JP2014190930A - センサ回路 - Google Patents

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Abstract

【課題】測定対象である物理量検出精度の低下を緩和できるセンサ回路を提供する。
【解決手段】測定対象の物理量による温度変化に測定対象以外の物理量による温度変化が重畳した温度に感応した第1の電圧を出力する第1の温度検出回路10と、測定対象以外の物理量による温度変化に感応した第2の電圧を出力する第2の温度検出回路20と、第1の温度検出回路の出力電圧11とピークキャンセル電圧46とが一対の入力端に入力され、第3の電圧を出力する差動増幅部31と、第1の演算部43とを有し、ピークキャンセル電圧は第2の電圧に応じて変化するとともに、測定対象の物理量が所定の値である場合に、第2の温度検出回路の電圧21に応じた第3の電圧の変化を打ち消す電圧であり、第1の演算部は、第3の電圧をディジタル化した第1の出力値と第2の電圧をディジタル化した第2の出力値とに基づき測定対象の物理量を算出する。
【選択図】図1

Description

本発明は、感温素子を用いたセンサ回路に関する。
物理量の影響がサーミスタの抵抗変化として捉えられることを利用して物理量を検知するセンサにおいて、2つのサーミスタを持ち、そのうちの1つを検知用サーミスタとして検知目的の物理量の影響を受けるように配置し、その近傍にもうひとつのサーミスタを補償用サーミスタとして物理量の影響が低減されるように配置し、二つのサーミスタの抵抗値の違いにより、目的とする物理量を検知するセンサが用いられている。検知用サーミスタの抵抗値は、検知目的とする物理量と検知目的以外の物理量とからの影響を受けるが、補償用サーミスタの抵抗値は検知目的以外の物理量からのみ影響を受ける。従ってこの二つのサーミスタの値から検知目的とする物理量のみを知ることが出来る。このような原理に基づき、非接触温度センサ、ガスセンサ、湿度センサ、流速センサが構成できる。
例えば、非接触温度センサのセンサ回路として、特許文献1には、赤外線検知用サーミスタと抵抗を直列接続し其の接続点の電圧である第1の電圧と、環境温度補償用サーミスタと抵抗を直列接続し其の接続点の電圧である第2の電圧と、第1の電圧と第2の電圧の差分を出力した第3の電圧のうち、第1と第3の電圧をディジタル値に変換し、これらのディジタル値を引数としてデータテーブルもしくは関数に与えることにより測定対象物の温度を得るセンサ回路が示されている。
特開2003−57116号公報
ここで、上記従来のセンサ回路における第1の電圧と第2の電圧の差分を出力した第3の電圧は、熱源から放射される赤外線の熱量による温度上昇に環境温度を含めたものと、環境温度との温度差を反映している。つまり熱源から放射される純粋な赤外線の熱量を反映する。第3の電圧は、環境温度を反映する電圧成分に比べて非常に小さいので、差動アンプに入力して増幅する。このとき、よくある非接触温度センサのセンサ回路の使用状況として、ある検知対象温度を基準としてその温度からの上下変動を測定したいことがある。この場合入力される電圧差の変動分が有効な信号成分である。しかし、従来のセンサ回路においては、この変動分に加え環境温度を反映する電圧成分が重畳し、かつその電圧成分が、環境温度によって大きく変動する。したがって差動アンプのゲインは、その重畳された電圧が最大になる場合を想定して、次段のAD変換器の入力電圧許容範囲内で決定しなければならない。そのため有効な信号成分である電圧差の変動分に対するゲインは相対的に低く制限され、AD変換器の分解能を有効に利用できず、温度検出精度が低くなるという問題があった。
本発明は、この問題を鑑みてなされたもので、物理量検出精度の低下を緩和できるセンサ回路を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明によるセンサ回路は、測定対象の物理量による温度変化に測定対象以外の物理量による温度変化が重畳した温度に感応した第1の電圧を出力する第1の温度検出回路と、測定対象以外の物理量による温度変化に感応した第2の電圧を出力する第2の温度検出回路と、第1の電圧とピークキャンセル電圧とが一対の入力端に入力され、第3の電圧を出力する差動増幅部と、第1の演算部とを有し、ピークキャンセル電圧は、第2の電圧に応じて変化するとともに、測定対象の物理量が所定の値である場合に、第2の電圧に応じた第3の電圧の変化を打ち消す電圧であり、第1の演算部は、第3の電圧をディジタル化した第1の出力値と第2の電圧をディジタル化した第2の出力値とに基づき測定対象の物理量を算出するセンサ回路である。
本発明によれば、ピーク特性を持つ変動分を取除いたものを第3の電圧とすることにより、測定対象以外の物理量の影響を排除し、測定対象の物理量だけのためにAD変換器の分解能を適用できる。つまり、測定対象以外の物理量の影響を排除することにより、測定対象の物理量をより高い分解能でAD変換できるので、測定対象である物理量検出精度の低下を緩和できる。
本発明によるセンサ回路は、第2の電圧が入力される第2のAD変換器と、第2のAD変換器が出力する第2の出力値に応じて、ピークキャンセル数値を出力する第2の演算部と、第3の電圧が入力され、第1の出力値を出力する第1のAD変換器と、を有し、第1の温度検出回路は、測定対象である物理量の影響を受ける位置に配置され一方の端子が定電圧電源の第2の極に接続される第1の感温素子と、第1の感温素子の他方の端子と定電圧の第1の極とを結ぶ第1の抵抗素子とを有し、第2の温度検出回路は、測定対象である物理量の影響が低減され、一方の端子が定電圧電源の第2の極に接続される第2の感温素子と、第2の感温素子の他方の端子と定電圧の第1の極とを結ぶ第2の抵抗素子とを有し、第1の電圧は第1の感温素子と第1の抵抗との接続点の電圧であり、第2の電圧は第2の感温素子と第2の抵抗との接続点の電圧であり、差動増幅部は、第1の電圧と、ピークキャンセル数値が入力されるDA変換器が出力するピークキャンセル電圧との差動増幅演算を行い第3の電圧を出力し、第1の演算部は、第1の出力値と第2の出力値とから決まる測定対象である物理量を収納した物理量数値テーブルを参照して、測定対象である物理量を算出することを特徴とするセンサ回路としてもよい。
本発明によるセンサ回路は、差動増幅部は第1の差動アンプを有し、第1の差動アンプは第1の電圧とピークキャンセル電圧との差電圧を第3の電圧として出力するセンサ回路としてもよい。
本発明によるセンサ回路は、差動増幅部は、第2および第3の差動アンプを有し、
第2の差動アンプは第2の電圧とピークキャンセル電圧との差電圧である第4の電圧を出力し、第3の差動アンプは、第4の電圧と第1の電圧との差分を増幅して第3の電圧として出力するセンサ回路としてもよい。
本発明によるセンサ回路は、差動増幅部は、第4および第5の差動アンプを有し、第4の差動アンプは、第1の電圧と第2の電圧の差電圧である第5の電圧を出力し、第5の差動アンプは第5の電圧とピークキャンセル電圧との差分を増幅して第3の電圧として出力するセンサ回路としてもよい。
本発明によるセンサ回路は、測定対象である物理量のレンジ設定値を設定し出力する測定レンジ設定部を有し、第1の演算部は、レンジ設定値と第1の出力値と第2の出力値とに応じた物理量数値テーブルを参照して、測定対象の物理量を算出し、第2の演算部は、第2の出力値とレンジ設定値とが入力され、第2の出力値とレンジ設定値とに応じたピークキャンセル数値テーブルを参照して、ピークキャンセル数値を決定し出力するセンサ回路としてもよい。
本発明によるセンサ回路は、レンジ設定値を更新する更新部を有し、第1の演算部は、レンジ設定値と第1の出力値とに基づいたレンジ情報を出力し、レンジ情報に応じて更新部がレンジ設定値を更新するセンサ回路としてもよい。
としてもよい。
本発明による物理量センサは、非接触温度センサであるセンサ回路としてもよい。
本発明によるセンサ回路は、第1の温度検出回路が出力する測定対象の物理量による温度変化に測定対象以外の物理量による温度変化が重畳した温度に感応した第1の電圧と、ピークキャンセル電圧とが一対の入力端に入力され、第3の電圧を出力する差動増幅部と、第1の演算部とを有し、ピークキャンセル電圧は、第2の温度検出回路が出力する測定対象以外の物理量による温度変化に感応した第2の電圧に応じて変化するとともに、測定対象の物理量が所定の値である場合に、第2の電圧に応じた第3の電圧の変化を打ち消す電圧であり、第1の演算部は、第3の電圧をディジタル化した第1の出力値と、第2の電圧をディジタル化した第2の出力値とに基づき測定対象の物理量を算出するセンサ回路としてもよい。
本発明によれば、測定対象である物理量検出精度の低下を緩和できるセンサ回路を実現できる。
第1の実施形態を示す非接触温度センサ回路である。 熱源温度が160℃、180℃、199℃における第1の電圧の特性である。 図1の第3の電圧の特性を環境温度を横軸して示すグラフである。 熱源温度を決定する方法について説明する図である。 図1の第3の電圧の特性を第2の電圧を横軸して示すグラフである。 図1における熱源温度テーブルの内容を説明する図である。 第2の実施形態を示す非接触温度センサ回路である。 VcとΔVの関係を示す図である。 Vcとピークキャンセル数値の関係を示す図である。 第3の実施形態を示す非接触温度センサ回路である。 第4の実施形態を示す非接触温度センサ回路である。 VcとVdの関係を示す図である。 レンジ中央値が140℃における説明図である 第5の実施形態を示す非接触温度センサ回路である。 測定レンジ切り替えの方法を可能にする熱源温度テーブルの内容の説明図である。 第6の実施形態を示す非接触温度センサ回路である。 測定レンジ切り替えの方法を可能にする熱源温度テーブルの内容の説明図である。 測定レンジ切り替えをプロセッサで行う場合のフローチャートである。 実施形態と比較のための従来の接触温度センサ回路である。 熱源温度が160℃、180℃、199℃における第1の電圧及び第2の電圧の特性を環境温度を横軸にして示した図である。 従来例における差動アンプ出力の特性を環境温度を横軸にして示した図である。 従来例における熱源温度テーブルの内容を説明する図である。 差動アンプの動作を説明する図である。 第5の電圧を示す。 実施形態3におけるピークキャンセル電圧を示す。 第5の電圧からピークキャンセル電圧を差引いた電圧を示す。 実施形態3における第3の電圧を示す。 本実施形態の原理図である。
以下、本発明の実施形態について説明するが、まず、本実施形態の原理について説明する。図26は本実施形態のセンサ回路の原理図である。なお、説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には、同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。
本実施形態のセンサ回路800は、差動増幅部31と第1の演算部43とを有している。また、センサ回路800に適用可能なセンサは、測定対象である物理量と測定対象以外の物理量との両方が重なった影響を受ける状態にある。このうちから測定対象以外の物理量の影響を除くことにより測定対象である物理量を検出する。ここで、センサは第1の感温素子と第2の感温素子とを有している。
第1の感温素子は測定対象である物理量及び測定対象以外の物理量により温度変化を受け、その抵抗値が変化する。差動増幅部31の一方の入力端には、第1の感温素子を有する第1の温度検出回路が出力する測定対象の物理量による温度変化に測定対象以外の物理量による温度変化が重畳した温度に感応する第1の電圧が、入力されている。ここで、測定対象である物理量とは、例えば熱源温度(あるいは熱源から放射される赤外線量)、ガス濃度、湿度、流速などが挙げられる。第1の感温素子は測定対象である物理量の影響を受けた第1の熱伝導体(図示せず)が温度変化を生じた場合に熱伝導体の温度変化および環境温度に応じて第1の感温素子の電気抵抗値が変化する。第1の感温素子の一方の出力端は電源の第2の極に接続され、他方の出力端は第1の抵抗の一方の端部に接続されており、第1の抵抗の他方の端部は電源の第1の極に接続されている。従って、第1の感温素子の他方の出力端から出力される第1の電圧、すなわち、第1の感温素子と第1の抵抗との接続点の電圧は、測定対象である物理量に応じた温度変化を検出することになるが、測定対象以外の物理量による温度変化も重畳されている。例えば、非接触温度センサの場合、測定対象である物理量は赤外線を放射する熱源の温度であり、第1の熱伝導体は赤外線吸収膜であり、赤外線吸収膜の裏面上に第1の感温素子が存在する構成とすれば良い。
第2の感温素子は測定対象である物理量の影響が低減され、主に測定対象以外の物理量に応じて第2の感温素子の電気抵抗値が変化する。第2の感温素子を有する第2の温度検出回路は測定対象以外の物理量による温度変化に感応する第2の電圧を出力する。ここで、第2の感温素子の一方の出力端は電源の第2の極に接続され、他方の出力端は第2の抵抗の一方の端部に接続されており、第2の抵抗の他方の端部は電源の第1の極に接続されている。従って、第2の感温素子の他方の出力端から出力される第2の電圧、すなわち、第2の感温素子と第2の抵抗との接続点の電圧は、測定対象以外の物理量に応じた温度変化を検出することになる。ここで、測定対象である物理量の影響が低減されるとは、測定対象である物理量の影響を受けにくいような手段が講じられていることを指す。例えば、非接触温度センサの場合、測定対象以外の物理量は環境温度であり、赤外線反射膜を第2の感温素子上に形成すれば、第2の感温素子は熱源からの赤外線の影響が低減され実質的に測定対象以外の物理量である環境温度に応じて電気抵抗値が変化することになる。
差動増幅部31の他方の入力端には、測定対象である物理量が所定の一定値であると仮定した条件での、測定対象以外の物理量に応じたピークキャンセル電圧が入力される。非接触温度センサを例にとれば、測定対象である物理量は熱源温度であるので、熱源温度を所定の一定値である180℃と仮定する。ピークキャンセル電圧とは、この仮定の物理量と測定対象以外の物理量とに応じた値であり、熱源温度が180℃と仮定した場合、測定対象の物理量である熱源温度が180℃と等しい場合に、測定対象以外の物理量である環境温度によらず、差動増幅部31の出力が一定値となるように設定された電圧である。つまり、ピークキャンセル電圧とは、熱源温度が180℃であるとき、差動増幅部31の出力である第3の電圧が第2の電圧の影響によって変化しようとすることを打ち消す電圧である。従って、熱源温度が実際に180℃である場合は、環境温度によらず差動増幅部31の出力である第3の電圧の変化が打ち消され、一定値となる。
そのために、ピークキャンセル電圧は、第2の電圧応じて変化する。したがって、第2の電圧が変化しても、第1の電圧が所定の測定対象の物理量に対応する場合には、第3の電圧の変化を打ち消すことが出来る。このようなピークキャンセル電圧は、第2の演算部(図示せず)が、第2の電圧をディジタル変換した第2の出力値と所定の測定対象である物理量とに基いて決定するピークキャンセル数値をアナログ変換した電圧とすることにより実現できる。これについては後述する。
第1の演算部43には、第3の電圧を第1のAD変換器(アナログ−ディジタル変換器)41によってディジタル変換した第1の出力値と第2の感応素子からの出力である第2の電圧をディジタル変換した第2の出力値が入力されている。ここで、第1の出力値は測定対象である物理量と測定対象以外の物理量との影響を受けた値となっている。従って、第2の出力値から測定対象以外の物理量を求め、測定対象以外の物理量に対応する第2の出力値および差動増幅部31の出力である第3の電圧に対応する第1の出力値を引数とした測定対象である物理量と対応付けられた数値を格納した物理量テーブルを第1の演算部43が参照し、第1および第2の出力値と照合することで、測定対象である物理量を算出することが可能となっている。ここで、物理量テーブルは第1の演算部43内に存在してもよく、外部の記憶部(図示せず)に存在してもよい。なお、所定の一定値である測定対象である物理量が決定されれば、第1の演算部43が参照する物理量テーブルは所定の一定値である測定対象である物理量に応じて一義的に決定されることになる。なお、所定の一定値である測定対象である物理量は複数設定されていてもよい。
ここで、第1および第2の感温素子は一般的なサーミスタであるので、第1の電圧と第2の電圧の差は測定対象以外の物理量に応じたピーク特性を有している。ここで、ピーク特性を持つ変動分を取除いたものを第3の電圧とすることにより、測定対象以外の物理量の影響を排除し、測定対象の物理量だけのためにAD変換器の分解能を適用できる。つまり、測定対象以外の物理量の影響を排除することにより、測定対象の物理量をより高い分解能でAD変換できる。つまり1ビットに相当する物理量の変化が小さい値になる。このようにして得られた第1の出力値を用いれば、より小刻みな物理量変化に対応した物理量テーブルが構成できる。このテーブルを用いて第1の演算部は測定対象である物理量を算出することが可能となるので、物理量検出精度の低下を緩和できる。
