JP2014184747A - 車両制御装置および車両制御方法 - Google Patents

車両制御装置および車両制御方法 Download PDF

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Abstract

【課題】自動運転によるカーブ走行時に道路上の轍に応じて車両が安定するように走行制御を行うことができ、カーブ外側への逸脱に対する安全マージンを向上させ、カーブ走行時にドライバーへ安心感を与えることを課題とする。
【解決手段】本発明は、車両の走行可能領域を検出する走行可能領域検出装置と、走行可能領域検出装置が検出した走行可能領域を車両が走行するために算出された目標車両挙動量に基づいて軌跡制御を実行する走行制御装置と、走行制御装置による軌跡制御の実行時において、走行可能領域が曲率を有するカーブであるときに、走行可能領域検出装置がカーブの内側に轍を検知した場合、検知したカーブの内側の轍上を車両の内輪が走行するように、目標車両挙動量を補正する制御装置と、を備える。
【選択図】図3

Description

本発明は、車両制御装置および車両制御方法に関する。
従来、自動運転中に道路上の轍に応じて車両が安定するように走行制御を行う技術が開発されている。
例えば、特許文献1には、先方車両を追尾する後方車両において自動走行を行う際に、先方車両の走行経路に応じて、後方車両において道路の轍を避けるかまたは轍上を走行するかを選択し、自動走行用の経路設定を行う技術が開示されている。
また、特許文献2には、道路の轍を避けるよう走行目標経路を道路の中心より左右にオフセットさせる技術が開示されている。具体的には、特許文献2に記載の技術では、道路の轍を検知し、検知した轍を避けるようにレーン中心から右か左にオフセットを設けた走行目標経路を基準として制御している。ここで、オフセットは、その時点の自車のオフセット方向(左または右)にプラスするよう設定される。
また、特許文献3には、道路の轍および轍の程度を判定し、その状況に応じて操舵トルクを増加させることで轍走行におけるふらつきを抑制する技術が開示されている。
特開2008−108219号公報 特開2001−260921号公報 特開2001−180511号公報
ところで、従来技術においては、自動運転によるカーブ走行時に道路上の轍に応じて車両が安定するように走行制御を行う点で改善の余地があった。
例えば、特許文献1に記載の技術では、自動運転によるカーブ走行時のレーン逸脱に対する安全性については言及されておらず、自動運転中によるカーブ走行時におけるカーブ外側への逸脱に対してドライバーが感じる不安を増加させる可能性がある。また、特許文献2に記載の技術でも、検知した道路上の轍を避けようとするので、例えば大型車による轍の場合、普通車の車両はこの轍を避けるために外側を走行する可能性が高い。この場合、カーブ走行時のレーン逸脱に対する安全マージンが十分確保できない可能性があり、ドライバーが感じるレーン逸脱への不安感を増加させる可能性がある。更に、特許文献3に記載の技術においても、大型車による轍の場合、普通車の車両はどちらの轍に車輪を合わせるかが明示されておらず、轍の位置によっては車両位置がカーブ走行時のレーン逸脱に対する安全マージンが少ない側になり得る。この場合も、ドライバーが感じるレーン逸脱への不安感を増加させる可能性がある。
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであって、自動運転によるカーブ走行時に道路上の轍に応じて車両が安定するように走行制御を行うことができ、カーブ外側への逸脱に対する安全マージンを向上させ、カーブ走行時にドライバーへ安心感を与えることができる車両制御装置および車両制御方法を提供することを目的とする。
本発明の車両制御装置は、車両の走行可能領域を検出する走行可能領域検出装置と、前記走行可能領域検出装置が検出した前記走行可能領域を前記車両が走行するために算出された目標車両挙動量に基づいて軌跡制御を実行する走行制御装置と、前記走行制御装置による前記軌跡制御の実行時において、前記走行可能領域が曲率を有するカーブであるときに、前記走行可能領域検出装置が前記カーブの内側に轍を検知した場合、検知した前記カーブの内側の轍上を前記車両の内輪が走行するように、前記目標車両挙動量を補正する制御装置と、を備えたことを特徴とする。
上記車両制御装置において、前記制御装置は、前記走行制御装置による前記軌跡制御の実行時において、前記走行可能領域が曲率を有するカーブであるときに、前記走行可能領域検出装置が前記カーブの内側に轍を検知した場合であって、検知した前記カーブの内側の轍の深さの進行方向への変化量が所定範囲内である場合に、検知した前記カーブの内側の轍上を前記車両の内輪が走行するように、前記目標車両挙動量を補正することが好ましい。
上記車両制御装置において、前記制御装置は、前記走行制御装置による前記軌跡制御の実行時において、前記走行可能領域が曲率を有するカーブであるときに、前記走行可能領域検出装置が前記カーブの内側に轍を検知した場合であって、検知した前記カーブの内側の轍の深さの最大値が所定範囲内である場合に、検知した前記カーブの内側の轍上を前記車両の内輪が走行するように、前記目標車両挙動量を補正することが好ましい。
上記車両制御装置において、前記制御装置は、前記走行制御装置による前記軌跡制御の実行時において、前記走行可能領域が曲率を有するカーブであるときに、前記走行可能領域検出装置が前記カーブの内側に轍を検知した場合であって、検知した前記カーブの内側の轍の左右方向への蛇行量が所定範囲内である場合に、検知した前記カーブの内側の轍上を前記車両の内輪が走行するように、前記目標車両挙動量を補正することが好ましい。
また、本発明の車両制御方法は、車両の走行可能領域を検出する走行可能領域検出装置と、前記走行可能領域検出装置が検出した前記走行可能領域を前記車両が走行するために算出された目標車両挙動量に基づいて軌跡制御を実行する走行制御装置と、前記走行可能領域検出装置の検出結果に基づき前記走行制御装置を制御する制御装置と、を備えた車両制御装置において実行される車両制御方法であって、前記制御装置において実行される、前記走行制御装置による前記軌跡制御の実行時において、前記走行可能領域が曲率を有するカーブであるときに、前記走行可能領域検出装置が前記カーブの内側に轍を検知した場合、検知した前記カーブの内側の轍上を前記車両の内輪が走行するように、前記目標車両挙動量を補正する工程を含むことを特徴とする。
本発明にかかる車両制御装置および車両制御方法は、自動運転によるカーブ走行時に道路上の轍に応じて車両が安定するように走行制御を行うことができ、カーブ外側への逸脱に対する安全マージンを向上させ、カーブ走行時にドライバーへ安心感を与えることができるという効果を奏する。
図1は、実施形態に係る車両制御装置が適用された車両の概略構成図である。 図2は、轍に応じた走行制御に関わる車両制御装置の構成の一部を示す図である。 図3は、轍が存在するカーブを走行中の車両の状況を示す図である。 図4は、図3に示すカーブ走行中の車両の車両姿勢を示す図である。 図5は、本実施形態に係る車両制御装置において実行される車両制御処理を示すフローチャートである。 図6は、カーブ内側の轍を目標とする操舵制御1の処理の詳細を示すフローチャートである。 図7は、制御ゲインと轍の傾斜角との関係を示す図である。 図8は、轍の傾斜角が小さい場合の制御ゲインの大きさを説明するための図である。 図9は、轍の傾斜角が大きい場合の制御ゲインの大きさを説明するための図である。 図10は、レーン中心側の轍を目標とする操舵制御2の処理の詳細を示すフローチャートである。 図11は、車両制御装置において実行される轍走行可否判断1および轍走行可否判断2を含む車両制御処理を示すフローチャートである。
以下に、本発明に係る実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
[実施形態]
