JP2014167845A - 硫化物固体電解質材料の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】硫化物固体電解質の性能低下を抑制しつつ、耐圧性の低い反応容器を用いることができる、硫化物固体電解質材料の製造方法を提供する。
【解決手段】硫化リチウムと、硫化リンと、炭化水素系溶媒とを少なくとも含む混合物が入った反応容器を準備し、前記反応容器内の前記混合物を、前記反応容器の外部から前記反応容器の内部に供給された硫化物ガスが存在する状態で加熱することを特徴とする、硫化物固体電解質の製造方法。
【選択図】図1
【解決手段】硫化リチウムと、硫化リンと、炭化水素系溶媒とを少なくとも含む混合物が入った反応容器を準備し、前記反応容器内の前記混合物を、前記反応容器の外部から前記反応容器の内部に供給された硫化物ガスが存在する状態で加熱することを特徴とする、硫化物固体電解質の製造方法。
【選択図】図1
Description
本発明は、硫化物固体電解質材料の製造方法に関する。
近年におけるパソコン、ビデオカメラおよび携帯電話等の情報関連機器や通信機器等の急速な普及に伴い、その電源として利用される電池の開発が重要視されている。また、自動車産業界等においても、電気自動車用あるいはハイブリッド自動車用の高出力且つ高容量の電池の開発が進められている。現在、種々の電池の中でも、エネルギー密度が高いという観点から、リチウム電池が注目を浴びている。
現在市販されているリチウム電池は、可燃性の有機溶媒を含む電解液が使用されているため、短絡時の温度上昇を抑える安全装置の取り付けや短絡防止のための構造・材料面での改善が必要となる。これに対し、電解液を固体電解質層に変えて、電池を全固体化したリチウム電池は、電池内に可燃性の有機溶媒を用いないので、安全装置の簡素化が図れ、製造コストや生産性に優れると考えられている。さらに、このような固体電解質層に用いられる固体電解質材料として、硫化物固体電解質材料が知られている。
硫化物固体電解質材料は、Liイオン伝導度が高いため、電池の高出力化を図る上で有用であり、従来から種々の研究がなされている。例えば、特許文献1には、硫化リン、硫化ゲルマニウム、硫化ケイ素及び硫化ホウ素から選ばれる1種以上の化合物と、硫化リチウムを、炭化水素系溶媒中で接触させる工程を含むリチウムイオン伝導性固体電解質の製造方法が開示されている。具体的には、特許文献1では、不活性雰囲気下の密閉容器内において、Li2SとP2S5とを、炭化水素系溶媒中で80〜300℃にて接触させることで硫化物固体電解質を製造している。特許文献1において、硫化物固体電解質は、さらに、必要に応じて、不活性雰囲気下、200〜400℃で加熱処理がなされている。
特許文献1では、Li2SとP2S5とを炭化水素系溶媒中で加熱する際、加熱温度を炭化水素系溶媒の沸点以上としている。このように密閉容器内で溶媒の沸点以上の加熱処理を行うには、大気圧以上の圧力保持が必要となり、高い耐圧性を有する容器を用いる必要がある。その結果、設備コストの増加を招く。
一方で、特許文献1に記載の方法において、Li2SとP2S5との炭化水素系溶媒中での加熱を、容器を密閉せずに常圧下で行うと、P−P結合が形成され、硫化物固体電解質のイオン伝導性能が低下することが、本発明者によって新たに見出された。
一方で、特許文献1に記載の方法において、Li2SとP2S5との炭化水素系溶媒中での加熱を、容器を密閉せずに常圧下で行うと、P−P結合が形成され、硫化物固体電解質のイオン伝導性能が低下することが、本発明者によって新たに見出された。
本発明は、上記実情を鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、硫化物固体電解質の性能低下を抑制しつつ、耐圧性の低い容器を用いることができる、硫化物固体電解質材料の製造方法を提供することである。
本発明の硫化物固体電解質の製造方法は、硫化リチウムと、硫化リンと、炭化水素系溶媒とを少なくとも含む混合物が入った反応容器を準備し、前記反応容器内の前記混合物を、前記反応容器の外部から前記反応容器の内部に供給された硫化物ガスが存在する状態で加熱することを特徴とするものである。
本発明によれば、高い耐圧性を有する反応容器を用いなくても、イオン伝導性能が確保された硫化物固体電解質を製造することが可能である。
本発明によれば、高い耐圧性を有する反応容器を用いなくても、イオン伝導性能が確保された硫化物固体電解質を製造することが可能である。
本発明の製造方法において、前記混合物の加熱温度は80〜300℃とすることができる。
また、前記硫化物ガスとしては硫化水素を用いることができる。
また、前記硫化物ガスは、前記反応容器の外部から前記反応容器の内部に連続的に供給することが好ましい。弁等を設置しなくても、反応容器外部の大気中に含まれる水分が反応容器内部に逆拡散するのを防止することができるからである。
また、前記硫化物ガスとしては硫化水素を用いることができる。
また、前記硫化物ガスは、前記反応容器の外部から前記反応容器の内部に連続的に供給することが好ましい。弁等を設置しなくても、反応容器外部の大気中に含まれる水分が反応容器内部に逆拡散するのを防止することができるからである。
