JP2014197451A - リチウムイオン二次電池用リチウムコバルト含有複合酸化物の製造方法 - Google Patents

リチウムイオン二次電池用リチウムコバルト含有複合酸化物の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】本発明は、高電圧下でも使用可能であり、かつ放電容量、平均放電電圧、安定性、体積容量密度及び充放電サイクル耐久性などの電池性能に優れ、充放電に伴う電池の膨化が抑制されたリチウムコバルト含有複合酸化物を短いプロセスで効率的に製造する方法を提供する。【解決手段】コバルト化合物とリチウム化合物とを所定の割合で含む原料粉末を300〜600℃で仮焼成して、仮焼成粉末を得た後、リチウム原子と反応する酸又はその酸と揮発性塩基との塩と該仮焼成粉末とを混合して、得られた混合物を720〜1100℃で焼成する。【選択図】なし

Description

本発明は、リチウムイオン二次電池の正極材料に用いるリチウムコバルト含有複合酸化物の製造方法に関する。
近年、機器のポータブル化、コードレス化が進むにつれ、小型、軽量でかつ高エネルギー密度を有するリチウムイオン二次電池などの非水電解液二次電池に対する要求がますます高まっている。かかる非水電解液二次電池用の正極材料には、LiCoO、LiNi1/3Co1/3Mn1/3、LiNiO、LiNi0.8Co0.2、LiMnなどのリチウムと遷移金属等との複合酸化物が知られている。
なかでも、LiCoOを正極材料として用い、リチウム合金、又はグラファイト若しくはカーボンファイバーなどのカーボンを負極として用いたリチウムイオン二次電池は、4V級の高い電圧が得られるため、高エネルギー密度を有する電池として優れており広く使用されている。
しかしながら、LiCoOを正極材料として用いる場合、放電容量、平均放電電圧、加熱時の熱に対する安定性(本発明において、単に安全性ということがある。)及び正極電極層の単位体積あたりにおける容量密度(本発明において、単に体積容量密度ということがある。)などの更なる向上が望まれるとともに、充放電サイクルを繰り返し行うことにより、正極活物質の界面と電解液との反応による、電池放電容量の減少や膨化などの充放電サイクル耐久性の問題などがあった。また、充放電電圧を4.5Vなど高電圧にした際には、充放電サイクル耐久性の著しい劣化及び電解液の分解による二酸化炭素などの気体発生による電池の膨化などの問題があった。
これらの問題を解決するために、例えば、リチウム化合物、コバルト化合物及びリン酸リチウム又はリン酸などのリン酸化合物を混合した混合物を焼成することで得られるリンを含有するリチウム含有複合酸化物を用いることが提案されている(特許文献1及び2参照。)。
また、LiCoOなどのリチウム含有複合酸化物と、硫酸水溶液又は硫酸アンモニウム水溶液とを混合した後に、乾燥して、得られる粒子表面に硫酸リチウムなどを有するリチウム含有複合酸化物を用いることが提案されている(特許文献3参照。)。
さらに、LiCoOなどのリチウム含有複合酸化物、水又はエタノールなどの溶媒、及び硫酸アンモニウム、リン酸水素アンモニウム、亜リン酸又はリン酸などの化合物を混合した混合物を焼成することで得られる粒子表面にリン又は硫黄の化合物を有するリチウム含有複合酸化物を用いることが提案されている(特許文献4及び5参照。)。
特開平5−36411号公報 特開平5−47383号公報 特開2003−123755号公報 特開2007−335331号公報 国際公開第2006/85588号
上記のとおり、種々の検討がされているが、放電容量、平均放電電圧、安定性、体積容量密度及び充放電サイクル耐久性などの電池特性において、全てを満足するリチウム含有複合酸化物を効率良く製造する方法は見つかっていない。さらに、併せて充放電時の電圧を4.5Vなどの高電圧での使用下において、優れた充放電サイクル耐久性を有し、かつ電解液の分解を十分に抑制した膨化の生じない電池を得る方法は見つかっていない。
特許文献1及び2に記載されたリンを含有するリチウム含有複合酸化物は、充放電サイクル耐久性が不十分であり、長期間にわたり充放電を繰り返すと劣化が進み、放電容量の減少が顕著に見られる。
特許文献3〜5に記載された粒子表面にリン酸リチウム又は硫酸リチウムを有するリチウム含有複合酸化物は、リチウム化合物、コバルト化合物を含む混合物を高温で焼成してリチウム含有複合酸化物を得ている。さらに、そのリチウム含有複合酸化物とリン又は硫黄を有する化合物とを混合して、高温で焼成することで、粒子表面にリン又は硫黄の化合物を有するリチウム含有複合酸化物を合成している。特許文献3〜5に記載された方法では、リチウム含有複合酸化物を合成するためにリチウム化合物及びコバルト化合物を少なくとも含む原料混合物を高温で焼成する工程とリン又は硫黄を有する化合物と混合した混合物を焼成する高温で焼成する工程との2段階の高温焼成工程が必要であり、焼成に必要となる熱量が多く、かつ時間も長く、非常に効率が悪いものであり、実用性に耐えられるプロセスではなかった。また、これらの表面修飾リチウム含有複合酸化物を正極材料に用いて電池評価をすると放電曲線において、放電末期に電圧の低下が見られ、カットオフ電圧の上昇にともない放電容量が低下するため、好ましくない。さらに、電池の正極材料として、これらのリチウム含有複合酸化物を使用した際には、充放電を繰り返すに伴い、電池の膨化が見られ、到底、実用に耐えられるものではなかった。
そこで、本発明は、高電圧下でも使用可能であり、かつ放電容量、平均放電電圧、安定性、体積容量密度及び充放電サイクル耐久性などの電池性能に優れ、充放電に伴う電池の膨化が抑制されたリチウムコバルト含有複合酸化物を短いプロセスで効率的に製造する方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を達成するために鋭意研究を続けたところ、下記の構成を要旨とする本発明に到達したものである。
(1)コバルト化合物の粉末とリチウム化合物の粉末とを、リチウム/コバルトの原子比が0.9〜1.2となる割合で含む原料粉末を300〜600℃で仮焼成して、仮焼成粉末を得る工程1と、仮焼成粉末に含まれるリチウム原子と反応する酸、又はその酸と揮発性塩基との塩と仮焼成粉末とを混合して、混合物を得る工程2と、該混合物を720〜1100℃で焼成して、リチウムコバルト含有複合酸化物を得る工程3を含むことを特徴とするリチウムイオン二次電池用リチウムコバルト含有複合酸化物の製造方法。
(2)工程2で混合する酸又はその酸と揮発性塩基との塩が溶解した溶液と仮焼成粉末とを混合する上記(1)に記載の製造方法。
(3)工程2で混合する酸又はその酸と揮発性塩基との塩が固体であり、かつ仮焼成粉末と乾式混合する上記(1)に記載の製造方法。
(4)工程3において、該混合物を800〜1100℃で焼成する上記(1)〜(3)のいずれかに記載の製造方法。
(5)工程2で混合する酸又はその酸と揮発性塩基との塩が、リチウム原子と反応する無機酸又は無機酸と揮発性塩基との塩である上記(1)〜(4)のいずれかに記載の製造方法。