本実施形態に係る車両制御装置の構成について図1〜図4を参照しながら説明する。図1は、実施形態に係る車両制御装置1が適用された車両2の概略構成図である。
本実施形態の車両制御装置1は、図1に示すように四輪操舵の車両2に搭載される。なおここでは、車両2は、図1の矢印Y方向に前進する。車両2が前進する方向は、車両2の運転者が座る運転席からハンドルへ向かう方向である。左右の区別は、車両2の前進する方向(図1の矢印Y方向)を基準とする。すなわち、「左」とは、車両2の前進する方向に向かって左側をいい、「右」とは、車両2の前進する方向に向かって右側をいう。また、車両2の前後は、車両2が前進する方向を前とし、車両2が後進する方向、すなわち車両2が前進する方向とは反対の方向を後とする。
車両2は、車輪3として、左前輪(左前側の車輪3)3FL、右前輪(右前側の車輪3)3FR、左後輪(左後側の車輪3)3RL、右後輪(右後側の車輪3)3RRを備える。なお、以下の説明では、左前輪3FL、右前輪3FR、左後輪3RL、右後輪3RRを特に分けて説明する必要がない場合には単に「車輪3」という場合がある。また、以下の説明では、左前輪3FL、右前輪3FRを特に分けて説明する必要がない場合には単に「前輪3F」という場合がある。同様に、以下の説明では、左後輪3RL、右後輪3RRを特に分けて説明する必要がない場合には単に「後輪3R」という場合がある。
この車両制御装置1は、車両2の前輪3Fおよび後輪3Rを操舵可能であるステアリングアクチュエータとしての操舵装置6等を搭載した装置である。車両制御装置1は、典型的には、前輪操舵装置9および後輪操舵装置10等からなる4輪操舵(4 Wheel Steering)機構である操舵装置6を備える車両2にて車両制御を実行する。
図1に示すように、車両制御装置1は、駆動装置4と、制動装置5と、操舵装置6と、制御装置としてのECU(Electronic Control Unit)7とを備える。
駆動装置4は、車両2において、動力源4a、トルクコンバータ4b、変速機4c等を含んだパワートレーンを構成し、駆動輪となる車輪3を回転駆動するものである。動力源4aは、車両2を走行させる回転動力を発生させるものであり、内燃機関(機関)や電動機(回転機)などの走行用の動力源である。駆動装置4は、動力源4aが発生させた動力を動力源4aからトルクコンバータ4b、変速機4c等を介して車輪3(例えば、駆動輪としての左後輪3RL、右後輪3RR)に伝達する。駆動装置4は、ECU7に電気的に接続され、このECU7によって制御される。車両2は、運転者によるアクセルペダル8aの操作(アクセル操作)に応じて駆動装置4が動力(トルク)を発生させ、この動力が車輪3に伝達され、車輪3に駆動力を発生させる。
制動装置5は、車両2において、車輪3に制動力を発生させるものである。制動装置5は、各車輪3にそれぞれ制動部5aが設けられる。各制動部5aは、車両2の各車輪3に摩擦による制動力を付与するものであり、例えば、油圧ブレーキ装置である。各制動部5aは、ホイールシリンダに供給されるブレーキオイルによるホイールシリンダ圧に応じて作動し車輪3に圧力制動力を発生させる。制動装置5は、運転者によるブレーキペダル8bの操作(ブレーキ操作)に応じてマスタシリンダによりブレーキオイルにマスタシリンダ圧が付与される。そして、制動装置5は、このマスタシリンダ圧に応じた圧力、あるいは、油圧制御装置によって調圧された圧力が各ホイールシリンダにてホイールシリンダ圧として作用する。各制動部5aは、ホイールシリンダ圧によってキャリパに支持されたブレーキパッドがディスクロータに当接し押し付けられることで、ブレーキパッドとディスクロータとの当接面が摩擦面となる。そして、各制動部5aは、当該摩擦面に生じる摩擦力により、車輪3と共に回転するディスクロータに対して、ホイールシリンダ圧に応じた所定の回転抵抗力が作用し車輪3に摩擦による制動力を付与することができる。
操舵装置6は、車両2の前輪3Fおよび後輪3Rを操舵可能なものであり、ここでは、前輪操舵装置9と後輪操舵装置10とを含んで構成される。前輪操舵装置9は、車両2の前輪3Fを操舵可能であり、左前輪3FL、右前輪3FRを操舵輪として操舵する。後輪操舵装置10は、車両2の後輪3Rを操舵可能であり、左後輪3RL、右後輪3RRを操舵輪として操舵する。
なお、以下の説明では、上述の駆動装置4、制動装置5および操舵装置6を走行制御装置という場合がある。本実施形態において、走行制御装置は、後述する前方検出装置13が検出した走行可能領域を車両2が走行するために算出された目標車両挙動量に基づいて、軌跡制御を実行する機能を有する。ここで、目標車両挙動量とは、軌跡制御によって車両2が走行可能領域内の目標軌跡に沿って走行する際に目標とする車両挙動を規定する各種パラメータを意味する。
前輪操舵装置9は、運転者による操舵操作子である操舵部材としてのステアリングホイール(ハンドル)9aと、このステアリングホイール9aの操舵操作に伴い駆動し前輪3Fを転舵させる転舵角付与機構9bとを備えている。転舵角付与機構9bは、例えば、ラックギヤやピニオンギヤを備えた所謂ラック&ピニオン機構等を用いることができるがこれに限らない。更に、前輪操舵装置9は、ステアリングホイール9aと転舵角付与機構9bとの間に設けられるVGRS(Variable Gear Ratio Steering)装置9c、前輪用の操舵駆動器(倍力装置)9d等を含んで構成される。VGRS装置9cは、ステアリングホイール9aのギヤ比を変更することができるギヤ比可変ステアリング機構である。前輪操舵装置9は、例えば、VGRS装置9cによって、車両2の車両状態(例えば車両2の走行速度である車速V)に応じて、ステアリングホイール9aの操作量であるハンドル操舵角MA(切れ角)に対する前輪3Fの転舵角(以下、「前輪転舵角」という場合がある。)を変更することができる。操舵駆動器(操舵補助装置)9dは、運転者からステアリングホイール9aに加えられた操舵力を、電動機等の動力(操舵補助力)により補助する所謂電動パワーアシストステアリング装置(EPS(Electric Power assist Steering)装置)である。前輪操舵装置9は、ECU7に電気的に接続され、このECU7によってVGRS装置9c、操舵駆動器9d等が制御される。
後輪操舵装置10は、所謂ARS(Active Rear Steering)装置である。後輪操舵装置10は、電動機等の動力により駆動し後輪3Rを転舵させる後輪用の操舵駆動器10aを備えている。後輪操舵装置10は、前輪操舵装置9と同様に、例えば、操舵駆動器10aによって、車両2の車両状態(例えば車速V)に応じて、ハンドル操舵角MAに対する後輪3Rの転舵角(以下、「後輪転舵角」という場合がある。)を変更することができる。後輪操舵装置10は、ECU7に電気的に接続され、このECU7によって操舵駆動器10a等が制御される。後輪操舵装置10は、例えば、ECU7によって、車両2の車両状態(例えば車速Vや旋回状態)に応じて、前輪3Fの転舵角と同位相、あるいは逆位相で後輪3Rを操舵する。
車両制御装置1は、上記のように前輪操舵装置9および後輪操舵装置10により操舵装置6が構成され、左前輪3FLおよび右前輪3FRと共に、左後輪3RLおよび右後輪3RRも操舵輪となる。また、前輪操舵装置9、後輪操舵装置10は、ECU7の制御により運転者による操舵操作とは無関係に前輪3F、後輪3Rの転舵角を変化させることもできる。
また、この操舵装置6は、車両2の車体スリップ角βを調節可能なアクチュエータでもある。ここで、車体スリップ角βは、車両2の車体の前後方向中心線(車体の向き)と車両2の車体の進行方向(速度ベクトル)とがなす角度であり、例えば、車両2の旋回接線方向に対して車両2の車体の前後方向中心線がなす角度である。車体スリップ角βは、例えば、車体の前後方向中心線と車体進行方向とが一致する状態を0[rad]とする。車体スリップ角βは、例えば、車両2の前輪転舵角δ、後輪転舵角δ等に応じて定まる。操舵装置6は、前輪転舵角δ、および、後輪転舵角δを調節することで車両2の車体スリップ角βを調節することができる。
