JP2014194411A - 修飾電極、当該修飾電極の製造方法、当該修飾電極を備えるバイオ電池並びにバイオセンサー - Google Patents

修飾電極、当該修飾電極の製造方法、当該修飾電極を備えるバイオ電池並びにバイオセンサー Download PDF

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Yasuo Nakajima
泰夫 中嶋
Yuka Isezaki
由佳 伊勢崎
Tsuneaki Watanabe
恒暁 渡邊
Michihiro Mizoshita
倫大 溝下
Hiromitsu Tanaka
洋充 田中
Hirotaka Okamoto
浩孝 岡本
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    • Y02E60/50Fuel cells

Abstract

【課題】電子メディエータの固定残存率が高く、かつ長期間耐久性を有する電子メディエータ修飾電極の提供を目的とする。
【解決手段】カーボン基材に生体触媒との間の電子移動を媒介可能な電子メディエータを固定した修飾電極であって、電子メディエータが結合して重合性モノマーが形成され、当該重合性モノマーどうしをさらに重合して得られたポリマーが高分子化電子メディエータとしてカーボン基材に固定されている、修飾電極、当該修飾電極の製造方法、及び当該修飾電極を備えたバイオ電池並びにバイオセンサー。
【選択図】図1

Description

本発明は、修飾電極、当該修飾電極の製造方法、及び当該修飾電極を備えるバイオ電池並びにバイオセンサーに関するものである。
燃料電池は、水素等の燃料を酸素等の酸化剤で酸化することで、直接電気エネルギーを取り出す化学電池である。なかでもバイオ電池は、グルコース等の糖やアルコール等のバイオマスを燃料とし、また電極触媒として酵素や微生物等の生体触媒を利用するため、クリーンで安全、安価な次世代電源として注目されている。つまり、バイオ電池は、生体内のエネルギー変換系を応用した燃料電池であり、電極触媒として生体触媒を用いて、生体触媒による酸化還元反応と電極反応を共役させて電気エネルギーを取り出す発電装置である。また、バイオセンサーは、酵素等の生体物質が有する分子認識機構を応用し、バイオ電池と同様に生体反応を電極反応と共役させて電気信号に変換する感知装置である。バイオ電池及びバイオセンサーの開発において、酵素と電極間の効率的な電子移動が非常に重要である。
酵素の触媒活性を利用するバイオ電池の場合、負極では燃料が酵素によって酸化され、取り出された電子を電極に伝達する必要があるが、酵素の活性中心は絶縁性のタンパク質の殻や糖鎖に覆われているため、触媒電流として観測できるほど速く電極との間で電子移動を行うことは一般的に難しい。そのような場合、低分子の酸化還元分子を酵素と電極間の電子移動の電子メディエータとして利用し、酵素反応系と電極系を共役させている。このような電子メディエータを介して酵素と電極間の電子移動を行うタイプの酵素電極では、酵素の活性中心と電極とを導電体で接続するものではないため、最終的な電流値の大きさは、電極付近の電子メディエータ濃度に依存することとなる。すなわち、電流値の大きな電子メディエータ型酵素電極を構築するためには、電極近傍に電子メディエータを高濃度に局在させることが重要となる。かかる事情に鑑みて、様々な技術が報告されている。例えば、電極表面に酵素及び電子メディエータを固定することなく、溶液中に酵素及び電子メディエータ溶解させて反応させながら電極表面に到達するように構成することで大きな電流値が得られることが報告されている(特許文献1等を参照)。そして、電解液全体に電子メディエータを高濃度に溶解させることにより、大きな電流値を得ることができる。しかしながら、一般的に電子メディエータは高価であり、また、糖分等の燃料を含む電解液を交換及び補充さえすれば継続的に使用可能であるというバイオ電池の使用形態等を考慮すれば、溶液中に高濃度の電子メディエータを溶解しておくことは現実的ではないとの問題があった。
そこで、電子メディエータを溶液状態で反応に供するのではなく、電極近傍に高密度で存在するように電子メディエータを固定する技術が開発されてきた。例えば、シクロデキストリン、リポゾームやイオン性ポリマー内に電子メディエータを包摂する技術が報告されている(特許文献2、3等を参照)。特許文献2の技術は、シクロデキストリンを水性溶媒に溶解したシクロデキストリン溶液と、電子メディエータを懸濁した懸濁液とを混合させることにより、電子メディエータをシクロデキストリンに包摂するものである。しかしながら、シクロデキストリンは電極に固定されるものではないため、包摂される電子メディエータも固定されているとは言えない。また、特許文献3の技術は、リポゾーム内に電子メディエータを内包して固定するものであるが、電子メディエータはリポゾーム内に内包されている間は酸化還元反応を行わない。例えば、被検物質が抗原である場合に、測定試料中に含まれる被検物質と基板上に固定した被検物質−リポゾーム破壊因子接合体とが、抗体への結合で競合する。この免疫反応の結果、リポゾーム固定化部位に到達したリボゾーム破壊因子によりリポゾームが破壊された後、リポゾーム内に内包されていた電子メディエータが放出され酸化還元反応を開始するものである。したがって、特許文献2及び3の技術は、何れも電子メディエータが溶液中で自由拡散している状態で酸化還元反応を行うものであって、上記問題を解決するものではなかった。また、カーボン電極に結合したイオン性ポリマーの網目構造体内に電子メディエータを共存させる技術も報告されている(非特許文献1を参照)。しかしながら、非特許文献1の技術においても、電子メディエータは通常分子量が100〜700程度の低分子化合物であることから、長時間の持続使用を考慮した場合に、ポリマーの網目から電子メディエータが溶出し拡散していく事態が懸念され、かかる技術も上記問題を解決するものではなかった。また、電極からの電子メディエータの溶出は、例えば燃料電池のアノード側電極として組み込んだ場合に、アノード側の出力低下を招く。そして、それだけでなく、溶出した電子メディエータがカソード側とアノード側を隔てる隔膜等を透過してカソード側に移動し、カソード側の反応妨害の原因となって更なる出力低下を招くという問題もあった。
また、金電極上に形成されたシスタミン単分子層に電子メディエータを結合させることで電極に電子メディエータを固定する技術が報告されている(非特許文献2を参照)。詳細には、金電極上にシスタミン単分子層を形成し、そのアミノ基に電子メディエータとしてピロロキノリンキノン(PQQ)を結合させ、更にN-(2-アミノエチル)−フラビンアデニンジヌクレオチド(FAD)を反応させるものである。しかしながら、電極表面上に固定できる単位表面積当たりの電子メディエータ量は限られることから、電子メディエータの固定化密度の点で更なる改善が必要であった。
そこで、電極表面のポリマーの側鎖に電子メディエータを結合させる技術が開発されている(非特許文献3、4、及び特許文献4〜6等を参照)。非特許文献3の技術は、カーボンブラック表面上にグラフトさせたポリマーに電子メディエータとしてハイドロキノンを固定するものである。詳細には、アミド結合を介してハイドロキノンをポリアクリル酸骨格に固定する直接固定の他、アルキル側鎖やジ(エチレンオキシド)側鎖等のリンカーを用いて固定することが記載されている。しかしながら、ハイドロキノンはポリマーに結合しているものの、カーボン電極には結合されていないため、電極表面からハイドロキノンが溶出し拡散するとの問題点があった。非特許文献4の技術は、高分子ポリマーの側鎖に電子メディエータを共有結合し、さらに、平板電極上に固定する技術である。しかしながら、かかる技術では平板電極に対する固定化技術であるため、立体構造を有するカーボンフェルトのような三次元的な体積を有する電極基材への適用の可否については報告されていない。
また、特許文献4〜6にも、高分子ポリマーにペンダント状に電子メディエータが結合した高分子化電子メディエータが報告されている。詳細には、特許文献4には、疎水性ポリマー主鎖に親水性ポリマーを介して電子メディエータを結合させるものであり、これを電極基材の表面に吸着させた電子メディエータ固定化電極が開示されている。特許文献5には、イオン部分を有する親水性ポリマー主鎖に共有結合等を介して電子メディエータを結合させ、これをカーボン電極等に吸着させた電子メディエータ固定化電極が開示されている。特許文献6には、ポリビニルイミダゾール等の高分子材料の高分子鎖に電子メディエータを結合させ、これを溶媒に分散させた溶液と酸化還元酵素溶液を、架橋試薬とともに電極基材上に塗布することにより作製した高分子化電子メディエータ固定化電極が開示されている。しかしながら、かかる技術は、電子メディエータ分子等の固定化される分子の機能変化についての言及はなく、特に、酵素触媒電流の低下等の問題については何ら議論されていない。また、高分子ポリマーと電子メディエータ間を連結するリンカーの鎖長についての言及もなされておらず、これらが電子メディエータ分子の機能変化に与える影響についても不明であった。特に、特許文献5の技術は親水性ポリマーを利用するものであることから、疎水性のカーボン電極への固定化安定性が劣り、電子メディエータの溶出による電極機能低下を招く可能性を否定できない。また、特許文献6の技術は、高分子化電子メディエータと酸化還元酵素とを架橋試薬を利用することにより、電極基材上に固定化している。そのため、架橋固定が電子メディエータ及び酸化還元酵素分子の機能変化を招く可能性があった。
特開2004−233289号公報(特願2003−24754号) 特開2010−54379号公報(特願2008−220418号) 特開平8−327582号公報(特願平8−132286号) 特開2006−78468号公報(特願2005−216928号) 特開2006−131893号公報(特願2005−284816号) 特開2008−96352号公報(特願2006−28067号)
Sakai H., Nakagawa T., Tokita Y., Hatazawa T., Ikeda T., Tsujimura S., Kano K.著、2009年、"A High-Power Glucose/Oxygen Biofuel Cell Operating under Quiescent Conditions"、Energy & Environmental Science、2、133〜138 Willner I., Heleg-Shabtai V., Blonder R., Katz E., Tao G. 著、1996年、"Electrical Wiring of Glucose Oxidase by Reconstitution of FAD-Modified Monolayers. Assembled onto Au-Electrodes."、Journal of American Chemical Society、118、10321〜10322 Tamaki T., Ito T., Yamaguchi T.著、2007年、"Immobilization of Hydroquinone Through a Spacer to Polymer Grafted on Carbon Black for a High-Surface-Area Biofuel Cell Electrode."、 The journal of physical chemistry. B." Journal of Physical Chemistry B. 111(34)、10312〜10319. Ohara TJ., Rajagopalan R., Heller A.著、1994年、""Wired" Enzyme Electrodes for Amperometric Determination of Glucose or Lactate in the Presence of Interfering Substances."、Analytical Chemistry、66(15)、2451〜2457
電子メディエータを介して酵素と電極間の電子移動を行うタイプの酵素電極をバイオ電池やバイオセンサーの電極として実用化を進めるためには、電子メディエータが耐久性をもって、安定的にその機能を発揮し得るような技術の構築が求められていた。このような技術の構築は、バイオ電池の安定的な出力向上やバイオセンサーの感度向上等につながり、当該分野における技術発展を促進する。そこで、本発明は、電子メディエータの固定残存率が高く、かつ長期間耐久性を有する電子メディエータ修飾電極の提供を目的とする。また、電子伝達効率の更なる向上を図ることをも目的とする。そして、当該電子メディエータ修飾電極を酵素の触媒活性を利用したバイオ電池用電極として構築した際に、酵素触媒電流の更なる向上を図ることを目的とする。
そこで、本発明者らは上記目的を達成するべく、鋭意研究を行った結果、電子メディエータをポリマーに導入した高分子化電子メディエータをカーボン基材に固定することにより、電子メディエータの高い固定残存率及び長期間耐久性を示し、安定して酸化還元能及び電子伝達能を発揮することができる修飾電極を構築できることを見出した。そして、かかる修飾電極を利用することにより、長時間耐久性の面で優れたバイオ電池やバイオセンサーを構築できることを見出した。また、高分子化電子メディエータの合成を含めた修飾電極の製造過程の好適化を図ることに成功した。これらの知見に基づいて本発明を完成するに至った。
即ち、以下の〔1〕〜〔17〕に示す発明を提供する。
〔1〕 カーボン基材に前記カーボン基材と生体触媒との間の電子移動を媒介可能な電子メディエータを固定した修飾電極であって、
電子メディエータが結合して重合性モノマーが形成され、当該重合性モノマー同士をさらに重合して得られたポリマーが高分子化電子メディエータとして前記カーボン基材に固定されている、修飾電極。
〔2〕前記電子メディエータが、フェナジン系化合物である。
〔3〕前記フェナジン系化合物の主骨格が、1-メトキシ-5-メチルフェナジニウム塩、5-メチルフェナジニウム塩、及び5-エチルフェナジニウム塩から選択される。
〔4〕前記電子メディエータと前記重合性モノマーが、2〜6個の炭素原子及び1〜2個の酸素原子を任意の順序で結合させた直鎖のリンカー部位を介して結合されている。
〔5〕前記高分子化電子メディエータが、前記電子メディエータを結合したビニルモノマーを重合したものであって、前記ビニルモノマーにはアクリル酸、スチレン、ビニルエーテル、アクリルアミド、メタクリル酸のうちの1つ以上を選択して使用する
〔6〕前記高分子化電子メディエータが下記一般式(1)で表される。
Figure 2014194411
(1)
CD47A
〔式中、n=5〜1000、R1=アルキル基、アリール基、又はアルキルエーテル基、R2=炭素数2〜11のアルキル鎖、R3=水素又はアルキル基である。〕
〔7〕前記高分子化電子メディエータが、前記電子メディエータを結合したアクリル酸モノマーとスチレン或いは芳香族系ビニルポリマーを重合比20:1〜1:5で重合したものである。
〔8〕前記高分子電子メディエータが、下記一般式(3)で表される。
Figure 2014194411
(3)
CD74A
〔式中、n:m=20:1〜1:5(モル比)、R1=アルキル基、アリール基、又はアルキルエーテル基、R2=炭素数2〜11のアルキル鎖、R3=水素又はアルキル基である。〕
〔9〕前記高分子化電子メディエータが、シロキサン構造を有するポリマーに前記電子メディエータを結合したものである。
〔10〕前記高分子電子メディエータが、下記一般式(4)で表される。
Figure 2014194411
(4)
〔式中、X=0.05〜1(モル比)、R1=アルキル基、アリール基、又はアルキルエーテル基、R2=炭素数2〜11のアルキル鎖、R3=水素又はアルキル基、R4=アルキル基(炭素数2〜18)、フェニル基、ハロゲン化アルキル基(炭素数2〜18)、ヒドロキシアルキル基(炭素数2〜18)、又はビニル基(但し、全てが同一でなくてもよい)である。〕
〔11〕前記高分子化電子メディエータの固定が吸着結合による。
〔12〕バイオ電池のアノード側電極又はバイオセンサー用電極である。