(6)工程3で得られるリチウムコバルト含有複合酸化物が、工程2で加える酸のリチウム塩を粒子表面に有する上記(1)〜(5)のいずれかに記載の製造方法。
(7)工程3で得られるリチウムコバルト含有複合酸化物が、母材であるリチウムコバルト含有複合酸化物に対して、工程2で加えた酸のリチウム塩を0.3〜1.5mol%の割合で有する上記(1)〜(6)のいずれかに記載の製造方法。
(8)工程3で得られるリチウムコバルト含有複合酸化物が一般式LiCo(但し、Mは、Co以外の遷移金属元素、Al、Sn及び第2族の元素からなる群から選ばれる少なくとも1種の元素である。0.9≦p≦1.2、0.9≦x≦1、0≦y≦0.1、1.9≦z≦2.1、0≦a≦0.05。)で表される組成を有するリチウムコバルト含有複合酸化物である上記(1)〜(7)のいずれかに記載の製造方法。
(9)MがAl、Ti、Zr、Hf、Nb、Ta、Mg、Sn及びZnからなる群から選ばれる少なくとも1種の元素である上記(8)に記載の製造方法。
(10)上記(1)〜(9)のいずれかに記載の製造方法で得られるリチウムコバルト含有複合酸化物を含有する正極活物質、導電剤、バインダー及び溶媒を混合して、得られるスラリーを金属箔に塗布した後、加熱により溶媒を除去することを特徴とするリチウムイオン二次電池用正極の製造方法。
(11)上記(10)に記載の製造方法で得られる正極に、セパレータ及び負極を積層して、これを電池ケースに収納した後、電解液を注入することを特徴とするリチウムイオン二次電池の製造方法。
本発明によれば、通常よりも高電圧下、すなわち、負極にリチウムを使用した際に4.45V以上、特には4.5V以上でも使用可能であり、放電容量、平均放電電圧、安定性、体積容量密度及び充放電サイクル耐久性などの電池性能に優れ、充放電に伴う電池の膨化が抑制されたリチウム含有複合酸化物を製造する方法が提供される。
この本発明の製造方法は、低い温度にて原料を仮焼成した後に、所定の酸又はその塩を加えて、本焼成をするという、従来よりも短いプロセスで、短時間でリチウムコバルト含有複合酸化物を製造でき、製造に必要とされる熱量も少なく、従来よりも省エネルギーな効率的なプロセスであり、環境負荷を少なくできる。
本発明により得られるリチウムコバルト含有複合酸化物が、何故に上記の如き、リチウムイオン二次電池用正極材料として優れた性能を発揮するかについては必ずしも明らかではないが、次のように推定される。
工程1において、リチウム化合物とコバルト化合物とを含む混合物を低い温度で仮焼成することでリチウムコバルト含有複合酸化物の反応中間体である仮焼成粉末が得られる。次いで、工程2において、仮焼成粉末と酸又はその酸と揮発性塩基との塩とを混合することで混合物が得られる。さらに工程3において、高い温度で焼成すると仮焼成粉末に含まれるリチウム化合物とコバルト化合物との反応が進み、リチウムコバルト含有複合酸化物が生成する。この工程3では、リチウムコバルト含有複合酸化物の生成と同時に、上記仮焼成粉末の粒子表面に存在する余分なリチウム化合物と、工程2で添加した酸、又はその酸と揮発性塩基との塩との中和反応が進み、上記酸のリチウム塩が生成する。そのため、工程3では、工程2で添加した酸のリチウム塩を粒子表面に有するリチウムコバルト含有複合酸化物が得られる。
かくして、工程3で得られるリチウムコバルト含有複合酸化物の粒子表面に原料由来の余分な塩基性のリチウム化合物、例えば炭酸リチウムや水酸化リチウム等が存在せず、かつ粒子表面に安定な化合物である特定の酸とのリチウム塩を有するため、正極材料として用いた際に、電解液の分解反応や充放電を繰り返した際の正極材料の分解反応を抑制することができる。よって本発明で得られたリチウムコバルト含有複合酸化物は、高電圧条件下でも、電池の膨化を抑制し、かつ良好な容量維持率と高い平均放電電圧を実現でき、優れた充放電サイクル耐久性を実現することができる。
一方、特許文献1、2に記載されたリチウム化合物、コバルト化合物及びリン酸リチウム又はリン酸などのリン化合物を混合した混合物を焼成することで得られるリチウム含有複合酸化物においては、リチウム化合物、コバルト化合物及びリン化合物が子表面においては十分に進行し難いため、粒子表面に反応しない余剰のリチウム化合物が存在するリチウム含有複合酸化物粉末が生成してしまい、充放電サイクル耐久性が劣る原因となっていると考えられる。また、特許文献3〜5に記載されたリチウム含有複合酸化物の製造方法では、リチウム化合物及びコバルト化合物などの原料を高温で焼成して、リチウム含有複合酸化物を合成し、得られたリチウム含有複合酸化物とリン又は硫黄を含む化合物とを混合して、再度、高温で焼成して、粒子表面にリン又は硫黄を含む化合物を有する表面修飾リチウム含有複合酸化物を合成している。該プロセスは、2段階の高温の焼成工程が必要であり、多くの熱エネルギーが使用されるため、環境負荷が大きく非効率的であるとともに、得られるリチウム含有複合酸化物の正極活物質としての特性も良好なものではない。
例4で得られたリチウムコバルト含有複合酸化物の初期の放電曲線。 例11で得られた表面修飾リチウムコバルト含有複合酸化物の初期の放電曲線。 例4で得られたリチウムコバルト含有複合酸化物と例11で得られた表面修飾リチウムコバルト含有複合酸化物との初期の放電曲線において、放電末期の部分を拡大して並べたもの。
本発明の工程1において、リチウム/コバルトの原子比が0.9〜1.2となる割合で、コバルト化合物の粉末とリチウム化合物の粉末とを含む混合物を300〜600℃で仮焼成することで仮焼成粉末が得られる。
コバルト化合物の粉末の平均粒径は、1〜30μmが好ましく、10〜25μmがより好ましい。リチウム化合物の粉末の平均粒径は、1〜20μmが好ましく、2〜15μmがより好ましい。また、工程1で得られる仮焼成粉末の平均粒径は、1〜30μmが好ましく、10〜25μmがより好ましい。
使用されるコバルト化合物とリチウム化合物は特に限定されないが、なかでも次の化合物が好ましい。コバルト化合物としては、水酸化コバルト、オキシ水酸化コバルト、酸化コバルト及び炭酸コバルトからなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物が好ましく、水酸化コバルト又はオキシ水酸化コバルトがより好ましく、オキシ水酸化コバルトが特に好ましい。リチウム化合物としては、炭酸リチウム又は水酸化リチウムが好ましく、炭酸リチウムがより好ましい。
また、工程1で仮焼成する混合物に含まれるコバルト化合物のコバルト原子の量をリチウム化合物のリチウム原子の量で割った数値であるリチウム/コバルトの原子比は0.9〜1.2であり、0.95〜1.1が好ましく、1〜1.05がより好ましい。また該混合物の仮焼成温度は300〜600℃であり、350〜600℃が好ましく、400〜550℃がより好ましい。
