以下、本発明の実施形態として、液体吐出装置をインクジェットプリンタに適用し、図面を参照しつつ説明する。
インクジェットプリンタ101は、図1に示すように、記録媒体である用紙Pを搬送する搬送機構20と、搬送機構20により搬送されている用紙Pに向けて、インクを吐出するヘッドユニット1、ヘッドユニット1へのインクの供給等を行うインク移送ユニット40、タッチパネル80(図5参照)、吸引パージ機構90(図2参照)、及びインクジェットプリンタ全体の制御を司る制御装置(制御手段の一例)100等を備えている。
搬送機構20は、2つのベルトローラ6、7と、両ローラ6、7間に架け渡されたエンドレスの搬送ベルト8とを有している。ベルトローラ7は、駆動ローラであって、図示しない搬送モータからの駆動力で回転する。ベルトローラ7が回転すると、搬送ベルト8が走行する。ベルトローラ6は、従動ローラであって、搬送ベルト8が走行するのに伴って回転する。搬送ベルト8の外周面に載置された用紙Pは、図1中下方へと搬送される。なお、本実施形態において、副走査方向とは搬送機構20による用紙Pの搬送方向と平行な方向であり、主走査方向とは副走査方向に直交する方向であって、水平面に沿った方向である。
ヘッドユニット1は、ヘッド保持板2、及び、6つのインクジェットヘッド(液体吐出ヘッド)3を備えている。ヘッド保持板2は、水平面と平行であり、且つ、主走査方向を長手方向とする略矩形の、金属材料などからなる板状体である。また、ヘッド保持板2には、6つの貫通孔5が形成されている。6つの貫通孔5は、それぞれ、主走査方向を長手方向とする略矩形の貫通孔であり、主走査方向に沿って千鳥状に配列されている。
6つのインクジェットヘッド3(以下、単にヘッド3と称す。)は、それぞれ、その下面である吐出面3a(図2参照)に複数の吐出口108(図4(a)参照)が開口しており、これら複数の吐出口108からインク(液体)を吐出する。この6つのヘッド3は、図2に示すように、吐出面3aが6つの貫通孔5から露出するように、ヘッド保持板2に取り付けられている。また、6つのヘッド3それぞれの吐出面3aは、搬送機構20の搬送ベルト8の上側ループの外周面と対向している。搬送機構20により用紙Pが6つのヘッド3の下方を通過する際に、各ヘッド3からインク滴が吐出され、用紙P上に所望の画像が形成される。
インク移送ユニット40は、ヘッド3に対してインクの供給等を行う。インク移送ユニット40は、図1に示すように、6つのヘッド3に対して1つ設けられている。吸引パージ機構90は、インク増粘等によってヘッド3の吐出特性が低下したときに、その性能を回復させるための機構である。インク移送ユニット40、及び吸引パージ機構90については、後で詳細に説明する。
次に、図2を参照しつつ、ヘッド3について詳細に説明する。図2に示すように、6つのヘッド3それぞれは、ヘッド本体9と、リザーバ(貯留室の一例)70とを有している。なお、主走査方向に隣り合うヘッド3は、図1に示すように一部が主走査方向に重なって配置されているが、図2(後で説明する図7も同様)においては説明の便宜のため、主走査方向に隣り合うヘッド3を主走査方向に関して離して表している。
リザーバ70は、ヘッド本体9の上面に固定されており、ヘッド本体9に供給されるインクを貯留する部材である。リザーバ70の上面は第1領域と、第1領域よりも鉛直方向に上方に位置する第2領域とを有しており、第1領域に流入口72が形成され、第2領域に排出口73が形成されている。リザーバ70は、流入口72を介して、インク移送ユニット40からインクが供給される。また、後述する排気パージ動作時においては、リザーバ70内のインクが、排出口73を介してインク移送ユニット40に排出される。
また、リザーバ70には、10個のインク流出流路75が形成されている。インク流出流路75は、ヘッド本体9の後述の流路ユニット11の上面11aに形成されたインク供給口105b(図3参照)に連通している。画像記録動作(液体吐出動作)時においては、インク移送ユニット40からのインクは、インク流出流路75を通過して、インク供給口105bから流路ユニット11に供給される。なお、図2においては、各ヘッド3それぞれにつき、1つのインク流出流路75のみが表れている。
次に、ヘッド3のヘッド本体9について図3及び図4を参照しつつ説明する。図4(a)では説明の都合上、アクチュエータユニット21の下方にあって破線で描くべき圧力室110、及び吐出口108を実線で描いている。ヘッド本体9は、図3に示すように、流路ユニット11、及び流路ユニット11の上面11aに固定された8つのアクチュエータユニット21を含んでいる。アクチュエータユニット21は、流路ユニット11に形成された複数の圧力室110に対向して設けられた複数の個別電極を含んでおり、圧力室110内のインクに選択的に吐出エネルギーを付与する機能を有する。
