JP2014176329A - 酵素架橋凝集体、及びこれを備えるマイクロリアクター - Google Patents
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Abstract
【解決手段】本発明の酵素架橋凝集体は、酵素分子と架橋性官能基として酸無水物基を有する化合物が架橋した構造を有する。前記架橋性官能基として酸無水物基を有する化合物としては、不飽和カルボン酸無水物に由来する繰り返し単位とポリアルキレングリコール側鎖を含む繰り返し単位を有する化合物が好ましい。
【選択図】なし
Description
本発明の他の目的は、前記酵素架橋凝集体の製造方法を提供することにある。
本発明の更に他の目的は、前記酵素架橋凝集体を中空状マイクロチャネル内表面に固定化してなるマイクロリアクターを提供することにある。
本発明の酵素架橋凝集体は、酵素分子と架橋性官能基として酸無水物基を有する化合物とが架橋した構造を有する。
R1−O(R2O)n−R3 (1)
上記酵素架橋凝集体は、例えば、酵素分子と架橋性官能基として酸無水物基を有する化合物とを混合し、4℃以上50℃未満(好ましくは4〜30℃)の温度で0.5〜48時間(好ましくは12〜24時間)静置することにより製造することができる。反応温度が上記範囲を外れると、酵素の失活や、本発明の架橋剤が分解することにより、反応収率の低下や反応速度の低下が生じる場合がある。また、反応時間が上記範囲を下回ると、架橋反応が不完全となり酵素架橋凝集体が得られ難くなる傾向がある。一方、反応時間が上記範囲を上回ると、過剰な架橋反応により酵素架橋凝集体中の酵素の活性が低下する傾向がある。
本発明のマイクロリアクターは、中空状マイクロチャネル内表面に、上記酵素架橋凝集体を固定化してなる。
架橋剤としては、下記式(2)で表される櫛型ポリマー(商品名「Sunbright AM1510K」、日本油脂(株)製、m=10〜15、n=30〜40、重量平均分子量:15000〜20000)を使用した。
酵素としては、酸化還元酵素(Candida parapsilosis由来S−アルコール脱水素酵素)を使用した。
エッペンドルフチューブ内において10mg/mLの酵素溶液と架橋剤溶液を混合し[前者:後者(体積比)=1:1、前者:後者(モル比)=1:45]、4℃で16時間静置することにより、酵素架橋凝集体(1)を得た。尚、架橋反応に用いる溶液としては全て50mMリン酸緩衝液(pH8.0)を使用した。
続いて、得られた酵素架橋凝集体(1)を遠心して沈殿させた後、上清を除き、沈殿に1Mトリス緩衝液(pH8.0)を加え残存する酸無水物基をクエンチした。更に、遠心して沈殿させた後、上清を除き、沈殿に500mMリン酸カリウム緩衝液(pH7.5)を加える操作を3度行い、洗浄した。
酵素溶液と架橋剤溶液の混合割合[前者:後者(モル比)]を1:45から、1:70に変更した以外は実施例1と同様にして酵素架橋凝集体(2)を得た。
酵素溶液と架橋剤溶液の混合割合[前者:後者(モル比)]を1:45から、1:90に変更した以外は実施例1と同様にして酵素架橋凝集体(3)を得た。
架橋剤を櫛型ポリマー(商品名「Sunbright AM1510K」、日本油脂(株)製、m=10〜15、n=30〜40、重量平均分子量:15000〜20000)から、櫛型ポリマー(商品名「Sunbright AM0530K」、日本油脂(株)製、m=30〜40、n=10〜15、重量平均分子量:15000〜20000)に変更した以外は実施例3と同様にして酵素架橋凝集体(4)を得た。
架橋剤を櫛型ポリマー(商品名「Sunbright AM1510K」、日本油脂(株)製、m=10〜15、n=30〜40、重量平均分子量:15000〜20000)から、櫛型ポリマー(商品名「Sunbright AM2090K」、日本油脂(株)製、m=10〜20、n=40〜50、重量平均分子量:20000〜40000)に変更した以外は実施例3と同様にして酵素架橋凝集体(5)を得た。
実施例で得られた酵素架橋凝集体(1)〜(5)の酵素活性を下記方法により評価した。
すなわち、実施例で得られた酵素架橋凝集体(1)〜(5)に酵素反応溶液を加え、25℃で24時間振盪後の基質変換率を定量することにより酵素活性を評価した。また、対照として酸化還元酵素(Candida parapsilosis由来S−アルコール脱水素酵素)の酵素活性を同様の方法で評価した。