〔13〕(a)電子メディエータを結合させて重合性モノマーを形成し、この重合性モノマーを重合して高分子化電子メディエータとしてのポリマーを合成する工程、(b)前記高分子化電子メディエータをカーボン基材に固定する工程、を有する修飾電極の製造方法。
〔14〕前記電子メディエータが、環構成原子として窒素原子を含む複素環骨格を有する化合物であって、前記窒素原子が置換基により置換されている構造を有する場合には、前記工程(a)において、前記電子メディエータを結合させた重合性モノマーの重合後の最終段階で前記窒素原子の置換を行う。
〔15〕前記窒素原子の置換に際して、前記電子メディエータを結合させた重合性モノマーの重合によって作製される高分子ポリマー中間体が官能基を有する場合、前記官能基がハロゲノ基、芳香族炭化水素基、エステル基、エーテル基、及びカルボキシル基から選択される。
〔16〕前記電子メディエータが、1-メトキシ-5-メチルフェナジニウムメチルスルファート、5-メチルフェナジニウムメチルスルファート、及び5-エチルフェナジニウムメチルスルファートから選択される。
〔17〕前記工程(b)において、前記固定が吸着結合による。
〔18〕本発明の修飾電極をアノード側電極として備えるバイオ電池。
〔19〕本発明の修飾電極を備えるバイオセンサー。
上記〔1〕〜〔12〕の構成によれば、電極基材と電極触媒である酵素等の生体触媒間の電子移動を媒介できる修飾電極を提供することができる。本発明の修飾電極は、使用に際して、電子メディエータの高い固定残存率及び長期間耐久性を示し、安定して酸化還元能及び電子伝達能を発揮することができる。また、本発明の修飾電極は、電子メディエータを高密度に電極基材上に固定できるものであるから、酸化還元能及び電子伝達能の向上を期待できる。そして、本発明の修飾電極は、バイオ電池やバイオセンサーの電極として好適に利用することができる。特に長時間耐久性の面で優れたバイオ電池やバイオセンサーを構築でき、様々な産業分野に利用することができる。
特に、上記〔2〕及び〔3〕の構成によれば、酸化還元能及び電子伝達能に優れたフェナジン系化合物を高分子化電子メディエータとして利用することにより、本発明の修飾電極の更なる機能の増強を図ることができる。
上記〔4〕の構成によれば、電子メディエータとポリマー間の距離を好適化することができる。これにより、本発明の修飾電極の有する酸化還元能及び電子伝達能の更なる増強を図ることができる。そして、当該電子メディエータ修飾電極を酵素の触媒活性を利用したバイオ電池用電極として構築した際に、電池電圧の低下を防止し、酵素触媒電流の更なる向上を図ることができる。
上記〔5〕及び〔6〕の構成によれば、アクリル基重合型の高分子化電子メディエータポリマーとすることにより、本発明の修飾電極の高い固定残存率及び長期間耐久性の更なる向上を図ることができる。特に、アクリル基をはじめとするビニル系ポリマーは、表面処理を行わずともカーボン基材に吸着結合により固定することからも、高い固定残存率及び長期間耐久性を発揮することができる。
上記〔7〕及び〔8〕の構成によれば、アクリル基に加えてπ−π相互作用を有するスチレン基を含めて重合することにより、本発明の修飾電極の高い固定残存率及び長期間耐久性の更なる向上を図ることができる。
上記〔9〕及び〔10〕の構成によれば、シロキサン構造を有するポリマーの主鎖に電子メディエータを導入して高分子化電子メディエータ(以下、「シロキサン主鎖高分子化電子メディエータ」と称する場合がある)とすることにより、本発明の修飾電極の高い固定残存率及び長期間耐久性の更なる向上を図ることができる。特に、シロキサン構造体は疎水性であるため疎水性電極基材への吸着安定性に優れている。これにより、シロキサン主鎖高分子化電子メディエータを固定した本発明の修飾電極は物理刺激及び電気刺激に対する安定性が向上する。それと共に、シロキサン構造体は柔軟性を有するため、固定された電子メディエータの電子酸化還元能力の発揮において有利である。したがって、電子メディエータ等の固定化した分子の機能変化を生じさせることなく、その電子伝達機能を十分に発揮し、かつ向上できる修飾電極を提供できる。
上記〔11〕の構成によれば、装置やカーボン基材の表面修飾等の複雑な工程を経ずに簡便に高分子化電子メディエータを固定化した本発明の修飾電極を提供することができる。また、吸着結合は柔軟な固定方法であるとの利点をも有する。そして、吸着結合は固定がゆるやかであるが、高分子化電子メディエータとして基材に吸着結合により固定することにより、本発明の修飾電極は高い固定残存率及び長期間耐久性を更に向上させ得ることができる。
上記〔12〕の構成によれば、本発明の修飾電極をバイオ電池のアノード側電極として、また、バイオセンサーの電極として提供することができる。そして、本発明の修飾電極は高い固定残存率及び長期間耐久性を有することから、かかる修飾電極を備えることにより、長時間に亘って安定的な発電が可能な耐久性に優れたバイオ電池の構築、また長期に亘って測定可能な耐久性に優れたバイオセンサーの構築に貢献することができる。
上記〔13〕〜〔17〕の構成によれば、電極基材と電極触媒である酵素等の生体触媒間の電子移動を媒介できる修飾電極の製造方法を提供することができる。本発明の修飾電極の製造方法で製造される修飾電極は、使用に際して、電子メディエータの高い固定残存率及び長期間耐久性を示し、安定して酸化還元能及び電子伝達能を発揮することができる。また、本発明の修飾電極の製造方法で製造される修飾電極は、電子メディエータを高密度に電極基材上に固定できるものであるから、酸化還元能及び電子伝達能の向上を期待できる。
特に、上記〔14〕の構成によれば、N-メチルフェナジン骨格等の、環構成原子として窒素原子を含む複素環骨格を有する化合物であって、前記窒素原子が置換基により置換されている構造を有する電子メディエータの高分子化を図る際に、前記電子メディエータを結合させた重合性モノマーの重合後の最終段階で前記窒素原子の置換を行うことにより、電子メディエータの骨格を崩すことなく、電子メディエータの高分子化を図ることができる。したがって、このように構成することにより、高い固定残存率及び長期間耐久性に特徴付けられ、酸化還元能及び電子伝達能の向上が期待される本発明の修飾電極を提供することができる。
上記〔15〕の構成によれば、前記窒素原子の置換に際して、前記電子メディエータを結合させた重合性モノマーの重合によって作製される高分子ポリマー中間体が官能基を有する場合、それをハロゲノ基や芳香族炭化水素基、エステル基、エーテル基、カルボキシル基等とすることにより、電子メディエータの骨格を崩すことなく、電子メディエータの高分子化を図ることができる。一方、極性の強いアミド基やアルコール基等が分子内に存在することは好ましくない。したがって、このように構成することにより、高い固定残存率及び長期間耐久性に特徴付けられ、酸化還元能及び電子伝達能の向上が期待される本発明の修飾電極を提供することができる。
上記〔16〕の構成によれば、酸化還元能及び電子伝達能に優れたフェナジン系化合物を高分子化電子メディエータとして利用した修飾電極の製造方法を提供することができる。
上記〔17〕の構成によれば、装置やカーボン基材の表面修飾等の複雑な工程を経ずに簡便に高分子化電子メディエータを固定化した本発明の修飾電極の製造方法を提供することができる。
上記〔18〕の構成によれば、高い固定残存率及び長期間耐久性を有する本発明の修飾電極を備えたバイオ電池を提供することができる。そして、本発明のバイオ電池は、長時間に亘って安定的に発電可能な耐久性に優れた効果を発揮することができ、高性能で実用性の高いバイオ電池の構築に貢献することができる。
上記〔19〕の構成によれば、高い固定残存率及び長期間耐久性を有する本発明の修飾電極を備えたバイオセンサーを提供することができる。そして、本発明のバイオセンサーは、長時間に亘って安定した測定が可能な耐久性に優れた効果を発揮することができ、高性能で実用性の高いバイオセンサーの構築に貢献することができる。
図1は、高分子化電子メディエータの合成検討(予備検討1)を行った実施例1の結果を示す図であり、ハイドロメタレーション反応による官能基を有するオレフィンの結合を検討した結果を示す。 図2は、高分子化電子メディエータの合成検討(予備検討1)を行った実施例1の結果を示す図であり、メタセシス反応による官能基を有するオレフィンの結合を検討した結果を示す。 図3は、高分子化電子メディエータの合成検討(予備検討2)を行った実施例2の結果を示す図であり、低分子モデル化合物を用いてN-メチル化条件を検討した結果を示す。 図4は、高分子化電子メディエータの合成検討(アクリル基重合型)を行った実施例3で検討した合成反応スキームを示す図であり、アクリル基重合型の高分子化mPMSの合成反応スキームを示す。 図5は、高分子化電子メディエータの合成確認を行った実施例4の結果を示すグラフであり、実施例3で合成したアクリル基重合型の高分子化mPMSの合成確認の結果を示すH-NMRスペクトルの変化を示す。 図6は、高分子化電子メディエータの合成確認を行った実施例4の結果を示すグラフであり、実施例3で合成したアクリル基重合型の高分子化mPMSの合成確認の結果を示す吸収スペクトルの変化を示す。 図7は、高分子化電子メディエータの酸化還元能の評価を行った実施例5の結果を示すグラフであり、実施例3で合成したアクリル基重合型の高分子化mPMSの酸化還元能の評価を行った結果を示す。 図8は、高分子化電子メディエータの電極基材への導入検討(予備検討)を行った実施例6で検討した電極基材の表面修飾反応スキームを示す図であり、p-ジアミノベンゼン塩酸塩及びp-アミノ安息香酸による電極基材の表面修飾の反応スキームを示す。 図9は、高分子化電子メディエータの電極基材への導入検討を行った実施例7で検討した共有結合による電極基材への高分子電子メディエータの導入反応スキームを示す。 図10は、高分子化電子メディエータの合成検討(スチレン基重合型)を行った実施例8で検討した合成反応スキームを示す図であり、スチレン基重合型の高分子化mPMSの合成反応スキームを示す。 図11は、高分子化電子メディエータ固定化電極の評価(酸化還元能力)を行った実施例9の結果を示すグラフであり、横軸は電位(V)を、横軸は電流(A)を示す。 図12は、高分子化電子メディエータ固定化電極の評価(酸化還元能力)を行った実施例9の結果を示すグラフであり、図11を拡大したグラフである。 図13は、高分子化電子メディエータ固定化電極の安定性評価(洗浄)を行った実施例10の結果を示すグラフであり、横軸は洗浄回数を、縦軸は所定回数の洗浄後に電極上に吸着結合により固定されている電子メディエータ量(μg)を示す。 図14は、高分子化電子メディエータ固定化電極の安定性評価(電位走査)を行った実施例11の結果を示すグラフであり、横軸は電位走査時間(時)を、縦軸は所定の電位走査時間経過後に電極上に吸着結合により固定されている電子メディエータ量(μg)を示す。 図15は、高分子化電子メディエータ固定化電極を備えた電池セルの長時間耐久性評価を行った実施例12の結果を示すグラフであり、縦軸は電圧が330mV以下になるまでの時間(時)を示す。 図16は、高分子化電子メディエータ固定化電極を備えた電池セルの長時間耐久性評価を行った実施例12において検討を行った電池セルの模式図 図17は、シロキサン主鎖高分子化電子メディエータの合成検討を行った実施例13で検討した合成反応スキームを示す図であり、シロキサン主鎖に導入するmPMS前駆体の合成スキームを示す。 図18は、シロキサン主鎖高分子化電子メディエータの合成検討を行った実施例13で検討した合成反応スキームを示す図であり、シロキサン主鎖にmPMSを導入する合成反応スキームを示す。 図19は、シロキサン主鎖高分子化電子メディエータ固定化電極の物理刺激安定性評価(洗浄)を行った実施例14の結果を示すグラフであり、横軸は洗浄回数を、縦軸は所定回数の洗浄後に電極上に吸着結合により固定されている電子メディエータ量(μg)を示す。 図20は、シロキサン主鎖高分子化電子メディエータ固定化電極の電気刺激安定性評価(電位走査)を行った実施例15の結果を示すグラフであり、横軸は電位走査時間(分)を、縦軸は所定の電位走査時間経過後に電極上に吸着結合により固定されている電子メディエータ量(μg)を示す。 図21は、シロキサン主鎖高分子化電子メディエータ固定化電極の酸化還元能力評価を行った実施例16の結果を示すグラフであり、横軸は電位(V)を、縦軸は電流(A)を示す。 図22は、高密度集積型電子メディエータONM015の合成検討を行った比較例1で検討した合成反応スキームを示す図である。 図23は、高分子化電子メディエータのリンカー部位の鎖長が酵素触媒電流に与える影響を比較検討した実施例17の結果を示す図であり、高密度集積型高分子化電子メディエータONM015の酵素触媒電流を測定した結果を示し、横軸は電位(V)を、縦軸は電流(A)を示す。 図24は、高分子化電子メディエータのリンカー部位の鎖長が酵素触媒電流に与える影響を比較検討した実施例17の結果を示す図であり、高密度集積型高分子化電子メディエータONM015よりもリンカー部位の鎖長が短いCD47の酵素触媒電流を測定した結果を示し、横軸は電位(V)を、縦軸は電流(A)を示す。
1.本発明の修飾電極
本発明の修飾電極は、カーボン基材に高分子化電子メディエータが固定化されている。高分子化電子メディエータは、電子メディエータがポリマーに導入されて構成された、電子メディエータポリマー結合体である。
カーボン基材は、炭素若しくは炭素化合物を含む導電性基材であり、例えば、カーボンファイバー、カーボンブラック、グラファイト、活性炭、グラッシーカーボン、フラーレン、グラフェン、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーン等の炭素材を含んで構成される。そして、これらの積層体であってもよく、また、これらを従来公知の導電性基板上に積層したものであってもよい。好ましくは、カーボンフェルトやカーボンペーパー、カーボンクロス等が挙げられる。そして、カーボン基材の大きさ、厚み及び形状等は特に限定されるものではなく、使用目的に応じて適宜調整することができる。例えば、平板形状の他、球体形状、立方体等の立体形状であってもよい。つまり、三次元的な体積を有する基材であってよく、また、多孔性構造体であってもよい。
高分子化電子メディエータは、ポリマーに電子メディエータを導入して構成される、ポリマーと電子メディエータの結合体である。例えば、重合することによりポリマーを形成可能な重合性モノマーに電子メディエータを導入することができる。好適には、電子メディエータを、共有結合、イオン結合、疎水的結合、π-π結合、吸着結合等によりポリマーに導入されて構成されるが、好ましくは共有結合である。共有結合としては、ジアゾ法、酸アジド法、イソシアナート法、ブロムシアン法、ペプチド結合法、ジスルフィド結合法、エステル結合法、シッフ塩基形成法等を利用した結合が例示できるが、これに限定されるものではない。ポリマー若しくは重合性モノマー、及び電子メディエータが分子内に反応性官能基を有する場合には、これを利用することもできる。例えば、アクリル酸のカルボニル基等を利用することができる。そして、分子内に反応性官能基を導入するよう修飾を行ってもよい。反応性官能基としては、アミノ基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、スルホン基、リン酸基、チオール基、イミダゾール基等を例示される。
また、2価以上の反応性官能基を有する多官能性試薬で結合する架橋法をも利用できる。架橋に際しては、電子メディエータとポリマーにとって適度な距離をもつリンカー部位を介して架橋することができる。リンカー部位の構成分子や鎖長、構造等は、電子メディエータの機能を損なわない限り、適宜設定することができる。例えば、炭化水素鎖等が挙げられる。例えば、トリクロロ酢酸等の脂肪酸のハロゲン化置換体等を利用することができる。そして、脂肪酸の炭化水素鎖の数により電子メディエータとポリマーの主鎖の距離を調節でき、例えば、炭化水素鎖長は、炭素原子が直列した場合に炭素数2〜11の範囲に調製することが好ましい。また、より厳密にリンカー部位を定義すると、リンカー部位とは、ポリマーの主鎖から電子メディエータの基本骨格とを連結する部位に該当する。このとき、リンカー部位は、好ましくは、2〜6個の炭素原子と1〜2個の酸素原子を任意の順序で結合した3〜8原子の直鎖として構成することができる。例えば、下記実施例3で合成した〔化14〕で示されるCD47の場合、リンカー部位はポリアクリル主鎖とフェナジン環を連結する部位であり、3個の炭素原子と2個の酸素原子の5原子で構成されている(ポリアクリル主鎖-C-O-C-C-O-フェナジン環)。そして、下記実施例8で合成した〔化22〕で示されるCD74の場合にも同様である。そして、下記実施例8で合成した〔化24〕で示されるシロキサン主鎖高分子化電子メディエータの場合、リンカー部位はシロキサン主鎖とフェナジン環を連結する部分であり、4個の炭素原子と1個の酸素原子の5原子で構成されている(シロキサン主鎖-C-C-C-C-O-フェナジン環)。