流路ユニット11は、9枚の矩形状金属プレート122〜130(図4(b)参照)が積層された積層体である。流路ユニット11の上面11aには、リザーバ70のインク流出流路75(図2参照)に連通する計10個のインク供給口105bが開口している。流路ユニット11の内部には、インク供給口105bを一端とする複数のマニホールド流路105、マニホールド流路105から分岐した複数の副マニホールド流路105a、及び副マニホールド流路105aに接続した多数の個別インク流路132からなる内部流路が形成されている。個別インク流路132は、流路抵抗調整用のアパーチャ112を含み、副マニホールド流路105aの出口から圧力室110を経て吐出口108に至る。流路ユニット11の上面11aには、複数の圧力室110がマトリクス状に配列されている。一方、流路ユニット11の下面である吐出面3aには、吐出口108が圧力室110に対応してマトリクス状につまり2次元的且つ規則的に配列されている。この吐出口108は、主走査方向に関して主走査方向の記録解像度である600dpiの間隔で配列されている。
次に、アクチュエータユニット21について説明する。アクチュエータユニット21は、各圧力室110に対向した複数のアクチュエータを含んでいる。各アクチュエータは、圧力室110内のインクに吐出周期(印刷周期)毎に選択的に吐出エネルギーを付与する。具体的には、アクチュエータユニット21は、強誘電性を有するチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)系のセラミックス材料からなる3枚の圧電シートから構成されている。各圧電シートは、いずれも複数の圧力室110に跨るサイズを有した連続平板である。最上層の圧電シート上における圧力室110に対向する位置のそれぞれには、個別電極が形成されている。最上層の圧電シートとその下側の圧電シートとの間にはシート全面にわたって共通電極が介在している。
共通電極は、すべての圧力室110に対応する領域において等しくグランド電位に保持されている。一方、個別電極には制御装置100から出力された駆動信号が、図示しないドライバICによってレベル変換された駆動パルスが選択的に入力される。このように、アクチュエータユニット21において、個別電極と圧力室110とで挟まれた部分が、個別のアクチュエータとして働く。このように、圧力室110の数と同数の複数のアクチュエータがアクチュエータユニット21に構成されている。
ここで、アクチュエータユニット21の駆動方法について述べる。アクチュエータユニット21は、圧力室110から最も離れた1枚の圧電シートを活性層とし、且つ残り2枚の圧電シートを非活性層とした、いわゆるユニモルフタイプのアクチュエータである。個別電極に駆動パルスが入力されることにより、これに対応する圧電シートが変形して圧力室110内のインクに圧力(吐出エネルギー)が付与され、吐出口108からインク滴が吐出される。
次に、図2を参照しつつ、インク移送ユニット40について詳細に説明する。インク移送ユニット40は、カートリッジ(第1液体タンク)50、排気タンク(第2液体タンク)51、廃液タンク52、インク流入管53、インク排出管54、インク供給管55、インク帰還管56、インク廃棄管57、バルブ61〜65、及びポンプ68を備えている。なお、カートリッジ50は、インクジェットプリンタ101の筐体に固定されたカートリッジホルダ25に対して交換可能に装着されている。また、廃液タンク52は、インクジェットプリンタ101の筐体に固定された廃液タンクホルダ26に対して交換可能に装着されている。
インク流入管53は、6つのヘッド3それぞれのリザーバ70と、排気タンク51における排気タンク51に貯留されるインクの液面よりも鉛直方向下方の位置とを連通する流路部材であり、6つの個別インク流入管53a、及び共通インク流入管53bを有している。共通インク流入管53bは、6つの個別インク流入管53aに共通の流路部材であり、排気タンク51に連通している。この共通インク流入管53bには、共通インク流入管53bの流路を閉塞する状態及び閉塞しない状態を選択的に切り替え可能なバルブ(第1バルブ)61が設けられている。
