JP2014194411A - 修飾電極、当該修飾電極の製造方法、当該修飾電極を備えるバイオ電池並びにバイオセンサー - Google Patents
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Abstract
【解決手段】カーボン基材に生体触媒との間の電子移動を媒介可能な電子メディエータを固定した修飾電極であって、電子メディエータが結合して重合性モノマーが形成され、当該重合性モノマーどうしをさらに重合して得られたポリマーが高分子化電子メディエータとしてカーボン基材に固定されている、修飾電極、当該修飾電極の製造方法、及び当該修飾電極を備えたバイオ電池並びにバイオセンサー。
【選択図】図1
Description
〔1〕 カーボン基材に前記カーボン基材と生体触媒との間の電子移動を媒介可能な電子メディエータを固定した修飾電極であって、
電子メディエータが結合して重合性モノマーが形成され、当該重合性モノマー同士をさらに重合して得られたポリマーが高分子化電子メディエータとして前記カーボン基材に固定されている、修飾電極。
〔2〕前記電子メディエータが、フェナジン系化合物である。
〔3〕前記フェナジン系化合物の主骨格が、1-メトキシ-5-メチルフェナジニウム塩、5-メチルフェナジニウム塩、及び5-エチルフェナジニウム塩から選択される。
〔4〕前記電子メディエータと前記重合性モノマーが、2〜6個の炭素原子及び1〜2個の酸素原子を任意の順序で結合させた直鎖のリンカー部位を介して結合されている。
〔5〕前記高分子化電子メディエータが、前記電子メディエータを結合したビニルモノマーを重合したものであって、前記ビニルモノマーにはアクリル酸、スチレン、ビニルエーテル、アクリルアミド、メタクリル酸のうちの1つ以上を選択して使用する
〔6〕前記高分子化電子メディエータが下記一般式(1)で表される。
CD47A
〔式中、n=5〜1000、R1=アルキル基、アリール基、又はアルキルエーテル基、R2=炭素数2〜11のアルキル鎖、R3=水素又はアルキル基である。〕
〔7〕前記高分子化電子メディエータが、前記電子メディエータを結合したアクリル酸モノマーとスチレン或いは芳香族系ビニルポリマーを重合比20:1〜1:5で重合したものである。
〔8〕前記高分子電子メディエータが、下記一般式(3)で表される。
CD74A
〔式中、n:m=20:1〜1:5(モル比)、R1=アルキル基、アリール基、又はアルキルエーテル基、R2=炭素数2〜11のアルキル鎖、R3=水素又はアルキル基である。〕
〔9〕前記高分子化電子メディエータが、シロキサン構造を有するポリマーに前記電子メディエータを結合したものである。
〔10〕前記高分子電子メディエータが、下記一般式(4)で表される。
〔式中、X=0.05〜1(モル比)、R1=アルキル基、アリール基、又はアルキルエーテル基、R2=炭素数2〜11のアルキル鎖、R3=水素又はアルキル基、R4=アルキル基(炭素数2〜18)、フェニル基、ハロゲン化アルキル基(炭素数2〜18)、ヒドロキシアルキル基(炭素数2〜18)、又はビニル基(但し、全てが同一でなくてもよい)である。〕
〔11〕前記高分子化電子メディエータの固定が吸着結合による。
〔12〕バイオ電池のアノード側電極又はバイオセンサー用電極である。
〔13〕(a)電子メディエータを結合させて重合性モノマーを形成し、この重合性モノマーを重合して高分子化電子メディエータとしてのポリマーを合成する工程、(b)前記高分子化電子メディエータをカーボン基材に固定する工程、を有する修飾電極の製造方法。
〔14〕前記電子メディエータが、環構成原子として窒素原子を含む複素環骨格を有する化合物であって、前記窒素原子が置換基により置換されている構造を有する場合には、前記工程(a)において、前記電子メディエータを結合させた重合性モノマーの重合後の最終段階で前記窒素原子の置換を行う。
〔15〕前記窒素原子の置換に際して、前記電子メディエータを結合させた重合性モノマーの重合によって作製される高分子ポリマー中間体が官能基を有する場合、前記官能基がハロゲノ基、芳香族炭化水素基、エステル基、エーテル基、及びカルボキシル基から選択される。
〔16〕前記電子メディエータが、1-メトキシ-5-メチルフェナジニウムメチルスルファート、5-メチルフェナジニウムメチルスルファート、及び5-エチルフェナジニウムメチルスルファートから選択される。
〔17〕前記工程(b)において、前記固定が吸着結合による。
〔18〕本発明の修飾電極をアノード側電極として備えるバイオ電池。
〔19〕本発明の修飾電極を備えるバイオセンサー。
本発明の修飾電極は、カーボン基材に高分子化電子メディエータが固定化されている。高分子化電子メディエータは、電子メディエータがポリマーに導入されて構成された、電子メディエータポリマー結合体である。
ェナジニウムメチルスルファート(フェナジンエトスルファート:PES)等、のフェナジン系化合物、フェノチアジン系化合物、フェリシアン化カリウム等のフェリシアン化物、フェロセンやジメチルフェロセン、フェロセンカルボン酸等のフェロセン系化合物、ナフトキノン、アントラキノン、ハイロドキノン、ピロロキノリンキノン等のキノン系化合物、シトクロム系化合物、ベンジルビオロゲンやメチルビオロゲン等のビオロゲン系化合物、ジクロロフェノールインドフェノール等のインドフェノール系化合物等が挙げられる。フェナジン系化合物の1-メトキシ-5-メチルフェナジニウムメチルスルファート(以下、「mPMS」と称する場合がある)が特に好ましく例示できる。
本発明の修飾電極は、以下の工程を経て製造される。
(a)高分子化電子メディエータの製造
(b)高分子化電子メディエータのカーボン基材への導入
