JP2014172980A - 樹脂シートの製造方法および樹脂シート - Google Patents

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尭 小森
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政宣 妹尾
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Abstract

【課題】透明性、耐熱性および耐久性を有するとともに、特定の波長で構造発色性を有する樹脂シートの製造方法および樹脂シート並びに光学材料を提供すること。
【解決手段】樹脂(A)に粒子(B)を分散させてなることを特徴とする樹脂シートの製造方法であって、樹脂(A)に、粒子(B)を分散させてなる樹脂組成物を50℃以上100℃以下の温度に加熱する加熱工程と、前記加熱工程を経た樹脂組成物を0℃以上40℃以下の温度に冷却する冷却工程を、この順で実施することを特徴とする樹脂シートの製造方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、樹脂シートの製造方法および樹脂シートに関する。
従来、樹脂シートを着色させるために、顔料、色素、染料などの着色材を含有させることが行われてきた。
前記顔料の粒子径が大きい場合、前記顔料が大きいため、樹脂シートの透明性が損なわれることがあった。前記顔料の粒子径がナノスケールなどのように小さい場合、前記顔料の粒子が凝集するため、樹脂シートの透明性が損なわれることがあった。
また、色素や染料等は、耐熱性が低い場合や、色の経時変化が大きい場合があり、耐熱性や長期間の使用が要求される用途において、十分な特性を有するものではなかった。
近年では、顔料、色素、染料等のような一部の光を吸収することで着色する以外の方法として、球状ナノ微粒子のコロイド微結晶の構造発色を利用した光学発色体が開示されている(例えば、特許文献1、2参照)。
しかしながら、電解質を添加してコロイド結晶を形成させ、構造発色を生じさせる樹脂シートの製造方法では、絶縁性や耐水性などの特性が損なわれる場合があった(例えば、特許文献1参照。)。
また、超音波処理装置を使用してコロイド結晶を形成させ、構造発色を生じさせる樹脂シートの製造方法では、特殊な設備を導入する必要があるため、コストがかかる場合があった(例えば、特許文献2参照。)。
特開平11−319539号公報 特開2008−303261号公報
本発明の目的は、透明性、耐熱性および耐久性を有するとともに、特定の波長で構造発色性を有する樹脂シートの製造方法および樹脂シートさらに該樹脂シートを用いた光学材料を提供することにある。
このような目的は、下記(1)〜(9)に記載の本発明により達成される。
(1)樹脂(A)に粒子(B)を分散させてなる樹脂シートの製造方法であって、
樹脂(A)に、粒子(B)を分散させてなるシート状樹脂組成物を50℃以上100℃以下の温度に加熱する加熱工程と、
前記加熱工程を経た樹脂組成物を0℃以上40℃以下の温度に冷却する冷却工程を、
この順で実施することを特徴とする樹脂シートの製造方法。
(2)前記粒子(B)は、金属、金属酸化物および金属窒化物からなる群から選ばれる少なくとも一種である(1)に記載の樹脂シートの製造方法。
(3)前記粒子(B)の平均粒子径は、100nm以上1000m以下である(1)または(2)に記載の樹脂シートの製造方法。
(4)前記粒子(B)の含有量は、樹脂シート全体の体積に対して、15体積%以上50体積%以下である(1)ないし(3)のいずれかに記載の樹脂シートの製造方法。
(5)前記加熱工程において、樹脂(A)に、粒子(B)を分散させてなるシート状樹脂
組成物を50℃以上100℃以下の温度に加熱するために要する時間は、1分以上24時間以下である(1)ないし(4)のいずれかに記載の樹脂シートの製造方法。