ECU7は、車両2の各部の駆動を制御する制御装置であり、CPU、ROM、RAMおよびインターフェースを含む周知のマイクロコンピュータを主体とする電子回路を含んで構成される。ECU7は、例えば、種々のセンサ、検出器類が電気的に接続され、検出結果に対応した電気信号が入力される。そして、ECU7は、各種センサ、検出器類等から入力された各種入力信号や各種マップに基づいて、格納されている制御プログラムを実行することにより、駆動装置4、制動装置5、操舵装置6、サスペンション装置15等の車両2の各部に駆動信号を出力しこれらの駆動を制御する。
本実施形態の車両制御装置1は、種々のセンサ、検出器類として、例えば、車輪速センサ11、ホイールシリンダ圧センサ12、前方検出装置13、GPS情報受信部14等を備えている。
車輪速センサ11は、左前輪3FL、右前輪3FR、左後輪3RL、右後輪3RRに対してそれぞれ1つずつ、合計4つが設けられる。各車輪速センサ11は、それぞれ左前輪3FL、右前輪3FR、左後輪3RL、右後輪3RRの回転速度である車輪速を検出する。ECU7は、各車輪速センサ11から入力される各車輪3の車輪速に基づいて、車両2の走行速度である車速Vを算出することができる。
ホイールシリンダ圧センサ12は、左前輪3FL、右前輪3FR、左後輪3RL、右後輪3RRの各制動部5aに対してそれぞれ1つずつ、合計4つが設けられる。各ホイールシリンダ圧センサ12は、それぞれ左前輪3FL、右前輪3FR、左後輪3RL、右後輪3RRの各制動部5aのホイールシリンダ圧を検出する。
前方検出装置13は、車両2の進行方向(前進方向Yに沿った方向)前方側の状況を検出する。前方検出装置13は、例えば、ミリ波レーダ、レーザや赤外線などを用いたレーダ、UWB(Ultra Wide Band)レーダ等の近距離用レーダ、可聴域の音波または超音波を用いたソナー、CCDカメラなどの撮像装置により車両2の走行方向前方を撮像した画像データを解析することで車両2の進行方向前方側の状況を検出する画像認識装置等を用いてもよい。なお、前方検出装置13は、レーダまたはカメラが1つずつであってもよい。
前方検出装置13は、車両2の進行方向前方側の状況として、例えば、車両2の進行方向前方側の周辺物体(障害物や前走車等)の有無、検出した周辺物体と車両2との相対位置関係を示す相対物理量、車両2が走行する道路の形状(直線やカーブ等)、走行車線(レーン)、道路上の轍の有無や轍の状態(太さや深さ等)などのうちの少なくとも1つを検出する。ここで、轍とは、車両が道路に残した車輪3の跡や窪みを意味する。轍は、例えば、高速道路や一般道等のアスファルトやコンクリートの道路を大型車両等の車両が何度も走行することで車輪3と道路との摩擦により削られた車輪3の跡や窪みを含む。この他、轍は、例えば、農道等の砂利や土の道路に残された車輪3の跡や窪みを含んでもよいし、雪が積もった道路に残された車輪3の跡や窪みを含んでもよい。
道路上の轍は、前方検出装置13によって以下に示す方法により検出されるが、これに限定されない。例えば、前方検出装置13としてのレーダは、車両2から所定距離前方の一定範囲の道路面にレーザ光を左右に走査しながら照射する。これにより、前方検出装置13としてのカメラにより撮像された車両前方道路の画像に、車両2から所定距離前方の路面で反射されたレーザ光の横断線が捕捉される。ここで、路面に轍がなく平坦な場合は、レーザ光の反射光は直線の横断線として観測される。一方、路面に轍がある場合には、レーザ反射光の横断線は轍部分で湾曲したり不連続になる。このようにして、前方検出装置13は轍の有無を検出する。更に、前方検出装置13は、路面に轍がある場合には、レーザ反射光の横断線が示す轍部分での湾曲部分の幅や深さを測定することで、轍の太さや深さ等の轍の状態を検出する。
本実施形態において、前方検出装置13は、車両2の走行可能領域を検出する走行可能領域検出装置として機能する。ここで、走行可能領域とは、例えば、道路に沿って引かれた白線、ガードレール、反射板等の対象物に基づいて決定される、走行中の車両2が走行すべき一定範囲であって、上述の対象物の連続性により規定される一定範囲を意味する。以下の説明では、前方検出装置13を走行可能領域検出装置という場合がある。この場合、走行可能領域検出装置は、後述の図2における白線センサ13−1としての機能を有する。また、走行可能領域検出装置は、上述したように走行可能領域内に轍が存在するか否かを検出可能である。この場合、走行可能領域検出装置は、後述の図2における轍センサ13−2としての機能を有する。更に、走行可能領域検出装置は、検出した走行可能領域の形状から当該走行可能領域が曲率を有するカーブであるか否かを判定可能である。
GPS情報受信部14は、GPS衛星から位置情報としてGPS情報を受信する。GPS情報受信部14は、GPS衛星から受信した位置情報に基づく車両2の現在位置を示す情報をECU7に出力する。
また、本実施形態において、車両2は、各車輪3(左前輪3FL、右前輪3FR、左後輪3RL、右後輪3RR)に対して、サスペンションアクチュエータとしてのサスペンション装置15を備えている。図示しないが、サスペンション装置15は、バネ機構と、減衰機構とを備えている。バネ機構と減衰機構とは、並列的に設けられている。バネ機構は、バネ上部材とバネ下部材とを接続し、バネ上部材とバネ下部材との相対変位に応じたバネ力を発生させ、そのバネ力をバネ上部材およびバネ下部材に作用させる。バネ機構は、例えば、後述の減衰機構のピストン等に装着されるコイルスプリング等によって上記バネ力を発生させる。バネ上部材とバネ下部材との相対変位とは、バネ上部材とバネ下部材とがサスペンション装置15の伸縮方向において接近あるいは離間する方向の相対変位である。なお、ここでは、伸縮方向は、鉛直方向に沿った方向であるものとして説明しているが、鉛直方向に対して所定の傾斜を有していてもよい。また、バネ機構は、バネ係数、すなわち、バネ力を可変に制御可能な構成であってもよい。減衰機構は、バネ上部材とバネ下部材とを接続し、バネ上部材とバネ下部材との相対移動を減衰させる減衰力を発生させる。バネ上部材とバネ下部材との相対移動とは、バネ上部材とバネ下部材とが伸縮方向において接近あるいは離間する方向の相対移動である。減衰機構は、この相対移動におけるバネ上部材とバネ下部材との相対速度に応じた減衰力を発生させることで相対移動を減衰させる。このサスペンション装置15は、ECU7から出力される制御信号により制御可能である。
ここで、本実施形態の車両制御装置1が備えるECU7の機能の詳細について説明する。ECU7は、VGRS装置9cからハンドル操舵角センサが検出したハンドル操舵角MA(切れ角)に対応した電気信号が入力される。ハンドル操舵角MAは、ステアリングホイール9aの操舵角(ステアリングホイール9aの回転角度)である。また、ECU7は、操舵駆動器9dから前輪転舵角センサが検出した前輪転舵角δに対応した電気信号が入力される。前輪転舵角δは、前輪3Fの転舵角(前輪3Fの回転角度)である。同様に、ECU7は、操舵駆動器10aから後輪転舵角センサが検出した後輪転舵角δに対応した電気信号が入力される。後輪転舵角δは、後輪3Rの転舵角(後輪3Rの回転角度)である。
そして、ECU7は、例えば、予め設定された車両2の車体スリップ角特性に応じて、前輪操舵装置9、後輪操舵装置10を制御し前輪3F、後輪3Rを操舵して、前輪転舵角δ、後輪転舵角δを変更する。ECU7は、例えば、ハンドル操舵角MA、車速V等に基づいて、目標ヨーレートおよび目標車体スリップ角を算出する。この目標ヨーレート、目標車体スリップ角は、前輪操舵装置9、後輪操舵装置10を操舵制御する際に目標とするヨーレート、車体スリップ角βであり、例えば、車両2の挙動を安定化させる値に設定される。そして、ECU7は、算出した目標ヨーレート、目標車体スリップ角が実現できるように、前輪転舵角δの制御量および後輪転舵角δの制御量を算出する。ECU7は、例えば、予め記憶部に記憶されている車両2の車両運動モデルを用いて、目標ヨーレート、目標車体スリップ角から前輪転舵角δ、後輪転舵角δの制御量を逆演算する。そして、ECU7は、算出した前輪転舵角δ、後輪転舵角δの制御量に基づいて、前輪操舵装置9、後輪操舵装置10に制御指令を出力する。ECU7は、操舵駆動器9dの前輪転舵角センサ、操舵駆動器10aの後輪転舵角センサが検出する実際の前輪転舵角δ、後輪転舵角δをフィードバック制御し、実際のヨーレート、車体スリップ角βが目標ヨーレート、目標車体スリップ角に収束するように前輪操舵装置9、後輪操舵装置10を制御する。この結果、車両2は、前輪操舵装置9、後輪操舵装置10によって前輪3F、後輪3Rが所定の車体スリップ角特性に応じて操舵されながら走行することができる。
