JP2014179216A - リチウムイオン二次電池用負極活物質及び該負極活物質を用いたリチウムイオン二次電池 - Google Patents

リチウムイオン二次電池用負極活物質及び該負極活物質を用いたリチウムイオン二次電池 Download PDF

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Abstract

【課題】高容量でサイクル特性及び出力特性に優れた長寿命のリチウムイオン二次電池を製造する。
【解決手段】スズ(Sn)とコバルト(Co)を含む複合粒子からなり、複合粒子がスズ(Sn)を中心に配置しかつこのスズ(Sn)外面にコバルト(Co)が偏在する構造であるか、又は複合粒子が切断面において複合粒子の表面に連通する複数のポアを有しかつコバルト(Co)が複合粒子の外面及びポアの内面に偏在する構造であるリチウムイオン二次電池用負極活物質であって、複合粒子が構成元素としてビスマスを更に含み、ビスマスの含有量がスズ(Sn)の含有量100原子%に対して0.05〜1.2原子%含まれることを特徴とする。
【選択図】図1

Description

本発明は、高容量かつサイクル特性に優れた負極活物質と、この負極活物質を用いたリチウムイオン二次電池と、上記負極活物質を製造する方法に関するものである。
近年、携帯電話やノート型パソコン等のポータブル電子機器の発達や、電気自動車の実用化等に伴い、小型軽量でかつ高容量の二次電池が必要とされるようになってきた。現在、この要求に応える高容量二次電池として、正極材料にLiCoO2等の含リチウム複合酸化物を用い、負極活物質に炭素系材料を用いたリチウムイオン電池が商品化されている。この炭素系材料を負極に使用した場合、その理論容量は372mAh/gと金属リチウムの約1/10の容量しかなく、また理論密度が2.2g/ccと低く、実際に負極シートとした場合には、更に密度が低下する。そのため、体積当たりでより高容量な材料を負極として利用することが電池の高容量化の面から望まれている。
一方、Al、Ge、Si、Sn、Zn、Pb等の金属又は半金属は、リチウムと合金化することが知られており、これらの金属又は半金属を負極活物質に用いた二次電池が検討されている。これらの材料は、高容量かつ高エネルギー密度であり、炭素系材料を用いた負極よりも多くのリチウムイオンを吸蔵、脱離できるため、これらの材料を使用することで高容量、高エネルギー密度な電池を作製することができると考えられている。例えば、純粋なスズは993mAh/gの高い理論容量を示すことが知られている。
しかし、炭素系材料に比べてサイクル特性に劣るため未だ実用化には至っていない。その理由としては、スズをそのままリチウムイオン二次電池の負極活物質に用いると、充放電に伴う大きな体積変化により微粉化し、集電板から剥離したり、導電助剤との接触が失われたりするため、十分なサイクル特性を得ることができないという問題が生じる。
このような上記問題点を解決する技術として、シリコンやスズ等の無機質の粒子に他の物質を添加させることで、体積変化の少ない負極材料が研究、開発されている。具体的には、リチウムと合金化する金属としてスズを、リチウムと合金化しない金属としてコバルトを使用し、これらの合金薄膜を負極活物質層とした技術等が研究、開発されている。例えば、本発明者らは先の出願において、従来よりも高容量でサイクル特性等に優れた長寿命のリチウムイオン二次電池を製造できる負極活物質として、スズとコバルトを所定の割合で含む複合粒子からなる負極活物質であって、複合粒子の表面に連通する複数のポアを有し、この複合粒子の外面及びポアの内面にコバルトが偏在した構造を有する負極活物質を提案している(例えば、特許文献1参照)。この負極活物質では、ポアによる複合粒子の体積膨張の緩和、或いはスズの外面又はポアの内面に硬度及び導電率が比較的高いコバルトが偏在する構造によって、従来よりも高容量でサイクル特性等に優れたリチウムイオン二次電池を製造できるとされている。
特開2012−164643号公報(請求項1、段落[0021])
そして、本発明者らは鋭意研究を重ねた結果、上記従来の特許文献1に示された負極活物質等に更に改良を加えることで、リチウムイオン二次電池の容量やサイクル特性等をより向上させ得る負極材料等の開発に成功した。
本発明の目的は、高容量でサイクル特性及び出力特性に優れた長寿命のリチウムイオン二次電池を製造できる負極活物質を提供することにある。
本発明の別の目的は、高容量であり、かつサイクル特性に優れた長寿命のリチウムイオン二次電池を提供することにある。
本発明の第1の観点は、スズ(Sn)とコバルト(Co)を含む複合粒子からなり、複合粒子がスズ(Sn)を中心に配置しかつこのスズ(Sn)外面にコバルト(Co)が偏在する構造であるか、又は複合粒子が切断面において複合粒子の表面に連通する複数のポアを有しかつコバルト(Co)が複合粒子の外面及びポアの内面に偏在する構造であるリチウムイオン二次電池用負極活物質であって、複合粒子が構成元素としてビスマスを更に含み、ビスマスの含有量がスズ(Sn)の含有量100原子%対して0.05〜1.2原子%含まれることを特徴とするリチウムイオン二次電池用負極活物質であることを特徴とする。
本発明の第2の観点は、第1の観点に基づく発明であって、更にスズ(Sn)とコバルト(Co)の合計量に対するコバルト(Co)の割合が5〜40原子%であることを特徴とする。
