JP2014167184A - 捲縮糸 - Google Patents
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Abstract
【課題】
本発明は、環境対応型で捲縮特性に優れたポリアミド捲縮糸を提供することを課題とする。
【解決手段】
本発明の捲縮糸は、(A)セバシン酸単位を主成分とするジカルボン酸単位を有するポリアミドを30〜95質量%、
(B)前記(A)のポリアミド以外のポリアミドを5〜70質量%、
を配合してなるポリマーアロイの捲縮糸であり、捲縮特性に優れることを特徴とするものである。本発明の捲縮糸は、カーボンニュートラルへの寄与が高く、環境対応型の捲縮糸として、カーマット、タイルカーペット、ロールカーペット、ラグマット、ダスコンマットといったカーペット用途を中心に好適に使用される。
【選択図】なし
本発明は、環境対応型で捲縮特性に優れたポリアミド捲縮糸を提供することを課題とする。
【解決手段】
本発明の捲縮糸は、(A)セバシン酸単位を主成分とするジカルボン酸単位を有するポリアミドを30〜95質量%、
(B)前記(A)のポリアミド以外のポリアミドを5〜70質量%、
を配合してなるポリマーアロイの捲縮糸であり、捲縮特性に優れることを特徴とするものである。本発明の捲縮糸は、カーボンニュートラルへの寄与が高く、環境対応型の捲縮糸として、カーマット、タイルカーペット、ロールカーペット、ラグマット、ダスコンマットといったカーペット用途を中心に好適に使用される。
【選択図】なし
Description
本発明は、捲縮糸に関する。更に詳しくは、環境対応型で捲縮特性に優れたポリアミド捲縮糸に関する。
ナイロン6やナイロン66に代表されるポリアミドからなる捲縮糸は、ポリエステルやポリオレフィンからなる捲縮糸に比べて、風合いが柔らかく、耐摩耗性や耐ヘタリ性といった耐久性に優れるため、カーマット、タイルカーペット、ロールカーペット、ラグマット、ダスコンマットといったカーペット用途を中心に幅広く使用されている。
例えば、特許文献1では、十分な反発弾性、嵩高性、耐久性を有し、かつソフトタッチな風合いとスパンライクな表面外観を得るために、捲縮伸長率と交絡数を規定し、かつ単糸断面の外接円直径と単糸繊度の関係を規定したナイロン6捲縮糸やナイロン66捲縮糸が開示されている。
また、特許文献2では、ナイロン6をベースに、ナイロン610を少量含有させて得た繊維は、延伸配向が抑制され高伸度繊維となるといったポリアミド同士を溶融複合糸とする利点が開示されている。
一方で、バイオマス由来原料を使用したポリアミドは、原料がバイオマスであるため、原料価格や原料ソースが安定することが期待される。また、前記ポリアミドに使用されるバイオマス由来原料は、太陽エネルギーと水、及び大気中に存在する二酸化炭素から光合成によって成長するバイオマスを起源とするため、製品の焼却時に発生する二酸化炭素は、元の大気に戻るだけで、大気中の二酸化炭素の量は増減しない。即ち、バイオマス由来原料を使用したポリアミドは、カーボンニュートラルな原料であることから、地球環境に優しい次世代の環境対応型原料として、近年大きな注目を集めている。
バイオマス由来原料を使用したポリアミド繊維としては、例えば、特許文献3や特許文献4に開示されているようにジカルボン酸成分として、ひまし油由来のセバシン酸を使用したナイロン610繊維が挙げられる。これらの特許文献では、ナイロン610の低吸湿性や形状安定性、屈曲回復率といったポリマー特性を生かし、特許文献3では導電ブラシ用に、特許文献4ではディスプレイ用パネル洗浄ブラシ用に、それぞれ設計したポリアミド繊維についての技術開示がある。
しかしながら、特許文献1および2を含め、これまで一般的に使用されているポリアミドからなる捲縮糸は、石油由来原料を使用しているため、原油価格の変動により原料価格が不安定になりやすく、また将来的には、石油の枯渇により原料調達が困難になることが予想される。加えて、該捲縮糸で構成されるカーペット製品は、使用後廃棄処理にあたって、焼却処分されることが主流であるが、その際に発生する二酸化炭素は、石油由来の炭素であるため、結果として大気中の二酸化炭素の量を増加させる要因となり得る。