本発明の製造方法において、前記混合物の加熱は、該混合物を攪拌しながら行うことが好ましい。硫化物固体電解質の合成速度を向上させることが可能なためである。
また、前記炭化水素系溶媒の沸点は200℃以上であることが好ましい。原料である硫化リチウムと硫化リンとの反応速度を高めつつ、該炭化水素系溶媒の揮発を抑制することができるからである。
また、前記炭化水素系溶媒の沸点は200℃以上であることが好ましい。原料である硫化リチウムと硫化リンとの反応速度を高めつつ、該炭化水素系溶媒の揮発を抑制することができるからである。
本発明の硫化物固体電解質の製造方法では、耐圧性の低い反応容器を用いても、硫化物固体電解質の性能低下を抑制することができる。
本発明の硫化物固体電解質の製造方法は、硫化リチウムと、硫化リンと、炭化水素系溶媒とを少なくとも含む混合物が入った反応容器を準備し、前記反応容器内の前記混合物を、前記反応容器の外部から前記反応容器の内部に供給された硫化物ガスが存在する状態で加熱することを特徴とするものである。
図1は、本発明の硫化物固体電解質材料の製造方法の一例を示すフローチャートである。図1においては、まず、反応容器内に、Li2S(硫化リチウム)、P2S5(硫化リン)及び炭化水素系溶媒を少なくとも含む混合物を用意する。次に、反応容器内にH2Sガス(硫化物ガス)を供給しながら、混合物を加熱することにより、原料であるLi2SとP2S5とを反応させ、Li、P及びSを含有する硫化物固体電解質材料(例えば、Li3PS4)を合成する。
図2は、本発明において使用される製造装置の一例を示す概略断面図である。図2において、製造装置7は、反応容器1、攪拌装置2、H2Sガス導入管4、加熱装置5、排気装置6を有している。反応容器1内には、Li2S、P2S5及び炭化水素系溶媒を少なくとも含む混合物3が入っており、攪拌装置2によって混合物3を攪拌することができる。H2Sガス導入管4は、H2Sガス供給源(図示せず)と繋がっており、反応容器1の内部にH2Sガスを供給することができる。
加熱装置5は、熱媒体5b(例えば、ジメチルシリコーンオイルなど)を収容する加熱浴5aと、熱媒体5bを加熱する加熱部5c(例えば、SUS316Lシースヒータなど)とを有している。加熱した熱媒体5bに反応容器1を浸漬することで、反応容器1内の混合物3を加熱することができ、混合物1中の原料を反応させ、硫化物固体電解質材料を合成することができる。
反応容器1には、排気装置6が連結されており、H2Sガス導入管4による反応容器1内部へのH2Sガスの流通(連続供給)が可能である。排気装置6は、反応容器1の内部と反応容器1の外部とを連通可能な排気管6aを有しており、反応容器1の内部の気体を外部へと排出させることができる。排気管6a上には、密閉部6b(例えば、水封管等)が設けられており、必要に応じて反応容器1内部の密閉が可能である。また、排気管6a上には、除害部6cが設けられており、必要に応じて反応容器1から外部に排出される気体から、H2Sガスを除去することができる。
加熱装置5は、熱媒体5b(例えば、ジメチルシリコーンオイルなど)を収容する加熱浴5aと、熱媒体5bを加熱する加熱部5c(例えば、SUS316Lシースヒータなど)とを有している。加熱した熱媒体5bに反応容器1を浸漬することで、反応容器1内の混合物3を加熱することができ、混合物1中の原料を反応させ、硫化物固体電解質材料を合成することができる。
反応容器1には、排気装置6が連結されており、H2Sガス導入管4による反応容器1内部へのH2Sガスの流通(連続供給)が可能である。排気装置6は、反応容器1の内部と反応容器1の外部とを連通可能な排気管6aを有しており、反応容器1の内部の気体を外部へと排出させることができる。排気管6a上には、密閉部6b(例えば、水封管等)が設けられており、必要に応じて反応容器1内部の密閉が可能である。また、排気管6a上には、除害部6cが設けられており、必要に応じて反応容器1から外部に排出される気体から、H2Sガスを除去することができる。
特許文献1に記載の硫化物固体電解質材料の製造方法において、炭化水素系溶媒存在下、硫化リチウムと硫化リンを加熱することによって反応させる際、これら原料を充分に反応させるために、炭化水素系溶媒の沸点以上の温度に加熱する必要がある。その結果、炭化水素系溶媒が沸騰してしまうため、反応容器としては密閉容器が使用されている。しかしながら、密閉容器には高い耐圧性が要求されるため、設備コスト増大を招き、硫化物固体電解質材料のコスト増加の要因の一つとなっていた。
一方、上記のような硫化物固体電解質材料の合成を、密閉容器を用いずに常圧条件下で行う場合、硫化物固体電解質材料中にP−P結合が形成され、硫化物固体電解質材料のイオン伝導性能が低下することが本発明者によって新たに見出された。P−P結合の形成は、加熱によって、硫化リンのクラッキング反応が進行した後、さらに硫黄原子の脱離が進行するために生じると考えられる。また、P−P結合は、優れたイオン伝導性を有するLi3PS4等のLi、P及びSを含有する硫化物固体電解質からの脱硫黄により生成するものであり、Li、P及びSを含有する硫化物固体電解質の性能低下を引き起こす。