また更に、ECU7は、車両2を自動運転で走行させる自動運転制御を行うこともできる。ECU7は、例えば、前方検出装置13による検出結果に基づいて車両2を制御し自動運転制御を実行可能である。自動運転制御は、例えば、前方検出装置13による検出結果に基づいて目標軌跡を生成し、当該目標軌跡に沿って車両2が走行するための目標車両挙動量に基づいて、走行制御装置としての駆動装置4、制動装置5、操舵装置6(前輪操舵装置9および後輪操舵装置10)を制御する軌跡制御である。ECU7は、前方検出装置13が検出した車両2の進行方向前方側の周辺物体(障害物)の有無、周辺物体と車両2との相対物理量、車両2が走行する道路の形状(直線やカーブ等)、走行車線(レーン)、ガードレール等に基づく走行可能領域内で、車両2の目標とする走行軌跡である目標軌跡を生成する。ECU7は、例えば、自車である車両2を現在の走行車線内に維持したまま走行させる走行軌跡(レーンキーピングアシスト)、車両2の進行方向前方側の障害物を回避する走行軌跡、車両2を前走車に追従走行させる走行軌跡等に応じて、車両2の目標軌跡を生成する。
そして、ECU7は、生成した目標軌跡に応じた進行方向および姿勢で車両2が進行するように算出される目標車両挙動量に基づいて、走行制御装置としての駆動装置4、制動装置5、操舵装置6を制御する。この場合、ECU7は、例えば、目標車両挙動量として、ハンドル操舵角MA、車速Vに加えて、生成した目標軌跡に関する指標(例えば目標軌跡に対する車両2の目標横位置Yref、目標ヨー角Ψref等)に基づき算出される前輪転舵角δの制御量(例えば、LKA前輪補正目標角θLK、VGRS通常目標角θVG等)、後輪転舵角δの制御量(例えば、LKA後輪補正目標角θLKR等)によって、前輪操舵装置9、後輪操舵装置10を制御する。この結果、車両2は、軌跡制御によって前輪操舵装置9、後輪操舵装置10を介して前輪3F、後輪3Rが操舵されながら、目標軌跡に沿って走行することができる。
また、ECU7は、例えば、車速Vを所定車速に自動制御するオートクルーズ走行、先行車両に対して一定の車間距離をあけて自動的に追従走行する自動追従走行、進行方向前方側の信号機の灯火状況や停止線の位置に応じて車両2の停止および発進を自動制御するなどの自動運転制御も行うことができる。なお、車両制御装置1は、例えば、所定の切替スイッチを介した運転者の切り替え操作に応じて、運転者の意思に応じて任意に自動運転制御(軌跡制御)のオンとオフとを切り替えることができる。切替スイッチは、自動運転制御のオンを指令する情報、または、自動運転制御のオフを指令する情報を含むスイッチ情報を、ECU7へ出力するものとする。切替スイッチは、自動運転制御のオンとオフとを切り替えるためのスイッチ情報の他、車両2の走行モード(ノーマルモードまたはスポーツモード等)を切り替えるためのスイッチ情報を、ECU7へ出力してもよい。
ここで、車両2が走行する走行可能領域内に轍が存在する場合が考えられる。この場合、軌跡制御が行われる車両2において、道路上の轍に応じて車両2が安定するように走行制御を行うことが好ましい。
そこで、本実施形態の車両制御装置1は、走行可能領域検出装置が検出した走行可能領域内に轍が存在する場合と、当該走行可能領域内に轍が存在しない場合とで、操舵制御の内容を変更している。例えば、車両制御装置1は、走行可能領域検出装置が検出した走行可能領域内に轍が存在しない場合は、轍による車両の安定性への影響について特に考慮しなくてもよいと考えられるため、通常の軌跡制御を実行するよう、例えば道路上の白線を追従する自動運転を実行する。
一方、車両制御装置1は、走行可能領域検出装置が検出した走行可能領域内に轍が存在する場合は、走行可能領域が曲率を有さない直線であるか、曲率を有するカーブであるかによって、どの轍に車両2の車輪3を乗せるように走行制御を行えば車両2が安定するかを判定した上で、自動運転を実行する。例えば、車両制御装置1は、走行可能領域が曲率を有さない直線であるときに、走行可能領域検出装置が当該走行可能領域内の左側の轍と右側の轍のうちレーン中心側に近い轍を目標として設定し、当該レーン中心側に近い轍上に車両2の車輪3を乗せるように走行制御を行う。一方、車両制御装置1は、走行可能領域が曲率を有するカーブであるときに、走行可能領域検出装置がカーブの内側に轍を検知した場合、検知したカーブ内側の轍を目標として設定し、当該カーブ内側の轍上に車両2の内輪を乗せるように走行制御を行う。ここで、カーブ内側の轍とは、レーン中心よりカーブ旋回方向の内側に存在する轍をいう。一方、カーブ外側の轍とは、レーン中心よりカーブ旋回方向の外側に存在する轍をいう。なお、車両制御装置1は、検出した轍の状態に応じて、轍上に車両2の車輪3を乗せると車両2の安定性が損なわれると判定した場合は、轍を避けるように走行制御を行ってもよい。
具体的には、本実施形態において、車両制御装置1のECU7は、図2に示すような構成により、自動運転中に道路上の轍に応じて車両が安定するように走行制御を行っている。図2は、轍に応じた走行制御に関わる車両制御装置1の構成の一部を示す図である。図2に示すように、ECU7は、大別して、車両制御ECU7aと、ステアリングECU7bと、サスペンションECU7cと、を備える。車両制御ECU7aは、更に、操舵制御部7a−1と、地図データ記憶部7a−2と、サスペンション制御部7a−3と、を備える。
車両制御ECU7aのうち、操舵制御部7a−1は、走行可能領域検出装置としての白線センサ13−1により検出された道路上の白線の情報と、GPS情報受信部14にてGPS衛星より受信された車両2の現在位置を示す情報と、地図データ記憶部7a−2に記憶された道路情報を含む地図データと、走行可能領域検出装置としての轍センサ13−2により検出された道路上の轍の情報と、に基づいて、ステアリングECU7bを介して、操舵装置としてのステアリングアクチュエータ6を制御する。ステアリングECU7bは、操舵制御部7a−1からの入力に応じてステアリングアクチュエータ6を制御するECUである。
例えば、操舵制御部7a−1は、図3に示すように、カーブで轍を検知した場合は、カーブ内側の轍に車両2のフロント内輪(図3において、右前輪3FR)とリア内輪(図3において、右後輪3RR)を合わせるように走行させるようステアリングECU7bを介して、操舵装置としてのステアリングアクチュエータ6を制御する。図3は、轍が存在するカーブを走行中の車両2の状況を示す図である。図3に示す右カーブでは、白線で囲まれた曲率を有するカーブ形状の走行可能領域内を、車両2が、カーブ内側の轍上に車両2の内輪(図3の右前輪3FRと右後輪3RR)を乗せた状態で走行している。
図3に示すような状況では、操舵制御部7a−1は、白線センサ13−1から入力される道路上の白線の情報に基づいて、車両2の前方の道路曲率を検出して、カーブであることを検知する。具体的には、操舵制御部7a−1は、白線センサ13−1を構成するカメラによる画像処理や、ミリ波レーダや超音波センサ等による前方サーベイ結果に基づいて、白線の形状を認識し、白線の形状に対応する車両2の前方の道路曲率を検出して、カーブであることを検知する。また、操舵制御部7a−1は、GPS情報受信部14から入力される車両2の現在位置と、地図データ記憶部7a−2からの地図データに基づいて、車両2の前方の道路曲率を検出して、カーブであることを検知してもよい。具体的には、操舵制御部7a−1は、車両2の現在位置の前方に存在する道路形状を地図データから取得して、地図データに含まれる道路情報に基づいて車両2の前方の道路曲率を検出して、カーブであることを検知してもよい。