そしてバイオマス由来原料を使用したポリアミドからなる捲縮糸は、環境志向の高いカーペット業界において、強く要望されているにも関わらず、これまで検討されていないのが実状である。
これには例えば、ナイロン610に代表されるセバシン酸単位のジカルボン酸からなるポリアミドの捲縮糸は、捲縮特性が劣位である問題がある。一般的に高い風合いや耐ヘタリ性が良好であることを要求される高級グレードのカーペットでは、高い捲縮伸長率や伸長弾性回復率が求められる。
即ち、本発明は、環境対応型のバイオマス由来原料を使用したポリアミドをベースとした捲縮特性に優れた捲縮糸を提供するものである。
本発明は、前記課題を解決するために鋭意検討した結果、バイオマス由来原料であるナイロン610をベースに高い捲縮特性を有する捲縮糸を得たものである。
すなわち本発明は次のような手段を採用するものである。
(A)セバシン酸単位を主成分とするジカルボン酸単位を有するポリアミドを30〜95質量%、
(B)前記(A)のポリアミド以外のポリアミドを5〜70質量%、
を配合してなるポリマーアロイの捲縮糸。
(A)セバシン酸単位を主成分とするジカルボン酸単位を有するポリアミドを30〜95質量%、
(B)前記(A)のポリアミド以外のポリアミドを5〜70質量%、
を配合してなるポリマーアロイの捲縮糸。
そして本発明の捲縮糸は下記構成とすることが好ましい。
1.捲縮糸の放射性炭素(炭素14)測定によるバイオマス由来炭素の存在割合が30%以上である。
2.前記ポリアミド(A)がナイロン610からなる。
3.前記ポリアミド(B)がラクタムまたはアミノカルボン酸をモノマー原料として得られたポリアミドからなる。
4.前記ポリアミド(B)がナイロン6からなる。
5.捲縮糸の総繊度が500〜3000dtex、単糸繊度が5〜50dtex、捲縮伸長率が5〜30%である。
6.捲縮糸の単糸の断面形状が中空率5〜25%の中空断面である。
7.捲縮糸のアミノ末端基濃度が20〜100eq/tonである。
1.捲縮糸の放射性炭素(炭素14)測定によるバイオマス由来炭素の存在割合が30%以上である。
2.前記ポリアミド(A)がナイロン610からなる。
3.前記ポリアミド(B)がラクタムまたはアミノカルボン酸をモノマー原料として得られたポリアミドからなる。
4.前記ポリアミド(B)がナイロン6からなる。
5.捲縮糸の総繊度が500〜3000dtex、単糸繊度が5〜50dtex、捲縮伸長率が5〜30%である。
6.捲縮糸の単糸の断面形状が中空率5〜25%の中空断面である。
7.捲縮糸のアミノ末端基濃度が20〜100eq/tonである。
本発明によれば、バイオマス由来原料を使用したポリアミドをベースとした環境対応型で捲縮特性に優れた捲縮糸を提供することができる。
以下に、本発明について更に詳細に説明する。
まず、本発明における(A)成分であるセバシン酸単位を主成分とするジカルボン酸単位を有するポリアミドについて説明する。セバシン酸は、例えば、ひまし油の種子から精製することにより製造することで、植物由来原料と位置付けられる。
セバシン酸単位以外のジカルボン酸単位を構成するジカルボン酸モノマーとしては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸などが挙げられ、本発明の効果を損なわない範囲でこれらを共重合することができる。また、これらのジカルボン酸についても、植物等のバイオマス由来であることが好ましい。上記セバシン酸単位以外のジカルボン酸単位の共重合量としては、全ジカルボン酸単位中0〜40モル%以下が好ましく、0〜20モル%がより好ましく、0〜10モル%がさらに好ましい。
ジアミン単位を構成するジアミンモノマーとしては、炭素数2以上のジアミン、好ましくは炭素数4〜12のジアミンが挙げられ、具体的には、プトレシン、1,5−ペンタンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、トリメチレンジアミン、ノナンジアミン、メチルペンタンジアミン、フェニレンジアミン、エタンブトールなどが挙げられる。また、これらのジアミンについても、植物等のバイオマス由来であることが好ましい。