本発明は本発明者により見出された上記知見に基づき成し遂げられたものである。すなわち、本発明では、硫化物ガスを導入することにより硫化物ガス雰囲気とした反応容器内において、硫化リチウムと硫化リンと炭化水素系溶媒とを少なくとも含む混合物を加熱することによって、常圧条件下での硫黄原子の脱離を抑制し、P−P結合の形成を抑えることに成功した。従って、本発明では、耐圧性の高い密閉容器を用いなくても、良好なイオン伝導性等を有する硫化物固体電解質材料を合成することが可能である。
一方、上記のような硫化物固体電解質材料の合成を、密閉容器を用いずに常圧条件下で行う場合、硫化物固体電解質材料中にP−P結合が形成され、硫化物固体電解質材料のイオン伝導性能が低下することが本発明者によって新たに見出された。P−P結合の形成は、加熱によって、硫化リンのクラッキング反応が進行した後、さらに硫黄原子の脱離が進行するために生じると考えられる。また、P−P結合は、優れたイオン伝導性を有するLi3PS4等のLi、P及びSを含有する硫化物固体電解質からの脱硫黄により生成するものであり、Li、P及びSを含有する硫化物固体電解質の性能低下を引き起こす。
本発明は本発明者により見出された上記知見に基づき成し遂げられたものである。すなわち、本発明では、硫化物ガスを導入することにより硫化物ガス雰囲気とした反応容器内において、硫化リチウムと硫化リンと炭化水素系溶媒とを少なくとも含む混合物を加熱することによって、常圧条件下での硫黄原子の脱離を抑制し、P−P結合の形成を抑えることに成功した。従って、本発明では、耐圧性の高い密閉容器を用いなくても、良好なイオン伝導性等を有する硫化物固体電解質材料を合成することが可能である。
尚、本発明において、硫化物固体電解質材料とは、イオン伝導性を有する硫化物固体材料を意味し、硫化物ガラス、硫化物ガラスセラミックス、硫化物混晶体等の形態のいずれも包含する。
以下、本発明の硫化物固体電解質材料の製造方法について詳しく説明する。
まず、硫化リチウムと、硫化リンと、炭化水素系溶媒とを少なくとも含む混合物が入った反応容器を準備する。
まず、硫化リチウムと、硫化リンと、炭化水素系溶媒とを少なくとも含む混合物が入った反応容器を準備する。
本発明で使用する硫化リチウム(Li2S)は、不純物が少ないことが好ましい。副反応を抑制することができるからである。硫化リチウムは、市販品を用いることもできるし、特開平7−330312号公報に記載された方法等によって合成することもできる。さらに、硫化リチウムは、WO2005/040039に記載された方法等を用いて精製されていることが好ましい。
硫化リチウムの平均粒径は特に限定されないが、硫化物固体電解質材料の純度を向上させ、単相材料の合成も可能になることから、20μm以下、特に10μm以下、さらに3μm以下であることが好ましい。硫化リチウムの平均粒径は、例えば、レーザー回折式粒度分布測定装置により、測定、算出することができる。
硫化リチウムの平均粒子径は、合成条件の調整、粉砕等の処理により調整することが可能である。処理方法としては、特に限定されず、一般的な方法を採用することができるが、不純物混入防止の観点から、ジルコニアボール及びポット(例えばジルコニアポット)を用いたボールミル等の方法が好ましい。
硫化リチウムの平均粒径は特に限定されないが、硫化物固体電解質材料の純度を向上させ、単相材料の合成も可能になることから、20μm以下、特に10μm以下、さらに3μm以下であることが好ましい。硫化リチウムの平均粒径は、例えば、レーザー回折式粒度分布測定装置により、測定、算出することができる。
硫化リチウムの平均粒子径は、合成条件の調整、粉砕等の処理により調整することが可能である。処理方法としては、特に限定されず、一般的な方法を採用することができるが、不純物混入防止の観点から、ジルコニアボール及びポット(例えばジルコニアポット)を用いたボールミル等の方法が好ましい。
硫化リチウムは、上記反応容器内で合成してもよい。すなわち、上記反応容器に投入する時点で、硫化リチウムである必要はなく、硫化リチウムの前駆体を上記反応容器に投入し、該反応容器内で硫化リチウムに変換してもよい。
具体的には、硫化リチウムの前駆体である硫化水素リチウム(LiHS)を上記反応容器内に投入し、該反応容器内で硫化して硫化リチウムに転化してもよい。硫化水素リチウムの硫化リチウムへの転化方法としては、例えば、硫化水素リチウムをAr等の不活性雰囲気下、150〜190℃に加熱する方法が挙げられる。
尚、硫化水素リチウム前駆体の硫化リチウムへの転化は、硫化リン等のその他の硫化物固体電解質原料の存在下で行ってもよい。
具体的には、硫化リチウムの前駆体である硫化水素リチウム(LiHS)を上記反応容器内に投入し、該反応容器内で硫化して硫化リチウムに転化してもよい。硫化水素リチウムの硫化リチウムへの転化方法としては、例えば、硫化水素リチウムをAr等の不活性雰囲気下、150〜190℃に加熱する方法が挙げられる。
尚、硫化水素リチウム前駆体の硫化リチウムへの転化は、硫化リン等のその他の硫化物固体電解質原料の存在下で行ってもよい。
本発明で使用する硫化リンとしては、特に、五硫化リン(P2S5)が好ましい。
