JP2014198674A - 糖尿病の治療剤又は予防剤 - Google Patents
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Abstract
Description
本発明は、糖尿病の治療剤又は予防剤に関する。
糖尿病は、インスリンの量的不足又は作用不足を伴う慢性高血糖状態を主徴とする代謝疾患群である。糖尿病は、インスリン依存型糖尿病(insulin−dependent diabetes melitus:以下、IDDM)、インスリン非依存型糖尿病(non−insulin−dependent diabetes melitus:以下、NIDDM)、妊娠糖尿病(gestational diabetes melitus:以下、GDM)、その他特定の作用機序による糖尿病の4種類に分類される。一般的に、IDDMを1型糖尿病、NIDDMを2型糖尿病とよび、糖尿病患者の約95%は2型糖尿病に分類される(非特許文献1)。
2型糖尿病の患者数は世界的に増加を続けており、その背景には、食生活の欧米化若しくは自動車の普及や交通機関の発達に伴う運動不足を背景とした肥満の増加、又は、基礎代謝量の低下を原因としたインスリンの作用不足、すなわちインスリン抵抗性が強く関与している(非特許文献2)。
インスリン抵抗性は、骨格筋、肝臓又は脂肪組織等の末梢組織におけるインスリンの作用不足により、糖取り込み量の低下、糖新生の亢進、アディポネクチンの低下、又は、TNF−α、レジスチン若しくはIL−6等の炎症性サイトカインの増加等の変化を引き起こすことが知られており、2型糖尿病の成因とも言われている(非特許文献3)。
現在、上市されている2型糖尿病の治療薬は、作用機序の違いにより、主に、インスリン製剤、GLP1受容体作動薬、スルホニル尿素薬、即効性インスリン分泌促進薬、αグルコシダーゼ阻害薬、ビグアナイド薬、DPP4阻害薬又はチアゾリジン誘導体に分類される。
チアゾリジンジオン誘導体であるピオグリタゾンやロシグリタゾンは、2型糖尿病の成因であるインスリン抵抗性に対する改善作用を有する2型糖尿病治療薬である(非特許文献4)。その作用機序は、核内転写因子の一つであるペルオキシソーム増殖剤応答性受容体ガンマー(Peroxisome Proliferator Activated Receptor gamma:以下、PPARγ)を活性化することにより、障害を受けているインスリン受容体の機能回復、それに伴うインスリン感受性の向上及び末梢組織のインスリン抵抗性の改善を導き、2型糖尿病に対して治療効果を発揮するとされている(非特許文献5)。
近年、チアゾリジンジオン誘導体は、PPARγ活性化作用とは異なる作用機序で糖尿病に対して治療効果を発揮していることが報告され、例えば、2型糖尿病患者で低下したミトコンドリアDNA量の増加又はクエン酸合成酵素の活性増加(ミトコンドリア機能改善作用)により、糖尿病に対して治療効果を発揮している可能性が示されている(非特許文献6)。
The Expert Committee on the Diagnosis and Classification of Diabetes Mellitus、Diabetes Care、1997年、第20巻、p.1183−1197
Yazakiら、Nature Medicine、2006年、第12巻、p.73−74
Kadowakiら、Endocrine Review、2005年、第26巻、p.439−451
Cariiouら、Trends Endocrinology and Metabolism、2012年、第23巻、p.205−215
Gilliesら、Drugs、2000年、第60巻、p.333−343
Bogackaら、Diabetes、2005年、第54巻、p.1392−1399
しかしながら、ピオグリタゾンやロシグリタゾン等のチアゾリジンジオン誘導体は、PPARγ活性化作用を有しており、PPARγ活性化作用に起因する副作用(体重増加や浮腫等)を回避することが困難なために、心不全の患者、体重コントロールが必要な患者や既往者には使用上の制限があるのが現状である。このため、慢性疾患である糖尿病の治療においては、これら副作用を軽減した医薬品の開発が急務であり、医療の現場から切望されている。
また、特許文献1で開示されたウレア誘導体は、sEH阻害作用を有することが示唆されているものの、PARRγ活性化作用やミトコンドリア機能改善作用を有するか否かについては明らかにされておらず、ましてや糖尿病の治療剤としての医薬用途については開示も示唆もされていない。
そこで、本発明の目的は、PPARγ活性化作用に起因する副作用が軽減され、PPARγ活性化作用を有する糖尿病の治療薬の使用が制限されている糖尿病患者に対しても投薬可能な、糖尿病の治療剤又は予防剤を提供することにある。
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、下記の化学式(I)で示されるチオウレア誘導体がPPARγ活性化作用を有さず、PPARγ活性化作用に起因する副作用が著しく軽減していること、ミトコンドリア機能改善作用を有すること、且つ、ミトコンドリア機能改善作用に基づき糖尿病に対して優れた治療効果及び予防効果を示すことを見出し、本発明を完成するに至った。