(6)前記冷却工程において、前記加熱工程を経たシート状樹脂組成物を0℃以上40℃以下の温度に冷却するまでに要する時間は、10分以上24時間以下である(1)ないし(5)のいずれかに記載の樹脂シートの製造方法。
(7)前記樹脂(A)は、(メタ)アクリレート基を有する化合物を重合させて得られたものである(1)ないし(6)のいずれかに記載の樹脂シートの製造方法。
(8)前記樹脂(A)は、下記一般式(1)ないし(3)からなる群から選ばれる少なくとも一種を重合させて得られたものである(1)ないし(6)のいずれかに記載の樹脂シートの製造方法。



(一般式(3)中、nは、1〜20の整数である。)
(9)(1)ないし(8)のいずれかに記載の樹脂シートの製造方法によって製造されたことを特徴とする樹脂シート。
(10)(9)記載の樹脂シートを用いた光学材料。
本発明によれば、透明性、耐熱性および耐久性を有するとともに、特定の波長で構造発
色性を有する樹脂シートの製造方法および樹脂シートの提供が可能になる。
以下、本発明の樹脂シートの製造方法および樹脂シートについて好適実施形態に基づいて詳細に説明する。
<樹脂シート>
まず、本発明の樹脂シートは、後述する樹脂(A)に、後述する粒子(B)を分散させたものである。
<樹脂シートの製造方法>
次に、本発明の樹脂シートの製造方法について説明する。
本発明の樹脂シートの製造方法は、樹脂(A)に粒子(B)を分散させてなることを特徴とする樹脂シートの製造方法であって、樹脂(A)に、粒子(B)を分散させてなる樹脂組成物を50℃以上100℃以下の温度に加熱する加熱工程と、前記加熱工程を経た樹脂組成物を0℃以上40℃以下の温度に冷却する冷却工程を、この順で実施するものである。
以下、各工程について説明する。
[1]加熱工程
樹脂(A)に粒子(B)を分散させてなる樹脂シートの製造方法であって、樹脂(A)に、粒子(B)を分散させてなるシート状樹脂組成物を50℃以上100℃以下の温度に加熱する加熱工程について説明する。
前記樹脂(A)に前記粒子(B)を分散させる方法は、前記粒子(B)を分散させることができるものであれば種々の方法が挙げられる。前記分散させる方法は、分散性を向上させる観点から、例えば、フィルミックス(特殊機化工業株式会社製)やビーズミルを用いる方法などが挙げられる。前記分散させると同時または後にシート状にすることよって、前記樹脂(A)に前記粒子(B)が分散されたシート状樹脂組成物を得ることができる。
前記樹脂(A)は、前記樹脂シートに分散されている後述する粒子(B)を固定化させることによって、取り扱い性に優れた樹脂シートを得ることができる。
前記樹脂(A)は、特に限定されず、種々の熱可塑性樹脂や種々の熱硬化性樹脂を用いることができる。前記樹脂(A)は、後述する粒子(B)を分散させ、構造発色性を向上させる観点から、熱硬化性樹脂が好ましく、2つ以上の官能基を有する化合物を含有する組成物を、熱や光等によって、硬化や架橋して得られるものがさらに好ましい。前記2つ以上の官能基を有する化合物としては、エポキシ化合物、グリシジル型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、オキセタン化合物、オキセタニル基を有する化合物、(メタ)アクリレート化合物、ビニルエーテル化合物等が挙げられる。これらの中でも、グリシジル型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、(メタ)アクリレート化合物は、透明性および構造発色性が特に優れる観点から、樹脂シートに好適に用いることができる。
なお、本発明における透明とは、光透過性を有し、透かして見ることができる状態をいうが、透過率の低い半透明の状態も含む。
前記グリシジル型エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂またはこれらの水添化物、ジシクロペンタジエン骨格を有するエポキシ樹脂、ト
