JP2014171932A - 二酸化炭素の除去方法及び除去装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】被処理ガス中の窒素酸化物に起因する吸収液の性能低下を抑制すること。
【解決手段】酸素、二酸化炭素のほか少なくとも窒素酸化物を含有する被処理ガスを吸収塔13内でアルカノールアミンと水を含む吸収液と接触させて該吸収液に二酸化炭素を吸収させ、この二酸化炭素を吸収した吸収液を再生塔15内に導いて加熱することにより該吸収液から二酸化炭素を脱離させ、この二酸化炭素が脱離した吸収液を吸収塔13に戻して再循環させる被処理ガス中の二酸化炭素の除去方法において、二酸化炭素を脱離して吸収塔13に戻される前の吸収液にアルカリ金属元素の水酸化物を添加すること。
【選択図】図1

Description

本発明は、被処理ガス中の二酸化炭素を除去する方法とその除去装置に係り、特に、酸素、二酸化炭素のほか少なくとも窒素酸化物を含有する被処理ガスから二酸化炭素を除去する技術に関する。
近年、二酸化炭素(CO)濃度の増加による地球温暖化が懸念されている。特に、火力発電所等では、石炭などの化石燃料の燃焼に伴って、酸素(O)や硫黄酸化物(SOx)などとともに、二酸化炭素を含有する燃焼排ガスが多く発生することから、このような燃焼排ガスから二酸化炭素を効率よく除去する技術が注目されている。
この種の燃焼排ガスから二酸化炭素を除去する技術として、特許文献1−4には、アルカノールアミン水溶液(以下、適宜、吸収液という。)と燃焼排ガスを接触させ、燃焼排ガス中の二酸化炭素を吸収液に吸収させて除去する技術が開示されている。また、特許文献1には、二酸化炭素の除去装置として、燃焼排ガスと吸収液を接触させて吸収液に燃焼排ガス中の二酸化炭素を吸収させる吸収塔と、この吸収塔から送出された吸収液から二酸化炭素を脱離させる再生塔とを備え、吸収液から脱離した二酸化炭素を再生塔から配管を通じて排出する一方、二酸化炭素が脱離された吸収液を再生塔から吸収塔へ戻して再循環させる構造が開示されている。
ところで、火力発電所などで発生する燃焼排ガスには、酸素や硫黄酸化物、二酸化炭素のほか窒素酸化物などが含まれている。これらの成分は吸収液中のアルカノールアミンと接触すると、アルカノールアミンを分解して有機酸を発生させる。また、硫黄酸化物に由来する硫酸や窒素酸化物に由来する硝酸といった強い酸が塩基性のアルカノールアミンと接触すると、アルカノールアミンと強く結合して熱安定性塩(以下、HSS(Heat Stable Salt)という。)を生成する。その結果、吸収液中の二酸化炭素を吸収できるアルカノールアミン(活性なアルカノールアミン)の濃度は燃焼排ガスの処理時間の経過とともに減少し、吸収液の能力が低下する。ここで、吸収液の能力低下を抑制するためには、活性なアルカノールアミンを吸収液中に補充する方法が考えられるが、燃焼排ガス中に硫黄酸化物や窒素酸化物などが多く含まれていると、アルカノールアミンの補充量が増加することになる。
一方、非特許文献1によれば、強酸性のHSSやアルカノールアミンの分解に伴って発生する有機酸が吸収塔や再生塔内で蓄積すると、吸収液の腐食性が著しく増加する懸念が指摘されている。吸収液の腐食性の増加を抑制するためには、二酸化炭素の除去装置に導入される燃焼排ガス中の硫黄酸化物や窒素酸化物をできるだけ少なくすることが望まれるが、これらを完全に除去することは実用的に難しい。例えば、燃焼排ガス中の窒素酸化物の濃度を少なくするために、二酸化炭素の除去装置の上流側に脱硝装置などを増設した場合、設備構成の複雑化と設備費用の増加を招くことになる。
これに対し、特許文献2,4には、燃焼排ガス中の酸素や硫黄酸化物と吸収液中のアルカノールアミンとの反応を抑制する反応抑制剤を吸収液に含ませることが記載されている。
特許第3529855号公報 特許第3739437号公報 特許第4838489号公報 特表2011−503216号公報 瀬瀬 満、他3名、「廃アミン類の移動再生システムに係る国内適用と経済性に関する調査」、平成15年度調査事業成果発表会資料、石油エネルギー技術センター、2004年
