JP2014188539A - 亜鉛系めっき鋼板の抵抗スポット溶接方法 - Google Patents

亜鉛系めっき鋼板の抵抗スポット溶接方法 Download PDF

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Abstract

【課題】散りの発生や溶接部における穴あきや割れ等の欠陥の発生を防止でき、高い連続打点性が得られる亜鉛系めっき鋼板の抵抗スポット溶接方法を提供する。
【解決手段】亜鉛系めっきが施された第1の鋼板1Aと、第1の鋼板1Aよりも厚く非めっきあるいは亜鉛系めっきが施された第2の鋼板1Bとを重ね合わせて抵抗スポット溶接する際、第1の鋼板1Aと第2の鋼板1Bとの板厚比{1.2≦t2/t1≦3.0}、第1の鋼板1Aおよび第2の鋼板1Bの平均板厚{tm1=(t1+t2)/2}で表される平均板厚tm1とした時に、第1の鋼板1Aと第2の鋼板1Bの間を、溶接電流WC{0.80×Ie≦WC≦0.98×Ie}、溶接時間WT1{(10×t1+2)/60≦WT1≦(10×tm1+2)/50}、保持時間HT{HT≦0.2}、スポット溶接時の電極の加圧力EF1{1.96×t1≦EF1≦3.19×tm1}で表される範囲とする。
【選択図】図1

Description

本発明は、亜鉛系めっき鋼板の抵抗スポット溶接方法に関するものであり、特に、自動車用部品の製造や車体の組立等の工程で使用される抵抗スポット溶接方法において、溶接時の散りの発生や溶接部における欠陥の発生を防止し、連続打点性を向上させることができる亜鉛系めっき鋼板の抵抗スポット溶接方法に関するものである。
近年、自動車分野では、車体の耐食性向上を目的として、合金化溶融亜鉛めっき鋼板(以下、GA鋼板と略称することがある)や、溶融亜鉛めっき鋼板(以下、GI鋼板と略称することがある)、電気亜鉛めっき鋼板(以下、EG鋼板と略称することがある)等の亜鉛系めっき鋼板が使用されている。また、最近では、低燃費化やCO排出量削減を目的とした車体の軽量化および衝突安全性向上のために、自動車の車体や部品等に、板厚の薄い高強度鋼板が使用されているが、このような高強度鋼板でも、亜鉛系のめっきが被覆された鋼板が使用されている。
一方、自動車用部品の製造や車体の組立てでは、抵抗スポット溶接(以下、スポット溶接と略称することがある)が主に用いられているが、亜鉛系めっき鋼板をスポット溶接した場合には、以下のような問題が生じる。
スポット溶接部(溶接継手)の代表的な品質指標としては、引張強さと疲労強度が挙げられる。また、溶接継手の引張強さには、せん断方向に引張荷重を負荷して測定する引張せん断強さ(TSS)と、剥離方向に引張荷重を負荷して測定する十字引張強さ(CTS)がある。また、溶接継手の疲労強度には、せん断方向に引張荷重を負荷して測定する引張せん断疲労強度と、剥離方向に引張荷重を負荷して測定する十字引張疲労強度がある。一般に、引張強さも疲労強度も、スポット溶接部に欠陥(割れや穴等)が無い場合には、設計上問題無い十分に高い値が得られるが、欠陥や割れが存在する場合には、著しい低下が生じる場合がある。
亜鉛系めっき鋼板のスポット溶接では、従来から良く知られているように、スポット溶接時に銅電極の先端が、めっきである亜鉛と反応して合金化する。このCu−Zn合金は非常に硬くて脆いことから、連続打点時に脱落して電極先端径が拡大し、電流密度が低下してナゲット径が徐々に小さくなり、やがてナゲットが形成されなくなるという問題が生じる。また、銅電極の先端が合金化すると、その部分の電気抵抗が増加して、電極/鋼板間での発熱量が増加する。さらに、合金化した部分の熱伝導度が低下することから、水冷された電極での冷却効果が下がり、その結果、溶接時にめっき鋼板の表面温度や溶接部全体の温度が上昇し、その結果、散りが発生したり、過大発熱によって穴あきや割れ等の欠陥が生じることがある。
従来、めっき鋼板のスポット溶接において連続打点性を向上させる技術としては、電極寿命を改善する技術がほとんどであり、数多くの提案がなされている。例えば、特許文献1には、めっき層の表面の80%以上が3μm以下の結晶粒の合金層で構成されたGA鋼板の表面に、ZnOを主体とする酸化皮膜を形成させることによってスポット溶接性を改善する技術が開示されている。
また、特許文献2には、GA鋼板のめっき層最表層に存在する金属Zn(η相)およびAlを低減・除去することにより、電極チップ表面の発熱と電極チップへの金属Znの拡散を抑制し、連続打点性を改善する技術が開示されている。
また、特許文献3には、GAめっき層中のAl量を低減するとともに、Alを酸化物として無害化することにより、電極寿命を改善する技術が開示されている。
また、特許文献4には、GI鋼板またはGA鋼板のめっき層表面にFe−P−Oめっき層を形成させることにより、スポット溶接性を改善する技術が開示されている。
さらに、特許文献5および特許文献6には、スポット溶接用の電極の電極先端部あるいは芯部を電極本体とは異なる材料とすることにより、電極寿命を向上させる技術が開示されている。
また、特許文献7には、めっき鋼板と非めっき鋼板のスポット溶接において、規定された目付量、板厚の鋼板、アルミナ分散銅の電極を使用し、規定された電流でスポット溶接を行うことにより、電極寿命を向上させる方法が開示されている。
特開昭63−230861号公報 特開平10−330902号公報 特開平04−021750号公報 特開平08−269780号公報 特開平05−305456号公報 特開平06−179082号公報 特開2005−279679号公報
しかしながら、特許文献1〜3の技術はGA鋼板に関するものであり、めっき層が容易に溶融するGI鋼板には適用できないという問題がある。また、GA鋼板においては、特許文献3に記載の技術のように、Alを低減した場合に、めっき層中で硬くて脆い合金層の発達を促進する他、めっき時にドロス付着が起こり易くなり、めっき性状の低下を招くという問題がある。
また、特許文献4の技術は、めっき層の変更を伴うものであり、通常のGI鋼板の溶接性を改善する技術ではない。
また、特許文献5および特許文献6に記載の技術は、特殊な構成の電極を用いているため、汎用性に欠けるという問題がある。そのため、GI鋼板をスポット溶接する場合には、電極寿命が短い分、頻繁に電極の交換を行うことで対応しているのが実情である。
また、特許文献7に記載の技術は、溶接条件等によって連続打点性を向上させる技術であるが、この技術をもってしても、全ての鋼種、板厚、板組みで、連続打点性を向上させるのは困難である。
さらに加えて、特許文献1〜7に記載の技術は、いずれも連続打点性を向上させることを目的とする技術ではあるものの、散りの発生や穴あき、割れ等の欠陥の発生を防止することは困難である。
ここで、図5、6に、両面に亜鉛系めっきが被覆された、板厚の薄い鋼板101(101A)と、これよりも板厚が厚く、両面に亜鉛系めっきが被覆された鋼板101(101B)を重ね合わせ、従来の方法でスポット溶接を行った場合の溶接部の断面を示す。
図5、6に示すように、従来の方法でスポット溶接を行った場合、鋼板のめっきが被覆された側に配置された電極が、めっきと反応して合金化する。そして、この合金化した部分の電気抵抗が増加して、電極/鋼板間での発熱量が増加する。さらに、合金化した部分の熱伝導度が低下することから、水冷された電極での冷却効果が下がり、溶接時に鋼板のめっきが被覆された側の表面温度や溶接部全体の温度が上昇し、表面で散りが発生するという問題が生じる。その結果、従来の方法では、過大発熱により、図5に示すように、溶接金属部(符号103Aを参照)が飛散して欠陥(符号104を参照)が生じたり、図6に示すような割れ105が発生したりするという問題が生じていた。
本発明は上記問題に鑑みてなされたものであり、亜鉛系めっき鋼板を連続打点で抵抗スポット溶接した場合においても、散り発生による作業性の低下を防止するとともに、スポット溶接部の表面における穴あきや割れ等の欠陥の発生を防止することができ、抵抗スポット溶接における連続打点数が3000点を超えるような長い電極寿命を得ることが可能な亜鉛系めっき鋼板の抵抗スポット溶接方法を提供することを目的とする。
本発明者等が上記問題を解決するために鋭意研究したところ、鋼板のめっき目付量および板厚、抵抗スポット溶接条件を規定することにより、電極/めっき鋼板界面での過大な温度上昇を防止して電極に対する熱負荷を軽減させ、電極先端での合金化反応を抑制できることを知見した。そして、鋼板の板厚比を規定して抵抗スポット溶接を行うことにより、鋼板間に確実にナゲットが形成されることを見出した。
さらに、本発明者等は、抵抗スポット溶接電源に直流電源を用い、電極損耗が少ない正極(+)側を薄い鋼板側に配置した場合には、電極先端での合金化をより効果的に抑制できることを見出した。また、これに加え、合金化した電極先端部を、適宜最適な厚さでドレッシングする方法を採用することで、効果的に合金層を除去することが可能であることを見出した。
これらにより、電極先端での合金化による熱伝導度の低下を抑制し、散り発生や穴あき、割れ等の欠陥発生を防止し、連続打点性を向上させることが可能となることを見出し、本発明を完成させた。
即ち、本発明の要旨は以下のとおりである。
[1] 電極に接する側または両面に片面あたり30〜100g/mの亜鉛系めっきが被覆された板厚0.5〜1.0mmの第1の鋼板と、該第1の鋼板よりも板厚が厚い、非めっき、あるいは、片面または両面に片面あたり30〜100g/mの亜鉛系めっきが被覆された板厚0.7〜3.0mmの第2の鋼板とを重ね合わせ、抵抗スポット溶接を行う亜鉛系めっき鋼板の抵抗スポット溶接方法であって、前記第1の鋼板と前記第2の鋼板との板厚比を下記(1)式で表される範囲にするとともに、前記第1の鋼板および第2の鋼板の平均板厚を、下記(2)式で表される平均板厚tm1とした時に、重ね合わせられた前記第1の鋼板と前記第2の鋼板の間を、溶接電流WC、溶接時間WT1、保持時間HT、スポット溶接時の電極の加圧力EF1の各々を下記(3)〜(6)式で表される条件に設定して抵抗スポット溶接することを特徴とする亜鉛系めっき鋼板の抵抗スポット溶接方法。
