以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
図1は、本発明の航空機状況表示システムの例を示すブロック図である。本発明の航空機状況表示システム31は、データ記憶部32と、入力部33と、検索部34と、関連情報算出部36と、表示制御部37と、表示部38とを備える。
データ記憶部32は、各航空機の飛行計画情報を記憶する記憶装置である。飛行計画情報は、事前に定められた航空機の飛行計画を表している。飛行計画情報には、例えば、航空機が航行する経路の識別情報、その経路上において定められた航空機の所定の通過地点(以下、FIXと記す。)の識別情報、および各FIXを航空機が通過する時刻の情報、および航空機の高度の情報等が含まれる。データ記憶部32は、航空機毎に、航空機の識別情報(コールサイン)と、その航空機の飛行計画情報とを対応付けて記憶する。また、データ記憶部32は、経路毎に経路情報を記憶する。経路情報には、経路の識別情報と、その経路上に存在する各FIXの識別情報および座標(例えば、緯度、経度)の情報が含まれる。
なお、FIXは、トラジェクトリポイントと称される場合もある。
入力部33は、オペレータ(ここでは管制官であるとする。)が経路を特定可能な情報の入力に用いる入力デバイス(例えば、キーボードやマウス等)である。入力部33を用いて、経路の識別情報が直接入力されてもよい。また、飛行計画情報を参照することによって、コールサインから、そのコールサインが示す航空機が通過する経路を特定できる。従って、入力部33を用いて、経路を特定可能な情報としてコールサインが入力されてもよい。また、入力部33を用いて、管制官が指定した航空機の高度範囲の情報、および経路からの横間隔範囲も入力される。「経路からの横間隔範囲」とは、経路からの右側方向への幅、および左側方向への幅を示す値である。管制官は、入力部33を用いて、航空機の経路、高度範囲、および経路からの横間隔範囲を指定する。
経路、高度範囲、および経路からの横間隔範囲が指定されると、その経路、高度範囲、および経路からの横間隔範囲によって空間が規定される。図2は、経路、高度範囲、および経路からの横間隔範囲によって規定される空間の例を示す模式図である。図2では、説明を簡単にするために、経路が単純な線分である場合を例にしている。また、経路からの横間隔範囲としてaが指定され、高度範囲として、h1〜h2が指定されているとする。すると、経路を中心とする幅2aの面が定まる。そして、その面を、高度h1からh2まで平行移動した時の移動空間となる空間Vが定まる。このように、指定された経路、高度範囲、および経路からの横間隔範囲によって空間が規定される。以下、この空間を経路空間と記す。
指定された経路、高度範囲、および経路からの横間隔範囲によって規定される経路空間内を航空機が通過することを「近接」と称する。なお、航空機が経路空間内を通過する距離や時間の長さによらず、わずかな距離やわずかな時間であっても、航空機が経路空間内を通過すれば、近接に該当する。
検索部34は、データ記憶部32に記憶された各飛行計画情報を用いて、飛行計画情報に対応する航空機が経路空間に近接するか否かを判定し、経路空間に近接する航空機(すなわち、経路空間内を通過する航空機)の飛行計画情報を全て検索し、その飛行計画情報に対応する航空機を特定する。この結果、特定された航空機を対象機と記す。
対象機の例として、例えば、経路空間内で経路を航行する航空機が挙げられる。また、対象機の他の例として、指定された経路と交差するようにして、経路空間内を通過する航空機が挙げられる。また、指定された経路に合流・分岐する航空機も、対象機に該当する。また、経路空間内で、指定された経路の近傍を航行する航空機も、対象機に該当する。
検索部34は、このような種々の対象機の飛行計画情報を検索し、各対象機を特定する。
表示制御部37は、検索部34によって特定された対象機の移動状況を示す画面を表示部38に表示させる。表示部38は、ディスプレイ装置である。
表示制御部37は、少なくとも、FIXの位置を横軸に表し、時刻を縦軸に表した2次元平面内に、対象機の移動状況を表したグラフを表示部38に表示させる。図3は、FIXの位置を横軸に表し、時刻を縦軸に表したグラフの例を示す模式図である。図3では、経路上を航行する対象機の移動状況を表す場合を例示している。その経路上に、FIX“A”,“B”,“C”が存在しているとする。表示制御部37は、横軸にFIX“A”,“B”,“C”を表し、縦軸に時刻を表し、対象機の通過位置およびその通過時刻を表す点を結ぶことによって、図3に例示する線をグラフ内に表示する。この線は、対象機の通過位置および通過時刻の対応関係を示している。