上記の糖尿病の治療剤又は予防剤は、2型糖尿病の治療剤又は予防剤であることが好ましく、血糖降下作用、耐糖能異常改善作用及び/又はミトコンドリア機能改善作用を有することがさらに好ましい。
本発明の糖尿病の治療剤又は予防剤は、血糖降下作用、耐糖能異常改善作用及び/又はミトコンドリア機能改善作用を発揮し、糖尿病を治療又は予防できる。さらに、本発明の糖尿病の治療剤又は予防剤は、PPARγ活性化作用を有さず、PPARγ活性化作用に起因する副作用が著しく軽減されていることから、PPARγ活性化作用を有する糖尿病治療薬の使用が制限されている糖尿病患者に対しても投薬でき、慢性的な投薬にも適している。
上記のチオウレア誘導体は、水和物、溶媒和物又は結晶多形を形成してもよい。
上記のチオウレア誘導体は、公知の方法又はこれに準じた方法に従って製造でき、その際、原料化合物は市販の試薬又はその塩を用いてもよい。例えば、市販されている3,5−ジクロロフェニルイソチオシアネートにエチル4−アミノ−1−ピペリジンカルボキシレートを作用させるウレア化反応又はこれに準ずる方法に従って、上記のチオウレア誘導体を製造できる。なお、上記のチオウレア誘導体は、公知の方法、例えば、溶媒抽出、再結晶及び/又はクロマトグラフィーによって単離精製できる。
糖尿病とは、インスリンの量的不足又は作用不足を伴う慢性高血糖状態を主徴とする代謝疾患群であり、世界保健機構、日本糖尿病学会、米国糖尿病協会又は欧州糖尿病協会等の診断基準に該当する病態を意味する。
糖尿病は、基本的にIDDM、NIDDM、GDM、その他特定の作用機序による糖尿病の4種類に分類される。一般的に、IDDMは1型糖尿病、NIDDMは2型糖尿病とよばれる。上記の糖尿病の治療剤又は予防剤は、2型糖尿病の治療又は予防に好ましく用いることができる。
また、上記の糖尿病の治療剤又は予防剤は、血糖降下作用、耐糖能異常改善作用及びミトコンドリア機能改善作用を有することがより好ましい。
血糖降下作用とは慢性高血糖状態において血糖値を低下させることを意味し、血糖値とは随時血糖値及び/又は空腹時血糖値を意味する。
耐糖能とはグルコースの処理能力の指標であり、耐糖能異常とはグルコース処理能力の低下を意味する。耐糖能異常改善作用とはグルコース処理能力を向上させる作用を意味する。
耐糖能は、経口ブドウ糖負荷試験(Oral Glucose Tolerance Test:以下、OGTT)、静脈内ブドウ糖負荷試験(Intravenous Glucose Tolerance Test:IVGTT)、腹腔内ブドウ糖負荷試験(Intraperitoneal Glucose Tolerance Test:IPGTT)のいずれかの方法で評価できる。
ミトコンドリア機能改善作用とは、低下したミトコンドリア機能を改善させる作用を意味する。ミトコンドリア機能は主にATPの合成や脂肪酸分解作用が挙げられる。ミトコンドリア機能の低下は、2型糖尿病患者で認められており、ミトコンドリア機能を改善する薬剤は、2型糖尿病に対して有効であることが示唆されている(Robinら、Torends in pharmacological science、2012、第33巻、p.341−352)。したがって、上記の糖尿病の治療剤又は予防剤は、ミトコンドリア機能改善作用を有するため、その作用に基づき糖尿病、特に2型糖尿病に対して優れた治療効果及び予防効果を示す。
ミトコンドリア機能は、ATP量測定、β酸化測定、ミトコンドリア呼吸測定、クエン酸合成酵素活性測定、膜電位測定、ミトコンドリア機能関連遺伝子量の測定、ミトコンドリアDNA(以下、mtDNA)量の測定等のいずれか又はいくつかの方法を用いて評価できる。上記の糖尿病の治療剤又は予防剤のミトコンドリア機能改善作用は、例えば、培養細胞中のmtDNA量の測定又は組織中のmtDNA量を定量することで評価できる。
上記の糖尿病の治療剤又は予防剤の、糖尿病に対する効果を評価する方法としては、例えば病態モデル動物を用いた評価方法が挙げられる。病態モデル動物としては、高脂肪食誘導肥満・糖尿病マウス(Diet induced obesity:DIOマウス)、肥満・2型糖尿病マウス(db/dbマウス、ob/obマウス、KK/Taマウス、KK−Ayマウス)、肥満・2型糖尿病ラット(Zucker fattyラット、Zucker diabetic fattyラット)等が挙げられる。病態モデル動物における糖尿病に対する有効性は、血中グリコヘモグロビン値(HbAlc)、随時血糖値、空腹時血糖値、血中c−ペプチド値、血中グリコアルブミン値、1,5−AG(1,5−アンヒドログリシトール)値、血中空腹時インスリン値、OGTTにおける耐糖能異常改善作用、HOMA−IR、高インスリン正常血糖クランプ法における全身糖利用率、インスリン負荷試験(Inslin tolerance test:ITT)におけるインスリン感受性等を指標として評価できる。
また、上記の糖尿病の治療剤又は予防剤は、PPARγ活性化作用を有さず、PPARγ活性化作用に起因する副作用が著しく軽減されていることから、糖尿病の治療又は予防に極めて有用である。なお、PPARγ活性化作用は、例えば、PPARγ ligand binding domain(以下、PPAR−γLBD)に対するリガンド応答性の時間分解蛍光共鳴エネルギー転移(以下、TR−FRET)を指標として評価できる。
