JP2014171195A - 原子発振器 - Google Patents

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Abstract

【課題】S/N比に優れて高安定な原子発振器を実現する。
【解決手段】本発明の実施の形態の原子発振器は、光を発光する発光手段と、ガス状のアルカリ金属原子を気密封止するガスセルと、ガスセルを透過する光に基づき第1の出力電流を出力する第1の受光素子と、ガスセルを透過しない光に基づき第2の出力電流を出力する第2の受光素子と、第1の出力電流及び第2の出力電流を変換して出力信号を出力する変換回路と、ガスセルに入射する光の周波数を決定する発振器と、を有し、発振器の発振周波数は、出力信号に基づき、制御され、第1の出力電流及び第2の出力電流の合成が変換回路に印加されることを特徴とすることにより上記課題を解決する。
【選択図】図4

Description

本発明は、原子発振器に関する。
従来より、セシウム、ルビジウム等のアルカリ金属原子の、基底準位から励起準位までのエネルギー遷移、また基底準位(超微細構造準位)間のマイクロ波遷移、等を利用して発振する原子発振器が知られている。
原子発振器の動作原理は、主に、CPT(Coherent Population Trapping)方式(電磁誘起透過方式(EIT:Electromagnetically Induced Transparency)方式と呼ばれることもある)と、二重共鳴法とに大別される。
どちらの原子発振器も、光源から発する光がアルカリ金属原子に入射することで生じるアルカリ金属原子の光吸収率の変化を利用している。
また、アルカリ金属原子のエネルギー遷移を利用するためには、アルカリ金属原子をガス状態に保つ必要があるため、これらの原子発振器は、アルカリ金属原子とバッファガスを気密封入したガスセルを高温に保って動作させている。
CPT方式では、コヒーレント性を有し、且つ互いに異なる固有波長を有する2つの光(共鳴光)を、アルカリ金属原子に同時に入射することで、アルカリ金属原子の光吸収が停止する現象(透明化現象)を利用する。
また、二重共鳴法では、アルカリ金属原子の光ポンピング及びマイクロ波遷移の二重共鳴を利用する。光ポンピングにより、2つの基底準位間に、アルカリ金属原子の分布差を生じさせ、マイクロ波の周波数を遷移周波数と一致させることで、上側の基底準位に存在する原子が、誘導放出する現象(マイクロ波遷移)を利用する。
CPT方式と二重共鳴法の動作原理について、図1及び図2を用いて説明する。
なお、アルカリ金属原子の基底準位は、核スピン−電子スピン相互作用による超微細構造を有するため、2種類の基底準位に分かれる。
図1は、CPT方式の動作原理の一例を示す図である。
ガスセル中のアルカリ金属原子に、第1の共鳴光204(第1の基底準位201と励起準位203とのエネルギー差に相当する固有波長を有する光)を、入射すると、第1の基底準位201に存在するアルカリ金属原子は、第1の共鳴光204を吸収し、よりエネルギーの高い、励起準準位203へと励起する。
同様に、ガスセル中のアルカリ金属原子に、第2の共鳴光205(第2の基底準位202と励起準位203とのエネルギー差に相当する固有波長を有する光)を、入射すると、第2の基底準位202に存在するアルカリ金属原子は、第2の共鳴光205を吸収し、よりエネルギーの高い、励起準準位203へと励起する。
同時に、異なる固有波長を有する第1の共鳴光204及び第2の共鳴光205を、アルカリ金属原子に入射する際、第1の共鳴光204及び第2の共鳴光205の周波数差が、正確に、第1の基底準位201と第2の基底準位202のエネルギー差(ΔE)に相当する周波数差に一致すると、2つの基底準位の重ね合わせ状態、即ち量子干渉効果が生じる(一致しないと、量子干渉効果が生じない)。
この時、アルカリ金属原子の励起準位203への励起が停止し、アルカリ金属原子の光吸収が停止して、アルカリ金属原子の光吸収率の低下が最大となる透明化現象(CPT共鳴)が生じる。
CPT方式を適用した原子発振器は、周波数差の一致、不一致により生じるアルカリ金属原子の光吸収挙動の急峻な変化を検出し、アルカリ金属原子に入射する光の周波数を制御することで、原子発振器として機能する。
図2は、二重共鳴法の動作原理の一例を示す図である。
熱平衡状態において、ガスセル中のアルカリ金属原子は、第1の基底準位201、及び第2の基底準位202の各々の準位に、ほぼ等分に分布している。
この状態で、共鳴光206(第1の基底準位201と励起準位203とのエネルギー差に相当する固有波長を有する光)を、ガスセル中のアルカリ金属原子に、入射すると、第1の基底準位201に存在するアルカリ金属原子は、共鳴光206を吸収し、よりエネルギーの高い、励起準位203へと励起する。その後、励起したアルカリ金属原子は、自然放出して第1の基底準位201及び第2の基底準位の202にほぼ等確率で落ちる。
第1の基底準位201に落ちたアルカリ金属原子は、再び、励起準準位203へと励起するが、第2の基底準位の202に落ちたアルカリ金属原子は、励起準準位203へと励起しない。
従って、これらのサイクルを繰返すと、第1の基底準位201には、多くのアルカリ金属原子が存在するが、第2の基底準位の202には、ほとんどアルカリ金属原子が存在しないという、2準位間に、アルカリ金属原子の分布差が生じる(光ポンピング)。