6つの個別インク流入管53aそれぞれは、6つのヘッド3のリザーバ70の流入口72に連通している。本実施形態においては、6つの個別インク流入管53aは、図2に示すように、共通インク流入管53bと、排気タンク51から最も距離が離れているヘッド3(図2中左端のヘッド3)のリザーバ70の流入口72とを連通する一つの個別インク流入管53aと、この個別インク流入管53aから分岐して、5つのヘッド3それぞれのリザーバ70の流入口72に至る5つの個別インク流入管53aからなる。変形例として、6つの個別インク流入管53aは、共通インク流入管53bから個々に分岐して6つのヘッド3それぞれのリザーバ70の流入口72に至るように構成されていてもよい。本実施形態においては、インク流入管53の流路が本発明の第3液体流路に相当する。
インク排出管54は、6つのヘッド3それぞれのリザーバ70と、排気タンク51における排気タンク51に貯留されるインクの液面よりも鉛直方向上方の位置とを連通する流路部材であり、6つの個別インク排出管54a、及び共通インク排出管54bを有している。共通インク排出管54bは、6つの個別インク排出管54aに共通の流路部材であり、排気タンク51に連通している。この共通インク排出管54bには、ポンプ(第1液体移送手段)68と、共通インク排出管54bの流路を閉塞する状態及び閉塞しない状態を選択的に切り替え可能なバルブ62が設けられている。
6つの個別インク排出管54aそれぞれは、6つのヘッド3それぞれのリザーバ70の排出口73に連通している。本実施形態においては、6つの個別インク排出管54aは、図2に示すように、共通インク排出管54bと、排気タンク51から最も距離が離れているヘッド3のリザーバ70の排出口73とを連通する一つの個別インク排出管54aと、この個別インク排出管54aから分岐して、5つのヘッド3それぞれのリザーバ70の排出口73に至る5つの個別インク排出管54aからなる。変形例として、6つの個別インク排出管54aは、共通インク排出管54bから個々に分岐して6つのヘッド3それぞれのリザーバ70の排出口73に至るように構成されていてもよい。本実施形態においては、インク排出管54の流路が本発明の第2液体流路に相当する。
インク供給管55は、インク流入管53の共通インク流入管53bにおける、バルブ61よりも個別インク流入管53a側の箇所と、カートリッジホルダ25に装着されたカートリッジ50とを連通している。このインク供給管55には、インク供給管55の流路を閉塞する状態及び閉塞しない状態を選択的に切り替え可能なバルブ63が設けられている。本実施形態においては、インク供給管55、及び個別インク流入管53aからなる流路が本発明の第1液体流路に相当する。
インク帰還管56は、カートリッジホルダ25に装着されたカートリッジ50と、排気タンク51における排気タンク51に貯留されるインクの液面よりも鉛直方向下方の位置とを連通している。このインク帰還管56には、インク帰還管56の流路を閉塞する状態及び閉塞しない状態を選択的に切り替え可能なバルブ(第2バルブ)64が設けられている。バルブ64は、後述するインク帰還動作のときのみ、インク帰還管56の流路を閉塞しない状態とさせるよう開弁される。本実施形態においてはインク帰還管56の流路が本発明の第4液体流路に相当する。
インク廃棄管57は、廃液タンクホルダ26に装着された廃液タンク52と、排気タンク51における排気タンク51に貯留されるインクの液面よりも鉛直方向下方の位置とを連通している。このインク廃棄管57には、インク廃棄管57の流路を閉塞する状態及び閉塞しない状態を選択的に切り替え可能なバルブ(第2液体移送手段の一例)65が設けられている。バルブ65は、後述するインク廃棄動作のときのみ、インク廃棄管57の流路を閉塞しない状態とさせるよう開弁される。
カートリッジ50には、6つのヘッド3に供給されるインクが貯留されている。また、カートリッジ50の上壁には、カートリッジ50内と大気とを連通する大気連通孔50aが形成されている。これにより、カートリッジ50内の気圧が、貯溜しているインクの量にかかわらず常に大気圧となり、安定したインク供給が可能となっている。
カートリッジ50の側壁には、第1センサ66が設けられている。第1センサ66は、カートリッジ50に貯留されているインクの貯留量を検出するセンサである。この第1センサ66は、カートリッジ50に貯留されているインクの貯留量を示す検出信号を、制御装置100に出力する。
また、カートリッジ50は、図2に示すように、吐出面3aよりも鉛直方向下方に配置されている。これにより、吐出口108近傍に形成されるインクメニスカスとカートリッジ50内のインクの液面とに水頭差が生じて、インクメニスカスのインク側が大気圧に比べ負圧となる。このときの負圧は、インクメニスカスが破壊されない程度に調整されている。
