JP2014173009A - メタクリル酸エステル系モノマーを含む反応液の冷却方法 - Google Patents

メタクリル酸エステル系モノマーを含む反応液の冷却方法 Download PDF

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Abstract

【課題】メタクリル酸エステル系モノマーの連続塊状重合プロセスにおいて、原料モノマーを含む反応液を冷却して配管の閉塞を防止する方法の提供。
【解決手段】連続塊状重合プロセスの間にメタクリル酸エステル系モノマーを含む反応液を配管に通して該配管の内壁面と接触させることによって該反応液を冷却する方法であって、該配管に流入する該反応液の温度が110℃以上であり、該反応液と接触する該配管の内壁面の温度が105℃以下であり、該配管の内壁面と接触することによって冷却される該反応液における溶存酸素濃度が0.01〜10ppmである方法。
【選択図】図1

Description

本発明はメタクリル酸エステル系モノマーを用いてメタクリル酸エステル系ポリマーを製造する連続塊状重合プロセスの間に配管を通してかかる原料モノマーを含む反応液を冷却する方法に関する。
近年、メタクリル酸エステル系ポリマーは優れた透明性や加工性を有することから、様々な分野で広く使用されている。
一般にメタクリル酸エステル系ポリマーはメタクリル酸メチル(MMA)などのメタクリル酸エステル系モノマーから連続塊状重合プロセスによって製造されるものである。例えば、特許文献1には、完全混合型反応器と、複数の管型反応器と、揮発分除去装置とを配管で接続してなる装置を用いて、かかるメタクリル酸エステル系ポリマーをメタクリル酸メチルから連続塊状重合反応によって製造する方法が開示されている。なお、特許文献1の発明では、管型反応器に冷却装置を接続して反応液を冷却することによって、反応物の重合率を向上させてその生産性を向上させている。
国際公開第2011/125980号パンフレット
メタクリル酸エステル系モノマーを用いた連続塊状重合プロセスでは配管を通して原料モノマーを含む反応液を移送する際にも原料モノマーのラジカル重合反応が進行し、その重合物によって配管が閉塞することが問題であった。
特に原料モノマーであるメタクリル酸エステル系モノマーはスチレンやビニルアセテートなどの他のモノマーと比べてゲル効果が著しく、配管内で粘度が上昇してラジカル重合反応が加速して配管内で一気に重合反応が進行することから、配管内での重合物による閉塞の可能性が高かった。
従って、本発明が解決しようとする課題は、メタクリル酸エステル系モノマーを用いた連続塊状重合プロセスにおいて、このような配管の閉塞を防止する方法の提供にある。
本発明者は、メタクリル酸エステル系モノマーを用いた連続塊状重合プロセスにおいて、反応液が通過する配管を冷却することで配管内での原料モノマーのラジカル重合反応を抑制し、その重合物による配管の閉塞を防止することを検討した。
しかしながら、本発明者による研究の結果では、配管の内壁面付近において冷却により反応液の粘度が上昇して流速が低下し、反応液の流れが停滞する滞留部が形成され、このような滞留部において何らかの事情でラジカルが存在すると、ラジカル重合反応が進行して配管が閉塞される恐れがあることがわかった。
また、このような滞留部におけるラジカルの存在は配管内を流れる反応液中に含まれる溶存酸素がその原因の一つであることもわかった。
そこで、本発明者は、これらの知見に基づいて、さらに鋭意研究を行ったところ、メタクリル酸エステル系モノマーを原料として用いる連続塊状重合プロセスにおいて、配管に流入する反応液の温度と、配管の内壁面の温度、配管内を流れる反応液の溶存酸素濃度をすべて調節することによって、滞留部においてラジカルの発生を抑制できることを見出し、本発明を完成するに至った。従って、本発明は、以下の方法を提供するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
[1]
連続塊状重合プロセスの間にメタクリル酸エステル系モノマーを含む反応液を配管に通して該配管の内壁面と接触させることによって該反応液を冷却する方法であって、該配管に流入する該反応液の温度が110℃以上であり、該反応液と接触する該配管の内壁面の表面温度(以下「内壁面の温度」と略記する場合もある)が105℃以下であり、該配管の内壁面と接触することによって冷却される該反応液における溶存酸素濃度が0.01〜10ppmである方法。
[2]
前記溶存酸素濃度が1〜5ppmである、上記[1]に記載の方法。
[3]
前記溶存酸素濃度が1〜3ppmである、上記[1]または[2]に記載の方法。
[4]
熱伝導率が0.15W/m・K以上である流体により前記配管の外壁面を冷却して該配管の内壁面の温度を105℃以下にする、上記[1]〜[3]のいずれか1項に記載の方法。
[5]
前記流体がアセトン、メタノール、エチレングリコール、グリセリン、アンモニアおよび水からなる群から選択される、上記[4]に記載の方法。
[6]
前記流体が液体である、上記[4]または[5]に記載の方法。
[7]
前記配管の内壁面の温度が105〜10℃である、上記[1]〜[6]のいずれか1項に記載の方法。
[8]
前記配管の内壁面の温度が90〜60℃である、上記[7]に記載の方法。
[9]
前記反応液におけるメタクリル酸エステル系モノマーの含有量が80〜100質量%である、上記[1]〜[8]のいずれか1項に記載の方法。
[10]
前記メタクリル酸エステル系モノマーがメタクリル酸アルキルである、上記[1]〜[9]のいずれか1項に記載の方法。
[11]
前記メタクリル酸アルキルがメタクリル酸メチルである、上記[10]に記載の方法。
本発明の方法によれば、メタクリル酸エステル系モノマーの連続塊状重合プロセスにおいて、配管内でのラジカル重合反応を抑制して重合物による配管の閉塞を防止することができる。
本発明の1つの実施形態で使用する連続重合装置を示す概略図である。 本発明の別の実施形態で使用する連続重合装置を示す概略図である。
本発明は、連続塊状重合プロセスの任意の間にメタクリル酸エステル系モノマーを含む反応液を配管を通して冷却する方法に関し、反応液が通過する配管の内壁面の温度と、反応液中の溶存酸素濃度とを調節することによって、配管内でのラジカル重合反応を抑制し、重合物による配管の閉塞を防止する。
本発明は、1またはそれ以上の反応器(例えば、完全混合型の反応器、管型反応器など)を用いてメタクリル酸エステル系モノマーの連続塊状重合反応を行うプロセスに適用することができ、重合反応の前後を問わず、重合装置に含まれる各種配管において、原料であるメタクリル酸エステル系モノマーを含むメタクリル酸エステル系重合組成物(いわゆる「シロップ」)のラジカル重合反応による閉塞を防止することができる。本発明は、好ましくは、2個の反応器を接続する配管の冷却に適用するものであるが、本発明はかかる配管の冷却に限定されるものではない。
本発明によって冷却される反応液は、原料モノマーであるメタクリル酸エステル系モノマーのみを含むもの(すなわち重合反応前の反応液)であっても、メタクリル酸エステル系モノマーとその重合物(ポリマーおよび/またはコポリマー)とを含むもの(すなわち重合反応後の反応液)であってもよい。また、反応液は、メタクリル酸エステル系モノマー以外にもその他の重合性モノマーを含んでいてもよく、重合開始剤、重合禁止剤などの重合に使用され得るその他の任意の成分および/またはそれらの分解物や重合の副生成物などを含んでいてもよい。
従って、反応液中のメタクリル酸エステル系モノマーの含有量に特に制限はなく、その含有量は、例えば80〜100質量%である。
本発明において使用する配管を構成する材料に特に制限はなく、例えば、ステンレス、炭素鋼管などの金属製の配管、テフロン(登録商標)等の樹脂製の配管などを使用することができるが、本発明では、耐久性、腐食性、熱伝導性などの観点から、金属製の配管を使用することが好ましい。
本発明では、かかる配管に流入する反応液の温度を例えば110℃以上とし、反応液と接触する配管の内壁面の温度を105℃以下とし、さらに配管内を通過する反応液中の溶存酸素濃度を0.01〜10ppmとすることによって、配管内の温度が低く滞留部を形成しやすい内壁面付近においても溶存酸素に起因するラジカルの発生を抑制し、原料モノマーの重合による配管の閉塞を防止することができる。
本発明において、配管内に流入する反応液の温度(すなわち冷却前の温度)に特に制限はなく、例えば110℃以上であり、好ましくは110〜180℃、より好ましくは110〜140℃である。反応液の流入温度を110℃以上とすることで流体の粘度を下げることができ、その結果、配管表面付近の滞留層の厚みが薄くなるため、反応液の滞留を抑制することができるという効果が得られる。
本発明では、反応液が流れる配管の内壁面の温度を105℃以下、好ましくは105〜10℃、より好ましくは90〜60℃とすることによって、配管表面の反応液滞留部にて溶存酸素起因のメタクリル酸エステル系モノマーのラジカル重合反応を抑制することができ、その結果として冷却した配管内での閉塞の発生を抑制することができるという効果が得られる。
また、本発明では、反応液が通過する配管の全部またはその一部をその外側から冷却することによって、すなわち、反応液が流れる配管の外壁面の少なくとも一部を冷却することによって、配管の内壁面の温度を105℃以下とすることが好ましい。
かかる配管の冷却は流体を用いて行うことができ、本発明では、熱伝導率が0.15W/m・K以上の流体を用いることが好ましい。
熱伝導率は、流体の熱伝導の大きさを表すものであり、この値が大きいとその流体の熱伝導性が高く、流体が冷却性能に優れていることを意味する。なお、本明細書中に記載の熱伝導率は、すべて、大気圧下、室温(約20℃〜約30℃)で測定した値である。
かかる熱伝導率が0.15W/m・K以上である流体としては、液体のアセトン(熱伝導率:0.159W/m・K)、液体のメタノール(熱伝導率:0.202W/m・K)、液体のエチレングリコール(熱伝導率:0.258W/m・K)、液体のグリセリン(熱伝導率:0.285W/m・K)、液体のアンモニア(熱伝導率:0.479W/m・K)、液体の水(熱伝導率:0.612W/m・K(液体))などを使用することが好ましく、これらを任意に組み合わせて使用してもよい。
かかる流体を用いて配管の外壁面を冷却する方法に特に限定はないが、配管の一部または全部を二重管式として、すなわち、配管の少なくとも一部にジャケットを設けて二重管式とし、その内側の配管に反応液を通して、その外側の配管(すなわちジャケット部)に上記流体を通すことによって、反応液が通過する内側の配管の内壁面の温度を105℃以下の温度にまで冷却することが好ましい。配管にジャケットを設けて二重管式とする場合、反応液および流体を流す方向に特に制限はなく、同じ方向(すなわち並流)であっても、逆方向(すなわち向流)であってもよい。冷却の効率を考慮すると、向流であることが好ましい。