更に、この状態で、アルカリ金属原子にマイクロ波を入射する。マイクロ波の周波数が、第1の基底準位201と第2の基底準位202のエネルギー差(ΔE)に相当する周波数に一致すると、誘導放出が生じ、第2の基底準位202に存在するアルカリ金属原子は、第1の基底準位201へ落ち、マイクロ波遷移が生じる(一致しないと、マイクロ波遷移が生じない)。
この時、アルカリ金属原子の光吸収率の増加が最大となる。なお、第1の基底準位201へ落ちたアルカリ金属原子は、再び励起光を吸収して励起準位203へ励起する。
二重共鳴法を適用した原子発振器は、マイクロ波の周波数と遷移周波数との一致、不一致により生じるアルカリ金属原子の光吸収挙動の急峻な変化を検出し、アルカリ金属原子に入射する光の周波数を制御することで、原子発振器として機能する。
特許文献1では、光・マイクロ波二重共鳴を生起させるガスセルを透過しないレーザ光を、第1の受光器により受光して信号iを出力し、ガスセルを透過するレーザ光を、第2の受光器により受光して信号jを出力している。これらの信号を、それぞれ差動増幅器に入力し、差信号k(出力信号)に基づいて、マイクロ波発生部の出力周波数が、二重共鳴にて定まる周波数に一致するように、制御している。
従来より、ガスセルを透過する光及びガスセルを透過しない光を、光検出器(例えばフォトダイオード)により検出し、各々の光に基づく信号から生成した出力信号に基づき、光源の発光波長及びガスセルに入射する光の周波数等を制御して、原子発振器を実現する技術は、考案されている。しかしながら、この様な原子発振器には、以下に示す問題がある。
図3は、光源の駆動電流と光検出器の出力電圧との関係を示した図である。Vout1は、アルカリ金属原子の光吸収が生じる場合の光検出器の出力電圧(この時の出力電流はj1)、Vout2は、アルカリ金属原子の光吸収が生じない場合の光検出器の出力電圧(この時の出力電流はj2)、ΔVは、光吸収による透過光量の変化分に相当する電圧差を示している。アルカリ金属原子に光吸収が生じることによって、Vout1は、Vout2に比べて、ΔVだけ小さくなる。
Vout2に対するΔVの割合が大きい程、光検出器により検出した出力電流を、変換回路にて効率良く出力信号に変換できるため、Vout2(出力電流j2)を、Vout1(出力電流j1)に対して相殺できれば、変換回路での変換効率を最適化できる。
しかし、従来の原子発振器は、Vout2に対するΔVの割合が小さいため、光検出器により検出した出力電流を、効率良く出力信号に変換できないという問題がある。該出力信号に基づき制御される原子発振器の高安定化を図るためには、変換回路における変換効率の向上は、重要な課題である。
特許文献1では、信号iと信号jを、各々前置増幅器で増幅した上で、差動増幅器に入力しているため、変換効率を大きくできず、差信号k(出力信号)は最適化されていない。
即ち、ガスセルを透過しない光に基づき光検出器により検出した出力電流を、ガスセルを透過する光に基づき光検出器により検出した出力電流に対して相殺することで、雑音を低減し、且つ高安定化を図った原子発振器は、未だ考案されていない。
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、S/N比に優れて高安定な原子発振器を実現することを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明の実施の形態の原子発振器は、光を発光する発光手段と、ガス状のアルカリ金属原子を気密封止するガスセルと、ガスセルを透過する光に基づき第1の出力電流を出力する第1の受光素子と、ガスセルを透過しない光に基づき第2の出力電流を出力する第2の受光素子と、第1の出力電流及び第2の出力電流を変換して出力信号を出力する変換回路と、ガスセルに入射する光の周波数を決定する発振器と、を有し、発振器の発振周波数は、出力信号に基づき、制御され、第1の出力電流及び第2の出力電流の合成が変換回路に印加されることを特徴とする。
本発明の実施の形態によれば、S/N比に優れて高安定な原子発振器を実現することができる。
CPT方式の動作原理の一例を示す図である。 二重共鳴法の動作原理の一例を示す図である。 光源の駆動電流と光検出器の出力電圧との関係を示す従来例である。 実施形態1に係る原子発振器の概略構成の一例を示す図である。 実施形態1に係る発光手段の駆動電流と受光素子の出力電流との関係を示す図である。 実施形態1に係る発光手段の駆動電流と光検出出力手段の出力電圧との関係を示す図である。 実施形態1に係る発光手段の駆動電流と同期検波回路の出力電圧との関係を示す図である。 実施形態1に係る発光手段の出力波長を示す図である。 実施形態1に係る発振周波数と光検出出力手段との関係を示す図である。 実施形態1に係る発振周波数と同期検波回路の出力電圧との関係を示す図である。 実施形態1に係る光検出出力手段の構成例を示す図である。 実施形態1に係る原子発振器の概略構成の一例を示す図である。 実施形態2に係る原子発振器の概略構成の一例を示す図である。 実施形態2に係る発振周波数と光検出出力手段との関係を示す図である。 実施形態2に係る発振周波数と同期検波回路の出力電圧との関係を示す図である。
(実施形態1)
(原子発振器の構成)
図4は、本実施形態に係る原子発振器100の概略構成の一例である。
図4に示す原子発振器100には、CPT方式を適用している。
原子発振器100は、原子共鳴部10と、波長制御手段6と、周波数制御手段7と、バイアスT8を含む。
