしては、カルシウム層及びアルミニウム層が積層されたものが例示できる。
陽極の材質としては、酸化インジウムスズ(ITO)、酸化インジウム亜鉛(IZO(登録商標))、酸化インジウム、酸化スズ、カドミウムスタネート(CdSnO)、酸化亜鉛、ヨウ化銅、金、白金等が例示できる。
第一電極12及び第二電極14の膜厚は、それぞれ20〜200nmであることが好ましい。
有機EL層13は、陽極である第一電極12側から、陰極である第二電極14側へかけて、正孔注入層13a、正孔輸送層13b、発光層13c、正孔防止層13d、電子輸送層13e及び電子注入層13fがこの順に積層され、概略構成されている。
正孔注入層13a、正孔輸送層13b、発光層13c、正孔防止層13d、電子輸送層13e及び電子注入層13fは、それぞれ単層構造及び多層構造のいずれであってもよい。
正孔注入層13aは、正孔の第一電極12からの注入を効率よく行うものである。
正孔輸送層13bは、正孔の発光層13cへの輸送を効率よく行うものである。
電子輸送層13eは、電子の発光層13cへの輸送を効率よく行うものである。
電子注入層13fは、電子の第二電極14からの注入を効率よく行うものである。
これらは、キャリア注入輸送層に該当する。
正孔注入層13a、正孔輸送層13b、発光層13c、正孔防止層13d、電子輸送層13e及び電子注入層13fは、有機薄膜及び無機薄膜のいずれでもよいが、これら各層を構成するすべての層のうち、少なくとも二層は有機薄膜である。
正孔注入層13a及び正孔輸送層13bの材質は、公知のものでよく、好ましいものとしては、酸化バナジウム(V)、酸化モリブデン(MoO)等の酸化物や無機p型半導体材料;ポルフィリン化合物、N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−N,N’−ビス(フェニル)−ベンジジン(TPD)、N,N’−ジ(ナフタレン−1−イル)−N,N’−ジフェニル−ベンジジン(α−NPD)、4,4’,4”−トリス(カルバゾール−9−イル)トリフェニルアミン(TCTA、Tg151℃)、N,N−ジカルバゾリル−3,5−ベンゼン(m−CP、Tg55℃)、4,4’−(シクロヘキサン−1,1−ジイル)ビス(N,N−ジ−p−トリルアニリン)(TAPC)、2,2’−ビス(N,N−ジフェニルアミン)−9,9’−スピロビフルオレン(DPAS)、N1,N1’−(ビフェニル−4,4’−ジイル)ビス(N1−フェニル−N4,N4−ジ−m−トリルベンゼン−1,4−ジアミン)(DNTPD)、N3,N3,N3”’, N3”’−テトラ−p−トリル−[1,1’:2’,1”:2”,1”’−クオーターフェニル]−3,3”’−ジアミン(BTPD)、4,4’−(ジフェニルシランジイル)ビス(N,N−ジ−p−トリルアニリン)(DTASi)、2,2−ビス(4−カルバゾール−9−イルフェニル)アダマンティン(Ad−Cz)等の芳香族第三級アミン化合物;ヒドラゾン化合物、キナクリドン化合物、スチリルアミン化合物等の低分子含窒素化合物;ポリアニリン(PANI)、ポリアニリン−樟脳スルホン酸(PANI−CSA)、3,4−ポリエチレンジオキシチオフェン/ポリスチレンサルフォネイト(PEDOT/PSS)、ポリ(トリフェニルアミン)誘導体(Poly−TPD)、ポリビニルカルバゾール(PVCz)、ポリ(p−フェニレンビニレン)(PPV)、ポリ(p−ナフタレンビニレン)(PNV)等の高分子化合物;2−メチル−9,10−ビス(ナフタレン−2−イル)アントラセン(MADN、Tg120℃)等の芳香族炭化水素化合物等が例示できる。
正孔注入層13aの材質としては、陽極からの正孔の注入及び輸送をより効率よく行う観点から、正孔輸送層13bの材質よりも、HOMOのエネルギー準位が低い材質が好ましい。そして、正孔輸送層13bの材質としては、正孔注入層13aの材質よりも、正孔の移動度が高いものが好ましい。
正孔注入層13a及び正孔輸送層13bは、任意に添加剤(ドナー、アクセプター等)等を含んでいてもよい。
そして、正孔の注入性及び輸送性をより向上させるためには、正孔注入層13a及び正孔輸送層13bは、アクセプターを含むことが好ましい。
前記アクセプターは、公知のものでよく、無機材料及び有機材料のいずれでもよい。
前記無機材料の好ましいものとしては、金(Au)、白金(Pt)、タングステン(W)、イリジウム(Ir)、オキシ塩化リン(POCl)、六フッ化ヒ酸イオン(AsF )、塩素(Cl)、臭素(Br)、ヨウ素(I)、酸化バナジウム(V)、酸化モリブデン(MoO)等が例示できる。
前記有機材料の好ましいものとしては、7,7,8,8,−テトラシアノキノジメタン(TCNQ)、テトラフルオロテトラシアノキノジメタン(TCNQF)、テトラシアノエチレン(TCNE)、ヘキサシアノブタジエン(HCNB)、ジシクロジシアノベンゾキノン(DDQ)等のシアノ基を有する化合物;トリニトロフルオレノン(TNF)、ジニトロフルオレノン(DNF)等のニトロ基を有する化合物;フルオラニル;クロラニル;ブロマニル等が例示できる。
前記アクセプターは、これらのなかでも、正孔濃度を増加させる効果がより高いことから、シアノ基を有する化合物が好ましい。
正孔注入層13aの膜厚は、1〜500nmであることが好ましい。
正孔輸送層13bの膜厚は、5〜500nmであることが好ましい。
発光層(有機発光層)13cの材質は、公知のものでよく、有機発光材料のみでもよいし、発光性のドーパントとホスト材料との組み合わせでもよく、さらに任意に正孔輸送材料、電子輸送材料、添加剤(ドナー、アクセプター等)等を含んでいてもよい。また、上記の各材料が高分子材料(結着用樹脂)又は無機材料中に分散されていてもよい。発光効率及び耐久性の観点からは、発光層13cの材質としては、ホスト材料中に発光性のドーパントが分散されたものが好ましい。
前記有機発光材料は、低分子発光材料及び高分子発光材料等に分類でき、蛍光材料又は燐光材料等に分類されるものでもよい。
発光層(有機発光層)13cに用いる低分子有機材料(ホスト材料を含む)の好ましいものとしては、4,4’−ビス(2,2’−ジフェニルビニル)−ビフェニル(DPVBi)等の芳香族ジメチリデン化合物;5−メチル−2−[2−[4−(5−メチル−2−ベンゾオキサゾリル)フェニル]ビニル]ベンゾオキサゾール等のオキサジアゾール化合物;3−(4−ビフェニル)−4−フェニル−5−t−ブチルフェニル−1,2,4−トリアゾール(TAZ)等のトリアゾール誘導体;1,4−ビス(2−メチルスチリル)ベンゼン等のスチリルベンゼン化合物;チオピラジンジオキシド誘導体、ベンゾキノン誘導体、ナフトキノン誘導体、アントラキノン誘導体、ジフェノキノン誘導体、フルオレノン誘導体等の蛍光性有機材料;アゾメチン亜鉛錯体、(8−ヒドロキシキノリナト)アルミニウム錯体(Alq)等の蛍光発光有機金属錯体;BeBq(ビス(ベンゾキノリノラト)ベリリウム錯体);4,4’−ビス−(2,2−ジ−p−トリル−ビニル)−ビフェニル(DTVBi);トリス(1,3−ジフェニル−1,3−プロパンジオノ)(モノフェナントロリン)Eu(III)(Eu(DBM)(Phen));ジフェニルエチレン誘導体;トリス[4−(9−フェニルフルオレン−9−イル)フェニル]アミン(TFTPA、Tg186℃)等のトリフェニルアミン誘導体;ジアミノカルバゾール誘導体;ビススチリル誘導体;芳香族ジアミン誘導体;キナクリドン系化合物;ペリレン系化合物;クマリン系化合物;ジスチリルアリーレン誘導体(DPVBi);オリゴチオフェン誘導体(BMA−3T);4,4’−ジ(トリフェニルシリル)−ビフェニル(BSB、Tg100℃)、ジフェニル−ジ(o−トリル)シラン(UGH1、Tg26℃)、1,4−ビストリフェニルシリルベンゼン(UGH2)、1,3−ビス(トリフェニルシリル)ベンゼン(UGH3、Tg46℃)、トリフェニル−(4−(9−フェニル−9H−フルオレン−9−イル)フェニル)シラン(TPSi−F、Tg100℃)等のシラン誘導体;9,9−ジ(4−ジカルバゾール−ベンジル)フルオレン(CPF)、3,6−ビス(トリフェニルシリル)カルバゾール(mCP)、4,4’−ビス(カルバゾール−9−イル)ビフェニル(CBP、Tg62℃)、4,4’−ビス(カルバゾール−9−イル)−2,2’−ジメチルビフェニル(CDBP、Tg111℃)、N,N−ジカルバゾリル−3,5−ベンゼン(m−CP、Tg55℃)、3−(ジフェニルホスホリル)−9−フェニル−9H−カルバゾール(PPO1、Tg74℃)、3,6−ジ(9−カルバゾリル)−9−(2−エチルヘキシル)カルバゾール(TCz1、Tg88℃)、9,9’−(5−(トリフェニルシリル)−1,3−フェニレン)ビス(9H−カルバゾール)(SimCP、Tg101℃)、ビス(3,5−ジ(9H−カルバゾール−9−イル)フェニル)ジフェニルシラン(SimCP2)、3−(ジフェニルホスホリル)−9−(4−ジフェニルホスホリル)フェニル)−9H−カルバゾール(PPO21、Tg111℃)、2,2−ビス(4−カルバゾリルフェニル)−1,1−ビフェニル(4CzPBP、Tg120℃)、3,6−ビス(ジフェニルホスホリル)−9−フェニル−9H−カルバゾール(PPO2、Tg123℃)、9−(4−tert−ブチルフェニル)−3,6−ビス(トリフェニルシリル)−9H−カルバゾール(CzSi、Tg131℃)、3,6−ビス[(3,5−ジフェニル)フェニル]−9−フェニル−カルバゾール(CzTP、Tg135℃)、9−(4−tert−ブチルフェニル)−3,6−ジトリチル−9H−カルバゾール(CzC、Tg167℃)、9−(4−tert−ブチルフェニル)−3,6−ビス(9−(4−メトキシフェニル)−9H−フルオレン−9−イル)−9H−カルバゾール(DFC、Tg180℃)、2,2’−ビス(4−カルバゾール−9−イル)フェニル)−ビフェニル(BCBP)、9,9’−((2,6−ジフェニルベンゾ[1,2−b:4,5−b’]ジフラン−3,7−ジイル)ビス(4,1−フェニレン))ビス(9H−カルバゾール)(CZBDF)等のカルバゾール誘導体;4−(ジフェニルフォスフォイル)−N,N−ジフェニルアニリン(HM−A1)等のアニリン誘導体;1,3−ビス(9−フェニル−9H−フルオレン−9−イル)ベンゼン(mDPFB)、1,4−ビス(9−フェニル−9H−フルオレン−9−イル)ベンゼン(pDPFB)、2,7−ビス(カルバゾール−9−イル)−9,9−ジメチルフルオレン(DMFL−CBP、Tg131℃)、2−[9,9−ジ(4−メチルフェニル)−フルオレン−2−イル]−9,9−ジ(4−メチルフェニル)フルオレン(BDAF、Tg153℃)、2−(9,9−スピロビフルオレン−2−イル)−9,9−スピロビフルオレン(BSBF、Tg176℃)、9,9−ビス[4−(ピレニル)フェニル]−9H−フルオレン(BPPF、Tg177℃)、2,2’−ジピレニル−9,9−スピロビフルオレン(Spiro−Pye、Tg189℃)、2,7−ジピレニル−9,9−スピロビフルオレン(2,2’−Spiro−Pye、Tg186℃)、2,7−ビス[9,9−ジ(4−メチルフェニル)−フルオレン−2−イル]−9,9−ジ(4−メチルフェニル)フルオレン(TDAF、Tg201℃)、2,7−ビス(9,9−スピロビフルオレン−2−イル)−9,9−スピロビフルオレン(TSBF、Tg231℃)、9,9−スピロビフルオレン−2−イル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド(SPPO1)等のフルオレン誘導体;1,3−ジ(ピレン−1−イル)ベンゼン(m−Bpye、Tg97℃)等のピレン誘導体;プロパン−2,2’−ジイルビス(4,1−フェニレン)ジベンゾエート(MMA1)等のベンゾエート誘導体;4,4’−ビス(ジフェニルフォスフィンオキサイド)ビフェニル(PO1)、2,8−ビス(ジフェニルフォスフォリル)ジベンゾ[b,d]チオフェン(PPT)等のフォスフィンオキサイド誘導体;4,4”−ジ(トリフェニルシリル)−p−ターフェニル(BST、Tg113℃)等のターフェニル誘導体;2,4−ビス(フェノキシ)−6−(3−メチルジフェニルアミノ)−1,3,5−トリアジン(BPMT)等トリアジン誘導体が例示できる。
発光層(有機発光層)13cに用いる高分子有機材料の好ましいものとしては、ポリ(2−デシルオキシ−1,4−フェニレン)(DO−PPP)、ポリ[2,5−ビス−[2−(N,N,N−トリエチルアンモニウム)エトキシ]−1,4−フェニル−アルト−1,4−フェニルレン]ジブロマイド(PPP−NEt3+)、ポリ[2−(2’−エチルヘキシルオキシ)−5−メトキシ−1,4−フェニレンビニレン](MEH−PPV)、ポリ[5−メトキシ−(2−プロパノキシサルフォニド)−1,4−フェニレンビニレン](MPS−PPV)、ポリ[2,5−ビス−(ヘキシルオキシ)−1,4−フェニレン−(1−シアノビニレン)](CN−PPV)等のポリフェニレンビニレン誘導体;ポリ(9,9−ジオクチルフルオレン)(PDAF)等のポリスピロ誘導体;ポリ(N−ビニルカルバゾール)(PVK、Tg200℃)等のカルバゾール誘導体等が例示できる。
前記有機発光材料は、低分子発光材料が好ましく、低消費電力化の観点から、発光効率が高い燐光材料が好ましい。
前記発光性のドーパントの材質のうち、紫外発光材料であれば、p−クォーターフェニル、3,5,3,5テトラ−tert−ブチルセクシフェニル、3,5,3,5テトラ−tert−ブチル−p−クィンクフェニル等の蛍光発光材料等が例示できる。また、青色発光材料であれば、スチリル誘導体等の蛍光発光材料;ビス[(4,6−ジフルオロフェニル)−ピリジナト−N,C2’]ピコリネート イリジウム(III)(FIrpic)、ビス(4’,6’−ジフルオロフェニルポリジナト)テトラキス(1−ピラゾイル)ボレート イリジウム(III)(FIr6)等の、また、緑色発光材料であれば、トリス(2−フェニルピリジナート)イリジウム(Ir(ppy))等の燐光発光有機金属錯体等が例示できる。
発光層13cの膜厚は、5〜500nmであることが好ましい。
正孔防止層13d、電子輸送層13e及び電子注入層13fの材質は、公知のものでよく、好ましいものとしては、低分子材料であれば、n型半導体である無機材料;1,3−ビス[2−(2,2’−ビピリジン−6−イル)−1,3,4−オキサジアゾ−5−イル]ベンゼン(Bpy−OXD、Tg102℃)、1,3−ビス(5−(4−(tert−ブチル)フェニル)−1,3,4−オキサジアゾールー2−イル)ベンゼン(OXD7)等のオキサジアゾール誘導体;3−(4−ビフェニル)−4−フェニル−5−tert−ブチルフェニル−1,2,4−トリアゾール(TAZ)等のトリアゾール誘導体;チオピラジンジオキシド誘導体;ベンゾキノン誘導体;ナフトキノン誘導体;アントラキノン誘導体;ジフェノキノン誘導体;フルオレノン誘導体;ベンゾジフラン誘導体;8−ヒドロキシキノリノラート−リチウム(Liq、Tg130℃)等のキノリン誘導体;2,7−ビス[2−(2,2’−ビピリジン−6−イル)−1,3,4−オキサジアゾ−5−イル]−9,9−ジメチルフルオレン(Bpy−FOXD、Tg134℃)等のフルオレン誘導体;1,3,5−トリ[(3−ピリジル)−フェン−3−イル]ベンゼン(TmPyPB、Tg79℃)、1,3,5−トリ[(3−ピリジル)−フェン−3−イル]ベンゼン(TpPyPB、Tg80℃)等のベンゼン誘導体;2,2’,2”−(1,3,5−ベンジントリイル)−トリス(1−フェニル−1−H−ベンゾイミダゾール)(TPBI、Tg122℃)等のベンゾイミダゾール誘導体;3,5−ジ(ピレン−1−イル)ピリジン(PY1、Tg107℃)等のピリジン誘導体;3,3’,5,5’−テトラ[(m−ピリジル)−フェン−3−イル]ビフェニル(BP4mPy、Tg107℃)等のビフェニル誘導体;4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン(BPhen)、2,9−ジメチル−4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン(BCP)等のフェナントロリン誘導体;トリス(2,4,6−トリメチル−3−(ピリジン−3−イル)フェニル)ボラン(3TPYMB)等のトリフェニルボラン誘導体;ジフェニルビス(4−(ピリジン−3−イル)フェニル)シラン(DPPS)等のテトラフェニルシラン誘導体が例示できる。また、高分子材料であれば、ポリ(オキサジアゾール)(Poly−OXZ)、ポリスチレン誘導体(PSS)等が例示できる。特に、電子注入層13fの材質としては、フッ化リチウム(LiF)、フッ化バリウム(BaF)等のフッ化物;酸化リチウム(LiO)等の酸化物等が例示できる。
電子注入層13fの材質としては、陰極からの電子の注入及び輸送をより効率よく行う観点から、電子輸送層13eの材質よりも、LUMOのエネルギー準位が高い材質が好ましい。そして、電子輸送層13eの材質としては、電子注入層13fの材質よりも、電子の移動度が高いものが好ましい。
電子輸送層13e及び電子注入層13fは、任意に添加剤(ドナー、アクセプター等)等を含んでいてもよい。
そして、電子の輸送及び注入性をより向上させるためには、電子輸送層13e及び電子注入層13fは、ドナーを含むことが好ましい。
前記ドナーは、公知のものでよく、無機材料及び有機材料のいずれでもよい。
前記無機材料の好ましいものとしては、リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属;マグネシウム、カルシウム等のアルカリ土類金属;希土類元素;アルミニウム(Al);銀(Ag);銅(Cu);インジウム(In)等が例示できる。
