JP2014193078A - 金車装置および架空地線架け替え工法 - Google Patents

金車装置および架空地線架け替え工法 Download PDF

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Abstract

【課題】全ての送電線を停電状態にさせることなく活線のままで、既設の架空地線を新たな架空地線に架け替えることのできる金車装置および架空地線架け替え工法が望まれている。
【解決手段】金車装置1は、架空送電線の上方位置にあって鉄塔間に架け渡されている既設の架空地線を新たな架空地線に架け替えるために、鉄塔の塔頂部に設置される装置であって、既設の架空地線、新たな架空地線、または架け替え作業用のロープを載置して滑動する滑車19、および、滑車19を回動自在に軸支する軸受部から成る金車部材2と、鉄塔の塔頂部に取り付けられる取付け部5に立設されていて金車部材2の軸受部を吊り下げ支持する竪型架台3と、から構成されているものである。
【選択図】図1

Description

本発明は、避雷線として鉄塔の塔頂間に架け渡されている架空地線を新たな架空地線に架け替えるための滑車、いわゆる金車を備えた金車装置、およびこれを用いた架空地線架け替え工法に関するものである。
従来、この種の金車装置を用いた架空地線張替工法としては、例えば下記の特許文献1に記載されたものが知られている。かかる特許文献1記載の工法は、複数の鉄塔間に架け渡された既設の古い架空地線を新たな架空地線に架け替えるものである。この工法では、鉄塔の片側全ての送電線を停電状態にしたうえで、塔上部に設置されているデリック(図示せず)などを用いている。例えば、図5および図10(b)に示すように、停電状態の送電線37(図5中の○内に「停」と表示)を吊持した腕金部36の外方位置で、2点鎖線矢印U(図5中)で示すように、金車装置91を塔上部まで吊り上げている。金車装置91は、塔頂部35Aよりも少し下の位置で塔本体枠35に取り付けられる架台部93と、架台部93に吊り下げられる滑車を有する金車部材92と、から構成されている。滑車の直径は例えば600mm程度と比較的大きい。そして、既設の架空地線に吊金車の上部が吊り下げられ、吊金車の下部に作業用ロープや停電中の送電線が保持されて、新たな架空地線が延線されるようになっている。
特開2007−336696号公報
ところで、従来の金車装置91は比較的サイズが大きいことから、塔頂部での作業範囲を広く採らざるを得ない。そのために、工事者が最寄りの送電線と干渉しやすくなるから、その送電線を停電状態にしなければならなかったのである。また、大きいサイズのために塔本体枠35や腕金部36の外側位置でしか運ぶことができない。従って、運び上げる側(図5中の左側)に配置されている送電線37を停電状態にしなければならなかったのである。そのために、架け替え作業が左右2回線の送電線のうち片側の送電を停止し得る時期に限定されること、短い停電期間に限られるため一度に多数の作業員が必要になること、または、必要な時期に作業ができないことなどが懸念されていた。
一方で、近年のように電力需要が逼迫している折から、停電状態を極力回避する必要があった。そのために、全ての送電線を活線状態(図中の○内に「活」と表示)のままにして架空地線の架け替え工事を行なうことが嘱望されていたのである。
本発明は、上記した従来の問題点に鑑みてなされたものであって、全ての送電線を停電状態にさせることなく送電状態のままで、既設の架空地線を新たな架空地線に架け替えることのできる金車装置および架空地線架け替え工法の提供を目的とする。
上記目的を達成するために、本発明に係る金車装置は、架空送電線の上方位置にあって鉄塔間に架け渡されている既設の架空地線を新たな架空地線に架け替えるために、鉄塔の塔頂部に設置される金車装置であって、既設の架空地線、新たな架空地線、または架け替え作業用のロープを載置して滑動する滑車、および、滑車を回動自在に軸支する軸受部から成る金車部材と、鉄塔の塔頂に取り付けられる取付け部を有していて金車部材の軸受部を吊り下げ支持する竪型架台と、から構成されていることを特徴とする構成にしてある。