上記一般式(1)の高分子化mPMSを、1-ヒドロキシフェナジン等、メトキシ基を形成するための官能基を有し、かつフェナジン骨格の窒素原子に置換のないフェナジン誘導体を出発物質として合成することができる。そして、かかるフェナジン誘導体をアクリル系モノマー等の重合性モノマーと結合させる。このとき、フェナジン誘導体及び重合性モノマーの分子内に含まれる官能基を利用してもよいし、官能基を付加するよう修飾を施してもよい。フェナジン誘導体及び重合性モノマーに一定の距離を与えたい場合には、リンカー部位で連結するように構成してもよい。続いて、例えば、適当な重合開始剤を添加して重合させ、好ましくはAIBN等のラジカル開始剤を用いて重合させる。
上記一般式(3)の高分子化mPMSについても、重合に際してスチレン系モノマーを適当なモル比となるように加えることで、一般式(2)の高分子化mPMSと同様にして合成することができる。好適には、図10のスキームにより合成することができる。
上記一般式(4)の高分子化mPMSは、例えば、適当な比率でシロキサンにmPMSを導入することにより合成することができる。特には、シロキサン主鎖に反応性のケイ素−水素結合を有するものを好適に利用することができ、所望の比率で当該結合を有するものを選択すればよい。好ましくは、図17及び図18のスキームにより合成することができる。
本発明の修飾電極は、バイオ電池やバイオセンサー等に利用することができ、当該バイオ電池及びバイオセンサーも本発明の一部を構成する。
本発明の修飾電極は、バイオ電池の構築のために利用することができ、かかるバイオ電池も本発明の一部を構成する。そして、そして本発明の修飾電極をバイオ電池の電極として構成する場合、アノード側電極及びカソード側電極の少なくとも何れか一方に利用することができるが、好ましくはアノード側電極である。
本発明の修飾電極は、バイオセンサーの構築のために利用することができ、かかるバイオセンサーも本発明の一部を構成する。そして、本発明の修飾電極をバイオセンサーに備える場合、外部回路に接続して構成する。
本実施例においては、電子メディエータの高分子化方法の検討を行った。特には、電子メディエータの基本骨格を壊すことなく、ポリマーと結合させる方法を検討した。
電子メディエータとして、1-メトキシ-5-メチルフェナジニウムメチルスルファート(商品名:1-Methoxy PMS、和光純薬工業株式会社製、以下「mPMS」と称する)を用いて、高分子化の検討を行った。mPMSを高分子化するためには、基本骨格であるN-メチルフェナジンのフェナジン骨格に、官能基を有するオレフィンを結合させる必要がある。そこで、ハイドロメタレーション反応、及びメタセシス反応を選択し、フェナジン骨格を壊すことなくmPMSを高分子化できるか否かを、モデル化合物として10-N-メチル-1-(3-ブテノキシ)フェナジン(10-N-Methyl-1-(3-butenoxy)phenazineを用いて検討を行った。以下に、検
討を行った合成スキームの一例を例示する。
10-N-メチル-1-(3-ブテノキシ)フェナジン 100mg、t-ブチルアクリレート 106μl、グラブス第2世代触媒(Grubbs 2nd G 触媒、Aldrichより購入)10mg、脱水ジクロロメタン約1mlを窒素雰囲気下で混合し、40℃で18時間、加熱攪拌した。続いて、エバポレーションし、エーテルで再沈殿、エーテル洗浄し、真空乾燥して90mgのCD15を得た(図2のスキーム5)。
CD15 30mg、トリフルオロ酢酸 0.5ml、ジクロロメタン 0.5mlを混合し、室温で3時間攪拌した後、エバポレーションした。酢酸エチル、次いで、トルエンで共沸させ、トリフルオロ酢酸を除去した後、メタノールで洗浄、エバポレーションし、真空乾燥してCD16 25mgを得た(図2のスキーム6)。
検討を行った結果を図1及び図2に示す。図1はハイドロメタレーション反応による官能基を有するオレフィンの結合を検討した結果を示し、図2はメタセシス反応による官能基を有するオレフィンの結合を検討した結果を示す。上記したCD15を経てCD16を合成するスキーム(図2のスキーム5及び6)のように、N-メチルフェナジンのフェナジン骨格に官能基を有するオレフィンを結合させた目的化合物の取得が確認できた例もあるが、N-メチルフェナジンのフェナジン骨格が様々な試薬や官能基の存在により分解することが判明した。具体的には、ハイドライド系等の還元性のある試薬、アミン類、エポキシ、イソシアナート、カルボジイミド系等の求核性試薬が共存すると、N-メチルフェナジン骨格との反応が生じた。かかる結果より、フェナジンのN-メチル化をした後の高分子化は著しく困難であることが判明した。
本実施例においては、実施例1に続き、電子メディエータの高分子化方法の検討を行った。特には、電子メディエータの基本骨格を壊すことなく、ポリマーと結合させる方法を検討した。
ここで、モデル化合物として、ヒドロキシフェナジンをエーテル化して得られるCD36(一般式4〔化8〕)を用いて検討を行った。なお、ヒドロキシフェナジンからCD36は以下の方法で合成した。
1-ヒドロキシフェナジン400mg、1−ブロモへキサン404mg、無水炭酸カリウム282mg、DMF 10mlを混合し、窒素雰囲気下で80℃で6時間加熱攪拌した。反応後、エバポレーションし、水を加え、固形分をろ過し、水で洗浄し、真空乾燥してCD36 580mgを得た(図3のスキーム1)。
CD36 20mgに対して、トリフルオロメタンスルホン酸メチルエステル 200μlと被検溶媒500μlを加え、室温で3〜5時間攪拌した。溶液にエーテル10mlを加え、沈殿が生じた場合には、濾過、真空乾燥した(図3のスキーム2)。沈殿が生じなかった場合には、溶媒を留去した。それぞれ得られたサンプルにつき、H-NMR測定を行った。