前記有機材料の好ましいものとしては、芳香族3級アミン骨格を有する化合物、フェナントレン、ピレン、ペリレン、アントラセン、テトラセン、ペンタセン等の置換基を有していてもよい縮合多環化合物、テトラチアフルバレン(TTF)類、ジベンゾフラン、フェノチアジン、カルバゾール等が例示できる。
前記芳香族3級アミン骨格を有する化合物としては、アニリン類;フェニレンジアミン類;N,N,N’,N’−テトラフェニルベンジジン、N,N’−ビス−(3−メチルフェニル)−N,N’−ビス−(フェニル)−ベンジジン、N,N’−ジ(ナフタレン−1−イル)−N,N’−ジフェニル−ベンジジン等のベンジジン類;トリフェニルアミン、4,4’4”−トリス(N,N−ジフェニル−アミノ)−トリフェニルアミン、4,4’4”−トリス(N−3−メチルフェニル−N−フェニル−アミノ)−トリフェニルアミン、4,4’4”−トリス(N−(1−ナフチル)−N−フェニル−アミノ)−トリフェニルアミン等のトリフェニルアミン類;N,N’−ジ−(4−メチル−フェニル)−N,N’−ジフェニル−1,4−フェニレンジアミンのトリフェニルジアミン類が例示できる。
前記縮合多環化合物が「置換基を有する」とは、前記縮合多環化合物中の一つ以上の水素原子が、水素原子以外の基(置換基)で置換されていることを指し、前記置換基の数は特に限定されず、すべての水素原子が置換基で置換されていてもよい。そして、置換基の位置も特に限定されない。
前記置換基としては、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基、炭素数2〜10のアルケニル基、炭素数2〜10のアルケニルオキシ基、炭素数6〜15のアリール基、炭素数6〜15のアリールオキシ基、水酸基、ハロゲン原子等が例示できる。
前記アルキル基は、直鎖状、分岐鎖状及び環状のいずれでもよく、直鎖状又は分枝鎖状のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基、1−メチルブチル基、n−ヘキシル基、2−メチルペンチル基、3−メチルペンチル基、2,2−ジメチルブチル基、2,3−ジメチルブチル基、n−ヘプチル基、2−メチルヘキシル基、3−メチルヘキシル基、2,2−ジメチルペンチル基、2,3−ジメチルペンチル基、2,4−ジメチルペンチル基、3,3−ジメチルペンチル基、3−エチルペンチル基、2,2,3−トリメチルブチル基、n−オクチル基、イソオクチル基、ノニル基、デシル基が例示できる。
また、環状のアルキル基は、単環状及び多環状のいずれでも良く、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロデシル基、ノルボルニル基、イソボルニル基、1−アダマンチル基、2−アダマンチル基、トリシクロデシル基が例示できる。
前記アルコキシ基としては、前記アルキル基が酸素原子に結合した一価の基が例示できる。
前記アルケニル基としては、炭素数が2〜10の前記アルキル基において、炭素原子間の一つの単結合(C−C)が二重結合(C=C)に置換されたものが例示できる。
前記アルケニルオキシ基としては、前記アルケニル基が酸素原子に結合した一価の基が例示できる。
前記アリール基は、単環状及び多環状のいずれでもよく、環員数は特に限定されず、好ましいものとしては、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基が例示できる。
前記アリールオキシ基としては、前記アリール基が酸素原子に結合した一価の基が例示できる。
前記ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が例示できる。
前記ドナーは、これらのなかでも、電子濃度を増加させる効果がより高いことから、芳香族3級アミン骨格を有する化合物、置換基を有していてもよい縮合多環化合物、アルカリ金属が好ましい。
電子輸送層13eの膜厚は、5〜500nmであることが好ましい。
また、電子注入層13fの膜厚は、0.1〜100nmであることが好ましい。
有機EL素子1においては、有機EL層13のうち、二層以上の有機薄膜を構成する材料は、基材11に近い層のものほどガラス転移点(Tg)が高く、前記材料がガラス転移点を有していない場合には、ガラス転移点に代わって融点が、基材11に近い層のものほど高い。このように、有機薄膜を構成する前記材料としては、ガラス転移点を有しているものと有していないものとが混在していてよい。
例えば、有機EL素子1において、正孔注入層13a、正孔輸送層13b、正孔防止層13d、電子輸送層13e及び電子注入層13fがすべて有機薄膜である場合、ガラス転移点又は融点について上記の関係を満たす有機薄膜は、二層又はそれ以上であり、二層のみでもよいが、層数が多いほど好ましく、すべての有機薄膜が上記の関係を満たすことが特に好ましい。例えば、正孔注入層13a、正孔輸送層13b、正孔防止層13d、電子輸送層13e及び電子注入層13fのガラス転移点が順にTga、Tgb、Tgd、Tge及びTgfであるとすると、特に好ましい実施形態としては、Tga>Tgb>Tgd>Tge>Tgfの関係を満たすものが例示できる。
有機EL素子1においては、発光層13cがホスト材料及び発光材料を含む場合、前記発光材料以外の前記有機薄膜を構成する材料は、ガラス転移点、又はガラス転移点を有していない場合には融点が、基材11に近い層のものほど高くてもよい。このような有機EL層13としては、発光層13cが有機薄膜を有し(例えば、有機薄膜として発光層13cを有し)、そのホスト材料のガラス転移点又は融点が、その他の有機薄膜を構成する材料のガラス転移点又は融点との間に、上記の関係を有するものが例示できる。例えば、正孔注入層13a、正孔輸送層13b、正孔防止層13d、電子輸送層13e及び電子注入層13fが、上記のようにすべて有機薄膜であり、発光層13cも有機薄膜であって、そのホスト材料のガラス転移点がTgcであるとすると、特に好ましい実施形態としては、Tga>Tgb>Tgc>Tgd>Tge>Tgfの関係を満たすものが例示できる。
また、発光層13cがホスト材料及び発光材料を含む有機薄膜を有し(例えば、有機薄膜として発光層13cを有し)、例えば、発光層13cよりも上層に位置する電子輸送層13eが有機薄膜を有する(例えば、有機薄膜として電子輸送層13eを有する)場合、発光層13cを構成する前記ホスト材料は、ガラス転移点、又はガラス転移点を有していない場合には融点が、電子輸送層13eを構成する材料のガラス転移点又は融点よりも高いことが好ましい。
有機EL層13において、互いに隣接する前記有機薄膜を構成する材料の、前記ガラス転移点又は融点の差は、10℃以上であることが好ましい。
なお、ここまで、有機EL層を構成する各層の材質(材料)について説明したが、例えば、ホスト材料は正孔輸送材料又は電子輸送材料としても使用でき、正孔輸送材料及び電子輸送材料もホスト材料として使用できる。
有機EL素子1は、例えば、以下の方法で製造できる。図2は、有機EL素子1の製造方法を説明するための概略断面図である。
まず、図2(a)に示すように、基材11上に、スパッタリング法、真空蒸着法等により第一電極12を形成する。
次いで、図2(b)に示すように、第一電極12上に、正孔注入層13a、正孔輸送層13b、発光層13c、正孔防止層13d、電子輸送層13e及び電子注入層13fをこの順に積層し、有機EL層13を形成する。これら有機EL層13を構成する各層は、公知のウエットプロセス、ドライプロセス、レーザ転写法等により形成できる。
前記ウエットプロセスとしては、各層を構成する上記の各材質(材料)を溶媒に溶解又は分散させた液体を用いるスピンコーティング法、ディッピング法、ドクターブレード法、吐出コート法、スプレーコート法等の塗布法;インクジェット法、凸版印刷法、凹版印刷法、スクリーン印刷法、マイクログラビアコート法等の印刷法が例示できる。前記液体は、レベリング剤、粘度調整剤等の、液体の物性を調整するための添加剤を含んでいてもよい。
前記ドライプロセスとしては、各層を構成する上記の各材質(材料)を用いる抵抗加熱蒸着法、電子線(EB)蒸着法、分子線エピタキシー(MBE)法、スパッタリング法、有機気相蒸着(OVPD)法等が例示できる。
