JP2014195825A - はんだ付け用フラックス組成物およびそれを用いた電子基板 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】本発明のはんだ付け用フラックス組成物は、(A)ポリグリセリンと炭素数8〜12の脂肪酸とのエステル化合物と、(B)有機溶剤と、(C)シュウ酸とを含有することを特徴とするものである。
【選択図】なし
Description
一方で、はんだの鉛フリー化に伴い、高融点のはんだが用いられる傾向にある。特にパッケージ部品内に用いるはんだについては、パッケージ部品の搭載時における熱にも耐える必要があるため、さらに高融点のはんだが用いられる。また、高融点のはんだは溶融性を低いため、それを補うために、フラックス組成物の還元性を強めることが求められる。
すなわち、本発明のはんだ付け用フラックス組成物は、(A)ポリグリセリンと炭素数8〜12の脂肪酸とのエステル化合物と、(B)有機溶剤と、(C)シュウ酸とを含有することを特徴とするものである。
本発明のはんだ付け用フラックス組成物においては(E)親水性酸化防止剤を、さらに含有することが好ましい。
本発明のはんだ付け用フラックス組成物においては、前記(D)脂肪族アミンが、三級アミンであることが好ましい。
本発明のはんだ付け用フラックス組成物においては、前記(D)脂肪族アミンが、エチル基を有する脂肪族アミンであることが好ましい。
本発明のはんだ付け用フラックス組成物においては、前記(E)親水性酸化防止剤が、ヒドロキシル基を有するフェノール化合物であることが好ましい。
本発明の電子基板は、前記はんだ付け用フラックスを用いて作製されることを特徴とするものである。
すなわち、(A)ポリグリセリンと炭素数8〜12の脂肪酸とのエステル化合物は、加熱した際に、エステル化合物から脂肪酸が分離して活性剤として、はんだ付けに寄与する。そして、この(A)成分に(C)シュウ酸を組み合わせることで、基板などの金属の腐食を防止しつつ、十分な還元性を確保できる。また、(A)成分に(C)成分を組み合わせることで、従来よりも水洗浄性を向上させることができる。このようにして、本発明のはんだ付け用フラックス組成物では、はんだ付け温度が高い場合においても、フラックス残さを水洗により除去でき、金属の腐食を防止できるものと本発明者らは推察する。
そのため、フラックス残さを有機溶剤で洗浄する場合と比較して、火災の危険や、大気汚染への影響を低減できる。さらに、労働衛生上の問題も改善され、排水処理における管理負担も軽減できる。
本発明に用いる(A)エステル化合物は、ポリグリセリンと炭素数8〜12の脂肪酸とのエステル化合物である。
前記ポリグリセリンは、複数のグリセリンが重合した構造をもつものをいう。このポリグリセリンにおけるグリセリン単位の平均重合数は、フラックスの水洗浄性の観点から、6以上12以下であることが好ましく、8以上11以下であることがより好ましく、10であることが特に好ましい。
前記脂肪酸は、炭素数が8以上12以下のものであることが必要である。炭素数が前記範囲外である場合には、フラックスの水洗浄性が不十分となる。このような脂肪酸としては、例えば、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ラウリル酸が挙げられる。
本発明に用いる(B)有機溶剤は、沸点が120℃以上の有機溶剤であることが好ましい。沸点が前記下限未満では、高温ではんだ付けをする場合において、溶剤の揮発性が高すぎるために、フラックス組成物の水洗浄性が低下する。また、溶剤の揮発性の観点から、前記(B)成分の沸点は、200℃以上300℃以下であることが好ましく、230℃以上270℃以下であることがより好ましい。
本発明に用いる(C)シュウ酸は、水和物などであってもよく、例えば、シュウ酸二水和物が挙げられる。
前記(C)成分の配合量は、前記フラックス組成物100質量%に対して、0.05質量%以上15質量%以下であることが好ましく、0.1質量%以上10質量%以下であることがより好ましい。配合量が前記下限未満では、フラックス組成物の水洗浄性および活性作用が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えると、フラックスの絶縁性が低下する傾向にある。