横軸に示す各FIXの間の間隔は、FIX間の距離を表している。航空機の経路上において、各FIXが一直線上に並んで存在しているとは限らない。表示制御部37は、経路情報に含まれるFIXの座標から隣接するFIX間の距離を算出し、FIX間の距離を累積していくことによって、横軸における各FIXの位置を特定すればよい。
図3に例示するグラフによって、幅のある時間帯における対象機の移動状況が把握できる。例えば、図3に示す例では、12時から13時までの時間帯で、対象機が各FIX“A”,“B”,“C”等を通過する時刻をそれぞれ把握できる。図3では、1つの対象機の移動状況を図示しているが、図3に示すグラフ内に複数の対象機の移動状況が図示されてもよい。
図3では、経路上を航行する対象機の移動状況を表す場合を例示した。他の種類の対象機(例えば、経路と交差する対象機等)の移動状況を、図3に例示するグラフ内に表示する例については後述する。
表示制御部37は、図3に例示するグラフ(FIXの位置を横軸で表し、時刻を縦軸で表したグラフ)とともに、他の情報も含む画面を表示部38に表示させる。表示制御部37が表示部38に表示させる画面の具体例については、図4を参照して後述する。
関連情報算出部36は、例えば、対象機同士がすれ違ったり、対象機が経路と交差したりするときの位置および時刻を算出する。例えば、関連情報算出部36は、指定された経路を異なる高度で対面で航行する対象機同士がすれ違う位置および時刻を算出する。また、例えば、関連情報算出部36は、指定された経路と交差するように航行する対象機がその経路と交差するときの位置および時間を算出する。なお、指定された経路と交差するように航行する対象機等のように、経路空間に近接していない状態から近接している状態に変化する対象機に関しては、近接開始位置および近接開始時刻を算出してもよい。以下の説明では、指定された経路と交差するように航行する対象機に関しては、関連情報算出部36が、その対象機がその経路と交差するときの位置および時間を算出する場合を例にする。
表示制御部37は、関連情報算出部36によって算出された情報も表示部38に表示させる。
検索部34、関連情報算出部36および表示制御部37は、例えば、コンピュータに従って動作するCPUによって実現される。例えば、CPUが、航空機状況表示プログラムを読み込み、そのプログラムに従って、検索部34、関連情報算出部36および表示制御部37として動作してもよい。また、検索部34、関連情報算出部36および表示制御部37が別々のハードウェアで実現されていてもよい。
次に、本発明の出力画面について説明する。図4は、本発明の出力画面(表示制御部37が表示部38に表示させる画面)の例を示す説明図である。出力画面内には、図4に例示する種々の領域やボタンが含まれる。以下、各領域および各ボタンについて説明する。
領域1,2,3は、管制官が指定する情報の入力欄に該当する領域である。検索部34は、領域1,2,3で指定された経路、高度範囲、および経路からの横間隔範囲によって規定される経路空間に近接する対象機を検索する。
領域1は、経路を特定可能な情報の入力欄に該当する。図4に示す例では、経路を特定可能な情報として、経路の識別情報を直接入力することもでき、あるいは、コールサインを入力することもできる。また、図4に示す例では、経路の識別情報やコールサインを指定するためのプルダウンメニューが領域1に含まれている。管制官は、プルダウンメニューにおいて経路の識別情報またはコールサインを選択することによって、経路を指定する。
領域2は、高度および時刻の入力欄に該当する。領域2で入力される時刻は、指定された範囲内の高度を航行する航空機の位置を、後述の領域7に表示する際、どの時点における位置を表示するかを指定する時刻である。以下、領域2に入力される時刻を指定時刻と記す。図4に示す例では、高度を指定するためのプルダウンメニューおよび指定時刻を選択するためのプルダウンメニューが領域2に含まれている。管制官は、領域2内の各プルダウンメニューによって、高度および指定時刻を指定する。
ただし、領域1でコールサインが指定された場合、検索部34は、そのコールサインによって、経路だけでなく、そのコールサインが示す航空機の高度も飛行計画情報から特定できる。従って、領域1でコールサインが指定された場合には、領域2において高度は指定されなくてよい。領域1でコールサインが指定され、領域2で高度が指定された場合、検索部34は、領域2で指定された高度を無視してよい。
領域3は、指定された高度を基準とする高度の範囲、および経路からの横間隔範囲の入力欄に該当する。すなわち、検索対象の航空機の高度の範囲、および経路からの横間隔範囲が領域3の入力欄に入力される。