また、本発明では、反応器を接続する配管の一部に二重管式熱交換器または多管式冷却器などの冷却器を接続して上記と同様にて反応液を冷却してもよい。
なお、本発明では、反応液が流れる配管の内壁面の温度を105℃以下とすることができれば、冷却に用いる流体の温度に特に限定はない。本発明では、熱伝導率が0.15W/m・K以上の流体を用いて配管を冷却しており、かかる流体は熱伝導性が高いことから、適用した流体の温度をそのまま配管の内壁面の温度と認めることができる。
また、反応液が通過する配管の内壁面の温度を105℃以下にすることができれば、かかる流体の流速に特に制限はない。
このように、配管の内壁面の温度を105℃以下とした上で、例えば液温が110℃以上の反応液をかかる配管を通過させることによって、冷却面近傍の反応液が滞留する部位ではラジカル重合由来のポリマー発生を抑制し、その他の流速の速い部位では反応液の粘度低下によって反応液を滞留させないことにより、全体として冷却部での閉塞発生を防止することができる、という効果を得ることができる。
さらに、本発明では、配管の内壁面と接触することにより冷却され得る反応液中の溶存酸素濃度を0.01〜10ppm、好ましくは1〜5ppm、より好ましくは1〜3ppmとすることによって、配管内でのラジカルの発生、特に滞留部を形成しやすい内壁面付近でのラジカルの発生を顕著に抑制することができる。
溶存酸素濃度が10ppmを超えると、冷却を施した内壁面付近においてもラジカルが発生し、メタクリル酸エステル系モノマーのゲル効果によりラジカル重合反応が一気に進行して配管を閉塞する恐れがある。
なお、反応液中の溶存酸素濃度が0.01ppm未満の場合には、配管内においてラジカル重合反応が進行して配管を閉塞する恐れがないので、本発明を適用する必要はあまりないが、溶存酸素濃度が0.01ppm未満であっても特に問題はない。
本発明において、反応液中の溶存酸素濃度は、配管に流入する反応前の原料液からサンプルを取り出して、溶存酸素計により測定することができる。かかるサンプルは、配管に流入する直前あるいは配管に流入した直後のいずれかの段階で取り出すことが好ましい。また、反応液中の溶存酸素濃度は、直接、配管に溶存酸素計を設置して測定してもよい。
本発明では、上述の通り、配管に流入する反応液の温度を例えば110℃以上とし、反応液と接触する配管の内壁面の温度を105℃以下とし、さらに配管を通過する反応液中の溶存酸素濃度を0.01〜10ppmとすることによって、配管内、特に温度が低く滞留部を形成しやすい内壁面付近においてもラジカルの発生を抑制し、ラジカル重合物による配管の閉塞を防止することができる。
なお、上述の説明では、反応液が流れる配管をその外側から冷却して内壁面の温度を105℃以下とする方法について詳しく言及したが、本発明の別の態様として、反応液が流れる配管の外側ではなく、配管の内側に冷却用の配管を通してそこに上記の流体を通すことによって内側から反応液を冷却してもよい。その場合には、流体が通過する内側の配管の外壁面の温度を105℃以下とすればよい。
以下、図1を参照しながら、配管(具体的には図1の接続ライン15)で接続された2つの反応器を使用する2段階で連続塊状重合反応を行うプロセスにおける本発明の好ましい実施形態について詳述する。
まず、本発明の好ましい実施形態で使用する重合装置について説明する。
[重合装置]
本実施形態で使用する重合装置は、少なくとも第1の反応器10および第2の反応器20を含んで成る。これら反応器10および20は、いずれも、完全混合型の反応器であり、本実施形態においては連続塊状重合を実施するために用いられる。
より具体的には、第1の反応器10は、供給口11aと抜き出し口11bとを有し、好ましくは、反応器の外壁面の温度を調節するための温度調節手段としてジャケット13と、内容物を撹拌するための撹拌機14とを更に有する。同様に、第2の反応器20は、供給口21aと抜き出し口21bとを有し、好ましくは、反応器の外壁面の温度を調節するための温度調節手段として反応器の外壁面を取り囲むジャケット23と、内容物を撹拌するための撹拌機24とを更に有する。抜き出し口11bおよび21bは、本実施形態で使用する重合装置において各反応器の頂部に位置するように設けられるが、これに限定されない。他方、供給口11aおよび21aは、本実施形態を限定するものではないが、一般的には各反応器の下方の適切な位置に設けられ得る。更に、これら反応器10および20は、各反応器内の温度を検知する温度検知手段として温度センサTを各々備える。
第1の反応器10および第2の反応器20の容積は、互いに同じであっても、異なっていてもよい。第1の反応器10の容積と、第2の反応器20の容積とを異ならせることにより、第1の反応器10と第2の反応器20とで平均滞留時間を効果的に異ならせることができる。
撹拌機14および24は、反応器内を実質的に完全混合状態とするためのものである。これら撹拌機は、任意の適切な撹拌翼を備えていてよく、例えば、ミグ(MIG)翼、マックスブレンド翼(登録商標、住友重機械工業株式会社製)、パドル翼、ダブルヘリカルリボン翼、フルゾーン翼(登録商標、株式会社神鋼環境ソリューション製)などを備えていてよい。反応器内での撹拌効果を増大させるためには、反応器内にバッフルを取り付けることが望ましい。しかし、本実施形態の重合装置ではこれらに限定されず、反応器内を実質的に完全混合状態とし得る限り、撹拌機14および24に代えて任意の適切な構成を有し得る。
反応器10および20は、通常、撹拌効率が高いほど好ましいものの、撹拌操作によって反応器に余分な熱量を加えないという観点からは、撹拌動力は必要以上に大きくないほうがよい。撹拌動力は特に限定されるものではないが、好ましくは、0.5〜30kW/mであり、より好ましくは、0.5〜20kW/mであり、さらにより好ましくは、1〜15kW/mである。撹拌動力は、反応系の粘度が高くなるほど(または反応系内の重合体の含有率が高くなるほど)、大きく設定することが好ましい。
図示するように、第1の反応器10の供給口11aは、原料モノマータンク(原料モノマーの供給源)1および重合開始剤タンク(重合開始剤および場合により原料モノマーの供給源)3にそれぞれポンプ5および7を介して、原料供給ライン9を通じて接続されている。本実施形態で使用する重合装置において、原料モノマーおよび重合開始剤の供給源は、原料モノマータンク1および重合開始剤タンク3であるが、原料モノマーおよび重合開始剤の供給源の数および原料モノマーおよび重合開始剤の態様(例えば混合物の場合にはその組成)などは、原料モノマーおよび重合開始剤を第1の反応器10に適切に供給し得る限り、特に限定されない。本実施形態に必須ではないが、第1の反応器10に別の供給口11cが設けられ、この供給口11cが、例えば図1に点線で示すように、重合開始剤タンク3にポンプ7を介して接続されていてもよい。第1の反応器10の抜き出し口11bは、第2の反応器20の供給口21aに配管15を通じて接続される(以下、「配管15」を「接続ライン15」と呼ぶ場合もある)。第2の反応器20の抜き出し口21bは、抜き出しライン25へと繋がっている。これにより、第1の反応器10と第2の反応器20とが直列接続される。第1の反応器10の抜き出し口11bと第2の反応器20の供給口21aとの間の接続ライン15上にはポンプが存在しないことが好ましい。
本発明に必須ではないが、第2の反応器20は、重合開始剤タンク(新たな重合開始剤および場合により原料モノマーの供給源)17にポンプ19を介して接続されていることが好ましい。本実施形態において、新たな重合開始剤の供給源は、重合開始剤タンク17であるが、新たな重合開始剤の供給源の数および重合開始剤の態様(例えば混合物の場合にはその組成)などは、新たな重合開始剤を第2の反応器20に適切に供給し得る限り、特に限定されない。重合開始剤タンク17およびポンプ19が存在する場合、重合開始剤タンク17は、図1に示すようにポンプ19を介して接続ライン15の反応器20の供給口21aの直近に接続されていてよく、あるいは、第2の反応器20に別の供給口21cが設けられ、この供給口21cが、例えば図1に点線で示すように、重合開始剤タンク17にポンプ19を介して接続されていてよい。
ポンプ5および7ならびに存在する場合にはポンプ19は、特に限定されるものではないが、原料モノマータンク1および重合開始剤タンク3からの流量、ならびに存在する場合には重合開始剤タンク17からの流量を一定量に設定可能なポンプであることが好ましい。具体的には、好ましくは多連式往復動ポンプが挙げられ、より好ましくは2連式無脈動定量ポンプ、3連式無脈動定量ポンプなどの無脈動定量ポンプが挙げられる。これにより、第1の反応器10への原料モノマーおよび重合開始剤の供給量(または供給流量、以下も同様)を、および場合により第2の反応器20への重合開始剤(または原料モノマーおよび重合開始剤)の追加の供給量を制御することができる。
また、第1の反応器10の抜き出し口11bを第2の反応器20の供給口21aに接続する接続ライン15は、接続ライン15を少なくとも部分的に冷却することのできる冷却手段として、接続ライン15の外壁面の一部または全部を取り囲むジャケット16(図1中にハッチングにて示す)や、図2に示すような接続ライン15の一部を置換した冷却器40や、冷媒を通すトレース配管などを備える(ジャケットを備える接続ラインは、二重管として理解される)。図2においては、冷却器40は、接続ライン15に任意の適切な態様で設けられ、接続ライン15の冷却器40以外のライン部分は、保温材(図示せず)で覆うことにより保温してもよいし、接続ライン15の外壁面を取り囲むジャケット(図2に示さず)を併用して冷却してもよい。
また、本発明に必須ではないが、接続ライン15は、接続ライン15内の温度分布の均一性を高め、また、接続ライン15内を流れる反応液(すなわち中間組成物(後述する))による接続ライン15の閉塞を抑制できるという点で、混合手段をさらに備えることが好ましい。混合手段は、冷却効率を高める点という点で、接続ライン15の冷却部分に備えることが好ましい。混合手段としては、例えば、スタティックミキサー、動的混合機などが挙げられ、なかでも、スタティックミキサーが好ましい。スタティックミキサーは、駆動部を要しないミキサーであり、接続ライン15に任意の適切な態様で設けられる。例えば、図1においては、接続ライン15の内部の適切な位置にスタティックミキサーが挿入されていてもよいし、接続ライン15の一部または全部を、ラインを形成するスタティックミキサーで置換してもよい。図2においては、接続ライン15の冷却器40以外のライン部分の内部の適切な位置にスタティックミキサーが挿入されていてもよいし、接続ライン15の冷却器40以外のライン部分の一部または全部を、ラインを形成するスタティックミキサーで置換してもよい。スタティックミキサーとしては、例えば、スルーザー・ケムテック社(Sulzer Chemtech Ltd)製の「スルーザーミキサー」等が挙げられ、例えばSMX型、SMI型、SMV型、SMF型、SMXL型等のスルーザーミキサーが使用され得る。