1.2≦t2/t1≦3.0 ・・・(1)
tm1=(t1+t2)/2 ・・・(2)
0.80×Ie≦WC≦0.98×Ie ・・・(3)
(10×t1+2)/60≦WT1≦(10×tm1+2)/50 ・・・(4)
HT≦0.2 ・・・(5)
1.96×t1≦EF1≦3.19×tm1 ・・・(6)
{但し、上記(1)〜(6)式において、t1:第1の鋼板の板厚(mm)、t2:第2の鋼板の板厚(mm)、tm1:第1の鋼板および第2の鋼板の平均板厚(mm)、Ie:散り発生電流(kA)、WC:溶接電流(kA)、WT1:溶接時間(s)、HT:溶接通電後に鋼板を電極で加圧する保持時間(s)、EF1:スポット溶接時の電極の加圧力(kN)を示す。}
[2] 電極に接する側または両面に片面あたり30〜100g/mの亜鉛系めっきが被覆された板厚0.5〜1.0mmの第1の鋼板と、該第1の鋼板よりも板厚が厚い、非めっき、あるいは、片面または両面に片面あたり30〜100g/mの亜鉛系めっきが被覆された板厚0.6〜2.0mmの第3の鋼板とを重ね合わせ、さらに、前記第3の鋼板側に、前記第1の鋼板よりも板厚が厚く、非めっき、あるいは、片面または両面に片面あたり30〜100g/mの亜鉛系めっきが被覆された板厚0.6〜2.0mmの第4の鋼板を重ね合わせ、抵抗スポット溶接を行う亜鉛系めっき鋼板の抵抗スポット溶接方法であって、前記第1の鋼板と、前記第3の鋼板および第4の鋼板の合計板厚との比を下記(7)式で表される範囲にするとともに、前記第1の鋼板、第3の鋼板および第4の鋼板の3枚重ねを2枚重ねと仮定した時の平均板厚を、下記(8)式で表される平均板厚tm2とした時に、重ね合わせられた前記第1、3、4の鋼板の各々の間を、溶接電流WC、保持時間HTの各々を、請求項1に記載の(3)、(5)式で表される条件に設定するとともに、溶接時間WT2、スポット溶接時の電極の加圧力EF2を下記(9)、(10)式で表される条件に設定して抵抗スポット溶接することを特徴とする亜鉛系めっき鋼板の抵抗スポット溶接方法。
1.2≦(t3+t4)/t1≦3.0 ・・・(7)
tm2=(t1+t3+t4)/2 ・・・(8)
(10×t1+2)/60≦WT2≦(10×tm2+2)/50 ・・・(9)
1.96×t1≦EF2≦3.19×tm2 ・・・(10)
{但し、上記(7)〜(10)式において、t1:第1の鋼板の板厚(mm)、t3:第3の鋼板の板厚(mm)、t4:第4の鋼板の板厚(mm)、tm2:第1の鋼板、第3の鋼板および第4の鋼板の3枚重ねを2枚重ねと仮定した時の平均板厚(mm)、WT2:溶接時間(s)、EF2:スポット溶接時の電極の加圧力(kN)を示す。}
[3] 電極に接する側または両面に片面あたり30〜100g/mの亜鉛系めっきが被覆された板厚0.5〜1.0mmの第1の鋼板と、該第1の鋼板よりも板厚が厚い、非めっき、あるいは、片面または両面に片面あたり30〜100g/mの亜鉛系めっきが被覆された板厚0.7〜3.0mmの第2の鋼板とを重ね合わせ、さらに、前記第2の鋼板側に、該第2の鋼板よりも板厚が薄く、非めっき、あるいは、電極に接する面または両面に片面あたり30〜100g/mの亜鉛系めっきが被覆された板厚0.5〜1.0mmの第5の鋼板を重ね合わせ、抵抗スポット溶接を行う亜鉛系めっき鋼板の抵抗スポット溶接方法であって、前記第1の鋼板と前記第2の鋼板との板厚比を請求項1に記載の(1)式、前記第5の鋼板と前記第2の鋼板との板厚比を下記(11)式で表される範囲に設定するとともに、前記第1の鋼板、前記第2の鋼板および前記第5の鋼板の3枚重ねを2枚重ねと仮定した時の平均板厚を、下記(12)式で表される平均板厚tm3とした時に、重ね合わせられた前記第1の鋼板、前記第2の鋼板および第5の鋼板の各々の間を、溶接電流WC、保持時間HTの各々を請求項1に記載の(3)、(5)式で表される条件に設定するとともに、溶接時間WT3、スポット溶接時の電極の加圧力EF3を下記(13)、(14)式で表される条件に設定して抵抗スポット溶接することを特徴とする亜鉛系めっき鋼板の抵抗スポット溶接方法。
1.2≦t2/t5≦3.0 ・・・(11)
tm3=(t1+t2+t5)/2 ・・・(12)
(10×t1+2)/60≦WT3≦(10×tm3+2)/50 ・・・(13)
1.96×t1≦EF3≦3.19×tm3 ・・・(14)
{但し、上記(11)〜(14)式において、t1:第1の鋼板の板厚(mm)、t2:第2の鋼板の板厚(mm)、t5:第5の鋼板の板厚(mm)、tm3:第1の鋼板、第2の鋼板および第5の鋼板の3枚重ねを2枚重ねと仮定した時の平均板厚(mm)、WT3:溶接時間(s)、EF3:スポット溶接時の電極の加圧力(kN)を示す。}
[4] 抵抗スポット溶接電源として直流電源を用いることを特徴とする上記[1]〜[3]の何れか1項に記載の亜鉛系めっき鋼板の抵抗スポット溶接方法。
[5] 抵抗スポット溶接電源として直流電源を用い、板厚の薄い前記第1の鋼板側が正極(+)、板厚の厚い前記第2の鋼板側が負極(−)となるように電極を配置して抵抗スポット溶接することを特徴とする上記[1]に記載の亜鉛系めっき鋼板の抵抗スポット溶接方法。
[6] 抵抗スポット溶接電源として直流電源を用い、前記第1の鋼板または前記第5の鋼板の内、何れか薄い側が正極(+)、厚い側が負極(−)となるように電極を配置して抵抗スポット溶接することを特徴とする上記[2]に記載の亜鉛系めっき鋼板の抵抗スポット溶接方法。
[7] 上記[1]〜[6]の何れか1項に記載の方法を用いて、鋼板同士を重ね合わせて抵抗スポット溶接を連続打点で行う際、鋼板表面に散りが発生した時点で溶接を中断し、電極の表面から0.1〜1.0mmの厚さでドレッシングを行った後、抵抗スポット溶接による連続打点を再開することを特徴とする亜鉛系めっき鋼板の抵抗スポット溶接方法。
本発明の亜鉛系めっき鋼板の抵抗スポット溶接方法によれば、鋼板のめっき目付量および板厚、抵抗スポット溶接条件を適正範囲に規定することにより、電極/めっき鋼板界面および溶接部全体での過大な温度上昇を抑制して電極に対する熱負荷を軽減させ、電極先端での合金化反応を抑制することができ、さらに、鋼板の板厚比を適正範囲に規定することにより、鋼板間に確実にナゲットを形成させることができる。これにより、電極先端での合金化による熱伝導度の低下を抑制し、散り発生や穴あき、割れ等の欠陥発生を防止することで、連続打点性を向上させることができるので、良好な溶接作業性を確保しつつ、信頼性の高い溶接金属部を形成させることが可能となる。従って、例えば、自動車用部品の製造や車体の組立て等で用いる亜鉛系めっき鋼板のスポット溶接に本発明を適用することにより、自動車分野での亜鉛系めっき鋼板の適用による耐食性向上や、それに伴う安全性、耐久性向上のメリットなどを十分に享受することができ、その社会的な貢献は多大である。
本発明に係る亜鉛系めっき鋼板の抵抗スポット溶接方法の第1の実施形態を模式的に説明する図であり、2枚の亜鉛系めっき鋼板を重ね合わせて抵抗スポット溶接を行い、溶接金属部を形成した状態を示す断面図である。 本発明に係る亜鉛系めっき鋼板の抵抗スポット溶接方法の第1の実施形態を説明する図であり、通電パターンおよび加圧パターンを示すグラフである。 本発明に係る亜鉛系めっき鋼板の抵抗スポット溶接方法の第2の実施形態を模式的に説明する図であり、3枚の亜鉛系めっき鋼板を重ね合わせて抵抗スポット溶接を行い、溶接金属部を形成した状態を示す断面図である。 本発明に係る亜鉛系めっき鋼板の抵抗スポット溶接方法の第3の実施形態を模式的に説明する図であり、3枚の亜鉛系めっき鋼板を重ね合わせて抵抗スポット溶接を行い、溶接金属部を形成した状態を示す断面図である。 従来の抵抗スポット溶接方法で、亜鉛系めっき鋼板を2枚重ねにして抵抗スポット溶接を行った場合を模式的に説明する図であり、溶接金属部を形成した際に発生する欠陥を示す断面図である。 従来の抵抗スポット溶接方法で、亜鉛系めっき鋼板を2枚重ねにして抵抗スポット溶接を行った場合を模式的に説明する図であり、溶接金属部に発生した割れを示す断面図である。
以下、本発明の亜鉛系めっき鋼板の抵抗スポット溶接方法の第1〜第3の実施形態について、主に図1〜図4を適宜参照しながら説明する。なお、本実施形態は、本発明の亜鉛系めっき鋼板の抵抗スポット溶接方法の趣旨をより良く理解させるために詳細に説明するものであるから、特に指定の無い限り本発明を限定するものではない。
近年、特に自動車分野においては、低燃費化やCO排出量削減を目的とした車体の軽量化および衝突安全性向上に加え、車体の耐食性向上を目的として、GA鋼板やGI鋼板等の亜鉛系めっきが施された、板厚の薄い高強度鋼板を使用するニーズが高まっている。また、このような亜鉛系めっき鋼板が用いられてなる車体の組立や部品の取付け等を行う場合には、主として抵抗スポット溶接方法が用いられるが、スポット溶接を行った場合に、散りの発生を抑制しながら連続的に溶接することができ、かつ、溶接金属部に発生する欠陥や割れを抑制することが可能な、高い作業性と継手特性を実現できる方法に対するニーズが非常に高まっている。このようなニーズに対し、本発明では、上述したように、溶接方法自体は通常のスポット溶接方法と同じであるが、さらに、鋼板のめっき目付量、板厚、組合せ板厚比、溶接電流、溶接時間および保持時間の各々を最適に規定して抵抗スポット溶接を行う方法としている。これにより、亜鉛系めっき鋼板同士の溶接において、通電パターンを実用の溶接条件範囲内で制御しながら、従来と同様の抵抗スポット溶接設備等を用いて、溶接時の散りの発生を抑制して良好な溶接作業性を確保しつつ、欠陥や割れの発生が抑制された信頼性の高い溶接金属部を形成させることで、亜鉛系めっき鋼板同士を溶接することが可能になるというものである。