しかしながら、特許文献2、4では、いずれも燃焼排ガス中の窒素酸化物とアルカノールアミンとの反応を抑制することについては、十分な検討がなされておらず、吸収液の性能低下を抑制する点で改善の余地がある。すなわち、例えば、硫黄酸化物ととともに窒素酸化物を含む燃焼排ガスから二酸化炭素を吸収する際に、硫黄酸化物だけでなく窒素酸化物とアルカノールアミンとの反応を抑制することができれば、アルカノールアミンの分解やHSSの生成をより効果的に抑制することができ、吸収液の能力低下を抑える効果が期待できる。
本発明の課題は、被処理ガス中の窒素酸化物に起因する吸収液の性能低下を抑制することにある。
上記課題を解決するため、本発明は、酸素、二酸化炭素のほか少なくとも窒素酸化物を含有する被処理ガスを吸収塔内でアルカノールアミンと水を含む吸収液と接触させて該吸収液に二酸化炭素を吸収させ、この二酸化炭素を吸収した吸収液を再生塔内に導いて加熱することにより該吸収液から二酸化炭素を脱離させ、この二酸化炭素が脱離した吸収液を吸収塔に戻して再循環させる被処理ガス中の二酸化炭素の除去方法において、前記二酸化炭素を脱離して吸収塔に戻される前の吸収液にアルカリ金属元素の水酸化物を添加することを特徴とする。
このようにアルカノールアミン水溶液を含む吸収液中にアルカリ金属元素の水酸化物(以下、適宜、水酸化物と略す。)を添加することにより、被処理ガスと接触した吸収液は、被処理ガス中の二酸化炭素と窒素酸化物をそれぞれ吸収する。ここで、アルカノールアミンよりも水酸化物の方が、二酸化炭素や窒素酸化物といった酸性ガスに対する反応速度が大きいため、二酸化炭素や窒素酸化物の大部分がアルカノールアミンではなく水酸化物と反応する。そして、窒素酸化物が水酸化物と反応すると亜硝酸塩が生成される。
しかしながら、被処理ガス中の二酸化炭素濃度は、被処理ガス中の窒素酸化物濃度よりも格段に高いため、水酸化物を過剰に添加すると、吸収液中に未反応物として残った水酸化物の大部分が二酸化炭素と反応して不活性な炭酸塩となり廃棄の問題が新たに発生する。この点、本発明者らは、二酸化炭素を脱離して吸収塔に戻される前の二酸化炭素濃度が低い状態の吸収液に水酸化物を添加するようにしているから、炭酸塩の発生量を少なくすることができる。
本発明によれば、二酸化炭素や窒素酸化物とアルカノールアミンとの反応を抑制することで、アルカノールアミンの分解やHSSの発生を抑制することができるため、吸収液の能力低下を抑制し、かつ吸収液の腐食性の増加を抑制することができる。また、吸収塔の上流側に脱硝設備などを増設する必要がなく、しかも吸収液の補充量を低減することができるため、設備費用と設備の維持費用の両方を低減することができる。
なお、被処理ガス中に窒素酸化物のほか硫黄酸化物が含まれている場合、硫黄酸化物は、窒素酸化物と同様に酸性ガスであるから、吸収液中の水酸化物は、二酸化炭素や窒素酸化物とともに硫黄酸化物と反応する。したがって、窒素酸化物と同様、硫黄酸化物が吸収液に吸収されても、アルカノールアミンの分解やHSSの発生を抑制することができる。
この場合において、アルカリ金属元素は、ナトリウム、カリウムのうち少なくとも一方が含まれていることが好ましい。すなわち、水酸化物として水酸化ナトリウムや水酸化カリウムを用いれば、これらの水酸化物によって被処理ガス中の酸性ガスをより効果的に吸着させることができる。
また、吸収塔内の吸収液と再生塔内の吸収液との少なくとも一方に、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、硝酸アンモニウムのうち少なくとも1種のアンモニウム塩(以下、適宜、アンモニウム塩と略す。)を添加するものとする。
このようなアンモニウム塩を吸収液に添加することにより、窒素酸化物と水酸化物が反応して生成された亜硝酸塩を、より安定な塩化物や硫酸塩或いは硝酸塩に変化させることができる。ここで、亜硝酸塩とアンモニウム塩が反応する際は、亜硝酸イオン(NO )とアンモニウムイオン(NH )から、水(HO)と窒素ガス(N)が生成されるため、吸収塔や再生塔で発生する無機残渣を少なくすることができる。