図1を参照して上述した各部材は適宜、後述する制御手段(図示せず)に接続されて、その動作が制御手段により制御可能であるように全体的に構成されることが好ましい。これにより、原料モノマーおよび重合開始剤の第1の反応器10への供給量をポンプ5および7の動作で調整することや、反応器の外壁面の温度を調節することなどができ、更に、重合開始剤タンク17およびポンプ19が存在する場合には重合開始剤(または原料モノマーおよび重合開始剤)の第2の反応器20への追加の供給量をポンプ19の動作で調整することができる。接続ライン15内の温度は、第2の反応器20の供給口21a近傍および場合によりその他の箇所において、接続ライン15内の温度を検知する温度検知手段によって実際に測定することが好ましい。また、図2において、接続ライン15の冷却器40以外のライン部分に、その周囲を取り囲むジャケットが設けられる場合、該ジャケットを併用することにより、接続ライン15内の温度を調整してもよい。
ジャケット13および23は、反応器10および20のそれぞれについて略全体を覆っており、熱媒供給路(図示せず)から蒸気、熱水、有機熱媒体などの熱媒を導入することにより、反応器10および20を、適宜加熱または保温する。ジャケット13および23の温度は、供給される熱媒の温度または圧力によって、適宜調節することができる。ジャケット13および23内に導入された熱媒は、熱媒排出路(図示せず)から除去される。また、ジャケット13および23の温度や圧力は、熱媒排出路上に設けられた温度センサ(図示せず)などのセンサによって検知される。温度センサなどのセンサの配置箇所については、特に限定されるものではなく、例えば、熱媒供給路上や、ジャケット13および23内であってもよい。接続ライン15に冷却手段として備えられるジャケット16は、これらジャケット13および23と同様の構成を有するものであってよい。本実施形態を限定するものではないが、典型的には、接続ライン15は二重管であってよく、内側管の内部空間が反応液(すなわち中間組成物(後述する))の流路となり、内側の管と外側の管との間の空間は熱媒となる流体(好ましくは熱伝導率が0.15W/m・K以上の流体)の流路(すなわちジャケット16)となる。
反応器10および20内での重合反応は、生成する重合体(ポリマー)の品質を一定にするという観点から、反応器10および20内でそれぞれ重合温度を略一定にして実行することが求められる。それゆえ、上記温度調節手段(ジャケット13および23)は、反応器10および20のそれぞれの内温を略一定に保つことができるように、予め設定された一定温度に制御される。
上記温度調節手段(ジャケット13および23)の設定温度は、後述する制御手段に伝えられ、モノマー供給手段(ポンプ5)や開始剤供給手段(ポンプ7および存在する場合にはポンプ19)による供給流量の制御の要否を判断するためのデータとなる。また、上記温度調節手段(ジャケット13および23)の設定温度は、上記熱媒の温度または圧力を制御することにより、調節可能である。
制御手段としては、例えば、CPU、ROM、RAMなどを備える制御部(図示せず)が挙げられる。
制御部のROMは、ポンプ5および7ならびに存在する場合にはポンプ19などを制御するプログラムを格納するための装置であって、制御部のRAMは、上記プログラムを実行するために、温度センサTで検知された反応器10および20内の温度データや、ジャケット13および23の設定温度のデータ、および接続ライン15のジャケット16または冷却器40の設定温度のデータを一時的に格納する装置である。
制御部のCPUは、上記RAMに格納された、反応器10および20内の温度データや、ジャケット13および23の設定温度のデータに基づいて、上記ROMに格納されたプログラムを実行して、反応器10および20内への原料モノマーおよび/または重合開始剤の供給流量を、モノマー供給手段(ポンプ5)および/または開始剤供給手段(ポンプ7および存在する場合にはポンプ19)によって制御させる。また、接続ライン15に冷却手段として備えられるジャケット16または冷却器40については、制御部のCPUは、上記RAMに格納された、反応器10および20内の温度データや、接続ライン15のジャケット16または冷却器40の設定温度のデータ、ならびに、実際に測定される場合には第2の反応器20の供給口21a近傍およびその他の箇所における接続ライン15内の温度に基づいて、上記ROMに格納されたプログラム(上記プログラムの一部であっても、上記プログラムと別のプログラムであってもよい)を実行して、接続ライン15のジャケット16または冷却器40の設定温度を調節し得る。
また、本実施形態に必須ではないが、抜き出しライン25の下流には、予熱器31および脱揮押出機33が配置され得る。予熱器31および脱揮押出機33の間には、圧力調整弁(図示せず)が設けられ得る。脱揮後の押出物は、取り出しライン35より取り出される。
予熱器31には、粘性流体を加熱し得る限り、任意の適切な加熱器を用い得る。脱揮押出機33には、スクリュー式の単軸または多軸の脱揮押出機を用い得る。
更に、脱揮押出機33にて分離される揮発性成分(主に未反応の原料モノマーを含んで成る)から分離回収した原料モノマーを貯蔵する回収タンク37が存在してもよい。
次に、かかる重合装置を用いて実施されるメタクリル酸エステル系モノマーの連続塊状重合によるメタクリル酸エステル系ポリマーの製造について説明する。
・準備
まず、原料モノマーおよび重合開始剤などを準備する。
原料モノマーとして、本実施形態では、メタクリル酸エステル系モノマーを用いる。
メタクリル酸エステル系モノマーとしては、例えば、
・メタクリル酸アルキル(アルキル基の炭素数が1〜4であるもの)単独、または
・メタクリル酸アルキル(アルキル基の炭素数が1〜4であるもの)80重量%以上と、これと共重合可能な他のビニル単量体20重量%以下との混合物
が挙げられる。
メタクリル酸アルキル(アルキル基の炭素数が1〜4であるもの)としては、例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸sec−ブチル、メタクリル酸イソブチルなどが挙げられ、なかでも、メタクリル酸メチルであることが好ましい。上記例示のメタクリル酸アルキルは、単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
共重合可能なビニル単量体としては、例えば、ラジカル重合可能な二重結合を1個有する単官能単量体や、ラジカル重合可能な二重結合を2個以上有する多官能単量体が挙げられる。具体的には、ラジカル重合可能な二重結合を1個有する単官能単量体としては、例えば、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸2−エチルヘキシルなどのメタクリル酸エステル類(但し、上記メタクリル酸アルキル(アルキル基の炭素数が1〜4であるもの)を除く);アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル等のアクリル酸エステル類;アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸などの不飽和カルボン酸またはこれらの酸無水物;アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、アクリル酸モノグリセロール、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸モノグリセロールなどのヒドロキシル基含有モノマー;アクリルアミド、メタクリルアミド、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、ジアセトンアクリルアミド、メタクリル酸ジメチルアミノエチル等の窒素含有モノマー;アリルグリシジルエーテル、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジルなどのエポキシ基含有単量体;スチレン、α−メチルスチレンなどのスチレン系単量体が挙げられる。ラジカル重合可能な二重結合を2個以上有する多官能単量体としては、例えば、エチレングリコールジメタクリレート、ブタンジオールジメタクリレートなどのグリコール類の不飽和カルボン酸ジエステル;アクリル酸アリル、メタクリル酸アリル、ケイ皮酸アリルなどの不飽和カルボン酸のアルケニルエステル;フタル酸ジアリル、マレイン酸ジアリル、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレートなどの多塩基酸のポリアルケニルエステル;トリメチロールプロパントリアクリレートなどの多価アルコールの不飽和カルボン酸エステル;ジビニルベンゼンが挙げられる。上記例示の共重合可能なビニル単量体は、単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
重合開始剤として、本実施形態では、例えばラジカル開始剤を用いる。
ラジカル開始剤としては、例えば、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスジメチルバレロニトリル、アゾビスシクロヘキサンニトリル、1,1’−アゾビス(1−アセトキシ−1−フェニルエタン)、ジメチル2,2’−アゾビスイソブチレート、4,4’−アゾビス−4−シアノバレリン酸などのアゾ化合物;ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、アセチルパーオキサイド、カプリリルパーオキサイド、2,4−ジクロルベンゾイルパーオキサイド、イソブチルパーオキサイド、アセチルシクロヘキシルスルホニルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシネオヘプタノエート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ジ(t−ヘキシルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジイソブチルパーオキシジカーボネート、ジ−sec−ブチルパーオキシジカーボネート、ジ−n−ブチルパーオキシジカーボネート、ビス(2−エチルヘキシル)パーオキシジカーボネート、ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、t−アミルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−エチルヘキサノエート、1,1,2−トリメチルプロピルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−アミルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルカーボネート、t−ブチルパーオキシアリルカーボネート、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、1,1,2−トリメチルプロピルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシイソノナエート、1,1,2−トリメチルプロピルパーオキシ−イソノナエート、t−ブチルパーオキシベンゾエートなどの有機過酸化物が挙げられる。
