JP2014189989A - フラクチャリング材料 - Google Patents

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Abstract

【課題】環境に対して悪影響を及ぼしにくくフラクチャリング後の回収や後処理の必要性が低いフラクチャリング材料を提供する。
【解決手段】フラクチャリング材料は、ベース流体と、フラクチャを支持してその閉塞を抑制する支持材であるプロッパント材料と、を必須成分として含有するスラリ状の組成物である。このフラクチャリング材料は生分解性ポリエステル樹脂を含有しており、該生分解性ポリエステル樹脂は、フラクチャリング材料において、支持材であるプロッパント材料として用いることができる。また、支持材を被覆する被膜を形成し摩擦を低減する摩擦低減剤として用いることもできる。さらに、フラクチャリング材料の粘性を高めるための粘性付与剤として用いることもできる。生分解性ポリエステル樹脂としては、グリコールと脂肪族二塩基酸とから合成された脂肪族ポリエステル樹脂を用いることができる。
【選択図】なし

Description

本発明はフラクチャリング材料に関する。
シェールガス、シェールオイル、天然ガス、及び石油等は、多孔質で浸透性の地下累層を有する井戸から生産される。累層の孔隙は、累層が石油やガスを蓄えることを可能とし、累層の浸透性は、石油やガス流体が累層の中を移動することを可能とする。よって、累層の浸透性は、石油やガスが累層の中を流れて井戸から産出されるために不可欠なものである。
ただし、石油又はガスを保持した累層の浸透性が、石油やガスを経済的に回収するためには不十分である場合がある。あるいは、井戸の操業中に、石油やガスのそれ以上の回収が不経済になる程度まで、累層の浸透性が低下する場合がある。このような場合には、累層にフラクチャを形成し、プロッパント材料によってフラクチャを開いた状態に支持する必要がある。このようなフラクチャリングには、通常は、フラクチャリング流体(フラクチャリング材料)を用いた水圧破砕法が採用される。
フラクチャの中へ輸送される材料であるフラクチャリング材料には、地中への圧入を容易にするために、摩擦損失が少ないことが要求される一方、フラクチャを開いた状態に支持するための支持材であるプロッパント材料を輸送する、昇圧を容易にする、及び流体とプロッパント材料とが分離しないようにするといった目的で、ある程度の粘性が必要である。
このようなフラクチャリング材料は、粘性のある流体及びプロッパント材料を必須成分とし、さらにゲル化剤、スケール防止剤、摩擦低減剤、酸(岩石やセメントの溶解のため)等の化学物質を添加剤として含有するスラリ状の組成物である(例えば特許文献1を参照)。
フラクチャリング材料の組成の一例を示すと、粘性のある流体90. 5質量%、プロッパント材料9.0質量%、化学物質0.5質量%であり、その成分の具体例としては、水、砂(又は樹脂で被覆された砂)、カルボキシメチルセルロース、塩酸、ポリアクリルアミド、エチレングリコールである。
特開2012−162919号公報
この井戸による生産では様々な化学物質が使用され、強酸などの化学物質を含有させた水によって油層を溶解させているため、地中に化学物質が堆積し地下水に漏れ出したりすることにより環境に悪影響を及ぼすおそれがあった。そのため、フラクチャリング材料には、無毒性又は低毒性であることが要求される。また、環境に悪影響が及ばないように、使用したフラクチャリング材料の回収や後処理を行う必要があるため、そのためのコストや、回収したフラクチャリング材料の運搬のコストがかさむという問題があった。
特に、フラクチャリング材料の成分として樹脂材料を用いた場合、例えば、流体への粘性付与剤としてカルボキシメチルセルロースを用いた場合には、フラクチャリング後にフラクチャリング材料を回収するか、あるいは、例えば酵素のような分解剤を用いて分解処理をするが、回収しきれなかったものや分解しきれなかったものはそのまま地中に埋める処理法に頼らざるをえないため、環境への悪影響の懸念が残る。また、例えば、支持材として微粒子状又は繊維状の樹脂材料を用いた場合や、摩擦低減の目的で支持材である砂の粒子の表面を樹脂材料で被覆した場合も、従来は地中に埋める処理方法に頼らざるをえなかった。
さらに、特許文献1に記載のフラクチャリング材料に使用されているグアーガムは天然物質であるが、工業生産の安定性の向上のために、フラクチャリング材料への合成物質の適用が望まれている。
そこで、本発明は、上記のような従来技術が有する問題点を解決し、環境に対して悪影響を及ぼしにくくフラクチャリング後の回収や後処理の必要性が低いフラクチャリング材料を提供することを課題とする。
前記課題を解決するため、本発明の態様は、次のような構成からなる。すなわち、本発明の一態様に係るフラクチャリング材料は、生分解性ポリエステル樹脂を含有すること特徴とする。
このフラクチャリング材料においては、前記生分解性ポリエステル樹脂を、グリコールと脂肪族二塩基酸又はその誘導体とから合成された脂肪族ポリエステル樹脂とすることができる。そして、前記脂肪族ポリエステル樹脂は、グリコールと脂肪族二塩基酸又はその誘導体とから合成された数平均分子量5000以上のプレポリマー100質量部に、カップリング剤0.1質量部以上5質量部以下を反応させて、数平均分子量10000以上としたものとすることができる。
また、このフラクチャリング材料においては、グリコールと脂肪族二塩基酸又はその誘導体とを主モノマーとし、前記生分解性ポリエステル樹脂を、この主モノマーとコモノマーとから合成された脂肪族ポリエステル樹脂とすることができる。そして、前記脂肪族ポリエステル樹脂は、前記主モノマーと前記コモノマーとから合成された数平均分子量5000以上のプレポリマー100質量部に、カップリング剤0.1質量部以上5質量部以下を反応させて、数平均分子量10000以上としたものとすることができる。
さらに、前記脂肪族ポリエステル樹脂は、その溶融物と、1.0質量%水溶液の20℃における表面張力が63mN/m以下である乳化剤の水溶液と、を混合することにより、20℃における粘度が1000mPa・s以上の水系分散液を形成可能なものとすることができる。
さらに、このフラクチャリング材料は、水及び前記生分解性ポリエステル樹脂以外のプロッパント材料をさらに含有してもよい。
本発明に係るフラクチャリング材料は、環境に対して悪影響を及ぼしにくくフラクチャリング後の回収や後処理の必要性が低い。
本発明に係るフラクチャリング材料の実施の形態を詳細に説明する。
本実施形態のフラクチャリング材料は、ベース流体と、フラクチャを支持してその閉塞を抑制する支持材であるプロッパント材料と、を必須成分として含有し、必要に応じて種々の化学物質を添加剤として含有する例えばスラリ状の組成物である。