硫化リンの平均粒径は特に限定されないが、硫化物固体電解質材料の純度を向上させ、単相材料の合成も可能になることから、10μm以下、特に3μm以下であることが好ましい。硫化リンの平均粒径の測定方法は、例えば、上記硫化リチウムと同様の方法を採用することができる。また、硫化リンの平均粒子径は、粉砕等の処理により調整することが可能であり、粉砕方法としては、硫化リチウムと同様の方法を採用することができる。
硫化リンの平均粒径は特に限定されないが、硫化物固体電解質材料の純度を向上させ、単相材料の合成も可能になることから、10μm以下、特に3μm以下であることが好ましい。硫化リンの平均粒径の測定方法は、例えば、上記硫化リチウムと同様の方法を採用することができる。また、硫化リンの平均粒子径は、粉砕等の処理により調整することが可能であり、粉砕方法としては、硫化リチウムと同様の方法を採用することができる。
本発明で使用する炭化水素系溶媒としては、例えば、飽和炭化水素、不飽和炭化水素及び芳香族炭化水素が挙げられる。
飽和炭化水素としては、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン、トリデカン、テトラデカン、ペンタデカン、ヘキサデカン等の高沸点材料が挙げられる。また、不飽和炭化水素としては、シクロオクテン等が挙げられる。また、芳香族炭化水素としては、クメン、スチレン等が挙げられる。
これら炭化水素系溶媒は1種のみを用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
飽和炭化水素としては、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン、トリデカン、テトラデカン、ペンタデカン、ヘキサデカン等の高沸点材料が挙げられる。また、不飽和炭化水素としては、シクロオクテン等が挙げられる。また、芳香族炭化水素としては、クメン、スチレン等が挙げられる。
これら炭化水素系溶媒は1種のみを用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
炭化水素系溶媒は、沸点が後述する混合物の加熱温度よりも高いことが好ましい。加熱による揮発を抑制して反応容器内の溶媒量を確保することができ、原料の反応を安定に進行させることができるからである。さらに硫化リチウムと硫化リンとの反応を充分に進行させると共に反応速度を速めることができることから、沸点が150℃以上、特に200℃以上、さらに230℃以上であることが好ましい。この観点から、上記炭化水素系溶媒のうち、トリデカン(沸点234℃)、テトラデカン(沸点253.6℃)、ペンタデカン(沸点271℃)、ヘキサデカン(沸点287℃)等が特に好ましい。
本発明においては、必要に応じて、炭化水素系溶媒以外の溶媒を用いてもよい。例えば、ジエチルエーテル、ジメチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル類、クロロホルム、塩化メチル、塩化メチレン、フッ化ベンゼン、フッ化ヘプタン、2,3−ジハイドロパーフルオロペンタン、1,1,2,2,3,3,4−ヘプタフルオロシクロペンタン等のハロゲン化炭化水素類、酢酸エチル等のエステル類を挙げることができる。
上記混合物において、硫化リチウムと硫化リンの合計量(100mol%)に対する硫化リチウムの割合は、組み合わせる硫化リンの組成にもよるが、例えば、五硫化リンを用いる場合、70mol%〜80mol%の範囲内であることが好ましく、72mol%〜78mol%の範囲内であることがより好ましく、74mol%〜76mol%の範囲内であることがさらに好ましい。
上記混合物において、反応溶媒である炭化水素系溶媒の量は、原料である硫化リチウムと硫化リンとが、溶媒の添加によりスラリー状乃至溶液状になる程度でよく、例えば、炭化水素系溶媒1Lに対して、原料の合計量が0より多く2kg以下であることが好ましく、特に0.1kg以上0.3kg以下であることが好ましい。
上記混合物は、硫化リチウム及び硫化リン以外の原料を含んでいてもよい。例えば、LiX(Xはハロゲン)が挙げられる。具体的なXとしては、F、Cl、Br、Iを挙げることができ、中でもCl、Br、Iが好ましく、特にIが好ましい。硫化リチウム及び硫化リンに加えてLiXを原料として用いることで、Li、PおよびSを有するイオン伝導体(例えば、Li3PS4)と、LiXとを含有する硫化物固体電解質を合成することができる。LiXを用いる場合、硫化リチウムと硫化リンとLiXとの合計量(100mol%)に対するLiXの割合は、特に限定されるものではなく、合成条件よって若干異なるものであるが、10mol%より多く40mol%よりも少ない範囲内であることが好ましい。
本発明において使用する反応容器は、炭化水素系溶媒中の硫化リチウムと硫化リンとを加熱反応させるための容器である。上記したように、本発明においては、硫化物ガス雰囲気下、硫化リチウムと硫化リンとを反応させることによって、硫黄原子の脱離が抑制されている。そのため、本発明において使用する反応容器は、密閉手段を有していなくてもよく、さらには、高い耐圧性を有していなくてもよい。
本発明において使用する反応容器は、硫化物ガス供給源と連通する硫化物ガス供給口を有している。反応容器内に硫化物ガスを流通させる場合には、必要に応じて、硫化物ガスの排気口も有する反応容器を用いることができる。供給口及び排気口の具体的な形態は特に限定されない。
