JP2014172201A - 繊維強化樹脂シート、一体化成形品およびその製造方法、並びに実装部材 - Google Patents

繊維強化樹脂シート、一体化成形品およびその製造方法、並びに実装部材 Download PDF

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Abstract

【課題】互いに相溶しない熱可塑性樹脂間においても強固な接合を有し、他の熱可塑性樹脂材料と容易に一体化することのできる繊維強化樹脂シートおよびそれを用いてなる一体化成形品を提供する。
【解決手段】強化繊維からなる不織布と熱可塑性樹脂からなる繊維強化樹脂シートにおいて、該不織布の一方の面に熱可塑性樹脂が含浸されてなり、もう一方の面は該不織布を構成する強化繊維が露出してなるシート状中間基材である繊維強化樹脂シートおよびそれを用いてなる一体化成形品。
【選択図】図1

Description

本発明は、異なる熱可塑性樹脂を併用しても、その間での強固な接合強度を有する一体化成形品を与えることができる繊維強化樹脂シート、前記要素を含んでなる一体化成形品、およびそれらの製造方法ならびに実装部材に関する。
強化繊維とマトリックス樹脂からなる繊維強化プラスチック(FRP)は、軽量性や力学特性に優れることから、各種産業用途に幅広く利用されている。中でも、熱可塑性樹脂を用いたFRPは、上述した軽量性や力学特性に加え、高速成形による大量生産が可能であり、リサイクル性にも優れることから、近年、特に注目を集めている。
一般的にFRPを用いた部品や構造体の製造においては、複数の部材を一体化することにより製造されるため、部材ないし材料同士を接合する工程が必要となる。この接合手法としては、ボルト、リベット、ビスなどの機械的接合方法や、接着剤を使用する接合方法が一般に知られている。機械的接合方法は汎用性の高い手法だが、接合部分の加工コストやボルト等による重量増加、加工部の応力集中による脆弱化が課題となる場合がある。また、接着剤を使用する接合方法では、接着剤の塗布工程が必要であること、接合強度の限界が接着剤の強度に依存すること、接合部の信頼性に満足が得られないことなどが問題となる場合がある。
一方、熱可塑性樹脂を用いたFRPに特徴的な接合手法として、溶着接合が知られている。熱可塑性樹脂は加熱すると溶融する性質を有し、この性質を利用してハイサイクルで低コストに接合が可能であることから、活発な技術開発が進められている。しかしながら、互いに相溶しない熱可塑性樹脂同士は溶着接合を行えず、異なる熱可塑性樹脂の界面で容易に剥離してしまう。これに対し、スプリングバックをさせた多孔質なシート材を用い、その表面凹凸によりFRPの界面部に微細なアンカリング構造を形成させ、樹脂同士の接着を向上させる技術が開示されている(特許文献1、2)。かかる技術では熱可塑性樹脂が、多孔質なシート材の孔に進入するために接合されていると推察されるが、アンカリングに関する孔の形状や構造の制御が実施されておらず、接合性の向上については、高度化する市場の要求をするためには、さらなる改善が必要である。また、上記特許文献に記載される微細なアンカリング構造では、相溶しない熱可塑性樹脂同士には、十分な接着力を発揮できないという問題もある。
特開2002−104091号公報 特開平8−230114号公報
そこで本発明は、上述した技術課題を解消し、互いに相溶しない熱可塑性樹脂間においても強固な接合を有する一体化成形品を与えることができ、他の熱可塑性樹脂材料と容易に一体化することのできる繊維強化樹脂シートならびにそれを用いた一体化成形品を提供することを目的とする。また、本発明の他の目的は、前記一体化成形品を用いてなる実装部材を提供することにある。
前記課題を解決するために、本発明は次のいずれかの構成を採用する。
(1)強化繊維からなる不織布の一方の側に熱可塑性樹脂(A)が含浸されており、該不織布のもう一方の側には不織布を構成する強化繊維が露出した領域を有する、繊維強化樹脂シート。
(2)強化繊維が露出した領域における強化繊維の体積割合Vfmが20体積%以下である、前記(1)に記載の繊維強化樹脂シート。
(3)前記不織布は、不連続性強化繊維が略モノフィラメント状に分散してなる、前記(1)または(2)に記載の繊維強化樹脂シート。
(4)前記不織布は、不連続性強化繊維がモノフィラメント状かつランダムに分散してなる、前記(1)または(2)に記載の繊維強化樹脂シート。
(5)強化繊維が露出した領域における強化繊維の面外角度θzが5°以上である、前記(1)〜(4)のいずれかに記載の繊維強化樹脂シート。
(6)前記不織布を構成する強化繊維が炭素繊維である、前記(1)〜(5)のいずれかに記載の繊維強化樹脂シート。
(7)前記熱可塑性樹脂(A)が、ポリオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリスチレン系樹脂、PPS系樹脂、ポリエーテルケトン系樹脂および変性ポリフェニレンエーテル系樹脂からなる群より選択される、前記(1)〜(6)のいずれかに記載の繊維強化樹脂シート。
(8)前記(1)〜(7)のいずれかに記載の繊維強化樹脂シートからなる第1の部材に、熱可塑性樹脂(B)から構成される別の成形体からなる第2の部材が、前記繊維強化樹脂シートにおける強化繊維が露出した領域に熱可塑性樹脂(B)が含浸して接合してなる、一体化成形品。
(9)繊維強化樹脂シートにおける熱可塑性樹脂(A)と第2の部材を構成する熱可塑性樹脂(B)とが最大高さRy50μm以上、平均粗さRz30μm以上の凹凸形状を有して界面層を形成してなる、前記(8)に記載の一体化成形品。
(10)前記(8)または(9)に記載の一体化成形品を製造する方法であって、前記第2の部材が射出成形による成形体であり、第2の部材をインサート射出成形ないしアウトサート射出成形により第1の部材に接合する、一体化成形品の製造方法。
(11)前記(8)または(9)に記載の一体化成形品を製造する方法であって、前記第2の部材がプレス成形による成形体であり、第2の部材をプレス成形により第1の部材に接合してなる、一体化成形品の製造方法。
(12)前記(10)または(11)に記載の一体化成形品が、自動車内外装、電気・電子機器筐体、自転車、スポーツ用品用構造材、航空機内装材、輸送用箱体として用いられる、実装部材。
である。
本発明の繊維強化樹脂シートによれば、本来接合が難しい熱可塑性樹脂同士の接合、とりわけの異なる樹脂間の接合においても、ファスナーや接着剤、などの接合媒体を用いることなく、強固な接合を与えることができる一体化成形品を製造することができる。また、かかる一体化成形品においては、異なる熱可塑性樹脂による成形材料を用いたハイブリッド構造を容易に形成でき、各々の樹脂特性に基づく機能付与により付加価値の高い一体化成形品が与えられる。さらには、本発明の一体化成形品は、他部材と溶着可能な被着面を含むことから生産性に優れ、上述効果により、自動車部材、電気・電子機器筐体、航空機部材、などの用途における実装部材として好適に適用できる。
本発明の繊維強化樹脂シートの断面の一例を示す模式図。 本発明の繊維強化樹脂シートの拡大断面の一例を示す模式図。 本発明で用いる強化繊維からなる不織布における繊維束の重量分率の一例を示すグラフ。 本発明で用いる強化繊維からなる不織布における強化繊維の分散状態の一例を示す模式図。 本発明の一体化成形品における界面層の拡大断面の一例を示す模式図。 本発明の実施例および比較例にて用いる引張せん断接着試験片を示す斜視図。 本発明の実施例および比較例にて得られる一体化成形品の斜視図。 本発明の実施例および比較例にて得られる一体化成形品の斜視図。
本発明の繊維強化樹脂シートは、強化繊維からなる不織布の一方の側に熱可塑性樹脂(A)が含浸されており、該不織布のもう一方の側は不織布を構成する強化繊維が露出した領域を有する。そして、本発明の繊維強化樹脂シートは、シート状中間基材として好適に用いられる。
以下、本発明の繊維強化樹脂シートの構成について詳しく説明する。
本発明の繊維強化樹脂シートは、その構成要素として強化繊維からなる不織布を含む。ここで、不織布とは、強化繊維から構成される面状体であって、強化繊維以外に粉末形状や繊維形状の樹脂成分を含んでもよい。
本発明における不織布には、その一方の側に熱可塑性樹脂(A)が含浸され、もう一方の側においては該不織布を構成する一部の強化繊維が露出した領域を有する。ここで、図1に本発明における繊維強化樹脂シートの一態様を示す。かかる強化繊維の露出とは、熱可塑性樹脂が含浸していない状態を指し示す(図1における強化繊維2)。すなわち不織布を構成する強化繊維が状態を実質的に同じくして熱可塑性樹脂(A)が含浸されてなる層(図1における3)から突出している態様を指す。また、強化繊維が露出した領域とは、露出した強化繊維が存在している空間を意味している。この強化繊維が露出した領域における強化繊維と強化繊維の間の空隙に、他の熱可塑性樹脂(B)からなる成形材料を溶融含浸して接合した際、かかる露出した強化繊維を介して、他の成形材料を構成する熱可塑性樹脂とアンカリングした界面層を形成するため、含浸媒体としての機能を持つ。さらに本発明においては、強化繊維が不織布の構造を有していることにより、一般的に高粘度とされる熱可塑性樹脂を容易に含浸できる。