このフラクチャリング材料は生分解性ポリエステル樹脂を含有しており、該生分解性ポリエステル樹脂は、フラクチャリング材料において、支持材であるプロッパント材料として用いることができる。また、支持材を被覆する被膜を形成し摩擦を低減する摩擦低減剤として用いることもできる。さらに、フラクチャリング材料の粘性を高めるための粘性付与剤として用いることもできる。ただし、生分解性ポリエステル樹脂は、フラクチャリング材料において、上記以外の用途で用いることも可能である。例えば、摩擦低減剤、粘性付与剤以外の添加剤として用いることもできる。
生分解性ポリエステル樹脂の種類は特に限定されるものではないが天然物質ではなく、合成された生分解性ポリエステル樹脂であることが好ましい。合成された生分解性ポリエステル樹脂としては、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリヒドロキシ酪酸、ポリカプロラクトン等の公知のものを使用することができるが、グリコールと脂肪族二塩基酸(又はその誘導体)とから合成された脂肪族ポリエステル樹脂が好ましい。また、グリコールと脂肪族二塩基酸(又はその誘導体)とを主モノマーとし、この主モノマーと後述のコモノマーとから合成された脂肪族ポリエステル樹脂(共重合体)を用いることもできる。この脂肪族ポリエステル樹脂は、土中の微生物、バクテリヤ、菌類の分解作用により、例えば土壌中で6ケ月で消耗減少し、1.5年〜2年で完全消失する。
このような本実施形態のフラクチャリング材料は、シェールガス、シェールオイル、天然ガス、及び石油等をフラクチャリングにより採掘する際に、フラクチャリング材料として好適に使用可能である。
本実施形態のフラクチャリング材料は、土中や水中の微生物により自然環境下で最終的に炭酸ガスと水等に分解される性質、いわゆる生分解性を有する生分解性ポリエステル樹脂を含有しているので、フラクチャリング後に回収や後処理を行うことなく地中に残しても、フラクチャリング材料中の生分解性ポリエステル樹脂は無害な炭酸ガスと水等に分解される。
よって、本実施形態のフラクチャリング材料は、環境に対して悪影響を及ぼしにくい。また、フラクチャリング後の回収や後処理の必要性が低く、回収や後処理を全く行わないか、行うとしても簡便化することができるので、回収や後処理のためのコストや回収したフラクチャリング材料の運搬のコストを低減することができる。
本実施形態のフラクチャリング材料は、ベース流体と、フラクチャを支持してその閉塞を抑制する支持材であるプロッパント材料とを必須成分として含有し、必要に応じて、粘性付与剤、ゲル化剤、スケール防止剤、摩擦低減剤、酸、改質剤等の化学物質を添加剤として含有する例えばスラリ状の組成物であるが、その組成の一例としては、ベース流体としての水100質量部に対して、砂などのプロッパント材料が1質量部以上20質量部以下、添加剤が0.001質量部以上5質量部以下である。前記生分解性ポリエステル樹脂は、プロッパント材料の一部として使用する場合は、プロッパント材料全量に対して0.001質量%以上50質量%以下、添加剤の一部として使用する場合は、添加剤全量に対して0.01質量%以上50質量%以下を配合することができる。また、前記生分解性ポリエステル樹脂は、水100質量部に対して、0.0001質量部以上10質量部以下をプロッパント材料の一部及び/又は添加剤の一部として配合することができる。
本実施形態のフラクチャリング材料について、以下にさらに詳細に説明する。
〔前記脂肪族ポリエステル樹脂をプロッパント材料として用いる場合について〕
グリコールと脂肪族二塩基酸(又はその誘導体)とから合成された脂肪族ポリエステル樹脂をプロッパント材料として用いる場合は、前記脂肪族ポリエステル樹脂は、グリコールと脂肪族二塩基酸(又はその誘導体)とから合成された数平均分子量5000以上のプレポリマー100質量部に、カップリング剤0.1質量部以上5質量部以下を反応させて、数平均分子量10000以上としたものであることが好ましい。
また、前記共重合体をプロッパント材料として用いる場合は、前記共重合体は、前記主モノマーと前記コモノマーとから合成された数平均分子量5000以上のプレポリマー100質量部に、カップリング剤0.1質量部以上5質量部以下を反応させて、数平均分子量10000以上としたものであることが好ましい。
その形状は、微粒子状や繊維状等でよく、成形物、発泡体、シート、フィルム、ヤーン等の成形体を0.1〜5.0mmの大きさに粉砕したものでもよい。なお、前記脂肪族ポリエステル樹脂(前記共重合体も含む。以下同様である。)は、物性的にも優れていることから、射出成形、押出成形等により射出成形品、パイプ、シート、フィルム、繊維等の各種成形体若しくは発泡体、又は、シート、フィルム等からの真空成形、圧空成形等による二次成形体に加工され、広い範囲の用途に用いられている。
また、前記脂肪族ポリエステル樹脂は、グリコールと脂肪族二塩基酸(又はその誘導体)とから合成されたポリエステルを主成分とするものであるが、場合によっては、分子量を充分に高くするために、両末端にヒドロキシル基を有する比較的高分子量のプレポリマーを合成し、その後にカップリング剤により、さらにこれらプレポリマーをカップリングさせたものであってもよい。
従来、末端基がヒドロキシル基である数平均分子量が2000〜2500の低分子量ポリエステルプレポリマーを、ジイソシアナートと反応させてポリウレタンとし、ゴム、フォーム、塗料、接着剤とすることは、広く行われている。しかしながら、これらのポリウレタン系フォーム、ゴム、塗料、接着剤に用いられるプレポリマーは、数平均分子量が2000〜2500の低分子量であるため、ポリウレタンとして実用的な物性を得るためには、この低分子量プレポリマー100質量部に対するジイソシアナートの使用量を10〜20質量部とする必要がある。このように多量のジイソシアナートを150℃以上の溶融した低分子量プレポリマーに添加するとゲル化してしまい、溶融成形可能な樹脂は得られない。
また、ポリウレタンゴムの場合のように、多量のジイソシアナートを加えてヒドロキシル基をイソシアナート基に転換し、さらにグリコールで数平均分子量を増大する方法も考えられるが、必要とされるジイソシアナートの量は前述のように低分子量プレポリマー100質量部に対し10質量部以上である。
この際にプレポリマーの合成に重金属系の触媒を用いると、イソシアナート基の反応性を著しく促進して、保存性不良、架橋反応、分岐生成をもたらし、溶融性が失われることから、プレポリマーは無触媒で合成する必要があり、その結果、数平均分子量は高くても2500くらいが限界となる。