また、本発明に係る方法においては、上記各条件に加え、さらに、スポット溶接時の加圧力や、電源の種類、電極先端のドレッシング条件等を付加した場合には、亜鉛系めっき鋼板を連続打点で抵抗スポット溶接した場合であっても、溶接時の散りの発生や、欠陥・割れが生じるのをより効果的に抑制することが可能となる。
以下、本発明の亜鉛系めっき鋼板の抵抗スポット溶接方法の各実施形態について詳細に説明する。
[第1の実施形態]
本実施形態の亜鉛系めっき鋼板の抵抗スポット溶接方法は、図1に例示するように、電極2Aに接する側または両面に片面あたり30〜100g/mの亜鉛系めっきが被覆された板厚0.5〜1.0mmの第1の鋼板1Aと、この第1の鋼板1Aよりも板厚が厚い、非めっき、あるいは、片面または両面に片面あたり30〜100g/mの亜鉛系めっきが被覆された板厚0.7〜3.0mmの第2の鋼板1Bとを重ね合わせ、抵抗スポット溶接を行う方法である。具体的には、本実施形態では、第1の鋼板1Aと第2の鋼板1Bとの板厚比を下記(1)式で表される範囲にするとともに、第1の鋼板1Aおよび第2の鋼板1Bの平均板厚を、下記(2)式で表される平均板厚tm1とした時に、重ね合わせられた第1の鋼板1Aと第2の鋼板1Bの間を、溶接電流WC、溶接時間WT1、保持時間HT、スポット溶接時の電極の加圧力EF1の各々を下記(3)〜(6)式で表される条件に設定して抵抗スポット溶接する方法を採用している。
1.2≦t2/t1≦3.0 ・・・(1)
tm1=(t1+t2)/2 ・・・(2)
0.80×Ie≦WC≦0.98×Ie ・・・(3)
(10×t1+2)/60≦WT1≦(10×tm1+2)/50 ・・・(4)
HT≦0.2 ・・・(5)
1.96×t1≦EF1≦3.19×tm1 ・・・(6)
但し、上記(1)〜(6)式において、t1:第1の鋼板1Aの板厚(mm)、t2:第2の鋼板1Bの板厚(mm)、tm1:第1の鋼板1Aおよび第2の鋼板1Bの平均板厚(mm)、Ie:散り発生電流(kA)、WC:溶接電流(kA)、WT1:溶接時間(s)、HT:溶接通電後に鋼板を電極で加圧する保持時間(s)、EF1:スポット溶接時の電極の加圧力(kN)を示す。
「抵抗スポット溶接方法」
図1は、本発明において亜鉛系めっき鋼板(第1の鋼板1A、第2の鋼板1Bを参照)を溶接するのに用いられる、一般的な抵抗スポット溶接方法を説明するための模式図である。
本発明で用いられる抵抗スポット溶接方法とは、まず、被溶接材である亜鉛系めっき鋼板、即ち、本例においては第1の鋼板1Aと第2の鋼板1Bとの2枚を重ね合わせる。そして、これら第1の鋼板1Aおよび第2の鋼板1Bの重ね合わせ部分に対して両側から、即ち、図1に示す例では上下方向から挟み込むように、銅合金からなる電極2A、2Bを押し付けつつ通電することにより、第1の鋼板1Aと第2の鋼板1Bとの間に溶融金属部を形成させる。この溶融金属部は、溶接通電が終了した後、水冷された電極2A、2Bによる抜熱や鋼板自体への熱伝導によって急速に冷却されて凝固し、第1の鋼板1Aと第2の鋼板1Bとの間に、図示例のような断面楕円形状のナゲット(溶接金属部)3が形成される。このようなナゲット3が形成されることにより、第1の鋼板1Aと第2の鋼板1Bとが溶接される。
本発明に係る溶接方法は、上述のような抵抗スポット溶接方法による溶接において、亜鉛系めっき鋼板のめっき目付量、板厚、組合せ板厚比に加え、さらに、溶接電流、溶接時間および保持時間等を、以下に説明するような適正範囲に規定することにより、溶接時の散りの発生を抑制しながら、ナゲット3における欠陥や割れ等の発生を防止できる方法である。
「鋼板特性の限定理由」
以下に、本実施形態における被溶接物である亜鉛系めっき鋼板(第1の鋼板1A、第2の鋼板1B)の鋼板特性の限定理由について詳述する。
(板厚および板厚比)
本実施形態では、被溶接物である亜鉛系めっき鋼板の板厚に関し、まず、第2の鋼板1Bの板厚を、第1の鋼板1Aよりも厚い板厚に規定している。具体的には、第1の鋼板1Aの板厚を0.5〜1.0mmの範囲に規定し、第2の鋼板1Bの板厚を0.7〜3.0mmの範囲に規定したうえで、上記範囲内において、第2の鋼板1Bが第1の鋼板1Aよりも厚い板厚を有するものとしている。
本実施形態において、2枚の亜鉛系めっき鋼板の内、薄い側の鋼板である第1の鋼板1Aの板厚の下限を0.5mmに規定したのは、これ未満では電極に対する熱負荷が大きく、電極先端での合金化が極端に進み、本発明をもってしても、散りや欠陥発生の防止効果が得られにくいためである。また、第1の鋼板1Aの板厚の上限を1.0mmに規定したのは、これを超えると、そもそも、電極先端における合金化があまり進まないことから、散りや欠陥発生の問題が生じないため、本発明の適用対象外とした。
また、2枚の亜鉛系めっき鋼板の内、厚い側の鋼板である第2の鋼板1Bの板厚の下限を0.7mmに規定したのは、第1の鋼板1Aの場合と同様、これ未満では電極に対する熱負荷が大きく、電極先端での合金化が極端に進み、本発明をもってしても、散りや欠陥発生の防止効果が得られにくいためである。また、第2の鋼板1Bの板厚の上限を3.0mmに規定した点についても、第1の鋼板1Aの場合と同様、これを超えると、そもそも、電極先端における合金化があまり進まないことから、散りや欠陥発生の問題が生じないため、本発明の適用対象外とした。
また、上記範囲の板厚を有する第1の鋼板1Aと第2の鋼板1Bとの板厚比は、上記(1)式、即ち、次式{1.2≦t2/t1≦3.0}で表される範囲に規定する。第1の鋼板1Aと第2の鋼板1Bとの板厚比(t2/t1)が1.2未満だと、板厚比が高い場合に比べて、第1の鋼板1Aの表面に近い側にナゲットが形成されて表面の温度が高くなり易くなるため、板厚比が高い場合に比べて電極先端における合金化が進み、散りの発生や欠陥発生の問題が生じ易くなる。また、第1の鋼板1Aと第2の鋼板1Bとの板厚比が3.0を超えると、厚い第2の鋼板1B側に偏ってナゲットが生成され、2枚の鋼板の界面の位置でナゲットが形成され難くなることから、所望の溶接強度が得られなくなるおそれがある。
さらに、本実施形態では、上記範囲の板厚を有する第1の鋼板1Aおよび第2の鋼板1Bの平均板厚tm1を、上記(2)式、即ち、次式{tm1=(t1+t2)/2}で定義した。これは、本発明に係る抵抗スポット溶接のように、亜鉛系めっき鋼板を異厚で2枚重ねや3枚重ねとする場合には、全ての鋼板の板厚を加算し、2枚重ねとして平均した値を鋼板の板厚として溶接時間や加圧力を設定することが、散りや欠陥が生じるのを抑制する観点から望ましいためである。
(めっき)
本実施形態では、被溶接物である亜鉛系めっき鋼板表面のめっきに関し、第1の鋼板1Aについては、電極2Aに接する側または両面に、片面あたりで30〜100g/mの亜鉛系めっきが被覆されたものとする。また、第1の鋼板1Aよりも板厚が厚い第2の鋼板1Bについては、非めっきであるか、あるいは、片面または両面に片面あたり30〜100g/mの亜鉛系めっきが被覆されたものとする。
板厚が薄い亜鉛系めっき鋼板である第1の鋼板1Aの片面あたりの目付量が30(g/m)未満だと、そもそも、電極先端における合金化があまり進まないことから、散りや欠陥発生の問題が生じないため、本発明の適用対象外とした。また、第1の鋼板1Aの片面あたりの目付量が100(g/m)を超えると、電極先端(電極2A)での合金化が極端に進み、本発明をもってしても、散りや欠陥発生の防止効果が得られにくいことから、これを上限とした。また、めっきの目付け量が片面あたりでこの上限を超えた場合には、このめっき層が溶接の際の障害となるおそれがある。
板厚が厚い亜鉛系めっき鋼板である第2の鋼板1Bを非めっきとせず、片面または両面に亜鉛系めっきを施す場合、片面あたりの目付量が30(g/m)未満だと、そもそも、電極先端における合金化があまり進まないことから、散りや欠陥発生の問題が生じないため、本発明の適用対象外とした。また、第2の鋼板1Bの片面あたりの目付量が100(g/m)を超えると、第1の鋼板1Aの場合と同様、電極先端(電極2B)での合金化が極端に進み、本発明をもってしても、散りや欠陥発生の防止効果が得られにくいことから、これを上限とした。また、第1の鋼板1Aの場合と同様、めっきの目付け量が片面あたりでこの上限を超えた場合には、このめっき層が溶接の際の障害となるおそれがある。
なお、本発明において、亜鉛系めっき鋼板の表面に設けられるめっき層の種類については、亜鉛系のめっきであれば特に限定されない。例えば、Zn系、Zn−Fe系、Zn−Ni系、Zn−Al系、Zn−Mg系等、従来公知の亜鉛系めっきを採用すれば良い。また、めっき層の表層に無機系、有機系の皮膜(例えば、潤滑皮膜等)が施されていても良い。
(引張強さ)
本発明では、被溶接物である亜鉛系めっき鋼板(第1の鋼板1A、第2の鋼板1B)の引張強さについては、特に限定されず、例えば、自動車分野等で一般的に用いられる、引張強さが270〜1800MPa程度の軟鋼板、高強度鋼板に亜鉛系めっきが施されたものを用いることができる。
一般に、鋼板の引張強さが900MPa以上である場合に、溶接後の溶接金属部において欠陥や割れが発生し易いことが知られている。このため、本発明においては、特に、この引張強さ以上である亜鉛系めっき鋼板を用いた場合に、欠陥や割れの防止効果が顕著となる。一方、亜鉛系めっき鋼板の引張強さが1800MPaを超える場合には、本発明による欠陥や割れの防止効果が得られ難くなる可能性がある。
(鋼種)