本発明における前記強化繊維の露出は、強化繊維が露出した領域における強化繊維の占める体積割合Vfmが20体積%以下であることが他の成形材料を接合した際の接合強度の観点、繊維強化樹脂シートの取り扱い性の観点から好ましい。かかる体積割合Vfmは、強化繊維が露出した領域(不織布の部分的な領域)の単位体積あたりに含まれる強化繊維の体積含有率のことを指す。かかる体積割合Vfmを上記範囲とすることで、強化繊維が露出した領域中に多くの空隙部が存在し、一体化成形品を作製する際に被着体たる他の成形材料を構成する熱可塑性樹脂(B)が含浸する際の流路が形成されるため、かかる熱可塑性樹脂を容易に含浸することができる。さらには、強化繊維が露出した領域における強化繊維間の流路が複雑化することにより、熱可塑性樹脂同士の界面層において、露出した強化繊維に由来するアンカリング構造が形成される。そのため、得られる一体化成形品に優れた機械特性と信頼性が付与されるばかりか、異なる熱可塑性樹脂においても強固な接合を有するため、一体化成形品とした際の高い接合強度を実現することができる。
一方、前記した体積割合Vfmが20体積%より大きい場合は、接合の際に熱可塑性樹脂(B)の含浸が困難となり、高い含浸圧力の付与や低粘度な樹脂の選択が必要となり、含浸手段や樹脂種の選択肢を大きく制限することになる。特に、高い含浸圧力は強化繊維のアライメントを乱すため、そもそも所望の構造にある一体化成形品が得られない場合がある。また、繊維強化樹脂シートに熱可塑性樹脂(B)を含浸した際に、未含浸が形成され、これによる一体化成形品における機械特性や信頼性が損なわれることがある。
前記した体積割合Vfmとして、好ましくは15体積%以下である。かかる体積割合Vfmの下限値は、強化繊維からなる不織布の取り扱い性や繊維強化樹脂シートにした際の成形性などの実用性を鑑みて5体積%以上であることが好ましい。
前記した体積割合Vfmは、強化繊維からなる不織布における露出した領域の重量と容積から測定する方法を例示できる。繊維強化樹脂シートからカッターナイフやかみそりなどを用いて、熱可塑性樹脂成分が含浸した部分を取り去り、得た不織布の部分、すなわち強化繊維が露出した領域について厚みtmを測定する。かかる厚みtmは、JIS R7602(1995)に規定される「炭素繊維織物の厚さ測定方法」に準拠し、50kPaを20秒間付与したのちに測定される値とする。なお、測定に際して、強化繊維が露出した領域の形態保持が難しい場合は、金属製メッシュ越しに厚みの測定をおこない、その後、金属メッシュ分の厚みを差し引けばよい。強化繊維が露出した領域における強化繊維の重量Wmは、JIS R7602(1995)に規定される「炭素繊維織物の単位面積当たりの重量測定方法」に準拠して測定される値とする。強化繊維が露出した領域の容積は、その領域の面積Sと厚みtmから算出した値を用いる。上記にて測定される重量Wm、厚みtmから、次式により強化繊維が露出した領域における強化繊維の占める体積割合Vfm(体積%)を算出する。ここで、式中のρfは強化繊維の密度(g/cm)、Sは強化繊維からなる不織布の切り出し面積(cm)である。
・Vfm(体積%)=(Wm/ρf)/(S×tm)×100
本発明において用いる不織布は、繊維強化樹脂シートを構成する熱可塑性樹脂、すなわち熱可塑性樹脂(A)および他の成形材料を構成する熱可塑性樹脂、すなわち熱可塑性樹脂(B)の界面層における補強材としての機能も有する。ここで、かかる界面層とは、繊維強化樹脂シートは強化繊維からなる不織布と該不織布に含浸されてなる熱可塑性樹脂により構成されるが、該繊維強化樹脂シートにおいて不織布が露出してなる領域側の面をいい、すなわち、一体化成形品としたときに、繊維強化樹脂シートにおける熱可塑性樹脂(A)と他の成形材料を構成する熱可塑性樹脂(B)とが接触してなる面となる部分をいう。上述した体積割合Vfmを満足する不織布は、強化繊維の立体障害に原因する嵩高さを持つゆえ、不織布の厚み方向に対する繊維配向が生まれる。そのため、繊維強化樹脂シートの面内方向に拡がる界面層と強化繊維とが一定の角度を形成し、強化繊維が界面層を跨って配置される確率が高まる。これにより、負荷されるせん断荷重に対し、繊維破断や界面剥離を効果的に生じさせることができ、一体化成形品としたときに界面層における強固な接合を与える。一方、前記した体積割合Vfmが上述した範囲を外れる場合、強化繊維が界面層の存在する面内方向に対して略並行に配置されるため、補強効果を有効に活用できず、界面層でのせん断強度が損なわれることがある。
上述した機能をより効果的に発現できる態様として、繊維強化樹脂シートの強化繊維が露出した領域における強化繊維の面外角度θzを5°以上とすることが好ましい。ここで、強化繊維の面外角度θzとは、繊維強化樹脂シートを構成する強化繊維が露出した領域における強化繊維の厚さ方向に対する傾き度合いであって、値が大きいほど厚み方向に立って傾いていることを示し、0〜90°の範囲で与えられる。すなわち、強化繊維の面外角度θzをかかる範囲内とすることで、上述した界面層における補強機能をより効果的に発現でき、界面層により強固な接合を与えることができる。強化繊維の面外角度θzの上限値は特に制限ないが、繊維強化樹脂シートとした際の取り扱い性の観点から15°以下であることが好ましく、より好ましくは10°以下である。
ここで、強化繊維の面外角度θzは、繊維強化樹脂シート4の面方向に対する垂直断面の観察に基づき測定する方法が例示できる。図2は、測定される繊維強化樹脂シートにおける強化繊維の露出した領域の面方向に対する垂直断面(a)とその奥行き方向(b)を示すものである。図2(a)において、強化繊維5、6の断面は、測定を簡便にするため、楕円形状に近似されている。ここで、強化繊維5の断面は、楕円アスペクト比(=楕円長軸/楕円短軸)が小さく見られ、対して強化繊維6の断面は、楕円アスペクト比が大きく見られる。一方、図2(b)によると、強化繊維5は、奥行き方向Yに対してほぼ平行な傾きを持ち、強化繊維6は、奥行き方向Yに対して一定量の傾きを持っている。この場合、図2(a)における断面の強化繊維5については、繊維強化樹脂シートの面方向Xと繊維主軸(楕円における長軸方向)αとがなす角度θxが、強化繊維の面外角度θzとほぼ等しくなる。一方、強化繊維6については、角度θxと面外角度θzの示す角度に大きな乖離があり、角度θxが面外角度θzを反映しているとはいえない。したがって、繊維強化樹脂シートにおける強化繊維強化繊維の露出した領域の面方向に対する垂直断面から面外角度θzを読み取る場合、繊維断面の楕円アスペクト比が一定以上のものについて、抽出することで面外角度θzの検出精度を高めることができる。
ここで、抽出対象となる楕円アスペクト比の指標としては、単繊維の断面形状が真円に近い、すなわち強化繊維の長尺方向に垂直な断面における繊維アスペクト比が1.1以下である場合、楕円アスペクト比が20以上の強化繊維についてX方向と繊維主軸αの為す角度を測定し、これを面外角度θzとして採用する方法を利用できる。一方、単繊維の断面形状が楕円形や繭形等であり、繊維アスペクト比が1.1より大きい場合には、より大きな楕円アスペクト比を持つ強化繊維に注目し、面外角度を測定した方がよく、繊維アスペクト比が1.1以上1.8未満の場合には楕円アスペクト比が30以上、繊維アスペクト比が1.8以上2.5未満の場合には楕円アスペクト比が40以上、繊維アスペクト比が2.5以上の場合には楕円アスペクト比が50以上の強化繊維を選び、面外角度θzを測定するとよい。
本発明において強化繊維は、上述したとおり、その集合体の中に多くの空隙部を有する必要があり、かかる態様を満足するうえで、不織布の形態をとる。さらに、不織布を構成する強化繊維の形態としては、所定長に切断された有限長の不連続性強化繊維が、不織布を容易に調整できる観点からは、不連続性強化繊維であることが好ましい。
ここで、不織布の形態とは、強化繊維のストランドおよび/またはモノフィラメント(以下、ストランドとモノフィラメントを総称して細繊度ストランドと称す)が面状に分散した形態を指し、チョップドストランドマット、コンティニュアンスストランドマット、抄紙マット、カーディングマット、エアレイドマット、などが例示できる。ストランドとは、複数本の単繊維が並行に配列して集合したもので、繊維束とも言われる。不織布の形態において、細繊度ストランドは分散状態に通常、規則性を有しない。かかる不織布の形態とすることで、賦形性に優れることから、複雑形状への成形が容易である。また、不織布中の空隙が樹脂含浸の進行を複雑化するため、かかる一体化成形品とした際に熱可塑性樹脂(A)および他の成形材料を構成する熱可塑性樹脂(B)がより複雑な界面を形成し、優れた接着能力を発現する。
前記不織布形態として、より好ましくは、不連続性強化繊維が略モノフィラメント状に分散した不織布である。ここで、略モノフィラメント状に分散するとは、強化繊維からなる不織布を構成する不連続性強化繊維のうち、フィラメント数100本未満の細繊度ストランドが50重量%以上含まれることを指す。かかる不連続性強化繊維が略モノフィラメント状に分散していることで、強化繊維同士の立体障害がより大きくなり、一体化成形品とした際に強化繊維と熱可塑性樹脂のアンカリング構造が強固なものとなるため好ましい。さらに、細繊度ストランドの構成単位が小さいことで、複雑かつ緻密な繊維ネットワーク構造が形成され、これに由来する微細な空隙により、一体化成形品としたときの界面層におけるアンカリング構造を、緻密かつ深く入り組んだものとできるため好ましい。これにより、界面層により一体化成形品における強固な接合がもたらされる。さらには、しばしば破壊の起点となる繊維束端において、弱部が極小化されるため、上述した補強材としての機能が高まり、補強効率および信頼性に優れた界面層を形成する。かかる観点から、不連続性強化繊維の70重量%以上がフィラメント数100本未満の細繊度ストランドにて存在することが好ましい。