一方、特許文献1で開示されたウレア誘導体は、sEH阻害作用を有することが示唆されている。しかし、上記の糖尿病の治療剤又は予防剤と、特許文献1に記載の実施例化合物の、in vitroにおけるsEH阻害作用について、公知の方法(Wolfら、Anatycal Biochemistry、2006、第355巻、p.71−80)に従い、それぞれの化合物を2μMにおいて評価したところ、上記の糖尿病の治療剤又は予防剤のsEH阻害作用(酵素非添加、酵素添加時の反応をそれぞれ0%、100%とした場合)は約2%、特許文献1に記載の実施例化合物のsEH阻害作用は約52%であった。このように、上記の糖尿病の治療剤又は予防剤のsEH阻害作用は著しく弱いため、上記の糖尿病の治療剤又は予防剤の糖尿病に対する治療効果及び予防効果は、sEH阻害作用に基づき発揮される可能性は極めて低い。
上記の糖尿病の治療剤又は予防剤は、哺乳動物(例えば、マウス、ラット、ハムスター、ウサギ、ネコ、イヌ、ウシ、ヒツジ、サル又はヒト)、特にヒトに対して投与した場合に、糖尿病に対する治療効果又は予防効果を発揮できる。
上記の糖尿病の治療剤又は予防剤の投与形態としては、上記のチオウレア誘導体を無添加の状態で又は医薬として許容される担体を配合して、経口的又は非経口的に投与できる。
上記の糖尿病の治療剤又は予防剤を経口投与する場合の剤形としては、例えば、錠剤(糖衣錠及びフィルムコーティング錠を含む)、丸剤、顆粒剤、散剤、カプセル剤(ソフトカプセル剤及びマイクロカプセル剤を含む)、シロップ剤、乳剤又は懸濁剤が挙げられ、非経口投与する場合の剤形としては、例えば、注射剤、注入剤、点滴剤又は坐剤が挙げられる。また、上記の糖尿病の治療剤又は予防剤は、上記のチオウレア誘導体を、適当な基剤(例えば、酪酸の重合体、グリコール酸の重合体、酪酸−グリコール酸の共重合体、酪酸の重合体とグリコール酸の重合体との混合物又はポリグリセロール脂肪酸エステル)と組み合わせて、徐放性製剤とすることも可能であり、糖尿病の治療に有効である。
上記の糖尿病の治療剤又は予防剤の剤形は、製剤分野で一般的に用いられている方法に従って調製できる。この場合、必要に応じて、製剤分野において一般的に用いられる賦形剤、結合剤、滑沢剤、崩壊剤、甘味剤、界面活性剤、懸濁化剤、乳化剤等を含有させて調製できる。
錠剤の調製は、例えば、賦形剤、結合剤、崩壊剤又は滑沢剤を含有させて行うことができ、丸剤及び顆粒剤の調製は、例えば、賦形剤、結合剤又は崩壊剤を含有させて行うことができる。また、散剤及びカプセル剤の調製は、例えば、賦形剤を、シロップ剤の調製は、例えば、甘味剤を、乳剤及び懸濁剤の調製は、例えば、界面活性剤、懸濁化剤又は乳化剤を含有させて行うことができる。
賦形剤としては、例えば、乳糖、ブドウ糖、デンプン、ショ糖、微結晶セルロース、カンゾウ末、マンニトール、炭酸水素ナトリウム、リン酸カルシウム又は硫酸カルシウムが挙げられる。結合剤としては、例えば、デンプンのり液、アラビアゴム液、ゼラチン液、トラガント液、カルボキシメチルセルロース液、アルギン酸ナトリウム液又はグリセリンが挙げられる。崩壊剤としては、例えば、デンプン又は炭酸カルシウムが挙げられる。滑沢剤としては、例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、ステアリン酸カルシウム又は精製タルクが挙げられる。甘味剤としては、例えば、ブドウ糖、果糖、転化糖、ソルビトール、キシリトール、グリセリン又は単シロップが挙げられる。界面活性剤としては、例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、ポリソルベート80、ソルビタンモノ脂肪酸エステル又はステアリン酸ポリオキシル40が挙げられる。懸濁化剤としては、例えば、アラビアゴム、アルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース又はベントナイトが挙げられる。乳化剤としては、例えば、アラビアゴム、トラガント、ゼラチン又はポリソルベート80が挙げられる。
さらに、上記の糖尿病の治療剤又は予防剤を、上記の剤形に調製する場合は、製剤分野において一般的に用いられる、着色剤、保存剤、芳香剤、矯味剤、安定剤、粘稠剤等を添加することができる。
上記の糖尿病の治療剤又は予防剤は、上記のチオウレア誘導体を、0.001〜99重量%含有することが好ましく、0.01〜99重量%含有することがより好ましい。上記の糖尿病の治療剤又は予防剤の、有効投与量及び投与回数は、投与形態、患者の年齢、体重又は治療すべき症状の性質若しくは重篤度によっても異なるが、通常成人1日当り有効成分として、1〜1000mgを、好ましくは1〜300mgを、1回又は数回に分けて投与することができる。
なお、上記の糖尿病の治療剤又は予防剤は、単独で投与してもよいが、疾患の予防効果若しくは治療効果の補完又は増強、あるいは投与量の低減のために、他の薬剤と配合するか、他の薬剤と併用して使用することもできる。