以下、本実施形態を図面に基づきより具体的に説明する。また、熱源の温度を非接触で検知する赤外線方式の非接触温度センサでの実施形態で説明する。
非接触温度センサにおいては、測定対象である物理量は熱源の温度であり、第1のサーミスタは熱源から放射される赤外線の影響を受け、第2のサーミスタは赤外線の影響が低減されるように配置されている。即ち、第1のサーミスタ(サーミスタRth1)は赤外線吸収膜に接している。したがって、検出対象からの赤外線(物理量)を赤外線吸収膜が吸収し発生する熱量が第1のサーミスタ(サーミスタRth1)に伝達することにより第1のサーミスタ(サーミスタRth1)の温度が変化することで、第1の電圧から赤外線を検出することが可能となっている。しかし、第1のサーミスタ(サーミスタRth1)では赤外線による温度変化と環境温度が合算されているので、環境温度を別途検出するための第2のサーミスタ(サーミスタRth2)が必要となる。第2のサーミスタ(サーミスタRth2)は赤外線反射膜の下に形成されている、あるいは赤外線遮蔽板の下に配置されているので、第2のサーミスタ(サーミスタRth2)とそれに直列結合された抵抗との接続点は、赤外線の影響が低減された、実質的に環境温度に依存した電圧を示すことになる(第2の電圧)。さらに、第1のサーミスタ(サーミスタRth1)と第2のサーミスタ(サーミスタRth2)とは環境温度の影響度を揃えるために隣接した配置をとっている。ここで、隣接するとは、第1および第2のサーミスタ(サーミスタRth1、サーミスタRth2)の端部間隔が1μm以上10cm程度である。このように隣接した配置をとることで、環境温度の影響度を揃えることが可能となっている。したがって、第1の出力信号と第2の出力信号の差分に相当する信号が赤外線量に相当する信号となっている。このように二つのサーミスタを配置することは従来の非接触温度センサと同様であるが、本実施形態は、二つのサーミスタの電圧を扱う回路構成において従来回路構成とは異なった特徴をもつ。以下にその実施形態を説明する。
(実施形態1)
図1を参照して、本発明の第1の実施形態の構成について説明する。図1は、第1の実施形態を示す非接触温度センサ回路である。非接触温度センサにおいては、測定対象の物理量とは熱源の温度であり、測定対象以外の物理量とは環境温度である。
温度検出回路100は、電源V1、赤外線検出回路10、環境温度補償回路20、差動アンプ30、第1のAD変換器41、第2のAD変換器42、第1の演算部43、第2の演算部44、DA変換器(ディジタルアナログ変換器)45を有する。熱源からは熱源の温度に対応した赤外線量が放射される。第1の温度検出回路である赤外線検出回路10は、熱源から放射される赤外線を検知するための回路であり、抵抗R1とサーミスタRth1の直列回路で構成され、電源V1の第1の電極に抵抗R1が、第2の電極にサーミスタRth1がそれぞれ接続される。第2の温度検出回路である環境温度補償回路20は、測定対象以外の物理量である環境温度を検知するための回路であり、抵抗R2とサーミスタRth2の直列回路を有し、電源V1の第1の電極に抵抗R2が、第2の電極にサーミスタRth2が接続される。電源V1は、赤外線検出回路10及び環境温度補償回路20に供給する電源であり、電源V1の電圧変動がそれぞれの回路出力に影響するため、安定化した電源を使用する。
差動増幅部31を形成する差動アンプ30は、赤外線検出回路10の出力電圧11と後述するピークキャンセル電圧46との差分を取り、差分のみを増幅する回路である。第1のAD変換器41は、差動アンプ30の出力をディジタル化する。第2のAD変換器42は、環境温度補償回路20の電圧21をディジタル化する。第1のAD変換器41の出力する第1の出力値と第2のAD変換器42の出力する第2の出力値は第1の演算部43に入力される。第1の演算部43は、第1のAD変換器41の出力する第1の出力値と第2のAD変換器42の出力する第2の出力値に応じて熱源温度テーブル47を参照し、熱源温度を決定し熱源温度検知値49を出力する。これが目的とする熱源の検出温度である。ここで、熱源温度テーブル47(物理量テーブル)とは、環境温度に対応する第2の出力値と差動増幅部31の出力に対応する第1の出力値とを引数として、測定対象である熱源の温度を決定する数値が格納されたテーブルである。なお、熱源温度テーブル47は、第1の演算部43内に書き込まれていても良く、外部の記憶部(図示せず)から第1の演算部43が読み出しても良い。第2のAD変換器42の出力する第2の出力値は第2の演算部44に入力される。第2の演算部44は第2のAD変換器42の出力する第2の出力値、即ち、環境温度に対応する数値に応じてピークキャンセル数値テーブルを参照し、ピークキャンセル数値50を決定し出力する。ピークキャンセル数値はDA変換器45に入力され、DA変換器45はピークキャンセル電圧46を発生する。ここで、ピークキャンセル数値テーブルとは、環境温度を引数として、測定対象である熱源温度が所定の温度であるときの、第1の電圧11に相当するデータが格納されたテーブルである。つまり、熱源温度が所定の温度となっている場合には環境温度を反映する第2の出力値によらず差動増幅部31の出力である第3の電圧を一定値とすることが可能となる。なお、ピークキャンセル数値テーブルは、第2の演算部44内に書き込まれていても良く、外部の記憶部(図示せず)から第1の演算部43が読み出しても良い。基本構成は、上記の通りであるが、各回路間にボルテージフォロアなどのバッファーを追加してもよい。特に赤外線検出回路10及び環境温度補償回路20の出力インピーダンスが差動アンプ30及び第1および第2のAD変換器(41、42)の入力インピーダンスに比べ、十分に低くない場合に電圧信号を減衰せず伝えるために有効となる。
次に各回路の定数及び動作について、図2及び図3を参照して説明する。図5は、実施形態1の温度検出回路である図1の赤外線検出回路10の出力Vd(第1の電圧)、環境温度補償回路20の出力Vc(第2の電圧)の温度特性を示すグラフである。赤外線検出回路10において、熱源から放射される赤外線の熱量をサーミスタRth1が受けて、抵抗値が変化する。具体的には、環境温度下にサーミスタRth2が置かれているため、環境温度に熱源から放射される赤外線の熱量を加えた温度で抵抗値が決まる。このサーミスタRth1の抵抗値と直列に接続された抵抗R1により電源V1を分圧した電圧が赤外線検出回路10の出力となる。赤外線検出回路10の出力Vdの計算式を式1に示す。
Vd=V1*Rth1/(Rth1+R1) (式1)
ところで、サーミスタRth1は、NTC(negative temperature coefficient)サーミスタを使用する。金属酸化物を主成分とする負の温度係数を持つサーミスタは、温度制御や温度測定に広く用いられている。このサーミスタの特性を表す式は式2のように近似される。
Ra=RbexpB(1/Ta−1/Tb) (式2)
ここで、Ra、Rbは任意の温度Ta(°K)及びTb(°K)におけるサーミスタRth1の抵抗値である。Bはサーミスタ定数と呼ばれるもので、このB定数が大きいほど温度変化に対する抵抗変化率が大きいことを意味する。サーミスタRth1は、温度と抵抗特性が直線関係でないため、環境温度の温度範囲で、赤外線検出回路10の出力が直線に近づくようにサーミスタRth1と直列に接続された抵抗R1の定数を決める。サーミスタRth1と直列接続される抵抗R1の抵抗値をR、温度範囲の下限温度でのサーミスタRth1の抵抗値をRTL、温度範囲の中間温度でのサーミスタRth1の抵抗値をRTM、温度範囲の上限温度でのサーミスタRth1の抵抗値をRTHとすると、式3より直線化に近づく抵抗値を算出できる。
R=(2RTL・RTH−RTM(RTL+RTH))/(2RTM−(RTL+RTH)) (式3)