本発明の二酸化炭素の除去方法が適用される二酸化炭素の除去装置としては、被処理ガス中の二酸化炭素を水とアルカノールアミンとを含む吸収液に吸収する吸収塔と、該吸収液から二酸化炭素を脱離する再生塔と、吸収塔から再生塔へ吸収液を導く配管と、再生塔から吸収塔へ吸収液を導く配管とを有し、これらの配管の途中に互いの吸収液を熱交換する熱交換器が設けられ、再生塔から吸収塔へ吸収液を導く配管の熱交換器の上流側に、アルカリ金属元素の水酸化物の溶液を添加する水酸化物添加手段が設けられてなることを特徴とする。
この場合において、再生塔から吸収塔へ吸収液を導く配管の熱交換器の上流側に、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、硝酸アンモニウムのうち少なくとも1種のアンモニウム塩の溶液を添加するアンモニウム塩添加手段が設けられてなるものとする。
本発明によれば、被処理ガス中の窒素酸化物に起因する吸収液の性能低下を抑制することができる。
本発明を適用してなる二酸化炭素の除去装置の系統図である。 吸収液中の硝酸イオンと亜硝酸イオンとの濃度の和と試験時間との関係を示す線図である。
以下、本発明を適用してなる二酸化炭素の除去方法及び除去装置の実施形態について、図面を参照して具体的に説明する。なお、本実施形態では、燃焼装置から発生する燃焼排ガスを被処理ガスとして、被処理ガス中の二酸化炭素を除去する例を説明するが、被処理ガスは、酸素、二酸化炭素のほか少なくとも窒素酸化物を含むガスであれば、この例に限定されるものではない。
図1は、本発明を適用してなる二酸化炭素の除去装置11(以下、装置11と略す。)の概要を示す系統図である。本装置11は、石炭などの化石燃料を燃焼する図示しない燃焼装置から排出された燃焼排ガス(被処理ガス)が流れる煙道と連通して設けられている。本装置11と燃焼装置との間の煙道には、必要に応じて除塵装置や脱硫装置などを設けることができる。
図1に示すように、本装置11は、吸収塔13と、再生塔15と、熱交換器17を備えて構成される。吸収塔13は、塔の底部から順に、吸収液が貯められる貯留部19、下部充填層21、中部充填層23、上部充填層25を備えている。吸収塔13には、貯留部19と下部充填層21との間に燃焼排ガスを導入する煙道27と、再生塔15の底部に溜められた吸収液を中部充填層23の上部に供給する配管29と、上部充填層25の下部でコレクタ31を介して集められた洗浄水を抜き出す配管33と、吸収塔13の頂部から燃焼排ガスを排出する配管35が、それぞれ接続されている。
煙道27には、燃焼排ガスgを吸収塔13内へ送る送風機37が設けられている。配管33には、クーラ39とポンプ41が配設され、コレクタ31で集められた洗浄水がポンプ41によって抜き出され、ポンプ41から吐出された洗浄水がクーラ39で冷却された後、上部充填層25の上部に供給されるようになっている。
再生塔15は、基本的に吸収塔13と同じ構成であり、塔の底部から順に、吸収液が貯められる貯留部43、下部充填層45、中部充填層47、上部充填層49を備えている。再生塔15には、吸収塔13の底部に溜められた吸収液を中部充填層47の上部に供給する配管51と、再生塔15の頂部から二酸化炭素を含むガスを抜き出す配管53と、下部充填層45の下部でコレクタ55を介して集められた吸収液を抜き出す配管57が、それぞれ接続されている。
配管51は、その途中で配管29と熱交換器17を介して交差するように配置されている。熱交換器17は、配管51と配管29をそれぞれ流れる吸収液同士を熱交換するようになっている。配管29には、熱交換器17の下流側に、再生塔15から抜き出した吸収液を吸収塔13へ送液するためのポンプ59と吸収液を冷却するクーラ61がそれぞれ設けられている。また、配管51には、図示しないが、熱交換器17の下流側に、吸収塔13から抜き出した吸収液を再生塔15へ送液するためのポンプが設けられている。