本発明において使用する反応容器は、硫化物ガス供給源と連通する硫化物ガス供給口を有している。反応容器内に硫化物ガスを流通させる場合には、必要に応じて、硫化物ガスの排気口も有する反応容器を用いることができる。供給口及び排気口の具体的な形態は特に限定されない。
上記したように、本発明において、反応容器は密閉手段を有していなくても硫黄原子の脱離を抑制することが可能であるが、反応容器内の硫化物ガス雰囲気を確保するために、必要に応じて、密閉手段を有していてもよい。密閉手段としては、反応容器内の硫化物ガスが反応容器外へ流出すること、及び、反応容器外から空気が反応容器内に流入することを防止できるものが挙げられる。このような密閉手段により、反応容器内の硫化物ガス雰囲気を確保できると共に、大気中の水分及び酸素が反応容器内に逆流することを防止でき、LiOH生成防止や、LiX投入時の酸化防止等が可能である。
具体的な密閉手段は特に限定されないが、例えば、反応容器の内部と反応容器の外部とを連通する排気管上に設けられた水封、チェック弁等が挙げられる。
尚、硫化物ガスを流通させる場合であって、硫化物ガス流によって反応容器内部への大気(大気中の水分、酸素等)の逆流が防止できる場合には、上記のような密閉手段は不要である。
具体的な密閉手段は特に限定されないが、例えば、反応容器の内部と反応容器の外部とを連通する排気管上に設けられた水封、チェック弁等が挙げられる。
尚、硫化物ガスを流通させる場合であって、硫化物ガス流によって反応容器内部への大気(大気中の水分、酸素等)の逆流が防止できる場合には、上記のような密閉手段は不要である。
反応容器の形状、材質は特に限定されないが、少なくとも容器内表面は、反応生成物の付着性が低い材料で形成されていることが好ましい。硫化物固体電解質材料の生産効率を向上させることができるからである。具体的には、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、及びテトラフルオロエチレンとパーフルオロアルキルビニルエーテルとの共重合体(PFA)等のテトラフルオロエチレン系樹脂等の樹脂材料、炭化ケイ素(SiC)等の非酸化物系材料で製造された容器、或いは、これら材料で内表面が被覆された容器が好ましい。
次に、反応容器内の混合物を、反応容器の外部から反応容器の内部に供給された硫化物ガスが存在する状態で加熱する。
本発明において使用する硫化物ガスとしては、特に限定されず、例えば、H2Sガス、CS2ガスが挙げられる。中でも、系内に残留する不純物を形成しないことから、H2Sガスが好ましい。硫化物ガスは、1種のみを用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
硫化物ガスは、硫化物ガス以外のガスと共に、反応容器内部に供給されてもよい。硫化物ガス以外のガスとしては、例えば、Ar、N2等の不活性ガスが挙げられる。このような混合ガスを反応容器内部に供給する場合、混合ガス中の硫化物ガスの濃度は、1vol%以上、特に10〜50vol%、さらに10〜40vol%程度であることが好ましい。
尚、LiOHの生成防止、PO4形成防止の観点から、硫化物ガス、混合ガスは、水蒸気含有量ができるだけ少ないことが好ましく、具体的には、反応容器内に供給される硫化物ガス、混合ガスの露点は、−30℃以下、特に−80℃以下であることが好ましい。
本発明において使用する硫化物ガスとしては、特に限定されず、例えば、H2Sガス、CS2ガスが挙げられる。中でも、系内に残留する不純物を形成しないことから、H2Sガスが好ましい。硫化物ガスは、1種のみを用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
硫化物ガスは、硫化物ガス以外のガスと共に、反応容器内部に供給されてもよい。硫化物ガス以外のガスとしては、例えば、Ar、N2等の不活性ガスが挙げられる。このような混合ガスを反応容器内部に供給する場合、混合ガス中の硫化物ガスの濃度は、1vol%以上、特に10〜50vol%、さらに10〜40vol%程度であることが好ましい。
尚、LiOHの生成防止、PO4形成防止の観点から、硫化物ガス、混合ガスは、水蒸気含有量ができるだけ少ないことが好ましく、具体的には、反応容器内に供給される硫化物ガス、混合ガスの露点は、−30℃以下、特に−80℃以下であることが好ましい。
硫化物ガスは、硫化リチウムと硫化リンとを加熱して反応させる際に、反応容器内を硫化物ガス雰囲気に維持することができれば、具体的な供給形態は特に限定されない。例えば、反応前に硫化物ガスを反応容器内に充填してもよいし、硫化物ガスを反応容器の外部から内部に連続的に供給してもよい。反応容器内の硫化物ガス雰囲気の確保、反応容器外部からの空気の流入防止等の観点から、硫化物ガスは反応容器の外部から内部に連続的に供給されることが好ましい。連続的に供給することで、上記したような密閉手段が不要となり、製造装置の簡素化が可能になるというメリットもある。
また、硫化物ガスは、反応容器内の気相に導入してもよいし、反応容器内の液相に導入(すなわち、バブリング)してもよい。
また、硫化物ガスは、反応容器内の気相に導入してもよいし、反応容器内の液相に導入(すなわち、バブリング)してもよい。