本実施形態における前記脂肪族ポリエステル樹脂を得るためのプレポリマーは、グリコールと脂肪族二塩基酸(又はその誘導体)とを反応せしめて得られる、末端基が実質的にヒドロキシル基である飽和脂肪族ポリエステルである。このプレポリマーは、数平均分子量5000以上、好ましくは10000以上の比較的高分子量であり、融点は60℃以上である。
プレポリマーの数平均分子量が5000未満であると、0.1質量部以上5質量部以下という少量のカップリング剤では、良好な物性を有する脂肪族ポリエステル樹脂を得ることができないおそれがある。数平均分子量が5000以上のプレポリマーは、ヒドロキシル価が30以下であり、0.1質量部以上5質量部以下という少量のカップリング剤の使用で、溶融状態といった過酷な条件下でも反応中にゲルを生ずることなく、高分子量の脂肪族ポリエステル樹脂を合成することができる。
グリコールの種類は特に限定されるものではないが、例えばエチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、デカメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等があげられる。また、エチレンオキシドも利用することができる。なお、これらのグリコールは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。上記の中では、1,4−ブタンジオールが最も好ましい。
また、脂肪族二塩基酸(環状脂肪族二塩基酸でもよい)の種類は特に限定されるものではないが、例えばシュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、ドデカン二酸等があげられる。また、脂肪族二塩基酸の全部又は一部の代わりに、脂肪族二塩基酸の誘導体を用いることができる。この誘導体としては、例えば、無水コハク酸、無水アジピン酸等の酸無水物や、低級アルコールエステル(例えばジメチルエステル)等の酸エステルがあげられる。なお、これらの脂肪族二塩基酸又はその誘導体は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。少量であれば、テレフタル酸等の芳香族二塩基酸を併用することもできる。上記の中では、コハク酸が最も好ましい。
これらグリコール及び二塩基酸(又はその誘導体)は脂肪族系を主成分とするが、コモノマーとして少量の多官能成分、例えば3官能、4官能の多価アルコール、オキシカルボン酸、多価カルボン酸を併用することが好ましい。また、上記コモノマーとしては、乳酸のようなオキシカルボン酸やカプロラクトンも使用できる。
3官能の多価アルコールの例としては、トリメチロールプロパン、グリセリン又はその無水物が代表的であり、4官能の多価アルコールの例としては、ペンタエリトリットが代表的である。
また、3官能のオキシカルボン酸としては、リンゴ酸が実用上有利であり、4官能のオキシカルボン酸としては、市販品が容易に且つ低コストに入手できることから、クエン酸が実用的である。
さらに、3官能の多価カルボン酸(又はその酸無水物)としては、例えばトリメシン酸、プロパントリカルボン酸等があげられるが、実用上から無水トリメリット酸が有利である。
さらに、4官能の多価カルボン酸(又はその酸無水物)としては、無水ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物、シクロペンタンテトラカルボン酸無水物等があげられる。
多官能成分の使用割合は、2官能成分(グリコール又は脂肪族二塩基酸(又はその誘導体))100モル%に対して、3官能成分の場合は5モル%以下、好ましくは0.5モル%以上3モル%以下であり、4官能成分の場合は3モル%以下、好ましくは0.2モル%以上2モル%以下である。3官能成分の使用割合が5モル%より多い場合や、4官能成分の使用割合が3モル%より多い場合には、エステル化反応中にゲル化する危険性が著しく増大する。
本実施形態の脂肪族ポリエステル樹脂用プレポリマーは、末端基が実質的にヒドロキシル基を有するが、そのためには合成反応に使用するグリコールと脂肪族二塩基酸(又はその誘導体)との使用割合は、グリコールをいくぶん過剰とする必要がある。
比較的高分子量のプレポリマーを合成するには、エステル化に続く脱グリコール反応の際に、脱グリコール反応触媒を使用することが必要である。脱グリコール反応触媒としては、例えば、アセトアセトイル型チタンキレート化合物、有機アルコキシチタン化合物等のチタン化合物や、有機酸の金属塩があげられる。これらのチタン化合物や有機酸の金属塩は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
これらの例としては、例えばジアセトアセトキシオキシチタン(日本化学産業株式会社のナーセムチタン)、テトラエトキシチタン、テトラプロポキシチタン、テトラブトキシチタン、ステアリン酸カルシウム等があげられる。脱グリコール反応触媒の使用割合は、プレポリマー100質量部に対して0.001質量部以上1質量部以下が好ましく、0.01質量部以上0.1質量部以下がより好ましい。脱グリコール反応触媒は、エステル化の最初から加えてもよいし、また脱グリコール反応の直前に加えてもよい。
この脱グリコール反応の結果、数平均分子量5000以上(好ましくは20000以上)、融点60℃以上のプレポリマーが容易に得られるが、結晶性を有していれば一層好ましい。
脂肪族ポリエステル樹脂としてはこの状態でもよいが、プラスチック原料として使用する場合には、上記の数平均分子量5000以上(好ましくは10000以上)の末端基が実質的にヒドロキシル基であるプレポリマーに、カップリング剤を反応させて、さらに数平均分子量を高めることが好ましい。
カップリング剤としては、ジイソシアナート、オキサゾリン、ジエポキシ化合物、酸無水物等があげられ、特にジイソシアナートが好適である。なお、オキサゾリンやジエポキシ化合物の場合は、ヒドロキシル基を酸無水物等と反応させ、末端をカルボキシル基に変換してからカップリング剤を使用することが必要である。
ジイソシアナートの種類は特に限定されるものではないが、例えば2,4−トリレンジイソシアナート、2,6−トリレンジイソシアナート、2,4−トリレンジイソシアナートと2,6−トリレンジイソシアナートとの混合体、ジフェニルメタンジイソシアナート、1,5−ナフチレンジイソシアナート、キシリレンジイソシアナート、水素化キシリレンジイソシアナート、ヘキサメチレンジイソシアナート、イソホロンジイソシアナートがあげられ、特に生成樹脂の色相、ポリエステル添加時の反応性等の点からヘキサメチレンジイソシアナートが好ましい。