リグリシジルイソシアヌレート骨格を有するエポキシ樹脂、カルド骨格を有するエポキシ樹脂、ポリシロキサン構造を有するエポキシ樹脂が挙げられる。
また、前記脂環式エポキシ樹脂としては、例えば、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、1,2,8,9−ジエポキシリモネン、ε−カプロラクトンオリゴマーの両端にそれぞれ3,4−エポキシシクロヘキシルメタノールと3,4−エポキシシクロヘキサンカルボン酸がエステル結合したもの、水添ビフェニル骨格、および水添ビスフェノールA骨格を有する脂環式エポキシ樹脂等が挙げられる。
さらに、前記(メタ)アクリレート化合物としては、透明性を有するものであれば特に限定されるものではなく種々の(メタ)アクリレート化合物を用いることができる。前記(メタ)アクリレート化合物としては、透明性を更に高める観点から、脂環式構造を有し、2つ以上の官能基を有する(メタ)アクリレートが好ましい。このような脂環式構造を有し、2つ以上の官能基を有する(メタ)アクリレートとしては、下記一般式(1)〜(3)からなる群から選ばれる少なくとも一種を好ましく用いることができる。

(一般式(3)中、nは、1〜20の整数である。)
式(1)、式(2)および式(3)で示される(メタ)アクリレートの中でも、透明性
および耐熱性の観点から、式(1)および式(2)より選ばれた少なくとも1種の(メタ)アクリレートが好ましく、一般式(1)において、R1、R2が水素で、aが1、bが0である構造を持つジシクロペンタジエニルジアクリレート、一般式(2)において、Xが−CH2OCOCH=CH2、R3、R4が水素で、pが1である構造を持つパーヒドロ−1,4;5,8−ジメタノナフタレン−2,3,7−(オキシメチル)トリアクリレート、
X、R3、R4がすべて水素で、pが0または1である構造を持つアクリレートより選ば
れた少なくとも1種以上のアクリレートがさらに好ましい。作業性の観点を加味すると、一般式(1)および一般式(2)において、X、R1、R2、R3、R4がすべて水素で、pが0である構造を持つノルボルナンジメチロールジアクリレートが最も好ましい。
なお、式(2)で示される(メタ)アクリレートは、特開平5−70523で示される公知の方法で得ることができる。
本発明で用いられる官能基を有する化合物中には、柔軟性を付与する等の目的で、要求される特性を極端に損なうことのない範囲で、単官能の化合物を含有させることができる。
前記粒子(B)は、前記樹脂(A)に分散させることによって、前記樹脂シートの構造発色性を向上させることができる。前記粒子(B)は、耐熱性を向上させる観点から、アルミニウムなどの金属の粒子、シリカやアルミナなどの金属酸化物の粒子、半導体の粒子などが好ましく用いられる。
前記粒子(B)がシリカ粒子の場合は、前記シリカ粒子は、乾燥させた粉末状のシリカ粒子、溶媒に分散させたコロイダルシリカやシリカゾルを使用することができ、分散性を高める観点から、溶媒に分散させたコロイダルシリカやシリカゾルを用いることが好ましい。
前記溶媒に分散されたコロイダルシリカやシリカゾルを用いる場合の溶媒としては、樹脂組成物中に使用する成分が溶解するものを用いることが好ましく、例えば、アルコール類、ケトン類、エステル類、グリコールエーテル類や水が挙げられる。脱溶媒のしやすさから、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、n−プロピルアルコール等のアルコール系、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系の有機溶媒およびに水分散されたコロイダルシリカ、シリカゾル、シリカ粒子を用いることが好ましく、さらに好ましくは、イソプロピルアルコールおよび水に分散されたコロイダルシリカである。特に、イソプロピルアルコールに分散されたコロイダルシリカを用いた場合は、脱溶媒後の粘度が他の溶剤系に比べて低く、粘度が低い複合体組成物を安定して作製するのに適している。