反応容器内部における硫化物ガスの濃度は、特に限定されないが、硫黄脱離を効果的に抑制するためには、例えば、反応容器内部における硫黄濃度が、1vol%以上、特に10vol%以上であることが好ましい。また、使用する硫化物ガス量を少量に抑える観点から、例えば、反応容器内部における硫黄濃度が、100vol%以下、特に40vol%以下であることが好ましい。
上記混合物を加熱する温度は、該混合物中の硫化リチウムと硫化リンとを反応させて硫化物固体電解質材料を合成できる温度であればよく、通常、80〜300℃である。特に150℃以上、中でも170℃以上が好ましく、また、230℃以下、中でも200℃以下が好ましい。また、加熱時間は、通常、1〜60時間であり、好ましくは4〜12時間である。加熱方法は、特に限定されず、一般的な方法を採用することができる。
上記混合物を加熱する際の反応容器内の圧力は、特に限定されない。上記したように、本発明によれば常圧にしても硫黄脱離を抑制することが可能であり、また、耐圧性容器を用いると製造コスト増大を招くことから、本発明においては、常圧であることが好ましい。
上記混合物を加熱する際の反応容器内の圧力は、特に限定されない。上記したように、本発明によれば常圧にしても硫黄脱離を抑制することが可能であり、また、耐圧性容器を用いると製造コスト増大を招くことから、本発明においては、常圧であることが好ましい。
上記混合物を加熱する際、該混合物は攪拌することが好ましい。混合物中の硫化リチウムと硫化リンとの接触を効率的に行い、これらの反応を促進し、合成速度を向上することができるからである。混合物の攪拌方法は特に限定されず、一般的な方法を採用することができる。具体的な攪拌方法としては、例えば、攪拌ボール、攪拌翼(例えば、攪拌ブレード等)等を用いた方法が挙げられる。これら攪拌媒体や攪拌子は、少なくとも表面が、反応生成物の付着性が低い材料で形成されていることが好ましい。硫化物固体電解質材料の生産効率を向上させることができるからである。具体的には、上記にて説明した、容器の内表面を被覆する材料と同様の材料から製造された、或いは、該材料で表面が被覆された、攪拌媒体若しくは攪拌子が好ましい。
攪拌の具体的な条件は、適宜設定することができる。例えば、鉄芯入りPTFEボール、SiCボール等の攪拌ボールと攪拌翼とを併用する場合、反応容器に、攪拌ボールを入れ、攪拌翼を所望の回転数で回転させることで、混合物と共に攪拌ボールが攪拌され、混合物を効率良く攪拌することができる。攪拌翼の回転数、回転時間は特に限定されず、反応条件に応じて適宜設定すればよい。
攪拌の具体的な条件は、適宜設定することができる。例えば、鉄芯入りPTFEボール、SiCボール等の攪拌ボールと攪拌翼とを併用する場合、反応容器に、攪拌ボールを入れ、攪拌翼を所望の回転数で回転させることで、混合物と共に攪拌ボールが攪拌され、混合物を効率良く攪拌することができる。攪拌翼の回転数、回転時間は特に限定されず、反応条件に応じて適宜設定すればよい。
反応容器から排出される気体は、必要に応じて、適宜処理した後、大気へと排出することが好ましい。反応容器から排出される気体には、硫化水素等の硫化物ガスが含まれるからである。排出ガスの処理は、例えば、硫化水素除去が可能な一般的な方法を用いることができる。具体的には、硫化水素ガスを吸着可能な吸着材(例えば、水酸化ナトリウム水溶液等のアルカリ溶液、水酸化鉄等)を用いた装置等が挙げられる。
加熱処理後、生成した硫化物固体電解質材料は、炭化水素系溶媒と分離して回収する。分離方法は特に限定されず、一般的な固液分離方法を採用することができる。例えば、デカンテーション、ろ過、真空乾燥等が挙げられ、これら方法を組み合わせることもできる。
また、生成した硫化物固体電解質材料は、必要に応じて、加熱処理してもよい。加熱処理時間は、加熱温度によって適宜選択されるものであるが、例えば、1分間〜24時間の範囲内であることが好ましく、中でも、30分〜3時間の範囲内であることが好ましい。
加熱熱処理は、不活性ガス雰囲気(例えばArガス雰囲気)で行うことが好ましい。硫化物固体電解質材料の劣化(例えば酸化)を防止できるからである。
加熱熱処理は、不活性ガス雰囲気(例えばArガス雰囲気)で行うことが好ましい。硫化物固体電解質材料の劣化(例えば酸化)を防止できるからである。
本発明により得られる硫化物固体電解質材料は、Liイオン伝導度に代表される金属イオン伝導度を必要とする任意の用途に用いることができるが、電池用材料として好適に用いることができる。
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
以下に実施例を示して本発明をさらに具体的に説明する。
[実施例1]
出発原料として、硫化リチウム(Li2S、平均粒径90μm、日本化学工業社製)、及び、五硫化二リン(P2S5、平均粒径200μm、アルドリッチ社製)を用いた。次に、Li2Sを2.5g、P2S5を4.03gそれぞれ秤量した(Li2S:P2S5=3mol:1mol)。
次に、反応容器内に、秤量したLi2S及びP2S5と、トリデカン45gとを投入した。続いて、反応容器に、H2Sガス(50ml/min)及びArガス(50ml/min)を10分間流通させた。その後、反応容器内の混合物(Li2S+P2S5+トリデカン)を攪拌ブレードで攪拌しながら、230℃まで加熱し、230℃を12時間保持した。加熱中、H2Sガスは流通させ続けた。