被検溶媒のうち、ジクロロメタン、ニトロベンゼン、酢酸エチルがN-メチル化が可能であり、N-メチル化体のCD38を合成することが可能であった。一方、被検溶媒としてDMF、DMSO、メタノールを検討した場合には、沈殿は生じず、CD38の合成の際の溶媒としては適当ではないことが判明した。また、カルボキシル基も許容されるとの知見も得た。これらの結果から、N-メチル化に際して、分子内にハロゲノ基、芳香族炭化水素基、エステル基、エーテル基、カルボキシル基等の存在は許容されるが、極性の強いアミド基、アルコール基等の存在は好ましくないことが判明した。
本実施例においては、実施例1及び2の予備検討結果を受け、電子メディエータの高分子化を行った。ここでは、アクリル基重合による高分子化を検討した。
出発化合物として1-ヒドロキシフェナジンを用いて、アクリル基重合(n=100)させた高分子化mPMSを合成した(図4)。なお、実施例1の予備検討結果を受け、N-メチル化は合成過程の最終段階で行い(図4のスキーム5)、そして、実施例2の予備検討結果を受け、反応中間体であるCD46は、N-メチル化に支障のない官能基であるエーテルとエステル基を分子内に有し、かつラジカル重合により高分子化ができるように設計した。
窒素雰囲気下で1-ヒドロキシフェナジン 4g、クロロ酢酸 2g、無水炭酸カリウム 5.64g、脱水DMF 150mlを混合し、75℃で10時間加熱攪拌した。最初は不均一であったが、数十分後に均一となった。反応終了後、エバポレーションし、真空乾燥した後、水100mlを加え、塩酸水溶液で中和し、pHを3〜4に調整した。続いて、エーテル 150mlを加え、濾過し、水、エタノールで洗浄し、3.75gのCD32を得た(図4のスキーム1)。
窒素雰囲気下でCD32 500mgをTHF 50mlに分散し、リチウムアルミニウムハイドライド 112mgを数回に分けて加えた。60℃で5時間加熱攪拌した後、水を加えて水素発生が収まった後、エバポレーションした。水酸化リチウム水溶液を加えて、pHを約10に調整した後、クロロホルム 20mlで3回抽出した。クロロホルム層を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、エバポレーションし、真空乾燥した。続いて、カラムクロマトグラフィー(シリカ、クロロホルム-メタノール 10/1)で精製し、240mgのCD44を得た(図4のスキーム2)
窒素雰囲気下でCD44 240mg、脱水ピリジン 160μl、脱水ジクロロメタン5mlを混合し、メタクロイルクロリド 123μlを混合した。混合物を、攪拌下に1時間氷冷し、自然放冷して、一晩放置した。続いて、希塩酸で有機層を洗浄し、無水硫酸ナトリムで乾燥した後、エバポレーションし、真空乾燥した。続いて、カラムクロマトグラフィー(20mlシリカ、クロロホルム-メタノール 40/1)で精製し、174mgのCD45を得た(図4のスキーム3)
窒素雰囲気下でCD45 170mg、アゾビスイソブチロニトリル(以下、「AIBN」と称する)3.3mg、脱水トルエン 1.5mlを混合し、攪拌下で80℃で12時間重合させた。エバポレーションの後、クロロホルム-メタノールで再沈殿させ、真空乾燥して、74mgのCD46を得た(図4のスキーム4)
窒素雰囲気下でCD46 74mgに脱水ジクロロメタン 1mlを混合し、トリフルオロメタンス
ルホン酸メチルエステル 200μlを滴下した。反応過程で赤色沈殿が見られた。室温で3時間反応させた後、エーテル 10mlを加え、沈殿を遠心分離で取り出した。得られた沈殿を
エーテルで2回洗浄し、真空乾燥して、97mgのCD47を得た(図4のスキーム5)
本実施例では、実施例3において合成した反応産物が、所望の高分子化電子メディエータであることを確認した。
実施例3で合成したCD46と、CD46をN-メチル化して得られたCD47のH-NMR測定を行い、N-メチル化に伴うH-NMRスペクトルの変化を検出した。そして、実施例2で検討した低分子モデル化合物CD36からCD38へのN-メチル化に伴うH-NMRスペクトルの変化と比較した。さ
らに、CD47とCD38の吸収スペクトルについても比較した。なお、CD36からCD38へのN-メチル化に際してはCDC13を、CD46からCD47へのN-メチル化に際してはCD3CNを溶媒として使用した。
H-NMRスペクトルの変化を比較した結果を図5に示す。CD36からCD38に誘導する際に、
以下のスペクトル変化が観察された。
1.芳香環のピークは全体的に低磁場にシフトする。
2.5ppm付近にN-メチル基のピークが出現する。
そして、それに対応する高分子化合物であるCD46からCD47に変換する際にも、上記1及び2のスペクトル変化が観察され、CD47がN-メチル化されていることを示している。
実施例3で作成した高分子化電子メディエータが、電子メディエータとしての機能を有しているか否かを確認するため酸化還元能の評価を行った。
高分子化電子メディエータとして実施例3で合成したCD47の酸化還元能を確認すると共に、電子メディエータ単体mPMSの酸化還元能と比較評価した。酸化還元能の測定は、CD47とmPMSのサイクリックボルタンメトリー(以下、「CV」と称する場合がある)測定により行った。
〜-0.5V、走査速度は0.5V/sで測定した。
結果を図7に示す。CD47の酸化還元ピークはmPMSと比較すると小さいが、酸化還元能を有していることが確認できた。なお、酸化還元ピークが小さくなる理由は、CD47を溶解させている有機溶媒中に、電気化学測定のための支持体であるTEAPを添加すると、CD47の多くは沈殿してしまうためであると考えられる。
本実施例では、高分子化電子メディエータを固定した電極を構築するため、上記実施例で合成検討を行った高分子化電子メディエータの電極基材への導入を検討した。ここでは、特に、電極基材に高分子化電子メディエータを共有結合を介して導入するための、電極基材の表面処理について予備検討を行った。
