JP2014194230A - 動力伝達機構 - Google Patents

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Abstract

【課題】 クランクシャフトの回転力をバランサシャフトに伝達する動力伝達機構において、クランクシャフトの回転変動に起因した振動を抑制すると共に耐久性を高くする。
【解決手段】 クランクシャフト10の回転力をバランサシャフト25に伝達する動力伝達機構50であって、内周面68を有する第1回転体51と、前記内周面に対向する外周面を有する第2回転体52と、第1回転体の内周面に設けられたアウタ磁石群72と、第2回転体の外周面に設けられ、アウタ磁石群72と隙間を介して磁気的に作用するインナ磁石群76とを有し、アウタ磁石群に含まれる各磁極面は、インナ磁石群に含まれる各磁極面よりも、回転軸線を中心とした角度幅が大きいことを特徴とする。
【選択図】 図5

Description

本発明は、内燃機関においてクランクシャフトの回転力をバランサシャフトに伝達する動力伝達機構に関する。
レシプロエンジン等の内燃機関では、ピストン及びクランクシャフトの運動に伴う慣性力や偶力を低減するために、バランサ装置が設けられることがある。バランサ装置は、クランクシャフトと平行に延びるバランサシャフトを有する。バランサシャフトは、重心が回転中心から偏倚しており、クランクシャフトと同期して回転することによって慣性力や偶力を発生し、ピストン及びクランクシャフトの運動に伴う慣性力や偶力を相殺する。
内燃機関では、各気筒の燃焼(爆発)が間欠的に行われるため、クランクシャフトには常に回転変動が生じている。このクランクシャフトの回転変動は、バランサシャフトを振動させる原因になる。そのため、クランクシャフトとバランサシャフトとをギヤにより連結する場合には、噛合部から振動に伴う異音が生じる虞がある。クランクシャフトの回転変動に起因したバランサ装置の振動を抑制するために、クランクシャフトとバランサシャフトとの間に減衰機構を備えた動力伝達機構を介在させ、減衰機構のばね定数を小さくすることによって、減衰機構及びバランサ装置によって構成される系の固有振動数を低下させたものがある(例えば、特許文献1)。
特許文献1に係る動力伝達機構の減衰機構は、バランサシャフトに回転可能に支持され、クランクシャフトと同期して回転する被動ギヤと、バランサシャフトと被動ギヤとの間に介装されたゴム材料からなる弾性部材とを有している。この動力伝達機構は、バランサシャフトと被動ギヤとの相対角度が所定の範囲内では、バランサシャフトと被動ギヤとの間の摩擦力を減衰力として作用させ、相対回転角度が所定の範囲を超えると、弾性部材が弾性変形し、その弾性力により相対角度を低減する方向に付勢する。
特許第3729006号公報
しかしながら、動力伝達機構の減衰機構としてゴム材料からなる弾性部材を利用した場合、エンジンオイルが存在し、高温となる使用環境において、ゴム部材の経時劣化や熱硬化、圧壊等による特性変化が問題になる。また、近年ではアイドリングストップ機構を備えた内燃機関が多くなっていることから、内燃機関の回転数が低回転域を通過する頻度が多くなり、減衰機構及びバランサシャフトからなる系の固有振動数(共振周波数)を通過する頻度が多くなっている。系の固有振動数では、振幅が大きくなってゴム部材に過大な荷重が加わるため、このような荷重が繰り返し加わるとゴム部材が圧壊する虞がある。
本発明は、以上の背景に鑑みてなされたものであって、クランクシャフトの回転力をバランサシャフトに伝達する動力伝達機構において、クランクシャフトの回転変動に起因した振動を抑制すると共に耐久性を高くすることを課題とする。
上記課題を解決するために、本発明は、クランクシャフト(10)の回転力をバランサシャフト(25)に伝達する動力伝達機構(50)であって、共通の回転軸線を中心として回転可能であり、隙間を介して互いに対向する対向面(68、69)をそれぞれ有する第1及び第2の回転体(51、52)と、異なる磁極面が回転方向に沿って交互に現れるように前記第1の回転体の前記対向面に設けられた第1の磁石群(72)と、異なる磁極面が回転方向に沿って交互に現れるように前記第2の回転体の前記対向面に設けられ、前記第1の磁石群の磁極面と隙間を介して磁気的に作用する第2の磁石群(76)とを有し、前記第1及び第2の磁石群の一方に含まれる各磁極面は、前記第1及び第2の磁石群の他方に含まれる各磁極面よりも、前記回転軸線を中心とした角度幅が大きいことを特徴とする。
この構成によれば、動力伝達機構を磁気カップリングとして構成したため、第1及び第2回転体を互いに非接触とすることができる。このため、第1及び第2回転体間の磨耗や摩擦による異音、発熱が生じなくなる。そのため、第1及び第2回転体間の潤滑や冷却が不要になる。永久磁石は、磁力の経時(年)劣化が少ないため、動力伝達機構は自動車の使用期間に対して十分な耐用年数を有し、耐久性が高い。
第1及び第2の磁石群の一方に含まれる各磁極面を他方に含まれる各磁極面に対して角度幅を大きくすることによって、第1及び第2回転体の相対角度に対して、第1及び第2回転体間で伝達可能なトルクを変化させることができる。すなわち、動力伝達機構を非線形ばねとして機能させることができる。相対角度が小さい範囲では、相対角度が変化しても第1及び第2の磁石群に含まれる各磁極面の対向面積は変化しないため、対向する各磁極面を通過する磁束の変化は小さく、相対角度を小さくする方向に作用する復元トルクの変化は小さくなる。そのため、動力伝達機構をばね定数の小さいばねとして作用させることができ、回転変動に起因した系の振動数を低減することができる。一方、相対角度が大きい範囲では、相対角度の変化に応じて第1及び第2の磁石群に含まれる各磁極面の対向面積が変化するようになるため、復元トルクの変化が大きくなる。これにより、動力伝達機構は、必要な復元トルクを発生することができると共に、第1及び第2回転体の相対角度が過大に増大することを抑制することができる。
