JP6456681B2 - 修飾電極、当該修飾電極を備えるバイオ電池並びにバイオセンサー - Google Patents

修飾電極、当該修飾電極を備えるバイオ電池並びにバイオセンサー Download PDF

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Description

本発明は、修飾電極、及び当該修飾電極を備えるバイオ電池並びにバイオセンサーに関するものである。
燃料電池は、水素等の燃料を酸素等の酸化剤で酸化することで、直接電気エネルギーを取り出す化学電池である。なかでもバイオ電池は、グルコース等の糖やアルコール等のバイオマスを燃料とし、また電極触媒として酵素や微生物等の生体触媒を利用するため、クリーンで安全、かつ安価な次世代電源として注目されている。つまり、バイオ電池は、生体内のエネルギー変換系を応用した燃料電池であり、電極触媒として生体触媒を用い、かかる生体触媒による酸化還元反応と電極反応を共役させて電気エネルギーを取り出す発電装置である。また、バイオセンサーは、酵素等の生体物質が有する分子認識機構を応用し、バイオ電池と同様に生体触媒による酸化還元反応を電極反応と共役させて電気信号に変換する感知装置である。
酵素の触媒活性を利用するバイオ電池の場合、酵素が当該酵素の基質である燃料を酸化することにより取り出された電子を電極に効率的に伝達する必要がある。また、バイオセンサーにおいても、酵素と当該酵素の基質である測定対象との酵素反応により取り出された電子を電極に効率的に伝達する必要がある。つまり、バイオ電池及びバイオセンサーの開発において、酵素と電極間の効率的な電子伝達が非常に重要である。
しかしながら、酵素の活性中心は絶縁性のタンパク質の殻や糖鎖に覆われているため、酵素触媒電流として観測できるほど速く電極との間で電子伝達を行うことは一般的に難しい。そのような場合、低分子の酸化還元分子を酵素と電極間の電子伝達の電子メディエータとして利用し、酵素反応系と電極系を共役させている。このような電子メディエータを介して酵素と電極間の電子伝達を行うタイプの酵素電極では、酵素の活性中心と電極とを導電体で接続するものではないため、最終的な電流値の大きさは、電極付近の電子メディエータ濃度、厳密には濃度勾配に依存することとなる。したがって、電子メディエータ型酵素電極の酵素触媒電流値の向上を図るためには、電極近傍に電子メディエータを高濃度に局在させることが重要となる。また、バイオ電池の使用形態として、糖分等の燃料を含む電解質溶液の交換若しくは補充のみで連続的に安定して使用できることが理想的である。これを実現するためには、電子メディエータを電極上に長期にわたって高濃度に維持できる固定化技術の構築が必要である。
かかる事情を鑑み、例えば、特許文献1には、電極上に、アルカンチオールや親水性高分子を介して酵素を共有結合により固定した酵素電極を利用したバイオセンサーが開示されている。電子メディエータについても酵素と共に固定することができる。これにより、電極上での酵素の安定性及び基質との反応性が向上し、高精度な測定を実現できるというものである。しかしながら、特許文献1の技術は、親水性の高分子を介して酵素を固定するものであるが、高分子中に疎水部を有しないことから親水性の溶液中に溶出し易いため、固定を強固にするためには官能基を付加するなどの化学的な電極表面処理が必要であった。
また、電子メディエータを電極近傍に高密度で存在するように固定するための様々な技術も報告されている(特許文献2〜4等を参照)。例えば、特許文献2には、内部に空隙を有する電極の表面に酵素を固定した後、有機溶媒に疎水性の電子メディエータを溶解した溶液を電極表面に塗布することにより構築された酵素-電子メディエータ固定電極が開示されている。特許文献3には、酵素を親水性媒体内に固定及び保持することにより形成した酵素反応層と、電子メディエータを疎水性媒体内に固定及び保持することにより形成された酵素移動媒体層を有する酵素-電子メディエータ固定電極が開示されている。これらの技術によれば、酵素を失活させずに疎水性の電子メディエータを均一かつ高密度に電極表面に固定することができ、また電子メディエータの電極からの溶出及び脱離を防ぐことができるというものである。特許文献4には、酵素や電子メディエータをイオン伝導性ポリマーのような固定化物質に組み込むことにより構築された酵素-電子メディエータ固定電極が開示されている。しかしながら、特許文献2〜4の技術は、電子メディエータを固定化物質などの媒体に共有結合させるものではない。そのため、電極からの電子メディエータの脱離及び溶出を効果的に防止することができない可能性があり、電子メディエータの固定安定性の面で市場の要求を十分に満たすものではなかった。さらに、特許文献2〜3の技術は、疎水性の電子メディエータの使用を前提とするものであり、1-メトキシ-5-メチルフェナジニウムメチルスルファート(mPMS)等の親水性の電子メディエータには適用できないか、電極への固定が弱くなるため電極からの脱離及び溶出の可能性が非常に高くなるという問題があった。かかる電極からの電子メディエータの脱離及び溶出は、例えば電極を燃料電池のアノード側電極として組み込んだ場合に、アノード側の出力低下を招く。それだけでなく、溶出した電子メディエータがカソード側とアノード側を隔てる隔膜等を透過してカソード側に移動し、カソード側の反応妨害の原因となって更なる出力低下を招くという不具合が生じる。そのため、電極からの電子メディエータの脱離及び溶出を効果的に防止可能な固定化技術を構築するため、更なる改善が必要であった。
そこで、電極表面にポリマーの側鎖に結合させた電子メディエータを固定する技術が開発されている(非特許文献1、及び特許文献5等を参照)。非特許文献1の技術は、カーボンブラック表面上にグラフトさせたポリマーに電子メディエータとしてハイドロキノンを固定するものである。詳細には、アミド結合を介してハイドロキノンをポリアクリル酸骨格に固定する直接固定の他、アルキル側鎖やジ(エチレンオキシド)側鎖等のリンカーを用いて固定することが記載されている。しかしながら、ハイドロキノンはポリマーに結合しているものの、カーボン電極には結合されていないため、電極表面からハイドロキノンが溶出し拡散する虞がある。また、ポリマーをカーボン電極に結合させるため、電極表面に化学的な処理を施す必要がある。特許文献5の技術は、電子メディエータが導入された親水性ポリマー層で表面の一部が被覆された電子メディエータ固定電極に関するものである。電子メディエータの親水性ポリマー層への導入は、アミド結合やイミド結合などの共有結合によることが記載されている。しかしながら、電子メディエータが結合しているポリマーは親水部のみからなるため、疎水的な電極から脱離及び溶出しやすく、固定を強固にするためには官能基を付加するなどの化学的な電極表面処理が必要であった。
国際公開第2008/102639号公報 特開2010−267459号公報 特開2004−294231号公報 特開2006−508519号公報 国際公開第2007/037228号公報
電子メディエータを介して酵素と電極間の電子伝達を行うタイプの酵素電極をバイオ電池やバイオセンサーの電極として実用化を進めるためには、電子メディエータが耐久性をもって、安定的にその機能を発揮し得るような技術の構築が求められていた。このような技術の構築は、バイオ電池の安定的な出力向上やバイオセンサーの感度向上等につながり、当該分野における技術発展を促進する。そこで、本発明は、電子メディエータの電極上での固定残存率が未修飾の電極と比較して高く、かつ電子メディエータが酸化還元能を十分に発揮し酵素と電極間の効率的な電子授受を媒介可能な電子メディエータ修飾電極の提供を目的とする。当該電子メディエータ修飾電極を酵素の触媒活性を利用したバイオ電池及びバイオセンサー用電極として構築した際に、得られる酵素触媒電流の向上を図ることを目的とする。
そこで、本発明者らは上記目的を達成するべく、鋭意研究を行った結果、電子メディエータをポリマーに導入した高分子化電子メディエータにおいて、高分子部分であるポリマーに親水部と疎水部を設けることにより、疎水部が疎水的な電極基材への電子メディエータの固定安定性を向上できると共に、親水部が電解質溶液中での電子メディエータの運動性及び酵素との反応性を向上できることを見出した。これにより、安定して酸化還元能及び電子伝達能を発揮することができる電子メディエータ修飾電極を構築できることを見出した。そして、かかる修飾電極を利用することにより、長時間耐久性、及び酵素触媒電流の面で優れたバイオ電池やバイオセンサーを構築できることを見出した。これらの知見に基づいて本発明を完成するに至った。
即ち、以下の〔1〕〜〔14〕に示す発明を提供する。
〔1〕導電性基材に前記導電性基材と生体触媒との間の電子伝達を媒介可能な電子メディエータを固定した修飾電極であって、
前記電子メディエータは、親水部と疎水部が結合したポリマーの前記親水部上の前記疎水部との結合部位から3〜6 nmの位置に導入された高分子化電子メディエータとして電極に固定された修飾電極。
〔2〕前記ポリマーが、前記親水部と前記疎水部が直鎖状に結合した直鎖型ポリマー、又は、前記疎水部の主鎖に前記親水部の側鎖が分岐状に結合した分岐型ポリマーである上記〔1〕の修飾電極。
〔3〕前記ポリマーの親水部と疎水部の重量比が、80:20〜30:70である上記〔1〕又は〔2〕の修飾電極。
〔4〕前記ポリマーの親水部と疎水部の鎖長比が、85:15〜35:65である上記〔1〕〜〔3〕の何れかの修飾電極。
〔5〕前記高分子化電子メディエータの電極への固定が、前記疎水部の前記電極への吸着による上記〔1〕〜〔4〕の何れかの修飾電極。
〔6〕前記電子メディエータが、フェナジン系化合物である上記〔1〕〜〔5〕の何れかの修飾電極。
〔7〕前記フェナジン系化合物の主骨格が、1-メトキシ-5-メチルフェナジニウム塩、5-メチルフェナジニウム塩、及び5-エチルフェナジニウム塩から選択される上記〔6〕の修飾電極。