これらの重合開始剤は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
重合開始剤は、生成する重合体(ポリマー)や使用する原料モノマーの種類に応じて選定される。例えば、本発明を特に限定するものではないが、重合開始剤(ラジカル開始剤)は、重合温度での重合開始剤の半減期をτ(秒)とし、反応器での平均滞留時間をθ(秒)として、τ/θ(−)が、例えば0.1以下であり、好ましくは0.02以下であり、より好ましくは0.01以下であるものを使用できる。τ/θの値がかかる数値以下であれば、重合開始剤が反応器内で十分に分解(ひいてはラジカル発生)し、重合反応を効果的に開始させることができる。また、重合開始剤が第1の反応器内10内で十分に分解されるので、接続ライン15内で重合開始剤が分解して重合を開始することを効果的に低減でき、この結果、中間組成物(すなわち反応液)が接続ライン15を通る間にその粘度が上昇したり、中間組成物によって接続ライン15が閉塞されたりすることを効果的に回避することができる。
重合開始剤(ラジカル開始剤)の供給量は、特に限定されるものではないが、通常、原料モノマー(最終的に反応器10に供給される原料モノマー)に対して0.001〜1重量%である。重合開始剤タンク3およびポンプ7に加えて、重合開始剤タンク17およびポンプ19が存在する場合には、重合開始剤を、第1の反応器10と第2の反応器20とに分けて供給することができる。重合開始剤タンク17から原料モノマーと重合開始剤との混合物をポンプ19により第2の反応器20に供給する場合、反応器10および反応器20に供給される重合開始剤の合計供給量が、最終的に反応器10に供給される原料モノマーと反応器20に新たに供給される原料モノマーとの合計量に対して上記範囲となるようにすればよい。
上記原料モノマーおよび重合開始剤に加えて任意の適切な他の成分、例えば連鎖移動剤や、離型剤、ブタジエンおよびスチレンブタジエンゴム(SBR)などのようなゴム状重合体、熱安定剤、紫外線吸収剤を用いてよい。連鎖移動剤は、生成する重合体の分子量を調整するために用いられる。離型剤は、重合体組成物から得られる樹脂組成物の成形性を向上させるために用いられる。熱安定剤は、生成する重合体の熱分解を抑制するために用いられる。紫外線吸収剤は、生成する重合体の紫外線による劣化を抑制するために用いられる。
連鎖移動剤としては、単官能および多官能のいずれの連鎖移動剤であってもよい。具体的には、例えば、n−プロピルメルカプタン、イソプロピルメルカプタン、n−ブチルメルカプタン、t−ブチルメルカプタン、n−ヘキシルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、2−エチルヘキシルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタンなどのアルキルメルカプタン;フェニルメルカプタン、チオクレゾールなどの芳香族メルカプタン;エチレンチオグリコールなどの炭素数18以下のメルカプタン類;エチレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、ソルビトールなどの多価アルコール類;水酸基をチオグリコール酸または3−メルカプトプロピオン酸でエステル化したもの、1,4−ジヒドロナフタレン、1,4,5,8−テトラヒドロナフタレン、β−テルピネン、テルピノーレン、1,4−シクロヘキサジエン、硫化水素などが挙げられる。これらは、単独で使用してもよく、2種以上を組合わせて使用してもよい。
連鎖移動剤の供給量は、使用する連鎖移動剤の種類などによって相違することから、特に限定されるものではないが、例えば、メルカプタン類を使用する場合には、原料モノマー(最終的に反応器10に供給される原料モノマー)に対して0.01〜3重量%であることが好ましく、0.05〜1重量%であることがより好ましい。
離型剤としては、特に制限されないが、例えば、高級脂肪酸エステル、高級脂肪族アルコール、高級脂肪酸、高級脂肪酸アミド、高級脂肪酸金属塩等が挙げられる。なお、離型剤は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
高級脂肪酸エステルとしては、具体的には、例えば、ラウリン酸メチル、ラウリン酸エチル、ラウリン酸プロピル、ラウリン酸ブチル、ラウリン酸オクチル、パルミチン酸メチル、パルミチン酸エチル、パルミチン酸プロピル、パルミチン酸ブチル、パルミチン酸オクチル、ステアリン酸メチル、ステアリン酸エチル、ステアリン酸プロピル、ステアリン酸ブチル、ステアリン酸オクチル、ステアリン酸ステアリル、ミリスチン酸ミリスチル、ベヘン酸メチル、ベヘン酸エチル、ベヘン酸プロピル、ベヘン酸ブチル、ベヘン酸オクチルなどの飽和脂肪酸アルキルエステル;オレイン酸メチル、オレイン酸エチル、オレイン酸プロピル、オレイン酸ブチル、オレイン酸オクチル、リノール酸メチル、リノール酸エチル、リノール酸プロピル、リノール酸ブチル、リノール酸オクチルなどの不飽和脂肪酸アルキルエステル;ラウリン酸モノグリセリド、ラウリン酸ジグリセリド、ラウリン酸トリグリセリド、パルミチン酸モノグリセリド、パルミチン酸ジグリセリド、パルミチン酸トリグリセリド、ステアリン酸モノグリセリド、ステアリン酸ジグリセリド、ステアリン酸トリグリセリド、ベヘン酸モノグリセリド、ベヘン酸ジグリセリド、ベヘン酸トリグリセリドなどの飽和脂肪酸グリセリド;オレイン酸モノグリセリド、オレイン酸ジグリセリド、オレイン酸トリグリセリド、リノール酸モノグリセリド、リノール酸ジグリセリド、リノール酸トリグリセリドなどの不飽和脂肪酸グリセリドが挙げられる。これらのなかでも、ステアリン酸メチル、ステアリン酸エチル、ステアリン酸ブチル、ステアリン酸オクチル、ステアリン酸モノグリセリド、ステアリン酸ジグリセリド、ステアリン酸トリグリセリドなどが好ましい。
高級脂肪族アルコールとしては、具体的には、例えば、ラウリルアルコール、パルミチルアルコール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコールなどの飽和脂肪族アルコール;オレイルアルコール、リノリルアルコールなどの不飽和脂肪族アルコールが挙げられる。これらのなかでも、ステアリルアルコールが好ましい。
高級脂肪酸としては、具体的には、例えば、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、12−ヒドロキシオクタデカン酸などの飽和脂肪酸;パルミトレイン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、セトレイン酸、エルカ酸、リシノール酸などの不飽和脂肪酸が挙げられる。
高級脂肪酸アミドとしては、具体的には、例えば、ラウリン酸アミド、パルミチン酸アミド、ステアリン酸アミド、ベヘン酸アミドなどの飽和脂肪酸アミド;オレイン酸アミド、リノール酸アミド、エルカ酸アミドなどの不飽和脂肪酸アミド;エチレンビスラウリル酸アミド、エチレンビスパルミチン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、N−オレイルステアロアミドなどのアミド類が挙げられる。これらのなかでも、ステアリン酸アミドやエチレンビスステアリン酸アミドが好ましい。
高級脂肪酸金属塩としては、例えば、上述した高級脂肪酸のナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、バリウム塩などが挙げられる。
離型剤の使用量は、得られる重合体組成物に含まれる重合体(ポリマー)100重量部に対して、0.01〜1.0重量部となるように調整することが好ましく、0.01〜0.50重量部となるように調整することがより好ましい。
熱安定剤としては、特に制限されないが、例えば、リン系熱安定剤や有機ジスルフィド化合物などが挙げられる。これらのなかでも、有機ジスルフィド化合物が好ましい。なお、熱安定剤は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
リン系熱安定剤としては、例えば、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイト、2−[[2,4,8,10−テトラキス(1,1−ジメチルエチル)ジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサフォスフェピン−6−イル]オキシ]−N,N−ビス[2−[[2,4,8,10−テトラキス(1,1−ジメチルエチル)ジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサフォスフェピン−6−イル]オキシ]−エチル]エタナミン、ジフェニルトリデシルフォスファイト、トリフェニルフォスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイトなどが挙げられる。これらのなかでも、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)オクチルホスファイトが好ましい。
有機ジスルフィド化合物としては、例えば、ジメチルジスルフィド、ジエチルジスルフィド、ジ−n−プロピルジスルフィド、ジ−n−ブチルジスルフィド、ジ−sec−ブチルジスルフィド、ジ−tert−ブチルジスルフィド、ジ−tert−アミルジスルフィド、ジシクロヘキシルジスルフィド、ジ−tert−オクチルジスルフィド、ジ−n−ドデシルジスルフィド、ジ−tert−ドデシルジスルフィドなどが挙げられる。これらのなかでも、ジ-tert−アルキルジスルフィドが好ましく、さらに好ましくはジ−tert−ドデシルジスルフィドである。