排気タンク51は、インクと気体と分離させるための気液分離用のタンクであり、6つのヘッド3に供給されるインクを一時的に貯溜する。後述の排気パージ動作時において、ヘッド3のリザーバ70からインク排出管54を経由した排気タンク51へのインク流れにより、リザーバ70内に存在するエアがインクとともに排気タンク51に排出される。そして、この排気タンク51において、排気タンク51に排出されたエアは、インクと分離されることとなる。これにより、排気タンク51からヘッド3に対してエアと分離されたインクのみをインク流入管53を介して供給することが可能となる。
排気タンク51の上壁には、排気タンク51内と大気とを連通する大気連通孔51aが形成されている。排気タンク51の側壁には、第2センサ67が設けられている。第2センサ67は、排気タンク51に貯留されているインクの貯留量を検出するセンサである。この第2センサ67は、排気タンク51に貯留されているインクの貯留量を示す検出信号を、制御装置100に出力する。
廃液タンク52は、インク廃棄管57を介して排気タンク51から排出された廃インクを貯留する。また、廃液タンク52の上壁には、廃液タンク52内と大気とを連通する大気連通孔52aが形成されている。
ここで、排気タンク51は、カートリッジ50、及び廃液タンク52よりも鉛直方向上方に配置されている。従って、インク帰還管56の流路を閉塞しない状態とさせるようバルブ64を開弁させることで、排気タンク51に貯留されているインクが、自重によりインク帰還管56を介してカートリッジ50に移送されることとなる。同様に、インク廃棄管57の流路を閉塞しない状態とさせるようバルブ65を開弁させることで、排気タンク51に貯留されているインクが、自重によりインク廃棄管57を介して廃液タンク52に移送されることとなる。
次に、吸引パージ機構90について詳細に説明する。吸引パージ機構90は、図2に示すように、6つのヘッド3それぞれの吐出面3aに吐出口108を囲んで密着可能な6つのキャップ部材91、廃液タンク92、6つのキャップ部材91それぞれと廃液タンク92とを連通する廃液管93、及び廃液管93に設けられたポンプ94等を備えている。
吸引パージ機構90は、画像記録動作時のときには、用紙Pと対向する領域よりも外側の待機位置に配置されており、ヘッド3の吐出特性を回復させるときに、メンテナンス位置に移動される。吸引パージ機構90は、メンテナンス位置に配置されると、6つのキャップ部材91それぞれが、対応するヘッド3の吐出面3aと対向して密着される。そして、キャップ部材91がヘッド3の吐出面3aの吐出口108を覆っている状態で、ポンプ94が駆動されることにより、吐出口108からインクが吸引されて排出される。これにより、水分が蒸発して粘度が高くなった(増粘した)吐出口108内のインクを吐出口108から排出する吸引パージ動作や、カートリッジ50を交換した際の、カートリッジ50内のインクをヘッド3内に導入する初期導入動作を行うことが可能となる。
次に、図5を参照しつつ、制御装置100について説明する。制御装置100は、CPU(Central Processing Unit)141と、ROM(Read Only Memory)142と、RAM(Random Access Memory)143と、ネットワークインターフェース144と、内部時計145とを有する。また、制御装置100は、ヘッド3、搬送機構20、インク移送ユニット40、第1センサ66、第2センサ67、タッチパネル80、吸引パージ機構90等の、インクジェットプリンタ101の様々な装置あるいは駆動部と接続されている。
ROM142には、インクジェットプリンタ101を制御するための制御プログラムであるファームウェアや各種設定が記憶されている。RAM143は、各種制御プログラムが読み出される作業領域として、あるいはデータを一時的に記憶する記憶領域として利用される。ネットワークインターフェース144は、PC150などの外部装置との間でデータ通信を行うためのインターフェースである。内部時計145は、直近の排気パージ動作(後述する)が行われたときからの経過時間を計測し、当該経過時間が所定時間を超えたときに、CPU141に対して、排気パージ動作の実行を促す第1信号を出力する。また、内部時計145は直近のインク補給動作(後述する)が行われたときからの経過時間を計測し、当該経過時間が所定時間を超えたときに、CPU141に対して、インク廃棄動作(後述する)の実行を促す第2信号を出力する。