これらより、赤外線検出回路10の定数を、サーミスタRth1の25℃とき抵抗値を33kΩ(B定数は4600K)と設定し、抵抗R1=R2=3.3kΩと決まる。図2の赤外線検出回路10の出力曲線12は、上記定数を使用し熱源温度が180℃で電源V1が1Vときの図1における赤外線検出回路10の出力Vdの出力電圧である。サーミスタRth1は、環境温度に熱源から放射される赤外線の熱量を加えた温度によって抵抗値が決まる。従って熱源温度が199℃の場合は、同じ環境温度とき、熱源から放射される赤外線の熱量の180℃ときからの増加分が加算された温度によって抵抗値が決まる。図2の赤外線検出回路10の出力13がこのときの特性である。熱源温度が160℃ときは、同様に環境温度に熱源から放射される赤外線の熱量の180℃ときからの減少分が減算された温度によって抵抗値が決まり、図2の赤外線検出回路10の出力14がこのときの特性である。
環境温度補償回路20は、環境温度でサーミスタRth2の抵抗値が変化する。環境温度補償回路20の出力は、抵抗R2とRth2により、電源V1を分圧した電圧となる。これより、環境温度補償回路20の出力は、式5のように算出できる。環境温度補償回路20の出力Vcは、
Vc=V1*Rth2/(Rth2+R2) (式4)
となる。抵抗R2は、抵抗R1と同じ3.3kΩを使用する。電圧Vcは環境温度Tcを反映しており、図1において第2のAD変換器42により、数値化され、環境温度数値として第2の演算部44に入力される。第2の演算部44にはピークキャンセル値を収納したピークキャンセル数値テーブルを有しているので、環境温度に対応する数値に対応したピークキャンセル値を出力することが出来る。ここで、設定された所定の測定対象の物理量に対応する測定レンジ中央値を180℃とした場合の、ピークキャンセル値としては図2の赤外線検出回路出力曲線12に相当する環境温度に対応する熱源温度の出力値Vdのデータ列があらかじめ用意されている。つまり、測定対象物の温度Tbが180℃である場合の赤外線検出回路10の出力値Vd(第1の電圧)そのものがピークキャンセル値となる。なお、測定レンジ中央値とは、測定対象である物理量(この場合熱源の温度)の測定値が、所定の値である場合、環境温度によらず、差動増幅部31の出力が第1のAD変器41の入力の基準電位(第1のAD変器41の入力電圧範囲の中点)となるように、設定された値である。ここで、測定レンジ中央値は単一の値であっても良く、異なる複数の値の中からひとつを選んで設定しても良い。設定については、測定開始時に予め定められた値に設定してもよく、後述するように、測定対象である物理量に対応して設定してもよい。第2の演算部44は、第1の電圧Vdをあらわすデータ列のなかから、環境温度に対応する数値を選んで出力し、その数値はDA変換器45によりピークキャンセル電圧に変換される。つまり、規定された環境温度(実施形態ではTc = 0〜120℃)のすべてにおいて、測定対象の温度が180℃であるときの、Vdに等しい電圧がピークキャンセル電圧として出力される。これが、差動アンプ30に入力される。差動アンプ30の具体的構成例を図23 に示す。この図において230はオペアンプであり、基準電圧Vm=0.5V,抵抗R,rの比をR/r=25とすれば、差動アンプ30は電源電圧1V、基準電位は電源電圧の中点電位0.5Vで動作し、ゲインは25倍になる。即ち2つの入力電圧の差の25倍に中点電位を加算されたものが出力されるとする。したがって、測定対象の温度Tbが180℃のときは、差動増幅部31を形成する差動アンプ30の2つの入力には同じ電圧が入力され電圧の差が0であるので、出力は
0 x 25 +0.5 = 0.5 V
すなわち基準電位となる。この様子を図3を用いて説明する。図3の曲線32に示すように、Tc = 0〜120℃において一定の値0.5Vを示す。この例においては、測定対象である熱源の温度が所定の数値180℃であるときに、測定対象以外の温度である環境温度によらず、第3の電圧を一定の電圧0.5Vとなり、この電圧がAD変換器41の入力電圧範囲の中点となる。なお、基準電圧Vmは、0.5Vとは限らず、一定の電圧であれば適宜変更してもよい。
次に、測定対象である熱源の温度Tbが180℃より高い場合、例えばTb = 199℃の場合について説明する。このときの赤外線検出回路10の出力11の電圧Vdは図2の曲線13で示される。この電圧Vdが差動アンプ30の一方の入力電圧となる。差動アンプ30の他方の入力電圧となるピークキャンセル電圧は、Tbにかかわらず、つねに図2の曲線12に相当する電圧(Tb=180℃と仮定したときの赤外線検出回路10の電圧)である。つまり差動アンプ30に入力される電圧の電圧差は、図2の曲線13と曲線12との差であり、その25倍に基準電位を加算したものが出力となる。この様子は図3の曲線33で示される。例えば、Tc=60℃において 図2の曲線13は0.5713Vであり、曲線12は0.5905Vであるので、差動増幅部31の出力は
( 0.5905−0.5713)x25+0.5 = 0.98V
となる。これは図3における点35である。
同様に、測定対象の温度Tbが180℃より低い場合、例えば160℃の場合は、赤外線検出回路10の出力11の電圧Vdは図2の曲線14で示される。差動アンプ30に入力される電圧の電圧差は、図2の曲線14と曲線12との差であり、その25倍に基準電位を加算したものが出力となる。この様子は図3の曲線34で示される。例えば、Tc=60℃において 図2の曲線14は0.6079Vであり、曲線12は0.5905Vであるので、差動増幅部31の出力は、
( 0.5905−0.6079)x25+0.5 = 0.0065Vとなる。これは図3における点38である。
このように、差動アンプ30のゲインを25倍に取れば、測定レンジ中央値を180℃とするTb = 160℃〜199℃の測定レンジにおいて、差動アンプ30の出力の範囲は0.0065V〜0.98Vとなる。第1のAD変換器41の入力範囲が上限1V、下限0Vであるとき、この入力範囲をほぼいっぱいに使い切ることになる。逆に言えば、図2に示す特性が与えられた場合、その各曲線の電圧差を増幅して第1のAD変換器41の入力範囲いっぱいになるように差動増幅部31のゲインを設定すれば、第1のAD変換器41の分解能を最大限に活かすことができる。この例では、測定レンジ内において、差動アンプ30出力の平均感度は、
( 0.98V−0.0065V)/(199℃−160℃)=0.9735/39℃=0.025V/℃
である。なお、ここでは、測定レンジ中央値を180℃として説明したが、これに限るものではない。但し、常時、測定レンジ中央値を熱源の温度に追従するように動作させると、差動アンプ30の出力は基準電位である一定値になってしまい測定ができなくなってしまう。従って、測定開始時には予め設定された測定レンジ中央値を固定使用して測定を行う必要がある。
次に、検出温度決定の原理及び検出温度の精度について説明する。熱源の検出温度は、検出温度と環境温度との差と、環境温度から定まる。つまり、差動アンプ30の出力値と環境温度の値とから決定される。図3においては、検出温度Tbが160℃、180℃、199℃の3つの曲線34、32、35が代表として描かれているが、その中間の検出温度の曲線は、曲線34と35の間に無数にあると考えられる。この様子を図4に示す。図4では検出温度を2℃刻みで表示しているが、実際にはもっと小刻みに検出温度の曲線が詰まっている。例えば、環境温度が30℃であり差動アンプ30の出力が0.7Vであると、図4の座標での点39であり、この点を通過する検出温度の曲線はTb=190℃なので、検出温度は190℃と決定される。このように、差動アンプ30の出力特性の座標平面上で、環境温度と差動アンプ30の出力電圧から決まる点を求め、その点を通過する熱源温度曲線が熱源温度Tbを決定する。以上は、原理的な説明であるが、実際に熱源テーブル47を用いて熱源温度を検知する場合の、第1のAD変換器41のビット数制約に基づく検出分解能については、後述する。環境温度Tcと赤外線検知用サーミスタの温度Tdから、熱源温度Tbが決定できるという原理に基づき、Tcを基準にしたピークキャンセル電圧発生およびTbの値の決定について説明した。従って、説明に用いたグラフ(図2、3、4)も横軸にTcをとっていた。しかし、実際の回路動作としてピークキャンセル数値テーブルや熱源温度テーブル47を参照する場合、環境温度を反映する値であるである第2のAD変換器42の出力値を参照する。従って、環境温度温度Tcの値をVcの値に置き換えて、テーブルの内容を説明する。
図5は図2の横軸を第2のAD変換器42の出力値Vcに置き換えたものである。図2の曲線12、13、14は図5の曲線52、53、54にそれぞれ対応する。参考のために環境温度Tcが10℃、30℃、60℃、110℃に対応する横軸目盛(Vc)における位置を示した。ピークキャンセル数値テーブルには図5の曲線52に相当する環境温度と所定の一定値である熱源温度に対応する出力値データ列が準備されており、その中から第2の演算部44は環境温度に応じたピークキャンセル数値を出力する。