上記の発明において、前記第1の回転体は、前記回転軸線を中心とした筒状のアウタロータ部(57)を有し、前記第2の回転体は、前記アウタロータ部の内側に配置されるインナロータ部(64)を有し、前記第1の磁石群は、前記アウタロータ部の内周面(68)に設けられ、前記第2の磁石群は、前記内周面に対向する前記インナロータ部の外周面(69)に設けられ、前記第1及び前記第2の磁石群は、前記回転軸線の径方向において互いに対向するようにしてもよい。
この構成によれば、第1及び第2の磁石群は、吸引力が概ね第1及び第2の回転体のラジアル方向において作用し、第1及び第2の回転体のスラスト方向に作用し難くなる。これにより、第1及び第2の回転体にスラスト軸受を設ける必要性を低減することができる。
上記の発明において、前記第1の磁石群に含まれる前記磁極面は、前記第2の磁石群に含まれる前記磁極面よりも、前記回転軸線を中心とした角度幅を大きくするとよい。
この構成によれば、第2の磁石群よりも径方向外側に配置される第1の磁石群の各磁極面を、第2の磁石群に含まれる各磁極面より角度幅を大きくすることによって、角度幅が大きい側の磁極面の面積(周方向における長さ)を大きくすることができる。
上記の発明において、前記第1及び第2の回転体の相対角度(θ)において、プルアウトを生じずに前記第1及び第2の回転体の間でトルク伝達が可能な限界角度を許容角度(θa、−θa)とすると、前記相対角度が前記許容角度に到達しないように規制するストッパ(77、79)が前記第1及び第2の回転体の間に設けられてもよい。ここで、プルアウトとは、駆動側(第1回転体)の急激な回転速度変動や従動側(第2回転体)の回転負荷が過大な場合に、従動側が駆動側に追従できなくなり、駆動側から従動側へのトルク伝達ができなる、いわゆる脱調現象をいう。
この構成によれば、過大なトルクが第1又は第2の回転体に加わる場合にも、相対角度が許容角度に到達することがなくなり、脱調現象が防止される。
上記の発明において、前記第1及び第2の回転体の相対角度(θ)において、プルアウトを生じずに前記第1及び第2の回転体の間でトルク伝達が可能な限界角度を許容角度(θa、−θa)とすると、前記相対角度に応じて前記第1及び第2の磁石群の磁気カップリングによって前記第1及び第2の回転体間に生じる復元トルクの前記相対角度に対する比である捩じりばね剛さ(K)は、前記相対角度が小さい第1範囲(−θ1≦θ≦θ1)では小さく、前記相対角度が前記第1範囲より大きく、かつ前記許容角度に到達しない第2範囲(−θa<θ<−θ1かつθ1<θ<θa)では、前記第1範囲における比よりも大きくするとよい。ここで、復元トルクとは、相対角度に応じて第1及び第2の磁石群の磁気カップリングによって第1及び第2の回転体間に作用するトルクをいう。捩じりばね剛さ(K)は、復元トルクを相対角度で除することに定められる(捩じりばね剛さ(K)=復元トルク(T)/相対角度(θ))。
この構成によれば、動力伝達機構は、第1範囲において系のばね定数を小さくして系の固有振動数を低下させることができると共に、第2範囲において系のばね定数を大きくして復元トルクを大きくすることができる。また、相対角度が許容角度に到達し難くなる。
上記の発明において、前記第1の回転体の外周部には、前記クランクシャフト側のギヤに噛み合う樹脂製のギヤが一体に形成されていてもよい。
この構成によれば、樹脂製のギヤは、ギヤの噛合部から生じる異音(衝突音)を低減することができるため、研磨仕上げ工程や、シムの選択調整によるバックラッシュ量の管理を省略することができ、製造コストの低減を図ることができる。
また、本発明の他の側面は、クランクシャフト(10)の回転力をバランサシャフト(25)に伝達する動力伝達機構(50)であって、共通の回転軸線を中心として回転可能であり、隙間を介して互いに対向する対向面(68、69)をそれぞれ有する第1及び第2の回転体(51、52)と、前記第1の回転体の前記対向面に、周方向に間隔をおいて配列された強磁性体からなる複数の凸部(81)と、前記第2の回転体の前記対向面に、周方向に間隔をおいて配列され、前記凸部と隙間を介して磁気的に作用する複数の磁石(75A、75B)とを有し、前記凸部は、前記磁石よりも、前記回転軸線を中心とした角度幅が大きいことを特徴とする。
この構成によれば、上記の発明の効果に加えて、第1及び第2回転体の一方に設けられる磁石群を省略することができるため、コストの削減が図れる。
以上の構成によれば、クランクシャフトの回転変動に起因した振動を抑制することができ、かつ耐久性が高い動力伝達機構を提供することができる。
第1実施形態に係る動力伝達機構を備えたバランサ装置を内燃機関に取り付けた状態を示す断面図 図1のII−II断面図であって、第1実施形態に係る動力伝達機構を備えたバランサ装置を示す断面図 第1実施形態に係る動力伝達機構の分解斜視図 図2の矢印IV方向から見た側面図 図2のV−V断面図 第1実施形態に係る動力伝達機構の第1及び第2回転体の相対角度に対する復元トルクの特性を示すグラフ (A)−θ1≦θ≦θ1、(B)θ1<θ、(C)θ<−θ1の範囲におけるアウタ磁石とインナ磁石との位置関係を示す模式図 第2実施形態に係る第1及び第2回転体を示す断面図
以下、図面を参照して、本発明を自動車の内燃機関においてクランクシャフト10の回転力をバランサシャフトに伝達する動力伝達機構50に適用した実施形態について詳細に説明する。図1は、実施形態に係る動力伝達機構50を備えたバランサ装置20を内燃機関1に取り付けた状態を示す断面図である。図1に示すように、内燃機関1は、4ストロークの直列4気筒のレシプロエンジンである。内燃機関1は、シリンダブロック2と、シリンダブロック2の上部に接合されたシリンダヘッド3と、シリンダヘッド3の上部に接合されたヘッドカバー4と、シリンダブロック2の下部に接合されたロアブロック5と、ロアブロック5の下部に接合されたオイルパン6とを有している。シリンダブロック2には、4つのシリンダ7が形成されている。各シリンダ7は、それぞれの軸線が上下に延び、左右方向に沿って直列に配列されている。すなわち、内燃機関1のシリンダ列方向は、左右方向と平行になっている。