本発明の第3の観点は、負極活物質を有する負極と、正極活物質を有する正極と、非水電解質とを備えたリチウムイオン二次電池において、負極活物質が、スズ(Sn)とコバルト(Co)を含む複合粒子からなり、複合粒子がスズ(Sn)を中心に配置しかつこのスズ(Sn)外面にコバルト(Co)が偏在する構造であるか、又は複合粒子が切断面において複合粒子の表面に連通する複数のポアを有しかつコバルト(Co)が複合粒子の外面及びポアの内面に偏在する構造であり、複合粒子が構成元素としてビスマスを更に含み、ビスマスの含有量がスズ(Sn)の含有量100原子%対して0.05〜1.2原子%含まれることを特徴とする。
本発明の第4の観点は、第3の観点に基づく発明であって、更にスズ(Sn)とコバルト(Co)の合計量に対するコバルト(Co)の割合が5〜40原子%であることを特徴とする。
本発明の第1の観点の負極活物質は、スズ(Sn)とコバルト(Co)を含む複合粒子からなり、複合粒子がスズを中心に配置しかつこのスズ外面にコバルトが偏在する構造であれば、母材でありかつ硬度及び導電率の比較的低いスズの外面に、硬度及び導電率の比較的高いコバルトの偏在したスズ層が形成されるので、充放電時の体積膨張・収縮による応力を緩和できるとともに導電性を確保できる。また、複合粒子が切断面において複合粒子の表面に連通する複数のポアを有しかつコバルト(Co)が複合粒子の外面及びポアの内面に偏在する構造であれば、この負極活物質を用いたリチウムイオン二次電池が充放電を繰り返したときに、複合粒子内のポアが充電時の複合粒子の体積膨張を吸収して緩和でき、またコバルトが複合粒子の外面及びポアの内面に偏在することにより、複数のポアを有する母材でありかつ硬度及び導電率の比較的低いスズの外面又はポア内面に、硬度及び導電率の比較的高いコバルトの偏在したスズ層が形成されるので、充放電時の体積膨張・収縮による応力を緩和できるとともに導電性を確保できる。この結果、スズがリチウムと効率良く反応するというスズ本来の性能を引き出すことができる。このため、本発明の負極活物質では、例えばリチウムと合金化しないコバルトをスズとほぼ均一組成で合金化して負極を作製したリチウムイオン二次電池と比較して、サイクル特性及び出力特性に優れ、寿命が長く、かつ容量が高いリチウムイオン二次電池を製造することができる。更に、本発明の負極活物質は、複合粒子に構成元素としてスズ(Sn)、コバルト(Co)以外に更にビスマスが所定の割合で含まれる。即ち、複合粒子を析出させる還元反応において、粒子の核を形成するビスマスイオンが、析出後の複合粒子におけるビスマス含有量が所定の割合になるように添加され、このビスマスイオンによって複数の核が形成されることにより非常に小さい粒径に制御される。これにより、従来の複合粒子からなる負極活物質に比べて、特にリチウムイオン二次電池のサイクル特性をより向上させることができる。また、この複合粒子が非常に小さい粒径に制御されることで、これを負極活物質として用いた負極では該負極活物質表面に存在する導電助剤の量を多くすることができるため、より良好な導電パスが確保される。また、小さい粒径に制御されることで、充放電に伴う負極活物質の割れを防ぐ効果が得られる。
本発明の第2の観点の負極活物質は、スズ(Sn)とコバルト(Co)の合計量に対するコバルト(Co)の割合が5〜40原子%である。このように、硬度及び導電率の比較的高いコバルトが所望の割合で存在することで、充放電時の体積膨張・収縮による応力を緩和する効果及び導電性を確保する効果がより高められる。
本発明の第3の観点のリチウムイオン二次電池は、負極活物質として、上述のスズ(Sn)とコバルト(Co)を含み、スズ(Sn)を中心に配置しかつこのスズ(Sn)外面にコバルト(Co)が偏在する構造であるか、又は切断面において表面に連通する複数のポアを有しかつコバルト(Co)が外面及びポアの内面に偏在する構造の複合粒子が用いられる。そのため、上記理由から、リチウムと合金化しないコバルトをスズとほぼ均一組成で合金化して負極を作製したリチウムイオン二次電池と比較して、サイクル特性及び出力特性に優れ、寿命が長く、かつ容量が高い。また、負極活物質として用いられる複合粒子が、構成元素として更にビスマスを所定の割合で含み、非常に小さい所望の粒径に制御されているため、従来の複合粒子を負極活物質として用いたリチウムイオン二次電池に比べて、充放電に伴う負極活物質の割れが抑制され、特にサイクル特性に優れる。また、負極において良好な導電パスが得られるため、電池容量を大きくすることができる。
本発明の第4の観点のリチウムイオン二次電池は、負極活物質として上記複合粒子が含まれ、更にこの複合粒子のスズ(Sn)とコバルト(Co)の合計量に対するコバルト(Co)の割合が5〜40原子%である。このように、硬度及び導電率の比較的高いコバルトが所望の割合で存在するため、負極において充放電時の体積膨張・収縮による応力を緩和する効果及び導電性を確保する効果がより高められる。
実施例4の複合粒子の表面からの深さの変化に対するスズ濃度及びコバルト濃度の変化をそれぞれ示す図である。
次に本発明を実施するための形態を図面に基づいて説明する。
本発明のリチウムイオン二次電池用負極活物質は、スズ(Sn)とコバルト(Co)を含む複合粒子からなる。スズ(Sn)とコバルト(Co)の合計量に対するコバルト(Co)の割合は5〜40原子%であることが好ましい。ここで、複合粒子中のコバルトの割合を上記範囲とするのが好ましい理由は、コバルトの割合が5原子%を下回ると、硬度の比較的低いスズの外面等に形成された硬度の比較的高いコバルトの偏在したスズ層が薄くなって、この負極活物質を用いた二次電池の充放電時の体積膨張・収縮による応力を緩和する効果が得られにくく、二次電池のサイクル特性が低下する傾向があるからである。一方、コバルトの割合が40原子%を上回っても、この負極活物質を用いた二次電池のサイクル特性は良好であるけれども、コバルト量が増大し、相対的にリチウムと反応するスズ量が減少してしまい、初回放電容量が小さくなる傾向がみられるからである。このうち、スズ(Sn)とコバルト(Co)の合計量に対するコバルト(Co)の割合は、10〜30原子%であることが特に好ましい。