本発明では、被溶接物である亜鉛系めっき鋼板をなす鋼種については特に限定されず、例えば、軟鋼板(フェライト主体)や、2相組織型(例えば、フェライト中にマルテンサイトを含む組織、フェライト中にベイナイトを含む組織)、加工誘起変態型(フェライト中に残留オーステナイトを含む組織)、微細結晶型(フェライト主体組織)等の高強度鋼板等、何れの型の鋼板であっても良い。何れの鋼種からなる亜鉛系めっき鋼板であっても、本発明のスポット溶接方法を適用することにより、スポット溶接の際の散りの発生や、欠陥、割れが発生するのを防止でき、鋼板の特性を損なうことなく、信頼性の高い溶接継手(溶接金属部)が得られる。
また、本発明の亜鉛系めっき鋼板の抵抗スポット溶接方法の適用は、同種の鋼板の組合せに限定されるものではなく、各規定を満たす鋼板の溶接であれば、本実施形態で例示する同種異厚の他、異種異厚の組合せで行うことも可能である。
「溶接条件の限定理由」
以下に、本実施形態で規定する抵抗スポット溶接の際の溶接条件について、その限定理由を詳述する。
(溶接電流:WC)
本実施形態においては、抵抗スポット溶接を行う際の溶接電流を、上記(3)式、即ち、次式{0.80×Ie≦WC≦0.98×Ie}で表される範囲に規定する。ここで、上記(3)式中のIe(kA)とは散り発生電流(溶接電流を増加させた時に散りが発生し始める電流)であり、被溶接物である亜鉛系めっき鋼板の鋼種や板厚、板組み、めっきの有無、めっきの目付量等に応じて変化する数値である。
溶接電流WCが上記(3)式で表される範囲未満、即ち、散り発生電流Ieの0.80倍を下回ると、連続打点時のナゲット径の低下速度が早くなり、連続打点性が向上しない。また、溶接電流WCが上記(3)式で表される範囲超、即ち散り発生電流Ieの0.98倍を超えると、散りや欠陥が発生し易くなる。
(溶接時間:WT1)
本実施形態においては、抵抗スポット溶接を行う際の溶接時間を、上記(4)式、即ち、次式{(10×t1+2)/60≦WT1≦(10×tm1+2)/50}で表される範囲に規定する。溶接時間(WT1)の範囲は、上記(4)式中に示されるように、その下限は第1の鋼板1Aの板厚t1に依存し、また、上限は、第1の鋼板1Aと第2の鋼板1Bの平均板厚tm1に依存する。
溶接時間WT1が上記(4)式で表される範囲未満、即ち、次式{(10×t1+2)/60}(s)を下回ると、ナゲット3において十分な大きさの径が得られない。また、溶接時間WT1が上記(4)式で表される範囲超、即ち、次式{(10×tm1+2)/50}を超えると、溶接中に電極先端で合金化反応が進行し、散りや欠陥が発生し易くなるとともに、溶接時間が長くなって作業性低下の原因となる。溶接時間WT1は、電極2A、2Bの先端とめっきとの反応を最小限に抑えるためには、可能な限り短いことが好ましい。
(溶接通電後に電極で鋼板を加圧する保持時間:HT)
本実施形態においては、上記溶接電流WC、溶接時間WT1の条件で溶接通電した後、引き続き、上記(5)式で表されるように、0.2(s)以下(200(ms)以下)の保持時間HTで電極2A、2Bによって第1の鋼板1Aおよび第2の鋼板1Bを保持する。保持時間HTが200(ms)を超えると、保持時間中に電極先端の合金化反応が進み、散りや欠陥が発生し易くなる。
また、保持時間HTは、電極2A、2Bの先端とめっきとの反応を最小限に防ぐためには、可能な限り短いことが好ましいが、短すぎると、ナゲット中心部で収縮欠陥が発生する場合があるので、溶接時の散りの発生や、欠陥の発生を抑制する効果が確実に得られる最小時間とすることが好ましい。
一般に、亜鉛系めっき鋼板のスポット溶接におけるにおける欠陥や割れの発生は、溶接部での発熱や冷却、ナゲット形成位置等に影響される。特に、片側に板厚の薄い鋼板が配置された場合には、合金化によって電極/めっき鋼板界面の温度が上昇し、また、電極での冷却能が下がると、溶融部が表面にまで到達し、表面から散りが発生して穴あき等の欠陥が発生する。また、溶融部が表面に到達しなくても、めっき鋼板の表面温度が上昇して、めっきである亜鉛がオーステナイト粒界に浸入し、通電後の収縮によって割れが生じる。
抵抗スポット溶接では、冷却速度が非常に速いため、凝固中に急激な収縮が起こる。その際、電極による加圧力無しに溶融した金属を自由凝固させると、最後に凝固した溶接金属中央部で欠陥が発生したり、周囲の拘束によって割れが発生したりする場合がある。これに対し、溶接通電後、十分な加圧力で電極2A、2Bを溶接金属の収縮過程に追従させると、溶接金属の中央部に残留した溶融金属を押し込むため、ナゲットにおける収縮欠陥の発生を抑制させ、また、割れの発生も抑制することが可能となる。ここで、溶接金属は、完全に凝固するまで、水冷された電極2A、2Bで加圧することが重要であり、そのためには、本実施形態で説明するように、保持時間HTを適正範囲に設定することが重要となる。
本実施形態では、上記条件で溶接通電を行った後、引き続き、所定の加圧力で、上記(5)で表される保持時間HTで、第1の鋼板1Aおよび第2の鋼板1Bを電極2A、2Bで加圧保持することにより、上述のような、溶接金属の中央部に残留した溶融金属を押し込む作用が得られる。これにより、ナゲット3における収縮欠陥の発生を抑制させ、割れの発生も抑制することができる。
(電極の加圧力:EF1)
本実施形態では、上記条件の溶接通電ならびに電極による保持を行う際の、第1の鋼板1Aおよび第2の鋼板1Bに対する電極2A、2Bの加圧力EF1は、下記(6)式で表される範囲に設定すると、上述した散りの発生の防止や欠陥防止の効果が顕著に得られる点から好ましい。
1.96×t1≦EF1≦3.19×tm1 ・・・(6)
但し、上記(6)式において、EF1:スポット溶接時の電極の加圧力(kN)、t1:第1の鋼板1Aの板厚(mm)、tm1:第1の鋼板1Aおよび第2の鋼板1Bの平均板厚(mm)を示す。
電極の加圧力EF1が上記(6)式で表される範囲未満、即ち、第1の鋼板1Aの板厚t1の1.96倍を下回ると、鋼板間で十分な接触径が得られず、溶接時に散りが発生し易くなって、十分な大きさのナゲット径が得られない。また、加圧力EF1が上記(6)式で表される範囲超、即ち、平均板厚tm1の3.19倍を超えると、溶接部の窪みが大きくなって継手強度が低下する。
(通電パターンおよび加圧パターン)
本実施形態では、溶接電流WC、溶接時間WT1、保持時間HTおよび電極の加圧力EFの各条件を上記規定とした場合、その通電パターンおよび加圧パターンは、図2のグラフに示すようなパターンとなる。本実施形態では、このような通電パターンおよび加圧パターンにおいて、上記規定範囲内で各条件を設定することができる。また、本発明においては、図2のグラフに示すような通電パターンおよび加圧パターンには限定されず、溶接条件を上記範囲で変更しながら、適宜、異なるパターンに変更することも可能である。
(電源の種類)
本実施形態では、抵抗スポット溶接に用いる電源は特に限定されず、一般的な交流電源を用いることができるが、その他、直流インバーター等の直流電源を用いることも可能である。
ここで、抵抗スポット溶接電源に直流電源を用いた場合には、板厚の薄い第1の鋼板1A側が正極(+)、板厚の厚い第2の鋼板1B側が負極(−)となるように電極2A、2Bを配置することが好ましい。一般に、板厚の薄い鋼板を用いると、この薄い鋼板側に配置される電極先端において合金化が生じ易く、電極損耗も生じ易い。本実施形態では、溶接電源に直流電源を用いるとともに、電極損耗が少ない正極(+)側の電極(図1に示す例では電極2A側)を薄い第1の鋼板1A側に配置することにより、電極先端における合金化をより効果的に抑制することが可能となる。これにより、電極先端における発熱増加と熱伝導度の低下を抑制し、散りの発生や、穴あき、割れ等の欠陥発生を防止できるとともに、連続打点性を向上させることが可能となる。
(電極のドレッシング)
本実施形態においては、上記方法で亜鉛系めっき鋼板同士を重ね合わせて抵抗スポット溶接を連続打点で行う際、第1の鋼板1Aまたは第2の鋼板1Bの何れかの表面に散りが発生した時点で溶接を中断し、電極2A、2Bの表面、特に電極先端の表面から0.1〜1.0mmの厚さでドレッシングを行った後、抵抗スポット溶接による連続打点を再開する方法を採用しても良い。このように、連続打点による抵抗スポット溶接で合金化した電極先端部を、適宜、最適な厚さでドレッシングすることにより、電極先端における発熱増加と熱伝導度の低下を抑制できるので、散りの発生や、穴あき、割れ等の欠陥の発生を防止し、連続打点性を向上させることが可能となる。この際のドレッシングの厚さが0.1mm未満だと、電極表面の合金層が十分に除去されず、散りや欠陥の発生防止効果がない。また、ドレッシングの厚さが1.0mmを超えると、ドレッシングの度に電極の肉厚が薄くなり過ぎ、電極寿命が短くなる。
(抵抗スポット溶接設備)
本発明に係る亜鉛系めっき鋼板の抵抗スポット溶接方法は、本実施形態で説明したように、鋼板のめっき目付量、板厚および板厚比に加え、溶接電流や溶接時間、保持時間等の抵抗スポット溶接条件を最適化した方法なので、例えば、図1に例示するような電極2が備えられた従来公知の抵抗スポット溶接設備を何ら制限無く採用することが可能である。
[第2の実施形態]
本発明の亜鉛系めっき鋼板の抵抗スポット溶接方法の第2の実施形態について、以下に説明する。
なお、本実施形態では、上記第1の実施形態と共通する構成については、同じ符号を付し、その詳しい説明を省略する。
本実施形態の亜鉛系めっき鋼板の抵抗スポット溶接方法は、図3に示す例のように、上記第1の実施形態と同様に、第1の鋼板1Aと、第1の鋼板1Aよりも板厚が厚く、非めっき、あるいは、片面または両面に片面あたり30〜100g/mの亜鉛系めっきが被覆された板厚0.6〜2.0mmの第3の鋼板1Cを重ね合わせたうえで、さらに、第3の鋼板1C側に、第1の鋼板1Aよりも板厚が厚く、非めっき、あるいは、片面または両面に片面あたり30〜100g/mの亜鉛系めっきが被覆された板厚0.6〜2.0mmの第4の鋼板1Dを重ね合わせ、合計3枚の亜鉛系めっき鋼板を重ね合わせることで抵抗スポット溶接を行う方法である。より具体的には、本実施形態では、まず、第1の鋼板1Aと、第3の鋼板1Cおよび第4の鋼板1Dの合計板厚との比を下記(7)式で表される範囲にするとともに、第1の鋼板1A、第3の鋼板1Cおよび第4の鋼板1Dの3枚重ねを2枚重ねと仮定した時の平均板厚を、下記(8)式で表される平均板厚tm2とした時に、重ね合わせられた前記第1、3、4の鋼板1A、1C、1Dの各々の間を、溶接電流WC、保持時間HTの各々を第1の実施形態で示した上記(3)、(4)式で表される条件に設定するとともに、溶接時間WT2、スポット溶接時の電極の加圧力EF2を下記(9)、(10)式で表される条件に設定して抵抗スポット溶接を行う。
