JP5880213B2 - 透明シートおよび電子部品用基板 - Google Patents

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Description

本発明は、透明シートおよび電子部品用基板に関する。
従来、樹脂シートを着色するためには着色顔料、色素、染料等を含有させることが必須であった。しかし、顔料の粒子径が大きいものを使用するとシートは不透明になってしまう。一方、粒子径をナノスケールの小さいものを使用した場合であっても粒子が凝集するためシートが不透明になることが多かった。さらに、色素、染料等は、耐熱性に劣り、経時変化が問題となる場合があった。
そこで、顔料、色素、染料等のような一部の光を吸収することで着色する以外の方法として、球状ナノ微粒子のコロイド微結晶の構造発色を利用した光学発色体が開示されている(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、透明性を維持したままの構造発色を示す透明シートは得られていなかった。
透明性を維持したまま構造発色を示す透明シートを得る方法として、球状粒子を透明性樹脂に平均粒子径70〜200nmで分散させた透明シートがある。しかし、この方法では透明シートの発色性が低いという問題があった。
特開2007−182392号公報
本発明の目的は、顔料、色素、染料等の従来の着色材を使用せずに、発色し、かつ透明な透明シートを提供することにある。
また、本発明の別の目的は、上述した透明シートを用いた性能に優れた電子部品用基板を提供することにある。
このような目的は、下記(1)〜(8)に記載の本発明により達成される。
(1)フルオレン骨格構造を有する透明性樹脂と、球状粒子とを含む透明シートであって、前記球状粒子が、該透明シート中に平均粒子径70〜260nmで分散していることを特徴とする透明シート。
(2)前記フルオレン骨格構造を有する透明性樹脂が式(1)で示されるアクリル樹脂である(1)に記載の透明シート。

(式中、R1はシアノ基、ハロゲン原子またはアルキル基を示し、R2はアルキル基を示し、R3はアルキレン基を示し、R4は水素原子またはメチル基を示し、xは0〜4の整数、yは2〜4の整数、zは1以上の整数である。)
(3)前記フルオレン骨格構造を有する透明性樹脂が式(2)で示されるエポキシ樹脂で
ある(1)に記載の透明シート。

(式中、R1はシアノ基、ハロゲン原子またはアルキル基を示し、R2はアルキル基を示し、R3はアルキレン基を示し、R4は水素原子またはメチル基を示し、xは0〜4の整数、yは2〜4の整数、zは1以上の整数である。)
(4)前記球状粒子の含有量は、透明シート全体の5〜80体積%である(1)ないし(3)のいずれか1項に記載の透明シート。
(5)前記透明シート中に分散している前記球状粒子の中心間距離の平均は、100〜360nmである(1)ないし(4)のいずれか1項に記載の透明シート。
(6)前記球状粒子は、金属酸化物の粒子である(1)ないし(5)のいずれか1項に記載の透明シート。
(7)前記フルオレン骨格構造を有する透明性樹脂と、前記球状粒子との屈折率差が、0.2以下である(1)ないし(6)のいずれか1項に記載の透明シート。
(8)(1)ないし(7)のいずれか1項に記載の透明シートで構成されてなることを特徴とする電子部品用基板。
本発明によれば、顔料、色素、染料等の従来の着色材を使用せずに、発色し、かつ透明なシートを得ることができる。
また、本発明によれば性能に優れた電子部品用基板を得ることができる。
以下、本発明の透明シートおよび電子部品用基板について説明する。本発明の透明シートは、フルオレン骨格構造を有する透明性樹脂と、球状粒子とを含む透明シートであって、前記球状粒子が、該透明シート中に平均粒子径70〜260nmで分散していることを特徴とする。また、本発明の電子部品用基板は、上記に記載の透明シートで構成されてなることを特徴とする。
(透明シート)
まず、透明シートについて説明する。
本発明の透明樹脂シートは、フルオレン骨格構造を有する透明性樹脂と、球状粒子とを含む透明シートであって、前記球状粒子が、該透明シート中に平均粒子径70〜260nmで分散していることを特徴とする。これにより、球状粒子が光照射下で、特定の波長の光を選択し、構造発色することができ、かつ球状粒子が上述したようにミクロで分散しているので透明性にも優れているものである。