更に、操舵制御部7a−1は、轍センサ13−2を構成するカメラによる画像処理や、ミリ波レーダや超音波センサ等による前方サーベイ結果に基づいて、轍の有無を検出し、轍が有る場合は、各轍の左右方向の位置や轍の状態も検出する。そして、操舵制御部7a−1は、カーブ内側の轍とカーブ外側の轍の位置を認識できるため、図3のように右カーブの場合、カーブ内側の轍上を車両2の内輪が走行できるように、カーブ内側の轍を目標の轍として選択し、このカーブ内側の轍にフロント内輪(図3において、右前輪3FR)とリア内輪(図3において、右後輪3RR)が乗るように操舵制御する。つまり、制御装置としてのECU7は、走行制御装置(図2のステアリングアクチュエータ6を含む)による軌跡制御の実行時において、走行可能領域が曲率を有するカーブ(図3の白線に囲まれた走行可能領域に対応する右カーブ)であるときに、走行可能領域検出装置(図2の轍センサ13−2や白線センサ13−1を含む)がカーブの内側に轍を検知した場合、検知したカーブの内側の轍上を車両2の内輪(図3の右前輪3FRと右後輪3RR)が走行するように、目標車両挙動量を補正する。
このように、本実施形態によれば、図3に示したように、カーブで轍を検知した場合は、カーブの内側の轍に車両2の内輪を合わせるように走行させることが可能となるため、轍があるカーブ走行時において図4に示すような車両姿勢を実現することができる。図4は、図3に示すカーブ走行中の車両2の車両姿勢を示す図である。つまり、図4に示す車両姿勢を実現することで、道路のレーン中心より内側を走行することになる。また、車両2が内傾姿勢になり、カーブ内側の轍の壁がガイドレール(逸脱防止壁)的に作用することになる。その結果、カーブ外側への逸脱に対する安全マージンを向上させることができるので、ドライバーのカーブ外側への逸脱に対する不安感を低減することができる。
ここで、図2に戻り、車両制御装置1のECU7の説明を続ける。車両制御ECU7aのうち、サスペンション制御部7a−3は、走行可能領域検出装置としての轍センサ13−2により検出された道路上の轍の情報に基づいて、サスペンションECU7cを介して、サスペンション装置としてのサスペンションアクチュエータ15を制御する。サスペンションECU7cは、サスペンション制御部7a−3からの入力に応じてサスペンションアクチュエータ15を制御するECUである。例えば、サスペンション制御部7a−3は、轍上を車両2の車輪が走行する際に、轍センサ13−2から入力される轍の状態を示す情報に基づいて、轍の深さが進行方向に向かって変化するか否かを予測する。サスペンション制御部7a−3は、轍の深さが進行方向に向かって変化すると予測される場合は、乗り心地悪化を予防するために、サスペンションECU7cに対して、サスペンションアクチュエータ15がサスペンションの減衰量を事前に調整するよう指示する制御信号を出力する。また、サスペンション制御部7a−3は、カーブなどで車両姿勢が左右方向に大きく傾く場合は、サスペンションECU7cに対して、サスペンションアクチュエータ15が車高調整して車両姿勢を補正するよう指示する制御信号を出力する。
続いて、上述のように構成された車両制御装置1において実行される処理の一例について図5〜図11を参照して説明する。図5は、本実施形態に係る車両制御装置1において実行される車両制御処理を示すフローチャートである。図5に示す処理は、具体的には、車両制御装置1の制御装置としてのECU7(車両制御ECU7a、ステアリングECU7b、サスペンションECU7c)において実行される。なお、図5に示す処理は、予め車両2の運転者の切替スイッチに対する切り替え操作によって、自動運転制御がオンの状態に設定されていることを前提とする。つまり、図5に示す処理は、走行制御装置による軌跡制御の実行時において行われる処理を示している。
図5に示すように、車両制御装置1のECU7は、まず轍を検知する(ステップS10)。具体的には、ステップS10において、ECU7の車両制御ECU7aに含まれる操舵制御部7a−1は、轍センサ13−2を構成するカメラによる画像処理や、ミリ波レーダや超音波センサ等による前方サーベイ結果に基づいて、轍の有無を検出する。
そして、車両制御装置1のECU7は、ステップS10の轍検知結果に基づいて、走行可能領域内に轍が有るか否かを判定する(ステップS20)。ステップS20において、轍が有ると判定された場合(ステップS20:Yes)、ECU7の車両制御ECU7aに含まれる操舵制御部7a−1は、轍センサ13−2を構成するカメラによる画像処理や、ミリ波レーダや超音波センサ等による前方サーベイ結果に基づいて、各轍について、左右方向の位置、幅、深さ、壁の傾斜等も検知する。その後、ステップS30の処理へ移行する。一方、ステップS20において、轍が無いと判定された場合(ステップS20:No)、ECU7の車両制御ECU7aに含まれる操舵制御部7a−1は、ステップS80の処理へ移行する。
そして、車両制御装置1のECU7は、ステップS20において、轍が有ると判定された場合(ステップS20:Yes)、車両2の前方の道路形状を検知する(ステップS30)。具体的には、ステップS30において、ECU7の車両制御ECU7aに含まれる操舵制御部7a−1は、白線センサ13−1から入力される道路上の白線の情報に基づいて、車両2の前方の道路曲率を検出する。より具体的には、操舵制御部7a−1は、白線センサ13−1を構成するカメラによる画像処理や、ミリ波レーダや超音波センサ等による前方サーベイ結果に基づいて、白線の形状を認識し、白線の形状に対応する車両2の前方の道路曲率を検出する。また、操舵制御部7a−1は、GPS情報受信部14から入力される車両2の現在位置と、地図データ記憶部7a−2からの地図データに基づいて、車両2の前方の道路曲率を検出してもよい。より具体的には、操舵制御部7a−1は、車両2の現在位置の前方に存在する道路形状を地図データから取得して、地図データに含まれる道路情報に基づいて車両2の前方の道路曲率を検出してもよい。
そして、車両制御装置1のECU7は、ステップS30の前方曲率検知結果に基づいて、カーブであるか否かを判定する(ステップS40)。具体的には、ステップS40において、ECU7の車両制御ECU7aに含まれる操舵制御部7a−1は、白線の形状に対応する車両2の前方の道路曲率の検出結果に基づいて、曲率がある場合はカーブであると判定し、曲率がない場合は直線であると判定する。また、ステップS40において、操舵制御部7a−1は、地図データに含まれる道路情報に基づく車両2の前方の道路曲率の検出に基づいて、曲率がある場合はカーブであると判定し、曲率がない場合は直線であると判定してもよい。
そして、車両制御装置1のECU7は、ステップS40においてカーブであると判定した場合(ステップS40:Yes)、上述の図3および図4に示したように、カーブでは内側の轍を前輪タイヤ目標とする操舵制御1を実行する(ステップS50)。具体的には、ステップS50において、操舵制御部7a−1は、ステップS20においてカーブ内側の轍とカーブ外側の轍の位置を認識できるため、図3のように右カーブの場合、カーブ内側の轍上を、車両2の内輪が走行できるように、カーブ内側の轍を目標の轍として選択し、このカーブ内側の轍に少なくともフロント内輪、より好ましくフロント内輪およびリア内輪があるように操舵制御する。つまり、制御装置としてのECU7は、走行制御装置(図2のステアリングアクチュエータ6を含む)による軌跡制御の実行時において、走行可能領域が曲率を有するカーブ(図3の白線に囲まれた走行可能領域に対応する右カーブ)であるときに、走行可能領域検出装置(図2の轍センサ13−2や白線センサ13−1を含む)がカーブの内側に轍を検知した場合、検知したカーブの内側の轍上を車両2の内輪(図3の右前輪3FRと右後輪3RR)が走行するように、目標車両挙動量を補正する。