入力欄3には、指定された高度からどれだけ低い高度を下限にするかを入力するプルダウンメニューと、指定された高度からどれだけ高い高度を上限にするかを入力するプルダウンメニューが含まれる。例えば、図4に例示するように、領域2で“300(30000FTを意味する。)”が指定されているとする。そして、図4に示すように、領域3で、高度の範囲として“0”〜“10”の範囲が指定されたとする。このことは、検索対象の高度の範囲が、“300”〜“310”であることを意味する。
また、入力欄3には、経路からの横間隔範囲を入力するプルダウンメニューも含まれている。図4に示す例では、領域3で、経路からの横間隔範囲が“25”が指定されている。本例では、領域3に入力される経路からの横間隔範囲の単位は、“NM(ノーティカルマイル)”であるものとする。
この場合、幅が50NMであり、高度範囲が“300”〜“310”である、経路に沿った空間が、経路空間として規定される。
ボタン6は、領域1,2,3で指定された経路、高度範囲、および経路からの横間隔範囲によって規定される経路空間に近接する対象機の検索開始を指示するためのボタンである。検索部34は、ボタン6がクリックされたことを検出すると、各飛行計画情報を用いて、飛行計画情報に対応する航空機が経路空間に近接するか否かを判定し、経路空間に近接する航空機(すなわち、経路空間内を通過する航空機)の飛行計画情報を全て検索し、それらの各航空機を特定する。ここで特定される航空機が対象機である。航空機が経路空間内を通過する距離や時間の長さがわずかであっても、検索部34は、その航空機を対象機として特定する。
領域9は、図3に示したグラフの表示欄である。表示制御部37は、横軸上にFIXの位置を定める。そして、表示制御部37は、検索された対象機の飛行計画情報を参照し、その対象機毎に位置および時刻の関係を、領域9のグラフ内に表す。図4に示す領域9内のグラフでは、経路上を航行する対象機と、経路と交差するように航行する対象機の移動状況が例示されている。
表示制御部37は、経路上を航行する対象機に関しては、FIXの位置およびそのFIXの通過時刻を座標値とする点を結ぶことで、対象機の移動状況を示す線を領域9のグラフ内に表す。この線は、対象機の通過位置および通過時刻の対応関係を表している。図4に例示する領域9では、経路上を航行する対象機の移動状況を表す線として5本の線が表示されている。この5本の線のうち、右上がりの3本の線は、経路を同じ方向に進む3機の対象機の移動状況を示す。また、左上がりの2本の線は、上記の3機と対面して経路を進む2機の対象機の移動状況を示す。また、線の傾きは、対象機の速度に依存する。傾きが小さいほど、対象機の速度が速いことを意味する。図4の領域9に示す例では、例えば、対象機“DEF001”よりも対象機“ABC003”の方が速いことが分かる。
また、表示制御部37は、経路と交差するように航行する対象機に関しては、その対象機が経路と交差するときの位置および時刻を座標値とする領域9のグラフ中の位置に、アイコン22を表示する。図4に例示する領域9では、経路と交差ように航行する対象機“JKL18 ”が経路と交差するときの位置および時刻を座標値とする位置に、アイコン22が表示されている。表示制御部37は、対象機“JKL18 ”が経路と交差するときの位置および時刻に代えて、対象機“JKL18 ”の近接開始位置および近接開始時刻を座標値とする位置に、アイコン22を表示してもよい。
また、図4に示す例では、アイコン22が、経路上を航行する対象機“GHI121”の移動状況を表す線上に表示されている。アイコン22は、必ずしも、経路上を航行する対象機の移動状況を表す線上に表示されるとは限らない。アイコン22と、経路上を航行する対象機の移動状況を表す線とが重なっている場合、経路上を航行する対象機と、アイコン22が表す対象機が、同時刻に同じ位置を通過することを意味する。また、アイコン22と、経路上を航行する対象機の移動状況を表す線とが重なっていない場合、経路上を航行する対象機と、アイコン22が表す対象機が、同じ位置を異なる時刻に通過することを意味する。
また、指定された経路に合流・分岐する対象機や、経路空間内で、指定された経路の近傍を航行する対象機もある。これらの対象機の移動状況の表示例については、後述する。
また、表示制御部37は、指定時刻を表すバー21を領域9のグラフ内に表示する。また、表示制御装置37は、バー21に対する管制官の操作に応じて、バー21の表示位置を縦軸に沿って変化させる。バー21により、指定時刻を変更することができる。例えば、図4では、領域2で指定時刻が10時に設定されているため、10時に該当する位置にバー21が表示されている。管制官の操作に応じて、表示制御部37がバー21の表示位置を変更した場合、バー21の変更後の位置に対応する時刻が指定時刻になる。なお、指定時刻は、航空機の位置を後述の領域7に表示する際、どの時点における航空機の位置を表示するかを定めるための時刻である。