シリンダブロック2とロアブロック5との間には、クランクシャフト10がシリンダ列方向と平行に、回転可能に支持されている。各シリンダ7には、上下に摺動可能にピストン11が受容されている。各ピストン11は、コネクティングロッド12を介してクランクシャフト10に連結されている。クランクシャフト10には、各シリンダ7に対応して複数のバランスウエイト14が設けられている。各シリンダ7を左から第1、第2、第3、第4とすると、第2のシリンダ7に対応するバランスウエイト14の側部には、外歯歯車であるクランクギヤ15が設けられている。クランクギヤ15は、クランクシャフト10の回転軸と同軸に配置され、クランクシャフト10と一体に回転する。
バランサ装置20は、ピストン11及びクランクシャフト10からなる系の慣性力の2次成分(2次振動)を抑制するためのランチェスター型バランサとして構成されている。バランサ装置20は、外殻をなすハウジング21を有している。ハウジング21は、互いにボルト締結された上ハウジング22及び下ハウジング23を含む。ハウジング21は、ロアブロック5の下部にボルト締結され、クランクシャフト10の下方にクランクシャフト10と干渉しないように配置される。ハウジング21は、第2及び第3のシリンダ7の下方に配置されている。ハウジング21は、シリンダブロック2の下部に取り付けられた状態で、オイルパン6内に突出しており、オイルパン6内に貯留されたエンジンオイルに一部が没入していてもよい。
図2は、図1のII−II断面図であって、第1実施形態に係る動力伝達機構を備えたバランサ装置を示す断面図である。図2に示すように、ハウジング21内には、第1バランサシャフト25及び第2バランサシャフト26がそれぞれクランクシャフト10と平行に配置されている。第1及び第2バランサシャフト25、26は、金属から形成されている。第1及び第2バランサシャフト25、26のそれぞれは、上ハウジング22及び下ハウジング23によって形成される第1及び第2ラジアル軸受部28、29に、滑り軸受31を介して回転可能に支持されている。上下のハウジング22、23の間であって、各第1ラジアル軸受部28の左方には第1室32が画成され、各第1ラジアル軸受部28と各第2ラジアル軸受部29との間には第2室33が画成されている。第1室32には、第1バランサシャフト25の左端部が突出し、第2室33には第1及び第2バランサシャフト25、26の中間部が受容されている。
図3は、第1実施形態に係る動力伝達機構の分解斜視図である。図2及び図3に示すように、第2室33内に位置する第1バランサシャフト25の外周部には、第1ギヤ35と第1アンバランスウエイト36とが第1バランサシャフト25と一体に回転するように設けられている。第1ギヤ35と第1アンバランスウエイト36は金属から形成されている。第1ギヤ35は、外歯歯車であり、第1バランサシャフト25と同軸に配置され、第1バランサシャフト25の外周面から径方向に張り出している。第1アンバランスウエイト36は、第1ギヤ35よりも右側に配置されている。
同様に、第2室33内に位置する第2バランサシャフト26の外周部には、第2ギヤ37と第2アンバランスウエイト38とが第2バランサシャフト26と一体に回転するように設けられている。第2アンバランスウエイト38は金属から形成される。第2ギヤ37は、金属製のギヤや樹脂ギヤであってよい。第2ギヤ37を樹脂ギヤとした場合には、第2ギヤは例えば第2バランサシャフト26の外周部にインサート成形によって形成されている。第2ギヤ37は、例えばアラミド繊維強化樹脂やPEEK等のスーパーエンジニアリングプラスチックから形成されてよい。第2ギヤ37は、外歯歯車であり、第2バランサシャフト26と同軸に配置され、第2バランサシャフト26の外周面から径方向に張り出している。第2ギヤ37は、第1ギヤ35とピッチ円半径及び歯数が同一であり、第1ギヤ35と噛み合っている。第2アンバランスウエイト38は、第2ギヤ37よりも右側に配置されている。
第1及び第2アンバランスウエイト36、38は、同一不釣合い量を有し、各バランサシャフト25、26の一側部から径方向外方へと突出し、その重心が各バランサシャフト25、26の回転軸線から偏倚している。
第1及び第2ギヤ35、37の左端部は、各バランサシャフト25、26の軸線に対して直交する平面に形成されている。第1及び第2アンバランスウエイト36、38の右端部は、各バランサシャフト25、26の軸線に対して直交する平面に形成されている。各第1ラジアル軸受部28の右端部は、第1及び第2ギヤ35、37の左端部と平行な平面に形成され、ワッシャ41を介して対向している。同様に、各第2ラジアル軸受部29の左端部は、第1及び第2アンバランスウエイト36、38の右端部と平行な平面に形成され、ワッシャ42を介して対向している。第1及び第2ギヤ35、37の左端部が第1ラジアル軸受部28の右端部に規制され、第1及び第2アンバランスウエイト36、38の右端部が第2ラジアル軸受部29の左端部に規制されることによって、第1及び第2バランサシャフト25、26のハウジング21に対するスラスト方向への移動が規制されている。他の実施形態では、ワッシャ41、42に代えて公知のスラスト軸受を使用してもよい。
第1及び第2ギヤ35、37が互いに噛み合うことによって、第1及び第2バランサシャフト25、26は、互いに逆方向に同速で回転する。このとき、第1及び第2バランサシャフト25、26は、第1及び第2アンバランスウエイト36、38の位相が同位相となるように、連結されている。すなわち、第1アンバランスウエイト36が上方に位置するときには、第2アンバランスウエイト38も上方に位置するように配置されている。