なお、本実施形態において、車両制御装置1は、上述の図1に示すような四輪操舵の車両2に搭載される例を主に説明したが、これに限定されない。本実施形態にかかる車両制御装置1は、前輪操舵の車両2に搭載されていてもよい。この場合、本実施形態にかかる車両制御装置1は、前輪操舵装置9からなる二輪操舵(2 Wheel Steering)機構として操舵装置6を備える車両2にて車両制御を実行してもよい。更に、車両制御装置1は、四輪操舵の車両2に搭載されている場合であっても、四輪操舵モードと二輪操舵モードとを運転者の操作により切替え可能なスイッチを介して二輪操舵モードに切り替えられた場合は、二輪操舵の車両2として車両制御を実行してもよい。
ここで、二輪操舵の場合は、操舵装置6は、車両2の前輪3Fを操舵可能であり、ここでは、前輪操舵装置9を含んで構成される。つまり、車両制御装置1は、二輪操舵の場合は前輪操舵装置9により操舵装置6が構成され、左前輪3FLおよび右前輪3FRが操舵輪となる。そして、二輪操舵の場合は、ECU7は、例えば、目標車両挙動量として、ハンドル操舵角MA、車速Vに加えて、生成した目標軌跡に関する指標に基づき算出される前輪転舵角δの制御量によって、前輪操舵装置9を制御することになる。この結果、車両2は、軌跡制御によって前輪操舵装置9を介して前輪3Fが操舵されながら、目標軌跡に沿って走行することができる。
なお、二輪操舵の場合は、操舵制御部7a−1は、カーブで轍を検知した場合は、まずカーブ内側の轍に車両2のフロント内輪を合わせるように走行させるようステアリングECU7bを介して、操舵装置としてのステアリングアクチュエータ6を制御する。この場合、操舵制御部7a−1は、二輪操舵の車両2のフロント内輪のみがカーブ内側の轍上に乗るように操舵制御するだけでなく、例えば、フロント内輪をカーブ内側の轍上に乗せた後に前輪3Rを適宜操舵することで、リア内輪もカーブ内側の轍上に乗るように車両2の位置や姿勢を調整する制御を行ってもよい。
ここで、図6を参照し、ステップS50において実行される操舵制御1の処理の詳細について説明する。図6は、カーブ内側の轍を目標とする操舵制御1の処理の詳細を示すフローチャートである。
図6に示すように、ECU7の車両制御ECU7aに含まれる操舵制御部7a−1は、ステップS20において轍があると判定した際に取得した轍データを読み込む(ステップS51)。ステップS51において、操舵制御部7a−1は、轍データとして、例えば、各轍の左右位置、深さ、幅等を含む情報を読み込む。
そして、操舵制御部7a−1は、ステップS51にて読み込んだ轍データに基づいて、目標とする轍としてカーブ内側の轍を選択する(ステップS52)。ステップS52において、操舵制御部7a−1は、轍データに含まれる各轍の左右位置を示す情報に基づいて、レーン中心よりカーブの内側に近い位置の轍をカーブ内側の轍として選択する。
そして、操舵制御部7a−1は、ステップS52にて選択した目標の轍(この場合、カーブ内側の轍)に対する横偏差を算出する(ステップS53)。ステップS53において、操舵制御部7a−1は、GPS情報受信部14により受信されたGPS情報に基づく車両2の現在位置から算出される内輪の位置と、轍データに含まれるカーブ内側の轍の位置を示す情報と、に基づいて、目標の轍(この場合、カーブ内側の轍)に対する横偏差を算出する。
そして、操舵制御部7a−1は、ステップS51にて読み込んだ轍データに含まれるカーブ内側の轍の深さおよび幅を示す情報に基づいて、轍の傾斜角を算出する(ステップS54)。本実施形態において、轍の傾斜角とは、轍の幅(太さ)に対応する一定範囲内で最も深い轍の深さを有する点を轍中心とした場合、当該轍中心と轍の端部とを結ぶ線分と、轍の幅を示す線分とがなす角度をいう(後述の図8および図9を参照)。
そして、操舵制御部7a−1は、ステップS54にて算出された轍の傾斜角より制御ゲインを算出する(ステップS55)。ステップS55において、操舵制御部7a−1は、図7に示すような制御ゲイン算出マップを用いて、轍の傾斜角に応じた制御ゲインを算出する。図7は、制御ゲインと轍の傾斜角との関係を示す図である。図7に示すように、横軸に示す轍の傾斜角の値が大きくなるほど、縦軸に示す制御ゲインの値は小さくなるように設定されている。これは、図8および図9に示すように、より有効な逸脱防止効果や車両安定性向上効果等を得るためには、より正確に轍の中心に車輪3を乗せるように操舵制御する必要があると考えられるためである。図8は、轍の傾斜角が小さい場合の制御ゲインの大きさを説明するための図である。図9は、轍の傾斜角が大きい場合の制御ゲインの大きさを説明するための図である。
図8に示すように、轍の傾斜角が小さい場合は、轍の中心より右側に車輪3がずれている場合、轍の中心に車輪3を移動させる(即ち、車輪3を車輪3’の位置に移動させる)には、制御ゲインを比較的大きめの値に設定する必要がある。これは、轍の傾斜角が小さいため、車両2の重量により轍の傾斜をすべるようにして車両2の車輪3が自然と轍中心に移動するように作用する力は比較的小さいと考えられるからである。そのため、操舵制御部7a−1は、轍中心に車輪3を移動させる際の制御ゲインを比較的大きな値に設定している。一方、図9に示すように、轍の傾斜角が大きい場合は、轍の中心より右側に車輪3がずれている場合、轍の中心に車輪3を移動させる(即ち、車輪3を車輪3’の位置に移動させる)には、制御ゲインを比較的小さめに設定する必要がある。これは、轍の傾斜角が大きいため、車両2の重量により轍の傾斜をすべるようにして車両2の車輪3が自然と轍中心に移動するように作用する力は比較的大きいと考えられるからである。そのため、操舵制御部7a−1は、轍中心に車輪3を移動させる際の制御ゲインを比較的小さな値に設定している。このようにして、操舵制御部7a−1は、轍の壁の傾斜に応じて、操舵量や制御ゲインを調整する。これにより、傾斜が強いほど制御量を減らすことできるので、傾斜で轍中心に誘導される作用を強くすることができる。
図6に戻り、操舵制御部7a−1は、ステップS53において算出した目標の轍に対する横偏差と、ステップS55において算出した制御ゲインと、に基づいて、操舵角を算出する(ステップS56)。具体的には、ステップS56において、操舵制御部7a−1は、車両2の現在の内輪の位置を、目標の轍(この場合、カーブ内側の轍)の位置の中心へ移動させる目標軌跡を生成し、当該目標軌跡に沿って車両2が走行するための操舵角を算出する。より具体的には、ステップS56において、車両2が四輪操舵により制御される場合、操舵制御部7a−1は、目標車両挙動量として、ハンドル操舵角MA、車速Vに加えて、生成した目標軌跡に関する指標(例えば目標軌跡に対する車両2の目標横位置Yref、目標ヨー角Ψref等)に基づいて、前輪転舵角δの制御量(例えば、LKA前輪補正目標角θLK、VGRS通常目標角θVG等)、後輪転舵角δの制御量(例えば、LKA後輪補正目標角θLKR等)を算出する。なお、車両2が二輪操舵により制御される場合、操舵制御部7a−1は、目標車両挙動量として、ハンドル操舵角MA、車速Vに加えて、生成した目標軌跡に関する指標に基づいて、前輪転舵角δの制御量を算出する。
そして、操舵制御部7a−1は、ステップS56において算出した各種制御装置を制御する制御パラメータに対応する目標車両挙動量に基づいて操舵制御を実行する(ステップS57)。この結果、車両2は、軌跡制御によって、四輪操舵の場合は前輪操舵装置9と後輪操舵装置10を介して前輪3Fと後輪3Rが操舵されながら、カーブ内側の轍上を車両2の内輪(フロント内輪とリア内輪)が走行するように算出された目標軌跡に沿って走行することができる。このステップS57の処理の後、図5のステップS70の処理へ移行する。ステップS70において実行される、サスペンション制御処理については後述する。なお、二輪操舵の場合は、車両2は、軌跡制御によって前輪操舵装置9を介して前輪3Fが操舵されながら、カーブ内側の轍上を車両2の内輪が走行するように算出された目標軌跡に沿って走行することができる。このとき、操舵制御部7a−1は、二輪操舵の車両2のフロント内輪のみがカーブ内側の轍上に乗るように操舵制御するだけでなく、例えば、フロント内輪をカーブ内側の轍上に乗せた後に前輪3Rを適宜操舵することで、リア内輪もカーブ内側の轍上に乗るように車両2の位置や姿勢を調整する制御を行ってもよい。