また、図6は図3の横軸を第2のAD変換器42の出力値Vcに置き換えたものである。図2の曲線32、33、34は図5の曲線62、63、64にそれぞれ対応する。図6の横軸の目盛も図5と同様に、第2のAD変換器42の出力値である。参考のために環境温度Tcが10℃、30℃、60℃、110℃に対応する横軸目盛(Vc)における位置を示した。熱源温度テーブル47には曲線64と曲線63との間(測定レンジTc=160℃〜199℃に相当)に、図4の曲線群に相当する環境温度と熱源温度に対応する出力値Vdのデータ列が準備されている。この環境温度と熱源温度に対応する出力値Vdのデータ列の刻みの細かさは第1のAD変換器41のビット数で決まる。縦軸は差動増幅部31からの出力を第1のAD変換器41で変換した第1の出力値に相当する。図1に示すように、第1の演算部43には第2の出力値と第1の出力値が入力される。第1の演算部43はこの2つの数値を引数とした熱源温度テーブル47を参照して、2つの数値の交点の最も近くを通過する熱源温度のデータ列を求め、そのデータ列に相当する熱源温度が、検出温度であると決定する。従ってデータ列の熱源温度方向の刻みの細かさが分解能を決定する。第1のAD変換器41の出力を10ビットとすると、1Vの入力範囲(図6矢印66)を1024(=210)段階に分解するので第1のAD変換器41のビットあたりの分解能は、1V/1024 ≒ 1mV/bitとなる。まず環境温度Tcが60℃であるときを例としてそのときの分解能が平均どの程度になるかを求める。Tc=60℃は0.67V(環境温度数値=0.67)である。図6の横軸で0.67Vにおける入力変動範囲 (図6矢印67)は0.92Vである。これを1mV/bit 刻みで分解するので、0.92V/1mV≒920となる。温度差39℃(=199℃−160℃)の範囲を920ステップで刻むことになるので、ステップを熱源温度換算すると平均39℃/920≒ 0.04℃である。図6の座標平面上で0.04℃間隔の曲線のうち近いほうを熱源温度とするので、検出温度精度は、
0.04℃/2 = 0.02℃
である。
次に、環境温度が10℃であるときの分解能を求める。Tc=10℃は0.96V(環境温度数値=0.96)である。図6の横軸で0.96Vにおける入力変動範囲 (図6矢印68)は0.39Vである。これを1mV/bit 刻みで分解するので、0.39V/1mV≒390となる。温度差39℃(=199℃−160℃)の範囲を390ステップで刻むことになるので、ステップを熱源温度換算すると平均39℃/390 ≒ 0.1℃になる。図6の座標平面上で0.1℃間隔の曲線のうち近いほうを熱源温度とするので、検出温度分解能は、
0.1℃/2 = 0.05℃
である。同様にして環境温度が110℃であるときの精度を求めと
0.04℃
である。
以上、本実施形態1について説明したが、本実施形態の効果を示すために、従来の構成における検出精度と比較してみる。本実施形態の特徴は環境温度に応じたピークキャンセル電圧をフィードバックさせることにあるが、フィードバックが無い従来の構成を原理的に示すと図19のようになる。従来例では赤外線検出回路10の電圧と環境温度補償回路20の電圧差、すなわち、Vd−Vcを第1のAD変換器41の出力が飽和しない範囲に収まるように、第1のAD変換器41の入力電圧範囲いっぱいに増幅した数値が、第1の演算部43に入力される。図20のグラフは第1の電圧Vdと環境温度Tcを示す。71は第2の電圧Vc、72は熱源温度Tb=180℃のときの第1の電圧Vd、73は熱源温度Tb=199℃のときの第1の電圧Vd、74は熱源温度Tb=160℃のときの第1の電圧Vdである。図21は、第1の電圧Vdと第2の電圧Vcとの差を示したもので、82、83、84はそれぞれ、Tb=180℃、199℃、160℃のときの、VcとVdとの差電圧である。つまり、図20の曲線71に対して、曲線72、73、74との差を示す。この差電圧が差動増幅部31に入力される。図21より、入力される差電圧の最大値はほぼ1.0Vであるので、第1のAD変換器41の入力電圧範囲が0〜1.0Vとすれば、入力電圧が飽和しないための差動増幅部31のゲインは、環境温度による変動も含めて差動増幅するので10倍である。実施形態1で説明したピークキャンセルを行った場合は25倍のゲインが取れたが、ピークキャンセルをしない従来例では10倍しかゲインが取れないことがわかる。このことが、温度検知精度に影響することを次に説明する。第1のAD変換器41のビット数は10ビットとし、第1のAD変換器41の入力電圧範囲は1Vとする。これら第1のAD変換器41の条件は実施形態1と同じであり、第1のAD変換器41の1ビットあたりの分解能も同じく
1V/1024≒1mV/bit
となる。図22は差動増幅部31の一方の入力である出力電圧Vcを横軸に、第1の温度検出回路10と環境温度補償回路20との差電圧をΔVd(=Vc−Vd)にとったものである。図21の横軸をVcに置き換えたものといっても良い。また、図22に基づいて作成された熱源温度テーブル47によって検出温度を決定する方法は、実施形態1で説明した方法と同じである。図21で最高の検出感度であるTc=60℃ではVc=0.67℃である。このとき図22の横軸で0.67Vにおける入力変動範囲 (図22矢印97)は0.37Vである。これを1mV/bit 刻みで分解するので、
0.37V/1mV≒370
温度差39℃(=199℃−160℃)の範囲を370ステップで刻むことになるので、ステップを熱源温度換算すると平均39℃/370 ≒ 0.1℃
である。図22の座標平面上で0.1℃間隔のデータ列のうち近いほうを熱源温度とするので、検出温度精度は、
0.1℃/2 = 0.05℃
である。次に、環境温度が10℃であるときの分解能を求める。Tc=10℃は0.96V(環境温度数値=0.96)である。図22の横軸で0.96Vにおける入力変動範囲(図22矢印98)は0.15Vである。これを1mV/bit 刻みで分解するので、0.15V/1mV≒150
温度差39℃(=199℃−160℃)の範囲を150ステップで刻むことになるので、ステップを熱源温度換算すると平均39℃/150 ≒ 0.26℃
になる。図22の座標平面上で0.26℃間隔のデータ列のうち近いほうを熱源温度とするので、検出温度精度は、
0.26℃/2 = 0.13℃
である。同様にして環境温度が110℃であるときの精度は、
0.11℃
である。これらの関係を表1に示す。
Figure 2014190930
環境温度領域のすべてにわたって、従来例よりほぼ2.5倍の精度改善となり、これはほぼ、差動増幅部31のゲインの比となっている。本実施形態の特徴を原理的に説明する。温度検出回路1と温度検出回路2の温度差による、出力電圧の差には、環境温度に依存したピーク特性を持つが、温度差が増大すると、出力電圧の差が増大する共にピーク値も増大する。目的とする測定温度範囲において、温度検出回路1と温度検出回路2の温度差が大きくても、目的とする測定温度範囲の中央付近に仮定の熱源温度を設定し、測定対象である熱源温度を反映した電圧と熱源温度が所定の温度であったと仮定したときの電圧との差分を増幅すれば、熱源温度が仮定した所定の温度に一致するときは、環境温度に依存するピーク電圧成分はまったくキャンセルされるとともに、差動増幅部31の出力電圧である第3の電圧は環境温度に依存しない一定電圧となる。実際の熱源温度が、仮定した所定の温度より上下する場合は、仮定した所定の温度との差に相当する電圧だけ第3の電圧が増減する。つまり、環境温度において、実際の熱源温度と仮定した所定の熱源温度との差に相当する電圧の増減分だけを増幅すればいいので入力電圧が少なくなり、差動増幅部31に大きな増幅率を設定できる。そして、熱源温度が仮定した所定の温度に一致したときの第3の電圧を第1のAD変換器41の入力範囲の中央に設定すれば、仮定した所定の熱源温度からの差分に相当する電圧成分だけにAD変換41の分解能を割当てることができ、第1のAD変換器41の入力範囲を有効に使うことができるので物理量検出精度の低下を緩和できる。
このように熱源温度の所定の値を中心に其の上下の温度変化の検出精度が向上することを説明した。つまり、所定の値とは、測定するレンジの中心値になると考えても良い。そして、異なる測定レンジを測定する場合は、所定の値であるレンジ中心値を変えれば、其の値を中心として其の上下の熱源温度範囲において精度の高い温度検出を行うことが出来る。この例については実施形態4以降に説明する。