また、前記構成において、金車部材は、外部から滑車に加えられた回転力を抑える制動機構を介して、滑車が軸受部に軸支されていることを特徴とするものである。
そして、前記した各構成において、金車部材と竪型架台が、塔本体枠の枠内を上下に通過可能なサイズに形成されていることを特徴とするものである。
更に、前記した各構成において、地線架け渡し方向に並べて配置される2以上の金車部材と、側面視で上向きに膨らんだ円弧状に形成されていて前記並べられた2以上の金車部材の軸受部をそれぞれ前後揺動自在に吊り下げ支持する曲がり支持部材と、曲がり支持部材を鉄塔の塔頂に接続するための接続部材と、から成る複数輪金車部材を備えているものである。
また、前記した各構成において、架空地線が光ファイバー通信線を有していることを特徴とするものである。
そして、本発明に係る架空地線架け替え工法は、前記したいずれかの金車装置の金車部材と竪型架台を、各鉄塔における塔本体枠の枠内を通過させて搬送し塔頂部に設置する金車設置工程と、本体フレームの上下中心部に設けられたロープ固定部、本体フレームの一端部に回動自在に設けられた第1滑車、および、本体フレームの他端部に回動自在に設けられた第2滑車から成り、鉄塔間に架け渡された固定用ロープを固定したロープ固定部を中心として上下反転可能な吊金車を用い、既設の架空地線に吊金車の第1滑車を吊り下げ、吊金車の第2滑車に新たな架空地線を載置して既設の架空地線を走行し、各鉄塔に設置された金車装置の金車部材間に新たな架空地線を架け渡す新線架け渡し工程と、各鉄塔の金車部材間に展張された新たな架空地線を各鉄塔の塔頂部に固定するとともに既設の架空地線の張力を緩めたのちに吊金車を上下反転させる地線反転工程と、既設の架空地線の一端部を鉄塔から取り外したのち、既設の架空地線を他端側の金車部材を用いて引き抜く旧線引き抜き工程と、を備えて成るものである。
本発明に係る金車装置によれば、鉄塔の塔頂に取り付けられる竪型架台と、竪型架台に吊り下げ支持される金車部材とを備えているので、架空地線などを載置して滑動する滑車を、塔頂よりも高い位置に配置できる。これにより、送電線からの距離を大きくとれる。また、金車部材のサイズが小さい場合は工事者の作業範囲を小さくし得るので、これによっても工事者が最寄りの送電線に近づくことを回避できる。従って、送電線が送電状態のままで架空地線の架け替え工事を行なうことができる。
また、滑車に外部から加えられた回転力を抑える制動機構を介して、滑車が軸受部に軸支されている金車装置を用いる場合は、繰り出される引抜き用ロープや固定用ロープなどの重量に起因した回転力が制動機構により抑制されるので、引抜き用ロープや固定用ロープなどがその重みにより無用に繰り出されて垂れ下がることがない。その結果、垂れ下がったロープが、通電中の送電線に触れて電気事故を引き起こすといった不具合を回避することができる。
また、金車部材と竪型架台が、塔本体枠の枠内を上下に通過可能なサイズに形成されているので、塔本体枠の枠内を通して金車部材と竪型架台を塔頂まで運ぶことができる。従って、塔本体枠の側方位置に支持されて鉄塔間に架け渡されている送電線を停電状態にする必要がなく、全ての送電線が活線状態のままであっても架空地線の架け替え工事を行なうことができる。
そして、複数輪金車部材を備えているものでは、2以上の金車部材が前後揺動自在に吊り下げ支持されているので、これら2以上の金車部材に乗せられた架空地線は大きな曲率半径で曲げられて搬送され得る。その結果、光ファイバー通信線を含有する架空地線であっても、光ファイバー通信線を折損することなく架空地線を適切に曲げて例えば地上に向けて搬送でき、地上での地線接続作業に供することができる。