これらの溶媒に分散させたコロイダルシリカやシリカゾル、シリカ粒子は、要求される特性を極端に損なうことのない範囲で、シランカップリング剤、チタネート系カップリング剤等のカップリング剤で表面処理されたものであっても良く、有機溶媒に分散させるために、界面活性剤等の分散剤を使用しているものであっても良い。
前記半導体の粒子としては、光や電子線のようなエネルギーを吸収することにより、2つのエネルギー順位の差に反比例する波長の光を発する性質を有するものであれば、特に制限されないが、カルコゲン化物を含有する微粒子が好適に用いられる。
前記カルコゲン化物としては、カルコゲン(周期律表のVI族元素のうち、酸素(O)、
硫黄(S)、セレン(Se)、テルル(Te)、ポロニウム(Po)の5元素の総称)を含む化
合物を称し、特に、周期律表のII族元素とVI族元素との化合物であるII−VI族化合物が好ましい。さらに好ましくは、ZnS、CdS、ZnSe、CdSe、ZnTe、CdTe、ZnOから選択される少
なくとも1種である。
前記半導体の粒子は、構造発色効率を増加させるため、ボーア半径の2倍よりも小さな粒子径の半導体超微粒子をマトリックス中に凝集なく均一に分散してなる粒子であることが好ましい。マトリックスには、種々の無機物、有機物を用いることができる。無機物としては、ケイ素系の化合物などが挙げられる。有機物としては、耐熱性の面から、ポリイミドや脂環式構造を有する樹脂などが挙げられる。マトリックス中にケイ素やチタンを含有するカップリング剤を使用することもできる。
前記粒子(B)の平均粒子径は、100nm以上1000nm以下であり、前記樹脂シートの透明性と構造発色性のバランスをさらに向上させる観点から、120nm以上900nm以下がさらに好ましく、150nm以上800nm以下が最も好ましい。前記粒子(B)の平均粒子径が前記範囲内の場合、透明性を損なうことなく、平均粒子間距離の制御を容易にすることができる。前記粒子(B)の平均粒子径が前記下限値未満の場合、粒子添加量が少なくなる傾向にあるため、前記樹脂シートの均一性が損なわれる場合がある。また、前記粒子(B)の平均粒子径が前記上限値を超える場合、前記樹脂シート作製前の組成物の分散性が下がり、前記樹脂シートの製造の作業性が損なわれるおそれがある。
前記樹脂シート中の粒子(B)の含有量は、樹脂シートの透明性を損なわない範囲であれば適用することができる。前記粒子(B)の含有量は、樹脂シート全体の体積に対して、15〜50体積%が好ましく、20〜45体積%がより好ましい。前記粒子(B)の含有量が前記範囲の場合、樹脂シート作製前の組成物の流動性、分散性が良好であるため、樹脂シートの製造を容易にすることができ、透明性を維持したまま発色を示す樹脂シートを製造することができる。
本発明における前記樹脂シートにおいて、透明性を維持したまま構造発色を示すために、前記樹脂シート中における粒子(B)は、規則性を有していることが好ましい。
本発明おける樹脂シートにおいて、規則性とは、例えば、前記粒子(B)の一次粒子もしくは高次粒子の一部または全部が、孤立に分散しており、周期的な配列状態を有していること意味し、前記規則性が高いほど、構造発色性を向上させることができる。なお、前記粒子(B)が規則性を有していることは、不均一な状態や凝集状態が全く無いことを意味するものではない。
前記樹脂シート中における粒子(B)が規則性を有するかどうかの判別は、定量的に、以下のように実施できる。前記樹脂シートの小角X線散乱測定により得られる小角X線散乱プロファイルにおいて、前記粒子(B)の粒子間相関に相当するピークが少なくともひとつ以上存在し、好ましくは高次のピークまで一定間隔でピークトップが観察された場合、前記粒子(B)の1次粒子は規則性を有すると判別する。
本発明における樹脂シートにおいて、構造発色とは、構造色とも呼ばれる現象であって、規則性を有する立体構造に起因して光が散乱する現象のことである。構造発色は、樹脂シートの波長分散の反射率を測定し、波長領域400〜800nmにピーク波長が観察された場合、構造発色を有すると判別することができる。