本発明におけるセバシン酸単位を主成分とするジカルボン酸単位を有するポリアミドは、セバシン酸単位を主成分とするジカルボン酸単位と上記ジアミン単位の組み合わせにより、ナイロン210、ナイロン310、ナイロン410、ナイロン510、ナイロン610、ナイロン710、ナイロン810、ナイロン910、ナイロン1010、ナイロン1110、ナイロン1210およびそれらの共重合体などが挙げられ、ナイロン410、ナイロン510、ナイロン610、ナイロン710、ナイロン810、ナイロン910、ナイロン1010、ナイロン1110、ナイロン1210がさらに好ましく挙げられる。この中でも、重合性が安定し、捲縮糸の黄化が少ないナイロン610が最も好ましい。
本発明における(B)成分である(A)セバシン酸単位を主成分とするジカルボン酸単位を有するポリアミド以外のポリアミドとしては、ポリカプロアミド、ポリウンデカンアミド、ポリドデカンアミド等のラクタムまたはアミノカルボン酸の重合物や、ポリテトラメチレンアジパミド、ポリペンタメチレンアジパミド、ポリヘキサメチレンアジパミド、ポリヘキサメチレンドデカンアミド、ポリヘキサメチレントリデカンアミド、ポリヘキサメチレンテレフタラミド、ポリヘキサメチレンイソフタラミド等のジカルボン酸とジアミンの単位を等モル量結合した塩の重合物が挙げられ、モノマーとしてε−カプロラクタムまたは6−アミノカプロン酸から得られるポリカプラミドが、汎用性や耐熱特性、捲縮特性が優れている点で最も好ましい。
本発明の捲縮糸は、捲縮糸に含まれる炭素全体に対してバイオマス由来炭素の存在割合が30%以上であることが好ましく、より好ましくは50%以上、さらに好ましくは80%以上、最も好ましくは100%である。バイオマス由来炭素の存在割合が30%以上であることで、カーボンニュートラルへの寄与度の点で環境対応型の捲縮糸を提供できる。
本発明におけるバイオマス由来炭素とは、大気中に二酸化炭素として存在していた炭素が植物中に取り込まれ、これを原料として合成されたポリアミドに存在する炭素を示すものであり、放射性炭素(炭素14)の測定により同定することができる。その理由は次の通りである。大気中の高層部においては、窒素原子に宇宙線(中性子)が衝突して炭素14原子が生成される反応が継続して起こっており、これが大気中全体へと循環しているため、大気中のニ酸化炭素には、炭素14が一定割合(平均として107.5pMC(percent modern carbon))で含まれていることがわかっている。一方、地中に閉じ込められた炭素14原子は、上記の循環からは隔離されているため、放射線を出しながら半減期5730年で窒素原子に戻っていく反応のみが起こり、現在の石油などの化石原料中には炭素14原子が殆ど残っていない。したがって、対象となる試料中における炭素14の濃度を測定し、大気中の炭素14の含有割合(107.5pMC)を指標として逆算することで、試料中に含まれる炭素のうちのバイオマス由来炭素の割合を求めることができる。本発明におけるセバシン酸単位を主成分とするジカルボン酸単位を有するポリアミドとしては、バイオマス由来原料を重合して新たに得られたポリアミドのみならず、バイオマス由来炭素が含有されてなるリサイクルポリアミドも包含するものである。
なお、本発明におけるポリマーアロイとは、2種以上のポリマーを溶融混練などの方法により配合することにより得られる組成物であり、例えばプラストミルやエクストルーダーといった溶融混練機によって得られる、全体としては均質性を有する組成物である。
本発明における(A)セバシン酸単位を主成分とするジカルボン酸単位を有するポリアミドと(B)前記(A)以外のポリアミドは、それぞれ硫酸相対粘度(ηr)が2.5〜3.5であることが好ましい。ηrが3.5以下であると、溶融紡糸する際に十分な製糸性を確保するために紡糸温度を高く設定する必要がなく、ポリマー自体、或いはポリマーに配合する着色剤や添加剤等が変質し着色又は変色するといった不都合も生じにくい。一方、ηrが2.5以上であると、適正な粘度で安定的に紡出でき、或いは単糸繊度斑も発生しにくい。