また、本発明に係る架空地線架け替え工法によれば、金車部材と竪型架台が、塔本体枠の枠内を上下に通過可能なサイズに形成されているので、塔本体枠の枠内を通して金車部材と竪型架台を塔頂部に運ぶことができる。また、塔頂よりも高い位置に金車部材の竪型架台を配置することができる。これにより、金車部材が最寄りの送電線から遠くなる。その結果、全ての送電線を停電状態にすることなく活線状態のままで架空地線の架け替え工事を行なうことができる。
本発明の一実施形態に係る金車装置を示す図であって、(a)は正面図、(b)は側面図である。 前記金車装置の金車部材を示す図であって、(a)は側面図、(b)は正面図である。 前記金車装置の竪型架台を示す図であって、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は底面図である。 前記金車装置の制動機構付きの金車部材を示す図であって、(a)は同図(b)におけるA−A線矢視図、(b)は一部断面を含む正面図である。 前記金車装置を鉄塔の塔頂部に設置した状態を示す正面図である。 塔上部の枠内と金車部材を示す平断面図である。 塔頂部における既設の架空地線の支持状態を示す側面図である。 中間鉄塔における塔頂部に金車装置を設置した状態を示す正面図である。 引上げ側鉄塔または引下ろし側鉄塔における塔頂部に金車装置を設置した状態を示す側面図である。 金車装置を設置した鉄塔の塔頂部で工事者が作業をしている態様を示す図であって、(a)は本実施形態の金車装置を設置した場合の説明図、(b)は従来の金車装置を設置した場合の説明図である。 前記金車装置を用いた架空地線架け替え工法のうち制動機構付き金車装置を塔頂部に設置し引抜き用ロープを自走機で引っ張っている工程を示す説明図である。 前記金車装置を用いた架空地線架け替え工法のうち固定用ロープと引抜き用ロープを引き戻している工程を示す説明図である。 前記金車装置を用いた架空地線架け替え工法のうち固定用ロープと引抜き用ロープを吊金車に装着する工程を示す説明図である。 前記金車装置を用いた架空地線架け替え工法のうち新たな架空地線を吊金車に展開する工程を示す説明図である。 架空地線と固定用ロープを装着した吊金車を示す図であって、(a)は正面図、(b)側面図である。 前記金車装置を用いた架空地線架け替え工法のうち吊金車に保持された新旧の架空地線を上下反転させる工程を示す説明説明図である。 前記金車装置を用いた架空地線架け替え工法のうち吊金車の上下反転後に旧の架空地線を引き抜く工程を示す説明図である。 前記金車装置を用いた架空地線架け替え工法のうちサークル金車および制動機を用いて引抜き用ロープを回収する工程を示す説明図である。
本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。尚、以下に述べる実施形態は本発明を具体化した一例に過ぎず、本発明の技術的範囲を限定するものでない。図1は本発明の一実施形態に係る金車装置を示す図であって、(a)は正面図、(b)は側面図、図2は前記金車装置の金車部材を示す図であって、(a)は側面図、(b)は正面図、図3は前記金車装置の竪型架台を示す図であって、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は底面図である。
この実施形態に係る金車装置1は、図1に示すように、鋼板製などの取付け部5の上面に支柱部6が立設された竪型架台3と、竪型架台3の腕板4の左右両側に吊り下げ支持された金車部材2,2とから構成されている。
前記の金車部材2は、図2に示すように、上部に支持用金具13が接続された固定側フレーム14の対面位置に、揺動側フレーム16が配置されている。この揺動側フレーム16は固定側フレーム14下部の枢支軸15を介して側方揺動自在(矢印R方向)に枢支されている。揺動側フレーム16の上端部は、蝶ナット21と、固定側フレーム14の上部に設けられたボルト20との螺合により開閉自在に閉止されるようになっている。従って、固定側フレーム14と揺動側フレーム16との間の空間が、架空地線や各種ロープを収容して滑車19上に支持する収容領域Lとなっている。固定側フレーム14と揺動側フレーム16の下部にはいずれも、前後に延びる軸受部17が設けられている。この軸受部17は、側面視で上向きに膨らんだ円弧状に形成されている。対面する左右の軸受部17,17は4つの車軸18,18,18,18で連結され、各車軸18にはそれぞれ滑車19が回動自在に軸支されている。支持用金具13の上部には、金車部材2を竪型架台3に吊り下げ支持するための、ボルト22が設けられている。