ここでは、上記実施例で合成検討を行った高分子化mPMSを電極基材であるカーボン基材に共有結合を介して固定化するため、カーボン基材の表面処理について検討を行った。具体的には、カーボン基材表面に、官能基としてp-ジアミノベンゼン、p-アミノ安息香酸の導入について検討した。
ここでは、カーボン基材として、カーボンフェルト(商品名:カーボンマット、密度50mg/cm2、ROSA社より購入)を使用した。5cm角に切断したカーボンフェルト 140mgを、p-ジアミノベンゼン塩酸塩 1.13g、水 6.3ml、DMF 18.8mlとの混合液に浸漬し、窒素雰囲気下で亜硝酸イソアミル 0.88mlを加え、40℃で10時間反応させた後、3日間放置した。反応時に、反応液より発泡が観察されると共に、カーボン基材の変形が認められた。反応後のカーボン基材を取り出した後、DMF及びメタノールで洗浄し、真空乾燥した。これにより、カーボン基材にアミノ基修飾が施された(CD10(一般式10〔化15〕)、図8のスキーム1)。
上記と同じ素材のカーボンフェルトをカーボン基材として使用した。5cm角に切断したカーボンフェルト 140mgを、p-アミノ安息香酸 0.67g、DMF 25mlとの混合液に浸漬し、窒素雰囲気下で亜硝酸イソアミル 0.42mlを加え、40℃で10時間反応させた後、3日間放置した。反応後のカーボン基材を取り出した後、DMF及びメタノールで洗浄し、真空乾燥した。これにより、カーボン基材にカルボキシル基修飾が施された(CD11(一般式11〔化16〕)、図8のスキーム2)。
本実施例では、高分子化電子メディエータを固定した電極を構築するため、上記実施例で合成検討を行った高分子化電子メディエータの電極基材への導入を検討した。ここでは、実施例6で検討した表面処理を施した電極基材に、共有結合を介して実施例3で合成した高分子化電子メディエータを導入した。
実施例6で検討したp-ジアミノベンゼン塩酸塩によりカーボン基材表面にアミノ基修飾を施したカーボン基材に、共有結合を介して実施例3で合成した高分子化mPMSを導入した。
窒素雰囲気下でCD45 175.3mg、アクリル酸 4mg、AIBN 4mg、脱水DMF 1.5mlを混合し、攪拌下で80℃で8時間重合させた。エバポレーションの後、メタノールで再沈殿させ、真空乾燥して、41.2mgのCD53-1を得た(図9のスキーム1)
10cm角に切断したカーボンフェルト4枚を、p-ジアミノベンゼン塩酸塩 4.5g、水 25ml、DMF 75mlとの混合液に浸漬し、窒素雰囲気下で超音波処理を5分間行った。なお、カーボンフェルトの素材は実施例6で使用したものと同じである。続いて、氷冷下で超音波処理を5分間行った。その後、氷冷下に亜硝酸イソアミル3.5mlを加え、自然温度上昇で40℃に達した後、窒素雰囲気下で超音波処理を5時間行った。反応溶液を除去した後、DMFで洗浄し、1Nの水酸化ナトリウムに浸漬した後、DMFで3回洗浄して真空乾燥し、CD58-1を得た(図9のスキーム2)。
上記で得られたCD58-1をCD53-1のクロロホルム30gの溶液に浸漬し、1日放置した。クロロホルムで洗浄し、真空乾燥し、CD58-2を得た(図9のスキーム3)。そのうち1枚を取り出し、脱水ジクロロメタン 30gとトリフルオロメタンスルホン酸メチルエステル 1mlの混合液に7時間浸漬した。そして、フェルトを取り出し、エーテルで1回、ジクロロメタンで3回洗浄し、CD58-3を得た(図9のスキーム4)。
本実施例においては、実施例1及び2の予備検討結果、及び実施例3のアクリル基重合型に続いて、高分子化電子メディエータの合成検討を行った。ここでは、スチレン基重合による電子メディエータの高分子化を検討した。
アクリル基重合型の高分子化mPMSであるCD47を合成した実施例3と同様に、出発化合物として1-ヒドロキシフェナジンを用いて、スチレン基重合による高分子化mPMSであるCD74を合成した。反応スキームは、1-ヒドロキシフェナジンからCD45までの合成は実施例3と同様に行った。
CD45をスチレンとラジカル共重合させて、CD73を合成した(図10のスキーム1)。なお、ラジカル共重合条件は、実施例3のCD45からCD46の合成と同様である。
CD73のフェナジン環をメチル化剤でN-メチル化してCD74を合成した(図10のスキーム2)。なお、N-メチル化条件は、実施例3のCD46からCD47の合成と同様である。
本実施例では、上記実施例で合成した高分子化電子メディエータを電極基材に固定した高分子化電子メディエータ固定化電極の酸化還元能力の評価を行った。
ここで、酸化還元能力を評価した高分子化電子メディエータ固定化電極は、実施例8で合成したポリスチレン重合型の高分子化電子メディエータであるCD74をカーボン基材に吸着結合により固定した高分子化mPMS固定化電極である。そして、電子メディエータ単体であるmPMSをカーボン基材に吸着結合により固定したmPMS固定化電極と酸化還元能力と比較評価した。酸化還元能の測定は、サイクリックボルタンメトリー(以下、「CV」と称する場合がある)測定により行った。
結果を図11及び12に示す。なお、図12は、図11の拡大図である。電位走査1回の結果では、CD74を吸着結合により固定した高分子化mPMS固定化電極は、mPMSを単体で吸着結合により固定したmPMS固定化電極に比べるとピークの大きさは小さいが、酸化還元ピークが認められた。これにより、高分子化mPMS固定化電極が酸化還元能力を有していることが理解できる。また、電位走査5回の結果から、mPMS単体を吸着したmPMS固定化電極の場合、電位走査を繰り返すとmPMSが電極から脱離してしまい、CD74を吸着結合により固定した高分子化mPMS固定化電極よりも酸化還元ピークが小さくなってしまうことが確認された。