CPU141は、ROM142に記憶された制御プログラムに従い、様々な処理を実行する。一例を挙げると、CPU141は、PC150から送信された印刷指令に従い、ヘッド3や搬送機構20等を制御して、用紙Pに画像を印刷する画像記録動作を行う。なお、CPU141は、この画像記録動作を行う際には、共通インク流入管53bの流路、インク排出管54の流路及びインク帰還管56の流路それぞれを閉塞する状態とさせるようバルブ61,62,64を閉弁させ(既に閉弁されている場合には閉弁された状態を維持する)、且つ、インク供給管55の流路を閉塞しない状態とさせるようバルブ63を開弁させる(既に開弁されている場合には開弁された状態を維持する)。これにより、吐出口108近傍に形成されるインクメニスカスとカートリッジ50のインク液面との水頭差により、インクメニスカスのインク側を確実に負圧にすることができる。その結果、ヘッド3のアクチュエータの駆動時以外において、吐出口108からインクが漏れ出ることを防ぐことができるので、吐出口108からインクを安定して吐出することが可能となる。
CPU141は、インク移送ユニット40、及び吸引パージ機構90を制御して、上述の吸引パージ動作、及び初期導入動作を行う。具体的には、CPU141は、まず、吸引パージ機構90を待機位置からメンテナンス位置に移動させる。そして、CPU141は、共通インク流入管53bの流路、及びインク排出管54の流路それぞれを閉塞する状態とさせるようバルブ61,62を閉弁させ(既に閉弁されている場合には閉弁された状態を維持する)、且つ、インク供給管55の流路を閉塞しない状態とさせるようバルブ63を開弁させる(既に開弁されている場合には開弁された状態を維持する)。その後、CPU141は、吸引パージ機構90のポンプ94を駆動させる。これにより、カートリッジ50に貯留されているインクが、インク供給管55、個別インク流入管53aを経由してヘッド3のリザーバ70に供給され、吐出口108からインクが排出されることとなる。この吸引パージ動作は、インクジェットプリンタ101の電源投入時や所定時間おきに行われる。また、初期導入動作は、カートリッジ50の交換時に行われる。
また、CPU141は、インク移送ユニット40を制御して、インク移送動作を行う。このインク移送動作には、インク補給動作、排気パージ動作(第1液体移送)、インク帰還動作、及びインク廃棄動作(第2液体移送)等が含まれる。
インク補給動作は、カートリッジ50に貯留されているインクを排気タンク51に補給する動作である。CPU141は、このインク補給動作を行う際には、まず、共通インク流入管53bの流路、インク帰還管56の流路、及びインク廃棄管57の流路それぞれを閉塞する状態とさせるようバルブ61,64,65を閉弁させ(既に閉弁されている場合には閉弁された状態を維持する)、且つ、インク排出管54の流路、及びインク供給管55の流路それぞれを閉塞しない状態とさせるようバルブ62,63を開弁させる(既に開弁されている場合には開弁された状態を維持する)。その後、CPU141は、ポンプ68を駆動させる。これにより、カートリッジ50に貯留されているインクが、インク供給管55、個別インク流入管53a、ヘッド3のリザーバ70、及びインク排出管54を経由して排気タンク51に補給されることとなる。このインク補給動作は、排気パージ動作を行う前において、第2センサ67により検出された排気タンク51に貯留されているインクの貯留量が、排気パージ動作に必要な貯留量(以下、排気パージインク量)未満の場合に行われる。
ここで、ヘッド3のリザーバ70に貯留されているインクは、経時によりインク中の水分が蒸発する。インク中の水分が蒸発すると、リザーバ70内には、蒸発した水分だけエアが生成される。このようなインク中の水分の蒸発等の原因により、リザーバ70内には、経時によりエアが存在することとなる。リザーバ70内にエアが存在すると、ヘッド3内の流路が閉塞されてヘッド3のインクの吐出特性が低下するため、リザーバ70内に存在するエアを除去する必要がある。排気パージ動作は、このリザーバ70内に存在するエアを排気タンク51に排出する動作である。CPU141は、この排気パージ動作を行う際には、まず、インク供給管55の流路、インク帰還管56の流路、及びインク廃棄管57の流路それぞれを閉塞する状態とさせるようバルブ63,64,65を閉弁させ(既に閉弁されている場合には閉弁された状態を維持する)、且つ、インク流入管53の流路及びインク排出管54の流路それぞれを閉塞しない状態とさせるようバルブ61,62を開弁させる(既に開弁されている場合には開弁された状態を維持する)。その後、CPU141は、ポンプ68を駆動させる。これにより、ヘッド3のリザーバ70に貯留されているインクが、排出口73からインク排出管54を経由して排気タンク51に排出された後、インク流入管53を経由して、流入口72からリザーバ70に再び戻されることとなる。つまり、排気タンク51と、ヘッド3のリザーバ70との間でインク循環が行われる。