原子共鳴部10は、発光手段1と、分光手段2と、ガスセル3と、光検出出力手段5を含む。光検出出力手段5は、第1の受光素子51と、第2の受光素子52と、オペアンプ53と、電流電圧変換抵抗54と、直流電圧源55a、55bを含む。なお、オペアンプ53及び電流電圧変換抵抗54により、変換回路を形成する。
分光手段2は、ハーフミラー21と、ミラー22を含む。
波長制御手段6は、同期検波回路61と、制御回路62と、電流駆動回路63と、低周波発振器64と、を含む。
周波数制御手段7は、同期検波回路71と、制御回路72と、電圧制御水晶発振器73と、低周波発振器74と、PLL75を含む。
発光手段1は、光を発光する。なお、発光手段1から発光する光の発光波長は、波長制御手段6により変更可能である。
発光手段1としては、レーザダイオード等を用いることができるが、特に限定されない。
分光手段2は、発光手段1が発光する光を、2つの光に分光する。一方の光(半分の光)は、ハーフミラー21を介してガスセル3に入射する。他方の光(半分の光)は、ハーフミラー21及びミラー22を介して光検出出力手段5に入射する。
ガスセル3は、ガス状のアルカリ金属原子及びバッファガスを気密封止する。なお、バッファガスとしては、He又はNe等が挙げられる。
光検出出力手段5は、ガスセル3を透過する光、及びガスセル3を透過しない光を検出して出力信号を出力する。具体的には、第1の受光素子51により、ガスセル3を透過する光を検出し、出力電流(例えばi1)を出力する。また、第2の受光素子52により、ガスセル3を透過しない光を検出し、出力電流(例えばi2)を出力する。出力電流i1、i2を合成した後、合成電流をオペアンプ53の一方の端子に入力する。そして、該合成電流を電流電圧変換抵抗54を用いて電圧に変換し、オペアンプ53の出力端子から、原子発振器100を制御するための出力信号を、出力する。
なお、合成電流をオペアンプ53の一方の端子に入力することで、第1の受光素子51の出力電流の直流成分を第2の受光素子52の出力電流で相殺できる。従って、変換回路の電流電圧変換効率を高く設定することができる。
なお、図4に示す原子発振器100では、オペアンプ53及び、電流電圧変換抵抗54により変換回路を形成しているが、変換回路の構成は、特に限定されない。出力電流i1及び出力電流i2の合成電流が印加され、合成電流を電圧に変換して、出力信号として出力する構成であれば良い。
なお、第1の受光素子51及び第2の受光素子52としては、フォトダイオード等を用いることができるが、特に限定されない。
なお、図4に示す原子発振器100では、ガスセル3は、分光手段2と第1の受光素子との間に形成され、分光手段2と第2の受光素子との間に形成されていないが、ガスセル3を形成する位置は、特に限定されない。例えば、ガスセル3は、分光手段2と第2の受光素子との間に形成され、分光手段2と第1の受光素子との間に形成されていなくても良い。ガスセル3を分光手段2と第2の受光素子との間に形成した場合、合成電流の向きは、原子発振器100の合成電流の向きと、逆向きになる。また、出力信号の極性も、原子発振器100の出力信号の極性と、反対になる。従って、合成電流の向き、出力信号の極性、に応じた制御を、波長制御手段6及び周波数制御手段7で行えばよい。
波長制御手段6は、発光手段1を発光させ、発光手段1の発光波長を制御する。なお、発光波長の中には、アルカリ金属原子の光吸収が最大となる固有波長も含まれる。
波長制御手段6は、低周波発振器64から出力される低周波信号Fm1及び光検出出力手段5から出力される出力信号に基づき、発光手段1の発光波長を信号α1により変更する。更に、波長制御手段6は、固有波長を有する第1の共鳴光(例えば図1に示す204参照)及び固有波長を有する第2の共鳴光(例えば図1に示す205参照)を、発光手段1が、同時に発光するように、発光手段1の発光波長を制御する。
なお、第1の共鳴光の固有波長は、第1の基底準位(例えば図1に示す201参照)と励起準位(例えば図1に示す203参照)とのエネルギー差に相当する波長である。また、第2の共鳴光の固有波長は、第2の基底準位(例えば図1に示す202参照)と励起準位とのエネルギー差に相当する波長である。
波長制御手段6により制御された発光手段1から発光する光によって、ガスセル中のアルカリ金属原子には、光吸収が生じる。(固有波長と一致すれば光吸収は最大となる。)
また、低周波信号Fm1を利用するため、発光手段1から発光する光の波長は周期的に変化する。
周波数制御手段7は、原子共鳴部10が、透明化現象を生じるように、発光手段1から発光する光の周波数を制御する。周波数制御手段7は、低周波発振器74から出力される低周波信号Fm2及び光検出出力手段5から出力される出力信号に基づき、電圧制御水晶発振器73の周波数を決定し、発光手段1から発光する光の周波数を信号β1により変更する。
具体的には、第1の共鳴光の周波数と第2の共鳴光の周波数との間の周波数差が、第1の基底準位と第2の基底準位とのエネルギー差(ΔE)に相当する周波数差となるように、周波数制御手段7を用いて、第1の共鳴光の周波数及び第2の共鳴光の周波数を制御する。
第1の共鳴光−第2の共鳴光間の周波数差と、第1の基底準位−第2の基底準位間のエネルギー差に相当する周波数差とが一致することで、アルカリ金属原子の光吸収率の低下(=光透過率の増加)が最大となり、原子共鳴部10は、透明化現象を維持できる。