再び図5に戻り、ステップS40の処理から車両制御処理の説明を続ける。車両制御装置1のECU7は、ステップS40においてカーブではない(即ち、直線である)と判定した場合(ステップS40:No)、直線部では、レーン中心に近い側の轍を車輪3の目標とする操舵制御2を実行する(ステップS60)。具体的には、ステップS60において、操舵制御部7a−1は、ステップS20において各轍の左右方向の位置を認識できるため、レーン中心側に近い轍上を、車両2の車輪3が走行できるように、レーン中心側に近い轍を目標の轍として選択し、このレーン中心側の轍に車輪3が乗るように操舵制御する。ステップS60において、操舵制御部7a−1は、車両2の位置が走行可能領域内でかつ比較的レーン中心側に近い側となるように、車両2の右輪または左輪から、目標とするレーン中心側の轍上に乗せる車輪3を決定する。例えば、操舵制御部7a−1は、車両2の右輪をレーン中心側の轍上に乗せると決定した場合は、右前輪3FRと右後輪3RRの両方の右輪が乗るように操舵制御する。同様に、操舵制御部7a−1は、車両2の左輪をレーン中心側の轍上に乗せると決定した場合は、左前輪3FLと左後輪3RLの両方の左輪が乗るように操舵制御する。
ここで、図10を参照し、ステップS60において実行される操舵制御2の処理の詳細について説明する。図10は、レーン中心側の轍を目標とする操舵制御2の処理の詳細を示すフローチャートである。
図10に示すように、ECU7の車両制御ECU7aに含まれる操舵制御部7a−1は、ステップS20において轍があると判定した際に取得した轍データを読み込む(ステップS61)。ステップS61において、操舵制御部7a−1は、轍データとして、例えば、各轍の左右位置、深さ、幅等を含む情報を読み込む。
そして、操舵制御部7a−1は、ステップS61にて読み込んだ轍データに基づいて、目標とする轍としてレーン中心側の轍を選択する(ステップS62)。ステップS62において、操舵制御部7a−1は、轍データに含まれる各轍の左右位置を示す情報に基づいて、レーンの中心側に近い位置の轍をレーン中心側の轍として選択する。
そして、操舵制御部7a−1は、ステップS62にて選択した目標の轍(この場合、レーン中心側の轍)に対する横偏差を算出する(ステップS63)。ステップS63において、操舵制御部7a−1は、GPS情報受信部14により受信されたGPS情報に基づく車両2の現在位置から算出される車輪3の位置と、轍データに含まれるレーン中心側の轍の位置を示す情報と、に基づいて、目標の轍(この場合、レーン中心側の轍)に対する横偏差を算出する。
そして、操舵制御部7a−1は、ステップS61にて読み込んだ轍データに含まれるレーン中心側の轍の深さおよび幅を示す情報に基づいて、轍の傾斜角を算出する(ステップS64)。
そして、操舵制御部7a−1は、ステップS64にて算出された轍の傾斜角より制御ゲインを算出する(ステップS65)。ステップS65において、操舵制御部7a−1は、上述の図7に示すような制御ゲイン算出マップを用いて、轍の傾斜角に応じた制御ゲインを算出する。
そして、操舵制御部7a−1は、ステップS63において算出した目標の轍に対する横偏差と、ステップS65において算出した制御ゲインと、に基づいて、操舵角を算出する(ステップS66)。具体的には、ステップS66において、ECU7の車両制御ECU7aに含まれる操舵制御部7a−1は、車両2の現在の車輪3の位置を、目標の轍(この場合、レーン中心側の轍)の位置の中心へ移動させる目標軌跡を生成し、当該目標軌跡に沿って車両2が走行するための操舵角を算出する。より具体的には、ステップS66において、車両2が四輪操舵により制御される場合、操舵制御部7a−1は、目標車両挙動量として、ハンドル操舵角MA、車速Vに加えて、生成した目標軌跡に関する指標(例えば目標軌跡に対する車両2の目標横位置Yref、目標ヨー角Ψref等)に基づいて、前輪転舵角δの制御量(例えば、LKA前輪補正目標角θLK、VGRS通常目標角θVG等)、後輪転舵角δの制御量(例えば、LKA後輪補正目標角θLKR等)を算出する。なお、車両2が二輪操舵により制御される場合、操舵制御部7a−1は、目標車両挙動量として、ハンドル操舵角MA、車速Vに加えて、生成した目標軌跡に関する指標に基づいて、前輪転舵角δの制御量を算出する。
そして、操舵制御部7a−1は、ステップS66において算出した各種制御装置を制御する制御パラメータに対応する目標車両挙動量に基づいて操舵制御を実行する(ステップS67)。この結果、車両2は、軌跡制御によって、四輪操舵の場合は前輪操舵装置9、後輪操舵装置10を介して前輪3F、後輪3Rが操舵されながら、レーン中心側の轍上を車両2の車輪3が走行するように算出された目標軌跡に沿って走行することができる。このステップS67の処理の後、図5のステップS70の処理へ移行する。なお、二輪操舵の場合は、車両2は、軌跡制御によって前輪操舵装置9を介して前輪3Fが操舵されながら、レーン中心側の轍上を車両2の車輪3が走行するように算出された目標軌跡に沿って走行することができる。
そして、車両制御装置1のECU7は、サスペンション制御を実行する(ステップS70)。具体的には、ECU7に含まれる車両制御ECU7aに含まれるサスペンション制御部7a−3は、ステップS50またはステップS60の操舵制御により轍上を車両2の車輪3が走行する場合、轍センサ13−2から入力される轍の状態を示す情報に基づいて、轍の深さが進行方向に向かって変化するか否かを予測する。サスペンション制御部7a−3は、轍の深さが進行方向に向かって変化すると予測される場合は、乗り心地悪化を予防するために、サスペンションECU7cに対して、サスペンションアクチュエータがサスペンションの減衰量を事前に調整するよう指示する制御信号を出力する。また、サスペンション制御部7a−3は、ステップS50の操舵制御1により、カーブなどで車両姿勢が左右方向に大きく傾く場合は、サスペンションECU7cに対して、サスペンションアクチュエータが車高調整して車両姿勢を補正するよう指示する制御信号を出力する。この他、サスペンション制御部7a−3は、サスペンション制御として、轍走行による前後傾き(ピッチング)を抑制してもよい。この場合、サスペンション制御部7a−3は、検知した轍状況、車速、操舵角等により、轍に対する後輪位置を推定し、所定の車両姿勢(水平等)になるように各車輪位置の車高を調整する。その後、本処理を終了する。
ここでステップS20に戻り、車両制御装置1のECU7は、ステップS20において、轍が無いと判定された場合(ステップS20:No)、白線をガイドとする操舵制御3を実行する(ステップS80)。具体的には、ECU7の車両制御ECU7aに含まれる操舵制御部7a−1は、通常の軌跡制御として道路上の白線を追従する自動運転を実行するよう、ステアリングECU7bを介してステアリングアクチュエータ6を制御する。その後、本処理を終了する。
このように、本実施形態によれば、車両2を道路上に設定された目標走行経路に従って制御する車両制御システムにおいて、カーブに轍が存在する場合は、カーブ内側の轍上に車輪3の内輪が乗るように(すなわち、カーブの内側の轍上を車輪3の内輪が走行するように)目標走行経路を設定することができるので、カーブ外側への逸脱に対する安全マージンを向上させることで、カーブ走行時にドライバーや乗員へ安心感を与えることができる。
なお、本実施形態における車両制御装置1は、検出した轍の状態に応じて、轍上に車両2の車輪3を乗せると車両の安定性が損なわれると判定した場合は、轍を避けるように走行制御を行ってもよい。以下に図11を参照し、この場合の処理の詳細について説明する。図11は、車両制御装置1において実行される轍走行可否判断1および轍走行可否判断2を含む車両制御処理を示すフローチャートである。