1.2≦(t3+t4)/t1≦3.0 ・・・(7)
tm2=(t1+t3+t4)/2 ・・・(8)
(10×t1+2)/60≦WT2≦(10×tm2+2)/50 ・・・(9)
1.96×t1≦EF2≦3.19×tm2 ・・・(10)
但し、上記(7)〜(10)式において、t1:第1の鋼板1Aの板厚(mm)、t3:第3の鋼板1Cの板厚(mm)、t4:第4の鋼板1Dの板厚(mm)、tm2:第1の鋼板1A、第3の鋼板1Cおよび第4の鋼板1Dの3枚重ねを2枚重ねと仮定した時の平均板厚(mm)、WT2:溶接時間(s)、EF2:スポット溶接時の電極の加圧力(kN)を示す。
本実施形態では、被溶接物である第1の鋼板1Aの鋼種、めっき種、引張強さ等は、上記第1の実施形態と同様とすることができる。また、本実施形態では、第1の鋼板1Aの板厚の範囲や、これらの厚さの関係についても、上記第1の実施形態と同様とする。
また、本実施形態では、溶接電流WC、保持時間HTの各々を上記(3)、(4)式で表される範囲とする点でも、上記第1の実施形態と同様である。
本実施形態の抵抗スポット溶接方法は、第2の鋼板1Bの代わりに、第2の鋼板とは板厚範囲が異なる第3の鋼板1Cを使用し、第3の鋼板1C側に、第1の鋼板1Aよりも板厚が厚い第4の鋼板1Dを重ね合わせ、第1の鋼板1Aと、第3の鋼板1Cおよび第4の鋼板1Dの合計板厚との比を上記範囲に規定し、さらに、第1、3、4の鋼板1A、1C、1Dの平均板厚tm2を上記範囲に規定する点で、上記第1の実施形態の抵抗スポット溶接方法とは異なる。
さらに、本実施形態の抵抗スポット溶接方法は、溶接時間WT2を上記範囲に規定している点で、上記第1の実施形態の抵抗スポット溶接方法とは異なる。
「鋼板特性」
(鋼板の板厚および板厚比)
本実施形態では、被溶接物である亜鉛系めっき鋼板の板厚に関し、まず、第1の実施形態と同様、第3の鋼板1Cの板厚を、第1の鋼板1Aよりも厚い板厚に規定し、且つ、第1の鋼板1Aの板厚を0.5〜1.0mm、第3の鋼板1Cの板厚を0.6〜2.0mmの範囲に規定している。
そして、本実施形態では、上述のように、第3の鋼板1C側に重ね合わせる第4の鋼板1Dを、第1の鋼板1Aよりも板厚が厚いものとしたうえで、第1の鋼板1Aと、第3の鋼板1Cおよび第4の鋼板1Dの合計板厚との比を、上記(7)式、即ち、次式{1.2≦(t3+t4)/t1≦3.0}で表される範囲に規定している。さらに、本実施形態では、第1、3、4の鋼板1A、1C、1Dの平均板厚tm2を、上記(8)式、即ち、次式{tm2=(t1+t3+t4)/2}で表される範囲に規定している。
本実施形態において、第3、4の鋼板1C、1Dの板厚の下限を0.6mmに規定したのは、第1の鋼板1Aの場合と同様、これ未満では電極に対する熱負荷が大きく、電極先端での合金化が極端に進み、本発明をもってしても、散りや欠陥発生の防止効果が得られにくいためである。また、第3、4の鋼板1C、1Dの板厚の上限を2.0mmに規定した点についても、第1の鋼板1Aの場合と同様、これを超えると、そもそも、電極先端における合金化があまり進まないことから、散りや欠陥発生の問題が生じないため、本発明の適用対象外とした。
また、第1の鋼板1Aと、第3の鋼板1Cおよび第4の鋼板1Dの合計板厚との比((t3+t4)/t1)の下限を、上記(7)式で表される範囲の下限値、即ち、1.2に規定している。この板厚比((t3+t4)/t1)が1.2未満だと、板厚比が高い場合に比べて、第1の鋼板1Aの表面に近い側にナゲットが形成されて表面の温度が高くなり易くなるため、板厚比が高い場合に比べて電極先端における合金化が進み、散りの発生や欠陥発生の問題が生じ易くなる。また、上記板厚比((t3+t4)/t1)が3.0を超えると、厚い第3、4の鋼板1C、1D側に偏ってナゲットが生成され、第1の鋼板1Aと第3の鋼板1Cとの界面にナゲットが形成され難くなることから、所望の溶接強度が得られなくなるおそれがある。
さらに、本実施形態では、上記範囲の板厚を有する第1、3、4の鋼板1A、1C、1Dの平均板厚tm2を、上記(8)式、即ち、次式{tm2=(t1+t3+t4)/2}で表される範囲で定義した。これは、本実施形態のように、亜鉛系めっき鋼板を異厚で3枚重ねとする場合には、全ての鋼板の板厚を加算し、2枚重ねとして平均した値を鋼板の板厚として、溶接時間や加圧力を設定することが、散りや欠陥が生じるのを抑制する観点から望ましいためである。
(めっき)
本実施形態では、被溶接物である亜鉛系めっき鋼板表面のめっきに関し、第1の鋼板1Aについては、上記第1の実施形態における規定と同様とする。そして、第3の鋼板1Cおよび第3の鋼板1C側に重ね合わせられる第4の鋼板1Dについては、非めっきであるか、あるいは、片面または両面に片面あたり30〜100g/mの亜鉛系めっきが被覆されたものとする。
第4の鋼板1Dを非めっきとせず、片面または両面に亜鉛系めっきを施す場合、片面あたりの目付量が30(g/m)未満だと、第1の鋼板1Aの場合と同様、そもそも、電極先端における合金化があまり進まないことから、散りや欠陥発生の問題が生じないため、本発明の適用対象外とした。また、第4の鋼板1Dの片面あたりの目付量が100(g/m)を超えると、上記同様、電極先端(電極2B)での合金化が極端に進み、本発明をもってしても、散りや欠陥発生の防止効果が得られにくいことから、これを上限とした。また、上記同様、めっきの目付け量が片面あたりで上限を超えた場合には、このめっき層が溶接の際の障害となるおそれがある。
なお、本実施形態において、亜鉛系めっき鋼板の表面に設けられるめっき層の種類についても、上記第1の実施形態と同様とすることができ、さらに、めっき層の表層に無機系、有機系の皮膜等が施されていても良い点についても同様である。
「溶接条件」
本実施形態では、3枚重ねとする亜鉛系めっき鋼板の板厚に関し、各々の鋼板の関係を上記範囲に規定したうえで、抵抗スポット溶接の際の溶接条件を、以下に詳述する条件に規定する。
(溶接時間:WT2)
本実施形態においては、抵抗スポット溶接を行う際の溶接時間を、上記(9)式、即ち、次式{(10×t1+2)/60≦WT2≦(10×tm2+2)/50}で表される範囲に規定する。本実施形態における溶接時間(WT2)の範囲は、上記(9)式中に示されるように、その下限は第1の鋼板1Aの板厚t1に依存し、また、上限は、第1の鋼板1A、第2の鋼板1Bおよび第3の鋼板1Cの平均板厚tm2に依存する。
溶接時間WT2が上記(9)式で表される範囲未満、即ち、次式{(10×t1+2)/60}(s)を下回ると、図3中に示すナゲット30において十分な大きさの径が得られない。また、溶接時間WT2が上記(9)式で表される範囲超、即ち、次式{(10×tm2+2)/50}を超えると、溶接中に電極先端で合金化反応が進行し、散りや欠陥が発生し易くなるとともに、溶接時間が長くなって作業性低下の原因となる。溶接時間WT2は、電極2A、2Bの先端とめっきとの反応を最小限に抑えるため、可能な限り短いことが好ましい。
(電極の加圧力:EF2)
本実施形態では、上記第1の実施形態と同様、上記条件の溶接通電ならびに電極による保持を行う際の、第1、3、4の鋼板1A、1C、1Dに対する電極2A、2Bの加圧力EF2は、下記(10)式で表される範囲に設定すると、上述した散りの発生の防止や欠陥防止の効果が顕著に得られる点から好ましい。
1.96×t1≦EF2≦3.19×tm2 ・・・(10)
但し、上記(10)式において、EF2:スポット溶接時の電極の加圧力(kN)、t1:第1の鋼板1Aの板厚(mm)、tm2:第1の鋼板1A、第3の鋼板1Cおよび第4の鋼板1Dの3枚重ねを2枚重ねと仮定した時の平均板厚(mm)を示す。
電極の加圧力EF2が上記(10)式で表される範囲未満、即ち、第1の鋼板1Aの板厚t1の1.96倍を下回ると、鋼板間で十分な接触径が得られず、溶接時に散りが発生し易くなって、十分な大きさのナゲット径が得られない。また、加圧力EF2が上記(10)式で表される範囲超、即ち、平均板厚tm2の3.19倍を超えると、溶接部の窪みが大きくなって継手強度が低下する。
(電源の種類)
本実施形態においても、上記第1の実施形態と同様、抵抗スポット溶接に用いる電源は特に限定されず、一般的な交流電源の他、直流インバーター等の直流電源を用いることができる。
また、本実施形態において、抵抗スポット溶接電源に直流電源を用いた場合には、上記第1の実施形態の場合と同様の理由により、板厚の薄い第1の鋼板1A側が正極(+)、板厚の厚い第4の鋼板1D側が負極(−)となるように電極2A、2Bを配置することが好ましい。これにより、電極先端における合金化をより効果的に抑制することができるので、電極先端での発熱増加と熱伝導度の低下を抑制し、散りの発生や、穴あき、割れ等の欠陥発生を防止できるとともに、連続打点性を向上させることが可能となる。
(その他の溶接条件)
本実施形態では、上記規定以外の条件については、上述した第1の実施形態と同様とすることができる。例えば、通電パターンおよび加圧パターンについても、図2に示すようなパターンと同様のパターンとし、上記規定範囲内で各条件を設定することができる。また、第1の実施形態と同様、通電パターンおよび加圧パターンは、溶接条件を上記範囲で変更しながら、適宜、異なるパターンに変更することも可能である。