配管53は、二酸化炭素の気液分離器63と接続され、その途中にクーラ65が配設されている。気液分離器63は、再生塔15から排出されたガス中の二酸化炭素と水分を分離する機能を有している。気液分離器63の底部には、気液分離器63で分離された水分を再生塔15の上部充填層49の上部に供給する配管67が接続されている。配管67には、ポンプ69が配設されている。
配管57は、リボイラ71と接続されている。リボイラ71は、図示しない加熱手段によって吸収液を加熱して蒸気を発生させるものである。リボイラ71には、吸収液の蒸気を再生塔15の貯留部43と下部充填層45との間(水面の上)に供給する配管73と、吸収液を液の状態で再生塔15の貯留部43に供給する配管75がそれぞれ接続されている。
配管29には、熱交換器17の上流側を流れる吸収液中にアルカリ金属元素の水酸化物の水溶液を添加するための水酸化物添加装置77と、熱交換器17の上流側を流れる吸収液中にアンモニウム塩の水溶液を添加するアンモニウム塩添加装置80がそれぞれ接続されている。なお、アンモニウム塩添加装置80は、水酸化物添加装置77よりも配管29の上流側に接続されている。
水酸化物添加装置77は、アルカリ金属元素の水酸化物と水を含む水溶液を貯留するタンク79と、配管81を介してタンク79内の溶液を抜き出すポンプ83を備えており、ポンプ83によってタンク79内から抜き出された溶液を、配管81を通じて配管29へ供給するようになっている。
アンモニウム塩添加装置80は、アンモニウム塩と水を含む水溶液を貯留するタンク85と、配管87を介してタンク85内の溶液を抜き出すポンプ89を備えており、ポンプ89によってタンク85内から抜き出された溶液を、配管87を通じて配管29へ供給するようになっている。
このような構成において、使用される吸収液には、アルカノールアミンと水を含むアルカノールアミン水溶液が使用される。そして、アルカノールアミン水溶液には、水酸化物添加装置77からアルカリ金属元素の水酸化物の水溶液が添加され、アンモニウム塩添加装置77からアンモニウム塩の水溶液が添加されるようになっている。
アルカノールアミンとしては、例えば、2−アミノエタノール(分子量:61.08)、2−(メチルアミノ)エタノール(分子量:75.12)、2−(エチルアミノ)エタノール(分子量:89.14)、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール(分子量:89.14)、2−(イソプロピルアミノ)エタノール(分子量:103.16)、ジエタノールアミン(分子量:105.14)などを好ましく挙げることができる。これらのアルカノールアミンは単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
アルカリ金属元素の水酸化物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどを好ましく挙げることができる。これらの水酸化物は単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
アンモニウム塩としては、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、硝酸アンモニウムなどを好ましく挙げることができる。これらのアンモニウム塩は単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
次に、本装置11の基本的な動作について説明する。送風機37を通過して煙道27内を流れる燃焼排ガスgは吸収塔13に導入される。この燃焼排ガスgには、酸素や二酸化炭素及び硫黄酸化物のほか少なくとも窒素酸化物が含まれている。吸収塔13に導入された燃焼排ガス91は、吸収塔13内を上昇して下部充填層21、中部充填層23を通過する際、配管29の先から供給された吸収液と接触して少なくとも二酸化炭素が吸収される。その後、上部充填層25に導入された燃焼排ガス91は、ポンプ41によりクーラ39で冷却されて配管33の先から供給された洗浄水と接触して水洗される。上部充填層25を通過した燃焼排ガスgは、吸収塔13を出ると、配管35を通じて例えば煙突から大気中に放出される。