本発明のフラックス組成物は、前記(A)成分〜前記(C)成分の他に、(D)脂肪族アミンをさらに含有することが好ましい。この(D)成分により、フラックス組成物の水洗浄性を更に向上できる。
本発明に用いる(D)脂肪族アミンは、アンモニアの水素原子を鎖式または環式の炭化水素で置換した化合物である。この脂肪族アミンは、一級から三級のいずれのアミンでもよいが、三級アミンであることが好ましい。また、この脂肪族アミンにおける炭化水素基は、通常、炭素数1〜10の炭化水素基であればよい。しかし、フラックス組成物の水洗浄性の観点から、この脂肪族アミンにおける炭化水素基は、炭素数1〜4の炭化水素基であることが好ましく、エチル基であることが特に好ましい。
本発明のフラックス組成物は、前記(A)成分〜前記(D)成分の他に、(E)親水性酸化防止剤をさらに含有することが好ましい。この(E)成分により、フラックス組成物の水洗浄性を更に向上できる。
本発明に用いる(E)親水性酸化防止剤としては、例えば、ヒドロキシル基を有するフェノール化合物(フェノール系酸化防止剤)が挙げられる。このフェノール系酸化防止剤としては、没食子酸、没食子酸エステル(没食子酸メチル、没食子酸エチル、没食子酸プロピル、没食子酸イソアミルなど)などが挙げられる。
高融点のはんだ組成としては、例えば、Au−Sn系、Au−Ge系、Pb−Sn系、Pb−Sn−Sb系、Pb−Sn−Sb−Bi系、Pb−Sn−Bi系、Pb−Sb系が挙げられる。
また、フラックス残さを水洗する際には、水を用いてもよく、温水を用いてもよい。フラックス残さを水洗する際の水温は、15℃以上100℃以下であればよいが、フラックス組成物の水洗浄性の観点から、50℃以上98℃以下であることがより好ましい。
((A)成分)
エステル化合物A:デカグリセリンモノラウリン酸エステル、商品名「ML−750」、阪本薬品工業社製
エステル化合物B:デカグリセリンモノカプリル酸エステル、商品名「MCA−750」、阪本薬品工業社製
((B)成分)
有機溶剤:トリエチレングリコールモノメチルエーテル、商品名「ハイモールTM」、東邦化学工業社製
((C)成分)
シュウ酸:シュウ酸二水和物、宇部興産社製
((D)成分)
脂肪族アミン:トリエチルアミン、ダイセル化学社製
((E)成分)
親水性酸化防止剤:没食子酸プロピル、商品名「GAPR」、岩手ケミカル社製
(他の成分)
コハク酸:コハク酸
モノカルボン酸:ミリスチン酸、東京化成工業社製
ハロゲン系活性剤A:ブチルアミン臭化水素酸塩
ハロゲン系活性剤B:エチルアミン塩酸塩
エステル化合物A80質量部、有機溶剤15.7質量部、シュウ酸0.5質量部、脂肪族アミン0.8質量部および親水性酸化防止剤3質量部を容器に投入し、らいかい機を用いて混合してフラックス組成物を得た。
表1に示す組成に従い各材料を配合した以外は実施例1と同様にして、フラックス組成物を得た。
[比較例1〜7]
表2に示す組成に従い各材料を配合した以外は実施例1と同様にして、フラックス組成物を得た。
フラックス組成物の特性(水洗浄性、腐食性、はんだ接合性、保存安定性、ピン転写性)を以下のような方法で評価した。実施例について得られた結果を表1に示し、比較例について得られた結果を表2に示す。
(1)水洗浄性
銀メッキ電極を有するセラミック板(大きさ:25mm×25mm、厚み:0.635mm)に、フラックス組成物を転写により塗布して試験片を得た。この試験片をリフロー炉(ピーク温度:320℃、300℃以上に40秒間保持、窒素雰囲気、酸素濃度:1000ppm以下)に投入し、はんだを溶融させた。加熱後の試験片を、温度60℃の水に15分間浸漬し、その後、温度80℃にて20分間乾燥する。得られた試験片を、走査型電子顕微鏡(SEM、日本電子社製の「JMS−5600」、加速電圧:1kV、2次電子像)にて観察し、下記の基準に従って、水洗浄性を評価した。なお、実施例1、実施例4、比較例1、比較例4および比較例5における試験片のSEM画像(50倍)を、それぞれ図1〜図5に示す。
◎:有機物残さがない(SEM画像(50倍)でも有機物起因の黒色部分がない)。
○:有機物残さが非常に少ない(SEM画像(50倍)では、有機物起因の黒色の濁り部分が一部にある。)。