かかる強化繊維からなる不織布を構成する不連続性強化繊維のフィラメント状の状態は、次に例示する方法により測定される。繊維強化樹脂シートを金属メッシュで挟持して熱可塑性樹脂成分を焼失させて残った不織布を取り出す。取り出した該不織布について、重量Wmを測定した後、視認される繊維束をピンセットにより全て抽出し、それら全ての繊維束について、長さLsを1/100mmの精度で、重量Wsを1/100mgの精度で測定する。経験則上、視認により抽出できる繊維束は、フィラメント数50本程度までであって、抽出される殆どの繊維束はフィラメント数100本以上の領域に属し、片や残分は100本未満とする。また、後に算出されるフィラメント数の結果において、フィラメント数が100本未満となる場合、これについてはWsの積算対象から除外する。i番目(i=1〜n)に抽出された繊維束の長さLsiおよび重量Wsiから、次式により繊維束におけるフィラメント数Fiを算出する。ここで、式中におけるDはフィラメントの繊度(mg/mm)である。
・Fi(本)=Wsi/(D×Lsi)
上記にて算出されるFiをもとに、繊維束の選別をおこなう。図3は、本発明の繊維強化樹脂シートを構成する不織布においてフィラメント数50本毎の階級別で見た、各階級に占める重量分率の内訳を示す。図3において、フィラメント数の小さい側から2階級(フィラメント0〜100本)の棒グラフと、全ての棒グラフの総和との比率が、フィラメント数100本未満の繊維束の重量分率Rw(wt%)に相当する。これは、上記にて実測された数値を用いて、次式により算出できる。
・Rw(重量%)={Wm−Σ(Wsi)}/Wm×100
さらに、前記不織布の形態として、とりわけ好ましくは、不連続性強化繊維がモノフィラメント状かつランダムに分散した不織布である。ここで、モノフィラメント状に分散しているとは、繊維強化樹脂シートにおいて任意に選択した不連続性強化繊維について、その二次元接触角が1度以上である単繊維の割合が80%以上であることを指し、換言すれば、構成要素中において単繊維の2本以上が接触して並行した束が20%未満であることをいう。従って、ここでは、少なくとも繊維強化樹脂シートの不織布を構成する不連続性強化繊維について、フィラメント数100本以下の繊維束の重量分率Rwが100%に該当するものを対象とする。
ここで、二次元接触角とは、該不織布における不連続性強化繊維の単繊維と該単繊維と接触する単繊維とで形成される角度のことであり、接触する単繊維同士が形成する角度のうち、0度以上90度以下の鋭角側の角度と定義する。この二次元接触角について、図面を用いてさらに説明する。図4(a)、(b)は本発明における一実施態様であって、該不織布における強化繊維を面方向(a)および厚み方向(b)から観察した場合の模式図である。単繊維7を基準とすると、単繊維7は図4(a)では単繊維8〜12と交わって観察されるが、図4(b)では単繊維7は単繊維11および12とは接触していない。この場合、基準となる単繊維7について、二次元接触角度の評価対象となるのは単繊維8〜10であり、接触する2つの単繊維が形成する2つの角度のうち、0度以上90度以下の鋭角側の角度13である。
かかる二次元接触角を測定する方法としては、特に制限はないが、例えば、繊維強化樹脂シートの強化繊維が露出した領域側の表面から強化繊維の配向を観察する方法、、強化繊維の割合Vfmの測定時と同様の方法にて取り出した不織布を、透過光を利用して強化繊維の配向を観察する方法、光学顕微鏡または電子顕微鏡を用いて、強化繊維の配向を観察する方法が例示できる。さらに、繊維強化樹脂シートをX線CT透過観察して強化繊維の配向画像を撮影する方法も例示できる。X線透過性の高い強化繊維の場合には、強化繊維にトレーサ用の繊維を混合しておく、あるいは強化繊維にトレーサ用の薬剤を塗布しておくと、強化繊維を観察しやすくなるため好ましい。前記観察方法に基づき、繊維分散率は次の手順で測定する。無作為に選択した単繊維(図4における単繊維7)に対して接触している全ての単繊維(図4における単繊維8〜10)との二次元接触角を測定する。これを100本の単繊維についておこない、二次元接触角を測定した全ての単繊維の総本数と、二次元接触角が1度以上である単繊維の本数との比率から、割合を算出する。
さらに、かかる不連続性強化繊維がランダムに分散しているとは、繊維強化樹脂シート中にて任意に選択した不連続性強化繊維の二次元配向角の平均値が30〜60度であることをいう。二次元配向角とは、不連続性強化繊維の単繊維と該単繊維と交差する単繊維とで形成される角度のことであり、交差する単繊維同士が形成する角度のうち、0度以上90度以下の鋭角側の角度と定義する。この二次元配向角について、図面を用いてさらに説明する。図4(a)、(b)において、単繊維7を基準とすると、単繊維7は他の単繊維8〜12と交差している。ここで交差とは、観察する二次元平面において、基準とする単繊維が他の単繊維と交わって観察される状態のことを意味し、単繊維7と単繊維8〜12が必ずしも接触している必要はなく、投影して見た場合に交わって観察される状態についても例外ではない。つまり、基準となる単繊維7について見た場合、単繊維8〜12の全てが二次元配向角の評価対象であり、図4(a)中において二次元配向角は交差する2つの単繊維が形成する2つの角度のうち、0度以上90度以下の鋭角側の角度13である。
ここで、繊維強化樹脂シートから二次元配向角を測定する方法としては、特に制限はないが、例えば、繊維強化樹脂シートの強化繊維が露出した領域側の表面から強化繊維の配向を観察する方法が例示でき、上述した二次元接触角の測定方法と同様の手段を取ることができる。二次元配向角の平均値は、次の手順で測定する。無作為に選択した単繊維(図4における単繊維7)に対して交差している全ての単繊維(図4における単繊維8〜12)との二次元配向角の平均値を測定する。例えば、ある単繊維に交差する別の単繊維が多数の場合には、交差する別の単繊維を無作為に20本選び測定した平均値を代用してもよい。前記測定について別の単繊維を基準として合計5回繰り返し、その平均値を二次元配向角の平均値として算出する。
さらに、不連続性強化繊維がモノフィラメント状かつランダムに分散していることで、上述した略モノフィラメント状に分散した不織布により与えられる性能を最大限まで高めることができ、界面層において、とりわけ優れた接着性を発現するため好ましい。また、繊維強化樹脂シートおよびこれを用いた一体化成形品において等方性を付与することができ、該繊維強化樹脂シートの取り扱いにおいて力学特性の方向性を考慮する必要がないうえ、力学特性の方向性に起因する界面層での内部応力が小さいため、界面層での優れた機械特性が与えられる。かかる観点から、強化繊維の二次元配向角の平均値としては、40〜50度が好ましく、理想的な角度である45度に近づくほど好ましい。
かかる不連続性強化繊維の平均繊維長Lnとしては、1〜25mmの範囲であることが好ましい。平均繊維長Lnをかかる範囲とすることで、強化繊維の補強効率を高めることができ、繊維強化樹脂シートをはじめ一体化成形品において優れた機械特性や接合強度が与えられる。また、強化繊維からなる不織布における強化繊維の面外角度の調整が容易となる。平均繊維長Lnは、繊維強化樹脂シートの熱可塑性樹脂成分を焼失させて残った強化繊維から無作為に400本を選択し、その長さを10μm単位まで測定し、それらの数平均を算出して平均繊維長Lnとして用いる。
本発明において、強化繊維からなる不織布を構成する強化繊維としては、例えば、アルミニウム、黄銅、ステンレスなどの金属繊維や、ポリアクリロニトリル(PAN)系、レーヨン系、リグニン系、ピッチ系の炭素繊維や、黒鉛繊維や、ガラスなどの絶縁性繊維や、アラミド、PBO、ポリフェニレンスルフィド、ポリエステル、アクリル、ナイロン、ポリエチレンなどの有機繊維や、シリコンカーバイト、シリコンナイトライドなどの無機繊維が挙げられる。また、これらの繊維に表面処理が施されているものであってもよい。表面処理としては、導電体として金属の被着処理のほかに、カップリング剤による処理、サイジング剤による処理、結束剤による処理、添加剤の付着処理などがある。また、これらの強化繊維は1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。中でも、軽量化効果の観点から、比強度、比剛性に優れるPAN系、ピッチ系、レーヨン系などの炭素繊維が好ましく用いられる。また、得られる成形品の経済性を高める観点からは、ガラス繊維が好ましく用いられ、とりわけ力学特性と経済性のバランスから炭素繊維とガラス繊維を併用することが好ましい。さらに、得られる成形品の衝撃吸収性や賦形性を高める観点からは、アラミド繊維が好ましく用いられ、とりわけ力学特性と衝撃吸収性のバランスから炭素繊維とアラミド繊維を併用することが好ましい。また、得られる成形品の導電性を高める観点からは、ニッケルや銅やイッテルビウムなどの金属を被覆した強化繊維を用いることもできる。これらの中で、強度と弾性率などの力学的特性に優れるPAN系の炭素繊維は、より好ましく用いることができる。