上記実施例で作製した高分子化電子メディエータ固定化電極の安定性について、洗浄操作をした場合について評価した。
ここで、安定性を評価した電極は、実施例9と同様にCD74をカーボンクロスに吸着結合により固定した高分子化mPMS固定化電極であり、電子メディエータ単体であるmPMSを吸着結合により固定したmPMS固定化電極と洗浄操作に対する安定性を比較評価した。
結果を図13に示す。図13の横軸は洗浄回数を、縦軸は所定回数の洗浄後に電極上に吸着結合により固定されている電子メディエータ量(μg)を示す。CD74をカーボン電極に吸着結合により固定した高分子化mPMS固定化電極は、5回の洗浄操作後であっても脱離したmPMSは12%程度であった。一方、mPMS単体を吸着結合により固定したmPMS固定化電極は、洗浄操作毎にmPMSが脱離し、5回目の洗浄操作後には、93%程度と、ほとんどのmPMSが脱離していた。この結果から、高分子化電子メディエータ固定化電極は、洗浄操作によっても電子メディエータが安定して電極上に固定化されていることが理解できる。
上記実施例で作製した高分子化電子メディエータ固定化電極の安定性について、電位走査した場合について評価した。
ここで、安定性を評価した電極は、実施例9及び10と同様にCD74をカーボン基材に吸着結合により固定した高分子化mPMS固定化電極であり、電子メディエータ単体であるmPMSを吸着結合により固定したmPMS固定化電極と電位走査に対する安定性を比較評価した。
結果を図14に示す。図14の横軸は電位走査時間(時)を、縦軸は所定の電位走査時間経過後に電極上に吸着結合により固定されている電子メディエータ量(μg)を示す。CD74をカーボン基材に吸着結合により固定した高分子化mPMS固定化電極は、60分後であっても脱離したmPMSは4%程度であった。一方、mPMS単体を吸着結合により固定したmPMS固定化電極は、電位走査10分後にすでに50%程度のmPMSが脱離していた。そして、60分後には60%程度のmPMSが脱離していた。この結果から、高分子化電子メディエータ固定化電極は、電位走査によっても電子メディエータが安定して電極上に固定化されていることが理解できる。
上記実施例で作製した高分子化電子メディエータ固定化電極を用いて電池セルを構築し、長時間使用における耐久性を評価した。
ここで、安定性を評価した電極は、実施例9〜11と同様にCD74をカーボン基材に吸着結合により固定した高分子化mPMS固定化電極であり、かかる電極をアノード側電極とした電池セルを構築した。そして、電子メディエータ単体であるmPMSを吸着結合により固定したmPMS固定化電極をアノード側電極とした電池セルと長時間耐久性を比較評価した。
10mg/mlのアシネトバクター・カルコアセチカス(Acinetobacter Calcoaceticus) NBRC12552由来のグルコースデヒドロゲナーゼ(AcGDH)と1Mのイミダゾール(pH7.0)を、上記電極に含浸させてアノード側電極を作製した。
100mg/mlのビリルビンオキシダーゼ(BOD)(アマノエンザイム株式会社:BO“Amano"3)と0.05Mフェリシアン化カリウム/1Mイミダゾール(pH7.0)を、カーボン電極に含浸させてカソード側電極を作製した。
結果を図15に示す。図15の縦軸は電圧が330mV以下になるまでの時間(時)を示す。CD74をカーボン基材に吸着結合により固定した高分子化mPMS固定化電極は、開始電圧がmPMS単体を吸着結合により固定したmPMS固定化電極よりも低かった。しかしながら、高分子化mPMS固定化電極の長期間使用による電圧の低下は比較的穏やかで、電池寿命とされる330mV以下になったのは1176時間後であった。一方、mPMS固定化電極は、開始電圧は高かったが、760時間後に330mV以下になった。つまり、低電圧条件下では、mPMS単体よりも高分子化mPMSを固定した電極をカソード側電極とした方が、長時間安定であることが理解できる。この結果から、高分子化電子メディエータ固定化電極は、長時間使用においても安定であることが理解できる。
本実施例では、電子メディエータの高分子化を、電子メディエータをシロキサン主鎖に結合させる方法により検討した。
シロキサン原料であるHMS-992、HMS-501およびHMS-301は、アズマックスより購入した。その他の合成原料および溶媒は、Aldrichおよび東京化成工業より購入したものをそのまま用いた。化合物の同定は1H NMRスペクトル(JEOL JNM-ECX400P)により行った。
(1)出発化合物として1-ヒドロキシフェナジンを用いて、1-(3-ブテニルオキシ)フェナジンを合成した(図17)。
1-(3-ブテニルオキシ)フェナジンの合成:
窒素雰囲気下、1-ヒドロキシフェナジン(1.00 g、5.10 mmol)、炭酸カリウム(2.76 g, 20.0 mmol)、ジメチルホルムアミド(15 mL)および4-ブロモ-1-ブテン(2.03 mL, 2.70 g, 20.0 mmol)の混合物を80 °Cで6時間攪拌した。室温に冷却後、水(約100 mL)を加え、析出した固体を吸引濾過により回収した。少量のエタノールを加え加熱溶解させた後、大量の水を加えた。生成した固体を吸引濾過により回収し、真空乾燥することで目的物を得た。
1H NMR (CDCl3) δ 2.87 (m, 2H), 4.40 (t, J = 7.3 Hz, 2H), 5.18 (m, 1H), 5.28 (m, 1H), 6.02 (m, 1H), 7.10 (d, J = 7.6 Hz, 1H), 7.75 (m, 1H), 7.84 (m, 3H), 8.23 (m, 1H), 8.34 (m, 1H).