また、上記複合粒子は、スズ(Sn)を中心に配置しかつこのスズ(Sn)外面にコバルト(Co)が偏在する構造であるか、又は複合粒子の切断面において複合粒子の表面に連通する複数のポアを有しかつコバルト(Co)が複合粒子の外面及びポアの内面に偏在する構造である。これにより本発明の負極活物質は、従来より知られているような、粒子の中心部と外周部とでスズ−コバルトの組成の偏りがない、略均一に合金化した形態はとらない。
複合粒子がスズ(Sn)を中心に配置しかつこのスズ(Sn)外面にコバルト(Co)が偏在する構造である場合、母材でありかつ硬度及び導電率の比較的低いスズの外面に、硬度及び導電率の比較的高いコバルトの偏在したスズ層が形成されるので、充放電時の体積膨張・収縮による応力を緩和できるとともに導電性を確保できる。
一方、複合粒子が切断面において複合粒子の表面に連通する複数のポアを有しかつコバルト(Co)が複合粒子の外面及びポアの内面に偏在する構造である場合、複合粒子が切断面において複合粒子の表面に連通する複数のポアを有することにより、この負極活物質を用いたリチウムイオン二次電池が充放電を繰り返したときに、複合粒子内のポアが充電時の複合粒子の体積膨張を吸収して緩和でき、またコバルトが複合粒子の外面及びポアの内面に偏在することにより、複数のポアを有する母材でありかつ硬度及び導電率の比較的低いスズの外面又はポア内面に、硬度及び導電率の比較的高いコバルトの偏在したスズ層が形成されるので、充放電時の体積膨張・収縮による応力を緩和できるとともに導電性を確保できる。
この結果、スズがリチウムと効率良く反応するというスズ本来の性能を引き出すことができる。従って、本発明の負極活物質を用いたリチウムイオン二次電池は、サイクル特性及び出力特性に優れ、寿命が長くなり、かつ容量が高くなる。
そして、本発明の負極活物質には、複合粒子の構成元素としてスズ(Sn)、コバルト(Co)以外に更にビスマスが所定の割合で含まれる。このビスマスは、後述する複合粒子の製造工程において、還元反応等により複合粒子を析出させる際に添加されるビスマスイオンが還元されて、製造後の複合粒子中に構成元素として残留したものである。このように、製造後の複合粒子にビスマスが所定の割合で残留するように、スズイオン及びコバルトイオンを還元する際にビスマスイオンを添加することで、この還元反応において先ずビスマスイオンが還元され、次いでこれを粒子の核として、スズイオン、コバルトイオンを還元析出させることができる。ビスマスイオンの酸化還元電位は、スズイオン、コバルトイオンのそれより貴であるため、ビスマスイオンがスズイオンやコバルトイオンに先立って還元される。即ち、このとき添加するビスマスイオンの量を多くすれば、核の数が多くなり、一つの核に対して還元析出され得るスズイオン、コバルトイオンの数が少なくなり、より微細な粒径に制御できる。一方、ビスマスの量を少なくすれば、このスズイオン、コバルトイオンの数が多くなり、より大きな粒径に制御される。なお、上記ビスマスは、現段階では複合粒子のどこの位置に残留するかは解明されていないが、スズイオン、コバルトイオンを還元する際に添加したビスマスイオンが還元されたものであるため、複合粒子を製造した後に別途添加混合されたものではなく、少なくとも粒子内部に構成元素として含まれる。
本発明の負極活物質は、上述のスズイオン、コバルトイオンを還元する際にビスマスイオンを所定の割合で添加することで、製造後の複合粒子において構成元素としてスズ(Sn)の含有量100原子%に対して0.05〜1.2原子%の割合でビスマスが含まれる。即ち、スズとビスマスの原子比が100:0.05〜1.2(スズ:ビスマス)になるように含まれる。これにより、負極活物質を構成する複合粒子は平均粒径が、好ましくは0.05〜10μm、更に好ましくは0.1〜5μmの範囲にある非常に微細な粒径に制御される。そのため、従来の複合粒子からなる負極活物質に比べて、特にリチウムイオン二次電池のサイクル特性をより向上させることができる。負極活物質を構成する複合粒子を微細な粒径に制御することによって特にサイクル特性を向上させることができる理由は、小さい粒径に制御されることで、充放電に伴う負極活物質の割れが抑制されるからである。また、複合粒子の粒径が小さくなれば比表面積が増大するため、これを負極活物質として用いた負極では該負極活物質表面に存在する導電助剤の量を多くすることができ、より良好な導電パスが確保される。ここで、複合粒子に構成元素として含まれるビスマス量を上記範囲に限定したのは、複合粒子中に含まれるビスマスの割合が下限値に満たない、即ちスズイオン、コバルトイオンを還元する際に添加されるビスマスイオンの量が少なすぎると、上述の理由から複合粒子の平均粒径が10μmを超えてしまい、上述の効果が得られないからである。一方、複合粒子中に含まれるビスマスの割合が上限値を超える、即ちスズイオン、コバルトイオンを還元する際に添加されるビスマスイオンの量が多すぎると複合粒子の平均粒径が0.1μm未満になり、スラリー化が困難となって、既存のリチウムイオン二次電池の製造プロセスに適用できないという不具合が生じるからである。このうち、複合粒子に構成元素として含まれるビスマスの量は0.1〜1.1原子%の範囲とするのが好ましい。なお、複合粒子の平均粒径とは、粒度分布測定装置(堀場製作所製LA−950)を用いて測定した体積基準の平均粒径D50をいう。また、本発明の負極活物質を構成する複合粒子中のスズ、コバルト、ビスマス、クロム、亜鉛等の各含有量はICP(誘導結合プラズマ)を用いた定量分析により求めることができる。また、この複合粒子は所望の範囲に粒径制御された粉末であり、負極活物質をスラリー化して負極集電板に塗工することができるので、従来と同様のリチウムイオン二次電池の製造プロセスを適用できる。