前記の竪型架台3は、図3に示すように、鉄塔Tの塔頂部35Aにボルトなどで固定するための固定用穴7,7を有する取付け部5と、取付け部5の上面に熔接などで立設された支柱部6と、支柱部6の前板8の上部にボルト11で固設されて左右に延びる腕板4とから構成されている。支柱部6は、前板8と前後板9と背板10とが熔接などで固着され平面視「エ」の字状に形成されている。腕板4の左右4ヶ所に垂下板部が形成されている。これらの垂下板部には、金車部材2を吊り下げるためのボルト22を通される貫通穴12,12,12,12が形成されている。
一方で、この実施形態では、外部から滑車に加えられた回転力を抑えることのできる金車部材も使用される。図4に示した金車部材2Aには、フレーム23の対面位置にフレーム24が配置されている。フレーム23とフレーム24とはそれぞれの上部で連結されている。この連結部分には、竪型架台3の腕板4に吊り下げるために使用される取付け用穴32が形成されている。フレーム23の下部とフレーム24の下部に、車軸18Aが架け渡されており、この車軸18Aに滑車19Aが回動自在に軸支されている。フレーム24の下部は軸受部24Aとなっており、車軸18Aの他端側が軸受部24Aを貫通して突出している。車軸18Aの突出部位には雄ネジ部が形成されている。軸受部24Aの内面と滑車19Aの側面との間には、円板状のブレーキシュー25が配備されている。軸受部24Aの外方には押し板26が配備され、押し板26の外方にバネ板28が配備されている。前記したブレーキシュー25、押し板26、およびバネ板28のそれぞれの軸穴には、車軸18Aが挿通されている。ブレーキシュー25と押し板26は、軸受部24Aを貫通して配備された接続ピン27,27,27を介して車軸軸心方向に移動自在に連結されている。バネ板28の外側に位置する車軸18Aの雄ネジ部には、滑車19Aに加えられる制動力を調整するための調整用ナット29が螺合し、更に調整後の調整用ナット29をその位置で留めておく留めナット30が螺合している。
滑車19Aは、引抜き用ロープ53(架け替え作業用ロープの例)や固定用ロープ52(架け替え作業用ロープの例)が巻かれて利用される。この場合、調整用ナット29の螺進により変形したバネ板28の弾性力により、ブレーキシュー25が滑車19Aの側面に押し付けられて摩擦力を高くする。これにより、例えば2点鎖線で示す引抜き用ロープ53の自重による回転力が滑車19Aに加えられても、その回転力は抑制される。すなわち、車軸18Aの雄ネジ部、ブレーキシュー25、押し板26、接続ピン27、バネ板28、および調整用ナット29から成る構成が、滑車19Aに外部から加えられた回転力を抑える「制動機構31」となっている。
ここで、金車装置1が適用される汎用の鉄塔Tを図5および図6に示す。この鉄塔Tは、多数の鉄骨をボルトや熔接などで組み付けて構築された塔本体枠35と、塔本体枠35の左右両側部に張り出して複数段設けられた腕金部36,36,・・・とから構成されている。塔本体枠35を平面に視ると、四方の周枠フレーム38,38,38,38と、周枠フレーム38,38,38,38の対角位置を連結する対角フレーム39,39とから形成されている。そして、例えば鉄塔Tが77kV送電用の場合、塔本体枠35の塔上部における周枠フレーム38の一辺(内のり)は約800mmである。それぞれの腕金部36には、鉄塔T,T間に架け渡される送電線37が吊り下げ支持されている。また、送電線37の上方位置である、塔本体枠35の塔頂部35Aには、同じく鉄塔T,T間に架け渡された既設の架空地線(以下、旧線と称する)42が支持されている。そして、この実施形態の金車部材2と竪型架台3は、塔本体枠35の枠内を上下に通過可能なサイズに形成されている。例えば、平面視で見た金車部材2の横寸法Bは340mmであり、奥行き寸法Cは150mmであるから、金車部材2は周枠フレーム38と対角フレーム39との間の平面スペースを支障なく、上下方向に通過することができる。