コバルト化合物とリチウム化合物とを含む混合物は、他のドープ元素を含んでいてもよい。本明細書において、このドープ元素をM元素ということがある。このM元素はCo以外の遷移金属元素、Al、Sn及び第2族の元素からなる群から選ばれる少なくとも1種の元素を含む混合物が好ましく、Al、Ti、Zr、Hf、Nb、Ta、Mg、Sn及びZnからなる群から選ばれる少なくとも1種であると好ましい。特に、放電容量、安全性、充放電サイクル耐久性などの見地より、M元素は、Al、Ti、Zr及びMgからなる群から選ばれる少なくとも1種であるとより好ましく、Al、Zr及びMgからなる群から選ばれる少なくとも1種であると特に好ましい。なお、遷移金属元素とは、具体的には周期表の3族、4族、5族、6族、7族、8族、9族、10族、11族、又は12族の遷移金属を表す。
仮焼成に用いる設備は特に限定されないが、例えばローラーハースキルン、電気炉、トンネル炉、シャトル炉、ロータリーキルンなどを用いることができる。なかでもローラーハースキルン及びロータリーキルンは連続式であり、短時間で効率良く量産できるため好ましい。
本発明の工程2において、工程1で得られた仮焼成粉末と、上記で規定される酸又はその酸と揮発性塩基との塩とを混合することで混合物が得られる。
工程2で加える酸は、仮焼成粉末に含まれるリチウム原子と反応する酸である。この酸は、工程2及び/又は工程3においてリチウム原子と反応して、粒子表面に酸のリチウム塩を生成する。また、その酸と揮発性塩基との塩を加えても、酸を加えた場合と同様に、リチウム原子と反応して、リチウム塩を生成する。リチウム原子と反応する酸としては、有機酸及び無機酸のいずれも使用できるが、なかでも無機酸が好ましい。
この無機酸としては、リン酸、ピロリン酸、硫酸、ピロ硫酸、亜硫酸、過硫酸、アミド硫酸、チオ硫酸、リン酸、次亜リン酸、ヘキサメタリン酸、トリポリリン酸、テトラポリリン酸、ポリリン酸、モリブデン酸、タングステン酸、ケイ酸、アルミン酸、フッ酸、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、チタン酸、ジルコン酸、クロム酸、バナジン酸、ゲルマニウム酸、ニオブ酸、タンタル酸及びホウ酸からなる群から選ばれる1種の酸が好ましい。なかでもリン酸、ピロリン酸、硫酸、ピロ硫酸、亜硫酸、過硫酸、アミド硫酸、チオ硫酸、亜リン酸、次亜リン酸、トリポリリン酸、テトラポリリン酸、ポリリン酸、モリブデン酸、タングステン酸、ケイ酸、アルミン酸、フッ酸、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、チタン酸及びジルコン酸からなる群から選ばれる1種の酸がより好ましい。特に、リチウム原子との反応性に優れ電池性能をより向上させる傾向が見られるリン酸、ピロリン酸、硫酸、ピロ硫酸、亜硫酸、過硫酸、アミド硫酸、亜リン酸、次亜リン酸、ポリリン酸、モリブデン酸、タングステン酸、ケイ酸、フッ酸、ジルコン酸、臭化水素酸及びヨウ化水素酸からなる群から選ばれる1種の酸がさらに好ましい。本発明では、特に、リン及び硫黄のいずれかを含む酸を使用した場合に得られるリチウムコバルト複合酸化物は安全性、充放電サイクル耐久性などの電池性能が優れているため、リン酸、ピロリン酸、硫酸、ピロ硫酸、亜硫酸、過硫酸、アミド硫酸、亜リン酸、次亜リン酸及びポリリン酸からなる群から選ばれる1種の酸が好ましく、なかでも、安価であり、容易に入手できるリン酸、ピロリン酸及び硫酸からなる群から選ばれる1種の酸が特に好ましい。また、特に、充放電に伴うガス発生を抑制したり、充放電サイクル耐久性を向上させたりしたい場合は、モリブデン酸及びタングステン酸からなる群から選ばれる1種の酸を用いることが好ましく、なかでもモリブデン酸がより好ましい。
また、リチウム原子と反応する有機酸としては、有機ホスホン酸、有機スルホン酸、硫酸エステル、リン酸エステル、亜硫酸エステル、亜リン酸エステル、スルフィン酸、スルフェン酸、ホスフィン酸及び核酸からなる群から選ばれる1種が好ましい。なかでも、有機ホスホン酸、有機スルホン酸、硫酸エステル、リン酸エステル、亜硫酸エステル及び亜リン酸エステルからなる群から選ばれる1種がより好ましく、有機ホスホン酸及び有機スルホン酸のいずれかが特に好ましい。
工程2における酸と揮発性塩基との塩としては、アンモニウム塩、アミン塩、又はヒドラジン塩が好ましく、なかでもアンモニウム塩又はアミン塩がより好ましく、アンモニウム塩が特に好ましい。アミン塩としては、グアニジン、コリン及びヒドロキシアミンからなる群から選ばれる1種が好ましい。また、酸と揮発性塩基との塩は他の金属元素を含んでもよい。
上記したアンモニウム塩としては、硫酸アンモニウム、硫酸水素アンモニウム、リン酸アンモニウム、リン酸水素二アンモニウム、リン酸二水素アンモニウム、過硫酸アンモニウム、リン酸エステルアンモニウム塩、硫酸エステルアンモニウム塩及びドデシルベンゼンスルホン酸アンモニウム塩からなる群から選ばれる1種が好ましい。アミン塩としては、リン酸グアニジン、硫酸グアニジン、コリンリン酸塩、硫酸ヒドロキシルアンモニウム塩、スルファミン酸グアニジンリン酸グアニル尿素及び硫酸グアナゾールからなる群から選ばれる1種が好ましい。ヒドラジン塩としては、硫酸ヒドラジン、中性硫酸ヒドラジン又はリン酸ヒドラジンが好ましい。これらの塩の中でも硫酸アンモニウム、硫酸水素アンモニウム、リン酸アンモニウム、リン酸水素二アンモニウム、リン酸二水素アンモニウム、リン酸グアニジン、硫酸グアニジン、コリンリン酸塩、硫酸ヒドロキシルアンモニウム塩、スルファミン酸グアニジン、リン酸グアニル尿素及び硫酸グアナゾールからなる群から選ばれる1種が好ましい。なかでも、硫酸アンモニウム、硫酸水素アンモニウム、リン酸アンモニウム、リン酸水素二アンモニウム、リン酸二水素アンモニウム、リン酸グアニジン、硫酸グアニジン、コリンリン酸塩、硫酸ヒドロキシルアンモニウム塩及びスルファミン酸グアニジンからなる群から選ばれる1種がより好ましい。特に、硫酸アンモニウム、硫酸水素アンモニウム、リン酸アンモニウム、リン酸水素二アンモニウム、リン酸二水素アンモニウム、リン酸グアニジン及び硫酸グアニジンからなる群から選ばれる1種がさらに好ましく、硫酸アンモニウム、硫酸水素アンモニウム、リン酸アンモニウム、リン酸水素二アンモニウム及びリン酸二水素アンモニウムからなる群から選ばれる1種が特に好ましい。
仮焼成粉末と、特定の酸又はその酸と揮発性塩基との塩とを混合する方法は特に限定されないが、なかでも酸又はその酸と揮発性塩基との塩が溶解した溶液と仮焼成粉末とを混合する方法、又は酸又はその酸と揮発性塩基との塩が固体であり、かつ仮焼成粉末と乾式混合する方法が好ましい。
酸又はその酸と揮発性塩基との塩が溶解した溶液と仮焼成粉末とを混合する具体的な方法としては、酸又はその酸と揮発性塩基との塩が溶解した溶液を仮焼成粉末に噴霧して混合したり、特定の酸又はその酸と揮発性塩基との塩が溶解した溶液に仮焼成粉末を分散させたりする方法が好ましく、酸又はその酸と揮発性塩基との塩が溶解した溶液を仮焼成粉末に噴霧して混合する方法が特に好ましい。