有機EL層13の形成時には、構成する材料のガラス転移点又は融点が上記の関係を有する前記有機薄膜、すなわち二層又はそれ以上の前記有機薄膜のうち、最下層以外のものについて、成膜中又は成膜後に、前記有機薄膜を構成する材料のガラス転移点又は融点よりも20℃低い温度から20℃高い温度の温度域で、且つ直前に成膜した有機薄膜を構成する材料のガラス転移点又は融点よりも低い温度で加熱処理する。ここで、加熱処理する「二層以上の有機薄膜」は、必ずしも連続している(互いに接触している)必要性はなく、間に無機薄膜等が存在していてもよい。すなわち、「直前に成膜した有機薄膜」とは、加熱処理する有機薄膜よりも下層に位置する有機薄膜で、最上層に位置するものを指す。このような条件で加熱処理することにより、有機EL素子1は、有機薄膜が結晶性及び非晶質のいずれであっても、これを構成する分子の配向が良好に制御され、電極及び有機薄膜間、並びに有機薄膜間でのキャリア(電子、正孔)の注入効率及び輸送効率が向上し、駆動電圧が低く、消費電力が小さいものとなる。また、有機薄膜の混合や膜荒れが抑制され、信頼性及び耐久性に優れたものとなる。
上記の、直前に成膜した有機薄膜を構成する材料のガラス転移点又は融点よりも低い温度は、該ガラス転移点又は融点よりも10℃以上低い温度であることが好ましい。このようにすることで、有機EL素子1は、上記効果にさらに優れたものとなる。
前記有機薄膜を構成する材料は、π電子共役有機分子であることが好ましく、これにより、有機EL素子1は、上記効果にさらに優れたものとなる。
前記加熱処理は、不活性ガス雰囲気下又は減圧下において行うことが好ましい。不活性ガスは、窒素ガス、ヘリウムガス、アルゴンガス等、公知のものでよい。また、減圧下で行う場合の圧力は1×10−5〜1×10−1Paであることが好ましい。
前記加熱処理時には、処理対象の有機薄膜を基材11側から加熱することが好ましい。このようにすることで、配向性がより良好に制御された有機薄膜を形成できる。
前記加熱処理は、公知の方法で行えばよく、加熱対象に熱源を接触させて直接加熱する方法、及び加熱対象に熱源を接触させずに間接的に加熱する方法のいずれでもよい。いずれの加熱方法でも、抵抗加熱、誘導加熱、マイクロ波加熱、赤外線加熱、アーク加熱、プラズマ加熱、電子ビーム加熱、イオンビーム加熱、レーザ加熱等が適用できる。
有機薄膜を加熱処理するときの、「有機薄膜を構成する材料のガラス転移点又は融点よりも20℃低い温度から20℃高い温度の温度域」という加熱温度は、有機薄膜における分子の配向状態及び電流密度との関係から求められたものである。一例を挙げると、以下の通りである。
有機薄膜を構成する分子として、下記2−メチル−9,10−ビス(ナフタレン−2−イル)アントラセン(MADN、Tg120℃)を用いて、ガラス基材上の厚さ120nmのIZO膜上に、真空蒸着法により膜厚100nmの単層薄膜(MADN膜)を成膜し、これを所定の温度(加熱温度)で30分間加熱処理した。そして、形成したMADN膜における分子(MADN)の配向状態を評価し、MADN膜の印加電圧2Vでの電流密度を測定し、これらの加熱温度との関係を調べた。結果を図3に示す。
なお、分子の配向状態の評価は、配向パラメータSの値を算出することで行った。配向パラメータSは、基材上に形成された薄膜中の分子の配向方向を定量化する値であり(「Applied Physics Letters,93,2008,173302」参照)、薄膜の消衰係数kに依存し、下記式(A)で表される。
S=3/2cosθ−1/2=(k−kxy)/(k+2kxy) ・・・・(A)
(式中、θは分子の配向軸と、基材表面に対して垂直な方向との為す角度(°)であり、kxyは基材表面と平行な方向の消衰係数であり、kは基材表面に対して垂直な方向の消衰係数である。)
薄膜が光学的異方性を有していない場合のSは0であり、薄膜中の分子の配向方向が基材表面に対して完全に水平方向(平行)である場合のSは−0.5である。消衰係数kは、分光エリプソメーターによる測定値から算出される。したがって、配向パラメータSが、−0.1〜−0.5の範囲にあることは、有機薄膜中で、基材表面に対して水平方向(平行)に配向している有機分子の割合が高いことを示す。
また、図3中の「x」及び「y」は、図4(a)に示すMADNにおける、互いに直交する三つの方向のうちの二つの方向である(残る一つの方向は「z」である)。図4(a)は、MADNの安定構造を示す図である。より具体的には、x方向は、MADNにおけるアントラセン骨格の短軸方向を示し、y方向は、MADNにおけるアントラセン骨格の長軸方向を示す。ここに示すMADNの安定構造は、汎用の量子化学計算ソフトであるGaussian09W(Gaussian社製)を用いた非経験的分子軌道計算法のレベルB3LYP/6−31G(d)により求めたものである。また、この安定構造をもとに、Gaussian09Wを用いた非経験的分子軌道計算法で求めたMADNのHOMOの分布を図4(b)に、LUMOの分布を図4(c)に、それぞれ分子構造と共に示す。
Gaussian09Wを用いてπ電子共役有機分子のHOMO又はLUMOの分布を計算する場合、まず、チェックポイントファイルを指定し、分子モデルの初期座標、計算方法と基底関数、電荷とスピン多重度をそれぞれ入力してインプットファイルを作成し、計算を実行することにより、最適構造化を行い、π電子共役有機分子の安定構造を計算する。次いで、得られた安定構造に対して分子軌道を表示することにより、π電子共役有機分子のHOMO又はLUMOの分布を可視化することができる。
なお、インプットファイルの作成及び実行の際の計算方法としては、Hartree−Fock法、密度汎関数(DFT)法、MP(Moller Plesset perturbation theory)法、CC(Coupled Cluster theory)法が選択できるが、本明細書におけるGaussian09Wを用いた計算では、DFT法を採用している。また、Gaussian09Wを用いた場合、安定構造の計算と同時に、HOMO及びLUMOも計算されており、GaussianViewによりHOMO及びLUMOの分布を可視化している。
ここでは、Gaussian09Wを用いた場合について説明したが、非経験的分子軌道計算法で用いる汎用の量子化学計算ソフトとしては、米国Gaussian社製のGaussianシリーズ(Gaussian09Wを含む)、Schrodinger社製のMarcoModel、Wavefunction社製のSpartan、アドバンスソフト社製のABINIT−MP/BioStation等が例示でき、なかでも、Gaussian09(Gaussian09W、Gaussian09M)が好適である。
図3から明らかなように、MADNのガラス転移点が120℃であるのに対して、基材の加熱温度が100℃以上になると、同じ測定条件で電流密度が上昇する。これは、加熱温度が100℃以上になると、同じ電流密度を得るための印加電圧を低減できることを意味する。すなわち、加熱温度の下限値を、MADNのガラス転移点よりも20℃低い温度とすることで、キャリア移動度が高くなる。一方、図3では、温度の上限値が140℃となっているが、150℃以上の温度では、MADN膜に膜荒れが生じてしまう。すなわち、加熱温度の上限値を、MADNのガラス転移点よりも20℃高い温度とすることで、膜荒れが抑制される。
このように加熱処理することで、キャリア移動度が高くなるのは、MADNにおけるアントラセン骨格のπ電子共役面(図4におけるx−y平面)が、基材表面に対して実質的に平行に配向することによると推測される。ここで、「π電子共役面が基材表面に対して実質的に平行に配向する」とは、π電子共役面が基材表面に完全に平行な場合だけでなく、π電子共役面と基材表面とがなす角度が45°未満となるように、アントラセン骨格が配向することを示す。
図4に示すように、MADNのHOMO及びLUMOは、アントラセン骨格に主に存在し、ナフタレン骨格にはほとんど存在しない。したがって、キャリア移動に関与する分子軌道(π電子共役有機分子が正孔輸送性の場合にはHOMO、電子輸送性の場合はLUMO)が主に分布するπ電子共役面が、基材表面に対して実質的に平行となることにより、キャリア移動に関与するπ電子の軌道の重なりが大きくなり、キャリア移動度が高くなる。
なお、π電子共役有機分子には、複数のπ電子共役面に満遍なくHOMO又はLUMOが分布している場合もある。この場合には、最も面積が大きいπ電子共役面を基材表面に対して実質的に平行に配向させることが好ましく、これにより、キャリア輸送性をより向上させることができる。
MADNはキャリア輸送性であるが、このように、MADNの配向が制御されることで、後述するように有機EL素子の一対の電極間に配置された有機薄膜の構成材料としてMADNを適用した場合には、かかるMADN膜が電荷輸送層及び正孔輸送層のいずれであっても、MADN膜のキャリア輸送性が向上し、有機EL素子の駆動電圧を低電圧化できる。
ここでは、MADNについて説明したが、本発明においては、上記のように加熱温度の温度域を設定することで、MADN以外のπ電子共役有機分子についても同様の効果を奏すると考えられる。