また、使用する抵抗スポット溶接設備についても、図3に例示するような電極2が備えられた従来公知の抵抗スポット溶接設備を何ら制限無く採用することが可能である。
さらに、電極のドレッシングについても第1の実施形態と同様の方法で行うことができ、合金化した電極先端部を、適宜、最適な厚さでドレッシングすることで、電極先端における発熱増加と熱伝導度の低下を抑制でき、散りの発生や、穴あき、割れ等の欠陥の発生を防止し、連続打点性を向上させることが可能となる。
[第3の実施形態]
本発明の亜鉛系めっき鋼板の抵抗スポット溶接方法の第3の実施形態について、以下に説明する。
なお、本実施形態では、上記第1および第2の実施形態と共通する構成については同じ符号を付し、その詳しい説明を省略する。
本実施形態の亜鉛系めっき鋼板の抵抗スポット溶接方法は、図4に示す例のように、上記第1の実施形態と同様に第1の鋼板1Aと第2の鋼板1Bとを重ね合わせたうえで、 さらに、第2の鋼板1B側に、この第2の鋼板1Bよりも板厚が薄く、非めっき、あるいは、電極2(2B)に接する面または両面に片面あたり30〜100g/mの亜鉛系めっきが被覆された板厚0.5〜1.0mmの第5の鋼板1Eを重ね合わせることで抵抗スポット溶接を行う方法である。より具体的には、本実施形態では、まず、第1の鋼板1Aと第2の鋼板1Bとの板厚比を第1の実施形態に示した(1)式、第5の鋼板1Eと第2の鋼板1Bとの板厚比を下記(11)式で表される範囲に設定する。そして、第1の鋼板1A、第2の鋼板1Bおよび第5の鋼板1Eの3枚重ねを2枚重ねと仮定した時の平均板厚を、下記(12)式で表される平均板厚tm3とした時に、重ね合わせられた第1の鋼板1A、第2の鋼板1Bおよび第5の鋼板1Eの各々の間を、溶接電流WC、保持時間HTの各々を第1の実施形態で示した上記(3)、(4)式で表される条件に設定するとともに、溶接時間WT3、スポット溶接時の電極の加圧力EF3を下記(13)、(14)式で表される条件に設定して抵抗スポット溶接を行う。
1.2≦t2/t5≦3.0 ・・・(11)
tm3=(t1+t2+t5)/2 ・・・(12)
(10×t1+2)/60≦WT3≦(10×tm3+2)/50 ・・・(13)
1.96×t1≦EF3≦3.19×tm3 ・・・(14)
但し、上記(11)〜(14)式において、t1:第1の鋼板1Aの板厚(mm)、t2:第2の鋼板1Bの板厚(mm)、t5:第5の鋼板1Eの板厚(mm)、tm3:第1の鋼板1A、第2の鋼板1Bおよび第5の鋼板1Eの3枚重ねを2枚重ねと仮定した時の平均板厚(mm)、WT3:溶接時間(s)、EF3:スポット溶接時の電極の加圧力(kN)を示す。
本実施形態では、被溶接物である第1、第2の鋼板1A、1Bの鋼種、めっき種、引張強さ等は、上記第1および第2の実施形態と同様とすることができる。また、本実施形態では、第1の鋼板1Aおよび第2の鋼板1Bの板厚の範囲や、これらの厚さの関係についても、上記第1および第2の実施形態と同様とする。
また、本実施形態では、溶接電流WC、保持時間HTの各々を上記(3)、(4)式で表される範囲とする点でも、上記第1および第2の実施形態と同様である。
本実施形態の抵抗スポット溶接方法は、第2の鋼板1B側に、第1の鋼板1Aよりも板厚が薄い第5の鋼板1Eを重ね合わせ、第5の鋼板1Eと第2の鋼板1Bとの板厚比を上記範囲に規定し、第1の鋼板1A、第2の鋼板1Bおよび第5の鋼板1Eの平均板厚tm3を上記のように定義する点で、上記第1および第2の実施形態の抵抗スポット溶接方法とは異なる。
さらに、本実施形態の抵抗スポット溶接方法は、溶接時間WT3を上記範囲に規定している点で、上記第1および第2の実施形態の抵抗スポット溶接方法とは異なる。
「鋼板特性」
(鋼板の板厚および板厚比)
本実施形態では、被溶接物である亜鉛系めっき鋼板の板厚に関し、まず、第1および第2の実施形態と同様、第2の鋼板1Bの板厚を、第1の鋼板1Aよりも厚い板厚に規定し、且つ、第1の鋼板1Aの板厚を0.5〜1.0mm、第2の鋼板1Bの板厚を0.7〜3.0mmの範囲に規定している。
そして、本実施形態では、上述のように、第2の鋼板1B側に重ね合わせる第4の鋼板1Dを、第1の鋼板1Aよりも板厚が薄いものとしたうえで、第5の鋼板1Eと第2の鋼板1Bとの板厚比を上記(11)式、即ち、次式{1.2≦t2/t5≦3.0}で表される範囲に規定している。さらに、本実施形態では、第1の鋼板1A、第2の鋼板1Bおよび第5の鋼板1Eの平均板厚tm3を、上記(12)式、即ち、次式{tm3=(t1+t2+t5)/2}で表されるように定義に規定している。
本実施形態において、第5の鋼板1Eの板厚の下限を0.5mmに規定したのは、第1〜第3の鋼板1A〜1Cの場合と同様、これ未満では電極に対する熱負荷が大きく、電極先端での合金化が極端に進み、本発明をもってしても、散りの発生や欠陥発生の防止効果が得られにくいためである。また、第5の鋼板1Eの板厚の上限を1.0mmに規定した点についても、第1〜第4の鋼板1A〜1Dの場合と同様、これを超えると、そもそも、電極先端における合金化があまり進まないことから、散りの発生や欠陥発生の問題が生じないため、本発明の適用対象外とした。
また、第5の鋼板1Eと第2の鋼板1Bとの合計板厚との比(t2/t5)の下限を、上記(11)式で表される範囲の下限値、即ち、1.2に規定している。この板厚比(t2/t5)が1.2未満だと、そもそも、板厚比が高い場合に比べて、第1の鋼板1Aの表面に近い側にナゲットが形成されて表面の温度が高くなり易くなるため、板厚比が高い場合に比べて電極先端における合金化が進み、散りの発生や欠陥発生の問題が生じ易くなる。また、上記板厚比(t2/t5)が3.0を超えると、厚い第2の鋼板1B側に偏ってナゲットが生成され、第5の鋼板1Eと第2の鋼板1Bとの界面にナゲットが形成され難くなることから、所望の溶接強度が得られなくなるおそれがある。
さらに、本実施形態では、上記範囲の板厚を有する第1の鋼板1A、第2の鋼板1Bおよび第5の鋼板1Eの3枚重ねを2枚重ねと仮定した時の平均板厚tm3(mm)を、上記(12)式、即ち、次式{(t1+t2+t5)/2}で表されるように定義している。これは、上記第2の実施形態の場合と同様、亜鉛系めっき鋼板を異厚で3枚重ねとする場合に、全ての鋼板の板厚を加算し、2枚重ねとして平均した値を鋼板の板厚として、溶接時間や加圧力を設定することが、散りや欠陥が生じるのを抑制する観点から望ましいためである。
(めっき)
本実施形態では、被溶接物である亜鉛系めっき鋼板表面のめっきに関し、第1、2の鋼板1A、1Bについては、上記第1および第2の実施形態における規定と同様とする。そして、第2の鋼板1B側に重ね合わせられる第5の鋼板1Eについては、非めっきであるか、あるいは、片面または両面に片面あたり30〜100g/mの亜鉛系めっきが被覆されたものとする。
本実施形態においても、第5の鋼板1Eを非めっきとせず、電極2(2B)に接する面または両面に亜鉛系めっきを施す場合、片面あたりの目付量が30(g/m)未満だと、第1〜第4の鋼板1A〜1Dの場合と同様、そもそも、電極先端における合金化があまり進まないことから、散りや欠陥発生の問題が生じないため、本発明の適用対象外とした。また、第5の鋼板1Eの片面あたりの目付量が100(g/m)を超えると、やはり同様に、電極先端(電極2B)での合金化が極端に進み、本発明をもってしても、散りや欠陥発生の防止効果が得られにくいことから、これを上限とした。さらに同様に、めっきの目付け量が片面あたりで上限を超えた場合には、このめっき層が溶接の際の障害となるおそれがある。
なお、本実施形態において、亜鉛系めっき鋼板の表面に設けられるめっき層の種類についても、上記第1および第2の実施形態と同様とすることができ、さらに、めっき層の表層に無機系、有機系の皮膜等が施されていても良い点についても同様である。
「溶接条件」
本実施形態では、上記第2の実施形態と同様に3枚重ねとする亜鉛系めっき鋼板の板厚に関し、各々の鋼板の関係を上記範囲に規定したうえで、抵抗スポット溶接の際の溶接条件を、以下に詳述する条件に規定する。
(溶接時間:WT3)
本実施形態においては、抵抗スポット溶接を行う際の溶接時間を、上記(13)式、即ち、次式{(10×t1+2)/60≦WT3≦(10×tm3+2)/50}で表される範囲に規定する。本実施形態における溶接時間(WT3)の範囲は、上記(13)式中に示されるように、その下限は第1の鋼板1Aの板厚t1に依存し、また、上限は、第1の鋼板1A、第2の鋼板1Bおよび第5の鋼板1Eの平均板厚tm3に依存する。
溶接時間WT3が上記(13)式で表される範囲未満、即ち、次式{(10×t1+2)/60}(s)を下回ると、図4中に示すナゲット31において十分な大きさの径が得られない。また、溶接時間WT3が上記(13)式で表される範囲超、即ち、次式{(10×tm3+2)/50}を超えると、溶接中に合金化反応が進行し、散りや欠陥が発生し易くなるとともに、溶接時間が長くなって作業性低下の原因となる。溶接時間WT3は、上記第1および第2の実施形態と同様、電極2A、2Bの先端とめっきとの反応を最小限に抑えるため、可能な限り短いことが好ましい。
(電極の加圧力:EF3)
本実施形態では、上記第1及び第2の実施形態と同様、上記条件の溶接通電ならびに電極による保持を行う際の、第1の鋼板1A、第2の鋼板1Bおよび第5の鋼板1Eに対する電極2A、2Bの加圧力EF2は、上記同様、下記(14)式で表される範囲に設定すると、上述した散りの発生の防止や欠陥防止の効果が顕著に得られる点から好ましい。
1.96×t1≦EF3≦3.19×tm3 ・・・(14)
但し、上記(14)式において、EF3:スポット溶接時の電極の加圧力(kN)、t1:第1の鋼板1Aの板厚(mm)、tm3:第1の鋼板1A、第2の鋼板1Bおよび第5の鋼板1Eの3枚重ねを2枚重ねと仮定した時の平均板厚(mm)を示す。