その後、減圧濾過した後、さらに90℃で12時間真空乾燥することによりトリデカンを除去し、サンプル(Li3PS4)を得た。
得られたサンプルについて、ラマン分光測定を行った。結果を図3に示す。また、合成条件を表1に示す。
[実施例1]
出発原料として、硫化リチウム(Li2S、平均粒径90μm、日本化学工業社製)、及び、五硫化二リン(P2S5、平均粒径200μm、アルドリッチ社製)を用いた。次に、Li2Sを2.5g、P2S5を4.03gそれぞれ秤量した(Li2S:P2S5=3mol:1mol)。
次に、反応容器内に、秤量したLi2S及びP2S5と、トリデカン45gとを投入した。続いて、反応容器に、H2Sガス(50ml/min)及びArガス(50ml/min)を10分間流通させた。その後、反応容器内の混合物(Li2S+P2S5+トリデカン)を攪拌ブレードで攪拌しながら、230℃まで加熱し、230℃を12時間保持した。加熱中、H2Sガスは流通させ続けた。
その後、減圧濾過した後、さらに90℃で12時間真空乾燥することによりトリデカンを除去し、サンプル(Li3PS4)を得た。
得られたサンプルについて、ラマン分光測定を行った。結果を図3に示す。また、合成条件を表1に示す。
[実施例2]
鉄芯入りポリテトラフルオロエチレン製攪拌ボールを反応容器内に導入し、攪拌ブレード及び攪拌ボールを用いて混合物を攪拌したこと、及び、混合物を190℃に加熱したこと以外は、実施例1と同様にして、サンプル(Li3PS4)を得た。
得られたサンプルについて、ラマン分光測定を行った。結果を図4に示す。また、合成条件を表1に示す。
鉄芯入りポリテトラフルオロエチレン製攪拌ボールを反応容器内に導入し、攪拌ブレード及び攪拌ボールを用いて混合物を攪拌したこと、及び、混合物を190℃に加熱したこと以外は、実施例1と同様にして、サンプル(Li3PS4)を得た。
得られたサンプルについて、ラマン分光測定を行った。結果を図4に示す。また、合成条件を表1に示す。
[実施例3]
予め、硫化リチウム及び五硫化二リンをそれぞれボールミルにより壊砕(微粒子化)し、平均粒径20μmの硫化リチウム及び平均粒径8μmの五硫化二リンを用いたこと、並びに、混合物を190℃に加熱したこと以外は、実施例1と同様にして、サンプル(Li3PS4)を得た。
得られたサンプルについて、ラマン分光測定を行った。結果を図5に示す。また、合成条件を表1に示す。
予め、硫化リチウム及び五硫化二リンをそれぞれボールミルにより壊砕(微粒子化)し、平均粒径20μmの硫化リチウム及び平均粒径8μmの五硫化二リンを用いたこと、並びに、混合物を190℃に加熱したこと以外は、実施例1と同様にして、サンプル(Li3PS4)を得た。
得られたサンプルについて、ラマン分光測定を行った。結果を図5に示す。また、合成条件を表1に示す。
[比較例1]
反応容器内にH2Sガスを流通させなかったこと以外は、実施例1と同様にして、サンプルを得た。
得られたサンプルについて、ラマン分光測定を行った。結果を図6に示す。また、合成条件を表1に示す。
反応容器内にH2Sガスを流通させなかったこと以外は、実施例1と同様にして、サンプルを得た。
得られたサンプルについて、ラマン分光測定を行った。結果を図6に示す。また、合成条件を表1に示す。
[比較例2]
反応容器内にH2Sガスを流通させなかったこと以外は、実施例3と同様にして、サンプル(Li3PS4)を得た。
得られたサンプルについて、ラマン分光測定を行った。結果を図7に示す。また、合成条件を表1に示す。
反応容器内にH2Sガスを流通させなかったこと以外は、実施例3と同様にして、サンプル(Li3PS4)を得た。
得られたサンプルについて、ラマン分光測定を行った。結果を図7に示す。また、合成条件を表1に示す。
[比較例3]
混合物を230℃で3時間保持したこと、及び、反応容器内にH2Sガスを流通させなかったこと以外は、実施例1と同様にして、サンプル(Li3PS4)を得た。
得られたサンプルについて、ラマン分光測定を行った。結果を図8に示す。また、合成条件を表1に示す。
混合物を230℃で3時間保持したこと、及び、反応容器内にH2Sガスを流通させなかったこと以外は、実施例1と同様にして、サンプル(Li3PS4)を得た。
得られたサンプルについて、ラマン分光測定を行った。結果を図8に示す。また、合成条件を表1に示す。
[評価]
(ラマン分光測定)
図6に示すように、H2Sを流通させなかった比較例1では、P−P結合に由来するピークが確認され、PS4結合に由来するピークは確認されなかった。P−P結合は、Li3PS4からの脱硫黄により生成する生成物に起因するものであり、PS4結合は、Li3PS4に起因するものである。すなわち、比較例1では、Li3PS4が生成しなかった。
これに対して、H2Sを流通させ、その他の合成条件は比較例1と同じ実施例1では、図3に示すように、PS4結合に由来するピークが確認され、Li3PS4を合成することができた。これは、H2S雰囲気下、Li2SとP2S5とを反応させることによって、Sの脱離を抑制することができ、P−P結合の形成が防止されたためである。