このように、球状粒子が特定の波長の光を選択して、構造発色できる理由は、次のように考えられる。
球状粒子を樹脂中で凝集することなく固定化(配置)することにより、球状粒子が透明シート中で規則的な配列構造を形成することができ、それによって特定の波長のみを選択的に反射できるようになり、その波長の光が発色することができるようになるものである。
ここで構造発色とは、構造色とも呼ばれ規則的に並んだ立体構造に起因して光が散乱する現象のことである。構造発色を示すかどうかの判別は、定量的に、以下のように実施でき
る。透明シートの波長分散の光線透過率において構造発色する色の波長領域の光線透過率、300〜500nmの光線透過率において反射率が30%以上、好ましくは45%以上の単峰性のピークが観察された場合、青色の構造発色を示すと判別する。また、緑色の場合、500〜600nmの光線透過率、赤色であれば550〜700nm光線透過率において反射率が30%以上、好ましくは45%以上の単峰性のピークが観察された場合においてそれぞれの構造発色を示す。
前記透明シート中に分散している前記球状粒子の平均粒子径は、特に好ましくは70〜260nmであり、最も好ましくは120〜260nmである。平均粒子径が前記範囲内であると特に透明性と発色性とのバランスに優れる。このような透明シート中の球状粒子の平均粒子径は、例えば高輝度放射光を用いた小角X線散乱で評価することができる。
(透明性樹脂)
次に、透明性樹脂について説明する。本発明に用いる透明性樹脂は、フルオレン骨格構造を有する透明性樹脂であることを特徴とする。
フルオレン骨格構造を有する樹脂はカルド構造と呼ばれる特徴的な構造を形成し、また多数の芳香環を有するために高い屈折率と高い耐熱性を示し、また多数の芳香環がそれぞれ異なる方向に面した構造をとるために光学的異方性が小さく高い透明性を有する。これにより、樹脂と球状粒子間の屈折率差が大きくなるために、光照射下で球状粒子が特定の波長の光をより強く反射し、より強い構造発色性を示す。
前記フルオレン骨格構造を有する透明性樹脂としては、前記式(1)で表されるアクリレート樹脂化合物あるいは前記式(2)で表されるエポキシ樹脂化合物が挙げられる。

式(1)、(2)中、R1はシアノ基、ハロゲン原子またはアルキル基を示し、R2はアルキル基を示し、R3はアルキレン基を示し、R4は水素原子またはメチル基を示し、xは0〜4
の整数、yは2〜4の整数、zは1以上の整数である。
ここでフルオレン骨格構造を有する透明性樹脂は、前記式(1)または(2)で表される化合物の単一化合物であってもよく、前記式(1)または(2)で表される化合物を複数含む混合物であってもよい。
また、上述したフルオレン骨格構造を有する透明性樹脂と、硬化剤等とを含有する樹脂組成物でも良い。具体的には、上記フルオレン骨格構造を有する透明性樹脂を含有する樹脂組成物を、熱、光等により硬化・架橋して得られるものが好ましい。架橋反応性の観点か
ら、上記樹脂組成物はエポキシ樹脂またはアクリル樹脂のいずれか一方であることが好ましい。
前記式(1)で示されるアクリレートの中でも、溶融粘度、屈折率の面から、式(1)においてR1が水素原子、R2が水素原子、R3がエチレン、z=1、R4が水素原子である構造を持
つ9,9-ビス[4-(2-アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレンが好ましい。このようなアクリレートは特開平4−325508号公報で示される公知の方法で得ることができる。
前記式(2)で示されるエポキシ樹脂の中でも、溶融粘度、屈折率の面から、式(2)においてR1が水素原子、R2が水素原子、R3がエチレン、z=1、R4が水素原子である構造を持
つ9,9-ビス[4-(2-グリジジルオキシエトキシ)フェニル]フルオレンが好ましい。このようなエポキシ樹脂は特許第3659533号公報で示される公知の方法で得ることができる。
前記樹脂組成物には、混合時、成形時の流動性を与える、柔軟性を付与する等の目的で、要求される特性を損なうことのない範囲で、単官能または二官能の化合物を含有させることができる。