熱安定剤の使用量は、得られる重合体組成物に含まれる重合体(ポリマー)に対して、1〜2000重量ppmであることが好ましい。本発明の重合体組成物から成形体を得るために重合体組成物(より詳細には、脱揮後の樹脂組成物)を成形する際、成形効率を高める目的で成形温度を高めに設定することがあり、そのような場合に熱安定剤を配合するとより効果的である。
紫外線吸収剤の種類としては、例えば、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、シアノアクリレート系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、マロン酸エステル系紫外線吸収剤、オキサルアニリド系紫外線吸収剤等が挙げられる。紫外線吸収剤は、単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらのなかでも、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、マロン酸エステル系紫外線吸収剤、オキサルアニリド系紫外線吸収剤が好ましい。
ベンゾフェノン系紫外線吸収剤としては、例えば、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン−5−スルホン酸、2−ヒドロキシ−4−オクチロキシベンゾフェノン、4−ドデシロキシ−2−ヒドロキシベンゾフェノン、4−ベンジロキシ−2−ヒドロキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン等が挙げられる。
シアノアクリレート系紫外線吸収剤としては、例えば、2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリル酸エチル、2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリル酸2−エチルヘキシル等が挙げられる。
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては、例えば、2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、5−クロロ−2−(3,5−ジ−t−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)−5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−t−ペンチル−2−ヒドロキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−t−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−メチル−6−(3,4,5,6−テトラヒドロフタルイミジルメチル)フェノール、2−(2−ヒドロキシ−5−t−オクチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール等が挙げられる。
マロン酸エステル系紫外線吸収剤としては、通常、2−(1−アリールアルキリデン)マロン酸エステル類が用いられ、例えば、2−(パラメトキシベンジリデン)マロン酸ジメチル等が挙げられる。
オキサルアニリド系紫外線吸収剤としては、通常、2−アルコキシ−2’−アルキルオキサルアニリド類が用いられ、例えば、2−エトキシ−2’−エチルオキサルアニリド等が挙げられる。
紫外線吸収剤の使用量は、得られる重合体組成物に含まれる重合体(ポリマー)に対して、5〜1000重量ppmであることが好ましい。
原料モノマータンク1にて、上述のような原料モノマー(1種または2種以上の混合物)を(場合により連鎖移動剤などの他の成分と共に)適宜調合する。また、重合開始剤タンク3にて、上述のような重合開始剤を、必要に応じて原料モノマーと(場合により連鎖移動剤などの他の成分と共に)適宜調合する。重合開始剤タンク3には、重合開始剤を単独で貯留してもよく、原料モノマーと重合開始剤との混合物(場合により連鎖移動剤などの他の成分を更に含み得る)の形態で貯留してもよい。重合開始剤タンク17を用いる場合、重合開始剤タンク17にて、上述のような重合開始剤を、必要に応じて原料モノマーと(場合により連鎖移動剤などの他の成分と共に)適宜調合する。重合開始剤タンク17には、重合開始剤を単独で貯留してもよく、原料モノマーと重合開始剤との混合物(場合により連鎖移動剤などの他の成分を更に含み得る)の形態で貯留してもよい。但し、重合開始剤タンク17にポンプ19を介して供給口21cが接続される場合には、重合開始剤を単独で貯留すると、重合開始剤が単独で反応器20に供給されるため反応器20において局所的に重合反応が進行するおそれがある。これに対し、原料モノマーと重合開始剤との混合物の形態で貯留すると、重合開始剤が原料モノマーの一部と予め混合されているので、かかるおそれが解消され得る。
・第1の重合工程
原料モノマーおよび重合開始剤の供給源である原料モノマータンク1および重合開始剤タンク3から、原料モノマーおよび重合開始剤を第1の反応器10に供給口11aより連続的に供給する。具体的には、原料モノマータンク1から原料モノマーをポンプ5により、および、重合開始剤タンク3から重合開始剤(好ましくは原料モノマーと重合開始剤との混合物、本明細書において単に重合開始剤とも言う)をポンプ7により、原料供給ライン9を通じて一緒にして、第1の反応器10に供給口11aより連続的に供給する。また、重合開始剤タンク3から重合開始剤をポンプ7により、図1に点線で示すように、第1の反応器10に供給口11cより供給してもよい。
第1の反応器10への重合開始剤の供給において、原料モノマーと重合開始剤との混合物を重合開始剤タンク3に調合して供給する場合、原料モノマータンク1からの原料モノマーの供給流量A(kg/h)と、重合開始剤タンク3からの原料モノマーと重合開始剤との混合物(重合開始剤の含有割合が0.002〜10重量%であるもの。)の供給流量B(kg/h)との比A:Bは、80:20〜98:2の範囲となるように調整することが好ましい。
第1の反応器10へと供給される原料モノマーおよび重合開始剤の温度は、特に限定されるものではないが、反応器内の熱バランスを崩して、重合温度を変動させる要因となるものであることから、適宜、加熱/冷却器(図示せず)によって反応器10に供給される前に温度調節することが好ましい。
以上のようにして第1の反応器10に供給された原料モノマーおよび重合開始剤は、連続重合に、本実施形態においては連続塊状重合(換言すれば、溶媒なしでの重合)に付される。この第1の重合工程は、重合反応を途中まで進行させるものであればよく、第1の反応器10の抜き出し口11bより中間組成物(すなわち反応液)が連続的に抜き出される。
第1の重合工程において、連続重合は、反応器が反応混合物で満たされて実質的に気相が存在しない状態(以下、「満液状態」と言う)で実施され得る。このことは、連続塊状重合に特に適する。この満液状態により、反応器の内壁面にゲルが付着して成長するといった問題や、このゲルが反応混合物に混入することによって、最終的に得られる重合体組成物の品質が低下するといった問題が発生することを、未然に防止できる。更に、この満液状態により、反応器の容積全てを反応空間に有効利用でき、よって、高い生産効率を得ることができる。
満液状態は、第1の反応器10の抜き出し口11bを本実施形態のように反応器頂部に位置させることにより、第1の反応器10への供給および抜き出しを連続的に行うだけで簡便に実現できる。反応器頂部に抜き出し口が位置することは、メタクリル酸エステル系モノマーを連続重合するのに特に適する。
また第1の重合工程において、連続重合は、断熱状態(実質的に反応器の外部からの熱の出入りがない状態)で実施され得る。このことは、連続塊状重合に特に適する。この断熱状態により、反応器の内壁面にゲルが付着して成長するといった問題や、このゲルが反応混合物に混入することによって、最終的に得られる重合体組成物の品質が低下するといった問題が発生することを、未然に防止できる。更に、この断熱状態により、重合反応を安定化させることができ、暴走反応を抑制するための自己制御性をもたらすことができる。
断熱状態は、第1の反応器10の内部の温度と、その外壁面との温度をほぼ等しくすることによって実現できる。具体的には、上述の制御手段(図示せず)を用いて、ジャケット(温度調節手段)13に対して設定される第1の反応器10の外壁面の温度と、温度センサ(温度検知手段)Tによって検知される第1の反応器10内の温度とが一致するように、原料モノマーおよび重合開始剤の第1の反応器10への供給量をポンプ5および7の動作を調整することによって実現できる。なお、反応器の外壁面の温度を、反応器内の温度に比べて高く設定しすぎると、反応器内に余分な熱が加わることから、好ましくない。反応器内と反応器外壁面との温度差は小さいほど好ましく、具体的には±5℃程度の幅で調整することが好ましい。
第1の反応器10内で発生する重合熱や撹拌熱は、通常、第1の反応器10から中間組成物を抜き出す際に持ち去られる。中間組成物が持ち去る熱量は、中間組成物の流量、比熱、重合反応の温度によって定まる。
第1の重合工程における連続重合の温度は、第1の反応器10内の温度(温度センサTにて検知される)として理解される。第1の重合工程は、例えば120〜150℃の範囲以内の温度にて、好ましくは130〜150℃の範囲以内の温度にて実施される。但し、反応器内の温度は、定常状態に至るまでは諸条件に応じて変動し得ることに留意されたい。
第1の重合工程における連続重合の圧力は、第1の反応器10内の圧力として理解される。この圧力は、反応器内で原料モノマーの気体が発生しないように、反応器内の温度における原料モノマーの蒸気圧以上の圧力とされ、通常、ゲージ圧で1.0〜2.0MPa程度である。
第1の重合工程における連続重合に付される時間は、第1の反応器10の平均滞留時間として理解される。第1の反応器10における平均滞留時間は、中間組成物における重合体の生産効率などに応じて設定され得るものであって、特に限定されないが、例えば15分〜6時間である。第1の反応器10における平均滞留時間は、ポンプ5および7を用いて第1の反応器10への原料モノマー等の供給量(供給流量)を変更することにより調節できるが、第1の反応器10の容積に大きく依存するので、後述するように、第1の反応器10の容積および第2の反応器20の容積をどのように設計するかが重要である。
以上のようにして中間組成物が第1の反応器10の抜き出し口11bから連続的に抜き出される。得られた中間組成物は、生成した重合体および未反応の原料モノマーを含んで成り、更に、未反応の重合開始剤、重合開始剤分解物などを含み得る。