本発明で作製される樹脂シート中には、シート状樹脂組成物の予備組成物作製時に重合反応が進行し、粘度が上昇することを防ぐ目的で、重合禁止剤を含有させることができる。
前記シート状樹脂組成物は、必要に応じて、透明性、耐溶剤性、耐熱性等の特性を損なわない範囲で、熱可塑性又は熱硬化性のオリゴマーやポリマーを併用させることができる。また、前記組成物は、必要に応じて、透明性、耐溶剤性、耐液晶性、耐熱性等の特性を
損なわない範囲で、少量の酸化防止剤、紫外線吸収剤、染顔料、他の無機フィラー等の充填剤等を含有させることができる。
次に、前記で得られるシート状樹脂組成物の予備組成物を、温度調整装置を備えた前記樹脂シートの成形枠に流し込み、前記加熱工程の処理条件で処理することによって、シート状樹脂組成物を得ることができる。前記加熱工程によって、前記樹脂(A)中に、前記粒子(B)を分散させることができる。前記加熱工程での温度は50℃以上100℃以下であり、55℃以上95℃以下が好ましく、60℃以上90℃以下がさらに好ましい。前記加熱工程での温度が前記範囲の場合、前記樹脂(A)中の前記粒子(B)の分散性を向上させることができる。前記加熱工程での温度が前記下限値未満の場合、前記樹脂(A)の流動性が低いため、前記樹脂シートの外観が損なわれるおそれがある。前記加熱工程での温度が前記上限値を超える場合、前記樹脂(A)の一部が反応して流動性が低くなるため、前記樹脂シートの外観が損なわれるおそれがある。
前記加熱工程での温度に加熱するために要する時間は、1分以上24時間以下が好ましく、3分以上20時間以下がさらに好ましい。前記加熱するために要する時間が前記範囲の場合、前記樹脂(A)中の前記粒子(B)の分散性を向上させることができる。前記加熱するために要する時間が前記下限値未満の場合、急激な温度上昇のために特殊な加熱装置が必要になるため、コストがかかる場合がある。前記加熱するために要する時間が前記上限値を超える場合、時間がかかるため、前記樹脂シートの生産性が損なわれる場合がある。
前記加熱工程での温度および加熱するために要する時間は、50℃以上100℃以下で1分以上24時間以下が好ましく、55℃以上95℃以下で1分以上24時間以下がさらに好ましく、60℃以上90℃以下で3分以上20時間以下が最も好ましい。前記加熱工程での温度と加熱するために要する時間が前記範囲の場合、前記樹脂シートの外観と生産性にさらに優れたものとすることができる。
[2]冷却工程
前記加熱工程を経たシート状樹脂組成物を0℃以上40℃以下の温度に冷却する冷却工程について説明する。
前記冷却工程によって、前記樹脂(A)中の前記粒子(B)が、規則性を有した分散状態にすることができる。前記冷却工程での温度は0℃以上40℃以下であり、2℃以上38℃以下が好ましく、4℃以上35℃以下がさらに好ましい。前記冷却工程での温度が前記範囲の場合、前記樹脂(A)中の前記粒子(B)の規則性を高めて前記樹脂シートの構造発色性を向上させることができる。前記加熱工程での温度が前記下限値未満の場合、前記樹脂(A)の流動性が低いため、前記樹脂シートの外観が損なわれるおそれがある。前記冷却工程での温度が前記上限値を超える場合、前記樹脂(A)の一部が反応して流動性が低くなるため、前記樹脂シートの外観が損なわれるおそれがある。
前記冷却工程での温度に冷却するまでに要する時間は、10分以上24時間以下が好ましく、15分以上20時間以下がさらに好ましい。前記冷却するまでに要する時間が前記範囲の場合、前記樹脂(A)中の前記粒子(B)の規則性を高めて前記樹脂シートの構造発色性を向上させることができる。前記冷却までに要する時間が前記下限値未満の場合、急激な温度低下のために、樹脂シートの温度にバラツキが生じて、表面が不均一になる場合がある。前記冷却までに要する時間が前記上限値を超える場合、時間がかかるため、前記樹脂シートの生産性が損なわれる場合がある。