また、負極活物質は、不可避成分として含まれるクロム(Cr)の含有量が負極活物質の全質量に対して質量比で1.0%以下、亜鉛(Zn)含有量が質量比で50ppm以下であることが好ましい。クロムの含有量が1%又は亜鉛の含有量が50ppmを上回ると、コバルトの偏在したスズ層の強度が低下することで保護効果が低下し、サイクル特性が低下する傾向がみられるからである。また、リチウムイオンの複合粒子中への拡散が不十分となり、初回放電容量も低下する傾向がみられるからである。このうち、クロム(Cr)の含有量は質量比で0.001%未満、亜鉛(Zn)含有量は質量比でが2ppm未満であることが更に好ましい。
また、負極活物質は、ポリアクリル酸、水溶性セルロース及びポリビニルピロリドンからなる群より選ばれた少なくとも1種の分散剤を更に含むことが好適である。上記種類の分散剤を含ませることで、分散剤が粒子を覆うことになり、コバルトの偏在したスズ層による膨張収縮抑制効果を増強し、サイクル特性を向上させることができる。更に、負極活物質には、カーボンナノファイバー(CNF)からなる導電性助剤を添加することが好適である。この導電性助剤を添加することで、導電性助剤が粒子を覆うことになり、負極全体に網目状に導電性パスを形成することができるので、サイクル特性を更に向上させることができる。
次に、上記リチウムイオン二次電池用負極活物質の製造方法を説明する。先ず、スズイオン及びコバルトイオンを含む水溶液と、ビスマスイオンを含む溶液とをそれぞれ調製し、これらを混合した後に、更に2価クロムイオンを含む還元剤水溶液を撹拌混合することにより、この混合液中でスズイオン、コバルトイオン及びビスマスイオンを還元させる。スズイオン及びコバルトイオンを含む水溶液の調製は、イオン交換水等の溶媒に、塩化スズ(II)等の錫化合物と、塩化コバルト(II)等のコバルト化合物を溶解させることにより行う。また、ビスマスイオンを含む溶液の調製は、塩酸等の溶媒に塩化ビスマス(III)等のビスマス化合物を溶解させることにより行う。
スズイオン及びコバルトイオンを含む水溶液には、得られる複合粒子の凝集を抑制する分散剤を含ませることが好ましい。分散剤としては、ポリアクリル酸、水溶性セルロース及びポリビニルピロリドンから選ばれた少なくとも1種が挙げられる。これら、スズイオン及びコバルトイオンを含む水溶液を調整する際の各成分の割合は、合成して得られる複合粒子のスズとコバルトの合計に対するコバルト割合が5〜40原子%、好ましくは10〜30原子%の範囲内になるように調整する。そして、スズイオン及びコバルトイオンを含む水溶液と、ビスマスイオンを含む溶液とを、上述のように、スズ(Sn)の含有量100原子%に対してビスマスの含有量が0.05〜1.2原子%、好ましくは0.1〜1.1原子%の範囲内になるように混合し、スズイオン、コバルトイオン及びビスマスイオンを含む溶液を調製する。
還元剤水溶液に含まれる2価クロムイオンは、還元剤としての機能を有する。この2価クロムイオンは不安定であるため、還元剤水溶液はスズイオン、コバルトイオン及びビスマスイオンを含む溶液と混合する際にその都度調製することが好ましい。具体的には、例えば、塩化第2クロム溶液を非酸化性雰囲気下、好ましくは窒素ガス雰囲気下で金属亜鉛に接触させるか、或いは電気化学的にクロムを還元し、塩化第1クロム溶液としたものを用いるとよい。塩化第2クロム溶液はpH0〜2に調整することが好ましい。それはpHが上限値を越えると、3価クロムイオンが水酸化物として沈殿するという不具合が生じ易いからである。
スズ(Sn)を中心に配置しかつこのスズ(Sn)外面にコバルト(Co)が偏在する2層構造の複合粒子を得るには、スズイオン、コバルトイオン及びビスマスイオンを含む溶液と2価クロムイオンを含む還元剤水溶液とを混合し、この混合液の温度を15〜50℃、好ましくは25〜40℃に設定し、pHは0〜4、好ましくは0〜2に制御することが好適である。ここで、混合液の温度を上記範囲に限定したのは、下限値未満では冷却装置の導入にコストが掛かり、一方、上限値を越えると、析出した複合粒子の溶解が促進するからである。また、混合液のpHを上記範囲に限定したのは、pHが0未満では、スズの溶出が促進されて、サイクル特性が良好であるけれども、スズの量が少なくなって初回放電容量が小さくなってしまい、pHが4を越えると、サイクル特性を低下させる不具合が生じるからである。
また、混合液の処理時間は、6〜48時間、更に好ましくは12〜24時間であり、撹拌速度は0.2〜1.5m/秒、好ましくは0.4〜1.0m/秒に設定される。上記混合液の処理時間は、混合液の撹拌保持時間をいう。撹拌保持時間が6時間未満では、スズの溶出が不十分であり、充電時の複合粒子の体積膨張を吸収して緩和する効果が低下するという不具合が生じる場合がある。一方、48時間を越えると製造効率を低下させる場合がある。また、混合液の撹拌速度を上記範囲に限定したのは、下限値未満では溶液の混合が不十分となり、所定の形状の複合粒子を再現性良く得られず、一方、上限値を越えると、スケールアップ時の実現性に困難を伴うという不具合が生じるからである。なお、撹拌速度とは、撹拌羽根の回転により混合液が流動したときの混合液の平均流速をいう。