△:有機物残さが少ない(SEM画像(50倍)では、有機物起因の黒色部分が一部にある。)。
×:有機物残さがある(目視で有機物起因の黒色部分がある。)。
(2)腐食性
上記水洗浄性の試験と同様の方法で作製した試験片を、走査型電子顕微鏡(SEM、日本電子社製の「JMS−5600」、加速電圧:1kV、2次電子像)にて観察し、下記の基準に従って、腐食性を評価した。
○:腐食がない(SEM画像(50倍)で白色部分がない。)。
×:腐食がある(SEM画像(50倍)で白色部分がある。)。
研磨処理した銅板(大きさ:50mm×50mm、厚み:0.5mm)に、メタルマスク(マスク厚:0.1mm、開口部の形:正方形、開口部の大きさ:0.5mm×0.5mm)を用いた印刷法により、所定量のフラックス組成物を銅板上に印刷した。その後、顕微鏡で確認しながら、フラックス組成物を印刷した箇所にはんだボールを搭載して試験片を得た。この試験片をリフロー炉(ピーク温度:320℃、300℃以上に40秒間保持、窒素雰囲気、酸素濃度:1000ppm以下)に投入し、はんだを溶融させた。加熱後の試験片を、目視にて観察し、下記の基準に従って、はんだ接合性を評価した。
○:接合性が良好である(はんだの不ぬれおよびはじけがない。)。
×:接合性が不良である(はんだの不ぬれおよびはじけの少なくとも一方がある。)。
(4)保存安定性
フラックス組成物を温度5℃にて30日間静置保管する。静置保管後のフラックス組成有物をスライドガラスに0.02g採取して、カバーガラスを載せ、光学顕微鏡でバックライトを当てて500倍で観察する。針状の検証物(結晶物)の有無を確認し、下記の基準に従って、保存安定性を評価した。
○:結晶物がない。
△:結晶物が僅かにある。
×:結晶物がある。
(5)ピン転写性
基板上にフラックス組成物を厚み15μmになるように塗布して塗膜を形成する。そして、針先(爪楊枝の針先、先端直径:0.2〜0.8mmφ、直径:1〜4mmφ、材質:木材)をこの塗膜に垂直に刺し、その後、この針先を別の基板上に垂直に置き、フラックス組成物の転写を試みる。フラックス組成物の転写の有無を目視にて観察し、下記の基準に従って、ピン転写性を評価した。
なお、針の材質は、フラックス組成物を多量に内部吸着しないものであれば、特に限定されず、竹材などの天然材料や、SUS304、SUS316などのステンレス鋼であってもよい。
○:転写が良好である。
△:若干転写が不足する。
×:転写しない。
これに対し、(C)成分を含まないフラックス組成物を用いた場合(比較例1〜7)には、はんだ付け温度が300℃を超える場合における水洗浄性が不十分であるか、或いは、金属の腐食を防止できないことが確認された。
Claims (7)
- (A)ポリグリセリンと炭素数8〜12の脂肪酸とのエステル化合物と、(B)有機溶剤と、(C)シュウ酸とを含有することを特徴とするはんだ付け用フラックス組成物。
- 請求項1に記載のはんだ付け用フラックス組成物において、
(D)脂肪族アミンを、さらに含有する
ことを特徴とするはんだ付け用フラックス組成物。 - 請求項1または請求項2に記載のはんだ付け用フラックス組成物において、
(E)親水性酸化防止剤を、さらに含有する
ことを特徴とするはんだ付け用フラックス組成物。 - 請求項2または請求項3に記載のはんだ付け用フラックス組成物において、
前記(D)脂肪族アミンが、三級アミンである
ことを特徴とするはんだ付け用フラックス組成物。 - 請求項2〜請求項4のいずれか1項に記載のはんだ付け用フラックス組成物において、
前記(D)脂肪族アミンが、エチル基を有する脂肪族アミンである
ことを特徴とするはんだ付け用フラックス組成物。 - 請求項3〜請求項5のいずれか1項に記載のはんだ付け用フラックス組成物において、
前記(E)親水性酸化防止剤が、ヒドロキシル基を有するフェノール化合物である
ことを特徴とするはんだ付け用フラックス組成物。 - 請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載のはんだ付け用フラックスを用いて作製されることを特徴とする電子基板。
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