これらカップリング剤の添加量は、プレポリマー100質量部に対して0.1質量部以上5質量部以下が好ましく、0.5質量部以上3質量部以下がより好ましい。0.1質量部未満では、カップリング反応が不十分となるおそれがあり、5質量部を超えるとゲル化が発生するおそれがある。
カップリング剤のプレポリマーへの添加は、プレポリマーが均一な溶融状態であり、容易に撹拌可能な条件下で行われることが望ましい。固形状のプレポリマーにカップリング剤を添加し、エクストルーダーを通して溶融、混合することも不可能ではないが、脂肪族ポリエステル樹脂製造装置内か、あるいは溶融状態のプレポリマー(例えばニーダー内のプレポリマー)に添加することが実用的である。
また、カップリング反応後の脂肪族ポリエステル樹脂の数平均分子量は10000以上であって、これにより脂肪族ポリエステル樹脂として、また脂肪族ポリエステル樹脂組成物としても機械的性質が充分なものとなる。
このような脂肪族ポリエステル樹脂を、直接フラクチャリング材料の中の支持体であるプロッパント材料としてもよいが、前記脂肪族ポリエステル樹脂製の製品の廃棄物を、フラクチャリング材料の中の支持体であるプロッパント材料の原料として使用することができる。
一方、前記脂肪族ポリエステル樹脂は、支持材を被覆する被膜を形成し摩擦を低減する摩擦低減剤として、フラクチャリング材料に用いることができる。
前記脂肪族ポリエステル樹脂は、様々な方法で支持材を被覆することができる。例えば、前記脂肪族ポリエステル樹脂の融点よりも高い温度まで支持材を予熱し、そこに前記脂肪族ポリエステル樹脂の例えば粉末を接触させることによって、支持材の表面を前記脂肪族ポリエステル樹脂の被膜で被覆することができる。
前記脂肪族ポリエステル樹脂は、融点以上に加熱され溶融されるが、溶融は通常は融点よりも10℃以上高い温度で行われる。また、溶融にはドラム、乳化機、押出機などが用いられる。さらに、後述する水系分散液を用いて、支持材に前記脂肪族ポリエステル樹脂の被膜を形成することもできる。
〔前記脂肪族ポリエステル樹脂を粘性付与剤として用いる場合について〕
前記脂肪族ポリエステル樹脂は、水に分散させて水系分散液(以下エマルジョンと記すこともある)にすることによって、ベース流体へ粘性を付与する粘性付与剤としてフラクチャリング材料において用いることができる。なお、前記脂肪族ポリエステル樹脂の原料であるグリコールや脂肪族二塩基酸(又はその誘導体)の種類は、前記脂肪族ポリエステル樹脂をプロッパント材料として用いる場合と同様である。
このエマルジョンは、前記脂肪族ポリエステル樹脂の溶融物と乳化剤の水溶液とを混合、混練することにより得られ、20℃における粘度は1000mPa・s以上である。このエマルジョンには、必要に応じて種々の化学物質を添加剤として混合してもよい。
乳化剤は、その1.0質量%水溶液の20℃における表面張力が63mN/m以下(好ましくは60mN/m以下、さらに好ましくは55mN/m以下)となるものである。表面張力が63mN/mを超えると、前記脂肪族ポリエステル樹脂の微粒子化が不充分となり、結果として直径が数ミリメーターにもおよぶ粗大粒子が形成されたり、あるいは固相と水相とが分離してしまい、安定なエマルジョンが得られないおそれがある。
乳化剤としては界面活性剤があげられ、その例としては、ラウリル硫酸ソーダ、オレイン酸ソーダ等の炭素数4〜18の脂肪酸塩を含む陰イオン性界面活性剤、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド等の陽イオン性界面活性剤、N−ラウリルグリシン等の両性イオン性界面活性剤、ノニルフェノールポリエチレンオキサイド等の非イオン性界面活性剤があげられる。
非イオン性界面活性剤には、食品添加物として用いられているグリセリン脂肪酸エステル、しょ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、レシチン等、あるいはそれらへのエチレンオキサイド付加物も含まれる。
さらに、乳化剤としては、以下にあげるような水溶性高分子物質等も使用可能である。例えば、澱粉、カゼイン、ゼラチン等の他、食品添加物として増粘に使われているアルギン酸、アルギン酸塩、ローカストビーンガム、グァーガム、アラビアガム、キサンタンガム、寒天、カラギーナン、結晶性セルローズ、ペクチンといった天然高分子物質や、ハイドロオキシエチルセルローズ、メチルセルローズ、カルボキシメチルセルローズ、アルギン酸プロピレングリコールエステル、陽イオン性変性澱粉等の半合成高分子物質があげられる。
また、乳化剤としては、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアマイド、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸、ポリビニルビリジン、ポリエチレンイミン等の合成高分子物質があげられる。これらの合成高分子物質は、陰イオン性若しくは陽イオン性又は疎水性の構造単位を持つように共重合又は変性されたものでもよい。
さらに、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、スチレン等のビニル単量体と、アクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸等の酸性単量体、ビニルビリジン、メタクリル酸ジメチルアミノエチルエステル等の塩基性単量体、アクリル酸ハイドロオキシエチル、メタクリル酸ハイドロオキシエチル等の水酸基含有単量体のうちのいずれかの単量体との共重合体である合成高分子物質でもよい。さらに、前記脂肪族ポリエステル樹脂を無水コハク酸、無水マレイン酸、ポリエチレンオキサイド等で変性した合成高分子物質でもよい。
なお、得られるエマルジョンの生分解性が阻害されない範囲ならば、上記の種々の乳化剤以外の界面活性物質を補助的に添加しても差支えない。
これらの乳化剤のうち好ましいものとしては、生分解性も考慮すると、酢酸基密集型を含む部分鹸化ポリビニルアルコール、スルホン酸基、カルボキシル基、アミノ基などを含有する部分鹸化ポリビニルアルコール、末端疎水基含有部分鹸化ポリビニルアルコール、あるいはカルボキシル基、ポリオキシエチレン残基などの付加で水溶性とされた生分解性ポリエステルがあげられる。そして、特に好ましいものとしては、ポリビニルアルコール類又はポリオキシエチレン鎖を持つ非イオン性界面活性剤があげられる。
なお、溶融状態の前記脂肪族ポリエステル樹脂の粘度をηo (ただし、ここでいう粘度ηo とは、前記脂肪族ポリエステル樹脂の溶融開始温度(Tm)+30℃の温度下における粘度を意味する)、乳化剤水溶液の粘度をηw (ただし、ここでいう粘度ηw とは80℃の温度下における粘度を意味する)とした場合に、ηo /ηw は150以下であることが好ましく、100以下であることがより好ましく、60以下であることがさらに好ましい。