図4は図2の矢印IV方向から見た側面図であり、図5は図2のV−V断面図である。図2〜図5に示すように、第1バランサシャフト25の左端部は、他の部分に対して段部を介して縮径された小径部46を構成しており、第1ラジアル軸受部28から左方に突出して第1室32内において遊端となっている。小径部46は、基端側(右側)に円柱状のジャーナル部47を有する。
小径部46とクランクギヤ15との間には、クランクギヤ15の回転力を小径部46に伝達する動力伝達機構50が配置される。動力伝達機構50は、ジャーナル部47に回転可能に支持された第1回転体51と、小径部46の先端部48に回転不能に結合され、第1バランサシャフト25と一体に回転する第2回転体52とを有している。第1及び第2回転体51、52は、磁性体から形成されている。
第1回転体51は、中心部に挿通孔54を有する円柱状の基部55を有する。挿通孔54には滑り軸受56を介してジャーナル部47が挿通され、基部55はジャーナル部47に同軸に回転可能に支持されている。基部55の軸線方向における左及び右の端面は、軸線に対して直交する平面に形成されている。左端面の外周部には、基部55と同軸となる筒状のアウタロータ部57が左方へと突設されている。
基部55の外周部には、外歯歯車であるドリブンギヤ58が基部55と一体に回転するように設けられている。ドリブンギヤ58は、樹脂ギヤであり、基部55と同軸の軸線を有する。基部55の外周部には、複数の突片59が形成されており、ドリブンギヤ58は複数の突片59を巻き込むようにインサート成形されている。ドリブンギヤ58は、例えばアラミド繊維強化樹脂やPEEK等のスーパーエンジニアリングプラスチックから形成されてよい。
図1に示すように、上ハウジング22は、ドリブンギヤ58に対応する部分に上下に貫通する開口61を有している。ドリブンギヤ58は、外周部の内で上側の位置する部分が開口61を通して上ハウジング22の上方へと突出し、クランクギヤ15に噛み合う。本実施形態では、ドリブンギヤ58は、クランクギヤ15に対してピッチ円半径及び歯数が半分である。ドリブンギヤ58がクランクギヤ15に噛み合うことによって、第1回転体51はクランクシャフト10に同期して逆方向に2倍の回転速度で回転する。
第2回転体52は、中心部に貫通孔63が形成された円柱状のインナロータ部64を有する。インナロータ部64の外径は、アウタロータ部57の内径よりも小さく形成されている。貫通孔63に小径部46の先端部48が圧入されることによって、第2回転体52は第1バランサシャフト25に対して回転不能に結合される。第2回転体52と第1バランサシャフト25とが互いに結合された状態においてインナロータ部64はアウタロータ部57の内方に配置され、アウタロータ部57の内周面68とインナロータ部64の外周面69とは、隙間を介して径方向に互いに対向した対向面となる。
インナロータ部64の軸線方向における左及び右の端面は、軸線に対して直交する平面に形成されている。基部55は、左端面がワッシャ65を介してインナロータ部64の右端面に対向し、右端面がワッシャ66を介して第1ラジアル軸受部28の左側部に対向する。これにより、第1回転体51は、第1バランサシャフト25に対して軸線方向における位置が規制されている。
アウタロータ部57の内周面68には、複数(本実施形態では16個)のアウタ磁石71からなるアウタ磁石群72が設けられている。各アウタ磁石71は、永久磁石であり、例えばネオジム磁石である。各アウタ磁石71は、それぞれ同一の形状を有し、内周面68の周方向に沿って等間隔で配置されている。アウタ磁石71は、径方向内方を向くN極の磁極面及び径方向外方を向くS極の磁極面を有するNアウタ磁石71Aと、径方向内方を向くS極の磁極面及び径方向外方を向くN極の磁極面を有するSアウタ磁石71Bとを8個ずつ有し、Nアウタ磁石71AとSアウタ磁石71Bとが周方向において交互に配置されている。すなわち、アウタ磁石群72は、アウタロータ部57の内周面68に、異なる磁極面が回転方向に沿って交互に現れるように配置されている。
Nアウタ磁石71A及びSアウタ磁石71Bを含む16個のアウタ磁石71は、周方向に22.5°(=360/n(n:アウタ磁石数、本実施形態では16))毎にアウタロータ部57の内周面68に配置されている。各アウタ磁石71の周方向における角度幅(以下、アウタ磁石71の角度幅Woとする)は、22.5°より小さく設定され、隣り合うアウタ磁石71間に間隔が形成されている。アウタ磁石71の角度幅Woは、例えば15〜22°であってよい。隣り合うアウタ磁石71の間隔の周方向における角度幅(以下、間隔の角度幅Wvとする)は、アウタ磁石71の角度幅Woを例えば20°とした場合には、2.5°になる。
各アウタ磁石71は、アウタロータ部57の内周部に埋設されている。各アウタ磁石71は、径方向内方を向く磁極面及び径方向外方を向く磁極面が平面をなす平板状に形成されてもよく、径方向内方を向く磁極面及び径方向外方を向く磁極面が円弧状に湾曲し、弓形に形成されてもよい。各アウタ磁石71は、径方向内方を向く磁極面は、隣り合うアウタ磁石71間を埋めるアウタロータ部57の内周部と共に滑らかな円周面を形成している。アウタロータ部57はヨークとして機能する。
インナロータ部64の外周面69には、アウタ磁石71の数と同数の16個のインナ磁石75からなるインナ磁石群76が設けられている。各インナ磁石75は、永久磁石であり、例えばネオジム磁石である。各インナ磁石75は、それぞれ同一の形状を有し、外周面69の周方向に沿って等間隔で配置されている。インナ磁石75は、径方向外方を向くN極の磁極面及び径方向内方を向くS極の磁極面を有するNインナ磁石75Aと、径方向外方を向くS極の磁極面及び径方向内方を向くN極の磁極面を有するSインナ磁石75Bとを8個ずつ有し、Nインナ磁石75AとSインナ磁石75Bとが周方向において交互に配置されている。すなわち、インナ磁石群76は、インナロータ部64の外周面69に、異なる磁極面が回転方向に沿って交互に現れるように配置されている。