なお、信号β1は、高周波信号であり、電圧制御水晶発振器73から出力される標準周波数信号を、PLL75で逓倍し、更に低周波発振器74から出力される低周波信号により、FM変調が加えられた信号である。信号β1の周波数は、第1の基底準位と第2の基底準位とのエネルギー差の半分(ΔE/2)に相当する周波数を維持するように、制御される。
バイアスT8は、信号α1及び信号β1に基づき発光手段1から発光する光の波長及び周波数を変更する。
具体的には、波長制御手段6から出力される信号α1と周波数制御手段7から出力される信号β1とを混合し、信号α1及び信号β1を重畳した信号を、発光手段1に入力する。
なお、波長制御手段6が、ガスセル3中のアルカリ金属原子の光吸収が最大となる信号α1を、また一方で、周波数制御手段7が、ガスセル3中のアルカリ金属原子の光吸収率の低下が最大となる信号β1を、発光手段1に対して供給することで、ガスセル3中のアルカリ金属原子の透明化現象が維持される。
即ち、発光手段1から発光する光の波長が、アルカリ金属原子の光吸収が最大となる波長(第1の共鳴光の固有波長及び第2の共鳴光の固有波長)からずれ、且つ、発光手段1から発光する光の周波数が、アルカリ金属原子の光吸収率の低下が最大となる周波数からずれた場合、透明化現象が維持されない。
原子発振器100は、ガスセル3中のアルカリ金属原子の透明化現象が維持される場合とされない場合との、アルカリ金属原子の光吸収挙動の急峻な変化を検出する。更に、光吸収挙動の急峻な変化を比較し、制御することで、高安定な原子発振器を実現している。
本実施の形態に係る原子発振器100によれば、第1の受光素子51から出力される出力電流i1と、第2の受光素子52から出力される出力電流i2とを合成した後、合成電流を変換回路に印加することにより、出力電流i1の直流成分(光吸収の影響を受けていない成分)を出力電流i2で相殺することができる。出力電流i1の直流成分がオペアンプによって増幅されない分、出力電流をより大きな変換効率で、変換回路によって変換することができる。最適化された変換効率で、変換回路より出力された出力信号に基づき、発光手段1の発光波長及び発振器の周波数を制御できるため、S/N比に優れて高安定な原子発振器を実現できる。
(原子発振器の動作)
次に、図4に示す、本実施形態に係る原子発振器100の動作の一例について説明する。
原子発振器100において、発光手段1から光が発光する。
発光手段1から発光する光は、分光手段2により2つの光に分光される。一方の光(半分の光)は、ハーフミラー21で透過され、ガスセル3に入射する。他方の光(半分の光)は、ハーフミラー21で反射され、更にミラー22で反射され、光検出出力手段5内の第2の受光素子52に入射する。
ガスセル3を透過する光を、光Aとする。ガスセル3を透過しない光を、光Bとする。
ガスセル3を透過する光Aの光量は、ガスセル3を透過しない光Bの光量と比較して、ガスセル3内のアルカリ金属原子による光吸収の影響を受け、透過光量の変化分だけ、光量が減少する。
第1の受光素子51のカソードと第2の受光素子52のアノードとの間には、直流電圧源55a、55bにより、第1の受光素子51及び第2の受光素子52が逆バイアスとなる電圧2×Vbias(Vbias>0)が印加される。
従って、光Aに基づき、第1の受光素子51には、出力電流i1が流れ、光Bに基づき、第2の受光素子52には、出力電流i2が流れる。
また、第1の受光素子51のカソードと第2の受光素子52のアノードとが電気的に接続され、更に、オペアンプ53の反転入力端子と電気的に接続されるため、出力電流i1と出力電流i2との合成電流Δi(=i1−i2)が、オペアンプ53の反転入力端子に入力される。
一方、オペアンプ53の非反転入力端子はGND(=0V)と電気的に接続されるので、オペアンプ53では反転入力端子の電圧がGND(=0V)に等しくなるようにフィードバックがかかる。
また、直流電圧源55aのマイナス側、直流電圧源55bのプラス側が、それぞれGND(=0V)と電気的に接続されるので、第1の受光素子51及び第2の受光素子52には、それぞれ、逆バイアスとなる電圧Vbiasが印加される。
従って、合成電流Δiは、オペアンプ53の反転入力端子から、電流電圧変換抵抗54を介して、オペアンプ53の出力端子に流れる。
電流電圧変換抵抗54の抵抗をRとすると、電流電圧変換抵抗54の両端子には、R×Δiの電圧が発生する。即ち、−R×Δiが、オペアンプ53(光検出出力手段5)の出力電圧となる。該出力電圧が、出力信号として、波長制御手段6及び周波数制御手段7に入力される。
図5に、発光手段1の駆動電流と受光素子の出力電流との関係について示す。第1の受光素子51から出力される出力電流i1は、第2の受光素子52から出力される出力電流i2と比較して、ガスセル3内のアルカリ金属原子による光吸収の影響を受け小さくなっていることがわかる。本実施の形態に係る原子発振器100では、出力電流i1の直流成分(光吸収の影響を受けていない成分)を、出力電流i2で相殺する。
図6に、発光手段1の駆動電流と光検出出力手段5の出力電圧との関係について示す。ガスセル3中のアルカリ金属原子に生じた光吸収の影響が、光検出出力手段5の出力電圧に反映されていることがわかる。本実施の形態に係る原子発振器100では、CPT方式を適用しているため、透過光量の変化分だけ、出力電圧は減少している。なお、ガスセル3中のアルカリ金属原子の光吸収が最大となる場合の、発光手段1の駆動電流は、図6に示すA付近である。
波長制御手段6は、発光手段1を駆動させ、発光手段1の発光波長を制御する信号α1を出力する。なお、ガスセル3中のアルカリ金属原子の光吸収が最大となる様な信号も信号α1に含まれる。
