実施形態の立体画像表示装置は、画像表示面にサブピクセルを規則的に配列する平面画像表示装置と、所定軸方向に曲率を有するシリンドリカルレンズを所定軸方向に順次配列して形成される立体画像表示光学素子と、を備える。シリンドリカルレンズの各々は、曲率を有する方向の長さ、または、隣接するシリンドリカルレンズ間の光軸間距離が所定基準長を中心としてばらつきを有し所定個数のサブピクセルと対面し、各シリンドリカルレンズの境界の位置とサブピクセルの境界の位置との差の最大値が、サブピクセルの所定軸方向の長さの1.4%以上、25%未満の範囲である。所定基準長とは、各シリンドリカルレンズが均一であり、ばらつきがない場合における各シリンドリカルレンズの曲率を有する軸方向である所定軸方向の長さであり、所定個数のサブピクセルと等しい長さである。
実施形態の立体画像表示光学素子は、画像表示面にサブピクセルを規則的に配列する平面画像表示装置に装着する立体画像表示光学素子である。この立体画像表示光学素子は、所定軸方向に曲率を有する各シリンドリカルレンズを所定軸方向に順次配列し、各シリンドリカルレンズの曲率を有する方向の長さ、または、隣接する各シリンドリカルレンズ間の光軸間距離が所定基準長を中心としてばらつきを有し、所定基準長は、所定個数のサブピクセルと等しい長さであり、ばらつきの大きさの最大値は、所定基準長の(2.8%/所定個数)以上、(25%/所定個数)未満の範囲である。
実施形態の立体画像表示光学素子製造金型は、画像表示面にサブピクセルを規則的に配列する平面画像表示装置に装着する立体画像表示光学素子を製造する立体画像表示光学素子製造金型である。この立体画像表示光学素子製造金型は、所定軸方向に曲率を有する各シリンドリカルレンズを所定軸方向に順次配列し、各シリンドリカルレンズの曲率を有する方向の長さ、または、隣接する各シリンドリカルレンズ間の光軸間距離が所定基準長を中心としてばらつきを有し、所定基準長は、所定個数の前記サブピクセルと等しい長さであり、ばらつきの大きさの最大値は、所定基準長の(2.8%/所定個数)以上、(25%/所定個数)未満の範囲である。
実施形態の要部である立体画像表示光学素子の説明を中心として、以下に図面を参照して実施形態の説明をする。
各図面に表された各部の寸法、光線の方向を示す矢印の方向は、図面の説明を分かり易くするために強調して表示されており、現実の立体画像表示装置および立体画像表示光学素子の各部寸法、現実の光線の方向に対応するものではない。
(立体画像表示装置の原理について)
図1ないし図5を参照して実施形態の立体画像表示装置の原理について説明をする。
図1は、実施形態の立体画像表示装置の画像表示面をあらわす図である。
実施形態の立体画像表示装置の画像を視認する視認者の左目および右目の各位置は図1の紙面の表面側である。図1に記載した拡大説明部(矢印が示す円内の四角形の範囲)は、図2、図3、図5に記載する部分の範囲が、立体画像表示装置の画像表示面10のどの部分であるかを示すものである。図2、図3、図5においては、画像表示面10の拡大説明部とその部分に配置される後述する複数個のシリンドリカルレンズとの配置関係が部分図として模式的に記載されている。その他の図面においても拡大説明部のみが記載されている。
画像表示面10のX軸方向にはJ個のサブピクセルが配され、画像表示面10のY軸方向にはK個のサブピクセルが配されている(図21を参照)。すなわち、画像表示面10のサブピクセルの総数はJ×K個である。X軸方向のJ個のサブピクセルからなる並びの各々を行と称し、Y軸方向のK個のサブピクセルからなる並びの各々を列と称する。
平面画像表示装置においては、サブピクセルが、例えば、以下のように画像表示面10に配置されている。X軸方向の3個分のサブピクセルの幅(図2に示すサブピクセルの短い辺の長さ)とY軸方向の1個分のサブピクセルの長さ(図2に示すサブピクセルの長い辺の長さ)とは等しくされている。つまり、サブピクセルは長方形であり、サブピクセルの短い辺の長さは、サブピクセルの長い辺の長さの1/3である。X軸方向には、例えば、J個(1024個×3)のサブピクセルが配置され、Y軸方向には、例えば、K個(768個)のサブピクセルが配置されている。通常の平面画像表示装置においては、X軸方向のR(赤)、G(緑)、B(青)の3色によって1ピクセルが形成されているためにX軸方向にはJ/3個(1024個)のピクセルが配置されている(図21を参照)。
X軸の原点、Y軸の原点は図1に示す画像表示面10の左上隅(拡大説明部の左上隅)である。X軸の原点からX軸方向に離間距離が大きくなる順に1番目からJ番目の番号をサブピクセルの番号として、以下の説明において用い、Y軸の原点からY軸方向に離間距離が大きくなる順に1番目からK番目の番号をサブピクセルの番号として、以下の説明に用いる。
図2は、実施形態の立体画像表示装置の各サブピクセルの態様を示す原理図である。
従来の平面画像表示装置においては、連続するR、G、Bを1ピクセルとして1画素が構成されていた。しかしながら、複数個のシリンドリカルレンズを有する立体画像表示光学素子と平面画像表示装置とを組み合わせた立体画像表示装置においては、視認者に認識される1画素の構成の態様が異なる。すなわち、画素は、右目に対応する画素(右目用画素)と左目に対応する画素(左目用画素)とが分離して視認できるように配置されている。右目用画素と左目用画素との配置については、2視差法、4視差法、5視差法、7視差法等の配置方法が従来から知られている。以下の説明では、まず、5視差法を具体例として説明をするが、視差の数によらず説明の内容は一般性を失うものではない。
実施形態の立体画像表示装置において視認者が1画素として認識するピクセル構成と、従来の平面画像表示装置におけるピクセル構成との差異を明確にするために、最初に従来の平面画像表示装置におけるピクセル構成について説明をする。
従来の平面画像表示装置においては、各ピクセル(画素)は、図21に示すように構成される。X軸方向の1番目のサブピクセルR(赤)、X軸方向の2番目のサブピクセルG(緑)、X軸方向の3番目のサブピクセルB(青)によって1ピクセル(画素)が構成される。同様にして、画像表示面10の全体に各ピクセルが構成される。このようにピクセルを配置することは周知技術である。また、各ピクセルを構成する各サブピクセルの発光の輝度を制御することによって各ピクセルの色相、彩度、明度を制御し所望の画像を画像表示面10の全体に平面画像として表示する技術も周知技術である。
実施形態の立体画像表示装置においては、図21に示すピクセル構成とは異なり、図2に示すように、符号1を付すX軸方向の1番目のサブピクセルR(赤)、符号1を付すX軸方向の6番目のサブピクセルB(青)、符号1を付すX軸方向の11番目のサブピクセルG(緑)を視認者が1ピクセルとして視認できるようになされる。図2においてサブピクセルに数字1ないし数字5の番号を繰り返し付しているのは、5視差法における説明を容易にするためである。
また、符号2を付すX軸方向の2番目のサブピクセルG、符号2を付すX軸方向の7番目のサブピクセルR、符号2を付すX軸方向の12番目のサブピクセルBを視認者が1ピクセルとして視認できるようになされる。
また、符号3を付すX軸方向の3番目のサブピクセルB、符号3を付すX軸方向の8番目のサブピクセルG、符号3を付すX軸方向の13番目のサブピクセルRを視認者が1ピクセルとして視認できるようになされる。
また、符号4を付すX軸方向の4番目のサブピクセルR、符号4を付すX軸方向の9番目のサブピクセルB、符号4を付すX軸方向の14番目のサブピクセルGを視認者が1ピクセルとして視認できるようになされる。
また、符号5を付すX軸方向の5番目のサブピクセルG、符号5を付すX軸方向の10番目のサブピクセルR、符号5を付すX軸方向の15番目のサブピクセルBを視認者が1ピクセルとして視認できるようになされる。
以下、同様にして、符号を同一とする直近のR、G、Bの3種類の色を視認者が1ピクセルとして視認できるようになされる。ここで、R、G、Bの3種類の色の並びの順序は本質的なものではなく、R、B、Gと並ぶようにしてもよく、B、R、Gと並ぶようにしてもよく、B、G、Rと並ぶようにしてもよく、G、R、Bと並ぶようにしてもよく、G、B、Rと並ぶようにしてもよい。
1個のサブピクセルのX軸方向の長さであるX軸方向のサブピクセル長PSPXは、すべてのサブピクセルについて等しく、1個のサブピクセルのY軸方向の長さであるY軸方向のサブピクセル長PSPYは、すべてのサブピクセルについて等しい。
第1番目から5番目までの5個のサブピクセルの長さ(5サブピクセル長)PP1、第6番目から10番目までの5サブピクセル長PP2、第11番目から15番目までの5サブピクセル長PP3、第26番目から30番目までの5サブピクセル長PP4は、すべて等しい。一般式で書けば、5サブピクセル長PPnは、すべて等しい。
サブピクセルのX軸方向の遮光部の長さ(遮光部長)PSXは、すべてのサブピクセルにおいて長さが等しい。サブピクセルのY軸方向の遮光部の長さ(遮光部長)PSYは、すべてのサブピクセルにおいて長さが等しい。よって、X軸方向の隣接する2つのサブピクセルの遮光部の長さは、2×PSXである。また、Y軸方向の隣接する2つのサブピクセルの遮光部の長さは、2×PSYである。サブピクセルのX軸方向のサブピクセル長PSPXに遮光部長PSXが含まれる。サブピクセルのY軸方向のサブピクセル長PSPYに遮光部長PSYが含まれる。
図3は、実施形態における立体画像表示装置の画像表示面と複数個のシリンドリカルレンズを有する立体画像表示光学素子との配置関係を画像表示面方向から見る原理図である。複数個のシリンドリカルレンズを有する立体画像表示光学素子はレンチキュラーレンズとも称される。
図3においては、図面を見易くするために、各サブピクセル間の遮光部の記載は省略され、各シリンドリカルレンズの境界は強調されて太く書かれている。立体画像表示光学素子11は、拡大表示部の部分のみが表示されているが、立体画像表示光学素子11は画像表示面10の全面に対面するように配置されており、拡大表示部以外の他の部分の記載は省略されている。
第1シリンドリカルレンズLS1のX軸方向のシリンドリカルレンズ長PL1、第2シリンドリカルレンズLS2のX軸方向のシリンドリカルレンズ長PL2、第3シリンドリカルレンズLS3のX軸方向のシリンドリカルレンズ長PL3、第4シリンドリカルレンズLS4のX軸方向のシリンドリカルレンズ長PL4の各々は、5視差法を採用する場合には、すべて5サブピクセル長である。各シリンドリカルレンズは、X軸方向に曲率を有し、Y軸方向には曲率を有しない。第1シリンドリカルレンズLS1のX軸方向のシリンドリカルレンズ長PL1、第2シリンドリカルレンズLS2のX軸方向のシリンドリカルレンズ長PL2・・・・その他のすべてのシリンドリカルレンズのX軸方向のシリンドリカルレンズ長を同一とすることは周知技術である。
第1シリンドリカルレンズLS1の光軸から第2シリンドリカルレンズLS2の光軸までの光軸間距離PCS1、第2シリンドリカルレンズLS2の光軸から第3シリンドリカルレンズLS3の光軸までの光軸間距離PCS2、第3シリンドリカルレンズLS3の光軸から第4シリンドリカルレンズLS4の光軸までの光軸間距離PCS3はすべて等しい。各光軸間距離が等しい場合には単に光軸間距離PCSと記載する。シリンドリカルレンズの光軸とは光が屈折することなく直進する軸であり、各シリンドリカルレンズが均一な場合には、各シリンドリカルレンズのX軸方向の長さ(X軸方向長)の中間の位置に光軸がある。すなわち、入射する光がシリンドリカルレンズによって屈折することなく直進する軸が光軸である。第1シリンドリカルレンズLS1の光軸から第2シリンドリカルレンズLS2の光軸までの光軸間距離PCS1、第2シリンドリカルレンズLS2の光軸から第3シリンドリカルレンズLS3の光軸までの光軸間距離PCS2、第3シリンドリカルレンズLS3の光軸から第4シリンドリカルレンズLS4の光軸までの光軸間距離PCS3の各々および図示しないシリンドリカルレンズの光軸間距離を同一とすることは周知技術である。
第1シリンドリカルレンズLS1、第2シリンドリカルレンズLS2、第3シリンドリカルレンズLS3、第4シリンドリカルレンズLS4の各々はX軸方向の5個のサブピクセルと対面する。このような配置を5視差法と称する。また、シリンドリカルレンズの各々がX軸方向の4個のサブピクセルと対面する場合に4視差法、シリンドリカルレンズの各々がX軸方向の7個のサブピクセルと対面する場合に7視差法と称する。すなわち、シリンドリカルレンズの曲率を有する軸方向の長さが、この軸方向に配置されるいくつのサブピクセルの長さと等しいかによって視差法の名称が定められている。シリンドリカルレンズの各々がX軸方向の3個の倍数のサブピクセルと対面する場合には、視認者が1ピクセルであるとして視認できるようなR、G、Bの組み合わせができないので立体画像表示装置を構成することはできない。それ以外の場合には、4視差法、5視差法、7視差法に限らず、他の視差法であっても原理的には立体画像表示装置を構成することができる。