本発明において好ましいπ電子共役有機分子としては、ベンゼン骨格、ナフタレン骨格、アントラセン骨格、フェナントロリン骨格、ベンゾフラン骨格、ベンゾジフラン骨格、トリアジン骨格、イミダゾール骨格、ベンゾイミダゾール骨格、トリアゾール骨格、ピリジン骨格、オキサジアゾール骨格、カルバゾール骨格等のπ電子共役面を有するものが例示できる。
有機EL層13を形成後は、次いで、図2(c)に示すように、有機EL層13上に、真空蒸着法等により第二電極14を形成する。
上記工程を行うことで、図1に示す有機EL素子1が得られる。
本発明に係る有機EL素子は、図1に示すものに限定されず、有機EL層13が二層以上の有機薄膜を有し、前記有機薄膜を構成する材料は、ガラス転移点、又はガラス転移点を有していない場合には融点が、基材11に近い層のものほど高くなっていればよい。例えば、有機EL層が発光層とキャリア輸送層とを備えたもの等、有機EL素子1の構成の一部を適宜変更したものでもよく、有機EL層13の構成を以下のようにしたものが例示できる。
(1)第一電極12側から第二電極14側へかけて、正孔輸送層及び発光層がこの順に積層された有機EL層。
(2)第一電極12側から第二電極14側へかけて、発光層及び電子輸送層がこの順に積層された有機EL層。
(3)第一電極12側から第二電極14側へかけて、正孔輸送層、発光層及び電子輸送層がこの順に積層された有機EL層。
(4)第一電極12側から第二電極14側へかけて、正孔注入層、正孔輸送層、発光層及び電子輸送層がこの順に積層された有機EL層。
(5)第一電極12側から第二電極14側へかけて、正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層及び電子注入層がこの順に積層された有機EL層。
(6)第一電極12側から第二電極14側へかけて、正孔注入層、正孔輸送層、発光層、正孔防止層及び電子輸送層がこの順に積層された有機EL層。
(7)第一電極12側から第二電極14側へかけて、正孔注入層、正孔輸送層、発光層、正孔防止層、電子輸送層及び電子注入層がこの順に積層された有機EL層。
(8)第一電極12側から第二電極14側へかけて、正孔注入層、正孔輸送層、電子防止層、発光層、正孔防止層、電子輸送層及び電子注入層がこの順に積層された有機EL層。
前記電子防止層は、有機EL用として公知のものでよく、単層構造及び多層構造のいずれであってもよく、有機薄膜及び無機薄膜のいずれでもよい。そして、有機薄膜である場合には、その他の有機薄膜と同様に、上記のガラス転移点又は融点の関係を有するようにすることが好ましい。
有機EL素子において、発光層がホスト材料及び発光材料を含む有機薄膜を有し(例えば、有機薄膜として発光層を有し)、例えば、発光層よりも上層に位置する正孔輸送層が有機薄膜を有する(例えば、有機薄膜として正孔輸送層を有する)場合、発光層を構成する前記ホスト材料は、ガラス転移点、又はガラス転移点を有していない場合には融点が、正孔輸送層を構成する材料のガラス転移点又は融点よりも高いことが好ましい。
さらに、本発明に係る有機EL素子は、有機EL層がキャリアを閉じ込めるための発光層を備えることなく発光素子として機能し、有機EL層が二層以上の有機薄膜を有し、これらのガラス転移点又は融点が上記の関係を満たすものであってもよい。
上記のような有機EL素子1以外の有機EL素子も、有機薄膜について同様の加熱処理を行うことで、有機EL素子1と同様の方法で製造できる。
本発明に係る有機EL素子は、加熱処理された二層以上の有機薄膜の配向性が制御され、且つこれら有機薄膜の荒れや隣接する有機薄膜間での混合が抑制されるので、キャリア移動度が高くなり、高電圧を印加する必要が無く、消費電力が少なく、信頼性及び耐久性にも優れる。これは、前記有機薄膜が非晶質であっても同様である。したがって、本発明に係る有機EL素子は、例えば、電極間ショートが防止され、従来その防止策としてとられていた有機薄膜の多層化や厚膜化等の手段も不要なので、簡便に且つ低コストで製造できる。
以下、本発明を適用する有機薄膜を構成する材料として好適なもののうち、MADN以外のπ電子共役有機分子の具体的構造を例示する。ただし、π電子共役有機分子はここに例示するものに限定されるものではない。
下記N,N’−ジ(ナフタレン−1−イル)−N,N’−ジフェニル−ベンジジン(α−NPD)について、Gaussian09Wを用いた非経験的分子軌道計算法のレベルB3LYP/6−31Gにより求めた安定構造を図4(a)に、分子構造と前記計算法で求めたHOMOの分布を図4(b)に、それぞれ示す。
α−NPDは、正孔輸送層又は正孔注入層の材質として好適であり、正孔輸送に関与するHOMOが中央付近のビフェニル骨格に主に分布しており、ナフタレン骨格におけるHOMOは僅かである。したがって、α−NPDを正孔輸送層又は正孔注入層の形成に用いる場合には、ナフタレン骨格ではなくビフェニル骨格のπ電子共役面が基板表面に対して実質的に平行となるように、α−NPDを配向させることで、キャリア移動度を高くできると考えられる。
下記4,4’,4”−トリス(カルバゾール−9−イル)トリフェニルアミン(TCTA)について、Gaussian09Wを用いた非経験的分子軌道計算法のレベルB3LYP/6−31Gにより求めた安定構造を図5(a)に、分子構造と前記計算法で求めたHOMOの分布を図5(b)に、それぞれ示す。
正孔輸送性のTCTAは、正孔輸送に関与するHOMOが分子全体に分布しているが、カルバゾール骨格に最も面積の広いπ電子共役面を有するので、少なくともいずれかのカルバゾール骨格のπ電子共役面が基板表面に対して実質的に平行となるように、TCTAを配向させることで、キャリア移動度を高くできると考えられる。
下記2,9−ジメチル−4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン(BCP)について、Gaussian09Wを用いた非経験的分子軌道計算法のレベルB3LYP/6−31Gにより求めた安定構造を図6(a)に、分子構造と前記計算法で求めLUMOの分布を図6(b)に、それぞれ示す。
BCPは、電子輸送層又は電子注入層の材質として好適であり、電子輸送に関与するLUMOがフェナントロリン骨格に主に分布している。したがって、BCPを電子輸送層又は電子注入層の形成に用いる場合には、フェナントロリン骨格のπ電子共役面が基板表面に対して実質的に平行となるように、BCPを配向させることで、キャリア移動度を高くできると考えられる。
下記N,N−ジカルバゾリル−3,5−ベンゼン(m−CP)の安定構造を図7(a)に、分子構造とHOMOの分布を図7(b)に、それぞれ示す。
m−CPは、正孔輸送層、正孔注入層又は発光層(ホスト材料)の材質として好適であり、正孔輸送に関与するHOMOが、カルバゾール骨格に主に分布している。したがって、カルバゾール骨格のπ電子共役面が基板表面に対して実質的に平行となるように、m−CPを配向させることで、キャリア移動度を高くできると考えられる。
以下、同様に、Gaussian09Wを用いた非経験的分子軌道計算法のレベルB3LYP/6−31Gにより求めたHOMO及び/又はLUMOの分布と、分子の配向について説明する。
下記4,4’−(シクロヘキサン−1,1−ジイル)ビス(N,N−ジ−p−トリルアニリン)(TAPC)は、正孔輸送層又は正孔注入層の材質として好適であり、各ベンゼン骨格はそれぞれπ電子共役面を有し、各π電子共役面は6角形状又は円状になり、正孔輸送に関与するHOMOが、シクロヘキサン骨格に結合しているベンゼン骨格に主に分布している。したがって、前記ベンゼン骨格のπ電子共役面が基板表面に対して実質的に平行となるように、TAPCを配向させることで、キャリア移動度を高くできると考えられる。
下記2,2’−ビス(N,N−ジフェニルアミン)−9,9’−スピロビフルオレン(DPAS)は、正孔輸送層又は正孔注入層の材質として好適であり、各ベンゼン骨格はそれぞれπ電子共役面を有し、正孔輸送に関与するHOMOがジフェニルアミン骨格に主に分布している。したがって、ジフェニルアミン骨格のπ電子共役面が基板表面に対して実質的に平行となるように、DPASを配向させることで、キャリア移動度を高くできると考えられる。
下記N1,N1’−(ビフェニル−4,4’−ジイル)ビス(N1−フェニル−N4,N4−ジ−m−トリルベンゼン−1,4−ジアミン)(DNTPD)は、正孔輸送層又は正孔注入層の材質として好適であり、各ベンゼン骨格は同一平面状にはなく、各ベンゼン骨格はそれぞれπ電子共役面を有する。そして、HOMOが、窒素原子で挟まれた四つのベンゼン骨格(一つのビフェニレン基を構成する二つのフェニレン基、該フェニレン基に該当しない二つのフェニレン基)に広がっている。したがって、これらベンゼン骨格のπ電子共役面が基板表面に対して実質的に平行となるように、DNTPDを配向させることで、キャリア移動度を高くできると考えられる。