前記冷却工程での温度および温度に冷却するまでに要する時間は、0℃以上40℃以下
で10分以上24時間以下が好ましく、2℃以上38℃以下で10分以上24時間以下がさらに好ましく、4℃以上35℃以下で15分以上20時間以下が最も好ましい。前記冷却工程での温度および温度に冷却するまでに要する時間が前記範囲の場合、前記樹脂シートの外観と生産性にさらに優れたものとすることができる。
前記粒子(B)として、溶媒に分散した粒子を用いる場合、この溶媒の一部は、前記樹脂シート組成物中に一部が残存していてもよい。前記溶媒を含有させている場合、熱処理等の後処理工程を設けることで、前記樹脂シートから溶媒を脱離させ、含有量を低下させることができる。前記樹脂シート中の溶媒の含有量は、架橋工程や熱処理等によって揮発成分を除去する工程で、発泡やシートにうねりが発生することを抑える観点から、組成物の10重量%以下が好ましく、5重量%以下がさらに好ましく、3重量%以下が最も好ましくい。
前記樹脂シートは、前記シート状樹脂組成物の予備組成物をシート化させることで得ることができる。前記シート化させる方法の一例としては、前記シート状樹脂組成物の予備組成物をキャストし、必要に応じ乾燥させる方法、表面平滑性を持つガラス板、プラスチック板、金属板等の間に所望のシート厚さが得られるようにスペーサーを挟み、組成物を挟み込む方法等が挙げられる。なお、後者の方法によって、活性エネルギー線等で硬化させる場合は、少なくとも一方は、活性エネルギー線等を透過するガラス板、活性エネルギー線等を透過するプラスチック板などを使用することが好ましい。
前記樹脂シートの平均厚さは、透明性を損なわない範囲であれば種々の平均厚さを適用することができるが、50μm以上2000μm以下であることが好ましい。前記平均厚さが前記範囲の場合、前記樹脂シートの透明性と構造発色性をより高度に両立させることができる。前記平均厚さが前記下限値未満の場合、前記粒子(B)の平均直径に近づくために前記樹脂シート表面から、前記粒子の一部がはみ出すことがあり、外観が損なわれる可能性がある。前記平均厚さが前記上限値を超える場合、前記樹脂シートの柔軟性が損なわれて、曲面などの用途に用いることが難しくなるおそれがある。
前記樹脂シートは、前記加熱工程以外に、追加で硬化させることができる。
前記樹脂(A)が熱硬化性樹脂の場合、熱や光等によって、硬化や架橋させることができる。このように前記樹脂シートを硬化させることによって、前記樹脂シートを取り扱い性に優れるものとすることができる。
前記樹脂シートを架橋させる方法としては、活性エネルギー線により硬化させる方法、熱をかけて熱重合させる方法等があり、これらを併用することもできる。使用する活性エネルギー線としては、紫外線が好ましい。紫外線を発生させるランプとしては、例えば、メタルハライドタイプ、高圧水銀灯ランプ等が挙げられる。
硬化反応の完結、揮発分の除去をする等の目的で、さらに高温での熱処理工程を併用することが好ましい。
前記樹脂シートを紫外線等の活性エネルギー線により硬化させる場合は、前記組成物中にラジカル、カチオン等を発生する光重合開始剤を含有させることが好ましい。その際に用いる光重合開始剤としては、例えばラジカル発生剤としてはベンゾフェノン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテル、ジエトキシアセトフェノン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニルケトン、2,6−ジメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシドが挙げられ、カチオン発生剤としては芳香族スルホニウム塩、芳香族ヨードニウム塩等が挙げられる。これらの光重合開始剤は、1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