また、FIXの位置を横軸に表し、時刻を縦軸に表したグラフ全体は、非常に大きくなる。表示制御部37は、そのグラフのうち、領域9に表示できる範囲を表示すればよい。また、表示制御部37は、領域9にグラフを表示した後、管制官のスクロール操作に応じて、領域9内のグラフを上下方向や、左右方向にスクロールしてもよい。
なお、図4に例示する領域9では、横軸に、0,200,400,600,・・・等の値を示している。これは、基準位置から各FIXまでの経路に沿った道のりを表している。領域9の横軸におけるFIXの具体的な位置は、横軸方向に延びる領域8に表示される。図4に例示する領域8では、各FIXの緯度および経度を表示しているが、表示制御部37は、領域8において、各FIXの識別情報を表示してもよい。また、図4の領域8に含まれる“FIX”ボタンがクリックされる毎に、表示制御部37は、緯度および経度によるFIXの表示と、識別情報によるFIXの表示とを切り替えてもよい。
領域7は、検索部34によって特定された各対象機の高度、および指定時刻における位置を表すグラフの表示欄である。領域7に表示されるグラフの縦軸は、高度を表している。図4に例示する領域7では、指定された経路を同じ方向に移動する3機の対象機“ABC003”,“DEF001”,“GHI121”が高度“310”を航行し、それらの対象機と対面して指定された経路を航行する2機の対象機“ABC006”,“MNO002”が高度“300”を航行していることを表している。
領域7に表示されるグラフの横軸は、領域9に示されるグラフの横軸と同一であり、FIXの位置を表している。表示制御部37は、領域9のグラフの横軸のFIXの位置、領域8に表示するFIXの位置、および領域7のグラフの横軸のFIXの位置を対応付けて、領域7,8,9を表示部38に表示させる。そして、表示制御部37は、領域7において、各対象機を表すアイコンを、指定時刻での位置および高度を座標値とする箇所に表示する。
また、前述のように、指定時刻は、管制官が領域9内のバー21を操作することで変更可能である。バー21が操作され、指定時刻が変更された場合には、表示制御部37は、変更後の指定時刻での位置および高度に対応する領域7内の各座標に、それぞれの対象機を表すアイコンを表示する。例えば、図4に示す状態からバー21が11時の位置に変更された場合、表示制御部37は、領域7において、11時における各対象機の位置および高度を座標値とする箇所に、それぞれの対象機を表すアイコンを表示する。
また、表示制御部37は、前述のアイコン22に対応するアイコン22aも、領域7に表示する。アイコン22aの横軸の座標は、アイコン22の横軸の座標と同一である。また、アイコン22aは、前述のアイコン22が示す対象機“JKL18 ”の高度に該当する位置に表示される。図4に示す例では、アイコン22aは、縦軸(高度)の座標“310”の位置に表示される。
拡大縮小操作バー10は、管制官が領域9内のグラフの拡大または縮小を指示するためのGUI(Graphic User Interface)である。表示制御部37は、拡大縮小操作バー10に対する管制官の操作に応じて、領域9内のグラフを拡大させたり縮小させたりする。また、表示制御部37は、領域9内のグラフの拡大縮小に合わせて、領域9のグラフの横軸のFIXの位置、領域8に表示するFIXの位置、および領域7のグラフの横軸のFIXの位置を対応させるように、領域7,8内の表示も更新する。
領域4は、管制官によってボタン6がクリックされた時刻の表示欄である。
終了ボタン5は、図4に例示する画面全体の表示の終了を指示するボタンである。終了ボタン5がクリックされると、表示制御部37は、図4に例示する画面全体(ウィンドウ全体)を終了する。
領域11は、関連情報算出部36に算出された情報の表示欄である。前述のように、関連情報算出部36は、例えば、対象機同士がすれ違ったり、対象機が経路と交差したりするときの位置および時刻を算出する。表示制御部37は、それらの位置や時刻を領域11に表示する。
図4に示す領域11の例では、“OPPOSITE”は、指定された経路を異なる高度で対面して航行する対象機同士のすれ違いを意味する。領域11の1行面の表示は、指定された経路を異なる高度で対面して航行する対象機“DEF001”,“ABC006”がすれ違う位置および時刻を表している。
また、図4に示す領域11の例では、“CROSSING”は、指定された経路を対象機が交差することを意味する。例えば、領域11の5行目は、対象機“JKL18 ”が経路と交差する位置および時刻を表している。
ボタン12は、領域11に表示された内容をより詳細に記述したテキスト情報を表示するウィンドウの起動ボタンである。ボタン12がクリックされると、表示制御部37は、図4に示す画面(ウィンドウ)とは別のウィンドウ表示部38に表示させ、その新規ウィンドウ内に、領域11に表示された内容をより詳細に記述したテキスト情報を表示させる。