下記N3,N3,N3”’, N3”’−テトラ−p−トリル−[1,1’:2’,1”:2”,1”’−クオーターフェニル]−3,3”’−ジアミン(BTPD)は、正孔輸送層又は正孔注入層の材質として好適であり、各ベンゼン骨格は同一平面状にはなく、各ベンゼン骨格はそれぞれπ電子共役面を有する。そして、HOMOが、窒素原子に結合しているベンゼン骨格に主に分布している。したがって、これらベンゼン骨格のπ電子共役面が基板表面に対して実質的に平行となるように、BTPDを配向させることで、キャリア移動度を高くできると考えられる。
下記4,4’−(ジフェニルシランジイル)ビス(N,N−ジ−p−トリルアニリン)(DTASi)は、正孔輸送層又は正孔注入層の材質として好適であり、各ベンゼン骨格はそれぞれπ電子共役面を有する。そして、正孔輸送に関与するHOMOが、窒素原子に結合しているベンゼン骨格に主に分布している。したがって、これらベンゼン骨格のπ電子共役面が基板表面に対して実質的に平行となるように、DTASiを配向させることで、キャリア移動度を高くできると考えられる。
下記2,2−ビス(4−カルバゾール−9−イルフェニル)アダマンティン(Ad−Cz)は、正孔輸送層又は正孔注入層の材質として好適であり、各カルバゾール骨格、各ベンゼン骨格は、別々の互いに平行でないπ電子共役面を有する。そして、正孔輸送に関与するHOMOがカルバゾール骨格に主に分布している。したがって、カルバゾール骨格のπ電子共役面が基板表面に対して実質的に平行となるように、Ad−Czを配向させることで、キャリア移動度を高くできると考えられる。
下記4,4’−ビス(カルバゾール−9−イル)ビフェニル(CBP)は、発光層(ホスト材料)の材質として好適であり、各カルバゾール骨格、各ベンゼン骨格は、別々のπ電子共役面有し、全てのπ電子共役面が互いに平行ではない。そして、HOMOはカルバゾール骨格に主に分布している。したがって、カルバゾール骨格のπ電子共役面が基板表面に対して実質的に平行となるように、CBPを配向させることで、正孔移動度を高くできると考えられる。一方、LUMOは、窒素原子で挟まれたビフェニル骨格に主に分布している。したがって、前記ビフェニル骨格のπ電子共役面が基板表面に対して実質的に平行となるように、CBPを配向させることで、電子移動度を高くできると考えられる。
下記ジフェニル−ジ(o−トリル)シラン(UGH1)は、発光層(ホスト材料)の材質として好適であり、各ベンゼン骨格は、別々に互いに平行でないπ電子共役面を有する。そして、HOMOは、メチル基を有するベンゼン骨格(o−トリル基)に主に分布している。したがって、これらベンゼン骨格のπ電子共役面が基板表面に対して実質的に平行となるように、UGH1を配向させることで、正孔移動度を高くできると考えられる。一方、LUMOは、メチル基を有していないベンゼン骨格(フェニル基)に主に分布している。したがって、これらベンゼン骨格のπ電子共役面が基板表面に対して実質的に平行となるように、UGH1を配向させることで、電子移動度を高くできると考えられる。
下記1,4−ビストリフェニルシリルベンゼン(UGH2)は、発光層(ホスト材料)の材質として好適であり、各ベンゼン骨格は、別々に互いに平行でないπ電子共役面を有する。そして、HOMO及びLUMOは、ケイ素原子で挟まれたベンゼン骨格に主に分布している。したがって、前記ベンゼン骨格のπ電子共役面が基板表面に対して実質的に平行となるように、UGH2を配向させることで、キャリア移動度を高くできると考えられる。
下記9,9’−(5−(トリフェニルシリル)−1,3−フェニレン)ビス(9H−カルバゾール)(SimCP)は、発光層(ホスト材料)の材質として好適であり、各カルバゾール骨格、各ベンゼン骨格は、別々に互いに平行でないπ電子共役面を有する。そして、HOMOはカルバゾール骨格に主に分布している。したがって、カルバゾール骨格のπ電子共役面が基板表面に対して実質的に平行となるように、SimCPを配向させることで、正孔移動度を高くできると考えられる。一方、LUMOは、中央付近のベンゼン骨格(一つのトリフェニルシリル基、二つのカルバゾリル基がそれぞれ結合しているベンゼン骨格)に主に分布している。したがって、このベンゼン骨格のπ電子共役面が基板表面に対して実質的に平行となるように、SimCPを配向させることで、電子移動度を高くできると考えられる。
下記ビス(3,5−ジ(9H−カルバゾール−9−イル)フェニル)ジフェニルシラン(SimCP2)は、発光層(ホスト材料)の材質として好適であり、各カルバゾール骨格、各ベンゼン骨格は、別々に互いに平行でないπ電子共役面を有する。そして、HOMOはカルバゾール骨格に主に分布している。したがって、カルバゾール骨格のπ電子共役面が基板表面に対して実質的に平行となるように、SimCP2を配向させることで、正孔移動度を高くできると考えられる。一方、LUMOは、ケイ素原子及び窒素原子が共に結合しているベンゼン骨格に主に分布している。したがって、このベンゼン骨格のπ電子共役面が基板表面に対して実質的に平行となるように、SimCP2を配向させることで、電子移動度を高くできると考えられる。
下記9,9−スピロビフルオレン−2−イル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド(SPPO1)は、発光層(ホスト材料)の材質として好適であり、各ベンゼン骨格は、別々に互いに平行でないπ電子共役面を有する。そして、正孔輸送に関与するHOMOが、リン原子に結合していない方のフルオレン骨格に主に分布している。したがって、このフルオレン骨格のπ電子共役面が基板表面に対して実質的に平行となるように、SPPO1を配向させることで、正孔移動度を高くできると考えられる。一方、電子輸送に関与するLUMOは、リン原子に結合している方のフルオレン骨格に主に分布している。したがって、このフルオレン骨格のπ電子共役面が基板表面に対して実質的に平行となるように、SPPO1を配向させることで、電子移動度を高くできると考えられる。
下記プロパン−2,2’−ジイルビス(4,1−フェニレン)ジベンゾエート(MMA1)は、発光層(ホスト材料)の材質として好適であり、各ベンゼン骨格は、別々に互いに平行でないπ電子共役面を有する。そして、HOMOは、酸素原子に結合したベンゼン骨格に主に分布している。したがって、このベンゼン骨格のπ電子共役面が基板表面に対して実質的に平行となるように、MMA1を配向させることで、正孔移動度を高くできると考えられる。一方、LUMOは、末端のベンゼン骨格(カルボニル基に結合しているベンゼン骨格)に主に分布している。したがって、このベンゼン骨格のπ電子共役面が基板表面に対して実質的に平行となるように、MMA1を配向させることで、電子移動度を高くできると考えられる。
下記9−(4−tert−ブチルフェニル)−3,6−ビス(トリフェニルシリル)−9H−カルバゾール(CzSi)は、発光層(ホスト材料)の材質として好適であり、カルバゾール骨格、その他のベンゼン骨格は、別々に互いに平行でないπ電子共役面を有する。そして、HOMO及びLUMOがカルバゾール骨格に主に分布している。したがって、カルバゾール骨格のπ電子共役面が基板表面に対して実質的に平行となるように、CzSiを配向させることで、キャリア移動度を高くできると考えられる。
下記4,4’−ビス(ジフェニルフォスフィンオキサイド)ビフェニル(PO1)は、発光層(ホスト材料)の材質として好適であり、中央付近の二つのベンゼン骨格(ビフェニレン基を構成する二つのベンゼン骨格)が同一平面上にあり、一つのπ電子共役面を有し、その他のベンゼン骨格のπ電子共役面とは互いに平行でない。そして、HOMO及びLUMOが前記二つのベンゼン骨格に主に分布している。したがって、これら二つのベンゼン骨格のπ電子共役面が基板表面に対して実質的に平行となるように、PO1を配向させることで、キャリア移動度を高くできると考えられる。
下記2,2’−ビス(4−カルバゾール−9−イル)フェニル)−ビフェニル(BCBP)は、発光層(ホスト材料)の材質として好適であり、両末端側のカルバゾール骨格と中央付近の四つのベンゼン骨格は同一平面上になく、互いに平行でないπ電子共役面を有する。そして、HOMOはカルバゾール骨格に主に分布している。したがって、カルバゾール骨格のπ電子共役面が基板表面に対して実質的に平行となるように、BCBPを配向させることで、正孔移動度を高くできると考えられる。一方、LUMOは、四つのベンゼン骨格に主に分布している。したがって、これらベンゼン骨格のπ電子共役面が基板表面に対して実質的に平行となるように、BCBPを配向させることで、電子移動度を高くできると考えられる。