一方、吸収塔13内で燃焼排ガス91と接触して二酸化炭素を豊富に含んだ吸収液(以下、適宜、リッチ吸収液という。)は、吸収塔13の底部の貯留部19に溜められる。貯留部19に溜められたリッチ吸収液は、吸収塔13を出て配管51より熱交換器17に導かれ、ここで昇温された後、再生塔15内に導入される。
再生塔15では、すでに再生塔15内に導入されている吸収液の一部がリボイラ71で加熱されて蒸気となり、この蒸気が配管73から再生塔15に導入されて再生塔15内を上昇している。このため、再生塔15内に導入されたリッチ吸収液は、中部充填層47、下部充填層45を通過する際に、蒸気と接触して加熱され、二酸化炭素が脱離される。脱離された二酸化炭素は、再生塔15内を上昇して上部充填層49に導入され、ポンプ69により配管67の先から供給された気液分離器63内の水と接触して水洗される。上部充填層49を通過した二酸化炭素は、再生塔15を出て配管53を流れ、クーラ65で冷却された後、気液分離器63に導入される。気液分離器63で水分が分離された二酸化炭素は、気液分離器63を出て回収される。
一方、再生塔15内を流下する際に二酸化炭素が脱離された吸収液(以下、適宜、リーン吸収液という。)は、その一部がリボイラ71に導かれ、加熱されて蒸気となり、再生機14に戻される。また、大部分のリーン吸収液は、再生塔15の底部の貯留部43に溜められる。貯留部43に溜められたリーン吸収液は、ポンプ59により配管29を介して再生塔15から抜き出され、熱交換器17においてリッチ吸収液と熱交換して冷却された後、クーラ61でさらに冷却されて吸収塔13内に導かれる。このようにして吸収液は、吸収塔13と再生塔15との間を循環する。
ところで、本装置11に導入される燃焼排ガス91には、二酸化炭素以外に酸性ガス成分である塩化水素、窒素酸化物、硫黄酸化物などを含んでいる。そのため、吸収液中が燃焼排ガス91と接触すると、塩基性のアルカノールアミンは、二酸化炭素を含む酸性ガス成分を吸収する。ここで、窒素酸化物のうち、NOは水にほとんど溶解しないが、NOは水に溶解して硝酸と亜硝酸(HNO)を発生させる。また、硫黄酸化物のうち、SOは水に溶解して亜硫酸(HSO)を発生させる。そして、これら亜硝酸や亜硫酸は、アルカノールアミンと結合して無機性塩(すなわち、HSS)を発生させるか、最終的に液中で硝酸や硫酸となってアルカノールアミンを分解し、ギ酸、蓚酸、酢酸などの有機酸を発生させた後、これらの有機酸と結合することで塩を発生させる。
一般に、燃焼排ガス91から硫黄酸化物(特にSO)や窒素酸化物(特にNO)を除去する手段として、アンモニアの還元剤と脱硝触媒を用いた脱硝装置や、石灰石を吸収剤として水スラリを用いた脱硫装置などが使用されるが、これらの装置を使用できない場合や、これらの装置を使用した場合でも、窒素酸化物や硫黄酸化物がこれらの装置を通過する場合、アルカノールアミンの分解が進行する。
この点、本実施形態では、図1に示すように、水酸化物添加装置77を設けて再生塔15から吸収塔13へ送液されるリーン吸収液中にアルカリ金属の水酸化物の水溶液を添加するようにしている。これによれば、SOやNOといった酸性ガス成分はアルカノールアミンよりも水酸化物と優先的に反応するため、吸収塔13に導入されたリーン吸収液は、水酸化物がSOやNOと反応し、アルカノールアミンが二酸化炭素を吸収する。例えば、NOは水酸化物と反応してアルカリ金属の亜硝酸塩を発生させる。
ところで、燃焼排ガス91中の酸性ガス成分のうち、二酸化炭素の濃度は窒素酸化物や硫黄酸化物の濃度と比べて格段に高いため、吸収液中に水酸化物が余剰に添加されると、その大部分が二酸化炭素と反応して不活性な炭酸塩が大量に生成され、その炭酸塩の処分に多くの手間と費用がかかることになる。
この点、本実施形態では、水酸化物を配管29の熱交換器17よりも上流側に添加するようにしている。すなわち、再生塔15で二酸化炭素を脱離した後の二酸化炭素濃度が低いリーン吸収液に水酸化物を添加し、この水酸化物が添加されたリーン吸収液を熱交換器17で冷却してから吸収塔13に導入するようにしている。これにより、二酸化炭素と水酸化物との反応を抑え、炭酸塩の発生を抑制することが可能になる。ここでリーン吸収液に水酸化物を添加する量は、吸収塔13内のリッチ吸収液で余剰の水酸化物が炭酸塩化しないように、燃焼排ガス中のSO及びNOが吸収液に吸収される吸収量に応じた量、例えば、この吸収量と等モルの量に設定するのが望ましい。