低周波発振器64は、周波数Fm1(数Hz<Fm1<数10kHz)の低周波信号を、同期検波回路61及び電流駆動回路63に入力する。
同期検波回路61は、周波数Fm1の低周波信号で、光検出出力手段5から出力される出力信号を同期検波し、同期検波信号を出力する。同期検波回路61は、同期検波信号を、制御回路62に入力する。
図7に、発光手段1の駆動電流と同期検波回路61の出力電圧との関係について示す。図7より、図6に示す光検出出力手段5から出力される出力電圧に対応する、同期検波回路61から出力される出力電圧は、微分波形を有することがわかる。なお、駆動電流が電流ix(図7に示すゼロクロス点)となる場合、ガスセル3中のアルカリ金属原子の光吸収が最大となる。
制御回路62は、電流駆動回路63から出力される信号α1を制御するための制御信号を生成し、出力する。制御回路62から出力される制御信号は、同期検波回路61から出力される同期検波信号(図7に示す出力電圧)に基づき、発光手段1を駆動させるための駆動電流が電流ixとなる様に、信号α1を制御する。即ち、制御信号は、ガスセル3中のアルカリ金属原子の光吸収が最大となるように信号α1を制御する。制御回路62は、制御信号を、電流駆動回路63に入力する。
電流駆動回路63は、制御回路62から出力される制御信号と、周波数Fm1の低周波信号とを重畳し、発光手段1を駆動させるための、信号α1を、出力する。発光手段1は、信号α1に基づき駆動する。なお、発光手段1の発光波長は、周波数Fm1の低周波信号及び光検出出力手段5から出力される出力信号に基づき周期的に変化する。
周波数制御手段7は、原子共鳴部10が、透明化現象を生じるように、発光手段1から発光する光の周波数を制御する。
周波数制御手段7は、ガスセル3中のアルカリ金属原子の光吸収率の低下が最大となる様な信号β1を出力する。信号β1には、低周波発振器74により、FM変調が加えられている。
低周波発振器74は、周波数Fm2(数Hz<Fm2<数10kHz、ただしFm2はFm1と少なくとも一桁以上離れていることが望ましい)の低周波信号を、同期検波回路71及びPLL75に、入力する。
図8は、発光手段1が発光する光の出力波長を示す図である。図8より、発光手段1が発光する光の出力波長は、FM変調が加えられている信号β1の影響を受けて、両サイドに、周波数FRFのサイドバンドを生成することがわかる。
周波数FRFは、第1の基底準位と第2の基底準位202とのエネルギー差の半分(ΔE/2)に相当する周波数である。これより、ガスセル3中のアルカリ金属原子は、透明化現象を維持できる。更に、信号β1の発振源である電圧制御水晶発振器73の発振周波数も極めて安定する。
図9は、FM変調されたPLL75から発振される発振周波数と、光検出出力手段5の出力電圧との関係を示す図である。信号β1は、周波数Fm2の低周波信号によりFM変調されているので、ガスセル3中のアルカリ金属原子に発生する透明化現象による光吸収率の低下は、周波数Fm2の低周波信号に同期して、図9に示す様に変化する。なお、ガスセル3中のアルカリ金属原子の透明化現象による光吸収率の低下が最大となるのは、図9に示すB付近である。
同期検波回路71は、周波数Fm2の低周波信号により、光検出出力手段5から出力される出力信号を同期検波し、同期検波信号を出力する。同期検波回路71は、同期検波信号を、制御回路72に入力する。
図10に、FM変調されたPLL75の発振周波数と同期検波回路71の出力電圧との関係について示す。図10より、図9に示すFM変調されたPLL75の発振周波数に対応する、同期検波回路71から出力される出力電圧は、微分波形を有することがわかる。なお、発振周波数が周波数fy(図10に示すゼロクロス点)となる場合、ガスセル3中のアルカリ金属原子の光吸収率の低下が最大となる。
制御回路72は、PLL75から出力される信号β1を制御するための制御信号を生成し、出力する。即ち、電圧制御水晶発振器73から出力される標準周波数信号を制御するための制御信号を生成し、出力する。
制御回路72から出力される制御信号は、同期検波回路71から出力される同期検波信号(図10に示す出力電圧)に基づき、ガスセル3に入射する光の周波数が、周波数fyとなる様に、信号β1を制御する。即ち、制御回路62から出力される制御信号は、ガスセル3中のアルカリ金属原子の光吸収率の低下が最大となるように信号β1を制御する。制御回路72は、生成した制御信号を、電圧制御水晶発振器73に入力する。
電圧制御水晶発振器73は、制御回路72から出力される制御信号に基づき、標準周波数信号を生成し、PLL75へ入力する。なお、電圧制御水晶発振器73の発振周波数を、例えば、10MHz程度とすることで周波数安定度を、高めることができる。
PLL75は、電圧制御水晶発振器73から出力される標準周波数信号を逓倍し、逓倍した信号と低周波発振器74から出力される周波数Fm2の低周波信号とに基づき、FM変調が加えられた信号β1を生成して、出力する。
なお、波長制御手段6及び周波数制御手段7の構成は、特に限定されない。例えばA/DコンバータでA/D変換後にDSP(Digital Signal Processing)、ハードウェアの演算回路、又はCPU(Central Processing Unit)及びソフトウェア、これらを組み合わせてデジタル演算した後に、D/AコンバータでD/A変換して出力してもよい。
その後、バイアスT8は、波長制御手段6から出力された信号α1と、周波数制御手段7から出力された信号β1とを混合し、混合した信号を発光手段1に入力する。