HMS-992-Phenの合成:
HMS-992(Gelest製, Mw = 1800‐2100; 0.12 g)、上記で合成した1-(3-ブテニルオキシ)フェナジン(0.50 g, 2.00 mmol)を脱水トルエン(5 mL)に溶解後、100 °Cに加熱した。白金触媒(platinum(0)-1,3-divinyl-1,1,3,3-tetramethyldisiloxane complex solution, 0.1 M キシレン中)を約50 μL添加後、100 °Cで16時間攪拌した。室温に冷却後、メタノール(約30 mL)を加え沈澱化させ、遠心分離(4000 rpm、40分間)にかけて上澄みを除去した。クロロホルムを良溶媒、メタノールを貧溶媒とする再沈澱処理および遠心分離を2回繰り返し、沈殿物を真空乾燥することで目的物を得た。
1H NMR (CDCl3) δ 0.08 (bs; Si-CH3), 0.61 (br; Si-CH2-), 1.55 (br; -CH2-), 1.95 (br; -CH2-), 4.05 (br; -CH2-O-), 6.68 (br; aromatic), 7.10‐8.30 (br; aromatic)
HMS-501(Gelest製, Mw = 900‐1200; 0.27 g)、1-(3-ブテニルオキシ)フェナジン(0.50 g, 2.00 mmol)を用いて、HMS-992-Phenと同様の方法で合成した。
1H NMR (CDCl3) δ 0.04 (bs; Si-CH3), 0.63 (br; Si-CH2-), 1.60 (br; -CH2-), 2.02 (br; -CH2-), 4.19 (br; -CH2-O-), 6.88 (br; aromatic), 7.40‐8.40 (br; aromatic)
HMS-301(Gelest製, Mw = 1900‐2000; 0.49 g)、1-(3-ブテニルオキシ)フェナジン(0.50 g, 2.00 mmol)を用いて、HMS-992-Phenと同様の方法で合成した。
1H NMR (CDCl3) δ 0.06 (bs; Si-CH3), 0.64 (br; Si-CH2-), 1.61 (br; -CH2-), 2.06 (br; -CH2-), 4.25 (br; -CH2-O-), 6.97 (br; aromatic), 7.40‐8.40 (br; aromatic).
HMS-992-Phzmの合成:
窒素雰囲気下、上記で合成したHMS-992-Phen(0.30 g)を脱水ジクロロメタン(5.0 mL)に溶解し、メチルトリフラート(1.0 mL)をゆっくり滴下した。室温で1時間攪拌した後、脱水アセトニトリル(5 mL)を添加し、さらに室温で2時間攪拌した。ジエチルエーテル(約30 mL)を加えてポリマーを沈澱化させ、上澄みを除去した。アセトニトリルを良溶媒、ジエチルエーテルを貧溶媒とする再沈澱を3回繰り返した後、真空乾燥することで目的物を得た。
1H NMR (CD3CN) δ 0.20 (bs; Si-CH3), 0.76 (br; Si-CH2-), 1.68 (br; -CH2-), 2.28 (br; -CH2-), 4.25 (br; -CH2-O-), 4.75 (br; N+-CH3), 7.27 (br; aromatic), 7.60‐8.60 (br; aromatic)
上記で合成したHMS-501-Phen(0.27 g)を用いて、HMS-992-Phzmと同様の方法で合成した。
1H NMR (CD3CN) δ 0.08 (bs; Si-CH3), 0.70 (br; Si-CH2-), 1.68 (br; -CH2-), 2.36 (br; -CH2-), 4.27 (br; -CH2-O-), 4.74 (br; N+-CH3), 7.31 (br; aromatic), 7.60‐8.60 (br; aromatic)
上記で合成したHMS-301-Phen(0.40 g)を用いて、HMS-992-Phzmと同様の方法で合成した。なお、再沈澱処理の際に、ポリマーの沈澱化が不十分だったため、上澄みの除去には遠心分離(4000 rpm, 15分)を用いた。
1H NMR (CD3CN) δ 0.07 (bs; Si-CH3), 0.71 (br; Si-CH2-), 1.68 (br; -CH2-), 2.36 (br; -CH2-), 4.34 (br; -CH2-O-), 4.79 (br; N+-CH3), 7.41 (br; aromatic), 7.60‐8.60 (br; aromatic)
本実施例では、上記実施例13で合成したシロキサン主鎖高分子化電子メディエータの物理刺激安定性評価を行った。ここでは、シロキサン主鎖高分子化電子メディエータ固定化電極に、物理刺激として洗浄を施し、その安定性を評価した。
上記実施例13にて合成したHMS-992-Phzm、HMS-501-Phzm、HMS-301-Phzmのいずれか一種類を吸着固定した電極、上記実施例3で合成したアクリル基重合型の高分子化mPMSであるCD47を吸着固定した電極、及びmPMSをそのまま含浸させた電極について検討した。電極としては、上記実施例10〜12と同様、カーボンクロスを用いた。電極へのシロキサン主鎖高分子化電子メディエータの吸着固定及びmPMSの含浸についても上記実施例と同様に行った。これらの電極に洗浄操作を行い、その安定性について比較評価した。