前記式(1)を含む樹脂組成物に含有させる化合物としては、(メタ)アクリレート等のアクリル樹脂が好ましい。これらの中でも、耐熱性、線膨張係数の点で、脂環式構造を有し、2つ以上の官能基を有する(メタ)アクリレートが好ましい。さらに、脂環式構造を含む2つ以上の官能基を有する(メタ)アクリレートであれば特に制限されないが、耐熱性や透明性の点から下記の化学式(3)および化学式(4)より選ばれた少なくとも1種以上の(メタ)アクリレートが好ましい。

(式(3)中、R1及びR2は、互いに異なっていても良く、水素原子又はメチル
基を示す。aは1又は2を示し、bは0又は1を示す。)

(式(4)中、Xは−H、−CH、−CHOH、−NH
−CHOCOC(CH)=CHまたは−CHOCOCH=CH
及びRは、−Hまたは−CH、Pは0または1を示す。)
前記式(3)、式(4)で示される(メタ)アクリレートの中でも、反応性、熱安定性の面から、式(3)、式(4)より選ばれた少なくとも1種のアクリレートが好ましく、さらに好ましくは、一般式(3)において、R1、R2が水素で、aが1、bが0である構造を持つジシクロペンタジエニルジアクリレート、一般式(4)において、Xが−CH2O
COCH=CH2、R3、R4が水素で、pが1である構造を持つパーヒドロ−1,4;5
,8−ジメタノナフタレン−2,3,7−(オキシメチル)トリアクリレート、X、R3
、R4がすべて水素で、pが0または1である構造を持つアクリレートより選ばれた少な
くとも1種以上のアクリレートであり、粘度等の点を考慮すると、最も好ましくは、 X
、R3、R4がすべて水素で、pが0である構造を持つノルボルナンジメチロールジアクリレートである。式(2)で示される(メタ)アクリレートは、特開平5−70523で示される公知の方法で得ることができる。
前記式(2)を含む樹脂組成物に含有させる化合物としては、グリシジル型エポキシ樹脂が好ましい。
グリシジル型エポキシ樹脂としては、例えばビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂またはこれらの水添化物、ジシクロペンタジエン骨格を有するエポキシ樹脂、トリグリシジルイソシアヌレート骨格を有するエポキシ樹脂、カルド骨格を有するエポキシ樹脂、ポリシロキサン構造を有するエポキシ樹脂が挙げられ、脂環式エポキシ樹脂としては例えば3,4−エポキシシクロヘキシルメチル3'、4'−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、1,2,8,9−ジエポキシリモネン、ε−カプロラクトンオリゴマーの両端にそれぞれ3,4−エポキシシクロヘキシルメタノールと3,4−エポキシシクロヘキサンカルボン酸がエステル結合したもの、水添ビフェニル骨格、及び水添ビスフェノールA骨格を有する脂環式エポキシ樹脂等が挙げられる。)等が好適に用いられる。
前記透明シート中の前記透明性樹脂の含有量は、透明シート全体の15〜70体積%が好ましく、特に20〜60体積%が好ましい。含有量が前記範囲内であると、透明シート作成時の組成物の流動性、粒子の分散性が良好であるため、シートの製造が容易であり、透明性を維持したままの構造発色を示す透明シートの製造を容易にすることができる。
前記樹脂組成物を紫外線等の活性エネルギー線により硬化させる場合は、樹脂組成物中にラジカル、カチオン等を発生する光重合開始剤を含有させることが好ましい。その際に用いる光重合開始剤としては、例えばラジカル発生剤としてはベンゾフェノン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテル、ジエトキシアセトフェノン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニルケトン、2,6−ジメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシドが挙げられ、カチオン発生剤としては芳香族スルホニウム塩、芳香族ヨードニウム塩等が挙げられる。これらの光重合開始剤は2種以上を併用しても良い。
前記光重合開始剤の樹脂組成物中における含有量は、適度に硬化させる量であればよく、樹脂組成物中の官能基を含有する有機成分100重量部に対し、0.01〜2重量部が好ましく、さらに好ましくは、0.02〜1重量部であり、最も好ましくは、0.1〜0.5重量部である。光重合開始剤の添加量が多すぎると、重合が急激に進行し、複屈折の増大、着色、硬化時の割れ等の問題が発生する。また、少なすぎると組成物を十分に硬化させることができず、架橋後に型に付着して取れない等の問題が発生する。