ηo /ηw が上記範囲外であると、粗大粒子が多く生成されたり、あるいは固相と水相とが分離したり、さらにはW/O型、例えば常温固形など目的物が得られない場合が多い。なお、ηo /ηw を上記範囲内とするために、前記脂肪族ポリエステル樹脂の溶融物に可塑剤を添加したり、乳化剤水溶液に増粘剤を加えたりすることも可能である。
乳化剤の使用量は、前記脂肪族ポリエステル樹脂に対し5質量%超、例えば6質量%以上25質量%以下とすることが好ましい。
次に、エマルジョンの製造方法について説明する。エマルジョンの製造においては、前記脂肪族ポリエステル樹脂の溶融物と乳化剤水溶液の調製が必要であるが、乳化剤水溶液は乳化剤を水に溶解する常法により得られるので、前記脂肪族ポリエステル樹脂の溶融物の調製について詳細に説明する。
前記脂肪族ポリエステル樹脂は、その融点以上に加熱されて溶融されるが、溶融は通常は融点よりも10℃以上高い温度で行われる。また、溶融にはドラム、乳化機、押出機などが用いられる。得られた溶融物中の揮発分は0.3質量%以下にすることが望ましい。0.3質量%を超えると、乳化剤水溶液との混和により発泡し、充分な剪断磨砕が行われず粒子が粗大化するおそれがある。
次に、前記脂肪族ポリエステル樹脂の溶融物と乳化剤の水溶液とを混合して、溶融物を乳化剤の水溶液中に分散させエマルジョンとする方法について説明する。
前記脂肪族ポリエステル樹脂の溶融物と乳化剤の水溶液とを混合すると、初期には、溶融物を連続相、乳化剤水溶液を分散相とするいわゆるW/O型分散系が生成し、次いで混練継続により相の転換が起り、乳化剤水溶液を連続相、溶融物を分散相とするO/W型分散系になると考えられ、転相直前に粘度が急峻的に増加するほど微粒子が得られることが認められている。
上記粘度を急峻的に且つ大きく上昇させるには、転相前のW/O分散系における水相成分を微粒子化することが有効であり、そのためには大きな剪断力が要求される。この微粒子化に必要な大きな剪断力を生じせしめるための分散手段としては、ホモミキサー、ホモジナイザー、コロイドミル、各種押出機、ニーダールーダー、変形ヘリカル翼を持つ高粘度液用撹拌機などがあげられる。これらの中でも、局所混合を行う高速分散機と自転及び公転することにより全体を万遍なく撹拌するブレードとからなる高性能分散機(以下高性能分散機と記す)や、二軸同方向押出機、又は臼式押出機のようなスクリュー押出機が好適である。
いずれの分散手段を用いる場合でも、前記脂肪族ポリエステル樹脂の溶融物に撹拌下において乳化剤水溶液を添加するか、あるいは両者を一度に仕込んでから撹拌するかして、混合分散は開始される。押出機の場合は前者の方法が好ましく、前記高性能分散機の場合は前者、後者のいずれでも行い得る。
二軸同方向押出機や臼式押出機を用いる場合には、例えば、前記脂肪族ポリエステル樹脂を押出機のホッパー部分から連続的に供給し、これとは別に乳化剤水溶液を押出機の樹脂溶融箇所以外の任意の位置に設置した供給口より連続的に圧入して、前記脂肪族ポリエステル樹脂の溶融物と、乳化剤水溶液との混合、混練とを行うことにより、エマルジョンが連続的に製造される。この際には、必要に応じて、乳化剤水溶液の供給口を2ヶ所以上の複数箇所としてもよい。あるいは、前記脂肪族ポリエステル樹脂と乳化剤水溶液に加えて、さらに100℃以下の水を押出機に供給して混合、混練を行うことにより、エマルジョンを製造してもよい。
高性能分散機を用いる場合には、例えば、前記脂肪族ポリエステル樹脂を高性能分散機に仕込んで加熱溶融せしめ、撹拌下にこれに乳化剤水溶液を一度に又は滴々添加することによって、エマルジョンが得られる。前記脂肪族ポリエステル樹脂の融点が100℃以上である場合には、可塑剤の添加で融点を下げるか、あるいは高性能分散機全体を耐圧構造化することによって、同様に実施することができる。
以上のように溶融乳化法で得られる前記脂肪族ポリエステル樹脂のエマルジョンは、20℃における粘度が103 mPa・s以上104 mPa・s以下であり、より好ましくは1500mPa・s以上104 mPa・s以下、さらに好ましくは2000mPa・s以上104 mPa・s以下である。
この粘度は、用途によって適宜決定すればよく、必要に応じて希釈してもよい。このエマルジョン中には、前記脂肪族ポリエステル樹脂がミクロンオーダーからサブミクロンオーダーの微粒子として存在している。ピーク粒子径は10μm以下であり、使用目的にもよるが、より好ましくは5μm以下、さらに好ましくは3μm以下である。
なお、エマルジョンの放置によるエマルジョン粒子の沈降又は水浮きなどのトラブルは、粒子径を勘案したエマルジョンの粘度の調整で防止される。また、エマルジョンのpHは、多くは3〜7の間にある。pHが3未満の酸性又は7を超えるアルカリ性では、加水分解を考慮して放置条件(温度、時間)に留意する必要がある。
以下に実施例を示して、本発明をさらに詳細に説明する。
(実施例1)
窒素置換を施した容量700Lの反応器に、1,4−ブタンジオール183kg、コハク酸224kgを仕込んだ。窒素気流中において昇温を行い、192〜220℃にて3.5時間、さらに窒素を停止して20〜2mmHgの減圧下で3.5時間にわたり脱水縮合によるエステル化反応を行った。採取された試料は、酸価が9.2mg/g、数平均分子量(Mn)が5160、質量平均分子量(Mw)が10670であった。
引き続いて、常圧の窒素気流下で、触媒のテトライソプロポキシチタン34gを添加した。そして、温度を215〜220℃に上昇させ、15〜0.2mmHgの減圧下で5.5時間にわたり脱グリコール反応を行った。採取された試料は、数平均分子量(Mn)が16800、質量平均分子量(Mw)が43600であった。このポリエステル(A1)の収量は、凝縮水を除くと339kgであった。
ポリエステル(A1)339kgを入れた反応器にヘキサメチレンジイソシアナート5420gを添加し、180〜200℃で1時間カップリング反応を行った。粘度は急速に増大したが、ゲル化は生じなかった。次いで、抗酸化剤としてイルガノックス1010(チバガイギー社製)を1700g及び滑剤としてステアリン酸カルシウムを1700g加えて、さらに30分間撹拌を続けた。得られた反応生成物を冷却固化した後に粉砕し、90℃で6時間にわたって真空乾燥した。得られたポリエステル(B1)の収量は300kgであった。
ポリエステル(B1)は、わずかにアイボリー調の白色ワックス状結晶で、融点が110℃、数平均分子量(Mn)が35500、質量平均分子量(Mw)が170000、190℃でのメルトフローレート(MFR)が1.0g/10分、濃度10質量%オルトクロロフェノール溶液の粘度が230ポアズであった。また、温度190℃、剪断速度100sec-1における溶融粘度は1.5×104 ポアズであった。