また、このインク循環に伴い、ヘッド3のリザーバ70内のエアは、排出口73からインク排出管54を経由して排気タンク51に排出される。ここで、本実施形態では、排気タンク51は、カートリッジ50及びヘッド3のリザーバ70よりも鉛直方向上方に配置されているため、カートリッジ50及びヘッド3のリザーバ70よりも鉛直方向下方に配置されている場合と比べて、ヘッド3のリザーバ70の上部に存在するエアを容易に排気タンク51に排出することができる。その結果、ヘッド3のリザーバ70の上部に存在するエアを少ないエネルギー(ポンプ68の移送力)で排出することができる。加えて、上述したように、排出口73は、リザーバ70の上面において、流入口72が形成されている第1領域よりも、鉛直方向上方に位置する第2領域に形成されている。従って、リザーバ70内のエアは浮力により排出口73近傍に滞留されるので、上記インク循環により、リザーバ70内のエアを容易に排出口73から排出することができる。
排気パージ動作は、内部時計145から上記第1信号が出力されたときに行われる。これにより、ヘッド3のリザーバ70の上部に存在するエアが定期的に排出されるため、画像記録動作時において、吐出口108からインクを安定して吐出することができる。
インク帰還動作は、排気タンク51に貯留されているインクをカートリッジ50に供給する動作である。CPU141は、このインク帰還動作を行う際には、インク流入管53の流路、及びインク廃棄管57の流路それぞれを閉塞する状態とさせるようバルブ61,65を閉弁させ(既に閉弁されている場合には閉弁された状態を維持する)、且つ、インク帰還管56の流路を閉塞しない状態とさせるようバルブ64を開弁させる。これにより、排気タンク51に貯留されているインクが、自重によりインク帰還管56を介してカートリッジ50に供給される。このインク帰還動作は、画像記録動作を行う前において、第1センサ66により検出されたカートリッジ50に貯留されているインクの貯留量が、画像記録動作に必要な第1所定量未満の場合に行われる。さらに、このインク帰還動作は、第2センサ67により検出された排気タンク51に貯留されているインクの貯留量が、第2所定量以上の場合にも行われる。ここで、第2所定量とは、上記排気パージインク量よりも多い量である。
インク廃棄動作は、排気タンク51に貯留されているインクを廃液タンク52に排出する動作である。CPU141は、このインク廃棄動作を行う際には、インク流入管53の流路、及びインク帰還管56の流路それぞれを閉塞する状態とさせるようバルブ61,64を閉弁させ(既に閉弁されている場合には閉弁された状態を維持する)、且つ、インク廃棄管57の流路を閉塞しない状態とさせるようバルブ65を開弁させる。これにより、排気タンク51に貯留されているインクが、自重により廃液タンク52を介して廃液タンク52に排出される。このインク廃棄動作は、内部時計145から第2信号が出力されたときに行われる。これにより、排気タンク51に貯留されている、増粘等により劣化したインクを廃液として定期的に排出することができる。
次に、CPU141が実行する処理の一例について、図6を参照しつつ説明する。
まず、CPU141は、排気パージ動作の実行を促す上記第1信号が内部時計145から入力されたか否かを判断する(S1)。第1信号が入力されたと判断した場合(S1:YES)には、CPU141は、排気タンク51に貯留されているインクの貯留量が、排気パージインク量以上であるか否かを第2センサ67からの検出信号に基づき判断する(S2)。排気パージインク量以上であると判断した場合(S2:YES)には、ステップS6の処理に移る。
一方、排気パージインク量未満であると判断した場合(S2:NO)には、CPU141は、排気タンク51に貯留されているインクの貯留量を排気パージインク量以上とすべく、ポンプ68、及びバルブ61〜65を制御してインク補給動作を行う(S3)。これにより、カートリッジ50から排気タンク51へインクが補給される。