〔8〕前記高分子化電子メディエータが、下記一般式(1)で表される上記〔7〕の修飾電極。
Figure 0006456681
〔式中、n=4〜30、m=11〜99、R1=アルキル基、アリール基、又はアルキルエーテル基、R2=水素又はアルキル基である。〕
〔9〕前記高分子化電子メディエータが、下記一般式(2)で表される上記〔8〕の修飾電極。
Figure 0006456681
〔10〕前記高分子化電子メディエータが下記一般式(3)で表される上記〔7〕の修飾電極。
Figure 0006456681
〔式中、x=0.98〜0.5、m=3〜30、R1=アルキル基、アリール基、又はアルキルエーテル基、R2=水素又はアルキル基、R3=アルキル基(炭素数2〜18)、フェニル基、ハロゲン化アルキル基(炭素数2〜18)、ヒドロキシアルキル基(炭素数2〜18)、又はビニル基であり、但し、R3基の全てが同一であっても、一部若しくは全部が異なっていてもよい〕
〔11〕前記高分子化電子メディエータが下記一般式(4)で表される上記〔10〕の修飾電極。
Figure 0006456681
〔式中、x=0.94〕
〔12〕バイオ電池のアノード側電極又はバイオセンサー用電極である上記〔1〕〜〔11〕の何れかの修飾電極。
〔13〕上記〔1〕〜〔12〕の何れかの修飾電極をアノード側電極として備えるバイオ電池。
〔14〕上記〔1〕〜〔12〕の何れかの修飾電極を備えるバイオセンサー。
上記〔1〕〜〔12〕の構成によれば、電極基材と電極触媒である酵素等の生体触媒間の電子伝達を媒介できる修飾電極を提供することができる。本発明の修飾電極は、使用に際し、未修飾の電極と比較して電子メディエータの高い固定残存率及び長期間耐久性を示すと共に、高い酸化還元能及び電子伝達能を発揮することができる。詳細には、本発明の修飾電極に固定される高分子化電子メディエータの高分子部分が疎水部と親水部を含むように構成した。これにより、疎水部が、疎水的な電極基材上への電子メディエータの固定安定性を向上させ、高い固定残存率及び長期間耐久性に貢献することができる。親水部が、電解質溶液中での電子メディエータの運動性を向上させ、酵素の酸化還元中心と電子メディエータ間、及び電子メディエータと電極間の円滑な電子授受に貢献することができる。このような優れた機能を発揮し得る本発明の修飾電極は、バイオ電池やバイオセンサーの電極として好適に利用することができる。特に長時間耐久性、及び酵素触媒電流の面で優れたバイオ電池やバイオセンサーを構築でき、様々な産業分野に利用することができる。
特に、上記〔2〕の構成によれば、直鎖型及び分岐型構造の高分子化電子メディエータを固定した修飾電極を提供することができる。導電性基板の種類、高分子化電子メディエータの導電性基板への固定化手法や使用目的等に応じて適宜、適切な構造を有する高分子化電子メディエータを固定した修飾電極を提供でき、様々な産業分野に利用することができる。
上記〔3〕及び〔4〕の構成によれば、高分子化電子メディエータの高分子部分のポリマーにおける親水部と疎水部の重量比及び鎖長比が最適化された修飾電極を提供できる。これにより、疎水部による電極上での高分子化電子メディエータの固定安定性向上効果と、親水部による酵素との反応性向上効果とが好適に両立した修飾電極を提供できる。かかる修飾電極を利用することにより、長時間耐久性、及び酵素触媒電流の面で特に優れたバイオ電池やバイオセンサーを構築でき、様々な産業分野に利用することができる。
上記〔5〕の構成によれば、固定に際して導電性基材の表面修飾等の複雑な工程を経ずに簡便に高分子化電子メディエータを固定した本発明の修飾電極を提供することができる。吸着結合は固定がゆるやかであるが、高分子化電子メディエータの高分子部分を構成するポリマーの疎水部の割合や、電解質溶液・導電性基材の種類などを変えることにより、疎水性の導電性基材への吸着結合力を高めることができ、本発明の修飾電極は高い固定残存率及び長期間耐久性を更に向上させ得ることができる。また、吸着結合による固定は導電性基材の表面処理を必要とせず、当該基材の電極性能を劣化させることもない。更に、吸着結合は柔軟な固定方法であるため、高分子化電子メディエータの電解質溶液中での運動性をも良好に維持でき酵素との反応性に負の影響を与えることもなく、また、電子メディエータの酸化還元能力及び電子伝達能の発揮においても有利であるとの利点をも有する。これを利用することにより、長時間耐久性、及び酵素触媒電流の面で特に優れたバイオ電池やバイオセンサーを構築でき、様々な産業分野に利用することができる。
上記〔6〕及び〔7〕の構成によれば、酸化還元能及び電子伝達能に優れたフェナジン系化合物を高分子化電子メディエータとして利用することにより、本発明の更なる機能の増強を図ることができる。
上記〔8〕及び〔9〕の構成によれば、疎水部としてアルキル基、親水部としてポリエチレングリコールからなる直鎖型の高分子化電子メディエータを固定した修飾電極を提供することができる。これにより、アルキル基は、表面処理を行わずとも疎水性の導電性基材に吸着結合により固定でき、ポリエチレングリコールは酵素の活性を損なうことなく電子メディエータに電解質溶液中での運動性を付与することができるため、疎水部による電極上での高分子化電子メディエータの固定安定性向上効果と、親水部による酵素との反応性向上効果とが好適に両立した修飾電極を提供できる。かかる修飾電極を、長時間耐久性、及び酵素触媒電流の面で特に優れたバイオ電池やバイオセンサーの構築に利用でき、様々な産業分野に利用することができる。
上記〔10〕及び〔11〕の構成によれば、疎水部としてシロキサン構造を有するポリマーの主鎖に親水部としてポリエチレングリコールの側鎖を有する分岐型の高分子化電子メディエータを固定した修飾電極を提供することができる。表面処理を行わずとも疎水性の導電性基材に吸着結合により固定でき、ポリエチレングリコールは酵素の活性を損なうことなく電子メディエータに電解質溶液中での運動性を付与することができるため、疎水部による電極上での高分子化電子メディエータの固定安定性向上効果と、親水部による酵素との反応性向上効果とが好適に両立した修飾電極を提供できる。疎水部を構成するシロキサン構造体は柔軟性を有するため、高分子化電子メディエータの電解質溶液中での運動性をも良好に維持でき酵素との反応性に負の影響を与えることもなく、また、電子メディエータの酸化還元能力及び電子伝達能の発揮においても有利であるとの利点をも有する。かかる修飾電極を、長時間耐久性、及び酵素触媒電流の面で特に優れたバイオ電池やバイオセンサーの構築に利用でき、様々な産業分野に利用することができる。
上記〔12〕の構成によれば、長時間耐久性、及び酵素触媒電流の面で優れたバイオ電池やバイオセンサー用の修飾電極を提供でき、様々な産業分野に利用することができる。
上記〔13〕〜〔14〕の構成によれば、上述の優れた性能を有する本発明の修飾電極を利用した長時間耐久性や酵素触媒電流の面で特に優れた性能を有するバイオ電池及びバイオセンサーを提供することができ、様々な産業分野に利用することができる。
本発明の高分子化電子メディエータの酵素電極上での作用機構を模式的に表した図である。 本発明の高分子化電子メディエータの合成検討を行った実施例1の合成反応スキームを示す図であり、直鎖型高分子化電子メディエータBrij-S10-Phzmの合成反応スキームを示す。 本発明の高分子化電子メディエータの合成検討を行った実施例2の合成反応スキームを示す図であり、分岐型高分子化電子メディエータCMS-221-Phzmの合成反応スキームを示す。 本発明の高分子化電子メディエータの酸化還元能評価を行った実施例4の結果を示すグラフである。 本発明の高分子化電子メディエータの酵素触媒電流への影響評価を行った実施例5の結果を示すグラフである。 本発明の高分子化電子メディエータ固定電極を備えた電池セルの評価を行った実施例6において検討を行った電池セルの模式図 本発明の高分子化電子メディエータ固定電極を備えた電池セルの評価を行った実施例6の結果を示すグラフである。
1.本発明の修飾電極
本発明の修飾電極は、導電性基材に高分子化電子メディエータが固定されている。高分子化電子メディエータは、電子メディエータがポリマーに導入されて構成された、電子メディエータ−ポリマー結合体である。ポリマー部分は、親水部及び疎水部から構成され、前記電子メディエータは、前記親水部に導入される。これにより電解質溶液等の水性媒体中での高い運動性と電極への吸着特性を両立することが可能となる。
導電性基材としては、カーボン基材、アルミニウム、銅、金、白金、銀、ニッケル、パラジウム等の金属又は合金、SnO2、In2O3、WO3、TiO2等の導電性酸化物等、従来公知の材質の導電性物質を使用することができる。ここで、カーボン基材は、炭素若しくは炭素化合物を含む導電性基材であり、例えば、カーボンファイバー、カーボンブラック、グラファイト、活性炭、グラッシーカーボン、フラーレン、グラフェン、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーン等の炭素材を含んで構成される。例えば、カーボンフェルトやカーボンペーパー、カーボンクロス等が挙げられる。
導電性基材の大きさ、厚み及び形状等は特に限定されるものではなく、使用目的に応じて適宜調整することができる。例えば、平板形状の他、球体形状、立方体等の立体形状であってもよい。三次元的な体積を有する基材であってよく、また、多孔性構造体であってもよい。また、単層又は2種以上の積層構造をもって構成してもよい。