本発明の捲縮糸は、着色剤によって原着化されていても良く、着色剤による原着化によって、カーペットなど製品の柄出しに際し意匠性を付与することが可能となる。また、バイオマス由来原料を使用したポリアミドが、その製造過程において変性や精製不良により着色した場合においても、着色剤による原着化によって、所望の色相に適宜調整することが可能となる。着色剤としては、カーボンブラック、酸化チタン、アントラキノン系着色剤、フタロシアニン系着色剤、アゾ系着色剤及び酸化鉄系着色剤などが挙げられ、要求される色相に応じて適宜使用することができる。捲縮糸への着色剤の添加率は、特に限定されず、カーペットの柄出しに際して所望の意匠性を付与できるように適宜設定すれば良いが、通常は捲縮糸を構成する成分全体に対して、0.01〜3質量%である。
また、本発明の捲縮糸は、着色剤以外にも、耐光剤、耐候剤、紫外線吸収剤、耐熱剤、熱劣化防止剤、酸化防止剤、滑剤、可塑剤、分散剤、安定剤、難燃剤、抗菌剤、防汚剤など、従来公知の添加剤を適宜使用することができる。
本発明の捲縮糸は、総繊度が500〜3000dtexであることが好ましく、700〜2500dtexがより好ましい。総繊度が500dtex未満の場合は、捲縮糸の製造コストが高くなり、またカーペットの嵩高性が低下しやすくなる傾向にある。総繊度が3000dtexを超えると、カーペット加工におけるタフト工程通過性が低下しやすく、またカーペットの風合いが硬くなりやすい傾向にある。
本発明の捲縮糸は、単糸繊度が5〜50dtexであることが好ましく、10〜40dtexがより好ましい。単糸繊度が5dtex未満の場合は、カーペットの嵩高性や耐摩耗性が低下しやすく、耐久性不良に繋がることがある。単糸繊度が50dtexを超えると、カーペットの風合いが硬くなる傾向にある。
本発明の捲縮糸は、捲縮伸長率が5〜30%であることが好ましく、15〜30%がより好ましい。捲縮伸長率が5%未満であると、カーペットの嵩高性や風合いが低下しやすく、耐摩耗性の低下により耐久性不良に繋がることがある。また、捲縮伸長率が30%を超える捲縮糸を通常の製造方法で製造することは技術的に困難である。
さらに、本発明の捲縮糸は、中空断面が挙げられる。中空断面の場合、中空率が5〜25%であることが好ましく、10〜20%であることがより好ましい。中空率が5%未満であると、カーペットの嵩高性や風合いが低下しやすく、耐摩耗性の低下により耐久性不良に繋がることがある。また、中空率が25%を超える断面形状を通常の製造方法で製造することは技術的に困難である。中空部は、1つでも複数(田型断面など)でも良い。複数の場合、それらの中空部の合計の中空率が5〜25%であれば良い。
また、カーペットに嵩高性を付与するための上記以外の断面形状としては、単糸の断面形状が、変形度1.5〜5.0の多葉断面であることが好ましい。さらに好ましくは、2.5〜5.0である。変形度が1.5未満であるとマルチフィラメントにおいて単糸間の空隙が少なくなり、カーペットの嵩高性や風合いが低下すると共に、耐摩耗性の低下により耐久性不良に繋がることがある。また、変形度が5.0を超える断面形状を通常の製造方法で製造することは技術的に困難である。
多葉断面としては、2葉(扁平、繭型、眼鏡型など)、3葉、4葉、5葉、6葉などが例示できるが、3葉、4葉が単糸間の空隙をより形成しやすく好ましい。ここで言う変形度とは、単糸横断面の外接円の直径Dと、単糸横断面の内接円の直径dの比(D/d)で表される。
本発明における捲縮糸は、(A)セバシン酸単位を主成分とするジカルボン酸単位を有するポリアミドと(B)前記(A)以外のポリアミドを配合してなるポリマーアロイの捲縮糸である。ポリマーアロイとする方法の中には、例えばセバシン酸単位を主成分とするジカルボン酸単位を有するポリアミドチップと、それ以外のポリアミド前駆体からなるポリアミドポリマーチップを紡糸機に投入する前にチップブレンドする方法があり、紡糸機前に計量マス、ブレンド設備を具備した定量供給設備がある場合なら、比較的容易に実施でき、ポリアミド単一ポリマーと同様に高変形度の多葉断面糸や高中空率の中空断面糸を得ることができる。この場合、(A)成分、(B)成分の合計に対するセバシン酸単位を主成分とするジカルボン酸単位を有するポリアミドの割合は30〜95質量%の範囲であり、好ましくは50〜95質量%、更に好ましくは80〜95質量%の範囲である。30質量%以上であることで放射性炭素(炭素14)測定によるバイオマス由来炭素を十分存在させることができ、カーボンニュートラルへの十分な寄与ができ、環境対応型の捲縮糸を提供することができる。一方95質量%以下とすることで捲縮伸長率や伸長弾性回復率といった、いわゆるカーペット用途での風合いや耐ヘタリ性の要求が高い上級グレードに望まれる高い捲縮特性を付与することができる。