酸又はその酸と揮発性塩基との塩が溶解した溶液を仮焼成粉末に噴霧して混合したり、特定の酸又はその酸と揮発性塩基との塩が溶解した溶液に仮焼成粉末を分散させたりする方法において、該溶液中の酸又はその酸と揮発性塩基との塩の濃度は、5〜50質量%が好ましく、10〜40質量%がより好ましい。
混合する装置としてはスプレードライヤー、アキシャルミキサー、ヘンシェルミキサー、ナウターミキサー、ドラムミキサー、タービュライザー及びレーディゲミキサーからなる群から選ばれる少なくとも1種の装置を用いることが好ましい。
また、操作性、量産性を重視する場合は、酸又はその酸と揮発性塩基との塩として固体の酸又は塩を使用して、仮焼成粉末と乾式混合することが好ましい。
さらに本発明においては、工程2で得られた混合物を720〜1100℃で焼成することで、工程2で加えた酸のリチウム塩を粒子表面に有するリチウムコバルト含有複合酸化物を得る。混合物の焼成は、大気中が好ましい。焼成時の好ましい酸素濃度としては、具体的には10〜60体積%が好ましく、15〜40体積%がより好ましい。混合物の焼成温度は800〜1100℃が好ましく、850〜1080℃がより好ましく、900〜1080℃がさらに好ましく、950〜1050℃が特に好ましい。焼成温度が上記の範囲であると充放電サイクル耐久性が向上する傾向が見られる。
工程3で得られるリチウムコバルト含有複合酸化物の組成は、一般式LiCoで表される組成を有するリチウムコバルト含有複合酸化物が好ましい。なお、Mは上記に定義したとおりである。またp、x、y、z及びaは、0.9≦p≦1.2、0.9≦x≦1、0≦y≦0.1、1.9≦z≦2.1、0≦a≦0.05の数値範囲を表す。p、x、y、z及びaは、なかでも、0.95≦p≦1.1、0.95≦x≦1.00、0≦y≦0.05、1.95≦z≦2.05、0≦a≦0.01が好ましい。なかでもpについては0.9≦p≦1.2が好ましく、0.95≦p≦1.1がより好ましく、1≦p≦1.05が特に好ましい。また、フッ素(F)を含まない場合は、フッ素を含む場合と比べて、放電容量が高くなる傾向があり、容量を重視するときはa=0が好ましい。また、母材のリチウム含有複合酸化物がフッ素を含む場合は、酸素の一部がフッ素で置換された正極活物質となり、安全性がさらに向上する傾向が見られるため、安全性を重視するときは、aは0.001≦a≦0.01の範囲が好ましい。リチウムコバルト含有複合酸化物などの組成の分析には、誘導結合プラズマ(ICP)発光分析法を用いて分析できる。ICP発光分析の装置には島津製作所社製ICPS−8000を用いることができる。
工程3で得られるリチウムコバルト含有複合酸化物は、母材であるリチウムコバルト含有複合酸化物に対して、工程2で加えた酸のリチウム塩を0.3〜1.5mol%の割合で有することが好ましい。該リチウム塩の含有量は、粉末X線回折法で得られたスペクトルチャートとそのチャートをリートベルト法により分析して求めることができる。
また、工程3で得られるリチウムコバルト含有複合酸化物の粒子表面に、工程2で加えた酸のリチウム塩を有することが好ましい。本発明において、粒子表面とは、XPS分析法(X線光電子分光法)により分析できる範囲をいう。XPS分析法は、粒子の極めて表面に近い層に含有される元素の種類又は元素の存在割合を分析できる。なお、XPS分析装置の例としては、PHI社製ESCA5400(ノンモノクロタイプ)が挙げられる。なお、本発明において、XPS分析法を用いて粒子表面に含まれる原子を測定する際には、高い感度で検出でき、かつできる限り他の元素のピークと重ならないピークを用いることが好ましい。
さらに、上記の方法の他に、リチウムコバルト含有複合酸化物の断面を樹脂で包埋して、酸化セリウム微粒子で研磨した後、電子線マイクロアナライザ(EPMA)により、粒子断面に存在する元素のマッピングをすることでも、粒子表面に存在する元素を分析できる。
工程3で得られるリチウムコバルト含有複合酸化物の粉末の平均粒径は、1〜30μmが好ましく、10〜25μmがより好ましい。
なお、本発明において、平均粒径とは、体積基準で粒度分布を求め、全体積を100%とした累積カーブにおいて、その累積カーブが50%となる点の粒径である、体積基準累積50%径(D50)を意味する。粒度分布は、レーザー散乱粒度分布測定装置で測定した頻度分布及び累積体積分布曲線で求められる。粒径の測定は、粒子を水媒体中に超音波処理などで充分に分散させて粒度分布を測定する(例えば、日機装社製マイクロトラックHRAX−100などを用いる)ことにより行なわれる。
本発明で得られるリチウムコバルト含有複合酸化物を正極材料として用いて、リチウムイオン二次電池用の正極を製造する場合には、まず、正極活物質の粉末に、アセチレンブラック、黒鉛、ケッチェンブラックなどのカーボン系導電材と結合材を混合する。前記結合材には、好ましくは、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリアミド、カルボキシメチルセルロース、アクリル樹脂等が用いられる。本発明により得られる正極活物質の粉末、導電材及び結合材を溶媒、又は分散媒を使用して、スラリー又は混練物とせしめる。これをアルミニウム箔、ステンレス箔などの正極集電体に塗布などにより担持せしめてリチウムイオン二次電池用の正極が製造される。
本発明で得られるリチウムコバルト含有複合酸化物を正極材料に用いたリチウムイオン二次電池において、セパレータとしては、多孔質ポリエチレン、多孔質ポリプロピレンのフィルムなどが使用される。また、電池の電解質溶液の溶媒としては、種々の溶媒が使用できるが、なかでも炭酸エステルが好ましい。炭酸エステルは環状、鎖状いずれも使用できる。環状炭酸エステルとしては、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート(EC)などが例示される。鎖状炭酸エステルとしては、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、メチルプロピルカーボネート、メチルイソプロピルカーボネートなどが例示される。
本発明では、上記炭酸エステルを単独で、又は2種以上を混合して使用できる。また、他の溶媒と混合して使用してもよい。また、負極活物質の材料によっては、鎖状炭酸エステルと環状炭酸エステルを併用すると、放電特性、サイクル耐久性、充放電効率が改良できる場合がある。
また、本発明で得られるリチウムコバルト含有複合酸化物を正極材料に用いたリチウムイオン二次電池においては、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(例えば、アトケム社製:商品名カイナー)又はフッ化ビニリデン−パーフルオロプロピルビニルエーテル共重合体を含むゲルポリマー電解質を電解質に用いてもよい。上記の電解質溶媒又はポリマー電解質に添加される溶質としては、ClO 、CFSO 、BF 、PF 、AsF 、SbF 、CFCO 、(CFSOなどをアニオンとするリチウム塩のいずれか1種以上が好ましく使用される。電解質溶媒又はポリマー電解質に含有されるリチウム塩の濃度は、0.2〜2.0mol/l(リットル)が好ましく、0.5〜1.5mol/lが特に好ましい。この濃度範囲の場合、イオン伝導度が大きく、電解質の電気伝導度が増大する。