高分子化電子メディエータの高分子部分を構成するポリマーは複数個の重合性モノマーが重合して結合した高分子化合物である。本発明で使用されるポリマーは、親水部及び疎水部から構成されるコポリマーである。コポリマーとして親水部と疎水部が直鎖状に結合したブロックコポリマーのような形態をとる直鎖型ポリマーであっても、疎水部を疎水性のポリマーの主鎖で構成し、かかる疎水部の主鎖から親水部の側鎖が分岐状に結合しグラフトコポリマーのような形態をとる分岐型ポリマーであってもよい。分岐型ポリマーにおいて、主鎖に結合する側鎖の数は特に制限はない。また、複数の側鎖が導入されている場合においても導入間隔に制限はなく、任意の一定間隔で導入されていても、またランダムに導入されていてもよい。高分子化電子メディエータを固定する導電性基板の種類、固定化手法や使用目的等に応じて適宜、適切な構造を有する高分子化電子メディエータを構築若しくは選択することができる。
ここで、親水部は、親水性を示すポリマーで構成される。このとき、同じ種類の重合性モノマーが重合したホモポリマーであっても、異なる種類の重合性モノマーが重合したコポリマーであってもよい。コポリマーとしては、交互コポリマー、ブロックコポリマー、ランダムコポリマーの何れであってもよい。親水部は親水性モノマーのみを重合させたポリマーで構成されることが好ましいが、親水部が全体として親水性を示す限りにおいては、一部に疎水性モノマーを含んで重合させたコポリマーとして構成することを排除するものではない。また、親水部の構造は、直鎖状、環状、分岐状等の何れであってもよく、これらを組み合わせた構造であってもよいが、好ましくは直鎖状である。
親水性ポリマーとしては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールやコポリマーポリ(エチレングリコール-ran-プロピレングリコール)モノブチルエーテル等のポリアルキレングリコール類、ポリビニルアルコールやコポリマーポリ(ビニルアルコール-co-エチレン)等のポリビニルアルコール類、ポリ(メチルビニルエーテル)等のポリビニルエーテル類、ポリ(N-ビニルピロリドン)やコポリマーポリ(1-ビニルピロリドン-co-酢酸ビニル)等のポリビニルピロリドン類、ポリビニルアミン類、ポリアクリルアミド、ポリ(2-アクリルアミド-2-メチル-1-プロパンスルホン酸)、ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)、コポリマーポリ(アクリルアミド-co-アクリル酸)やコポリマーポリ(N-イソプロピルアクリルアミド-co-メタクリル酸)のポリアクリルアミド類、ポリエチレンイミン等のポリアルキレンイミン類、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸ナトリウムやコポリマーポリ(アクリル酸-co-マレイン酸)等のポリアクリル酸類、ポリメタクリル酸、ポリメタクリル酸ナトリウムやポリ(2-ヒドロキシエチルメタクリル酸)等のポリメタクリル酸類、ポリ(4-スチレンスルホン酸)、ポリ(アクリルアミン)、ポリ(2-アクリルアミド-2-メチル-1-プロパンスルホン酸)等の高分子電解質類、カルボキシメチルセルロースやヒドロキシエチルセルロース等の親水性セルロース誘導体等が例示される。しかしながら、これらに限定されるものではなく、従来公知の親水性のポリマーを用いることができる。好ましくは、ポリアルキレングリコール類、特に好ましくは、ポリエチレングリコールにより親水部を構成する。
疎水部は、疎水性を示すポリマーで構成される。このとき、同じ種類の重合性モノマーが重合したホモポリマーであっても、異なる種類の重合性モノマーが重合したコポリマーであってもよい。コポリマーとしては、交互コポリマー、ブロックコポリマー、ランダムコポリマーの何れであってもよい。疎水部は疎水性モノマーのみを重合させたポリマーで構成されることが好ましいが、疎水部が全体として疎水性を示す限りにおいては、一部に親水性モノマーを含んで重合させたコポリマーとして構成することを排除するものではない。また、疎水部の構造は、直鎖状、環状、分岐状等の何れであってもよく、これらを組み合わせた構造であってもよいが、好ましくは直鎖状である。
疎水性ポリマーとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブタジエン、ポリイソブテンやコポリマーポリ(エチレン-co-アクリル酸)等のオレフィン系ポリマー、ポリ塩化ビニル類、ポリ塩化ビニリデン類、ポリ酢酸ビニル類、ポリスチレン、ポリメチルスチレンやコポリマーポリ(スチレン-co-アクリロニトリル)等のポリスチレン類、ポリアクリル酸メチル、ポリアクリル酸エチル、ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸エチルやポリアクリロニトリル等のアクリル系ポリマー、ポリ(エチルビニルエーテル)やポリ(ビニルメチルケトン)等のポリビニルエーテル類、ポリ(ビニリデンプルオリド)類、ポリテトラフルオロエチレン類、ポリプロピレンカルボン酸類、ポリエチレンテレフタル酸類、ポリエチレンスクシン酸類等が例示される。疎水性ポリマーとして、ポリメチルシロキサンやポリジメチルシロキサンやコポリマーポリ(メチルシロキサン-co-ジメチルシロキサン)等のシロキサン構造を有するシロキサン系ポリマーを利用することができる。シロキサン構造を有するポリマーとは、ケイ素と酸素が交互に結合して形成されたポリマーであり、シロキサン結合(-Si-O-Si-)が主鎖を形成している。しかしながら、これらに限定されるものではなく、従来公知の疎水性ポリマーを用いることができる。好ましくは、オレフィン系ポリマー若しくはシロキサン系ポリマーで疎水部を構成する。
図1に示す通り、本発明の高分子化電子メディエータは、好ましくはポリマーの疎水部がカーボン基材等の疎水性の導電性基材と物理的に吸着する等によって、電極上に安定的に固定される。一方、ポリマーの親水部は、親水性の電解質溶液中で電子メディエータに運動性を付与し、酵素と電子メディエータとの接触及び反応性を向上させるものである。したがって、ポリマーの親水部は、酵素の酸化還元中心等の反応中心に電子メディエータが到達できる程度の長さを有することが求められるが、長すぎると電子メディエータと酵素との反応に際して立体障害となるため、好ましくは3〜6nm、特に好ましくは3〜4nmである。原子長で換算した場合には、原子は直径がおよそ0.1nmであることから、30〜60、30〜40原子長であることが好ましい。
また、上述の通り、ポリマーは、疎水部での高分子化電子メディエータの電極上での固定安定性と、親水部での酵素との反応性向上の2つを両立させることができるものであることが必要である。親水部の割合が多くなると電極での固定安定性が低下し、疎水部の割合が多くなると親水性の酵素との反応性が低下する。両者の機能を両立させるため、親水部と疎水部の比率の最適化が図られる。好ましくは、親水部と疎水部の重量比が80:20〜30:70であることが好ましく、鎖長比では、ポリマーの親水部と疎水部が85:15〜35:65であることが好ましい。
ポリマーの大きさ(重合度及び分子量)は、特に制限はなく、ポリマーの構成及び電子メディエータの種類、電子メディエータのポリマーへの導入頻度に応じて適宜設定することができる。そして、疎水部及び親水部の大きさも適宜設定することができ、好ましくは上記重量比及び鎖長比となるように設定される。例えば、直鎖型ポリマーとして構成される場合には、疎水部を2〜6nm、親水部を3〜6nm、3〜4nmとすることが好ましく、分岐型ポリマーとして構成される場合には、疎水部を3〜20nm、親水部を3〜6nm、3〜4nmとすることが好ましい。また、複数の側鎖を有するように構成する場合には、疎水部の0.3〜1.0nm毎に側鎖を導入するように構成することが好ましい。
電子メディエータは、酵素等の生体触媒の反応に応じて酸化又は還元される低分子の酸化還元物質であり、生体触媒とカーボン基材等の導電性基材間の電子伝達を媒介する。したがって、電子メディエータは、酵素等の生体触媒と電子を授受することができる共に、導電性基材とも電子を授受することができる物質である限り何れも使用することができる。そして、電子メディエータは、一重結合と二重結合が交互に並んだπ共役系化合物であることが好ましい。例えば、電子メディエータは、特に限定されるものではないが、例えば、5-メチルフェナジニウムメチルスルファート(フェナジンメトスルファート:PMS)、5-エチルフェナジニウムメチルスルファート(フェナジンエトスルファート:PES)等、のフェナジン系化合物、フェノチアジン系化合物、フェリシアン化カリウム等のフェリシアン化物、フェロセンやジメチルフェロセン、フェロセンカルボン酸等のフェロセン系化合物、ナフトキノン、アントラキノン、ハイロドキノン、ピロロキノリンキノン等のキノン系化合物、シトクロム系化合物、ベンジルビオロゲンやメチルビオロゲン等のビオロゲン系化合物、ジクロロフェノールインドフェノール等のインドフェノール系化合物等が挙げられる。フェナジン系化合物の1-メトキシ-5-メチルフェナジニウムメチルスルファート(以下、「mPMS」と称する場合がある)が特に好ましく例示できる。
電子メディエータは、ポリマーの親水部に導入される。好適には、電子メディエータを、共有結合、イオン結合、疎水的結合、π-π結合、吸着結合等によりポリマーに導入されて構成されるが、好ましくは共有結合である。共有結合としては、ジアゾ法、酸アジド法、イソシアナート法、ブロムシアン法、ペプチド結合法、ジスルフィド結合法、エステル結合法、シッフ塩基形成法等を利用した結合が例示できるが、これに限定されるものではない。ポリマー若しくは重合性モノマー、及び電子メディエータが分子内に反応性官能基を有する場合には、これを利用することもできる。例えば、アクリル酸のカルボニル基等を利用することができる。そして、分子内に反応性官能基を導入するよう修飾を行ってもよい。反応性官能基としては、アミノ基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、スルホン基、リン酸基、チオール基、イミダゾール基等が例示される。また、2価以上の反応性官能基を有する多官能性試薬で結合する架橋法をも利用できる。