図4は、原理的な立体画像表示光学素子11が光学部品として市場に提供される段階における断面図である。図4は、立体画像表示光学素子の一部のみを示す。ポリエチレンテレフタレート(polyethylene terephthalate:PET)を材料とする保護シート、粘着剤、基材、ポリメタクリル酸メチル樹脂またはアクリル樹脂(Poly methyl
methacrylate :PMMA)を材料とする複数個のシリンドリカルレンズからなるレンチキュラーレンズが積層して光学部品として市場に提供される。
立体画像表示光学素子11を使用する段階においては、保護シートから、粘着剤と基板とレンチキュラーレンズとの積層物を剥がす。そして、粘着剤の付着した基板とレンチキュラーレンズとの積層物を平面画像表示装置の画像表示面10に接着して用いる。すなわち、図3、図4、図5に示す立体画像表示光学素子11は、粘着剤、基板、レンチキュラーレンズを積層したものである。
第1シリンドリカルレンズLS1の光軸はシリンドリカルレンズの最も凸なる部分(以下、最凸部と称する)a1を通過し、第2シリンドリカルレンズLS2の光軸はシリンドリカルレンズの最凸部a2を通過する。すなわち、最凸部は光軸上に存在する。第1シリンドリカルレンズLS1と第2シリンドリカルレンズLS2とが接する部分は最も凸なる部分(最凹部)b1である。第1シリンドリカルレンズLS1の最凸部a1(光軸)と第2シリンドリカルレンズLS2の最凸部a2(光軸)との間の長さ(光軸間距離)PC1は、原理図においては長さPCSであり、第(n−1)シリンドリカルレンズLSn−1の最凸部an−1と第nシリンドリカルレンズLSnの最凸部anとの長さPCn(図示せず)まで、すべての光軸間距離は、原理図においては長さPCSで一定である。第1シリンドリカルレンズLS1のX軸方向のシリンドリカルレンズ長PL1およびその他のすべてのシリンドリカルレンズのX軸方向長は、原理図においては長さPPであり、すべて同じ長さである。
図5は、実施形態における立体画像表示装置の画像表示面と複数個のシリンドリカルレンズを有する立体画像表示光学素子との配置関係を画像表示面に直交する断面方向(図3のA-A断面方向)から見る原理図である。図5においては、5サブピクセル長PP1=5サブピクセル長PP2=5サブピクセル長PP3=X軸方向のシリンドリカルレンズ長PL1=X軸方向のシリンドリカルレンズ長PL2=X軸方向のシリンドリカルレンズ長PL3=PPである。
図5においては、立体画像表示装置のサブピクセルとシリンドリカルレンズとの関係を模式的に示す。距離LRLは、左目と右目との間の距離であり、平均的な距離LRLの大きさは6.5cm(センチ・メータ)である。図4に図示するように、符号2、符号3を付したサブピクセルは右目によって視認されるサブピクセルであり、符号4、符号5を付したサブピクセルは左目によって視認されるサブピクセルである。符号2、符号3を付したサブピクセルには右目に対応する画像が表示され、符号4、符号5を付したサブピクセルには左目に対応する画像が表示される。
立体画像表示光学素子11と左目および右目とを結ぶ直線との間の離間距離が距離LDZ1である場合に、符号2を付したサブピクセルは右目によって視認され(符号2を付す破線矢印を参照)、符号5を付したサブピクセルは左目によって視認される(符号5を付す破線矢印を参照)。このようにして右目と左目とによって立体画像を視認者が認識できる距離LDZ1は、ある程度の許容幅を有している。また、立体画像表示光学素子11と左目および右目とを結ぶ直線との間の離間距離が距離LDZ2である場合に、符号3を付したサブピクセルは右目によって視認され(符号3を付す破線矢印を参照)、符号4を付したサブピクセルは左目によって視認される(符号4を付す破線矢印を参照)。立体画像を視認者が認識できる距離LDZ2は、ある程度の許容幅を有している。
このようにして、立体画像表示光学素子11と左目および右目とを結ぶ直線との間の離間距離が距離LDZ1の付近では、符号2を付した直近のR、G、Bの3色のサブピクセルが一画素を構成するようにして全画像表示面からの画素を右目によって視認することができる。また、符号5を付した直近のR、G、Bの3色のサブピクセルが一画素を構成するようにして全画像表示面からの画素を左目によって視認することができる。そして、右目によって視認される画像と左目によって視認される画像とが、人間に立体画像として認識されるものとして予め配置されている。
同様にして、立体画像表示光学素子11と左目および右目とを結ぶ直線との間の離間距離が距離LDZ2の付近では、符号3を付した直近のR、G、Bの3色のサブピクセルが一画素を構成するようにして全画像表示面からの画素を右目によって視認することができる。また、符号4を付した直近のR、G、Bの3色のサブピクセルが一画素を構成するようにして全画像表示面からの画素を左目によって視認することができる。そして、右目によって視認される画像と左目によって視認される画像とが、人間に立体画像として認識されるものとして予め配置されている。
離間距離が距離LDZ1の付近で認識される立体画像と離間距離が距離LDZ2の付近で認識される立体画像とが同じ内容であれば、視認者は、立体画像表示光学素子11と左目および右目とを結ぶ直線との間の離間距離が大きく変化しても同一内容の立体画像を認識することができる。また、離間距離が距離LDZ1の付近で認識される立体画像と離間距離が距離LDZ2の付近で認識される立体画像とが異なる内容であれば、視認者は、立体画像表示光学素子11と左目および右目とを結ぶ直線との間の離間距離が大きく変化すると異なる内容の立体画像を認識することができる。
以上の図1ないし図5を参照して説明をした立体画像表示装置の原理に示す技術においては、いわゆる、3Dモアレ(スリーデーモアレ)が発生して立体画像の品質を害する。3Dモアレの発生の原理は特許文献4(特開2005−208567号公報)にも説明されている。
(3Dモアレ低減の原理)
本出願の願書に記載の発明者(発明者と称する)は、3Dモアレの除去について鋭意研究を行い、以下に説明する種々の実施形態によって3Dモアレを軽減できることを確かめた。発明者が到達した3Dモアレの軽減の手法は、要約すると以下である。
まず、3Dモアレの発生の原因について発明者の認識するところをまとめる。
(1)3Dモアレの発生の原因は回折格子として機能する各シリンドリカルレンズを通った光が規則的に干渉して生ずるものである。
(2)立体画像表示光学素子11の各シリンドリカルレンズが均一であればあるほど、光の干渉は規則的な黒い太い線として視認される。これが、3Dモアレである。ここで、シリンドリカルレンズが均一とは、各シリンドリカルのX軸方向長が等しいことを言い、その結果として、隣接するシリンドリカルレンズの光軸間距離も等しくなることも言う。
次に、3Dモアレの低減方法について発明者がなした発明の要点をまとめる。
(1)回折格子として機能する各シリンドリカルレンズを通った光が規則的に干渉しないように立体画像表示光学素子11の各シリンドリカルレンズの均一性を崩せば、各シリンドリカルレンズを通った光が規則的に干渉することはないので太い黒い線としては認識されない。すなわち、3Dモアレの低減ができる。
(2)問題となるのは、各シリンドリカルレンズの均一性をどのように崩せば、立体画像の画質(立体画像画質)に影響を与えずに、3Dモアレを低減できるかである。
(3)立体画像画質は、画質と立体視特性との2つの指標によって定まることを発明者は見出した。ここで、画質とは、立体的に見えるかどうかを問わず、1画素として適切にR、G、Bが混色して見えるか否かの指標である。立体視特性とは、立体感を生じる角度で視認者の左右の各々の目にサブピクセルからの光が入射するか否かの指標である。
イ)
画質について
n番目のシリンドリカルレンズと(n+1)番目のシリンドリカルレンズとの境界(最凹部bn)では、光の屈折方向はクリティカルに変化するので、サブピクセルの発光する部分(発光部)の端部から内側に大きく入った位置にこの部分が対面すると画質が劣化する。
ロ)
立体視特性について
画像表示面10における複数個のサブピクセルの区切の位置(例えば、5視差法においては5個のサブピクセル毎の区切の位置)と、シリンドリカルレンズの最凹部との距離差(位相差)が1サブピクセル以内でずれると、ずれ量に応じて視認者によって認識される立体画像の立体視特性が劣化する。この位相差が1サブピクセル以上ずれてしまうと、視認者によって認識される立体画像の画素を構成するサブピクセルの組み合わせがずれてしまい立体感が損なわれ立体視特性が著しく劣化する。
(4)よって、(3)の指標に鑑みて、各シリンドリカルレンズの均一性を適切に崩せば、立体画像の品質をほとんど劣化させることなく3Dモアレを低減できることになる。
以下に、具体的に各シリンドリカルレンズの均一性を崩すような実施形態について説明をする。
(第1実施形態)
図6、図7を参照して、第1実施形態の立体画像表示光学素子について説明をする。第1実施形態の立体画像表示光学素子は、隣接するシリンドリカルレンズの光軸間距離の均一性を崩す実施形態である。
図6は、第1実施形態における立体画像表示装置の画像表示面10と複数個のシリンドリカルレンズを有する立体画像表示光学素子11Aとの配置関係を画像表示面方向から見る図である。
図6においては、図面を見易くするために、各サブピクセル間の遮光部の記載は省略され、各シリンドリカルレンズの境界である最凹部は強調されて太く書かれている。立体画像表示光学素子11Aは、拡大表示部の部分のみが表示されているが、立体画像表示光学素子11Aは画像表示面10の全面に対面するように配置されており、拡大表示部以外の他の部分の記載は省略されている。
図6に示す画像表示面10は、図3ないし図5に示す画像表示面10と同じ形状をしている。第1実施形態においては5視差法について説明するが、技術思想は他の視差法においても一般性を失うものではない。5サブピクセル長をPP1、PP2、PP3と記載している。画像表示面に配置される連続する5個のサブピクセル(5サブピクセル長)はすべて等しい。すなわち、PP1=PP2=PP3・・・であるので、5サブピクセル長をPPに置き換えて以下説明をする。
図6に示す立体画像表示光学素子11Aは、図3ないし図5に示す周知の立体画像表示光学素子11と異なる形状をしている。すなわち、図6に示す立体画像表示光学素子11Aは、第1シリンドリカルレンズLS1の最凸部a1と第2シリンドリカルレンズLS2の最凸部a2との間隔である光軸間距離PCS1、第2シリンドリカルレンズLS2の最凸部a2と第3シリンドリカルレンズLS3の最凸部a3との間隔である光軸間距離PCS3、第3シリンドリカルレンズLS3の最凸部a3と第4シリンドリカルレンズLS4の最凸部a4との間隔である光軸間距離PCS4の各々は、均一ではない。一般式で書くと、nを任意の整数として、第nシリンドリカルレンズLSnの最凸部anと第(n+1)シリンドリカルレンズLSn+1の最凸部an+1との間隔は光軸間距離PCSnと表されるが、光軸間距離PCSnは均一ではない。
まず、一般式を用いて第1実施形態について説明をする。
上述したように画像表示面10の上の座標軸を基準としてX軸の原点(X=0)から立体画像表示光学素子11Aを構成する第nシリンドリカルレンズの最凹部bnまでの距離LCnは、数1の一般式で表される。数1では、第nシリンドリカルレンズLSnの曲率を有する軸方向(X軸方向)の長さはPLnであるとし、第1シリンドリカルレンズLS1の最凹部b0は原点に位置するとして説明をする。
数1で表される距離LCnは、原点からのn番目のシリンドリカルレンズと(n+1)番目のシリンドリカルレンズとの境界の距離である。
一方、画像表示面10の5個のサブピクセルを単位とする5サブピクセルのX軸の原点(X=0)からの距離は、5個目のサブピクセルまでの距離LP1(図示せず)はPP、10個目のサブピクセルまでの距離LP2(図示せず)はPP+PP=2×PP、15個目のサブピクセルまでの距離LP3(図示せず)はPP1+PP2+PP3=3×PPで表される。