上記混合液を撹拌混合し、混合液中でスズイオン、コバルトイオン及びビスマスイオンを還元反応させると、先ず、酸化還元電位がスズイオン、コバルトイオンのそれより貴であるビスマスが還元され、次いでこれを核としてスズイオンが還元して均一なスズ粒子が生じ、このスズ粒子が一定の粒径まで成長する。続いて、コバルトイオンが還元し、一定の粒径にまで成長したスズ粒子を母材として、この母材の周囲に上記コバルトが進入し、スズ粒子の外面にコバルトが偏在した複合粒子となる。これにより、スズからなる母材と、この母材の外面にコバルトが偏在したスズ層とを有する複合粒子が析出する。
一方、上記還元反応の際の上記混合液の温度、pH、処理時間又は撹拌速度の少なくとも1つの条件を調整すると、上記複合粒子にこの粒子の表面に連通する複数のポアが形成されるとともに、コバルトが複合粒子の外面及びポアの内面に偏在して、複合粒子の外面及びポアの内面にコバルトの偏在したスズ層が形成される。このコバルトの偏在したスズ層におけるコバルト濃度は複合粒子の外面及びポアの内面からスズ母材内方に向うに従って次第に低くなり、スズ濃度は複合粒子の外面及びポアの内面からスズ母材内方に向うに従って次第に高くなるように形成される(図1)。なお、上記複合粒子に複数のポアが形成されるのは次の理由によると推察される。スズの水素過電圧は高いため、スズの溶解反応は起こり難い。一方、コバルトの水素過電圧はスズの水素過電圧より低いため、スズとコバルトが接することによってコバルト側から水素が発生する。この結果、複合粒子内部のスズが非常に溶け易くなるので、複合粒子に複数のポアが形成される。
該構造の複合粒子を得るには、上記スズイオン、コバルトイオン及びビスマスイオンを含む溶液と2価クロムイオンを含む還元剤水溶液とを混合した混合液の温度を15〜50℃、好ましくは25〜40℃に設定し、混合液のpHは0〜4、好ましくは0〜2に設定する。また上記混合液の処理時間は1〜40時間、好ましくは3〜30時間に設定し、混合液の撹拌速度は0.2〜1.5m/秒、好ましくは0.4〜1.0m/秒に設定する。ここで、混合液の温度を上記範囲に限定したのは、15℃未満では、スズが溶け難くなり、複合粒子に複数のポアが形成され難くなるため、充電時の複合粒子の体積膨張を吸収して緩和する効果が低下してしまい、50℃を越えると、スズの溶出が促進され、サイクル特性は良好であるけれども、スズの量が少なくなって初回放電容量が小さくなってしまうからである。また、混合液のpHを上記範囲に限定したのは、pHが0未満では、スズの溶出が促進されて、サイクル特性が良好であるけれども、スズの量が少なくなって初回放電容量が小さくなってしまい、pHが4を越えると、スズとコバルトが接することによるコバルト側からの水素発生が生じ難くなって、複合粒子内部のスズが溶け難くなるので、複合粒子に複数のポアが形成され難くなり、これにより充電時の複合粒子の体積膨張を吸収して緩和する効果が低下してしまうからである。また、混合液の処理時間を上記範囲に限定したのは、1時間未満では、複合粒子に形成されるポアの数が少なくなるため、充電時の複合粒子の体積膨張を吸収して緩和する効果が低下してしまい、40時間を越えると、目的の負極活物質を得るための時間が掛かり過ぎ、これにより製造コストが増大し、生産効率が低下してしまうからである。更に混合液の撹拌速度を上記範囲に限定したのは、0.2m/秒未満では、混合液の組成を均一に保つことができなくなって、所望の負極活物質を得ることができず、1.5m/秒を越えると、所望の負極活物質を得るために過剰のエネルギーを投入することになり、エネルギーコストの無駄が発生してしまうからである。なお、混合液の温度は高くなるに従って複合粒子の比表面積が大きくなる、即ち粒径が小さくなり、混合液のpHは小さくなるに従って複合粒子の比表面積が大きくなる傾向にある。また、混合液の処理時間は長くなるに従って複合粒子の比表面積が大きくなり、混合液の撹拌速度は速くなるに従って複合粒子の比表面積が大きくなる傾向にある。
このように本発明の製造方法は湿式法であり、水溶液調製や還元反応がともに室温程度の温度で実施可能であるため、イニシャルコストが多大にかかる特殊な装置類も不要となり、製造コストを抑制できる。
なお、負極活物質中のクロム(Cr)及び亜鉛(Zn)の含有量は、スズイオン、コバルトイオン及びビスマスイオンを含む溶液と還元剤水溶液との混合割合を増減させる、還元剤水溶液を調製する際に使用する金属亜鉛量を増減させる、塩化亜鉛をスズイオン及びコバルトイオンを含む水溶液や還元剤水溶液に加える等の手法により、クロムや亜鉛の含有量を制御することができる。
続いて、上記本発明の負極活物質を用いて、リチウムイオン二次電池を製造する方法について説明する。具体的には、先ず、上記負極活物質と導電助剤と結着剤とを所定の割合で混合した後、この混合物に所定の割合(例えば、負極活物質、導電助剤及び結着剤の合計量100質量%に対して35〜60質量%)で溶媒を混合することにより、負極用組成物のスラリーを調製する。次に上記負極用組成物のスラリーを負極集電体上に、ドクターブレード法等の手法により塗布した後に乾燥して負極を作製する。