Nインナ磁石75A及びSインナ磁石75Bを含む16個のインナ磁石75は、周方向に22.5°毎にインナロータ部64の外周面69に配置されている。各インナ磁石75の周方向における角度幅(以下、インナ磁石75の角度幅Wiという)は、アウタ磁石71の角度幅Woより小さく、隣り合うインナ磁石75と接触しないように間隔を有している。
各インナ磁石75は、インナロータ部64の外周部に埋設されている。各インナ磁石75は、径方向内方を向く磁極面及び径方向外方を向く磁極面が平面をなす平板状に形成されてもよく、径方向内方を向く磁極面及び径方向外方を向く磁極面が円弧状に湾曲し、弓形に形成されてもよい。各インナ磁石75の径方向外方を向く磁極面は、隣り合うインナ磁石75間を埋めるインナロータ部64の外周部と共に滑らかな円周面を形成している。インナロータ部64はヨークとして機能する。インナ磁石群76及びインナロータ部64は、アウタ磁石群72及びアウタロータ部57に接触しないように配置されている。
アウタ磁石群72とインナ磁石群76とは、磁気的な作用によって結合する(磁気カップリングする)。詳細には、互いに対向したNアウタ磁石71A及びSインナ磁石75Bが吸引力を生じ、互いに対向したSアウタ磁石71B及びNインナ磁石75Aが吸引力を生じる。また、Nアウタ磁石71Aと対向するSインナ磁石75Bの隣に位置するNインナ磁石75Aとが反発力を生じ、Sアウタ磁石71Bと対向するNインナ磁石75Aの隣に位置するSインナ磁石75Bが反発力を生じる。アウタ磁石群72とインナ磁石群76との磁気的な作用は、図5に示すように、Nアウタ磁石71AとSインナ磁石75Bとが正対した位置、すなわちNアウタ磁石71Aの周方向における中央と、Sインナ磁石75Bの周方向における中央とが一致する位置において最も安定的になる。このときの第1回転体51及び第2回転体52の相対角度(以下、相対角度θという)を基準角度θ0(0°)とする。
第1及び第2回転体51、52が相対回転し、相対角度θが基準角度θ0からずれると、アウタ磁石群72及びインナ磁石群76の磁気的な作用(磁気カップリング)による復元トルクが、相対角度θを基準角度θ0に戻す方向に、アウタロータ部57及びインナロータ部64に作用する。この復元トルクによって、第1回転体51及び第2回転体52間でのトルク伝達が可能になる。
なお、相対角度θが基準角度θ0から正負の方向に所定値以上になると、アウタ磁石群72及びインナ磁石群76の磁気的な作用による復元トルクが相対角度θを基準角度θ0に復帰させる方向から逆向きに変化し、相対角度θが基準角度θ0に復帰できなくなるため、第1及び第2回転体51、52間でのトルク伝達が不可能になる。このときの第1及び第2回転体51、52間でのトルク伝達が可能な角度範囲の限界値(限界角度)を許容角度±θaとする。本実施形態では、許容角度θaは、相対角度θが基準角度θ0から正又は負方向に進み、初めてNアウタ磁石71AとNインナ磁石75Aとが正対する(同時にSアウタ磁石71BとSインナ磁石75Bとが正対する)角度である±22.5°である。
図3及び図4に示すように、インナロータ部64の左端部には、一対のストッパ77が突設されている。各ストッパ77は、径方向外方に突出する突片である。アウタロータ部57の左端部には、各ストッパ77を受容する一対の切欠部78が形成されている。切欠部78は周方向に所定の長さを持って延在し、周方向における両端部に端壁部79を有する。ストッパ77は、切欠部78内を端壁部79に当接するまで周方向に移動可能になっている。相対角度θが基準角度θ0のときには、各ストッパ77は各切欠部78の周方向における中央に配置される。相対角度θが所定のストッパ角度±θsになるときに、各ストッパ77は各切欠部78の端壁部79に突き当たる。すなわち、第1及び第2回転体51、52の相対回転は、各ストッパ77と各切欠部78の端壁部79との当接によって、所定の角度範囲(−θs≦θ≦θs)に規制される。ストッパ角度±θsの絶対値は、プルアウト±θaの絶対値よりも小さく設定されている。そのため、相対角度θが、許容角度±θaに到達することはない。相対角度θがストッパ角度±θsに達すると、ストッパ77と切欠部78の端壁部79との当接によって、第1及び第2回転体51、52の間でトルク伝達がなされる。
図6は、動力伝達機構50の第1及び第2回転体51、52の相対角度θに対する復元トルクTの特性を示すグラフである。図6に示すように、動力伝達機構50は、相対角度θが正又は負に大きくなるにつれて、復元トルクTが正又は負に大きくなる特性を有する。また、相対角度θに対する復元トルクTの比(以下、捩じりばね剛さKという。捩じりばね剛さK=復元トルクT/相対角度θ)は、相対角度θが所定の第1角度θ1付近において大きく変化する。詳細には、相対角度θが−θ1≦θ≦θ1の範囲にあるときは捩じりばね剛さKが概ねK1となり、相対角度θがθ<−θ1又はθ1<θの範囲にあるときは捩じりばね剛さKが概ねK2となり、K1<K2の関係になる。動力伝達機構50をばねとしてみると、捩じりばね剛さKはばね定数に対応する。そのため、捩じりばね剛さKがK1である−θ1≦θ≦θ1の範囲は、ばね定数が小さい弱ばね範囲といえ、捩じりばね剛さKがK2であるθ<−θ1又はθ1<θの範囲はばね定数が弱ばね範囲よりも大きい強ばね範囲といえる。第1角度±θ1は、インナ磁石75の周方向における端部の一方が、対向するアウタ磁石71の周方向において対応する端部と概ね一致する角度である。第1角度θ1は、許容角度θaより小さく、かつストッパ角度θsより小さい値に設定されている。