X軸の原点から画像表示面10の(5×n)番目のサブピクセルまでの距離LPnは、数2で表される。
数2で表される距離LPnは、原点から(5×n)番目のサブピクセルと{(5×n)+1}番目のサブピクセルとの境界までの距離である。
(5×n)番目のサブピクセル、{(5×n)+1}番目のサブピクセルの各々は長さPSXの遮光部を有している。(5×n)番目のサブピクセルと{(5×n)+1}番目のサブピクセルの境界では遮光部の長さは2×PSXである。
n番目のシリンドリカルレンズと(n+1)番目のシリンドリカルレンズとの境界(最凹部bn)では、光の屈折方向はクリティカルに変化するので、サブピクセルの発光する部分(発光部)に最凹部bnが対面すると画質が劣化する。よって、最凹部bnを遮光部に対面する範囲内にするためには、位相差は数3で示す範囲内でなければならない。数3はシリンドリカルレンズの最凹部bnが(5×n)番目のサブピクセルと{(5×n)+1}番目のサブピクセルの境界の遮光部の範囲に留まるための条件式である。
また、図6の原点0からの立体画像表示光学素子11Aの上の距離LCnと図6の原点0からの画像表示面10の上の距離LPnとの距離差(位相差)が1サブピクセル以上ずれてしまうと、各矢印方向(図5を参照)に視認される立体画像の画素を構成するサブピクセルの組み合わせがずれてしまい、立体視特性が劣化して立体画像に見えなくなる。また、画質も劣化する。よって、位相差は、1サブピクセル以内の範囲内でなければならないが、その範囲は実験によって定めることとなる。数式4は、立体視特性および画質の劣化の許容範囲を定める数式である。数4のkは1以下の定数であり、実験によって定める値であり、kの値は立体視特性および画質の劣化の許容できる範囲を定める。
数3、数4におけるABSは絶対値である。絶対値を得るようにしたのは、n番目シリンドリカルレンズLSnの最凹部bnと符号5と符号1のサブピクセルとの境界との位相差について、位相進み(LPn−LCn>0)と位相遅れ(LPn−LCn<0)の両方を考慮したためである。
各サブピクセルのX軸方向のサブピクセル長PSPXはX軸方向の遮光部長PSXを含むので、PSPX>PSXである。ここで、数4におけるPSPX=PP/NSHである。NSHは、視差法に対応する整数であり、4視差法であれば4、5視差法であれば5、7視差法であれば7が対応する。すなわち、シリンドリカルレンズの曲率を有する方向に対面するサブピクセルの長さPSPX=PP/NSHの関係がある。数4におけるkの意味およびkの値については後述するが、kは1未満の数(k<1)である。
立体画像画質の劣化は、画質の劣化と、立体視特性の劣化によって生じることを既に説明した。そして、立体画像画質の劣化が許容範囲内であるためには、画質の劣化が許容範囲内であって、かつ、立体視特性の劣化が許容範囲内でなければならないことを既に説明した。立体画像画質の劣化と数3、数4の関係との要点を以下にまとめる。
数4におけるkについて説明をする。上述したようにk≧1である場合には、立体視特性の劣化が著しく劣化する。k<1であっても、立体視特性の劣化が生じ、画質の劣化も生じるので、kの値は、複数人の被験者が、視認実験を行い、立体視特性の劣化および画質の劣化が許容できる範囲に定めている。発明者の実験によれば、kの値は、0.25未満であった。
サブピクセルのサブピクセル長PSPXと遮光部長PSXとをどのように定めるかは、設計事項として幅広く定め得る事項である。現在、市場に出回っている平面画像表示装置の画像表示面に配列されるサブピクセルの寸法を発明者が実測したところ、サブピクセル長PSPXにおける遮光部長PSXと光を発光する部分の長さである発光部長(PSPX−PSX)との比率は広範囲に分布している。同様に、サブピクセル長PSPYにおける遮光部長PSYと光を発光する部分の長さである発光部長(PSPY−PSY)との比率は広範囲に分布している。ここで、CX=PSX/PSPXで表され、CY=PSY/PSPYで表される。第1実施形態においては、PSX、PSPX、CXが意味を有するが、後述する2視差法においては、PSY、PSPY、CYが意味を有することとなる。
市場に出回っている各社の画像表示装置のサブピクセルの寸法を発明者は実測した。A社の画像表示装置では、PSX:(PSPX−PSX)=0.033:0.967、PSY:(PSPY−PSY)=0.13:0.87であった。このときのCX=0.033、CY=0.13である。B社の画像表示装置では、PSX:(PSPX−PSX)=0.35:0.65、PSY:(PSPY−PSY)=0.15:0.85である。このときのCX=0.35、CY=0.15である。C社の画像表示装置では、PSY:(PSPY−PSY)=0.036:0.964、PSX:(PSPX−PSX)=0.09:0.91であった。このときのCX=0.036、CY=0.09である。このように、市場に出回っている各社の画像表示装置のPSX:(PSPX−PSX)の比率、PSY:(PSPY−PSY)の比率、CX、CYには種々のものがある。
(Case1) k≦CX=PSX/PSPXである場合
数4のkによって、立体視特性の劣化および画質の劣化が許容できる範囲、すなわち、立体画像画質が許容できる範囲に定められている。k=CXの場合に、数3と数4とは等しい数式となる。よってk≦CXの場合には、数4が成立すれば必然的に数3も成立する。そして、数3が成立する場合には、遮光部長PSXの範囲にすべてのシリンドリカルレンズの最凹部が位置することになり、画質の劣化はほとんど生じない。すなわち、k≦CXの場合には、数4を満たせば、立体画像画質が許容できる範囲となるが、数3を満たすようにすれば、さらに、良好な立体画像画質を得ることができることとなる。
(Case2) k>CX=PSX/PSPXである場合
数4のkによって、立体視特性の劣化および画質の劣化が許容できる範囲に定められている。k>CXの場合には、数4が成立しても、数3は成立しない。数4の条件が成立するので許容できる立体視特性の劣化の範囲内であり、かつ、許容できる画質の劣化の範囲内であることとなる。すなわち、k>CXの場合には、遮光部長PSXの範囲を越えてシリンドリカルレンズの最凹部が位置したとしても数4を満たせば、立体画像画質が許容できる範囲となる。
以上のように、(Case1)の場合には、数3を満たすようにすれば画質の劣化がほとんど生じないので、(Case2)の場合よりもより望ましい。(Case1)、(Case2)のいずれの場合に該当するかは、サブピクセルの構造によって定まる。(Case1)、(Case2)のいずれの場合にも、数4は、どこまで各シリンドリカルレンズについてABS[LPn−LCn]を大きくしても、立体画像画質の劣化が許容できるかという指標を示すための数式となる。一方、モアレについては、数4に示す最大限界であるk×PSPXまでABS[LPn−LCn]を大きくしなくても十分にモアレ低減効果があることが発明者の実験によって確認されている。
なお、原理図(図3、図4、図5を参照)の立体画像表示装置は、すべてのシリンドリカルレンズの曲率を有する方向の長さPLn=PPとnによらず一定であり、距離LCnと距離LPnとの距離差(位相差)が0となる数4の特別な場合である。数4においてk=0である場合に数5が成立する。数5は、原理図の場合に成立する数式である。
数5の条件においては、すべてのシリンドリカルレンズについてABS[LPn−LCn]=0であるので、立体画像画質の劣化は全く生じないものの、モアレ低減効果は全く生じない。
図6に示す第1実施形態において、数3、または数4に示す条件式を満たすように予めシリンドリカルレンズの長さの種類を定めるに際して、なるべく少ない種類のシリンドリカルレンズ(シリンドリカルレンズの長さの種類が少ないという意味である)として、長さPLAと長さPLBとの2種類のシリンドリカルレンズを有する立体画像表示光学素子11Aについて以下に説明をする。図6のPL1、PL4の下の括弧内のPLA、PL2、PL3の下の括弧内のPLBを参照して以下に説明をする。
長さPLAのシリンドリカルレンズ2個と長さPLBのシリンドリカルレンズ2個とをX軸方向に交互に並べることにより、各シリンドリカルレンズの長さの均一性を崩しながら、隣接するシリンドリカルレンズの光軸間距離も均一性を崩す場合について説明をする。この場合において、数4を満たすことによって、立体画像画質が許容できる範囲とできる。また、サブピクセルの構造がk≦CXの条件を満たす場合には、数3を満たすようにすれば、さらに、良好な立体画像画質を得ることができることとなる。
PLA=PP+δ、PLB=PP−δであるとして図6を参照して説明をする。ここで、PPは、曲率を有する軸方向(X軸方向)のシリンドリカルレンズ長にばらつきがない場合に該当する数5を満たす長さであり、基準長PPと称する。原点(X=0)は画像表示面10の最端の位置であり、符号1を付したR(赤)の端部である。第1番目のシリンドリカルレンズLS1の配置の位置は、数4のn=1の場合と一致するように、原点にシリンドリカルレンズLS1の最凹部b0が位置する場合について以下に説明をする。
原点からシリンドリカルレンズの最凹部b1までの距離LC1はPP+δである。原点から最凹部b2までの距離LC2は2×PPである。原点から最凹部b3までの距離LC3は3×PP−δである。原点から最凹部b4までの距離LC4は4×PPである。図示しないが、最凹部b5以降は以下のように、距離LC5は5×PP+δ、距離LC6は6×PP、距離LC7は7×PP−δ、・・・である。ここで、符号5を付したサブピクセルの端の位置は、PP、2×PP、3×PP、4×PP、5×PP、6×PP、7×PP、・・・である。よって、符号5を付したサブピクセルの端に対してシリンドリカルレンズの最凹部は、+δの位相ずれ、位相ずれなし、−δの位相ずれを順に繰り返す(数3、数4を参照)。
また、すべてのシリンドリカルレンズが基準長PPである場合の最凹部(図3を参照)の位置と、シリンドリカルレンズの長さがPLA、PLB、PLB、PLA、PLA、PLB、PLB、PLA、PLA・・・と順に繰り返す場合の最凹部(図6を参照)の位置との位相差は、+δの位相ずれ、位相ずれなし、−δの位相ずれを順に繰り返す。
原点(X=0)から光軸である最凸部a1までの距離は0.5×PP+0.5×δである。原点から光軸である最凸部a2までの距離は1.5×PPである。原点から光軸である最凸部a3までの距離は2.5×PP−0.5×δである。原点から光軸である最凸部a4までの距離は3.5×PPである。図示しないが、最凸部a5以降は以下のように、4.5×PP+0.5×δ、5.5×PP、6.5×PP−0.5×δ、7.5×PP・・・である。
光軸間距離PCS1はPPである。光軸間距離PCS2はPP+δである。光軸間距離PCS3はPPである。図示しないが光軸間距離PCS4はPP−δである。光軸間距離PCS5以降は、PP、PP+δ、PP、PP−δ、PP・・・と順に繰り返す。このようにして、光軸間距離は3種類となる。
(Case1)の場合には、数3に示すようにX軸方向の遮光部長PSXの長さまでの位相ずれがあっても画質の低減はない。画質の低減を生じない範囲において、PLAの長さとPLBの長さに最大の差をつける場合には、δ=PSXとなるようにして、PLA=PP+PSX、PLB=PP−PSXに設定することによって極めて良好な画質を得ることができる。(Case2)の場合には、数4に示すように、δ<k×PSPXの範囲でδを適宜に選べば立体画像画質の劣化を許容できる範囲内にすることができる。サブピクセルの長さPSPX=PP/NSHの関係があり、発明者が行った実験によれば、kの値は0.25未満であった。
上述した2種類の異なるシリンドリカル長と3種類の異なる光軸間距離を有するシリンドリカルレンズを有する立体画像表示光学素子を製造するための2つの方法を以下に説明する。
第1の方法は、図4に示す曲率半径Rの値を、長さPLAのシリンドリカルレンズと長さPLBのシリンドリカルレンズとでは異ならせるものである。長さPLAのシリンドリカルレンズ(例えば、第1シリンドリカルレンズLS1)の曲率半径R1と長さPLBのシリンドリカルレンズ(例えば、第2シリンドリカルレンズLS2)の曲率半径R2の値を異ならせる。このようにすると、3種類の異なる光軸間距離を有するシリンドリカルレンズによって立体画像表示光学素子を構成できる。この場合において、最凸部の位置をZ軸方向で同一の位置としてもよく、最凹部の位置をZ軸方向で同一の位置としてもよい。また、最凸部の位置および最凹部のZ軸方向の位置の両方をともに僅かに調整してもよい。なお、シリンドリカルレンズの曲率半径の値が、曲率半径R1と曲率半径R2の2個の場合には、立体画像表示光学素子製造金型は、各シリンドリカルレンズの曲率と同じ曲率を有する2種類の切削工具を切り替えて、長さPLAのシリンドリカルレンズに対応する曲率の凹溝と長さPLBのシリンドリカルレンズに対応する曲率の凹溝との2種類の凹溝を切削して製造することができる。