結果を図19に示す。図19の横軸は洗浄回数を、縦軸は所定回数の洗浄時間後に電極上に固定化されている電子メディエータの吸着量(μg)を示す。mPMSをそのまま含浸したカーボン電極は、洗浄するごとにmPMSが脱離し、洗浄5回目にはほとんどのmPMSが脱離してしまった(93%の脱離)。HMS-992-Phzm、HMS-501-Phzm、HMS-301-Phzmの順に脱離したmPMS量は低下した。特にHMS-301-Phzmは5%程度の脱離であり、吸着固定安定性を保持していることが理解できた。また、CD47固定化電極と比較しても固定安定性がやや高かった。つまり、ポリマー主鎖を更に疎水性としたことから疎水性の電極基材への吸着固定安定性が向上した理解される。したがって、シロキサン主鎖高分子化電子メディエータ固定化電極は、物理刺激に対する固定安定性が高いことから、バイオ電池の電極として使用した時の、電子メディエータ溶出による出力の低下を防ぐことが期待できることが判明した。
本実施例では、上記実施例13で合成したシロキサン主鎖高分子化電子メディエータの電気刺激安定性評価を行った。ここでは、シロキサン主鎖高分子化電子メディエータ固定化電極を、電気刺激として電位走査を施し、その安定性を評価した。
実施例14と同様にして構築したHMS-992-Phzm、HMS-501-Phzm、HMS-301-Phzmのいずれか一種類を吸着固定した電極、CD47を吸着固定した電極、及びmPMSをそのまま含浸させた電極を電位走査した場合の安定性について、比較評価した。
結果を図20に示す。図20の横軸は電位走査時間(分)を、縦軸は所定の電位走査時間経過後に電極上に固定されている電子メディエータ量(μg)を示す。かかる結果より、mPMSをそのまま含浸した電極は、電位走査 60分後には40% 程度の電子メディエータが脱離した。HMS-992-Phzm、HMS-501-Phzm、MS301-Phzm固定化電極は5%未満の脱離であり、高い吸着固定安定性を保持していた。また、CD47固定化電極と比較しても固定安定性がやや高かった。したがって、シロキサン主鎖高分子化電子メディエータ固定化電極は、物理刺激のみならず電気刺激に対する固定安定性も高いことから、バイオ電池の電極として使用した時の、電子メディエータ溶出による出力の低下を防ぐことが期待できることが判明した。
上記実施例13で合成したシロキサン主鎖高分子化電子メディエータ固定化電極の酸化還元能力の評価を行った。
実施例14及び15と同様にして構築したHMS-992-Phzm、HMS-501-Phzm、HMS-301-Phzmのいずれか一種類を吸着固定した電極、mPMSをそのまま含浸させた電極、及び実施例8で合成したポリスチレン重合型の高分子化電子メディエータであるCD74を吸着固定した電極の酸化還元能力を比較評価した。
結果を図21に示す。図21の横軸は電位(V)を、縦軸は電流(A)を示す。HMS-992- Phzm、HMS-501- Phzm、HMS-301- Phzm固定化電極は、mPMSをそのまま含浸した電極との比較で酸化還元電位は正側に0.2 V移動しており、ピーク時の酸化電流は両者とも同レベルであった。また、CD74固定化電極との比較でもやや高いことが判明した。この結果から、シロキサン主鎖高分子化電子メディエータは、より柔軟性のある主鎖を持つため、CD74よりも酸化還元能力においてやや有利であることが判明した。したがって、シロキサン主鎖高分子化電子メディエータは、CD74と比較して電極への電子伝達効率がやや高く、電池の高出力化に貢献できることが理解される。
本比較例では、ポリマー主鎖と電子メディエータ間を連結するリンカー部位の鎖長の好適化を検討すべく、リンカー鎖長が短くポリマー主鎖と電子メディエータの距離が接近した高密度集積型高分子化電子メディエータの合成を検討した。
(1)出発化合物1−ヒドロキシフェナジンを導入したアクリル酸モノマーを合成した(図22のスキーム1)。
M1の合成:
窒素雰囲気下、1−ヒドロキシフェナジン(0.50g、2.55 mmol)、脱水ジクロロメタン(14 ml)およびトリエチルアミン(0.5ml)混合物にメタクリル酸クロリド(0.28g、2.70mmol)をゆっくり加え、室温で4時間攪拌した。クロロホルム(50ml)を加えた後、有機層を飽和塩化アンモニウム水溶液および飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、ろ過し、ろ液からロータリーエバポレーターにより溶媒を除去した。残渣を少量のクロロホルムに溶解後、ヘキサン(約100ml)を加え、4℃で一晩静置した。生成した結晶を吸引ろ過により回収し、真空乾燥することで目的物を得た。
1H NMR(CDCl3)σ2.23(s,3H),5.92(1H), 6.60(1H), 7.60(1H), 7.80-7.87(m, 3H), 8.16-8.25(m, 3H).
P1の合成:
窒素雰囲気下、M1(0.50g, 1.89 mmol)、アゾビスイソブチロニトリル(9.4mg, 0.057 mmol)および脱水トルエン(3ml)の混合物を100℃で10時間攪拌した。室温に冷却後、メタノール(約10ml)を加え、沈殿物を生成させた。吸引ろ過により沈殿物を回収後、真空乾燥することで目的物を得た。
1H NMR(CDCl3)σ2.05(br,3H),3.13(br,2H), 6.96-8.05(br, 7H).