次に、CPU141は、インク補給動作により排気タンク51に貯留されているインクの貯留量が、排気パージインク量以上になったか否かを第2センサ67からの検出信号に基づき判断する(S4)。排気パージインク量以上であると判断した場合(S4:YES)には、ステップS6の処理に移る。一方、排気パージインク量未満であると判断した場合(S4:NO)には、カートリッジ50にインクが貯留されていないと判断して、カートリッジ50の交換を促す画面をタッチパネル80に表示させて(S5)、本処理を終了する。
ステップS6の処理では、CPU141は、排気タンク51とヘッド3のリザーバ70との間でインク循環を行うべく、ポンプ68、及びバルブ61〜65を制御して排気パージ動作を行う。これにより、ヘッド3のリザーバ70内に存在するエアがインクとともに排気タンク51に排出される。
次に、CPU141は、排気タンク51に貯留されているインクの貯留量が第2所定量以上か否かを第2センサ67からの検出信号に基づき判断する(S7)。第2所定量未満であると判断した場合(S7:NO)には、ステップS1の処理に戻る。一方、第2所定量以上であると判断した場合(S7:YES)には、CPU141は、排気タンク51に貯留されているインクの貯留量を第2所定量未満とすべく、バルブ61,64,65を制御してインク帰還動作を行う(S8)。これにより、排気タンク51に貯留されているインクが、カートリッジ50に供給される。このステップS8の処理が終了すると、ステップS1の処理に戻る。
ステップS1の処理において、内部時計145から第1信号が入力されていないと判断した場合(S1:NO)には、CPU141は、ネットワークインターフェース144を介してPC150から印刷指令を受信したか否かを判断する(S9)。印刷指令を受信したと判断した場合(S9:YES)には、CPU141は、カートリッジ50に貯留されているインクの貯留量が、画像記録動作に必要な第1所定量以上であるか否かを第1センサ66からの検出信号に基づき判断する(S10)。第1所定量以上であると判断した場合(S10:YES)には、ステップS13の処理に移る。
一方、第1所定量未満であると判断した場合(S10:NO)には、CPU141は、カートリッジ50に貯留されているインクの貯留量を第1所定量以上とすべく、バルブ61,64,65を制御してインク帰還動作を行う(S11)。これにより、排気タンク51に貯留されているインクが、カートリッジ50に供給される。次に、CPU141は、インク帰還動作によりカートリッジ50に貯留されているインクの貯留量が、第1所定量以上となったか否かを第1センサ66からの検出信号に基づき判断する(S12)。第1所定量未満であると判断した場合(S12:NO)には、カートリッジ50の交換を促す画面をタッチパネル80に表示させて(S5)、本処理を終了する。一方、第1所定量以上であると判断した場合(S12:YES)には、ステップS13の処理に移る。
ステップS13の処理では、CPU141は、受信した印刷指令に従い、ヘッド3や搬送機構20等を制御して、用紙Pに画像を印刷する画像記録動作を行う。このステップS13の処理が終了すると、ステップS1の処理に戻る。
ステップS9の処理において、印刷指令を受信していないと判断した場合(S9:NO)には、CPU141は、インク廃棄動作の実行を促す上記第2信号が内部時計145から入力されたか否かを判断する(S14)。第2信号が入力されていないと判断した場合(S14:NO)には、ステップS1の処理に戻る。一方、第2信号が入力されたと判断した場合(S14:YES)には、排気タンク51に貯留されているインクを廃棄すべく、バルブ61,64,65を制御して、インク廃棄動作を行う(S15)。これにより、排気タンク51に貯留されている増粘等により劣化したインクが、廃液タンク52に排出される。このステップS15の処理が終了すると、ステップS1の処理に戻る。以上、CPU141が実行する処理の一例について説明した。
以上のように、本実施形態のインクジェットプリンタ101によると、ヘッド3のリザーバ70に溜まったエアは、排気パージ動作によって、カートリッジ50よりも鉛直方向上方に設けられた排気タンク51に排出される。従って、カートリッジ50にエアが排出される構成よりも、少ないエネルギーでヘッド3内のエアを排出することができる。
また、画像記録動作時には、共通インク流入管53bの流路及びインク帰還管56の流路それぞれを閉塞する状態とさせるようバルブ61,64が閉弁されるので、吐出口108近傍に形成されるインクメニスカスとカートリッジ50のインク液面との水頭差により、インクメニスカスのインク側を確実に負圧にすることができる。その結果、吐出口108からインクを安定して吐出することができる。