電子メディエータは、酵素等の生体触媒の反応に応じて酸化又は還元される低分子の酸化還元物質であり、生体触媒とカーボン基材間の電子移動を媒介する。したがって、電子メディエータは、酵素等の生体触媒と電子を授受することができる共に、カーボン基材とも電子を授受することができる物質である限り何れも使用することができる。そして、電子メディエータは、一重結合と二重結合が交互に並んだπ共役系化合物であることが好ましい。例えば、電子メディエータは、特に限定されるものではないが、例えば、5-メチルフェナジニウムメチルスルファート(フェナジンメトスルファート:PMS)、5-エチルフ
ェナジニウムメチルスルファート(フェナジンエトスルファート:PES)等、のフェナジン系化合物、フェノチアジン系化合物、フェリシアン化カリウム等のフェリシアン化物、フェロセンやジメチルフェロセン、フェロセンカルボン酸等のフェロセン系化合物、ナフトキノン、アントラキノン、ハイロドキノン、ピロロキノリンキノン等のキノン系化合物、シトクロム系化合物、ベンジルビオロゲンやメチルビオロゲン等のビオロゲン系化合物、ジクロロフェノールインドフェノール等のインドフェノール系化合物等が挙げられる。フェナジン系化合物の1-メトキシ-5-メチルフェナジニウムメチルスルファート(以下、「mPMS」と称する場合がある)が特に好ましく例示できる。
ポリマーは複数個の重合性モノマーが重合して結合した高分子化合物であり、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸メチル、ポリスチレン、ポリメチルスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブタジエン、ポリイソブテン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリメタクリル酸、ポリアクリロニトリル等のエチレンとその誘導体であるビニルモノマーを重合させたエチレン系ポリマー(ビニル系ポリマー)類、ポリアミド系ポリマー、ポリイミド系ポリマー、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系ポリマー、ポリカカーボネート系ポリマー、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン等の芳香族ポリエーテルケトン系ポリマー、ポリピロール系ポリマー、ポリエーテルスルフォン酸系ポリマー、ポリアミノ酸系ポリマー等が例示される。しかしながら、これらに限定されるものではなく、従来公知のポリマーを用いることができる。特に、ビニル系ポリマーは、表面処理を行わずともカーボン基材に吸着する性質を有するため、電極の安定性及び耐久性の観点から好ましく利用できる。
更に、ポリマーとして、シロキサン構造を有するポリマーを利用することができる。シロキサン構造を有するポリマーとは、ケイ素と酸素が交互に結合して形成されたポリマーであり、シロキサン結合(-Si-O-Si-)が主鎖を形成している。そして、シロキサン構造を有するポリマーを利用する本発明の高分子化電子メディエータは、シロキサン主鎖のケイ素に側鎖として電子メディエータがリンカーを介して結合されている。そして、シロキサン主鎖のケイ素において、酸素との結合及び電子メディエータとの結合に関与していない位置に、適当な有機基をも側鎖として導入して構成することができる。このような有機基としては、例えば、アルキル基、フェルニル基等の炭化水素基を利用することができる。アルキル基を選択する場合には、炭素数2〜18のものを好ましく利用することができる。また、炭化水素基上の水素の一部が、アミノ基、水酸基、ハロゲン基等の極性基に置換されたものを利用することができ、好ましくは、炭化水素基の末端の水素が極性基に置換されたものを利用することができる。具体的には、アミノアルキル基、ヒドロキシアルキル基、ハロゲン化アルキル基を例示することができる。また、有機基として、ビニル基等の不飽和炭化水素基を利用することもできる。これらの有機基の形状は、直鎖状、環状、分岐状等の何れであってもよく、これらを組み合わせた構造であってもよい。また、有機基は、好ましくは全てが同一種類で構成されていてもよいが、異なる種類の有機基を適宜組み合わせて構成されていてよい。
そして、同じ種類の重合性モノマーが重合したホモポリマーであっても、異なる種類の重合性モノマーが重合したコポリマーであってもよい。コポリマーとしては、モノマー単位が規則正しく交互に配列した交互コポリマー、同じ種類のモノマー単位の長い連鎖で構成されるブロックコポリマー、同じ種類のモノマー単位からなるポリマー主鎖のところどころに他の種類のモノマー単位からなる側鎖が結合しているグラフトコポリマーが例示される。また、異なる種類のモノマー単位が不規則に配列したランダムコポリマーであってもよい。
ポリマーの構造は、直鎖状、環状、分岐状等の何れであってもよく、これらを組み合わせた構造であってもよい。例えば、分岐状構造として、スターポリマーやグラフトポリマー、デンドリマー等であってもよい。好ましくは、直鎖状ポリマーである。
そして、電子メディエータはポリマーのモノマー単位毎に導入されていてもよいし、モノマー単位の一定間隔で導入されていてもよく、電子メディエータのポリマーへの導入頻度は適宜設定することができる。モノマー単位の一定間隔毎に導入する場合には、電子メディエータを導入した重合性モノマーと導入しない重合性モノマーとを一定比で重合させることにより調製することができる。コポリマーとして構成する場合には、電子メディエータを導入した重合性モノマーと、電子メディエータを導入していない他の種類の重合性モノマーとを重合させることができる。例えば、電子メディエータを共有結合させたアクリル酸モノマーとスチレンモノマーを1:1で重合させることにより、ポリマーの主鎖に電子メディエータとベンゼン環が交互に連なって導入された高分子化電子メディエータを得ることができる。また、スチレン以外にも、分子内に芳香族環を有する重合性モノマーとのコポリマーも好適に利用することができる。例えば、芳香族系ビニルポリマーであり、ビニルナフタレン、ビニルアントラセン、ビニルピレン、ビニルフェノール等である。このように構成することにより、ベンゼン環等の芳香族有機分子の芳香環は円盤を重ねたような配置で安定化するというπ−π相互作用を有することから、このπ−π相互作用によりベンゼン環がカーボン電極に安定的に吸着することができるという利点がある。
ポリマーの重合度は、ポリマー若しくは重合性モノマー、及び電子メディエータの種類、電子メディエータのポリマーへの導入頻度等に応じて、適宜設定することができる。例えば、電子メディエータを導入したモノマー単位を連続的に重合させる場合には、重合度5〜1000に調整することが好ましく、例えば、ポリアクリル酸等のエチレン系ポリマーの場合には、重合度5〜1000に調整することが好ましく、特に好ましくは100である。また、電子メディエータを導入した重合性モノマーと、電子メディエータを導入していない重合性モノマーとを重合させる場合には、重合比は、電子メディエータのポリマーへの導入頻度に大きく依存する。例えば、規則正しく交互に連なって配列している交互ポリマーの場合には、電子メディエータを導入した重合性モノマーが重合度5〜1000、特に好ましくは100となるように調整することが好ましく、例えば、電子メディエータを導入したアクリル酸と電子メディエータを導入しないスチレンとの交互コポリマー等のエチレン系コポリマーの場合にも、重合度5〜1000に調整することが好ましく、特に好ましくは100である。
そして、ポリマーとして、シロキサン構造を有するポリマーを利用する場合も、電子メディエータは当該ポリマーのシロキサン主鎖のシロキサン1単位(-Si-O-)毎に導入されていてもよいし、シロキサンの一定単位毎に導入されていてもよく、また、ランダムに導入されていてもよい。そして、電子メディエータのポリマーへの導入頻度は適宜設定することができる。シロキサン単位の一定間隔で電子メディエータを導入する場合には、電子メディエータを導入したシロキサン単位と導入しないモノマー単位とが、モル比でX:1-X(X=0.05〜1)となるように調製することが好ましい。特に好ましくは、モル比でX:1-X(X=0.25〜1)である。また、シロキサン主鎖の重合度も特に制限はなく、電子メディエータの種類、電子メディエータのポリマーへの導入頻度等に応じて、適宜設定することできる。好ましくは、電子メディエータを導入したシロキサン単位が、重合度を5〜1000となるように調整し、特に好ましくは100である。
本発明の修飾電極において、好ましい高分子化電子メディエータとして下記一般式(1)〜(3)で表されるものが挙げられる。
Figure 2014194411
(1)
CD47A
〔式中、n=5〜1000、R1=アルキル基、アリール基、又はアルキルエーテル基、R2=炭素数2〜11のアルキル鎖、R3=水素又はアルキル基である。〕
Figure 2014194411
(2)
CD53-1A
〔式中、n:m=20:1〜1:5(モル比)、R1=アルキル基、アリール基、又はアルキルエーテル基、R2=炭素数2〜11のアルキル鎖、R3=水素又はアルキル基である。〕
Figure 2014194411
(3)
CD74A
〔式中、n:m=20:1〜1:5(モル比)、R1=アルキル基、アリール基、又はアルキルエーテル基、R2=炭素数2〜11のアルキル鎖、R3=水素又はアルキル基である。〕
上記一般式(1)〜(3)で表される高分子化電子メディエータは、電子メディエータとしてmPMSを利用する高分子化mPMSである。そして、一般式(1)の高分子化電子メディエータは、mPMSを導入したアクリル酸モノマーを、重合度5〜1000、好ましくは重合度100で重合したものである。そして、フェナジン環の窒素にアルキル基、アリール基、又はアルキルエーテル基が導入され、好ましくはメチル基が導入される。また、電子メディエータとポリマー間に炭素数2〜11のアルキル鎖のリンカー部位が介在され、好ましくは炭素数2のアルキル鎖である。また、リンカー部位をポリマー主鎖から電子メディエータの基本骨格を連結している部位と定義すると、2〜6個の炭素原子及び1〜2個の酸素原子を任意の順序で結合させた直鎖とすることができる。特に、好ましくは、ポリマー主鎖側から-C-O-C-C-O-と構成される。さらに、フェナジン環の任意の部位にアルキル基が導入されていてもよい。
また、一般式(2)の高分子化電子メディエータは、アクリル酸モノマー単体とmPMSを導入したアクリル酸モノマーとをモル比20:1〜1:5で重合したランダム、交互、ブロックポリマーであり、好ましくは1:1で重合した交互ポリマーである。mPMSを導入したアクリル酸モノマーが、重合度5〜1000、好ましくは重合度100となるように重合したものである。そして、上記一般式(1)の高分子化電子メディエータと同様に、フェナジン環の窒素への置換基の導入及び電子メディエータとポリマー間のリンカー部位が介在する。リンカー部位をポリマー主鎖から電子メディエータの基本骨格を連結している部位と定義すると、好ましくは、2〜6個の炭素原子及び1〜2個の酸素原子を任意の順序で結合させた直鎖とすることができる。特に、好ましくは、ポリマー主鎖側から-C-O-C-C-O-と構成される。さらに、フェナジン環の任意の部位にアルキル基が導入されていてもよい。ここで示す高分子化電子メディエータは、化学的結合によるカーボン基材への導入のために、片側末端の1のモノマー単位に電子メディエータであるmPMSが導入されていない。しかしながら、物理吸着等の結合の様式によっては全てのモノマー単位にmPMSが導入されていてよい。
また、一般式(3)の高分子化電子メディエータは、スチレンモノマーとmPMSを導入したアクリル酸モノマーとをモル比20:1〜1:5で重合したランダム、交互、若しくはブロックポリマーであり、好ましくは1:1で重合した交互ポリマーである。このとき、mPMSを導入したアクリル酸モノマーが、重合度5〜1000、好ましくは重合度100となるように重合したものである。そして、上記一般式(1)及び(2)の高分子化電子メディエータと同様に、フェナジン環の窒素への置換基の導入及び電子メディエータとポリマー間のリンカー部位が介在する。また、リンカー部位をポリマー主鎖から電子メディエータの基本骨格を連結している部位と定義すると、好ましくは2〜6個の炭素原子及び1〜2個の酸素原子を任意の順序で結合させた直鎖とすることができる。特に、好ましくは、ポリマー主鎖側から-C-O-C-C-O-と構成される。さらに、フェナジン環の任意の部位にアルキル基が導入されていてもよい。
そして、上記一般式(1)〜(3)に代表される高分子化mPMSは、これらの製造上の利便性から分子内の反応性官能基に制限を設けることが好ましい。製造方法の詳細については下記2.及び実施例の項で説明するが、ハロゲノ基や芳香族炭化水素基、エステル基、エーテル基、カルボキシル基等は許容されるが、極性の強いアミド基やアルコール基等が分子内に存在することは好ましくない。
更に、本発明の修飾電極において、好ましい高分子化電子メディエータとして下記一般式(4)で表されるものも利用することができる。
Figure 2014194411
〔式中、X=0.05〜1(モル比)、R1=アルキル基、アリール基、又はアルキルエーテル基、R2=炭素数2〜11のアルキル鎖、R3=水素又はアルキル基、R4=アルキル基(炭素数2〜18)、フェニル基、ハロゲン化アルキル基(炭素数2〜18)、ヒドロキシアルキル基(炭素数2〜18)、又はビニル基(但し、全てが同一でなくてもよい)である。〕
上記一般式(4)で表される高分子化電子メディエータは、電子メディエータとしてmPMSを利用する高分子化mPMSである。この高分子化電子メディエータは、mPMSが結合したシロキサン酸単位(-Si-O-)と結合していないシロキサン単位を適当なモル比で、若しくはmPMSが結合したシロキサン酸単位のみを重合したポリマーである。mPMSが結合したシロキサン酸単位と結合していないシロキサン単位を含ませる場合、mPMSはシロキサンの一定単位毎に導入されていてもよく、また、ランダムに導入されていてもよい。シロキサン単位の一定間隔で電子メディエータを導入する場合には、電子メディエータを導入したシロキサン単位と導入しないモノマー単位とが、モル比でX:1-X(X=0.05〜1)となるように調製することが好ましい。特に好ましくは、モル比でX:1-X(X=0.25〜1)である。そして、mPMSを導入したシロキサン酸単位が、重合度5〜1000、好ましくは重合度100となるように重合する。さらに、フェナジン環の窒素にアルキル基、アリール基、又はアルキルエーテル基が導入され、好ましくはメチル基が導入される。また、電子メディエータとポリマー間に炭素数2〜11のアルキル鎖のリンカー部位が介在され、好ましくは炭素数4のアルキル鎖である。また、リンカー部位をポリマー主鎖から電子メディエータの基本骨格を連結している部位と定義すると、好ましくは、2〜6個の炭素原子及び1〜2個の酸素原子を任意の順序で結合させた直鎖とすることができる。特に、好ましくは、シロキサン主鎖側から-C-O-C-C-O-と構成される。電子メディエータが結合していないケイ素には、適当な有機基を側鎖として有することができる。このような有機基としては、好ましくは、アルキル基(炭素数2〜18)、フェルニル基、アミノアルキル基、ヒドロキシアルキル基、ハロゲン化アルキル基、ビニル基等を利用することができる。そして、有機基は、好ましくは全てが同一種類で構成されていてもよいが、異なる種類の有機基を適宜組み合わせて構成されていてよい。