ONM015の合成:
窒素雰囲気下、上記で得られたP1(0.12g, 0.45 mmol)を脱水ジクロロメタン(1.5ml)に溶解後、メチルトリフラート(250μl)をゆっくり滴下した。室温で2時間攪拌した後、脱水アセトニトリル(3.0ml)を加え、均一溶液とした。メチルトリフラート(50μl)をゆっくり滴下した後、室温で2時間攪拌した。ジエチルエーテル(約20ml)を加えて沈殿を生成させた後、デカンテーションにより上澄みを除去した。残渣をアセトニトリル/ジエチルエーテルで再沈殿させた後、沈殿物を吸引ろ過により回収し、真空乾燥することで目的物を得た。
1H NMR(CD3CN)σ1.60-3.00(br,5H),4.80(br,3H), 7.30-8.55(br, 7H).IR(ATR)3105(w), 2995(w), 2758(w), 2652(w), 1755(s), 1551(m), 1479(s), 1356(m), 1250(s), 1227(s), 1153(s), 1095(s), 1028(vs), 741(s), 636(vs)
本比較例では、高密度集積型高分子化電子メディエータの安定性評価を行った。安定性評価としては、物理安定性及び電気安定性評価を行った。
上記比較例1で合成した高密度集積型高分子化電子メディエータ(ONM015)を電極に吸着固定した固定化電極に、物理刺激として洗浄を施し、その安定性を評価すると共に、電気刺激として電位走査を施し、その安定性を評価した。詳細には、物理的刺激に関しては上記実施例14、化学的刺激に関しては上記実施例15と同様の手法を用いた検討した。
本実施例では、ポリマー主鎖と電子メディエータの間に存在し、両者を連結するリンカーの鎖長の酵素触媒電流に与える影響を検討した。
上記実施例3で合成したCD47、及び上記比較例1で合成したONM015を吸着固定した電極、及びmPMSをそのまま含浸して吸着固定させた電極を用いて、これらの電極の酵素触媒電流を測定した。なお、電子メディエータの電極への吸着固定は、電子メディエータ溶液(溶媒:アセトニトリル)75μlをカーボン電極(3cm×0.5cm)に染み込ませ、O/N 真空乾燥させることにより行った。そして、酵素触媒電流の測定は、上記固定化電極をグルコース脱水素酵素(AcGDH:実施例12を参照のこと)を含む測定溶液中で電位走査(CV測定)を行った。そして、グルコースを添加する前と後の波形から酵素触媒電流を測定した。なお、酵素は事前にチューブ内でホロ化しておき(4℃、30分以上)、それを最終濃度が1Mとなるようにイミダゾール溶液と混ぜ合わせたものを測定液として用いた。また、CV測定には3電極系を用い、高分子化電子メディエータ固定化電極を作用極と詩、対極にはカーボン電極、参照極には銀/塩化銀電極を用いた。測定電位は0.5 〜 -0.5V、走査速度は0.02V/sで測定した。
結果を図23及び図24に示す。図23はONM015、図24はCD47の結果であり、両図とも横軸は電位(V)、縦軸は電流(A)を示す。リンカー部位の鎖長が2原子(炭素原子1、酸素原子)のONM01の酵素触媒電流が6.6 μAであったのに対して、リンカー部位の鎖長が5原子(炭素原子3、酸素原子2)のCD47は43 μAであった。つまり、リンカー部位の鎖長が長いCD47の方が、6倍以上酸素触媒電流が向上した。かかる結果より、リンカー部位の鎖長が長い方が、酵素触媒電流が大きくなる傾向があることが判明した。酵素触媒電流が大きいほど電池の電極として高出力が期待できることから、リンカー部位の鎖長がある程度の長さを有する高分子化電子メディエータ方が、バイオ電池電極として有用であることが理解される。
Claims (19)
- カーボン基材に前記カーボン基材と生体触媒との間の電子移動を媒介可能な電子メディエータを固定した修飾電極であって、
電子メディエータが結合して重合性モノマーが形成され、当該重合性モノマー同士をさらに重合して得られたポリマーが高分子化電子メディエータとして前記カーボン基材に固定されている、修飾電極。 - 前記電子メディエータが、フェナジン系化合物である請求項1に記載の修飾電極。
- 前記フェナジン系化合物の主骨格が、1-メトキシ-5-メチルフェナジニウム塩、5-メチルフェナジニウム塩、及び5-エチルフェナジニウム塩から選択される請求項2に記載の修飾電極。
- 前記電子メディエータと前記重合性モノマーが、2〜6個の炭素原子及び1〜2個の酸素原子を任意の順序で結合させた直鎖のリンカー部位を介して結合されている請求項1〜3の何れか一項に記載の修飾電極。
- 前記高分子化電子メディエータが、前記電子メディエータを結合したビニルモノマーを重合したものであって、前記ビニルモノマーにはアクリル酸、スチレン、ビニルエーテル、アクリルアミド、メタクリル酸のうちの1つ以上を選択して使用する請求項1〜4の何れか一項に記載の修飾電極。
- 前記高分子化電子メディエータが、前記電子メディエータを結合したアクリル酸モノマーとスチレン或いは芳香族系ビニルポリマーとを重合比20:1〜1:5で重合したものである請求項1〜4の何れか一項に記載の修飾電極。
- 前記高分子化電子メディエータが、シロキサン構造を有するポリマーに前記電子メディエータを結合したものである請求項1〜4の何れか一項に記載の修飾電極。
- 前記高分子化電子メディエータの固定が吸着結合による請求項1〜10の何れか一項に記載の修飾電極。
- バイオ電池のアノード側電極又はバイオセンサー用電極である、請求項1〜11の何れか一項に記載の修飾電極。
- (a)電子メディエータを結合させて重合性モノマーを形成し、この重合性モノマーを重合して高分子化電子メディエータとしてのポリマーを合成する工程、
(b)前記高分子化電子メディエータをカーボン基材に固定する工程、を有する修飾電極の製造方法。 - 前記電子メディエータが、環構成原子として窒素原子を含む複素環骨格を有する化合物であって、前記窒素原子が置換基により置換されている構造を有する場合には、
前記工程(a)において、前記電子メディエータを結合させた重合性モノマーの重合後の最終段階で前記窒素原子の置換を行う請求項13に記載の修飾電極の製造方法。 - 前記窒素原子の置換に際して、前記電子メディエータを結合させた重合性モノマーの重合によって作製される高分子ポリマー中間体が官能基を有する場合、前記官能基がハロゲノ基、芳香族炭化水素基、エステル基、エーテル基、及びカルボキシル基から選択される請求項14に記載の修飾電極の製造方法。
- 前記電子メディエータが、1-メトキシ-5-メチルフェナジニウムメチルスルファート、5-メチルフェナジニウムメチルスルファート、及び5-エチルフェナジニウムメチルスルファートから選択される請求項13〜15のいずれか一項に記載の修飾電極の製造方法。
- 前記工程(b)において、前記固定が吸着結合による請求項13〜16の何れか一項に記載の修飾電極の製造方法。
- 請求項1〜12の何れか一項に記載の修飾電極をアノード側電極として備えるバイオ電池。
- 請求項1〜12の何れか一項に記載の修飾電極を備えるバイオセンサー。
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