以降の各実施例においては、平均分子量の測定は、昭和電工株式会社製のGPC装置Shodex GPC System−11を用いて行った。溶媒には、CF3 COONaのヘキサフロロイソプロピルアルコール溶液(濃度5ミリモル/L)を用い、該溶媒に試料を濃度0.1質量%で溶解した溶液を試料溶液として、平均分子量の測定を行った。検量線には、昭和電工株式会社製のポリメチルメタクリレート(PMMA)標準サンプルShodex Standard M−75を用いた。また、MFRは、株式会社安田精機製作所製のMELTFLOW INDEX TESTERを用いて測定した。条件は、荷重が2.16kg、温度190℃での予熱が6分である。
次いで、内容積5.6Lの撹拌機付きオートクレーブに純水2200gを入れ、さらに、タイラー規格で28メッシュから35メッシュの間にあるポリエステル(B1)の粒子2200g、酸化マグネシウム7g、ジラウリルチオジプロピオネート0.22gを投入した。これらを撹拌しながら、プロパン44g、ペンタン186gを圧入し、100℃まで昇温して1.5時間反応させ、次にオートクレーブ内の温度を30℃まで冷却した後に、オートクレーブから内容物を取り出し、ポリエステル(B1)の発泡性粒子を得た。
得られた発泡性粒子を水蒸気による加熱で10倍に発泡させたものを予備発泡粒子とし、この予備発泡粒子を乾燥熟成後、さらに水蒸気により加熱発泡させた。得られたポリエステル(B1)を50倍に発泡した場合の気泡サイズの分布幅は、0.08〜0.30mm、密度は真密度として0.024g/cm2 であった。
この発泡体をさらに粉砕し、目の開きが2mmのフルイを用いてフルイ篩い分けを行い、該フルイを通過した粒状体を仮比重1.2の土壌中に一様に混入した。混入後の土壌の仮比重を0.96としたものを経時的に観察したところ、10ケ月で前記発泡体は完全に分解して土壌に空洞を形成し、発泡体の痕跡は認められなかった。上記より、ポリエステル(B1)の発泡体は生分解性を有するプロッパント材料として有効であることが示された。
(実施例2)
実施例1で得られたポリエステル(B1)100質量部に対し、油かす10質量部を配合した混合物を、エクストルーダーにて水中に押出し、カッターで裁断して、直径2mmのペレットとした。このペレットを実施例1と同様に土壌中に一様に混入し、混入後の土壌の仮比重を1.15としたものを経時的に観察したところ、9ケ月でペレットは完全に分解し、土壌中に多数の空洞ができていた。上記より、ポリエステル(B1)のペレットは生分解性を有するプロッパント材料として有効であることが示された。
(実施例3)
窒素置換を施した容量700Lの反応器に、1,4−ブタンジオール196kg、コハク酸204kgを仕込んだ。窒素気流下において昇温を行い、190〜220℃にて5.0時間、さらに窒素を停止して15〜2mmHgの減圧下で3.5時間にわたり脱水縮合によるエステル化反応を行った。採取された試料は、酸価が8.5mg/g、数平均分子量(Mn)が5200、質量平均分子量(Mw)が10100であった。
引き続いて、常圧の窒素気流下で、触媒のテトライソプロポキシチタン30gを添加した。そして、温度を215〜220℃に上昇させ、5〜0.2mmHgの減圧下にて15時間にわたり脱グリコール反応を行った。採取された試料は、数平均分子量(Mn)が23300、質量平均分子量(Mw)が89300であった。このポリエステルの収量は、凝縮水を除くと327kgであった。
ポリエステル327kgを180℃に冷却し、その反応器に着色防止剤として亜リン酸41g、抗酸化剤としてイルガノックスB225(チバガイギー社製)を327g、滑剤としてステアリン酸カルシウムを327g加えて、さらに30分間撹拌を続けた。この反応生成物を90℃で6時間にわたって真空乾燥した。得られたポリエステルの収量は、約310kgであった。
得られたポリエステル(B2)は、白色固体状結晶で、融点が120℃、数平均分子量(Mn)が23100、質量平均分子量(Mw)が90500、MFR(190℃)が約500g/10分、濃度10質量%オルトクロロフェノール溶液の粘度が20ポアズであった。また、温度190℃、剪断速度1〜10sec-1における溶融粘度は100ポアズであった。平均分子量の測定は、実施例1と同様にして行った。また、溶融粘度は、東京計器株式会社製の回転粘度計を用いて測定した。
次いで、内容積5.6Lの撹拌機付きオートクレーブに純水2200gを入れ、さらに、タイラー規格で9メッシュから12メッシュの間にあるポリエステル(B2)の粒子2200g、ドデシルベンゼンスルフォン酸ソーダ0.6gを投入した。これらを撹拌しながら、プロパン44g、ペンタン186gを圧入し、100℃まで昇温して1.5時間反応させ、次にオートクレーブ内の温度を30℃まで冷却した後に、オートクレーブから内容物を取り出し、脱水乾燥してポリエステル(B2)の発泡性粒子を得た。
得られた発泡性粒子を10℃で2週間保存した後、水蒸気によって10倍に発泡したものを予備発泡粒子とした。この予備発泡粒子を24時間放置した後、型寸法300mm×400mm×100mmの金型に充填し、水蒸気により加熱成形した。得られたポリエステル(B2)を50倍に発泡した場合の気泡サイズの分布幅は、0.07〜0.30mmであった。
この発泡体をさらに粉砕し、目の開きが2mmのフルイを用いてフルイ篩い分けを行った。該フルイを通過した粒状体を実施例1と同じ土壌中に一様に混入し、混入後の土壌の仮比重を0.98としたものを経時的に観察したところ、9ケ月で前記粒状体は完全に分解し、土壌中に多数の空洞が認められた。上記より、ポリエステル(B2)の発泡体は生分解性を有するプロッパント材料として有効であることが示された。
(実施例4)
実施例3で得られたポリエステル(B2)をエクストルーダーにて水中に押出し、カッターで裁断して直径2mmのペレットとした。このペレットを実施例1と同じ土壌中に一様に混入し、混入後の土壌の仮比重を1.10としたものを経時的に観察したところ、10ケ月でペレットは完全に分解し、土壌中に多数の空洞ができていた。上記より、ポリエステル(B2)のペレットは生分解性を有するプロッパント材料として有効であることが示された。
(実施例5)