図11では、ステップS20〜S24以外の、ステップS10とステップS30〜80の処理の内容は、図5に記載のステップS10とステップS30〜80の処理の内容と同様であるため、説明を省略する。以下、図11のステップS20から処理を説明する。
図11に示すように、車両制御装置1のECU7は、ステップS20において、轍が有ると判定された場合(ステップS20:Yes)、轍走行可否判断1として、ステップS20で検知した轍の深さの進行方向への変化量が所定範囲内であるか否かを判定する(ステップS22)。この所定範囲は、車両2の運転者や搭乗者が乗り心地が悪化すると感じ始める程度の値に設定される。つまり、ステップS22において、ECU7の車両制御ECU7aは、轍に沿って走行することにより、車両2が上下方向に大きく振動するか小刻みに振動するなどして乗り心地悪化が予想される場合は、ステップS50およびステップS60にて轍走行をしないように、事前に轍走行可否判断1を行う。このように、ステップS22において、車両制御ECU7aは、この轍走行可否判断1として、轍深さの進行方向への変化量が所定範囲未満であれば轍走行し、所定範囲以上であれば轍走行しないと判定することで、轍走行実施判断を事前に行う。
ここで、ステップS22において、車両制御装置1のECU7は、轍の深さの進行方向への変化量が所定範囲外であると判定した場合(ステップS22:No)、ステップS80の処理へ移行する。一方、ステップS22において、車両制御装置1のECU7は、轍の深さの進行方向への変化量が所定範囲内にあると判定した場合(ステップS22:Yes)、轍走行可否判断2として、ステップS20で検知した各轍の深さの最大値が所定範囲内であるか否かを判定する(ステップS24)。この所定範囲は、車両2を所定の車両姿勢を維持するのに車両2のサスペンションが吸収可能な轍の深さの最大値に設定される。つまり、ステップS24において、ECU7の車両制御ECU7aは、轍に沿って走行することにより、所定の車両姿勢範囲を超える車両2の左右傾きなどをサスペンションが吸収できない場合は、ステップS50およびステップS60にて轍走行をしないように、事前に轍走行可否判断2を行う。このように、ステップS24において、車両制御ECU7aは、この轍走行可否判断2として、轍の深さの最大値が所定範囲未満であれば轍走行し、所定範囲以上であれば轍走行しないと判定することで、轍走行実施判断を事前に行う。
ここで、ステップS24において、車両制御装置1のECU7は、轍の深さの最大値が所定範囲内にあると判定した場合(ステップS24:Yes)、ステップS30の処理へ移行する。一方、ステップS24において、車両制御装置1のECU7は、轍の深さの最大値が所定範囲外であると判定した場合(ステップS24:No)、ステップS80の処理へ移行する。
なお、本実施形態において、ECU7の車両制御ECU7aは、轍走行可否判断1および轍走行可否判断2に加えて、轍走行可否判断3(図示せず)として、ステップS20で検知した轍の左右方向の蛇行量が所定範囲内であるか否かを判定してもよい。この所定範囲は、車両2の運転者や搭乗者が乗り心地が悪化すると感じ始める程度の値に設定される。つまり、ECU7の車両制御ECU7aは、轍に沿って走行することにより、車両2が左右方向に大きく揺れるか小刻みに揺れるなどして乗り心地悪化が予想される場合は、ステップS50およびステップS60にて轍走行をしないように、事前に轍走行可否判断3を行う。このように、車両制御ECU7aは、この轍走行可否判断3として、左右方向への轍の蛇行量が所定範囲未満であれば轍走行し、所定範囲以上であれば轍走行しないと判定することで、轍走行実施判断を事前に行ってもよい。
以上説明したように、本実施形態によれば、検出した轍の状態に応じて、轍上に車両2の車輪3を乗せると車両の安定性が損なわれると判定した場合は、轍を避けるように走行制御を行う。その結果、自動運転によるカーブ走行時に道路上の轍に応じて車両がより安定するように走行制御を行うことができる。
1 車両制御装置
2 車両
3 車輪
4 駆動装置(走行制御装置)
5 制動装置(走行制御装置)
6 操舵装置/ステアリングアクチュエータ(走行制御装置)
7 ECU(制御装置)
7a 車両制御ECU
7a−1 操舵制御部
7a−2 地図データ記憶部
7a−3 サスペンション制御部
7b ステアリングECU
7c サスペンションECU
8a アクセルペダル
8b ブレーキペダル
9 前輪操舵装置
9a ステアリングホイール
9b 転舵角付与機構
9c VGRS装置
9d 操舵駆動器
10 後輪操舵装置
10a 操舵駆動器
11 車輪速センサ
12 ホイールシリンダ圧センサ
13 前方検出装置(走行可能領域検出装置)
13−1 白線センサ
13−2 轍センサ
14 GPS情報受信部
15 サスペンション装置/サスペンションアクチュエータ

Claims (5)

  1. 車両の走行可能領域を検出する走行可能領域検出装置と、
    前記走行可能領域検出装置が検出した前記走行可能領域を前記車両が走行するために算出された目標車両挙動量に基づいて軌跡制御を実行する走行制御装置と、
    前記走行制御装置による前記軌跡制御の実行時において、前記走行可能領域が曲率を有するカーブであるときに、前記走行可能領域検出装置が前記カーブの内側に轍を検知した場合、検知した前記カーブの内側の轍上を前記車両の内輪が走行するように、前記目標車両挙動量を補正する制御装置と、
    を備えたことを特徴とする車両制御装置。
  2. 前記制御装置は、
    前記走行制御装置による前記軌跡制御の実行時において、前記走行可能領域が曲率を有するカーブであるときに、前記走行可能領域検出装置が前記カーブの内側に轍を検知した場合であって、検知した前記カーブの内側の轍の深さの進行方向への変化量が所定範囲内である場合に、検知した前記カーブの内側の轍上を前記車両の内輪が走行するように、前記目標車両挙動量を補正することを特徴とする請求項1に記載の車両制御装置。
  3. 前記制御装置は、
    前記走行制御装置による前記軌跡制御の実行時において、前記走行可能領域が曲率を有するカーブであるときに、前記走行可能領域検出装置が前記カーブの内側に轍を検知した場合であって、検知した前記カーブの内側の轍の深さの最大値が所定範囲内である場合に、検知した前記カーブの内側の轍上を前記車両の内輪が走行するように、前記目標車両挙動量を補正することを特徴とする請求項1または2に記載の車両制御装置。
  4. 前記制御装置は、
    前記走行制御装置による前記軌跡制御の実行時において、前記走行可能領域が曲率を有するカーブであるときに、前記走行可能領域検出装置が前記カーブの内側に轍を検知した場合であって、検知した前記カーブの内側の轍の左右方向への蛇行量が所定範囲内である場合に、検知した前記カーブの内側の轍上を前記車両の内輪が走行するように、前記目標車両挙動量を補正することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の車両制御装置。
  5. 車両の走行可能領域を検出する走行可能領域検出装置と、前記走行可能領域検出装置が検出した前記走行可能領域を前記車両が走行するために算出された目標車両挙動量に基づいて軌跡制御を実行する走行制御装置と、前記走行可能領域検出装置の検出結果に基づき前記走行制御装置を制御する制御装置と、を備えた車両制御装置において実行される車両制御方法であって、前記制御装置において実行される、
    前記走行制御装置による前記軌跡制御の実行時において、前記走行可能領域が曲率を有するカーブであるときに、前記走行可能領域検出装置が前記カーブの内側に轍を検知した場合、検知した前記カーブの内側の轍上を前記車両の内輪が走行するように、前記目標車両挙動量を補正する工程
    を含むことを特徴とする車両制御方法。
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