中間組成物における重合率は、本実施形態を限定するものではないが、例えば5〜80重量%である。なお、中間組成物における重合率は、概ね、中間組成物中の重合体(ポリマー)含有率に相当する。
・中間組成物(反応液)の冷却工程
上述のようにして得られた中間組成物は、第1の反応器10の抜き出し口11bから抜き出された後、接続ライン15を通じて第2の反応器20に供給口21aより連続的に供給され得る。この間、中間組成物は、本発明に従って、接続ライン15の少なくとも一部に備えられた冷却手段であるジャケット16(図1)または冷却器40(図2)によって連続的に冷却され得る。
このとき、接続ライン15に流入する中間組成物の温度は、上記の制御手段によって、例えば110℃以上、好ましくは110〜180℃、より好ましくは110〜140℃の温度に調節され、中間組成物と接触する接続ライン15の内壁面の温度は、ジャケット16または冷却器40の温度を上記の制御手段によって制御することによって、105℃以下、好ましくは105〜10℃、より好ましくは90〜60℃の温度に調節され得る。
そして、本実施形態では、接続ライン15に流入する中間組成物における溶存酸素濃度を、0.01〜10ppm、好ましくは1〜5ppm、より好ましくは1〜3ppmに調節する。
中間組成物における溶存酸素濃度は、原料タンクにて窒素ガスを原料モノマーに吹き込んでバブリングを行った後に窒素雰囲気下で保管することにより調整することができる。なお、前記処理工程がポンプより下流の場合には満液状態であるため、プロセス中では溶存酸素濃度は変動しない。
従って、本実施形態で使用する重合装置において、原料タンク1および開始剤タンク3で原料中の溶存酸素濃度を測定またはモニタリングすることが好ましい。また、溶存酸素計を反応器10の任意の箇所に設けて接続ライン15に流入する中間組成物の溶存酸素濃度を測定またはモニタリングしてもよい。
また、本発明に必須ではないが、接続ライン15に混合手段を設けることが好ましい。混合手段を設けることにより、接続ライン15内を流れる中間組成物が均一に混合され、温度分布が均一となり易く、また、中間組成物による接続ライン15の閉塞を抑制することができる。接続ライン15に混合手段を設ける場合には、接続ライン15にスタティックミキサーや動的混合機を設けてもよい。
なお、上述の本発明に従う冷却工程は、本実施形態で使用する重合装置の任意の配管(ライン)、例えば、原料供給ライン9、後述の第2の重合工程で使用する反応器20に接続それた抜き出しライン25などの冷却に適用してもよい。
・第2の重合工程
第2の重合工程は、第1の重合工程の後に直列的に実施されるものである。
上述のように本発明に従って接続ライン15を通じて冷却された中間組成物は、第2の反応器20に供給口21aより供給される。そして、中間組成物は、第2の反応器20にて更に連続重合に、本実施形態においては連続塊状重合に付される。この第2の重合工程は、重合反応を所望の重合率まで進行させるものであり、第2の反応器20の抜き出し口21bより重合体組成物(または重合シロップ)が連続的に抜き出される。
以下、第2の重合工程について第1の重合工程と異なる点を中心に説明し、特に説明のない限り第1の重合工程と同様の説明が当て嵌まるものとする。
本実施形態に必須ではないが、重合開始剤タンク17およびポンプ19を用いることが好ましい。重合開始剤タンク17およびポンプ19を用いる場合、重合開始剤タンク17から新たな重合開始剤(好ましくは原料モノマーと重合開始剤との混合物)をポンプ19により、第2の反応器20に、接続ライン15を通じて供給口21aより、あるいは別の供給口21cより供給し、これにより、中間組成物に新たな重合開始剤が添加される。重合開始剤タンク17から第2の反応器20へと供給される重合開始剤の温度は、特に限定されるものではないが、反応器内の熱バランスを崩して、重合温度を変動させる要因となるものであることから、適宜、加熱/冷却器(図示せず)によって反応器20に供給される前に温度調節することが好ましい。
また、接続ライン15に冷却手段として備えられるジャケット16または冷却器40を用いて、本発明に従って、第1の反応器から抜き出された中間組成物を第2の反応器に供給する前に冷却することによって、冷却が施された接続ライン15の内壁面付近に形成され得る滞留部でのラジカルの発生を抑制し、接続ライン15内での重合物による閉塞を防止することができる。また、接続ライン15に冷却手段として備えられるジャケット16または冷却器40を用いて、中間組成物の第2の反応器20への供給温度を調節することにより、該供給温度を一定に保つことで、第2の重合工程における連続重合をより安定的に行うことができる。
第2の反応器20への重合開始剤の供給において、原料モノマーと重合開始剤との混合物を重合開始剤タンク3および17に調合して供給する場合、原料モノマータンク1からの原料モノマーの供給流量A(kg/h)と、重合開始剤タンク3からの原料モノマーと重合開始剤との混合物(重合開始剤の含有割合が0.002〜10重量%であるもの。)の供給流量B(kg/h)と、重合開始剤タンク17からの原料モノマーと重合開始剤との混合物(重合開始剤の含有割合が0.002〜10重量%であるもの。)の供給流量B(kg/h)とについて、比A:(B+B)が、80:20〜98:2の範囲となり、かつ比B:Bが、10:90〜90:10の範囲となるように調整することが好ましい。
第2の重合工程においても、連続重合は、満液状態で実施され得る。このことは、連続塊状重合に特に適する。この満液状態により、反応器の内壁面にゲルが付着して成長するといった問題や、このゲルが反応混合物に混入することによって、最終的に得られる重合体組成物の品質が低下するといった問題が発生することを、未然に防止できる。更に、この満液状態により、反応器の容積全てを反応空間に有効利用でき、よって、高い生産効率を得ることができる。
満液状態は、第2の反応器20の抜き出し口21bを本実施形態のように反応器頂部に位置させることにより、第2の反応器20への供給および抜き出しを連続的に行うだけで簡便に実現できる。反応器頂部に抜き出し口が位置することは、メタクリル酸エステル系モノマーを連続重合するのに特に適する。
また第2の重合工程においても、連続重合は、断熱状態で実施され得る。このことは、連続塊状重合に特に適する。この断熱状態により、反応器の内壁面にゲルが付着して成長するといった問題や、このゲルが反応混合物に混入することによって、最終的に得られる重合体組成物の品質が低下するといった問題が発生することを、未然に防止できる。更に、この断熱状態により、重合反応を安定化させることができ、暴走反応を抑制するための自己制御性をもたらすことができる。
断熱状態は、第2の反応器20の内部の温度と、その外壁面との温度をほぼ等しくすることによって実現できる。具体的には、上述の制御手段(図示せず)を用いて、ジャケット(温度調節手段)23に対して設定される第2の反応器20の外壁面の温度と、温度センサ(温度検知手段)Tによって検知される第2の反応器20内の温度とが一致するように、原料モノマーおよび重合開始剤の第2の反応器20への供給量をポンプ5および7ならびに存在する場合にはポンプ19の動作を調整することによって実現できる。なお、反応器の外壁面の温度を、反応器内の温度に比べて高く設定しすぎると、反応器内に余分な熱が加わることから、好ましくない。反応器内と反応器外壁面との温度差は小さいほど好ましく、具体的には±5℃程度の幅で調整することが好ましい。
第2の反応器20内で発生する重合熱や撹拌熱は、通常、第2の反応器20から重合体組成物を抜き出す際に持ち去られる。重合体組成物が持ち去る熱量は、重合体組成物の流量、比熱、重合反応の温度によって定まる。
第2の重合工程における連続重合の温度は、第2の反応器20内の温度として理解される。第2の重合工程は、例えば120〜150℃の範囲以内の温度にて、好ましくは130〜150℃の範囲以内の温度にて実施される。第2の重合工程の温度は、第1の重合工程における連続重合との温度差を10℃以内とすることが好ましい。第2の重合工程において、重合反応により発生する重合熱によって温度が上昇し得るが、中間冷却を行うことによって、第2の重合工程における温度と、第1の重合工程における温度との差を小さくすることができ、この結果、第1の反応器で低温で重合させた後に第2の反応器で高温で重合させた場合に比較して、熱安定性および耐熱性が向上する。
第2の重合工程における連続重合の圧力は、第2の反応器20内の圧力として理解される。この圧力は、通常、ゲージ圧で1.0〜2.0MPa程度であり、第1の重合工程における圧力と同等であってよい。
第2の重合工程における連続重合に付される時間は、第2の反応器20の平均滞留時間として理解される。第2の反応器20における平均滞留時間は、重合体組成物における重合体の生産効率などに応じて設定され得るものであって、特に限定されないが、例えば15分〜6時間である。第1の反応器10における平均滞留時間に対する第2の反応器20における平均滞留時間の比は、9/1〜1/9であることが好ましく、より好ましくは8/2〜2/8である。第2の重合工程における平均滞留時間は、第1の重合工程における平均滞留時間と同等であってよいが、それと異なることが好ましい。第2の反応器20における平均滞留時間は、ポンプ5および7ならびに存在する場合にはポンプ19を用いて第2の反応器20への原料モノマー等の供給量(供給流量)を変更することにより調節できるが、第2の反応器20の容積に大きく依存するので、後述するように、第1の反応器10の容積および第2の反応器20の容積をどのように設計するかが重要である。
以上のようにして重合体組成物が第2の反応器20の抜き出し口21bから連続的に抜き出される。得られた重合体組成物は、生成した重合体を含んで成り、更に、未反応の原料モノマー、未反応の重合開始剤および重合開始剤分解物などを含み得る。
重合体組成物における重合率は、本実施形態を限定するものではないが、例えば30〜90重量%である。なお、重合体組成物における重合率は、概ね、重合体組成物中の重合体(ポリマー)含有率に相当する。この重合率が高いほど、重合体の生産性が高くなるものの、中間組成物〜重合体組成物の粘度が高くなって、大きな撹拌動力が必要となる。また、重合率が低いほど、重合体の生産性が低くなり、未反応の原料モノマーを回収するための負担が大きくなってしまう。よって、適切な重合率を目標または目安として設定することが好ましい。
本実施形態によれば、好ましくは、所望の重合率を達成しつつ、第2の反応器20における重合温度を低く抑えることができるように、第2の反応器の供給口近傍における接続ライン内の温度が、第1の反応器の温度検知手段によって検知される第1の反応器内の温度よりも低い温度となるように、接続ラインの冷却手段を制御しており、これにより、熱安定性および耐熱性に優れた重合体組成物を生産性良く得ることができる。