前記樹脂組成物に熱をかけて熱重合させる場合は、必要に応じて、樹脂組成物中に熱重合開始剤を含有させることができる。その際に用いる熱重合開始剤としては、ラジカル発生剤としてはベンゾイルパーオキシド、ジイソプロピルパーオキシカーボネート、t−ブチ
ルパーオキシ(2−エチルヘキサノエート)等が挙げられ、カチオン発生剤としては芳香族スルホニウム塩、芳香族ヨードニウム塩、アンモニウム塩、アルミニウムキレート、三フッ化ホウ素アミン錯体等が挙げられる。使用量は、樹脂組成物中の官能基を含有する有機成分100重量部に対し、3重量部以下が好ましい。
本発明の透明シートは、上述したように球状粒子が上述したような平均粒子径で分散しているものであるが、このような分散状態とするための球状粒子としては、粒子径の標準偏差が10%以内であることが好ましい。
このような球状粒子としては、例えばケイ素を含有する金属酸化物の(微)粒子、半導体(微)粒子等が挙げられる。ケイ素を含有する金属酸化物の微粒子としては、乾燥された粉末状のシリカ微粒子、有機溶媒に分散されたコロイダルシリカ(シリカゾル)を使用することができる。分散性の点で、有機溶媒に分散されたコロイダルシリカ(シリカゾル)を用いることが好ましい。
前記有機溶媒に分散されたコロイダルシリカ(シリカゾル)を用いる場合の有機溶媒としては、樹脂組成物中に使用する有機成分が溶解するものを用いることが好ましく、例えば、アルコール類、ケトン類、エステル類、グリコールエーテル類が挙げられる。脱溶媒のしやすさから、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、n−プロピルアルコール等のアルコール系、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系の有機溶媒に分散されたコロイダルシリカ、シリカゾル、シリカ微粒子を用いることが好ましく、さらに好ましくは、イソプロピルアルコールあるいはメチルエチルケトンに分散されたコロイダルシリカである。特に、イソプロピルアルコールあるいはメチルエチルケトンに分散されたコロイダルシリカを用いた場合は、脱溶媒後の粘度が他の溶剤系に比べて低く、粘度が低い複合体組成物を安定して作製するのに適している。
これらの有機溶媒に分散されたコロイダルシリカ(シリカゾル)、シリカ微粒子は、要求される特性を極端に損なうことのない範囲で、シランカップリング剤、チタネート系カップリング剤等のカップリング剤で表面処理されたものであっても良く、有機溶媒に分散させるために、界面活性剤等の分散剤を使用しているものであっても良い。
前記半導体微粒子としては、光や電子線のようなエネルギーを吸収することにより、2つのエネルギー順位の差に反比例する波長の光を発する性質を有するものであれば、特に制限されないが、カルコゲン化物を含有する微粒子が好適に用いられる。カルコゲン化物としては、カルコゲン(周期律表のVI族元素のうち、酸素(O)、硫黄(S)、セレン(Se)、テルル(Te)、ポロニウム(Po)の5元素の総称)を含む化合物を称し、特に、周期律表のII族元素とVI族元素との化合物であるII−VI族化合物が好ましい。さらに好ましくは、ZnS、CdS、ZnSe、CdSe、ZnTe、CdTe、ZnOから選択される少なくとも1種である。
前記半導体微粒子は、発光効率を増加させるため、ボーア半径の2倍よりも小さな粒子径の半導体超微粒子をマトリックス中に凝集なく均一に分散してなる微粒子にすることが好ましい。マトリックスには、種々の無機物、有機物を用いることができる。無機物としては、ケイ素系の化合物などが挙げられる。有機物としては、耐熱性の面から、ポリイミドや脂環式構造を有する樹脂などが挙げられる。マトリックス中にケイ素やチタンを含有するカップリング剤を使用することもできる。
前記球状粒子の含有量は、特に限定されないが、前記透明シート全体の5〜80体積%が好ましく、特に15〜40体積%が好ましい。含有量が前記範囲内であると、透明シート作製前の組成物の流動性、分散性が良好であるため、シートの製造が容易であり、透明性
を維持したままの構造発色を示す透明シートの製造が容易にすることができる。