電子メディエータの導入位置は、ポリマーの親水部であれば何れの位置に導入されていてもよいが、上述の通り、電子メディエータの電解質溶液中での運動性付与及び立体障害回避の観点から、親水部の疎水部との結合部位から好ましくは3〜6nm、特に好ましくは3〜4nm離れた親水部のモノマー単位に電子メディエータを導入する。高分子部分を直鎖型ポリマーとして構成し、1つずつ疎水部と親水部が接続する場合には、親水部の疎水部との接続部位とは反対側の末端のモノマー単位に電子メディエータが導入されていることが好ましい。このとき、親水部の長さは、好ましくは3〜6nm、特に好ましくは3〜4nmに構成される。また、複数の疎水部と親水部が交互に接続し、疎水部に挟まれた親水部に電子メディエータを導入してもよく、その場合には、疎水部との接続部位である親水部の両端から好ましくは3〜6nm、特に好ましくは3〜4nm離れた親水部のモノマー単位に電子メディエータを導入する。
分岐型ポリマーを含む場合にも、疎水部との接続部位とは反対側の末端のモノマー単位、つまり、主鎖を構成する疎水部から分岐する側鎖の先端側のモノマー単位に電子メディエータが導入されていることが好ましい。この場合にも、上述の通り、電子メディエータの電解質溶液中での運動性付与及び立体障害回避の観点から、親水部の疎水部との接続部位から好ましくは3〜6nm、特に好ましくは3〜4nm離れた親水部のモノマー単位に電子メディエータを導入する。
本発明の修飾電極において、好ましい高分子化電子メディエータとして下記一般式(1)で表されるものが挙げられる。一般式(1)の高分子化電子メディエータは直鎖型の高分子化電子メディエータの好適例である。
Figure 0006456681
〔式中、n=4〜30、m=11〜99、R1=アルキル基、アリール基、又はアルキルエーテル基、R2=水素又はアルキル基である。〕
上記一般式(1)で表される高分子化電子メディエータは、電子メディエータとしてmPMSを利用する高分子化mPMSである。疎水部と親水部が直鎖状にブロックコポリマーとして結合している。疎水部はアルキル鎖で構成されアルキル鎖の鎖長は炭素数12〜100であることが好ましい。親水部は、ポリエチレングリコールで構成され、エチレングリコールが重合度4〜30で重合したものであることが好ましい。そして、親水部の疎水部側とは反対側の末端に位置するエチレングリコール単位の炭素基にmPMSが導入されている。フェナジン環の5位の窒素にアルキル基、アリール基、又はアルキルエーテル基が導入され、好ましくはメチル基が導入される。フェナジン環の2、3、4、6、7、8、及び9位の水素基が一部若しくは全部がアルキル基により置換されていてよい。
一般式(1)の高分子化電子メディエータの中でも、特に好ましくは下記一般式(2)で表されるものが挙げられる
Figure 0006456681
さらに、本発明の修飾電極において、好ましい高分子化電子メディエータとして下記一般式(3)で表されるものが挙げられる。一般式(3)の高分子化電子メディエータは分岐型の高分子化電子メディエータの好適例である。
Figure 0006456681
〔式中、x=0.98〜0.5、m=3〜30、R1=アルキル基、アリール基、又はアルキルエーテル基、R2=水素又はアルキル基、R3=アルキル基(炭素数2〜18)、フェニル基、ハロゲン化アルキル基(炭素数2〜18)、ヒドロキシアルキル基(炭素数2〜18)、又はビニル基であり、但し、R3基の全てが同一であっても、一部若しくは全部が異なっていてもよい〕
上記一般式(3)で表される高分子化電子メディエータは、電子メディエータとしてmPMSを利用する高分子化mPMSである。疎水部の主鎖に親水部の側鎖が分岐するグラフトコポリマーとして結合している。疎水部はシロキサン鎖で構成され、シロキサン鎖を構成するシロキサン単位(-Si-O-)に一定間隔若しくはランダムに親水部の側鎖が導入されている。また、シロキサン鎖の鎖長は、シロキサン単位で5〜100であることが好ましい。側鎖が導入されていないシロキサン単位と側鎖が導入されているシロキサン単位の比率が15〜20:1で構成されることが好ましい。シロキサン鎖の側鎖が導入されてケイ素原子1個が持つ4個の価電子のうち、酸素及び親水部との結合に使われていない価電子を使って、適当な有機基を導入することができる。このような有機基としては、アルキル基(炭素数2〜18)、フェニル基、ハロゲン化アルキル基(炭素数2〜18)、ヒドロキシアルキル基(炭素数2〜18)、又はビニル基等を利用することができ、特に好ましくはメチル基である。有機基は、好ましくは全てが同一種類で構成されるが、異なる種類の有機基を適宜組み合わせて構成されていてよい。親水部はポリエチレングリコールで構成され、エチレングリコールが重合度3〜30で重合したものであることが好ましい。そして、親水部の疎水部側とは反対側の末端に位置するエチレングリコール単位の炭素基にmPMSが導入されている。フェナジン環の5位の窒素にアルキル基、アリール基、又はアルキルエーテル基が導入され、好ましくはメチル基が導入される。フェナジン環の2、3、4、6、7、8、及び9位の水素基が一部若しくは全部がアルキル基により置換されていてよい。
一般式(3)の高分子化電子メディエータの中でも、特に好ましくは下記一般式(4)で表されるものが挙げられる。
Figure 0006456681
〔式中、x=0.94〕
本発明の高分子化電子メディエータは導電性基材へ固定されており、固定は、吸着結合、共有結合、イオン結合、疎水的結合、π-π相互作用等により行うことができる。吸着結合は、高分子化電子メディエータを導電性基材上に物理的な力により固定するものであり、本発明の修飾電極において特に好適に利用できる。共有結合法については上述した通りである。導電性基材表面及び高分子化電子メディエータの分子内に反応性官能基を有する場合には、これを利用することもできる。また、導電性基材表面及び高分子化電子メディエータに反応性官能基を導入するよう表面修飾を行うことができる。例えば、導電性基材にジアミノベンゼンやアミノ安息香酸等を導入することにより、アミノ基やカルボキシル基等の反応性官能基で導電性基材を表面修飾することができる。これを、ポリマーの反応性官能基、例えば、ポリアクリル酸のカルボシキル基等との結合に利用することができる。また、2価以上の反応性官能基を有する多官能性試薬で結合する架橋法をも利用できる。架橋に際しては、高分子化電子メディエータと導電性基材間を適度な距離をもつリンカー部位を介して架橋することができる。リンカー部位の構成分子や鎖長、構造等は、電子メディエータの機能を損なわない限り、適宜設定することができる。しかしながら、導電性基材の表面修飾に関しては、導電性基材の劣化を招く可能性があるため、特段の必要がある場合を除いては行わないことが好ましい。
そして、本発明の修飾電極に、酵素や微生物等の生体触媒を含ませることができる。生体触媒は、吸着結合、共有結合、イオン結合、疎水的結合、π-π相互作用等により固定してもよい。例えば、本発明の修飾電極を生体触媒の溶液に含浸することにより行うことができ、また、導電性基材に生体触媒を含ませた後に高分子化電子メディエータにより修飾してもよい。
このように構成することにより、電極基材と電極触媒である酵素等の生体触媒間の電子伝達を媒介できる修飾電極を提供することができる。本発明の修飾電極は、使用に際し、未修飾の電極と比較して電子メディエータの高い固定残存率及び長期間耐久性を示すと共に、高い酸化還元能及び電子伝達能を発揮することができる。詳細には、本発明の修飾電極に固定される高分子化電子メディエータの高分子部分が疎水部と親水部を含むように構成した。これにより、疎水部が、疎水的な電極基材上への電子メディエータの固定安定性を向上させ、高い固定残存率及び長期間耐久性に貢献することができる。親水部が、電解質溶液中での電子メディエータの運動性を向上させ、酵素の酸化還元中心と電子メディエータ間、及び電子メディエータと電極間の円滑な電子授受に貢献することができる。
このような優れた機能を発揮し得る本発明の修飾電極は、バイオ電池やバイオセンサーの電極として好適に利用することができ、酵素の触媒活性を利用する酵素電極として利用することができる。電子メディエータが、酵素の大きさを考慮して、親水部と疎水部が結合したポリマーの前記親水部上の前記疎水部との結合部位から好ましくは3〜6nm、特に好ましくは3〜4nmの位置に導入される。これにより、電子メディエータが酵素の酸化還元中心へ到達でき、酵素と電極間の円滑な電子授受を媒介でき、酵素電極における酵素触媒電流の向上を図ることができる。
ここで、高分子部分を疎水性のポリマーのみで構成した場合には、疎水性の電極基材と物理吸着することにより優れた固定安定性を発揮し得、かつ電子メディエータとの電子間の電子伝達能力の面でも優れた修飾電極を提供することができる。しかしながら、酵素電極とした場合には、酵素の触媒電流が著しく低下することが確認された(下記、実施例5及び6を参照のこと。)。これは、高分子化電子メディエータの疎水的性質が強いことにより、親水性の電解質溶液での電子メディエータの運動性の低下、及び酵素と電子メディエータの反応性の低下を招くものと考えられる。本発明においては、高分子部分に親水部を導入することにより上記不具合を回避することができ、電子メディエータの高い固定安定性と酵素触媒電流向上を図ることができる。
さらに、先行技術文献の項で説明した非特許文献1(Journal of Physical Chemistry B. 111(34)、10312〜10319)において、ポリマーに電子メディエータを適当なリンカー等を介して導入した高分子化電子メディエータにおいて、ポリマーの親水性を向上させるため、電子メディエータの側鎖に加えて、別途、親水性の側鎖を導入したことが開示されている。しかしながら、導入した親水基が酵素の酸化還元中心等の反応ポケットに入り込む等の立体障害を引き起こし、電子メディエータを介した酵素及び電極間の電子伝達や酵素の触媒活性を阻害するおそれがある。一方、本発明は、上述の通り親水性ポリマーの側鎖は電子メディエータに運動性を付与するように構成されており、電子メディエータが酵素の酸化還元中心へ到達、及び酵素と電極間の電子授受の円滑な進行を媒介でき、酵素電極における酵素触媒電流の向上を図ることができるものである。