次に、本発明の処理経過について説明する。図5は、本発明の航空機状況表示システム31の処理経過の例を示すフローチャートである。データ記憶装置32には、各航空機の飛行計画情報や、各経路の経路情報が予め登録されているものとする。
最初に、表示制御部37は、初期画面を表示部38に表示させる(ステップS1)。初期画面は、領域1,2,3(図4参照)に検索条件となる情報が何ら入力されておらず、領域7,8,9,11にグラフや情報が何ら表示されていない状態の画面である。
初期画面が表示されると、管制官は、入力部33を用いて、領域1,2,3に検索条件を入力する(ステップS2)。具体的には、領域1において、管制官が指定した経路を特定可能な情報(経路の識別情報、またはコールサイン)が入力される。また、領域2において、管制官が指定した高度および指定時刻が入力される。領域3において、指定された高度を基準とする高度の範囲、および経路からの横間隔範囲が入力される。
そして、ボタン6がクリックされると、検索部34は、飛行計画情報に対応する航空機が、指定された経路、高度範囲、および経路からの横間隔範囲によって規定される経路空間に近接するか否かを、各飛行計画情報を用いて判定する。そして、経路空間に近接する航空機の飛行計画情報を検索し、その飛行計画情報に対応する対象機を特定する(ステップS3)。
次に、関連情報算出部36は、対象機同士がすれ違ったり、対象機が経路と交差したりするときの位置および時刻等を算出する(ステップS4)。
次に、表示制御部37は、ステップS3で検索された各航空機の飛行計画情報およびステップS4で算出された情報を用いて、図4に例示する画面を生成し、その画面を表示部38に表示させる(ステップS5)。
ステップS5において、表示制御部37は、領域7,8,9における横軸上のFIXの位置を特定する。表示制御部37は、隣接するFIX間の距離を算出し、FIX間の距離を横軸に沿って累積加算しながら横軸上におけるFIXの位置を特定する。
そして、表示制御部37は、時刻を表す縦軸(領域9内のグラフの縦軸)を定め、横軸と縦軸とで定まる2次元面上で、ステップS3で特定された各対象機毎に、位置および時刻の関係を表示する(例えば、図4に示す領域9参照)。例えば、表示制御部37は、経路上を航行する対象機に関しては、FIXの位置およびそのFIXの通過時刻を座標値とする点を結ぶことで、対象機の移動状況を示す線を領域9のグラフ内に表す。また、例えば、表示制御部37は、経路と交差するように航行する対象機に関しては、その対象機が経路と交差するときの位置および時刻を座標値とする領域9のグラフ中の位置に、アイコン22を表示する。このとき、表示制御部37は、対象機の移動状況を示す線の近傍や、アイコン22の近傍に、コールサインを表示する。この結果、それらの線やアイコン22がどの対象機の移動状況を表しているかを管制官が把握できる
また、表示制御部37は、領域9のグラフに、指定時刻を変更するためのバー21も表示する。バー21の初期表示位置は、領域2で指定された指定時刻に対応する位置である。
なお、グラフ全体は、非常に大きくなる。表示制御部37は、そのグラフのうち、領域9に表示できる範囲を領域9に表示させる。
また、表示制御部37は、領域7内のグラフにおける縦軸として、高度を表す縦軸を定める。そして、表示制御部37は、ステップS3で検索された各対象機の情報を領域7に表示する。表示制御部37は、指定された経路を航行する対象機に関しては、その対象機の指定時刻における位置を算出し、その位置とその対象機の高度を座標値とする箇所に、航空機のアイコンを表示する。また、表示制御部37は、その対象機のアイコンの近傍に、コールサインも表示する。表示制御部37は、経路と交差するように航行する対象機に関しては、その対象機が経路を交差するときの時刻および高度を座標とする領域7内の位置に、アイコン22a(図4参照)を表示させる。
なお、指定された経路に合流・分岐する対象機や、経路空間内で、指定された経路の近傍を航行する対象機に関する情報も、領域9および領域7に表示される。これらの対象機の表示例については、後述する。
また、表示制御部37は、横方向に延びる領域8において、FIXに該当する位置にFIXの位置情報(緯度および経度)を表示する。表示制御部37は、領域8において、FIXに該当する位置にFIXの識別情報を表示させてもよい。
また、表示制御部37は、領域11に、ステップS4で算出された情報を表示する。
また、ステップS5で表示された画面(図4に例示する画面)上で、管制官による操作が行われた場合、表示制御部37は、その操作に応じて画面を更新する。