このような球状粒子の一次粒子の平均粒径は、特に限定されないが、15〜400nmが好ましく、透明性と流動性とのバランスの点で、さらに好ましくは50〜300nm、最も好ましくは70〜260nmである。平均粒径が下限値未満では、作製した組成物の粘度が極端に増大するため、球状粒子の充填量が制限されるとともに分散性が低下し、十分な透明性を得ることができない場合があった。また、上限値を超えると透明性が著しく低下する場合がある。
前記フルオレン骨格構造を有する透明性樹脂と、前記球状粒子との屈折率差は、特に限定されないが、0.2以下であることが好ましい。屈折率差が前記範囲内であると、特に発色性と透明性のバランスに優れる。
前記透明シート中に分散している前記球状粒子の平均粒子間距離は、特に限定されないが、100〜400nmであることが好ましく、特に120〜360nmであることが好ましい。平均粒子間距離が前記範囲内であると、特に発色性に優れる。前記平均粒子間距離は、例えば走査型電子顕微鏡写真で評価することができる。
また、波長300〜700nmの光線透過率を低下させないために、球状粒子には、1次粒径が400nm以上の微粒子が5%以下の割合で存在するものを用いることが好ましく、その割合が0%であることがより好ましい。
このような透明シートにおいて、透明性を維持したまま構造発色を示すためには、透明シート中で前記球状粒子の配列が充填配列構造を有していることが好ましい。ここで、充填配列構造とは最終的に六方最密充填構造に充填されるべく形式で粒子が充填されている様子を意味する。
ここで、充填配列構造の有無については、例えば透明複合シートの小角X線散乱測定により得られる小角X線散乱プロファイルにおいて、粒子径に相当するピークが少なくとも5つ以上存在し、好ましくは高次のピークまで一定間隔でピークトップが観察された場合、微粒子の1次粒子が充填配列構造を有すると判別する。
上述した樹脂組成物には、必要に応じて、透明性、耐溶剤性、耐熱性等の特性を損なわない範囲で、熱可塑性又は熱硬化性のオリゴマーやポリマーを併用することができる。又、必要に応じて、透明性、耐溶剤性、耐液晶性、耐熱性等の特性を損なわない範囲で、少量の酸化防止剤、紫外線吸収剤、染顔料、他の無機フィラー等の充填剤等を含んでいても良い。
本発明おける透明シートにおいて、透明性とは、シートを透過する光線量のことであり、透明性が高い複合シートは透過する光線量が多いことを意味する。透明性の判定は、透明複合シート(厚さ200μm)のD65標準光源における全光透過率を測定し、70%以上である場合に透明であると判定する。
上述したような透明複合シートを製造する方法について、透明性樹脂と、硬化剤とを含む樹脂組成物を用い、球状粒子としてシリカ(シリカゾル)を用いる場合を例に挙げて説明する。
(1)有機溶媒に分散されたコロイダルシリカ(シリカゾル)と樹脂組成物およびその他の配合物を混合し、必要に応じて、撹拌しながら減圧することにより有機溶媒を除去する方法、
(2)有機溶媒に分散されたコロイダルシリカ(シリカゾル)と樹脂組成物およびその他の配合物を混合し、必要に応じて、脱溶媒した後、キャストし、さらに脱溶媒させる方法

(3)粉末状のシリカ微粒子と樹脂組成物およびその他の配合物を混合し、分散能力の高い混合装置を用いて乾燥した分散させる方法、等が挙げられる。
これらの方法のなかにおいて球状粒子を分散させる方法が重要となるが、分散能力が高い装置としては、例えば、特殊機化工業(株)製のフィルミックスや種々のビーズミル等が挙げられる。分散能力が高い装置を使用するときは、混合又は混練中に、反応が急速に進まないように、温度が上昇しすぎないよう注意する必要がある。
透明複合シートを製造する際における有機溶媒を除去するための温度は、30〜100℃に保つことが好ましく、脱溶媒スピードとのバランスでさらに好ましくは30〜70℃であり、最も好ましくは、35〜60℃である。温度を上げすぎると、流動性が極端に低下したり、ゲル状になってしまったりして、シート化するのが困難となる場合がある。
有機溶媒に分散したコロイダルシリカを用いる場合、この有機溶媒を樹脂組成物中に残存させても良い。有機溶媒を含有させる場合、熱処理等の後処理工程を設け、最終的に樹脂組成物から有機溶媒を脱離させればよい。有機溶媒の樹脂組成物中における含有量は、架橋工程や熱処理等によって揮発成分を除去する工程で、発泡する、シートにうねりが発生する、着色するなどの問題を回避するためには、樹脂組成物全体の10重量%以下が好ましく、さらに好ましくは、5重量%以下であり、最も好ましくは、3重量%以下である。