特に、上記一般式(1)及び(2)の高分子化電子メディエータによれば、疎水部としてアルキル基、親水部としてポリエチレングリコールからなる直鎖型の高分子化電子メディエータを固定した修飾電極を提供することができる。アルキル基は、表面処理を行わずとも疎水性の導電性基材に吸着結合により固定でき、ポリエチレングリコールは酵素の活性を損なうことなく電子メディエータに電解質溶液中での運動性を付与することができるため、疎水部による電極上での高分子化電子メディエータの固定安定性向上効果と、親水部による酵素との反応性向上効果とが好適に両立した修飾電極を提供できる。
また、上記一般式(3)及び(4)の高分子化電子メディエータによれば、疎水部としてシロキサン構造を有するポリマーの主鎖に親水部としてポリエチレングリコールの側鎖を有する分岐型の高分子化電子メディエータを固定した修飾電極を提供することができる。表面処理を行わずとも疎水性の導電性基材に吸着結合により固定でき、ポリエチレングリコールは酵素の活性を損なうことなく電子メディエータに電解質溶液中での運動性を付与することができるため、疎水部による電極上での高分子化電子メディエータの固定安定性向上効果と、親水部による酵素との反応性向上効果とが好適に両立した修飾電極を提供できる。疎水部を構成するシロキサン構造体は柔軟性を有するため、高分子化電子メディエータの電解質溶液中での運動性をも良好に維持でき酵素との反応性に負の影響を与えることもない。また、電子メディエータの酸化還元能力及び電子伝達能の発揮においても有利であるとの利点をも有する。
本発明の修飾電極は、酵素の触媒活性を利用する酵素電極として利用することができ、バイオ電池やバイオセンサーの電極として好適に利用することができる。長期間耐久性や酵素触媒電流の面で優れたバイオ電池やバイオセンサーの構築に貢献でき、様々な産業分野に利用することができる。
2.本発明の修飾電極の製造方法
本発明の修飾電極は、以下の工程を経て製造される。
(a)高分子化電子メディエータの製造
(b)高分子化電子メディエータの導電性基材への導入
工程(a)の高分子化電子メディエータの製造は、電子メディエータとポリマーの結合体を製造することにより行われる。例えば、重合性モノマーを重合したポリマーに電子メディエータを導入することにより行うことができる。また、重合することによりポリマーを形成可能な重合性モノマーに電子メディエータを導入し、これを含めて重合することにより行うことができる。重合性モノマーの重合は、重縮合、ラジカル重合、アニオン重合、カチオン重合等の連鎖重合、配位重合や開環重合等により行うことができ、重合させるモノマーの種類に応じて選択すればよい。重縮合は、脱水や脱アミン等による縮合を繰り返すことにより反応が進行する。ラジカル重合は、高活性なラジカルを利用した重合法であり、開始剤として、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)等のアゾ化合物や過酸化ベンゾイル過酸化物等を利用して重合を行うことができる。カチオン重合及びアニオン重合は、活性化部位がイオン化することにより反応が進行する重合法であり、アニオン重合は、陰イオンが媒介して求核的にモノマーが付加され、カチオン重合は陽イオンが媒介して求電子的にモノマーが付加される。
ポリマー若しくは重合性モノマーへの電子メディエータ導入は、共有結合、イオン結合、疎水的結合、π-π結合、吸着結合等により行うことができるが、好ましくは共有結合である。共有結合法としては、ジアゾ法、酸アジド法、イソシアナート法、ブロムシアン法、ペプチド結合法、ジスルフィド結合法、エステル結合法、シッフ塩基形成法等が例示できるが、これに限定されるものではない。ポリマー若しくは重合性モノマー、及び電子メディエータの分子内の反応性官能基を有する場合には、これを利用することもできる。例えば、アクリル酸のカルボニル基等を利用することができる。そして、分子内に反応性官能基を導入するよう修飾を行ってもよい。反応性官能基としては、アミノ基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、スルホン基、リン酸基、チオール基、イミダゾール基等が例示される。また、2価以上の反応性官能基を有する多官能性試薬で結合する架橋法をも利用できる。架橋に際しては、電子メディエータとポリマーにとって適度な距離をもつリンカー部位を介して架橋することができる。
また、電子メディエータとして、その基本骨格が複素環骨格であり、その複素環骨格中の炭素原子が置換した原子に基が導入されている構造を有する等、様々な官能基や溶媒によって影響を受けやすいものを使用する場合、かかる原子への基の導入等の不安定因子は、高分子化電子メディエータの製造工程の最終段階で行うことが好ましい。例えば、ポリマーにPMSやその誘導体を導入した高分子化PMSを調製する場合には、N-メチルフェナジン骨格のN-メチル基が様々な試薬や官能基と反応し、N-メチルフェナジン骨格を分解してしまう。例えば、還元性のあるハイドライド系試薬や、求核性のアミンやエポキシ、イソシアナート、カルボジイミド系の試薬が挙げられる。したがって、N-メチル化工程は、高分子化mPMSの製造工程の最終段階、すなわち、ポリマーへの電子メディエータ前駆体の導入後、若しくは重合性モノマーと電子メディエータ前駆体の導入及び当該モノマーの重合の後で行うことが好ましい。
そして、工程(b)の高分子化電子メディエータの導電性基材への固定は、吸着結合、共有結合、イオン結合、疎水的結合、π-π相互作用等により行うことができる。吸着結合は、高分子化電子メディエータを導電性基材上に物理的な力により固定するものであり、本発明の修飾電極において特に好適に利用できる。そして、吸着結合による固定の場合、高分子化電子メディエータを含む溶液に導電性基材を接触させ、これを乾燥させることによって簡便に固定できる。共有結合法については上述した通りである。導電性基材表面及び高分子化電子メディエータの分子内に反応性官能基を有する場合には、これを利用することもできる。また、導電性基材表面及び高分子化電子メディエータに反応性官能基を導入するよう表面修飾を行うことができる。例えば、導電性基材にジアミノベンゼンやアミノ安息香酸等を導入することにより、アミノ基やカルボキシル基等の反応性官能基で導電性基材を表面修飾することができる。これを、ポリマーの反応性官能基、例えば、ポリアクリル酸のカルボシキル基等との結合に利用することができる。また、2価以上の反応性官能基を有する多官能性試薬で結合する架橋法をも利用できる。架橋に際しては、高分子化電子メディエータとカーボン基材間を適度な距離をもつリンカー部位を介して架橋することができる。リンカー部位の構成分子や長さ、構造等は、電子メディエータの機能を損なわない限り、適宜設定することができる。しかしながら、導電性基材の表面修飾に関しては、導電性基材の劣化を招く可能性があるため、特段の必要がある場合を除いては行わないことが好ましい。
本発明の修飾電極の製造方法の好適例である上記一般式(1)〜(2)の高分子化mPMSを導電性基材に固定した高分子化mPMS固定電極は、下記実施例1〜3の手順で作製することができる。しかしながら、実施例は本発明の修飾電極の製造方法の好適例に過ぎず適当な改変を施すことができ、また、異なる方法で製造することを排除するものではない。
このように構成することにより、上述の優れた性能を有する本発明の修飾電極の製造方法を提供することができる。
3.本発明の修飾電極の利用
本発明の修飾電極は、バイオ電池やバイオセンサー等に利用することができ、当該バイオ電池及びバイオセンサーも本発明の一部を構成する。
3−1.バイオ電池
本発明の修飾電極は、バイオ電池の構築のために利用することができ、かかるバイオ電池も本発明の一部を構成する。そして、本発明の修飾電極をバイオ電池の電極として構成する場合、アノード側電極及びカソード側電極の少なくとも何れか一方に利用することができるが、好ましくはアノード側電極である。
本発明のバイオ電池としては、酵素や微生物等の生体触媒を電極触媒として利用し、かかる生体触媒の酸化還元反応を利用するもの全てを包含する。そして、その構成としては、例えば、酸化反応を行うアノード側電極と、還元反応を行うカソード側電極から構成され、電極は外部回路に接続される。必要に応じてアノード側電極とカソード側電極を隔離する電解質層や隔膜等を含んで構成される。
一例として、酵素の酸化還元反応を利用するバイオ電池における構成について説明すると、アノード側は燃料である基質を酸化する能力を有する酵素を利用でき、糖やアルコール等の燃料を分解できる酵素であれば特に制限なく利用できる。一方、カソード側は基質を還元する能力を有する酵素を電極触媒として利用することができる。具体的な酸化還元酵素としては、デヒドロゲナーゼやオキシダーゼ等を用いることができる。具体的には、アノード側として、グルコースデヒドロゲナーゼ、フルクトースデヒドロゲナーゼ、アルコールデヒドロゲナーゼ、グルタミン酸デヒドロゲナーゼ、アルデヒドデヒドロゲナーゼ、ピルビン酸デヒドロゲナーゼ、グルコースオキシダーゼ、フルクトースオキシダーゼ、アルコールオキシダーゼ、グルタミン酸オキシダーゼ、アルデヒドオキシダーゼ、ピルビン酸オキシダーゼが例示され、カソード側として、ビリルビンオキシダーゼやアスコルビン酸オキシダーゼ、ラッカーゼ等のマルチ銅オキシダーゼ、ペルオキシダーゼ等が例示される。またカソード側電極としては、白金等の金属電極を用いることができる。