二軸同方向混練押出機(株式会社日本製鋼所製の商品名スーパーテックス44αII、シリンダー径47mm、深溝タイプ、L/D=52.5)にホッパーからポリブチレンサクシネート(昭和電工株式会社製の商品名ビオノーレ1040の未増粘品、融点Tm:115℃、MFR:46.5)のペレットを10kg/hの割合で連続的に供給するとともに、樹脂ペレット供給部から先端側に4ブロック目のシリンダー部に設けた乳化剤水溶液投入口から、80℃に保持した部分鹸化ポリビニルアルコール(クラレ株式会社製の商品名クラレポバール220EG、平均分子量:98080、1質量%水溶液の20℃における表面張力:52.0mN/m)の15質量%水溶液を、プランジャーポンプを用いて14kg/hの流量で圧入し、混合、混練しつつ連続的に押出した。
シリンダー設定温度は、樹脂ペレット供給部50℃、樹脂溶融部155℃、乳化剤水溶液投入部から溶融物吐出部分までの部分100℃とした。また、145℃における樹脂溶融物の粘度ηo は13000mPa・s、80℃における乳化剤水溶液の粘度ηw は1800mPa・s/であり、両者の比ηo /ηw は7.2であった。
生成押出物は粘稠、乳白色であり、直流通電によって、水相を連続相としたエマルジョンであることを示した。これを室温に冷却したところ、ピーク粒子径1.79μm、固形分濃度57.8質量%、20℃における粘度183200mPa・sのエマルジョンであり、放置安定性も良好であった。また、35日間の微生物分解性試験(生分解性試験)の結果、分解率は70質量%であった。なお、ピーク粒子径は、リーズアンドノースラップ社製の商品名マイクロトラック分析計FRAを用いた動的光散乱法により粒子径分布曲線を求め、最大度数に対応する粒子径をピーク粒子径とした。上記より、得られたエマルジョンは、生分解性を有する粘性付与剤として有効であることが示された。
なお、微生物分解性試験は、以下の方法により行った。最大容水量の50質量%含水比とした試験土壌中に、エマルジョンを#36バーコーダーで上質紙(70g/m2 )に塗布し130℃で3分間乾燥して得た試料(3cm×5cm)を埋め込み、25℃に保持した。そして、試料の質量減少率を測定することにより生分解性を評価した。試験土壌には、茨城県東茨城郡羽鳥美野里町由木のSDSみのり農場の土壌(火山灰灰土)を用いた。試料と試験土壌との質量比は1:400とした。
また、乳化剤水溶液及びエマルジョンの粘度ηw は、B型粘度計(株式会社東京計器製の商品名BH型又はBM型)を用いて回転速度10rpmで測定するか、あるいは回転速度と粘度との関係(グラフ)を取得し、そのグラフ上から回転速度10rpmにおける粘度を求めることにより得た。
さらに、ポリエステル樹脂の溶融物の粘度ηo は、株式会社東洋精機製作所製の毛細管式粘度計CAPIROGRAPH,1B型を用いて所定温度での剪断速度と粘度との関係(グラフ)を取得し、そのグラフ上から剪断速度103-1(実施例における乳化条件)における粘度を求めることにより得た。
(実施例6)
二軸同方向押出機(株式会社日本製鋼所製のスーパーテックス65XCT、シリンダー径69mm、L/D=42)にホッパーからポリブチレンサクシネートアジペート(昭和電工株式会社製の商品名ビオノーレ#3050、融点Tm:95℃、MFR:80)のペレットを40kg/hの割合で連続的に供給するとともに、樹脂ペレット供給部から先端側に4ブロック目のシリンダー部に設けた乳化剤水溶液投入口から、80℃に保持した部分鹸化ポリビニルアルコール(実施例5と同じクラレポバール220EG)の15質量%水溶液を、プランジャーポンプを用いて18kg/hの流量で圧入し、さらに樹脂ペレット供給部から先端側に8ブロック目のシリンダー部に設けた水投入口から、80℃に保持した水をプランジャーポンプを用いて22kg/hの流量で圧入し、混合、混練しつつ連続的に押出し乳化した。
シリンダー設定温度は、樹脂ペレット供給部50℃、樹脂溶融部140℃、乳化剤水溶液投入部から溶融物吐出部分までの部分100℃とした。また、125℃における樹脂の溶融粘度ηo は50000mPa・s、80℃における乳化剤水溶液の粘度ηw は1800mPa・sであり、両者の比ηo /ηw は27.8であった。
得られた生成押出物を室温に冷却したところ、ピーク粒子径1.64μm、固形分濃度56.3質量%、20℃における粘度6850mPa・sのエマルジョンであり、放置安定性も良好であった。また、35日間の微生物分解性試験の結果、分解率は95質量%であった。なお、ピーク粒子径は、リーズアンドノースラップ社製の商品名マイクロトラック分析計FRAを用いた動的光散乱法により粒子径分布曲線を求め、最大度数に対応する粒子径をピーク粒子径とした。上記より、得られたエマルジョンは、生分解性を有する粘性付与剤として有効であることが示された。
(実施例7〜9)
生分解性ポリエステル樹脂、乳化剤の種類を変更した以外は実施例6と同様にして押出生成物を得た。詳細は表1に示す通りである。この結果より、得られたエマルジョンは、生分解性を有する粘性付与剤として有効であることが示された。
(実施例10)
生分解性ポリエステル樹脂の種類をポリ乳酸に変更した以外は実施例6と同様にして、性状の安定な押出生成物を得た。詳細は表1に示す通りである。なお、ポリ乳酸は、以下のようにして脱水縮合して得られたものである。
冷却器、温度計、攪拌機、及び窒素ガス導入キャピラリを備えた容量500mLの3つ口フラスコに、市販のL−乳酸(90質量%水溶液)500gを仕込み、窒素ガスを吹き込みながら常圧、180℃で4時間脱水反応させた後、真空ポンプにて徐々に2660Paまで減圧し、さらに2時間脱水反応させた。その後、さらに温度を徐々に上げるとともに圧力を徐々に下げて、最終的に260℃、266Paで8時間脱水反応させた。
得られたポリ乳酸の融点は160℃であったが、MFRは流下が速すぎて測定不可であった。また、微生物分解性試験は58℃の堆肥中で35日間行い、その結果、分解率は85質量%であった。上記より、得られたエマルジョンは、生分解性を有する粘性付与剤として有効であることが示された。
(実施例11)
セバシン酸と4−メチル−1,7−ヘプタンジオールとをモル比1.00:1.05で仕込んで脱水反応させ、次いで脱グリコール反応させた。さらに、これにヘキサメチレンジアミンを加えてカップリング反応させ、鎖延長して、生分解性ポリエステル樹脂を得た。得られた生分解性ポリエステル樹脂の数平均分子量は46300、融点Tmは32℃であり、MFRは流下が速すぎて測定不可であった。
この生分解性ポリエステル樹脂2kgを高性能分散機(特殊機化工業株式会社製の商品名T.K.ハイビスディスパーミックス305)に仕込み、加温して内温を80℃とした。これに、80℃に保持したポリエチレンオキサイド系界面活性剤ノイゲンDS−601(第一工業製薬株式会社製のポリオキシエチレンジステアレート)の50質量%水溶液(1質量%水溶液の20℃における表面張力は56.4mN/m)を滴下しながら撹拌した。高性能分散機の撹拌条件(回転速度)は、ブレード140rpm、ディスパー10000rpmとした。すると、水溶液を860g添加したところで転相が起った。次いで、イオン交換水を1600g加え、冷却して生成物を得た。