図7は、(A)−θ1≦θ≦θ1、(B)θ1<θ、(C)θ<−θ1の範囲におけるアウタ磁石71とインナ磁石75との位置関係を示す模式図である。図7(A)に示すように、アウタ磁石71の角度幅Woに対してインナ磁石75の角度幅Wiは小さいため、相対角度θが−θ1≦θ≦θ1の範囲では相対角度θが増減してもアウタ磁石71及びインナ磁石75の磁極面の対向面積は変化しない。そのため、この範囲では相対角度が変化してもアウタ磁石71及びインナ磁石75を通過する磁束は変化が小さく、アウタ磁石71及びインナ磁石75間に延びる磁力線もほとんど変化しない。そのため、相対角度θを基準角度θ0に戻そうとする復元力(復元トルクT)は低く維持される。一方、相対角度が正または負の方向にθ1、−θ1を超えて大きくなると、図7(B)及び(C)に示すように、アウタ磁石71及びインナ磁石75の磁極面の対向面積が減少する。この状態では、アウタ磁石71及びインナ磁石75の互いに対向しない部分が生じ、これらの部分に作用する吸引力(磁力線)が径方向に対して傾斜すると共に、インナ磁石75が同極の磁極面を有するアウタ磁石71に接近することによって、インナ磁石75及びアウタ磁石71間に生じる反発力が増大し、周方向への力である復元トルクTが増加する。これらによって、強ばね範囲では捩じりばね剛さK2が増大する。
弱ばね範囲の上限及び下限である第1角度±θ1は、アウタ磁石71の角度幅Wo、インナ磁石75の角度幅Wi、アウタ磁石71間の間隔の角度幅Wv、アウタ磁石71とインナ磁石75との径方向距離、アウタ磁石71及びインナ磁石75の数の少なくとも1つを適宜設定することによって調整することができる。弱ばね範囲及び強ばね範囲での捩じりばね剛さK1、K2は、アウタ磁石71の角度幅Wo、インナ磁石75の角度幅Wi、アウタ磁石71間の間隔の角度幅Wv、アウタ磁石71とインナ磁石75との径方向距離、アウタ磁石71及びインナ磁石75の数及びアウタ磁石71及びインナ磁石75の磁束密度の少なくとも1つを適宜設定することによって調整することができる。
以上のように構成した動力伝達機構50の作用について説明する。クランクシャフト10が回転すると、クランクギヤ15及びドリブンギヤ58の噛み合いによって第1回転体51がクランクシャフト10の回転に対して逆方向に2倍の回転速度で回転する。第1回転体51が回転することによって、第1回転体51と第2回転体52との間に相対回転が生じ、アウタ磁石群72とインナ磁石群76との磁気カップリングによって、相対角度θに応じた復元トルクTが第1及び第2回転体51、52間に発生する。第1回転体51がクランクシャフト10から受けるトルクが増大する場合には、必要な復元トルクTを得るために相対角度θが増大する。このようにして、第1バランサシャフト25は、クランクシャフト10と同期して逆方向に2倍の回転数で回転する。
第2バランサシャフト26は、第1ギヤ35及び第2ギヤ37を介して連結されているため、第1バランサシャフト25に対して逆方向に同一の回転速度で回転する。第1バランサシャフト25及び第2バランサシャフト26が互いに逆方向にクランクシャフト10の2倍の回転速度で回転することによって、第1及び第2アンバランスウエイト36、38に起因した慣性力を生じ、ピストン11及びクランクシャフト10からなる系の慣性力の2次成分を相殺する。
クランクシャフト10の回転数に変動が生じると、動力伝達機構50は相対角度θを変化させて復元トルクTを変化させ、変化した復元トルクTによって第1バランサシャフト25を回転させる。動力伝達機構50は、クランクシャフト10に回転変動が生じると、相対角度θを変化させ、回転変動を緩和し、回転変動が第1バランサシャフト25に伝達され難くする。
動力伝達機構50は、加振源としてのクランクシャフト10と、制振対象としてのバランサ装置20との間に介装され、ばねとして機能するため、バランサ装置20の固有振動数(共振周波数)を低下させ、クランクシャフト10の回転変動に起因した振動を抑制することができる。特に、基準角度θ0を含む弱ばね領域(−θ1≦θ≦θ1)の捩じりばね剛さK1を比較的小さくすることによって、バランサ装置20の固有振動数を低下させ、エンジンの常用使用回転域において動力伝達機構50及びバランサ装置20により構成される系の振動を低減することができる。一方、強ばね範囲(θ<−θ1、θ1<θ)では捩じりばね剛さをK1より大きいK2としたことによって、クランクシャフト10に過大な回転変動が生じ、相対角度θが大きくなる場合にもプルアウトが生じないようにすることができる。
このように構成した動力伝達機構50では、エンジン回転数が低い領域(一般的にはアイドリング回転数の1/√2倍以下)に共振回転数があり、エンジンの始動時に共振回転数を通過することになる。共振回転数を通過する際には、動力伝達機構50に比較的大きな回転力が加わるが、相対角度θが強ばね範囲まで変化し、復元トルクTが増大することで第2回転体52が第1回転体51と共に回転する。これにより、第1及び第2回転体51、52は、ストッパ77及び端壁部79が衝突することなく回転する。このように、動力伝達機構50は、共振回転数においても損傷を受けることがない。
本実施形態では、アウタ磁石71の角度幅Woをインナ磁石75の角度幅Wiに対して大きく設定したことによって、相対角度θが小さい弱ばね範囲においては、アウタ磁石71の磁極面とインナ磁石75の磁極面との対向面積を変化させないようにして、小さな捩じりばね剛さK1を実現している。
また、クランクシャフト10に予期しない過大な回転変動が生じる場合には、相対角度θがストッパ角度θs、−θsにおいてストッパ77と切欠部78の端壁部79とが当接し、相対角度θが許容角度θa、−θaに到達することが防止される。