上記の糖尿病の治療剤又は予防剤を併用薬剤と併用して使用する場合には、上記の糖尿病の治療剤又は予防剤、及び、併用薬剤の投与時期は特に限定されず、これらを投与対象に対して同時に投与してもよいし、時間差をおいて投与しても構わない。また、併用薬剤は低分子化合物であってもよいし、タンパク質、ポリペプチド若しくは抗体等の高分子又はワクチン等であっても構わない。併用薬剤の投与量は、臨床上用いられている投与量を基準として、適宜選択することができる。上記の糖尿病の治療剤又は予防剤と併用薬剤との配合比は、投与対象、投与ルート、対象疾患、症状、又は、上記の糖尿病の治療剤又は予防剤と併用薬剤の組み合わせ等により適宜選択することができる。例えば、投与対象がヒトである場合には、上記の糖尿病の治療剤又は予防剤に対し、併用薬剤を0.01〜99.99の配合比で用いればよい。
以下、実施例を用いて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
以下の記載において、NMRデータ中の溶媒名は、測定に使用した溶媒を示している。また、400MHz NMRスペクトルは、JNM−AL400型核磁気共鳴装置(日本電子製)を用いて測定した。ケミカルシフトは、テトラメチルシランを基準としてδ(単位:ppm)で表し、シグナルはそれぞれs(一重線)、d(二重線)、q(四重線)、又はm(多重線)で表した。ESI−MSスペクトルは、1200LC/MSD(AgilentTechnology製)を用いて測定した。溶媒は全て市販のものを用いた。
(実施例1)エチル 4−(3−(3,5−ジクロロフェニル)チオウレイド)ピペリジン−1−カルボキシレートの合成:
3,5−ジクロロフェニルイソチオシアネート(3.95g、19.4mmol)、をトルエン(65mL)に溶解させ、室温でエチル 4−アミノ−1−ピペリジンカルボキシレート(3.33g、19.4mmol)をゆっくり加え、室温で2時間撹拌した。反応混合物をろ過し、ろ取した固体をトルエンで洗浄した。得られた固体を酢酸エチル(40mL)で再結晶し、エチル 4−(3−(3,5−ジクロロフェニル)チオウレイド)ピペリジン−1−カルボキシレート(以下、実施例1の化合物)(4.22g、11.2mmol、57%)を白色固体として得た。
1H−NMR(400MHz,CDCl3)
δ:1.25(3H,s,J=8.0Hz),1.28−1.40(2H,m),2.08−2.17(2H,m),2.87−3.00(2H,m),4.10−4.20(2H,m),4.12(2H,q,J=8.0Hz),4.40−4.55(1H,m),5.87(1H,d,J=8.0Hz),7.12(2H,s),7.28(1H,s),7.60(1H,s).
MS(ESI)[M+H]+:377.
1H−NMR(400MHz,CDCl3)
δ:1.25(3H,s,J=8.0Hz),1.28−1.40(2H,m),2.08−2.17(2H,m),2.87−3.00(2H,m),4.10−4.20(2H,m),4.12(2H,q,J=8.0Hz),4.40−4.55(1H,m),5.87(1H,d,J=8.0Hz),7.12(2H,s),7.28(1H,s),7.60(1H,s).
MS(ESI)[M+H]+:377.
(実施例2)PPARγ活性化作用:
実施例2〜5で用いた実施例1の化合物は東レ株式会社医薬研究所内で合成し、ピオグリタゾン塩酸塩(以下、ピオグリタゾン)はKemprotec Limitedから購入したものを用いた。
実施例2〜5で用いた実施例1の化合物は東レ株式会社医薬研究所内で合成し、ピオグリタゾン塩酸塩(以下、ピオグリタゾン)はKemprotec Limitedから購入したものを用いた。
実施例1の化合物のPPARγ活性化作用は、ヒトPPAR−γLBDに対するリガンド応答性のTR−FRETを指標として測定した。測定にはLanthaScreen(登録商標)TR−FRET Peroxisome Proliferator Activated Receptor(PPAR)gamma Coactivator Assay Kit(インビトロジェン)を用いた。
実施例1の化合物及びピオグリタゾンは、ジメチルスルホキシド(以下、DMSO)に溶解し、上記キットに添付のアッセイバッファーを用いて200μMを最大濃度として公比3で段階希釈した(1nM〜200μM)。384ウェルブラックプレート(コーニング)に、希釈した被験化合物を10μL/ウェル添加した後、氷冷したアッセイバッファーを用いて20nMに調製したPPARγ−LBDを5μL/ウェル添加した。さらに、常温のアッセイバッファーを用いて調製した0.5μMの蛍光ペプチド(Fluorescein−TRAP220/DRIP−2 peptide)及び20nMのテルビウム標識抗GST抗体を、上記の384ウェルブラックプレートにそれぞれ5μL/ウェル添加した。なお、被験化合物各濃度につき、N=4で実施した。
上記の384ウェルブラックプレートを、遮光下、常温で2時間インキュベーションし、反応液の蛍光波長(励起波長340nm、蛍光波長490nm及び520nm)をマルチラベルカウンターEnvision(パーキンエルマー)にて測定した。被験化合物添加時の520nmにおける測定値と490nmにおける測定値の比(被験化合物Ratio=Em520/Em490)を算出し、平均値(N=4)を求めた。また、被験化合物非添加時の520nmにおける測定値と490nmにおける測定値の比(被験化合物非添加Ratio=Em520/Em490)も同様に算出した。得られた値から下記の式を用いて発光増加率を求めた。
発光増加率(%)=(被験化合物Ratio−被験化合物非添加Ratio)/(被験化合物非添加Ratio)×100