尚、実施例1では、P−P結合に由来するピークが確認されなかった一方、P−S−P結合に由来するピークが確認された。この結果からも、実施例1では、比較例1と比較してSの脱離が抑制されたということができる。また、P−S−P結合の形成は、P−P結合の形成と比較して、硫化物固体電解質材料の性能、特にイオン伝導性に対する影響が非常に小さい。
(ラマン分光測定)
図6に示すように、H2Sを流通させなかった比較例1では、P−P結合に由来するピークが確認され、PS4結合に由来するピークは確認されなかった。P−P結合は、Li3PS4からの脱硫黄により生成する生成物に起因するものであり、PS4結合は、Li3PS4に起因するものである。すなわち、比較例1では、Li3PS4が生成しなかった。
これに対して、H2Sを流通させ、その他の合成条件は比較例1と同じ実施例1では、図3に示すように、PS4結合に由来するピークが確認され、Li3PS4を合成することができた。これは、H2S雰囲気下、Li2SとP2S5とを反応させることによって、Sの脱離を抑制することができ、P−P結合の形成が防止されたためである。
尚、実施例1では、P−P結合に由来するピークが確認されなかった一方、P−S−P結合に由来するピークが確認された。この結果からも、実施例1では、比較例1と比較してSの脱離が抑制されたということができる。また、P−S−P結合の形成は、P−P結合の形成と比較して、硫化物固体電解質材料の性能、特にイオン伝導性に対する影響が非常に小さい。
また、230℃の保持時間を3時間にしたこと以外は、比較例1と同様にした比較例3では、図8に示すように、PS4結合が確認されたが、P−P結合の生成も確認された。すなわち、比較例1及び比較例3の結果から、H2Sガスを供給しない条件下では、加熱時間の制御によってP−P結合の形成を阻止することはできないといえる。
また、H2Sを流通させ、反応温度を190℃にすると共に、混合物を攪拌ブレードと攪拌ボールを用いて攪拌した実施例2では、図4に示すように、実施例1と比較して、P−S−P結合の割合を減少させることができた。
また、H2Sを流通させ、反応温度を190℃にすると共に、微粒子化したLi2SとP2S5とを用いた実施例3では、図5に示すように、P−P結合及びP−S−P結合に由来するピークが確認されず、ほぼLi3PS4単相の材料が合成できた。これは、原料の微粒化により、反応が促進されたためと考えられる。
一方、H2Sを流通させなかったこと以外は、実施例3と同じ条件で合成を行った比較例2は、図7に示すように、実施例3では確認されなかったP−S−P結合の形成が確認された。このような実施例3と比較例2との対比から、H2S供給条件下、Li2SとP2S5とを反応させることによって、Sの脱離を抑制することができ、Li3PS4を効率良く合成できることがわかる。
一方、H2Sを流通させなかったこと以外は、実施例3と同じ条件で合成を行った比較例2は、図7に示すように、実施例3では確認されなかったP−S−P結合の形成が確認された。このような実施例3と比較例2との対比から、H2S供給条件下、Li2SとP2S5とを反応させることによって、Sの脱離を抑制することができ、Li3PS4を効率良く合成できることがわかる。
実施例1〜3及び比較例1〜3の結果から、本発明によれば、P−P結合の形成を抑制することができると共に、H2Sガス(硫化物ガス)を供給しない場合と比較して、広い温度範囲にて、Li3PS4を含有する硫化物固体電解質を合成することができることがわかる。
1…反応容器
2…攪拌装置
3…混合物
4…H2Sガス導入管
5…加熱装置
5a…加熱浴
5b…熱媒体
5c…加熱部
6…排気装置
6a…排気管
6b…密閉部
6c…除害部
7…製造装置
2…攪拌装置
3…混合物
4…H2Sガス導入管
5…加熱装置
5a…加熱浴
5b…熱媒体
5c…加熱部
6…排気装置
6a…排気管
6b…密閉部
6c…除害部
7…製造装置
Claims (6)
- 硫化リチウムと、硫化リンと、炭化水素系溶媒とを少なくとも含む混合物が入った反応容器を準備し、前記反応容器内の前記混合物を、前記反応容器の外部から前記反応容器の内部に供給された硫化物ガスが存在する状態で加熱することを特徴とする、硫化物固体電解質の製造方法。
- 前記混合物の加熱温度が80〜300℃である、請求項1に記載の硫化物固体電解質の製造方法。
- 前記硫化物ガスが硫化水素である、請求項1又は2に記載の硫化物固体電解質の製造方法。
- 前記硫化物ガスを、前記反応容器の外部から前記反応容器の内部に連続的に供給する、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の硫化物固体電解質の製造方法。
- 前記混合物の加熱を、該混合物を攪拌しながら行う、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の硫化物固体電解質の製造方法。
- 前記炭化水素系溶媒の沸点が200℃以上である、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の硫化物固体電解質の製造方法。
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