本発明で得られるリチウムコバルト含有複合酸化物を正極材料に用いたリチウムイオン二次電池において、負極活物質には、リチウムイオンを吸蔵、放出可能な材料が用いられる。この負極活物質を形成する材料は特に限定されないが、例えばリチウム金属、リチウム合金、炭素材料、周期表14、又は15族の金属を主体とした酸化物、炭素化合物、炭化ケイ素化合物、酸化ケイ素化合物、硫化チタン、炭化ホウ素化合物などが挙げられる。炭素材料としては、種々の熱分解条件で有機物を熱分解したものや人造黒鉛、天然黒鉛、土壌黒鉛、膨張黒鉛、鱗片状黒鉛などを使用できる。また、酸化物としては、酸化スズを主体とする化合物が使用できる。負極集電体としては、銅箔、ニッケル箔などが用いられる。かかる負極は、上記活物質を有機溶媒と混練してスラリーとし、該スラリーを金属箔集電体に塗布、乾燥、プレスして得ることにより好ましくは製造される。
本発明で得られるリチウムコバルト含有複合酸化物を正極材料に用いたリチウム電池の形状には特に制約はない。シート状、フィルム状、折り畳み状、巻回型有底円筒形、ボタン形などが用途に応じて選択される。
以下に実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定して解釈されないことはもちろんである。なお、以下の例1〜例9は本発明の実施例であり、例10〜15は比較例である。また、以下、パーセント表示(%)は、断りの無いかぎり質量%である。
[例1]
炭酸マグネシウム1.93g、Al含量が2.65%のマレイン酸アルミニウム20.89g、Zr含量が14.5%の塩基性炭酸ジルコニウムアンモニウム1.29g、及びクエン酸一水和物7.76gを水23.12gに溶解させたpH2.4の水溶液を得た。この水溶液とコバルト含量が60.0%である、平均粒径13μmのオキシ水酸化コバルト197.32gとを混合した後、80℃の恒温槽にて乾燥して乾燥粉末を得た。得られた乾燥粉末とリチウム含量が18.7%である、平均粒径5.6μmの炭酸リチウム77.69gとを乳鉢で混合し、大気中400℃で10時間焼成し、仮焼成粉末を得た。
次いで、リン酸水素二アンモニウム4.5gをイオン交換水25.5gに溶解したリン酸水素二アンモニウム含量15%の水溶液30gを調製した。上記で得られた仮焼成粉末50gに対して、調製した水溶液4.5gを噴霧した後、乾燥して、混合して混合物を得た。この混合物を大気中1000℃で14時間焼成し、リチウムコバルト含有複合酸化物粉末を得た。得られたリチウムコバルト含有複合酸化物の組成はLi1.02(Co0.979Mg0.01Al0.01Zr0.0010.98であった。なお、組成は誘導結合プラズマ(ICP)発光分析法を用いて分析した。ICP発光分析の装置には島津製作所社製ICPS−8000を用いた。得られたリチウムコバルト含有複合酸化物の平均粒径は12μmであった。
さらに、得られたリチウムコバルト含有複合酸化物に関して、放射光施設Super Photon Ring 8 GeV ビームラインBL19B2にて粉末X線回折測定用大型デバイシェラーカメラを用いて、2θが3〜70°の範囲の粉末X線回折スペクトルを測定した。得られたデータをJADE+PDF2を用いてピークサーチして、RIETAN―FPを用いてリートベルト法により分析した結果、リチウムコバルト含有複合酸化物にLiPOが含まれていることを確認できた。RIETAN―FPを用いてリートベルト法により分析した結果、得られたリチウムコバルト含有複合酸化物に含まれるLiPOは、母材であるリチウムコバルト含有複合酸化物に対して、1mol%であった。
また、得られたリチウムコバルト含有複合酸化物の断面を樹脂で包埋して、酸化セリウム微粒子で研磨した後、EPMAを用いて、粒子断面に存在するリン(P)のマッピングをした結果、粒子表面にリン元素を検出した。
また、得られたリチウムコバルト含有複合酸化物をXPS分析法で分析したところ、粒子表面にLiPOに由来するピークが確認でき、粒子表面にLiPOが存在することが確認できた。
得られたリチウムコバルト含有複合酸化物の粉末と、アセチレンブラックと、ポリフッ化ビニリデン粉末とを90/5/5の質量比で混合し、N−メチルピロリドンを添加してスラリーを作製し、厚さ20μmのアルミニウム箔にドクターブレードを用いて片面塗工した。次いで、乾燥し、ロールプレス圧延を2回行うことによりリチウム電池用の正極体シートを作製した。
そして、上記正極体シートを打ち抜いたものを正極に用い、厚さ500μmの金属リチウム箔を負極に用い、負極集電体に20μmのニッケル箔を使用し、セパレータには厚さ25μmの多孔質ポリプロピレンを用いた。さらに電解液には、濃度1MのLiPF/EC+DEC(1:1)溶液(LiPFを溶質とするECとDECとの体積比(1:1)の混合溶液を意味する。後記する溶媒もこれに準じる。)を用いて、アルゴングローブボックス内で、ステンレス製簡易密閉セル型リチウム電池を組み立てた。
組み立てた電池を25℃にて正極活物質1gにつき75mAの負荷電流で4.5Vまで充電し、正極活物質1gにつき90mAの負荷電流にて2.75Vまで放電して初期放電容量を求めた。さらに、この電池について、引き続き充放電サイクル試験を50回行った。その結果、4.5〜2.75Vにおける初期放電容量は178mAh/g、初期の充放電効率は92.0%、初期の平均放電電圧は4.02Vであり、50回充放電サイクル後の容量維持率は94.3%であった(以下、それぞれ、初期放電容量、初期充放電効率、初期平均放電電圧、容量維持率ということがある)。また、初期の放電曲線において放電末期の電圧低下は見られなかった。
[例2]
硫酸アンモニウム4.5gをイオン交換水25.5gに溶解した硫酸アンモニウム含量15%の水溶液30gを調製した。例1と同様にして得られた仮焼成粉末50gに対して、調製した水溶液4.5gを噴霧した後、乾燥して、混合して混合物を得た。この混合物を大気中1000℃で14時間焼成し、リチウムコバルト含有複合酸化物粉末を得た。得られたリチウムコバルト含有複合酸化物の組成はLi1.02(Co0.979Mg0.01Al0.01Zr0.0010.98であった。得られたリチウムコバルト含有複合酸化物の平均粒径は12μmであった。また、例1と同様にして分析した結果、得られたリチウムコバルト含有複合酸化物に含まれるLiSOは、母材であるリチウムコバルト含有複合酸化物に対して、0.6mol%であった。また、該複合酸化物の粒子表面にLiSOの存在を確認できた。
正極体シートが、上記のリチウムコバルト含有複合酸化物を用いて作製されたものである以外は、例1と同様に電極及び電池を作製し、評価を行った。
その結果、初期放電容量は179mAh/g、初期充放電効率は91.6%、初期平均放電電圧は4.02Vであり、容量維持率は94.9%であった。また、初期の放電曲線において放電末期の電圧低下は見られなかった。