発光増加率(%)=(被験化合物Ratio−被験化合物非添加Ratio)/(被験化合物非添加Ratio)×100
その結果を、図1に示す。X軸に被験化合物の濃度(Log[μM])、Y軸に発光増加率(%)をプロットした。図中の■は実施例1の化合物、▲はピオグリタゾンを添加した場合の発光増加率(%)を示す。
ピオグリタゾンは濃度依存的に発光増加率の増加を示したが、実施例1の化合物は濃度依存的な発光増加率の増加を示さなかった。この結果から、ピオグリタゾンはPPARγ活性化作用を有するが、実施例1の化合物は少なくとも1nM〜200μMの間ではPPARγ活性化作用を有さないことが明らかとなった。
したがって、上記の糖尿病の治療剤又は予防剤は、PPARγ活性化作用を有さないことが示された。
(実施例3) In vitroミトコンドリア機能改善作用:
実施例1の化合物のin vitroミトコンドリア機能改善作用について、マウス筋芽細胞株C2C12細胞(ATCC)を用いて評価した。
実施例1の化合物のin vitroミトコンドリア機能改善作用について、マウス筋芽細胞株C2C12細胞(ATCC)を用いて評価した。
C2C12細胞を、10%ウシ胎児血清(インビトロジェン)、10U/mL penicillin及び10μg/mL streptomycinを含むDMEM(high glucose;ギブコ)を培養液として用いて、37℃、5%CO2インキュベーター中で培養フラスコにて培養した。培養フラスコの中で70〜80%コンフルエントまで増殖した細胞をPBS(−)で洗浄し、0.05%トリプシンEDTA(ギブコ)処置で回収した後、96ウェル培養プレート(BD)に1.5×104cell/ウェルとなるように播種した。
96ウェル培養プレートに播種した細胞を、37℃、5%CO2条件下で2日間培養し、コンフルエントまで増殖したことを確認後、分化誘導培地(2%ウマ血清(インビトロジェン)、10U/mL penicillin及び10μg/mL streptomycinを含むDMEM(high glucose;ギブコ))に交換して、さらに3日間培養し、筋菅細胞に分化させた。
3日間培養後に、分化誘導培地に40mMグルコース、50ng/mLインスリン及び10ng/mL TNF−αを加えた培地に交換して、インスリン抵抗性処置(以下、IR処置)を行った。また同時に、DMSOで溶解した実施例1の化合物(最終濃度10μM)及びピオグリタゾン(最終濃度50μM)並びにDMSOをIR処置した細胞に添加して(DMSO最終濃度0.5%)、引き続き24時間培養した。また、IR処置を行わず、分化誘導培地で培養を続けた細胞をコントロールとして設けた。なお、各処置につき、N=1で実施した。
IR処置から24時間培養後に、細胞をPBS(−)で洗浄し、0.05%トリプシンEDTA処置で回収した後、−80℃で凍結保存した。凍結保存した細胞からQIAamp(登録商標)DNA Mini Kit(キアゲン)を用いてtotal DNAを抽出後、フェノール/クロロホルム処理及びエタノール沈殿を行い、サンプルDNAを取得した。
サンプルDNAを鋳型として、TaqMan(登録商標)リアルタイムPCR法を用いて、細胞中の核DNA量及びmtDNA量を定量し、核DNA量に対するmtDNA量の相対比(mtDNA量/核DNA量)を算出した。なお、核DNA量としては、核DNAにコードされるチミジンキナーゼ1のDNA量を定量し、mtDNA量としては、mtDNAにコードされるD−loopのDNA量を定量した。表1に、核DNAにコードされるチミジンキナーゼ1のDNAを定量するためにリアルタイムPCR法に用いたプライマー及びTaqManプローブの配列を示す。表2に、mtDNAにコードされるD−loopのDNAを定量するためにリアルタイムPCR法に用いたプライマー及びTaqManプローブの配列を示す。
各細胞について、コントロールのmtDNA量の相対比(mtDNA量/核DNA量)を1.00とした際の比であるmtDNA量(コントロール比)を求めた結果を、図2に示す。図2の縦軸は、mtDNA量(コントロール比)を示し、図2の横軸の、「コントロール」はIR処置をしなかった細胞、「溶媒」はIR処置した細胞にDMSOを添加した細胞、「実施例1の化合物」はIR処置した細胞に実施例1の化合物を添加した細胞、「ピオグリタゾン」はIR処置した細胞にピオグリタゾンを添加した細胞を示す。
「溶媒」細胞のmtDNA量(コントロール比)は0.75であり、「溶媒」細胞では「コントロール」細胞と比較してmtDNA量の低下が認められた。したがって、C2C12細胞にIR処置することにより、ミトコンドリア機能が低下することが示唆された。実施例1の化合物及びピオグリタゾンのmtDNA量への影響を検討したところ、「実施例1の化合物」細胞のmtDNA量(コントロール比)は1.26、「ピオグリタゾン」細胞のmtDNA量(コントロール比)は1.00であった。この結果から、実施例1の化合物は、ピオグリタゾンと同様に、IR処置によって低下したmtDNA量を増加させる作用を有することが明らかとなり、ミトコンドリア機能改善作用を有することが示唆された。
したがって、上記の糖尿病の治療剤又は予防剤は、ミトコンドリア機能改善作用を有することが示唆された。
(実施例4)肥満・2型糖尿病マウス(db/dbマウス)における作用:
実施例1の化合物及びピオグリタゾンの、肥満・2型糖尿病マウスにおける下記の(1)〜(4)の作用評価は、肥満・2型糖尿病マウスであるdb/dbマウスを用いて実施した。なお、C57BL/6Jマウスを正常マウスとして用いた。
実施例1の化合物及びピオグリタゾンの、肥満・2型糖尿病マウスにおける下記の(1)〜(4)の作用評価は、肥満・2型糖尿病マウスであるdb/dbマウスを用いて実施した。なお、C57BL/6Jマウスを正常マウスとして用いた。
C57BL/6Jマウス及びdb/dbマウスを5週齢で購入し(日本クレア株式会社)、自由給餌(CRF−1:オリエンタル酵母工業株式会社)、自由飲水環境下で1週間馴化させた。馴化後、被験化合物投与2日前に体重及び随時血糖値を測定し、体重及び随時血糖値をパラメーターとして表3の内訳で群分けを行った。
実施例1の化合物は10mg/mLに、ピオグリタゾンは3mg/mLに、0.5%メチルセルロース溶液を用いて懸濁溶液として調製した。調製後の被験化合物を、db/dbマウスに、体重1kgあたり10mLの容量で1日1回、28日間経口投与した。同様に、C57BL/6Jマウス及びdb/dbマウスに0.5%メチルセルロース溶液を投与した群を設けた。表3に記載の実験群は、正常マウス群が、0.5%メチルセルロース溶液をC57BL/6Jマウスに投与した群、溶媒群が、0.5%メチルセルロース溶液をdb/dbマウスに投与した群、実施例1の化合物群が、実施例1の化合物100mg/kgをdb/dbマウスに投与した群、ピオグリタゾン群が、ピオグリタゾン30mg/kgをdb/dbマウスに投与した群を示す。これらの実験群について、以下の(1)〜(4)について評価を行った。
(1)体重に対する作用:
体重に対する作用は、被験化合物を26日間投与した次の日(投与開始から27日目の被験化合物投与前)に測定した体重を用いて評価した。
体重に対する作用は、被験化合物を26日間投与した次の日(投与開始から27日目の被験化合物投与前)に測定した体重を用いて評価した。
その結果を、図3に示す。図3の縦軸は、体重(g)(平均値+標準誤差(N=12〜14))を示し、図3の横軸は、各実験群を示す。図中の*印は、溶媒群との比較で、統計学的に有意であることを示す(t検定、p<0.05)。
各実験群の体重(平均値±標準誤差(N=12〜14))は、正常マウス群で23.8±0.45g、溶媒群38.3±0.55gであり、C57BL/6Jマウスに比しdb/dbマウスは明らかな肥満を呈していた。実施例1の化合物及びピオグリタゾンの体重への影響を検討したところ、実施例1の化合物群の体重は39.7±0.52gであり、溶媒群の体重と比較して統計学的に有意な差はなく、実施例1の化合物は体重に対して影響を及ぼさなかった。一方、ピオグリタゾン群の体重は45.3±0.68gであり、溶媒群の体重と比較して統計学的に有意に上昇しており(t検定、p<0.05)、ピオグリタゾンは明らかな体重増加作用を示した。
したがって、上記の糖尿病の治療剤又は予防剤は、チアゾリジンジオン誘導体で認められる副作用が軽減していることが示された。
(2)随時血糖値に対する作用:
随時血糖値に対する作用について検討した。随時血糖値は、投与開始から26日目の被験化合物投与終了後に、2時間の絶食を行った後に測定した。血糖値測定は、尾静脈から約5μLの血液を採取し、簡易型血糖測定装置(メディセンス・プレシジョンエクシード、アボットジャパン株式会社)を用いて実施した。なお、以下の(3)及び(4)においても、血糖値測定はこれと同じ方法を用いて実施した。
随時血糖値に対する作用について検討した。随時血糖値は、投与開始から26日目の被験化合物投与終了後に、2時間の絶食を行った後に測定した。血糖値測定は、尾静脈から約5μLの血液を採取し、簡易型血糖測定装置(メディセンス・プレシジョンエクシード、アボットジャパン株式会社)を用いて実施した。なお、以下の(3)及び(4)においても、血糖値測定はこれと同じ方法を用いて実施した。
その結果を、図4に示す。図4の縦軸は、随時血糖値(mg/dL)(平均値+標準誤差(N=12〜14))を示し、図4の横軸は、各実験群を示す。図中の*印は、溶媒群との比較で、統計学的に有意であることを示す(t検定、p<0.05)。
随時血糖値(平均値±標準誤差(N=12〜14))は、正常マウス群で149.6±3.32mg/dL、溶媒群で479.8±16.96mg/dLであり、C57BL/6Jマウスに比しdb/dbマウスでは明らかな高血糖を呈していた。実施例1の化合物及びピオグリタゾンの随時血糖値への影響を検討したところ、実施例1の化合物群の随時血糖値は429.0±14.17mg/dL、ピオグリタゾン群の随時血糖値は367.5±25.03mg/dLであり、いずれも溶媒群の随時血糖値と比較して統計学的に有意に低下していた(t検定、p<0.05)。この結果から、実施例1の化合物はdb/dbマウスの随時血糖値低下作用を有することが明らかとなった。
したがって、上記の糖尿病の治療剤又は予防剤は、肥満・2型糖尿病マウスであるdb/dbマウスの随時高血糖に対して低下作用を有することが示された。
(3)空腹時血糖値に対する作用:
空腹時血糖値に対する作用について検討した。空腹時血糖値は、投与開始から28日目の被験化合物投与終了後に、18時間の絶食を行った後に測定した。
空腹時血糖値に対する作用について検討した。空腹時血糖値は、投与開始から28日目の被験化合物投与終了後に、18時間の絶食を行った後に測定した。