125℃における生分解性ポリエステル樹脂の溶融粘度ηo は4680mPa・s、80℃における乳化剤水溶液の粘度ηw は82mPa・sであり、両者の比ηo /ηw は57.0であった。また、生成物は放置安定性良好のエマルジョンであり、ピーク粒子径は0.8μm、固形分濃度は54.5質量%、20℃における粘度は12300mPa・sであった。さらに、35日間の微生物分解性試験の結果、分解率は80質量%であった。上記より、得られたエマルジョンは、生分解性を有する粘性付与剤として有効であることが示された。
(実施例12,13)
生分解性ポリエステル樹脂及び乳化剤の種類を変更した以外は実施例11と同様にして高性能分散機によるエマルジョン調製を行い、生成物を得た。詳細は表1に示す通りである。生成物について35日間の微生物分解性試験を行った結果、実施例12は分解率が95質量%で、実施例13は分解率が70質量%であった。上記より、得られたエマルジョンは、生分解性を有する粘性付与剤として有効であることが示された。
なお、実施例12ではポリカプロラクトン(ダイセル化学工業株式会社製の商品名プラクセルH−7、融点Tm:60℃、MFR:129)を使用し、また、実施例13ではコハク酸、1,4−ブタンジオール、dl−乳酸からなるコポリエステル樹脂を使用した。このコポリエステル樹脂は、モノマーとしてコハク酸、1,4−ブタンジオール、dl−乳酸をそれぞれ等モル使用し(コハク酸と1,4−ブタンジオールが、本発明の構成用件である主モノマーに相当し、dl−乳酸がコモノマーに相当する)、触媒としてテトラプロポキシチタン(使用量は、全モノマーの合計量に対して0.05質量%である)を使用したこと以外は、実施例6のポリ乳酸と同一条件で重合して調製したものである。
Figure 2014189989
ここで、表1中の生分解性ポリエステル樹脂の名称について説明する。PBSはポリブチレンサクシネート、PBSAはポリブチレンサクシネートアジペート、PCLはポリカプロラクトン、PLはポリ乳酸、PHSは4−メチル−1,7−ヘプタンジオールとセバシン酸から得られるポリエステル樹脂、PBSLはポリブチレンサクシネートラクテートである。
次に、表1中の乳化剤の名称について説明する。PVA(A)はクラレポバール220EG、PVA(B)はクラレポバールS−2217、NGはノイゲンDS−601、CASはカゼイン水溶液(pH8.0、pH調整剤としてアンモニア水とミルクカゼインを含有する)、PSは下記のようにして得た調整品である。
撹拌機、温度計、滴下ロート、枝付き還留器、コンデンサー、及び窒素ガス導入口を備えた容量10Lのステンレス製円筒形セパラブル反応機に、トルエン5kgと生分解性ポリエステル樹脂(ポリブチレンサクシネート、数平均分子量10000、水酸基価5.6)1kgを仕込み、窒素気流中にて撹拌しながらフラスコ内を110℃に至らしめ、還流下に水分を反応系外へ移した。30分後、水分の移行が見られなくなったらフラスコ内を80℃に冷却し、ヘキサメチレンジイソシアネート320gを滴下ロートから一度に加え撹拌を続けた。2時間後にジブチル錫ジラウレート6gを加え、さらに3時間撹拌を続けた。次に、フラスコ内を減圧にし、未反応のヘキサメチレンジイソシアネートを除去した。次に、分子量2200のポリエチレンオキサイド440gを固形のまま加え、80℃に保ちつつ5時間撹拌を続けた後、減圧下にトルエンの留去を行った。続いて、イオン交換水6.4kgを加え、全体が均一に溶解してから室温にまで冷却した。反応生成物(乳化剤PS)は、固形分濃度20.1質量%の粘稠な溶液であり、該固形分の数平均分子量は15000であった。また、該固形分の1質量%水溶液の20℃における表面張力は45.3mN/mであった。
また、表1中のγは、乳化剤の1質量%水溶液の20℃における表面張力である。さらに、生成物の状態の欄の○印は、安定なエマルジョンであることを示し、△印は、凝集物や粗大粒子を多く含有するエマルジョンであることを示し、×印は、乳化せず粥状ないしシャーベット状であることを示す。さらに、放置安定性の欄の○印は、室温下での3ヶ月間の放置によっても変化がないことを示す。
さらに、表1中の装置の欄に記載の名称について説明する。Ext1は株式会社日本製鋼所製の二軸同方向混練押出機(商品名スーパーテックス44αII)であり、Ext2は株式会社日本製鋼所製の二軸同方向押出機(商品名スーパーテックス65XCT)であり、Dmixは特殊機化工業株式会社製の高性能分散機(商品名T.K.ハイビスディスパーミックス305)である。

Claims (7)

  1. 生分解性ポリエステル樹脂を含有すること特徴とするフラクチャリング材料。
  2. 前記生分解性ポリエステル樹脂は、グリコールと脂肪族二塩基酸又はその誘導体とから合成された脂肪族ポリエステル樹脂であること特徴とする請求項1に記載のフラクチャリング材料。
  3. 前記脂肪族ポリエステル樹脂は、グリコールと脂肪族二塩基酸又はその誘導体とから合成された数平均分子量5000以上のプレポリマー100質量部に、カップリング剤0.1質量部以上5質量部以下を反応させて、数平均分子量10000以上としたものであること特徴とする請求項2に記載のフラクチャリング材料。
  4. 前記生分解性ポリエステル樹脂は、グリコールと脂肪族二塩基酸又はその誘導体とを主モノマーとし、この主モノマーとコモノマーとから合成された脂肪族ポリエステル樹脂であること特徴とする請求項1に記載のフラクチャリング材料。
  5. 前記脂肪族ポリエステル樹脂は、前記主モノマーと前記コモノマーとから合成された数平均分子量5000以上のプレポリマー100質量部に、カップリング剤0.1質量部以上5質量部以下を反応させて、数平均分子量10000以上としたものであること特徴とする請求項4に記載のフラクチャリング材料。
  6. 前記脂肪族ポリエステル樹脂は、その溶融物と、1.0質量%水溶液の20℃における表面張力が63mN/m以下である乳化剤の水溶液と、を混合することにより、20℃における粘度が1000mPa・s以上の水系分散液を形成可能なものであること特徴とする請求項2又は請求項4に記載のフラクチャリング材料。
  7. 水及び前記生分解性ポリエステル樹脂以外のプロッパント材料をさらに含有すること特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載のフラクチャリング材料。
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