(実施形態2)
第2の電圧(環境温度補償回路20の出力)の方にピークキャンセル電圧を作用させることによっても同様の効果が得られる。図7において、センサ回路200は第2の差動アンプ71と第3の差動アンプ72を有し、差動増幅部31を形成している。第2の差動アンプ71はゲイン1倍であり、第2の電圧とピークキャンセル電圧とが入力され、第4の電圧が出力される。第3の差動アンプ72には第4の電圧と第1の電圧とが入力され、第3の電圧が出力される。この構成により、熱源温度が測定レンジ中央値と一致するときは、第3の電圧は中点電位(=第1のAD変換器41の入力電圧範囲の中央値)とするようにすることが出来る。したがって実施形態1に述べたように検出温度を改善する効果が得られる。このような動作を実現するためのピークキャンセル数値について説明する。図8は第1の電圧(Vd)と第2の電圧(Vc)の変化を環境温度の変動に応じた第2の電圧(Vc,横軸)に対して示したものである。曲線52、53、54は図5に示したものと同じである。直線55は環境温度に対応する電圧2そのもの(Vc)であるので横軸と縦軸の同じ数値をつなげたものとなる。直線52、53、54の示す値からと曲線55の示す値をひいた差電圧が図9における曲線122、123、124である。つまり、熱源温度180℃、200℃、160℃における、第1の電圧と第2の電圧の差である。曲線122に相当する数値をピークキャンセル数値としてピークキャンセル電圧を発生させる。この電圧と第2の電圧とが第2の差動アンプ71に入力されるので、その出力である第4の電圧は、環境温度全域において熱源温度180℃における第1の電圧と同電圧になる。従って熱源温度180℃においては、第3の差動アンプ72には、同電位の電圧が入力されるので、出力は中点電位となる。また、黒体温度160℃〜199℃の測定レンジ内の最大電圧はと最小電圧の差が最も広がるのは環境温度60℃のときであり、その差127は0.037Vである。従ってこの入力電圧差のときに、第1のAD変換器41の入力範囲いっぱいになるように、第3の差動アンプ72のゲインを25倍に設定する。そうすると、第1のAD変換器41への入力電圧は図6に示すものと同じになる。従って、実施形態1と同じ精度が実現される。
(実施形態3)
第2の電圧と第1の電圧との差動増幅出力にピークキャンセル電圧を作用させることによっても同様の効果が得られる。図10において、センサ回路300は第4の差動アンプ81と第5の差動アンプ82を有し、差動増幅部31を形成している。第4の差動アンプ81は第1の電圧と第2の電圧の差を増幅するので、1Vの電源範囲いっぱいに出力を設定するとゲイン10倍となる。即ち図8に示す第1の電圧52、53、54と第2の電圧55との差を10倍したものが第4の差動アンプ81の出力である第5の電圧となる。これを図24aに示す。図8における曲線52と曲線55の差電圧が図24aの曲線242、図8における曲線53と曲線55の差電圧が図24aの曲線243、図8における曲線54と曲線55の差電圧が図24aの曲線244である。この第5の電圧にピークキャンセル電圧を作用させる。図24aの斜線領域245に示す電圧に相当する電圧をピークキャンセル電圧として作用させる。即ち、図24bに示すピークキャンセル電圧を第5の差動アンプ82に一方の入力に入力する。ピークキャンセル数値テーブル48には図24bに相当する電圧数値が用意されており、第2の演算部44は第2のAD変換器42の出力数値に応じてピークキャンセル数値をDA変換器45に出力し、DA変換器45はこれを電圧に変換してピークキャンセル電圧を発生する。第5の電圧からピークキャンセル電圧を差し引いた電圧は図25aのようになるので、第5の差動アンプ82はゲインを2.5倍にとれば出力である第3の電圧は図25bのようになり、第1のAD変換器41の入力範囲いっぱいにすることが出来る。図24aの曲線242から図24bのピークキャンセル電圧を差引いた電圧は図25aの曲線252となり、これを2.5倍した電圧が図25bの曲線262であり、熱源温度Tbが180℃のときの電圧3である。図24aの曲線243から図24bのピークキャンセル電圧を差引いた電圧は図25aの曲線253となり、これを2.5倍した電圧が図25bの曲線263であり、熱源温度Tbが199℃のときの電圧3である。24aの曲線244から図24bのピークキャンセル電圧を差引いた電圧は図25aの曲線254となり、これを2.5倍した電圧が図25bの曲線264であり、熱源温度Tbが160℃のときの第3の電圧である。結局、図25bは図6と同じになる。つまり、第3の電圧は実施形態1、2、3で同じ結果となる。したがって、温度検出精度における効果も実施例も実施形態1、2説明したものと同様になる。
(実施形態4)
これまで、所定の測定対象の物理量が1つである場合を説明したが、熱源の温度をより広い検知範囲で精度良く測定するためには、測定レンジを切替えることが有効である。つまり、異なる値の所定の測定対象の物理量を複数利用することが有功である。簡単のため、実施形態1の回路を発展させて4つの測定レンジを切替えられるようにする例について説明する。この実施形態4を図11に示す。センサ回路400は測定レンジ設定部401を有している。測定レンジ設定部401はたとえば熱源温度80℃〜240℃の範囲を測定レンジ幅40℃刻みで設定できるとすれば、4種類の測定レンジとなるので、2ビット(00,01,10,11)の設定が出来るスイッチあるいはレジスタを示し、2ビット(00,01,10,11)をレンジ設定値とし、レンジ設定値に対応する測定レンジを設定する。レンジ設定値と測定レンジの関係を表2に示す。
Figure 2014190930
この4種類の測定レンジに対応して、ピークキャンセル数値テーブル48の内容、熱源温度テーブル47の内容もそれぞれ4つ用意されている。測定レンジの設定値に従って、第2の演算部44および第1の演算部43にそれぞれ対応するピークキャンセル数値テーブル48の内容、熱源温度テーブル47の内容を選択して参照する。例えば測定レンジが下から3番目の160〜199℃、においては、測定レンジ設定部401には数値「10」が設定される。この設定数値は第2の演算部44と第1の演算部43とに与えられるため、第2の演算部44は設定数値に従って測定レンジが160〜199℃用のピークキャンセル数値テーブル、即ち図5の曲線54に対応する数値を参照する。また第1の演算部43は図6に示す熱源温度テーブル47の内容を参照して熱源温度を決定する。また、下から2番目の120〜159℃、においては、測定レンジ設定部401には数値「01」が設定される。この測定レンジに対応するピークキャンセル数値テーブルは、その中央値140℃における第1の電圧の特性に対応する数値列であり、図12の曲線12で表される。比較のため中央値180℃のときの数値列に相当する曲線52(図5の曲線52と同一)も表示してある。また、曲線133,134はそれぞれ熱源温度が159℃、120℃のときの第1の電圧を示す。測定レンジ160〜199℃に対応する熱源温度テーブル47の内容を図13に示す。これは、図13における曲線142、143、144はそれぞれ図12の曲線132、133、132と曲線132との差を25倍して中点電を加算したものであり、熱源温度がそれぞれ140℃、159℃、120℃のときの第3の電圧である。第2の演算部44は、測定レンジ設定部401に設定された数値「01」に従ってその測定レンジの該当するピークキャンセル数値テーブルを選び、図12の曲線132で表される数値列をピークキャンセル値として出力する。第1の演算部43も同様に、測定レンジ設定部401に設定された数値「01」に従ってその測定レンジの該当する熱源温度テーブル47の内容を選び、実施形態1で説明した方法により熱源温度を決定する。他の2つの測定レンジにおいても同様な方法で熱源温度を決定する。つまり、固定された異なる4種類の測定レンジ中央値に対応する4種類の測定レンジを切り替えることで、精度良く熱源温度を決定することが可能となっている。なお、どの測定レンジを使用するかについては、第1の演算部43から出力された熱源温度の数値が測定レンジ超過あるいは測定レンジ未満を示す場合に、現在の測定レンジから隣接の測定レンジに移るよう外部から適切な数値 (00〜11) を測定レンジ設定部401に設定して、測定レンジを切り替える。熱源温度の数値が測定レンジ超過あるいは測定レンジ未満を示す方法については後述する。