例えば、領域9内でバー21が操作され、指定時刻が変更された場合には、表示制御部37は、変更後の指定時刻での位置および高度に対応する領域7内の各座標に、それぞれの対象機を表すアイコンを表示する。すなわち、バー21の操作に連動して、領域7の表示が更新される。
例えば、領域9内のグラフを縦軸に沿ってスクロールする操作が行われた場合、表示制御部37は、その操作に応じて、領域9内のグラフを縦軸に沿ってスクロールする。
また、領域9内のグラフを横軸に沿ってスクロールする操作が行われた場合、表示制御部37は、その操作に応じて、領域9内のグラフを横軸に沿ってスクロールする。この場合、横軸の表示範囲が変化するので、表示制御部37は、領域7内のグラフおよび領域8の表示内容もスクロールする。
また、例えば、領域8内の“FIX”ボタンがクリックされると、表示制御部37は、緯度および経度によるFIXの表示と、識別情報によるFIXの表示とを切り替える。
また、例えば、拡大縮小操作バー10によって領域9内のグラフの拡大操作または縮小操作が行われる場合、表示制御部37は、その操作に応じて、領域9内のグラフを拡大または縮小させる。表示制御部37は、領域9のグラフの横軸のFIXの位置、領域8に表示するFIXの位置、および領域7のグラフの横軸のFIXの位置を対応させて、領域9の更新に合わせて、領域7,8も更新する。
また、ボタン12がクリックされると、表示制御部37は、表示部38に新たな画面(ウィンドウ)を表示させ、そのウィンドウ内で、領域11内に示した内容をより詳細に記述したテキスト情報を表示させる。
また、領域1,2,3において、新たに検索条件が入力された場合、航空機状況表示システム31は、ステップS2以降の処理を繰り返せばよい。
また、ステップS2で検索条件が入力され、検索条件が定められたとする。このとき、実際に航行している航空機の状況を反映して、データ記憶部32内の飛行計画情報が自動更新されてもよい。そして、飛行計画情報が自動更新されたときに、航空機状況表示システムが、ステップS3以降の処理を実行してもよい。
次に、指定された経路に合流・分岐する対象機の移動状況を領域7,9(図4参照)に表示する場合の表示例を説明する。図6は、指定された経路に合流・分岐する対象機の経路の例を示す模式図である。図6は、指定された経路61および、その経路に合流・分岐する対象機の経路62を上方から見た2次元の状態を示す模式図である。経路62に沿って航行する対象機は、経路空間内に入り(すなわち、近接状態となり)、合流点Pで経路61に合流する。そして、その対象機は、分岐点Qで、経路61から分岐し、経路空間から離れていく。
図7は、指定された経路に合流・分岐する対象機の移動状況の表示例を示す模式図である。図7では、図4に示す領域7,9に相当する領域のみを模式的に示している。表示制御部37は、領域9内において、合流点Pから分岐点Qまでの範囲内で、合流・分岐する対象機の位置および時刻の対応関係を示す線を表示すればよい。このとき、表示制御部37は、対象機が合流点Pを通過する時刻、および合流点Pの位置を座標値とする領域9内の箇所に、合流点を表すアイコン51を表示する。同様に、表示制御部37は、対象機が分岐点Qを通過する時刻、および分岐点Qの位置を座標値とする領域9内の箇所に、分岐点を表すアイコン52を表示する。また、表示制御部37は、指定時刻におけるその対象機の位置が、合流点Pから分岐点Qまでの範囲内に存在する場合に、その航空機のアイコンを領域7内に表示すればよい。そして、表示制御部37は、領域7内に、合流点を表すアイコン51aおよび分岐点を表すアイコン52aを表示する。領域7内のアイコン51a,52aの横軸の座標は、領域9内のアイコン51,52の横軸の座標と同一である。また、領域7内のアイコン51a,52aの縦軸の座標値は、対象機の高度である。
また、表示制御部37は、経路に合流・分岐する対象機の近接開始や近接終了を表すアイコンを領域7,9にそれぞれ表示してもよい。図6に示すように、経路に合流・分岐する対象機の近接開始位置をR2とする。また、R2から経路61への垂線の足をR1とする。同様に、その対象機の近接終了位置をS2とする。また、S2から経路61への垂線の足をS1とする。表示制御部37は、対象機が近接開始位置R2を通過する時刻に、その対象機がR1を通過するものとみなす。同様に、表示制御部37は、対象機が近接終了位置S2を通過する時刻に、その対象機がS1を通過するものとみなす。そして、表示制御部37は、対象機が近接開始位置R2を通過する時刻、およびR1を座標値とする領域9内の箇所に、近接開始を表すアイコン(図7において図示略)を表示してもよい。そして、表示制御部37は、対象機が近接終了位置S2を通過する時刻、およびS1を座標値とする領域9内の箇所に、近接終了を表すアイコン(図7において図示略)を表示してもよい。このとき、表示制御部37は、領域7にも、近接開始を表すアイコンや近接終了を表すアイコンを表示してもよい。領域7内のこれらのアイコンの横軸の座標は、領域9内のアイコンの横軸の座標と同一である。また、領域7内のアイコンの縦軸の座標値は、対象機の高度である。