本発明の繊維強化樹脂シートを構成する熱可塑性樹脂(A)および後述する別の成形体を構成する熱可塑性樹脂(B)としては、例えば、「ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、液晶ポリエステル等のポリエステルや、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリブチレン等のポリオレフィンや、ポリオキシメチレン(POM)、ポリアミド(PA)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)などのポリアリーレンスルフィド、ポリケトン(PK)、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)、ポリエーテルニトリル(PEN)、ポリテトラフルオロエチレンなどのフッ素系樹脂、液晶ポリマー(LCP)」などの結晶性樹脂、「スチレン系樹脂の他、ポリカーボネート(PC)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリフェニレンエーテル(PPE)、ポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリサルホン(PSU)、ポリエーテルサルホン、ポリアリレート(PAR)」などの非晶性樹脂、その他、フェノール系樹脂、フェノキシ樹脂、更にポリスチレン系、ポリオレフィン系、ポリウレタン系、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリブタジエン系、ポリイソプレン系、フッ素系樹脂、およびアクリロニトリル系等の熱可塑エラストマー等や、これらの共重合体および変性体等から選ばれる熱可塑性樹脂が挙げられる。中でも、得られる成形品の軽量性の観点からはポリオレフィンが好ましく、強度の観点からはポリアミドが好ましく、表面外観の観点からポリカーボネートやスチレン系樹脂のような非晶性樹脂が好ましく、耐熱性の観点からポリアリーレンスルフィドが好ましく、連続使用温度の観点からポリエーテルエーテルケトンが好ましく用いられる。
前記群に例示された熱可塑性樹脂は、本発明の目的を損なわない範囲で、エラストマーあるいはゴム成分などの耐衝撃性向上剤、他の充填材や添加剤を含有しても良い。これらの例としては、無機充填材、難燃剤、導電性付与剤、結晶核剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、制振剤、抗菌剤、防虫剤、防臭剤、着色防止剤、熱安定剤、離型剤、帯電防止剤、可塑剤、滑剤、着色剤、顔料、染料、発泡剤、制泡剤、あるいは、カップリング剤が挙げられる。
本発明の繊維強化樹脂シートにおいて、繊維強化樹脂シートを構成する熱可塑性樹脂(A)の可使温度域および別の成形体を構成する熱可塑性樹脂(B)の可使温度域が、少なくとも5℃以上の温度範囲を持って重複することが望ましい。熱可塑性樹脂の可使温度域とは、使用下限温度から使用上限温度に渡る温度域で、熱可塑性樹脂が強化繊維からなる不織布に含浸できるほどに溶融ないし軟化されており、かつ、加熱による熱劣化または熱分解を伴うことのない実用上の温度域のことを指す。前記関係性を満足する繊維強化樹脂シートにおいては、単一の温度条件において製造できることに加え、これによる一体化成形品においても単一の温度条件での加工が可能となり、製造工数削減やプロセスウィンドウの拡大に繋がる。したがって、重複する温度範囲は、その幅が広いほどよく、望ましくは15℃以上であり、30℃程度以上あることが望ましい。
熱可塑性樹脂(A)の可使温度域において、使用下限温度をTA1、使用上限温度をTA2とし、熱可塑性樹脂(B)の可使温度域において、使用下限温度をTB1、使用上限温度をTB2としたとき、これら温度は以下の規格に準拠して得られた値を採用できる。使用下限温度であるTA1、TB1は、結晶性樹脂の場合、JIS K7120(1987)を準拠して測定した融点を、非晶性樹脂の場合、JIS K7206(1999)を準拠して測定されるビカット軟化温度に100℃を加算した温度を、それぞれTA1およびTB1として取り扱うことができる。また、使用上限温度であるTA2、TB2は、JIS K7120(1987)を準拠して測定される熱減量曲線において、ベースラインの重量から1%の減量が確認された温度(減量開始点)から50℃を差し引いた温度を、実用上の使用上限温度TA1およびTB1として取り扱うことができる。
本発明の繊維強化樹脂シートを製造する方法として、例えば、強化繊維を予め、ストランドおよび/またはモノフィラメント状に分散した強化繊維からなる不織布を製造しておき、その不織布に、熱可塑性樹脂(A)を含浸せしめる方法がある。強化繊維からなる不織布の製造方法としては、強化繊維を空気流にて分散シート化するエアレイド法や強化繊維を機械的にくし削りながら形成してシート化するカーディング法などの乾式プロセス、強化繊維を水中にて攪拌して抄紙するラドライト法による湿式プロセスを公知技術として挙げることができる。前記において強化繊維をよりモノフィラメント状に近づける手段としては、乾式プロセスにおいては、開繊バーを設ける方法やさらに開繊バーを振動させる方法、さらにカードの目をファインにする方法や、カードの回転速度を調整する方法などが例示できる。湿式プロセスにおいては、強化繊維の攪拌条件を調整する方法、分散液の強化繊維濃度を希薄化する方法、分散液の粘度を調整する方法、分散液を移送させる際に渦流を抑制する方法などが例示できる。特に、湿式法で製造することが好ましく、投入繊維の濃度を増やしたり、分散液の流速(流量)とメッシュコンベアの速度を調整したり、することで強化繊維からなる不織布の強化繊維の割合Vfmを容易に調整することができる。例えば、分散液の流速に対して、メッシュコンベアの速度を遅くすることで、得られる強化繊維からなる不織布中の繊維の配向が引き取り方向に向き難くなり、嵩高い強化繊維からなる不織布を製造可能である。強化繊維からなる不織布としては、強化繊維単体から構成されていてもよく、強化繊維が粉末形状や繊維形状のマトリックス樹脂成分と混合されていたり、強化繊維が有機化合物や無機化合物と混合されていたり、強化繊維同士が樹脂成分で目留めされていてもよい。
上記強化繊維からなる不織布を用いて、熱可塑性樹脂が溶融ないし軟化する温度以上に加熱された状態で圧力を付与し、強化繊維からなる不織布に熱可塑性樹脂(A)を含浸させることで、繊維強化樹脂シートは得られる。具体的には、強化繊維からなる不織布の厚み方向の一方の側に熱可塑性樹脂(A)を配置した状態で熱可塑性樹脂(A)を溶融含浸させる方法、が例示できる。また、上記方法を実現するための設備としては、圧縮成形機、ダブルベルトプレス、カレンダーロールを好適に用いることができる。バッチ式の場合は前者であり、加熱用と冷却用の2機を並列した間欠プレスシステムとすることで生産性の向上が図れる。連続式の場合は後者であって、ロールからロールへの加工を容易におこなうことができ、連続生産性に優れる。
本発明の繊維強化樹脂シートからなる第1の部材に、熱可塑性樹脂(B)から構成される別の成形体からなる第2の部材が、前記繊維強化樹脂シートにおける強化繊維が露出した領域に熱可塑性樹脂(B)が含浸して接合せしめ一体化成形品とすることが、かかる繊維強化樹脂シートの接合性を有効に活用できることから好ましい。
かかる一体化成形品において、その構成は前記繊維強化樹脂シートを含んでなる一体化成形品であって、該一体化成形品中において、繊維強化樹脂シートの熱可塑性樹脂(A)と第2の部材を構成する熱可塑性樹脂(B)が最大高さRy50μm以上、平均粗さRz30μm以上の凹凸形状を有して界面層を形成してなることが接合性をより優れたものとするため好ましい。ここで、本発明の一体化成形品における、熱可塑性樹脂(A)と熱可塑性樹脂(B)とが形成する界面層について、図5を用いて詳細に説明する。図5は、一体化成形品を構成する繊維強化樹脂シート14の面方向Xに対する垂直断面に基づく熱可塑性樹脂(A)と熱可塑性樹脂(B)との界面層を拡大した図である。図5において、熱可塑性樹脂(A)15と熱可塑性樹脂(B)16とが、強化繊維からなる不織布(図示せず)に含浸されており、繊維強化樹脂シートの厚み方向Zの略中央にて、面方向Xに拡がる凹凸形状を有する界面層17が、強化繊維からなる不織布を介して形成されている。かかる界面層は、厚み方向Zにおいて、複数の凹部と凸部を有しており、そのうち、最も窪みの大きい凹部18と最も突出した凸部19とのZ方向における落差をdmaxとして定義する。なお、凹部18は図上において独立した島状に見られるが、これも含めて、最も侵入量の深い部分を凹凸部それぞれの最端とする。一方、界面層における凹凸形状のうち、最も窪みの小さい凹部20と最も突出の小さい凸部21とのZ方向における落差をdminとして定義する。ここで、dmaxが本発明で言うところの最大高さRyとなり、dmaxとdminの平均値が本発明で言うところの平均粗さRzとして定義される。