負極の作製に使用した導電助剤、結着剤、溶媒及び負極集電体は、特に限定されるものではなく、従来より一般的に用いられるものを使用することができる。例えば、導電助剤としてはアセチレンブラック、ケッチェンブラック等のカーボンブラック、VGCF或いは銅やチタン等のリチウムと合金化し難い金属粉末等が挙げられる。そして導電助剤は、複合粒子の外面、又は複合粒子の外面及びポアの内面に網目状に付着するように構成される。また、結着剤としてはポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体(EPDM)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)等が挙げられる。溶媒としてはN−メチルピロリドン、水等が挙げられる。負極集電体としては銅箔、ステンレス箔、ニッケル箔等が挙げられる。
このようして得られた負極を用いてリチウムイオン二次電池を作製する。正極活物質をバインダ及び導電助剤と所定の割合で混合して正極用組成物のスラリーを調製する。次に、上記正極用組成物のスラリーを正極集電体上に、ドクターブレード法等の手法により塗布した後に乾燥して正極を作製する。
なお、正極の作製に使用した正極活物質、バインダ、導電助剤及び正極集電体は、特に限定されるものではなく、従来より一般的に用いられるものを使用することができる。例えば、正極活物質としては、LiCoO2、LiNiO2、LiMn24、LiMnO2、LiFePO4などが挙げられる。導電助剤としては、アセチレンブラック、ケッチェンブラックなどのカーボンブラック、VGCF、黒鉛等が挙げられる。また、バインダとしては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体(EPDM)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)等が挙げられる。正極集電体としては、アルミニウム箔、ステンレス鋼箔、ニッケル箔等が挙げられる。
次に、負極集電体上に負極活物質層を形成して得られた負極と、セパレータと、正極集電体上に正極活物質層を形成して得られた正極とを正極と負極の活物質面をそれぞれ対向させた状態で積層し、積層体を形成する。セパレータは合成樹脂製不織布、ポリエチレン多孔質フィルム、ポリプロピレン多孔質フィルム等から形成される。
そして、上記積層体の正極側裏面及び負極側裏面にそれぞれメッシュ材の一端を接続し、袋状に作製したアルミラミネート材にメッシュ材の他端がはみ出るように積層体を装填する。次に、ラミネート材の開口部から非水電解液を加え、真空引きしながら、ラミネート材の開口部を熱融着させることより、リチウムイオン二次電池が得られる。
正極側裏面に接続したメッシュ材としてはアルミメッシュ材が、負極側裏面に接続したメッシュ材としてはニッケルメッシュ材が使用される。
また、非水電解液には、非水溶媒に電解質を溶解させた溶媒が使用される。非水溶媒としては、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)等の環状カーボネート、ジメチルカーボネート(DMC)、メチルエチルカーボネート(MEC)、ジエチルカーボネート(DEC)等の鎖状カーボネート、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、エトキシメトキシエタン等の鎖状エーテルや、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン等の環状エーテル、クラウンエーテル、γ−ブチロラクトン等の脂肪酸エステル、アセトニトリル等の窒素化合物、スルホラン、ジメチルスルホキシド等の硫化物等が例示される。上記非水電解液は単独で使用しても、2種以上混合した混合溶媒として使用してもよい。電解質としては、過塩素酸リチウム(LiClO4)、六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)、ほうフッ化リチウム(LiBF4)、六フッ化ヒ素リチウム(LiAsF6)、トリフルオロメタスルホン酸リチウム(LiCF3SO3)、ビストリフルオロメチルスルフォニルイミドリチウム[LiN(CF3SO22]等のリチウム塩が例示される。
このように製造されたリチウムイオン二次電池では、複合粒子がスズ(Sn)を中心に配置しかつこのスズ(Sn)外面にコバルト(Co)が偏在する構造である場合、充放電時の体積膨張・収縮による応力を緩和できるとともに導電性を確保できる。一方、複合粒子が切断面において複合粒子の表面に連通する複数のポアを有しかつコバルト(Co)が複合粒子の外面及びポアの内面に偏在する構造である場合、複合粒子が切断面において複合粒子の表面に連通する複数のポアを有することにより、リチウムイオン二次電池が充放電を繰り返したときに、複合粒子内のポアが充電時の複合粒子の体積膨張を吸収して緩和でき、またコバルトが複合粒子の外面及びポアの内面に偏在することにより、充放電時の体積膨張・収縮による応力を緩和できるとともに導電性を確保できる。
この結果、スズがリチウムと効率良く反応するというスズ本来の性能を引き出すことができるので、本発明のリチウムイオン二次電池は、サイクル特性及び出力特性に優れ、寿命が長くなり、かつ容量が高くなる。そして、ビスマスを所定の割合で含むことで負極活物質を構成する複合粒子が非常に微細な粒径に制御されているため、特にサイクル特性等に優れる。また、負極活物質にカーボンナノファイバー(CNF)からなる導電性助剤を添加すると、この導電性助剤が粒子を覆うことになり、負極全体に網目状に導電性パスを形成することができるので、活物質当りの初回放電容量及びサイクル特性を更に向上させることができる。
次に本発明の実施例を比較例とともに詳しく説明する。
<実施例1−1>