本実施形態で使用される架空地線は、旧線42および新線46のいずれも、図7中の1点鎖線の円内に示すように、鋼線80,80,・・・の束の内部に光ファイバー通信線81,81,・・・が内蔵されたものである。そして、塔本体枠35の塔頂部35Aへの旧線42の固定支持は、図7に示す通りである。すなわち、塔頂部35Aには、その前後に支持部40,40が連結され、各支持部40の先端にクランプ41が取り付けられている。そして、旧線42は塔頂部35Aの上方位置で弛んだ状態にされ、塔頂部35Aの両側位置でクランプ41,41に掴持されている。これらの支持部40およびクランプ41は、光ファイバー通信線81内蔵の架空地線用である。
続いて、金車装置1を用いた架空地線の架け替え工法を説明する。
まず、金車装置1の金車部材2と竪型架台3と各種小物部品を個別に専用袋に入れ、各鉄塔Tにおける塔本体枠35内の地上から枠内を上向きに通過させて塔頂部35Aまで搬送する。そして、図8に示すように、複数並んだ鉄塔Tのうち、中間部に位置する鉄塔Tの塔頂部35Aの最上面に、竪型架台3を設置する。このとき、元々あった頂部ボルトを流用して固定用穴7,7に通すことにより取付け部5を固定する。続いて、金車部材2,2を竪型架台3の左右に吊り下げて取り付ける。これにより、金車装置1が組み上がる。尚、後で述べるが、新たな架空地線(以下、新線と称する)46を繰り出したり旧線42を回収したりする鉄塔T(1)には、図9に示すような複数輪金車部材2Bが塔頂部35Aに取付けられる(以上の一連の工程が金車設置工程)。
前記の複数輪金車部材2Bは、地線架け渡し方向に並べて配置される2つの金車部材2,2と、側面視で上向きに膨らんだ円弧状に形成されていて2つの金車部材2,2の軸受部17をそれぞれ前後揺動自在に吊り下げ支持する曲がり支持部材17Aと、曲がり支持部材17Aを鉄塔Tの塔頂部35Aに接続するための接続部材45とから構成されている。この複数輪金車部材2Bでは、新線46を金車部材2,2の滑車19,19,・・・に載せて曲げ搬送する場合でも、側面から視て、連なる滑車19,19,・・・の載置面で形成される曲線状軌跡が、内部の光ファイバー通信線81を折損しない曲率半径Rの曲線となるように構成されている。これにより、架空地線の曲率Rを大きく確保でき、個々の滑車19を小型化できる。その結果、金車部材2、曲がり支持部材17A、接続部材45および小物部品を個別に鉄塔内で上げ下し搬送することが可能となる。因みに、この複数輪金車部材2Bを用いて曲げ得る角度θは約110度である。
上記のようにして、鉄塔Tの塔頂部35Aに金車装置1が取り付けられたが、図10(a)に示すように、送電線37(活線)から安全な距離L1離れた位置に標識棒70が設置されている。これら左右の標識棒70,70により示される境界線S,Sの内側が安全領域である。この場合、金車装置1は最も高い位置にあり然も小型であるから、工事者Fは境界線S,Sの内側に居て安全に作業をすることができる。すなわち、塔頂部35Aでの作業ができるとともに作業範囲を狭くすることができ、安全離隔の確保ができる。
それに対し、図10(b)および図5(図中の2点鎖線)に示した従来工法では、金車装置91の金車部材92の設置位置が低いうえ金車部材92の径も比較的大きいので、塔上作業範囲が広くならざるを得ず、工事者Fは標識棒70よりも下側の腕金部36上に立たなければならない場合が多い。その位置は、図中右側の送電線37からの距離L2が安全距離L1よりも短いので、その送電線37を停電状態にする必要があったのである。