燃料としては、グルコース、フルクトース、スクロース等の糖類、メタノール、エタノール等のアルコール等から選択されることが好ましい。しかしながら、使用可能な燃料はこれらに限定されず、前記アノード側及びカソード側に電極触媒として利用した酵素等の生体触媒に有用なものであれば何れをも用いることができる。
本発明のバイオ電池は、2個以上の複数個のバイオ電池を連結してもよく、これにより、一定量以上の電力を長期に亘って供給することが可能となる。
このように構成することにより、上述の優れた性能を有する本発明の修飾電極を利用した長時間耐久性や酵素触媒電流の面で特に優れた性能を有するバイオ電池を提供することができる。つまり、本発明のバイオ電池は、長時間に亘って安定した発電が可能な耐久性に優れた効果を発揮すると共に、酵素及び電極間の電子伝達が円滑に進行し良好な酵素触媒電流値を得ることができる高性能で実用性の高いバイオ電池の構築に貢献することができる。
3−2.バイオセンサー
本発明の修飾電極は、バイオセンサーの構築のために利用することができ、かかるバイオセンサーも本発明の一部を構成する。そして、本発明の修飾電極をバイオセンサーに備える場合、外部回路に接続して構成する。
本発明のバイオセンサーは、生体反応を電極反応と共役させて電気信号に変換する感知装置であり、酵素等の生体物質が有する分子認識機構を利用するものを全て包含する。バイオセンサーは、例えば、本発明の修飾電極を基質認識部位となる作用電極として組み込み、その対極を設けて構成される。必要に応じて、測定精度の信頼性を高める観点から、銀-塩化銀などの参照極を設けた三電極方式として構成してもよい。
生体物質としては、被検試料に含まれる被検物質を特異的に認識できる限り、特に制限はないが、好ましくは酵素である。具体的には、3−1.の項で列挙した酸化還元反応を触媒できる酵素等を例示できる。
本発明のバイオセンサーによる測定は、被検試料を当該センサーと接触させ、電極上で生じた被検物質である基質との酸化還元反応により生じた変化を電気信号に変換し、これを検知することで行われる。得られた電気信号を処理することにより、被検試料中の被検物質の存在の有無若しくは濃度を測定することができる。このとき、あらかじめ目的濃度範囲内における標準濃度の被検物質溶液により作製した標準曲線を作成することにより、得られた電流値に基づいて被検物質濃度を求めることができる。
ここで、試料としては、生体物質の基質となり得る被検物質の存在が予想されるすべての試料を対象とすることができる。例えば、血液、尿、唾液等の生物体由来の生物試料、食品試料、土壌や河川水、湖沼水、海水等の水等の環境試料等が例示されるがこれに限定されるものではない。また、必要に応じてこれらの試料に適当な処理を行った試料をも含み得る。
このように構成することにより、上述の優れた性能を有する本発明の修飾電極を利用した長時間耐久性や酵素触媒電流の面で特に優れた性能を有するバイオセンサーを提供することができる。つまり、本発明のバイオセンサーは、長時間に亘って安定した測定が可能な耐久性に優れた効果を発揮すると共に、酵素及び電極間の電子伝達が円滑に進行し良好な酵素触媒電流値を得ることができる高性能で実用性の高いバイオセンサーの構築に貢献することができる。したがって、医療、食品、環境分野等、種々の産業分野において利用可能である。
[実施例]
以下、実施例において、本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。したがって、本実施例においては、好適実施例として電子メディエータとして1−メトキシ−5−メチルフェナジニウムメチルスルファートを用いた例を示すが、これに電子メディエータを限定する意図はない。
[実施例1.高分子化電子メディエータの合成(直鎖型Brij-S10-Phzm)]
本実施例においては、電子メディエータの高分子化方法の検討を行った。ここでは、メディエータ部に親水鎖と疎水鎖が直鎖状に結合した直鎖型の高分子メディエータの合成を行った。詳細には、電子メディエータとして、1-メトキシ-5-メチルフェナジニウムメチルスルファート(商品名:1-Methoxy PMS、和光純薬工業株式会社製、以下「mPMS」と称する)を、親水鎖としてポリエチレングリコール(以下「PEG」と称する)を、疎水鎖としてアルキル鎖を用いた。ここで合成した直鎖型の高分子メディエータを「Brij-S10-Phzm」と称し、一般式(2)として示す。以下、検討を行った合成方法の一例を例示する。
Figure 0006456681
(方法)
Brij-S10-Phzmは、市販のノニオン性界面活性剤Brij-S10の末端水酸基部分に、mPMSの基本骨格であるフェナジン環を導入する方法で合成した(図2)。フェナジン環の導入は、Brij-S10の末端水酸基のトシル化によりBrij-S10-Tsを合成し、続いて、Brij-S10-Ts と1-ヒドロキシフェナジンとのエーテル化反応によりBrij-S10-Phenを合成した。かかるトシル化、及びエーテル化反応は、高収率に進行した。最後に、メチルトリフラートを用いてBrij-S10-Phenのフェナジン環の窒素上にメチル基を導入することで目的の直鎖型の高分子メディエータBrij-S10-Phzmを得た。
以下、詳細に合成方法を説明する。
「合成原料及び溶媒」
合成原料及び溶媒は、Aldrich及び東京化成工業より購入したものをそのまま用いた。化合物の同定は1H NMRスペクトル(JEOL JNM-ECX400P)により行った。
「Brij-S10-TSの合成(図2のスキーム1)」
Brij-S10(15.0 g、21.1 mmol)をテトラヒドロフラン(THF、20 ml)に溶解し、0℃に冷却した。24 %の水酸化ナトリウム水溶液(30 ml)を加え、5分間撹拌した後、p-トルエンスルホニルクロリド(4.38 g、23.0 mmol)とTHF(35 ml)の混合物をゆっくりと滴下した。滴下終了後、0 ℃で3時間撹拌した。反応混合物を氷水に注ぎ、氷が融けるまで撹拌した後、クロロホルムで抽出を行った。抽出後、得られた有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、ろ過により硫酸マグネシウムを除去した。続いて、溶媒を減圧留去することで目的物を得た。
収量:16.6 g、収率:91 %
1H NMRスペクトル(CDCl3):σ0.87(t;3H), 1.24(m;30H), 1.55(m;2H), 2.45(s;3H), 3.44(t;2H), 3.64(m;38H), 4.16(t;2H), 7.34(d;2H), 7.99(d;2H)
「Brij-S10-Phenの合成(図2のスキーム2)」
窒素雰囲気下、Brij-S10-TS(2.21 g、2.55 mmol)、ジメチルホルムアミド(20 ml)、1-ヒドロキシフェナジン(0.05 g、2.55 mmol)及び炭酸カリウム(1.38 g、10.0 mmol)の混合物を100 ℃で9.5時間撹拌した。室温に冷却後、水(約200 ml)を加え、クロロホルムで抽出を行った。抽出後、得られた有機層を1%水酸化ナトリウム水溶液及び飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。ろ過により硫酸マグネシウムを除去し、溶媒をロータリーエバポレータで除去した。得られた残渣を加熱下(約100℃)で減圧乾燥することで目的物を得た。
収量:2.23 g、収率:98 %
1H NMRスペクトル(CDCl3):σ0.88(t;J=6.4Hz,3H), 1.26(m;30H), 1.57(m;2H), 3.44(t;J=6.8Hz,2H), 3.64(m;32H), 3.72(m;2H), 3.88(m;2H), 4.13(t; J=5.1Hz,2H), 4.51(t;J=5.1Hz,2H),7.15(d;J=7.8Hz,1H), 7.74(m;1H), 7.85(m;3H),8.22(m;1H),8.37(m,1H)
「Brij-S10-Phzmの合成(図2のスキーム3)」
窒素雰囲気下、Brij-S10-Phen(0.50 g)を脱水ジクロロエタン(5 ml)に溶解し、炭酸カリウム(0.3 g)を添加した。この混合物にメチルトリフラート(0.20 ml)をゆっくり滴下した後、室温で6時間撹拌した。反応後、溶媒及びメチルトリフラートを減圧留去した。得られた残渣をアセトニトル(3 ml)に再度溶解し、溶媒を減圧留去する操作を3回繰り返した。クロロホルムに溶解後、綿栓ろ過により不要物を除去し、ろ液を減圧乾燥することで目的物のBrij-S10-Phzmを得た。
性状:濃赤色ペースト状物質
収量:0.48 g、収率:81 %
1H NMRスペクトル(CDCl3):σ0.87(t;J=6.7Hz,3H), 1.26(m;30H), 1.50(br;2H), 3.47(br;2H), 3.57(br;34H), 3.77(br;2H), 4.04(br;2H), 4.55(br;2H), 4.79(s;3H), 7.55(m;1H), 7.80-8.70(m;6H)
[実施例2.高分子化電子メディエータの合成(分岐型CMS-221-Phzm)]
本実施例においては、電子メディエータの高分子化方法の検討を行った。ここでは、疎水性の主鎖から親水性の側鎖が分岐し、その親水性の側鎖にメディエータが結合した分岐型の高分子メディエータの合成を行った。詳細には、電子メディエータとして、実施例1と同様にmPMSを、親水鎖としてPEGを、疎水鎖としてシロキサンを用いた。ここで合成した分岐型の高分子メディエータを「CMS-221-Phzm」と称し、一般式(4)として示す。以下、検討を行った合成方法の一例を例示する。
Figure 0006456681
(方法)