その結果を、図5に示す。図5の縦軸は、空腹時血糖値(mg/dL)(平均値+標準誤差(N=6〜8))を示し、図5の横軸は、各実験群を示す。図中の*印は、溶媒群との比較で、統計学的に有意であることを示す(t検定、p<0.05)。
空腹時血糖値(平均値±標準誤差(N=6〜8))は、正常マウス群で73.0±2.13mg/dL、溶媒群で258.0±20.00mg/dLであり、C57BL/6Jマウスに比しdb/dbマウスでは明らかな高血糖を呈していた。実施例1の化合物及びピオグリタゾンの空腹時血糖値への影響を検討したところ、実施例1の化合物群の空腹時血糖値は170.6±20.04mg/dL、ピオグリタゾン群の空腹時血糖値は221.6±43.37mg/dLであり、実施例1の化合物群の空腹時血糖値のみ、溶媒群の空腹時血糖値と比較して統計学的に有意に低下していた(t検定、p<0.05)。この結果から、実施例1の化合物はdb/dbマウスの空腹時血糖値低下作用を有し、且つその作用の程度はピオグリタゾンの作用と比較して強いことが明らかとなった。
したがって、上記の糖尿病の治療剤又は予防剤は、肥満・2型糖尿病マウスであるdb/dbマウスの空腹時高血糖に対して強い低下作用を有することが示された。
(4)耐糖能に対する作用:
耐糖能に対する作用について検討した。耐糖能の評価はOGTTによって行った。投与開始から28日目の被験化合物投与終了後に、18時間の絶食を行った後に、血糖値を測定した(これを0分時点とする)。次に、蒸留水(株式会社大塚製薬工場)を用いて0.2g/mLに調製したグルコース溶液を体重1kgあたり10mLの容量で経口投与(2g/kg)し、30、60、90、120及び180分後に血糖値を測定した。X軸にグルコース溶液投与後の時間を、Y軸に血糖値をプロットし、グルコース溶液投与前(0分時点)からグルコース溶液投与180分後の血糖値推移曲線下面積(AUC0−180)を求めた。
耐糖能に対する作用について検討した。耐糖能の評価はOGTTによって行った。投与開始から28日目の被験化合物投与終了後に、18時間の絶食を行った後に、血糖値を測定した(これを0分時点とする)。次に、蒸留水(株式会社大塚製薬工場)を用いて0.2g/mLに調製したグルコース溶液を体重1kgあたり10mLの容量で経口投与(2g/kg)し、30、60、90、120及び180分後に血糖値を測定した。X軸にグルコース溶液投与後の時間を、Y軸に血糖値をプロットし、グルコース溶液投与前(0分時点)からグルコース溶液投与180分後の血糖値推移曲線下面積(AUC0−180)を求めた。
その結果を、図6(経時変化)及び図7(AUC0−180)に示す。図6の縦軸は、血糖値(mg/dL)(平均値±標準誤差(N=6〜8))を示し、図6の横軸は、グルコース負荷後の時間(分)を示す。図6中の凡例は、各実験群を示す。また、図7の縦軸は、AUC0−180(mg/dL×min)(平均値+標準誤差(N=6〜8))を示し、図7の横軸は、各実験群を示す。図中の*印は、溶媒群との比較で、統計学的に有意であることを示す(t検定、p<0.05)。
db/dbマウスでは全測定時点においてグルコース溶液投与後の血糖値がC57BL/6Jマウスと比較して著しく高値を示した(N=6〜8)。AUC0−180は、正常マウス群で30245.0±1464.24mg/dL×min、溶媒群で103020.0±3961.17mg/dL×minであり、C57BL/6Jマウスと比しdb/dbマウスではAUC0−180が著しく高値を示し、耐糖能異常を呈していた。実施例1の化合物及びピオグリタゾンのdb/dbマウス耐糖能異常への影響を検討したところ、実施例1の化合物群及びピオグリタゾン群の血糖値は全測定時点において溶媒群の血糖値と比較して低値を示した。実施例1の化合物群のAUC0−180は75821.3±4542.18mg/dL×min、ピオグリタゾン群のAUC0−180は69481.9±6296.92mg/dL×minであり、いずれも溶媒群のAUC0−180と比較して統計学的に有意に低下していた(t検定、p<0.05)。以上の結果から、実施例1の化合物は、db/dbマウスの耐糖能異常に対して改善作用を有することが明らかとなった。
したがって、上記の糖尿病の治療剤又は予防剤は、肥満・2型糖尿病マウスであるdb/dbマウスの耐糖能異常に対して改善作用を有することが示された。
(実施例5)In vivoミトコンドリア機能改善作用:
実施例1の化合物のin vivoミトコンドリア機能改善作用について、肥満・2型糖尿病マウスdb/dbマウスを用いて実施した。
実施例1の化合物のin vivoミトコンドリア機能改善作用について、肥満・2型糖尿病マウスdb/dbマウスを用いて実施した。
C57BL/6Jマウス及びdb/dbマウスを5週齢で購入し(日本クレア株式会社)、自由給餌(CRF−1:オリエンタル酵母工業株式会社)、自由飲水環境下で飼育した。13週齢において、体重及び随時血糖値(測定方法は実施例4と同じ)をパラメーターとして実施例4と同じ内訳(表3)で群分けを行った。