また、ポンプ68及びバルブ61は、6つのヘッド3それぞれのリザーバ70に共通の、共通インク排出管54b及び共通インク流入管53bにそれぞれ設けられているので、これらをヘッド3毎に設ける必要がない。
また、排気タンク51に貯留されているインクは、インク帰還動作により、カートリッジ50に供給されるので、排気タンク51に貯留されているインクを画像記録動作用に利用することができる。また、排気タンク51に貯留されているインクが劣化した場合には、インク廃棄動作により、廃液タンク52に排出することができる。
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な変更が可能なものである。例えば、上述の実施形態においては、インク供給管55は、インク流入管53の共通インク流入管53bとカートリッジ50とを連通しているが、カートリッジ50と、6つのヘッド3それぞれのリザーバ70とを直接連通するように構成されていてもよい。
また、インク移送ユニット40における、上述の排気パージ動作を行うためのポンプ68が、共通インク排出管54bの代わりに、共通インク流入管53bに設けられていてもよい。
また、上述の実施形態では、排気タンク51は、ヘッド3のリザーバ70及びカートリッジ50よりも鉛直方向上方に配置されていたが、図7に示すように、カートリッジ50よりも鉛直方向上方であり、且つリザーバ70よりも鉛直方向下方に配置されていてもよい。この場合でも、排気パージ動作において、カートリッジ50にエアが排出される構成よりも、少ないエネルギーでヘッド3のリザーバ70内のエアを排出することができる。
また、上述の実施形態では、排気パージ動作時において、CPU141はポンプ68を駆動させるように構成されていたが、ポンプ68を駆動させずに、排気タンク51に貯留されているインクの自重により、排気タンク51からヘッド3のリザーバ70にインクを移送させることで、リザーバ70内のエアを、インク排出管54に排出してもよい。
また、上述の実施形態では、廃液タンク52は、排気タンク51よりも鉛直方向下方に配置されていたが、鉛直方向上方に配置されていてもよい。この場合、図7に示すように、インク廃棄管57にバルブ65の代わりに、ポンプ69を設ける。そして、インク流入管53の流路、及びインク帰還管56の流路それぞれを閉塞する状態とさせるようバルブ61,64を閉弁させた状態で、ポンプ69を駆動させることで、排気タンク51に貯留されているインクを廃液タンク52に排出することができる。この場合、ポンプ69が、本発明の第2液体移送手段に相当する。
上述の実施形態では、カートリッジ50をインクジェットプリンタ101の筐体に固定されたカートリッジホルダ25に対して交換可能に装着できる構成としているが、カートリッジ50をインクジェットプリンタ101の筐体に固定し、このカートリッジ50に補給するためのインクを貯留する別のカートリッジを設けてもよい。この場合、当該別のカートリッジは、インクジェットプリンタ101の筐体に固定されたカートリッジホルダに対して交換可能に装着できる構成とし、カートリッジ50はヘッド3に供給されるインクを一時的に貯留する、いわゆるサブタンクとして使用することになる。
上述の実施形態では、排気タンク51に貯留されているインクの貯留量が、排気パージインク量未満であると判断した場合、排気タンク51に貯留されているインクの貯留量を排気パージインク量以上とすべく、ポンプ68、及びバルブ61〜65を制御してインク補給動作を行い、その後、排気パージ動作を行う構成であるが、インク補給動作を行った場合は、ヘッド3のリザーバ70内に存在するエアがインクとともに排気タンク51に排出されている可能性があるので、排気パージ動作を省略したり、排気パージ動作の程度を軽く(排気パージ動作におけるポンプ68の駆動時間を少なくする)することが可能である。
本発明は、ライン式・シリアル式のいずれにも適用可能であり、また、プリンタに限定されず、ファクシミリやコピー機等にも適用可能であり、インク以外の液体を吐出させることで記録を行う液体吐出装置にも適用可能である。記録媒体は、用紙Pに限定されず、記録可能な様々な媒体であってよい。さらに、本発明は、インクの吐出方式にかかわらず適用できる。
また、上述の実施形態において、CPUが単一のCPUにより各処理を実行してもよいし、複数のCPU、あるいは特定のASIC(application specific integrated circuit)、CPUと特定のASICの組み合わせにより処理を実行してもよい。