また、本実施形態では、図1に示すように、アンモニウム塩添加装置80を設けて、再生塔15から吸収塔13へ送液されるリーン吸収液中にアンモニウム塩の水溶液を添加している。すなわち、アルカリ金属の亜硝酸塩を含む吸収液に塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、硝酸アンモニウムの少なくとも1種のアンモニウム塩を添加することで、亜硝酸塩を塩化物や硫酸塩或いは硝酸塩といった化学的により安定な物質に無機性塩に変化させることができる。また、これと同時に、式1に示すように、亜硝酸イオン(NO )とアンモニウムイオン(NH )から、水(HO)と窒素ガス(N)が生成されるため、本装置11内で発生する残渣の排出量を少なくすることができる。
NO +NH →N+2HO ・・・・・・(式1)
ここで、アンモニウム塩の水溶液は、本実施形態の例に限らず、吸収塔13から配管51を通じて熱交換器17に向かうリッチ吸収液中に添加し、再生塔15内で窒素ガスを放出させ、二酸化炭素とともに再生塔15から排出するようにしてもよいし、発生する窒素ガスの量が多い場合は、本実施形態のように再生塔15から配管29を通じて熱交換器17に向かうリーン吸収液中に添加し、吸収塔13内で窒素ガスを放出させ、燃焼排ガスとともに吸収塔13から排出するようにしてもよい。
また、本装置11に供給される燃焼排ガス中の硫黄酸化物(特にSO)や窒素酸化物(特にNO)の濃度が高い場合には、装置11の起動前に予め一定量の水酸化物を吸収液に添加しておいてもよい。その際、余剰の水酸化物と二酸化炭素が反応して炭酸塩が生成しないように、水酸化物の添加量はSO及びNOの吸収液中への吸収量に応じて設定する必要がある。
本実施形態によれば、アルカノールアミン水溶液を含む吸収液中にアルカリ金属の水酸化物の水溶液を添加しているから、アルカノールアミンの分解とHSSの発生を抑制することができる。これにより、吸収液の腐食性の増加を抑制するとともに吸収液の能力低下を抑え、しかも本装置11の運転中におけるアルカノールアミンの補充量の低減を図ることができる。また、この水酸化物の溶液をリーン吸収液中に添加するようにしているから、二酸化炭素と水酸化物の反応による炭酸塩の発生を抑制することができる。さらに吸収液中にアンモニウム塩を添加しているから、吸収液中で生成する亜硝酸塩をより安定した物質に変化させることができ、しかも亜硝酸塩の一部を窒素ガスとして分解除去することで、本装置11から排出される残渣の排出量を低減することができる。
また、本実施形態では、アルカリ金属元素の水酸化物の水溶液を添加する手段として水酸化物添加装置77を用い、アンモニウム塩の水溶液を添加する手段としてアンモニウム塩添加装置80を用いる例を説明したが、これらの構成に限られるものではなく、例えば、これらの構成に代えて、再生塔15の貯留部43或いは熱交換器17の上流側の配管29のいずれかをバイパスさせて周知のリクレーマを設置し、リクレーマに導いた吸収液を必要に応じて加熱するとともに、容器内に各溶液を添加するようにしてもよい。なお、リクレーマには必要に応じて周知の中和剤などを添加することもできる。
以下、本発明についての各実施例、及び各実施例に対する比較例について説明する。
(実施例1)
本発明の一実施例として、図1に示す構成の装置11を用いて実験を行った。主な運転条件は、吸収塔13の入口部分(煙道27)を通過する被処理ガス及び液入口部分(配管29)の吸収液の温度がいずれも40℃、再生塔15の液入口部分(配管51)の吸収液の温度が100℃、再生塔15内の圧力が160kPa(ゲージ)、再生塔15内の吸収液の最高温度が120℃、クーラ65によるガスの冷却温度が30℃、再生塔15を出るガスの排出量が500m/h、ガス中の液ガス比が3.0(L/m)であった。