即ち、発光手段1は、波長制御手段6によってガスセル3中のアルカリ金属原子の光吸収が最大となるように制御された信号α1と、周波数制御手段7によってガスセル3中のアルカリ金属原子の光吸収率の低下が最大となるように制御された信号β1とが混合された信号により、制御される。そして、発光手段1は、該信号に応じた駆動電流で駆動し、発光する。この光が、分光手段2を介してガスセル3及び光検出出力手段5(第2の受光素子)に入射することで、原子発振器100において、ガスセル3中のアルカリ金属原子の透明化現象が維持される。更に、光検出出力手段5は、各々の光に基づき検出される出力電流を合成し、合成電流を、オペアンプ53の反転入力端子に入力するため、極めて大きな変換効率で変換された出力信号を出力できる。従って、S/N比に優れて高安定な原子発振器100を実現できる。
なお、光検出出力手段5として、例えば、図11の様な構成とすることもできる。第1の受光素子51のアノードと第2の受光素子52のカソードとの間に、直流電圧源55により、第1の受光素子51及び第2の受光素子52の逆バイアスとなる、例えば、電圧Vbias(Vbias>0)を印加する。更に、オペアンプ53の反転入力端子に、直流電圧源56により、例えば電圧Vref=Vbias/2を印加する。
この場合、オペアンプ53の非反転入力端子の電圧が、電圧Vrefとなるので、オペアンプ53では反転入力端子の電圧が、電圧Vrefに等しくなるようにフィードバックがかかる。反転入力端子に流れる電流Δiは電流電圧変換抵抗54を介してオペアンプ53の出力端子に流れる。このため、オペアンプ53の出力電圧は電圧Vref−R×Δiとなる。
また、第1の受光素子51には、電圧Vbias-Vrefの逆バイアスが印加され、第2の受光素子52には、電圧Vrefの逆バイアスが印加される。
光検出出力手段5を、図11の様な構成とすることで、電圧Vrefの補正が可能になるため、例えば、波長制御手段6又は周波数制御手段7で同期検波を行わない場合、また、例えば上述のように、波長制御手段6及び周波数制御手段7において、A/D変換後にデジタル演算で同期検波を行う場合等に、該構成を用いることが好ましい。
(変形例)
図12は、本実施形態に係る原子発振器300の概略構成の一例である。
図12に示す原子発振器300には、CPT方式を適用している。図4に示す原子発振器100と異なる部分を中心に説明する。原子発振器100と同じ部分には同じ符号を付している。
原子発振器300が、原子発振器100と異なる部分は、ガスセル4を形成していることである。原子発振器300は、バッファガスを封入したガスセル4を、ミラー22と光検出出力手段5の第2の受光素子52との間に形成している。
ガスセル4は、ガスセル3と、同一の材料で形成される。また、ガスセル4は、ガスセル3と、同一の表面処理が施される。
ガスセル3には、アルカリ金属原子及びバッファガスが気密封止されている。
ガスセル4には、バッファガスが気密封止されている。なお、ガスセル4には、アルカリ金属原子は含まれていない。
原子発振器100において、ガスセル3に入射する光は、アルカリ金属原子の光吸収による影響を受けて、ガスセル3を透過した後には、透過光量の変化分だけ光量が低減する。しかし、アルカリ金属原子の光吸収による影響以外にも、次に述べる原因によって、ガスセル3に入射する光の光量が低減する場合がある。
例えば、ガスセル3に、光が入射又は出射する際の、ガスセル3の外面又は内面で反射によって、また、例えば、ガスセル3を構成する材料によって定まる表面状態の違いによって、ガスセル3に入射する光の光量が低減する場合がある。
即ち、ガスセル自体が、ガスセル3に入射する光の光量低減を生じさせる原因になってしまう場合もある。アルカリ金属原子による光吸収以外の原因による、ガスセル3に入射する光の光量低減が、あまりにも大きいと、オペアンプ53では、オフセット電圧が発生してしまう。これにより、オフセット電圧が発生しない場合に比べてオペアンプ53での電流−電圧変換効率を低くする必要が生じるので原子発振器の高安定化は、阻まれてしまう。
従って、このような場合に、原子発振器300を、適用すると良い。
ガスセル3に入射する光は、ガスセル3を透過した後、アルカリ金属原子の光吸収起因により光量が低減し、更にガスセル3自体が原因で光量が低減する。
ガスセル4に入射する光は、ガスセル4を透過した後、ガスセル4自体が原因で光量が低減する。
従って、光検出出力手段5の第1の受光素子51及び第2の受光素子52に入射する光は、どちらも同じ様に、ガスセルによって、光量低減の影響を受けた光となる。
即ち、ガスセル起因の光量低減の影響は、ガスセル3とガスセル4とで互いに相殺され、光検出出力手段5には、アルカリ金属原子の光吸収による影響で光量が低減した光のみが入射することになる。このような場合、オペアンプ53では、オフセット電圧が発生しない。
ガスセルの材料や、ガスセルの表面状態によって、ガスセル起因の光量低減の影響は異なるため、一概には言えないが、ガスセル起因の光量低減の影響が大きい場合には、原子発振器300の構成とすることで、より高安定な原子発振器を実現することができる。
なお、原子発振器100及び原子発振器300において、ハーフミラー21をビームスプリッターに置換えることも可能である。ビームスプリッターを用いることで、ガスセル3に入射する光の光量を調整することができる。ガスセル3に入射する光の光量を調整できれば、ガスセル3起因の光量低減を調整することができる。例えば、予め、ガスセル3に入射する光の光量が大きくなるように、ビームスプリッターを用いて、調整することができる。