一般的に、重合温度が高いほど、得られる重合体(ポリマー)のシンジオタクティシティーが低くなり、最終的に得られる樹脂組成物の耐熱性が低くなる傾向にある。よって、耐熱性の高い樹脂組成物を得るには、低温で重合させるほうが好ましい。
加えて、重合開始剤の量は、重合温度、所望の重合率および平均滞留時間などの他の条件に応じて設定され得、重合温度が低いほど、また、平均滞留時間が短いほど、所望の重合率を達成するには重合開始剤の量が多くなるが、重合開始剤の量が多くなるほど、不安定な不飽和結合からなる重合停止端部(末端ポリマー)が重合体組成物中に多く残存するので、最終的に得られる樹脂組成物の熱安定性が低くなる傾向にある。また、重合温度が高すぎても、重合開始剤に起因する不飽和結合からなる重合停止端部(末端ポリマー)が重合組成物中に多く生成することになり、最終的に得られる樹脂組成物の熱安定性が低くなる傾向にある。
例えば、本実施形態で使用する重合装置では、第1の重合工程にて所定の範囲の温度(例えば120〜150℃)で連続重合させ、その後、第2の重合工程にて第1の重合工程と同等の範囲の温度(例えば120〜150℃)で更に連続重合させることができる。具体的には、第1の反応器と第2の反応器との間の接続ラインで本発明に従う冷却工程を実施し、かつ第2の反応器に新たな重合開始剤を添加することによって、第1の重合工程の連続重合の温度と第2の重合工程の連続重合の温度との差を小さくした上で、断熱重合を行うことができる。この結果、連続重合を1段で低温で実施した場合に比べて小さいスペースで効率的に実施でき、連続重合を1段で高温で実施した場合に比べて耐熱性が高く、断熱重合によるゲル等の不純物の少ない樹脂組成物を得るのに適した重合体組成物を得ることができる。
また、例えば、本実施形態で使用する重合装置では、第1の重合工程にて連続重合に付される時間と、第2の重合工程にて連続重合に付される時間とを異ならせることができる。具体的には、第1の反応器の容積と第2の反応器の容積とが異なるように設計することにより、第1の反応器の平均滞留時間と、第2の反応器の平均滞留時間とを異ならせることができる。また、第2の反応器に新たな重合開始剤を原料モノマーと共に添加することによっても、第1の反応器の平均滞留時間と、第2の反応器の平均滞留時間とを異ならせることができる。平均滞留時間を長くした場合、反応器に供給する重合開始剤の量をより少なくできるので、第1の反応器および第2の反応器における滞留時間および重合率を制御することで、樹脂組成物全体の熱安定性を調整し、熱安定性の高い樹脂組成物を得るのに適した重合体組成物を得ることができる。
第1の重合工程および第2の重合工程とで重合反応条件をそれぞれどのように設定するかは、生成する重合体、使用する原料モノマーおよび重合開始剤、所望される耐熱性、熱安定性および生産効率などに応じて異なり得る。
・脱揮工程
第2の反応器20の抜き出し口21bから抜き出された反応液(すなわち重合体組成物(重合シロップ))は、上述のように、生成した重合体のほか、未反応の原料モノマーおよび重合開始剤などを含み得る。抜き出し口21bから抜き出された重合体組成物が、未反応の原料モノマーとして、メタクリル酸エステル系モノマーを含む場合、上述の中間組成物の冷却と同様に、本発明に従って、抜き出しライン25を冷却してもよく、かかる重合体組成物は、本実施形態を限定するものではないが、脱揮等に付して原料モノマーを分離回収することが好ましい。
具体的には、重合体組成物を抜き出しライン25を通じて、予熱器31に移送する。重合体組成物は、予熱器31にて、未反応の原料モノマーを主とする揮発性成分の揮発に必要な熱量の一部または全部が付与される。重合体組成物は、その後、圧力調整弁(図示せず)を介して脱揮押出機33に移送され、脱揮押出機にて揮発性成分が少なくとも部分的に除去され、残部の押出物はペレット状に成形されて、取り出しライン35から取り出される。これにより、メタクリル酸エステル系ポリマーを含む樹脂組成物がペレットの形態で製造される。
上記重合体組成物の移送方法としては、特公平4−48802号公報に記載の方法が好適である。また、脱揮押出機を用いた方法としては、例えば特開平3−49925号公報、特公昭51−29914号公報、特公昭52−17555号公報、特公平1−53682号公報、特開昭62−89710号公報などに記載の方法が好適である。
また、上記の脱揮押出機にて重合体組成物を脱揮押出する際に、またはその後に、必要に応じて、高級アルコール類、高級脂肪酸エステル類等の滑剤、紫外線吸収剤、熱安定剤、着色剤、帯電防止剤等を、重合体組成物または押出物に添加して樹脂組成物に含めることができる。
脱揮押出機33にて除去された揮発性成分は、未反応の原料モノマーを主成分とし、原料モノマーに元々含まれる不純物、必要に応じて用いられる添加剤、重合過程で生成する揮発性副生成物、ダイマーおよびトリマーなどのオリゴマー、重合開始剤分解物などの不純物などを含んで成る。一般に、不純物の量が増えると、得られる樹脂組成物が着色するので好ましくない。そこで、脱揮押出機33にて除去された揮発性成分(未反応の原料モノマーを主成分とし、上記のような不純物などを含んで成る)をモノマー回収塔(図示せず)に通し、モノマー回収塔にて蒸留や吸着等の手段によって処理し、上記揮発性成分から不純物を除去してよく、これによって、未反応の原料モノマーを高純度で回収することができ、重合用の原料モノマーとして好適に再利用できる。例えば、モノマー回収塔では、連続蒸留によりモノマー回収塔の塔頂からの留出液として未反応の原料モノマーを高純度で回収し、回収タンク37に貯留してから、原料モノマータンク1に移送してリサイクルしてもよいし、回収タンク37に貯留することなく、原料モノマータンク1に移送してリサイクルしてもよい。他方、モノマー回収塔で除去された不純物は、廃棄物として廃棄され得る。
なお、回収した原料モノマーは、回収タンク37や原料モノマータンク1にて重合反応が進行しないように、回収タンク37または原料モノマータンク1中にて重合禁止剤を、例えば原料モノマーに対して2〜8重量ppmの割合で存在させることが好ましく、加えて、回収タンク37や原料モノマータンク1の気相部の酸素濃度を2〜8体積%に設定するとより好ましい。また、回収タンク37にて長期間に亘って保存したい場合には、例えば0〜5℃の低温にて貯留することが望ましい。
また、原料モノマータンク1および/または回収タンク37に接続する配管を本発明に従って冷却することも可能である。
以上、本発明の冷却方法を適用した実施形態を通じて、本発明で使用する連続重合装置および重合体組成物(すなわちメタクリル酸エステル系ポリマー)の製造方法について詳述した。
上記の実施形態によると、本発明の冷却方法は、反応器10と反応器20とを接続する配管(すなわち接続ライン15)に適用されているが、本発明はかかる配管の冷却に限定されるものではない。本発明は、接続ライン15だけでなく、原料モノマーであるメタクリル酸エステル系モノマーが流通する配管、例えば、原料供給ライン9、抜き出しライン25、タンク1、3、17、37に接続される配管、ポンプ5、7、19に接続される配管などに適用することが可能である。
本発明の冷却方法は、原料モノマーであるメタクリル酸エステル系モノマーが流通する配管を冷却する際に、かかる原料モノマーを含む液体(反応液)の温度を例えば110℃以上とし、配管の内壁面の温度を105℃以下とし、さらに反応液の溶存酸素濃度を0.01〜10ppmとすることによって、かかるメタクリル酸エステル系モノマーを含む反応液をそれよりも温度の低い内壁面と接触させることによるものであり、温度の低い内壁面付近で形成され得る反応液の滞留部でのラジカルの発生を抑制し、その結果、メタクリル酸エステル系モノマーのゲル効果による滞留部でのラジカル重合反応による配管の閉塞を防止する。
なお、本発明で使用する重合装置は上記の実施形態に限定されず、種々の改変が可能である。例えば、3つ以上の反応器を用いて、重合を3段以上で直列的に実施してもよい。また、本発明を適用した重合体組成物の製造方法は、好ましくは上記の連続重合装置を用いて連続的に実施されるが、バッチ式で実施してもよい。
本発明を適用した製造方法により得られる重合体組成物は、成形体の材料として好適に利用され得、これによって得られた成形体は、高い耐熱性および熱安定性を有するという利点がある。例えば、本発明を適用した製造方法により得られる重合体組成物(より詳細には、脱揮後の樹脂組成物)を、単独で、または任意の適切な他の成分と共に、射出成形、押出成形等の任意の成形方法で成形して、成形体を得ることができる。本発明を適用した製造方法により得られる重合体組成物は、射出成形により成形体を得る場合に好ましく利用され、シルバーストリークスの発生を抑制し、良好な成形性で成形体を得ることができる。特に、メタクリル酸エステル系ポリマーを含む樹脂組成物は、優れた透明性を有しているため、これを射出成形して得られる成形体は、透明性が高く、かつ、シルバーストリークスの発生が抑制され、良好な成形性を有するため、各種液晶ディスプレイのバックライトユニットの部材などに使用される導光板や、テールランプカバー、ヘッドランプカバー、バイザーおよびメーターパネル等の車両用部材として好ましく利用される。
射出成形は、少なくとも本発明を適用した製造方法により得られる重合体組成物を溶融状態で所定の厚みの型に充填(射出)し、次いで冷却後、成形された成形体を脱型することにより実施できる。具体的には、例えば、本発明を適用した製造方法により得られる重合体組成物(より詳細には、脱揮後の樹脂組成物)を単独で、または任意の適切な他の成分と共に、ホッパーから成形機に投入し、スクリューを回転させながら後退させて、成形機のシリンダー内に樹脂組成物を計量し、シリンダー内で該樹脂組成物を溶融させ、溶融した樹脂組成物を圧力をかけながら型(例えば金型)内に充填し、型が充分に冷めるまで一定時間保圧した後、型を開いて成形体を取り出すことにより、成形体を製造することができる。
よって、本発明の別の要旨によれば、本発明を適用した製造方法により得られる重合体組成物から得られる成形体もまた提供される。なお、本発明の成形体を重合体組成物から製造する際の諸条件(例えば射出成形の場合、成形材料の溶融温度、成形材料を型に射出する際の型温度、樹脂組成物を型に充填した後、保圧する際の圧力など)については、適宜設定すればよく、特に限定されない。
本発明の冷却方法の効果を確認するために以下の実験を行った。
[実験1]