本発明の高分子化電子メディエータはカーボン基材へ固定されており、固定は、吸着結合、共有結合、イオン結合、疎水的結合、π-π相互作用等により行うことができる。吸着結合は、高分子化電子メディエータをカーボン基材上に物理的な力により固定化するものであり、本発明の修飾電極において特に好適に利用できる。共有結合法については上述した通りである。カーボン基材表面及び高分子化電子メディエータの分子内に反応性官能基を有する場合には、これを利用することもできる。また、カーボン基材表面及び高分子化電子メディエータに反応性官能基を導入するよう表面修飾を行うことができる。例えば、カーボン基材にジアミノベンゼンやアミノ安息香酸等を導入することにより、アミノ基やカルボキシル基等の反応性官能基でカーボン基材を表面修飾することができる。これを、ポリマーの反応性官能基、例えば、ポリアクリル酸のカルボシキル基等との結合に利用することができる。また、2価以上の反応性官能基を有する多官能性試薬で結合する架橋法をも利用できる。架橋に際しては、高分子化電子メディエータとカーボン電極にとって適度な距離をもつリンカー部位を介して架橋することができる。リンカー部位の構成分子や鎖長、構造等は、電子メディエータの機能を損なわない限り、適宜設定することができる。
そして、本発明の修飾電極に、酵素や微生物等の生体触媒を含ませることができる。生体触媒は、吸着結合、共有結合、イオン結合、疎水的結合、π-π相互作用等により固定してもよい。例えば、本発明の修飾電極を生体触媒の溶液に含浸することにより行うことができ、また、カーボン基材に生体触媒を含ませた後に高分子化電子メディエータにより修飾してもよい。
このように構成することにより、カーボン基材と電極触媒である酵素等の生体触媒間の電子移動を媒介できる修飾電極を提供することができる。本発明の修飾電極は、使用に際して、電子メディエータの高い固定残存率及び長期間耐久性を示し、安定して酸化還元能及び電子伝達能を発揮することができる。また、本発明の修飾電極は、電子メディエータを高密度にカーボン基材上に固定できるものであるから、酸化還元能及び電子伝達能の向上を期待できる。そして、本発明の修飾電極は、バイオ電池やバイオセンサーの電極として好適に利用することができる。特に長時間耐久性の面で優れたバイオ電池やバイオセンサーを構築でき、様々な産業分野に利用することができる。
特に、シロキサン主鎖に電子メディエータを導入してシロキサン主鎖高分子化電子メディエータとすることにより、本発明の修飾電極の高い固定残存率及び長期間耐久性の更なる向上を図ることができる。つまり、シロキサン構造体は疎水性であるため疎水性電極基材への吸着安定性に優れていることから、シロキサン主鎖の高分子化電子メディエータ固定化電極は物理刺激及び電気刺激に対する安定性が向上する。それと共に、シロキサン構造体は柔軟性を有するため、固定化されたメディエータの電子酸化還元能力の発揮において有利である。したがって、電子メディエータ等の固定した分子の機能変化を生じさせることなく、その電子伝達機能を十分に発揮し、かつ向上できる修飾電極を提供できる。
更に、本発明の修飾電極は、酵素の触媒活性を利用する酵素電極として利用することができる。そして、ポリマー主鎖と電子メディエータの基本骨格間を連結するリンカー部位の鎖長が好適化されることにより、本発明の修飾電極を酵素電極として構築した際における酵素触媒電流を向上させることができる。つまり、本発明の修飾電極は、固定した電子メディエータの酵素と電極基材の間における電子伝達機能の向上を図ることができ、電池電圧の低下等の問題の発生を抑制できる。
2.本発明の修飾電極の製造方法
本発明の修飾電極は、以下の工程を経て製造される。
(a)高分子化電子メディエータの製造
(b)高分子化電子メディエータのカーボン基材への導入
工程(a)の高分子化電子メディエータの製造は、電子メディエータとポリマーの結合体を製造することにより行われる。例えば、重合することによりポリマーを形成可能な重合性モノマーに電子メディエータを導入する。電子メディエータは、共有結合、イオン結合、疎水的結合、π-π結合、吸着結合等によりポリマーに導入することができるが、好ましくは共有結合である。共有結合法としては、ジアゾ法、酸アジド法、イソシアナート法、ブロムシアン法、ペプチド結合法、ジスルフィド結合法、エステル結合法、シッフ塩基形成法等が例示できるが、これに限定されるものではない。ポリマー若しくは重合性モノマー、及び電子メディエータの分子内の反応性官能基を有する場合には、これを利用することもできる。例えば、アクリル酸のカルボニル基等を利用することができる。そして、分子内に反応性官能基を導入するよう修飾を行ってもよい。反応性官能基としては、アミノ基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、スルホン基、リン酸基、チオール基、イミダゾール基等を例示される。
また、2価以上の反応性官能基を有する多官能性試薬で結合する架橋法をも利用できる。架橋に際しては、電子メディエータとポリマーにとって適度な距離をもつリンカー部位を介して架橋することができる。リンカー部位の構成分子や長さ、構造等は、電子メディエータの機能を損なわない限り、適宜設定することができる。例えば、炭化水素鎖、ポリエチレングリコール鎖等が挙げられる。例えば、トリクロロ酢酸等の脂肪酸のハロゲン化置換体等を利用することができる。そして、脂肪酸の炭化水素鎖の数により電子メディエータとポリマーの主鎖の距離を調節でき、例えば、炭化水素鎖長は、炭素原子が直列した場合に炭素数2〜11の範囲に調製することが好ましい。リンカー部位は、重合性モノマーとの重合前に、電子メディエータ若しくは電子メディエータ前駆体に導入し、これを重合性モノマーと反応させることにより形成することが好ましい。ただし、ポリマーの種類によっては、重合後に導入することを妨げるものではない。したがって、リンカー部位は、メディエータ若しくは電子メディエータ前駆体に、重合性モノマー若しくは重合後のポリマーと結合可能な反応性官能基として導入される。したがって、かかる官能基の種類及び長さを適宜変更することができる。
重合性モノマーの重合は、重縮合、ラジカル重合、アニオン重合、カチオン重合等の連鎖重合、配位重合や開環重合等により行うことができ、重合させるモノマーの種類に応じて選択すればよい。重縮合は、脱水や脱アミン等による縮合を繰り返すことにより反応が進行する。ラジカル重合は、高活性なラジカルを利用した重合法であり、開始剤として、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)等のアゾ化合物や過酸化ベンゾイル過酸化物等を利用して重合を行うことができる。カチオン重合及びアニオン重合は、活性化部位がイオン化することにより反応が進行する重合法であり、アニオン重合は、陰イオンが媒介して求核的にモノマーが付加され、カチオン重合は陽イオンが媒介して求電子的にモノマーが付加される。
また、電子メディエータとして、その基本骨格が複素環骨格であり、その複素環骨格中の炭素原子が置換した原子に基が導入されている構造を有する等、様々な官能基や溶媒によって影響を受けやすいものを使用する場合には、かかる原子への基の導入等の不安定因子は、高分子化電子メディエータの製造工程の最終段階で行うことが好ましい。例えば、ポリマーにPMSやその誘導体を導入した高分子化PMSを調製する場合には、N-メチルフェナジン骨格のN-メチル基が様々な試薬や官能基と反応し、N-メチルフェナジン骨格を分解してしまう。例えば、還元性のあるハイドライド系試薬や、求核性のアミンやエポキシ、イソシアナート、カルボジイミド系の試薬が挙げられる。したがって、N-メチル化工程は、高分子化mPMSの製造工程の最終段階、すなわち、重合性モノマーと電子メディエータの結合、及び当該モノマーの重合の後で行うことが好ましい。
また、シロキサン構造を有するポリマー等を利用する場合には、市販の当該ポリマーにリンカーを介して電子メディエータを結合させてもよい。
そして、工程(b)の高分子化電子メディエータのカーボン基材への固定化は、吸着結合、共有結合、イオン結合、疎水的結合、π-π相互作用等により行うことができる。吸着結合は、高分子化電子メディエータをカーボン基材上に物理的な力により固定化するものであり、本発明の修飾電極において特に好適に利用できる。そして、吸着結合による固定化の場合、高分子化電子メディエータを含む溶液にカーボン基材を接触させ、これを乾燥させることによって簡便に固定できる。共有結合法については上述した通りである。カーボン基材表面及び高分子化電子メディエータの分子内に反応性官能基を有する場合には、これを利用することもできる。また、カーボン基材表面及び高分子化電子メディエータに反応性官能基を導入するよう表面修飾を行うことができる。例えば、カーボン基材にジアミノベンゼンやアミノ安息香酸等を導入することにより、アミノ基やカルボキシル基等の反応性官能基でカーボン基材を表面修飾することができる。これを、ポリマーの反応性官能基、例えば、ポリアクリル酸のカルボシキル基等との結合に利用することができる。また、2価以上の反応性官能基を有する多官能性試薬で結合する架橋法をも利用できる。架橋に際しては、高分子化電子メディエータとカーボン電極にとって適度な距離をもつリンカー部位を介して架橋することができる。リンカー部位の構成分子や長さ、構造等は、電子メディエータの機能を損なわない限り、適宜設定することができる。
本発明の修飾電極の製造方法の好適例である上記一般式(1)〜(3)の高分子化mPMSをカーボン基材に固定した高分子化mPMS固定化電極は、下記実施例の手順で作製することができる。
上記一般式(1)及び(2)の高分子化mPMSをカーボン基材に固定した高分子化mPMS固定化電極の作製
上記一般式(1)の高分子化mPMSを、1-ヒドロキシフェナジン等、メトキシ基を形成するための官能基を有し、かつフェナジン骨格の窒素原子に置換のないフェナジン誘導体を出発物質として合成することができる。そして、かかるフェナジン誘導体をアクリル系モノマー等の重合性モノマーと結合させる。このとき、フェナジン誘導体及び重合性モノマーの分子内に含まれる官能基を利用してもよいし、官能基を付加するよう修飾を施してもよい。フェナジン誘導体及び重合性モノマーに一定の距離を与えたい場合には、リンカー部位で連結するように構成してもよい。続いて、例えば、適当な重合開始剤を添加して重合させ、好ましくはAIBN等のラジカル開始剤を用いて重合させる。
高分子化mPMSの合成の最終段階として、得られた中間体のフェナジン骨格のN-メチル化を行う。かかる中間体のN-メチル化は、中間体の分子内の官能基に制限があり、ハロゲノ基、芳香族炭化水素基、エステル基、エーテル基、カルボキシル基等の存在は許容される。しかしながら、極性の強いアミド基、アルコール基等の存在は好ましくない。したがって、N-メチル化反応の際の溶媒についても、アミド基やアルコール基等を有する溶媒の使用は好ましくない。好適には、図4のスキームにより合成することができる。
そして、一般式(1)の高分子化mPMSをカーボン基材に固定する。固定は、吸着結合、共有結合、イオン結合、疎水的結合、π-π相互作用等の何れの固定化方法を用いて行ってもよい。
また、一般式(2)の高分子化mPMSは、重合に際して、一般式(1)のモノマー単位にmPMSを導入しないアクリル酸を重合させることにより製造することができる。
上記一般式(3)の高分子化mPMSをカーボン基材に固定した高分子化mPMS固定化電極の作製
上記一般式(3)の高分子化mPMSについても、重合に際してスチレン系モノマーを適当なモル比となるように加えることで、一般式(2)の高分子化mPMSと同様にして合成することができる。好適には、図10のスキームにより合成することができる。
上記一般式(4)の高分子化mPMSをカーボン基材に固定化した高分子化mPMS固定化電極の作製
上記一般式(4)の高分子化mPMSは、例えば、適当な比率でシロキサンにmPMSを導入することにより合成することができる。特には、シロキサン主鎖に反応性のケイ素−水素結合を有するものを好適に利用することができ、所望の比率で当該結合を有するものを選択すればよい。好ましくは、図17及び図18のスキームにより合成することができる。
このように構成することにより、電極基材と電極触媒である酵素等の生体触媒間の電子移動を媒介できる修飾電極の製造方法を提供することができる。本発明の修飾電極の製造方法で製造される修飾電極は、使用に際して、電子メディエータの高い固定残存率及び長期間耐久性を示し、安定して酸化還元能及び電子伝達能を発揮することができる。また、本発明の修飾電極の製造方法で製造される修飾電極は、電子メディエータを高密度に電極基材上に固定できるものであるから、酸化還元能及び電子伝達能の向上を期待できる。
3.本発明の修飾電極の利用
本発明の修飾電極は、バイオ電池やバイオセンサー等に利用することができ、当該バイオ電池及びバイオセンサーも本発明の一部を構成する。
3−1.バイオ電池
本発明の修飾電極は、バイオ電池の構築のために利用することができ、かかるバイオ電池も本発明の一部を構成する。そして、そして本発明の修飾電極をバイオ電池の電極として構成する場合、アノード側電極及びカソード側電極の少なくとも何れか一方に利用することができるが、好ましくはアノード側電極である。
本発明のバイオ電池としては、酵素や微生物等の生体触媒を電極触媒として利用し、かかる生体触媒の酸化還元反応を利用するもの全てを包含する。そして、その構成としては、例えば、酸化反応を行うアノード側電極と、還元反応を行うカソード側電極から構成され、電極は外部回路に接続される。必要に応じてアノード側電極とカソード側電極を隔離する電解質層や隔膜等を含んで構成される。
一例として、酵素の酸化還元反応を利用するバイオ電池における構成について説明すると、アノード側は燃料である基質を酸化する能力を有する酵素を利用でき、糖やアルコール等の燃料を分解できる酵素であれば特に制限なく利用できる。一方、カソード側は基質を還元する能力を有する酵素を電極触媒として利用することができる。具体的な酸化還元酵素としては、デヒドロゲナーゼやオキシダーゼ等を用いることができる。具体的には、アノード側として、グルコースデヒドロゲナーゼ、フルクトースデヒドロゲナーゼ、アルコールデヒドロゲナーゼ、グルタミン酸デヒドロゲナーゼ、アルデヒドデヒドロゲナーゼ、ピルビン酸デヒドロゲナーゼ、グルコースオキシダーゼ、フルクトースオキシダーゼ、アルコールオキシダーゼ、グルタミン酸オキシダーゼ、アルデヒドオキシダーゼ、ピルビン酸オキシダーゼが例示され、カソード側として、ビリルビンオキシダーゼやアスコルビン酸オキシダーゼ、ラッカーゼ等のマルチ銅オキシダーゼ、ペルオキシダーゼ等が例示される。またカソード側電極としては、白金等の金属電極を用いることができる。
燃料としては、グルコース、フルクトース、スクロース等の糖類、メタノール、エタノール等のアルコール等から選択されることが好ましい。しかしながら、使用可能な燃料はこれらに限定されず、前記アノード側及びカソード側に電極触媒として利用した酵素等の生体触媒に有用なものであれば何れをも用いることができる。
本発明のバイオ電池は、2個以上の複数個のバイオ電池を連結してもよく、これにより、一定量以上の電力を長期に亘って供給することが可能となる。例えば、実施例で作製したバイオ電池は0.3V以上の電圧を長期間に亘って出力することができることから、これを5個繋げることにより、一般電池の出力を確保することができる。
このように構成することにより、高い固定残存率及び長期間耐久性を有する本発明の修飾電極を備えたバイオ電池を提供することができる。更に、固定された電子メディエータの機能を十分に発揮でき、酵素触媒電流の面でも優れたバイオ燃料電池を提供することができる。そして、本発明のバイオ電池は、長時間に亘って安定的に発電可能な耐久性に優れた効果を発揮することができ、高性能で実用性の高いバイオ電池の構築に貢献することができる。
3−2.バイオセンサー
本発明の修飾電極は、バイオセンサーの構築のために利用することができ、かかるバイオセンサーも本発明の一部を構成する。そして、本発明の修飾電極をバイオセンサーに備える場合、外部回路に接続して構成する。