電極の加圧力EF3が上記(14)式で表される範囲未満、即ち、第1の鋼板1Aの板厚t1の1.96倍を下回ると、鋼板間で十分な接触径が得られず、溶接時に散りが発生し易くなって、十分な大きさのナゲット径が得られない。また、加圧力EF3が上記(10)式で表される範囲超、即ち、平均板厚tm3の3.19倍を超えると、溶接部の窪みが大きくなって継手強度が低下する。
(電源の種類)
本実施形態においても、上記第1および第2の実施形態と同様、抵抗スポット溶接に用いる電源は特に限定されず、一般的な交流電源の他、直流インバーター等の直流電源を用いることができる。なお、本実施形態で抵抗スポット溶接電源に直流電源を用いた場合には、板厚の薄い第1の鋼板1Aまたは板厚の薄い第5の鋼板1Eの内、何れか薄い側が正極(+)、厚い側が負極(−)となるように電極2A、2Bを配置することが好ましい。これにより、上記同様、電極先端における合金化をより効果的に抑制できるので、電極先端での発熱増加と熱伝導度の低下を抑制し、散りの発生や、穴あき、割れ等の欠陥発生を防止できるとともに、連続打点性を向上させることが可能となる。
(その他の溶接条件)
本実施形態においても、上記第2の実施形態と同様、上記規定以外の溶接条件については、上記第1の実施形態と同様とすることができ、例えば、通電パターンおよび加圧パターンについても同様のパターンとしたうえで、上記規定範囲内で各条件を設定することができる。また、上記同様、通電パターンおよび加圧パターンは、溶接条件を上記範囲で変更しながら、適宜、異なるパターンに変更することも可能である。
また、使用する抵抗スポット溶接設備についても、第2の実施形態と同様、図3に例示するような電極2が備えられた従来公知の抵抗スポット溶接設備を何ら制限無く採用することが可能である。
さらに、電極のドレッシングについても第1および第2の実施形態と同様の方法で行うことができ、これによって電極先端における発熱増加と熱伝導度の低下を抑制できるので、散りの発生や、穴あき、割れ等の欠陥の発生を防止し、連続打点性を向上させることが可能となる。
以上説明したような、本発明に係る亜鉛系めっき鋼板の抵抗スポット溶接方法によれば、各鋼板(第1〜第5の鋼板1A〜1E)のめっき目付量および板厚、抵抗スポット溶接条件を適正範囲に規定することにより、電極/めっき界面での過大な温度上昇を抑制して電極2に対する熱負荷を軽減させ、電極先端での合金化反応を抑制することができ、さらに、鋼板の板厚比を適正範囲に規定することにより、鋼板間に確実にナゲットを形成させることができる。これにより、電極先端での合金化による発熱増加と熱伝導度の低下を抑制し、散り発生や穴あき、割れ等の欠陥発生を防止することで、連続打点性を向上させることができるので、良好な溶接作業性を確保しつつ、信頼性の高いナゲット3(30、31)を形成させることが可能となる。従って、例えば、自動車用部品の製造や車体の組立て等で用いる亜鉛系めっき鋼板のスポット溶接に本発明を適用することにより、自動車分野での亜鉛系めっき鋼板の適用による耐食性向上や、それに伴う安全性、耐久性向上のメリットなどを十分に享受することができ、その社会的な貢献は計り知れない。
以下、本発明に係る亜鉛系めっき鋼板の抵抗スポット溶接方法の実施例を挙げ、本発明をより具体的に説明するが、本発明は、もとより下記実施例に限定されるものではなく、前、後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に含まれるものである。
[実施例1]
供試材として、表1に示すような、引張強さ:300〜1190MPa、板厚:0.5〜3.2mmの、非めっき、あるいは、片面または両面に合金化溶融亜鉛めっき(記号:GA)または溶融亜鉛めっき(記号:GI)が施された、軟鋼板(270E)、2相複合組織型鋼板(日本鉄鋼連盟規格:590Y、980Y、1180Y)を用いた。なお、めっきの目付量は45〜120g/mであった。
次に、上記の鋼板から、40×40mmおよび300×300mmの試験片を切り出し、スポット溶接性評価のための試験片とした。スポット溶接性の評価では、まず、40×40mmの試験片を用い、事前に溶接電流とナゲット径の関係および散りが発生する電流の調査を実施した。また、2秒に1点溶接する連続打点を実施したが、1点目とそれ以降100点ごとでは40×40mmの試験片を、また、その間は300×300mmの試験片を用い、前者の試験片では1点のみ、後者の試験片では30mmピッチで複数点スポット溶接を実施した。
上記の連続打点には、エアー加圧式で交流電源・直流電源ともに使用できるスポット溶接機を用いた。電極としては、JIS C 9304に規定された、直径φ16mm、先端径φ6mm、先端曲率径R40でクロム銅製のドームラジアス(DR)形電極を用いた。上記の連続打点時のスポット溶接条件は、下記表2に示すとおりである。また、一部の試験では、散りが発生した際に電極のドレッシング(先端部の研削)を実施した。
本実施例においては、打点ごとに、スポット溶接時の散り発生状況を目視で観察した。また、スポット溶接部の外観観察、光学顕微鏡を用いた断面でのマクロ組織観察を実施して、溶接金属部(ナゲット)の形成状況、欠陥の有無、割れ発生の有無、溶接部の窪み有無を観察した。連続打点性の判定は、その打点数において、最小板厚の鋼板とそれに接する鋼板の界面に形成されたナゲット径が、最小板厚鋼板の4√t(tは板厚(mm))以上であるか否かによって判定した。
下記表1に鋼板特性の一覧を示すとともに、下記表2に溶接条件及び評価結果(観察結果)の一覧を示す。
Figure 2014188539
Figure 2014188539
表1、2の条件および結果に示すように、本発明の請求項1で規定する鋼板特性を備える亜鉛系めっき鋼板を、同様に規定する溶接条件でスポット溶接を行った、条件No.A1〜A27の本発明例においては、何れの鋼種を用いた場合でも、溶接時に散りが発生することがなく、また、欠陥や割れも発生せず、溶接部における窪みも小さいことが確認でき、良好な連続打点性を示すことがわかった。さらに、加圧力を請求項2の範囲に設定することにより、連続打点性がさらに向上することが確認できた。また、請求項7、8に記載したように直流(インバーター)電源を用いた場合や、さらに極性を最適に配置した場合、請求項10に記載したように電極のドレッシングを行った場合には、連続打点性がさらに向上することが確認できた。
一方、本発明の請求項1で規定する範囲外の鋼板を採用した条件、または上記範囲外の溶接条件で抵抗スポット溶接を行った、条件No.A28〜A41の比較例においては、何れの鋼種を用いた場合においても、溶接時に散りが発生するか、または、欠陥あるいは割れが発生し、さらに、溶接部における窪みが大きくなっているケースもあることが確認された。
[実施例2]
下記表3に示すような、上記実施例1と同様の各種鋼板を用い、実施例1と同様の手順で各鋼板から上記と同様に試験片を切り出した。
次いで、これらの試験片を、下記表3に示した板組みで3枚重ね合わせ、下記表4に示す溶接条件(本発明の請求項3に記載の溶接条件、および、その範囲外の条件)で、上記実施例1と同様の手順で、スポット溶接を実施し、試験片を作製した。この際、上記と同様に、スポット溶接時の散りの発生状態を目視で確認した。
そして、上記手順で得られたスポット溶接試験片について、実施例1と同様、スポット溶接部の外観観察、光学顕微鏡を用いた断面でのマクロ組織観察を実施して、溶接金属部(ナゲット)の形成状況、欠陥の有無、割れ発生の有無、溶接部の窪み有無を観察した。連続打点性の判定は、その打点数において、最小板厚の鋼板とそれに接する鋼板の界面に形成されたナゲット径が、最小板厚鋼板の4√t(tは板厚(mm))以上であるか否かによって判定した。
下記表3に鋼板特性の一覧を示すとともに、下記表4に溶接条件及び評価結果(観察結果)の一覧を示す。
Figure 2014188539
Figure 2014188539
表3、4の条件および結果に示すように、本発明の請求項3で規定する鋼板特性を備える亜鉛系めっき鋼板を、同様に規定する溶接条件で抵抗スポット溶接を行った、条件No.B1〜B27の本発明例においては、何れの鋼種を用いた場合でも、溶接時に散りが発生することがなく、また、欠陥や割れが発生せず、さらに、溶接部における窪みも小さいことが確認でき、良好な連続打点性を示すことが確認できた。また、加圧力を請求項4の範囲に設定することにより、連続打点性がさらに向上することが確認できた。また、請求項7、9に記載したように直流(インバーター)電源を用いた場合や、さらに極性を最適に配置した場合、請求項10に記載したように電極のドレッシングを行った場合には、連続打点性がさらに向上することが確認できた。
一方、本発明の請求項3で規定する範囲外の鋼板を採用した条件、または上記範囲外の溶接条件で抵抗スポット溶接を行った、条件No.B28〜B41の比較例においては、何れの鋼種を用いた場合においても、溶接時に散りが発生するか、または、欠陥あるいは割れが発生し、さらに、溶接部における窪みが大きくなっているケースもあることが確認された。
[実施例3]
下記表5に示すような、上記実施例1、2と同様の各種鋼板を用い、実施例1、2と同様の手順で、各鋼板から上記と同様に試験片を切り出した。
次いで、これらの試験片を、下記表5に示した板組みで3枚重ね合わせ、下記表6に示す溶接条件(本発明の請求項5に記載の溶接条件、および、その範囲外の条件)で、上記実施例1、2と同様の手順で、スポット溶接を実施し、試験片を作製した。この際、上記と同様に、スポット溶接時の散りの発生状態を目視で確認を行った。