第2の方法は、図4に示す曲率半径Rの値を、長さPLAのシリンドリカルレンズ(例えば、第1シリンドリカルレンズLS1)と長さPLBのシリンドリカルレンズ(例えば、第2シリンドリカルレンズLS2)とで同一とするものである。この場合においては、例えば、第1シリンドリカルレンズの最凸部a1(光軸)の画像表示面10からのZ軸方向の距離と第2シリンドリカルレンズの最凸部a2(光軸)の画像表示面10からのZ軸方向の距離とを僅かに異ならせる。また、最凹部のZ軸方向の位置を僅かに調整してもよく、最凸部の位置および最凹部のZ軸方向の位置の両方をとも僅かに調整してもよい。このようにすると、3種類の異なる光軸間距離を有するシリンドリカルレンズによって立体画像表示光学素子11Aを構成できる。なお、シリンドリカルレンズの曲率半径Rの値が1個の場合には、立体画像表示光学素子製造金型は、1種類の切削工具のZ軸方向の位置を2種類に切り替えて、長さPLAのシリンドリカルレンズに対応する凹溝と長さPLBのシリンドリカルレンズに対応する凹溝との2種類の凹溝を切削して製造することができる。
上述した第1の方法または上述した第2の方法は、任意種類のシリンドリカルレンズを有する立体画像表示光学素子の製造方法に拡張できる。第1の方法を用いて多数の種類の凹溝を金型に切削する場合には、凹溝の種類の数と同じ数の切削工具が必要となり、金型製造のコストが高くなる。第2の方法を用いて多数の種類の凹溝を金型に切削する場合には、Z軸方向の位置を多数の種類となるように切り替えるだけであるので金型製造のコストは安くできる。
図7は、第1実施形態における立体画像表示装置の画像表示面と複数個のシリンドリカルレンズを有する立体画像表示光学素子との配置関係を画像表示面に直交する断面方向(図6のA-A断面)から見る図である。
図7においては、立体画像表示装置のピクセルとシリンドリカルレンズとの関係を面図によって模式的に示す。図7と図5とを比較すると、画像表示面10に関する寸法は同じである。すなわち、1個のサブピクセルのX軸方向のサブピクセル長PSPX、1個のサブピクセルのX軸方向の遮光部長PSXは、図7と図5では同じである。
一方、上述したように、図7に示す立体画像表示光学素子11Aに関する寸法については、例えば、2個おきにシリンドリカルレンズのX軸方向長が異なるようにされている。異なる2つのシリンドリカルレンズの長さの和は、長さPPの2倍である。この点においてシリンドリカルレンズのX軸方向長が同一である図5に示す立体画像表示光学素子11と異なる。また、数3、数4に示すように、一般的にはシリンドリカルレンズの長さの種類は2種類に制限されるものではない。
立体画像表示光学素子11Aと左目および右目とを結ぶ直線との間の離間距離が距離LDZ1の付近では、符号2を付した直近のR、G、Bの3色のサブピクセルが一画素を構成するようにして右目によって視認することができ、また、符号5を付した直近のR、G、Bの3色のサブピクセルが一画素を構成するようにして左目によって視認することができる。また、離間距離が距離LDZ2の付近では、符号3を付した直近のR、G、Bの3色のサブピクセルが一画素を構成するようにして右目によって視認することができ、また、符号4を付した直近のR、G、Bの3色のサブピクセルが一画素を構成するようにして左目によって視認することができる。そして、右目によって視認される画像と左目によって視認される画像とが、人間に立体画像として認識される点については、図5を用いて説明した原理と同じである。
図6、図7に示す立体画像表示光学素子11Aを用いる場合においては、立体画像表示光学素子11Aの隣接するシリンドリカルレンズの光軸間距離は3種類あり、シリンドリカルレンズの長さは2種類あるので、各シリンドリカルレンズからの光のモアレに異なる低周波成分が発生するため、結果的に見かけ上の3Dモアレの発生の度合は軽減される。また、一般的にはシリンドリカルレンズの曲率を有する軸方向の長さの種類は2種類に制限され、その結果、光軸間距離は3種類に制限されるものではない。数3、数4に示すように、任意種類のシリンドリカルレンズを用いることができる。シリンドリカルレンズの曲率を有する軸方向の長さの種類が多くなるほど3Dモアレの発生の度合は軽減される。
(第1実施形態の変形)
第1実施形態においては、シリンドリカルレンズの長さを種々にし、その結果として光軸間距離が種々になるものとして説明をした。よって、シリンドリカルレンズの光軸間距離を種々にすることによって3Dモアレを低減すると考えることもできる。以下に説明をする第1実施形態の変形は、シリンドリカルレンズの光軸間距離を種々にするという観点からの実施形態である。
図6を再び参照して説明をする。シリンドリカルレンズの光軸間距離に注目する場合には、数1は別の表現方法に書き直すことができる。数6に示すように、PCS0はシリンドリカルレンズLS1のX軸方向のシリンドリカルレンズ長PL1の1/2である。1以上の整数nに対応するPCSnは、隣接する2つのシリンドリカルレンズのX軸方向長の1/2の和で表される。
数7で表される距離LCnは、原点からのn番目のシリンドリカルレンズと(n+1)番目のシリンドリカルレンズとの境界の距離であり、数1の別の表現である。
数7を用いた数3の別の表現が数8である。数7を用いた数4の別の表現が数9である。
数6、数7においては、光軸間距離PCSnが明示されているが、数8、数9においては光軸間距離PCSnではなく、シリンドリカルレンズのX軸方向のシリンドリカルレンズ長PLnによって表現されている。よって、サシリンドリカルレンズのX軸方向のシリンドリカルレンズ長PLnの長さをばらつかせることと、隣接するシリンドリカルレンズの光軸間距離をばらつかせることとの間に本質的な違いはない。数式の上でも、光軸間距離PCSnがサブピクセルのX軸方向のシリンドリカルレンズ長PLnによって表現されるという意味において、数8と数3との実質的に違いはなく、数9と数4との実質的に違いはない。数6、数7に示すように、第1実施形態の変形においてはシリンドリカルレンズの光軸間距離PCSnを任意種類とする。光軸間距離PCSnの種類が多くなるほど3Dモアレの発生の度合は軽減される。サブピクセルの長さPSPX=PP/NSHの関係があり、発明者が行った実験によれば、kの値は0.25未満であった。
(第2実施形態)
第2実施形態は、予め定めた複数種類の長さのシリンドリカルレンズを有する立体画像表示光学素子を特徴とする点においては第1実施形態と同じである。しかしながら、以下の点が、第2実施形態と第1実施形態とでは異なる。第1シリンドリカルレンズLS1の光軸から第2シリンドリカルレンズLS2の光軸までの光軸間距離PCS1、第2シリンドリカルレンズLS2の光軸から第3シリンドリカルレンズLS3の光軸までの光軸間距離PCS2、第3シリンドリカルレンズLS3の光軸から第4シリンドリカルレンズLS4の光軸までの光軸間距離PCS4、一般式では、第(n−1)シリンドリカルレンズLSn−1の光軸と第nシリンドリカルレンズLSnの光軸との間の光軸間距離PCSnは、nの値によらず等しくされる。任意のnに対応する光軸間距離PCSnの値はすべて、PCS=PPである。
図8は、第2実施形態における立体画像表示装置の画像表示面10と複数個のシリンドリカルレンズを有する立体画像表示光学素子11Bとの配置関係を画像表示面方向から見る図である。
図8においては、図面を見易くするために、各サブピクセル間の遮光部の記載は省略され、各シリンドリカルレンズの境界は強調されて太く書かれている。立体画像表示光学素子11Bは、拡大表示部の部分のみが表示されている。立体画像表示光学素子11Bは画像表示面10の全面に対面するように配置されており、拡大表示部以外の他の部分の記載は省略されている。
図8に示す画像表示面10は、図3ないし図5に示す画像表示面10と同じ形状をしている。
図8は、各シリンドリカルレンズの最凸部である最凸部a1、最凸部a2、最凸部a3、最凸部a4の位置の各々が、符号3を付したサブピクセルの中心の位置と一致する場合を示す。
X軸の原点(X=0)から立体画像表示光学素子11B(図8.図9を参照)を構成する第1シリンドリカルレンズの最凹部b1までの距離LC1は、PP+0.5×(PL1−PP)で表される。X軸の原点(X=0)から第2シリンドリカルレンズの最凹部b2までの距離LC2は、2×PP+0.5×(PL2−PP)で表される。X軸の原点(X=0)から第3シリンドリカルレンズの最凹部b3までの距離LC3は、3×PP+0.5×(PL3−PP)で表される。X軸の原点(X=0)から第4シリンドリカルレンズの最凹部b4までの距離LC4は、4×PP+0.5×(PL4−PP)で表される。
以下、一般式で書く。第nシリンドリカルレンズの最凹部bn−1から最凹部bnまでの距離を第nシリンドリカルレンズの長さをPLnと定義する。X軸の原点(X=0)から立体画像表示光学素子11Bを構成する第nシリンドリカルレンズの最凹部bnまでの距離LCnは、数6で表される。数6で表される距離LCnは、原点から、n番目のシリンドリカルレンズと(n+1)番目のシリンドリカルレンズとの境界までの距離である。
一方、画像表示面10の5個のサブピクセルを単位とするサブピクセルのX軸の原点(X=0)からの距離は、5個目のサブピクセルまでの距離LP1(図示せず)はPP、10個目のサブピクセルまでの距離LP2(図示せず)はPP+PP=2×PP、15個目のサブピクセルまでの距離LP3(図示せず)はPP1+PP2+PP3=3×PP、20個目のサブピクセルまでの距離LP4(図示せず)はPP1+PP2+PP3+PP4=4×PPで表される。
X軸の原点から画像表示面10の(5×n)番目のサブピクセルまでの距離LPnは、上述した数2で表される。数2で表される距離LPnは(5×n)番目のサブピクセルと{(5×n)+1}番目のサブピクセルとの境界である。
n番目のシリンドリカルレンズと(n+1)番目のシリンドリカルレンズとの境界(最凹部bn)では、光の屈折方向はクリティカルに変化するので、サブピクセルの発光する部分(発光部)にこの部分が対面すると画質が劣化する。
数11は最凹部bnが(5×n)番目のサブピクセルと{(5×n)+1}番目のサブピクセルの境界の遮光部の範囲に留まるための条件式である。
また、距離LCnと距離LPnとの距離差(位相差)が1サブピクセル以上ずれてしまうと、符号2ないし符号5を付した各矢印方向(図5を参照)に視認される立体画像を構成する画素を構成するサブピクセルの組み合わせがずれてしまい、立体視特性が劣化して立体画像に見えなくなる。よって、位相差は、1サブピクセル以内の範囲内でなければならないが、その範囲は、複数の被験者による視認実験によって定めることとなる。数12のkは、発明者が行った実験によれば、第1実施形態と同様に0.25未満であった。
数11の意味するところは、数3について上述したと同様に、各シリンドリカルレンズの最凹部の位置が、本来あるべき位置からPSXの範囲でずれても画質に影響を与えないという意味である。また、数12の意味するところは、数4について上述したと同様に、どこまで各シリンドリカルレンズについてABS[LPn−LCn]を大きくしても、立体画像画質の劣化が許容できるかという指標を示すための数式である。また、PSPX=PP/NSHである。NSHの値は上述したように、5視差法では5である。他の視差法ではその視差法に対応する整数が対応する。
数11、数12は、第(n−1)シリンドリカルレンズLSn−1の光軸と第nシリンドリカルレンズLSnの光軸との間の光軸間距離PCSnは、nの値によらず等しい場合の一般式であるが、第2実施形態の中のより限定した例について説明する。図8において、PL1=PLA、PL2=PLB、PL3=PLA、PL4=PLB・・・と、曲率方向の長さが異なる2種類のシリンドリカルレンズを用いる場合の立体画像表示光学素子11Bについて以下説明をする。
再び図8を参照して説明をする。図8に示す立体画像表示光学素子11Bの第(2n−1)シリンドリカルレンズLS2n-1のX軸方向のシリンドリカルレンズ長PL2n-1は長さPLAであり、第2nシリンドリカルレンズLS2nのX軸方向のシリンドリカルレンズ長PL2nは長さPLBであるとする。nは正整数である。