本発明の捲縮糸は、アミノ末端基濃度が、20〜100eq/tonであることが好ましい。より好ましくは、30〜90eq/ton、さらに好ましくは、40〜80eq/tonである。染色性を確保するためには、アミノ末端基濃度は20eq/ton以上であることが好ましい。一方で、アミノ末端基濃度が高すぎると、溶融紡糸工程において、アミノ末端基起因のポリマー変性により捲縮糸が黄化する場合や、製糸性が悪化する場合があり、また、捲縮糸あるいはカーペット製品の保管中や使用時において、アミノ末端基起因の光や熱でのポリマー変性や排気ガス成分の付着により捲縮糸が黄化する場合があるため、アミノ末端基濃度は100eq/ton以下であることが好ましい。
本発明の捲縮糸は、カーペット用途に好適に使用することができる。カーペットとしては、カーマット、タイルカーペット、ロールカーペット、ラグマット、ダスコンマットなど、幅広い分野で使用することができる。特に、本発明の主旨に合った環境を重視した分野において、好適に使用することができる。カーペットの形態は、カットパイル、ループパイル、それらの組合せなど、所望のカーペット製品となるように適宜選択することができる。
本発明の捲縮糸の製造方法は、基本工程としては通常の溶融紡糸、冷却、給油、延伸、および捲縮処理からなる捲縮糸製造工程によって製造される。本発明に用いる溶融紡糸装置はエクストルーダー型紡糸機でもプレッシャーメルター型紡糸機でも使用可能であるが、製品の均一性、製糸収率等の点でエクストルーダー型紡糸機が好ましい。着色剤を添加する場合は、着色剤を高濃度で添加したマスターチップをポリアミドチップとブレンドしたチップを紡糸機に投入しても良いし、それぞれのチップを紡糸機直上で計量しながら投入しても良い。また、着色剤を粉体或いは液体の状態で直接紡糸機に投入しても良い。
かかる捲縮糸の特定の総繊度、単糸繊度及び断面形状などを満足させるには、ポリアミドの粘度、紡糸温度、口金孔形状、吐出量、冷却等の紡糸条件を適切に設定して溶融紡糸する。
なお、このとき使用する口金について、バラスと呼ばれる現象が(口金孔から押し出される溶融ポリマーが孔を出た直後で孔直径よりも膨らむ)、一般的に単独ポリマーと比べて大きくなるポリマーアロイを溶融紡糸する際には、曳糸性を向上させる目的で、ポリマー吐出孔の最下流部の孔径を拡大することでバラスの発生を抑制したいわゆる段付き口金を用いるなどの工夫を行ってもよい。
溶融紡糸された糸条は、冷風によって冷却固化され、次いで油剤を付与された後、所定の引き取り速度で回転する引き取りローラに捲回して引き取られる。引き取り速度は300〜1500m/分が好ましい。引き取った糸条は、通常、引き続き延伸および捲縮加工を連続して行う。別の方法として、未延伸糸で一旦巻き取った後、別工程で延伸および捲縮加工を行う方法、あるいは延伸糸を一旦巻き取った後、別工程で捲縮加工を行う方法も可能である。
本発明の捲縮糸は5〜30%の捲縮伸長率を有するのが好ましいが、そのためには延伸工程で十分に分子鎖の配向を高めてから捲縮加工するのが好ましい。延伸倍率は2.0〜4.0倍の範囲で行い、伸度が30〜100%となるよう延伸することが好ましい。次いで、延伸された糸条は捲縮付与装置を通して捲縮加工処理する。捲縮は飽和蒸気、過熱蒸気または加熱空気等の加熱流体加工処理によって行われる。捲縮加工装置は、例えば、特開2004−84080号公報で開示された捲縮加工ノズル装置などを使用することができる。通常は、該捲縮加工ノズルを有するジェットノズル方式で捲縮加工され、ニードル内を通過する糸条に周囲から過熱蒸気や加熱空気等の高圧の高温流体を接触させ、大気中に放出し冷却することで捲縮を付与する。更に、捲縮を固定する目的で、捲縮ノズルを通過した捲縮糸に冷風を吹きつけたり、内部に吸引するロータリーフィルターの表面に捲縮糸を堆積させて冷却する方法等も採用することができる。