この実施形態では、図11に示すように、4つの鉄塔T(1)〜T(4)間に架け渡された旧線42を架け替える例を示す。これらのうち、途中の鉄塔T(2),T(3)の各塔頂部35Aにはそれぞれ金車部材2が取り付けられ、両端の鉄塔T(1),T(4)の各塔頂部35Aには、まず制動機構31付きの金車部材2Aが取り付けられる。そして、鉄塔T(1)の下方でコイル巻きされていた引抜き用ロープ53が塔頂部35Aに引き出される。一方、工事者Fによって遠隔操作されるバッテリ充電式の自走機51およびいくつかのサークル金車55,55,・・・が旧線42に載置される。各サークル金車55の設置の度に自走機51は停止される。これにより、引抜き用ロープ53の送り込みが不要となり、引抜き用ロープ53のダブツキが軽減される。前記の引抜き用ロープ53は適宜間隔でサークル金車55,55,・・・に順次保持されていき、その先端は自走機51に接続される。
そうして、自走機51が延線方向に進行して行き、引抜き用ロープ53が塔頂部35Aの金車部材2Aから繰り出されていくが、金車部材2Aは制動機構31を備えているので、引抜き用ロープ53が自重によって繰り出されて垂れ下がるといった不具合を防止でき、送電線37との接触を回避できる。このようにして、自走機51およびサークル金車55,55,・・・は、引抜き用ロープ53を随伴しながら鉄塔T(2),T(3)を通過し鉄塔T(4)の頂部35Aに到達する。続いて、鉄塔T(4)の下方でコイル巻きされていた固定用ロープ52が塔頂部35Aに引き出されて金車部材2Aに支持されたのち、先頭のサークル金車55につながれる。これにより、固定用ロープ52が自重によって繰り出されて垂れ下がるといった不具合を防止でき、送電線37との接触を回避できる。その後、自走機51が撤収され、いくつかの吊金車50,50,・・・が使用される。すなわち、制動機構31付きの金車部材2Aの使用により、吊金車50の展開時の張力管理ができる。そして、鉄塔T(1)側へ引抜き用ロープ53が引き寄せられ(撤去方向)、サークル金車55,55,・・・が順次撤収される。
前記した吊金車50は、後出の図15に示すように、上下の2ヶ所で開閉自在に構成された本体フレーム60と、本体フレーム60の上下中心部に設けられてロープ類を着脱可能に固定するロープ固定部61と、本体フレーム60の一端側に回動自在に設けられた第1滑車62と、本体フレーム60の他端側に回動自在に設けられた第2滑車63とから構成されている。この場合、固定用ロープ52の長さ方向適当間隔で各吊金車50のロープ固定部61が固定され、各吊金車50の第1滑車62が旧線42に吊り下げられ、各吊金車50の第2滑車63上に引抜き用ロープ53が保持される。そして、自走機51および吊金車50,50,・・・を旧線42上で走行させて、固定用ロープ52と引抜き用ロープ53を一方の鉄塔T(図中右側の鉄塔)から他方の鉄塔T(図中左側の鉄塔=新線46の繰出し側)に向けて進行させる。
そして、図12に示すように、鉄塔T(1)の塔頂部35Aにおいて金車部材2Aが複数輪金車部材2Bに取り替えられ、この複数輪金車部材2Bに引抜き用ロープ53が支持されて鉄塔T(1)の下部に引き下ろされる。次に、図13に示すように、固定用ロープ52が撤去方向側の鉄塔Tに到達した後に、固定用ロープ52が緊張状態にされ、両鉄塔T,Tの塔頂部35A,35Aに固定される。また、引抜き用ロープ53は各鉄塔Tの金車部材2の滑車17上に保持される。前記の吊金車50は、鉄塔T,T間に展張された固定用ロープ52に固定したロープ固定部61を中心として上下反転可能である。
続いて、図14に示すように、鉄塔T(1)の下方でコイル巻きされていた新線46の一端部が複数輪金車部材2Bを経て引き出されたのち、引抜き用ロープ53の末端にジョイント54を介して連結される。ジョイント54は、例えばさつま部にロープコネクタまたはジョイントクレビスを取り付けたものである。その後、引抜き用ロープ53が鉄塔T(4)側へ引っ張られる。これにより、新線46が各吊金車50の第2滑車63上に順次乗って搬送されていく。各吊金車50の部分は、図15に示すような状態になる。図14では、新線46が鉄塔T(2)の金車部材2から鉄塔T(3)の金車部材2に到達して架け渡される様子を示している(新線架け渡し工程)。