そして、上記手順で得られたスポット溶接試験片について、実施例1、2と同様、スポット溶接部の外観観察、光学顕微鏡を用いた断面でのマクロ組織観察を実施して、溶接金属部(ナゲット)の形成状況、欠陥の有無、割れ発生の有無、溶接部の窪み有無を観察した。連続打点性の判定は、その打点数において、最小板厚の鋼板とそれに接する鋼板の界面に形成されたナゲット径が、最小板厚鋼板の4√t(tは板厚(mm))以上であるか否かによって判定した。
下記表5に鋼板特性の一覧を示すとともに、下記表6に溶接条件及び評価結果(観察結果)の一覧を示す。
Figure 2014188539
Figure 2014188539
表5、6の条件および結果に示すように、本発明の請求項5で規定する鋼板特性を備える亜鉛系めっき鋼板を、同様に規定する溶接条件で抵抗スポット溶接を行った、条件No.C1〜C26の本発明例においては、何れの鋼種を用いた場合でも、溶接時に散りが発生することがなく、また、欠陥や割れが発生せず、さらに、溶接部における窪みも小さいことが確認でき、良好な連続打点性を示すことが確認できた。また、加圧力を請求項6の範囲に設定することにより、連続打点性がさらに向上することが確認できた。また、請求項7に記載したように直流(インバーター)電源を用いた場合や、請求項10に記載したように電極のドレッシングを行った場合には、連続打点性がさらに向上することが確認できた。
一方、本発明の請求項5で規定する範囲外の鋼板を採用した条件、または上記範囲外の溶接条件で抵抗スポット溶接を行った、条件No.C27〜C40の比較例においては、何れの鋼種を用いた場合においても、溶接時に散りが発生するか、または、欠陥あるいは割れが発生し、さらに、溶接部における窪みが大きくなっているケースもあることが確認された。
なお、上記実施例1〜3においては、鋼板の板厚を適宜変更して実験を行った場合も、また、めっき種や目付け量等を変更して実験を行った場合も、結果は上記同様であり、溶接時の散りの発生、ならびに、欠陥や割れの発生を防止して連続打点性を向上させる本発明の効果が得られた。
以上説明した実施例の結果より、本発明の亜鉛系めっき鋼板の抵抗スポット溶接方法を用いることにより、溶接時に散りが発生することが無く作業性が良好であり、また、溶接金属部に欠陥や割れ等が発生することが無く、連続打点性が向上し、信頼性の高い溶接継手が得られることが明らかとなった。
本発明によれば、自動車用部品の製造や車体の組立等で用いる亜鉛系めっき鋼板をスポット溶接する際、散り発生の無い良好な溶接作業性を確保しつつ、溶接金属部で発生する欠陥や割れを防止することができる。従って、自動車分野での亜鉛系めっき鋼板の適用による耐食性向上や、それに伴う安全性、耐久性向上のメリットなどを十分に享受することができ、その社会的な貢献は多大である。
1…亜鉛系めっき鋼板、
1A…第1の鋼板、
1B…第2の鋼板、
1C…第3の鋼板、
1D…第4の鋼板、
1E…第5の鋼板、
2(2A、2B)…電極、
3、30、31…ナゲット

Claims (7)

  1. 電極に接する側または両面に片面あたり30〜100g/mの亜鉛系めっきが被覆された板厚0.5〜1.0mmの第1の鋼板と、該第1の鋼板よりも板厚が厚い、非めっき、あるいは、片面または両面に片面あたり30〜100g/mの亜鉛系めっきが被覆された板厚0.7〜3.0mmの第2の鋼板とを重ね合わせ、抵抗スポット溶接を行う亜鉛系めっき鋼板の抵抗スポット溶接方法であって、
    前記第1の鋼板と前記第2の鋼板との板厚比を下記(1)式で表される範囲にするとともに、前記第1の鋼板および第2の鋼板の平均板厚を、下記(2)式で表される平均板厚tm1とした時に、
    重ね合わせられた前記第1の鋼板と前記第2の鋼板の間を、溶接電流WC、溶接時間WT1、保持時間HT、スポット溶接時の電極の加圧力EF1の各々を下記(3)〜(6)式で表される条件に設定して抵抗スポット溶接することを特徴とする亜鉛系めっき鋼板の抵抗スポット溶接方法。
    1.2≦t2/t1≦3.0 ・・・(1)
    tm1=(t1+t2)/2 ・・・(2)
    0.80×Ie≦WC≦0.98×Ie ・・・(3)
    (10×t1+2)/60≦WT1≦(10×tm1+2)/50 ・・・(4)
    HT≦0.2 ・・・(5)
    1.96×t1≦EF1≦3.19×tm1 ・・・(6)
    {但し、上記(1)〜(6)式において、t1:第1の鋼板の板厚(mm)、t2:第2の鋼板の板厚(mm)、tm1:第1の鋼板および第2の鋼板の平均板厚(mm)、Ie:散り発生電流(kA)、WC:溶接電流(kA)、WT1:溶接時間(s)、HT:溶接通電後に鋼板を電極で加圧する保持時間(s)、EF1:スポット溶接時の電極の加圧力(kN)を示す。}
  2. 電極に接する側または両面に片面あたり30〜100g/mの亜鉛系めっきが被覆された板厚0.5〜1.0mmの第1の鋼板と、該第1の鋼板よりも板厚が厚い、非めっき、あるいは、片面または両面に片面あたり30〜100g/mの亜鉛系めっきが被覆された板厚0.6〜2.0mmの第3の鋼板とを重ね合わせ、さらに、前記第3の鋼板側に、前記第1の鋼板よりも板厚が厚く、非めっき、あるいは、片面または両面に片面あたり30〜100g/mの亜鉛系めっきが被覆された板厚0.6〜2.0mmの第4の鋼板を重ね合わせ、抵抗スポット溶接を行う亜鉛系めっき鋼板の抵抗スポット溶接方法であって、
    前記第1の鋼板と、前記第3の鋼板および第4の鋼板の合計板厚との比を下記(7)式で表される範囲にするとともに、前記第1の鋼板、第3の鋼板および第4の鋼板の3枚重ねを2枚重ねと仮定した時の平均板厚を、下記(8)式で表される平均板厚tm2とした時に、
    重ね合わせられた前記第1、3、4の鋼板の各々の間を、溶接電流WC、保持時間HTの各々を、請求項1に記載の(3)、(5)式で表される条件に設定するとともに、溶接時間WT2、スポット溶接時の電極の加圧力EF2を下記(9)、(10)式で表される条件に設定して抵抗スポット溶接することを特徴とする亜鉛系めっき鋼板の抵抗スポット溶接方法。
    1.2≦(t3+t4)/t1≦3.0 ・・・(7)
    tm2=(t1+t3+t4)/2 ・・・(8)
    (10×t1+2)/60≦WT2≦(10×tm2+2)/50 ・・・(9)
    1.96×t1≦EF2≦3.19×tm2 ・・・(10)
    {但し、上記(7)〜(10)式において、t1:第1の鋼板の板厚(mm)、t3:第3の鋼板の板厚(mm)、t4:第4の鋼板の板厚(mm)、tm2:第1の鋼板、第3の鋼板および第4の鋼板の3枚重ねを2枚重ねと仮定した時の平均板厚(mm)、WT2:溶接時間(s)、EF2:スポット溶接時の電極の加圧力(kN)を示す。}
  3. 電極に接する側または両面に片面あたり30〜100g/mの亜鉛系めっきが被覆された板厚0.5〜1.0mmの第1の鋼板と、該第1の鋼板よりも板厚が厚い、非めっき、あるいは、片面または両面に片面あたり30〜100g/mの亜鉛系めっきが被覆された板厚0.7〜3.0mmの第2の鋼板とを重ね合わせ、さらに、前記第2の鋼板側に、該第2の鋼板よりも板厚が薄く、非めっき、あるいは、電極に接する面または両面に片面あたり30〜100g/mの亜鉛系めっきが被覆された板厚0.5〜1.0mmの第5の鋼板を重ね合わせ、抵抗スポット溶接を行う亜鉛系めっき鋼板の抵抗スポット溶接方法であって、
    前記第1の鋼板と前記第2の鋼板との板厚比を請求項1に記載の(1)式、前記第5の鋼板と前記第2の鋼板との板厚比を下記(11)式で表される範囲に設定するとともに、前記第1の鋼板、前記第2の鋼板および前記第5の鋼板の3枚重ねを2枚重ねと仮定した時の平均板厚を、下記(12)式で表される平均板厚tm3とした時に、
    重ね合わせられた前記第1の鋼板、前記第2の鋼板および第5の鋼板の各々の間を、溶接電流WC、保持時間HTの各々を請求項1に記載の(3)、(5)式で表される条件に設定するとともに、溶接時間WT3、スポット溶接時の電極の加圧力EF3を下記(13)、(14)式で表される条件に設定して抵抗スポット溶接することを特徴とする亜鉛系めっき鋼板の抵抗スポット溶接方法。
    1.2≦t2/t5≦3.0 ・・・(11)
    tm3=(t1+t2+t5)/2 ・・・(12)
    (10×t1+2)/60≦WT3≦(10×tm3+2)/50 ・・・(13)
    1.96×t1≦EF3≦3.19×tm3 ・・・(14)
    {但し、上記(11)〜(14)式において、t1:第1の鋼板の板厚(mm)、t2:第2の鋼板の板厚(mm)、t5:第5の鋼板の板厚(mm)、tm3:第1の鋼板、第2の鋼板および第5の鋼板の3枚重ねを2枚重ねと仮定した時の平均板厚(mm)、WT3:溶接時間(s)、EF3:スポット溶接時の電極の加圧力(kN)を示す。}
  4. 抵抗スポット溶接電源として直流電源を用いることを特徴とする請求項1〜請求項3の何れか1項に記載の亜鉛系めっき鋼板の抵抗スポット溶接方法。
  5. 抵抗スポット溶接電源として直流電源を用い、板厚の薄い前記第1の鋼板側が正極(+)、板厚の厚い前記第2の鋼板側が負極(−)となるように電極を配置して抵抗スポット溶接することを特徴とする請求項1に記載の亜鉛系めっき鋼板の抵抗スポット溶接方法。
  6. 抵抗スポット溶接電源として直流電源を用い、前記第1の鋼板または前記第5の鋼板の内、何れか薄い側が正極(+)、厚い側が負極(−)となるように電極を配置して抵抗スポット溶接することを特徴とする請求項2に記載の亜鉛系めっき鋼板の抵抗スポット溶接方法。
  7. 請求項1〜請求項6の何れか1項に記載の方法を用いて、鋼板同士を重ね合わせて抵抗スポット溶接を連続打点で行う際、鋼板表面に散りが発生した時点で溶接を中断し、電極の表面から0.1〜1.0mmの厚さでドレッシングを行った後、抵抗スポット溶接による連続打点を再開することを特徴とする亜鉛系めっき鋼板の抵抗スポット溶接方法。
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