本発明のバイオセンサーは、生体反応を電極反応と共役させて電気信号に変換する感知装置であり、酵素等の生体物質が有する分子認識機構を利用するものを全て包含する。バイオセンサーは、例えば、本発明の修飾電極を基質認識部位となる作用電極として組み込み、その対極を設けて構成される。必要に応じて、測定精度の信頼性を高める観点から、銀-塩化銀などの参照極を設けた三電極方式として構成してもよい。
生体物質としては、被検試料に含まれる被検物質を特異的に認識できる限り、特に制限はないが、好ましくは酵素である。具体的には、3−1.の項で列挙した酸化還元反応を触媒できる酵素等を例示できる。
本発明のバイオセンサーによる測定は、被検試料を当該センサーと接触させ、電極上で生じた被検物質である基質との酸化還元反応により生じた変化を電気信号に変換し、これを検知することで行われる。得られた電気信号を処理することにより、被検試料中の被検物質の存在の有無若しくは濃度を測定することができる。このとき、あらかじめ目的濃度範囲内における標準濃度の被検物質溶液により作製した標準曲線を作成することにより、得られた電流値に基づいて被検物質濃度を求めることができる。
ここで、試料としては、生体物質の基質となり得る被検物質の存在が予想されるすべての試料を対象とすることができる。例えば、血液、尿、唾液等の生物体由来の生物試料、食品試料、土壌や河川水、湖沼水、海水等の水等の環境試料等が例示されるがこれに限定されるものではない。また、必要に応じてこれらの試料に適当な処理を行った試料をも含み得る。
このように構成することにより、高い固定残存率及び長期間耐久性を有する本発明の修飾電極を備えたバイオセンサーを提供することができる。そして、本発明のバイオセンサーは、長時間に亘って安定した測定が可能な耐久性に優れた効果を発揮することができ、高性能で実用性の高いバイオセンサーの構築に貢献することができる。したがって、医療、食品、環境分野等、種々の産業分野において利用可能である。
以下、実施例において、本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。したがって、本実施例においては、好適実施例として電子メディエータとして1−メトキシ−5−メチルフェナジニウムメチルスルファートを用いた例を示すが、これに電子メディエータを限定する意図はない。
実施例1.高分子化電子メディエータの合成検討(予備検討1)
本実施例においては、電子メディエータの高分子化方法の検討を行った。特には、電子メディエータの基本骨格を壊すことなく、ポリマーと結合させる方法を検討した。
(方法)
電子メディエータとして、1-メトキシ-5-メチルフェナジニウムメチルスルファート(商品名:1-Methoxy PMS、和光純薬工業株式会社製、以下「mPMS」と称する)を用いて、高分子化の検討を行った。mPMSを高分子化するためには、基本骨格であるN-メチルフェナジンのフェナジン骨格に、官能基を有するオレフィンを結合させる必要がある。そこで、ハイドロメタレーション反応、及びメタセシス反応を選択し、フェナジン骨格を壊すことなくmPMSを高分子化できるか否かを、モデル化合物として10-N-メチル-1-(3-ブテノキシ)フェナジン(10-N-Methyl-1-(3-butenoxy)phenazineを用いて検討を行った。以下に、検
討を行った合成スキームの一例を例示する。
CD15の合成:
10-N-メチル-1-(3-ブテノキシ)フェナジン 100mg、t-ブチルアクリレート 106μl、グラブス第2世代触媒(Grubbs 2nd G 触媒、Aldrichより購入)10mg、脱水ジクロロメタン約1mlを窒素雰囲気下で混合し、40℃で18時間、加熱攪拌した。続いて、エバポレーションし、エーテルで再沈殿、エーテル洗浄し、真空乾燥して90mgのCD15を得た(図2のスキーム5)。
CD16の合成:
CD15 30mg、トリフルオロ酢酸 0.5ml、ジクロロメタン 0.5mlを混合し、室温で3時間攪拌した後、エバポレーションした。酢酸エチル、次いで、トルエンで共沸させ、トリフルオロ酢酸を除去した後、メタノールで洗浄、エバポレーションし、真空乾燥してCD16 25mgを得た(図2のスキーム6)。
(結果)
検討を行った結果を図1及び図2に示す。図1はハイドロメタレーション反応による官能基を有するオレフィンの結合を検討した結果を示し、図2はメタセシス反応による官能基を有するオレフィンの結合を検討した結果を示す。上記したCD15を経てCD16を合成するスキーム(図2のスキーム5及び6)のように、N-メチルフェナジンのフェナジン骨格に官能基を有するオレフィンを結合させた目的化合物の取得が確認できた例もあるが、N-メチルフェナジンのフェナジン骨格が様々な試薬や官能基の存在により分解することが判明した。具体的には、ハイドライド系等の還元性のある試薬、アミン類、エポキシ、イソシアナート、カルボジイミド系等の求核性試薬が共存すると、N-メチルフェナジン骨格との反応が生じた。かかる結果より、フェナジンのN-メチル化をした後の高分子化は著しく困難であることが判明した。
N-メチルフェナジンは、フェナジンにジメチル硫酸やトリフルオロメチルスルホン酸メチルエステル等を作用させてN-メチル化することにより合成できる。ここで、N-メチル化を、高分子化に先立ってmPMSの合成過程の途中段階で行った場合には、その後の高分子化に向けた誘導過程でN-メチル基の分解によると思われる複雑な副反応が生じ、目的化合物を得ることができなかった。かかる結果を受け、N-メチル化を、mPMSの合成過程の最終段階で行うこととし、フェナジンの高分子化を先に行うこととした。
実施例2.高分子化電子メディエータの合成検討(予備検討2)
本実施例においては、実施例1に続き、電子メディエータの高分子化方法の検討を行った。特には、電子メディエータの基本骨格を壊すことなく、ポリマーと結合させる方法を検討した。
実施例1の結果を受けて、N-メチル化を高分子化mPMSの合成過程の最終段階で行うこととした。そして、実施例1においてN-メチルフェナジン骨格が様々な官能基の存在により分解してしまうことが判明したことから、本実施例では、最終段階でN-メチル化する際に、分子内で許容できる官能基の検討を行った。
(方法)
ここで、モデル化合物として、ヒドロキシフェナジンをエーテル化して得られるCD36(一般式4〔化8〕)を用いて検討を行った。なお、ヒドロキシフェナジンからCD36は以下の方法で合成した。
Figure 2014194411
(4)
CD36
CD36(一般式4〔化8〕)の合成:
1-ヒドロキシフェナジン400mg、1−ブロモへキサン404mg、無水炭酸カリウム282mg、DMF 10mlを混合し、窒素雰囲気下で80℃で6時間加熱攪拌した。反応後、エバポレーションし、水を加え、固形分をろ過し、水で洗浄し、真空乾燥してCD36 580mgを得た(図3のスキーム1)。
そして、分子内で許容できる官能基を検討するため、様々な溶媒中で、得られたCD36をトリフルオロメチルスルホン酸メチルエステルによるN-メチル化反応に供した。CD36のN-メチル化体であるCD38(一般式5〔化9〕)の合成の可否で、溶媒中に含まれる官能基が許容できるか否かを判断した。CD38が生じない場合には、溶媒に含まれる官能基が許容できないとした。
詳細には、被検溶媒としては、ジクロロメタン、ニトロベンゼン、酢酸エチル、DMF、DMSO、及びメタノールを使用し、CD38の合成反応の進行の様子を検討した。ここで、N-メチル化体のCD38はエーテルに難溶性であることから、かかる性質を利用してCD38の合成反応の進行を判断した。つまり、夫々の被検溶媒を用いてN-メチル化反応を行った後に、反応産物にエーテルを加えて沈殿が生じ、その沈殿がCD38であれば、その溶媒に含まれる官能基は許容されると判断した。一方、沈殿を生じない場合には、CD38が合成されなかったとして、その溶媒に含まれる官能基は許容されないと判断した。
Figure 2014194411
(5)
CD38
CD38(一般式5〔化9〕)の合成:
CD36 20mgに対して、トリフルオロメタンスルホン酸メチルエステル 200μlと被検溶媒500μlを加え、室温で3〜5時間攪拌した。溶液にエーテル10mlを加え、沈殿が生じた場合には、濾過、真空乾燥した(図3のスキーム2)。沈殿が生じなかった場合には、溶媒を留去した。それぞれ得られたサンプルにつき、H-NMR測定を行った。
(結果)
被検溶媒のうち、ジクロロメタン、ニトロベンゼン、酢酸エチルがN-メチル化が可能であり、N-メチル化体のCD38を合成することが可能であった。一方、被検溶媒としてDMF、DMSO、メタノールを検討した場合には、沈殿は生じず、CD38の合成の際の溶媒としては適当ではないことが判明した。また、カルボキシル基も許容されるとの知見も得た。これらの結果から、N-メチル化に際して、分子内にハロゲノ基、芳香族炭化水素基、エステル基、エーテル基、カルボキシル基等の存在は許容されるが、極性の強いアミド基、アルコール基等の存在は好ましくないことが判明した。
実施例1及び2の結果より、mPMSのN-メチル基の不安定性が、高分子化mPMSの合成過程において障害になることが判明した。そして、これを回避するために、N-メチル化を合成過程の最終段階で行うこと、及びN-メチル化反応を阻害しない官能基から構成される分子構造とすることが重要であるとの知見を得た。かかる知見に基づいて、下記の実験を行った。
実施例3.高分子化電子メディエータの合成検討(アクリル基重合型)
本実施例においては、実施例1及び2の予備検討結果を受け、電子メディエータの高分子化を行った。ここでは、アクリル基重合による高分子化を検討した。
(方法と結果)
出発化合物として1-ヒドロキシフェナジンを用いて、アクリル基重合(n=100)させた高分子化mPMSを合成した(図4)。なお、実施例1の予備検討結果を受け、N-メチル化は合成過程の最終段階で行い(図4のスキーム5)、そして、実施例2の予備検討結果を受け、反応中間体であるCD46は、N-メチル化に支障のない官能基であるエーテルとエステル基を分子内に有し、かつラジカル重合により高分子化ができるように設計した。
CD32(一般式6〔化10〕)の合成:
窒素雰囲気下で1-ヒドロキシフェナジン 4g、クロロ酢酸 2g、無水炭酸カリウム 5.64g、脱水DMF 150mlを混合し、75℃で10時間加熱攪拌した。最初は不均一であったが、数十分後に均一となった。反応終了後、エバポレーションし、真空乾燥した後、水100mlを加え、塩酸水溶液で中和し、pHを3〜4に調整した。続いて、エーテル 150mlを加え、濾過し、水、エタノールで洗浄し、3.75gのCD32を得た(図4のスキーム1)。
Figure 2014194411
(6)
CD32
CD44(一般式7〔化11〕)の合成:
窒素雰囲気下でCD32 500mgをTHF 50mlに分散し、リチウムアルミニウムハイドライド 112mgを数回に分けて加えた。60℃で5時間加熱攪拌した後、水を加えて水素発生が収まった後、エバポレーションした。水酸化リチウム水溶液を加えて、pHを約10に調整した後、クロロホルム 20mlで3回抽出した。クロロホルム層を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、エバポレーションし、真空乾燥した。続いて、カラムクロマトグラフィー(シリカ、クロロホルム-メタノール 10/1)で精製し、240mgのCD44を得た(図4のスキーム2)
Figure 2014194411
(7)
CD44
CD45(一般式8〔化12〕)の合成:
窒素雰囲気下でCD44 240mg、脱水ピリジン 160μl、脱水ジクロロメタン5mlを混合し、メタクロイルクロリド 123μlを混合した。混合物を、攪拌下に1時間氷冷し、自然放冷して、一晩放置した。続いて、希塩酸で有機層を洗浄し、無水硫酸ナトリムで乾燥した後、エバポレーションし、真空乾燥した。続いて、カラムクロマトグラフィー(20mlシリカ、クロロホルム-メタノール 40/1)で精製し、174mgのCD45を得た(図4のスキーム3)
Figure 2014194411
(8)
CD45
CD46(一般式9〔化13〕)の合成:
窒素雰囲気下でCD45 170mg、アゾビスイソブチロニトリル(以下、「AIBN」と称する)3.3mg、脱水トルエン 1.5mlを混合し、攪拌下で80℃で12時間重合させた。エバポレーションの後、クロロホルム-メタノールで再沈殿させ、真空乾燥して、74mgのCD46を得た(図4のスキーム4)
Figure 2014194411
(9)
CD46
〔式中、n=100〕
CD47(一般式1−1〔化14〕)の合成:
窒素雰囲気下でCD46 74mgに脱水ジクロロメタン 1mlを混合し、トリフルオロメタンス
ルホン酸メチルエステル 200μlを滴下した。反応過程で赤色沈殿が見られた。室温で3時間反応させた後、エーテル 10mlを加え、沈殿を遠心分離で取り出した。得られた沈殿を
エーテルで2回洗浄し、真空乾燥して、97mgのCD47を得た(図4のスキーム5)
Figure 2014194411
(1−1)
CD47
〔式中、n=100〕
実施例4.高分子化電子メディエータの合成確認
本実施例では、実施例3において合成した反応産物が、所望の高分子化電子メディエータであることを確認した。
実施例3で合成した反応産物が所望の高分子化mPMSであるか否かの確認を行った。実施例3の合成過程において特に問題となるCD46からCD47に変換する際のN-メチル化(図5のスキーム5)が正常に進行しているか否かを検討した。
(方法)
実施例3で合成したCD46と、CD46をN-メチル化して得られたCD47のH-NMR測定を行い、N-メチル化に伴うH-NMRスペクトルの変化を検出した。そして、実施例2で検討した低分子モデル化合物CD36からCD38へのN-メチル化に伴うH-NMRスペクトルの変化と比較した。さ
らに、CD47とCD38の吸収スペクトルについても比較した。なお、CD36からCD38へのN-メチル化に際してはCDC13を、CD46からCD47へのN-メチル化に際してはCD3CNを溶媒として使用した。
(結果)
H-NMRスペクトルの変化を比較した結果を図5に示す。CD36からCD38に誘導する際に、
以下のスペクトル変化が観察された。
1.芳香環のピークは全体的に低磁場にシフトする。
2.5ppm付近にN-メチル基のピークが出現する。
そして、それに対応する高分子化合物であるCD46からCD47に変換する際にも、上記1及び2のスペクトル変化が観察され、CD47がN-メチル化されていることを示している。
吸収スペクトルを比較した結果を図6に示す。CD47とC38は、ほぼ同様なスペクトルを示した。特に、400nm付近の両者の吸収極大波長は、ほぼ同一であった。500nm付近の吸収極大波長が、CD38が517nmであるのに対してCD47が500.5nmであることから、若干CD47の方が短波長であった。しかしながら、このことを除けば、ほぼ類似のスペクトルを両者は示した。これにより、CD47とCD38は類似の骨格を有している化合物であることが示唆され、CD47はCD46がN-メチル化された化合物であることが理解できる。
以上の結果より、実施例3におけるCD46からCD47に変換する際のN-メチル化(図4のスキーム5)が進行していることが確認された。
実施例5.高分子化電子メディエータの酸化還元能の評価
実施例3で作成した高分子化電子メディエータが、電子メディエータとしての機能を有しているか否かを確認するため酸化還元能の評価を行った。
(方法)
高分子化電子メディエータとして実施例3で合成したCD47の酸化還元能を確認すると共に、電子メディエータ単体mPMSの酸化還元能と比較評価した。酸化還元能の測定は、CD47とmPMSのサイクリックボルタンメトリー(以下、「CV」と称する場合がある)測定により行った。
詳細には、測定液として、0.2M TEAP/アセトニトリルに、CD47及びmPMSを夫々1mg/mlに溶解させたものを使用した。CV測定には3極系を用いて測定し、作用極にはグラッシーカーボン電極、対極には白金電極、参照極には銀/塩化銀電極を用いた。測定電位は、0.5
〜-0.5V、走査速度は0.5V/sで測定した。
(結果)