前記樹脂シート中における前記重合開始剤の含有量は、適度に硬化させる量であればよく、前記組成物中の官能基を含有する有機成分100重量部に対し、0.01〜2重量部が好ましく、0.02〜1重量部がさらに好ましく、0.1〜0.5重量部が最も好ましい。前記光重合開始剤の添加量が前記上限値を超える場合は、重合が急激に進行するため、架橋密度が不均一になり、前記樹脂シートの外観が損なわれるおそれがある。また、前記光重合開始剤の添加量が前記下限値を下回る場合は、組成物の硬化を十分に進行させるために時間がかかる場合がある。
前記樹脂シートを熱によって重合させる場合は、必要に応じて、前記樹脂シート中に前記熱重合開始剤を含有させることができる。その際に用いる前記熱重合開始剤としては、ラジカル発生剤としてはベンゾイルパーオキシド、ジイソプロピルパーオキシカーボネート、t−ブチルパーオキシ(2−エチルヘキサノエート)等が挙げられ、カチオン発生剤としては芳香族スルホニウム塩、芳香族ヨードニウム塩、アンモニウム塩、アルミニウムキレート、三フッ化ホウ素アミン錯体等が挙げられる。使用量は、前記樹脂シート中の官能基を含有する有機成分100重量部に対し、3重量部以下が好ましい。
活性エネルギー線による硬化および/または熱重合による架橋後に高温で熱処理する場合は、その熱処理工程の中に、線膨張係数を低減する等の目的で、窒素雰囲気下又は真空状態で、200℃以上300℃以下の温度で、1時間以上24時間以下の熱処理工程を含ませることが好ましい。
本発明の樹脂シートは、液晶表示素子用プラスチック基板、カラーフィルター用基板、有機EL表示素子用プラスチック基板、太陽電池基板、タッチパネル等として用いることができる。
(実施例1)
1.樹脂シートの予備組成物の作製
樹脂(A)として前記化学式(1)において、R1が水素、R2が水素、aが1、bが0であるノルボルナンジメチロールジアクリレート5重量部と、粒子(B)としてメチルエチルケトン分散型コロイダルシリカ(シリカ含量40重量%、平均粒子径200nm)7.5重量部と、密着助剤としてγ−アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン1重量部とを混合し、減圧しながら40℃で撹拌し、揮発分を除去した。次に、光重合開始剤として1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン0.03重量部を添加し十分に溶解させた後、さらに減圧することで揮発分を除去し、樹脂シートの予備組成物を得た。得られた樹脂シートの予備組成物に含まれる溶剤の含有量は、揮発した溶媒による重量減少から算出したところ、10%未満であった。
2.樹脂シートの作製
得られた樹脂シートの予備組成物を、温度調整装置で80℃を備えたガラス板上に設けられた厚さが125μmである前記樹脂シートの成形枠内に流し込んだ。
次に加熱工程として、成形枠を80℃に、5分間かけて加熱した。
次に冷却工程として、成形枠を25℃に、12時間かけて冷却した。
成形枠内に対して、両面から約700mJ/cmの紫外線を照射して硬化させた。次に、成形枠から硬化させた樹脂シートを剥離した。
<粒子(B)の含有量の評価>
樹脂シートの粒子(B)の含有量は、400℃で1時間の処理後の残渣の重量から、20体積%であった。
結果は表1に記載した。
<透明性の評価>
透明性は、前記樹脂シートについて、ヘーズメーター(日本電色工業株式会社製、NDH2000型)を用いてヘーズと全光線透過率を測定することによって評価した。ヘーズは17.2、全光線透過率は85.5%であった。
また、外観は、前記樹脂シートについて、泡や窪みなど外観の異常の有無を目視で確認した。前記樹脂シートの外観は良好であった。
結果は表1に記載した。
<耐熱性>
耐熱性は、前記樹脂シートについて、熱重量測定装置(株式会社日立ハイテクサイエンス社製、TG/DTA-6200型)を用いて加熱し、5%重量減少する分解温度を測定
することによって評価した。5%重量減少する分解温度は398℃であった。