その後、新線46が展張状態にされたのちクランプ41の締付けにより両鉄塔T,Tの塔頂部35A,35Aに固定される。一方、図16に示すように、旧線42は鉄塔T,T間の張力が緩められる。そこで、吊金車50,50,・・・がロープ固定部61を中心として上下反転される(地線反転工程)。すなわち、緊張している新線46に各吊金車50の第2滑車63が吊り下げられ、緩んだ旧線42が第1滑車62上に保持されるのである。このような態様は、鉄塔T(1)〜T(2)間および鉄塔T(3)〜T(4)間でも同様である。
そして、引抜き用ロープ53の末端がジョイント54を介して旧線42の一端部に連結される。その後、図17に示すように、図中左側の鉄塔Tの金車部材2に向かって旧線42が引き抜かれて撤去され(旧線引き抜き工程)、それに替わって引抜き用ロープ53が各吊金車50の第1滑車62上に導かれ、その後ジョイント54が外される。続いて、図中左側の鉄塔Tから固定用ロープ52が取り外され、各吊金車50および固定用ロープ52が、緊張した新線46を利用して図中右側の鉄塔Tに向けて回収される。引抜き用ロープ53は鉄塔T,T間に残される。
その後、図18に示すように、新線46上を走行するサークル金車55,55,・・・が引抜き用ロープ53に適当間隔で装着される。また、制動機56が引抜き用ロープ53の末端に連結される。この制動機56は、撤去方向に引っ張られたときに新線46上を移動可能であるが、当該引張り力が加えられないときは新線46上で停止する機構を有している。そして、引抜き用ロープ53が図面左側の鉄塔Tに向かって引かれると、制動機56が同方向に移動し、引抜き用ロープ53の引きが止められると、制動機56も止まるようになっている。これにより、引抜き用ロープ53は緩んで垂れ下がることなく回収される。従って、回収中の引抜き用ロープ53が、下方位置で通電中の送電線37(活線)に無為に接触するといった不具合を防ぐことができる。
以上のように、この実施形態に係る金車装置1を用いた架空地線架け替え工法によれば、金車部材2と竪型架台3が、塔本体枠35の枠内を上下に通過可能な寸法B,Cに形成されているので、塔本体枠35の枠内を通して金車部材2と竪型架台3を塔頂部35Bに運ぶことができる。従って、塔本体枠35の側方の腕金部36に支持されていて鉄塔T,T間に架け渡されている送電線37を停電状態にする必要がない。すなわち、全ての送電線37が活線状態(図5中の○内に「活」と表示)のまま架空地線の架け替え工事を行なうことができる。その結果、架空地線架け替え工事中の停電を回避することができ、電力需要の逼迫を軽減する一助となり得る。
また、竪型架台3を高位置の塔頂部35A上に設置することができ、それに加えて竪型架台3が縦長であるので、金車部材2の滑車19を高い位置に配置することができる。因みに、図5に示したように、金車装置1の金車部材2が保持する架空地線の高さと、従来の金車装置91の金車部材92が保持する架空地線の高さとの高低差hdは、例えば800mm程度である。工事者Fにとって、この高低差hdは非常に大きいものであり、そのぶん工事者Fが送電線37から離れることができる。従って、架け替え作業をいっそう楽に且つ安全に行なうことができる。
また、引抜き用ロープ53などの繰り出しの際に、制動機構31を有する金車部材2Aを用いるので、引抜き用ロープ53などの重量に起因して滑車19Aにかかる回転力は制動機構31により抑制される。従って、引抜き用ロープ53や固定用ロープ52がその自重により無用に繰り出されて垂れ下がるといったことがない。その結果、垂れ下がったロープなどが通電中の送電線37に触れて電気事故を引き起こすといった不具合を回避することができる。
上記に縷々述べたように、本実施形態の金車装置1では、小型の竪型架台3、金車部材2、制動機構31付きの金車部材2A、および複数輪金車部材2Bを総合的に用いることにより、全ての送電線37の通電状態を継続したまま架空地線の架け替えを安全に行なうことができる。すなわち、斯かる架け替え工事に起因する停電を確実に回避し得る画期的な工法を実現できたのである。