結果を図7に示す。CD47の酸化還元ピークはmPMSと比較すると小さいが、酸化還元能を有していることが確認できた。なお、酸化還元ピークが小さくなる理由は、CD47を溶解させている有機溶媒中に、電気化学測定のための支持体であるTEAPを添加すると、CD47の多くは沈殿してしまうためであると考えられる。
実施例6.高分子化電子メディエータの電極基材への導入検討(予備検討)
本実施例では、高分子化電子メディエータを固定した電極を構築するため、上記実施例で合成検討を行った高分子化電子メディエータの電極基材への導入を検討した。ここでは、特に、電極基材に高分子化電子メディエータを共有結合を介して導入するための、電極基材の表面処理について予備検討を行った。
(方法と結果)
ここでは、上記実施例で合成検討を行った高分子化mPMSを電極基材であるカーボン基材に共有結合を介して固定化するため、カーボン基材の表面処理について検討を行った。具体的には、カーボン基材表面に、官能基としてp-ジアミノベンゼン、p-アミノ安息香酸の導入について検討した。
p-ジアミノベンゼンの導入:
ここでは、カーボン基材として、カーボンフェルト(商品名:カーボンマット、密度50mg/cm2、ROSA社より購入)を使用した。5cm角に切断したカーボンフェルト 140mgを、p-ジアミノベンゼン塩酸塩 1.13g、水 6.3ml、DMF 18.8mlとの混合液に浸漬し、窒素雰囲気下で亜硝酸イソアミル 0.88mlを加え、40℃で10時間反応させた後、3日間放置した。反応時に、反応液より発泡が観察されると共に、カーボン基材の変形が認められた。反応後のカーボン基材を取り出した後、DMF及びメタノールで洗浄し、真空乾燥した。これにより、カーボン基材にアミノ基修飾が施された(CD10(一般式10〔化15〕)、図8のスキーム1)。
Figure 2014194411
(10)
CD10
p-アミノ安息香酸
上記と同じ素材のカーボンフェルトをカーボン基材として使用した。5cm角に切断したカーボンフェルト 140mgを、p-アミノ安息香酸 0.67g、DMF 25mlとの混合液に浸漬し、窒素雰囲気下で亜硝酸イソアミル 0.42mlを加え、40℃で10時間反応させた後、3日間放置した。反応後のカーボン基材を取り出した後、DMF及びメタノールで洗浄し、真空乾燥した。これにより、カーボン基材にカルボキシル基修飾が施された(CD11(一般式11〔化16〕)、図8のスキーム2)。
Figure 2014194411
(11)
CD11
続いて、上記で得られたCD10及びCD11をCV測定により、電子移動速度を換算した。その結果、電子移動の低下は認められず、修飾を施したカーボン基材の導電性に問題がないことが確認された。
実施例7.高分子化電子メディエータの電極基材への導入検討
本実施例では、高分子化電子メディエータを固定した電極を構築するため、上記実施例で合成検討を行った高分子化電子メディエータの電極基材への導入を検討した。ここでは、実施例6で検討した表面処理を施した電極基材に、共有結合を介して実施例3で合成した高分子化電子メディエータを導入した。
(方法と結果)
実施例6で検討したp-ジアミノベンゼン塩酸塩によりカーボン基材表面にアミノ基修飾を施したカーボン基材に、共有結合を介して実施例3で合成した高分子化mPMSを導入した。
CD53-1(一般式12〔化17〕)の合成(高分子化mPMSの合成):
窒素雰囲気下でCD45 175.3mg、アクリル酸 4mg、AIBN 4mg、脱水DMF 1.5mlを混合し、攪拌下で80℃で8時間重合させた。エバポレーションの後、メタノールで再沈殿させ、真空乾燥して、41.2mgのCD53-1を得た(図9のスキーム1)
Figure 2014194411
(12)
CD53-1
〔式中、n:m=1:10(モル比)〕
CD58-1(一般式13〔化18〕)の合成(カーボン基材のアミノ基修飾):
10cm角に切断したカーボンフェルト4枚を、p-ジアミノベンゼン塩酸塩 4.5g、水 25ml、DMF 75mlとの混合液に浸漬し、窒素雰囲気下で超音波処理を5分間行った。なお、カーボンフェルトの素材は実施例6で使用したものと同じである。続いて、氷冷下で超音波処理を5分間行った。その後、氷冷下に亜硝酸イソアミル3.5mlを加え、自然温度上昇で40℃に達した後、窒素雰囲気下で超音波処理を5時間行った。反応溶液を除去した後、DMFで洗浄し、1Nの水酸化ナトリウムに浸漬した後、DMFで3回洗浄して真空乾燥し、CD58-1を得た(図9のスキーム2)。
Figure 2014194411
(13)
CD58-1
CD58-2(一般式14〔化19〕)、CD58-3(一般式15〔化20〕)の合成(カーボン基材への高分子化mPMSの導入):
上記で得られたCD58-1をCD53-1のクロロホルム30gの溶液に浸漬し、1日放置した。クロロホルムで洗浄し、真空乾燥し、CD58-2を得た(図9のスキーム3)。そのうち1枚を取り出し、脱水ジクロロメタン 30gとトリフルオロメタンスルホン酸メチルエステル 1mlの混合液に7時間浸漬した。そして、フェルトを取り出し、エーテルで1回、ジクロロメタンで3回洗浄し、CD58-3を得た(図9のスキーム4)。
Figure 2014194411
(14)
CD58-2
〔式中、n:m=1:10(モル比)〕
Figure 2014194411
(15)
CD58-3
実施例8.高分子化電子メディエータの合成検討(スチレン基重合型)
本実施例においては、実施例1及び2の予備検討結果、及び実施例3のアクリル基重合型に続いて、高分子化電子メディエータの合成検討を行った。ここでは、スチレン基重合による電子メディエータの高分子化を検討した。
(方法)
アクリル基重合型の高分子化mPMSであるCD47を合成した実施例3と同様に、出発化合物として1-ヒドロキシフェナジンを用いて、スチレン基重合による高分子化mPMSであるCD74を合成した。反応スキームは、1-ヒドロキシフェナジンからCD45までの合成は実施例3と同様に行った。
CD73(一般式16〔化21〕)の合成:
CD45をスチレンとラジカル共重合させて、CD73を合成した(図10のスキーム1)。なお、ラジカル共重合条件は、実施例3のCD45からCD46の合成と同様である。
Figure 2014194411
(16)
CD73
〔式中、n:m=1:1(モル比)〕
CD74(一般式3−1〔化22〕)の合成:
CD73のフェナジン環をメチル化剤でN-メチル化してCD74を合成した(図10のスキーム2)。なお、N-メチル化条件は、実施例3のCD46からCD47の合成と同様である。
Figure 2014194411
(3−1)
CD74
〔式中、n:m=1:1(モル比)〕
実施例9.高分子化電子メディエータ固定化電極の評価(酸化還元能力)
本実施例では、上記実施例で合成した高分子化電子メディエータを電極基材に固定した高分子化電子メディエータ固定化電極の酸化還元能力の評価を行った。
(方法)
ここで、酸化還元能力を評価した高分子化電子メディエータ固定化電極は、実施例8で合成したポリスチレン重合型の高分子化電子メディエータであるCD74をカーボン基材に吸着結合により固定した高分子化mPMS固定化電極である。そして、電子メディエータ単体であるmPMSをカーボン基材に吸着結合により固定したmPMS固定化電極と酸化還元能力と比較評価した。酸化還元能の測定は、サイクリックボルタンメトリー(以下、「CV」と称する場合がある)測定により行った。
詳細には、CD74を吸着結合により固定した高分子化mPMS固定化電極(CD75:一般式17〔化23〕)は、1mg/mlのCD74溶液(溶媒:アセトニトリル)3μlを、グラッシーカーボン基材上に載せ、5分間、真空乾燥させて作製した(図9のスキーム3)。同様に、mPMS単体をカーボン基材上に吸着結合により固定したmPMS固定化電極を作製した。CV測定には3極系を用いて測定し、電子メディエータ固定化電極を作用極とし、対極には白金電極、参照極には銀/塩化銀電極を用いた。測定電位は、0.5〜-0.5V、走査速度は0.02V/sで測定した。
Figure 2014194411
(17)
CD75
〔式中、n:m=1:1(モル比)〕
(結果)
結果を図11及び12に示す。なお、図12は、図11の拡大図である。電位走査1回の結果では、CD74を吸着結合により固定した高分子化mPMS固定化電極は、mPMSを単体で吸着結合により固定したmPMS固定化電極に比べるとピークの大きさは小さいが、酸化還元ピークが認められた。これにより、高分子化mPMS固定化電極が酸化還元能力を有していることが理解できる。また、電位走査5回の結果から、mPMS単体を吸着したmPMS固定化電極の場合、電位走査を繰り返すとmPMSが電極から脱離してしまい、CD74を吸着結合により固定した高分子化mPMS固定化電極よりも酸化還元ピークが小さくなってしまうことが確認された。
また、実施例7で作製した高分子化電子メディエータをカーボン基材上に共有結合を介して固定した固定化電極であるCD58-3の酸化還元能と比較したところ、CD74を吸着結合により固定した本実施例の固定化電極の方が酸化還元能力は高かった。
実施例10.高分子化電子メディエータ固定化電極の安定性評価(洗浄)
上記実施例で作製した高分子化電子メディエータ固定化電極の安定性について、洗浄操作をした場合について評価した。
(方法)
ここで、安定性を評価した電極は、実施例9と同様にCD74をカーボンクロスに吸着結合により固定した高分子化mPMS固定化電極であり、電子メディエータ単体であるmPMSを吸着結合により固定したmPMS固定化電極と洗浄操作に対する安定性を比較評価した。
初期添加量100μgでカーボンクロス上に吸着結合により固定された電子メディエータの洗浄操作後の残存量を測定した。詳細には、CD74を吸着結合により固定した高分子化mPMS固定化電極を、1Mのイミダゾール 1mlが入った2ml容量のチューブに投入し、Vortexで1分間洗浄を行った。洗浄を行った電極に対して、同様の操作を繰り返して洗浄操作を5回行い、各洗浄液の吸光度を測定した。洗浄液に含まれる電子メディエータは電極から脱離した電子メディエータであることから、電子メディエータのモル吸光係数と洗浄液の吸光度から、電極から脱離した電子メディエータ量を求めた。そして、電極作製の際に添加した電子メディエータの初期添加量から、脱離した電子メディエータ量を差し引いて、洗浄操作によっても脱離せずに電極上に吸着結合により固定されている電子メディエータ量を算出した。電子メディエータ単体であるmPMSを吸着結合により固定したmPMS固定化電極についても同様に操作を行い、洗浄操作によっても脱離せずに電極上に吸着結合により固定されている電子メディエータ量を算出した。
(結果)
結果を図13に示す。図13の横軸は洗浄回数を、縦軸は所定回数の洗浄後に電極上に吸着結合により固定されている電子メディエータ量(μg)を示す。CD74をカーボン電極に吸着結合により固定した高分子化mPMS固定化電極は、5回の洗浄操作後であっても脱離したmPMSは12%程度であった。一方、mPMS単体を吸着結合により固定したmPMS固定化電極は、洗浄操作毎にmPMSが脱離し、5回目の洗浄操作後には、93%程度と、ほとんどのmPMSが脱離していた。この結果から、高分子化電子メディエータ固定化電極は、洗浄操作によっても電子メディエータが安定して電極上に固定化されていることが理解できる。
実施例11.高分子化電子メディエータ固定化電極の安定性評価(電位走査)
上記実施例で作製した高分子化電子メディエータ固定化電極の安定性について、電位走査した場合について評価した。
(方法)
ここで、安定性を評価した電極は、実施例9及び10と同様にCD74をカーボン基材に吸着結合により固定した高分子化mPMS固定化電極であり、電子メディエータ単体であるmPMSを吸着結合により固定したmPMS固定化電極と電位走査に対する安定性を比較評価した。
初期添加量1000μgでカーボン基材上に吸着結合により固定された電子メディエータの電位走査後の残存量を測定した。詳細には、CD74を吸着結合により固定した高分子化mPMS固定化電極を、1M イミダゾール溶液 3ml中で電位走査(CV測定)を行った。そして、10分毎に測定液を10μlずつ回収した。なお、測定液を攪拌してから回収した。続いて、回収液を1Mのイミダゾール溶液 90μlが入ったチューブに加えて攪拌し、電子メディエータのモル吸光係数と回収液に含まれる電子メディエータ量を求めた。回収液に含まれる電子メディエータは電極から脱離した電子メディエータである。したがって、電極作製の際に添加した電子メディエータの初期添加量から、脱離した電子メディエータ量を求め、電位走査によっても脱離せずに電極上に吸着結合により固定されている電子メディエータ量を算出した。電子メディエータ単体であるmPMSを吸着結合により固定したmPMS固定化電極についても同様に操作を行い、電位走査によっても脱離せずに電極上に吸着結合により固定されている電子メディエータ量を算出した
(結果)
結果を図14に示す。図14の横軸は電位走査時間(時)を、縦軸は所定の電位走査時間経過後に電極上に吸着結合により固定されている電子メディエータ量(μg)を示す。CD74をカーボン基材に吸着結合により固定した高分子化mPMS固定化電極は、60分後であっても脱離したmPMSは4%程度であった。一方、mPMS単体を吸着結合により固定したmPMS固定化電極は、電位走査10分後にすでに50%程度のmPMSが脱離していた。そして、60分後には60%程度のmPMSが脱離していた。この結果から、高分子化電子メディエータ固定化電極は、電位走査によっても電子メディエータが安定して電極上に固定化されていることが理解できる。
実施例12.高分子化電子メディエータ固定化電極を備えた電池セルの長時間耐久性評価
上記実施例で作製した高分子化電子メディエータ固定化電極を用いて電池セルを構築し、長時間使用における耐久性を評価した。
(方法)
ここで、安定性を評価した電極は、実施例9〜11と同様にCD74をカーボン基材に吸着結合により固定した高分子化mPMS固定化電極であり、かかる電極をアノード側電極とした電池セルを構築した。そして、電子メディエータ単体であるmPMSを吸着結合により固定したmPMS固定化電極をアノード側電極とした電池セルと長時間耐久性を比較評価した。
詳細には、高分子化mPMS固定化電極は、20mg/mlのCD74溶液(溶媒:アセトニトリル)を実施例10及び11で使用したものと同じ素材のカーボンクロス(1cm×1cm、2枚)上に一枚当り50μlを載せ、真空乾燥させて作製した。比較例として、10mg/ml(30mM)のmPMS溶液(溶媒:アセトニトリル)を上記カーボンクロス上に吸着結合させたmPMS固定化電極を作製した。
そして、下記の通り、アノード側電極及びカソード側電極を構築して図16に示す電池セルを作製し、燃料として1Mグルコース/1Mイミダゾール(pH7.0)を1ml添加し、22℃にて500kΩの負荷で電圧を測定した。
アノード側電極:
10mg/mlのアシネトバクター・カルコアセチカス(Acinetobacter Calcoaceticus) NBRC12552由来のグルコースデヒドロゲナーゼ(AcGDH)と1Mのイミダゾール(pH7.0)を、上記電極に含浸させてアノード側電極を作製した。
カソード側電極:
100mg/mlのビリルビンオキシダーゼ(BOD)(アマノエンザイム株式会社:BO“Amano"3)と0.05Mフェリシアン化カリウム/1Mイミダゾール(pH7.0)を、カーボン電極に含浸させてカソード側電極を作製した。
(結果)
結果を図15に示す。図15の縦軸は電圧が330mV以下になるまでの時間(時)を示す。CD74をカーボン基材に吸着結合により固定した高分子化mPMS固定化電極は、開始電圧がmPMS単体を吸着結合により固定したmPMS固定化電極よりも低かった。しかしながら、高分子化mPMS固定化電極の長期間使用による電圧の低下は比較的穏やかで、電池寿命とされる330mV以下になったのは1176時間後であった。一方、mPMS固定化電極は、開始電圧は高かったが、760時間後に330mV以下になった。つまり、低電圧条件下では、mPMS単体よりも高分子化mPMSを固定した電極をカソード側電極とした方が、長時間安定であることが理解できる。この結果から、高分子化電子メディエータ固定化電極は、長時間使用においても安定であることが理解できる。