CMS-221-Phzmは、側鎖の一部にPEGが導入されたポリシロキサン原料CMS-221を出発原料として、CMS-221の末端水酸基部分に、mPMSの基本骨格であるフェナジン環を導入する方法で合成した(図3)。フェナジン環の導入は、CMS-221の末端水酸基のトシル化によりCMS-221-Tsを合成し、続いて、CMS-221-Ts と1-ヒドロキシフェナジンとのエーテル化反応によりCMS-221-Phenを合成することにより行った。かかるトシル化反応は、p-トルエンスルホニルクロリドをやや過剰に用いることにより効率的に進行した。また、当該反応を室温で行うと、塩基として用いたピリジンが生成したトシル基と反応することが判明したため、反応は0℃に保って行う必要があった。最後に、メチルトリフラートを用いてCMS-221-Phenのフェナジン環の窒素上にメチル基を導入することで目的の直鎖型の高分子メディエータCMS-221-Phzmを得た。
以下、詳細に合成方法を説明する。
「合成原料及び溶媒」
ポリシロキサン原料CMS-221(Gelest製、分子量〜4000、シロキサン以外の部位が20〜25wt%)は、アズマックスより購入した。他の合成材料及び溶媒は、Aldrich及び東京化成工業より購入したものをそのまま用いた。化合物の同定は1H NMRスペクトル(JEOL JNM-ECX400P)により行った。UV-Visスペクトルの測定は日本分光V-670を用いて行った。GPCの測定はクロロホルムを溶媒としてGPC-101(Shodex)にて行った。
「CMS-221-TSの合成(図3のスキーム1)」
窒素雰囲気下、CMS-221(10 g、2.50 mmol)及びピリジン(20 ml)を混合し、0 ℃に冷却した。p-トルエンスルホニルクロリド(3.05 g、16.0 mmol)を少しずつ加えた後、0 ℃で4時間撹拌した。反応液に水(約200 ml)を加えて沈殿物を溶解させた後、クロロホルムで抽出を行った。抽出後、得られた有機層を1%塩酸及び飽和塩化ナトリウム水溶液にて洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。ろ過により硫酸マグネシウムを除去した後、溶媒を加熱下(約50 ℃)で減圧留去することで目的物を得た。
収量:10.90 g、収率:97 %
1H NMRスペクトル(CDCl3):σ0.08(m;Si-CH3), 0.48(m;Si-CH2-), 1.62(m;-CH2-),2.45(s; CH3-of tosylate), 3.39(m;-CH2-),3.50-3.70(m;PEG), 4.16(t,J=4.9Hz;-CH2-OTs), 7.34(d,J=7.9Hz;Ar-H of tosylate), 7.79(d J=7.9Hz;Ar-H of tosylate)
「CMS-221-Phenの合成(図3のスキーム2)」
窒素雰囲気下、CMS-221-TS(2.23 g、約0.5 mmol)、ジメチルホルムアミド(25 ml)、1-ヒドロキシフェナジン(0.431 g、2.20 mmol)及び炭酸カリウム(0.691 g、5.00 mmol)の混合物を85 ℃で10時間撹拌した。室温に冷却後、水(約200 ml)を加え、クロロホルムで抽出を行った。抽出後、得られた有機層を1%水酸化ナトリウム水溶液及び飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。ろ過により硫酸マグネシウムを除去した後、溶媒を加熱下(約50℃)で減圧留去することで目的物を得た。
収量:1.50 g、収率:66 %
1H NMRスペクトル(CDCl3):σ0.08(m;Si-CH3), 0.51(m;Si-CH2-), 1.63(m;-CH2-), 3.41(m;-CH2-),3.50-3.68(m;PEG), 3.83(m;-CH2-O-), 4.13 (t,J=5.1Hz;-CH2-O-), 4.52(t,J=5.1Hz;-CH2-O-), 7.15(d,J=7.6Hz;Ar-H), 7.72-7.86(m,Ar-H), 8.22(d,J=8.2Hz;Ar-H), 8.37(d,J=8.2Hz;Ar-H)
「CMS-221-Phzmの合成(図3のスキーム3)」
窒素雰囲気下、CMS-221-Phen(0.30 g)を脱水ジクロロエタン(3 ml)に溶解し、メチルトリフラート(0.14 ml)をゆっくり滴下した後、室温で3 時間撹拌した。反応後、溶媒及びメチルトリフラートを減圧留去した。得られた残渣をジクロロメタン(3 ml)に再度溶解し、溶媒を減圧留去する操作を3回繰り返した。続いて、真空乾燥することで目的物のCMS-221-Phzmを得た。
CMS-221-Phzmは、ポリシロキサン及びPEGというTgの低い高分子を主成分としているため、室温では固化しておらず、濃赤色のペーストとして得られた。また、CMS-221-Phzmは、アセトニトリルには可溶だが、ポリジメチルシロキサン主鎖の疎水性によって水には難溶化した。
性状:濃赤色ペースト状物質
収量:0.29 g
1H NMRスペクトル(CDCl3):σ0.08(m;Si-CH3), 0.51(br;Si-CH2-), 1.62(br;-CH2-), 3.41(m;-CH2-), 3.50-3.75(m;PEG), 3.83(br;-CH2-O-), 4.13 (br;-CH2-O-), 4.60(br;-CH2-O-), 5.06(br;-CH3-N+), 7.48(br,Ar-H), 8.07-8.76(br;Ar-H)
[実施例3.高分子化電子メディエータ固定電極の安定性評価(洗浄)]
実施例1及び2で作成した高分子化電子メディエータを固定した高分子化電子メディエータ固定電極の安定性について、洗浄操作をした場合について評価した。
(方法)
高分子化電子メディエータとして実施例1で合成したBrij-S10-Phzm及び実施例2で合成したCMS-221-Phzm固定電極の洗浄に対する安定性を確認すると共に、電子メディエータ単体mPMS、及び特開2014-194411に開示のCD47、並びにHMS-992-phzm固定電極の安定性と比較評価した。洗浄に対する安定性は、洗浄操作後の残存固定率を求めることにより評価した。
詳細には、実施例1で合成したBrij-S10-Phzm、実施例2で合成したCMS-221-Phzm、mPMS、及び特開2014-194411号に開示のCD47、並びにHMS-992-phzmを固定した電子メディエータ固定電極を作製し、かかる電極を洗浄操作した後の電極上での残存固定率を求めた。当該CD47及びHMS-992-phzmは、特開2014-194411号に記載の方法に従って合成したものを用いた。以下に、mPMS 、CD47及びHMS992-phzmの化学構造式を、それぞれ一般式(5)、一般式(6)及び一般式(7)として提示する。
Figure 0006456681
Figure 0006456681
〔式中、n=50〜100〕
Figure 0006456681
〔式中、x=1〕
上記実施例で説明した通り、Brij-S10-Phzm、及びCMS-221-Phzmは高分子部分に親水鎖を持つ親水部と疎水鎖を持つ疎水部により構成されているのに対して、CD47、及びHMS-992-phzmは高分子部分が疎水鎖のみで構成される。
電子メディエータ固定電極は、10mg/mlに調整したBrij-S10-Phzm、CMS-221-Phzm、mPMS、CD47、及びHMS-992-phzmの各電子メディエータ溶液100μlをそれぞれカーボンクロス(1cm×3cm)に含浸し、真空乾燥して作製した。洗浄操作は、1Mのイミダゾール溶液1ml、又は1Mのリン酸ナトリウム溶液1mlが入ったチューブ(2ml用)に、前記電子メディエータ固定電極を入れ、vortexにて1分間洗浄した。洗浄した電極に対して同様の操作を5回繰り返した後、洗浄液の吸光度を測定した。洗浄液に含まれる電子メディエータは電極から脱離した電子メディエータであるため、電子メディエータのモル吸光係数と洗浄液の吸光度から、電極から脱離した電子メディエータ量を求めた。そして、電極作製の際に添加した電子メディエータの初期添加量から、脱離した電子メディエータ量を差し引いて、洗浄操作によっても脱離せずに電極上に固定されている電子メディエータ量を算出した。
(結果)
結果を下記表1に示す。
Figure 0006456681
表1に示す通り、mPMSをカーボン基材に含浸させて作製したmPMS固定電極は、洗浄する毎にmPMSが電極から脱離し、洗浄5回目にはほとんど電極にmPMSが保持されていなかった。詳細には、1Mイミダゾールでの洗浄で約3割、1 Mリン酸ナトリウムでの洗浄で約4割の保持であった。Brij-S10-Phzm固定電極では、1 Mイミダゾールでの洗浄で約7割、1 Mリン酸ナトリウムでの洗浄で約9割、CMS-221-Phzm固定電極では、1Mイミダゾールでの洗浄で約6割、1Mリン酸ナトリウムでの洗浄で約7割の固定残存率が確認された。高分子部分が全て疎水基で構成されたCD47及びHMS-922-Phzmを固定した電極と比較した場合に、Brij-S10-Phzm及びCMS-221-Phzm固定電極は固定残存率が1〜2割低下することが判明した。これはBrij-S10-Phzm及びCMS-221-Phzmに親水鎖を導入したことから、水性溶液中にやや溶けやすくなったことに起因すると考えられた。しかしながら、上述の通り、mPMS固定電極との比較では、固定残存率の著しい向上が確認され、十分な固定安定性を示した。
[実施例4.高分子化電子メディエータの酸化還元能の評価]
実施例1及び2で作成した高分子化電子メディエータが、電子メディエータとしての機能を有しているか否かを確認するため酸化還元能の評価を行った。
(方法)
高分子化電子メディエータとして実施例1で合成したBrij-S10-Phzm及び実施例2で合成したCMS-221-Phzmの酸化還元能を確認すると共に、電子メディエータ単体mPMSの酸化還元能と比較評価した。酸化還元能の測定は、サイクリックボルタンメトリー(以下、「CV」と称する場合がある)測定により行った。