そして、上述した樹脂組成物を、熱、光等により硬化・架橋して透明複合シートが得られる。シート化する方法としては、複合体組成物をキャストし、必要に応じ乾燥させる方法、表面平滑性を持つガラス板、プラスチック板、金属板等の間に所望のシート厚さが得られるようにスペーサーを挟み、樹脂組成物を挟み込む方法等がある。後者を用いて、活性エネルギー線等で硬化させる場合は、少なくとも1方は、透明なガラス板、プラスチック板を使用する必要がある。
樹脂組成物を架橋させる方法としては、活性エネルギー線により硬化させる方法、熱をかけて熱重合させる方法等があり、これらを併用することもできる。使用する活性エネルギー線としては、紫外線が好ましい。紫外線を発生させるランプとしては、例えば、メタルハライドタイプ、高圧水銀灯ランプ等が挙げられる。
活性エネルギー線による硬化及び/又は熱重合による架橋後に高温で熱処理する場合は、その熱処理工程の中に、線膨張係数を低減する等の目的で、窒素雰囲気下又は真空状態で、200℃〜300℃、1〜24時間の熱処理工程を含ませることが好ましい。
前記樹脂組成物中には、樹脂組成物作製時に重合反応が進行し、粘度が上昇することを防ぐ目的で、重合禁止剤を含有させても良い。硬化反応の完結、揮発分の除去をする等の目的で、さらに高温での熱処理工程を併用することが好ましい。
(電子部品用基板)
本発明の電子用基板は、上述した透明複合シートで構成されているものである。このような透明複合シートは、着色材を使用せずに発色するので透明性、耐熱性、耐久性に優れ、具体的に電子用基板として透明板、光学レンズ、光ディスク基板、液晶表示素子用プラスチック基板、カラーフィルター用基板、有機EL表示素子用プラスチック基板、太陽電池基板、タッチパネル、光学素子、光導波路等に利用できる。
本発明の透明複合シートを、特に液晶表示素子用プラスチック基板、カラーフィルター用基板、有機EL表示素子用プラスチック基板、太陽電池基板、タッチパネル等として用い
る場合は、シートの厚みが50〜2000μmであることが好ましく、より好ましくは50〜400μmである。
以下、本発明を実施例および比較例に基づいて詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
(実施例1)
1.複合体組成物の製造
前記化学式(1)において、R1が水素原子、R2が水素原子、R3がエチレン、z=1、R4が
水素原子である構造を持つ9,9-ビス[4-(2-アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレン(新中村化学工業株式会社製A−BPEF)を1重量部、前記化学式(4)において、X、R3、R4がすべて水素で、pが0である構造を持つノルボルナンジメチロールジアクリレート(IRR214−K;ダイセルサイテック製)9重量部、γ−アクリロキシプ
ロピルメチルジメトキシシラン2重量部、イソプロピルアルコール分散型コロイダルシリカ40重量部(シリカ含量30重量%、平均粒子径120nm、日産化学製)を配合し、40℃で撹拌しながら減圧下揮発分を除去した。
その後、光重合開始剤として1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン(チバスペシャリティケミカル製のイルガキュア184)を0.06重量部添加して溶解させた後、さらに減圧下揮発分を除去し、複合体組成物を得た。複合体組成物中の溶剤含有量は、10%未満であった。
2.シート化
得られた複合体組成物を所定の温度(60〜80℃)のオーブンで加熱し、ガラス板上に作成した厚み0.4mmの枠内に注入し、上部よりガラス板をのせ枠内に複合体組成物を充填した。そして、ガラス板に挟んだ複合体組成物に、両面から約500mJ/cm2
のUV光を照射して硬化させ、ガラスからシートを剥離した。 ガラスから剥離したシー
トを、それぞれ、真空オーブン中で、約100℃で3時間加熱後、さらに約230℃で2時間加熱し、光学シートを得た。