結果は表1に記載した。
<粒子(B)の平均粒子間距離>
得られた樹脂シートの走査型電子顕微鏡での観察写真を解析し、粒子(B)の平均粒子間距離は207nmであることを確認した。
結果は表1に記載した。
<構造発色性>
構造発色性は、前記樹脂シートについて、反射率の波長依存性の有無によって確認した。紫外可視近赤外分光光度計(日本分光株式会社製、V670型)を用いて、波長領域400〜800nmにピーク波長が見られたものを、構造発色性が有るとした。ピーク波長は648nmであった。
結果は表1に記載した。
(実施例2)
メチルエチルケトン分散型コロイダルシリカ(シリカ含量40重量%、平均粒子径200nm)の添加量を15重量部とした以外は実施例1と同様にした。
(実施例3)
メチルエチルケトン分散型コロイダルシリカ(シリカ含量40重量%、平均粒子径200nm)の添加量を25重量部とした以外は実施例1と同様にした。
(実施例4)
冷却工程において、冷却温度を30℃に変更し、冷却するまでに要する時間を1時間に変更した以外は実施例1と同様にした。
(比較例1)
加熱工程において、過熱温度を120℃に変更した以外は実施例1と同様にした。

表1から明らかなように、実施例は、優れた透明性、耐熱性、構造発色性を有していた。
比較例には、外観に泡が見られ、透明性に劣るものが含まれていた。
本発明によれば、透明性、耐熱性および耐久性を有するとともに、特定の波長で構造発色性を有する樹脂シートの製造方法および樹脂シートを提供することができ、例えば、透明板、光学レンズ、光ディスク基板、液晶表示素子用プラスチック基板、カラーフィルター用基板、有機EL表示素子用プラスチック基板、太陽電池基板、タッチパネル、光学素子、光導波路などに利用することができる。

Claims (10)

  1. 樹脂(A)に粒子(B)を分散させてなる樹脂シートの製造方法であって、
    樹脂(A)に、粒子(B)を分散させてなるシート状樹脂組成物を50℃以上100℃以下の温度に加熱する加熱工程と、
    前記加熱工程を経た樹脂組成物を0℃以上40℃以下の温度に冷却する冷却工程を、
    この順で実施することを特徴とする樹脂シートの製造方法。
  2. 前記粒子(B)は、金属、金属酸化物および金属窒化物からなる群から選ばれる少なくとも一種である請求項1に記載の樹脂シートの製造方法。
  3. 前記粒子(B)の平均粒子径は、100nm以上1000m以下である請求項1または2に記載の樹脂シートの製造方法。
  4. 前記粒子(B)の含有量は、樹脂シート全体の体積に対して、15体積%以上50体積%以下である請求項1ないし3のいずれかに記載の樹脂シートの製造方法。
  5. 前記加熱工程において、樹脂(A)に、粒子(B)を分散させてなるシート状樹脂組成物を50℃以上100℃以下の温度に加熱するために要する時間は、1分以上24時間以下である請求項1ないし4のいずれかに記載の樹脂シートの製造方法。
  6. 前記冷却工程において、前記加熱工程を経たシート状樹脂組成物を0℃以上40℃以下の温度に冷却するまでに要する時間は、10分以上24時間以下である請求項1ないし5のいずれかに記載の樹脂シートの製造方法。
  7. 前記樹脂(A)は、(メタ)アクリレート基を有する化合物を重合させて得られたものである請求項1ないし6のいずれかに記載の樹脂シートの製造方法。
  8. 前記樹脂(A)は、下記一般式(1)ないし(3)からなる群から選ばれる少なくとも一種を重合させて得られたものである請求項1ないし6のいずれかに記載の樹脂シートの製造方法。



    (一般式(3)中、nは、1〜20の整数である。)
  9. 請求項1ないし8のいずれかに記載の樹脂シートの製造方法によって製造されたことを特徴とする樹脂シート。
  10. 請求項9記載の樹脂シートを用いた光学材料。
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