次に、指定された経路の近傍を航行する対象機の移動状況を領域7,9(図4参照)に表示する場合の表示例を説明する。図8は、指定された経路の近傍を航行する対象機の経路の例を示す模式図である。図8は、指定された経路61および、その経路の近傍(経路からの横間隔範囲内)を航行する対象機の経路63を上方から見た2次元の状態を示す模式図である。経路63に沿って航行する対象機は、経路空間内に入り(すなわち、近接状態となり)、経路61の近傍を航行し、経路空間から離れていく。この対象機の近接状態開始位置をP2とし、近接状態終了位置をQ2とする。また、P2から経路61への垂線の足をP1とする。同様に、Q2から経路61への垂線の足をQ1とする。また、経路61において、P1,Q1間に存在するFIXをF1,F2とする。そして、F1を通る経路61の垂線と、経路63の交点をXとし、F2を通る経路61の垂線と、経路63の交点をYとする。
図9は、指定された経路の近傍を航行する対象機の移動状況の表示例を示す模式図である。表示制御部37は、この対象機が経路61上のP1からQ1までの範囲を通過するものとみなす。そして、表示制御部37は、この対象機が近接状態開始位置P2を通過するときの時刻を、P1の通過時刻とみなす。さらに、表示制御部37は、この対象機がXを通過するときの時刻を、FIX“F1”の通過時刻とみなし、この対象機がYを通過するときの時刻を、FIX“F2”の通過時刻とみなす。そして、表示制御部37は、この対象機が近接状態終了位置Q2を通過するときの時刻を、Q1の通過時刻とみなす。その上で、表示制御部37は、P1およびその通過時刻に対応する点、F1およびその通過時刻に対応する点、F2およびその通過時刻に対応する点、Q1およびその通過時刻に対応する点を結ぶことで、図9に示す領域9のように、この対象機の移動状況を表す線を表示する。経路61の近傍を航行する対象機の通過位置および通過時刻の対応関係をこの線が表しているとみなす。また、表示制御部37は、この対象機の近接開始を表すアイコン55、および近接終了を表すアイコン56も領域9内に表示する。表示制御部37は、P1およびその通過時刻に対応する箇所に、近接開始を表すアイコン55を表示し、Q1およびその通過時刻に対応する箇所に、近接終了を表すアイコン56を表示する。
そして、表示制御部37は、指定時刻が、P1の通過時刻(実際にはP2の通過時刻)からQ1の通過時刻(実際にはQ2の通過時刻)までの範囲に属している場合に、指定時刻にその対象機が存在しているとみなすことができる経路61上の位置にあわせて、領域7に対象機のアイコンを表示する。そして、表示制御部37は、領域7内に、近接開始を表すアイコン55aおよび近接終了を表すアイコン56aを表示する。領域7内のアイコン55a,56aの横軸の座標は、領域9内のアイコン55,56の横軸の座標と同一である。また、領域7内のアイコン55a,56aの縦軸の座標値は、対象機の高度である。
本発明によれば、出力画面の領域9(図4参照)で、FIXの位置を表す横軸と、時刻を表す縦軸によって定まる面内において、対象機の位置および時刻の関係を表示することによって、対象機の移動状況を表す。従って、単にある時刻の位置だけを示すのではなく、幅のある時間帯における対象機の移動状況を人間が認識しやすい態様で表示することができる。
また、対象機の移動状況を表す領域9内の線の傾きは、対象機の速度によって変化する。従って、管制官は、線の傾きから、どの対象機の速度が速いか等を直感的に把握することができ、同一経路を航行する複数の対象機のうち、どの対象機が先行する対象機に追い付くか等を容易に判断することができる。そして、同一経路を航行する複数の対象機のうち、後続の対象機が先行する対象機に追い付く場合、図4の領域9において、同方向に移動する対象機の移動状況を表す線が交差する。この交差部の座標によって、管制官は、後続の対象機が先行する対象機に追い付く時間帯や位置を容易に把握することができる。
また、同一経路を異なる高度で対面して航行する対象機の移動状況を示す線同士も交差する(図4に例示する領域9参照)。この交差部の座標によって、管制官は、同一経路を対面で航行する航空機同士がすれ違う時間帯や位置も容易に把握することができる。
また、航空機の航行範囲は広く、球体である地球の面に沿って移動する。そのため、2次元平面で表された地図に各航空機の位置を重畳する表示形式では、球体上の地図を2次元平面に修正した上で表示することになる。その結果、航空機の位置を的確に表しているとは言えない場合が生じる。一方、本発明では、FIX間の距離を累積することによって、各FIXを横軸上に表す。よって、横軸上のFIXの位置に歪み等はなく、領域9のグラフによって、航空機の移動状況を正確に表すことができる。