PL2n−1=PLA=PP+δ、PL2n=PLB=PP−δであるとして図8を参照して説明をする。
原点から光軸である最凸部a1までの距離は0.5×PPである。原点から光軸である最凸部a2までの距離は1.5×PPである。原点から光軸である最凸部a3までの距離は2.5×PPである。原点から光軸である最凸部a4までの距離は3.5×PPである。図示しないが、最凸部a5以降は以下のように、4.5×PP、5.5×PP、6.5×PP、7.5×PP、8.5×PPと順にPPだけ増加する。すべてのシリンドリカルレンズの光軸間距離PCSはPPである。
原点から最凹部b1までの距離はPP+0.5×δである。原点から最凹部b2までの距離は2×PP−0.5×δである。原点から最凹部b3までの距離は3×PP+0.5×δである。原点から最凹部b4までの距離は4×PP+0.5×δである。図示しないが、最凹部b5以降は以下のように、5×PP+0.5×δ、6×PP−0.5×δ、7×PP+0.5×δ、8×PP−0.5×δ、9×PP+0.5×δ・・・と繰り返す。画像表示面10の符号5を付したサブピクセルと符号1を付したサブピクセルとの境界と、シリンドリカルレンズの最凹部との位相は、+0.5×δの位相ずれ、−0.5×δの位相ずれを繰り返す。
サブピクセルの構造によって、(Case1)に該当する場合には、数11に示すように曲率を有する方向(X軸方向)の遮光部長PSXの長さまで位相ずれがあっても画質の低減を生じないので、PLAの長さとPLBの長さに最大の差をつける場合には、δ=PSXとなるようにして、PLA=PP+PSX、PLB=PP−PSXに設定できる。δ≦PSXの範囲でδを適宜に選べば、画質の低減は生じない。
数12に示すようにk×X軸方向の遮光部長PSXの長さまで位相ずれがあっても立体視特性および画質の低減は生じない。kの値は、上述したように実験によれば、0.25未満であった。PLAの長さとPLBの長さに最大の差をつける場合には、δ=k×PSPXとなるようにして、PLA=PP+PSX、PLB=PP−PSXに設定できる。なお、数11、数12のいずれの数式がシリンドリカルレンズのX軸方向の長さに制限を加えるかは、上述したように、この立体画像表示光学素子11Bと組み合わせる画像表示面10のサブピクセルの構造に依存する。
上述した2種類の異なる長さのシリンドリカルレンズを有する立体画像表示光学素子を製造するための2つの方法を以下に説明する。
第3の方法は、図4に示す曲率半径Rの値を、第(2n−1)シリンドリカルレンズLS2n-1と第2nシリンドリカルレンズLS2nとでは異ならせるものである。第(2n−1)シリンドリカルレンズLS2n-1(例えば、第1シリンドリカルレンズLS1)の曲率半径R1と第2nシリンドリカルレンズLS2n(例えば、第2シリンドリカルレンズLS2)の曲率半径R2の値を以下の条件を満たすように設定する。第1シリンドリカルレンズLS1の最凸部a1(光軸)および第2シリンドリカルレンズLS2の最凸部a2(光軸)の位置を図4に示すものとX軸方向の同じ位置にし、最凹部b1の位置を図5に示すものとX軸方向の同じ位置とする。それに際しては、最凸部および/または最凹部のZ軸方向の位置を僅かに調整する。このようにすると、一般式で書けば、隣接するシリンドリカルレンズの光軸間距離PCS2n−1を光軸間距離PCSとするように一定に保ちながら、第(2n−1)シリンドリカルレンズLS2n-1のX軸方向のシリンドリカルレンズ長PL2n-1と第2nシリンドリカルレンズLS2nのX軸方向のシリンドリカルレンズ長PL2nとを異ならせることができる。
第4の方法は、図4に示す曲率半径Rの値を、第(2n−1)シリンドリカルレンズLS2n-1(例えば、第1シリンドリカルレンズLS1)と第2nシリンドリカルレンズLS2n(例えば、第2シリンドリカルレンズLS2)とで同一とするものである。そして、例えば、第1シリンドリカルレンズLS1の最凸部a1(光軸)の画像表示面10からのZ軸方向の距離と第2シリンドリカルレンズLS2の最凸部a2(光軸)の画像表示面10からのZ軸方向の距離とを僅かに図5とは異ならせ、最凹部b1の位置は図5に示すと同じ位置とする。このようにして、異なる曲率を有する2種類の異なる長さのシリンドリカルレンズを有する立体画像表示光学素子を構成することができる。
または、第1シリンドリカルレンズLS1の最凸部a1(光軸)の画像表示面10からのZ軸方向の距離と第2シリンドリカルレンズLS2の最凸部a2(光軸)の画像表示面10からのZ軸方向の距離とを同一として最凹部b1の位置を僅かに異ならせるようにしてもよい。すなわち、当該シリンドリカルレンズの光軸と隣接するシリンドリカルレンズの光軸との距離が短くなる場合には最凹部b1の位置がZ軸上において視認者の目に近づく方向に移動し、当該シリンドリカルレンズの光軸と隣接するシリンドリカルレンズの光軸との距離が長くなる場合には最凹部b1の位置がZ軸上において視認者の目から遠ざかる方向に移動する。このようにして、同一曲率を有する2種類の異なる長さのシリンドリカルレンズを有する立体画像表示光学素子を構成することができる。
さらに、最凸部と最凹部の両方のZ軸方向の位値を僅かに図5とは異ならせてもよい。このようにして、同一曲率または異なる曲率を有する2種類の異なる長さのシリンドリカルレンズを有する立体画像表示光学素子を構成することができる。
第4の方法として以上の3つのいずれを採用しても、一般式で書けば、隣接するシリンドリカルレンズの光軸間距離PCS2n−1を光軸間距離PCSとするように一定に保ちながら、第(2n−1)シリンドリカルレンズLS2n-1のX軸方向の長さ(X軸方向長)PL2n-1と第2nシリンドリカルレンズLS2nのX軸方向のシリンドリカルレンズ長PL2nとを異ならせることができる。
上述した第3の方法または上述した第4の方法は、任意種類のシリンドリカルレンズを有する立体画像表示光学素子の製造方法に拡張できる。第3の方法を用いて多数の種類の凹溝を金型に切削する場合には、凹溝の種類の数と同じ数の切削工具が必要となり、金型製造のコストが高くなる。第4の方法を用いて多数の種類の凹溝を金型に切削する場合には、Z軸方向の位置を多数の種類となるように切り替えるだけであるので金型製造のコストは安くできる。
図9は、第2実施形態における立体画像表示装置の画像表示面と複数個のシリンドリカルレンズを有する立体画像表示光学素子との配置関係を画像表示面に直交する断面方向(図8のA-A断面)から見る図である。
図9においては、立体画像表示装置のピクセルとシリンドリカルレンズとの関係を断面図によって模式的に示す。図9と図5とを比較すると、画像表示面10に関する寸法は同じである。すなわち、1個のサブピクセルのX軸方向のサブピクセル長PSPX、1個のサブピクセルのX軸方向の遮光部長PSXは同じである。また、サブピクセルの5個分の長さPPnの寸法は、nの値によらず、すべて同じ長さPPである。
一方、上述したように、立体画像表示光学素子11Bに関する寸法については、一般的には、各シリンドリカルレンズのX軸方向長が異なるようにされている。上述した1つの具体例においては、1個おきにシリンドリカルレンズのX軸方向長が異なるようにされている。異なる2つのシリンドリカルレンズの長さの和は、長さPPの2倍である。
立体画像表示光学素子11Bと左目および右目とを結ぶ直線との間の離間距離が距離LDZ1の付近では、符号2を付した直近のR、G、Bの3色のサブピクセルが一画素を構成するようにして右目によって視認することができ、また、符号5を付した直近のR、G、Bの3色のサブピクセルが一画素を構成するようにして左目によって視認することができる。また、離間距離が距離LDZ2の付近では、符号3を付した直近のR、G、Bの3色のサブピクセルが一画素を構成するようにして右目によって視認することができ、また、符号4を付した直近のR、G、Bの3色のサブピクセルが一画素を構成するようにして左目によって視認することができる。そして、右目によって視認される画像と左目によって視認される画像とが、人間に立体画像として認識される点については、図5を用いて説明した原理と同じである。
図8、図9に示す立体画像表示光学素子11Bを用いる場合においては、シリンドリカルレンズの曲率を有する軸方向の長さは、2種類あるので、各シリンドリカルレンズからの光の干渉の規則性は乱され3Dモアレの発生の度合は軽減される。また、数11、数12に示すように、一般的にはシリンドリカルレンズの曲率を有する方向の長さは2種類に制限されるものではなく、任意種類のシリンドリカルレンズを用いることができる。シリンドリカルレンズの長さの種類が多くなるほど3Dモアレの発生の度合は軽減される。
(第3実施形態)
第3実施形態は第1実施形態におけるシリンドリカルレンズの種類を増加させる実施形態であり、シリンドリカルレンズの曲率を有する方向の長さを乱数に基づいて種々に変化させる実施形態である。第3実施形態に用いる立体画像表示光学素子は、既に説明した第1の方法または第2の方法によって実現できる。
立体画像表示光学素子を構成するシリンドリカルレンズの曲率を有する方向の長さを乱数に基づいて多数個としてもよい。この場合においても、上述した数3、数4を満たす限り、画像の立体感を損なわず、画像の品質も損なわれることはない。第3実施形態に用いる立体画像表示光学素子は、既に説明した第1の方法または第2の方法によって実現できる。第3実施形態は、図6、図7に示す立体画像表示光学素子11Aにおいて、シリンドリカルレンズの曲率を有する方向の長さ(X軸方向長)の種類を多数個選択する場合に対応する。
第3実施形態においても、数1ないし数4はそのまま適用される。数1におけるX軸方向のシリンドリカルレンズ長PLnが、乱数によって定まる。乱数は、例えば、正規分布する乱数とする。正規分布するX軸方向のシリンドリカルレンズ長PLnの特性は平均と標準偏差値とで表される。X軸方向のシリンドリカルレンズ長PLnの平均は5サブピクセル長であるPPとする。X軸方向のシリンドリカルレンズ長PLnの平均PPからの偏差をΔnとすると、X軸方向のシリンドリカルレンズ長PLnは、数13で表される。
数1と数13から数14が導かれる。
数3と数14とから数15が導かれる。数15の意味は、数3と同様であり、最凹部bnを遮光部の範囲内にするためには上述した位相差は数15で示す範囲でなければならない。
数15、数16の意味は、数3、数4と同様であり、距離LCnと距離LPnとの距離差(位相差)は、1サブピクセル以内の範囲でなければならず、kの値は立体視特性の劣化および画質の劣化の許容できる範囲を定める。発明者の実験によるとkの値は0.25未満であった。また、数15、数16はどのように乱数を発生すれば良いかを定める数式である。具体的な乱数の発生方法については後述する。
(第3実施形態の変形)
第3実施形態の変形は、立体画像表示光学素子を構成するn番目シリンドリカルレンズの最凸部anと隣接する(n+1)番目シリンドリカルレンズの最凸部an+1との距離(光軸間距離)の種類を乱数に基づいて多数個とするものである。この場合においても、上述した数3、数4を満たす限り、画像の立体感を損なわず、画像の品質も損なわれることはない。すなわち、光軸間距離を乱数によって多数個選択するのが第3実施形態の変形である。第3実施形態の変形に用いる立体画像表示光学素子は、既に説明した第1の方法または第2の方法によって実現できる。第3実施形態の変形は、図6、図7に示す立体画像表示光学素子11Aにおいて、光軸間距離PCSnの種類を多数個選択する場合に対応する。
第3実施形態の変形においては、数1における光軸間距離P
CSnが、乱数によって定まる。乱数は、例えば、正規分布する乱数とする。正規分布する光軸間距離P
CSnの特性は平均と標準偏差値とで表される。光軸間距離P
CSnの平均は5サブピクセル長であるP
Pとする。(n−1)番目のシリンドリカルレンズとn番目のシリンドリカルレンズとの光軸間距離P
CSnの平均からの偏差をΔ
nとすると、光軸間距離P
CSnは、数17で表される。上述したと同様にして数18、数19、数20を得る。
数19、数20に示すように、第3実施形態の変形においては、光軸間距離PCSnが、乱数によって定まる。光軸間距離PCSnの種類が多くなるほど3Dモアレの発生の度合は軽減される。サブピクセルの長さPSPX=PP/NSHの関係があり、発明者が行った実験によれば、kの値は0.25未満であった。数19、数20はどのように乱数を発生すれば良いかを定める数式である。具体的な乱数の発生方法については後述する。
(第4実施形態)