[例3]
バナジン酸アンモニウム1.5gをイオン交換水28.5gに溶解したバナジン酸アンモニウム含量5%の水溶液30gを調製した。例1と同様にして得られた仮焼成粉末50gに対して、調製した水溶液11.96gを噴霧した後、乾燥して、混合して混合物を得た。この混合物を大気中1000℃で14時間焼成し、リチウムコバルト含有複合酸化物粉末を得た。得られたリチウムコバルト含有複合酸化物の組成はLi1.02(Co0.979Mg0.01Al0.01Zr0.0010.98であった。得られたリチウムコバルト含有複合酸化物の平均粒径は12μmであった。また、例1と同様にして分析した結果、得られたリチウムコバルト含有複合酸化物に含まれるLiVOは、母材であるリチウムコバルト含有複合酸化物に対して、1.0mol%であった。また、該複合酸化物の粒子表面にLiVOの存在を確認できた。
正極体シートが、上記のリチウムコバルト含有複合酸化物を用いて作製されたものである以外は、例1と同様に電極及び電池を作製し、評価を行った。
その結果、初期放電容量は180mAh/g、初期充放電効率は93.5%、初期平均放電電圧は4.01Vであり、容量維持率は95.6%であった。また、初期の放電曲線において放電末期の電圧低下は見られなかった。
[例4]
炭酸マグネシウム0.386g、Al含量が2.65%のマレイン酸アルミニウム20.89g、及びクエン酸一水和物7.76gを水23.12gに溶解させたpH2.4の水溶液を得た。この水溶液とコバルト含量が60.0%である、平均粒径13μmのオキシ水酸化コバルト197.32gとを混合した後、80℃の恒温槽にて乾燥して乾燥粉末を得た。得られた乾燥粉末とリチウム含量が18.7%である、平均粒径5.6μmの炭酸リチウム77.69gとを乳鉢で混合し、酸素含有雰囲気下400℃で10時間焼成し、仮焼成粉末を得た。
次いで、リン酸水素二アンモニウム4.5gをイオン交換水25.5gに溶解したリン酸水素二アンモニウム含量15%の水溶液30gを調製した。上記で得られた仮焼成粉末50gに対して、調製した水溶液4.5gを噴霧した後、乾燥して、混合して混合物を得た。この混合物を大気中1000℃で14時間焼成し、リチウムコバルト含有複合酸化物粉末を得た。得られたリチウムコバルト含有複合酸化物の組成はLi1.02(Co0.988Mg0.002Al0.010.98であった。
得られたリチウムコバルト含有複合酸化物の平均粒径は12μmであった。また、例1と同様にして分析した結果、得られたリチウムコバルト含有複合酸化物に含まれるLiPOは、母材であるリチウムコバルト含有複合酸化物に対して、1.0mol%であった。また、該複合酸化物の粒子表面にLiPOの存在を確認できた。
正極体シートが、上記のリチウムコバルト含有複合酸化物を用いて作製されたものである以外は、例1と同様に電極及び電池を作製し、評価を行った。
その結果、初期放電容量は184mAh/g、初期充放電効率は93.6%、初期平均放電電圧は4.01Vであり、容量維持率は96.4%であった。また、初期の放電曲線において放電末期の電圧低下は見られなかった。電池評価により得られた初期の放電曲線を図1に示す。
[例5]
例1と同様にして得られた仮焼成粉末50gに対して、乳鉢で粉砕したリン酸水素二アンモニウム0.678gを添加した後、混合して混合物を得た。この混合物を大気中1000℃で14時間焼成し、リチウムコバルト含有複合酸化物粉末を得た。得られたリチウムコバルト含有複合酸化物の組成はLi1.02(Co0.979Mg0.01Al0.01Zr0.0010.98であった。得られたリチウムコバルト含有複合酸化物の平均粒径は12μmであった。また、例1と同様にして分析した結果、得られたリチウムコバルト含有複合酸化物に含まれるLiPOは、母材であるリチウムコバルト含有複合酸化物に対して、1mol%であった。また、該複合酸化物の粒子表面にLiPOの存在を確認できた。
正極体シートが、上記のリチウムコバルト含有複合酸化物を用いて作製されたものである以外は、例1と同様に電極及び電池を作製し、評価を行った。
その結果、初期放電容量は179mAh/g、初期充放電効率は91.1%、初期平均放電電圧は4.01Vであり、容量維持率は96.1%であった。また、初期の放電曲線において放電末期の電圧低下は見られなかった。
[例6]
例1と同様にして得られた仮焼成粉末50gに対して、乳鉢で粉砕したグアニジンリン酸塩1.105gを添加した後、混合して混合物を得た。この混合物を大気中1000℃で14時間焼成し、リチウムコバルト含有複合酸化物粉末を得た。得られたリチウムコバルト含有複合酸化物の組成はLi1.02(Co0.979Mg0.01Al0.01Zr0.0010.98であった。得られたリチウムコバルト含有複合酸化物の平均粒径は12μmであった。また、例1と同様にして分析した結果、得られたリチウムコバルト含有複合酸化物に含まれるLiPOは、母材であるリチウムコバルト含有複合酸化物に対して、1mol%であった。また、該複合酸化物の粒子表面にLiPOの存在を確認できた。
正極体シートが、上記のリチウムコバルト含有複合酸化物を用いて作製されたものである以外は、例1と同様に電極及び電池を作製し、評価を行った。
その結果、初期放電容量は177mAh/g、初期充放電効率は91.1%、初期平均放電電圧は4.02Vであり、容量維持率は94.7%であった。また、初期の放電曲線において放電末期の電圧低下は見られなかった。
[例7]
例1と同様にして得られた仮焼成粉末50gに対して、乳鉢で粉砕したアミド硫酸0.497gを添加した後、混合して混合物を得た。この混合物を大気中1000℃で14時間焼成し、リチウムコバルト含有複合酸化物粉末を得た。得られたリチウムコバルト含有複合酸化物の組成はLi1.02(Co0.979Mg0.01Al0.01Zr0.0010.98であった。得られたリチウムコバルト含有複合酸化物の平均粒径は12μmであった。また、例1と同様にして分析した結果、得られたリチウムコバルト含有複合酸化物に含まれるLiSOは、母材であるリチウムコバルト含有複合酸化物に対して、0.5mol%であった。また、該複合酸化物の粒子表面にLiSOの存在を確認できた。
正極体シートが、上記のリチウムコバルト含有複合酸化物を用いて作製されたものである以外は、例1と同様に電極及び電池を作製し、評価を行った。
その結果、初期放電容量は177mAh/g、初期充放電効率は90.6%、初期平均放電電圧は4.02Vであり、容量維持率は92.2%であった。また、初期の放電曲線において放電末期の電圧低下は見られなかった。
[例8]