捲縮加工する際の捲縮ノズルの温度は190〜250℃が好ましく、210〜240℃がさらに好ましい。捲縮ノズルの温度が190℃未満であると、熱処理が不十分なため捲縮を十分に付与できない。また、250℃を超えると、熱処理が過多となり、ポリマーの融着や劣化が起こり、捲縮糸の物性(強度、伸度、捲縮伸長率)や耐摩耗性が低下することがある。
捲縮加工された捲縮糸は適度なストレッチを与えて、捲縮を一部潜在化させた後、巻取り機で巻き取る。捲縮糸は巻取り前に集束性を付与するため交絡処理を与えることもある。
かくして、本発明の捲縮糸が得られる。
以下、本発明を実施例を用いて詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により何等限定されるものではない。なお、実施例中の各測定値の測定方法は以下の通りである。
(1)硫酸相対粘度(ηr):ポリマーチップを試料として、試料0.25gを98%硫酸25mlに溶解し、オストワルド粘度計を用いていて25℃で測定し、以下の式から求めた。5サンプルの平均値から求めた。
ηr=試料溶液の流下秒数/硫酸のみの流下秒数
ηr=試料溶液の流下秒数/硫酸のみの流下秒数
(2)アミノ末端基濃度:ポリマーチップ、或いはトリクロロエチレンに10分間浸漬・振とうして油剤を落とした後、25℃で1時間風乾し、15時間真空乾燥した捲縮糸を試料とした。試料1gを50mlのフェノール/エタノール混合溶液(フェノール/エタノール=83.5/16.5)に、25℃で振とう溶解させて試料溶液とし、この溶液を0.02Nの塩酸で中和滴定する際に要した0.02N塩酸量を求めた。また、上記フェノール/エタノール混合溶液のみを0.02Nの塩酸で中和滴定する際に要した0.02N塩酸量を求めた。それらの差から、試料1tonあたりのアミノ末端基量を求めた。5サンプルの平均値から求めた。
(3)総繊度:JIS L1013(2010) 8.3.1 b)B法により、正量繊度を測定して総繊度とした。
(4)単糸繊度:総繊度をフィラメント数で除して求めた。
(5)中空率:レーヨンステープルで包んだ捲縮糸の糸端を、厚さ0.5mmのステンレス製プレパラートに設けた穴(穴径1.0mm)に通し、安全カミソリでプレパラートの両面に沿って平行にカットしたものを断面観察用の試料とした。この試料をKEYENCE社製デジタルマイクロスコープ「VHX−500」を用いて500倍で観察し、面積計測機能により、中空部を含む繊維の断面積Sと中空部の面積sから次式により求めた。10サンプルの平均値から求めた。
中空率=(s/S)×100(%)
中空率=(s/S)×100(%)
(6)バイオマス由来炭素の存在割合:捲縮糸を試料として、ASTM D6866 B法(加速器質量分析法)により測定・算出した。
(7)強度、伸度: JIS L1013(2010) 8.5.1標準時試験に示される定速伸長条件で測定した。試料をオリエンテック社製“テンシロン”(TENSILON)UCT−100を用い、掴み間隔は25cm、引張り速度は30cm/分で行った。なお、伸度はS−S曲線における最大強力を示した点の伸びから求めた。
(8)捲縮伸長率:捲縮糸をかせ状にとり、20℃、65%RHの室内に3時間放置して放縮させた。次いで、沸騰水中に20分間浸漬して沸騰水処理を行った。沸騰水処理したかせ状の糸条を12時間前記室内で放置乾燥させた。次に、該糸条を1m程度の長さに切り取り、糸条の総繊度をA(dtex)とすると17.7A(μN)(1.8A(mg))の初荷重を30秒間加えた後の糸条の長さL1を先ず測定した。
次に、883A(μN)(90A(mg))の定荷重を30秒間加えた後の糸条の長さL2を測定した。本発明における捲縮伸長率G(%)はL1,L2より、以下の式から求めた。5サンプルの平均値から求めた。
G=((L2−L1)/L1)×100(%)。
G=((L2−L1)/L1)×100(%)。