尚、上記の実施形態では、複数輪金車部材として、2つの金車部材2,2を用いた例を示したが、本発明の複数輪金車部材はそれに限定されるものでなく、曲がり支持部材に、例えば3つ以上の金車部材を地線架け渡し方向に並べて配置したものでも構わない。
また、上記では、光ファイバー通信線81を含有した架空地線の曲率を考慮して複数輪金車部材2Bを使用したが、光ファイバー通信線81を持たず鋼線のみから成る汎用の架空地線の場合は、複数輪金車部材2Bの替わりに金車部材2を接続部材45に連結して用いることも可能である。
1 金車装置
2 金車部材
2A 金車部材
2B 複数輪金車部材
3 竪型架台
5 取付け部
17 軸受部
17A 曲がり支持部材
18 車軸
18A 車軸
19 滑車
19A 滑車
24A 軸受部
25 ブレーキシュー
26 押し板
27 接続ピン
28 バネ板
29 調整用ナット
31 制動機構
35 塔本体枠
35A 塔頂部
37 送電線
42 旧線
45 接続部材
46 新線
50 吊金車
52 固定用ロープ
53 引抜き用ロープ
60 本体フレーム
61 ロープ固定部
62 第1滑車
63 第2滑車
81 光ファイバー通信線
B 寸法
C 寸法
R 曲率半径
T 鉄塔

Claims (6)

  1. 架空送電線の上方位置にあって鉄塔間に架け渡されている既設の架空地線を新たな架空地線に架け替えるために、鉄塔の塔頂部に設置される金車装置であって、
    既設の架空地線、新たな架空地線、または架け替え作業用のロープを載置して滑動する滑車、および、滑車を回動自在に軸支する軸受部から成る金車部材と、鉄塔の塔頂に取り付けられる取付け部を有していて金車部材の軸受部を吊り下げ支持する竪型架台と、から構成されていることを特徴とする金車装置。
  2. 金車部材は、外部から滑車に加えられた回転力を抑える制動機構を介して、滑車が軸受部に軸支されていることを特徴とする請求項1に記載の金車装置。
  3. 金車部材と竪型架台が、塔本体枠の枠内を上下に通過可能なサイズに形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の金車装置。
  4. 地線架け渡し方向に並べて配置される2以上の金車部材と、
    側面視で上向きに膨らんだ円弧状に形成されていて前記並べられた2以上の金車部材の軸受部をそれぞれ前後揺動自在に吊り下げ支持する曲がり支持部材と、曲がり支持部材を鉄塔の塔頂に接続するための接続部材と、
    から成る複数輪金車部材を備えていることを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の金車装置。
  5. 架空地線が光ファイバー通信線を有していることを特徴とする請求項4に記載の金車装置。
  6. 請求項1から請求項5までのいずれか一項に記載の金車装置の金車部材と竪型架台を、各鉄塔における塔本体枠の枠内を上下方向に通過させて搬送し塔頂部に設置する金車設置工程と、
    本体フレームの上下中心部に設けられたロープ固定部、本体フレームの一端部に回動自在に枢支された第1滑車、および、本体フレームの他端部に回動自在に枢支された第2滑車から成り、鉄塔間に架け渡された固定用ロープを固定したロープ固定部を中心として上下反転可能な吊金車を用い、既設の架空地線に吊金車の第1滑車を吊り下げ、吊金車の第2滑車に新たな架空地線を載置して既設の架空地線を走行し、各鉄塔に設置された金車装置の金車部材間に新たな架空地線を架け渡す新線架け渡し工程と、
    各鉄塔の金車部材間に展張された新たな架空地線を各鉄塔の塔頂部に固定するとともに既設の架空地線の張力を緩めたのちに反転吊り金車を上下反転させる地線反転工程と、
    既設の架空地線の一端部を鉄塔から取り外したのち、既設の架空地線を他端側の金車部材を用いて引き抜く旧線引き抜き工程と、
    を備えて成る架空地線架け替え工法。
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