また、本実施形態では、表示制御部37は、領域9のグラフと合わせて、領域7のグラフも表示部38に表示させる。従って、管制官は、領域7のグラフによって、各対象機の高度を容易に把握することができる。また、管制官は、指定時刻における各航空機の位置も容易に把握することができる。さらに、管制官は、バー21の操作によって、指定時刻を変化させ、領域7のグラフを更新することができる。
また、本実施形態では、指定された経路を異なる高度で対面して航行する対象機同士がすれ違う位置および時刻や、対象機が経路を交差する位置および時刻等が領域11に表示される。従って、管制官は、その位置および時刻を確認することができる。
なお、データ記憶部32が記憶する飛行計画情報は、実際に航行する航空機に対して作成された情報でなくてもよい。例えば、データ記憶部32は、シミュレーションによって模擬的に作成された飛行計画情報を記憶してもよい。その場合であっても、航空機情報表示システム31の動作は、上記の実施形態と同様である。
また、図4は、出力画面の一例であり、出力画面のレイアウトは、図4に示す例に限定されない。例えば、各領域やボタンの配置等は、図4に示す出力画面と異なっていてもよい。
また、図4に示す全ての領域やボタンが表示されなくてもよい。ただし、表示制御部37は、少なくとも、検索条件の入力に必要な領域や、領域9のグラフを表示部8に表示させる。表示制御部37は、領域7のグラフも表示部8に表示させることが好ましく、さらに、領域11も表示部8に表示させることが好ましい。
次に、本発明の主要部について説明する。図10は、本発明の主要部を示すブロック図である。本発明の航空機状況表示システムは、表示制御部37と、表示部38とを備える。
表示部38は、ディスプレイ装置である。
表示制御部37は、航空機の経路上で定められている所定の通過点(例えば、FIX)の位置を表す横軸と、時刻を表す縦軸とによって規定される2次元面内に、航空機の位置および時刻の関係を示した第1のグラフ(例えば、図4に例示する領域9内のグラフ)を作成し、第1のグラフを表示部38に表示させる。
そのような構成によって、幅のある時間帯における航空機の移動状況を人間が認識しやすい態様で表示することができる。
また、表示制御部37は、航空機の経路上で定められている所定の通過点の位置を表す横軸と、航空機の高度を表す縦軸とによって規定される2次元面内に、指定された時刻における航空機の位置および高度を示した第2のグラフ(例えば、図4に例示する領域7内のグラフ)を作成し、第1のグラフとともに第2のグラフを表示部38に表示させることが好ましい。
表示制御部37は、第1のグラフ内に、時刻を指定可能なバー(例えば、バー21)を示し、そのバーによって時刻が指定された場合に、当該時刻における航空機の位置および高度を示した第2のグラフを作成することが好ましい。
また、各航空機の飛行計画を表す飛行計画情報を記憶する記憶部(例えば、データ記憶部32)と、経路、航空機の高度範囲、および経路からの横間隔範囲を指定された場合に、その経路、航空機の高度範囲、および経路からの横間隔範囲によって規定される空間内を通過する航空機の飛行計画情報を検索する検索部(例えば、検索部34)とを備え、
表示制御部37が、検索部によって検索された飛行計画情報に対応する航空機を対象にして、第1のグラフおよび第2のグラフを作成する構成であってもよい。
表示制御部37は、検索された飛行計画情報に対応する航空機のうち、指定された経路に沿って航行する航空機に関して、位置および時刻の対応関係を示す線を第1のグラフ内に表してもよい。
表示制御部37は、検索された飛行計画情報に対応する航空機のうち、指定された経路と交差する航空機に関して、航空機が経路と交差する時刻および位置を第1のグラフ内に表してもよい。
表示制御部37は、検索された飛行計画情報に対応する航空機のうち、指定された経路に合流し、当該経路から分岐する航空機に関して、合流位置から分岐位置までの範囲内で、位置および時刻の対応関係を示す線を第1のグラフ内に表してもよい。
表示制御部37は、検索された飛行計画情報に対応する航空機のうち、経路、航空機の高度範囲、および経路からの横間隔範囲によって規定される空間内に入り、その空間内で経路の近傍を航行し、その空間から離れる航空機に関して、空間内に入った時の位置(例えば、P2)の近傍の経路上の位置(例えば、P1)から、空間から離れた時の位置(例えば、Q2)の近傍の経路上の位置(例えば、Q1)までの範囲内で、位置および時刻の対応関係を示す線を第1のグラフ内に表してもよい。