例1と同様にして得られた仮焼成粉末50gに対して、乳鉢で粉砕した硫酸コバルト(II)アンモニウム六水和物1.010gを添加した後、混合して混合物を得た。この混合物を大気中1000℃で14時間焼成し、リチウムコバルト含有複合酸化物粉末を得た。得られたリチウムコバルト含有複合酸化物の組成はLi1.02(Co0.979Mg0.01Al0.01Zr0.0010.98であった。得られたリチウムコバルト含有複合酸化物の平均粒径は12μmであった。また、例1と同様にして分析した結果、得られたリチウムコバルト含有複合酸化物に含まれるLiSOは、母材であるリチウムコバルト含有複合酸化物に対して、0.7mol%であった。また、該複合酸化物の粒子表面にLiSOの存在を確認できた。
正極体シートが、上記のリチウムコバルト含有複合酸化物を用いて作製されたものである以外は、例1と同様に電極及び電池を作製し、評価を行った。
その結果、初期放電容量は179mAh/g、初期充放電効率は91.2%、初期平均放電電圧は4.02Vであり、容量維持率は92.0%であった。また、初期の放電曲線において放電末期の電圧低下は見られなかった。
[例9]
例1と同様にして得られた仮焼成粉末50gに対して、乳鉢で粉砕した硫酸セリウム(IV)四アンモニウム二水和物0.807gを添加した後、混合して混合物を得た。この混合物を大気中1000℃で14時間焼成し、リチウムコバルト含有複合酸化物粉末を得た。得られたリチウムコバルト含有複合酸化物の組成はLi1.02(Co0.979Mg0.01Al0.01Zr0.0010.98であった。得られたリチウムコバルト含有複合酸化物の平均粒径は12μmであった。また、例1と同様にして分析した結果、得られたリチウムコバルト含有複合酸化物に含まれるLiSOは、母材であるリチウムコバルト含有複合酸化物に対して、1mol%であった。また、該複合酸化物の粒子表面にLiSOの存在を確認できた。
正極体シートが、上記のリチウムコバルト含有複合酸化物を用いて作製されたものである以外は、例1と同様に電極及び電池を作製し、評価を行った。
その結果、初期放電容量は180mAh/g、初期充放電効率は91.6%、初期平均放電電圧は4.02Vであり、容量維持率は96.2%であった。また、初期の放電曲線において放電末期の電圧低下は見られなかった。
[例10]
例1と同様にして、炭酸マグネシウム1.25g、Al含量が2.65%のマレイン酸アルミニウム1.38g、Zr含量が20.1%の塩基性炭酸ジルコニウムアンモニウム0.234g及びクエン酸一水和物7.92gを水53.58gに溶解させた水溶液を調製した。さらに例1と同様にして、この水溶液とコバルト含量が60.0%である、平均粒径13μmのオキシ水酸化コバルト197.91gとを混合した後、乾燥して乾燥粉末を得た。
得られた乾燥粉末とリチウム含量が18.7%である、平均粒径5.6μmの炭酸リチウム76.32gとを乳鉢で混合し、大気中1000℃で10時間焼成して、リチウムコバルト含有複合酸化物粉末を得た。得られたリチウムコバルト含有複合酸化物の組成はLi1.02(Co0.979Mg0.01Al0.01Zr0.0010.98であった。該複合酸化物の平均粒径は12μmであった。
リン酸水素二アンモニウム4.5gをイオン交換水25.5gに溶解したリン酸水素二アンモニウム含量15%の水溶液30gを調製した。上記で得られたリチウムコバルト含有複合酸化物50gに対して、調製した水溶液4.5gを噴霧した後、乾燥して、混合して混合物を得た。さらに、この混合物を酸素含有雰囲気下1000℃で12時間熱処理し、リチウムコバルト含有複合酸化物の粒子表面にリン酸リチウムを付着させた表面修飾リチウムコバルト含有複合酸化物を得た。
得られた表面修飾リチウム含有複合酸化物の断面を樹脂で包埋し、酸化セリウム微粒子で研磨した粒子断面をEPMAでP元素マッピングを行った結果、粒子表面にリン元素を検出した。
正極体シートが、上記のリチウムコバルト含有複合酸化物を用いて作製されたものである以外は、例1と同様に電極及び電池を作製し、評価を行った。
その結果、初期放電容量は181mAh/g、初期充放電効率は93.3%、初期平均放電電圧は3.99Vであり、容量維持率は95.3%であった。また、初期の放電曲線において放電末期の電圧低下が確認された。放電曲線において、このような放電末期の電圧低下が見られると、カットオフ電圧の上昇にともない放電容量が低下するために好ましくない。
[例11]
リチウムコバルト含有複合酸化物に対して、リン酸水素二アンモニウムを溶解した水溶液を噴霧した後、混合して得られる混合物を熱処理する際に、大気中900℃で12時間の熱処理をしたこと以外は、例10と同様にして、表面修飾リチウムコバルト含有複合酸化物を得た。
正極体シートが、上記の表面修飾リチウムコバルト含有複合酸化物を用いて作製されたものである以外は、例1と同様に電極及び電池を作製し、評価を行った。
その結果、初期放電容量は183mAh/g、初期充放電効率は93.9%、初期平均放電電圧は3.99Vであり、容量維持率は97.5%であった。また、初期の放電曲線において放電末期の電圧低下が確認された。電池評価により得られた初期の放電曲線を図2に示す。
[例12]
リチウムコバルト含有複合酸化物に対して、リン酸水素二アンモニウムを溶解した水溶液を噴霧した後、混合して得られる混合物を熱処理する際に、大気中800℃で12時間の熱処理をしたこと以外は、例10と同様にして、表面修飾リチウムコバルト含有複合酸化物を得た。
正極体シートが、上記の表面修飾リチウムコバルト含有複合酸化物を用いて作製されたものである以外は、例1と同様に電極及び電池を作製し、評価を行った。
その結果、初期放電容量は180mAh/g、初期充放電効率は92.7%、初期平均放電電圧は3.99Vであり、容量維持率は96.9%であった。また、初期の放電曲線において放電末期の電圧低下が確認された。
[例13]
例10と同様にして、得られた乾燥粉末と炭酸リチウムとを乳鉢で混合した後、焼成してリチウムコバルト含有複合酸化物粉末を得た。得られたリチウムコバルト含有複合酸化物50gに対して、Zr含量15.1%の炭酸ジルコニルアンモニウムの水溶液3.04gを噴霧した後、混合して混合物を得た。なお、炭酸ジルコニルアンモニウムの化学式は(NH[Zr(CO(OH)]である。さらに、この混合物を大気中500℃で12時間熱処理し、リチウムコバルト含有複合酸化物の粒子表面にジルコニウム化合物を付着させた表面修飾リチウムコバルト含有複合酸化物粉末を得た。
正極体シートが、上記の表面修飾リチウムコバルト含有複合酸化物を用いて作製されたものである以外は、例1と同様に電極及び電池を作製し、評価を行った。
その結果、初期充電容量は172mAh/g、初期充放電効率は89.8%、初期平均放電電圧は4.02Vであり、容量維持率は88.7%であった。また、初期の放電曲線において放電末期の電圧低下は見られなかった。
[例14]
リチウムコバルト含有複合酸化物50gに対して、Zr含量15.1%の炭酸ジルコニルアンモニウムの水溶液5gをイオン交換水95gに希釈した水溶液6.1gを噴霧したことと、噴霧した後、混合して得られる混合物を大気中1000℃で14時間熱処理したこと以外は例13と同様にして、表面修飾リチウムコバルト含有複合酸化物粉末を得た。