第4実施形態は第2実施形態におけるシリンドリカルレンズの種類を増加させる実施形態である。立体画像表示光学素子を構成するn番目シリンドリカルレンズの長さPLnの種類を乱数に基づいて多数個とするようにしてもよい。この場合において、上述した数7を満たすことによって輝度むら等の画像の品質を維持でき、数8を満たす限り画像の立体感を損なわない。すなわち、シリンドリカルレンズの長さを乱数によって多数個選択しながら、光軸間距離は一定に保つのが第4実施形態である。第4実施形態に用いる立体画像表示光学素子は既に説明した第3の方法または第4の方法によって実現できる。第4実施形態は、図8、図9に示す立体画像表示光学素子11Bにおいて、曲率を有する軸方向のシリンドリカルレンズ長PLnの種類を多数個選択する場合に対応する。
第4実施形態においても、数6ないし数8はそのまま適用される。数6におけるn番目のシリンドリカルレンズLSnのX軸方向のシリンドリカルレンズ長PLnは乱数によって定まる。乱数は、例えば、正規分布する乱数とする。シリンドリカルレンズLSnのX軸方向のシリンドリカルレンズ長PLnの平均は5サブピクセル長であるPPとする。シリンドリカルレンズLSnのX軸方向のシリンドリカルレンズ長PLnの平均からの偏差をΔnとすると、シリンドリカルレンズLSnの最凹部bnのX軸方向の原点からの距離LCnは、数21で表される。
一方、画像表示面10の5個のサブピクセルを単位とするサブピクセルのX軸の原点(X=0)からの距離は、数2で表される。よって数22、数23が成立する。
各サブピクセルのX軸方向の長さは遮光部のX軸方向の長さよりも大きく、PSPX>PSXである。数22、数23の特徴は、現在発生すべき乱数の値が過去の乱数の値に依存しないことである、すなわち、過去に出現した乱数の値を検討して現在の乱数を発生させる必要がないので、乱数の処理が極めて簡単なものとなる。kの値は、上述したように実験によれば、0.25未満であった。
なお、n番目のシリンドリカルレンズLSnの曲率を有する軸方向の長さ(X軸方向長)PLnは、数24によって求められる。
(第3実施形態、第4実施形態において用いる乱数について)
第3実施形態、第4実施形態において、シリンドリカルレンズの平均の長さPLからの偏差Δnをどのように設定するかについて説明をする。偏差Δnは乱数に基づいて設定されるが、乱数を制御しなければ、各数式を成り立たせることができない。
第3実施形態において用いる乱数について説明をする。数15、数16から明らかなように、n番目のABS[LPn−LCn]は過去のすべての乱数に基づく偏差Δnに依存している。よって、第3実施形態の偏差Δnの生成には特別な配慮が必要となる。
まず、標準偏差値3σの値を定める。次に、標準偏差値3σの乱数をコンピュータで発生する。標準偏差値3σを超える値の乱数が理論的には発生するので、その場合には、その値を標準偏差値3σに置き換える。偏差Δnは乱数の値Δnに対応するので、以下では偏差Δnを乱数Δnと表記する。1番目の乱数Δ1、2番目の乱数Δ2、・・・n番目の乱数Δnを発生させる。
しかしながら、Δ1を光軸間距離PCS1のPPからのばらつきに対応させ、Δ2を光軸間距離PCS2のPPからのばらつきに対応させ、Δnを光軸間距離PCSnのPPからのばらつきに対応させるようにしてコンピュータで発生する乱数をそのまま用いると数15、数16、数19、数20を満たすことができない。なぜならば、コンピュータで発生する乱数は数15、数16、数19、数20とは明らかに無関係だからである。そこで、コンピュータで発生する乱数Δnに以下の処理を加え、数15、数16、数19、数20を満たす乱数を発生させる。
以下においては、数15、数16を満たす乱数の発生方法について説明をする。数19、数20についても同様の手法が採用できる。
数25に示すSUMを求める。SUMは、正負の極性を有する乱数Δnのn番目までの加算であり、数15、数16と同じものである。正負の極性は、後述する数26の演算によって付されるので、発生する乱数は単一極性の値であってもよい。
このようにして、Δ1からΔnまで加算した結果の絶対値を得た後で、数25のSUMが正のときは−1、数25のSUMが負のときは+1を発生させる。そして、数26に示すように、極性付のΔnを光軸間距離PCSのばらつきとして出力する。
このようにすれば、数25、数26の演算によってΔ1からΔnまで加算した結果が0に近づくようにΔnに極性を付与しながら、数15、数16を満たすようなΔnを順次発生させ、そのΔnを数13に代入して、曲率を有するX軸方向のシリンドリカルレンズ長を決定できる。
数22、数23を満たすようなΔnの発生について説明をする。数22、数23においては、現在のΔnの値のみしか数式に影響を与えないので、最初から極性付の乱数を順次発生させ、そのまま、乱数の値をΔnとして用いることができる。
(第1ないし第4実施形態のその他の変形例)
図10は、シリンドリカルレンズをY軸に対して角度θをなす方向に傾けて配置する立体画像表示光学素子を示す図である。シリンドリカルレンズのY軸に対してなす角度θは、θ=tan-1(サブピクセルのX軸方向長/サブピクセルのY軸方向の長さ)=tan-1(1/3)≒18.43度で表される。そして、上述したと同様に、シリンドリカルレンズLS1、シリンドリカルレンズLS2、シリンドリカルレンズLS3、シリンドリカルレンズLS4、の各々のX軸方向の長さを異ならせる立体画像表示光学素子11Cを採用することによって3Dモアレは低減する。
図11は、X軸方向だけではなく、Y軸方向にもシリンドリカルレンズの位置をずらす立体画像表示光学素子11Dを示す図である。このようにすると、3Dモアレによる黒い線がX軸方向にもばらつくようになって、3Dモアレの低減効果は大きくなる。
図12は、X軸方向だけではなく、Y軸方向にもシリンドリカルレンズの位置をずらす別の立体画像表示光学素子11Eを示す図である。図11の立体画像表示光学素子11Dとはずらし方が異なる。このようにしても図11におけると同様に、3Dモアレによる黒い線が、図11におけるよりもX軸方向にもばらつくようになって、3Dモアレの低減効果は、さらに大きくなる。
図13は、滑らかにシリンドリカルレンズの最凹部がうねる立体画像表示光学素子11Fを示す図である。図11、図12とは異なり、このようにすると金型の製造も容易であり、シリンドリカルレンズの射出成型または圧着成型も容易である。このようにしても図11、図12におけると同様に、3Dモアレによる黒い線がX軸方向にもばらつくようになって、3Dモアレの低減効果は大きくなる。
(実施形態の乱数について)
第3実施形態、第4実施形態においては、乱数が正規分布乱数であるとして説明をした。また、第1実施形態、第2実施形態において、+δと−δとを乱数としてとらえれば、発生する乱数が+δと−δの2値、分散がδである2値乱数であり、たまたま、+δと−δの発生が規則的であると考えることができる。一般的には、+δと−δの発生がランダムであっても一般性を失わず実施が可能であるので、第1実施形態は第3実施形態に含まれ、第2実施形態は第4実施形態に含まれものと言うことができる。
要は実施形態の原理において説明したように、3Dモアレを軽減するためには、均一性があるシリンドリカルレンズの配置を崩せばよいのであるから、乱数は、正規分布乱数、2値乱数以外に、一様乱数、三角分布乱数、指数分布乱数等であってもよい。また、第3実施形態、第4実施形態においては、正規分布乱数の標準偏差値3σの範囲の乱数を用いたが、標準偏差値2σの範囲の乱数、標準偏差値σの範囲の乱数を用いるようにしてもよい。標準偏差値が、標準偏差値3σの場合には、同極性の連続が多くなり、標準偏差値2σ、標準偏差値σの順で同極性の連続の量は少なくなり、標準偏差値σでは、正極性と負極性とを略交互に発生させることができるようになる。
(極性付き偏差Δnの限界値について)
極性付き偏差Δnの最大値(これ以上偏差を大きくしない限界)について説明をする。製造時におけるばらつきをマージンとして差し引かなければならないものの、極性付き偏差Δnの最大値は、第1実施形態、第2実施形態、第3実施形態、第4実施形態、において上述したように、数15、数16、数19、数20、数22、数23の各数式を満たすように定める。ここで、数16、数20、数23におけるkの値が0.25未満である条件下に定められる。
極性付き偏差Δnの最小値(偏差Δnの最大値をこれ以上小さくしない限界)について説明をする。極性付き偏差Δnの最小値が0であれば実施形態の原理と同じことになってしまう。極性付き偏差Δnの最小値は、3Dモアレの低減効果との兼ね合いで定まり、実験値として決めることとなる。発明者の実験結果によれば、数16、数20、数23におけるkの値が0.014(1.4%)であるときに、数16、数20、数23が成立しない確率が、σ、または、2σ、または、3σとなるような偏差Δnの最小値が定められる。
第3実施形態と第4実施形態の関係について説明する。第3実施形態における数15、数16、数19、数20と第4実施形態における数22、数23とを対比する。数15、数16、数19、数20では1番目からn番目までのばらつきの影響がn番目のばらつきに影響するように見える。しかしながら、数15、数16、数19、数20の演算を行うのに際しては、数25、数26の演算が行われ、数15、数16、数19、数20におけるΔ1・・・・・Δn−1、Δnのいずれもが、極性付乱数である。既に述べたように、このようにしなければ、位相誤差が原点から遠ざかる程蓄積するからである。ここで、極性付乱数は0に近づけるように常に管理されている。すなわち、数15、数16、数19、数20における乱数は1番目からn番目までの乱数のすべてが、数22、数23における乱数はn番目の乱数のみが、シリンドリカルレンズの曲率を有する軸方向の長さのばらつきに影響するように数式では見えるものの、個々のシリンドリカルレンズの曲率を有する軸方向の長さのばらつきの大きさが、同じ性質の乱数によって制御される点においては変わりがない。
第3実施形態の目的とするところはシリンドリカルレンズ長および/または光軸間距離をばらつかせることであり、第4実施形態の目的とするところはシリンドリカルレンズ長をばらつかせ光軸間距離を一定とすることであるが、第3実施形態においても第4実施形態においても、結果としては、シリンドリカルレンズ長をばらつかせている点において、第3実施形態と第4実施形態との間に本質的な違いはない。製造され結果物である立体画像表示光学素子の奏する光学的効果の観点からは、第4実施形態においては光軸間距離を不変に保つ点において、第4実施形態における立体視特性の劣化は第3実施形態におけるよりも小さい。
(第5実施形態)
第5実施形態は、技術的思想は上述した第1実施形態ないし第4実施形態とシリンドリカルレンズの均一性を崩す点においては共通するものの、シリンドリカルレンズとサブピクセルとの対応関係が異なる。
第1実施形態ないし第4実施形態においては、シリンドリカルレンズの曲率を有する軸方向と同方向に順に配置されるR、G、Bの各サブピクセルによって視認者が1ピクセルと視認できるようになされている(図6ないし図13を参照)。しかしながら、第5実施形態においては、シリンドリカルレンズの曲率を有しない方向に、R、G、Bの各サブピクセが配置され、シリンドリカルレンズの曲率を有する方向には同じ色で発光するサブピクセルが配置される。そして、同一方向から視認者の目に入射するR、G、Bの各サブピクセルからの光によって視認者が1ピクセルと視認できるようになされている。すなわち、第5実施形態においてはシリンドリカルレンズの配置とサブピクセルの配置との相対関係が第1実施形態ないし第4実施形態と90°異なっている。このような配置であっても第1実施形態ないし第4実施形態において述べた一般論は成立する。図14を参照して第5実施形態について説明をする。
図14は、画像表示面10を90°傾け、各シリンドリカルレンズが曲率を有する軸方向(Y軸方向)の2つのサブピクセルに対面する立体画像表示光学素子11Gを示す図である。図14においては2視差法の例について説明をするが、以下の説明は2視差法に限定されるものではなく、他の視差法においてもあてはまるものである。例えば、各シリンドリカルレンズが曲率を有する軸方向(Y軸方向)の4つのサブピクセルに対面する場合には4視差法であるが、4視差法についても以下の説明はあてはまる。