(実施形態2)
(原子発振器の構成)
図13は、本実施形態に係る原子発振器200の概略構成の一例である。
図13に示す原子発振器200には、二重共鳴法を適用している。図4に示す実施形態1と異なる部分を中心に説明する。実施形態1と同じ部分には同じ符号を付している。
図4に示す原子発振器100と異なる部分は、図13に示す原子発振器200には、バイアスT8が無いこと、マイクロ波キャビティ9が有ること、である。
また、波長制御手段6から出力される信号α2は、発光手段1へ入力され、周波数制御手段7から出力される信号β2は、マイクロ波キャビティ9へ入力されること、である。
更に、原子発振器100の場合は、ガスセル3を透過する光Aの光量が、ガスセル3を透過しない光Bの光量と比較して、ガスセル3内のアルカリ金属原子による光吸収の影響を受け、その変化分だけ、光量が低減する。しかし、原子発振器200の場合は、ガスセル3を透過する光Cの光量は、ガスセル3を透過しない光Dの光量と比較して、ガスセル3内のアルカリ金属原子による光吸収の影響を受け、その変化分だけ、光量が増加する。
一方、図4に示す原子発振器100と同じ部分は、ガスセル3を透過する光Cを第1の受光素子51により検出し、出力した出力電流と、ガスセル3を透過しない光Dを第2の受光素子52により検出し、出力した出力電流とを合成していることである。また、更に、合成した電流を、オペアンプ53の一方の端子に入力していることである。これより生じる効果は、実施形態1の説明を参酌できる。
マイクロ波キャビティ9は、ガスセル3を取り巻く様に形成されている。マイクロ波キャビティ9は、マイクロ波を発生し、ガスセル3に、マイクロ波を入射する。マイクロ波の周波数が、アルカリ金属原子の遷移周波数と一致すれば、ガスセル3中のアルカリ金属原子(正確には、第2の基底準位に存在するアルカリ金属原子)が、誘導放出を生じる。この時、発光手段1から発光する光は、第1の基底準位と励起準位とのエネルギー差に相当する波長(固有波長)を有する光となっている。
原子発振器200において、波長制御手段6は、発光手段1を駆動させ、更に発光手段1の発光波長を制御する。
即ち、第1の基底準位(例えば図2に示す201参照)と励起準位(例えば図2に示す203参照)とのエネルギー差に相当する波長を有する光となるように、発光手段1の発光波長を制御する。
波長制御手段6は、発光手段1の発光波長を制御する信号α2を出力する。
また、原子発振器200において、周波数制御手段7は、原子共鳴部10が、マイクロ波遷移を生じるように、即ち、マイクロ波キャビティ9から発生するマイクロ波の周波数が、マイクロ波遷移(例えば図2に示す207参照)を生じる周波数、となるように、マイクロ波キャビティ9から発生するマイクロ波の周波数を制御する。マイクロ波遷移を生じる周波数とは、遷移周波数のことであり、第1の基底準位と第2の基底準位(例えば図2に示す202参照)とのエネルギー差に相当する周波数のことである。
周波数制御手段7は、マイクロ波キャビティ9から発生するマイクロ波の周波数が遷移周波数となるような信号β2を出力する。
マイクロ波の周波数が遷移周波数と一致することで、マイクロ波遷移が生じ、ガスセル3中のアルカリ金属原子の光吸収率の増加が最大となる。
なお、実施形態1に係るCPT方式を適用している原子発振器100では、発光手段1に波長条件及び周波数条件の両条件を課している。発光手段1の駆動条件と、ガスセル中のアルカリ金属原子が透明化現象を維持する条件とを、信号α1及び信号β1に重ね、バイアスT8で混合している。即ち、ガスセル中のアルカリ金属原子の光吸収が最大となる条件及びガスセル中のアルカリ金属原子の光吸収率の低下が最大となる条件を、発光手段1に課している。
一方、実施形態2に係る二重共鳴法を適用している原子発振器200では、発光手段1の駆動条件と、ガスセル中のアルカリ金属原子がマイクロ波遷移を生じる条件とを、別々の媒体に課している。即ち、ガスセル中のアルカリ金属原子の光吸収が最大となる条件を信号α2として発光手段1へ課し、ガスセル中のアルカリ金属原子の光吸収率の増加が最大となる条件を信号β2としてマイクロ波キャビティ9へ課している。
原子発振器200は、ガスセル3中のアルカリ金属原子のマイクロ波遷移が生じる場合と生じない場合の、アルカリ金属原子の光吸収挙動の急峻な変化を検出する。
原子発振器200において、発光手段1の発光波長が、共鳴光の固有波長からずれ、且つ、マイクロ波キャビティ9から発生するマイクロ波の周波数が、遷移周波数からずれた場合、マイクロ波遷移が生じない。
ここで、PLL75の発振周波数に対する光検出出力手段5の出力電圧との関係について、CPT方式を適用している原子発振器100における出力電圧を示す図9及び図10と、二重共鳴法を適用している原子発振器200における出力電圧を示す図14及び図15とを対比する。
図14に示す様に、PLL75の発振周波数に対する光検出出力手段5の出力電圧の変化は、図9とは反対になる。また、図15に示す様に、PLL75の発振周波数に対する同期検波回路71の出力電圧の変化も、図10とは反対になる。
これより、CPT方式を適用した原子発振器100が、透明化現象を維持する場合は、光吸収率の低下が最大となり、二重共鳴法を適用した原子発振器200が、マイクロ波遷移を生じる場合は、光吸収率の増加が最大となることがわかる。