下記2,8−ビス(ジフェニルフォスフォリル)ジベンゾ[b,d]チオフェン(PPT)は、発光層(ホスト材料)の材質として好適であり、中央付近のジベンゾチオフェン骨格とベンゼン骨格とが互いに平行でないπ電子共役面を有し、HOMO及びLUMOがジベンゾチオフェン骨格に主に分布している。したがって、ジベンゾチオフェン骨格のπ電子共役面が基板表面に対して実質的に平行となるように、PPTを配向させることで、キャリア移動度を高くできると考えられる。
下記4−(ジフェニルフォスフォイル)−N,N−ジフェニルアニリン(HM−A1)は、発光層(ホスト材料)の材質として好適であり、各ベンゼン骨格が別々に互いに平行でないπ電子共役面を有する。そして、HOMOはN,N−ジフェニルアニリン骨格に主に分布している。したがって、N,N−ジフェニルアニリン骨格のπ電子共役面が基板表面に対して実質的に平行となるように、HM−A1を配向させることで、正孔移動度を高くできると考えられる。一方、LUMOは、窒素原子及びリン原子で挟まれたベンゼン骨格に主に分布している。したがって、このベンゼン骨格のπ電子共役面が基板表面に対して実質的に平行となるように、HM−A1を配向させることで、電子移動度を高くできると考えられる。
下記9,9’−((2,6−ジフェニルベンゾ[1,2−b:4,5−b’]ジフラン−3,7−ジイル)ビス(4,1−フェニレン))ビス(9H−カルバゾール)(CZBDF)は、発光層(ホスト材料)の材質として好適であり、ベンゾジフラン骨格と両末端側のカルバゾール骨格、その他のベンゼン骨格が互いに平行でないπ電子共役面を有し、HOMO及びLUMOがベンゾジフラン骨格に主に分布している。したがって、ベンゾジフラン骨格のπ電子共役面が基板表面に対して実質的に平行となるように、CZBDFを配向させることで、キャリア移動度を高くできると考えられる。
下記2,4−ビス(フェノキシ)−6−(3−メチルジフェニルアミノ)−1,3,5−トリアジン(BPMT)は、発光層(ホスト材料)の材質として好適であり、トリアジン骨格、各ベンゼン骨格が互いに平行でないπ電子共役面を有する。そして、HOMOはジフェニルアミノ骨格に主に分布している。したがって、ジフェニルアミノ骨格のπ電子共役面が基板表面に対して実質的に平行となるように、BPMTを配向させることで、正孔移動度を高くできると考えられる。一方、LUMOは、トリアジン骨格と、酸素原子に結合しているベンゼン骨格とに主に分布している。したがって、これらトリアジン骨格、ベンゼン骨格のπ電子共役面が基板表面に対して実質的に平行となるように、BPMTを配向させることで、電子移動度を高くできると考えられる。
下記2,2’,2”−(1,3,5−ベンジントリル)−トリス(1−フェニル−1H−ベンゾイミダゾール)(TPBI)は、電子輸送層又は電子注入層の材質として好適であり、各ベンゾイミダゾール骨格と各ベンゼン骨格は互いに平行でないπ電子共役面を有し、電子輸送に関与するLUMOが中央付近のベンゼン骨格(三つのベンゾイミダゾール骨格が結合しているベンゼン骨格)に主に分布している。したがって、このベンゼン骨格のπ電子共役面が基板表面に対して実質的に平行となるように、TPBIを配向させることで、キャリア移動度を高くできると考えられる。
下記3−(4−ビフェニル)−4−フェニル−5−tert−ブチルフェニル−1,2,4−トリアゾール(TAZ)は、電子輸送層又は電子注入層の材質として好適であり、トリアゾール骨格と各ベンゼン骨格は互いに平行でないπ電子共役面を有し、電子輸送に関与するLUMOが、ビフェニル基を構成する二つのベンゼン骨格のうち、トリアゾール骨格に結合しているものに主に分布している。したがって、このベンゼン骨格のπ電子共役面が基板表面に対して実質的に平行となるように、TAZを配向させることで、キャリア移動度を高くできると考えられる。
下記4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン(BPhen)は、電子輸送層又は電子注入層の材質として好適であり、フェナントロリン骨格と各ベンゼン骨格は互いに平行でないπ電子共役面を有し、電子輸送に関与するLUMOがフェナントロリン骨格に主に分布している。したがって、フェナントロリン骨格のπ電子共役面が基板表面に対して実質的に平行となるように、BPhenを配向させることで、キャリア移動度を高くできると考えられる。
下記ジフェニルビス(4−(ピリジン−3−イル)フェニル)シラン(DPPS)は、電子輸送層又は電子注入層の材質として好適であり、各ピリジン骨格と各ベンゼン骨格は互いに平行でないπ電子共役面を有し、電子輸送に関与するLUMOが、ピリジン骨格と、このピリジン骨格に結合しているベンゼン骨格に主に分布している。したがって、これらピリジン骨格、ベンゼン骨格のπ電子共役面が基板表面に対して実質的に平行となるように、DPPSを配向させることで、キャリア移動度を高くできると考えられる。
下記1,3,5−トリ[(3−ピリジル)−フェン−3−イル]ベンゼン(TmPyPB)は、電子輸送層又は電子注入層の材質として好適であり、各ピリジン骨格と各ベンゼン骨格は互いに平行でないπ電子共役面を有し、電子輸送に関与するLUMOが四つのベンゼン骨格に主に分布している。したがって、これらベンゼン骨格のπ電子共役面が基板表面に対して実質的に平行となるように、TmPyPBを配向させることで、キャリア移動度を高くできると考えられる。
下記1,3,5−トリ[(3−ピリジル)−フェン−3−イル]ベンゼン(TpPyPB)は、電子輸送層又は電子注入層の材質として好適であり、各ピリジン骨格と各ベンゼン骨格は互いに平行でないπ電子共役面を有し、電子輸送に関与するLUMOが四つのベンゼン骨格に主に分布している。したがって、これらベンゼン骨格のπ電子共役面が基板表面に対して実質的に平行となるように、TpPyPBを配向させることで、キャリア移動度を高くできると考えられる。
<表示装置>
前記有機EL素子を備えた表示装置としては、画像信号を発生して出力する画像信号出力部と、前記画像信号に基づいて電流又は電圧を発生する駆動部と、発生した前記電流又は電圧により発光する発光部とを備え、前記発光部が、前記有機EL素子であるものが例示できる。そして、かかる有機EL素子を備えたこと以外は、従来の表示装置と同様の構成とすることができる。このような表示装置は、前記有機EL素子を備えたことで、電力消費量が少ないものとなる。
以下、図面を参照しながら説明する。
図9は、前記有機EL素子を備えた表示装置の一実施形態の要部を例示する概略図であり、(a)は平面図、(b)は1画素の等価回路図、(c)は1画素の平面図である。
ここに示す表示装置5Aは、前記有機EL素子1を用いた有機EL表示装置である。
表示装置5Aにおいては、複数の走査線(ゲート配線)50と、複数の信号線(ソース配線)51とが縦横に配されたマトリクスが形成されており、それぞれの交差部に一つの画素が設けられた画素アレイが形成されている。画素アレイの周囲領域には、走査線50に接続された走査線駆動回路(ゲートドライバ)55と、信号線51に接続された信号線駆動回路(ソースドライバ)56が、それぞれ配置されている。そして、前記走査線駆動回路55及び信号線駆動回路56には、画像表示を行うためのタイミング信号やRGB輝度信号等の画像信号を供給するためのコントローラ57が接続され、さらに走査線50及び信号線51に与える信号電圧を供給するための電源回路59が接続されている。コントローラ57には、表示装置5Aに対して外部より水平・垂直同期信号や画像信号を与えるための外部処理装置58が接続されている。
表示装置5Aを構成する画素アレイの1画素は、図9(b)に示すように、走査線50及び信号線51に接続されたスイッチング用トランジスタ52、画素を駆動するための駆動用トランジスタ53、並びに保持容量54を備え、駆動用トランジスタ53に有機EL素子1からなる画素部が接続されている。有機EL素子1は、駆動電流又は電圧により発光する。
スイッチング用トランジスタ52及び駆動用トランジスタ53は、例えば、一般的な多結晶シリコンを半導体として用いたトランジスタ等で構成できる。以上により表示装置5Aが構成されている。
有機EL素子としては、図1に示すものに限定されず、本発明に係る有機EL素子であれば、いずれも用いることができる。
以下、具体的実施例により、本発明についてより詳細に説明する。ただし、本発明は以下に示す実施例に何ら限定されるものではない。
<素子の製造>
[実施例1]
下記手順により、図10に示す構成を有する有機EL素子2を製造した。なお、図10では、図1に示す有機EL素子1の構成要素と同じものには、図1と同じ符号を付し、その詳細な説明は省略する。これは以降においても同様である。