先ず、イオン交換水に分散剤、塩化スズ(II)及び塩化コバルト(II)を、合成して得られる複合粒子のスズとコバルトの合計に対するコバルト割合が20原子%となる割合で加え、撹拌溶解させた。なお、分散剤にはポリアクリル酸を用いた。また、これとは別に塩化ビスマス(III)を塩酸に溶解させたビスマスイオンを含む塩酸溶液を用意し、これをビスマスの含有量がスズの含有量100原子%に対して0.5原子%(原子比でスズ:ビスマス=100:0.5)となるように、上記スズイオン及びコバルトイオンを含む水溶液に添加して混合した後、35質量%濃度の塩酸を更に加えてpHを0.8に調整した。
一方、イオン交換水に塩化クロム(III)を加えて撹拌溶解し、これに金属亜鉛(Zn)を投入することでクロムイオンを3価から2価に還元し、全クロムイオン中の2価のクロム比が70%以上となるように調製した。これを還元剤水溶液とした。
次に、スズイオン、コバルトイオン及びビスマスイオンを含む水溶液と還元剤水溶液とを所定の割合で混合し、24時間撹拌保持してスズイオン、コバルトイオン及びビスマスイオンを還元反応させた。この混合液の温度は30℃であり、pHは0.9であり、撹拌速度は1.4m/秒であった。
その後、撹拌混合した液を静置し、合成した粒子を沈降させ、上澄み液を除去した。続いて、沈降物にイオン交換水を加えて撹拌洗浄、静置沈降及び上澄み液除去の操作を数回繰り返し、最後にエタノールで撹拌洗浄、静置沈降及び上澄み液除去を行った。得られた沈降物を真空乾燥することで、スズとコバルトの合計量に対するコバルトの割合が20原子%であり、スズ(Sn)を中心に配置しかつこのスズ(Sn)外面にコバルト(Co)が偏在した構造の複合粒子であって、更にビスマスが0.5原子%含まれる負極活物質を得た。
<実施例1−2〜1−4及び比較例1−1,1−2>
スズイオン及びコバルトイオンを含む水溶液にビスマスイオンを含む塩酸溶液を添加する際に、合成して得られる複合粒子のビスマス含有量が、以下の表1に示す割合となるように、ビスマスイオンを含む塩酸溶液の添加量を調整したこと以外は実施例1−1と同様にして負極活物質を得た。
<実施例2−1〜2−7>
合成して得られる複合粒子のスズとコバルトの合計に対するコバルト割合が、以下の表2に示す割合となるように塩化スズ(II)及び塩化コバルト(II)を加えて、スズイオン及びコバルトイオンを含む水溶液を調製したこと以外は実施例1−3と同様にして負極活物質を得た。なお、比較のため、上記実施例1−3を実施例2−3として表2に記載した。
<実施例3−1〜3−8>
負極活物質中のクロム及び亜鉛の濃度が、以下の表3に示す割合となるように、スズイオン、コバルトイオン及びビスマスイオンを含む水溶液と還元剤水溶液との混合割合を調整したこと以外は実施例1−3と同様にして負極活物質を得た。
<実施例4>
上記混合液の温度、pH、処理時間又は撹拌速度のうち、処理時間の条件を変更したこと以外は、実施例1−3と同様にして負極活物質を得た。これにより、スズとコバルトの合計量に対するコバルトの割合が20原子%であり、この複合粒子が切断面において複合粒子の表面に連通する複数のポアを有し(図1)、コバルトが複合粒子の外面及びポアの内面に偏在した構造の複合粒子であって、更にビスマスがスズの含有量100原子%に対して0.5原子%含まれる負極活物質を得た。
<比較例2−1>
スズとコバルトの合計に対するコバルト割合が20原子%であり、粒子の中心部と外周部とで偏りのない略均一な組成の粒子であって、更にビスマスがスズの含有量100原子%に対して0.5原子%含まれる負極活物質を比較例2−1とした。
<比較例2−2>
ビスマスイオンを含む塩酸溶液を添加しなかったこと以外は、実施例4と同様にして負極活物質を得た。
<比較試験及び評価>
実施例1−1〜4及び比較例1−1〜2−2の負極活物質について、ICP定量分析を行い、複合粒子中のスズ、コバルト、ビスマスの各含有量、及び負極活物質粉末に含まれるクロム及び亜鉛の濃度を求めた。これらの結果を次の表1〜表4に示す。なお、表中の「<0.001」及び「<2」は、ICPの検出限界以下の測定値であったことを示す。また、表中、「複合粒子の構造」において、「2層」はスズ(Sn)を中心に配置しかつこのスズ(Sn)外面にコバルト(Co)が偏在する構造を示す。また、表中、「複合粒子の構造」の「ポア」において、「有」は負極活物質を構成する複合粒子が複数のポアを有することを示し、「複合粒子の構造」の「Co位置」において、「偏在」はコバルトが複合粒子の外面及びポアの内面に偏在することを示す。上記複数のポアの存在やコバルトの偏在は、複合粒子の電子顕微鏡写真や、この複合粒子の断面における電子顕微鏡写真により確認した。
また実施例1−1〜4及び比較例1−1〜2−2の負極活物質を構成する複合粒子の平均粒径を測定した。なお、平均粒径とは、粒度分布測定装置(堀場製作所製LA−950)を用いて測定した体積基準の平均粒径である。
また実施例1−1〜4及び比較例1−1〜2−2の負極活物質を用い、負極活物質粉末を導電助剤、結着剤、溶媒と混合しスラリーをそれぞれ調製した。即ち、合成した負極活物質粉末、アセチレンブラック、カーボンナノファイバー(CNF)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)及びn−メチルピロリジノン(NMP)を質量比で80:5:5:10:100の割合となるように秤量し、混練機を用いて混練することでスラリーを作製した。
次に、得られたスラリーをアプリケータを用いて銅箔上に活物質密度が5mg/cm2となるように塗布し、乾燥、圧延し、幅3cm長さ3cmに切断することで負極電極を作製した。