正極体シートが、上記の表面修飾リチウムコバルト含有複合酸化物を用いて作製されたものである以外は、例1と同様に電極及び電池を作製し、評価を行った。
その結果、初期充電容量は191mAh/gであり、初期充放電効率は92.0%、初期平均放電電圧は4.03Vであり、容量維持率は58.2%であった。また、初期の放電曲線において放電末期の電圧低下は見られなかった。
[例15]
例1と同様にして、炭酸マグネシウム1.93g、Al含量が2.65%のマレイン酸アルミニウム20.8g、Zr含量が14.5%の塩基性炭酸ジルコニウムアンモニウム1.29g及びクエン酸一水和物7.76gを水23.12gに溶解させた水溶液を調製した。さらに例1と同様にして、この水溶液とコバルト含量が60.0%であるオキシ水酸化コバルト197.32gとを混合した後、乾燥して乾燥粉末を得た。リン酸水素二アンモニウム4.5gをイオン交換水25.5gに溶解したリン酸水素二アンモニウム含量15%の水溶液4.5gを調製した。得られた乾燥粉末49.62gに対して、調製した水溶液4.5gを噴霧した後、乾燥して、混合して混合物を得た。この混合物とリチウム含量が18.7%の炭酸リチウム77.69gとを乳鉢で混合した後、大気中1000℃で14時間焼成し、リンを含むリチウムコバルト含有複合酸化物を得た。得られたリチウムコバルト含有複合酸化物の組成はLi1.02(Co0.969Mg0.01Al0.01Zr0.0010.010.98であった。
正極体シートが上記のリンを含むリチウムコバルト含有複合酸化物を用いて作製されたものである以外は、例1と同様に電極及び電池を作製し、評価を行った。
その結果、初期充電容量は178mAh/g、初期充放電効率は91.3%、初期平均放電電圧は4.02Vであり、容量維持率は88.4%であった。また、初期の放電曲線において放電末期の電圧低下は見られなかった。
[例16]
例10と同様にして、得られた乾燥粉末と炭酸リチウムとを乳鉢で混合した後、焼成してリチウムコバルト含有複合酸化物粉末を得た。
正極体シートが、上記のリチウムコバルト含有複合酸化物を用いて作製されたものである以外は、例1と同様に電極及び電池を作製し、評価を行った。
その結果、初期充電容量は、177mAh/g、初期充放電効率は90.7%、初期平均放電電圧は4.03Vであり、容量維持率は76.2%であった。また、初期の放電曲線において放電末期の電圧低下は見られなかった。
[放電曲線の対比]
図3は、例4で得られたリチウムコバルト含有複合酸化物と例11で得られた表面修飾リチウムコバルト含有複合酸化物との初期の放電曲線において、放電末期の部分を拡大した図である。濃い実線が例4で得られたリチウムコバルト含有複合酸化物の放電曲線であり、薄い線が例11で得られた表面修飾リチウムコバルト含有複合酸化物の放電曲線である。図1〜3において、これらの放電曲線を比較すると例4で得られたリチウムコバルト含有複合酸化物の放電曲線は、170mAh/gまで放電しても電圧の降下が見られず、高い電圧を維持して放電しており、より高いエネルギー密度を有することがわかる。一方、例11で得られた表面修飾リチウムコバルト含有複合酸化物の放電曲線は、150mAh/gまで放電したあたりから、電圧の降下が始まり、例4で得られるリチウムコバルト含有複合酸化物に比べてエネルギー密度が低いことがわかる。
[実施例と比較例の対比]
実施例である例1〜9のリチウムコバルト含有複合酸化物は、いずれも平均放電電圧が4.01〜4.03Vと高く、かつ高電圧条件下である4.5Vでの50回充放電サイクル後における容量維持率は92.0〜96.4%と高いことがわかる。これらに対し、比較例である例10〜16のリチウムコバルト含有複合酸化物を用いた電池では、容量維持率と平均放電電圧の両者を同時に高くできないことがわかる。
本発明の製造方法は、方法自体が省エネルギーであり、環境負荷を少ない有用なプロセスであり、そして、それにより得られるリチウムコバルト含有複合酸化物は、上記したように種々の面で極めて優れた特性を有するリチウムイオン二次電池用の正極材料として有用である。

Claims (11)

  1. コバルト化合物の粉末とリチウム化合物の粉末とを、リチウム/コバルトの原子比が0.9〜1.2となる割合で含む原料粉末を300〜600℃で仮焼成して、仮焼成粉末を得る工程1と、仮焼成粉末に含まれるリチウム原子と反応する酸、又はその酸と揮発性塩基との塩と仮焼成粉末とを混合して、混合物を得る工程2と、該混合物を720〜1100℃で焼成して、リチウムコバルト含有複合酸化物を得る工程3を含むことを特徴とするリチウムイオン二次電池用リチウムコバルト含有複合酸化物の製造方法。
  2. 工程2で混合する酸又はその酸と揮発性塩基との塩が溶解した溶液と仮焼成粉末とを混合する請求項1に記載の製造方法。
  3. 工程2で混合する酸又はその酸と揮発性塩基との塩が固体であり、かつ仮焼成粉末と乾式混合する請求項1に記載の製造方法。
  4. 工程3において、該混合物を800〜1100℃で焼成する請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法。
  5. 工程2で混合する酸又はその酸と揮発性塩基との塩が、リチウム原子と反応する無機酸又は無機酸と揮発性塩基との塩である請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法。
  6. 工程3で得られるリチウムコバルト含有複合酸化物が、工程2で加える酸のリチウム塩を粒子表面に有する請求項1〜5のいずれかに記載の製造方法。
  7. 工程3で得られるリチウムコバルト含有複合酸化物が、母材であるリチウムコバルト含有複合酸化物に対して、工程2で加えた酸のリチウム塩を0.3〜1.5mol%の割合で有する請求項1〜6のいずれかに記載の製造方法。
  8. 工程3で得られるリチウムコバルト含有複合酸化物が一般式LiCo(但し、Mは、Co以外の遷移金属元素、Al、Sn及び第2族の元素からなる群から選ばれる少なくとも1種の元素である。0.9≦p≦1.2、0.9≦x≦1、0≦y≦0.1、1.9≦z≦2.1、0≦a≦0.05。)で表される組成を有するリチウムコバルト含有複合酸化物である請求項1〜7のいずれかに記載の製造方法。
  9. MがAl、Ti、Zr、Hf、Nb、Ta、Mg、Sn及びZnからなる群から選ばれる少なくとも1種の元素である請求項8に記載の製造方法。
  10. 請求項1〜9のいずれかに記載の製造方法で得られるリチウムコバルト含有複合酸化物を含有する正極活物質、導電剤、バインダー及び溶媒を混合して、得られるスラリーを金属箔に塗布した後、加熱により溶媒を除去することを特徴とするリチウムイオン二次電池用正極の製造方法。
  11. 請求項10に記載の製造方法で得られる正極に、セパレータ及び負極を積層して、これを電池ケースに収納した後、電解液を注入することを特徴とするリチウムイオン二次電池の製造方法。
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