かかる界面層は、最大高さRy50μm以上、平均粗さRz30μm以上の凹凸形状を有して形成されていることが好ましい。かかる態様をとることにより、熱可塑性樹脂(A)と熱可塑性樹脂(B)との強固な接合を有する一体化成形品が与えられる。さらに、前記態様の界面層によれば、適用する熱可塑性樹脂の組合わせに特段の制限を設けない。すなわち、異なる種類の熱可塑性樹脂が強化繊維からなる不織布の露出した領域を介して複雑に入り組んだアンカリング構造を形成することで、異なる熱可塑性樹脂間を機械的に接合するため、従来勘案すべきであった、異なる樹脂同士の相溶性や親和性を無視することができ、本来共存が難しいとされる組合せであっても、容易かつ強固に接合できる点に、本発明の格別の効果がある。かかる界面層における最大高さRyは50μm以上、平均粗さRzは30μm以上あれば、本発明の効果を十分に達成されるため好ましく、さらには最大で、Ry300μm、Rz100μmもあれば本発明の効果を確保するため好ましい。
かかる一体化性形品において繊維強化樹脂シートを構成する熱可塑性樹脂(A)と第2の部材を構成する熱可塑性樹脂(B)の界面層における最大高さRyおよび平均粗さRzは、一体化成形品の断面観察に基づき測定する方法が例示できる。一体化成形品の厚み方向の垂直断面が観察面となるように研磨された試料を用意する。前記試料を顕微鏡にて観察することで、視野中において図5に相当する像が確認できる。ここから、上記にて定義される、凹凸界面のうち、最も窪みの大きい凹部と最も突出の大きい凸部との垂直落差dmax、最も窪みの小さい凹部と最も突出の小さい凸部との垂直落差dminをそれぞれ測定する。この操作を異なる像について10回おこない、測定されるdmaxのうち、最も大きい値を界面層における凹凸形状の最大高さRy(μm)とすることができる。また、測定されるdmaxおよびdminの総和をN数で除した値を、界面層における凹凸形状の平均粗さRzとすることができる。
上述した一体化成形品は、前記繊維強化樹脂シート(第1の部材)と第2の部材を、第1の部材における強化繊維が露出した領域と第2の部材が接触した状態で、加熱および加圧を有する手段にて成形することにより与えられる。ここで、一体化性形品を得るにあたり、部材同士を予め積層して積層体としていてもよく。かかる積層単位は、本発明の繊維強化樹脂シートの強化繊維が露出した領域と第2の部材が接触した状態で、少なくとも1層を含めば、その他の積層単位については特に制限はないが、前記したような他の積層単位を含むようにすることで、当該積層単位に基づく各種機能や特性を付与することができる。前記積層体には、本発明の繊維強化樹脂シートに加え、他の積層単位を含むことができる。かかる積層単位の構成は特に制限されないが、例えば、連続性強化繊維で補強されたUDプリプレグ、織物プリプレグ、不連続強化繊維で補強されたGMT、SMC、長繊維強化プリプレグ、などの繊維強化成形基材、あるいは、樹脂シート、発泡体、などの非繊維強化成形基材、が挙げられる。なかでも、得られる成形体の力学特性の観点からは、繊維強化成形基材であることが好ましく、成形体の補強効果を高める観点からは連続繊維強化プリプレグであって、成形体に複雑形状を持たせる場合は、賦形性に優れる不連続強化プリプレグを、好ましく用いることができる。
かかる一体化成形品を得るための加熱および加圧を有する一般的な手段としては、プレス成形法が例示できる。プレス成形法としては、予め成形型を中間基材ないし積層体の成形温度以上に昇温しておき、加熱された成形型内に中間基材ないし積層体を配置し、型締めして加圧し、次いでその状態を維持しながら成形型を冷却し成形品を得る方法、いわゆるホットプレス成形がある。また、成形温度以上に加熱された中間基材ないし積層体を、中間基材ないし積層体の固化温度未満に保持された成形型に配置し、型締めして加圧し、次いでその状態を維持しながら中間基材ないし積層体を冷却し成形品を得る方法、いわゆるスタンピング成形やヒートアンドクール成形等がある。これらプレス成形方法のうち、成形サイクルを早めて生産性を高める観点からは、スタンピング成形ないしヒートアンドクール成形が好ましい。
前記第1の部材と第2の部材とを接合させる手段としては、特に限定されない。例えば、(i)第1の部材と第2の部材とを別々に予め成形しておき、両者を接合する方法、(ii)第1の部材を予め成形しておき、第2の部材を成形すると同時に両者を接合する方法、がある。前記(i)の具体例としては、第1の部材をプレス成形し、第2の部材をプレス成形ないし射出成形にて作製する。作製したそれぞれの部材を、熱板溶着、振動溶着、超音波溶着、レーザー溶着、抵抗溶着、誘導加熱溶着、などの公知の溶着手段により接合する方法がある。一方、前記(ii)の具体例としては、第1の部材をプレス成形し、次いで射出成形金型にインサートし、第2の部材を形成する材料を金型に射出成形し、溶融ないし軟化状態にある材料の熱量で第1の部材の被着面を溶融ないし軟化させて接合する方法がある。また、前記(ii)の別の具体例としては、第1の部材をプレス成形し、次いでプレス成形金型内に配置し、第2の部材を形成する材料をプレス成形金型内にチャージし、プレス成形することで、前記と同様の原理で接合する方法がある。一体化成形品の量産性の観点からは、好ましくは(ii)の方法であって、射出成形としてインサート射出成形やアウトサート射出成形、および、プレス成形としてスタンピング成形やヒートアンドクール成形が好ましく使用される。すなわち、第2の部材が射出成形による成形体であり、第2の部材をインサート射出成形またはアウトサート射出成形により第1の部材に接合するか、第2の部材がプレス成形による成形体であり、第2の部材をプレス成形により第1の部材に接合するのが、本発明の一体化成形品を製造するのに特に好ましく用いられる。
本発明の一体化成形品により与えられる実装部材の用途としては、例えば、「パソコン、ディスプレイ、OA機器、携帯電話、携帯情報端末、ファクシミリ、コンパクトディスク、ポータブルMD、携帯用ラジオカセット、PDA(電子手帳などの携帯情報端末)、ビデオカメラ、デジタルビデオカメラ、光学機器、オーディオ、エアコン、照明機器、娯楽用品、玩具用品、その他家電製品などの筐体、トレイ、シャーシ、内装部材、またはそのケース」などの電気、電子機器部品、「支柱、パネル、補強材」などの土木、建材用部品、「各種メンバ、各種フレーム、各種ヒンジ、各種アーム、各種車軸、各種車輪用軸受、各種ビーム、プロペラシャフト、ホイール、ギアボックスなどの、サスペンション、アクセル、またはステアリング部品」、「フード、ルーフ、ドア、フェンダ、トランクリッド、サイドパネル、リアエンドパネル、アッパーバックパネル、フロントボディー、アンダーボディー、各種ピラー、各種メンバ、各種フレーム、各種ビーム、各種サポート、各種レール、各種ヒンジなどの、外板、またはボディー部品」、「バンパー、バンパービーム、モール、アンダーカバー、エンジンカバー、整流板、スポイラー、カウルルーバー、エアロパーツなど外装部品」、「インストルメントパネル、シートフレーム、ドアトリム、ピラートリム、ハンドル、各種モジュールなどの内装部品」、または「モーター部品、CNGタンク、ガソリンタンク、燃料ポンプ、エアーインテーク、インテークマニホールド、キャブレターメインボディー、キャブレタースペーサー、各種配管、各種バルブなどの燃料系、排気系、または吸気系部品」などの自動車、二輪車用構造部品、「その他、オルタネーターターミナル、オルタネーターコネクター、ICレギュレーター、ライトディヤー用ポテンショメーターベース、エンジン冷却水ジョイント、エアコン用サーモスタットベース、暖房温風フローコントロールバルブ、ラジエーターモーター用ブラッシュホルダー、タービンべイン、ワイパーモーター関係部品、ディストリビュター、スタータースィッチ、スターターリレー、ウィンドウオッシャーノズル、エアコンパネルスィッチ基板、燃料関係電磁気弁用コイル、バッテリートレイ、ATブラケット、ヘッドランプサポート、ペダルハウジング、プロテクター、ホーンターミナル、ステップモーターローター、ランプソケット、ランプリフレクター、ランプハウジング、ブレーキピストン、ノイズシールド、スペアタイヤカバー、ソレノイドボビン、エンジンオイルフィルター、点火装置ケース、スカッフプレート、フェイシャー」、などの自動車、二輪車用部品、「ランディングギアポッド、ウィングレット、スポイラー、エッジ、ラダー、エレベーター、フェイリング、リブ」などの航空機用部品が挙げられる。力学特性の観点からは、自動車内外装、電気・電子機器筐体、自転車、スポーツ用品用構造材、航空機内装材、輸送用箱体に好ましく用いられる。なかでも、とりわけ複数の部品から構成されるモジュール部材に好適である。
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。
(1)強化繊維の露出の割合Vfm
繊維強化樹脂シートから熱可塑性樹脂の含浸した末端と露出した強化繊維の間にかみそりを当て、注意深く、露出した強化繊維部分を分離し、ステンレス製メッシュにより挟み込むことで試料とした。前記試料について、JIS R7602(1995)に規定される「炭素繊維織物の厚さ測定方法」に準拠し、50kPaを20秒間付与したのちの厚みを測定し、該厚みから予め同条件にて測定したステンレス製メッシュの厚みを差し引いた値を強化繊維からなる不織布の厚みtmとした。また、前記試料からステンレス製メッシュを取り外した後、JIS R7602(1995)に規定される「炭素繊維織物の単位面積当たりの重量測定方法」に準拠して単位面積当たりの質量Wmを測定した。得られたWm、tmから次式により、強化繊維の割合Vfmを算出した。
・Vfm(体積%)=(Wm/ρf)/(S×tm)×100
ρf:強化繊維の密度(g/cm
S :試料の切り出し面積(cm