なお、図9及び図10では、ガスセル中のアルカリ金属原子の光吸収率の低下が最大となる部分が、B部、ガスセル中のアルカリ金属原子の光吸収率の低下が最大となる周波数が、周波数fyである。また、図12及び図13では、ガスセル中のアルカリ金属原子の光吸収率の増加が最大となる部分が、C部、ガスセル中のアルカリ金属原子の光吸収率の増加が最大となる周波数が、周波数fzである。
即ち、原子発振器100では、電圧制御水晶発振器73の発振周波数が周波数fyとなるように、制御されることにより、透明化現象が維持される。また、原子発振器200では、電圧制御水晶発振器73の発振周波数が周波数fzとなるように、制御されることにより、マイクロ波遷移の発生が可能になる。
ガスセル中のアルカリ金属原子の光吸収率の低下が最大となるように制御されるCPT方式を適用した原子発振器100と、ガスセル中のアルカリ金属原子の光吸収率の増加が最大となるように制御される二重共鳴法を適用した原子発振器200とでは、アルカリ金属原子の光吸収に対する、その挙動が全く逆であり、異なる。しかし、どちらも、その光吸収挙動の変化の急峻性を利用して、原子発振器の高安定化を図っている点では、同じである。
本実施の形態に係る原子発振器200によれば、第1の受光素子51から出力される出力電流i1と、第2の受光素子52から出力される出力電流i2とを合成した後、合成電流を変換回路に印加することにより、出力電流i1の直流成分(光吸収の影響を受けていない成分)を出力電流i2で相殺することができる。出力電流を大きな変換効率で、変換回路により変換し、最適化された出力信号に基づき、発光手段1の発光波長及び発振器の周波数を制御できるため、S/N比に優れて高安定な原子発振器を実現できる。
以上、本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の実施形態の要旨の範囲内において、種々の変形、変更が可能である。
1 発光手段
2 分光手段
3,4 ガスセル
6 波長制御手段
7 周波数制御手段
51 第1の受光素子
52 第2の受光素子
53 オペアンプ
54 電流電圧変換抵抗
63 電流駆動回路
73 発振器(電圧制御水晶発振器)
100,200,300 原子発振器
特開平5−327495号公報

Claims (8)

  1. 光を発光する発光手段と、
    ガス状のアルカリ金属原子を気密封止するガスセルと、
    前記ガスセルを透過する前記光に基づき第1の出力電流を出力する第1の受光素子と、
    前記ガスセルを透過しない前記光に基づき第2の出力電流を出力する第2の受光素子と、
    前記第1の出力電流及び前記第2の出力電流を変換して出力信号を出力する変換回路と、
    前記ガスセルに入射する前記光の周波数を決定する発振器と、を有し、
    前記発振器の発振周波数は、前記出力信号に基づき、制御され、
    前記第1の出力電流及び前記第2の出力電流の合成が前記変換回路に印加される
    ことを特徴とする原子発振器。
  2. 光を発光する発光手段と、
    ガス状のアルカリ金属原子を気密封止する第1のガスセルと、
    第2のガスセルと、
    前記第1のガスセルを透過する前記光に基づき第1の出力電流を出力する第1の受光素子と、
    前記第2のガスセルを透過する前記光に基づき第2の出力電流を出力する第2の受光素子と、
    前記第1の出力電流及び前記第2の出力電流を変換して出力信号を出力する変換回路と、
    前記第1のガスセルに入射する前記光の周波数を決定する発振器と、を有し、
    前記発振器の発振周波数は、前記出力信号に基づき、制御され、
    前記第1の出力電流及び前記第2の出力電流の合成が前記変換回路に印加される
    ことを特徴とする原子発振器。
  3. 前記原子発振器は、前記発光手段を駆動させる電流駆動回路を備え、
    前記電流駆動回路は、前記出力信号に基づき、前記発光手段の発光波長を制御する
    ことを特徴とする請求項1又は請求項2のいずれか一項に記載の原子発振器。
  4. 前記原子発振器は、前記光を分光する分光手段を備え、
    前記分光手段は、前記光の光量を調整する
    ことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の原子発振器。
  5. 前記発振周波数は、前記アルカリ金属原子の光吸収率の低下が最大となる周波数である
    ことを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか一項に原子発振器。
  6. 前記発振周波数は、前記アルカリ金属原子の光吸収率の増加が最大となる周波数である
    ことを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか一項に原子発振器。
  7. 前記第1の受光素子及び前記第2の受光素子は、フォトダイオードである
    ことを特徴とする請求項1又は請求項6のいずれか一項に記載の原子発振器。
  8. 前記原子発振器は、前記電流駆動回路を含む波長制御手段と、前記発振器を含む周波数制御手段と、を備え、
    前記波長制御手段と前記周波数制御手段の少なくとも一方で、前記出力信号を同期検波する
    ことを特徴とする請求項1又は請求項7のいずれか一項に記載の原子発振器。
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