ここで使用した酵素反応溶液は、15mMアセト酢酸エチル、0.2mM補酵素(ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド:NADH)、45mMイソプロピルアルコール、及び500mMリン酸カリウム緩衝液(pH7.5)からなる溶液である。
アセト酢酸エチルは酸化還元酵素の基質であり、還元されて(S)−(+)−3−ヒドロキシ酪酸エチルとなる。反応終了後、反応溶液上清をHPLC分析に供し、残存基質濃度を測定することで基質変換率を定量した。
上記結果を図1に示す。酵素架橋凝集体(1)〜(3)の基質変換率はおよそ60%であった。また、酵素架橋凝集体(4)、(5)についても同様の結果であった。
実施例1で得られた酵素架橋凝集体(1)を熱処理し、その熱安定性を酵素活性の比較により評価した。
熱処理は、酵素架橋凝集体(1)をエッペンドルフチューブ内で500mMリン酸カリウム緩衝液(pH7.5)に浸漬し、50℃で24時間静置することで行った。
熱安定性の評価は、酵素架橋凝集体(1)及び比較のための酵素溶液(実施例1で使用の酵素溶液)について、それらの酵素活性(熱処理前)を測定し、続いて熱処理を行った後、再度、酵素活性(熱処理後)を測定することにより行った。
酵素活性は、<評価1:触媒能評価>で使用したものと同じ酵素反応溶液を加えて25℃で3時間振盪後の基質変換率を定量することにより評価した。
熱処理前の酵素活性をそれぞれ100%とした場合の、熱処理後の酵素活性を図2に示す。架橋凝集体形成により、溶液状態の酵素よりも熱安定性が向上していることがわかった。
マイクロチャネルとして、内径330μm、長さ15cmのテフロン(登録商標)チューブを用いた。実施例1と同様の酵素溶液および架橋剤溶液をそれぞれシリンジポンプにより送液し、マイクロチャネル内へ流通させた。酵素溶液と架橋剤溶液はシリカキャピラリーによりT字コネクタ内に作製した2重管をそれぞれ通り、テフロン(登録商標)チューブ内へ流入した。この際、架橋剤溶液はチューブ内中央より流入し、酵素溶液はチューブの内壁近傍より流入した(図3参照)。架橋剤と酵素の拡散速度差により、酵素架橋凝集体はチューブ内壁近傍で形成された。各溶液の送液速度は、酵素溶液、架橋剤溶液ともに1μL/min.とした。また、送液は4℃で6時間行った。
続いて、マイクロリアクター内へ1Mトリス緩衝液(pH8.0)を10μL/min.で10分間送液し、残存する酸無水物基をクエンチした。さらに、500mMリン酸カリウム緩衝液(pH7.5)を10μL/min.で10分間送液することで洗浄した。
実施例6で得られたマイクロリアクターの酵素活性の評価は、25℃の条件下、マイクロリアクターに酵素反応溶液を0.1μL/min.で送液し、回収した反応溶液中における生成物の生成率を定量する事により行った。ここで使用した酵素反応溶液は、<評価1:触媒能評価>で使用したものと同じである。その結果、酵素活性が認められた。
2 架橋剤
3 テフロン(登録商標)チューブ
4 シリカキャピラリー
Claims (6)
- 酵素分子と架橋性官能基として酸無水物基を有する化合物とが架橋した構造を有する酵素架橋凝集体。
- 架橋性官能基として酸無水物基を有する化合物が、不飽和カルボン酸無水物に由来する繰り返し単位とポリアルキレングリコール側鎖を含む繰り返し単位とを有する化合物である請求項1に記載の酵素架橋凝集体。
- 架橋性官能基として酸無水物基を有する化合物の重量平均分子量が1000〜1000000である請求項1又は2に記載の酵素架橋凝集体。
- 酵素分子が酸化還元酵素分子である請求項1〜3の何れか1項に記載の酵素架橋凝集体。
- 酵素分子と架橋性官能基として酸無水物基を有する化合物とを混合し、4〜50℃の温度で0.5〜48時間静置することにより請求項1〜4の何れか1項に記載の酵素架橋凝集体を得る酵素架橋凝集体の製造方法。
- 中空状マイクロチャネル内表面に、請求項1〜4の何れか1項に記載の酵素架橋凝集体を固定化してなるマイクロリアクター。
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