第5実施形態においては、2視差法の例について説明をするが、第1実施形態ないし第4実施形態と同様の画像表示面10を用いるので、X軸、Y軸の座標軸は画像表示面10を基準としている。第5実施形態においては第1実施形態ないし第4実施形態とは異なり、立体画像表示光学素子11Gの各シリンドリカルレンズはY軸方向に曲率を有する。各シリンドリカルレンズはY軸方向に配置され同色で発光する2つのサブピクセルに対面して、2視差法によって立体画像を視認できる。右目用ピクセル、左目用ピクセルの各々を破線で示す。他のサブピクセルも同様に右目用ピクセル、左目用ピクセルとして構成される。
図15は、第5実施形態における立体画像表示装置の画像表示面10と複数個のシリンドリカルレンズを有する立体画像表示光学素子11Gとの配置関係を画像表示面に直交する断面方向(図14のB-B断面)の図である。図示しないが、図14のC-C断面図は、図15においてR(赤)がG(緑)に置き換わり、図14のD-D断面図は、図15においてR(赤)がB(青)に置き換わる。そして、図15に示すようにシリンドリカルレンズの曲率を有しない軸方向であるY軸方向に並ぶ、R,G、B(図14の破線内)を視認者は1ピクセルとして認識する。
第5実施形態においては、第3実施形態と同様に各シリンドリカルレンズ(図14、図15の符号LS1、符号LS2、符号LS3、符号LS4を参照)の光軸間距離(図14、図15の符号PCS1、符号PCS2、符号PCS3を参照)をばらつかせるようにしてもよい。また、第5実施形態においては、第4実施形態と同様に各シリンドリカルレンズ(図14、図15の符号LS1、符号LS2、符号LS3、符号LS4を参照)の曲率を有する方向の長さ(図14、図15の符号PL1、符号PL2、符号PL3、符号PL4を参照)をばらつかせるようにしてもよい。
数15、数16に対応するのが数27、数28である。
数19、数20に対応するのが、数29、数30である。
数22、数23に対応するのが数31、数32である。
数27、数29、数31は最凹部bnが遮光部長PSYの範囲に位置するための条件式であり、数28、数30、数32は最凹部bnがk×1サブピクセル以上ずれないための条件式である。kは定数であり、kの値は実験によれば、0.25未満であった。また、PSPY=PP/NSHである。ここで、PPは、図14において、符号1を付した2つのR(緑)のサブピクセル等の長さである。
(実施例の実測データ)
発明者は、図14、図15に示す2視差法を実現する立体画像表示光学素子を試作した。この立体画像表示光学素子のシリンドリカルレンズ長は、数27、数28に基づいて、乱数を用いて設定されたものである。表1は、試作した立体画像表示光学素子のシリンドリカルレンズ長の実測値をまとめた表である。測定は、2μmのダイヤモンド針を備える接触式測定器を用いて行った。
シリンドリカルレンズ長の最大値は、0.157mmであった。シリンドリカルレンズ長の最小値は、0.15475mmであった。シリンドリカルレンズ長の平均は、0.1559mmであった。なお、設計におけるシリンドリカルレンズ長の基準長PPは0.156mmである。
偏差Δnの標準偏差値σは、0.000487798mm=0.487798μmであり、偏差の全体の68.3%が含まれる。標準偏差値3σは、0.001463393mm=1.463393μmであり、偏差の全体の99.7%が含まれる。
図16は、試作した実施例の立体画像表示光学素子のシリンドリカルレンズのシリンドリカルレンズ長の平均からの偏差を示す実測データの一部を示す図である。
図16の横軸はn、縦軸は、シリンドリカルレンズ長の平均からの偏差Δnを表す。縦軸の目盛の単位はmmであり、0.0005mm=0.5μm(マイクロメータ)毎に目盛が刻まれている。
(比較例の実測データ)
発明者は、比較例として数5の条件に近い立体画像表示光学素子を試作した。すなわち、立体画像表示光学素子のシリンドリカルレンズ長は一定値とするように設定されたものであるが、製造時の誤差によってシリンドリカルレンズ長に多少のばらつきが生じてしまった。表2は、試作した比較例の立体画像表示光学素子のシリンドリカルレンズ長の実測値をまとめた表である。測定は、2μmのダイヤモンド針を備える接触式測定器を用いて行った。
シリンドリカルレンズ長の最大値は、0.15675mmであった。シリンドリカルレンズ長の最小値は、0.15475mmであった。シリンドリカルレンズ長の平均は、0.15600556mmであった。標準偏差値σは、0.00034377mm=0.34377μmであり、偏差の全体の68.3%が含まれる。標準偏差値3σは、0.0010313mm=1.0313μmであり、偏差の全体の99.7%が含まれる。
図17は、試作した比較例の立体画像表示光学素子のシリンドリカルレンズのシリンドリカルレンズ長の平均からの偏差を示す実測データの一部を示す図である。
図17の横軸はn、縦軸は、シリンドリカルレンズ長の平均からの偏差Δnを表す。縦軸の目盛の単位はmmであり、0.0005mm=0.5μm(マイクロメータ)毎に目盛が刻まれている。
(実施例と比較例との実測データの比較)
表1と表2とを対比する。
(1)標準偏差値σを対比する。0.000487798mm(実施例)に対して0.00034377mm(比較例)である。
(2)標準偏差値3σを対比する。0.001463393mm(実施例)に対して0.0010313mm(比較例)である。
(3)標準偏差値σ、標準偏差値3σのいずれも実施例の方が、比較例よりも大きい。実施例においては、乱数を用いて積極的にシリンドリカルレンズ長をばらつかせ、比較例においては、積極的にシリンドリカルレンズ長を一定値に管理した結果である。
(4)結論としては、比較例の立体画像表示光学素子の方が実施例の立体画像表示光学素子よりも、より均一なシリンドリカルレンズが形成されている。
図16と図17とを対比する。
実施例(図16を参照)については以下の傾向がある。
(1) 実施例の偏差Δnは、比較例の偏差Δnより大きい。
(2)シリンドリカルレンズ長の偏差Δnの極性は、比較的、正負に交互に分布している。これは、X軸方向のシリンドリカルレンズの最凹部の原点からの加算値を管理しながら、乱数によってシリンドリカルレンズ長をばらつかせる手法を採用して立体画像表示光学素子を製造したことによって発生した現象である。
比較例(図17を参照)については以下の傾向がある。
(1)比較例の偏差Δnは、実施例の偏差Δnより小さい。
(2)シリンドリカルレンズ長の偏差Δnの極性は、比較的、正の連続、負の連続が多い。これは、X軸方向のシリンドリカルレンズ長を常時一定に管理する手法を採用したために発生した現象である。
(実施例と比較例との3Dモアレの対比)
図18は、実施例と比較例との3Dモアレを対比する図である。
2台の同一型番のスマートフォンの各画像表示面に同じ表示をおこない、同輝度、同一条件で対比をした。図18(a)は、実施例の立体画像表示光学素子をスマートフォンに装着した写真である。図18(b)は、比較例の立体画像表示光学素子をスマートフォンに装着した写真である。
図18(a)の実施例においては3Dモアレの濃淡は薄く、目立ちにくい。図18(b)の実施例においては3Dモアレの濃淡は濃く、目立つ。図18から見て取れるように、積極的にシリンドリカルレンズ長をばらつかせた立体画像表示光学素子を用いることによって3Dモアレの量を軽減できた。
実施例、比較例に用いたスマートフォン(平面画像表示装置)の物理的寸法について説明を加える。実施例、比較例のスマートフォンは同一の寸法と同一の特性を有する。
サブピクセルのサイズは以下である。1個のサブピクセルのX軸方向のサブピクセル長PSPX(遮光部長PSXを含む)は、0.026mmである。遮光部長PSXは、0.00085mmである。また、1個のサブピクセルのY軸方向のサブピクセル長PSPY(遮光部長PSYを含む)は、0.078mm(ミリ・メートル)である。遮光部長PSYは、0.00995mmである。
実施例では、すべてのシリンドリカルレンズ長のばらつき量の全体の99.7%が含まれる標準偏差値3σは、0.001463393mmであり、遮光部長PSYの0.00995mmよりも小さい。実施例と比較例との3Dモアレ以外の立体画像画質の比較評価の結果、立体画像の目視実験において、立体視特性、画質に差異は全く感じられなかった。
この理由は、遮光部長PSYの0.00995mmの範囲内にシリンドリカルレンズの最凹部b1、b2、・・・が配置されるので、画質に対して大きな影響を与える各シリンドリカルレンズの最凹部がサブピクセルの発光部に対面することがないからである。また、k=(標準偏差値3σ)/(サブピクセルのY軸方向のサブピクセル長PSPY)=0.001463393mm/0.078mm≒0.0188であり、kの値は0.25に比べて遥かに小さいので立体視特性にもほとんど影響を与えていない。
(実施例と比較例との空間周波数の対比)
図19は、実施例の立体画像表示光学素子の空間周波数と比較例の立体画像表示光学素子の空間周波数とを演算から求めて対比する図である。
空間周波数の演算は、実施例、比較例の各々において、実測した立体画像表示光学素子のシリンドリカルレンズの曲率を有する軸方向(図14のY軸方向)の距離に対するZ軸方向の距離のデータを取り込み、その各々のデータをフーリエ変換(FFT)して比較した。図19の縦軸はパワー、横軸は空間周波数である。
比較例では、シリンドリカルレンズが規則正しく配列されているために基本波とその高調波が主なる空間周波数成分のみが見えている。一方、実施例では、曲率を有する軸方向のレンズ長の平均値に対して異なるレンズ長をもつシリンドリカルレンズを有することによるサブピークが発生しており、平均レンズ長に起因するピークの分散も広くなっている。空間周波数が広い範囲に分布しているということは、とりもなおさず、モアレを発生するために必要な周期性が崩れ、3Dモアレが発生し難いということである。
(偏差Δnの設定ついて)
実施例において、数27、数28における偏差Δnをどのように設定をしたかについて説明をする。
まず、標準偏差値3σの値の定め方について検討する。標準偏差値3σの値は、遮光部長PSYの長さである、0.00995mm以下とするのが望ましい。この偏差の中に全体の99.7%の乱数が含まれるのであるから、その乱数に基づき製造される各シリンドリカルレンズの最凹部の位置がサブピクセルの発光部に対面することはほとんどなく、画質、立体感の悪化もほとんどないことになる。さらに、望ましくは、標準偏差値3σを超える値の乱数が発生する場合には、その値を標準偏差値3σに置き換える。すなわち、正規分布に従った乱数は理論的には、少ない確率ではあるが大きな偏差が発生するのでリミッタによって標準偏差値3σまでに制限をする。このようにしても、ほとんど正規分布とみなせる乱数が得られる。実施例においては、製造時のばらつきを含め表1に示すように、標準偏差値3σは0.001463393mmであり、遮光部長PSYの長さである、0.00995mmに比べて小さい値である。
なお、立体画像としての画質は当然に曲率有する方向のシリンドリカルレンズの長さのばらつきが大きくなればなるほど3Dモアレは低減するものの、立体画像画質は劣化するので、許容できるばらつきの最大の限界がどこにあるかという問題がある。すなわち、数4、数9、数12、数16、数20、数23、数28、数30、数32におけるkの値をどのように定めるかという点が問題となる。
発明者は、画像表示面10に対する立体画像表示光学素子11GのY軸方向の位置を徐々にずらし、立体視特性および画質が劣化すると視認者に認識される点における両者の位相のずれを測定した。その結果、サブピクセルのY軸方向のサブピクセル長PSPYの1/4=0.25までは、立体視特性および画質の編著な劣化は認識されなかった。すなわち、立体画像表示光学素子11Gのシリンドリカルレンズの最凹部の位置が、サブピクセルの境の位置に対して1/4(0.25)未満の範囲でずれても、立体視特性および画質の劣化はほとんどないこととなる。この1/4(0.25)という値(kの値)は、2視差法、5視差法等の視差法、サブピクセルの構造によらず略一定であることを発明者は確認した。
また、3Dモアレの低減効果が発揮できる最小のばらつきの値がどのようなものであるかという点も問題となる。この点については、比較例では3Dモアレの低減の効果がほとんど無く、実施例では3Dモアレの低減の効果が十分にあったという実験事実に基づいて、3Dモアレの低減の効果を発揮できる最小のばらつきの限界を定めた。
実施例については表1からシリンドリカルレンズ長のばらつきの量は、0.157mm(最大)−0.156mm(設計値)=+0.001mmである。また、0.15475mm(設計値)−0.156mm(設計値)=−0.00125mmである。+側と−側の絶対値の平均は、0.001125mmとなる。実施例における2視差法においては、3Dモアレの低減のためのシリンドリカルレンズの最小ばらつき量の一つの設計指標として、0.001125mm(+側と−側の絶対値の平均値)/0.078mm(サブピクセルのY軸方向のサブピクセル長PSPY)≒0.014であれば図13に示すようにモアレの低減効果があることが発明者の実験は示している。