背圧弁を備えたステンレス製の配管と、パージラインとを備えた原料容器(耐圧硝子工業株式会社製、ガラスオートクレーブ(品番:TEM−V1000N))にメタクリル酸メチル(和光純薬株式会社製、等級:和光特級、溶存酸素濃度:10ppm)(重合禁止剤としてハイドロキノンを5ppm含む)を注入した後、大気圧下、室温(約10℃)で窒素ガスによるパージングを行って、メタクリル酸メチル中の溶存酸素濃度を3.0ppmとした。溶存酸素濃度は溶存酸素濃度計(株式会社 堀場製作所製、品番:D−25)を用いて測定した。
上記原料容器に接続した配管はオイルバス(100±2℃)を通して、配管の内壁面の温度を100℃に調整し、オイルバスを通過した後のメタクリル酸メチルの配管出口温度を100℃とした。このときモノマーの気化を防ぐため、背圧弁により系内圧力が0.15MPaGになるように調整した。オイルバスを通過する配管の長さは2137mmであり、その内径は4mmであった。なお、この条件は、実際の連続塊状重合プロセスにおいて、110℃以上の反応物が流入する配管をその外側から冷却して反応物の温度および配管の内壁面温度を100℃に調整(すなわち冷却)する場合を想定したものである。
次に、配管に設置したポンプ(イワキ株式会社製、型番:EH−B10SH−100PY9)(原料容器とオイルバスとの間に設置した)を駆動して、上述のとおりに内壁面の温度を100℃に調整した配管内にメタクリル酸メチルを4.0ml/分の流速で通過させた。
メタクリル酸メチルを流してオイルバス出口温度が100℃で安定してから30分が経過した後、メタクリル酸メチルのサンプル(50ml)を採取した。なお、サンプルの採取はオイルバスの下流に配置した冷却バス(流水(20℃))に配管を通した後に行った。冷却バスを通過する配管の長さは152.37mmであり、その内径は4mmであった。
採取したサンプルのうち10mlをメタノール(90ml)に滴下し、その後、冷蔵庫で一晩保管した後、沈殿物(重合物)の有無を目視にて確認した。
その結果、沈殿物(重合物)は全く観察されなかった。また、フィルター(アドバンテック東洋株式会社製、品番:No.1)を用いてろ過を行ったが、重合物は全く得られなかった。
このことから、溶存酸素濃度3.0ppmのメタクリル酸メチルが内壁面温度100℃の配管内を約100℃で通過する際、配管内でラジカルは全く発生せず、配管内でメタクリル酸メチルのラジカル重合反応は全く進行しないことが明らかとなった。
実験1の結果を以下の表1にまとめて示す。
[実験2]
配管の内壁面の温度を105℃(オイルバスの温度:105±2℃)に調整したことを除いて、実験1と同様に実験を行った。
その結果、実験1と同様に重合物は全く得られなかった。
このことから、溶存酸素濃度3.0ppmのメタクリル酸メチルが内壁面温度105℃の配管内を約105℃で通過する際にも配管内ではラジカルが全く発生せず、配管内でメタクリル酸メチルのラジカル重合反応は全く進行しないことが明らかとなった。
実験2の結果を以下の表1にまとめて示す。
[実験3]
実験2と同様にしてさらに溶存酸素濃度を0.5ppmに調整して実験を行った。
その結果、この場合も実験2と同様に重合物は全く得られなかった。
このことから、溶存酸素濃度0.5ppmのメタクリル酸メチルが内壁面温度105℃の配管内を約105℃で通過する際にも配管内ではラジカルが全く発生せず、配管内でメタクリル酸メチルのラジカル重合反応は全く進行しないことが明らかとなった。
実験3の結果を以下の表1にまとめて示す。
[実験4]
配管の内壁面の温度を110℃(オイルバスの温度:110±2℃)に調整したことを除いて、実験1と同様に実験を行った。
その結果、サンプルの目視により沈殿物(重合物)の存在が確認され、析出した沈殿物をろ過して乾燥させたところ、0.08重量%の重合物が得られた(メタクリル酸メチルのサンプル(10ml)の重量を基準とする)。
このことから、溶存酸素濃度3.0ppmのメタクリル酸メチルが内壁面温度110℃の配管内を約110℃で通過する際には、配管内でラジカルが発生し、メタクリル酸メチルのラジカル重合反応が進行することが明らかとなった。
実験4の結果を以下の表1にまとめて示す。
[実験5]
配管の内壁面の温度を142℃(オイルバスの温度:142±2℃)に調整してオイルバスを通過した後のメタクリル酸メチルの配管出口温度を140℃に調整したことを除いて、実験1と同様に実験を行った。また、実験4では設定温度の上昇にともなって、背圧弁の設定圧力を0.30MPaGとした。
その結果、サンプルから沈殿物(重合物)が顕著に析出し、析出物をろ過して乾燥させたところ、1.32重量%の重合物が得られた(メタクリル酸メチルのサンプル(10ml)の重量を基準とする)。
このことから、溶存酸素濃度3.0ppmのメタクリル酸メチルが内壁面温度142℃の配管内を約142℃で通過する際には、配管内でラジカルが大量に発生し、メタクリル酸メチルのラジカル重合反応が顕著に進行することが明らかとなった。
実験5の結果を以下の表1にまとめて示す。
[実験6]
250ml/分で窒素ガスをバブリングさせてメタクリル酸メチル中の溶存酸素濃度を0.5ppmとし、さらに配管の内壁面の温度を142℃(オイルバスの温度:142±2℃)としてオイルバス通過後のメタクリル酸メチルの配管出口温度を140℃に調整し、実験1と同様に実験を行った。なお、実験6でも実験5と同様に、設定温度の上昇にともなって、背圧弁の設定圧力を0.30MPaGとした。
その結果、サンプルから沈殿物(重合物)が顕著に析出し、析出物をろ過して乾燥させたところ、0.72重量%の重合物が得られた(メタクリル酸メチルのサンプル(10ml)の重量を基準とする)。
このことから、溶存酸素濃度0.5ppmのメタクリル酸メチルが内壁面温度142℃の配管内を約142℃で通過する際、配管内ではラジカルが顕著に発生し、メタクリル酸メチルのラジカル重合反応が顕著に進行することが明らかとなった。
実験6の結果を以下の表1にまとめて示す。


表1
Figure 2014173009
実験1〜3の結果は、メタクリル酸メチル中の溶存酸素濃度を低減させた上で、メタクリル酸メチルが通過する配管の内壁面の温度を105℃以下とすることで配管内でのラジカルの発生が完全に抑制できたことを示す。
しかし、実験4〜6の結果は、メタクリル酸メチル中の溶存酸素濃度を低減しても、内壁面の温度が110℃以上であると、配管内でのラジカルの発生は完全に抑制できないことを示す。
これらの結果は、メタクリル酸メチルなどのメタクリル酸エステル系モノマーを含む反応液の温度が110℃以上であると溶存酸素濃度を低減させた場合であってもラジカルが発生して重合反応が進行する可能性があり、かかる反応液を内壁面の温度が105℃以下の配管内を通して冷却するとラジカルの発生が抑制できることを示す。特に、実験6では溶存酸素濃度を0.5ppmにした場合であっても内壁面の温度が110℃以上(142℃)であり、ラジカルの発生を抑制することはできなかった。このことは溶存酸素濃度が同じ0.5ppmであり内壁面温度が105℃である実験3の結果からも明らかである。
なお、実験5、6の結果からは、溶存酸素濃度を低減することによって、配管内でのラジカルの発生が顕著に低下することがわかる。
実験1〜6の結果を踏まえて、実際の連続塊状重合プロセスにおける配管内での現象を考察すると、配管内部の内壁面付近では反応液が冷却されて粘度が上昇して流速が低下し、ラジカルの発生により重合が開始して配管が閉塞する可能性はあるが、閉塞の原因が反応液中の溶存酸素濃度であることを見出したので反応液の溶存酸素濃度を低下させて0.1〜5ppmとして内壁面の温度を105℃以下とすることにより、このようなラジカルの発生は抑制することができる。また、配管の中央部分では反応物は十分に流れるのでメタクリル酸エステル系モノマーのゲル効果による閉塞の問題はない。
従って、本発明の冷却方法を実際の連続塊状重合プロセスに適用すると、配管内でのゲル効果による閉塞を十分に防止することができる。
本発明はメタクリル酸エステル系モノマーの連続塊状重合によるメタクリル酸エステル系ポリマーの製造に利用することが可能である。
1 原料モノマータンク(原料モノマーの供給源)
3 重合開始剤タンク(重合開始剤および場合により原料モノマーの供給源)
5 ポンプ
7 ポンプ
9 原料供給ライン
10 第1の反応器
11a 供給口
11b 抜き出し口
11c 別の供給口
13 ジャケット(温度調節手段)
14 撹拌機
15 配管(接続ライン)
16 ジャケット(冷却手段)
17 重合開始剤タンク(新たな重合開始剤および場合により原料モノマーの供給源)
19 ポンプ
20 第2の反応器
21a 供給口
21b 抜き出し口
21c 別の供給口
23 ジャケット(温度調節手段)
24 撹拌機
25 抜き出しライン
31 予熱器
33 脱揮押出機
35 取り出しライン
37 回収タンク
40 冷却器(冷却手段)
T 温度センサ(温度検知手段)

Claims (11)

  1. 連続塊状重合プロセスの間にメタクリル酸エステル系モノマーを含む反応液を配管に通して該配管の内壁面と接触させることによって該反応液を冷却する方法であって、該配管に流入する該反応液の温度が110℃以上であり、該反応液と接触する該配管の内壁面の温度が105℃以下であり、該配管の内壁面と接触することによって冷却される該反応液における溶存酸素濃度が0.01〜10ppmである方法。
  2. 前記溶存酸素濃度が1〜5ppmである、請求項1に記載の方法。
  3. 前記溶存酸素濃度が1〜3ppmである、請求項1または2に記載の方法。
  4. 熱伝導率が0.15W/m・K以上である流体により前記配管の外壁面を冷却して該配管の内壁面の温度を105℃以下にする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
  5. 前記流体がアセトン、メタノール、エチレングリコール、グリセリン、アンモニアおよび水からなる群から選択される、請求項4に記載の方法。
  6. 前記流体が液体である、請求項4または5に記載の方法。
  7. 前記配管の内壁面の温度が105〜10℃である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
  8. 前記配管の内壁面の温度が90〜60℃である、請求項7に記載の方法。
  9. 前記反応液におけるメタクリル酸エステル系モノマーの含有量が80〜100質量%である、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
  10. 前記メタクリル酸エステル系モノマーがメタクリル酸アルキルである、請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
  11. 前記メタクリル酸アルキルがメタクリル酸メチルである、請求項10に記載の方法。
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