上記作製した負極を用いて半電池を組み、充放電サイクル試験を行った。対極及び参照極にはリチウム金属を用い、電解液には1M濃度で六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)を溶解した炭酸エチレン(EC)と炭酸ジエチル(DEC)の等体積溶媒を用いた。充電は電圧が5mVとなるまで0.5mA/cm2の定電流条件で実施し、その後、電流が0.01mA/cm2になるまで5mVの定電圧条件で実施した。
放電は電圧が1Vになるまで0.5mA/cm2の定電流条件で実施した。充電と放電を各1回実施した状態を1サイクルとし、50サイクルまでの充放電試験を行い、初回の活物質重量あたりの放電容量と、50サイクル目の放電容量の初回放電容量に対する割合を寿命特性として性能評価した。得られた評価結果を次の表1〜表4に示す。
Figure 2014179216
表1から明らかなように、実施例1−1〜1−4及び比較例1−1,1−2を比較すると、ビスマスの含有量が0.05原子%に満たない比較例1−1では、初回放電容量は高い値を示したものの、実施例1−1〜1−4に比べて寿命特性が低下した。一方、ビスマスの含有量が1.2原子%を超える比較例1−2では、初回放電容量及び寿命特性が実施例1−1〜1−4に比べて低下した。これに対して、実施例1−1〜1−4では、充放電サイクル試験において、いずれも初回放電容量が高い値を示し、更に寿命特性が非常に優れる結果となった。このことから、実施例1−1〜1−4の負極活物質では、リチウムイオン二次電池の出力特性及びサイクル特性を向上させることができることが確認された。
Figure 2014179216
表2から明らかなように、実施例2−1〜2−5及び実施例2−6,2−7を比較すると、コバルトの含有量が5原子%に満たない実施例2−6では、初回放電容量は比較的高い値を示したものの、実施例2−1〜2−4に比べて寿命特性の低下がみられた。一方、コバルトの含有量が40原子%を超える実施例2−7では、寿命特性は高い評価が得られたものの、初回放電容量が実施例2−1〜2−4に比べて低下した。一方、実施例2−1〜2−4では、充放電サイクル試験において、いずれも初回放電容量が高い値を示し、更に寿命特性が非常に優れる結果となった。このことから、実施例2−1〜2−4の負極活物質では、リチウムイオン二次電池の出力特性及びサイクル特性を向上させることができることが確認された。
Figure 2014179216
表3から明らかなように、実施例3−1〜3−3と実施例3−7とを比較すると、クロムの濃度が1.0質量%を超える実施例3−7では、実施例3−1〜3−3に比べて、初回放電容量及び寿命特性が若干低下することが分かる。また、実施例3−4〜3−6と実施例3−8とを比較すると、亜鉛の濃度が50ppmを超える実施例3−8では、実施例3−4〜3−6に比べて、初回放電容量及び寿命特性が若干低下することが分かる。このことから、負極活物質中に含まれるクロムの濃度は1.0質量%以下、亜鉛の濃度は50ppm以下が望ましいことが分かる。
Figure 2014179216
表4から明らかなように、粒子の中心部と外周部とでコバルトとスズの組成に偏りのない略均一な組成の粒子を負極活物質とした比較例2−1では、初回放電容量が低い値を示し、また寿命特性も大幅に低下した。また、ビスマスを添加していない比較例2−2では、複合粒子の平均粒径が増大し、寿命特性の低下がみられた。これに対し、実施例4では、充放電サイクル試験において、初回放電容量が高い値を示し、更に寿命特性が非常に優れる結果となった。このことから、実施例4の負極活物質では、リチウムイオン二次電池の出力特性及びサイクル特性を向上させることができることが確認された。

Claims (4)

  1. スズ(Sn)とコバルト(Co)を含む複合粒子からなり、前記複合粒子が前記スズ(Sn)を中心に配置しかつこのスズ(Sn)外面にコバルト(Co)が偏在する構造であるか、又は前記複合粒子が切断面において前記複合粒子の表面に連通する複数のポアを有しかつ前記コバルト(Co)が前記複合粒子の外面及び前記ポアの内面に偏在する構造であるリチウムイオン二次電池用負極活物質であって、
    前記複合粒子が構成元素としてビスマスを更に含み、前記ビスマスの含有量がスズ(Sn)の含有量100原子%に対して0.05〜1.2原子%含まれることを特徴とするリチウムイオン二次電池用負極活物質。
  2. 前記スズ(Sn)とコバルト(Co)の合計量に対する前記コバルト(Co)の割合が5〜40原子%である請求項1記載の負極活物質。
  3. 負極活物質を有する負極と、正極活物質を有する正極と、非水電解質とを備えたリチウムイオン二次電池において、
    前記負極活物質が、スズ(Sn)とコバルト(Co)を含む複合粒子からなり、前記複合粒子が前記スズ(Sn)を中心に配置しかつこのスズ(Sn)外面にコバルト(Co)が偏在する構造であるか、又は前記複合粒子が切断面において前記複合粒子の表面に連通する複数のポアを有しかつ前記コバルト(Co)が前記複合粒子の外面及び前記ポアの内面に偏在する構造であり、
    前記複合粒子が構成元素としてビスマスを更に含み、前記ビスマスの含有量がスズ(Sn)の含有量100原子%に対して0.05〜1.2原子%含まれることを特徴とするリチウムイオン二次電池。
  4. 前記スズ(Sn)とコバルト(Co)の合計量に対する前記コバルト(Co)の割合が5〜40原子%である請求項3記載のリチウムイオン二次電池。
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