(2)熱可塑性樹脂(A)および熱可塑性樹脂(B)の使用下限温度(TA1、TB1)
繊維強化樹脂シートに含浸される熱可塑性樹脂(A)および熱可塑性樹脂(B)の融点ないし軟化点を次のようにして評価した。まず、熱可塑性樹脂(A)および熱可塑性樹脂(B)のうち結晶性樹脂については、JIS K7121(1987)に規定される「プラスチックの転移温度測定方法」に準拠して融点を測定した。繊維強化樹脂シートの作製に用いたフィルムないし不織布を、炉内温度50℃で制御された真空乾燥機中で24時間以上乾燥させた後、細かく裁断して試料を準備した。前記試料を、示差走査熱量測定装置(NETZSCH社製、DSC 200F3 Maia)に掛け、前記規格による融点を得た。
一方、熱可塑性樹脂(A)および熱可塑性樹脂(B)のうち非晶性樹脂については、JIS K7206(1999)に規定される「プラスチック−熱可塑性プラスチック−ビカット軟化温度(VST)試験」のA50法に準拠して軟化点を測定した。繊維強化樹脂シートの作製に用いたフィルムないし不織布の原料である樹脂ペレットを、炉内温度50℃で制御された真空乾燥機中で24時間以上乾燥させた後、2軸混練機・射出機(DSM Xplore社製、Micro Compounder15、12ml射出成形機)にて成形した。得られた成形片から、厚さ3.2mm、縦および横がそれぞれ12.5mmの角板を切り出して、これを試料とした。前記試料を、熱変形温度測定機 ((株)東洋精機製作所製、S3−FH)に掛け、前記規格による軟化点を得た。
上記操作を3回繰り返し、得られた温度の平均値を算出して、熱可塑性樹脂(A)および熱可塑性樹脂(B)の融点ないし軟化点とした。ここで、融点は得られた温度を熱可塑性樹脂(A)および熱可塑性樹脂(B)の使用下限温度TA1、TB1(℃)として扱い、軟化点は(軟化点+100℃)の温度を熱可塑性樹脂(A)および熱可塑性樹脂(B)の使用下限温度TA1、TB1(℃)として扱った。
(3)熱可塑性樹脂(A)および熱可塑性樹脂(B)の使用上限温度(TA2、TB2)
繊維強化樹脂シートに含浸される熱可塑性樹脂(A)および熱可塑性樹脂(B)の減量開始温度を、JIS K7120(1987)に規定される「プラスチックの熱重量測定方法」に準拠して測定した。繊維強化樹脂シートの作製に用いたフィルムないし不織布を、炉内温度50℃で制御された真空乾燥機中で24時間以上乾燥させた後、細かく裁断して、試料を準備した。前記試料を、熱重量測定装置(Bruker社製、TG−DTA 2020SA)に掛け、前記規格による熱減量線を取得した。取得した熱減量線においてベースラインの重量から1%の減量が確認された温度を本実施例における減量開始温度とした。上記操作を3回繰り返し、得られた減量開始温度の平均値を算出して、熱可塑性樹脂(A)および熱可塑性樹脂(B)の減量開始温度とした。そして、減量開始温度から50℃を差し引いた温度を、熱可塑性樹脂(A)および熱可塑性樹脂(B)における実用上の使用上限温度TA2、TB2(℃)として扱った。
(4)一体化成形品の界面層における凹凸形状(Ry、Rz)
一体化成形品から幅25mmの小片を切り出し、エポキシ樹脂に包埋したうえで、シート厚み方向の垂直断面が観察面となるように研磨して試料を作製した。前記試料をレーザー顕微鏡(キーエンス(株)製、VK−9510)で200倍に拡大し、無作為に選定した10ヶ所(互いの視野は重複しない)について、撮影をおこなった。撮影した画像から、熱可塑性樹脂(A)と熱可塑性樹脂(B)とが形成する界面層を、樹脂のコントラストにより確認した。コントラストが不鮮明な場合は、画像処理により濃淡を明確化した。それでも確認が難しい場合は、繊維強化樹脂シート、または第2の部材に含浸してなる熱可塑性樹脂のうち、TA1およびTB1のいずれか低温な熱可塑性樹脂のみを溶融または軟化させた一体化成形品から作製した試料について再度撮影をおこない、界面層を確認した。上記にて撮影した10視野について、それぞれの視野中における凹凸界面のうち、最も窪みの大きい凹部と最も突出の大きい凸部との垂直落差dmax、最も窪みの小さい凹部と最も突出の小さい凸部との垂直落差dminをそれぞれ測定した。これら各視野による10点のdmaxのうち、最も大きい値を界面層における凹凸形状の最大高さRy(μm)とした。また、上記にて得られたdmaxおよびdminから、界面層における凹凸形状の平均粗さRzを、次式により算出した。
・Rz(μm)=Σ(dimax+dimin)/2n
dimax:各視野における最大垂直落差(i=1、2、・・・10)(μm)
dimin:各視野における最小垂直落差(i=1、2、・・・10)(μm)
n:測定視野数
(5)強化繊維からなる不織布における細繊度ストランドの重量分率(Rw)
上記(1)と同様の方法にて、繊維強化樹脂シートから強化繊維からなる不織布を取り出し、重量Wmを測定した。次いで、強化繊維からなる不織布から、視認される繊維束をピンセットにより抽出し、1/100mmの精度で繊維束の長さLs、1/100mgの精度で繊維束の重量Wsを測定した。これを強化繊維からなる不織布中に存在する全ての繊維束(n個)について繰り返した。得られた繊維束の長さLsおよび重量Wsから、次式により繊維束におけるフィラメント数Fを算出した。
・Fi(本)=Wsi/(D×Lsi)
Fi:繊維束におけるフィラメント数の個別値(本)(i=1〜n)
Wsi:繊維束の重量(mg)
Lsi:繊維束の長さ(mm)
D:フィラメント1本当たりの繊度(mg/mm)
前記にて算出されたFiをもとに、フィラメント数が100本以上の繊維束を選別した。選別した繊維束の重量Wiから次式にて、フィラメント数が100本未満の繊維束の重量分率Rwを算出した。
・Rw(重量%)={Wm−Σ(Wsi)}/Wm×100
Wm:強化繊維からなる不織布の重量(mg)
(6)強化繊維からなる不織布の繊維分散率
上記(1)と同様の方法にて、繊維強化樹脂シートから強化繊維からなる不織布を取り出した。得られた強化繊維からなる不織布を電子顕微鏡(キーエンス(株)製、VHX−500)を用いて観察し、無作為に単繊維を1本選定し、該単繊維に接触する別の単繊維との二次元接触角を測定した。二次元接触角は接触する2つの単繊維とのなす2つの角度のうち、0°以上90°以下の角度(鋭角側)を採用した。二次元接触角の測定は、選定した単繊維に接触する全ての単繊維を対象とし、これを100本の単繊維について実施した。得られた結果から、二次元接触角を測定した全ての単繊維の総本数と、二次元接触角度が1度以上である単繊維の本数とからその比率を算出し、繊維分散率を求めた。
(7)強化繊維からなる不織布の二次元配向角
上記(1)と同様の方法にて、繊維強化樹脂シートから強化繊維からなる不織布を取り出した。得られた強化繊維からなる不織布を電子顕微鏡(キーエンス(株)製、VHX−500)を用いて観察し、無作為に単繊維を1本選定し、該単繊維に交差する別の単繊維との二次元配向角を画像観察より測定した。配向角は交差する2つの単繊維とのなす2つの角度のうち、0°以上90°以下の角度(鋭角側)を採用した。選定した単繊維1本あたりの二次元配向角の測定数はn=20とした。同様の測定を合計5本の単繊維を選定しておこない、その平均値をもって二次元配向角とした。
(8)繊維強化樹脂シート中における強化繊維の面外角度θz
繊維強化樹脂シートから幅25mmの小片を切り出し、エポキシ樹脂に包埋した上で、シート厚み方向の垂直断面が観察面となるように研磨して試料を作製した。前記試料をレーザー顕微鏡(キーエンス(株)製、VK−9510)で400倍に拡大し、繊維断面形状の観察をおこなった。観察画像を汎用画像解析ソフト上に展開し、ソフトに組み込まれたプログラムを利用して観察画像中に見える個々の繊維断面を抽出し、該繊維断面を内接する楕円を設け、形状を近似した(以降、繊維楕円と呼ぶ)。さらに、繊維楕円の長軸長さα/短軸長さβで表されるアスペクト比が20以上の繊維楕円に対し、X軸方向と繊維楕円の長軸方向の為す角を求めた。繊維強化樹脂シートの異なる部位から抽出した観察試料について上記操作を繰り返すことにより、計600本の強化繊維について面外角度を測定し、その平均値を繊維強化樹脂シートの面外角度θzとして求めた。
(9)一体化成形品における接合部のせん断強度τ2
JIS K6850(1999)に規定される「接着剤−剛性被着材の引張せん断接着強さ試験法」を参考して、一体化成形品における接合部のせん断強度τ2の評価をおこなった。本試験における試験片は、実施例で得られる一体化成形品の平面部分を切り出して使用した。試験片を図6に示す。試験片22は長さlの異なる位置にて、試験片両表面から厚さhの中間深さh1/2に到達する幅wの切欠き23が挿入された形状であって、前記中間深さh1/2の位置にて第1の部材と第2の部材との接合部が形成されている。前記試験片を5本用意し、万能試験機(インストロン社製、万能試験機4201型)にて引張試験をおこなった。試験により得られた全てのデータ(n=5)の平均値を、一体化成形品における接合部のせん断強度τ2(MPa)とした。
[強化繊維1]
ポリアクリロニトリルを主成分とする重合体から紡糸、焼成処理を行い、総フィラメント数12000本の連続炭素繊維を得た。さらに該連続炭素繊維を電解表面処理し、120℃の加熱空気中で乾燥して強化繊維1を得た。この炭素繊維1の特性は次に示す通りであった。
密度:1.80g/cm
単繊維径:7μm
引張強度:4.9GPa