詳細には、実施例1で合成したBrij-S10-Phzm、実施例2で合成したCMS-221-Phzm、及びmPMSを固定した電子メディエータ固定電極を作製し、かかる電極についてCV測定を行った。電子メディエータ固定電極は、Brij-S10-Phzm、CMS-221-Phzm、及びmPMSをそれぞれカーボンクロス(0.5cm×1cm)に、電子メディエータ部分が30nmolとなるように含浸し、真空乾燥して作製した。CV測定は、3電極系を用い、作用極には電子メディエータ固定電極、対極には白金電極、参照極には銀/塩化銀電極を用い、測定電位0.5〜-0.5V、走査速度は0.02V/sで測定した。
(結果)
結果を図4に示す。図4の縦軸は電流(A)、横軸は電位(V)を示す。Brij-S10-Phzm、及びCMS-221-Phzm固定電極は、mPMS固定電極と比較して、式量電位は正側に約0.1V移動した。またピーク時の酸化電流は、mPMS固定電極と比較して、Brij-S10-Phzm固定電極は約1.5倍、CMS-221-Phzm固定電極は約3倍高かった。この結果から、Brij-S10-Phzm及びCMS-221-Phzmは、mPMSと比較して十分な酸化還元能力を有することが判明した。
[実施例5.高分子化電子メディエータの酵素触媒電流への影響評価]
実施例1及び2で作成した高分子化電子メディエータが、電子メディエータとしての機能を有しているか否かを確認するため酵素触媒電流の測定を行った。
(方法)
高分子化電子メディエータとして実施例1で合成したBrij-S10-Phzm及び実施例2で合成したCMS-221-Phzmの酵素触媒電流を測定すると共に、電子メディエータ単体mPMS、及び特開2014-194411号に開示のCD47、並びにHMS-992-phzmと比較評価した。酵素触媒電流の測定は、サイクリックボルタンメトリー(以下、「CV」と称する場合がある)により行った。
詳細には、実施例1で合成したBrij-S10-Phzm、実施例2で合成したCMS-221-Phzm、mPMS、及び特開2014-194411号に開示のCD47、並びにHMS-992-phzmを固定した電子メディエータ固定電極を作製し、かかる電極に酵素を固定した後、酵素触媒電流をCVにて測定した。電子メディエータ固定電極は、上記実施例4と同様にして作製した。酵素としては、アシネトバクター・カルコアセチカス(Acinetobacter Calcoaceticus) NBRC12552由来のグルコースデヒドロゲナーゼ(以下、「AcGDH」と称する)を使用した。1mg/ml濃度に調製したAcGDHを予め溶液(55μM PQQ、1mM CaCl2)中でホロ化(4℃、30分間以上)し、測定直前に上記電子メディエータ固定電極に含浸した。CV測定は、1Mイミダゾール溶液中で行い、グルコースを添加する前と後の0.4Vにおける電流値の差を測定し、酵素触媒電流とした。なお、測定は3電極系を用い、作用極には電子メディエータ固定電極、対極には白金電極、参照極には銀/塩化銀電極を用い、測定電位0.5〜-0.5V、走査速度は0.02V/sで測定した。
(結果)
結果を図5に示す。図5の縦軸は電流値(μA)を示す。mPMS固定電極の酵素触媒電流に比べて、Brij-S10-Phzmでは2倍、CMS-221-Phzmでは1.5倍の電流値が得られた。一方、高分子が疎水基で構成されるCD47、及びHMS-992-phzmに関しては、mPMSに比べて、CD47では4割、HMS-992-phzmではほとんど電流値が得られなかった。酵素触媒電流が大きいほど電池の電極として高出力が期待できることから、ポリマーに親水部をも有するBrij-S10-Phzm、CMS-221-Phzmの方が、バイオ電池電極として有用であることが理解される。
[実施例6.高分子化電子メディエータ固定電極を備えた電池セルの評価]
上記実施例で作製した電子メディエータ固定電極を負極として用いた電池セルを構築し、電池セルの性能を評価した。
(方法)
高分子化電子メディエータとして実施例1で合成したBrij-S10-Phzm及び実施例2で合成したCMS-221-Phzmを固定した電子メディエータ固定電極を備えた電池セルの最大電力密度を測定すると共に、電子メディエータ単体mPMS、及び特開2014-194411号に開示のCD47、並びにHMS-992-phzmと比較評価した。
詳細には、実施例1で合成したBrij-S10-Phzm、実施例2で合成したCMS-221-Phzm、mPMS、及び特開2014-194411号に開示のCD47、並びにHMS-992-phzmを固定した電子メディエータ固定電極を作製し、かかる電極に酵素を固定した後、これをアノード側電極に備えた電池セルを構築した。続いて、電子負荷装置(菊水電子PLZ-164WA、シーケンス作成・制御ソフトウェアWavy for PLZ4W)を電池セルに接続し、電流負荷を上げながら、各負荷での安定電圧を測定することで性能を評価した。
電子メディエータ固定電極は、メディエータ部が30mMになるように調製したBrij-S10-Phzm、CMS-221-Phzm、mPMS、CD47、及びHMS-992-phzmの各電子メディエータ溶液50μl(カーボンクロス電極1枚当たり)をそれぞれカーボンクロスに含浸し、真空乾燥(0/N)して作製した。続いて、実施例5と同様にして、1mg/ml濃度に調製しホロ化したAcGDH、1Mリン酸ナトリウム(pH)を上記電子メディエータ固定電極に含浸し、これをアノード側電極とした。カソード側電極は、カーボンクロス電極に、100mg/mlに調製したBOD、0.05Mフェリシアン化カリウム/1Mリン酸ナトリウム(pH7)を含浸させることにより作製した。
電池セルは、上記で作製したアノード側電極及びカソード側電極を用いて図6に示す通り構築した。電池セルの性能評価は、燃料として、1Mグルコース/1Mリン酸ナトリウム(pH7)を添加し、室温で測定することにより行った。
結果を図7に示す。図7の縦軸は電力(mW)、横軸は電流(mA)を示す。最大電力密度はmPMS単体を固定したmPMS固定電極と比較して、Brij-S10-Phzmでは約9割、CMS-221-Phzmでは約8割(81%)であった。一方、高分子部分が疎水基のみで構成されるCD47では約2割、HMS-221-Phzmでは約2割5分であった。したがって、高分子部分に親水鎖を導入することにより、mPMSに近い最大電力密度が得られることが判明した。
実施例3〜6の結果より、高分子化電子メディエータにおいて、高分子部分に親水部と疎水部を設けることにより、高分子化電子メディエータは高い固定安定性を有しながら、高分子化されていない電子メディエータのそのものと同等の酸化還元能及び酵素触媒電流値を併せ持つことが判明した。
本発明の修飾電極は、長期間耐久性、酸化還元能及び酵素触媒電流の面で優れた性能を有することから、バイオ電池やバイオセンサー等に応用することができ、これらの構築を要望する全ての産業分野に利用することができる。

Claims (7)

  1. 導電性基材に前記導電性基材と生体触媒との間の電子伝達を媒介可能な電子メディエータを固定した修飾電極であって、
    前記電子メディエータが、主骨格が1-メトキシ-5-メチルフェナジニウム塩、5-メチルフェナジニウム塩、及び5-エチルフェナジニウム塩から選択されるフェナジン系化合物であり、
    前記電子メディエータは、親水部と疎水部が結合したポリマーの前記親水部上の前記疎水部との結合部位から3〜6nmの位置に導入された高分子化電子メディエータとして電極に固定され
    前記高分子化電子メディエータが、下記一般式(1)で表される修飾電極。
    Figure 0006456681
    〔式中、n=4〜30、m=11〜99、R 1 =アルキル基、アリール基、又はアルキルエーテル基、R 2 =水素又はアルキル基である。〕
  2. 前記高分子化電子メディエータが、下記一般式(2)で表される請求項に記載の修飾電極。
    Figure 0006456681
  3. 導電性基材に前記導電性基材と生体触媒との間の電子伝達を媒介可能な電子メディエータを固定した修飾電極であって、
    前記電子メディエータが、主骨格が1-メトキシ-5-メチルフェナジニウム塩、5-メチルフェナジニウム塩、及び5-エチルフェナジニウム塩から選択されるフェナジン系化合物であり、
    前記電子メディエータは、親水部と疎水部が結合したポリマーの前記親水部上の前記疎水部との結合部位から3〜6nmの位置に導入された高分子化電子メディエータとして電極に固定され
    前記高分子化電子メディエータが、下記一般式(3)で表される請求項1に記載の修飾電極。
    Figure 0006456681
    〔式中、x=0.98〜0.5、m=3〜30、R 1 =アルキル基、アリール基、又はアルキルエーテル基、R 2 =水素又はアルキル基、R 3 =アルキル基(炭素数2〜18)、フェニル基、ハロゲン化アルキル基(炭素数2〜18)、ヒドロキシアルキル基(炭素数2〜18)、又はビニル基であり、但し、R 3 基の全てが同一であっても、一部若しくは全部が異なっていてもよい。〕
  4. 前記高分子化電子メディエータが、下記一般式(4)で表される請求項に記載の修飾電極。
    Figure 0006456681
    〔式中、x=0.94〕
  5. バイオ電池のアノード側電極又はバイオセンサー用電極である、請求項1〜の何れか一項に記載の修飾電極。
  6. 請求項1〜の何れか一項に記載の修飾電極をアノード側電極として備えるバイオ電池。
  7. 請求項1〜の何れか一項に記載の修飾電極を備えるバイオセンサー。
JP2014260645A 2014-12-24 2014-12-24 修飾電極、当該修飾電極を備えるバイオ電池並びにバイオセンサー Active JP6456681B2 (ja)

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