(9)伸長弾性回復率: JIS L1013(2010) 8.9で示される伸長弾性率B法で測定した。試料をオリエンテック社製“テンシロン”(TENSILON)UCT−100を用い、掴み間隔は20cm、引張り速度は20cm/分で行った。糸長(L0)に対して10%(L1)まで引き伸ばし、1分間保持した後、伸度0%までクロスヘッドを戻し(L’1)、3分放置後に再び一定伸度まで伸長させたときの残留伸びを測定し、以下の式から求めた。3サンプルの平均値から求めた。
伸長弾性回復率(%)=(L1−L’1)/(L1−L0)×100
伸長弾性回復率(%)=(L1−L’1)/(L1−L0)×100
[実施例1]
ヘキサメチレンジアミンとセバシン酸(植物由来)との塩の80質量%水溶液を重合缶に投入し、重合缶内を十分に窒素置換した後、撹拌しながら加温を開始した。缶内圧力を最大1.7MPaに調整しながら最終到達温度を270℃とした。目的の相対粘度になるように重合時間を調整した後、溶融ポリマーを水浴中に吐出し、ストランドカッターでチップ化することで、ナイロン610チップ(硫酸相対粘度2.7、アミノ末端基濃度33eq/ton)を得た。
ヘキサメチレンジアミンとセバシン酸(植物由来)との塩の80質量%水溶液を重合缶に投入し、重合缶内を十分に窒素置換した後、撹拌しながら加温を開始した。缶内圧力を最大1.7MPaに調整しながら最終到達温度を270℃とした。目的の相対粘度になるように重合時間を調整した後、溶融ポリマーを水浴中に吐出し、ストランドカッターでチップ化することで、ナイロン610チップ(硫酸相対粘度2.7、アミノ末端基濃度33eq/ton)を得た。
一方、ε−カプロラクタムの85質量%水溶液を重合缶に投入し、重合缶内を十分に窒素置換した後、撹拌しながら加温を開始した。缶内圧力を最大1.5MPaに調整しながら最終到達温度を255℃とした。目的の相対粘度になるように重合時間を調整した後、溶融ポリマーを水浴中に吐出し、ストランドカッターでチップ化した後、熱水で抽出を行い、ナイロン6チップ(硫酸相対粘度2.7、アミノ末端基濃度55eq/ton)を得た。
得られたナイロン610チップ、ナイロン6チップをそれぞれ100℃、12時間の条件で真空乾燥した後、ナイロン610チップを95質量%、ナイロン6チップを5質量%となるよう計量しブレンダーにてブレンドした後、エクストルーダー型紡糸機に投入し、溶融紡糸した。紡糸温度265℃、田型中空断面用の孔を有する口金を用いて、捲縮糸の総繊度が980dtex、フィラメント数54、単糸繊度が18.1dtex、中空率が12となるように製糸した。
引取速度は820m/分、トータル延伸倍率3.2倍(1段目延伸倍率2.77倍、2段目延伸倍率1.12倍)、1段目延伸温度50℃、2段目延伸温度140℃、セット温度199℃で熱延伸した。次いで延伸糸条は連続して、特開2004−84080号公報中の図6で示される捲縮ノズルで0.9MPaの過熱蒸気により、捲縮ノズル温度235℃にて捲縮処理した後、冷却ロールで冷却した後、0.07cN/dtexをかけてストレッチし、捲縮を潜在化した後、交絡ノズルを通して、10個/mの交絡を付与して、2000m/分で巻き取った。
得られた捲縮糸の特性を表1に示す。
[実施例2]
ナイロン610チップの割合を70質量%、ナイロン6チップの割合を30質量%に変更した以外は、実施例1と同様にして、捲縮糸を得た。得られた捲縮糸の特性を表1に示す。
ナイロン610チップの割合を70質量%、ナイロン6チップの割合を30質量%に変更した以外は、実施例1と同様にして、捲縮糸を得た。得られた捲縮糸の特性を表1に示す。
[実施例3]
ナイロン610チップの割合を50質量%、ナイロン6チップの割合を50質量%に変更した以外は、実施例1と同様にして、捲縮糸を得た。得られた捲縮糸の特性を表1に示す。
ナイロン610チップの割合を50質量%、ナイロン6チップの割合を50質量%に変更した以外は、実施例1と同様にして、捲縮糸を得た。得られた捲縮糸の特性を表1に示す。
[比較例1]
ナイロン610チップのみを使用し、実施例1と同様にして、捲縮糸を得た。得られた捲縮糸の特性を表1に示す。
ナイロン610チップのみを使用し、実施例1と同様にして、捲縮糸を得た。得られた捲縮糸の特性を表1に示す。
[比較例2]