以上に説明したように、動力伝達機構50は、弱ばね範囲と強ばね範囲とを共に有する非線形ばねとして機能する。動力伝達機構50は、2段ばね特性をもつ1自由度系の強制回転変位入力の非線形振動モデルとして取り扱うことができ、デュアルマスフライホイールのチューニングと同様に内燃機関の始動直後の極低回転(一般的にアイドル回転数の1/√2倍以下の低い回転)で瞬時に共振点を通過させて常用使用回転域で防振効果を得ることができる。また、逆S字に近い2段バネ特性(相対角度の増加に応じてばね剛さ(K)が増加する強ばね)の非線形振動モデルとすることによって、内燃機関始動時(回転上昇)と停止時(回転下降)で共振発生回転数に履歴幅(ヒステリシス)を与えることができる。そのため、ローアイドルガバナー制御を行うディーゼルエンジンにおいては、このヒステリシスを利用することによって、より低回転側まで高い防振効果を得ることができる。
動力伝達機構50及びバランサ装置20を含む系の固有振動数をより低減したい場合には、動力伝達機構50のばね定数を下げるとよい。そのためには、弱ばね範囲を拡大する(θ1を大きくし、−θ1を小さくする)、又はアウタ磁石71とインナ磁石75との吸引力を低減するとよい。これらを達成するために、磁束密度が小さい磁石に変更する、又はアウタ磁石71とインナ磁石75との距離を拡大するとよい。
動力伝達機構50は、磁気カップリングとして構成され、第1及び第2回転体51、52は互いに非接触に構成されているため、摩擦音の発生、摩擦による磨耗及び発熱が生じない。そのため、潤滑及び冷却の必要性がない。また、アウタ磁石群72及びインナ磁石群76を構成する永久磁石は、磁力の経時劣化が少ない。また、オイル等が存在する環境においても劣化することがほとんどない。そのため、本実施形態に係る動力伝達機構50は、耐久力が高いといえる。
本実施形態に係る動力伝達機構50は、アウタロータ部57及びインナロータ部64を有し、アウタ磁石群72及びインナ磁石群76が径方向において互いに対向するように構成したため、第1回転体51及び第2回転体52に、磁気的な作用によるスラスト力が生じ難い。そのため、第1回転体51及び第2回転体52や第1バランサシャフト25等にスラスト軸受を設ける必要性が低減される。
本実施形態では、ドリブンギヤ58及び第2ギヤ37を樹脂ギヤとしたため、クランクギヤ15とドリブンギヤ58、及び第1ギヤ35と第2ギヤ37との間の噛合部における衝撃が吸収され、噛合音が低減される。そのため、ドリブンギヤ58及び第2ギヤ37はシムによる調整等も必要がなくなる。そのため、ドリブンギヤ58及び第2ギヤ37の加工及び組み付けが容易になる。
次に、図8を参照して第2実施形態に係る動力伝達機構50を説明する。図8は、第2実施形態に係る第1及び第2回転体を示す断面図である。図8に示すように、第2実施形態に係る動力伝達機構50は、第1実施形態に係る動力伝達機構50に対して第1回転体80の構成が異なる。第2実施形態において、第1実施形態と同様の構成については同様の符号を付し、説明を省略する。第2実施形態に係る第1回転体80は、強磁性体から構成され、第1実施形態の回転体と同様に基部55及びアウタロータ部57を有する。
第2実施形態では、アウタ磁石群72の代わりに、アウタロータ部57の内周面68に、インナ磁石75と磁気的に相互作用する凸部81を有している。アウタロータ部57の内周面68には、軸線方向に延在する複数(本実施形態では16個)の溝82が周方向に等間隔で凹設されている。凸部81は、複数の溝82によって周方向に複数(本実施形態では16個)の領域に区画された部分であり、溝82の底部に対して径方向内方へと突出している。凸部81の径方向内方を向く面は、円周面と同様の曲面に形成されている。凸部81は第1実施形態におけるアウタ磁石71に対応し、溝82は第1実施形態における隣り合うアウタ磁石71間に配置された間隔に対応する。各凸部81は、アウタロータ部57の軸線を中心として22.5°毎に配置され、等しい角度幅を有する。各凸部81は、第1実施形態における各アウタ磁石71の角度幅Woと同様の角度幅を有し、インナ磁石75の角度幅Wiより大きく形成されている。
各凸部81と各インナ磁石75とは、磁気カップリングし、第1回転体51及び第2回転体52間でトルク伝達が可能になる。第1回転体51及び第2回転体52の相対角度θに対する復元トルクTの特性は、第1実施形態と同様に、図6に示すグラフのように設定されている。溝82が設けられた部分では、インナ磁石75と溝82の底部との距離が大きくなるため、凸部81とインナ磁石75との間に作用する引力は、溝82とインナ磁石75との間に作用する引力より大きくなる。そのため、インナ磁石75は、凸部81と正対する位置において最も安定し、相対角度θに応じて復元トルクTが変化する。
第2実施形態に係る動力伝達機構50では、第1実施形態に係る動力伝達機構50と同様の効果を奏すると共に、アウタ磁石群72を省略することができるため、製造コストを削減することができる。
第2実施形態の変形例として、インナ磁石群76を構成するインナ磁石75の磁極面は適宜変更することができる。例えば、インナ磁石群76の全てを、Nインナ磁石75Aのみ、又はSインナ磁石75Bのみから構成してもよい。また、凸部81の径方向内側を向く面は、円周面に限らず適宜変更することができる。例えば、相対角度θに応じて凸部81とインナ磁石75との距離が変化するようにしてもよい。このように、凸部81とインナ磁石75との距離が変化させることによって、相対角度θに応じた復元トルクTの特性を変化させることができる。また、凸部81を含む第1回転体80全体を強磁性体とせずに、任意の材料から構成した第1回転体80の内面に強磁性体からなる凸部81を接合する構成としてもよい。
以上で具体的実施形態の説明を終えるが、本発明は上記実施形態に限定されることなく幅広く変形実施することができる。本発明は、自動車の内燃機関1に限らず、自動二輪車の内燃機関1にも当然に適用することができる。また、内燃機関1のシリンダ数及び配置(直列、V字)は適宜変更することができる。