走査型電子顕微鏡を用いて測定した複合シート中の球状粒子の平均粒子径は120nmであり、球状粒子の平均粒子間距離は、174nmであった。複合体組成物の硬化アニール後の400℃、1時間加熱後の重量残さからシリカ体積分率は25vol%であった。また、アッベ屈折計で測定した、使用したフルオレン骨格構造を有する透明樹脂の屈折率は1.54であり、球状粒子との屈折率差は、0.2以下であった。
(実施例2)
前記実施例1において、9,9-ビス[4-(2-アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレンを2.5重量部、ノルボルナンジメチロールジアクリレートを7.5重量部とした他は、実験例1と同様にして透明複合体シートを作製した。
走査型電子顕微鏡を用いて測定した複合体シート中の球状粒子の平均粒子径は120nmであり、球状粒子の平均粒子間距離は、169nmであった。複合体組成物の硬化アニール後の400℃、1時間加熱後の重量残さからシリカ体積分率は25vol%であった。また、使用したフルオレン骨格構造を有する透明樹脂の屈折率は1.55であり、球状粒子との屈折率差は、0.2以下であった。
(実施例3)
前記実施例1において、9,9-ビス[4-(2-アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレンを5重量部、ノルボルナンジメチロールジアクリレートを5重量部とした他は、実験例1と同様にして透明複合体シートを作製した。
走査型電子顕微鏡を用いて測定した複合体シート中の球状粒子の平均粒子径は120nm
であり、球状粒子の平均粒子間距離は、172nmであった。複合体組成物の硬化アニール後の400℃、1時間加熱後の重量残さからシリカ体積分率は25vol%であった。また、使用したフルオレン骨格構造を有する透明樹脂の屈折率は1.57であり、球状粒子との屈折率差は、0.2以下であった。
(実施例4)
前記実施例1において、9,9-ビス[4-(2-アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレンを10重量部、ノルボルナンジメチロールジアクリレートを0重量部とした他は、実験例1と同様にして透明複合体シートを作製した。
走査型電子顕微鏡を用いて測定した複合体シート中の球状粒子の平均粒子径は120nmであり、球状粒子の平均粒子間距離は、170nmであった。複合体組成物の硬化アニール後の400℃、1時間加熱後の重量残さからシリカ体積分率は25vol%であった。また、使用したフルオレン骨格構造を有する透明樹脂の屈折率は1.61であり、球状粒子との屈折率差は、0.2以下であった。
(比較例1)
前記実施例1において、9,9-ビス[4-(2-アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレンを0重量部、ノルボルナンジメチロールジアクリレートを10重量部とした他は、実験例1と同様にして透明複合体シートを作製した。
走査型電子顕微鏡を用いて測定した複合体シート中の球状粒子の平均粒子径は120nmであり、球状粒子の平均粒子間距離は、177nmであった。複合体組成物の硬化アニール後の400℃、1時間加熱後の重量残さからシリカ体積分率は25vol%であった。また、使用したフルオレン骨格構造を有する透明樹脂の屈折率は1.53であり、球状粒子との屈折率差は、0.2以下であった。
(実施例5)
前記実施例1において、配合原料を9,9-ビス[4-(2-アクリロイルオキシエトキシ)フェ
ニル]フルオレンを2.5重量部、ノルボルナンジメチロールジアクリレートを7.5重
量部、γ−アクリロキシプロピルメチルジメトキシシランを2重量部、メチルエチルケトン分散型コロイダルシリカ30重量部(シリカ含量40重量%、平均粒子径210nm、日産化学製)とした他は、実験例1と同様にして透明複合体シートを作製した。
走査型電子顕微鏡を用いて測定した複合体シート中の球状粒子の平均粒子径は210nmであり、球状粒子の平均粒子間距離は、263nmであった。複合体組成物の硬化アニール後の400℃、1時間加熱後の重量残さからシリカ体積分率は33vol%であった。また、使用したフルオレン骨格構造を有する透明樹脂の屈折率は1.55であり、球状粒子との屈折率差は、0.2以下であった。
(比較例2)