ナイロン610チップの割合を97質量%、ナイロン6チップの割合を3質量%に変更した以外は、実施例1と同様にして、捲縮糸を得た。得られた捲縮糸の特性を表1に示す。
ナイロン610チップの割合を97質量%、ナイロン6チップの割合を3質量%に変更した以外は、実施例1と同様にして、捲縮糸を得た。得られた捲縮糸の特性を表1に示す。
[比較例3]
ナイロン6チップのみを使用し、実施例1と同様にして、捲縮糸を得た。得られた捲縮糸の特性を表1に示す。
ナイロン6チップのみを使用し、実施例1と同様にして、捲縮糸を得た。得られた捲縮糸の特性を表1に示す。
表1から明らかなように、実施例1〜3の捲縮糸は、比較令1、2の捲縮糸に比べて捲縮伸長率が高く、伸長弾性回復率も優位であり、カーペット用途で実用的かつ環境対応型の捲縮糸であると言える。
比較例3の捲縮糸は、捲縮伸長率、伸長弾性回復率が高いものの、バイオマス由来炭素の存在割合が30%未満であり、カーボンニュートラルへの寄与がなく、本発明の主旨に則さないものである。
本発明の捲縮糸は、カーボンニュートラルへの寄与が高く、環境対応型の捲縮糸として、カーマット、タイルカーペット、ロールカーペット、ラグマット、ダスコンマットといったカーペット用途を中心に好適に使用されるものである。また、捲縮特性に優れることから、風合いやヘタリ性の要求が高い上級グレードのカーペット用途にも好適に使用されるものである。
Claims (8)
- (A)セバシン酸単位を主成分とするジカルボン酸単位を有するポリアミドを30〜95質量%、
(B)前記(A)のポリアミド以外のポリアミドを5〜70質量%、
を配合してなるポリマーアロイの捲縮糸。 - 放射性炭素(炭素14)測定によるバイオマス由来炭素の存在割合が30%以上であることを特徴とする請求項1に記載の捲縮糸。
- 前記ポリアミド(A)がナイロン610からなることを特徴とする請求項1〜2項のいずれかに記載の捲縮糸。
- 前記ポリアミド(B)がラクタムまたはアミノカルボン酸をモノマー原料として得られたポリアミドからなることを特徴とする請求項1〜3項のいずれか1項に記載の捲縮糸
- 前記ポリアミド(B)がナイロン6からなることを特徴とする請求項1〜4項のいずれか1項に記載の捲縮糸
- 総繊度が500〜3000dtex、単糸繊度が5〜50dtex、捲縮伸長率が5〜30%であることを特徴とする請求項1〜5項のいずれか1項に記載の捲縮糸。
- 単糸の断面形状が中空率5〜25%の中空断面であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の捲縮糸。
- アミノ末端基濃度が20〜100eq/tonであることを特徴とする1〜7項のいずれか1項に記載の捲縮糸。
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JP2013038945A JP2014167184A (ja) | 2013-02-28 | 2013-02-28 | 捲縮糸 |
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JP2013038945A JP2014167184A (ja) | 2013-02-28 | 2013-02-28 | 捲縮糸 |
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JP2014167184A true JP2014167184A (ja) | 2014-09-11 |
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Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JP2021029532A (ja) * | 2019-08-22 | 2021-03-01 | 東レ株式会社 | ラケットストリングス用ポリアミドマルチフィラメント |
-
2013
- 2013-02-28 JP JP2013038945A patent/JP2014167184A/ja active Pending
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