厚さ0.7mmのガラス基板(基材11)上に、厚さ120nmのIZO膜(第一電極12、陽極)が成膜された基板を用い、これを水洗後、アルカリ性水溶液中で超音波洗浄を30分間行い、水洗後、超純水で超音波洗浄を15分間行って、110℃で30分間乾燥させた。
次いで、UVオゾンクリーナーを用いて、得られた基板を大気雰囲気下でUV−オゾン処理した。そして、基板を真空蒸着機にセットし、IZO膜上に酸化モリブデン(MoO)膜(正孔注入層13a)を1nmの膜厚で成膜した後、4,4’,4”−トリス(カルバゾール−9−イル)トリフェニルアミン(TCTA、Tg151℃)膜(正孔注入層13a)を20nmの膜厚で成膜し、さらに、MADN(Tg120℃)膜(正孔輸送層13b)を20nmの膜厚で成膜した。この基板をグローブボックス内にセットし、窒素雰囲気下、135℃で30分間加熱処理した。
次いで、得られた基板を真空蒸着機にセットし、4,4’−ビス(カルバゾール−9−イル)ビフェニル(CBP、ホスト材料、Tg62℃)中に6質量%の濃度でトリス(2−フェニルピリジナート)イリジウム(Ir(ppy)、ドーパント)をドープした膜(発光層13c)を、20nmの膜厚でMADN膜上に成膜し、TmPyPB(Tg79℃)膜(電子輸送層13e)を40nmの膜厚で成膜した。この基板をグローブボックス内にセットし、窒素雰囲気下、85℃で30分間加熱処理した。
次いで、得られた基板を真空蒸着機にセットし、シャドウマスクを基板のTmPyPB膜上に設置し、フッ化リチウム(LiF)膜(電子注入層13f)を1nmの膜厚で成膜し、アルミニウム(Al)膜(第二電極14、陰極)を100nmの膜厚で成膜することにより、陰極及び配線を形成した。そして、光硬化性樹脂を用いて、得られた基板をガラスで封止(図示略)することで、有機EL素子2を製造した。なお、図10において、符号23は有機EL層を示す。また、正孔注入層13aは、MoOからなる層及びTCTAからなる層が積層された二層構造のものを一纏めに示している。
[比較例1]
MADN膜の成膜後、及びTmPyPB膜の成膜後に、いずれも加熱処理しなかったこと以外は、実施例1と同様に、有機EL素子を製造した。
[実施例2]
下記手順により、図11に示す有機EL素子3を製造した。
厚さ0.7mmのガラス基板(基材11)上に、厚さ120nmのIZO膜(第一電極12、陽極)が成膜された基板を用い、これを水洗後、アルカリ性水溶液中で超音波洗浄を30分間行い、水洗後、超純水で超音波洗浄を15分間行って、110℃で30分間乾燥させた。
次いで、UVオゾンクリーナーを用いて、得られた基板を大気雰囲気下でUV−オゾン処理した。そして、基板を真空蒸着機にセットし、IZO膜上に2−メチル−9,10−ビス(ナフタレン−2−イル)アントラセン(MADN、Tg120℃)膜(正孔輸送層13b)を50nmの膜厚で成膜した。そして、この基板をグローブボックス内にセットし、窒素雰囲気下、135℃で30分間加熱処理した。
次いで、得られた基板を真空蒸着機にセットし、MADN膜上に1,3,5−トリ[(3−ピリジル)−フェン−3−イル]ベンゼン(TmPyPB、Tg79℃)膜(電子輸送層13e)を50nmの膜厚で成膜した。そして、この基板をグローブボックス内にセットし、窒素雰囲気下、85℃で30分間加熱処理した。
次いで、得られた基板を真空蒸着機にセットし、シャドウマスクを基板のTmPyPB膜上に設置し、フッ化リチウム(LiF)膜(電子注入層13f)を1nmの膜厚で成膜し、アルミニウム(Al)膜(第二電極14、陰極)を100nmの膜厚で成膜することにより、陰極及び配線を形成した。そして、光硬化性樹脂を用いて、得られた基板をガラスで封止(図示略)することで、有機EL素子3を製造した。なお、図11において、符号33は有機EL層を示す。
[比較例2]
MADN膜の成膜後、及びTmPyPB膜の成膜後に、いずれも加熱処理しなかったこと以外は、実施例2と同様に、有機EL素子を製造した。
<薄膜の電気的特性の評価>
上記実施例及び比較例で得られた素子の電流−電圧(I−V)特性を測定し、有機薄膜の電気的特性を評価した。実施例2及び比較例2の電流−電圧特性の測定結果を図12に示す。
その結果、実施例1の方が比較例1よりも、印加電圧に対して電流が流れ易く、電圧4Vにおける電流密度は、実施例1が比較例1よりも10倍高かった。
また、実施例2の方が比較例2よりも、印加電圧に対して電流が流れ易く、電圧1Vにおける電流密度は、実施例2が比較例2よりも200倍高かった。
本発明は、有機EL素子を備えた有機デバイスに利用可能である。
1,2,3・・・有機EL素子、11・・・基材、12・・・第一電極、13,23,33・・・有機EL層、13a・・・正孔注入層、13b・・・正孔輸送層、13c・・・発光層、13d・・・正孔ブロッキング層、13e・・・電子輸送層、13f・・・電子注入層、14・・・第二電極

Claims (8)

  1. 基材上に一対の電極を備え、前記一対の電極間に、二層以上の有機薄膜を有する有機エレクトロルミネッセンス層を備えた有機エレクトロルミネッセンス素子であって、
    二層又はそれ以上の前記有機薄膜を構成する材料は、ガラス転移点、又はガラス転移点を有していない場合には融点が、前記基材に近い層のものほど高いことを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
  2. 前記有機エレクトロルミネッセンス層が発光層を有し、
    前記発光層が、ホスト材料及び発光材料を含み、
    前記発光材料以外の前記有機薄膜を構成する材料は、ガラス転移点、又はガラス転移点を有していない場合には融点が、前記基材に近い層のものほど高いことを特徴とする請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
  3. 前記有機エレクトロルミネッセンス層が、前記有機薄膜として、発光層と、該発光層よりも上層に電子輸送層とを有し、
    前記発光層が、ホスト材料及び発光材料を含み、
    前記ホスト材料は、ガラス転移点、又はガラス転移点を有していない場合には融点が、前記電子輸送層を構成する材料の前記ガラス転移点又は融点よりも高いことを特徴とする請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
  4. 前記有機エレクトロルミネッセンス層が、前記有機薄膜として、発光層と、該発光層よりも上層に正孔輸送層とを有し、
    前記発光層が、ホスト材料及び発光材料を含み、
    前記ホスト材料は、ガラス転移点、又はガラス転移点を有していない場合には融点が、前記正孔輸送層を構成する材料の前記ガラス転移点又は融点よりも高いことを特徴とする請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
  5. 互いに隣接する前記有機薄膜を構成する材料の、前記ガラス転移点又は融点の差が、10℃以上であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
  6. 前記有機薄膜を構成する材料が、π電子共役有機分子であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
  7. 請求項1〜6のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法であって、
    基材上に一方の前記電極、有機エレクトロルミネッセンス層、及び他方の前記電極をこの順に積層し、
    前記有機エレクトロルミネッセンス層の積層時には、二層又はそれ以上の前記有機薄膜のうち最下層以外のものについて、成膜中又は成膜後に、前記有機薄膜を構成する材料の前記ガラス転移点又は融点よりも20℃低い温度から20℃高い温度の温度域で、且つ直前に成膜した有機薄膜を構成する材料の前記ガラス転移点又は融点よりも低い温度で加熱処理することを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
  8. 前記有機薄膜について、成膜中又は成膜後に、前記有機薄膜を構成する材料の前記ガラス転移点又は融点よりも20℃低い温度から20℃高い温度の温度域で、且つ直前に成膜した有機薄膜を構成する材料の前記ガラス転移点又は融点よりも10℃以上低い温度で加熱処理することを特徴とする請求項7に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
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