前記実施例5において、9,9-ビス[4-(2-アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレンを0重量部、ノルボルナンジメチロールジアクリレートを10重量部とした他は、実験例5と同様にして透明複合体シートを作製した。
走査型電子顕微鏡を用いて測定した複合体シート中の球状粒子の平均粒子径は210nmであり、球状粒子の平均粒子間距離は、249nmであった。複合体組成物の硬化アニール後の400℃、1時間加熱後の重量残さからシリカ体積分率は33vol%であった。また、使用したフルオレン骨格構造を有する透明樹脂の屈折率は1.53であり、球状粒子との屈折率差は、0.2以下であった。
以上のようにして作製した透明複合シートについて、下記に示す評価方法により、各種特性を測定した。評価項目を内容と共に示す。得られた結果を表1に示す。
1.構造発色性
構造発色性は、全光線透過率の波長依存性で評価した。全光線透過率の波長依存性は、紫外可視赤外分光光度計V−670(日本分光株式会社製)で測定した。透明シートの波
長分散の光線透過率において、波長領域(300〜500nm)の光線透過率における反射率、緑色の波長領域(500〜600nm)の光線透過率における反射率をそれぞれ青色、緑色の構造発色性の指標とした。それぞれの領域の光線透過率において反射率が30%以上、好ましくは45%以上の単峰性のピークが観察された場合に構造発色を示すと判別する。
2.透明性(全光線透過率)
透明性(全光線透過率)は、紫外可視赤外分光光度計V−670(日本分光株式会社製
)を用いて測定した。
3.基板の厚さ
マイクロメータにより、シート中央部(リタデーション測定点)を測定した。
4.球状粒子の平均粒子径
ナノ粒子の平均粒子径は、SPring−8 BL08B2ラインの高輝度放射光を用い
、X線波長は1.5Å、カメラ長は6mに調整し、検出器にはイメージングプレートを備えた小角X線散乱測定装置を使用して測定した。得られた散乱強度プロファイルから株式
会社リガク製の解析ソフトウェアNANO−Solverを用いて球状粒子の平均粒子径を測定した。
5.粒子中心間距離
シート中のナノ粒子の粒子中心間距離は電界放出型電子顕微鏡(FE-SEM、株式会社日立製作所製)を用いて観察し計測した。
表1から明らかなように、実施例1〜4は、400nmにおける光線透過率において反射率が45%以上であり、青色発光(構造発色)していることが確認された。また全光線透過率が70%以上であり、透明性を有していることが確認された。
表1から明らかなように、実施例5は、550nmにおける光線透過率において反射率が45%以上であり、緑色発光(構造発色)していることが確認された。また全光線透過率が70%以上であり、透明性を有していることが確認された。
本発明によれば、着色剤を用いずに発色し透明性、耐熱性、耐久性に優れるので、具体的に電子用基板としては透明板、光学レンズ、光ディスク基板、液晶表示素子用プラスチック基板、カラーフィルター用基板、有機EL表示素子用プラスチック基板、太陽電池基板、タッチパネル、光学素子、光導波路等に利用できる。


Claims (4)

  1. フルオレン骨格構造を有する透明性樹脂と、球状粒子とを含む透明シートであって、
    前記フルオレン骨格構造を有する透明性樹脂が式(1)で示されるアクリル樹脂であって、
    前記球状粒子が、該透明シート中に平均粒子径70〜260nmで分散し
    前記球状粒子の含有量は、透明シート全体の15〜40体積%であって、
    前記球状粒子がシリカ微粒子であることを特徴とする透明シート。


    ( 式中、R1はシアノ基、ハロゲン原子またはアルキル基を示し、R2はアルキル基を示し、R3はアルキレン基を示し、R4は水素原子またはメチル基を示し、xは0〜4の整数、yは2〜4の整数、zは1以上の整数である。)
  2. 前記透明シート中に分散している前記シリカ微粒子の中心間距離の平均は、100〜360nmである請求項に記載の透明シート。
  3. 前記フルオレン骨格構造を有する透明性樹脂と、前記シリカ微粒子との屈折率差が、0.2以下である請求項1または2に記載の透明シート。
  4. 請求項1ないしのいずれか1項に記載の透明シートで構成されてなることを特徴とする電子部品用基板。
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