(実施形態5)
自動的に適切な測定レンジを選択する実施形態について説明する。ある測定レンジの熱源温度テーブル47の内容を参照した結果、熱源温度はその測定レンジの外にあると判定された場合自動的に測定レンジを切替える、即ち、レンジ設定値を設定し直すことにより、自動的に適切な測定レンジを選択する。図14に示されるセンサ回路500においては、熱源温度テーブル47に格納されているデータ列の特定の2ビットがレンジ情報として、レンジ超過、レンジ未満、レンジ適正を示すために割り当てられている。この2ビットのレンジ情報出力151は、現在の測定レンジに対応するレジスタの値153と共に、加算器152に入力され、クロック155に同期して測定レンジに対応するレジスタの値153を書き換える。測定レンジの種類は実施形態4の例と同じく4つとすると、測定レンジに対応するレジスタ値153は2ビットとなる。レンジ適正である場合のレンジ情報出力151のバイナリ値00とすると、その場合は現在の測定レンジに対応するレジスタの値153にバイナリ値00が加算される。従って測定レンジに対応するレジスタの値153は変わらない。レンジ超過である場合のレンジ情報出力151をバイナリ値01とすると、その場合は現在の測定レンジに対応するレジスタの値153にバイナリ値01が加算される。従って測定レンジに対応するレジスタの値153は1増え、測定レンジがひとつ上に切り替わる。レンジ未満である場合のレンジ情報出力151をバイナリ値11とすると、その場合は現在の測定レンジに対応するレジスタの値153にバイナリ値11が加算される。従って測定レンジに対応するレジスタの値153は1減り(補数の加算)、測定レンジがひとつ下に切り替わる。このように、レンジ情報(バイナリ値)を含む熱源温度テーブル47のデータの様子を図15に示す。図15の上のグラフ161は測定レンジ中央値=180℃の場合の熱源温度テーブル47の内容を表し、図15の下のグラフ165は測定レンジ中央値=140℃の場合の熱源温度テーブル47の内容を表す。グラフ上の領域162、166はそれぞれ、熱源温度が測定レンジ以内である領域であるので、その領域に書かれている熱源温度データ47は、上位2ビットのレンジ情報データは00であり、次の8ビット(T7〜T0)は熱源温度データの整数部、次の4ビット(t1〜t4)は熱源温度データの小数部である。上位2ビットは図5の加算器152に入力されるが00であるので測定レンジは変わらない。グラフ上の領域163、167はそれぞれ、熱源温度が測定レンジを超過しているデータ領域であるので、上位2ビットのレンジ情報データは01であり、他のビットは意味をも持たない。上位2ビットは加算器152に入力され、01であるので測定レンジはひとつ上に切替える。例えば、現在の測定レンジ中央値が140℃に設定されているとすると、参照する熱源温度テーブル47の内容はグラフ165に相当するが、そのときの熱源データの上位2ビットが01であった場合、測定レンジを超過しているので、レンジ情報に相当する熱源温度テーブル47の内容の上位2ビット01が加算器152に入力され、現在の測定レンジに対して測定レンジの設定値を1つ増やして、グラフ161に相当する熱源温度テーブル47の内容を参照する。グラフ上の領域164、168はそれぞれ、熱源温度が測定レンジ未満であるデータ領域であるので、上位2ビットのレンジ情報データは11であり、他のビットは意味をも持たない。上位2ビットは加算器152に入力され、11であるので測定レンジはひとつ下に移る。例えば、現在の測定レンジ中央値が180℃に設定されているとすると、参照する熱源温度テーブル47の内容はグラフ161に相当するが、そのときの熱源温度データの上位2ビットが11であった場合、測定レンジ未満であるので、レンジ情報に相当する熱源温度テーブル47の内容の上位2ビット11が加算器152に入力され、現在の測定レンジに対して測定レンジの設定値を1つ減らして、グラフ165に相当する熱源温度テーブル47の内容を参照する。以上のようにして、自動的に適正な測定レンジになるまで参照する熱源温度テーブル47の内容を切替える。これを繰り返しても、最終的に適正な測定レンジに入らない場合は、熱源温度が表2に示した測定可能な範囲に無い(過大か過小)であること意味する(この例では240℃を超えているか80℃未満)。なお、簡易的にはレンジ情報データを1ビットで済ます方法もある。測定レンジに入っているときは0とする。そうでない時を1として、加算器152を一方的に1づつ加算する。適正な測定レンジに入るまでこれを繰り返す。4回繰り返しても適正な測定レンジに入らない場合は、熱源温度が表2に示した測定可能な範囲に無い(過大か過小)であること意味する(この例では240℃を超えているか80℃未満)。この場合、測定開始時の初期設定は、測定レンジを一番低い温度に設定しておけばよい。上記の通り、レンジ設定値を書き換える更新部である加算部152にレンジ超過、レンジ未満、レンジ適正を示すレンジ情報を入力することにより、レンジ設定値を更新することで測定レンジを自動で更新することが可能となっている。なお、更新された測定レンジの設定値に従って、第2の演算部44が対応するピークキャンセル数値テーブル48の内容を選択して参照することは実施例4と同様である。
(実施形態6)
熱源温度テーブル47のデータにレンジ情報データを持つビットを含ませる代わりに、測定レンジを超えた場合の熱源温度データを特殊なパターンのデータとすることで、適正な測定レンジに入っているか否かを判定するともできる。ある測定レンジにおいて熱源温度が測定レンジを超えている場合は全ビットが1のデータ、測定レンジに満たない場合は全ビットが0のデータを熱源温度テーブル47の内容に記録する。測定可能な熱源温度が80℃〜240℃とした場合、少数点以下4ビットで表現するとこの範囲の数値は12ビットの二進数で表現され、01010000.0000〜11110000.0000となる。全ビット0、あるいは全ビットが1となる数値にはならない。全ビットが0あるいは全ビットが1であるデータは特殊なデータであり温度数値を表すのではなく、測定レンジに満たないか、超過している、という意味を与えることが出来る。図16において、論理ゲート171は、第1の演算部43が出力する熱源温度データ47の出力データが全ビット0のときは加算値11を出力、全ビット1のときは01を出力、それ以外のときは00を出力する。これら2ビットのディジタル値が加算器152に入力される。図17のグラフ161は測定レンジ中央値=180℃の場合の熱源温度テーブル47の内容を表し(図6に相当)、グラフ165は測定レンジ中央値=140℃の場合の熱源温度テーブル47の内容表す(図13に相当)。グラフ上の領域162、166はそれぞれ、熱源温度が測定レンジ以内である領域であるので、その領域に書かれているデータは、上位8ビット(T7〜T0)は熱源温度データの整数部、次の4ビット(t1〜t4)は熱源温度データの小数部である。グラフ上の領域163、167はそれぞれ、熱源温度が測定レンジより過大であるデータ領域であるので、全ビットが1であるデータが書かれている。グラフ上の領域164、168はそれぞれ、熱源温度が測定レンジ未満であるデータ領域であるので、全ビットが0であるデータが書かれている。本実施形態の場合は、レンジ情報のためにビットを割当てる必要が無いため、熱源温度テーブル47の容量を節約することが出来る。以上の説明において、ピークキャンセル数値テーブル内のレジスタに設定された測定レンジ中央値を書き換える際、加算器152により数値を加減する方法を述べたが、アップダウンカウンタをレジスタとし、この値をカウントアップ、カウントダウンすることにより加算器152を用いずに測定中央レンジ中央値を書き換えることも可能である。また、汎用プロセッサにより処理をおこなう場合は、専用の加算器やゲートを用いないが、実施形態5、6のそれぞれの論理に基づいて、図18のフローチャートに示す処理をする。
このフローにおいては、第1の演算部による熱源温度の算出結果が測定レンジより過大であったときは、ひとつ上の測定レンジに切替える。第1の演算部による熱源温度の算出結果が測定レンジ未満であったときは、ひとつ下の測定レンジに切替える。このようにして測定レンジ以内になるまで、レンジ切り替えを行う。その結果ある測定レンジ以内の結果を得たときに、それを熱源の温度と決定する。最終的にどの測定レンジ以内にもはいらず測定レンジより過大であるという結果に終わった場合、熱源の温度は非接触温度センサの測定可能範囲を超えているとして処理を終了する。最終的にどの測定レンジ以内にもはいらず測定レンジ未満であるという結果に終わった場合、熱源の温度は非接触温度センサの測定可能範囲より低いとして処理を終了する。