上記の実施形態では、バランサ装置20及び動力伝達機構50を、ピストン11及びクランクシャフト10を含む系の慣性力の2次成分を低減する構成としたが、例えば、慣性力の1次成分を低減する構成や、一次偶力を低減する構成としてもよい。慣性力の1次成分を対象とした場合、ドリブンギヤ58のピッチ円半径及び歯数をクランクギヤ15と同じにし、ドリブンギヤ58をクランクギヤ15に対して逆方向に同速で回転させるようにするとよい。また、必要に応じて第2バランサシャフト26は省略してもよい。
第1及び第2バランサシャフト25、26における、第1及び第2ギヤ35、37、バランサウエイト、動力伝達機構50の配置は適宜変更することができる。例えば、第1及び第2回転体51、52に設けられるアウタ磁石群72及びインナ磁石群76、又は複数の凸部81及びインナ磁石群76がスラスト方向から対向するようにしてもよい。この場合、第1及び第2回転体51、52を支持するスラスト軸受を設けるとよい。
アウタ磁石群72に含まれるアウタ磁石71の数、及びインナ磁石群76に含まれるインナ磁石75の数は適宜変更可能である。また、本実施形態では、アウタ磁石71の角度幅Woをインナ磁石75の角度幅Wiより大きくしたが、他の実施形態ではインナ磁石75の角度幅Wiをアウタ磁石71の角度幅Woより大きくしてもよい。
1…内燃機関、2…シリンダブロック、5…ロアブロック、6…オイルパン、10…クランクシャフト、15…クランクギヤ、20…バランサ装置、21…ハウジング、25…第1バランサシャフト、26…第2バランサシャフト、35…第1ギヤ、36…第1アンバランスウエイト、37…第2ギヤ、38…第2アンバランスウエイト、50…動力伝達機構、51…第1回転体、52…第2回転体、55…基部、57…アウタロータ部、58…ドリブンギヤ、61…開口、64…インナロータ部、71…アウタ磁石、72…アウタ磁石群、75…インナ磁石、76…インナ磁石群、77…ストッパ、78…切欠部、79…端壁部、80…第1回転体、81…凸部、82…溝

Claims (7)

  1. クランクシャフトの回転力をバランサシャフトに伝達する動力伝達機構であって、
    共通の回転軸線を中心として回転可能であり、隙間を介して互いに対向する対向面をそれぞれ有する第1及び第2の回転体と、
    異なる磁極面が回転方向に沿って交互に現れるように前記第1の回転体の前記対向面に設けられた第1の磁石群と、
    異なる磁極面が回転方向に沿って交互に現れるように前記第2の回転体の前記対向面に設けられ、前記第1の磁石群の磁極面と隙間を介して磁気的に作用する第2の磁石群とを有し、
    前記第1及び第2の磁石群の一方に含まれる各磁極面は、前記第1及び第2の磁石群の他方に含まれる各磁極面よりも、前記回転軸線を中心とした角度幅が大きいことを特徴とする動力伝達機構。
  2. 前記第1の回転体は、前記回転軸線を中心とした筒状のアウタロータ部を有し、
    前記第2の回転体は、前記アウタロータ部の内側に配置されるインナロータ部を有し、
    前記第1の磁石群は、前記アウタロータ部の内周面に設けられ、
    前記第2の磁石群は、前記内周面に対向する前記インナロータ部の外周面に設けられ、
    前記第1及び前記第2の磁石群は、前記回転軸線の径方向において互いに対向することを特徴とする請求項1に記載の動力伝達機構。
  3. 前記第1の磁石群に含まれる前記磁極面は、前記第2の磁石群に含まれる前記磁極面よりも、前記回転軸線を中心とした角度幅が大きいことを特徴とする請求項2に記載の動力伝達機構。
  4. 前記第1及び第2の回転体の相対角度において、プルアウトを生じずに前記第1及び第2の回転体の間でトルク伝達が可能な限界角度を許容角度とすると、
    前記相対角度が前記許容角度に到達しないように規制するストッパが前記第1及び第2の回転体の間に設けられていることを特徴とする請求項1〜請求項3の少なくとも1つの項に記載の動力伝達機構。
  5. 前記第1及び第2の回転体の相対角度において、プルアウトを生じずに前記第1及び第2の回転体の間でトルク伝達が可能な限界角度を許容角度とすると、
    前記相対角度に応じて前記第1及び第2の磁石群の磁気カップリングによって前記第1及び第2の回転体間に生じる復元トルクの前記相対角度に対する比である捩じりばね剛さは、前記相対角度が小さい第1範囲では小さく、前記相対角度が前記第1範囲より大きく、かつ前記許容角度に到達しない第2範囲では、前記第1範囲における比よりも大きくなることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1つの項に記載の動力伝達機構。
  6. 前記第1の回転体の外周部には、前記クランクシャフト側のギヤに噛み合う樹脂製のギヤが一体に形成されていることを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか1つの項に記載の動力伝達機構。
  7. クランクシャフトの回転力をバランサシャフトに伝達する動力伝達機構であって、
    共通の回転軸線を中心として回転可能であり、隙間を介して互いに対向する対向面をそれぞれ有する第1及び第2の回転体と、
    前記第1の回転体の前記対向面に、周方向に間隔をおいて配列された強磁性体からなる複数の凸部と、
    前記第2の回転体の前記対向面に、周方向に間隔をおいて配列され、前記凸部と隙間を介して磁気的に作用する複数の磁石とを有し、
    前記凸部は、前記磁石よりも、前記回転軸線を中心とした角度幅が大きいことを特徴とする動力伝達機構。
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