吸収液はモノエタノールアミンの30wt%水溶液を用い、添加剤は、水酸化物として水酸化ナトリウム(NaOH)の48wt%水溶液、アンモニウム塩は(NHSOの40wt%水溶液を用いた。被処理ガス中のNO及びSOの吸収液への吸収量はそれぞれ0.045(mol/h)と1.12(mol/h)であった。このため、添加剤の添加量は、水酸化ナトリウムをNO及びSOとの反応に必要な2.285(mol/h)以上の2.30(mol/h)、(NHSOを亜硝酸イオンと等モル以上の0.023(mol/h)加えた。
(比較例1)
実施例1の運転条件において、水酸化物とアンモニウム塩を加えない条件で運転した。
(実施例2)
実施例1の運転条件において、添加剤のみを変更して運転した。水酸化物には水酸化カリウム(KOH)水溶液を用い、アンモニウム塩には塩化アンモニウム(NHCl)水溶液を用いた。添加剤の添加量は、水酸化カリウムを2.30(mol/h)、塩化アンモニウム(NHCl)を0.045(mol/h)加えた。
(実施例3)
実施例1の運転条件において、添加剤のアンモニウム塩のみを変更して運転した。アンモニウム塩には、硝酸アンモニウム(NHNO)を用いた。
各実施例及び比較例における吸収液中の亜硝酸イオンと亜硝酸の酸化によって生成されると推測される硝酸イオンの濃度の和を測定した結果を図2に示す。亜硝酸イオンと硝酸イオンの濃度の和は、比較例に比べて実施例がいずれも低い値となり、本発明によって亜硝酸イオンが吸収液から除去されていることが確認された。なお、この結果から、吸収液中の亜硫酸イオンについても比較例に比べて実施例が低い値になることは容易に推測できる。
11 二酸化炭素の除去装置
13 吸収塔
15 再生塔
17 熱交換器
29,51 配管
71 リボイラ
77 水酸化物添加装置
79,85 タンク
80 アンモニウム塩添加装置
83.89 ポンプ

Claims (5)

  1. 酸素、二酸化炭素のほか少なくとも窒素酸化物を含有する被処理ガスを吸収塔内でアルカノールアミンと水を含む吸収液と接触させて該吸収液に二酸化炭素を吸収させ、この二酸化炭素を吸収した吸収液を再生塔内に導いて加熱することにより該吸収液から二酸化炭素を脱離させ、この二酸化炭素が脱離した吸収液を前記吸収塔に戻して再循環させる被処理ガス中の二酸化炭素の除去方法において、
    前記二酸化炭素を脱離して前記吸収塔に戻される前の前記吸収液にアルカリ金属元素の水酸化物を添加することを特徴とする被処理ガス中の二酸化炭素の除去方法。
  2. 前記アルカリ金属元素は、ナトリウム、カリウムのうち少なくとも一方が含まれていることを特徴とする請求項1に記載の二酸化炭素の除去方法。
  3. 前記吸収塔内の吸収液と前記再生塔内の吸収液との少なくとも一方に、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、硝酸アンモニウムのうち少なくとも1種のアンモニウム塩を添加することを特徴とする請求項1又は2に記載の二酸化炭素の除去方法。
  4. 被処理ガス中の二酸化炭素を水とアルカノールアミンとを含む吸収液に吸収する吸収塔と、該吸収液から二酸化炭素を脱離する再生塔とを有してなる二酸化炭素の除去装置において、
    前記吸収塔から前記再生塔へ前記吸収液を導く配管と、前記再生塔から前記吸収塔へ前記吸収液を導く配管とを有し、これらの配管の途中に互いの吸収液を熱交換する熱交換器が設けられ、
    前記再生塔から前記吸収塔へ前記吸収液を導く配管の前記熱交換器の上流側に、アルカリ金属元素の水酸化物の溶液を添加する水酸化物添加手段が設けられてなることを特徴とする二酸化炭素の除去装置。
  5. 前記再生塔から前記吸収塔へ前記吸収液を導く配管の前記熱交換器の上流側に、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、硝酸アンモニウムのうち少なくとも1種のアンモニウム塩の溶液を添加するアンモニウム塩添加手段が設けられてなることを特徴とする請求項4に記載の二酸化炭素の除去装置。
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