以上、非接触温度センサについての実施形態を説明したが、2つのサーミスタペアの温度差を利用して物理量を検知する、ガスセンサ、湿度センサ、流速センサにおいても、ピークキャンセルの方法は同じであり、本実施形態が適用できる。NDIR(non−dispersive infrared detector, 非分散型赤外線センサ)といわれる光学式のガスセンサは、サーミスタペアのうち検知用サーミスタは検出対象の気体を透過した赤外線を照射された赤外線吸収体に接し、補償用サーミスタは検知対象のガスを含まない標準気体を透過した赤外線を照射された赤外線吸収体に接し、二つのサーミスタの温度上昇の違いから検知対象の気体内のガス濃度を決定する。すなわち、検知用サーミスタはガス濃度という物理量の影響を受け、補償用サーミスタにはその影響が低減されている。このようなサーミスタペアを用いた構成は、実施形態で説明した非接触温度センサーと共通であるので、本実施形態の方式が有効であり、検知精度を向上することが出来る。サーミスタペアを用いた湿度センサは、検知用サーミスタは検知対象の雰囲気にさらされた熱伝導体に接し、補償用サーミスタは密閉された乾燥空気の中におかれた熱伝導体に接している。これらの2つの熱伝導体を同等に加熱すると、検知用サーミスタが接する熱伝導体は湿度による雰囲気の熱伝導率の変化に影響され温度が変わるが、補償用サーミスタが接する熱伝導体は湿度の影響を受けない。二つのサーミスタの温度差は湿度を反映している。すなわち、検知用サーミスタは湿度という物理量の影響を受け、補償用サーミスタにはその影響が低減されている。このようなサーミスタペアを用いた構成は、実施形態で説明した非接触温度センサーと共通であるので、本実施形態の方式が有効であり、検知精度を向上することが出来る。サーミスタペアを用いた流量センサは、検知用サーミスタは検知対象の流体にさらされた熱伝導体に接し、補償用サーミスタは流体にさらされない位置にある熱伝導体に接する。これらの2つの熱伝導を同等に加熱すると、検知用サーミスタが接する熱伝導体は流速に応じて熱を奪われ温度が変わるが、補償用サーミスタが接する熱伝導体はその影響を受けない。二つのサーミスタの温度差は流速を反映しているすなわち、検知用サーミスタは流速という物理量の影響を受け、補償用サーミスタにはその影響が低減されている。このようなサーミスタペアを用いた構成は、実施形態で説明した非接触温度センサーと共通であるので、本実施形態の方式が有効であり、検知精度を向上することが出来る。以上のように、物理量をサーミスタペアの温度差として捕らえる方式のセンサにおいては、本実施形態が有効であり検知精度を向上させることが出来る。
本発明に係わるセンサ回路は、空調機、複写機、電子レンジ、など様々な機器に利用できる。
V1 電源
R1、R2 抵抗
Rth1、 Rth2 サーミスタ
30 差動アンプ
41 第1のAD変換回路
42 第2のAD変換回路
43 第1の演算部
44 第2の演算部
45 DA変換回路
151 レンジ情報出力
152 加算器
153 測定レンジに対応するレジスタの値
171 ゲート

Claims (9)

  1. 測定対象の物理量による温度変化に測定対象以外の物理量による温度変化が重畳した温度に感応した第1の電圧を出力する第1の温度検出回路と、
    前記測定対象以外の物理量による温度変化に感応した第2の電圧を出力する第2の温度検出回路と、
    前記第1の電圧とピークキャンセル電圧とが一対の入力端に入力され、第3の電圧を出力する差動増幅部と、
    第1の演算部とを有し、
    前記ピークキャンセル電圧は、前記第2の電圧に応じて変化するとともに、前記測定対象の物理量が所定の値である場合に、前記第2の電圧に応じた前記第3の電圧の変化を打ち消す電圧であり、
    前記第1の演算部は、前記第3の電圧をディジタル化した第1の出力値と前記第2の電圧をディジタル化した第2の出力値とに基づき前記測定対象の物理量を算出するセンサ回路。
  2. 前記第2の電圧が入力される第2のAD変換器と、
    前記第2のAD変換器が出力する前記第2の出力値に応じて、ピークキャンセル数値を出力する第2の演算部と、
    前記第3の電圧が入力され、前記第1の出力値を出力する第1のAD変換器と、を有し、
    前記第1の温度検出回路は、前記測定対象である物理量の影響を受ける位置に配置され一方の端子が定電圧電源の第2の極に接続される第1の感温素子と、前記第1の感温素子の他方の端子と前記定電圧の第1の極とを結ぶ第1の抵抗素子とを有し、
    前記第2の温度検出回路は、前記測定対象である物理量の影響が低減され、一方の端子が前記定電圧電源の第2の極に接続される第2の感温素子と、前記第2の感温素子の他方の端子と前記定電圧の第1の極とを結ぶ第2の抵抗素子とを有し、
    前記第1の電圧は前記第1の感温素子と前記第1の抵抗との接続点の電圧であり、
    前記第2の電圧は前記第2の感温素子と前記第2の抵抗との接続点の電圧であり、
    前記差動増幅部は、前記第1の電圧と、前記ピークキャンセル数値が入力されるDA変換器が出力する前記ピークキャンセル電圧との差動増幅演算を行い前記第3の電圧を出力し、
    前記第1の演算部は、前記第1の出力値と前記第2の出力値とから決まる前記測定対象である物理量を収納した物理量数値テーブルを参照して、前記測定対象である物理量を算出することを特徴とする請求項1に記載のセンサ回路。
  3. 前記差動増幅部は、第1の差動アンプを有し、
    前記第1の差動アンプは前記第1の電圧と前記ピークキャンセル電圧との差電圧を前記第3の電圧として出力する請求項1または2に記載のセンサ回路。
  4. 前記差動増幅部は、第2および第3の差動アンプを有し、
    前記第2の差動アンプは前記第2の電圧と前記ピークキャンセル電圧との差電圧である第4の電圧を出力し、
    前記第3の差動アンプは、前記第4の電圧と前記第1の電圧との差分を増幅して前記第3の電圧として出力する請求項1または2に記載のセンサ回路。
  5. 前記差動増幅部は、第4および第5の差動アンプを有し、
    前記第4の差動アンプは、前記第1の電圧と前記第2の電圧の差電圧である第5の電圧を出力し、
    前記第5の差動アンプは前記第5の電圧と前記ピークキャンセル電圧との差分を増幅して前記第3の電圧として出力する請求項1または2に記載のセンサ回路。
  6. 前記測定対象である物理量のレンジ設定値を設定し出力する測定レンジ設定部を有し、
    前記第1の演算部は、前記レンジ設定値と前記第1の出力値と前記第2の出力値とに応じた物理量数値テーブルを参照して、前記測定対象の物理量を算出し、
    前記第2の演算部は、前記第2の出力値と前記レンジ設定値とが入力され、前記第2の出力値と前記レンジ設定値とに応じたピークキャンセル数値テーブルを参照して、前記ピークキャンセル数値を決定し出力する請求項2ないし5のいずれか一項に記載のセンサ回路。
  7. 前記レンジ設定値を更新する更新部を有し、
    前記第1の演算部は、前記レンジ設定値と前記第1の出力値とに基づいたレンジ情報を出力し、
    前記レンジ情報に応じて前記更新部が前記レンジ設定値を更新する請求項6に記載のセンサ回路。
  8. 物理量センサは、非接触温度センサである請求項1ないし7のいずれか一項に記載のセンサ回路。
  9. 第1の温度検出回路が出力する測定対象の物理量による温度変化に測定対象以外の物理量による温度変化が重畳した温度に感応した第1の電圧と、ピークキャンセル電圧とが一対の入力端に入力され、第3の電圧を出力する差動増幅部と、
    第1の演算部とを有し、
    前記ピークキャンセル電圧は、第2の温度検出回路が出力する前記測定対象以外の物理量による温度変化に感応した第2の電圧に応じて変化するとともに、前記測定対象の物理量が所定の値である場合に、前記第2の電圧に応じた前記第3の電圧の変化を打ち消す電圧であり、
    前記第1の演算部は、前記第3の電圧をディジタル化した第1の出力値と、前記第2の電圧をディジタル化した第2の出力値とに基づき前記測定対象の物理量を算出するセンサ回路。

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