実施例13.シロキサン主鎖高分子化電子メディエータの合成
本実施例では、電子メディエータの高分子化を、電子メディエータをシロキサン主鎖に結合させる方法により検討した。
ここで合成したシロキサン主鎖高分子化電子メディエータは、電極への固定安定性を向上するため、上記実施例の高分子化電子メディエータよりも更にポリマー主鎖を疎水化したシロキサンを主鎖とする高分子化電子メディエータであり、シロキサン主鎖に電子メディエータを導入することにより合成した(図17、図18)。具体的には、〔化24〕に示すシロキサン1単位毎に電子メディエータmPMSを結合したHMS922-Phzm、2単位毎にmPMSを結合したHMS-501-Phzm(密度1/2)、3単位毎にmPMSを結合したHMS-301-Phzm(密度1/3)である。そして、これらはシロキサン主鎖のケイ素のうち、mPMSが導入されていないものは全てメチル基の側鎖を有する。
Figure 2014194411
(材料及び機器)
シロキサン原料であるHMS-992、HMS-501およびHMS-301は、アズマックスより購入した。その他の合成原料および溶媒は、Aldrichおよび東京化成工業より購入したものをそのまま用いた。化合物の同定は1H NMRスペクトル(JEOL JNM-ECX400P)により行った。
(方法及び結果)
(1)出発化合物として1-ヒドロキシフェナジンを用いて、1-(3-ブテニルオキシ)フェナジンを合成した(図17)。
1-(3-ブテニルオキシ)フェナジンの合成:
窒素雰囲気下、1-ヒドロキシフェナジン(1.00 g、5.10 mmol)、炭酸カリウム(2.76 g, 20.0 mmol)、ジメチルホルムアミド(15 mL)および4-ブロモ-1-ブテン(2.03 mL, 2.70 g, 20.0 mmol)の混合物を80 °Cで6時間攪拌した。室温に冷却後、水(約100 mL)を加え、析出した固体を吸引濾過により回収した。少量のエタノールを加え加熱溶解させた後、大量の水を加えた。生成した固体を吸引濾過により回収し、真空乾燥することで目的物を得た。
性状:淡黄色固体。収量:1.28 g。収率:100%、
1H NMR (CDCl3) δ 2.87 (m, 2H), 4.40 (t, J = 7.3 Hz, 2H), 5.18 (m, 1H), 5.28 (m, 1H), 6.02 (m, 1H), 7.10 (d, J = 7.6 Hz, 1H), 7.75 (m, 1H), 7.84 (m, 3H), 8.23 (m, 1H), 8.34 (m, 1H).
(2)上記(1)で合成した1-(3-ブテニルオキシ)フェナジンをシロキサン主鎖に導入した(図18スキーム1)。
HMS-992-Phenの合成:
HMS-992(Gelest製, Mw = 1800‐2100; 0.12 g)、上記で合成した1-(3-ブテニルオキシ)フェナジン(0.50 g, 2.00 mmol)を脱水トルエン(5 mL)に溶解後、100 °Cに加熱した。白金触媒(platinum(0)-1,3-divinyl-1,1,3,3-tetramethyldisiloxane complex solution, 0.1 M キシレン中)を約50 μL添加後、100 °Cで16時間攪拌した。室温に冷却後、メタノール(約30 mL)を加え沈澱化させ、遠心分離(4000 rpm、40分間)にかけて上澄みを除去した。クロロホルムを良溶媒、メタノールを貧溶媒とする再沈澱処理および遠心分離を2回繰り返し、沈殿物を真空乾燥することで目的物を得た。
性状:黄色固体、収量:0.44 g、収率:71%、
1H NMR (CDCl3) δ 0.08 (bs; Si-CH3), 0.61 (br; Si-CH2-), 1.55 (br; -CH2-), 1.95 (br; -CH2-), 4.05 (br; -CH2-O-), 6.68 (br; aromatic), 7.10‐8.30 (br; aromatic)
HMS-501-Phenの合成:
HMS-501(Gelest製, Mw = 900‐1200; 0.27 g)、1-(3-ブテニルオキシ)フェナジン(0.50 g, 2.00 mmol)を用いて、HMS-992-Phenと同様の方法で合成した。
性状:ゴム状固体、収量:0.29 g、収率:34%、
1H NMR (CDCl3) δ 0.04 (bs; Si-CH3), 0.63 (br; Si-CH2-), 1.60 (br; -CH2-), 2.02 (br; -CH2-), 4.19 (br; -CH2-O-), 6.88 (br; aromatic), 7.40‐8.40 (br; aromatic)
HMS-301-Phenの合成:
HMS-301(Gelest製, Mw = 1900‐2000; 0.49 g)、1-(3-ブテニルオキシ)フェナジン(0.50 g, 2.00 mmol)を用いて、HMS-992-Phenと同様の方法で合成した。
性状:アメ状高粘性流動体、収量:0.60 g、収率61%、
1H NMR (CDCl3) δ 0.06 (bs; Si-CH3), 0.64 (br; Si-CH2-), 1.61 (br; -CH2-), 2.06 (br; -CH2-), 4.25 (br; -CH2-O-), 6.97 (br; aromatic), 7.40‐8.40 (br; aromatic).
(3)上記(2)で合成したHMS-992-Phen、HMS-501-Phen、HMS-301-Phenのフェナジン環の窒素にメチル基を導入した。これにより、シロキサン主鎖高分子化mPMSであるHMS-992-Phzm、HMS-501- Phzm、HMS-301- Phzmを合成した(図18のスキーム2)。
HMS-992-Phzmの合成:
窒素雰囲気下、上記で合成したHMS-992-Phen(0.30 g)を脱水ジクロロメタン(5.0 mL)に溶解し、メチルトリフラート(1.0 mL)をゆっくり滴下した。室温で1時間攪拌した後、脱水アセトニトリル(5 mL)を添加し、さらに室温で2時間攪拌した。ジエチルエーテル(約30 mL)を加えてポリマーを沈澱化させ、上澄みを除去した。アセトニトリルを良溶媒、ジエチルエーテルを貧溶媒とする再沈澱を3回繰り返した後、真空乾燥することで目的物を得た。
性状:赤黒色固体、収量:0.31 g、
1H NMR (CD3CN) δ 0.20 (bs; Si-CH3), 0.76 (br; Si-CH2-), 1.68 (br; -CH2-), 2.28 (br; -CH2-), 4.25 (br; -CH2-O-), 4.75 (br; N+-CH3), 7.27 (br; aromatic), 7.60‐8.60 (br; aromatic)
HMS-501-Phzmの合成:
上記で合成したHMS-501-Phen(0.27 g)を用いて、HMS-992-Phzmと同様の方法で合成した。
性状:赤黒色固体、収量0.34 g、
1H NMR (CD3CN) δ 0.08 (bs; Si-CH3), 0.70 (br; Si-CH2-), 1.68 (br; -CH2-), 2.36 (br; -CH2-), 4.27 (br; -CH2-O-), 4.74 (br; N+-CH3), 7.31 (br; aromatic), 7.60‐8.60 (br; aromatic)
HMS-301-Phzmの合成:
上記で合成したHMS-301-Phen(0.40 g)を用いて、HMS-992-Phzmと同様の方法で合成した。なお、再沈澱処理の際に、ポリマーの沈澱化が不十分だったため、上澄みの除去には遠心分離(4000 rpm, 15分)を用いた。
性状:赤黒色固体、収量0.37 g、
1H NMR (CD3CN) δ 0.07 (bs; Si-CH3), 0.71 (br; Si-CH2-), 1.68 (br; -CH2-), 2.36 (br; -CH2-), 4.34 (br; -CH2-O-), 4.79 (br; N+-CH3), 7.41 (br; aromatic), 7.60‐8.60 (br; aromatic)
実施例14.シロキサン主鎖高分子化電子メディエータ固定化電極の物理刺激安定性評価(洗浄)
本実施例では、上記実施例13で合成したシロキサン主鎖高分子化電子メディエータの物理刺激安定性評価を行った。ここでは、シロキサン主鎖高分子化電子メディエータ固定化電極に、物理刺激として洗浄を施し、その安定性を評価した。
(方法)
上記実施例13にて合成したHMS-992-Phzm、HMS-501-Phzm、HMS-301-Phzmのいずれか一種類を吸着固定した電極、上記実施例3で合成したアクリル基重合型の高分子化mPMSであるCD47を吸着固定した電極、及びmPMSをそのまま含浸させた電極について検討した。電極としては、上記実施例10〜12と同様、カーボンクロスを用いた。電極へのシロキサン主鎖高分子化電子メディエータの吸着固定及びmPMSの含浸についても上記実施例と同様に行った。これらの電極に洗浄操作を行い、その安定性について比較評価した。
具体的には、上記電極を1Mイミダゾール(1ml)が入ったチューブ(2ml用)にいれ、vortexにて1分間 洗浄処理を施した。洗浄した電極に対して同様の操作を繰り返し(5回)、洗浄液の吸光度を測定した。そして、電子メディエータのモル吸光係数および洗浄液の吸光度から、洗浄液に含まれる、脱離した電子メディエータ量を求め、電極作製の際に添加した電子メディエータ量(100μg)から脱離した電子メディエータ量を差し引いて、電極に吸着固定されている電子メディエータの量を算出した。
(結果)
結果を図19に示す。図19の横軸は洗浄回数を、縦軸は所定回数の洗浄時間後に電極上に固定化されている電子メディエータの吸着量(μg)を示す。mPMSをそのまま含浸したカーボン電極は、洗浄するごとにmPMSが脱離し、洗浄5回目にはほとんどのmPMSが脱離してしまった(93%の脱離)。HMS-992-Phzm、HMS-501-Phzm、HMS-301-Phzmの順に脱離したmPMS量は低下した。特にHMS-301-Phzmは5%程度の脱離であり、吸着固定安定性を保持していることが理解できた。また、CD47固定化電極と比較しても固定安定性がやや高かった。つまり、ポリマー主鎖を更に疎水性としたことから疎水性の電極基材への吸着固定安定性が向上した理解される。したがって、シロキサン主鎖高分子化電子メディエータ固定化電極は、物理刺激に対する固定安定性が高いことから、バイオ電池の電極として使用した時の、電子メディエータ溶出による出力の低下を防ぐことが期待できることが判明した。
実施例15.シロキサン主鎖高分子化電子メディエータの電気刺激安定性評価(電位走査)
本実施例では、上記実施例13で合成したシロキサン主鎖高分子化電子メディエータの電気刺激安定性評価を行った。ここでは、シロキサン主鎖高分子化電子メディエータ固定化電極を、電気刺激として電位走査を施し、その安定性を評価した。
(方法)
実施例14と同様にして構築したHMS-992-Phzm、HMS-501-Phzm、HMS-301-Phzmのいずれか一種類を吸着固定した電極、CD47を吸着固定した電極、及びmPMSをそのまま含浸させた電極を電位走査した場合の安定性について、比較評価した。
具体的には上記電極を、3mlの1Mイミダゾール溶液中で電位走査(CV測定)を行った。CV測定には3電極系を用い、高分子化電子メディエータ固定化電極を作用極とし、対極には白金電極、参照極には銀/塩化銀電極を用いた。測定電位は0.5〜-0.5V、走査速度は0.01V/sで測定を行った。10分ごとに測定溶液を10μl回収し(回収前に測定溶液を攪拌)、90μlの1Mイミダゾール溶液が入ったチューブに入れ攪拌した。そして、電子メディエータのモル吸光係数および回収溶液の吸光度から、測定溶液中に脱離した電子メディエータ量を求め、吸着固定されている電子メディエータ量を算出した。
(結果)
結果を図20に示す。図20の横軸は電位走査時間(分)を、縦軸は所定の電位走査時間経過後に電極上に固定されている電子メディエータ量(μg)を示す。かかる結果より、mPMSをそのまま含浸した電極は、電位走査 60分後には40% 程度の電子メディエータが脱離した。HMS-992-Phzm、HMS-501-Phzm、MS301-Phzm固定化電極は5%未満の脱離であり、高い吸着固定安定性を保持していた。また、CD47固定化電極と比較しても固定安定性がやや高かった。したがって、シロキサン主鎖高分子化電子メディエータ固定化電極は、物理刺激のみならず電気刺激に対する固定安定性も高いことから、バイオ電池の電極として使用した時の、電子メディエータ溶出による出力の低下を防ぐことが期待できることが判明した。
実施例16.シロキサン主鎖高分子化電子メディエータ固定化電極の酸化還元能力評価
上記実施例13で合成したシロキサン主鎖高分子化電子メディエータ固定化電極の酸化還元能力の評価を行った。
(方法)
実施例14及び15と同様にして構築したHMS-992-Phzm、HMS-501-Phzm、HMS-301-Phzmのいずれか一種類を吸着固定した電極、mPMSをそのまま含浸させた電極、及び実施例8で合成したポリスチレン重合型の高分子化電子メディエータであるCD74を吸着固定した電極の酸化還元能力を比較評価した。
酸化還元能力の測定は、実施例5等と同様にCV測定により行った。CV測定には3電極系を用い、高分子化電子メディエータ固定化電極を作用極とし、対極には白金電極、参照極には銀/塩化銀電極を用いた。測定電位は、0.5〜-0.5V、走査速度は0.01V/sで測定した。
(結果)
結果を図21に示す。図21の横軸は電位(V)を、縦軸は電流(A)を示す。HMS-992- Phzm、HMS-501- Phzm、HMS-301- Phzm固定化電極は、mPMSをそのまま含浸した電極との比較で酸化還元電位は正側に0.2 V移動しており、ピーク時の酸化電流は両者とも同レベルであった。また、CD74固定化電極との比較でもやや高いことが判明した。この結果から、シロキサン主鎖高分子化電子メディエータは、より柔軟性のある主鎖を持つため、CD74よりも酸化還元能力においてやや有利であることが判明した。したがって、シロキサン主鎖高分子化電子メディエータは、CD74と比較して電極への電子伝達効率がやや高く、電池の高出力化に貢献できることが理解される。
比較例1.高密度集積型高分子化電子メディエータ(ONM015)の合成
本比較例では、ポリマー主鎖と電子メディエータ間を連結するリンカー部位の鎖長の好適化を検討すべく、リンカー鎖長が短くポリマー主鎖と電子メディエータの距離が接近した高密度集積型高分子化電子メディエータの合成を検討した。
ここでは、ポリマー主鎖と電子メディエータの基本骨格との距離が接近した高密度集積型高分子化電子メディエータを合成した(図22)。具体的には、〔化24〕に示すアクリル基重合型ポリマーの主鎖の炭素原子と、電子メディエータmPMSの基本骨格であるフェナジン環が2つの原子(炭素原子1、酸素原子2)で連結され、かつポリマー1単位毎にmPMSが導入された高密度集積型高分子化電子メディエータ(ONM015)である。
(方法及び結果)
(1)出発化合物1−ヒドロキシフェナジンを導入したアクリル酸モノマーを合成した(図22のスキーム1)。
M1の合成:
窒素雰囲気下、1−ヒドロキシフェナジン(0.50g、2.55 mmol)、脱水ジクロロメタン(14 ml)およびトリエチルアミン(0.5ml)混合物にメタクリル酸クロリド(0.28g、2.70mmol)をゆっくり加え、室温で4時間攪拌した。クロロホルム(50ml)を加えた後、有機層を飽和塩化アンモニウム水溶液および飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、ろ過し、ろ液からロータリーエバポレーターにより溶媒を除去した。残渣を少量のクロロホルムに溶解後、ヘキサン(約100ml)を加え、4℃で一晩静置した。生成した結晶を吸引ろ過により回収し、真空乾燥することで目的物を得た。
収量:0.534g、収率:79%、
1H NMR(CDCl3)σ2.23(s,3H),5.92(1H), 6.60(1H), 7.60(1H), 7.80-7.87(m, 3H), 8.16-8.25(m, 3H).