引張弾性率:230GPa
[樹脂シート1]
未変性ポリプロピレン樹脂(プライムポリマー(株)製、“プライムポリプロ”(登録商標)J106MG)90質量%と、酸変性ポリプロピレン樹脂(三井化学(株)製、“アドマー”(登録商標)QE800)10質量%とからなるマスターバッチを用いて、目付100g/mのシートを作製した。得られた樹脂シートの特性を表1に示す。
[樹脂シート2]
ポリアミド6樹脂(東レ(株)製“アミラン”(登録商標)CM1021T)からなる目付124g/mの樹脂フィルムを作製した。得られた樹脂シートの特性を表1に示す。
[樹脂シート3]
ナイロン66樹脂(東レ(株)製“アミラン”(登録商標)CM3006)からなる目付126g/mの樹脂フィルムを作製した。得られた樹脂シートの特性を表1に示す。
[樹脂シート4]
ポリカーボネート樹脂(三菱エンジニアリングプラスチック(株)製“ユーピロン”(登録商標)H−4000)からなる目付132g/mの樹脂フィルムを作製した。得られた樹脂シートの特性を表1に示す。
[樹脂シート5]
ポリフェニレンサルファイド樹脂(東レ(株)製“トレリナ”(登録商標)M2888)からなる目付67g/mの樹脂不織布を作製した。得られた樹脂シートの特性を表1に示す。
[樹脂シート6]
変性ポリフェニレンエーテル樹脂( SABIC(株)製“NORYL”(登録商標)PPX7110)からなる目付100g/mのシートを作製した。得られた樹脂シートの特性を表1に示す。
[強化繊維不織布1]
強化繊維1をカートリッジカッターで6mmにカットし、チョップド強化繊維を得た。水と界面活性剤(ナカライテスク(株)製、ポリオキシエチレンラウリルエーテル(商品名))からなる濃度0.1重量%の分散媒を40リットル作製し、かかる分散媒を抄造装置に投入した。抄造装置は、回転翼付き攪拌機を備えた上部の抄造槽(容量30リットル)と、下部の貯水槽(容量10リットル)からなり、抄造槽と貯水槽の間には多孔支持体を設けてある。まず、かかる分散媒を攪拌機にて空気の微小気泡が発生するまで撹拌した。その後、所望の目付となるように、重量を調整したチョップド強化繊維を、空気の微小気泡が分散した分散媒中に投入して攪拌することにより、強化繊維が分散したスラリーを得た。次いで、貯水層からスラリーを吸引し、多孔支持体を介して脱水して強化繊維抄造体とした。前記抄造体を熱風乾燥機にて150℃、2時間の条件下で乾燥させ、目付け100g/mの強化繊維不織布1を得た。得られた強化繊維不織布の特性を表2に示す。
[強化繊維不織布2]
強化繊維不織布の目付けを200g/mとした以外は、強化繊維不織布1と同様の方法によって、強化繊維不織布2を得た。得られた強化繊維不織布の特性を表2に示す。
[強化繊維不織布3]
強化繊維不織布の目付けを50g/mとした以外は、強化繊維不織布1と同様の方法によって、強化繊維不織布2を得た。得られた強化繊維不織布の特性を表2に示す。
[強化繊維不織布4]
強化繊維1をカートリッジカッターで25mmにカットし、チョップド強化繊維を得た。得られたチョップド強化繊維を80cm高さから自由落下させて、チョップド炭素繊維がランダムに分布した、強化繊維不織布4を得た。得られた強化繊維不織布の特性を表2に示す。
[強化繊維織布5]
強化繊維1を並行に引き揃え、1.2本/cmの密度で一方向に配列してシート状の強化繊維群を形成した。強化繊維1を、1.2本/cmの密度で、前記強化繊維群と直交する方向に配列し、強化繊維1同士を交錯させ、織機を用いて平織組織の二方向性織物を形成した。前記二方向性織物を強化繊維織布5として取り扱った。強化繊維織布の特性を表2に示す。
[PPコンパウンド]
強化繊維1と樹脂シート1の作製に用いたマスターバッチとを、2軸押出機(日本製鋼所(株)製、TEX−30α)を用いてコンパウンドし、繊維含有量30重量%の射出成形用ペレット(PPコンパウンド)を製造した。
[GMT]
ガラス繊維強化ポリプロピレン樹脂成形材料(GMT)(Quadrant社製、“ユニシート”(登録商標)P4038−BK31)を実施例1と同様の方法にて成形し、1.6mmの厚みに形成されたGMTを得た。
(実施例1)
強化繊維不織布1、熱可塑性樹脂として樹脂シート1を[樹脂シート1/強化繊維不織布1/樹脂シート1/強化繊維不織布1/樹脂シート1/強化繊維不織布1/強化繊維不織布1]の順番に配置し、積層体を作製した。前記積層体を230℃に予熱したプレス成形用金型キャビティ内に配置して金型を閉じ、120秒間保持したのち、3MPaの圧力を付与してさらに60秒間保持した後、圧力を保持した状態でキャビティ温度を50℃まで冷却し、金型を開いて図1に示す繊維強化樹脂シートを得た。得られた繊維強化樹脂シートを第1の部材として、該繊維強化樹脂シートの繊維露出面を接合面となるように射出成形用金型にインサートして、PPコンパウンドを用いて、第2の部材を射出成形し、図7に示す一体化成形品24を得た。このとき、射出成形機のシリンダー温度は200℃、金型温度は60℃であった。本実施例による一体化成形品を図7に示した。得られた繊維強化樹脂シート(第1の部材)および一体化成形品の特性をまとめて表3に示す。
(実施例2)
熱可塑性樹脂として樹脂シート1の代わりに樹脂シート2を用い、積層体の予熱温度を240℃とした以外は、実施例1と同様にして繊維強化樹脂シートを得、さらに実施例1と同様の方法にて一体化成形品を得た。得られた繊維強化樹脂シート(第1の部材)および一体化成形品の特性をまとめて表3に示す。
(実施例3)
熱可塑性樹脂として樹脂シート1の代わりに樹脂シート3を用い、積層体の予熱温度を280℃とした以外は、実施例1と同様にして繊維強化樹脂シートを得、さらに実施例1と同様の方法にて一体化成形品を得た。得られた繊維強化樹脂シート(第1の部材)および一体化成形品の特性をまとめて表3に示す。
(実施例4)
熱可塑性樹脂として樹脂シート1の代わりに樹脂シート4を用い、積層体の予熱温度を280℃とした以外は、実施例1と同様にして繊維強化樹脂シートを得、さらに実施例1と同様の方法にて一体化成形品を得た。得られた繊維強化樹脂シート(第1の部材)および一体化成形品の特性をまとめて表3に示す。
(実施例5)
熱可塑性樹脂として樹脂シート1の代わりに樹脂シート5を用い、積層体の予熱温度を300℃とした以外は、実施例1と同様にして繊維強化樹脂シートを得、さらに実施例1と同様の方法にて一体化成形品を得た。得られた繊維強化樹脂シート(第1の部材)および一体化成形品の特性をまとめて表3に示す。
(実施例6)
熱可塑性樹脂として樹脂シート1の代わりに樹脂シート4を用い、積層体の予熱温度を280℃とした以外は、実施例1と同様にして繊維強化樹脂シートを得、さらに実施例1と同様の方法にて一体化成形品を得た。得られた繊維強化樹脂シート(第1の部材)および一体化成形品の特性をまとめて表3に示す。
(実施例7)
強化繊維不織布として強化繊維不織布1の代わりに強化繊維不織布2を用いた以外は、実施例1と同様にして繊維強化樹脂シートを得、さらに実施例1と同様の方法にて一体化成形品を得た。得られた繊維強化樹脂シート(第1の部材)および一体化成形品の特性をまとめて表3に示す。
(実施例8)
強化繊維不織布として強化繊維不織布1の代わりに強化繊維不織布3を用いた以外は、実施例1と同様にして繊維強化樹脂シートを得、さらに得られた繊維強化樹脂シートを第1の部材とした。一方、第2の部材36として、GMTを230℃に保持された熱盤加熱型予熱装置に配置して、0.1MPaの圧力を付与しながら1分間予熱した。次いで、該繊維強化樹脂シートの繊維露出面を接合面となるように120℃に予熱されたプレス成形用金型内に配置し、その上に予熱が完了したGMTを重ねて配置して金型を閉じ、15MPaの圧力を付与した状態で120秒間保持して、第2の部材をプレス成形により接合された一体化成形品27を得た。本実施例による一体化成形品を図8に示した。得られた一体化成形品の特性を表3に示す。
(実施例9)
強化繊維不織布として強化繊維不織布1の代わりに強化繊維不織布4を用いた以外は、実施例2と同様にして繊維強化樹脂シートを得、さらに実施例2と同様の方法にて一体化成形品を得た。得られた繊維強化樹脂シート(第1の部材)および一体化成形品の特性をまとめて表3に示す。
(実施例10)
強化繊維不織布と樹脂シートの積層体の構成を[樹脂シート2/強化繊維不織布2/樹脂シート2/強化繊維不織布2/樹脂シート2/強化繊維不織布2/強化繊維不織布2/強化繊維不織布2]の順番に配置し、積層体を作製した以外は、実施例2と同様にして繊維強化樹脂シートを得、さらに実施例2と同様の方法にて一体化成形品を得た。得られた繊維強化樹脂シート(第1の部材)および一体化成形品の特性をまとめて表3に示す。
(比較例1)
強化繊維不織布として強化繊維不織布1の代わりに強化繊維織布5を用いた以外は、実施例2と同様にして繊維強化樹脂シートを得、さらに実施例2と同様の方法にて一体化成形品を得た。得られた繊維強化樹脂シート(第1の部材)および一体化成形品の特性をまとめて表4に示す。
(比較例2)
強化繊維不織布と樹脂シートの積層体の構成を[樹脂シート2/強化繊維不織布1/樹脂シート2/強化繊維不織布1/強化繊維不織布1/樹脂シート2/強化繊維不織布1/樹脂シート2]の順番に配置し、積層体を作製した以外は、実施例2と同様にして加熱、加圧して強化繊維の露出割合が0体積%の繊維強化樹脂シートを得、さらに実施例2と同様の方法にて一体化成形品を得た。得られた繊維強化樹脂シート(第1の部材)および一体化成形品の特性をまとめて表4に示す。