実施例4と同様に、実施例1の化合物及びピオグリタゾンの投与液を調製し、調製後の被験化合物を、db/dbマウスに、体重1kgあたり10mLの容量で1日1回、28日間経口投与した。同様に、C57BL/6Jマウス及びdb/dbマウスに0.5%メチルセルロース溶液を投与した群を設けた。実験群は、表3に記載の実験群と同じである。すなわち、正常マウス群は0.5%メチルセルロース溶液をC57BL/6Jマウスに投与した群、溶媒群は0.5%メチルセルロース溶液をdb/dbマウスに投与した群、実施例1の化合物群は実施例1の化合物100mg/kgをdb/dbマウスに投与した群、ピオグリタゾン群はピオグリタゾン30mg/kgをdb/dbマウスに投与した群を示す。
被験化合物投与終了後、ペントバルビタール麻酔下でマウスからヒラメ筋を採取し、直ちに液体窒素を用いて凍結し、−80℃で保存した。ヒラメ筋からQIAamp(登録商標)DNA Mini Kit(キアゲンQIAGEN)を用いてtotal DNAを抽出後、フェノール/クロロホルム処理及びエタノール沈殿を行い、サンプルDNAを取得した。サンプルDNAを鋳型として、TaqMan(登録商標)リアルタイムPCR法を用いて、組織中の核DNA量及びmtDNA量を定量し、核DNA量に対するmtDNA量の相対比(mtDNA量/核DNA量)を算出した。なお、実施例3で用いたものと同じプライマー及びTaqManプローブ(表1及び2)を用いて、実施例3と同様に、核DNA量として、核DNAにコードされるチミジンキナーゼ1のDNA量を定量し、mtDNA量として、mtDNAにコードされるD−loopのDNA量を定量した。
各実験群について、正常マウス群のmtDNA量の相対比(mtDNA量/核DNA量)を1.00とした際の比であるmtDNA量(正常マウス比)を求めた結果を、図8に示す。図8の縦軸は、mtDNA量(正常マウス比)(平均値+標準誤差(N=5))を示し、図8の横軸は、各実験群を示す。
正常マウス群のmtDNA量(正常マウス比)は1.00±0.09であり、溶媒群のmtDNA量(正常マウス比)は0.71±0.06であり、溶媒群では正常マウス群と比較してmtDNA量は低値を示した。本結果から、C57BL/6Jマウスと比較してdb/dbマウスの骨格筋ではミトコンドリア機能が低下していることが示唆された。実施例1の化合物及びピオグリタゾンのmtDNA量への影響を検討したところ、実施例1の化合物群のmtDNA量(正常マウス比)は0.84±0.04、ピオグリタゾン群のmtDNA量(正常マウス比)は0.78±0.05であった。この結果から、実施例1の化合物は、db/dbマウスのmtDNA量を増加させる作用を有することが明らかとなり、ミトコンドリア機能改善作用を有することが示唆された。
したがって、上記の糖尿病の治療剤又は予防剤は、肥満・2型糖尿病マウスであるdb/dbマウスにおいてミトコンドリア機能改善作用を有することが示唆された。
以上の実施例の結果から、実施例1の化合物は、in vitroでPPARγ活性化作用を有さず、mtDNA量増加作用を有し、また、肥満・2型糖尿病マウスであるdb/dbマウスにおいて、チアゾリジンジオン誘導体で認められる体重増加作用という副作用が軽減され、随時血糖低下作用、強い空腹時血糖値低下作用、耐糖能改善作用及びmtDNA量増加作用を有することが示され、糖尿病、特に2型糖尿病に対する治療効果又は予防効果を有することが明らかとなった。これらの効果には、実施例1の化合物によるミトコンドリア機能改善作用が関与することが示唆された。
本発明の糖尿病の治療剤又は予防剤は、血糖降下作用、耐糖能異常改善作用及びミトコンドリア機能改善作用を有すること、また、PPARγ活性化作用を有さず、PPARγ活性化作用に起因する副作用が著しく軽減されていることから、副作用が軽減された優れた糖尿病の治療剤又は予防剤として用いることができる。
配列番号1:核DNAにコードされるチミジンキナーゼ1のDNAを増幅するためのForwardプライマーの配列を示す。
配列番号2:核DNAにコードされるチミジンキナーゼ1のDNAを増幅するためのReverseプライマーの配列を示す。
配列番号3:チミジンキナーゼ1のDNAを定量するためのTaqManプローブの配列を示す。
配列番号4:mtDNAにコードされるD−loopのDNAを増幅するためのForwardプライマーの配列を示す。
配列番号5:mtDNAにコードされるD−loopのDNAを増幅するためのReverseプライマーの配列を示す。
配列番号6:D−loopのDNAを定量するためのTaqManプローブの配列を示す。
配列番号2:核DNAにコードされるチミジンキナーゼ1のDNAを増幅するためのReverseプライマーの配列を示す。
配列番号3:チミジンキナーゼ1のDNAを定量するためのTaqManプローブの配列を示す。
配列番号4:mtDNAにコードされるD−loopのDNAを増幅するためのForwardプライマーの配列を示す。
配列番号5:mtDNAにコードされるD−loopのDNAを増幅するためのReverseプライマーの配列を示す。
配列番号6:D−loopのDNAを定量するためのTaqManプローブの配列を示す。
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JP2013073961A JP2014198674A (ja) | 2013-03-29 | 2013-03-29 | 糖尿病の治療剤又は予防剤 |
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