比較例については表2からシリンドリカルレンズ長のばらつきの量は、0.15675mm(最大)−0.156mm(設計値)=+0.00075mmである。また、0.15475mm(最少)−0.156mm(設計値)=−0.00125mmである。+側と−側の絶対値の平均値は、0.001mmとなる。比較例においては、実施例と同様の指標を採用すると、0.001mm(+側と−側の絶対値の平均値)/0.078mm(サブピクセルのY軸方向のサブピクセル長PSPY)≒0.012であれば図13に示すようにモアレの低減効果がほとんどないことを発明者の実験は示している。
以上の実施例と比較例とから、一般的には、シリンドリカルレンズの曲率を有する軸方向長の平均値(基準長)の(0.001125/(0.156/NSH)、すなわち、(基準長からのばらつき/(シリンドリカルレンズ長/視差法に応じた所定個数)=0.014、ばらつかせれば3Dモアレの低減効果は生じた。一方、シリンドリカルレンズの曲率を有する軸方向長の平均値(基準長)の(0.001/(0.156/NSH)、すなわち、(基準長からのばらつき/(シリンドリカルレンズ長/視差法に応じた所定個数)=0.012ばらつかせても3Dモアレの低減効果はほとんど生じなかった。ここで、(シリンドリカルレンズ長/視差法に応じた所定個数)はシリンドリカルレンズの曲率を有する軸方向のサブピクセルの長さである。また、2視差法の場合にはNSHは2である。
この実験結果から、3Dモアレの低減効果を生じさせるばらつきの大きさの最大値は、シリンドリカルレンズの曲率を有する軸方向長の平均値(基準長)の0.028/NSH、以上である。kの値で表現すれば、3Dモアレの低減効果を生じさせる最小限のkの値は、0.014である。
(3Dモアレを低減するシリンドリカルレンズのばらつきの要点)
すべての実施形態に共通する3Dモアレを低減するシリンドリカルレンズのばらつきの要点について実験結果を踏まえて説明をする。
曲率有する方向のシリンドリカルレンズの長さのばらつきを大きくすればするほど3Dモアレの低減効果が大きなものとなる反面、立体画像画質の劣化が大きくなる。上述したように、kの値が0.25未満、すなわち、シリンドリカルレンズの曲率を有する方向のサブピクセルの長さの1/4=0.25未満のばらつきがあっても立体画像画質の劣化はほとんど目立ない。一方、kの値が、0.014以上であれば、3Dモアレの低減効果が生じる。よって、kの値は、0.014(1.4%)以上であって0.25(25%)未満であることが望ましい。さらに、3Dモアレ低減の効果の点と立体画像画質の点から、kの値は、0.028(2.8%)以上であって0.125(12.5%)未満であることがより望ましい。
さらに、kの値が、(シリンドリカルレンズの曲率を有する方向の遮光部長)/(シリンドリカルレンズの曲率を有する方向のサブピクセル長)未満であることがより望ましい。このような範囲であれば、シリンドリカルレンズの最凹部がサブピクセルの発光部を覆わないようにできるので画質の劣化がほとんどないようにできるからである。
上述した、kの値は、サブピクセルの長さを基準として定められるので、視差法によらず成り立つ。一方、シリンドリカルレンズの長さを基準とする場合には、視差法に応じた異なる表現ができる。
シリンドリカルレンズの曲率を有する方向に配置されるサブピクセルの数を所定個数NSHとすると、サブピクセル長とシリンドリカル長との関係は数33、数34で表される。数33はシリンドリカルレンズがX軸方向に曲率を有する場合であり、数34はシリンドリカルレンズがY軸方向に曲率を有する場合である。NSHは、2視差法では2、4視差法では4、5視差法では5、7視差法では7である。PPは、視差法に応じたサブピクセル個数×1個のサブピクセル長であり、PPをシリンドリカルレンズの基準長と称する。
シリンドリカルレンズの基準長を中心として各シリンドリカルレンズ長はばらつき、同じ長さのシリンドリカルレンズであっても、立体画像表示光学素子がどのような視差法に用いられるかによって、シリンドリカルレンズの基準長を中心とするばらつきの許容範囲は異なる。
立体画像表示光学素子の単体としてばらつきの許容量をどのように規定するかについて説明をする。すべてのシリンドリカルレンズの寸法がPPである完全な均一性を有する理想的シリンドリカルレンズのシリンドリカルレンズ長(基準長)に対して許容されるばらつきの量をksとすると、数33、数34によって、数16、数20、数23、数28、数30の各数式のk×PSX、または、k×PSYは,ks×Ppと書き直すことができる。ここで、ks=k/NSHである。
よって、立体画像表示光学素子の曲率を有する所定軸方向に順次配列される各シリンドリカルレンズのばらつきの大きさの最大値は、理想的シリンドリカルレンズのシリンドリカルレンズ長である基準長の(2.8%/NHS)以上、(50%/NHS)未満の範囲、すなわち、ksの値は2.8%以上、50%未満であることが望ましい。すなわち、各シリンドリカルレンズが均一であるとした理想的シリンドリカルレンズの境界の位置と、実施形態の各シリンドリカルレンズの境界の位置との差の最大値が、(2.8%/NHS)以上、(50%/NHS)未満の範囲であることが望ましい。さらに、3Dモアレ低減の効果の点と立体画像画質の点から、ksの値は、0.056(5.6%)以上であって0.25(25%)未満であることがより望ましい。
表1に示すパラメータを有するシリンドリカルレンズの設計の具体例について以下に説明をする。
標準偏差値3σが例えば、0.0015mmの乱数をコンピュータで発生する。1番目の乱数をΔ1、2番目の乱数をΔ2、・・・n番目の乱数をΔn発生させる。しかしながら、Δ1をシリンドリカルレンズ長PL1のPPからのばらつきに対応させ、Δ2をシリンドリカルレンズ長PL2のPPからのばらつきに対応させ、Δnをシリンドリカルレンズ長PLnのPPからのばらつきに対応させるようにしてコンピュータで発生する乱数をそのまま用いると数27、数28を満たすことができない。よって、コンピュータで発生する乱数Δnに数25、数26の処理を加える。
極性付き偏差Δnの最小値(これ以上偏差を小さくしない限界)について、0.028/NSH以上が望ましいことを説明したが、別の指標として、標準偏差を指標とする場合について以下に説明をする。
実施例では、シリンドリカルレンズのばらつき(偏差Δn)の標準偏差値3σの実測値は0.001463393mmであった。比較例では、偏差=0を目指したが、立体画像表示光学素子の製造後の標準偏差値3σの実測値は0.0010313mmであった。実施例、比較例では、目標とする5サブピクセルのX軸方向の長さPPは、0.156mmである。実施例では、(標準偏差値3σ)/(シリンドリカルレンズ長PP)=0.001463393mm/0.156mm≒0.0094であった。すなわち、(標準偏差値3σ)≒0.0094×(シリンドリカルレンズ長PP)であった。一方、比較例では、(標準偏差値3σ)/(シリンドリカルレンズ長PP)=0.001463393mm/0.156mm≒0.0093であった。すなわち、(標準偏差値3σ)≒0.0093×(シリンドリカルレンズ長PP)であった。
以上の結果から、実施例および比較例の各パラメータのもとでは、少なくとも以下のことが言える。(標準偏差値3σ)≒0.0093×(シリンドリカルレンズ長PP)では、3Dモアレの改善効果は少ないが、(標準偏差値3σ)≒0.0094×(シリンドリカルレンズ長PP)では、3Dモアレの改善効果は大きい。
(シリンドリカルレンズ長がばらつく立体画像表示光学素子の製造方法)
シリンドリカルレンズ長がばらつく立体画像表示光学素子の各部のパラメータは、上述した第1の方法または第2の方法によって決定できる。その後、この寸法を有する型を成型した後、これと嵌合する金型を製作する技術、または、NC旋盤、レーザー加工装置を用いる技術、または、バイトによって、ニッケルメッキが施してある平板に溝を掘り、もしくはバイトによって、銅メッキを施してある円筒状に溝を掘る技術によって金型を製造することは周知技術である。このような金型を用いて立体画像表示光学素子を射出成型または圧着成型することができる。このような成型技術は周知技術であり、背景技術の欄に引用した特許文献5にも記載されている。
(立体画像表示装置の駆動回路部)
上述した実施形態の立体画像表示装置において画像表示面10を駆動する回路部について簡単に説明をする。
図20は、実施形態の立体画像表示装置の全体を示すブロック図である。
図20に示す立体画像表示装置8の画像表示面10に対面して画像表示面の全体または一部を覆うように立体画像表示光学素子11A等(立体画像表示光学素子11Aないし立体画像表示光学素子11Gのいずれか)が配置される。
立体画像表示装置8の回路部は、制御部20、受信部30、Y軸方向駆動部40、X軸方向駆動部50を備えている。Y軸方向駆動部40及びX軸方向駆動部50は、画像表示面10を構成するサブピクセルの各々を駆動する。各サブピクセルからの配線を引き出すのではなく、X軸方向、Y軸方向の2次元の配線の交点でサブピクセルの輝度を制御するマトリクス配線方式を採用する。駆動方式としては、周知技術である単純マトリクス駆動方式、周知技術であるアクティブ・マトリクス駆動方式のいずれも実施形態においては使用可能であるが、アクティブ・マトリクス駆動方式の場合について以下説明をする。
アクティブ・マトリクス駆動方式においては、X軸方向駆動部50に接続されるソース線とY軸方向駆動部40に接続されるゲート線(図示せず)と蓄積コンデンサ(図示せず)とアクティブ素子(図示せず)とがサブピクセル毎に設けられている。一般的にはアクティブ素子に薄膜トランジスタが使われる。薄膜トランジスタをソース線とゲート線とで制御することによって、ソース線とがゲート線が同時に選択される薄膜トランジスタに接続されるサブピクセルはソース線に印加される電圧を蓄積コンデンサに蓄え、非選択時には蓄積コンデンサに蓄えられた電圧に応じた輝度でサブピクセルが発光する。
受信部30は、チューナ301と画像信号検波器302とを具備する。チューナ301は立体画像信号で変調された所望の電波を選択する。画像信号検波器302は立体画像信号を復調する。復調された立体画像信号は制御部20に送出される。
制御部20は、中央演算装置(CPU)201、ロム(ROM)202、ラム(RAM)203、左目右目用サブピクセル信号生成器204、画像入力インタフェイス205、Y軸方向駆動信号発生器206、X軸方向駆動信号発生器207を具備しており、これらの各部はバスラインによって接続される。中央演算装置(CPU)201には、画面配置手動切替器208と画面配置自動検出器209とが接続される。
制御部20における制御の中心は、中央演算装置201であり、ロム202に記憶されたプログラム情報に基づき、情報の一時記憶部として機能するラム203を用いて制御部20の他の部分、受信部30、Y軸方向駆動部40、X軸方向駆動部50を制御して、画像表示面10に立体画像が視認されるように以下のような制御をする。
中央演算装置201は、画像入力インタフェイス205を制御してホスト装置(図示せず)からの立体画像信号または受信部30からの立体画像信号のいずれかを選択する。立体画像信号は静止画であっても動画であってもよい。中央演算装置201は、画面配置自動検出器209または画面配置手動切替器208からの信号を入力し、画像表示面10に横長画面配置、縦長画面配置のいずれを表示すべきかを判断する。中央演算装置201は、Y軸方向駆動信号発生器206及びX軸方向駆動信号発生器207を制御し、左目右目用サブピクセル信号生成器204で得られた各サブピクセル信号で駆動されるサブピクセルを画像表示面10の上でどのように展開するかを制御する。
Y軸方向駆動信号発生器206によってY軸方向駆動部40が制御され、X軸方向駆動信号発生器207によってX軸方向駆動部50が制御される。そして、ソース線とゲート線とによって、所望の立体画像が視認できるように各サブピクセルを発光させる。
上述した各実施形態の一部または全部を組み合わせた実施形態も実施可能である。また、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、同一の技術的思想の範囲に及ぶことは言うまでもない。