実施例1〜8において、いずれにおいても、強化繊維の露出割合Vfmが適正範囲で各種樹脂シートを片面に含浸せしめた繊維強化樹脂シートを得ることができた。さらに該繊維強化樹脂シートから得た一体化成形品は、強化繊維からなる不織布から基づく露出した強化繊維により、十分な接合強度を有しており実用に問題のない一体化成形品を得ることができた。これは強化繊維からなる不織布中の空隙部が異樹脂の複雑な含浸を促進して、界面層における最大高さRy、平均粗さRzを十分なサイズにまで成長させたことにより理想的な界面層が形成されていることに加え、強化繊維の面外角度θzも好適な態様にあったため、第2の部材中の熱可塑性樹脂と良好な界面層を形成しているためである。とりわけ、実施例1、2、7、8においては、被着体たる第2の部材の熱可塑性樹脂と強化繊維シートの熱可塑性樹脂の可使温度が重複した適正な範囲内で一体化成形を実施したため、界面層における最大高さRy、平均粗さRzをより好ましいサイズにまで成長させることが出来たため、より優れた接合強度が発現した。実施例9においては強化繊維が束状で存在しているため、また、実施例10においては強化繊維の露出割合を多いため、実施例2と比較して第2の部材を構成する熱可塑性樹脂の該強化繊維への含浸量が少ないことが由来し、被着体との接合面における最大高さ(Ry)および平均粗さ(Rz)が低い値を示したため、接合強度が低いものなったが一体化成形品として形状を維持することは可能であった。
一方、実施例3〜6においては第1の部材と第2の部材を構成する熱可塑性樹脂の可使温度に開きがあるため、界面層の凹凸量は小さいものとなったが、露出した強化繊維不織布の補強効果にて一体化成形品の接合強度は実用に耐えうるものとなった。
しかし、比較例1においては強化繊維が束状かつ連続した状態で存在しているため、第2の部材を構成する熱可塑性樹脂が十分に含浸せず接合強度が不十分であった。また、比較例3においては強化繊維不織布を使用したが、該強化繊維の露出がないため接合部分の強化繊維によるアンカリングがなく、一体化成形品の接合強度が不十分であった。
本発明の繊維強化樹脂シートまたはそれを用いてなる一体化成形品によれば、露出せしめた強化繊維のアンカリング効果により接合部分の界面において強固な接合を有するため、適用する熱可塑性樹脂の組合せに特段の制限なく、異なる樹脂のハイブリッド体を容易に得ることが出来る。よって、自動車内外装、電気・電子機器筐体、自転車、スポーツ用品用構造材、航空機内装材、輸送用箱体、などの幅広い用途に好適に用いることができる。
1、4、14 繊維強化樹脂シート
2、5、6、7、8、9、10、11、12 強化繊維(単繊維)
3 繊維強化樹脂シートにおける熱可塑性樹脂含浸層
13 二次元接触角、二次元配向角
15 第1の部材(繊維強化樹脂シート)における熱可塑性樹脂(A)
16 第2の部材における熱可塑性樹脂(B)
17 繊維強化樹脂シートの界面層
18 界面層における最も窪みの大きい凹部
19 界面層における最も突出の大きい凸部
20 界面層における最も窪みの小さい凹部
21 界面層における最も突出の小さい凸部
22 せん断強度τ2の評価に供する試験片
23 切欠き
24、27 一体化成形品
25、28 第1の部材
26、29 第2の部材
(1)強化繊維からなる不織布の一方の側に熱可塑性樹脂(A)が含浸されており、該不織布のもう一方の側には不織布を構成する強化繊維が露出した領域を有するとともに、強化繊維が露出した領域における強化繊維の面外角度θzが5°以上である、繊維強化樹脂シート。
(2)強化繊維が露出した領域における強化繊維の体積割合Vfmが20体積%以下である、前記(1)に記載の繊維強化樹脂シート。
(3)前記不織布は、不連続性強化繊維が略モノフィラメント状に分散してなる、前記(1)または(2)に記載の繊維強化樹脂シート。
(4)前記不織布は、不連続性強化繊維がモノフィラメント状かつランダムに分散してなる、前記(1)または(2)に記載の繊維強化樹脂シート
(5)前記不織布を構成する強化繊維が炭素繊維である、前記(1)〜()のいずれかに記載の繊維強化樹脂シート。
)前記熱可塑性樹脂(A)が、ポリオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリスチレン系樹脂、PPS系樹脂、ポリエーテルケトン系樹脂および変性ポリフェニレンエーテル系樹脂からなる群より選択される、前記(1)〜()のいずれかに記載の繊維強化樹脂シート。
強化繊維からなる不織布の一方の側に熱可塑性樹脂(A)が含浸されており、該不織布のもう一方の側には不織布を構成する強化繊維が露出した領域を有する繊維強化樹脂シートからなる第1の部材に、熱可塑性樹脂(B)から構成される別の成形体からなる第2の部材が、前記繊維強化樹脂シートにおける強化繊維が露出した領域に熱可塑性樹脂(B)が含浸して接合してなる、一体化成形品。
)繊維強化樹脂シートにおける熱可塑性樹脂(A)と第2の部材を構成する熱可塑性樹脂(B)とが最大高さRy50μm以上、平均粗さRz30μm以上の凹凸形状を有して界面層を形成してなる、前記()に記載の一体化成形品。
)前記(7)または(8)に記載の一体化成形品を製造する方法であって、前記第2の部材が射出成形による成形体であり、第2の部材をインサート射出成形ないしアウトサート射出成形により第1の部材に接合する、一体化成形品の製造方法。
10)前記(7)または(8)に記載の一体化成形品を製造する方法であって、前記第2の部材がプレス成形による成形体であり、第2の部材をプレス成形により第1の部材に接合してなる、一体化成形品の製造方法。
11)前記(7)または(8)に記載の一体化成形品、もしくは前記(9)または(10)に記載の製造方法で製造された一体化成形品が、自動車内外装、電気・電子機器筐体、自転車、スポーツ用品用構造材、航空機内装材、輸送用箱体として用いられる、実装部材。
である。
上述した機能をより効果的に発現できる態様として、繊維強化樹脂シートの強化繊維が露出した領域における強化繊維の面外角度θzを5°以上とすることが重要である。ここで、強化繊維の面外角度θzとは、繊維強化樹脂シートを構成する強化繊維が露出した領域における強化繊維の厚さ方向に対する傾き度合いであって、値が大きいほど厚み方向に立って傾いていることを示し、0〜90°の範囲で与えられる。すなわち、強化繊維の面外角度θzをかかる範囲内とすることで、上述した界面層における補強機能をより効果的に発現でき、界面層により強固な接合を与えることができる。強化繊維の面外角度θzの上限値は特に制限ないが、繊維強化樹脂シートとした際の取り扱い性の観点から15°以下であることが好ましく、より好ましくは10°以下である。

Claims (12)

  1. 強化繊維からなる不織布の一方の側に熱可塑性樹脂(A)が含浸されており、該不織布のもう一方の側には不織布を構成する強化繊維が露出した領域を有する、繊維強化樹脂シート。
  2. 強化繊維が露出した領域における強化繊維の占める体積割合Vfmが20体積%以下である、請求項1に記載の繊維強化樹脂シート。
  3. 前記不織布は、不連続性強化繊維が略モノフィラメント状に分散してなる、請求項1または2に記載の繊維強化樹脂シート。
  4. 前記不織布は、不連続性強化繊維がモノフィラメント状かつランダムに分散してなる、請求項1または2に記載の繊維強化樹脂シート。
  5. 強化繊維が露出した領域における強化繊維の面外角度θzが5°以上である、請求項1〜4のいずれかに記載の繊維強化樹脂シート。
  6. 前記不織布を構成する強化繊維が炭素繊維である、請求項1〜5のいずれかに記載の繊維強化樹脂シート。
  7. 前記熱可塑性樹脂(A)が、ポリオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリスチレン系樹脂、PPS系樹脂、ポリエーテルケトン系樹脂および変性ポリフェニレンエーテル系樹脂からなる群より選択される、請求項1〜6のいずれかに記載の繊維強化樹脂シート。
  8. 請求項1〜7のいずれかに記載の繊維強化樹脂シートからなる第1の部材に、熱可塑性樹脂(B)から構成される別の成形体からなる第2の部材が、前記繊維強化樹脂シートにおける強化繊維が露出した領域に熱可塑性樹脂(B)が含浸して接合してなる、一体化成形品。
  9. 繊維強化樹脂シートにおける熱可塑性樹脂(A)と第2の部材を構成する熱可塑性樹脂(B)とが最大高さRy50μm以上、平均粗さRz30μm以上の凹凸形状を有して界面層を形成してなる、請求項8に記載の一体化成形品。
  10. 請求項8または9に記載の一体化成形品を製造する方法であって、前記第2の部材が射出成形による成形体であり、第2の部材をインサート射出成形ないしアウトサート射出成形により第1の部材に接合する、一体化成形品の製造方法。
  11. 請求項8または9に記載の一体化成形品を製造する方法であって、前記第2の部材がプレス成形による成形体であり、第2の部材をプレス成形により第1の部材に接合してなる、一体化成形品の製造方法。
  12. 請求項10または11に記載の一体化成形品が、自動車内外装、電気・電子機器筐体、自転車、スポーツ用品用構造材、航空機内装材、輸送用箱体として用いられる、実装部材。
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