(2)上記(1)で合成したM1を重合したP1を合成した(図22のスキーム2)。
P1の合成:
窒素雰囲気下、M1(0.50g, 1.89 mmol)、アゾビスイソブチロニトリル(9.4mg, 0.057 mmol)および脱水トルエン(3ml)の混合物を100℃で10時間攪拌した。室温に冷却後、メタノール(約10ml)を加え、沈殿物を生成させた。吸引ろ過により沈殿物を回収後、真空乾燥することで目的物を得た。
性状:淡黄色固体、収量:0.22g、収率:44%、
1H NMR(CDCl3)σ2.05(br,3H),3.13(br,2H), 6.96-8.05(br, 7H).
(3)上記(2)で合成したP1のフェナジン環の窒素にメチル基を導入した(図22のスキーム3)
ONM015の合成:
窒素雰囲気下、上記で得られたP1(0.12g, 0.45 mmol)を脱水ジクロロメタン(1.5ml)に溶解後、メチルトリフラート(250μl)をゆっくり滴下した。室温で2時間攪拌した後、脱水アセトニトリル(3.0ml)を加え、均一溶液とした。メチルトリフラート(50μl)をゆっくり滴下した後、室温で2時間攪拌した。ジエチルエーテル(約20ml)を加えて沈殿を生成させた後、デカンテーションにより上澄みを除去した。残渣をアセトニトリル/ジエチルエーテルで再沈殿させた後、沈殿物を吸引ろ過により回収し、真空乾燥することで目的物を得た。
性状:黄色固体、収量:0.175g、収率:90%、
1H NMR(CD3CN)σ1.60-3.00(br,5H),4.80(br,3H), 7.30-8.55(br, 7H).IR(ATR)3105(w), 2995(w), 2758(w), 2652(w), 1755(s), 1551(m), 1479(s), 1356(m), 1250(s), 1227(s), 1153(s), 1095(s), 1028(vs), 741(s), 636(vs)
合成に際して、上記(1)で得られたM1の段階でフェナジン環の窒素をメチル化し、これを重合するルートも試みたが重合しなかった。これは、電子メディエータ部位がラジカル重合反応を阻害することに起因すると推定される。そして、P1の分子量はGPC測定の結果からMn=3.80×103、Mw=5.86×103と求められ、重合度15〜20のオリゴマー構造であることが判明した。また、アセトニトリル溶液中でONM015にヒドラジンを作用させた結果、ラジカル種に由来すると考えられる長波長域の吸収を示した。つまり、ONM015は充分な電子受容性を保持していると理解される。
比較例2.高密度集積型高分子化電子メディエータ(ONM015)の安定性評価(物理刺激及び化学刺激)
本比較例では、高密度集積型高分子化電子メディエータの安定性評価を行った。安定性評価としては、物理安定性及び電気安定性評価を行った。
(方法)
上記比較例1で合成した高密度集積型高分子化電子メディエータ(ONM015)を電極に吸着固定した固定化電極に、物理刺激として洗浄を施し、その安定性を評価すると共に、電気刺激として電位走査を施し、その安定性を評価した。詳細には、物理的刺激に関しては上記実施例14、化学的刺激に関しては上記実施例15と同様の手法を用いた検討した。
ONM015固定化電極の物理安定性は洗浄5回後の脱離が3%、電気安定性が60分後の脱離が1%と高い安定性を示した。したがって、高密度集積型高分子電子メディエータ固定電極も高い安定性を有する電極であることが判明した。
実施例17.高分子化電子メディエータのリンカー長の酵素触媒電流影響比較
本実施例では、ポリマー主鎖と電子メディエータの間に存在し、両者を連結するリンカーの鎖長の酵素触媒電流に与える影響を検討した。
本実施例では、ポリマー主鎖と電子メディエータの基本骨格との距離が酵素触媒電流に与える影響を検討した。具体的には、アクリル重合型高分子化mPMSであるCD47と、その高密度集積型であるONM015とを比較評価した。ここで、CD47はアクリル基重合型ポリマーの主鎖の炭素原子と、電子メディエータmPMSの基本骨格であるフェナジン環が5つの原子(炭素原子3、酸素原子2)で連結され、一方、ONM015は2つの原子(炭素原子1、酸素原子1)で連結されている。
(方法)
上記実施例3で合成したCD47、及び上記比較例1で合成したONM015を吸着固定した電極、及びmPMSをそのまま含浸して吸着固定させた電極を用いて、これらの電極の酵素触媒電流を測定した。なお、電子メディエータの電極への吸着固定は、電子メディエータ溶液(溶媒:アセトニトリル)75μlをカーボン電極(3cm×0.5cm)に染み込ませ、O/N 真空乾燥させることにより行った。そして、酵素触媒電流の測定は、上記固定化電極をグルコース脱水素酵素(AcGDH:実施例12を参照のこと)を含む測定溶液中で電位走査(CV測定)を行った。そして、グルコースを添加する前と後の波形から酵素触媒電流を測定した。なお、酵素は事前にチューブ内でホロ化しておき(4℃、30分以上)、それを最終濃度が1Mとなるようにイミダゾール溶液と混ぜ合わせたものを測定液として用いた。また、CV測定には3電極系を用い、高分子化電子メディエータ固定化電極を作用極と詩、対極にはカーボン電極、参照極には銀/塩化銀電極を用いた。測定電位は0.5 〜 -0.5V、走査速度は0.02V/sで測定した。
(結果)
結果を図23及び図24に示す。図23はONM015、図24はCD47の結果であり、両図とも横軸は電位(V)、縦軸は電流(A)を示す。リンカー部位の鎖長が2原子(炭素原子1、酸素原子)のONM01の酵素触媒電流が6.6 μAであったのに対して、リンカー部位の鎖長が5原子(炭素原子3、酸素原子2)のCD47は43 μAであった。つまり、リンカー部位の鎖長が長いCD47の方が、6倍以上酸素触媒電流が向上した。かかる結果より、リンカー部位の鎖長が長い方が、酵素触媒電流が大きくなる傾向があることが判明した。酵素触媒電流が大きいほど電池の電極として高出力が期待できることから、リンカー部位の鎖長がある程度の長さを有する高分子化電子メディエータ方が、バイオ電池電極として有用であることが理解される。
本発明の修飾電極は、高い固定残存率及び長期間耐久性を有することから、バイオ電池やバイオセンサー等に応用することができ、これらの構築を要望する全ての産業分野に利用することができる。

Claims (19)

  1. カーボン基材に前記カーボン基材と生体触媒との間の電子移動を媒介可能な電子メディエータを固定した修飾電極であって、
    電子メディエータが結合して重合性モノマーが形成され、当該重合性モノマー同士をさらに重合して得られたポリマーが高分子化電子メディエータとして前記カーボン基材に固定されている、修飾電極。
  2. 前記電子メディエータが、フェナジン系化合物である請求項1に記載の修飾電極。
  3. 前記フェナジン系化合物の主骨格が、1-メトキシ-5-メチルフェナジニウム塩、5-メチルフェナジニウム塩、及び5-エチルフェナジニウム塩から選択される請求項2に記載の修飾電極。
  4. 前記電子メディエータと前記重合性モノマーが、2〜6個の炭素原子及び1〜2個の酸素原子を任意の順序で結合させた直鎖のリンカー部位を介して結合されている請求項1〜3の何れか一項に記載の修飾電極。
  5. 前記高分子化電子メディエータが、前記電子メディエータを結合したビニルモノマーを重合したものであって、前記ビニルモノマーにはアクリル酸、スチレン、ビニルエーテル、アクリルアミド、メタクリル酸のうちの1つ以上を選択して使用する請求項1〜4の何れか一項に記載の修飾電極。
  6. 前記高分子化電子メディエータが下記一般式(1)で表される請求項5に記載の修飾電極。
    Figure 2014194411
    (1)
    〔式中、n=5〜1000、R1=アルキル基、アリール基、又はアルキルエーテル基、R2=炭素数2〜11のアルキル鎖、R3=水素又はアルキル基である。〕
  7. 前記高分子化電子メディエータが、前記電子メディエータを結合したアクリル酸モノマーとスチレン或いは芳香族系ビニルポリマーとを重合比20:1〜1:5で重合したものである請求項1〜4の何れか一項に記載の修飾電極。
  8. 前記高分子電子メディエータが、下記一般式(3)で表される請求項7に記載の修飾電極。
    Figure 2014194411
    (3)
    〔式中、n:m=20:1〜1:5(モル比)、R1=アルキル基、アリール基、又はアルキルエーテル基、R2=炭素数2〜11のアルキル鎖、R3=水素又はアルキル基である。〕
  9. 前記高分子化電子メディエータが、シロキサン構造を有するポリマーに前記電子メディエータを結合したものである請求項1〜4の何れか一項に記載の修飾電極。
  10. 前記高分子電子メディエータが、下記一般式(4)で表される請求項8に記載の修飾電極。
    Figure 2014194411
    (4)
    〔式中、X=0.05〜1(モル比)、R1=アルキル基、アリール基、又はアルキルエーテル基、R2=炭素数2〜11のアルキル鎖、R3=水素又はアルキル基、R4=アルキル基(炭素数2〜18)、フェニル基、ハロゲン化アルキル基(炭素数2〜18)、ヒドロキシアルキル基(炭素数2〜18)、又はビニル基(但し、全てが同一でなくてもよい)である。〕
  11. 前記高分子化電子メディエータの固定が吸着結合による請求項1〜10の何れか一項に記載の修飾電極。
  12. バイオ電池のアノード側電極又はバイオセンサー用電極である、請求項1〜11の何れか一項に記載の修飾電極。
  13. (a)電子メディエータを結合させて重合性モノマーを形成し、この重合性モノマーを重合して高分子化電子メディエータとしてのポリマーを合成する工程、
    (b)前記高分子化電子メディエータをカーボン基材に固定する工程、を有する修飾電極の製造方法。
  14. 前記電子メディエータが、環構成原子として窒素原子を含む複素環骨格を有する化合物であって、前記窒素原子が置換基により置換されている構造を有する場合には、
    前記工程(a)において、前記電子メディエータを結合させた重合性モノマーの重合後の最終段階で前記窒素原子の置換を行う請求項13に記載の修飾電極の製造方法。
  15. 前記窒素原子の置換に際して、前記電子メディエータを結合させた重合性モノマーの重合によって作製される高分子ポリマー中間体が官能基を有する場合、前記官能基がハロゲノ基、芳香族炭化水素基、エステル基、エーテル基、及びカルボキシル基から選択される請求項14に記載の修飾電極の製造方法。
  16. 前記電子メディエータが、1-メトキシ-5-メチルフェナジニウムメチルスルファート、5-メチルフェナジニウムメチルスルファート、及び5-エチルフェナジニウムメチルスルファートから選択される請求項13〜15のいずれか一項に記載の修飾電極の製造方法。
  17. 前記工程(b)において、前記固定が吸着結合による請求項13〜16の何れか一項に記載の修飾電極の製造方法。
  18. 請求項1〜12の何れか一項に記載の修飾電極をアノード側電極として備えるバイオ電池。
  19. 請求項1〜12の何れか一項に記載の修飾電極を備えるバイオセンサー。
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